【リレー小説】えなりの奇妙な冒険〜冨樫の遺産編第22部
これはえなり2世の数奇な運命を追った奇妙な冒険である。
前スレからの続き、行くぜ!!
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1087978323/ ≪注≫この物語はフィクションです。実在の人物、地名などとは一切関係ありません。
特に漫画家とか。
ルール! それはここに書き込む際の最低限のルールである!
・過去ログを見てストーリーの流れくらいは把握しておく事!
・漫画のキャラをあんまり出すな! ここのメインはあくまで漫画家だ!
・先人の意思をなるべく尊重しよう! 壊すにも壊すルールがあるのさ!
・雑談や感想は本スレで! アンカー付けての遅レスOK!
・展開相談は「したらば」オンリーで! 無論見ないのも自由! 無視されて当然!
・質問は本スレでよし! 先展開の牽制にならぬよう気を遣うのを忘れるな!
・細かい設定や言葉遣いでドジった書き手には極力優しく! 過失だ!決して悪意は無い!
・脊髄反射で罵倒レスをするな! 一呼吸置いて良い部分にも目を向けようぜ!
・わかりやすさは大切だ! 自分の投稿がどの続きなのかアンカーは必ず付けようぜ!
・割り込みはあるものとして考えろ! 即興でそのつど話を書いてるなら尚更だ!
・誤字脱字の訂正は必要最小限にとどめよう! 投稿前に内容確認!!
特殊ルール
・リアル故人の漫画家さんを当スレで扱うと様々な問題が発生する恐れがあります。
今のところ明確なルールは無く、ケースバイケースなのですが
誰某を出そうと思っている、若しくは、誰某が登場後にお亡くなりになられた、といった場合
本スレにSSを貼る前に、したらばに一言お願いします。
↓展開相談、ネタバレ関係はここ「したらば」で
http://jbbs.shitaraba.com/comic/31/
☆なんとなくそれっぽいあらすじ☆
時は近未来。忘年会シーズンたけなわの2012年。
漫画家を含めた≪クリエイター≫達が武力や異能力を持ち争いを続ける歴史世界。
冨樫義博の遺産ファイルがエジプトで発見されたのを始まりとして、
一見平凡な少年「えなり二世」はファイルを巡る争いに巻き込まれてしまう。
この時代の漫画業界を表に裏に支配する男・矢吹は兵力獲得のため、
賞金10億を賭けたバトルトーナメント大会を巨大戦艦内で開催する。
しかし歴史の裏には神の手先ゴッドハンド・闇の支配者妖魔王一派・
漫画界の秩序回復を図るも内部分裂が甚だしい評議会・
10年前に東京で大災害を起こした少年とゆかいな仲間たちKIYU・
さらにはゴッドハンドを実質支配する軍師横山のしもべたち十傑集+五虎大将・
軍師の姦計で矢吹の下を離れ結成された狂人軍団最後の大隊など、
フリーキャラ含めて右も左も敵だらけで、なんだかえなりはピンチです。
予選ブロック決勝が終わり、選出された4チームと、
負けた5チームの希望者たちが集まった交流会という形で、
鹿児島→別府で開かれた≪温泉慰労会≫はしかし、最悪のシナリオを迎えてしまう!
各チーム各選手が派閥を超えて入り乱れ、方や団結…方や決裂。
謎の人物『調停者』の介入により破滅を余儀なくされた別府を、
知欠王・矢吹がとんでもない方法――別府ノックアッパー作戦――で丸ごと空に打ち上げ、
ぽっかり開いた空間に殺到した調停者の使途・王蟲は少女の祈りで新たな陸土となった。
2ヶ所に増えた別府の地に見守られ?いよいよ決勝トーナメントが始まる!!
主人公えなりが徐々に存在感を取り戻しつつ、新シリーズ準決勝編の開幕です。
A・バンチチーム B・ガンガンチーム C・裏御伽チーム D・えなりチーム
果たして栄冠はどのチームの手に!
そしてその先にある≪絶望の未来≫で生き延びる者は誰だ…? <了>
5 :
王大人:04/08/19 00:08 ID:gkQb8hS0
それでは始めぃ!!
新 ヾ(゚Д゚)ノ゛ヾ(゚Д゚)ノ゛ヾ(゚Д゚)ノ゛ スレおめ
21部に誘導貼ってきましょうか
7 :
ヒトの断片:04/08/19 01:18 ID:GZF61x+3
戦艦ヤマト艦上。
モップで艦を磨いている途中。
下端の兵士である彼は、ソレを発見した。
少年、と言っても過言ではない、幼い姿形。
そして、少女と間違えてしまいそうな柔い顔。
男は男色の気が無いにも関わらず一度ごくりとつばを飲み込んだ。
その少年は全裸だった。
生まれたままの姿で、体全身はずぶ濡れで髪から水滴が滴り落ちていた。
「あうっ…」
少年の口から吐息が口から漏れた。
その艶かしさ――体形とのギャップがたまらない情欲を感じさせる。
男が恐る恐る、魅入られた様に少年に手を伸ばした。
その手首を、意外な速さで下から少年が両手で捉えた。
―――!?
驚くその真下で、少年の肢体が蠢いた。
仰向けの体を起こし、体を男に向ける。
背中が露わになる。
その背に、普通の人間に有り得ないものが突き出していた。
羽根―?
断定は、できなかった。
背から、ほんの少し、何か金属的な物。
何だ―?
と思考する暇は彼には無かった。
手首が軋んだ。
8 :
ヒトの断片:04/08/19 01:19 ID:GZF61x+3
痛みに顔を歪め、反射的に視線を戻す。
少年は、上目使いでこちらを見ていた。
切実な瞳だった。
「闘わせて」
少年が、言った。
まるでお菓子を強請るような口調で
男の思考が停止する。
「闘わせて、ねえ、闘わせて?」
小首を傾げ、熱い吐息を吐きながら少年は痴呆のようにその言葉を反復した。
掴まれた手首に、更に強い力が加わる。
――ひいっ!?
ようやく、目の前の少年の異常さ気が付き、少年の手を振り払い後に退いた。
一歩。
二歩。
三歩。
そこで、背中が何かに当たった。
肉体の感触。
助けを求めるように振り向いた先で、男は再び悲鳴をあげることとなる。
そこには、一人の青年が立っていた。
白い青年だった。
老人のように真っ白な頭髪。
白いヘアバンド。
病的なまでに白い肌。
そして、白い瞳。
比喩、では無い。
青年の眼球には、黒目が無かった。
ただひたすらに――空虚な白が広がっているだけであった。
9 :
ヒトの断片:04/08/19 01:20 ID:GZF61x+3
「どうも、こんばんわっす」
にこりと笑って、青年は挨拶した。
その仕草、そして笑顔、好青年と言っても差し支えは無いだろう。
だが、笑顔を構成する顔面の中で、眼だけが笑っていない。
笑う、という以前に、根本的に彼の眼球はどういう感情も表現することを停止しているようでもある。
それが、寒気がするほど不気味であった。
青年は男のことなど気にした風も無く、男の体で影になった部分を首を傾けて見た。
「あ、やっぱり」
そう言って青年はすたすたと艦上に倒れる少年の方に歩み寄った。
「駄目じゃないっすか、勝手に俺から離れちゃ。二度も探すのはごめんっすよ」
聞いているのか聞いていないのか、虚空を眺める少年。
それを特に咎めることもなく、にこにこと相変わらず不気味な笑顔を浮かべながら、青年は男の方に振り返った。
「すみませんが、艦長に伝えてくれないっすかね」
何を―と問うた男に、青年はいった。
「十傑集が一人『贋神』福地翼。最終兵器を捕獲せり――」
その後で、少年は相変わらず空を見ていた。
自分自身の在り方を忘れたような、不思議な哀愁が少年に纏わりついていた。
彼は、空に向かって呟いた。
「オレ、成長してる――?」
のっけから裏福地キタァァァ!!(゚曲゚)
そして新スレ乙>1
>1ド――――乙____ン!!
(前スレ542)
「しかしあの山すげーな!これがホントの森山塔、なんつってー」
「・・・(ちょっと巧いなと思ったのが恥ずかしい)」
椎名のマニアックなボケに心でニガシブな笑みを返すカムイ。
ここは夜空に浮かぶ戦艦無礼ド艦橋、非常口から帰ってきた樋口一行を出迎え、
怪我人肉体派トリオの応急処置を済ませたカムイは休む間もなく働いている。
なお三浦の頭部には樋口のリクエストで念入りに包帯が巻いてある。
彼女は現在彼らの治療を引き継いで艦橋から離れている。
それをカムイから聞いた山田女史は、
「わ、私も手伝ってきます」と慌てて走っていった。
艦橋のモニターには満月に照らされる美しい鋭角の森の島と矢吹艦の威容が映っている。
時刻は間もなく一日の終わりを告げようとしていた。
「さて、問題はこれからどうするかだ」
魔力エネルギー係の松沢の労をねぎらったのちの、カムイ。
どうするって言われても・・・とやや空気がゆるい艦橋。
今現在自分たちがどんな立場にいて、
誰が無事で誰がいなくなって何がどうなっているのか、気を回す余裕がないのだ。
その沈殿した空気を知っていてなおカムイは皆に声をかける。
今はただ泥のように眠りたい・・・そんな人間も多かろう、しかし。
「現状を把握しておきたいのだ。
城平に少し聞いたが、どうも俺や椎名が鬼岩城に突入してる間に、
随分情勢が変化してしまったらしいな。・・・会議がしたい。参加は自由だが、
ガンガン及びサンデー関係者は・・・疲れているだろうがなるべく出て欲しい。頼む」
留美子が、城平が、なぜか生タマネギを食べている金田一が頷き、
疲れを表に出さないカムイは先頭を切って会議室へと向かった。
13 :
やまと入港:04/08/19 17:03 ID:K+CJRuVb
関連スレ(21部523・543)
正式名称「シーバット」
水中排水量:9000トン 最大速力:55ノット 最大深度:1000m以上
魚雷発射管:8門 魚雷、ミサイル搭載数:50発
動力プラント:S8G型原子炉、6万馬力 駆動軸:蒸気タービン駆動1軸推進
スクリュー:7枚翼スキュードプロペラ(40ノット以上でのキャビテーション抑制)
船体:チタン合金、無反響タイル装 乗員:76名
――――これが、原子力潜水艦「やまと」の性能諸元である。
今、本宮ひろ志を始めとする裏御伽チームと、他に被救助者が数名乗っている、
この艦は、別府の地を離れ、鹿児島沖へと向かっていた。
だが、本宮達には詳しい行き先は知らされていない。
彼らは皆、士官室に集められていた。士官室といっても、潜水艦ゆえ、当然かなり狭い。
はっきり言って、過密状態である。
そんな状況で、自分達がどこへ向かっているかも分からないとあれば不安になっても致し方ないところだろう。
佐渡川が、それを代表するように本宮に言う。
「ねえ、本宮さん、あたしらは何処へ連れてかれるんだい?」
それに対し、
「知らねえなあ」
そう答える本宮。
「知らないって…」
「まあ、待ってりゃ直につくだろ、心配すんな」
本宮がそう言った矢先、艦内に放送が入る。
『本艦はこれより、『入港』する』
14 :
やまと入港:04/08/19 17:05 ID:K+CJRuVb
「やまと」発令所―――
「『サザンクロス』まで距離3000! 潜行予定位置に着きました!」
潜望鏡を覗いていた副長が、そう伝える。
「潜望鏡下ろせ! 入渠する!」
艦長・かわぐちの指示が飛ぶ。
「ベント開け注水! ダウントリム20゜! 速力2ノット微速! 深度50につけ!」
直ちに命令が復唱され、『やまと』が再び潜行していく。
その頃、鹿児島沖を、一隻のタンカーが投錨してあった。
吃水から、積載燃料2万トン級と推測される、そのタンカーの艦壁には『SOUTHERN CROSS』と刻まれている。
今、『やまと』の潜望鏡が映していたタンカーである。
――『サザンクロス』
一見すると何の変哲もないこの船は、実は『やまと』の点検・補給用の秘密基地なのである。
その艦底の中央には、全長200メートル、幅50メートルもの浮きドックがしつらえてあり、その規模は地下巨大プールと言っても差し支えない。
いわば、この船は、自走式の浮きドックなのである。
潜望鏡も使わない、ドンピシャでドック内に入港した『やまと』。
直ちに、『サザンクロス』の船底が閉ざされ、『やまと』がスッポリ艦内に収まる。
ドック内の水が抜かれ、収容作業が順調に行われていく。
ここに、『やまと』の入港が完了したのであった。
福地がえらい事に。
しかし贋神か…どうなることやら…
>14
「艦長より各員に告ぐ、
これより内殻各区の損傷検査を行う!
ゴッドハンドを始めとする各勢力はすでに臨戦体勢に入っている。
足場がかかり次第、素早く外殻の検査(スキャン)にかかれ、
針の穴ほどの傷も見逃すな! 深度1000の水圧は見逃してはくれん!
なお最終チェックはドック内作業員にまかせず自分でやれ、
自分たちが世界最高・最強のサブマリナーである自覚と誇りを忘れるな!」
「「「ハッ!!」」」
ドックに入港を果たすなり、かわぐちの迅速な指示が飛ぶ。
そして、一糸も乱れず、忠実にその命令を遂行するクルー達。
「すごいな…70名以上もの艦員たちが、まるでひとつの生き物のように統率がとれている」
ようやく『やまと』か降りた本宮たちが、その光景に驚かされる。
彼らの気持ちを代弁するかのように、岡野は呟いた。
他の者たちも、修理中の『やまと』の巨大さに溜息などをもらしている。
そこへ、かわぐちが帽子を脱いで近づいてきた。
本宮が彼の前に立ち、頭を下げる。
「すまねえ…俺らのせいでお前の部下達を死なせちまった」
KIYUたちの狙いには、かわぐちの抹殺も含まれていたのだから、本宮達だけが原因なのではない。
それでも、本宮は頭を下げずにはいられなかったのだろう。
かわぐちは、そんな本宮の心情に理解を示しながら、言う。
「お前のせいではない…と言ってもお前は聞かんだろう。
確かに、優秀なサブマリナ−であり、長年を共にした部下たちを失ったのは無念の極みだ」
その声はやわらかで上品だが、同時にどこか冷ややかなものを感じさせる。
少なくとも、そこに感情らしきものはうかがえない。
それだけ、感情を律しているということか。かわぐちは続ける。
「だが、ここで嘆いていても始まらん。ここで膝を折るようでは、
この先に待ち受ける惨劇の未来に立ち向かうことなど出来んからな」
そこで、本宮が、はっと顔を上げる。
「かわぐち…お前はこれから起こる未来を知っている…とさっき俺に言ったな」
周囲で岡野たちが目を剥くのをよそに、本宮はかわぐちに問う。
「教えてくれ、これから先、一体何が起こるんだ?」
その言葉に、川原が反応を示す。下手にここで、そんな事を言い出せば、どれだけの混乱が生じるか。
しかし、川原の危惧したところを察しているかのように、かわぐちは答える。
「お前が知る必要はない」
それは暗に、本宮の疑問を肯定していた。
「なぜだ!?」
思わず声を荒げる本宮。あくまで涼しげなかわぐちとは全くもって対照的だ。
そんなかわぐちが、静かに、だがはっきりと告げる。
「未来は、変わる」
「なに!?」
胡乱げに叫ぶ本宮に、かわぐちが念を押すように続ける。
「変えるのだ、我々が」
本宮とかわぐちを中心に、誰もが息を鎮めていた。
沈黙を撃ち破るように、報告が届く。
「艦長、『影船』が本艦の左舷にて投錨しました!」
「ご苦労」
部下を一瞥し、そう告げると、再び本宮たちに向き直る。
「どうやら迎えが来たようだ。君たちとは、またの機会にゆっくりと話そう」
一方的に言うと、踵を返した。
「おい、かわぐち! 未来を変えるってな、どういう意味だ!?」
追い掛けようとする本宮を、しかし押しとどめる者がいた。
「おっさん、今はこんなことしてる場合じゃない。今は、早いとこ他の連中とも合流しなけりゃならん」
「……分かってるぜ、んなことは」
釈然としない表情ながらも、なんとか本宮は思考を切り替える。
そう、優先順位をとり違えてはならない。
「よし、影船への移動を急ぐぞ! ぐずぐずしてる暇はねえ!」
本宮が激を飛ばすと、他の者もそれに従って動き始める。
「じゃあな、かわぐち。この借りは、いつか必ず返す」
「また海のどこかで会おう、本宮」
両雄は、すっぱりと別れの挨拶を交わした。
動きだした彼らを見て、最後に川原が、気だるそうに歩き出す。
「君が、あの船の船長か」
ふいにその背に声がかかった。首だけで振り返ると、そこにかわぐちが立っている。
「ああ」
瞑ったような目をしたまま、川原が答える。
「いい船だな」
「そいつはどうも」
軽い挨拶を交わす両者は、どちらもほんのわずかな微笑を浮かべている。
だが、それとは裏腹に、交錯する視線の熱だけが異なる。
いつしか、川原は全身を、かわぐちの方へ向けていた。
それは一秒か、二秒か。
あるいはそれにも満たない瞬くほどの時間だったか。
どちらからともなく、からまった視線が、するりとほどけた。
「良い航海を」
そう言い残して、かわぐちは川原に背を向け、歩き去った。
忙しく士官たちと話を始めたかわぐちを、しばし見つめながら、やがて川原も本宮たちの後を追った。
甲板に続く通路で、本宮が待っていた。
「どうだった?」
本宮が問う。
「どう、とは?」
「かわぐちの事だ。あいつの『目』を見たんだろ」
川原の人物を見抜く目が卓越していることを、本宮は良く知っていた。
かつて、川原と目を合わせ、その本質を完全に看破されなかった者は1人しかいない。
「おっさんの時と同じさ」
「つまり、分からなかった、ってことか」
川原の返答に、本宮がにやりと笑った。
始めて本宮と川原が出逢った時、本宮は川原をさっぱり読めなかった。
一方で、川原もまた、本宮の器量を完全に読み切ることは出来ていない。
ちなみに、再会してからいつぞやに、川原がその事を本宮に告白すると、
「お前みたいな若僧に簡単に理解されてたまるかい」
と、得意げに笑ったものだ。
「おっさんの時は、『善き人』だって事だけは分かったけどね」
心なしか、川原の声に震えが混じっているような気配が生じた。
「あの人は、それすら分からなかった」
そこで初めて、本宮は川原のこめかみに微かに汗が伝っていることに気付いた。
「怖い…な」
「かわぐちが、か?」
「ああ…」
川原の両目が開いた。
「全く読めない。あのアルカイックスマイルの裏に何が隠れているのか…それが皆目見当もつかない。
あの男を読むのに比べたら、嵐の海面を読むのなんて絵本を読むようなもんさ」
川原が感じた戦慄を、本宮もまた理解していた。
確かに、かわぐちかいじ、という男は読めない。
何を考えているか、能力の限界がどこにあるのか、底すら見つけられない。
本宮を雄大な山、川原を茫漠たる大海原に例えるなら。
かわぐちはさしずめ、どれだけの行動をとろうとも水面には波ひとつ立たない、深海のようなものだ。
「何を考えてる、川原」
本宮が訊いた。
「あの男と戦った場合、どうやったら勝てるか…をさ」
返ってきた思いもよらぬ答えを、本宮は一笑する。
「そんなことは考える必要はねえさ。あいつと戦うなんてことにはならねえからな」
そう言い捨てると、本宮は先にさっさと進んでいってしまう。
大きな背が遠ざかっていくのを見ながら、川原が小さく呟く。
「……だと、いいんだがな」
自分も歩きながら、さらに呟いた。
「もし戦えば、俺達は勝てないかも知れない……ぜ」
ゾクゾク
海の男対決(wはかわぐちに軍配か。大人しめに言っても優勢は間違いないみたいだな。
いいね、強いねぇ面白いねぇ(w
たしかに帆船対原潜orイージス艦では川原に勝ち目はなかろうw
森山塔ちょっとワロタ
25 :
噂の男:04/08/20 11:17 ID:t723gPl8
(>20)
丑三つ時。闇と僅かな照明の中、
原潜やまとから影船に乗り移る客人たち。
その一番最後から、やまとクルー数名に担がれた木箱の棺が厳かに運ばれてくる。
付き従う漫画家は澤井と岡野。先程から一言も発さないオレンジ色の球体男の背中を、
岡野が支えながら2人はゆっくりと黒い帆船へ向かった。
・・・乙一の遺体は冷凍保存され、やがて彼は地上で暮らす、
愛する父母の許へ帰る事となろう。川原が彼に約束したように。
その川原に別の荷が届いた。既に影船の船長室に戻っていた彼に、
乙の殺害現場で発見されたという携帯電話だ。にわのの忘れ物であった。
着信ランプが点滅している。川原は手の平の上で機体を弄びながら頬の下を指で掻いた。
「は?こいつ(携帯)の使い方がわからないだって?」
呆れた声を出したのは、たまたま船長室の近くを通った佐渡川。
「俺は本当は電話好きなんだ。好き過ぎて布団を何重にも掛けてやるぐらいだ」
「それは嫌いって事だろーが、船長!」
「そうとも言うかな」
肩を竦めて薄く苦笑いする川原。意外な弱点である。
だが漫画家の宿命・・・職業病とも言える。
しゃーないさねと納得し、携帯を開かせ指示を出そうとする佐渡川だったが。
「わあ!そうじゃないよ!それじゃ壊れるって・・・あー今ミシッて音が!
これ最新型(2012年秋モデル)だねえ、持ち主はあんたと正反対の新し物好きか。
ってだから根元の位置が・・・わざと壊してるのか!この機械オンチ!」
すったもんだの末ようやく取得メール確認(勝手に閲覧)。
数時間前の、会議準備中のカムイからの無事を確認するメールであった。
「たったこれだけの事のために・・・」
どっと疲れてへたり込む佐渡川。横では川原が物珍しそうにヒビの入った携帯で遊んでいる。
(これが強いと噂の修羅どのかい?オーガの旦那とはまるっきり違うねえ)佐渡川は心の中で呟いた。
他人の携帯壊すなよ川原w
前スレ465、436
士郎「それは!」
MSのコクピットから引きずり出した、小さな物。それを見て士郎が驚愕する。
BF「なるほど、これが鉄人の操縦機か………。」
士郎「使えるの?」
BF「ある程度ならばな……。よし、起動した。」
そう言って、BFが軽く操縦桿を動かす。その行動に反応して鉄人が咆哮を上げる。
士郎「意外と簡単な操縦なのね。」
BF「姿勢制御は半自動だからな。旧大戦の機体にしては、良い動きをする。」
鉄人が格納庫をこじ開ける。
士郎「待って!あのラフレシアにどう立ち向かうつもりなの?鉄人には、武器は何も付いていないのよ!!」
BF「武器ならば………ある!!」
そういうや否や、鉄人がラフレシアに向かって突撃を始める。
BF「鋼鉄で包まれたあの体が鉄人の武器だ!!」
無数のロッドに攻撃を阻まれるときたの攻撃。
時間は一刻一刻過ぎており、ふたりに焦りが見え始めていた。
ときた「くっ!」
安彦「どうした!ときた!援護するのでは無かったのか!?」
次の瞬間、鋼鉄の弾丸がラフレシアに突き刺さる。
安彦「くっ!」
その隙を見逃すときたではない。ビームライフルが幾重にも突き刺さり、ラフレシアが炎上を始める。
安彦「よくもラフレシアに傷をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
その叫び声と共にときたが機体を変える。高出力のバスターライフルを持つ、ウィングガンダムだ。
その銃身がラフレシアに向けられた。
BF「とりあえずは、逃げる時間は稼げそうだ。我々も逃げる準備をしよう。」
そう言って、BFが近くのMSに乗る。
士郎「安彦にとどめを差さなくて良いの?」
BF「時間的に無理だ。それに……いや、幸運を期待するほどの理由は無いな。」
士郎「???」
BF「強い力には色々問題があると言うことだ。今はどうでもいいことだ。さあ逃げる準備をしよう。」
そう言って、BFはMSのキーを入れた。
巨大な閃光がラフレシアを貫く。それと共に、ラフレシアに爆発が起きる。
長谷川「やったか!」ときた「いや!だが時間が無い!」
そう言って、二体のMSが近づいてくる。
長谷川「そっちの方は?どちらさま……。」
士郎「今のところはそんなことはどうでも良いわ。もうそろそろ基地が爆発するわ!逃げるわよ!」
逃げるからには全力で逃げなくてはいけない。それぐらいの鉄則はわかっている。
長谷川はダイソードを竜へと変形させ、ときたもウィングガンダムをバードモードに変形させて飛行準備をする。
MSはBFが鉄人に持たせてして運ばせるつもりらしい。
四人が飛び去った後、基地に閃光が迸った。
他の逃げ去った黒軍メンバーもその閃光を見て、涙を流す。
だが、数名の人間は涙ではなく、悲しみを流しさる。
そう、『評議会』黒軍の歴史は今から始まる。
すいません、まだ初めから読んだばっかなんですけど、面白いですね。
期待してます。
過去ログゆっくり読んで楽しんでおくれやす
黒軍基地爆発キター
(21部 529)
満月の下、アバンギャルドな新都市≪第一別府市(仮称)≫が産声を上げる。
その地で第一歩を踏み出したのは当然、真上に乗っていた矢吹。
遥かなる別府艦の懐に抱かれた土と戦艦と矢吹。
愛する世界のため毎日働く剽窃の王は、
賞賛の拍手を求めるかのように両手を上げながら周囲を360度見渡した。
しかし彼の視界には、猫の子一匹入らない。
それでも脳内拍手が聴こえるのだろう、それは満ち足りた笑顔で。
幻聴カーテンコールは突然に破られた。
矢吹艦クルーや“クリムゾン”の下級兵士が、
事後処理のため大量に乗り込んできたのだ。
ちょっとご不満の矢吹様に、無遠慮に届けられる報告と指示を仰ぐ声。
「矢吹様!既に別府はもぬけの空です!
なんでも情報ではゴッドハンドの関係者が福岡他数ヶ所にキャンプを張り、
そこに市民を全員保護しているとの事です!どうされますか!」
「・・・・・・・ああ、それはいい仕事をしてくれたな彼らも。うむうむ。
例の救援要請放送(みずしな)を聞いて動いてくれたのだな。そうだろう、
そうだろうともよ。彼らには全国放送を通じて私から直々に労をねぎらおうじゃないか。
なにしろ無辜の市民を心配する私を 気 遣 っ て 手 助 け し て く れ た のだからな!
自ら進んでこの私の手足となった者達に礼をせねばな!ははは!」
矢吹様、かなりポジティブ。
しかし別の者にはまた違った指示を出す。
「いいか、救援放送の編集は慎重にな。
漫画家が別府に集まったから騒動が起きた、ではないぞ。
別府で騒動が起きてたまたま集まってた漫画家が救ったのだ。
漫画家に対する世間の心証を悪くしてはならん。
慰労会とやらのあらゆる痕跡をなくせ。会の責任者に監視をつけよ」
『歴史は勝者が創る』 矢吹の心には不自然なまでに、強い意志が宿っていた。
九州全土蹂躙されてんのに今だ別府の事しか見えてない辺りが憐れだな矢吹w
九州出身漫画家はみんな気が気じゃないだろうな。
久米田研究所矢吹艦支部―――
関東に存在する本部が様々な要因によって潰滅した為、そこで行われていた研究は全て矢吹艦内部に存在する支部に移された。
所長が不在であるにもかかわらず、ここでは日夜、矢吹軍の戦力増強の為の研究が行われている。
そして今、矢吹勢力の中枢とも言える、この施設に1人の漫画家が潜入していた。
「遁甲板は確かにここを示している……奴は近い……」
黒ずくめの男だった。
右目の上には三条の刀傷が刻まれ、その下にある瞳が蒼い光を放っている。
『白』に属する藤田和日郎――今は『金票』と名乗っている――だった。
『金票』は自分の分身とも言うべき、もう1人の『黒』に属する藤田――『紅煉』とも呼ばれる――を追っていた。
奴には、かつて(17部参照)当分は再起不能なまでのダメージを与えている。
しかし、まだ完全には仕留めていない。
奴の力と狡猾さを考えれば、野放しにしておいた場合、自分や自分の友ら、
果ては無関係の者達にまで、どのような災いをもたらすか分からない。
だからこそ、今のうちに仕留めておかねばならない。
そして、その役目は同じ『藤田』である自分がやらねばならない。
そう考え、追跡を続けた結果、『金票』はこの場所に辿り着いたのだ。
ヒュウ・・・
突然、周囲の空気が変化した。その変化が、『金票』を現へと引き戻した。
歩みを止め、辺りを警戒しながら、『金票』が小さく呟く。
「…空気の臭いが変わった…血の臭い!」
血と臓物が入り交じったような腐敗臭……死の臭い……
『金票』は自然と、自らが修める中国拳法の構えをとっていた。
そこへ背後から、殺気のこもった声がかかる。
「戦場の臭いだ…それを感じる事ができるのなら…あんたは『合戦場』に立つ資格がある…」
声の方向を隙なく振り返る『金票』。
そこには異形が立っていた。
空手着に酷似した道衣。手足に巻き付けた血色のバンテージ。
同じく血に染めたような髪は肩までかかり、その顔もまた同じ色の奇怪な化粧で彩られている。
「何者だ…貴様…」
『金票』の誰何の声に、異形の男は答える。
「『七人の悪魔超人』のひとり……」
そこで息を切り、男がニヤリと怖気のするような笑みを浮かべた。
「南王手八神流(はおうでいやがんりゅう)……三 つ 目 の キ ジ ム ナ ー!!」
なんか敵出たー!
調べたらちょっと懐かしい人だった。
なかなか強そげ
37 :
広い部屋:04/08/23 11:47 ID:5Bw8dE4l
(
>>12)
カムイの呼びかけで漫画家を中心に会議が開かれる事になった。
疲れた身体に鞭を打ち、続々と会議室に人が集まる。
その間カムイは自分の携帯に入っているアドレスに、
返信を求めるメールを送っていた(にわのや衛藤など)。
無礼ド内には現在、様々なチームの人間が乗り込んでいる。
各チームからの代表が会議に出てくれると嬉しいという話になり、
バンチからは巻来が参加する事になった。
「これも何かの縁だ。最後まで付き合わせてもらうよ」
包帯姿でにこやかに笑いながら、巻来はベッドから出て会議室に向かった。
「会議か・・・。選手じゃない私が出ても邪魔なだけかな・・・」
時折感じる疎外感に瞳を曇らせる樋口。
彼女は伏し目で傍らのベッドに眠る三浦の頬を見つめる。
ヨクサルを含めた腐海帰りの者たちは、一応隔離という形で、
他の治療者とは別の部屋をもらっている。
山田はそちらを担当しており、今この広い客室に人間は3名だけだ。
・・・ちなみに雷句は再びメロンを捜しに海上に残る森へ旅立っていた。
ふと樋口が視線をヨクサルのベッドに向けるとそこには誰もいない。
治療中もどこか落着かない男だったがどこへ消えたやら。
深いため息をつく樋口だったが、数秒後突然挙動不審になってしまう。
「・・・あれ?この部屋こんなに静か・・・だったっけ・・・」
彼女の耳には、時計の針と規則的な男の寝息の音がとても大きく響いていた。
一方会議室。
やってきた『バンチ代表』巻来と『裏御伽代表』岡村の間に座るのは、
『えなりT代表』富沢ひとし。屈強な男達に挟まれ心底息苦しそうだ。
「では会議を始めよう」カムイが集まった皆を見渡した。
富沢ひとし…いたのかw
39 :
任務完了:04/08/23 15:37 ID:GZuTWR7v
21部スレ
>>451、
>>28の続き
2つのMS用カタパルトを備えた艦が、黒軍基地より数キロ離れた上空を飛ぶ。
艦の名前は、『リ・ホーム』。
その艦橋には、3人の人物が集まっていた。
ひとりは、軽くウェーブした髪を肩まで伸ばした男だった。
引き締まった体を、改造した軍服で包んでいる。
顔には、色の薄いサングラス。遺伝子選択されている『コーディネーター』は、先天的な視力障害をもたない。
彼が、サングラスをしているのは、左目を塞ぐ大きな裂傷を隠すためだ。
はじめて彼と会った者は、その外見から何かを探ろうとする。
だが、それは徒労に終わる。何も分からないのではない。情報が多すぎて人物像をまとめ上げることができないのだ。
彼の名は、ときた洸一。
古くはボンボン、最近ではガンダムAにて、ガンダム漫画を主に描く漫画家であり、傭兵だった。
ときた「任務完了(ミッション・コンプリート)だ、BF(ビッグファイア)とやら」
ときたがそう言うと、BFと呼ばれた男が鷹揚に頷いた。
BF「ご苦労だった、『サーペントテール』ときた洸一。」
ときた「何、生命を救ってもらった事を考えれば、安すぎるぐらいだ。」
どちらも、物静かな口調だった。そこへ凛とした声が重なる。
??「BF……と言ったな。一体、なぜ我々を助けた?」
紫色の髪を肩あたりまで伸ばし、ビスチェのような大胆な服装をした女だった。
しかし、強い意志を感じさせる眼差し、隙のない物腰は、色気というよりもむしろ精悍さを感じさせる。
彼女の名は、士郎正宗。元【評議会黒軍】のトップエージェント。
だが、もはや【評議会黒軍】という組織は実質上、存在しない。
拠点を失い、彼女を含め10名にも満たなくなった構成員は、追撃から逃げのびるように各地に散り散りになった。
【評議会黒軍】の名は、この歴史上から消滅したのである。
40 :
任務完了:04/08/23 15:38 ID:GZuTWR7v
BF「なぜ……か。優秀な漫画家を失いたくない…というのでは駄目かな。」
士郎「助けてもらってなんだが、貴方は今ひとつ信用できない。
ときたという人を助けた事といい、あの『鉄人』についても詳しかったり、謎が多すぎる。」
そう言われ、しばし黙り込むBFだったが、やがてこう言う。
BF「今はまだ話すべき時期ではない……、ただこれだけは言っておこう。」
BF「私は、既存のどの勢力とも異なる思惑をもって動いている。」
ときた「つまり俺を助けたのも、ゴッドハンドや、それに敵対する勢力とは無関係の行動だと?」
BF「そう言うことだ。全ては、私個人の意思だ。そして、それを恩に着る必要もない。
君を助けた事に関しては、依頼を果たしてもらった時点で貸し借りなしだ。」
そこで言葉を切ると、壁の方へと歩いていく。
BF「では、私はこれで失礼させてもらう。何分、これでも色々と忙しい身分でね。」
士郎「待って!まだ話は終わって…」
BF「医務室で治療中の長谷川君にもよろしく伝えておいてくれ。それと…」
士郎が何か言いかけるのを無視し、BFがときたに言う。
BF「彼に、こう伝えてくれ。『鉄人』の力は使う者によって、神にも悪魔にもなる…それを忘れるな、と。」
その言葉を最後に。
BFの姿は、忽然と艦橋から消滅した。まるで、瞬間移動でもしたかのように。
すると、次の瞬間、カタパルトのハッチが勝手に開き、一台のMSが飛び出し、暁の空へと消えていった。
41 :
任務完了:04/08/23 15:39 ID:GZuTWR7v
同時刻……
黒煙を吹き上げる真紅の妖花……ラフレシアの巨大な機体が、黄金の粒子に分解され消滅した。
ラフレシアが消えた空には、代わりにタキシードを着たサングラスの男が浮かんでいる。
蛇のような目を楽しそうに歪めながら、禁煙パイポをくわえる男は、安彦良和。
ゴッドハンドとして転生しながら、他のゴッドハンドに造反した、最凶の使徒。
安彦「おやおや、逃がしてしまいましたか。少し遊びが過ぎましたか。」
跡形もなく消滅した黒軍基地の跡地と、長谷川達が消えていった空を、交互に見比べながら安彦はひとりごちる。
あれだけの激闘を繰り広げたにもかかわらず、安彦の所作には疲れの欠片も見えず、
上等に仕立てられたタキシードにはホコリひとつついていない。
安彦「さて……、そろそろ来る頃ですか……。」
そう呟くと、それが合図であったかのように……
―――― キ イ イ イ イ イ イ イ イ ン !!!!
音速の壁を突き破る轟音を響かせながら、悪魔のような翼を広げた真紅の異形が、安彦の上空に出現する。
真ゲッター1……その機体が出現しただけで、大気が威圧感により震える。
安彦は、その到来を歓迎するかのように両手を広げながら、仰ぐようにして真ゲッター1を見上げる。
安彦「やはり……、貴方が来ましたか。お待ちしていましたよ、石川賢。」
石川「まるで最初っからワシが目当てだったみてえな言い方じゃのう。」
安彦「ええ、私を鎮圧する為にゴッドハンドが差し向けられるとすれば…、同じスーパーロボット乗りである貴方か、永井豪のどちらかだと思っていましたから。」
石川「賢しい若僧が……、このワシに勝てると本気で思うてか!」
安彦「その言葉……、そっくりそのままお返しいたしますよ。」
怒りと闘志で猛る石川と、歪んだ喜悦を隠そうともしない安彦が、睨み合う。
安彦「サンライズとダイナミックプロ……、決着をつけるとしましょうか!!」
石川「おおおおおおおおおおおおおおおっっ!!粉々に叩き潰してくれるわ、こわっぱぁ!!」
極限の域にまで達したスーパーロボット乗り同士の、激闘が今、幕を上げた!!
前スレ
>>537直後 周りとの兼ね合いで 時間は半端に遡る〜
「…………ようこそ!! 惑星カルバリへ!!! いやァ―――…こんな所まで、追いかけて来てくれるなんて!!!」
両手を広げ、嬉々として声を張り上げ歓迎の意を表す『冨樫』。
しかし晴れやかな笑顔は、すぐに曇ることになる。
「…………あれ?」
荒木の背後、地響きとともに迫る王蟲。
夜を埋める、原色のライト眩しい矢吹艦。
空を駆ける巨大な『大地』。後ろに続く極太の『水柱』。
周囲の、あまりといえばあまりの様相に、たらりと汗を一筋垂らし、心細げに、訊く。
「…………ここ、ひょっとして地球ですか?」
(……フフ……フフフ……僕は……ずっと……、君の『カゲ』と闘っていた、ってわけか……)
モノも言えず、プルプルと怒りを堪える荒木が、それでも黙って頷いた。
「………おわ」
確かに『カルバリ』はこんなところでは無かったが、地球だって……こんな奇天烈な場所であったろうか?
「なんか、凄いことになってますね」
感嘆の溜息を吐きながら、それでもどこか嬉しそうに見渡し、暫し
「……あ―――、ってことは、ひょっとして、スッポカしちゃったのか……?」と、意味不明の独り言と共に、頭を掻く。
そして、ようやく気付く。
荒木は自分に対し、なにかを怒っているようだ。
『心当たり』ありすぎだが、まずは
「…………えーと。……それで、その、私は、なんでここに?」
はたして聞いていいものか? 遠慮しいしい、だけれど他に相手もいない。
そんな冨樫に、荒木はまたも頭に血昇らせながら
新たに、得心いっていた。
『人の精神は時に幼少の時に受けた衝撃などが原因で【心】に亀裂が入り
その部分が年齢とともに別の【人格】に育っていくことがあるという
別の【人格】は青年の頃になるとハッキリと日常に現れ一方が他方を支配する 【 多 重 人 格 】 の 学 説 だ ! ! 』
『いいか僕の言ってることは推測なんかではない……
ドイツやイギリスでは顔や肉体までが別人のようになる人格の報告を聞いたことがあるし
実話を基にしたベストセラー【二十四人のビリー・ミリガン】ではボクサーのような筋肉を持つ人格をもレポートしている』
「……熱の篭った解説ありがたいですが、別にそんな……」
独り言が、洩れていたらしい。
心外そうに顔の前で手を振る冨樫に、ならどういうことなんだ! と地団太を踏む荒木。
そんな、ブリブリしてると、女神様が逃げる。
「……そうですね。なんかまた、ご迷惑おかけしたようですし、まあいいでしょう」
肩を竦め。
ふい、とその冨樫の影が『増えた』。
まるで『傍に現れ立つ者(スタンド)』のように。しかし、それにしては――――三つ。
「……えー……ご紹介します」
一人目。
「一番左の彼が『田所さん(仮名)』。作画担当で、性格は、自尊心が強く根性なし」
二人目。
「真ん中の彼が『今井さん(仮名)』。企画・ストーリー担当で、軽薄かつ節操なし」
三人目。
「最後に彼が『N星人』。38万光年彼方のテンテケ星からやって来た、漫画好きの宇宙人。
性格はおしゃべりでプライドが高く、陰謀を巡らすのが大好き。あと彼も一応、ストーリー担当です。
―――で、彼にはいくつかの『特技』があります。人様の『体』を勝手に使う。時々『狂う』。私が寝てる間に『仕事』してくれる。
鳥羽一郎の『兄弟舟』が好きで―――」
「……もういい」
概ね、理解できた。
「―――つまりこーゆー事かな? 君がその惑星カルバリとやらでグースカ寝ていたら。
その『N星人』やら言う、『自立型スタンド』モドキが君の体を勝手に使って地球に舞い戻り、勝手に色々仕組んだと?
―――だから君には、責も悪意も無いと?」
「……―――ちょっと、待って」
「…………」
「…………」
横を向き、なにやら『N星人』と目と目で通じ合い。テレパシー(?)の内容に「おお」とか「へえ」とか「なんと」とか驚いている。
やがて
「…………大体わかりました」
視線を戻し、ふう、と白く息を吐く。
「じゃあ―――そのまま伝えますよ。
『だって主様【ひとりぼっちじゃ寂しいよ、ああ、なんか地球で楽しそうな事してる、ちぇ】とか、泣きながら寝言ゆーんスもん
可哀想で見てられなかったんス。それに最初は、【本体】無しの一人で来たんスよ?
でもなんか、その内楽しくなってきちゃって……しかも色々やってる内に、収拾つかなく……
結局、勝手に【山崎】使ったり、【本体】も持って来ちゃったり……そこは反省してるっス。
……でもでも褒めてください! 【ルール】通り、(直接)人は殺しませんでした!
それどころか、なんだかんだで人助けまでしちゃいました!
……まあこの荒木の奴が主様との昔のことを根に持って、グダグダ絡んでくるんで。チョイと憂さ晴らしに遊んでやろうとしたら
アレヨアレヨと追い詰められちゃって、主様のお手を煩わすことになっちゃったんスけど……』」
うっ、と途中で冨樫が声を詰まらせる。
「…………なんたる忠義の男よ『N星人』!!! 私は今! 猛烈に感動しているよ!!!」
そして
ガバシ、と自分のスタンドと抱き合い、滂沱と涙を流す。
暑苦しい上、胡散臭く、一切信用ならない光景だった。
(そもそもキャラが変わっとる)
ごほんごほんと咳ばらいして、とりあえずそれをやめさせる。
「あ―――そのなんだな、大体のことは分かった」
それは重畳と、冨樫が、涙に暮れる目を振り返らせ、喜ぶ。
「しかしね、『聞いた』のなら知ってると思うが。僕が今君と戦ってるのは、八割方が『私怨』だ。言われんでも、自覚ある」
グー・チョキ・パーを示して告げる。
「そーゆーわけで、誤魔化すのは、無理だから。改めて勝負の続きするぞ」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ちなみに王蟲はすぐそこまで迫っていた。
鳥山が『防ぐ』のをやめたせいで。
そんな、ノンビリダベってていいのかな?
「…………………ねえ、荒木先生、もうご存知の筈でしょう? 私の行動原理には、『趣味』と『役柄』の二つしかないんです。
そして『世界に名を冠たる』ほどの『役柄』を振られた者には、他の凡百のザコキャラと違い、想像を絶する『強制力』が働く。
それにしちゃあ『干渉』の度合いが少ないと、褒められてもいいくらいなんじゃありませんか? 私」
暫しの、沈思。
「………僕が『気に喰わない』のは『過去』含め本来『君の役柄』なんだから『君』を恨むのはお門違いってか?
……………フン。もうこれ以上『騙される』のも嫌だからね。
言葉遊びに付き合う気もないが、まだ、言ってなかったことでもあるし、すこしだけ答えてやろう……
僕がムカムカ来てるのはな、君の『行動』とその『結果』―――――
『荒木飛呂彦で』『遊ばれた』という『はじまりの過去』だけが理由、じゃあない。
…………全てを知り、最も『領域』に近く、ひょっとしたら『世界』を変えるほどの『可能性』を、ただ一人持ちながら―――
唯々諾々と『運命』に翻弄されることすら楽しむ、君のその――――『ニヤニヤ笑いを隠したスマシ面』が
―――― 気 に 喰 わ な い ん だ ッ ッ !!!!!! 」
┣¨ ッ ォ ォ ォ ――――――――――――――――――――――― ン ッ ッ ッ !!!!!!!
二人の体がほぼ同時に、『ジャンケン・フォーム』のまま、ビル五階分ほどを飛び上がる。
そのすぐ下を、ギリギリで王蟲の荒波が往き過ぎた。
(ぁあ〜〜〜………荒木先生!!! 荒木先生ェ!!! 久しぶりだけどイイ!!! 相変わらずスゴクイイです!!!
………『その瞳(め)』!! 『その表情(かお)』!!! 『その心意気』!!!! ああ……今すぐあなたを……)
壊 し た い ……… ♪
ゾ ク ク ッ ッ !!!!!!
冨樫の面差。
目が合った荒木のみならず、さらに上空で、固唾を飲む鳥山・藤崎にも、悪寒と怖気と虫唾が走る。
(これが……『本気』……いや!! 『本物』の『冨樫義博』!!!!)
(今の……今の『冨樫』には、『危なさ』も『冷静さ』も『威圧感』も全てが、ある!!!
欠けていたものが、全て埋まったみたいな『完全さ』を感じるゾ!!!!!)
「………では、どっかの『お偉いさん方』と違い。
人を『オミソ』扱いせず、しつこく追って来てくれるステキな荒木先生に、ひとつ、ヒントをあげましょう」
ヘラヘラした半笑いの、語らい。
「―――荒木先生、『N星人がやったことだから』『冨樫に責任は無い』なんて、妙なフォローしてくださいましたが―――」
王蟲たちのたてる轟音、足音の中。なんの苦も無く届く声。
「そんなことは、ありません。『スタンド』とは精神のエネルギー、『本体』の『嗜好傾向』に著しい影響を受けるものでしょう?」
「(―――『スタンド』なのか?)―――つまり?」
「『N星人』がしたことは、『私』がしたこと―――『N星人』が愛するものは、『私』が愛しているものです」
うわは〜〜新スレに入っても絶好調だなあ冨樫
48 :
作者の都合により名無しです:04/08/24 19:57 ID:apZNhpgh
幽白の作者コメントは面白かったなあ。期待。
49 :
作者の都合により名無しです:04/08/24 20:48 ID:4MeH6bsB
同じく期待X100
50 :
作者の都合により名無しです:04/08/24 20:50 ID:4MeH6bsB
今だ!50ゲットオォォォォ!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ (´´
∧∧ ) (´⌒(´
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
 ̄ ̄ (´⌒(´⌒;;
ズザーーーーーッ
なんかN星人と冨樫はあんまりキャラが変わってないように思えるな。
まぁ、能力面ではダンチなんだろうが。
52 :
不気味な泡:04/08/25 00:52 ID:h03/Q6XD
>25
影船――。
乙の遺体が納まった棺桶の横で、澤井はまだ悲しみに沈んでいた。
生前の乙の友人であったという、“ある男”は、何処からともなく現れ、こう言った。
「いいか、澤井先生。僕は“不気味な泡”と呼ばれている。
少なくともそう言うタイトルの小説を書いてるし、僕自身もかなりそう思う」
澤井は、ただ聞いている。
「両親が困った時、命を懸けれるか?、と聞かれた時、『いいや』と答えた。
今でも、そう答えるかもしれない。
彼らのためには、僕の心は動かなかった」
澤井は、何も言わずに聞いている。
「だが、自動的な僕を、“生き返らせてくれたもののためには命を懸けれる”」
澤井は、身じろぎもせずに聞いている。
「乙もそうだったんだ。
自ら筆を折るまでに追い詰められていた乙は、君たちに出逢って生き返ったんだ。
僕にはわかる。
だから、彼に対して、あれこれ考えるな。
彼は、この数日、幸福だった」
澤井は、何も言わずに聞いている。何も言わずに聞いている。
「乙はすでに救われていたんだ」
“不気味な泡”は、いつの間にか消えていた。
まるで黎明が見せた幻であったかのように。
白み始めた空を眺めながら、澤井はつぶやく。
「乙君、もう一度……。もう一度、話がしたい。君と、そよ風の中で話がしたい」
マストの影では、岡野が静かに涙していた。
。・゚・(ノД`)・゚・。ウェザァァァ
ブギーキター!
>52
黒い水面に揺れながら、鹿児島湾を目指す影船。
友を失った悲しみに、深く沈み込んだ船上の空気は、暗い。
そんな空気を払拭するように、船体を突然の衝撃が揺るがせたのは、まさにそんな時だった。
ズ ダ ガ ン !!
「な、なんだぁ!?」
甲板の中央付近で、隕石でも激突したような轟音が響く。
その音に驚き、船室で仮眠をとっていた他の乗員も一斉に甲板へと駆け上がる。
敵襲!?
そんな嫌な予感が、全員の胸中をよぎる。
甲板に上がると、すでにそこにいた澤井と岡野が、激突音のした辺りにしゃがみこんでいた。
「おい、何があった!?」
本宮が、かがみこんでいる岡野に聞いた。
「そ…それが…」
困惑した様子で言い淀む岡野をどかすと、そこには1人の男が横たわっていた。
かなりの大男だ。ツラ魂がもの凄まじい。
しかも、全身ボロボロで血に染まった男の肉体は、古傷だらけだった。
「こいつは… 原 哲 夫 じゃねえか!!」
本宮が叫ぶと、全員が目を丸くした。
影船の甲板に、突如として降ってきたのは、15部409以降、行方不明だった原哲夫だったのだ。
「な…なんで原センセイがこんなとこに?」
「そ…そんなことより、ひどい傷だ、死んでるのか?」
澤井と岡野がハラハラした顔で呟く。すると、その声に反応したか――
「ごふ、し…死んじゃいないよ」
驚き、弾かれるように原の顔を覗き込むと、その片瞼がパチリと開いた。
「あ!!」
原の蘇生に、岡野たちが驚いた。
むくりと上体を起こした原が、しばし惚けたように周囲を見渡す。
そして、ボリボリと頭をかきながら、
「すまんが、ここはどこかね?」
そう言った。
………………………
「なるほど…俺が眠っている間に、そんなことがあったのか…」
原は手当てを受けながら、岡野に別府で起きた騒動のあらましを説明されていた。
その後で、突然出現したことの経緯について質問されたが、原にも何が起きたのか分からない。
事の真相は、というと。
原は、王欣太との一騎討ちの際に、人工衛星の墜落に巻き込まれ、瓦礫の下敷きになったまま気を失っていたのだ。
そこでキャノンボールによる乱闘が行われ、結果、キユの一撃によって瓦礫ごと転移させられたのだ。
そして現在、原はこの影船に飛ばされたというわけである。
だが、そんな事を、原本人も、本宮達も知る由もなかった。
説明を受けている間、本宮達が、顔を悲憤に歪めていることに、原は気付いた。
ふと、甲板に安置されている棺桶に目をやる。
「――――」
無言のまま、棺桶に向かって手を合わせる原。
乙との面識はない原だが、本宮達の悲しみを思い、哀悼の意をあらわしたのだ。
そんな原の行動が、本宮達には意外だった。
黄金五聖人の1人として、数え切れない武功を立て、悪鬼羅刹とも恐れられた原哲夫が、一介の作家の死を悼むとは。
彼らの胸を、再び悲しみが突き上げる。
そして、ずっと悄然としていた澤井が、遂に嗚咽を始めた。
「う…うわあああああ! 乙君〜〜〜!!」
黄色い物体が、身も世も無く号泣する。
本宮たちも必死に涙をこらえている。
そんな彼らを痛ましげに見ると、原がふらりと立ち上がった。
「ちょ…ちょっとあんた。まだ動いちゃだめだよ」
見かねた佐渡川が原を制止するが、
「ふ…俺の体はずいぶんと因果なものでな…死のうにもなかなか死ねぬようにできておる」
原は事も無げにそう言い、しっかりとした足どりで澤井へと歩み寄る。
澤井の前にどっかりと腰を下ろすと、その振動で澤井がハッと顔を上げた。
泣き腫らした視界には、手に持ったとっくりから酒を注いだ盃を、こちらに差し出している原の姿が映る。
「酔え。酔って涙を払え。“いくさ”に涙は禁物だ」
優しげにそう言って、微笑む。
その笑顔に、澤井は瞬間、悲しみを忘れた。心底、痺れるような笑顔だった。
しばし呆然としていた澤井だったが、おずおずと盃を受け取り、一拍を置いて一気に飲み干した。
「おう、いい飲みっぷりじゃ」
今度は満面の笑みを浮かべると、原が楽器を手に立ち上がった。
鼓から細い板を伸ばし、そこに三本の弦を張った、繊細な外見の楽器。
沖縄に伝わる伝統的な楽器、胡弓である。
呆気にとられている本宮達の前で、原は胡弓を静かに弾き始めた。
静かな夜の海に、澄んだ胡弓の調べが流れる。
美しい…なんと美しい音色だ まるで精霊をなぐさめるかのように…
胡弓の透明な音色に、彼らは聴き惚れた。
そして、原が大きな声で響かせる。
「皆の者、舞い踊れ! 別府で死んだ者はいない。彼らは海へ帰ったんだ、陽気に送ってやろうぜ!!」
「!!」
本宮達は、その言葉に打たれた。
皆、沈んでいた表情を振払い、精一杯の笑みを浮かべる。
「ようし、今夜は朝まで無礼講じゃあ!
お前ら、飲め! 歌え! 騒げ!
あの世に逝った連中が、寂しがらないようにな!!」
「おおおおおおおおおおっっ!!」
甲板は、たちまちのうちに大宴会の会場となった。
大酒を浴びるように呑み、大声で歌い、踊り、騒いだ。
それが彼らなりの、死者に対する精一杯の餞だった。
宴の喧噪が、悲しみを癒し、溶かしていく。
「なあ、川原」
「ん?」
横で静かに酒を呑んでいた川原に、本宮が話しかける。
「すげえ漢(おとこ)だな、あいつは」
感じ入ったように、呟く。それに対し、川原が応じる。
「ああ…怖い男だよ」
「俺たちが優勝するには、あいつを倒さなきゃならねえ」
「どうやら、当分の間、怠けることは出来そうにないな」
2人はそう言って笑うと、盃を呷る。
戦士たちよ、今は安らげ。
新たなる戦いは、まもなく始まる。 ←TO BE CONTINUED
慰労会で死に、おそらく最も悼まれている男→乙
慰労会で死に、おそらく最も悼まれてない男→ガンガンの竜使い
・・・おそるべしは山賢の「存在抹消」か(((( ;゜Д゜)))
『存在自体なかったこと』ってな普通にエグいやね。
しかし裏御伽ルートはどれも好きだなあ〜
(21部423)
* * * * * * * *
「今度こそまともに起きたか、アホボン」
「・・・またひとつ、夢を見ました。
“みんな”が笑顔で踊りながら、夜明け前の海や空に、
キラキラと消えていくんです。良い夢でした、本当に」
「さよけ・・・で、みんなとは?」
「たくさん、たくさんの・・・人たち・・・それで、
影船・・・川原センセの船を囲んで、お別れの宴を。みんなで」
「こっちの世界もぼちぼち朝やで。
お前の言い回しはいまいち掴めんわ、しかし」
「すみません・・・。でもこれでボクは安心して旅に出られます。
ボクの役目は岡野君や澤井君がやってくれてるし、
“あの人”がいれば本宮せんせーも安心だし。
岡村君たちもたぶん無事だし、疫病神が消えれば完璧だ。
熱も下がったし、ボクもう行きますね。色々お世話になりました、猿渡先生」
「どあほ。まだお前からたいした情報も得とらんわ、にわの」
都会の朝に響くすずめの鳴き声。
画太郎共々頭に盛大なこぶを作ったりして床に転がっていた、
裏御伽副将・にわのが一人ゆっくりと起き上がる。
例の『いやしのダンス』の恩恵にあずかったせいか朗らかな笑顔、
しかし瞳の最奥にある翳りはいつまでもそのままだった。
元チーム・タフ大将猿渡に、昨晩いろいろ助けてもらい、
そのまま彼の隠れ家で一晩過ごした形である。
偶然の出会いではあるが、彼らのいる≪街≫そのものは、
見えざる手で2人を引き寄せている・・・。
「そもそもお前の見た夢が吉兆だから仲間は安心だとか、
何とぼけた事抜かしとるんじゃ。所詮ユメやろが。
予言者か何かかワレ。それとも電波って奴か?ただの調子ええ夢想家か?」
先刻買い込んできた朝食のパンをちぎりながら悪態をつく猿渡。
「夢想家かぁ・・・そーかも。でもボクの夢っつーか中身って、
生まれのせいか色んなトコに繋がってるから、たぶん半分は本当なんですよ」
「また訳のわからん事を。どうでもええから早うメシ片せや」
「あうち、ごめんしゃい・・・」
しょんぼりしながらコンビニのあんぱんの袋を開けるにわの。
リアルで異次元に片足突っ込んだおちゃらけ漫画家の言う台詞を、
100%信じて耳を傾けてくれる人間など数えるほどしかいない。
その希少人種と信じている男と、
そういえば島で酒盛りの約束してたなと、
また参加できなかったけど仕方ないよね、などと考えていると。
「もぐもぐ、ようするに脳まで筋肉でできてんだろおめー」
「うあああっ!がたろーせんせーそれボクのー!」
隣で死んでたはずの画太郎にパンを奪われていた。よくある話である。
「しどい!何さ、けちんぼ先生!ずーずーずーったら!
パン盗るなら癒しのダンスをボクに伝授しやがるモン!」
「てめーには教えてやんねー! ク ソ し て 寝 ろ !!」
ま さ に 外 道 !! (煽り文)
そもそもなぜ画太郎が猿渡の隠れ家に現れたのかは
・・・誰も気にしていなかった。ギャグ作家に常識は通用しない。
そして壁を向いて泣きながら丸まって牛乳を飲む副将に、猿渡が問い掛ける。
「聞きたい事はようさんあるがな、
とりあえず・・・お前ら裏御伽の事や。
熱で忘れてるかも知れんで教えたる。お前がふらついとったこの街は、
≪10年前≫吹っ飛んだ区域に建てられたものや。『あの場所』へも程近い。
お前は最古参の幹部らしいな、あの日どないしてた?
・・・それともうひとつ、あの男の事。ワシに誘われチームを鞍替えしたはずが、
気づくと当たり前のように元の鞘に納まっていた男──川原。
あの仲間意識が皆無に近いはずの男を裏御伽に繋ぎ止めるものは何だ?
他にもいくつか、洗いざらい吐いてもらうで、副将」
副将と呼ばれた男は背中を猿渡に向けたままぽつりとしゃべる。
「ボクはもう副将なんかじゃないですよ。チーム辞めましたし。
彼らの事を根掘り葉掘りしゃべる義務も資格もありません」
「辞めた?本宮がそれを許したのか?どうせ勝手に飛び出して来たんやろ。
今頃心配してるんちゃうか?お前ガキと中身変わらんし」
言われて振り返ったにわのは「あははは」と軽快に笑うと。
「やだなー、そんなのしてるわけないじゃないですかー。
ちゃんとメモに『捜さないでください』って書いて出てきましたしぃー」
「・・・・・・」
「ど、どーしたんですか猿渡せんせー!鳩がのどに豆詰まらせたよーな顔してっ!」
「・・・・・・あほ」
「・・・ま、道で追々聞くとするかの。そろそろ行くで」
「あのー、行くってどこにです?」
「ボケも大概にしいや。この街に来てする事なんざ、ひとつしかないわ」
はっとしたにわのは猿渡の、一本傷が疾った顔をまじまじと見つめる。
「思い出したな。言うたやろ、墓参りや。
集英社の旧社屋跡に建った記念碑や。とっとと準備せえ、副将」
訂正
ずーずーずー→図々しい
どんな間違いだよ副将!ワァァン
よくわからんがワラタ
(
>>31)
「只今より当宿泊施設【松椿】は矢吹軍の統制下に置かれます!
漫画家及び宿の関係者はこれより我々の指示に従い行動するように!」
男の無遠慮な声が、ノックアップの突き上げがとどめとなって全半壊した、
松椿別府別館の跡地にこだまする。やがて軍服姿の屈強な集団が、
それぞれ武装したまま軍靴で芝生や畳やフローリングを踏み荒らす。
「矢吹軍の方々!怪我人の搬送をお願いします!
今の“地震”で脳を負傷した重症者の様態が悪化したんです!」
山田医師の悲痛な叫びに反応した軍医たちが、最新式の医療カプセルを運んできた。
「なんかジェットコースターに乗った気分だったじゃん」
ぐったりとした余湖が斧を片手に地面にへたり込んでいる。
松椿は別府の端にあり、宿に残っていた人間の多くは、別府浮上時に、
矢吹艦と縦にすれ違う様を超至近距離で目撃した。それこそ漫画の世界だった。
「これが『街が飛ぶ』って事かよ。へっ、とんでもねえ見世物だぜ」
女湯跡の隣にある竹薮に待機中の蟲船レダルーバに向かって真倉が呟く。
そこへドタドタと駆けつける軍人たち。宿の隅々まで制圧するつもりだ。
真倉はふと、ある事に気づき顔面蒼白になる。
「まずい!事情聴取とかで長時間拘束されたら、岡野の所に帰れねえ。
俺は本体を持たねえんだぜ、朝日で成仏しかねん。
“やまと”に戻るぜ!他の生身連中は危ねえからここにいな。
よしレダルーバ、動け!上昇しろ!」
がばっと立ち上がると、真倉は学ランを翻して蟲の足元に走り出した。
「おい待てそこのおっさん顔!止まらんと撃つぞ!」
矢吹軍の制止を振り切り、真倉は蟲の巨大な肢にしがみつく。
発砲の許可が下り、真倉に向かって銃弾の雨が降る──が、
「な!?全弾身体をすり抜ける!?」
「甘めーな、幽霊殺りたきゃお祓い済の弾でも持って来いや」
わはははと豪快に笑う真倉を連れ蟲船は浮かび上がり、やがて満月の夜に消えた。
67 :
☆おしらせ:04/08/26 20:29 ID:DhF+A8IQ
68 :
キジムナー:04/08/27 00:40 ID:OnF1d4SW
>>35 「七人の悪魔超人…?聞いた事もない名だな…」
訝るように、『金票』がその単語を舌先で転がす。
「だが、ここにいるということは、少なくとも味方ではないな。…矢吹の部下か?」
返ってきたのは、血腥い笑みだ。
「クク…矢吹なんざ知らないな。俺はただ強いヤツらが集まってくれればそれでいい!『こいつ』を狙ってな!!」
キジムナーが、人間の子供のものらしき『右腕』を弄びながら、言う。
それを見た『金票』の目の色が変わる。
相手を探るような目から、怒りと殺気に彩られた目へと。
「貴様……子供を殺すのか」
『金票』の中で殺気が、ぎりり、と跳ねた。
「へえ、いい目になったな。それでこそ、俺も心置きなく『合戦場』を堪能できる」
『金票』の変化を見て取ったキジムナーが、面白そうにほくそ笑む。
将軍によって分断された、小畑健の『右腕』。
それを見て妙な勘違いをしたらしいが、いずれにせよ相手が本気になった事は、キジムナーを満足させたらしい。
「合戦場…だと?」
キジムナーがぽつりと漏らした単語を、『金票』はまた舌に乗せる。
今度の単語は、聞き覚えがあった。
<合戦場>
大正時代まで実際に沖縄に存在した、戦闘開放区の呼び名。
首里城近くの遊廓の中、人気のない辻などに腕に覚えのある武人が集まって『掛け試し』(実戦)を行っていた。
名のり合って戦うこともあれば、見ず知らず同士がすれちがいざまに殴りかかることもあった。
続出する死者の数が毒蛇(ハブ)の被害者数を超えるに至り、ついに警察の手が入り、廃止に追い込まれたという。
69 :
キジムナー:04/08/27 00:42 ID:OnF1d4SW
「そして…キジムナーとは、沖縄に古来より伝わる妖(バケモノ)の名…」
「そう…南王手は、格闘技が牙を失った現代も、脈々と牙を研ぎ続けている流派だ」
互いにそう言い合うと、同時に構えをとった。
『金票』は、前後に大きく足を開いてスタンスを広く取り、右掌を腰に、左掌を前に突き出している。
中国拳法、形意拳の構えだ。
対するキジムナーは、左半身の状態で姿勢を低くし、飛びかかる寸前の獣ように全身を撓める。
右拳を胸の前に引きつけ、左拳を裏拳を放つ直前のような形で前方に緩く突き出す。
内歩進(ナイファンチ)と呼ばれる、古流空手の伝統的な構え。
両者の肉体からは、陽炎のような殺気がほとばしっていた。
凄絶な睨み合い。
2人を包み込むように、血腥い風が吹いた。
熱いくせに寒気すら感じさせる風。
地方によっては作物を枯らす、これを『南風』(はえ)と呼ぶ。
しかし、これは人を枯らす風!
キジムナーの体から吹く、『破壊』(はえ)の風!!
南風が勢いを増した瞬間、キジムナーは仕掛けていた。
踏み込みで割れ散った床の破片を置き去りに、猛烈な迅さの突進から、裏拳を放つ。
『金票』が左半身になって躱したところを、迎え撃つように死神の鎌のごとき手刀が首筋を襲う。
鋭利に切り裂かれた毛髪が、疾風のような風圧に散る。
身を沈めた状態から、『金票』が左肘を突き上げる。
キジムナーがのけぞってやり過ごすや、素早く右半身からの中段追い突き。
旋風が巻くように、キジムナーが『金票』の側面に移動していた。尋常ではない迅さ。
死角からの肘打ちを飛び退いて躱す『金票』。
寸前まで彼の背後に隠れていた計器が、鉄のような肘で粉々に砕け飛ぶ。
キジムナーが振り返りざまに地を蹴るのと、『金票』が突っかけたのは、同時だ。
繰り広げられる瞬撃の攻防。
正拳。
平拳。
一本拳(コーサー)。
貫手。
手刀。
70 :
キジムナー:04/08/27 00:44 ID:OnF1d4SW
掌底。
裏拳。
肘。
ありとあらゆる手技の応酬が続く。
古流の空手は、迅速確実に敵を倒すことを追求したため、不安定な蹴り技は少なく、手技が主流。
そして、急所をより速く捉えるため、拳より間合いの近い指先を異様なまでに鍛えてある。
まさしく、一撃一撃が、刃物と同じ。
それに対抗するには、『金票』もまた手技で迎え撃つしかなかった。
申し合わせたように、両者またしても同時のタイミングで後方に飛び退き、互いの制空圏から離れる。
「ほう…俺の攻撃を全部迎撃…しかも、ちゃんと一撃いれるとは…さすがだぜ」
切れた唇の端から血を垂らしながら、キジムナーが笑った。
「俺も驚いたよ。若いの……やるなァ」
『金票』が、挑発的に太い笑みを見せる。
その右指が、左肘にあるツマミを捻った。
がちり。
機械的な異音がして、手首の外側から鮫の歯を思わせる凶悪な刃が引き出された。
聖ジョルジュの剣。
「悪いが、これ以上、お前さんとの遊びに付き合っている暇はないんでな。…次で閉幕とさせてもらうよ」
左腕の剣を構える、『金票』の殺気が増していく。
それを涼風のように受け流しながら、キジムナーが不敵に言い放った。
「笑止…ならば俺も少しだけ見せてやるよ」
そのとき、キジムナーの構えが変化していた。
肉食獣のように撓めた体を、静かに起こす。
両肘をゆるく曲げた状態で、両掌を前にかざした。
キジムナーは両目を閉じていたが、鉢巻に描かれた第三の目が、『金票』を捉えて話さない。
そのように感じる、戦慄。
妖怪が、呟く。
「空手の奥深さってヤツをな」
71 :
☆おしらせ:04/08/28 13:20 ID:zwnmFFPn
>>67は(現時点では)専用ブラウザ非対応だと思われます。
お使いのブラウザによっては大丈夫かもしれませんが、
ログ再取得等ができない場合も考えられますのでご注意ください。
kageでは閲覧可ですた。<ライブドアしたらば
(
>>37)
無礼ド内でひっそりと始まった漫画家たちの会議。
とりあえず最初は各陣営の状況報告からスタート。
「俺ら地球防衛軍ってのの隊長に拾われていつの間にかここへ来てたんだ」と岡村。
「松沢艦長を捜す隊と艦を守る隊に分かれてそれぞれ役目を果たしたのさ」と巻来。
「その間俺はゆで達と鬼岩城に乗り込み安西や城平は松椿に戻っていたと」とカムイ。
「当時松椿では“騒動”が起きておりその際に一部チームと敵対関係になった」と城平。
「私や皆川君を追い詰めて暴走させたのはチャンピオンの山本という男よ」と留美子。
「鬼岩城での俺の華麗なる戦闘姿を留美子さんに見せたかったなぁマジで」と椎名。
「別ルートで市街を回ったが市民が暴動を起こしたり鎧兵士が出現したな」と村枝。
「ガキ2人がドサクサに迷子ったり巨大イモムシが出たり怪獣映画よのう」と金田一。
「最後は樋口審判と森と無礼ドが同調して王蟲の暴走を止めたみたいです」と水野。
「ボクはよくわからないうちに松椿で助けられてなぜかここにいるようで」と富沢。
とってつけた発言に一同、ちょっと苦笑い。
カムイはふむふむと頷きながらボードにこまごまと書き込んでゆく。
お茶を飲み飲み、のんびりムードで会議は進行するのであった。
岡村 「ところでなんでタマネギなんざ食ってんだ姉ちゃん?」
金田一「・・・中の人が大嫌いらしい、ふたりとも(笑)」
岡村 「???」
(
>>58 >>63)
♪〜 ♪〜 (ピッ)
「? 誰だ?」
『だ、誰だって言われましても・・・』
「非通知か。用がないなら切る」
『わー!だからそれボクのケータイなんですってばぁ!』
「ならそう言えよ」
『なんて無愛想な・・・あのですね、ボクどっかでそれ落としちゃいまして、
誰か親切な人が拾ってたらケーサツに届けてもらおうかなって思って連絡を』
「その必要はないぜ」
『ハニャ?』
「お前さんが帰ってくれば済むことだ・・・にわの」
『げ!・・・川原せんせー、ケータイ触れるようになったのぉ?』
「げ、とは失礼な奴だな。それに携帯ぐらい安い用だ」
『うそだぁ〜(苦笑)さては拾って色々いじりたがりな年頃ですかぁ?スケベー』
「こいつを海に落としていいなら話を続けてもいいぞ」
『冗談だってばー!・・・って海ぃ?今どこにいるのさセンセ』
「だから海だ。影船の甲板にいる。おっさんや他の連中はそこらで酔いつぶれてるぜ」
『・・・ああ、やっぱホントの夢だったのかぁ』
「何の話だ?」
『あ、いやーこっちゃのハナシィ。酒盛りね。それよかみんな元気してる?
ニュースでは色々大騒ぎになってるモン。てっきり矢吹艦に戻ってると思ってたッス』
「・・・俺とあんたが乙を見つけた、狭い鉄の建物を覚えているか?」
『・・・うん。センセはそこに残って裏御伽のみんなを守ってくれたんだよね』
「その件については長くなるから後だ。
ともかく、その建物は潜水艦でな。≪やまと≫という名の原子力潜水艦だったわけだ」
『や、やまと!それって・・・』
「知っているのか。俺はその名をもう1人、お前さんが岡村と巻来の身柄を預けた、
防衛軍の隊長だかいうヒゲのおっさんの口から聞いた。
そいつが≪やまと≫の名を見たのは松椿ロビーにあったFAX用紙だそうだ」
『・・・。お、岡村クン達は元気・・・?』
「知らねえよ。又聞きでは、岡村の奴はすこぶる元気らしいがな。
・・・街で遭った時にな、強者のエキスだっけか?酒漬けは勘弁だってあいつ怒ってたぜ」
『・・・2人に会ったら、ボクがごめんって言ってたって伝えて・・・』
「駄目だ、てめえで言え。そもそも道草が長すぎる。用件は済ませたんだろうな?」
『あ、う、うん。そっちは大丈夫。
荒木せんせーに逢えました。い、今は色々あって、東京で猿渡先生に世話になってまふ』
「なんで東京なんかにいるんだ」
『さ、さあ・・・ボクもぼんやりしてて。いつの間にかとしか。
朝ごはん食べて、もうひとりと3人でちょっと出かけてる途中だス。
公衆電話を見っけたんで2人には先に行ってもらいました。
大変だったモン〜?猿渡先生ったら“川原は何考えてるのかちっともわからん”って。
じゃー本人に聞いてみてくださいよーっつーたらまた殴られちゃいましたトホー』
「そいつはよかったな。で、いつ頃帰るんだ?」
『・・・ところでなんでセンセだけ起きてるの?トレーニング?』
「あからさまに逸らすなよ。・・・ま、他の連中が飲みすぎただけだろ。
船の上は酔いが回りやすいしな。関係ねえがあんたはしばらく禁酒だからな」
『わかってますぅー(汗)いつまた変身するかと思うと怖くてよー飲めまへん』
「それはないと思うが・・・ともかく昼には帰れよ、
今日は準決勝だってのを忘れちゃあいねえか?まったく」
『あ、いや、そのぉ〜・・・あ、松椿に寄ってない?あっちに荷物置いてあるんだけどさ』
「そっちは真倉が行ってるぜ。じきに合流するだろうが、それがどうした?」
『う、うん・・・それなら大丈夫かな。じゃあボクはこれで』
「――≪リプレイヤー≫」
『!?』
「≪やまと≫の情報をFAXで届けたのはこいつだろ?あんたの知り合いだ。
この携帯の着信や送信履歴にもそれらしき名がある。時間もFAXとほぼ同じ頃・・・だな」
『・・・そんなトコまで見れるよーになりましたかセンセ』
「あれは別府に岩でできた巨人型の城が乗り上げてきて、変な声が“漫画家皆殺し”を、
ぶち上げた辺りの時間帯だ。よく憶えている・・・さ」
『リプレイヤーの名前なんて1回出しただけじゃん。記憶力よすぎですー』
「まあ、な。詳しい話は省くが、恐らく≪やまと≫の艦長とも繋がりがあるぜ、そいつ」
『かんちょー?ええっと、本宮センセのお友だちだっけ。先日試合場で見かけたよね〜』
「計ったように別府に現れ、おっさんの危機を救えたのもその線だろう。
で、そいつは俺たちに宣言したよ。【未来は変わる、我々が変える】ってな」
『・・・・・・!! 無理だ、そんなのっ・・・!!』
「ああ、無理かもしれん。
だがあの男は本気だった。そして・・・恐ろしい男だった」
『! 川原センセがそんなセリフ言うなんて・・・』
「あれは覚悟を決めた男の目だ。しかしその奥を読み切る事はできなかった。
・・・わかっている、あんただって本気で未来を変えようとしていたのはな。
結果はどうあれ、な。そいつがあんたと違う部分といえば・・・、
精神の甘さが欠片ほども見当たらなかった、それぐらいかね」
『甘さですかー・・・』
「ああ、お前さんはわかりやすすぎるからな。
・・・あの男がなぜ未来に挑むのか、俺にもわからん。だがあんたのは目を見ればわかる」
『え?』
「・・・そんなに10年前、アシ達と一緒に死ねなかったのが心残りなのかい?」
『・・・なんでわかっちゃうかなー。誰にも言ってないのになー』
「そして10年前できなかった事・・・人助けを今やって、満足して死にたいんだろう?」
『・・・ボクは役立たずだから。いつも誰かに助けてもらってばかりだから。
あの日も本宮せんせーに・・・昨日はあなたに。みんなに迷惑かけてばっかりで。
ずーっといなくなるタイミングを捜してた。
でもなかなか切り出せなくてズルズルと10年。だってボク何も恩返しできてないし。
昨日だって・・・でもね、ボクにはこの世界で死ぬ資格もない事に気づいたんだ。
ボクはあの日、助けられちゃいけなかった。
あの真っ白な、遠くへ突き抜ける光の中に消えなくちゃいけなかったんだ』
「・・・話がずいぶん飛躍してきたな。
とにかくいちいち死にたいなどと思うな。あんたは今も生きているんだ。
泣く奴がいるうちは、よした方がいい」
『あはは、いないってばーそんな人〜。だってボクだよ?
帰る場所だってどこかもわからない迷子さんだよ?みんなすぐ忘れちゃうよー』
「帰る場所がわからない・・・だと?馬鹿を言うな・・・」
『え、だってボクはこの時空世界の人間じゃあ』
「黙れ」
『・・・』
「・・・」
『・・・単純な、話なんだ』
「・・・」
『あの日のボクや、残された人たちみたいな思いを背負った人間を、
これ以上増やしてたまるかーって、それだけなんだ・・・』
「・・・」
『たった、たったそれだけの事すらままならないなんて。
おかしいよね。でも、どっちがおかしいのかボクにはもう、わからないんだ。
たぶんボクの方が変なんだよね。だから何をやってもダメなんだよ。
この世の中と、ボクの思いなんか、比べる方が間違ってる・・・』
「戦争で荒み、殺し合い、弱き者が泣いてばかりの世界が正しい・・・と?」
『きっと・・・そうだ・・・』
「・・・この世界の真実、なんてのが」
『うん?』
「目に見える形で存在する、かも知れないとしたら・・・どうする?」
『・・・へ?何、それ?』
「俺は別段興味はねえんだがな。
なんでも俺はその、真理・・・いや【真書】だったかな。
手を伸ばせば届く位置にいるらしい。名前から言って本か何かだろう。
よくわからんがもしも、そいつにあんたの疑問の答えが載っているとしたら、
どうする?読んでみたいと思うか?・・・実際にあるかどうかも疑わしいがな」
『・・・すごいねえ、そんなのに近いなんて。さすがせんせー』
「感心してないで答えを出せ。俺自身は実際どうでもいいんだ」
『・・・わあああ!気になるなあ、夢みたいな話だなあー!
ほら昨日話したよね、捜せばみんなが幸せになれる世界もあるんじゃないかって!
ボク時々考えるんだ、ボクら漫画家が戦争なんかせずにごく普通に原稿描いてて、
みんなに笑って読んでもらえてボクらもそれが幸せだーって世界が存在するって!
その本に書いてあるかなあ?書いてあったらこの世界のみんなも、
それ読んで戦争なんかバカバカしーってやめてくれるかなあ!?ねーねー』
「耳、痛え」
『わぁごめん〜!ついコーフンしちまったい。
先生はそれを手に入れてきてくれるんだ、嬉しいなあ、ボクなんて感謝すれば』
「条件がある」
『な、なによ』
「ひとりで勝手に行動を決めるな。大概ろくな事にならないと気づいたろう。
もっと自分の周りを信じろ、持たなくてもいい荷を抱え込むな。わかったな」
『・・・ごめん』
「別の言葉に言いなおせ。聞き飽きた。それと俺はひとりじゃ捜しには行かないぜ。
そいつが要るのは、あんただろ。たとえどんな辛い言葉が書かれていようと、
それを・・・【真理】を求め、【真書】を読みたがっているのはあんただ。それを忘れるな」
『・・・あ、ありが、とぉ。や、約束するよ、だから』
「ああ、俺も約束しよう。だからいちいち泣くんじゃねえぞ鬱陶しい。
それと死にたがりもやめだ。敵が来ても俺が殺させねえから覚悟しろ」
『ぶっ、物騒な物言いだなー相変わらずぅ』
「笑ったな。あんたは、それでいい」
『それボクもさっき別の人に聞いたしぃー、あははは』
「ところで電話代はいいのか?東京は遠いだろう」
『んーそろそろヤバイかな?じゃあボク今から用事を済ま――――― ・・・ ・・・ (プツッ)』
「おい、どうした?」
「・・・ったく、忙しない奴だ。ちゃんと昼には帰るんだろうな・・・?」
(´-`).。oO(携帯料金は距離と関係なかったかな。まあいいや、川原さんだし)
にわのは試合までに帰るだろうから(というかいい加減帰れ)、猿渡は単独でキユドライブの謎を追う事になるのだろうか
ところで東京といえば、ライオンさんも向かってなかったっけ
相変わらずらぶらぶですなぁ、この二人w
冗談は置いといて、伏線収集乙。
あと残った伏線は第3の神器くらいかな?
それと別府にいったもうひとりの七騎士もね>第3の神器
第3の神器 じゃねえ伏線だ伏線w
七騎士はみな軍団指揮者らしいんでおのずと限られてくる…かな?
>46
ぉおおおぉぉぉおおぉぉぉおおおおおぉおぉぉおおぉおぉぉおおぉおぉおおおぉおおぉぉぉぉおおおぉおぉおぉおおおおぉ
おぉおおおぉおぉぉぉぉおおぉぉぉおおおぉおおおおおぉおおぉおおおおぉおおおおぉおぉぉぉぉおぉおぉぉぉおおおおお
おぉぉぉおおおぉぉぉおぉぉおおおおおおおおぉぉぉおぉぉおおぉぉぉおおぉぉおおぉおぉおぉぉぉおおぉぉおぉおぉおぉ
ぉぉぉおぉぉおおぉおおおぉぉぉおおおぉおぉおおぉおぉおおぉおおおぉおおおぉぉぉおおおおおぉおおおぉおおぉおぉお
「 負 か し て や る ぞ ッ !!! ジ ャ ア ――――――――― ン ケ ン ッ !!!!!」
シ バ ッ !!! バ バ ッ !!!!
「「 ホ イ ッ !!! 」」
「「 ―――――― ホ イ ッ !!! 」」
「「 ――――― ホ イ ッ !!! 」」
「「 ―――― ホ イ ッ !!! 」」
「「 ――― ホ イ ッ !!! 」」
…………………………………………………………………………………
(……………か……か、勝てない!!!)
十数回の『あいこ』の後、その天文学的『確率』と、さも当然と言わんばかりの『冨樫』の態度に
荒木は、空で衝撃を受けたように仰け反った。
「………ん―――せっかちですね。荒木先生」
最後の『あいこ』の形、自らの『グー』を見つめ、嘆息する冨樫。
「大体―――次の『かけ声』は私でしょう? 何か―――『予定』でもアルンデスカー?」
マネキンのように固い表情。首を不自然に傾げる。
「ぐっ……」
ムカつく。
ムカつくが奴の言う通りだ。
(何故だ!? …………何故『絶頂』である筈の僕が勝てない……?
…………いや!!! それ以前に、『有利』である筈の僕が『飲まれ』軽々に勝負に走る『理由』は………なんだッ!?)
「……そう―――不思議がる事もないでしょう? まあ、私が解説するまでもなく、すぐに『理解』が届きますよ……」
――――その、通りだった。
「…………………こ、これは…………幻覚か?」
『荒木』と『冨樫』を結ぶアカイイト。
張り詰めたその上で、ナス色のお姫様とヒキガエルの子供が、くるくるとワルツを回っている。
「……なにが、見えます?」
そのままをなぞり、言う。
「……そう、それが『勝負のアヤ』が具現化した……まあ、言ってみれば『妖精さん』です」
フフフ、と夢見る瞳を、宙に彷徨わす。
「今、私達二人の間で、『彼女』と『彼』はどちらに『落ちよう』か。新居の『新しい冷蔵庫』を選ぶように、迷い――――」
「―――――戯言は、もう沢山だと言ったろうッッ!!!!」
続きを断たれてびっくり。しかしやがて、傷ついた思春期の少年のように涙ぐむ。
「フェ、フェアプレー精神を発揮しただけなのに」
「…………くっくっくっ……ふふふ……なに……が。…………………………そうか……お前は………こうして僕の『女神』が……
なくなるまで……時間稼ぎをするつもりなんだな……見える………見えるぞ……ほくそ笑んでやがるな……そうはいくものか……」
ストレスと―――自重と、なによりアンバランスなまでの『強さ』をスカされた『態勢』の狂いにより
ついには、ぶつぶつと言い始めてしまう荒木。
しかし女性というものは、荒木のようなカコイイ男のそういった状態に
むしろ母性本能なんかを感じたりなんかしちゃったりするもので
「もう、しようのない人ね(はあと)」風に、背中からしな垂れかかる豪奢なドレスの『女神』が、冨樫の『目』にしっかりと映る。
(あーあ……いや、単にこのままじゃ勝負付きませんよ、と、それだけなのだが……)
実際『器』や『過去』『設定補正』や『運気』『伏線』に『人気』『お約束』や――――――
―――――つまり、『ジャンケン』の勝敗に必要な、全ての総和が、コンマ一ミリと違わず均しくなってしまったのだ。
(ポッと出の『私』が、今更『策』なんぞを巡らせれば、大概『嫌われる』しなァ……)
先の見えない『困った感』に、しかし同時に、ある考えが入り混じる。
(…………『ジャンケン・ルール』なんぞ放り出して。互いのあらん限りを尽くし、『今』戦えば、どうなるかな?)
勝敗そのものは単純だ。
―――『ストップ高』の自分が、勝つだろう。
荒木は純粋に『主人公』とは呼べないが、それでも『残念ながら』成長株。
真の興味は、そこではない。
(一時的なインフレーション、『だけ』じゃないな、これは。意図的で無いとはいえ、すこし『接触』しすぎた、ということか……?)
様々な漫画や小説・アニメにおける『異能力設定』を例に取れば分かる通り
『端末』であり『向こう側』そのものである『自分』は、『ほんのすこし、相手の網膜に映る』だけでも、『力』を与えてしまう存在だ。
(――――あぁ……成長イベントなのかな?)
確かに、この荒木飛呂彦をを成長させるとなると―――
「さあやるぞ、いまやるぞ、すぐやるぞ」
そして、ウズウズと『ジャンケン・フォーム』で待つ荒木の背後に
黒を型抜く、白く巨きな――――――
「……そうか」
冨樫が、ぽん、と手を打つ。
「―――――どうやら私の勝ちのようです。荒木先生」
ジャンケン千日戦争ドキドキ
前スレ509 20部スレ355
えなり「車田先生……これからどうなるんでしょう?」
車田「……おそらくはトーナメント再開と言うことになるだろうが……。」
次の瞬間、車田がえなりの体を突き飛ばす。
えなり「なんですか!いきなり車田せんせ……。」
次の瞬間、えなりの目に入ったのは、車田の腕に突き刺さっている槍であった。
宮下「ほう……運が良かったな小僧……。」
そう言って、禿頭の巨体がそう叫ぶ。
えなり「宮下先生……一体どうしたんですか!?」
その問いには宮下は答えず、独特の構えを取る。
宮下「 千 歩 気 功 拳 !!(気はこの字に有らず)」
次の瞬間、数百の気の拳が宮下の腕からほとばしり、えなりと車田めがけて迸る。
えなり「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
車田「 ク リ ス タ ル ・ ウ ォ ー ル ! ! 」
二人の前に光の壁が完成し、宮下の攻撃を受け止める。
車田「えなり君少し下がってろ!次の攻撃が来るぞ!」
その次の瞬間、車田に向かって斧が投げつけられる。
車田「はァッ!」
まさに聖剣のごとき一撃でそれを叩き落す車田。
そしてにらみ合いが始まる。
その雰囲気に呑まれ、えなりが戦慄する。
えなり(まさかこれは………千日戦争(サウザンドウォーズ)?)
その言葉を思いつき、えなりは凍りついた。
千日戦争(せんにちせんそう/サウザンドウォーズ)──
古代中国に伝承として伝わる、シルクロードより伝えられた逸話より生まれた。
現在ではギリシアと呼ばれる地域の某所に世界中から奴隷の子が神殿に集められ、
特に美しい男児は神に仕える者の下半身の世話をする施淫徒(せいんと)として、
多くの寺院で強制労働をさせられていた。ある日施淫徒の一人で中国人の少年・
藍雄吏(あい・おり)が奴隷たちを裏で束ねて一斉蜂起し神殿に放火して回った。
しかし当時の為政者の怒りを買い彼らは火あぶりの刑に処される事となった。
処刑当日、藍雄吏は神官や見物者たちに「我ら死すとも身を焼く劫火は千日消えず、
やがて他国よりの侵略者の道標となり大地は血で蹂躪されるであろう」と叫び、
真っ先に火刑となったが、この日より丁度千日後、彼の言葉は現実となったという。
千日燃えた怒りの炎が転じて「人の噂は七十五日、人の怨みは千日続く」
と揶揄されるようになり、やがて言葉の前半のみが現在まで残るようになる。
なお千駄ヶ谷という地名は故事にならい、千日間谷に篭って焚き木を燃やし、
他者を呪おうとして山火事で死んだ愚か者の話から来ているとの説もある。
民明書房刊「お釈迦様でも草津の湯でも治らない人の業」より
えなり 「ぜんっぜん違うし!!!」
そう千日戦争。
平たく言えば両者の戦力が全く均衡しておりどちらも動けない状態の事。
両者どちらかが折れれば折れた方は損害が免れないため、意地でも引かない事が多い。
この状況を一瞬で打破できるのは第三者のみ!
えなりがんばれ超がんばれ。
続く!?
千日戦争・・・
俺は何故かモアイくんではじめて知ったな。
(
>>37 >>66 >>73)
「ひとやすみしてきますね・・・」
無礼ド中階層。負傷者の治療を一通り終えた山田は、
少々疲れを感じたので周りに詫びつつ客室から退出した。
気分転換に静かな場所で本でも読もうと思ったのだ。だが、
廊下にもたれ手荷物から文庫を取り出し読み始めるもすぐに閉じてしまう。
(おかしいな・・・ちっとも入り込めない)
自分の身に起きた“異常事態”に戸惑いを隠せぬまま丸窓の外を覗く。
海に浮かぶ眼下の森は火災も収まり、漆黒の闇に溶け込もうとしている。
艦内に幽かに残る惨劇の空気が彼女の脊髄に微妙な電流を流していた。
ふと、山田が廊下の先を凝視する。
そこには一匹のコウモリ――妖力でしつらえたコウモリ型の邪気――が羽ばたいていた。
コウモリは二通の手紙を足に挟んでいる。
山田が自然な動作でそれを受け取ると、コウモリは黒い霧となって散った。
(平野様から私宛にですか。新しい指令でしょうか)
手紙の片方、封が開いている方の中身を取り出し、便せんに目を通す。
読み終えた彼女は軽く首を傾げるも、即座に封筒ごとそれをライターの火で焼き捨てた。
もう一方の手紙――こちらは高級な封筒に、丁寧にも封蝋(シーリングワックス)で閉じてある――
を文庫とは別の本に挟むと、山田は表情を消して廊下の奥へ歩いていった。
会議室では込み入った話が大分進んでいる。
「・・・あなた達の仲間を弄んだいがらしを討ち滅ぼしたとて、
彼らが戻ってくるわけではない。だからせめて俺は彼らを忘れない。
彼らの魂はあの時確かに俺の中にあった。そして天に還した・・・」
巻来が沈痛な面持ちで無礼ド内での戦況を報告する。
椎名が悔しげにほぞをかみ、留美子が俯きながら首を何度も横に振る。
斬殺された多くのサンデー作家たちを弔った巻来に対しては、
今はただ感謝の気持ちを伝えるのが精一杯だった。
「・・・次に我々全員が顔を合わせるのは、決勝トーナメント会場か。
大会パンフレットによると昼過ぎに決勝の組み合わせ抽選会があるらしいな。
まあすぐコロコロ構成や参加チームやルールが変わるからアテにはならないが」
雑談を経てまとめに入るカムイ議長。
「この艦を出た時、我々はライバル同士に戻るだろう。
我々は敵勢力の姦計で一部勢力との関係修復が非常に困難となった。
そこを矢吹に突かれ『ガンガンチームを敗退させた者に対する同チームの生殺与奪権の譲渡』
などと・・・元々この大会に登録した際に≪殺し合いOK≫という書類を書かされているがな。
チーム数を絞る過程でどれほどの血が流されたか、矢吹はそれを知っているはずだ」
一息つき、オレンジジュースを口に含む。
「・・・そう、もとより覚悟はできている。
かつて矢吹政権のもと、なあなあで下働きさせられていた不遇のエニックス漫画家が、
総員退職したのち、この魍魎跋扈のトーナメントに参加した意味はなんだ?
それは異なる業界(ゲーム)より徒手空拳で少年漫画界の荒波に飛び込んだ、
偉大なる先駆者の誇りある魂を取り戻すためだと俺は信じている。
だから今更迷いはない。勝てば生を得、負ければ生を失す。
それだけの事だ。・・・留美子先生、あなたは何も気に病むことはない。
犯した罪を償うのも、全ての人間の前から姿を消すのも自由だ。ただ――」
ガンガン陣営と、自然と運命共同体となっていたサンデー漫画家の生き残り達は、
カムイの紡ぐ言葉を真摯に受け止めていた。
「――ただ、ガンガンは流れ着く者を拒まない。
そして去る者も責めない。命あっての物種だ。他のチームに走っても構わない。
ここには決勝進出4チームのメンバー全員が揃っている。
彼らに頼んで移籍するんだ。義理で居残ってもらうつもりはない・・・」
突き放したような物言いだったが、
それだけにガンガンリーダーとしての彼の決意がはっきりと現れた。
「だがそれでも笑顔で逢おう。・・・誰の言葉だったかな、
『リングで闘う理由に因縁も憎しみもいらない』と。あとは各自考えてくれ。以上」
四角く囲む形の長机越し、戦士たちは静かに頷き了承する。
巻来と岡村が自然と席を立ってカムイに向かって手を同時に差し出す。
つられた形で富沢がおずおずと3人の間に挟まり腕を伸ばす。
「あなたという漫画家とこうして知り合えた事に感謝する」バンチ代表・巻来が微笑む。
「明日もわからない時代、人の縁だけは信じたいものです」ガンガン代表・カムイが握手を交わす。
「そうだな。他人あってこその自分だ。仲良くしようぜ!」裏御伽代表・岡村が快活に笑う。
「(板垣先生が聞いたら鼻で笑うなこりゃ)そうしましょう」えなりT代表・富沢が小さく肩を竦めた。
こうしてとりあえず、無礼ド会議は終了したのであった。
真夜中という事もあり余った客室にそれぞれ入る事になった。
浮き上がった別府の街や矢吹艦の様子も気になるが、
矢吹の介入があった以上無礼ド側が飛び込んでも混乱が増すだけとの判断で、
無礼ドは例のとんがり山――別府跡地の海に生えた王蟲の搭――が見渡せる、
雷句が消えた海上の森近くに着水、停泊した。
魔力注入ケーブルから離れた松沢艦長が「ふにゃ〜」と背伸びしラジオ体操。
さて夜食のカレーをば・・・とか彼が思った直後。
「艦長!蟲船ラ=レダルーバ号から通信が入っております!
たまたま近くを立ち寄ったとの事ですが、通信者は裏御伽チームの方だそうで」
「え〜?オイラ忙しいんだけどにゃー。
裏御伽ならいたでしょ、オイラよりよっぽど艦長してたっぽい奴。
あいつ連れてきてくんない?つーわけでカレー食ってきま」
『岡村ー!おめえこんな所にいたのかよ!よく生きてたな!
戦艦無礼ドっていやあ俺らが島を脱出した後に救援物資をよこしてくれた艦だ。
おめえは寝てたから話に聞いただけだろうがよ、しかしつくづく縁があるぜ』
半分寝かけていた岡村が、通信機の前で大あくびしながら真倉の顔をモニター越しに眺める。
「真倉さんか・・・相変わらず老けてんな、ハハ。
本宮さんたちは無事かよ?あと副将のバカはいるか?
まだ女に変身したままとか言わねえでくれよな、ブン殴れねーからよ〜」
苦笑いする岡村に対して言葉を詰まらせる真倉。
「いや、あいつは・・・」
「・・・??」
ふと、モニターを見つめていた岡村が突然目をしぱしぱさせてこすり出す。
「〜んだよ岡村ぁ?話聞いてるのかよ!」
「・・・え、あ?い、今あんたの後ろに悪霊が・・・たくさん・・・」
「失敬な奴だ。俺は女を寄せつける体質の幽霊だが悪霊なんかじゃねえよボケ」
「・・・いーねーえ。何だったんだ一体!?」
「どうでもいいが俺は今からオヤジ達の処へ戻るぜ。おめえも来るなら支度しな」
「岡村さん、チームの許へ戻られるのですって?」
カムイ達に挨拶を済ませ、ハッチへ向かった岡村の後を追ってきたのは山田だった。
「今行かねえと昼まで会えなさそうだからな。ねみいけど、しゃあねえ。
そういやあんたはこれからどうすんだ?どこの所属でもねえ行きずりなんだろ」
「・・・あの、もしよろしければそちらに」
「へ?」山田の言葉は次の瞬間、ものすごい騒音にかき消された。
ドガシャーーーーーン!! ぼっごーーーーん!! ギャギャギャギャギャ!!!
「許さないわよ!覗き魔及び下着泥棒及び露出狂っ!!喰らいなさいっ金剛槍破ーーーっ!!」
「るるる留美子さぁーん!俺は今回は無実です無実ですったらぎゃばうぼあごぎゃぐはぁーーー!!」
「我ら変態チームに安息の時はないのだ!乱あるところに我らの影ありなのだー」
「カムイさーんこの人間終わってる連中なんとかしてくださいよー!あとメールどうもです」
「さっきから一体何事だ!敵襲か!?俺を睡眠不足で殺す陰謀かそうなのか!?」
推測するに蟲船に変態軍団(+α)がゴキブリのよーにくっついて来て以下略。
聞き覚えのある声で顔面蒼白になった山田は岡村にしがみつくようにして叫ぶ。
「彼らに、悪漢に追われてるんですっ!そちらの船に避難させてくださいぃ!!(涙)」
「お、おーよ」あせりつつ了承する岡村は、山田の背を押してハッチの外へ脱出した。
(樋口さん、挨拶できませんでした。怒りますよね。“仕事”ですので許してください)
転がるように蟲船に乗り込んだ山田は、本の入った鞄を強く抱きしめる。
中には【川原正敏様】と書かれた、謎の招待状入りの封筒が収まって、いた。
20部381の続き
ザアアアアアアア――――――……
石渡「岡田が氷の粒となって消えていく……」
凍てついた全身を、真っ二つに両断された肉体は、塵になり風となった。
無表情の死神…田口雅之と睨み合いを続けつつも、石渡洋司は同志のまさかの敗北に、かすかに動揺する。
山口「紙一重で取り逃がしたか……だが、奴は肉体の大部分を失った。しばらくは身動きできん」
戸田「おンもしれェ……あれぐらいじゃ殴り足りないとこだ……次はもっとボコボコにしてやるぜ!」
吼える戸田だが、その肉体の損傷は大きい。
山口の『是無』によって、失った腕は元に戻ったが、それ以前のダメージは依然としてある。
その上、闘いはまだ終わりではなく、戸田と山口の強さゆえに、食指を動かされた者…いや『モノ』がいた。
闇藤田「くっくっく……まさか、あの岡田を倒すとは……これは認識を改めねばね」異様に長い黒髪と長大な白い尾を携えた毒々しい妖婦の姿――『斗和子』形態となった闇藤田が、妖艶に微笑みながら嘲笑する。
闇藤田「その力……危険ねえ……滅ぼしてあげる!!」
身長よりも巨大な尾が、ものすごいスピードと破壊力をもって戸田達に襲いかかった。
戸田「がふっ!」
強烈な一撃を喰らって、吹っ飛ぶ戸田。
壁に叩きつけられ、全身の負傷が開く。砂を真っ赤に染める血。
そこへ、容赦なく追撃がかかる。
山口「させぬっ!!」
背面からの加速噴射を全開にし、山口が電光のスピードで戸田を庇うように立つ。
ともすれば全身が粉々になりそうな一撃を、山口は右腕一本で堂々と踏み堪えた。
陥没した地面をしっかりと踏みしめ、仁王立ちした山口が、強化外骨格の内側から灼熱を帯びた視線を投げつけている。
闇藤田「しぶとい男だこと……片腕の男と、全身ボロボロの男に何ができるのかしら?」
山口「貴様を討ち果たすことができる」
山口の眼力は、それだけで岩をも砕く。
その闘気は、場の温度を一気に沸点へと押し上げた。
戸田「ちっ、山口さんよお。ひとりでカッコつけてんじゃねえぞ。あいつも、オレがブン殴る!」
山口「いや、ここはオレに任せてもらおう。この邪気に因果ふくめてくれる!」
闇藤田「ほほほ、大した男だこと。お前の苦痛に歪む表情が見たいわいねえ」
びゅっ、と尾の鞭が襲った。しかし、その一撃を受け止めたのは、戸田の拳でも、山口の拳でもなかった。
ド オ オ オ オ オ オ ン !!!
そのとき、砂漠のド真ん中に、巨大な『津波』が出現したのを誰もが感じた。
それが迫真のリアリティに感じられるほどの、圧倒的な斬撃。
そう、拳ではなく、剣。
闇藤田の、尾の一本を粉々に打ち砕いたのは、それだ。
闇藤田「何!?」
信じられなかった…
漫画家の武器も、牙も通らぬ、大妖の尾が一撃で砕かれたのだ!
闇藤田「たった一閃で我の尾を砕くだと…!?」
ザシャア!
戸田と山口を背に隠すように、黄金の長刀を携えた学ラン姿の男が立ちはだかる。
由利「能生……いや戸田だったか、それと山口さん、悪いがこいつの相手はオレにさせてもらおう」
長刀を握った手を、さらしで固定し、由利聡が闇藤田に向かう。
由利の闘志を表すように、手の中の長刀が黄金に輝く。
それを見た闇藤田の顔に、初めてわずかな動揺が浮かんだ。
闇藤田「これが伝説の……」
『 黄 金 剣 』 !!!
山口「由利君…」
戸田「学ラン野郎…おめェ」
由利「あんなスゲェもん見せられちまっちゃあな……オレもちったあカッコつけねえと…な!」
今まで、岡田に畏怖していた男とは思えない、威風堂々とした立ち居振る舞いだった。
闇藤田「ほほほ、戯言を。車田正美が作り上げた伝説の聖剣――その中でも1、2を争う『黄金剣』を貴様ごとき、遅筆の若僧が扱えるものかよ!!」
パキパキパキ……ギャバ!!
打ち砕かれた尾の破片が、巨大な尖った岩塊の雨となり、機関銃のように降り注ぐ。
ピシャアアアン!!
だが、それらの攻撃は、どれも由利にカスリもしない。
由利が、ただ黄金剣を一閃するだけで、全ては土塊とかした。
さらに、その一閃は、刺突となって闇藤田を直撃。
闇藤田「ムダよ!我の体はあらゆる『力』を体外に反射させる……」
カ カ ア ッ !!!
山口「――――――!」
闇藤田「けええ……な…ぜえ…」
胴体に大穴を空けられ、闇藤田がヨロけながら呻いた。
由利「オレを怒らせたのが貴様の『敗因』よ……愚か者が」
由利の手に握られた『黄金剣』は、衰えるどころか、さらに激しく輝きを増しつつあった。
闇藤田「ふ…ふざけおって……おぉのれええ―――――!!」
与えられたダメージから、本来の『白面』の姿をさらした闇藤田が、恥も外聞もなく次から次へと尾を繰り出した。
しかし―――
これだけの尾すら―――
爆発する聖剣の斬撃を止めることは―――
できなかったのだ!
ひとりの漫画家の『負』の部分のみを凝縮して生まれたバケモノ――闇藤田。
それに『本能』などというものがあるなら…その『本能』が大きく告げていた。
『 逃 げ ろ ! 』 と――――
そうだ、この時…
この時こそ、闇藤田がこの世に再臨して、初めてある感情を持った時だった!
忌わしき―――
あの感情―――
闇藤田「何でも溶かす『酸』の尾と!鉄の尾よ!」
濃硫酸の濁流を、ほとばしる光が蒸発させた。
そして、その一撃は、鉄の尾をもものともしなかった!
闇藤田「何なのだ、いったい!?」
闇藤田は忘れない…
その物がもたらした感情を…
その感情・・・
恐 怖 を ! ! !
闇藤田「こ…こんなことがあるのか!ま…まるで奴の怒りが黄金剣にのりうつっているかのようだ!!」
由利「そのとおりだ、藤田」
闇藤田「(ま…まさか…まさか黄金剣の正体は……)」
由利「そうよ、黄金剣はオレの肉体の一部なのだ…
オレの怒りをしり、オレの悲しみをしり、オレの心のままに力を発揮する…」
黄 金 剣 と は こ の 由 利 聡 の 感 情 が そ の ま ま 威 力 と な っ て 爆 発 す る 聖 剣 な の だ ! !
闇藤田「おぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!」
闇藤田は知らずに叫んでいた!
無様に――――
愚かしく―――――
初めて思い知り、戦慄した!!
『王者』の名を背負う男たちの、理論も道理をも超越した力を!!
そして、車田正美の正統後継者たる――――
由 利 聡 の 力 を !!!
久々!!
黄金剣カコイイ
103 :
敗走:04/09/03 08:58 ID:OvWh510f
>>101 「お ぎ ゃ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ! ! ! 」
恥も外聞も無く闇藤田は叫び、逃げ出した。
満身創痍の戸田や山口はおろか、由利聡ですら反応する前に、その姿は遥か遠方に有り、瞬きする間もなく塵のごとく小さくなり、消えた。
「許さぬ、許さぬぞ!!! この我にそのような感情を"思い出させる"とは!!」
初めて恐怖を感じたのは過去、神と戦ったその時。
敗北し、滅ぼされ、この世に生まれでてから初めて恐怖というものを感じた。
そう、恐怖を与えるべき存在である闇藤田が恐怖というものを自身が味わったのがそれが最初である。
そして蘇り、再び恐怖を感じさせられた。
それも神ではなく、妖魔王ですらない、ただの若い漫画家に。
―――この上なき屈辱だ。
だが今は逃げるしかない。
今の闇藤田では車田本人はおろか、その意思を告ぐものにすら劣っている。
由利聡に対する恐怖と、それ以上の怒りを感じながら、闇藤田は傷ついた身を癒すべくアジトへと逃げ帰っていった。
・由利聡……闇藤田に勝利
・闇藤田……由利聡に重傷を負わされ敗走。
(
>>63)
「電話するゆうて遅いなあいつ。頼りない男が副将て、
本宮もようわからん奴やでしかし。2人胴上げとかな」
小さな花束を持ち、広々とした石畳の上をコツコツと歩く猿渡。
夜が明けつつある東京の空は、本格的な冬の到来を示すように低く澄んでいる。
「馬鹿な子ほどナントカって奴じゃねーの?テツ」
「馴れ馴れしく呼ぶな」
3歩後ろを裸足でヒタヒタと付いてくる画太郎の方は見ず、
猿渡は広大な広場の中央にある記念碑に向かう。
・・・ここは10年前の惨劇により廃虚となった地をならし、
特に中心部となった旧集英社ビル(新社屋はすぐ近くに建てられた)周辺を、
多くの石で囲み資料館を併設し、外壁の中の回廊に犠牲者の名を彫り刻み、
100m四方は下らないだろう広場の中央にぽつんと記念碑を建てただけの場所。
あの日巻き込まれた多くの人間の、奇妙な事に約半数は『行方不明』である。
半分は瓦礫や火災に巻き込まれ死亡、猿渡が失った妻と幼い娘も、
公式記録では二次災害での死亡扱いとなっている。
彼女たちの墓は別の地にあるため、猿渡がこの街に訪れる事はめったにない。
しかし今日は違った。
記念碑には今も時々参拝者が訪れ供え物をする。猿渡は花束を碑に添え、
早朝の光に照らされる、やや遠くの石畳に描かれた巨大な地上絵を冷めた瞳で見つめる。
彼の実の眼と義眼両方に映る、それは【黒猫】を模した矢吹軍のシンボルマーク。
施設の名は【矢吹健太朗平和記念館】。
10年前──公式記録ではあの日、未曾有の大災害から人々を救ったとされる英雄・矢吹。
彼の漫画界本格支配はこの後から始まったのだ。
一部の情報では矢吹が“超強力なエネルギー源”を入手し、
私兵の武力を強化したかららしい。あの日に何かあったというのか?
「本宮に頭冷やされるまで、事の原因にまでは思いが寄らんかったわ。さて、どないするかな」
ちょい訂正
>「確認できた人数の」半分は瓦礫や火災に巻き込まれ死亡
残り半数は負傷者って事で(死者:不明者:負傷者 1:2:1)
19部131より (19部66,79,188と同じころ)
荒川&内藤が木城の研究室を脱出した直後、吉冨や富沢達もすぐに撤退していった。
あれだけ魅力的な研究対象のかけらを入手することすらできなかったのだ。
むしろ、そうならないように相手が考えていた、というところか。
残ったのは変わり果てたラボだった。
半壊した培養装置と計算機類の残骸
空の見える天井と2・3階下までぶち抜かれた床、すべての壁には無数の弾痕
サラリーマンに破壊されたサチュモドと当分動けないTYPE−J9:グリフォン
まだ息のあるものもいるが、もう2度と立ち上がることのないソケット兵たち
ここにあったほとんどのものが、恐らく研究資料としての価値を失っている。
皆川のARMSの破片もどこに行ったかわからない。
唯一まともに機能していたのは木城専用特別プリンボックスだけ、そんな状態だった。
木城と岡本たちで使える部品だけを集めると、何とか一通りの設備は整いスペースも確保できた。
ARMSにも思ったほどの損害はなかったが、この貧弱な設備ではナノマシンの開発は望めない。
今のところ可能なのは、ソケット兵を材料に使える、人間かそれに近い生物の非強化クローンを作ること程度だ。
内藤も新技術もなしに、既存の技術だけで今まで以上の戦力をつくるには?
……ちょうど目の前には、強化する必要のない怪物がいたりする。
木城は岡本を知っていた、そして理解し始めようとしていた。
○ 旧 人 (ネアンデルターレンシス)は目の上の骨が隆起している。
○ 新 人 (サピエンス)の顎がとがっているのは、火や道具を使うが故に顎の力が
弱くなったからだ。進化がいつも進歩とは限らない。
○ 二 角奇 人 (ディクロニュウス)は側頭部が角(猫耳)のような形に突出していて
その構造が脳の第六感を司る器官、松果体の肥大を可能にしている。
進化した松果体―――――それこそがベクターの源であり
そしてまた人格の分裂が起きる原因でもあった。
注:“角奇”で一文字、「き」とよむ。
彼は焼きプリンをすべて腹の中に入れたのち、チョンパされないように言葉を選びながら、
全身に恐怖を感じつつも挑むように、岡本に好奇心の塊をぶつけてみた。
「ふふふ、こんなことを言うのは失敬ですけど……あなたはとても興味深い!
私はこれからCHOMPA兵団をつくろうと思います。
ソケット兵のような出来損ないではなく完全に命令に服従するCHOMPAを!
それこそ最凶兵団!KIYU様の!すばらしいと思いませんか!!」
木城のその手にはプリンではなくポッキーが握り締められていた。ゆっくりと彼女に近づく。
「やめるにゅ!そんな目で見るなにゅ!殺して埋めるにゅ!
戸土野や暗罪がいなくたってお前ぐらい簡単にチョンパれるにゅ!!」
「キャハハ!何を仰られるのやら!
KIYU様の戦力の増加になればあなたも本望なはず。
別にあなたを切り刻もうなどとは微塵も思ってはいませんよ!
た だ デ ー タ を 採 る だ け で す ! 」
人工の森は鬱蒼と、滓かに瘴気を孕み2階建ての瀟洒な洋館を包み込む。
斜め上から差し込む光も通さぬ、幻惑の霧の中に佇むどこかの屋敷の、
鍵や封印で扉や窓が頑丈に固められた2階客室で彼はゆっくり目を覚ました。
(・・・ここは・・・?)
前髪を緑色に染めた体格のいい青年は、不安そうな視線を薄暗い部屋で動かす。
分厚いカーテンに囲まれたヨーロピアンな内装、高級そうなガラスの電気スタンド。
自分にはあまりに不相応だと感じた青年は息苦しさと不安感に苛まれ、
シーツをふんだんに使用したセミダブルベッドの上で広い肩をすくめた。
(落ち着けボクー。何があって今ここにいるのか思い出すじゃーん)
確か自分は昨夜から東京にいて、猿渡と画太郎の世話になっていたはずだ。
10年前の忌わしき思い出の地に挨拶をしに来たのだろうが記憶が怪しい。
早朝の道すがらポケットを探り、携帯電話をなくしていた事に気づき狼狽。
寂れた道で旧式の公衆電話を発見、猿渡にテレカをもらい携帯にかけたら意外な人が出た。
(問題はこの後だよなあ、確かテレカの度数がなくなりかけた時に背後から何かが・・・)
隙だらけだった自分が悪いんだろうけれど。
ストッキングをかぶった5・6人の男たちにいきなり、
鈍器のよーなもので殴られてふにゃふにゃ。
あれ?これってもしかして。
「なんかこれって典型的な『誘拐』パターンだよねぇ〜!!
ミーを誘拐したのはユーかい?なんちゃってーあっはっは!! ・・・」
静かな部屋、年代物の柱時計が午前10時を告げる。
鐘の音が10回鳴り終えた後、青年―――にわのはカーテンをこじ開けて動かぬ窓の向こうに叫んだ。
「えええええ〜〜〜〜〜〜!!?なんでボクさらわれてるのぉーーー!?」 (つづく!)
なんか進んでる!すげー進んでるぅー!!
倫タンが大変な事になってるし!
(また)副将が巻き込まれてるし!w
所で倫タンの王子様は梅さんでおk?w
ここは王子様だらけのインターネットですね
>>70 (あの『歩き』……!)
キジムナーの構えが変わった瞬間、金票が警戒するように目を見張った。
先程の疾風のような速度とは対照的に、まるで涼風にそよぐような緩やかな歩法。
見た目、散歩しているようにしか見えない『歩き』が秘める危険性を、金票は瞬時に理解した。
(不味い……、まさかこの男、この『歩き』を体得しているとは……)
警戒し、躊躇している間にも、キジムナーは距離を確実に詰めてくる。
そして、遂に両者の距離が、一足一刀の境を踏み越える……
刹那、横薙ぎに大気が裂けた。
金票の左腕から伸びた『聖ジョルジュの剣』を一閃させたのだ。
だが、そこに人体を斬り裂いた手応えはない。
空気が発火するほどの鋭さで振られた刃は、残像を切断したに過ぎない。
(――!?)
単純な速度ではない。
例うるなら蜃気楼のような、突然の消滅。
一切の気配が察知できない。
そのとき、首筋に虫が這うような悪寒を感じ、金票は咄嗟に深く身を沈める。
一瞬前まで頭があった空間に取り残された帽子が、音もなく千切れる。
瞬時にして背後に回っていたキジムナーが、金票の首を挟むようにして両の手刀を繰り出していたのだ。
ぞくうっ!
反撃など考えない。とにもかくにも、まずは制空圏から離脱すべく、金票が大きく飛び退いた。
しかし、着地と同時に、右側面に気配。
「なっ――!?」
この体勢では、左の刃は間に合わない。
闇雲に、右腕の突きを放つ。
またしても空を打つ感覚。
それと交換するように、太い痛感が、金票の上腕を貫いた。
指だった。
キジムナーの刃物のように鍛えあげられた指が、金票の右腕の筋肉を貫いていた。
激痛に顔を歪ませながら、金票の目が、凄絶な笑みを浮かべるキジムナーを捉える。
そこへ残る左拳が飛ぶ。ミサイルのように真直ぐに走った突きは、だがまたしても空を切った。
刹那、右脇腹に衝撃。
腹部で何かが爆ぜたような破壊力に、金票は「ガ…ハァッ」と壮絶な呼気を吐いた。
血と吐瀉物が、ブチ撒けられる。
キジムナーの肝臓打ちがまともに入っていた。
まるで拳大の岩を埋め込まれたような、凶悪な拳打。
くの字に身体を折り、金票の顎が下がったところを、真下から垂直に放たれた肘が突き刺さる。
金票の頭部が恐ろしい勢いで跳ね上がり、両足が床から引き剥がされる。
一撃、一撃が、刀剣のように鋭く、猛獣のように激烈。
しかも、それで終わりではなかった。
金票の顎に叩きこまれた肘が、倒れ込む勢いを利用して、金票の首に打ち落とされたのだ。
金票の太い首が、鋭角な肘と、硬い床との間に、サンドイッチにされていた。
バシャッ!、とドス黒い大量の血を、金票が吐き上げた。
「ほう…、普通なら首がヘシ折れるところだが」
のしかかっていたキジムナーが立ち上がり、仰向けに倒れて悶絶する金票を見下ろす。
「『硬氣功』によって、かろうじて致命傷を避けたか」
感心したように呟くキジムナーだが、金票はそれどころではない。
懸命に気道を確保しながら、混濁した意識を叱咤する。
――奴の動きが全く捉えられない。
キジムナーの凄まじい攻撃力もさりながら、金票を苦しめている最大の要因は、この一点に尽きる。
金票がキジムナーの制空圏に入ったが最後、一切の攻撃は空を切り、その動きさえもが掴めない。結果、反撃をいい様に喰らってしまうのだ。
キジムナーの動きは、さながら大気が溶け込むがごとく。
その攻撃は、跳弾のような速度と予測不可能性、そして殺傷力を備えている。
「南王手八神流――『足裏神』(シャビラシン)」
いまだ膝をついたままの金票に、キジムナーが丁寧に解説してやる。
「南王手とは戦場で生まれたもの…一人で無数の矢や白刃を切り抜ける、それが出発点だった。
戦場で寝転がってもつれあうなど、もっての外、自殺行為…
だから南王手は、相手につかまらない完璧な歩法を磨いた」
「……今までのが、そうだってのか」
「歩くことの利点とは、加速も減速も変幻自在で、止まらぬこと。
それにより背後をとられる危険をなくし…常に先の先(相手の技の起こりを察知し、先に仕掛けて制圧すること)、
後の先(相手の攻撃を見切った後に迎撃すること)をとり得る姿勢にあること。
どんな動きをとっても正中線を乱さず、隙を見せぬ歩法……、それがこの技の要諦」
そこまでを一息に説明し、一拍置いて続ける。
「そして、これを可能にするのが下腹部に存在する、『丹田』。
東洋武術では広く知られる概念…しかしそれを真に理解する者は極めて少ない…。
貴様ほどの作家ならば、よくわかるはず…」
「ならば!」
得意げに解説し、棒立ちになっているキジムナーの片足を自らの肩に担ぎ、両手で襟首を掴んだ。
そのまま体格差を利し、地面に組み伏せようとする。空手家ならば、転がしてしまえばいい――
しかし、その瞬間に、金票は思い知った。
『南王手は絶対に寝ない』
その言葉の真なる意味を。
(……!!う…動かん!?)
キジムナーの体格は、中肉中背。対する金票は、190センチ以上の大男だ。
にもかかわらず、金票が押しても引いても、キジムナーはビクともしない。
ただでさえ圧倒的な体格差にくわえ、しかも相手は片足だというのに!
「フフフフ…まだ納得がいかないか…?」
(倒れん…まるで鉄柱が通っているかのように…!?)
金票の全身の筋肉が、ブルブルと震えている。
そこまでの力を込めているのに、キジムナーの顔はひたすらに涼しげで、余裕の笑みすら浮かべている。
「南王手八神流が倒れぬ理由…、心を澄ませば、貴様には見えるだろう…」
金票が意識を集中し、右の『浄眼』にて、キジムナーの深奥を覗いた。
そして、金票がそこに見たものとは――
「こ…これは…」
キジムナーの体内の中心部――『丹田』が内側から恒星のような輝きを放っていることに気付き、金票は呻いた。
「言っただろう、八神(やがん)の技を可能にするのは丹田の力だと…
丹田を練り上げ、完成した者はそれしきのことではゆるがない…」
――見える!丹田を通り…
天 と 地 を 貫 く 光 の 柱 … ! !
(密教修行者やヨガの行者などが求めてやまぬ梵我一如の境地に達した時…
人は、天地を通す一本の柱のようなエネルギーを体感し、悟りをひらくというが…
な ぜ、 こ の よ う な 者 に 神 は そ の よ う な 境 地 を 授 け る … ! !)
「ぐはっ…!」
突然、肩に担いでいた足が、数倍の重さに変じた。
まるで、巨大な岩に化けたかのように…!!
為す術もなく、巨体を踏みにじられる金票。その心底を絶望が満たす。
(あ…悪魔超人……その名はハッタリではない!この男は正真正銘の悪魔…このような怪物があと6人も存在するだと…!?)
金票は知らぬ事であるが、そのうちの一人である篠房は既に倒され、正確な人数は将軍を除いて5人。
しかし、それでも、その数が脅威であることに変わりはない。
「立て…藤田和日郎…。藤田組の歴史、この程度で終わらせるつもりか?」
冷笑をたたえる瞳を、灼熱を帯びた眼光が見上げる。
よろめきながらも、残された力を振り絞り、立ち上がった。
「フフ…丹田のことはよく理解し、自分自身使いこなしているつもりだったが…まさかそんな用法があったとは…」
「昔、琉球を薩摩藩が統治し始めた頃、唐手を見た侍たちがこう言ったそうだ…
『琉球の唐手なるもの学ぶにあたわず』…と。
真実を知らぬ者の言葉とはいえ、以後今日にいたるまで、貴様らの認識はその程度だった…
無知のまま死ぬことを考えれば、貴様は幸運といえる…」
言い終えたキジムナーの前で、金票は震える身体に鞭を打ち、構えをとった!
「ならば俺を最高の一撃で葬ってくれないか…」
―――死出の旅のはなむけに!!
「もはやここまでの距離さえ動けぬか…カウンターを狙いたいのだな…」
金票――いや藤田和日郎の最後の闘気を感じとり、キジムナーの身体から吹く南風が勢いを増した。
刹那、死の槍と化した手刀が、疾風をともなって突き出される。
(この男だけは…なんとしても俺が倒す…)
瀕死の身体が奇跡的な反応速度を見せた。
両腕で、迫る手刀を叩きつけ、逸らす。
転瞬、藤田の全身が螺旋を描き、その力は拳へと伝導――威力となって放たれた。
「 崩 拳 !! 」
一瞬、室内が鳴動したかに思えた。
場の気配が、数瞬、沈黙する。
起死回生の一撃を放った藤田。その拳が伝えた感触は――
「なに…打撃を真綿のように吸い込んだ!!」
――!?
失敗。最後の一撃すらもが全く通用しなかった。
そして、藤田の眼前に決定的な絶望が、具現化される。
「中国拳法の当て身技も奥深いが、この体には効かん…
打たれて効かせず、打って効かせるのが、空手の本質だからな…」
目の前に立つ、キジムナーの姿が変わってゆく。
身の丈が急激に伸び、全身の筋肉が異様な音をたてて膨れ上がっていく。
(な…なんだ…これは…?これが…これが人間の体だというのか…?)
全身すべての骨、すべての筋肉、内臓、果ては魂までもが鬼神へと変じ、戦闘に突入していく。
「バ…バカな…こ…これは…これは人ではない!!」
驚愕と絶望に打ち震える藤田の前に、鬼神が現れた。
巻かれていた鉢巻は内なる圧に耐え切れずに千切れ、その下からは筋肉の異常発達によって形成された、あたかも『第3の眼』と化す。
赤いウィッグは床に落ち、その下から現れた金色の長髪が、重力に逆らって波打つ。
――『天を衝く』とは、まさにこの事か。
「こ…これが南王手がキジムナーと呼ばれる真の理由か…!!」
断末の叫びを放つ藤田に、無慈悲な死神の宣告が下される。
「さぁ…遊びは終わりにしようか、藤田和日郎…」
―――――――――― ズ ン ―――――――――――
分厚い筋肉に覆われた胸が、紙っぺらのように容易く貫かれた。
今や2メートルを超える鬼の巨体から放たれた手刀は、正確に藤田の心臓を刺し通したのだ。
(こ…これまでか……)
胸と背中から、噴水のように大量の血をほとばしらせ、藤田の体が崩れ落ちていく。
(すまん安西…すまんリック…すまん村枝…)
重い音をたてて、藤田は血の海に深く沈んだ。
(この鬼を止めることかなわなかった…)
その鬼が、既に元の体に戻り、手刀から返り血を滴らせ、炯と光る眼で無情に敗者を見下ろしていた。
そして、そのときを見計らったように、鬼の背後に別の気配が現れる。
サングラスで眼を覆い、銀色の口髭と顎髭をピンと尖らせた、その男はマントを翻しながら、意識のない藤田の頭部を踏み付ける。
「ざまあねえな」
嘲笑が死闘に幕を下ろし、そしてさらなる絶望の幕を上げる。
藤田ああああああ!!
分裂しすぎて弱いんだよ藤田ぁぁぁ!!
(リアル藤田は本誌で予告もなしに行方不明になるしどうなってんだ)
「さて…」
『戦艦ヤマト』帰還した福地翼の報告を受けた後
松本零士はひとり艦長室にて思案にひたっていた。
少々遅れ気味であった艦の強化工事のペースは福地の帰還により今のところ順調。
別府に派遣した七騎士のうち新谷かおるは現在鹿児島に帰還中
小林源文はどうも大海嘯に巻き込まれたようだが鹿児島にいたちばてつやが向かったことを考えれば問題はない。
もう一人――――神器に張り付いているものについてはその実力を考えれば心配いらない
「(奴は根が強い奴だ…たとえどんな困難であろうと突破してゆくだろうな)」
そして…最後に現在加わろうとしている戦力
「(荒川弘に内藤泰弘、渡辺道明いずれもトップクラスの漫画家…これをもっとも効果的かつ確実に動かすなら…)」
松本の目が一枚の写真に注がれる。
昨日矢吹艦における「王欣太捕獲作戦」直前に撮影された肥満体の男…平野耕太の写真
「(情報では荒川、内藤、渡辺、皆にともに平野に因縁があるらしいが…この男の勢力は基本的に独立勢力
ヘタに刺激するのもマズイかもしれんがが…放置するにはやはり大きすぎる。ここはこの三名に戦力をあたえ牽制を…
いや、渡辺には航空機の技能があるからな。新谷が欲しがるかもしれん。アイツいつも航空隊は戦力不足だとぼやいて…)」
と、そのとき
「艦長!艦長!」
通信が第一艦橋より入る。
「どうした?なにかあったのか?」
「それがエリア88より通信です」
「わかった繋げ」「はっ!」
「新谷、どうした?なにかあったのか?」
「いえそれがさきほど漫画家が降ってきまして…」
「漫画家?」
「ええ、どうやら。バイクにでかい十字架乗っけた関西弁のアンちゃんと
フードかぶった占い師みたいな女なんですが…」
「それで?」
「とりあえず医務室へ」
「ほう…」松本はつぶやいた
「また面白いものが降ってきたな」
>88
「…………一応、10秒お待ちします。逃げるなり。遊ぶなり。対策を講じるなり……お好きに………」
うだうだ うずうず
うだうだ うずうず
うだうだ うずうず
うだうだ うずうず
うだうだ うずうず
10秒。終―――――――――了――――――――――
「………ここで『とりあえず引き分け』とかにしておいた方が、いいと思いますよ」
最終通告。いつも通りの、荒木に告げる。
「………多分、そうなんだろうね」
辛うじて『取り戻せた』ようだが。見たところ、なにか勝ち目をみいだせた顔でもない。
「………じゃあどうして?」
「さあね……。ただ………」
両手を複雑に捻り合わせ、差し上げたそれの隙間を覗く。
小学生のような『おまじない』だ。
「………ただ?」
「ここで引いたら」
下ろされた手の向こう、開き直ったスガスガしげな、荒木の微笑。
「………ここで引いたら、何故か君に、一生追いつけない気が………するんだ」
(……理屈じゃあ、ないんですね)
ほんのすこし、不安になった。
こんな見事な荒木なら。自分はひょっとして、負けるかもしれない。
そして、大いに残念だった。
こんな見事な荒木だからこそ、勝った自分は、手心を加えることも出来ない。
(………荒木先生。貴方にまで、忘れられたら、私は……)
………ちっ、くそ、全然高揚しない。
勝てるのに、ああ、勝てるのに。
「・………未練、か……………始めますか?」
「こい」
こんな展開になるんだったら、最初から『自分』がやりたかった。
うう、なんでこんなことに、なっちまったんだろう。
………あの、N星人のアンポンタンめのせいか。
あとでギッタンギッタンに、お仕置きしてくれる。
狂狂(くるくる)と、DNAの二重螺旋にも似た、上昇。
この世のモノとも思えぬ、景色の中で。
二人の速度は、早くもあり、遅くもある。
(……勿体無い勿体無い勿体無い〜〜)
様々な光源を受けて、万華鏡のように彩りを変える荒木の面差は、幻想的なまでに美しい。
矢吹艦の、安っぽい風俗街のような照りを受け、それでも、その厳かさはこれっぽっちも損なわれない。
(どうしても、やんなきゃ、駄目〜〜?)
もはや勝敗そのものは『過去』のモノ。
そういった思考は、本来勝負事には禁物なのだが、『これはそういうものなのだ』。
(………ぅう………でも、まあ、よかったのかな……)
高く高く、ひたすらに高く。『壊す』のが惜しくなるまで、我慢する。
(……………いや。全然、『我慢』してないけど)
いい感じに荒木が積み上がっているのは、事実だ。
(…………………さよなら………)
「「ジャンッ」」
乾坤一擲を繰り出すように、大地をタップする直前のように
音と同時に、矢つがえる。
「「ケンッ」」
想いと力の渾身を込め。静かに『全て』が、手に賭けられる。
「「ホイッ」」
……… ヒ ュ ――――――――――――――――― ン ン ン …………
そう、それが『敗北』。
きりもみで落下してゆく荒木を追う、制御された冨樫の落下。
やがて、とてつもない勢いで『穴』に向かう一匹の王蟲の背に、荒木の腰が叩きつけられ。冨樫が降り立った。
「………………………負け だ………『完全』敗北だ……」
噛み締めるそれは、さぞや苦いのだろうな。
毅然たる『虚勢』を失い。荒木が、顎先からしたたる汗を、手の甲で拭う。
「………お別れです」
普通に歩き、普通に、触れる。
洗礼を与える神父のように、跪く荒木の頭に、冨樫は手の平を載せた。
「『――――荒木飛呂彦。貴方は、私について、どれだけのことを知っていますか?』」
『質問』で相手の『記憶』を刺激し、攪拌された『原記憶』―――加工されてない『記憶』―――を攫う『念能力』の発動。
『底』に沈殿した『それ』は、『純粋』であるが故、本人が意識してないモノさえ掬う。
つまり、誤魔化しも、偽証も、不可能。
「……ふむ、ふむ…………で」
ズ ズ ・・
冨樫の手中に現れたのは、黒く冷たい、鉄色の『銃』。
そのリボルバーに、『抜き出した』『記憶』を『銃弾』と変え。詰め、手早く機構を戻して、荒木の頭頂に、つきつける。
『複製』した『記憶弾』で相手の『記憶』を『撃ち』、『相殺』してその『同じ記憶』のみを『消去』する。
まあ、たぶん、そんな理屈。
「――――最後に、言い残す事は、ありますか?」
「―――――ひとつだけ、聞かせてくれ」
ぐるり、と荒木の面が上げられた。
スロットみたく、旋毛と顔が入れ替わる。
眉間に合った銃口を、意識すらしていないかのように。
「――――どうして『グー』、だったんだい?」
あの時。
『最終勝負』。
荒木の『ギャンブラーとしての全て』が選んだ『チョキ』は、冨樫の出した『グー』に、至極あっさりと、敗れ去った。
「………………」
答えず。
無言のまま冨樫は天に、拳を突き上げた。
計算なのか、偶然なのか。
指を丸め、歪な球となった手首から先『グー』が、見上げる荒木の視界で
遠近の力により、ざっと384400km彼方の『月』を、すっぽりと覆い隠して、輝く。
白々とした光輪のみが、まるで『拳』が発光しているかのように―――――――
「…………………?」
―――――『月』?
「それが、どうした」
「…………わかりませんか」
逆光で暗い冨樫の表情は、朧な目鼻立ちしか見て取れず、なんの感情も読むことができない。
「男って生き物は…………その、好きな女の子の前じゃ………『ハッスル』………しちゃうもんじゃないですか………」
恥ずかしがっているのか、そっぽを向いて尻すぼみにボソボソと、言う。
皮肉にもそのお陰で。横顔が月に照らし出された。
赤面、していた。
「……………………………」
一瞬、ぞくりとしてしまう。
今この場に居るのは、自分を含めても、鳥山・藤崎と『男』しか………
(いや『女の子』と言っていたな――――――――――そうか)
それで、『月』か。
「つまり」
軽く咳払いする冨樫。
拳を下ろし、胸の前で、ぐい、と再度握る。
「私にあって、荒木先生に無いもの。『最後に勝つ』為に必要な――――『最後のピース』」
―――――すっぱい表情しとるなぁ――――――
「 ――――――― 『 愛 の 力 』 」
ず ど ――――――――――――――――――――――――― ん(背景爆発効果)
127 :
邪悪誕生:04/09/05 08:05 ID:jxHvNel9
>>118 「ククク…お疲れだったね、キジムナー――【三好雄己】クン」
サングラスの男が満面の笑みを浮かべながら、三好の労をねぎらう。
「フッ…あんたに例を言われる筋合いはない…紅蓮…」
キジムナーの化粧を落しながら言いかけた三好を、サングラスの男――紅蓮が遮る。
「その呼び方は違うよ、三好クン。僕こそが藤田…藤田和日郎なのさ」
「……そうだったな」
呆れ半分でつぶやく三好。
その横で、紅蓮が懐から奇妙な包丁を取り出す。
「これは『魔包丁』と言ってね……これで切ればどんな物でも美味しくなってしまうんだ……ほら、このように!!」
紅蓮が包丁を一閃すると、倒れていた藤田の体が細切れにスライスされ、それを紅蓮が麺でもすするように喰らっていく。
「うむうむ!自分の半身で作った『細麺』(ヴェルミセル)は格別よ!!」
ちるちるちる、すぽん、と音をたてて藤田であったものは、完全に紅蓮に喰われた。
すると、完食した途端、紅蓮の妖気がケタ外れの勢いで増大していく。
「ははははは!遂に、遂に僕は半身を取り戻した!もう僕は【紅蓮】ではない!
僕が!真の【藤田和日郎】になったんだ!
ふはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
哄笑はしばらく続いたが、やがてそれがピタリと止む。
「…ああ、そうだ三好クン。僕は【悪魔超人】をやめるよ…」
「やめる!?」
「そう…僕はもう飽きちゃってね……それに僕は行かなきゃならない」
「どこへ?」
三好が訊ねる。藤田は、喰い残した人形の左腕を放り捨てると、サングラスを指で持ち上げ、答えた。
「【十二使徒】になりに…さ」
次は白蓮か…
そうか、愛なのかw
月にはまだ嫁がいるのかしら…ww
130 :
作者の都合により名無しです:04/09/05 12:06 ID:BXikmJ7T
ちょっと来ない間にいろいろ進んでるじゃないか
>>106-107 CHOMPA兵団・・・これまたロックなものを
久々に木城のマッドサイエンストぶりを拝めそう
>>109 どこまで行くんだへタレ副将、戻ってこれんのか〜?
>>121 片倉&伊藤到着!
っていうか、松本艦長対応遅いよ!
牽制とかのんきなこと考えてる間に、向こうは布陣を完成させてるぞ
>>122-126 愛の力ってオメー・・・実に愉快なやつだ
荒木、ここから這い上がれるか?
>>127 藤田といい、皆川といい、リアルで打ち切りの危機に晒されてる連中がのきなみ黒化していくな・・・
それにしてもキジムナー強すぎ
(
>>96 >>109 18部55 14部426)
早朝、本宮の豪快ないびきが席巻する影船甲板。
乙一追悼酒盛り大会は日が昇りきる直前まで続き、
鹿児島で乗り込んだあだちや松椿旅館館長夫妻も混じって盛大に行われた。
その余波で殆どの乗員たちはへべれけ状態。一部の人間のみ起床している。
あまり酒を飲まなかった岡野と、そもそも酒に酔うのかどうかもわからない川原は、
朝日と潮風を浴びつつのんびりと板の上に座っていたが、
澤井は飲みすぎで却って眠る事もできずに死んでいた。
ふと岡野が声のする方向を見ると、川原が携帯電話で誰かとしゃべっている。
自分の位置は風上なので内容はわからなかったが、
珍しいというか珍奇な光景だな、と岡野はぼんやり思った。
青空を見上げると、遠くの雲の中にぽつんと蟲船が見える。
それを先導するように鷹――川原の相棒・ルファが影船へ向かって飛来していた。
川原が片目を瞑りながら携帯電話をしまい、岡野の視線の先に気づいて軽く笑う。
南国の初冬の海は太陽を浴びてきらびやかな光の絨毯と化していた。
* * * * * * * *
「とにかくここを抜け出さなくっちゃ!でも周りは高級品ばっかりだし、
壊して逃げたら後で請求書とか届くんじゃなかろーかと貧乏なボクは悩むワケで。
っつーか時空ワープすれば〜ってマスクないしそゆのやめたしボクどーすれば」
10時過ぎ、ぶつぶつと独り言で時を潰す自称「元・裏御伽副将」。
そこそも何故自分が誘拐されたのか心当たりがない。しかもえらい金持ちの組織にだ。
非常に納得がいかない。しかし納得のいく誘拐事件というのもそれはそれで嫌だなとまた悩む。
しばらく色々考え込んでいたが、梅干し脳は潔く諦め行動に移す事にした。
請求書逃れのためかどうかは不明だが、気分で目の部分のみの覆面(フェイスガード某のあれ)
を評議会黒軍基地以来久々に取り出し装着。高級椅子を持ち上げ樫の木のドアに向かう。
「家具職人さんごめんなさいっ!1番にわのまこと、ひとり場外乱闘行きまぁーーーー」
「出ろ」
ガチャッと扉が開き、冷たい瞳を持つ銀髪の男が無表情な顔で現れた。
目を丸くしたにわのが空中で必死に重厚なスウェーデン製の椅子を制し、
銀髪の男は腰の双剣を同時に引き抜き右の刃で椅子を、左の刃でにわのの首筋を捉えた。
「・・・わぁぁ、危なかったー!驚かせてごめんちヤブニラミの兄ちゃん」
「椅子を降ろして部屋を出ろ。別室に“用意”がしてある」
男はすっと目を細めると、左手の剣の側面にある即席覆面野郎の瞳を見つめる。
――こいつは大物なのかマイペースなのかただの馬鹿なのか。
判断のつかない銀髪の男は無言で両の剣を引く。
2本の鞘にそれぞれ収め、きびすを反すと高級絨毯を敷き詰めた廊下を歩き出した。
にわのは正直に椅子を降ろし、元の位置に返した後、銀髪の男の背中を慌てて追う。
――ただの馬鹿だな。
男は決めつけ、わざと作り出した“隙”を保ったまま、被誘拐者を連れて別室へと向かった。
「ねーねー、なんでボクなんかゆーかいしたんですかい?メリットないじゃん」
とぼけた声で質問するにわの。銀髪の男は無言で歩を進めるが、
目的地の扉の前で立ち止まると、つられて静止した瞬間のにわのの顎に向かって、
腰を落として廊下を踏み込んだ瞬間に掌底を打ち込み――――
「どわっ!!」にわのはとっさに首を捻ってかわした。
姿勢が崩れる間に男の二撃目、にわのは男のハイキックを腕で上段ガードしつつ後方に飛び退る。
それを即座に追う銀髪の男は走りながら腰のものに両手を伸ばし、
先程のように鞘から抜こうとする刹那、視界に入ったのは迫り来るスニーカーの裏。
にわののカウンタージャンプ蹴りをしゃがんで避けた男は同時に腰を半捻りし、
空中に浮かぶにわのを撃ち落すためシュートを蹴るようにかかとを振り上げるが、
虚空のにわのは器用にも男のかかとを踏み台とし、ポンと反動をつけて廊下に降り立った。
双方体勢を立て直して睨み合い、しばし沈黙。やがて銀髪の男が無感情な声を発した。
「レスラー系漫画家、柔術流派の免許皆伝でもある男か。なぜ闘わない?」
男の瞳は氷のナイフのように鋭く尖った光を見せた。
「やだーぁ。キミの攻撃ってなんか≪氣≫が混じってるじゃん。発剄っての?
当たったら痛いじゃないかぁ。それにボクはケンカは卒業したお年頃なのデシ」
「・・・≪掌妙勁≫という技法だ。何ならもっと詳しく見せてやろうか」
「お断りしますー。んでこの部屋に入ればいいワケ?じゃー行くからね」
「・・・つまらない男だと、自分に足枷をつけているのではないか」
「なんばゆーとるですか、ホントの事じゃないッスか・・・じゃあ入りまーすコンコン♪」
自分の声でドアをノックした、にわのが入った部屋は通信室だった。
この部屋も一流どころの調度品で整えられている。
銀髪の男が後ろ手にドアを閉め、巨大モニターの周辺を操作してマイクのスイッチを入れた。
「この方がお前に話があるというので屋敷に連れて来た。
本当は昨晩のうちに計画を実行するつもりが遅くなったので、
こちらに向かう予定が変更され通信のみだ。下手な返答をすると殺す」
男は冷然とした視線をにわのに向けたまま操作盤のボタンを押した。
『・・・ ・・・ やあ ごきげんよう ・・・よく眠れたかな? お客人 ・・・』
電波の受信が悪く、声はともかく相手の顔がよくわからない。
しかしにわのが見るに汚い画像の先の人間は、相当恰幅が良く威厳らしきものを持っていた。
『ご苦労、田島。・・・少々【仕事】が忙しくてな。まあ楽にしたまえ、先生』
田島と呼ばれた男は小さくお辞儀をすると、壁まで下がりにわのの監視を続けた。
「君がボクに用があるとゆー奇特なお方ですか。何事ですか?お名前なあに?」
訊ねられた男はモニター画面の向こうで答える。
『私は平野という漫画家さ。ああ、そういえば同じ出版社で仕事をしていたかな。
私は今嬉しい事にとても多忙でね、時間が惜しいので率直に言おう。
田島に渡した写真がある。それを見て私の提示した条件を果たしてほしい』
きょとんとしたにわのが田島と呼ばれた男の方を向くと、
田島は顎でモニター近くの台に置かれた2枚の写真を指し示した。
にわのはそれを取り1枚目に目を通した瞬間、全身を強張らせ肩を震わせた。
「こ・・・これは・・・まさか・・・!?」
『見覚えのある顔なのだね。≪彼≫は今、私の許に“在る”。
詳しい説明は省くが、ようするに魂魄分離だ。これはそのパーツのひとつ』
愉悦の成分を混ぜながら、にわのに語りかける平野。対する男は表情が硬いままだ。
「・・・似てるよ、≪彼≫の若い頃の、人間だった頃の顔にとっても。
ボクの一番最初のアシスタント君さ。最近は疎遠だったけど・・・」
1枚目の写真には、恭しげに石膏像のようにビロードの布に置かれた、
平野の持つ≪小畑健≫少年の頭部が撮影されて、いた。
「・・・返して。バティを返してくださいよ。
彼は10年前ボクと違う場所で“あの事故”に巻き込まれて、
弟子の矢吹君に拾われ改造手術を受けてから、いいようにコキ使われてきたんだ。
無理言って田舎で野菜作りながら仕事させてもらってたようだけど、
あれから直接連絡とか取れなくなっちゃって、風の噂ではすごく苦労してたみたいで。
ボクは彼にも何もしてやれなくて、今だって・・・。
これ以上彼を苦しめないでくれ。生きててくれてて嬉しかったけど、
こんなモノみたいな状態じゃ意味がないよ。
せめて今の肉体を元に戻してやってくれ・・・」
『理解が早いのは助かるが、さて、
戻せと言われてはいそうですかの世界ではないと思うのだが?』
呆れ声の平野。それでもにわのは静かに、寂しそうな瞳で微笑みながら語りかける。
「頼むよ・・・彼は大切なともだちなんだ・・・」
『こういう男なのか?田島』
聞かれた男は「ただの馬鹿です」と返事をした。
『・・・はははは!実に面白い。面白くて反吐が出そうだ。だが、“相応しい”。
いいだろう返そう、ただし条件がある。もう1枚写真があるだろう?
そこに写る者を倒してほしい。なに、殺す必要はない。相手が負けを認めるだけでいい。
制限時間は本日の準決勝戦、君たち裏御伽の試合終了後から日が替わるまでの間だ。
時間に猶予が欲しければ早めに試合を終わらせるよう努力したまえ。
方法は任せよう。毒でも罠でも何でもやるがいい。判定のために監視させてもらうがね。
質問はあるか?反論は却下する。・・・どうした、何を呆けているんだね』
「・・・ボクが勝てなかったら、バティはどうなるんだい?」
搾り出すような声が、2枚目の写真を握る男の丸い背中から漏れる。
『さて、どうしようか。刻んでミキサーに放り込むか、丸呑みするか齧りつこうか』
「やめろ!!やるってのならボクでも食ってろバカ!!
第一勝てるわけがないだろう、勝てたら怖いわこんなのに!!」
椅子から勢いよく立ち上がったにわのは怒りの拳をモニターに叩き込む。
中指の第二関節が隆起した独特な握りの拳が、液晶の一部に派手なヒビ模様を描いた。
『そう喚くな。そうだな、君の仕事内容如何で考えさせてもらおう。
では私はこれで失礼するよ。・・・やれないとは、言わせんよ。
いくら相手が相手でもな。そうそう。最後に伝言がある。
―――あの≪島≫では我が隊の真鍋譲治がたいへん多くのご馳走をいただいたとか。
彼はいたく感謝していたよ。≪別府≫では食べてる間に殺されてしまったようだがね。
≪彼≫に伝えてくれないか?真鍋が傷物にした君の恋人は元気かい?とね。それでは』
通信が途絶え、田島が回線を閉じる。
しかし写真をぐしゃぐしゃに握りしめたにわのは、立って硬直したまま動かない。
田島は脅しのため三たび剣を抜こうとしたが、相手の表情を見てやめた。
眼前の覆面男は哀れなほどに怯え、様子見の一撃で本当に斬り殺せそうだったから。
「さて用件は終わった。その写真は好きにしていいそうだ。
ここは平野様の別荘でな、矢吹艦までは相当遠い位置にある。
艦に輸送させるが、定石通り眠っていてもらう。先刻兵にやらせたように、
殴って気絶させてもいいのだが薬にしておく。この酒に混ざっている。飲め」
再び元の部屋に戻されたにわのだが、田島の声にぴくりとも動かない。
しかし酒入りの瓶を視線に入れられた瞬間、ヒステリックに叫び出す。
「あ、やだ、ダメだ!それだけは嫌だ!絶対にダメだ!変身しちゃうよ!
これ以上思い出したくない、飲むぐらいなら死ぬよ!てゆーか殺せよ!!」
田島は(面倒な奴だ)と心の中でぼやきながら、にわのの鼻と口を塞ぐ。
ぎりぎりまで耐えさせた後に口に当てていた手だけ外し、
顔面が紅潮した男が深呼吸するのと同時、瓶の中の酒と薬を喉の中に突っ込んだ。
「・・・・・・・・!!」
この後の男の反応は確かめず、薬の効く20〜30分後にまた来ると言い残して田島は部屋を出た。
* * * * * * * *
蟲船が影船の脇にゆっくりと着水した。
100メートル超の巨体は海の上で心地よさそうに浮いている。
開閉口から乗員3名――真倉・岡村・山田――が降りて船に乗り込む。
本宮が起きて大あくびをし、≪家族≫の無事を喜びふらふらと駆け寄る。
「よお岡村ァ!いつ以来だ?無事で何よりだぜ!ところでこのお嬢ちゃんは誰だ?」
「あ、や、山田秋子と言います。訳あってお世話になっております」
朝日の反射で眼鏡を光らせながらおじぎをする山田。
「こいつも漫画家みたいだぜ。俺のフェロモンが効かねえんだ。
よっぽど耐久力があるのか別の力があるのか、実に骨のある奴だ!」
真倉が妙な方面で感心し、山田があいまいな返事と笑顔を見せる。
岡村が本宮たちに無礼ド関係の報告をしている頃、
案内役のルファに朝食の肉をやっている川原に近づく影。山田だ。
「・・・あの、川原先生ですよね?ある方よりこれを託かっております・・・ええと」
声をかけた後に肝心の渡す品を出してない事に気づき、
慌てて鞄から本を取り出し封筒を抜き出す山田。
封筒を受け取りながら、川原は彼女にいつもの微笑で声をかけた。
「本好きなのか。そんな顔だな、あんた」
「あ、はい。好きというかなんというか・・・好きですね、はい」
ルファが甲高い声でピロロロと鳴く。川原は無言で笑い、僅かに細目を開け口を開く。
「俺も割と読む方だ。本からは多くの世界が見渡せる。この世の真実なんてのも恐らく・・・な」
山田の眼鏡の奥の瞳がミクロ単位で収縮する。それに気づかぬような態度の川原、
しかし渡された封筒の中身を読んだのち、顎を左手の指に置きひとりごちる。
「・・・なんだ。俺宛に招待状、か?日付は・・・」
* * * * * * * *
「大変です!例の漫画家の部屋の窓が割られ、中はもぬけの空です!」
警備兵――開発中の川三番地特殊部隊のひとつ、
防衛用に耐久面を飛躍的に向上させた川三番地グレート部隊(仮名)から、
所用で1階にいた田島に報告が入ったのは先程の通信より僅か数分後である。
短い眉をひそめた田島が部隊に返事をする前に、別のグレートの叫び声。
「田島様、事件です!屋敷の敷地内に『ギリギリぷりん』が乱入しましたぁ!!」 「・・・誰だって?」
「出たぁー!!爆骨少女が出たぞーー!!」
「迎え撃て!!関節さえ取られなければ敵ではな・・・ぐああ!!」
魔の森に展開する部隊がひとりずつ、どさりと地面に倒れ伏す。
謎の侵入者はゲリラ戦を展開しながら、どうやら出口を捜しているようだが、
ここは昼間でも闇の眷属が心地よく過ごせる仕様で、
普通の人間にはただの森が迷いの森と化し、侵入も脱出もできない仕組み。
田島がにわのを眠らせようとしたのはこれらを回避するためだったのだが・・・。
「賊は人間の女ひとり?異常事態だな、平野様に伝えろ。俺は賊を捕・・・」
霧の中で指示のため剣を振る田島の隣にいた川三番地達の一匹が突然姿を喪失させた。
落とし穴に消えたかのような動き、田島は周辺を二刀で薙いで襲撃に備える。
――黒い影が疾る刹那、田島は見た。川の一匹の首に向かって跳ぶ回転ダブルライダーキック。
キックの足は顔面ヒットの直前V字に開き、がっちり川の頭部と首を挟み込み、
同時に空中で身体をねじって川を前のめりに地面へ叩きつけると同時に――
『謎の覆面女』が川の両足を取って両のワキに挟み入れ、海老反りにして全体重をかける!
「 ボ ス ト ン ・ ク ラ ブ(逆エビ固め)!!」
「ギャアアアアア〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!」
バキボキと骨の砕ける気持ち悪い音が響き、また一匹犠牲者が生まれた。
「あの男を捜さねばならんというのに・・・邪魔な賊め、死ぬがいい」
2本の剣の柄頭を突合せ、1本の両刃剣にした田島が静かな怒りと共に霧を切り裂く。
手応えはあったが剣先には布の切れ端のみ。謎の女の姿はない。
(・・・苦しい、ここの霧は気持ち悪いよ・・・出口が見つからない・・・。
この姿は嫌だ、誰にも会いたくない、逃げなくちゃ、でも、息が、続かな・・・)
ヒュオッッ・・・
―――― 「わあああ!!」 ザシャアッッ!!
「手間をかけさせるな」
最初の戦闘より10分が過ぎ、賊の動きが明らかにおかしくなってきた所の、
隙を逃さず攻撃を放ち、一刀のもとに切り伏せる田島。
反撃があるかと身構えた彼は、霧にあてられたように地面に転がり動けなくなった女に気づき、
女の長い髪を引っつかんで顔の確認をした。肩から血を流す女は苦しげな吐息を漏らす。
気の強そうな瞳、亜麻色のストレートヘア、緑色に染めた前髪、そして既視観のある覆面・・・。
田島は知らない『鬼畜娘バージョン・にわのまこと♀』そのものであった。
「・・・あいつの妹か何かか?あの男をどこに隠した。言え、さもなくば・・・」
「田島様、こいつの尋問は我々に任せて、例の男の捜索に回ってください」
川三番地グレートの部隊長の進言を受け入れ、地下の一室から出る田島。
それを見送った後、30人程のグレート部隊はゲヘヘヘと野卑な歓声を上げる。
「よくも仲間たちをやってくれたなネエチャン〜。
これはオシオキをしなくてはいけませんな〜。泣いても許さないからね〜」
1人の声で30人が下手くそな口笛を吹いたり腕を振り上げる。
新型の拷問用アイテムのどれを責め具として使おうかと不快な話題で盛り上がっている。
「ボ・・・ボクは、女じゃ、ない・・・。
変身、してるだけ・・・信じて・・・だから、やめ・・・て・・・」
井戸のように2メートル程掘られ整備された縦穴の牢獄の中、
両腕を釣り上げる形で上半身のみ釣り上げられた「まこと」は、
先程の戦闘で傷つき露わになった上半身を髪で隠しながら小声で訴える。
しかしその姿がますます改造吸血鬼たちの嗜虐的感情を昂ぶらせてゆく。
「どこをどう見ても女じゃねえか。ん?ああそうか、隅まで確認してほしいんだな。
ここに開発中の『服だけ溶かすスライム』があるんだが、そう言うことなら遠慮は、ねえ」
「・・・い・・・や、だ!いやだぁ!絶対やだぁ!舌噛んで死んでやるぅっ・・・」
絶叫はしかし途中で急速に力を失う。彼女の脳裏によぎった2枚の写真だ。
(ダメだ・・・ここで死んだらダメだ、バティを・・・でも・・・)
何かを諦め、全身の力を抜き、瞼だけは固く閉じるまこと。
吸血鬼たちは了承の合図と取り意気揚々とスライムを井戸牢にぶち込む。
(“約束”は、約束の方は・・・ 無理だ・・・ たぶん・・・)
蠢くゲル状の生物は彼女を守る衣服と同時に、矜持と精神の均衡を溶かし奪い去ってゆく。
(・・・こんな事に耐えてまで、生きなくちゃならない、それがボクに与えられた罰・・・?)
あらかた服を溶かし尽くしたスライムだが、見物者たちには不満の残る結果になった。
(だとしても荒木先生・・・ボクのちっぽけな『覚悟』ひとつでは)
“最後の一線”を剥がそうと何匹もの吸血鬼が井戸に飛び込み女を囲み、足や肘を押さえる。
(ボクは、自分自身すら、救えない)
* * * * * * * *
「いや、今日ではない。明日だ。その招待状にきちんと書いてあるはずだが」
屋敷の玄関に人間の訪問客が訪れたと聞き、部下に追い払わそうとしたが、
人間の正体――川原に気づきすぐさま玄関に駆けつけた田島が訝しげな声を出す。
カードを持ってボリボリと頭を掻く川原は、馴染みの道着姿にニホントウの完全武装。
とても『お屋敷に招待された賓客』には見えない。平野の命令どおり彼をここまで案内した、
山田が背後から顔を出し、川原と田島の表情を見比べてぱちくりと眼を開いた。
「へえ、そうか。日付を間違えていたかよ。そいつは悪かったな。
ところでせっかく来たついでだ、茶菓子のひとつでも食わせてはくれないか」
悪びれず、にこりと笑う川原。山田は恥ずかしそうに両手で顔を覆う。
「生憎それどころではない。明日改めて来てもらおうか」
煩わしげに客を追い払う田島に対し川原は笑顔のまま。
「ずいぶんと多忙なのだな。先客でもいるのかい?この屋敷に」
「ああそうだ、だからお引取り願おうか」
田島の投げやりな返答の直後―――場の空気が一瞬だけ変化する。
「?」
山田が首を上げた時、屋敷の上空に一羽の鷹が舞い上がり、けたたましく鳴いた。
直後―――
山田が驚愕の声をあげた。
「ああっ!!私たちが乗って来た蟲船が・・・屋敷に向かって落ちて来ますっ!!」
急激に狭くなる空。迫り来る巨大多足昆虫の腹は得体の知れない不快感を与える。
山田の声に空を向き声にならない声をあげた田島は次の瞬間、
川原の筋肉質な腕で首を極められ自覚もないまま落ち、気を失った。
「ヤマカンだがたぶんいるだろうな。さて、山田・・・と言ったな。屋敷を案内してもらおうか」
山田がその声を聞いた直後、瀟洒な洋館の半分は蟲船の肢に踏み潰されていた。
* * * * * * * *
「うぁっ・・・!あ、あう、あうぅ!
や、やっぱり嫌だ!触るな!やっ・・・くぅっ!」
拘束された手鎖の手首部分が、暴れるため皮膚がえぐれ赤く腫れている。
ジャラジャラと激しく金属音を奏で、彼女の精神の限界まで共に戦う意思を表している。
「なあ、こういった“辱めに泣いて耐える女”を見ていると、何かを思い出すんだけどさあ」
「ああわかるなそれ。喉まで出かかってるんだけどなあ、なんだったっけな」
グレート部隊の数名が、自分たちの記憶の欠片を必死にはめ込んでいる。
「そうだ、昔読んだ漫画だ!あれは凄かった・・・。
何が凄いかってあの当時は【エロ漫画追放運動】が盛んで、
そいつの掲載誌でもかなり酷い粛清があった。だが奴の漫画はそれ以上にヤバイのに耐えた。
あまつさえ人気作なのに『作者が描きたくないから自ら連載やめた』らしいんだ・・・」
「その漫画なら俺も知ってる。しかもデビュー作だったんだろそいつの。
風の噂ではそいつ、今じゃ違うジャンルですっかり大物作家らしいぜ。
だけど残念だよなあ。あれは一部で伝説になってるんだ、絶対こっちの世界でも、
やればビッグになれたろうによ・・・お、見ろよあの女、そろそろ・・・」
「(ゴクン)来るな・・・いつ“決壊”するかドキドキするぜ」
「このギリギリ感はたまんねえな・・・あ、漫画のタイトル思い出した」
「なんだよ!もったいぶらずに教えろよ!」
「あれだよ月刊誌の・・・そうさ【パラダイス学e
ド ギャ ギャ ギャ ギャ ギャ ギャ ギャ !!!!
「「「なんだぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!???」」」
石造りの地下室は一瞬にして、一斉に≪破壊槌≫によって崩壊した!!
そしてドドドド・・・と重厚な音が響く中、グレート部隊は確かに見た。
破壊槌――巨大な昆虫が持つ数十本の肢と、それらの隙間を縫うように現れた、
天地神明に拳振る、破壊神の笑みを浮かべた 修 羅 を。
「 そ の 名 を 出 す か よ 」
・・・記憶力が良かったばっかりに川三番地グレート部隊はこの日を境に完全消滅した、そうな。
「・・・みっともない姿でしょ。それでもねえ、ボクは生きなきゃいけなかったんだよ。
見られたくはなかったけど。特に先生には。・・・ボクは自分さえ救えない。
ひとりで生きてゆく事もできない。それでも・・・誰にも迷惑かけたくなかった・・・」
「人は1人では生きられない?当たり前だ。今頃気づいたのか、馬鹿が」
「先生までバカゆーた。どーせボクはバカですよノータリンですよ」
「第一なんでまた変身してるんだ。いちいち思い込むから本当に変身しちまうんだ」
「・・・ボクはこの先どうやって、先生に恩返しすればいいのかな」
「悪い馬鹿ではなく良い馬鹿になればいい。・・・今度こそ帰るぞ。手の鎖は後で外してやる」
「帰るって・・・ボクがいるだけでまた昨日や今日みたいな事が」
「帰る場所を思い出せただけで許してやる。自分の足で歩けよ。行くぜ、副将」
「おらァ〜〜〜〜!!ぶちぎれ金剛じゃあ〜〜〜〜!!」
蟲船の一撃で瘴気バリアを失った洋館は、本宮が解体用のレンタル建機で地上部を破壊し回っている。
酒が抜けない澤井は影船に置いてきたが、真倉は岡野の身体に戻り瓦礫の周囲に水を撒いている。
気絶したままの田島の頭部を掻き抱きながら、気絶寸前の山田が口をぽかんと開けている。
「ま、いろいろ怪しかったもんでな。一応皆で来て正解だったって訳だ。
あんたもこれからそうしろ。細かい話は後で聞く、今はおとなしく船に戻れ」
ベッドのシーツで全身を包んで照れ臭そうにポテポテと歩く女は、
コクンと小さく頷くが、何かを思い出した様子で川原に振り向く。
「あのさ。今晩試合終わったらデートしよ」
「おまえ、いよいよやばくないか?」
「行先はボクの大好きな場所ね。荷物は道着だけでいいよ」
「・・・へえ、副将を口説き落とすのに1年以上かよ。
この調子じゃあ、大将を引っ張り出すのは何年かかるかわからない・・・な」
「・・・フツツカモノですが、よろしゅう頼んまさ」
「だからってあんたが試合を手抜きしたら、俺は行かないし携帯の修理代も出さん」
「今サラッとなんか、のたまいやがったモン・・・」
「気のせいだ」
(これでもいいんでしょ?平野君。・・・勝てなかったらごめん、バティ。・・・ごめん、センセ)
『ただでさえここからは繋がりが悪いのに、建物ごと機器を破壊されたらどうしようもないな』
ひとりお屋敷の残骸をチェックして回る川原は、いくつか小物を拾いながら歩き、
最後まで生き残っていた平野とのホットラインを足元に発見した。
どうやらこの声の主が黒幕らしいと理解する。
他の連中は蟲船に戻っている。田島は瓦礫に放置、案内役・山田は船の空き部屋に鍵付きで入れられた。
今頃“裏御伽創設メンバー”だけで家出息子(娘?)の晒し上げ大会が行われているだろう。
特に松椿でモモマスクを保護した真倉は副将の首ぐらい締めていると予想される。
しかし肝心の男はまた変な薬を飲まされたらしいのでとっくに寝込んでいるかもしれない。
川原は鼻の先だけで笑うと、足元の機械をひっくり返してマイクを掘り出した。
「あんた、真鍋の上司なんだってな。部下の失礼は上にも責任があるんだぜ」
『ふふ、修羅殿か。1日勘違いというのは嘘だろう?直感の鋭さ、恐れ入る』
「・・・回りくどいてめえらの目的は何だ?一体何をおっぱじめたいんだ?」
『ああ、ただの戦争だよ―――全ては次の戦争のために、次の次の戦争のために』
「暇人だな。手下もそうだが、人間を捨てるとさぞかし退屈なんだろうな。
・・・直接果たし状を持って来ればよかったんだ。てめえの命日が早まったぜ」
『言っておこう。君は私たちと同じだ。こちら側の人間だ。それを忘れぬように』
「平野・・・俺も一言言っておく。
この先俺の『友達』に、手を出すような事があれば・・・その時は、
俺がこの手で、あんたの戦争(ゆめ)を叩き潰す・・・」
『覚えておこう。では、また明日』
平野の返答と同時に川原の足が通信機を踏み抜く。
ショートの電気と煙が舞い、新たに清浄な外気が混じりこむ。
川原は無言でニホントウを背負い直すと、『友達』が多く待つ蟲船へと向かった。
まったくの余談だがこの後にわのは特訓して自在に女体化できるようになったり、
昨晩からの薄着ぶりが祟ってかトイレに篭る羽目になったが本当にどうでもよかった。
←TO BE CONTINUED
とうとう対戦フラグが…というか闘えたのか副将
うお、長編がキテタ━(゚∀゚)━(∀゚ )━(゚ )━( )━( )━( ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━ !!
おっかれさん。
良くも悪くも裏御伽に染まってませんか王子さまw
つーかここまで来ると王子と言うよりおにいちゃんなようなwww
>>107 あの時荒川は「クレイジー・・・」と言いましたが、それはどのような意図で言ったのか?
自分に理解できないものを「狂気」と名づければ、自分は正常でいられるし「狂気」に近づく必要も無い。
相手を完全に否定する、便利と言えば実に便利な言葉です。
しかし、それもひとつの狂気ではないのか?自分に合わないものは退け排除するのが正常な科学者なのか?
錬金術者がこの世界を創ったのか?彼女は科学者でありながら、理解を拒絶したのです!
ロックでガッデムでデストローイとは・・・
この世の既成概念を破壊し、常人の想像をはるかに越える、新しい推進力のことです。
私はあなたの全てを理解し、その全てを受け入れ、
あなたをより高めていく覚悟と自信があります。
この世に『正気と狂気』など無い。あるのは一千の狂気の貌(かお)だけです。
すべての精神状態は狂気の別々の側面にすぎない。
自己追求の極限の果てに限界を超えた自由の地平がある。
CHOMPA兵団は私の愛なのです。どのような手段を使っても!
私は最凶の軍を作るつもりです!!
(
>>91)
どこまでも同一線上の睨み合いが続く矢吹艦某所。
昇龍・車田と猛虎・宮下は互いに戦闘態勢を取ったままぴくりとも動かない。
指一本、片方の眉ひとつ動かしただけで・・・
全ての均衡が崩れる事を彼らは心身で感じていた。
それを見つめる4つの瞳。
2つは夜空のように澄んだ熱い瞳、2つは死んだ魚のような濁った瞳。
「宮下先生にいったい何が・・・?
それに腰に下げたとっくり、あんなの持ってなかったのに」
澄んだ瞳の少年、えなりが汗を流しながら固唾を飲んで竜虎を見つめる。
『だーからよ、気になるんならハゲに聞けばいいだろうがよ。
このままボケェェェェェッと見てたらてめえもますますハゲるぜマダオ』
腐った瞳の幽霊、白っぽい銀髪のサムライ空知が緊張感ゼロの声を出す。
「そんな事言われてもできるかぁぁ!!
てゆーかマダオって誰だよ僕はえなりだって言って」
『まるでダメな男、略してマダオだ』
「!!!」
“なんだってー”とか絶叫しそうな表情で空知の方を向くえなり。
一方空知は戦場近くの看板広告に描かれた巨大チョコレートパフェばかり見ている。
「ダ、ダメ男で悪かったなっ!だけど下手に介入すれば、
僕はともかく車田先生にまで被害が出てしまうじゃないか。
ちゃんと計画を立てないと・・・」
『知ってるかマダオ?それは計画たあ言わねえ、おまえがビビリなだけだ。
時には一時のテンションに身を任せるのもガキの仕事なんだぜ可愛げがねえ。
よっぽどお坊ちゃん暮らしだったんだな、俺なんざ貧乏が染みついてヨォー、
都会に出て稼げるようになっても金が恐くて人間不信になっちまって、
担当が印税の話するだけでもおい聞けよコラ』
「あんたの苦労話なんかどうでもいいわァァァ!!」
えなりの青筋もシカトし、空知はなおも言いたい放題。
『人生のレール踏み外せるのはガキの特権だろうが。つうわけで今すぐ、
実家の全財産俺に譲ってハングリー精神を養って立派なハゲになれやマダオ』
「それとこれとは関係ねぇぇぇぇぇ!!!」
『まあそう言うな。若いうちの苦労を青田買いって奴だ。
ただしあずきの先物買いには手を出すなって死んだ近所のおっさんが言ってた』
「どこまで真面目な話なのかわかんねー!!」
『いいですかー人と言う字はぁー裏から見ると入れるとなっていわゆる営みを意味し』
「聞きたくない聞きたくない」
『あーこの手のきわどいネタはよいこのジャ○プじゃ読めないからテストに出ません』
「早く成仏してくれないかなこのヒト・・・」
こうしている間にも、大量のスポットライトの照明が向いた先の、
えなり達の遠方に霞む別府と呼ばれる土塊の山岳には、何千人もの矢吹軍がとりつき、
制圧と同時に『別府市民の新生活』のために急速な整備が始まっている。
この先ずっと矢吹艦に、蟹の上のいそぎんちゃくの如く乗っかっているのか、
いずれ期を見て地上のどこかに降ろされるのか、
そもそも一般人が残っていない事もあり今後はまったくの不透明だが、
かつて別府が存在した地域には気づけばとんがり山と森の海が生まれており、
もはや過ぎた時は取り戻せないのだ、という事実がそこに存在した・・・。
それはともかく。
『マダオではなくマスオ(まあ素敵な男)と呼ばれたかったら戦え。当たって砕け散れ』
「自分死んでるからって無責任だなー。・・・は!そうか!幽霊か!
武井さんも板垣先生もいなくなっちゃってすっかり忘れてたけど・・・。
空知さんでしたっけ、あんたの得意技術は刀なのか?
憑 依 合 体 なんてのをやってみようかな、なんてね!」
『はい次行ってみよー』
「絶対続き考えてないだろこれ!!」
(
>>37 >>96)
変態騒ぎもとりあえず収まった、深夜の戦艦無礼ド。
ニュース情報等はビデオ録画で確認する事にして、今はとりあえず皆眠る事にした。
ご立腹の留美子嬢が変態チームの連中をその後どうしたのかは、
「クス。秘密よ」(留美子:談)との事であった。
なお安西および金田一の世界の中の人の、その後の消息も不明である。
全身包帯の村枝と、疲労で目の下にクマができて邪悪な人っぽい目つきのカムイが、
同室になり他の連中も好き勝手に部屋を見つけてベッドに潜った。
漫画家は睡眠不足ではへこたれないが、
たとえ〆切間際でも寝なければならないと悟った時は、あえて寝る。
これはクリエイターの、いわゆる不文律。
現在行方不明の島本和彦の珠玉の名言でもあった。
カチ コチ カチ コチ
時計の針の音が静かに広がる暗い部屋。
(あたし、いつのまにか寝ちゃった・・・)
いつ電気を消したか覚えていないが、
椅子に座った彼女がもたれて眠っていたベッドから顔を上げた時、
広い客室は真っ暗になっていた。彼女──樋口は、
今まで自分が頭を乗せていたシーツの下にいる存在を思い出し、
そういえば2人っきりだったっけ・・・と溶けかけた思考を再構築させる。
途端に耳たぶまで熱が回った気がした。
(み、三浦さん・・・まだ寝てるかな、
包帯替えた方がいいかな、寝汗はかいてないかな・・・ええっと)
なぜ自分でも焦っているのかよくわからなくなってきた。
隣のベッド──柴田ヨクサルが寝ていた場所──には気配がない。
しかし慣れたとはいえ闇の中、手探りで所在を確かめるのもまた恥ずかしい。
三浦が頭までシーツを被っているのを確認した樋口は、
ベッド脇の壁にあるブラケットのスイッチを入れ部屋の一部を照らした。
『うーん・・・』
シーツの下からくぐもった声が聞こえる。慌てる樋口。
「あ!ごめんなさい、起こしちゃった・・・?」
声の主は樋口の問いには答えず、ベッドからむっくりと半身を起き上がらせた。
シーツがめくれた先の姿を見た樋口は思わず────
照明が半分以下に抑えられた艦内廊下。
寝ぼけた椎名が独り言をつぶやきながらトイレを捜して徘徊している。
「う〜ん、ふむー、たとえ六畳一間でも・・・、
留美子さんがいて、秋子さんがいて、樋口ちゃんがいて、審判の河下ちゃんがいて・・・」
歩きながら幸せな夢を見る男は、曲がり角を過ぎた直後、
なにやらふんわりとした壁にぶつかってしまう。
少々すえた臭いがするが、懐かしい田舎の家の香りのようなそれを、
椎名はとても気持ちよさそうにぎゅうっと抱きしめた。
「あははー照れるな苦しゅうないー近うよるのだ〜〜(むぎゅー)」
『離せ。俺は男に近寄られる趣味はない』
「へ?」はっとして顔を上げた椎名が見たものは────
「キャアアアアアアアア!!!!キノコとカビでできた怪物が出たぁぁぁぁ!!!!」
「おぎゃあああああああ!!!!怪奇巨大キノコカビ男の襲来だあぁぁぁぁ!!!!」
モンスター2匹登場!果たして2人の運命やいかに!?続け!!(←?)
おっと水野嬢や荒川さんを入れ損ねました
椎名どうするよ
152 :
椎名:04/09/08 18:58 ID:wXKhOTF/
やだなー!言わなくてもわかってるクセに〜(゚∀゚)エヒャ
>>103の続き
戸田「へっ…、逃げ足だけは速い野郎だぜ」
山口「ともあれ、これで残る敵は2人…か」
吐き捨てる戸田の横で、山口貴由が新たな敵に目を向ける。
そして、学ランの上着を黒い翼のように羽織った無表情な男の顔を見た途端、山口の貌が一変する。
山口「……田口……」
山口の揺れる視線を、田口は感情の全くこもらない冷ややかな視線で返してくる。
この男にしては珍しい動揺した声色に、戸田が怪訝な顔をする。
戸田「なんだ、アンタがそんな顔するなんて珍しいな。……知り合いか?」
山口「………………」
田口「………………」
事情を知らぬ戸田と由利をよそに、2人は黙ったまま睨み合いを続けている。
戸田「……強ええのか?」
あえて深い事情に突っ込まず、この場において最も重要な事柄だけを聞いた。
山口「……素質は俺の10倍といったところか」
戸田「……それほどか」
戸田が唸る。
山口「無論、それだけで勝負が決まる訳ではないが……並の相手でないことだけは確かだ」
さすがに百戦錬磨の山口。すでに脈拍は正常値。
山口「……田口、同期のお前とこんなところで見(まみ)えるとはな…」
淡々とした言葉の端に万感を込めて、山口が田口に語りかける。
一方の田口は、一言も喋らず……
スウ・・・
山口「!!」
イングラムの銃口を向ける。相対していた石渡洋司にベレッタを向けたまま。
その瞳には、再開した友に対する情も、ライバルに対する殺意すら、宿ってはいない。
戸田・由利・山口・田口・石渡。
赤い砂漠にここまで立ち続けた5人が、新たな緊張を生み出した。
砂漠に夜が訪れ、再び朝を迎えるまで続いた長い死闘。
灼熱の日の出と共に、最後の局面の引き金を最初に引いた男は……
石渡「(掌弾 裏技――――…)」
「 散 布 」
石渡の両腕の筋肉が膨張し、巻いていた包帯が千切れた。
真白い大きな花が咲くように、白い布が乱れ飛び、4人の視界を覆う。
だが、この契機に、石渡が行おうとしたのは、攻撃ではなかった。
一瞬の隙をついて膠着を抜け出し、疾走する先には……
由利「あいつ、哲を人質にするつもりか!!」
岡田が倒れた今、現在の戦況が極めて不利であることを、石渡はよく理解していた。
石渡は暗殺者という性格上、徹底した現実主義の男だ。
自分と相手との戦力の想定に、一片の幻想も思い上がりもなかった。 そこで由利の仲間であり、今は戦闘不能にされている哲弘を盾にとることを選択した。
全ての者の反応が、一歩遅れ、石渡の行動をさまたげる者はいないかに見えた。
だが、そのとき……
パァン!!
石渡「!!」
石渡の利き腕を、銃弾が貫いていた。田口のベレッタが、硝煙を吹いている。
戸田、由利、そして山口ですら一瞬反応が遅れた中で、田口だけが正確に石渡の動きをとらえていた。
山口をして天才と言わしめた田口の、恐るべき資質。
想定外の痛みが、石渡の注意力を、一瞬奪っていた。
目の前に新たな人影が現れたのを視界の隅でとらえた瞬間、
バ キ ン ッ !!
足元から這い上がってきた衝撃が、刹那にして石渡を貫いていた。
155 :
異能の男:04/09/08 23:37 ID:h8rkjoGk
一瞬、石渡の身体が、陸に打ち上げられた魚のように跳ね、硬直したまま倒れた。
その光景を呆然と見つめる4人の前に、左目を眼帯で覆った男が現れる。
大暮「今のは木火土金水の『土』の氣。科学的に言えば、世界中どこにでもある地電流のエネルギーだ」
石渡を不意をついて倒した男は、岡田に倒されたはずの大暮維人であった。
あれだけの傷が、すでに完全に治っている。体調は万全に見えた。
戸田「へっ…しぶとい野郎…」
ドンッ
言いかけた戸田の胸元に、素早く拳が打ち込まれる。
その一瞬の動きが、戸田には見切れないほど速かった。
山口「(迅いっ)」
キュッ ガシャッ
山口「!!」
反撃に転じる前に、大暮の返す刀の裏拳が山口の頬を薙ぎ払っていた。
由利「ヤロ…」
由利が黄金剣を構えた瞬間、
大暮「せめてもの礼がわりだ…。どうだ?まだ痛むか?」
山口「(……礼?)」
そう言われて、戸田と山口はようやく、自分の身体に起こった異変に気付いた。
戸田・山口「(――――…傷…が……)」
戸田の全身を覆っていた夥しい損傷が。
山口貴由の失われていた左腕が。
一瞬で治癒・復元されていた。
<龍掌>
飛翔鳳凰赤羽の龍門(チャクラ)のひとつで、人間の持つ再生力を引き出し、傷を治癒させる能力。
それを今、大暮は2人の身体に使ったのだった。
156 :
異能の男:04/09/08 23:39 ID:h8rkjoGk
戸田「てめ…どーいうつもりだ?わざわざ敵のケガ治してやるなんざ…」
相手に塩を送られたのがよほど気に入らないのか、戸田は怒ってつっかかった。
『礼』とは、大暮を倒した岡田を退けたことか…だとしたらお門違いもいいところだ。
そのとき、戸田の背後で殺気が立ち上がった。
戸田「ちっ!?」
旋風が走る。大暮の地電流で倒されたはずの石渡が、気絶した振りをした状態から攻撃を仕掛けたのだ。
振り返り様に、戸田が拳を合わせようとした瞬間……
トンッ
グ シ ャ ッ
戸田「(なっ……!!!)」
戸田は初めて戦慄した。
戸田の目の前で、石渡が正体不明の圧力に押しつぶされ、地面にめりこまされているのだ。
石渡は声も出せぬまま、今度こそ闇の淵に落ちていった。
大暮「勘違いするな……俺が礼を述べたのは、これほどの敵に巡り合わせてくれた運命に対してだ」
ブウウン…と何かが震えるような音をたてて、大暮の全身に奇怪な紋様が浮かびあがる。
大暮「 そ の 相 手 が 手 負 い で は 俺 が 楽 し め ん ! ! 」
リ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ イ
空気を音叉のように震わせる、独特の音色を奏でる大暮の妖気。
戸田がファイティングポーズをとる横で、山口は考える。
山口「(さっきの石渡を沈めた能力はなんだ?軽く足踏みをしただけで、数メートルも離れた人間を…
それにこの『感じ』……これまでの敵とは全く質を異にする氣だ…)」
その思考は長く続かない。田口雅之が、山口に無機質な殺意を絶えず投げつけているからだ。
3対2。
戦況は、再び膠着したかに見えた……
ゴ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! ! !
全員「!?」
砂漠に、またしても異変が起こった。
煉獄にも似た炎の壁が、熱砂を席巻したのだ。
渦巻き、狂ったように燃え盛る炎の中心に、キセルを吹かしながら座している男がいた。
男は、着流し姿で、普通なら露出している部分の素肌を、白い包帯で顔まで覆っていた。
そのため、男の素顔は見えない。
黒い鉄甲をはめた右手にキセルを持ち、左手は腰の刀に添えられている。
ドブ河が腐ったような目で並みいる面々を見渡した後、紫煙のかわりに細い炎を吐く口で、男は言った。
??「機(しお)だぜ。粋じゃない戦いをするのは、そこまでにしておきな」
ふたたび志々雄モードキター!!
ええっそっちだったのか乱入者!
ほーそういえば行ってたね
>>126 「あ」
冨樫は、気が付いた。
「ははは」と、荒木の乾いた笑いが、景色と共に流れゆく。
相対的に見れば周囲も王蟲で、一緒に激走してるわけだから。移動してる、ったって『地面』が多少揺れる程度………
(………それが、マズかった)
この王蟲、既におもっきし『穴』に接近している。
「――――タイヘンです、荒木先生」
べしっ、と平手で、『腹の高さ』にある、荒木の頭を叩く。
「っ!…………なにをするッッ!」
荒木が勢いよく立ち上がり。血管の浮いた顔が、アップで突き合う。絵柄が絵柄なので、大迫力だ。
「ほら、見てください」と。その荒木の背後を指差し、進行方向の『穴』に注意を喚起する冨樫。
よくよく耳を澄ませば、鳥山や藤崎の「あーぶなーいぞー」「はーやくにげろー」という声も、上空から、聞こえてきていた。
「―――――ね? とりあえず、逃げましょう」
荒木の腕を取り、しかしそれは、乱暴に振り払われる。
「――――ふん。なぜ僕が逃げなくてはならん」
「な、なに言ってんスか!?」
瞠目する冨樫を放置し
「――――もういい」
ふい、と踵をかえし。そのまま迷い無く舳先―――王蟲の頭の方―――に向かう、荒木。
慌てて後を追いながら、衛星のように周囲をグルグルする冨樫が、『説得』にかかる。
「し、死ぬつもりですかッッ!? 博打で負けた負債はドースル」
「五月蝿いな。そんなのは君が勝手にやればいいだろう? 今やってもいいし――――――『死体』から抜いたっていい」
「ゲゲェ――――ン!? …………ヤ、ヤケッパチですか」
「だったらどうだと」
「な、なにが不満なんです!? …………そうか!!! 『愛』……………『愛の力』が気に喰わなかったんですねっ!?」
「…………」
ぴたり、と荒木の歩みが止まる。
「………ああ、その通りだ。その通りだとも!!! えぇ!? おい!!! コラ!!! 糞!!!!」
振り向くやいなや冨樫の襟倉を掴み、激しい揺さぶりをかける。
「『愛』『愛のチカラ』だと!? フ ザ ケ ル ナ !!! そんなわけわからん唐突な屁理屈で
何故に僕が『敗北』を 納 得 し な き ゃ な ら ん !!!! ――――見てろ!!! お習字にしてやるッッ!!!!」
和紙を取り出し、筆持つ荒木。
達筆……とは呼べんが、とりあえず『愛』と書きなぐられる。
――――意味不明も、いいとこだが。冨樫は誠実?に対応する。
「…………い、いや。でも、でもですね。少年漫画の文法的には」
「五月蝿い黙れッ!!! よしんば、一千万歩譲って『愛』を認めるとしてもだ!!!
今の今まで欠片ほども『彼女』の名前を出さず!!! 気遣う様子すら見せず!!! 突然、取ってつけたように………
心の奥底では繋がってるとかいう、そーいうアレかッッ!? ―――――そんなタマか貴様がッッ!?
………というか『月』だから『グー』だと!? んな強引で、こじつけで、無理矢理な」
「誤解されてるなあ……………わ、わかりましたよ。えーと………それじゃ、そうですね……
『荒木先生、アナタはギャンブラーとしてはスゴかった………だが私には『姫』という強い味方が、最後までついていたのです』
…………どうです? こんな感じの決め台詞なら、満足していただけるんじゃ? まあぶっちゃけると、これは第二部ジョセフの」
腕を交差させ、さらに襟締めにかかる荒木。
「貴様は余裕がありすぎるんだッッ!!!! ――――実際の内心は知らんが――――なんだその態度はッッ!?
すこしは真面目さとか、対戦相手に対するリスペクトとかを」
しばし「ギブギブ」などとタップを繰り返していた冨樫だったが、やがて
「………………………見苦しい」
ぼそり、とその顔を逸らし、失望を吐き捨てる。
「………なんだと?」
罅割れ音。王蟲の群により揺さぶられていた大気が、凝固する。
「………だってそうじゃないスか……負けた後にグダグダグダグダ……」
反抗的、と評すべきだろう。
『目上の者』に対し『目下の者』が精一杯の勇気を振り絞り………
証拠に、冨樫の目は暗く笑い、若干泳いでいる。
「………今更、どうにもならない『物言い』なんか付けるのは、ようはアレでしょ? お願いですから『記憶』取らないで〜〜という」
「フン」
荒木はそれを、貧乏人の労苦を知らぬ王者のようにせせら笑った。
「―――くだらん挑発だな。さっきから言ってるだろう? そんなもんは勝手にやればいい。僕は、逃げもしないし、抵抗もしない」
ひとしきり怒鳴り散らして気が済んだのか。まず冨樫の服を整え、さらに自分の服も整えると。再び王蟲の背中を荒木は歩みだす。
「―――――僕が言ってるのはその後のことだ。――――嫌がらせしてやろうと思ってね」
「?」
冨樫は、首を傾げながらも付き従う。
「つまり―――――― 言葉通り 『 死 ん だ 方 が マ シ だ 』 ということだ 」
へ へ っ へ へ へ
(………………おお、切れてんな、かなり)
行き止まりでこちらに向き直った荒木の顔は、まあなんというか………追い詰められていた。
「――――考えてみれば。僕が君の描いた通りに『記憶失ったアホ面晒して恥かく』『必要』なんか。どこにもないんだ」
未練があり。
友情があり。
責任があり。
約束があり。
しかし、貫くべき最後の一線もあった。
間違ってる、のかもしれない。
だが人は―――――人間は。『嫌な事をしないために理由を言う必要など無い』のだ。
膝が笑い、顎が鳴り、お世辞にもカッコ良くはない、その立ち姿。
命を惜しみ、それでもなおかつ『死』を選ぶ、逆説的な、完全なる――――
人間の偉大さは―――恐怖に耐える誇り高き姿にある―――
ギリシアの史家プルタルコスの言葉
(――――だったか?)
どこか呑気に、冨樫は脳内を検索する。
(『黄金五聖人』――――――受け継いだ、ものも失う)
轟音の中、世界は静かだ。
しかし、『時』だけは止まらない。
背景では、暗黒に満ちた底無しクレーターの中に、赤き濁流が瀑布となって雪崩こみ
その中心部からは、細い、黄金の塔が立ち昇りはじめている。
―――――今、撃っても、止められない。
『記憶』は消えても『決意』は残る。
『わかる』必要もない。
荒木は、その『衝動』さえあれば、何をさし置いても『捨てる』だろう。
その事は、かつての荒木自身が―――――証明している。
(精神の死は、肉体の死に勝る―――――か)
なにより冨樫自身が、今撃つ事を、望んでいなかった。
エジプトのミイラのように、荒木が胸の前で手をクロスさせる。
目は、瞑らない。
死と向き合う――――あるいは、『殉死』のポーズ。
足場である王蟲が、真下、垂直にその進行方向を変えたのと
荒木が、後ろ飛びに遠く身を投げたのは、ほぼ、同時。
(理屈の上から言えば、荒木先生は『助かる努力』が出来ない―――――となると)
九割九分、助からないだろう。
しかし、自らは『聖光気』により浮かんだ冨樫が見上げたそこには。
似たような黄金の『気』を纏い流星となって荒木を追いながら、友の名を叫ぶ、鳥山の姿。
荒木の落下に、その救助が間に合うかどうかは
「三割――――ってとこか」
肩をすくめ、口に出すと、冨樫は異形の『影の手』によって引き裂いた『空間』をヴェールのように被り
やがて密やかに、跡形も無く、消えた。
閉じられた『空間』は、平静を装い。
しかし数秒後、それをも含めた周囲が、圧倒的なエメラルドに、輝いた―――――――
164 :
冨樫は…:04/09/09 12:37 ID:xw9/b/F/
「―――――美学を求めて勝手に自滅、か………まったく。荒木先生にも困ったもんだ」
「顔、笑ってますぞ」
「ぅおわぁっ!?」
ここは、平面妖怪『裏男』の内部。
まあ冨樫の『携帯秘密基地』兼『どこでもドア』のようなもの。
その、自分以外誰も居ない筈のとっておきスポットで、いきなり背後からかけられた声に、冨樫は玩具のカエルのように飛び上がった。
「―――――ふ、ふ、藤崎君。驚かせないで………」
「ほう。わしなどでも冨樫先生を驚かせられるんですな」
背後では藤崎竜が、むしろ驚かせた事に、驚いた顔をしている。
「―――――ついてきちゃたの?」
「ええ、まあ。お聞きしたいことも」
「―――――よっしゃ」
バシリ、と拳と手の平を打ち鳴らすと、馴れ馴れしく藤崎の首に腕を回し、一方的に肩を組む冨樫。
「―――――なんか、美味いモノでも喰いに行こうか藤崎君ッッ!!!
奢るぞぅ――――――私は今、とても気分がいいッッ!!! あえて言えば、『教師ビンビン』だともッ!!!」
「――――はあ?」
「飲めば口も滑らかになるし――――ああ、まだ飲んでもいないのに、無意味にノってきたなあ――――
―――――勢いを駆って、この際二人で新興勢力でも創らない? そうだな・………『幻影旅団』とか、なんとか」
「――――色んな意味で不可能事ですな。大体、アナタ他に色々やることあるんでしょうが。『矢吹』とか、どうするのです」
「関係無いね。私は、全然構わん――――――ああ、君は忙しいんだっけ?
じゃあホラあれ『七人の悪魔超人』、私も参戦しちゃおうか? 意表をついて正義側で」
「ほう――――………て、引っ掻き回すつもりかッッ!!! 残念ですが、しっかり、お断りします」
「ちっ…………まあいいや。とりあえず、飯だ。折角だし、九州ならではって感じの、地元料理出す、割烹とかがいいな」
「……………九州全域は確か王蟲に――――」
『元』のわからん残骸やら瓦礫やらがフヨフヨと漂う『異空間』の奥に、肩を組んだ二人、フェードアウトしてゆく―――――
グレイトフル・デッド!!??
さてどうなる
荒木は二度死ぬ!?
(
>>143)
「よお川原、あいつ落ち着いたか?」
「ああ。鎖を斬って治療して・・・ようやく寝入ったところだよ、おっさん」
「悪いなぁ、子守り頼んだみてえでよ。しかし随分時間かかったな」
「・・・寝てからも裾を離してくれなくてな」
「それじゃ本当のガキじゃねえか。なあ、本当にどうしちまったんだ?あいつ」
鹿児島から一転矢吹艦のある北九州へと向かった影船を追いかけ、
平野の別荘(軽井沢方面?)からとんぼ返りで西を目指す蟲船レダルーバ。
影船では保護者・岡村付きで澤井が蟲船の帰りを待っているだろう・・・生きていれば。
雲が点在する本州の空を大急ぎで駆け抜ける異形の船の中、
客室の大きな椅子にひとり座る巨漢――本宮は、
気の抜けた様子で部屋に入って来た川原に向かって問いかけた。
本宮の疑問も無理はない。
つい昨日まで自分の副官としてきびきびと働いてきた右腕の男が、
別府到着以来半日以上ぶりに連絡が取れて無事再会したと思ったら、
やれマスク脱いで脱退宣言してたわ女に変身してるわ誘拐騒ぎだわ、
島以来恨んでいた仇敵に勘違いで単身挑み返り討ちでトラウマだわ。
本宮が問いただしてみれば10年間ずっと本音を隠して生きてきたとか言う始末。
「ボクなんか10年前のあの日に見捨てておけば皆幸せになっていたのに」
などとほざいた時には頬を引っぱたいてやろうかと彼は思ったが、
相手があまりにちっちゃく、裏街を彷徨う仔犬のように見えたので、やめた。
「ガキみたい、か。そうだな、あいつは自分が副将だからって、
ずいぶん背伸びしてきたみたいだよ。・・・おっさんに救われた事は、
本当に感謝してるとも言っていた。奴なりの恩返しだったのだろう。
おっさんは別に悪くはない。あいつが勝手に肩に荷を重く積んでただけだ。
操縦席の岡野や真倉にもそう言っておいた。気に病むことは・・・ない」
一部の人間に対する時とは違う、物腰柔らかい口調の川原。
戦場を離れた時の彼は海に眠る静かなる龍。
「とはいえなあ」
嘆息する本宮。
「ずっと一緒にいたのに、ちっとも気づかなかった俺らが馬鹿みてえじゃねえか。
・・・俺は10年前のあの日を、がむしゃらに突っ走る事で忘れてきたが、
あいつは俺と同じものを見て来て、俺の後ろを走ってついて来て、
その間ずうっと腹ン中にいろんなモン溜め込んでよ。水臭えったらねえ」
苦虫を噛み潰したような顔で頭を掻く裏御伽の長。
「近すぎると見えないこともあるものさ。それに、
嘘をつくのは下手でも本当の事を隠すのは巧かったのかもしれない。
ずっと自分を騙し続けた反動で壊れかけた・・・って奴なのかね」
本宮と向き合った椅子に腰掛けながら語る川原。
手には屋敷の戦利品と思しき燻製ハムの塊が載っている。
「笑いたくない時にもずっと笑ってきたんだろう。
それがあいつに自然に課せられた役割だったから。本人もそれを望んでいる。
だが・・・心の底の底では、奴はいつもひとりきりだった。
“違う世界の人間”というコンプレックスからか、他者に寄りたくても寄れない。
その壁をなくすため、役割にすがって生きるしかなかった・・・。
と、いうのが俺の見立てだ。簡単に言えば気のいいひねくれ者、か?」
「なんだかよくわかんねえが、カウンセラーになれるんじゃねえ?川原よ」
なんとなく納得させられた本宮。“違う世界”云々が多少気になるが、
口には出さない。代わりに別の言葉を発していた。
「最初の頃は本当に荒れていたんだ。それこそ手がつけられねえ暴走野郎だ。
それでも悪い奴ら以外にはとことん優しい男だったし、心根がいい奴だった。
・・・この時代、いい人間ほど早死にするって言うけどよ。
良かろうが悪かろうがなんでもいいが俺の目の黒いうちはせめて、
俺の【息子たち】は俺の手で守っていきてえんだけどなァ・・・」
はぁ、と重い息を吐く本宮。
それを見ながらハムにかぶりつく川原は、噛んで飲み込んだ後さらりと爆弾を撒く。
「おっさん。10年前にあんたらは何を見たんだ?もしかして、
≪KIYU≫とやらの刺客がおっさんを狙うのはこの線じゃないのかい?
にわのが言っていた≪突き抜ける光≫の先に・・・何が見えた・・・?」
本宮は答えない。厳めしい表情を作ったまま。
川原はなおも続ける。
「今回のあいつの誘拐騒ぎは恐らく俺のせいだろう、組織の一員・
真鍋を倒したから・・・あいつの助力のおかげだがな。それはともかく、
俺たちの周辺は気づけば多数の敵に囲まれている。次に誰が誘拐され、
人質に取られるか、または問答無用で殺されるか・・・わからない。
俺たちは敵を知る必要があるんだ、おっさん。教えてくれないか・・・?」
平野が起こした誘拐事件には裏があるわけだが、事の中心である川原本人は知らない。
そして質問された本宮はと言えば。
「・・・全員、揃ってねえと話はできねえな」
そっけない返事であった。
了承した川原は、呑気に口を開けハムの残りを放り込む。
「早く影船と再合流できるといいが、な。
それとおっさん、もうひとつある。あいつは誘拐直前まで、
東京で猿渡の処にいたらしい。そこでおっさん宛に無理やり言伝を頼まれた、とか」
「・・・」
無言で続きを促す本宮。
「『気持ちは半々だが、5年後までに再会できたらいいと思っている』との事だ。
あんた、昨日もテレビ見ながら5年がどうって言ってたよな。何かあるのかい」
「・・・へっ、そうか、猿渡の野郎は元気かよ。重畳だ。めでてえや」
「おっさん?」
目を細める川原の眼前、本宮は嬉しそうな、しかし複雑そうな微笑を浮かべた。
―――心の傷に効くのは時間だけ。しかし人によっては時は毒となり・・・堆く沈殿する―――
あ〜、あれどうなってたっけ?
藤崎と冨樫の鬼ごっこ。
体に触れればいいって奴。
とっくに終わってるぞ
たしか開始と同じレスで解決してたはずだぞw
ありゃ伏線というよりは演出だろ
平野の別荘…熱海か?w
何かあるの?>平野と熱海
吸血鬼だから海水浴は無理そうだけど
>>174 いや以前エース桃組のヤツで風邪こじらせた平野が熱海に行く話があったから。
なるへそ
楽しそうだなあ・・・大隊
177 :
ふと:04/09/10 21:09:06 ID:qqH1fYfA
前にキユをカウンタックに乗せたら
梅さんがカウンタック漫画の連載を始めた
とっても嬉しいシンクロニシティ
倫タンと梅さんが同僚に…
――――気を付けていけよ。それと、何かあったらすぐに連絡しろよ。いつでもどこでも、ルーラで駆けつけてやる
――――あなたとはもう少し話したかったけど・・・
ふと目覚めると…白い天井、ベットの感触、規則的に音を発する心電図の音
「鋼の錬金術師」荒川弘の目覚め
「(あの人を助け出して…KIYUの手下に襲われて…それから…)」
「しかしなんや、えらい偶然に内藤様に会えたのはええんやけどまさか荒川の姐さんまでいっしょとはなあ」
「それはどうでもいいですけど…なんで私達この人の世話までしてるんですの?」
「ええやないけ姉御、この船の艦長さんがゆうとったやないか荒川の姐さんが内藤様を助けたんやて…
「あの…あなた達…」
「あっ!姉御ぉ荒川の姐さんが目ぇ覚ましたで!おいアンタ艦長さん呼んで来てや、荒川の姐さんが目ぇ覚ましたって!
片倉が近くに居た乗組員に話しかけるなか隣に居たフードの女性――伊藤と目が合う
「………!!」
「久しぶりね鋼の錬金術師さん」
「あなた達…助けてくっれたの?」
「別に私達が助けたわけじゃないわ。私達も助けられた側あなた達を助けたのは…」
「俺だよ」
「「!!」」
廊下から入ってきたのはパイロットスーツに身を包んだ男
「あなたは?」
「俺はこの『エリア88』の艦長新谷かおる、よろしくな」
伊藤VS荒川
画力なら断然伊藤
「それで…」
数分後片倉達にはいまだ眠り続ける内藤の世話を続けさせ艦長室で会話を続けた。
「とりあえず助けてくれたことにはお礼を言うわ。」
「いいって…それが任務だしよ」
「任務?」
「そ、任務だよ、脱出したあんた達を回収するっつうな。
関西弁のアンちゃん達まで降って来たのは少々予定だったが結果オーライだ。」
「その任務はゴッドハンドから?」
「ああそうさ」
「その…あなたも十傑集とか五虎神みたいなものなの?」
「そんなだな奴らとは仕えている人が違うがね。」
「仕えている人?」
「そうさ、十傑集や五虎神が仕えているのはゴッドハンドの総帥横山光輝
で、俺のいる七騎士が仕えてるのはゴッドハンド艦隊の総指揮官松本零士様だ。」
「松本零士…」
「そう、松本零士…俺にすべてを教えてくれた男なかの男さ」
「その人…どこかで――そうよ渡辺さんが言ってた人だわ」
「渡辺…あああのしばらくヤマトにいったつう奴か」
「ヤマトに?」
「ああなんでも降ってきたらしいぜお前らみたいによ・」
「降ってきた…ああ、ええわかったわ。ところでこの船はどこへ?私の契約は?」
「慌てなさんなこの艦は今ヤマトに向かってる。男の夢と努力の結晶にだ
契約についてはそこでやるらしい。それに…
「それに?」
「俺もヤマトで会う奴がいるんだ。オレノファントムヲブッコワシタヤツヲ…」
「え?」
「ああなんでもねえなんでもねえこっちのことさ。そろそろベッドに戻ったほうがいいぜ
まだやることはあるんだからよ」
「…そうさせてもらうわ」
>157
「その喧嘩、俺が預からせてもらうぜ」
和月の言霊には凄絶な殺気が込められていた。
その殺意の量を現すように、周囲をとりまく炎が激しく荒ぶる。
「(この男の凄まじいまでの剣気、かなりの腕だ)」
新たなる乱入者への警戒を強める山口貴由を尻目に、和月は悠々と歩み寄ってくる。
「和月…、いきなりしゃしゃり出てきて、出しゃばるんじゃねえ、すっこんでろ」
勝負に水を差された形の大暮が、不満もあらわに和月に噛みつく。
しかし、和月。他人を見下すような尊大な物腰で、笑う。
「ところがそうもいかねえ。もう休暇は終わったんだ。『作戦』の開始が迫ってるぜ」
そう言われて、大暮が忌々しげに舌打ちする。
「ちっ、もうそんな時間か」
ちらりと田口を見やると、田口は一瞬目を塞ぎ、そして表情を変えぬまま山口達に背を向けた。
それを確認した大暮が、しぶしぶそれに続く。
「待ちやがれ! てめェら、ここまできてケツまくる気か!?」
臨戦体勢に入っていた戸田がいきり立って叫ぶ。
その瞬間、手裏剣のように一枚のカードが飛んでくる。
「なんだ、これ?」
カードを受け止め、ひっくり返して文面を確かめる戸田。
「俺達はもうすぐある作戦に参加しなきゃならなくてな。そこに書かれてるのは、その『舞台』だ」
果たしてカードに書いてあったのは――
―――エリア88、そして戦艦ヤマトが存在する海域―――
同時刻九州某所
「やっと来たぜ」
ちばてつやの乗った救出へリがやっとやって来たのだ。
「各自、荷物をまとめろこれより鹿児島へ向かう」
隊長小林の指示が飛ぶ中オメガの面々がヘリに乗り込んでゆく。
「あーあ、またやマトかよ…」
「そういわないでくださいよ。渡辺さんの怪我だってまだ直りきったわけじゃないんですから
ちゃんとしたお医者さんに見せないといけないんですから。
「だけどよお…ちぇ」
文句を言う渡辺の肩をたたくものが一人
「なんだよ」
振り返るとそこにいたのは隻眼の男ちばてつや
「何のようだよ」
「いや、なんてこたあねえんだ。ただちょっと伝言預かっててよ」
「伝言?誰からだよ。」
「誰だったかな-----そうだ新谷とか言う松本の部下の奴だ」
「新谷?しらねえな…で、伝言はなんてんだ?」
「なんでもヤマトにきたら話があるから来いとさ」
「来い?なんかやったっけかな…ま、いいかわかったよ」
「おう」
そしてヘリは一路鹿児島へ向かう。
その身に二つの狂気を乗せて。
「(待っていて下さいね内藤様…いま助けて差し上げますわよ)」
「コレの続きがしたけりゃ、そこまで追い掛けて来い。そん時は死ぬまで相手してやるぜ」
「待ってるぜ、岡田とてめェは俺の手でブチのめさねえと気がすまん」
「―――――」
三者三様の反応を見せる、妖魔王配下の手練達。
やがて一陣の砂塵が吹き荒れ、それが晴れたときには、三人の姿は何処にもなかった。
気絶していた石渡洋司の姿もない。
捕虜として和月達に連行されたのだ。
「ヤロウ……、上等だぜ。何処だろうが、出向いてやらあ!!」
「待て、戸田!!」
――――― キ ュ バ ア ア ア ア ア ア ア !!!
山口が制止するが、遅かった。
戸田は瞬く間に『レッドフレーム』を再構成すると、電光の速度で白み始めた砂漠の空を突き抜け、飛び去ってしまった。
後には、山口貴由、由利聡といまだに気絶中の哲弘のRED残党コンビが取り残された。
「くっ、あんのヤロウ……、またしても勝手にどっか行っちまいやがった!」
レッドフレームが離陸の際に巻き上げた粉塵を払いながら、由利が毒づく。
「う〜ん……、イイ♥ そこ…、もっと…」
「てめェは、いつまでも寝ぼけてんじゃねえ!!」
実はマゾ気質を持つ哲弘は、岡田に強烈にぶっ飛ばされた際の余韻に、気絶しながら浸っていた。
全裸でクネクネと見悶える哲弘を、由利が蹴り飛ばす。
「山口さんよ…、あいつを追わなくていいのか?」
気をとりなおして由利が言うが、それに答えたのは刃のような緊張を含んだ声だった。
「追わないというより…、追えんのだ。なぜなら、すぐ近くに凄まじい殺意が満ちているからだ」
その瞬間、由利も気付いた。
――――嘔吐をもよおすような剣気――――
「おでましになられる」
唾を呑み込みながら、山口が強張った表情を浮かべる。
目を見開き、針のように集中した凝視の向こうに、ひとつの影が浮かび上がる。
和装に身を包んだ、枯れ木のような老人だった。
深い皺に埋もれた表情は、白眼を向き、舌を吐き出して涎を垂らしている。
正気とは思えぬ形相、それはまさしく狂気の貌。
常よりも一指多い右手は、絶えず痙攣を繰り返し、その足どりは無夢病者のように虚ろ。
しかし、その身から発散される、この凄まじいばかりの剣気はどうか。
同じ空間にいるだけで、千の刃を身に浴びているかのような圧迫。
「き…」
―――― き ゆ ぅ ――――
圧倒される山口達の鼓膜を、
地獄の底の底から響くような声が震わせる。
その精神さえも震わせる。
齢九十六にして、REDの最深部に封印されし、最後にして最兇の大剣客―――
南 條 範 夫 登 場 で あ る
187 :
作者の都合により名無しです:04/09/12 12:40:50 ID:RPpKq9N9
荒川・内藤・伊藤・広江の恐怖の四角関係に、大隊、妖魔王、そして戸田までも・・・
コイツハオソロシイコトニナリソウダ
188 :
uza〜:04/09/12 15:15:05 ID:uBW1PK6t
ほんとに一生のお願いです。
たのむから死ンデクレ
>>150 :きのこ男が現れた!
たたかう とくぎ まほう ぼうぎょ どうぐ →にげる
椎名は逃げ出した! ・・・しかし逃げられなかった。
「いきなりなんじゃあー!怪人が先回りして退路断つなやー!」
『そっちこそ逃げるな。ここはどこだ?オマエは誰だ』
慌てふためく椎名と、狭い廊下に立ちふさがる謎のキノコ怪人。
緑色のふかふか(苔状のカビ)をベースに色とりどりの菌類に包まれた、
背の高い人型の塊。その怪人が左右にふらつくたびに周囲に胞子が撒き散らかされ、
気づけばここ戦艦無礼ド艦内に広がる、
通気ダクトを通って菌が散布されてしまっている。
椎名はとにかくモンスターをやっつけようと服のポケットをまさぐるが。
「ああっお札も数珠も持ってきてねえし!
つうか俺がここどこー状態だよ!なんとかしろよキノコ!」
『知るか。まあいい、俺は行くからな』
「どこへじゃー!!」
背を向けたキノコ男は椎名の怒りツッコミを浴びながら、
ノシノシと廊下の奥へと向かう。なんなんだこいつは・・・と椎名が悩んでいると、
ふと頭をよぎる不吉な予感。確かこの道の先には・・・
「ああああー!!そっちはダメだ!留美子さんの寝室だっ!!
ちきしょー俺も行きた・・・いやいや止まるんだ!怪奇キノコカビ男!!
殺されたくなかったら〜じゃない、とにかくそっち行くなぁぁ!!」
いろんな意味で必死な椎名が男を引き止めようとする。
『うるさい。どこでもいいだろう。邪魔すると・・・』
キノコ男の長い腕が椎名の頭部を掴もうと振り上げられる──
“ドタドタドタ・・・”
「なんじゃシーナ〜!!悪役超人の襲来かぁ〜〜!?」
すっかり体力の回復したゆでたまご1号が現れた!!
『!』ピタリと腕を止めるキノコ男。果たして男の正体は!? 以下次号!!
>181
原子力空母【エリア88】は、まもなく鹿児島湾にさしかかろうとしていた。
ところで、当然ながら『空母』というものは、通常単独では動かない。
空母は制空権を握る上で、戦略上極めて重要な艦であり、従って自然と一艦隊の中枢を為す存在となる。
【七騎士】のひとり、新谷かおるは【エリア88】の艦長であり、ゴッドハンド軍第3艦隊の司令官でもある。
第3艦隊の陣容は、【エリア88】と【エリア81】の2隻の空母に、10隻以上の巡洋艦という構成になっている。
さらに、2隻の空母には、新谷率いる戦闘機部隊が配備されており、無類の戦闘力を誇る。
ゴッドハンド艦隊の中でも、屈指の武闘派といえる部隊だ。
……しかし。
第3艦隊の無敵神話を、粉々に噛み砕かんとする悪魔が、深海より静かに迫ろうとしていた。
その『音』を、最初に探知したのは、【エリア81】だった。
「!?」
ソナー担当の隊員は、その音を聞いた瞬間、目を丸くした。
「艦長、交響楽(シンフォニー)が聴こえます」
「なにい!? 深海でコンサートをやってる艦があるってのか? 音源は!?」
ソナーに集中し、音源を辿ろうとする隊員。
そして、隊員は、その音源の正体を告げた。
「モーツァルト……交響曲第41番『ジュピター』」
深海から例の人キター!!(よね?)
やはり入りはモーツァルトからですな
ソナーが、悪魔のコンサートに聴き惚れた瞬間。
悪魔の牙が、放たれた。
バ シ ュ ン !!
滑らかに空気を断ち切りながら、白い牙は水中より現れた。
ハープーンミサイル。
それは真直ぐに、【エリア88】と【エリア81】に同時に襲いかかった。
『【エリア88】及び【エリア81】へ!! 前方距離3000! ハープーンミサイル接近!!』
「発射点を解析しろ!! 敵艦はそこにいる!!」
哨戒ヘリからの通信が、2隻の空母の指令室をかけめぐった。
****
「ブースター稼動、レーダー誘導システム・オン」
「目標捕捉装置、完全作動中! 距離2500!!」
「1番から8番、データ入力注水よし」
「発射管全扉開け!」
「全扉開口よし!」
「雑魚は相手にするな、狙うは空母・戦艦等、大型艦だ」
「発射ッ!!」
ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ!
****
『スタンダードミサイル、ロック・オン! ハープーンを撃ち落とします!』
哨戒ヘリのパイロットがにやりと笑い、「発射(ファイア)」の掛け声とともに、ハープーンが2基とも撃ち落された。
次の瞬間、艦隊は闇に叩き落された。
爆発の瞬間、昇り始めた朝日に反射し、雪にも似た煌めきの粒が第3艦隊に上空から降り注いだ。
その正体に気付いたとき、誰もが出鼻を絶望的に挫かれたことを悟った。
『チャフ(アルミ箔)! 弾頭にチャフが!!』
チャフとはアルミ箔をまき散らすことにより、敵の電子機器を不能にする兵器である。
現代の戦争において、それは目や耳といった、あらゆる感覚器感を奪われることに等しい。
「電子の吹雪だ、レーダーが狂うぞ!!」
「水上捜査、射撃指揮、航法レーダー、全て不能!!」
「全兵器用のレーダーの眼が奪われました!!」
「司令よりCICへ! チャフの効力が失われレーダーがクリアーになるまでの時間は!?」
『約10分です、司令!!』
「10分だと!!」
新谷が思わず、マイクを握り潰しそうなほどに力をこめる。
しかし、動揺を懸命に押し殺し、すぐさま指示を飛ばす。
「司令より艦隊に告ぐ! ミサイル発射ポイントの解析を急げ! こちらは敵が見えない!!」
素早い指示だったが、悪魔の手はそれを遥かに凌駕していた。
次の刹那!!
ド オ ン !! ド オ ン !! ド オ ン !!
隣を航行していた【エリア81】の左舷が、大爆発を起こした!!
格納庫・機関室へ、計ったように2発ずつ…計4発の魚雷が炸裂したのだ。
新谷がヘルメットを床に叩きつける。
「この手際……、久し振りにやってくれたな……」
完全なる奇襲の前に、苛立ちまぎれに唸る新谷の表情が、畏怖を浮かべる。
「 【やまと】…!! そして、かわぐちかいじ…!! 」
【エリア88】と並び不沈艦とまで呼ばれた【エリア81】が大破し、海の藻屑と消えようとしていた。
周囲は地獄の業火。海面にオイルがあふれ、火が広がっている。
死傷者は100名を上回るだろう。
まさしく地獄!!
そう、地獄の門が開かれたのだ。
「ソナーよりコントロール、0―2―2より魚雷高速接近!」
「全速、ジグザグ航行! 迎撃ミサイル発射用―――意だ!!」
「間に合わない! 距離500、被弾します!!」
ド ド オ ン !!!
****
「艦長、戦艦に4本すべて命中です!!」
先程、放った8発の魚雷。そのうち4発が【エリア81】を、残りの4発が戦艦の一隻を撃沈したのだ。
「戦艦を失う恐怖を、今第3艦隊は味わっている。1番から8番、魚雷装填!!」
かわぐちの指示が飛び、速やかな復唱とともに、新たな魚雷が装填される。
一方、第3艦隊は完全に浮き足立ち、各艦が猛烈なジグザグ航行を始めた。
航跡をジャミングさせ、魚雷の攻撃を攪乱するためだ。
しかし――
「戦艦がやられて、敵は守りに入った……!」
爬虫類のように温度を感じさせない、かわぐちの表情は冷徹な機械そのもの。
疾患をえぐりだすメスのような鋭さと冷たさで、無慈悲に敵の弱点を断ち切っていく。「この局面では、洋上艦最大の武器、ソナー・スイープの効力を上げるため、ジッと動かず、耳を澄まさなければならんのだ……!
こう音と泡を立てれば、潜水艦どころか魚雷の発見も困難になる……肝に銘じておけ」
『ハッ』と一斉に、クルー達が唱和する。
「魚雷データ入力よし、前部扉開口!!」
「標的は 前方5000! 航跡群!!」
「全門一斉発射!!」
『発射!!』
195 :
地獄の群れ:04/09/14 23:33:09 ID:aSmR3ypa
同時刻。
大型甲鉄艦――【煉獄】――甲板上。
「おやおや、こいつは派手にやってるじゃねェか。粋だねェ」
燃え上がる第3艦隊の惨劇を、遠眼鏡にて見物する包帯まみれの男。
その男――和月の口元が、下卑た笑みを刻む。
「先を越されちまったのは癪だが……、俺達ものんびりとはしてられなくなったな。愉しませてもらうぜ」
そして、和月の指示で、煉獄が動き出す。
アームストロング砲・回転式機関砲を装備した、鋼鉄の装甲を持つバケモノ。
それが牙を鳴らしながら、ゆっくりと地獄に突入していく。
「平野……、御前も今頃、どこかでこの光景を愉しンでいるんだろう?」
****
同時刻。
【Neo-“Z”】――艦橋。
「ミサイル巡洋艦、2発魚雷を受けました」
「すでに【エリア81】沈没、戦艦がもう一隻、魚雷4発を受け航行不能!!」
「ミサイル巡洋艦一隻、ミサイル駆逐艦二隻、それぞれ魚雷を受け、火災を起こしたもよう!」
次々と第3艦隊の損害報告が入電され、情報が走り回る。
そんな忙しい艦橋の中央にて、【死者の王】――平野耕太が嗤う。
196 :
地獄の群れ:04/09/14 23:33:48 ID:aSmR3ypa
「素晴らしい、まったく素晴らしい」
パチパチと手を叩きながら、愉悦に満ちた狂笑を浮かべる平野。
「ゾッとするほど美しく、破壊と殺戮に満ちた悪魔的な操艦…
実に素晴らしい、【九大天王】の戦を見学していることを実感させてもらっているよ」
「しかし、恐ろしいものですな。周到な準備をしてきた我々よりも早く、的確に打撃を加えるとは…
まるで未来が予知できているかのように……」
解せぬ、といった表情で、七三太郎が首を捻る。
「まあ、よいではないか、ドク。予定外のことというのは、楽しいものだ。戦争はこうでなくてはいかん」
「そうですなあ。しかし、こうまで勝手に独断先行してしまうとは、少佐殿。
今頃、『バベルの塔の御老人方』はさぞやお怒りでしょうな」
「怒らせておけばよい。どの道、御老人方に我々を止めることなど出来るものかよ」
「左様で」
「誰にも止めさせるものか。いや、もう誰にも止まるものか」
事実、ゴッドハンドは現在、いまだに混乱の続く九州の平定の為、その戦力の半数以上が割かれている。
【調停者】の予期せぬ復活が、横山の精妙な策に、綻びを生じさせたのである。
「戦争交響楽が聞こえる。あの懐かしい音が。阿鼻と叫喚の混声合唱が」
―――エリア88に、地獄が群がり始めた
地獄キター!!
かわぐちに対抗できるサブマリナーというと…やはり総司令か。
198 :
作者の都合により名無しです:04/09/15 00:16:49 ID:JKj2IJCu
みんな死んだとさめでたしめでたし
199 :
平野:04/09/15 00:20:32 ID:UZlKlvT9
だがそれがいい!
かわぐちが相手だと戦艦が何隻あろうが余裕で全滅させられる気がする・・・・
新谷は空戦専門だしなー
どうなる?
潜水艦乗りには潜水艦乗りでしょ。
707とか6号の人って出てきてるの?
そういやかわぐちは内藤の乗った船を攻撃したわけか
広江が荒れるぞ…
『んで?憑依合体てナニよ。怪しげな宗教はお断りですけどォ』
「彼と話してるとテンションが一秒ごとに減るんで僕ツラいです姉さん」
これっぽっちも進展がない五聖人バトルin矢吹艦某所。
睨み合う戦士たちの視線でじりじりと艦内の温度が上がりそうな、
ビッグバン待ち状態で危うげなふたつの小宇宙がひしめき合う中。
進展のなさを打開すべく、主人公えなりは不可抗力で得た相棒空知に案を振るのだが。
「ようするに幽霊のあんたが僕にとりついて一緒に闘うわけですよ。
本当はオーバーソウルとかなんやらかんやらあるけど武井先生いないし。
今の僕ならベジ○トみたくデザイン半々でいけるかもとか思うんだけど、
それより足の負傷を肉スタンドで埋めてるから心なし疲れてるというか、
早く済ませて温泉宿にいるだろう漫画家さんたちに会いたいというか宿で寝たい」
ちなみにえなりの持っている慰労会情報は15部辺りで更新が止まっている。
15部はまだ慰労会そのものが始まる前の頃だったりする。 ・・・いつやねん。
『温泉ですかーあー温泉かーへー温泉ねー漫画家は温泉好きって言うよね〜』
「そこはどうでもいいんだって!なんで何度も繰り返すんだよ」
『ちょいと聞いてくれやマダオ〜温泉とは全く関係ねえんだけどよォ〜〜』
「関係ないならしないでくださいよ」
『ファンレターとか嬉しいわけよ漫画家って。でも俺ンとこは何故か主婦ばっかくれてなぁ』
「マダムキラーとでも言われたいんですかよかったですね」
『単行本は惣菜コーナーに置かれてんじゃねぇかって疑った時期もあったけど私は元気です』
「早く本題に入ってください」
『んで憑依合体ってなんですかと改めて言いたいワケ』
「ちっとも繋がってない・・・」
『ようするに合体だろ?するならキャラ名は“ブラボーサムライ”なんてどうだ?売れなさそうだが』
「好きにして・・・」
『顔が一気に老け込んだな坊主ゥ〜』
「老け顔は父譲りです・・・」
『ところで合体したら甘味屋行こうぜ甘味屋パフェ食いてえのさっきからもう俺マジ成仏できねー』
「金ないし・・・どうでもいいや、もう・・・」
えなりのテンションゲージがゼロになった!こうして時は無為に過ぎ夜明けも程近いのであった。 (馬鹿)
(
>>189)
謎のカビ巨人に襲われた椎名!
そして彼を救うべく現れたのは他ならぬゆで1号!
巨人はゆでに気づくなり椎名から飛びすさり、怪しげなポーズで彼を威嚇する。
『“また”やる気か。俺は別にかまわんぞ』
「むう!!きさまは誰だ!?その身体に名前を聞いてやるぞ!!とうっ」
自分を知っているらしい敵に驚いたゆでは気合倍増、
椎名とカビ男の間に割り込むように跳んでくる。椎名は慌てて場を離れた。
「ゆでのおっさん!気をつけろよっ!後は頼んだぜ!!」
逃げ足の早い男と入れ替わり、カビ男に立ち塞がるゆで。
『・・・やるのか』
「おお!!やらいでか!!ベルリンの赤い壁ーーー!!」
ゆでの繰り出す両の手刀が翻り、
カビ男が狭い通路の四方の壁を蹴り空中を舞う!
そこらに胞子を撒き散らしつつ死闘の幕は開け───
「 メ ラ ゾ ー マ × 2!! 」
突然反対側の廊下からぶっ飛んできた2つの火球!!
その場の3人はそれなりに避けたが火は空中の胞子を焼いて廊下全体に一瞬広がった。
オレンジ色の灼熱と閃光の中に現れるは、震えるような魔力のオーラを纏った精悍な男。
睡眠を邪魔されいよいよ殺気立った黒シャツ姿のカムイが剣を振り上げ───
「 よ そ で や れ 、 よ そ で !! 」
・・・その般若のような不動明王のような、カムイの憤怒の表情を椎名は後に、
「いや〜よっぽど疲れてたんだなって。勇者さんもつらいやねー」
とコメントをつけて仲間に語った。漫画家だって人の子(一部除く)、そんな一場面であった。
その後カビ巨人とゆでのバトルは無礼ド屋上テラスに移り、
しかし朝日が昇る頃には破壊痕を残してふたりの姿は消えていたという。
そして無礼ド艦内はカビ男が散布した胞子が充満し、一晩で毒素のないプチ腐海と化した。
泣く泣く住人が駆除に回る中、もう一匹カビ男が客室から現れ第二の悲劇が起こる。
「うわぁー!!せっかく奇麗にした場所にまたカビとキノコがー!!」
「大変だー!!樋口さんがいた部屋からキノコ怪人が出てきたぞー!!」
「もう許さん!!乗組員総出で怪人退治だ!!みんな火を持って奴を囲め!!」
ドタドタと廊下を走り回る漫画家やアシスタント達。
ピリピリとした雰囲気の中、ヒビの入った青い鎧を身につけるカムイ。
(・・・昨夜のと同じ個体か?どうでもいい、次は 消 す )
「樋口さん!大丈夫、樋口さん!!」
必死に語りかける留美子の声で、もこもこの菌糸類に囲まれた樋口が目を覚ます。
彼女のいた客室はノーチェックだったため、
極彩色ジャングルはそのまま放置されていたのだ。ゆっくり身体を起こした樋口は、
青ざめて彼女を抱きしめる黒髪の美女の、たわわな豊乳の谷間に顔を埋める形になる。
「ああ、全身こんなにカビだらけになってかわいそうに・・・。
大丈夫よ、あなたを襲ったキノコの怪物は今みんなで退治してるから」
瞳にうっすら涙を浮かべながら樋口をぎゅうっと抱く留美子。
しかし当の樋口は混乱し、何か思いだそうと必死に頭を回転させている。
やがてハッとした表情で留美子の胸から飛び上がり叫び出す───
「留美子さん!倒しちゃダメ!!あの人は、あのオバケの中身はたぶん───」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ───ドゴォォォォォン!!!!
「・・・三浦さんなの・・・バンチチームの・・・」
果たしてふたりが爆発現場に駆けつけた時は、絵にも描けない惨劇になっていた。
詳細は不明だが目撃者の富沢(ヤケドで軽傷)によるとカムイとカビ男が相打ちになったとか。
・・・三浦と、最初のカビ男であるヨクサルに付着したカビは血にとりつき、
生物の怪我を治す新種の菌類だったが彼らは知る由もない。新しい朝の光がとても悲しかった。
>>37 人の手つかぬ腐海の奥。一つのVがそこを突撃していた。
「ガルゾニス!!」
その呪文と共に超高速回転をしながら腐海を突撃している雷句誠。
ついには腐海の最深部までたどり着き、台座に乗っている物を凝視する雷句。
「ああれだ!見つけたぞ「ベイリー・メロン」!
やったぞモヒカン健太郎!!わたしはついにやったのだ!!」
そのころ彼は大変な目にあっていたのだが、それは今のところ問題ではない。
「フム、ホムフムフムブシャボシャ、ジョブジョブジョブ。
健太郎も来れば、このおいしいベイリーメロンを食えたのに!」
そう言いながら、メロンをすさまじい勢いで食べていくビクトリーム。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。すさまじい勢いと共に巨大な迫力が、
雷句の背中から押し寄せてくる。
「ななんだ?一体何が起きているというのだ?」
「貴様、名を名乗ってもらおうか。」
「私の名前はビク……雷句誠。華麗なる雷句誠様だ。 言 っ て ご ら ん ?」
「雷句誠か……。私の名前は永野護! そ し て 貴 様 の 出 番 は 後 1 レ ス だ ! 」
「 な ん だ っ て ぇ ! ! 」
雷句が驚愕の声を上げた。
「ブルァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
すさまじい叫び声と共に、雷句の声が腐海の奥に響き渡る。
「浄化の邪魔になる物は全て消えてもらおう。」
その声と共に、永野が腰に挿した刃を抜く。
雷句が倒されるかと思ったその瞬間に、永野に見えない砲弾が叩き込まれる。
「 地 獄 の 砲 弾 ! ! 」
その衝撃に倒れこむ永野。そして誰何の声を上げる。
「何者だ!!」
「矢吹様の命令で腐海の調査に来た者……
地 獄 の 軍 団 長 ! ゆ で 将 軍 ! ! !
雷句誠、一回仲間の元へと戻ると良い。次のトーナメントはすぐ始まる。」
「……一つ聞いても良いか?」
将軍の威圧感にビクトリーム形態から戻った雷句が言う。
「あの攻撃は何故見えなかったのだ?」
「『地獄の砲弾』は強力チーム・レオパルドンの技だがな………。
この技は設定だけの技なのだ!その為、あらゆる描写がなされず見えない攻撃となる。
さて、無駄話はこれぐらいにして、さっさと戻ると良い。私は調査の妨害となる物は全て排除しろと言われている。
「ならば、私も排除すると言うことか。」
そう言って、永野が構えを取る。
「妨害をするのならばな………。」
そう言って、将軍もゆっくりと永野に近づく。
「調査と言ってるが、結局のところはこの森を焼き尽くすつもりだろう!貴様にはここで消えてもらう!」
「貴様も知るといい!地獄の軍団長の恐ろしさを!!」
その叫び声と共に、大地が吼えた。
この3人、テンション高すぎ(w
なんか来たー(ノ∀`)
(
>>204)
チュンチュン チチチ・・・
「う〜ん、姉さん・・・事件です・・・むにゃむにゃ・・・ はっ!?朝っ!?」
やる気がマイナスになりフテ寝していたえなり起床。
戦場と化した、新別府市(仮)を一望できる看板口・空中バスターミナル公園の端。
SFチックに何層も段々になってる矢吹艦Aブロック空港。
進行方向から直接別府を乗せたため艦のはじっこにテンコモリ状態の別府が、
近くのベンチを仮寝の場所とし、しかししっかり寝過ごしたえなりの瞳に映る。
「車田先生は!?」
慌てて飛び起き周囲を見渡すと、さすがは究極の膠着状態。
昨晩と立ち位置どころかポーズひとつ変わらない車田と、
彼に相対する恐怖ハゲおやじ宮下がそこにいた。
しかしえなりは僅かな異常に気づく。車田の足元に染みができているのだ。
(そうだ!最初に槍の一撃を腕に受けて・・・!
このままでは負傷した分車田先生が根負けする!?ただでさえ盲目状態で不利なのに。
そんな・・・僕はどうすれば・・・?)
気づけば迷惑幽霊空知の姿が見えない。朝日で成仏したなら儲けものである。
えなりはそっちの事は忘れ、改めて打開策を考える。
ふと朝日に包まれる別府の地が彼の脳裏に疾った。
「そうだ!ニュースで言ってた別府のピンチは救われたんだ、
って事は別府に残ってる漫画家を捜して連れてきていいんだ!
よーし車田先生待っててください、今にとびっきりの強い人を見つけてきます!」
やおら叫ぶと多少回復した身体を勢いで奮い立たせ、
えなりは近くの駐車場に走り出し、停めておいたKATANA
(サムライダーからパクッたバイク)をフカして飛び乗った!目指すは別府・松椿──
「あ、今日はもう準決勝じゃないか!急がなくちゃ出られなくて失格だ!急げ僕!!」
今更のように主目的を思い出すえなり。果たして車田救出は果たせるのか!?GO!!
ん?えなりは松椿知らないか。まあなんとかなるか(トホー
というか、別府と矢吹艦が一体化した事は知ってんだっけ?>えなり
それにしても相変わらず空気以下の存在感だ(笑)
ああそっか、持ち上がってきた謎の土地=別府
と知るイベントを入れねばならなかったか。
てけとーに入れとけば何とかなるか、えなりだし(苦笑
(
>>211)
♪ 走れ〜走れ〜えなり2世〜 警察野次馬かきわけて〜 ♪
勝手に脳内BGMを流しながら見知らぬ通路を疾走する、
漆黒のバイクKATANAと乗り手の少年えなり。
目的地は先程までいたAブロック空港甲板口より数キロ離れた新大陸別府。
――謎の少年キユと邂逅したえなりは少年と別れてより間もなく、
艦内放送にて≪別府市浮上作戦につきAブロック内での行動規制を行う≫
との情報を得る。只事ではない響きに車田と共にAブロックへ駆けつけ、
“危険につき立ち入り禁止”となった巨大空港が怪しいと踏んで、
移動を制止する警察やら空港職員やら矢吹軍やら機動隊やらと、
しっちゃかめっちゃかやらかした後の―――
≪別府ノックアッパー作戦≫一部始終の見物である。
艦内モノレールバスの昇降口がある、見晴らしのいい空港内施設で、
空港からの避難が間に合わず構内に閉じ込められていた者達や、
近所の住人や物見高い連中や、多くの人々と共に≪それ≫を傍観していた、えなり達。
これからどうしよう・・・そう思っていた矢先の、宮下襲来であった。
(あの変な酒とっくりが怪しい。いくら常識外れの五聖人とはいえ、
同じ仲間を意味もなく襲うのはおかしい!何かある、何とかしなくちゃ!)
焦りながらバイクを別府に走らせるえなり。関西弁の男が確かニュースで言っていた、
『別府にいる漫画家が立ち上がって危機を救ってくれ』と。慰労会は別府で行われたのだ。
運がよければ、まだいるはず。尾田に武井、期待半分だが荒木に鳥山、そして期待一割の板垣・・・
ここまで思い出してそういえば、と突然ビクッと己の身を震わすえなり。
悪寒?まだ空知に憑かれたか?いや違う、彼は何かを思い出したのだ――――
(・・・僕、免許持ってない。バイクは盗品だし、警察に捕まったら終わりだ!ヤバイ!!)
冷汗タラタラ、コンクリートジャングルを爆走するえなり。往け!闘え!捕まるな!!
216 :
はざま:04/09/18 20:54:46 ID:w3/PNxgv
矢吹様素敵! と世の女性達が悶えまくったという噂の『別府ノックアッパー作戦』。
しかし、大天才の知欠様は当然として、横山等の正真正銘の傑物ですら予期し得な
かった現象があった――
「ここは……どこだ……? 地獄、ああ、そうか、地獄、なんだ、きっと、そうだ……」
貞本義行は、どことも知れぬ場所で、今正に死の際にあった。
空(はなく、『上』と表現した方がしっくりくる)は血の赤、地は暗黒。生命の息吹を微
塵も感じさせないこの場所は、成る程、地獄だ。
「おい貞本! 何をしておる、こっちからうまそうな匂いがしているぞ!」
地獄でも、こいつとは一緒なのか……貞本は、己の縁を呪った。
あり得ないことだが……俺とこいつは生まれる前から結びついていたのだろうか。
死の際だからこそ、こういった山岸涼子の世界みたいな発想が出てきてしまう。俺には
合わぬものだと、貞本は頭からその思いをぶん投げた。
217 :
はざま:04/09/18 20:55:22 ID:w3/PNxgv
木村に手を引かれ、辿り着いた先は相も変わらず地獄じみた所だった。だが、そこには
一つの命が煌いていた。
「君らは?」
「私は木村太彦! この死にそうなのは貞本という。私の下僕だ」
とりあえず、俺の体力が戻ったらこいつを生々しい表現で存分に殺戮しよう。貞本はそう
心に決めた。
「とりあえず、人に会えてよかった。ここが一体何なのか分からず、一人ではどうにも動け
ずにいたのさ」
大柄で、立派な顎をした男はそう言った。柄に似合わず慎重なんだなと、貞本は思った。
「とりあえず、気持ちが沈んでるときにはメシを食うことだな!」
男はそう言うと、何か包みを取り出した。中身は、弁当箱だ。
「やるよ」
「おお、さっきの匂いはこれか! いただきま〜す」
「お、俺にも……うめー!!」
「うまー!!」
一瞬にしてテンション大沸騰。それほどまでに、男の弁当はうまかった。
「あ、あなた様のお名前を御教え下さい!」
「名前? そうだな……ク ッ キ ン グ 親 父 とでも呼んでくれ」
「ハーイルクッキング親父!」
「クッキング親父!!」
クッキング親父キター!!
オヤジぃー!(゚∀゚)
久々に料理人が登場かあ
そういえば九州全土がエライことになってる現在、松椿の料理バトルとかどうなるやら
>>208 向かい合う、将軍と永野。
永野は剣を、ゆではベアークローを抜き静かに構える。
「ザゲェルガァァァァァァッ!」
突如、横から雷句が電撃を放ち、永野へと放つ。
「むっ!」
危うくそれを避け、後ろへと下がる永野。
「どういうつもりだ?」
「お主には助けてもらった恩がある!それを見捨てて逃げるなど私にはできぬ!」
「なるほど、そう言う事か。」
そう言って、ゆではにやりと笑う。
「だが、戦いには二通りある………
命 を 守 る 戦 い と 、 誇 り を 守 る 戦 い と
地獄の軍団長と言われるこの私が普通に二対一で戦っていては私の誇りが許さない!」
そう言うやいなやゆでは懐から巨大な宝石を取り出し天に掲げる。
天空に雷が舞い、嵐が巻き起こる。
「なんだ?何が起こってるのだ?」
突如腐海の地面が揺れ砕け、地面の下から巨大な闘技場が姿を現す。
(荒川殿の練成に似ておるが……まるで最初から準備してたかのように現れおった!)
雷句が驚愕しながらその地面から現れた闘技場を見る。
「雷句とやら、少し願いがある。帰ってから、バンチチームのゆでたまごに伝えておけ。貴様は私が倒すと!!」
その瞳に宿る黒い炎を見、雷句の体が一瞬すくむ。
「わかったか?」
「う……うぬ!」
ゆでに言われ、雷句が腐海の外へと走り出す。
「さて、永野とやら、こちらへ来い!存分に戦おうではないか!それとも場外乱闘の方がお好みか?」
仁王立ちしながらゆではそう叫び、永野を挑発した。
(
>>215)
なるべく人の少ない道を通り、えなりは矢吹艦内別府市へとバイクで向かう。
道中このままでは上の土地に登れない事に気づき、そこらのフル装備でうろつく、
矢吹軍の一般兵を物陰で倒して衣服をゲット。バイクを物陰に隠す。
定期的に行き来する輸送ヘリに乗り込み無事別府入り。この間約40分。
「うう・・・僕の活躍シーンが説明のみ・・・。
漫画で言えば4コマぐらい?本当に主役なんだろうか・・・」
げんなりしながらヘリから降り立つえなり。
早速こっそり兵士の列を離れ、ちょっと偉そうな人に尋ねてみる。
「あのーすいません、どこかに漫画家さん達が集まっている、
宿とか避難所とかありませんか?いえちょっと知り合いが・・・」
対する軍服姿の男は訝しげな表情をえなりに見せる。
「漫画家?漫画家の集まりなど別府には存在しない!
昼に艦内一斉放送で流れた≪漫画家慰労会≫は、鹿児島で行われた!
一部の漫画家がこちらに訪れていたようだが私事的なものだ。
既にここはほぼ全ての住民が避難を終えている。現在は最終確認だ。
わかったか?わかったならすぐ持ち場につけ!」
「はっ!?はいいい!!」
睨まれたえなりはすごすごと引き下がった。
――情報操作により、別府での漫画家の痕跡はことごとく消され、
温泉宿・松椿に残っていた人たちも全て矢吹軍に連れ出された。
現在は軍の指揮下にある艦内病院へと移され治療を受けている。
一般兵に化けたえなりは裏の話を知らされる事はなかった。
(避難?漫画家はもう残ってないのか?僕はどうすれば)考えている中、凶報が届く。
「下からの情報だ!何者かが兵士に変装して侵入した!
見つけ次第捕獲、反抗すれば即刻銃殺して構わないそうだ。捜し出せ!!」
(うっひょ〜〜!!マジですかやっべぇーーー!!)
周囲には数百人の屈強な兵と夥しい銃火器。退路無し。えなり、ピーンチ!!
(
>>169)
岡村賢二は海を見ていた。
影船の甲板で、裏地が銀色のシートに覆われた棺の傍で。
枯れ果てたひまわりのような形相の澤井の隣に座りながら。
遥か空から降りそそぐ陽光に包まれながら。
「あいつとはたくさん、しゃべりたい事があったよなあ。お前も、俺も」
ぽつりと、澤井に向けて呟く。
どうして思いはままならないのだろう。
どうして願いはかなわないのだろう。
海は何も答えない。
ただ両の手を空に広げているだけだ。
ふと視界の奥に。眼鏡をかけて小さく微笑む娘の顔が浮かぶ。
山田はなにやら知り合いに頼まれたとかで、数時間前、
川原をレダルーバに乗せてどこかへ連れて行った。
しかし、蟲船の運転手として岡野と真倉が一緒に行くのはまあいいとしても、
なんで本宮さんまで付いて行ってるんだろうなと岡村は疑問に思う。
(ヒマだったんだろうか?川原が心配だったってのはねえよな。
あいつは地獄に置いてきてもひょっこり帰ってくるようなツラしてる)
苦笑しながら、目線を甲板の棺に向ける。
(・・・もう何も恐いものはないと思ってた。あるとすれば、
本宮さんを失う事ぐらいだった。しかし・・・)
再び海へ視界を戻す。眼鏡の娘の顔が、今は半分ぼやけてしまった、
かつて愛した女性の輪郭と重なる。なぜだろうと岡村はしばし思いを巡らす。
(目だ。目が似ている。この世ではない楽園を夢見る宝石のような)
浮世離れした雰囲気が似ていたのだなと納得する岡村。
なんとなく、本宮のまっすぐな瞳もダブる。自分はあの瞳に惚れ込んだのだ。
この悲劇と憎悪の輪廻が連綿と続く空っぽの世界で、
それでも瞳の光を失わず生きてゆけると言う事は、
羨ましくもあるが、いざ心が傷ついた際には、立ち直るのが遅くなるだろうという事。
硬く美しい宝石ほど脆い部分があるものだ。
それを貴重に思う周囲の人間は、必死にその瞳を守ろうとしてあがく。
そのために己がどれだけ傷つこうとも。
ここまで思い至った岡村はふと、あの忌わしき島での出来事を思い出す。
(・・・ふん。川原のヤツめ。
俺が刺客として裏御伽に潜り込んだのに気づいて、
表面裏切って敵対チームに移籍してから俺を殺す作戦か。甘すぎんだよ。
誰も傷つけたくないからと、自分を犠牲にするなんてのは、
お人よしな馬鹿のする事だ。そんなツラかよあいつが)
いつもスカしてニヤニヤして何考えてるのかちっともわからなくて、
だが拳を合わせると魂ごともぎ取られるような気を放つ鬼の一族で。
本宮さんの「いちばん」でいけ好かなくて、なぜか信頼できる奴。
あいつは一体何者なんだろう。
あのポーカーフェイスの中に、いくつの顔を持っているのだろう。
(・・・修羅、か。阿修羅は確か三面神だったか。
怒りと悲しみと意思の強さを表す顔で、決して微笑む事はない・・・。
あいつは乙が死んでいたのを発見したと言っていたが、
あいつでも泣く事なんて、あるのかね。そもそも戦闘以外に向ける、
感情なんてあるのかすらわかんねえや。まともな神経じゃつきあえねー)
考えるごとに頭がごちゃごちゃしてきた岡村は、
鬱陶しそうに頭を掻くと、鼻で大きなため息をする。ふと。
「・・・ああ、あれに懐いてる変な生き物もいたっけな。
あの馬鹿副将はまともじゃねえからいいのか。
どこをどうしたら別府で迷子になって東京に出るんだよ、わけわかんね」
付き合いの浅い岡村には、例の男の理屈や構造は川原以上に謎であった。
それよりも、副将には別府で怪しげな酒に漬けられ殺されかけた、
落とし前をつけねばならない。巻来の分も込みで。
いくら本宮の副官だからって駄目なものは駄目だ。
・・・その酒は、あの島で試合運営スタッフ数百名を食ったという狼男に、
副将が復讐を果たすためのエネルギー源だったと先刻川原に聞かされたが、
それだってもっとうまいやり方があったはずだ。
そこまで馬鹿な男だとは思っていなかった。
自分ひとりでなんでもできるなどとは、思い上がらない方がいい―――― ・・・
(・・・なんて、割り切れるヤツの方が少ねえ・・・か)
岡村は強く握り拳を作って見つめる。
数年前、愛する者を守りきれなかったこの拳は、
彼女に害をなした人間たちを闇へ葬り、さらに冥き世界へと彼を誘った。
・・・暗黒から這い上がるのに必要としたのが、
本宮暗殺指令だったというのがまた皮肉である。
「大体あの能天気な男から復讐だの殺してでも奪い取るだの、
そんな単語がどっから出て来るんだよ。本当、人間ってわかんねーよなあ」
【裏御伽チーム】という存在そのものが、
破壊と絶望の闇と光から生まれた存在だと言う事を、
この頃の岡村はまだ、深く知ってはいなかった。
そして彼を裏御伽に送り込んだ男との宿縁を。
影船に注ぐ陽光が途切れる。
岡村が見上げると上空に蟲船の腹。出かけた連中が帰ってきたのだ。
レダルーバはゆっくり影船の隣に着水し前方に泳ぎ出す。
蟲の殻を透過して出てきた真倉に手を振る岡村。
「よお早かったな。試合前に選手を呼び出す迷惑なヤローに挨拶してきたか?」
『あ?なんかそれ川原が1日間違えたらしいぜ。それよりよォ・・・』
「・・・どーした真倉?」
ペタペタと、重さの割に軽い裸足の足音が連続して響く。
音は一直線に蟲船の通路を走り、ある一室の前で止まった。
「おらぁー!ボケ副将いるんだろコラー!!一発殴らせ・・・」
壊れそうな勢いで扉を蹴り開ける岡村は次の瞬間絶句した。
「キャアーー!!おーーーかむーーーーーらくふぅ〜〜〜〜ん!!
うわーん生きてたー!!ごめんよーほんとーにごめんーもうしないよぉーぅ!!」
本宮の予備Yシャツを羽織った、長い髪の女が泣き腫らした顔で、
部屋から飛び出して抱きつくというか、タックルから双手刈り
(柔道の技。相手の両足を腕で固めて引っ張り倒す)を敢行してきたのだ。
「あいてぇっ!何をする・・・でーまだ戻ってねえよこいつ!死ね!」
したたかに後頭部を壁に打ちつけた岡村が青筋を立てる。
飛びついてきた女は構わず泣きべそをたれて何度も謝ってくる。
「あの時はどーかしてたんだボク(ぐすん)バカだよねごめん(ひっく)」
「どうでもいいから早く男に戻れよ!気持ち悪いだろボケ」
「うう、まだうまくコントロールできなくて・・・。
ごめん・・・ボク本当に全然ダメだから・・・みんなに迷惑ばっかり・・・」
岡村が言葉を浴びせるたびに首が下がってくる女。
彼が顔を覗き込むとなんだか、この世の終わりのような虚ろげな瞳で。
まるで自分の方が悪者のように思えてきたので、
岡村は女をもとの部屋に蹴り戻し、
バタンと扉を閉める。肩を落とすと傍らに人影。
「川原・・・。なんだよ、“これ”は?」
声をかけられた人影は意地悪そうに舌を出しながら。
「うちの副将に決まってる」
ぶつぶつ小言を言いながら、蟲船の気孔(ハッチ)から影船に戻る岡村。
「なんだよ。メンバー全員揃ったら蟲船で会議だなんて、
約2名ダメダメじゃねえかよ!こりゃ無理だろ開くの。
ほんっと俺のいない間に何があったやら・・・ったく」
ともあれこれで全員の所在が確認できたと岡村は一息つく。
現在は正午近く。やや傾いた初冬の太陽が気持ちよく岡村の筋肉をほぐす。
彼は先程引き受けた川原の伝言を、影船乗組員に伝えた。
「昼過ぎに準決勝のくじ引きがあるらしいんで、
俺らぼちぼち会場入りするわ。来たい漫画家は好きに蟲船に乗ってくれ。
・・・影船には、乙の遺体をあいつの家族のところへ運んでくれと、
おたくの船長からの命令だ。夜には矢吹艦周辺の海へ戻るようにとの事だ」
澤井は黙りこくったまま岡村の言を聞いていた。
ふっと岡村と視線が合うと、オレンジ色の球体である彼は、
へなへなになったチャームポイントのとんがり部分を手で伸ばしだす。
やがて美しく鋭角に戻ったとんがりを海風になびかせながら、
澤井は棺の蓋を撫で、静かに微笑むと振り返らずに蟲船へと乗り込んだ。
別れの時間が来たのだ。
ぞろぞろと何名か、ヒマな漫画家たちが蟲船へと移り出す。
宴会に参加せず何かの小物を作っていた玉吉が、それを持ってやって来た。
「よおオカムラ隊員!昨日はごくろうだったな。
給料はやれんが礼を言おう。ところで昨日出逢ったキサマの知り合いの、
美女を見かけたらこいつを取説共々渡してくれまいか。
危なっかしい彼女の助けとなろう。これも宿縁だからな」
岡村が受け取ったものは、パイナップル爆弾を模した謎の小型スイッチ2個だった。
「げー、めんどくせー。ところで他の連中はどうした?佐渡川とか」
「ジュン隊員は酒を飲んだら性格がおしとやかになってしまってなー。
男ばかりの船ではヤバイので松椿の女将さんに保護してもらっておるわ」
「なんでヤバイんだ?佐渡川も男だろうが」
「実はなー魔法でごにょごにょ」
「だーからなんで俺の周りはこんな連中ばっかり・・・」
漫画家があらかた移り終え、離水間近のレダルーバの、天頂部分に向かう岡村。
例の女体化副将がそちらにひとり向かったと人づてに聞いたからだ。
ハッチのひとつから屋根の外に出た岡村は、座って影船を見下ろす長髪の女と、
刀を背負って立つ背の低い男の背中を発見する。風が運ぶ会話に、思わず耳をそばだてた。
(…近くで、影船で別れを言わなくていいのか。もう会えないぜ)
(…ボクにはそんな資格ないよ)
(……なぜ本当に裏御伽を辞めた?真鍋の言葉を気にしているのだろうが…)
(…疫病神だから。ボクのせいでみんな恐ろしい目に遭ったから)
(…真に受けるな。あんたはただの人間だ。災厄の種だなんてのは偶然の延長線だ)
(……柳田クンにも言われたよ。ボクは遠い時空から来たやっかいもので不要物だ。
本当はこの世界の"真実"を知る資格だってありはしない……)
(…東京、みたいなものだ。この世なんてのはな。
誰がどこから流れ着こうと誰も気にしねえよ。幻想だ)
(……ボクはオバケと同じさ。いるだけで周囲を不幸に導く。だから…離れた)
(…裏御伽は本当に、馬鹿ばかりで構成されている…な)
(…10年前に大怪我をしてまでボクらを助けた本宮先生も。
人のいい刺客の岡村クン、互いを庇いあって生きてる真倉君達、
頑張りすぎの澤井君…島での先生もね。ホントだ、馬鹿ばっかりだ。おかしいね)
(……ああ)
(…センセ。ボクはピエロになりたかったんだ。皆を楽しませる漫画家に。
だけど今のボクは道化のメイクのような、マスク越しでないとうまく笑えなくなった。
10年前の1日が全てを変えた。ボクは弱くなった……)
(……大会が終わったら旅に出る。≪約束≫を忘れるなよ。
この世界の謎を解くのだろう。…ついてこれるよな。
おまえはそれを確かめるために、今夜俺と仕合うのだろう)
(…え……あ、約束……黙ってひとりで行動決めるなって奴……破ったら先生、怒るよ…ね?)
(…破る前提で話をするな。それと、あんたは決して弱くない。真鍋を倒したろう)
(……先生がいなくちゃダメでしたよ…)
(…倒したのは事実だ。あんたの用語で言うとタッグマッチだ。
あいつは、真鍋は力に溺れた弱いあんただ。あんたは自分に勝ったんだ)
(……… ……センセ… …ありがと… ごめん… … …約束… … )
会話は女の涙で中断された。――ゆっくりと、蟲船は海面より浮上を始め、影船が小さくなっていった。
>>221 「……悪いが私はこっちの方が好みなのだがね。」
そう言って、永野の後ろに巨大な人影が現れる。
「…なるほど、巨大メカか……。」
「矢吹配下のザコとはいえ全力を持ってお相手いたそう。」
「ザコか……矢吹軍最強と言える私に対してそう言いきる事ができるとはな。」
「!!貴様が最強だと!?」
驚愕の声を上げて永野が叫ぶ。
「どうした?何を驚いている?」
「ふざけるな!だったらなんだ?貴様は矢吹よりも強いと言うのか?」
「そうだ……只単純な戦闘力だけで言えば、私は矢吹様の上を行く。」
「な……んだと?ならば何故貴様は矢吹の配下につく!!」
「それについては答える必要は無い。さあさっさとその機体に乗ると良い。」
その言葉に従い、永野がそのMHに乗る。
乗ったのを確認すると、ゆでの頭がTVカメラのものへと変わる。
「ズーム・アウト!!」
その声と共に巨大なMHの姿が消えていき、人間サイズのものへと変わる。
「なっ!何っ!!」
「これでリングの上に上がれるだろう?
来い永野護。それともおじけづいたか?」
ゆでは静かにそう言って、自らは青コーナーのイスに座った。
巨大化じゃなくて相手縮小かよ!
…さすがゆでとしか言いよう無いなw
ゆではいいよねえ。
ところでトーナメント抽選会といっても、
えなりチームだけ異様に人がいないんだよね・・・。
このままでは富沢ひとしが主役になっちまうさあ
準決勝開催日未明の決勝T進出4チームメンバー状況
■バンチチーム
・原(Bブロックで埋もれてた〜影船に出没)
・北条(Aブロックで入院中)・秋本(CB中爆死?以降不明)
・ゆで1号(無礼ドでヨクサルと対戦・行方不明に)
・巻来(無礼ドでおやすみ)・柳川(とっくりの中)
・三浦(無礼ド・キノコ男状態で寝てる)・柴田ヨクサル(キノコ状態でゆでと対戦)
■ガンガンチーム@トーナメント出場キャラ
・藤原カムイ(無礼ドでおやすみ)・渡辺道明(オメガ7と行動)
・衛藤(無礼ド・留美子とはどうなったやら)・土塚(たぶん衛藤といっしょ)
・松沢(無礼ドでカレー食った)・金田一(無礼ドで安西制裁)
・夜麻(高橋ツトムに連れ去られた)
■裏御伽チーム
・本宮(やまと〜影船に移動)・にわの(猿渡と東京にいる)
・川原(本宮と同じ)・岡野(同)・澤井(同/ヘコミ)
・真倉(松椿を蟲船で脱出後岡村と合流)・岡村(無礼ド〜蟲船)
・乙(やまと内で能條が暗殺〜死亡)
■えなりチーム
・えなり(空知との問答に疲れてフテ寝)
・荒木(冨樫との対決に負け自決?)・車田(宮下と千日戦争状態に)
・鳥山(荒木を救いに王蟲の群れへ飛び込んでのち不明)
・尾田(和月にヌッ殺され生首に)・武井(異世界から宇宙墓場へ漂着)
・富沢ひとし(無礼ドで世話になってる)・岸本(狐状態・どこかへ連れ去られた)
・板垣(福岡ドームバトル以降消息不明)
・大和田(CB中キユに飛ばされ行方不明)・宮下(黒化し車田と対戦)
試合に出られそうな人数比率: B(補充あり)>>C>B(補充なし)≧A>D?
Aは不明者の帰還、C・Dはチャンピ連中等の動き次第で変動あり。どうするよ主人公・・・。
>>232 Bは安西とリックが参加表明してたはず。
城平達もいるし。
えっとトーナメントブロック決勝時のメンバーです>ガンガン
そいつら足すと32行じゃおさまりきらんの
そういやあガンガンのブロック決勝戦って6部決着なんだっけ・・・(早)
あれからいろいろ足したり引いたり沸いたり消えたり色々ありました
留美子も、荒川が帰って来るまではガンガンに協力するって約束してた
そいつらは補充扱いなんだろう。
いつの間にか大会参加組では最大派閥だなガソガソ
? 「全国津々浦々のテレビの向こうの皆様こんにちわ!
今日も無事行われる矢吹艦最大トーナメント!
約1000人の書類審査通過者が大会容認で殺しあった、
一次予選開始から10日余り、ついに4ブロックの代表が昨日決定しました!
テレビ放送の実況兼解説は私、克解王こと克と、
スプリガンチーム橋口が同時にお送りいたします」
橋口「わけがわからんだと?気のせいだ。橋口だ、よろしく」
克 「すいませんねえ、解王なもんで解説してなんぼなんです。
橋口先生にはツッコミや補足などを担当していただきます。
間もなく組み合わせ抽選会が始まります。いや緊張しますね」
橋口「ごたくはいい。決勝トーナメントに進出した4チームの説明をしろ」
克 「ではAブロック代表【バンチチーム】!
原哲夫を頭とした、つわものどもが夢の結晶!いぶし銀の貫禄!
常に最高クラスのバトルを見せてくれます優勝候補!!
そして代表一番乗り・Bブロック【ガンガンチーム】!
チームリーダー藤原カムイ、勇者の名は伊達じゃない!
何が飛び出すかわからぬ強烈ビックリ箱!!
Cブロックは強運も実力の内?乱入軍団【裏御伽チーム】!
永遠のガキ大将本宮ひろ志と子分たちが今日も大暴れだ!
大災害で沈没したC決勝舞台の島から生還した根性を見せろ!!
最後は今大会台風の目、Dブロック代表【えなりチーム】!
えなり少年の戦力データは皆目不明!まさに未知数!
漫画界を支える旧ジャンプ系作家はどこまで夢を与えてくれる!?
─以上この4チームで決勝トーナメントが行われます。
対戦カードはこれから各チームの代表によるくじ引きで決定されます。
どのような熱戦が巻き起こるか楽しみです!!」
橋口「草場よ見てるかー私は元気にやっているぞー」
克 「生放送で何やってんですか!
(まずい放送すると矢吹軍に捕まりますよ)
なお抽選会は午後1時、試合開始は午後2時の予定です。
放送席には時々特別ゲストをお呼びします。お楽しみに!」
橋口「チャンネルはこのままだ!!」
>>222 「ヤ‥ヤバい‥‥たいへんな事に、大事件になっちゃってる!?」
数百人の兵士に追われているえなりは、必死の思いで逃げ回っていた。
「ど‥どぉーしよ‥‥とりあえず、こっちに隠れよう‥‥」
なんとか細い裏道に逃げ込み、追手をやり過ごそうとするが、
「へ?」
そのとき、奇妙な“もの”をえなりは踏んだ。
兵士から奪った軍用ブーツの裏に、無数の尖ったものが突き刺さっているのだ。
それの正体は、有刺鉄線を巻き付けた革ジャン。
こんな異様なものを身に着けていた男を、えなりは知っている。
それもつい最近、会ったばかりの男‥‥
「よお‥オマエかあ‥‥“えなり”クン‥‥」
すぐ近くの物陰にうずくまっていた人影に呼び掛けられ、えなりは仰天した。
逆立てた銀髪、キツいコロンの匂い、浅黒い肌、そして緋い瞳‥‥
「さ‥“佐木”セン‥セ‥」
それは、先程の“キャノンボール”の発端であり、えなりに並々ならぬ恐怖を与えた男。
“魔牙神”にあって最狂にして最凶の悪魔。
しかし、その悪魔は今、全身に大怪我を負い、動けない状態にあった。
「そ‥その怪我‥‥ダイジョ‥‥」
えなりが言いかけた瞬間、佐木が血ゲロを吐く。
「つ‥“強”ェ‥ありゃまるで “ 大 魔 王 ” だ‥ぜ‥っ へへ‥‥‥」
誰のことを言っているのか判然としないが、佐木は力なくヘラヘラと笑う。
「と‥とにかく‥早くここを動かないと!今、あっちこっちで矢吹の兵士が動いて‥‥」
「ダメだ‥‥動けねー」
どうやら、相当にダメージが深いらしかった。
それっきり気絶してしまう。
それを見ていた、えなりはしばらくの間、悩んでいた。
「フゥ‥なんとか安全な場所に‥‥」
結局、えなりは気絶した佐木を背負い、裏通りにある廃ビルにまで逃げ込んだ。
いかに敵とはいえ、瀕死の人間を見殺しにするのが、なんとなく気が引けたのだ。
しかし、やってしまった後で、えなりは悩んだ。
「どーしよー、やっぱり病院に‥‥?」
佐木の傷は相当に深い。下手すれば、命にかかわるだろう。
早急な手当てが一刻もはやく必要だ。
そう考えていたえなりだったが、その腕がいきなり掴まれる。
「ヒッ?」
思わず悲鳴をあげかけるえなり。
「やだ‥‥いかねーよ‥‥病院‥‥は‥‥」
えなりの腕を掴んだまま、意識を取り戻した佐木が、そう涙ながらに訴えた。
意外なものを見たように、えなりは硬直し、何も出来なくなった。
「気‥気がつかれ‥‥ました‥?」
そう言いながら、えなりがチラチラと佐木の剥き出しの上半身をうかがう。
果たして、そこには異様な刺青が、上半身を覆い尽くすように刻まれている。
「あぁ‥コイツかァ‥」
えなりの視線に気付いた佐木が、説明らしきものを始める。
「右腕の“双頭の蛇”は、からみ合い、互いを啖い合う“神聖”と“邪悪”を表す‥‥
左腕の“龍”は人智の及ばぬ“神秘”を‥‥
そして背中の梟‥‥‥限り無き“叡智”を」
ガフッ‥‥
「さ‥“佐木”センセ‥!?」
またも血を吐いた佐木に、えなりが狼狽する。
「ハッ‥! ぐぅ‥ おっ‥!!」
「ひっいい!!」
尋常ではない苦しみ様。鬼気迫る様相に、えなりが怯える。
「みんな‥“兄弟〈ブロウ〉”って“呼”んだのに‥それなのに‥‥」
佐木は自分を抱くように、身を縮こまらせて震えている。
いつ爆発するか分からない、不発弾の側にいるような危機感を、えなりは味わっていた。
「(こ‥怖い‥“佐木”センセ、キレそぉ‥‥ どおしよ)」
すっかり蒼ざめたえなりをよそに、佐木は完全にトリップした目で虚空を見上げている。
「(澱〈おり〉る‥‥澱てゆく‥‥魂〈ソウル〉‥‥)」
銀髪がざわりと波打ち、佐木が瀟々と詩を吟ずる。
――心象のはいいろはがねから‥‥いちめんのいちめんの諂曲模様‥‥
――四月の気層のひかりの底を‥‥
――オレはひとりの 修羅なのだ‥‥
「(完全に入ってる‥‥自分の世界に‥‥)」
佐木の奇行に、えなりはほとほとマイっていた。
いっそ、このまま逃げてしまおうか、と考えていると‥‥
――また僕達二人きりになったねぇ
――どこまでもどこまでも一緒に行かう
――僕はもうあのさそりのやうにほんたうに
――みんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまはない
「えっ?それって“宮沢賢治”の“銀河鉄道の夜”じゃ‥‥」
「‥‥‥あ?」
知っているフレーズに思わず反応したえなりを、佐木が夢から覚めたような目で見た。
「あ‥ああ、そーだよ!
“宮沢賢治”‥‥“彼の詩”は最高なんだ‥‥
きっと彼は大地をしっかりと足を‥力強く踏みしめて‥
彼の詩は“祈り”なんだ
“万象の在り様”を‥‥きっと‥‥」
「祈るって‥?ナニ‥を?」
急に饒舌になった佐木に戸惑いながらも、えなりが聞く。
「“ 宇 宙〈そら〉 ” を だ よ ‥‥ 」
「あの風景‥‥
ザワザワとした“喧噪の中の不思議な静寂”‥‥
無数の翼のザワめき‥‥
そんな“音”が聞こえる‥‥
そして“彼の詩”がリフレイン〈繰り返される〉‥‥」
いつしか、えなりは佐木と“同じ言葉”で話していた。
えなりは、ひょっとして自分が思い違いをしているのではないか、と考え始めていた。
この佐木という男‥‥ただ凶暴なだけの男ではない。
今の佐木には、触れれば壊れそうなほどの繊細さを感じさせる。
いや、それゆえの狂気なのか‥‥。
いずれにせよ、佐木の精神世界には、計り知れないものが眠っている。
えなりは、朧げながら、そう感じつつあった。
そして、少しずつ、目の前の男に興味を抱き始めていることに、自分でもいまだ気がついてはいなかった。
いいねえ佐木
女体化男は足りてますから
(
>>28)
えっほっほー えっほっほー (ギッコギッコギッコギッコ)
爆発四散した評議会は黒軍基地から、
黒焦げになりながら三連サドルの自転車で飛び出してくる、
男2人と女1人。彼らの頭頂からはモクモクと煙が吹いている。
♪やられても やられても なんともなーいない♪
柳田「ぬううう!!これではただの某小悪党トリオではないか!
許さん、忘れんぞこの屈辱!恨みはらさでおくべきか!!」
筆吉「生きてここを出られただけましじゃないか。
≪科学の壁システム≫にだって限界はあるんだぞ柳田。
早く円盤を修復してこの地から逃げよう」
東 「に、逃げるってこれからどうするのよ!
矢吹様が艦にお帰りにならないと私たちは生命の保証すらないのよ!
あんたたちでなんとかしなさい!このスカポンタン!」
柳田「フ、すっかり悪女然としてきたな、まゆみ嬢。
それでこそ我々の新パートナーである」
東 「ただのなりゆきだっつうの!!ああ、なんだってこんな事に」
柳田「なんでもよい!よし、これより我ら【秘密基地】の確保に入る!
そして体制を立て直して世の悪(某副将など)に対抗する組織を作るぞ!
矢吹殿が頼れぬのなら自分の足で立てばよい!闘うのだアズマ女史!!」
東 「はいはいどうぞご勝手に」
こうして破壊の中から再起を図る空想科学コンビ+1であった。はてさて、どうなることやら。ベンベン♪
こいつらドンドンと妙な方向へと…
てか東が空想科学大戦のズキンに思えてならないw
249 :
狂騒の残滓:04/09/24 15:49:23 ID:WXOgwhxm
(
>>31)
「はあ、やーっと局から出れよった。腹減ったわ。
まあ生きて出られただけマシやねんけどな・・・かたつむり生きとるやろか」
矢吹軍の兵士がぞろぞろと警備する中、救援要請特番も終わり解放された、
みずしながTV局の表門を出る。潜入した時とは環境が全然違う。
(行方不明だったこずえ達の情報ももらえてありがたいこっちゃ。
しかし、俺もなんぼか世の役に立てたんやろうか。だったらええなあ)
時刻は正午過ぎ。局の1Fロビーの巨大液晶画面では、
克と橋口が掛け合いながらトーナメント直前番組を行っていた。
無理矢理にでも平和を強調しようとしているのだろう。
みずしなは放送を直視できぬまま施設を立ち去った。
道々でみずしなは時折腹部をさすって、
福地温泉ノートの感触を確かめる。彼に矢吹艦特攻を決めさせたきっかけだ。
(あいつのこまこました丸っこい字を見てるとな、
大真面目に『温泉で世界平和』を企んでんのがようわかったわ。
俺かて戦争や災害よりこっちのが断然ええわ。何をどうするのかわからんけど。
・・・福地、早うこいつ取りに来ぃや。ずっと持っとるでな)
空を見上げると透明ドームの向こうに柔らかな陽射し。
軍の監視はついてるだろうが気にする理由はない。ただ、
みずしなにはひとつ引っかかる事があった。
(どうもニュースが後半おかしくなって来てたよなあ。
編集が多いのはともかく、何か見てる側の意識捜査ちゅうか、
『漫画家のおかげで助かりました』を強調しまくりゆうか。まあ、
矢吹軍の軍営放送だから当然なんやけど・・・なんか、こう)
「強大な武力を持つ漫画家が、自分でコトを起こして解決させて、
自作自演で世の英雄ごっこ・・・なんて漫画みたいな話も可能なんやろうな。
空恐ろしい話やで実際。今回は違うとええねんな」
つぶやきながら、天野と冬目がいるという松椿関係者の収容された病院へと向かった。
意識捜査× 操作○
意識調査じゃあるまいし
そして今誤字に気づいた
>>205 ベルリンの赤い壁× 雨○
ゆでが赤壁の戦いかましてどうすんねや
>赤い壁
返り血に染まっているみたいである意味素敵
>>243 ザザザザザザザザザザッッ!!
「へ‥‥」
それは突然の出来事だった。
佐木と話していたえなりの周囲を、夥しい数の兵士達が取り囲んだのだ。
「見つけたゾぉ!キャノンボールで大暴れした手配中のひとりだ!」
「怪我してンじゃねーか!?好都合だぜ!
「おい、こっちにはオレらと同し格好した小僧がいんぞォ!?」
「そいつだ!そいつが変装した侵入者だ!抵抗するようなら射殺しろ!!」
「ヒャッホウ!久しぶりのマン・ハンティングだぜ!!」
「殺せ、殺せェ!てめー生きて帰れると思ってんじゃねーだろーな、このゴミがあ!」
「ひ、ひいいいいっっ!“矢吹軍”の兵士の皆さん!?」
完全武装した兵士、数十人に取り囲まれ、えなりが失禁しそうなほどにビビる。
「(ダ‥ダメだ‥‥僕程度の力じゃ、あれだけの銃に撃たれたら‥‥)」
えなりに勝ち目がないことは一目瞭然。火を見るより明らかだった。
しかし‥‥
「(で、でも僕が‥守らなきゃ‥たとえ佐木センセイが‥“敵”だったとしても‥‥)」
瀕死の佐木を守るため、あえて楯になることを選択したえなり!
そこへ、百を超える軍靴の群れが殺到した!!
“暴動”〈ライオット〉‥‥!!
――耳ごうど鳴つてさつぱり聞けなぐなつたんちゃい
――すべてあるがごとくにあり
――かがやくごとくにかがやくもの
――おまへの武器やあらゆるものは
――おまへにくらくおそろしく
――まことはたのしくあかるいのだ
――みんなむかしからのきゃうだいなのだから
――けっしてひとりをいのってはいけない
ザ‥‥! ザ‥‥!
(お‥‥)
ザ ワ ッ !!
“暴動”〈ライオット〉‥‥!!
「お‥おお‥‥」
ザワ! ザワ! ザワ!
!?
「なんだあ、こいつ!?」
「てんで“弱”ェーぞ!?ホラ、立てよォ!!」
「こいつも漫画家かあ!?」
「(がはっ‥げふっ‥くそ‥‥)」
「この“死”にぞこないが‥‥とどめ刺してやる‥‥!!」
――グシャッ! ゴッ! ガッ! ベキッ!!
「うぐあがっ‥‥げぇふぅ‥‥‥ッッ!!」
百を超える銃口を突き付けられていては、どうすることもできない。
佐木をかばうえなりは、兵士達によってたかって殴られ、蹴られ、踏み付けられ、血ヘドを吐き続けた。
――ザワザワとした“喧噪の中の不思議な静寂”‥‥
――無数の翼のザワめき‥‥
――そんな“音”が聞こえる‥‥
――そして“彼の詩”がリフレイン〈繰り返される〉‥‥
ぱ ぁ ぁ ん
ビチャッ‥‥!
――血の“朱”が‥‥鉄の“黒”が‥‥暴力を“支配”する‥‥‥‥
「お‥‥‥あ‥‥あぁ‥‥‥」
――見てごらん‥‥?
――“オリオンの星”が堕ちてゆくよ‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ニィッ
「や‥‥やめろォ‥‥!!」
血まみれのえなりが、必死に叫ぶ。
もはや動けないえなりは、兵士達に取り押さえられ、無様に地面を這い蹲っている。
えなりの眼前では、複数の兵士達が、同じく血まみれでうずくまる佐木に銃口を突き付けている。
このまま射殺するつもりだ。
「うるせえぞ、ガキがあ!!」
喚くえなりを、兵士のひとりがライフルの銃把で殴りつけた。
吹っ飛んだえなりを、さらに数人の兵士が軍靴で蹂躙する。
遂に万策つきた、えなりの目の前で、兵士達の指がトリガーにかかる‥‥
「 “死” ね 」
死の宣告が下された瞬間‥‥‥
グ シ ュ ッ !!!
何か硬いものが潰れる、異様な音がした。
銃弾によって指名手配犯の頭が爆裂したかと思えたが、そうではない。
なんと、あろうことか頭部が根こそぎ消失し、太い血の噴水を噴き上げているのは、全て矢吹軍の兵士だった。
!!
誰もが、一瞬、何が起こったのか把握できなかった。
そして‥‥‥
むせかえるような血の雨の向こうで、燃え立つような銀髪の鬼が立ち上がったのが見えた。
うひょおお!!└|゚ロ゚|┘
宮沢賢治はこういう風に使うのだなあ
259 :
福地と高橋:04/09/24 21:24:37 ID:M/37e/+W
>>10…多分
―戦艦ヤマト甲板―
横山十傑集の一人、福地翼は高橋しんを連れてヤマト強化工事に携わっていた。
本来、ヤマト強化工事の任務に高橋しんは任命されていないし、必要もないのだが
高橋しんの処遇について松本零士から『敵味方の区別を付けるまで再教育を終えてから改めて通達する』
と指示されたため再教育係でもあった福地の元にいるのである。
(いつもならすぐ牢屋に軟禁するのに…何か事情でもあるっすかねぇ…)
福地が作業をしつつぼんやりとそんな事を考えていると、高橋が子供のような無邪気な表情を浮かべて聞いてくる。
「福地、ここの人と闘っちゃダメ?」。
「ダメっすよ、松本様に怒られるっすよ。」
福地は設計図を描く手を止めず、高橋の方すら見ずに言う。
「じゃあここの人じゃなきゃいいの?オレ闘いたいよう…」
福地に擦り寄るようにして子供のようなわがままを言う高橋。
「ダメっすよ、松本様に怒られるっすよ。」
さっきと全く同じ言葉で制止する福地、その場にある全員の命が掛かった会話であるはずなのに
その様子はオモチャ屋でワガママを言う子供とそれを抑える母親の様にも見えるほど和やかな物であった。
殆ど福地に相手にされていない高橋はしばらく悶々としていたが、突然思い出した様に首を傾げ、福地に聞いた。
「ねぇ、松本様って誰?トモダチ?」
(そういえば、まだ再教育を済ましていなかったっすね…)
福地はそう思い、手を止めてから作業をしていた人に向けて言った
「みなさーん!しばらく休んでていいっすよ!」
こういった後、『口を四次元空間の入り口に変える力』を使用し、口からアルバムと一体の人の模型を取り出す。
その後、フィギュアを持って突然とり憑かれたかのように叫び始めた。
「我等3人生まれし日は違えども!願わくば同年同日に死なん!」
突然の福地の奇行に、その場の高橋を除く全員が驚いて福地の方を見るが、その後に起こった事に全員が唖然とした。
一人の老人が現れていたのである。もちろんただの老人ではない。
落ち着いた雰囲気、それに似合わぬ圧倒的な存在感、そして何よりも頭に乗っているベレー帽、
『ゴットハンド』事実上の首領、横山光輝がその場に現れたのである。
260 :
福地と高橋:04/09/24 21:25:11 ID:M/37e/+W
福地の頭の中に情報が流れてくる
―こちらがして欲しい事を読んで勝手に行動を起こしてくれる、ただし操る事は出来ない―
福地の持つ『オブジェ(模型)を実物に変える能力』の一環、『実物にした物を操作方法がわかる能力』である。
福地はその能力を用いて横山光輝のフィギュアを実物に変えたのである。
「高橋しんの再教育をするのですね?」
横山は福地に対して確認をする。
「はい。よろしくお願いします。」
自分が造った物でありながら『実物』で有るがゆえに無意識に敬意を払い福地は返事をし、持っていたアルバムを横山に渡した。
横山はそれを確認すると高橋の様子を確認する。
「福地、この人はトモダチ…?」
高橋も横山の存在感に圧倒されているようである。
「まぁ、そうと言えばそうですね、私が今から誰が友達で誰が敵を教えてあげますよ。」
横山はアルバムを開き高橋に再教育を始める。
―横山の存在感を利用し、高橋に強制的に話しを聞かせる―
横山に対する忠誠心が薄い福地が高橋の再教育の時に良く使う方法である。
しばらく福地はその様子を眺めていたが、突然横山に呼び止められた
「アルバムに大友君の写真が無い様ですが、何処にありますか?」
そう言われて福地は慌てて口の中を探り、大友の写真を探し当て、横山に渡した。
「はい、どうやらアルバムから剥げ落ちていたみたいです。ん?」
福地の足元に写真が落ちていた、どうやら大友の写真と一緒に出てきたらしい。
「これは…」
少年のような顔立ち、額に刻まれたNUNBER10の刻印…キユの写真である。
ここで話は12部の
>>34位に遡る…
―九州のとある森―
人が殆ど立ち寄らない森、その中でわずかに開かれた空間に、ゆったり登る湯気と、少しばかりの硫黄の香りがする温泉があった。
動物しかいないはずのその空間に似つかわしくない、二人の人間と一体のロリ魔人がいた。
そこでは怒声が鳴り響き、一触即発の雰囲気を…
「こら!!しん!!服を着たまま温泉に入るなんて温泉への侮辱っす!!」
醸し出して無かった様である…
「おいおい福地、そんな細かい事は気にしなくても良いだろ?」
「ダメっす!!温泉は神聖な物っすよ!!ほら!!梅澤さんも早く服を脱ぐっす!!」
ロリ魔人梅澤が呆れたように福地を諌めるが、逆に福地に怒られてしまった。
仕方ないので服を脱ぎだす梅澤、魔人が服を着ているのかどうかさておき…
それを見て自分も服を脱ぎだす福地、足元に梅澤の所から一枚の写真が落ちてきた。
少年の様な顔立ち、額に刻まれたNUNBER10の刻印…キユの写真である。
福地は写真を拾って梅澤に渡そうとする
「梅澤さん、写真を落としたっすよ。」
「おう、ありがとよ福地。」
礼を言う梅澤。そして…
「ところで、この写真の人って誰なんっすか?」
「あ?キユだけどどうかしたのか?」
梅澤の何気ない返答に福地の動きがぴったりと止まる。
……5秒後
「ええぇえええぇえぇえ!!!!」
福地の渾身の力を込めた絶叫が森にこだまする。
「うっせぇなぁ!!キユの顔を知らなかったんか?」
梅澤に怒鳴り声に福地は少し落ち着きを取り戻して梅澤に答える。
「いきなり叫んじゃってすまなかったっす。…でもこんな少年とは思わなかったっすよ…」
福地の言葉に梅澤が心底不思議そうに答える。
「ん?確かキユは『ゴットハンド』最大の敵なんだろ?なのに顔もしらねぇのか?」
当然と言えば当然の疑問である。
「そうなんっすけどKIYUの正体は『ゴットハンド』でも謎に包まれていて僕ぐらいじゃあ見た目もわからないんっすよ。」
梅澤に答えるついでに何気に『ゴットハンド』の秘密事項を喋ってしまう福地。
「そうか…じゃあその写真やるよ。どうせお前の上司になるんだからなぁ。じゃあとっとと温泉に入ろうぜ。」
そういって温泉の方に入っていく梅澤
「梅澤さん、ありがとうっす。」
福地は礼を行ってから『口を四次元空間の入り口に変える力』を使い口の中に写真を締まってから、服を脱いでそのままでいた高橋を連れて嬉々として温泉に向かって行った…
話しは現在に戻る…
こんなわけで今、福地の手にあるキユの写真。
これを眺めている内に福地は危険な考えを思いつく
(この人を実物にしたらどうなるだろう…)
―福地の持っているキユの写真、これを福地の持つ『写真を模型に変える能力』で模型にし、さらに『オブジェ(模型)を実物に変える能力』を使い実物にするー
とんでもない話である。
いくら操作方法がわかると言っても『ゴットハンド』最大の敵の一つであるKIYUを具現化し駒に使用とするとは異常としか言いようが無い。
実際、今までの福地ではそんな事は恐ろしくて出来なかったであろう。
しかし、今の『腐朽』になる覚悟を決めた福地にはそれがとても魅力のあることに見えた
(どんな人か実際に有ってみたいっすね…)
『福地』の純粋な好奇心がそう考える。
(そこまで強い人だったら利用できるっすね…)
『腐朽』の打算的な狡猾さがそう考える。
『福地』と『腐朽』の考えは一致し…実行に移し始めた。
(『写真を模型に変える能力』…)福地がそう思うとキユの写真は精巧な模型へと変わる…
ちぃ…
(確かキユの言葉でいちばん有名なのは…)
福地の『オブジェ(模型)を実物に変える能力』を使うためにはその模型で遊ぶ事が必要である。
そのために福地はキユの漫画家としての言葉を思い出そうとしていた。
くちぃ…
(あ!これだ!)
福地がキユを具現化させるための呪文を思い出してしまう…
ふくちぃ…
そして福地はキユの模型を鷲づかみにするとキユのセリフ…『悪魔』を呼び覚ます呪文を唱え始めた。
「痛みを知らない子どもが嫌い。
心を失くした大人が嫌い。
優しい漫画が好き。
バイバイ キユ」
『オブジェ(模型)を実物に…』「福地ぃ!!!」
高橋の怒鳴り声が福地の耳にやっと届いた。
「どうしたっすか?」
福地は張り付いた様な不気味な笑顔のままで高橋に問う。
「横山様が人形になっちゃった…」
高橋の手には老人…横山の模型が握られている。
どうやら精神を他の事に集中させすぎたせいで模型に戻ってしまったらしい。
「すまないっすねぇ、今すぐ元に戻してあげるっすよ。」
そう言って高橋から横山の模型を受け取り、キユの模型を口に収納する。
(まぁぶっつけでもなんとかなるっすね…)
『福地』の気楽さがそう考える。
(何か有ってもそっちの方が楽しいしね…)
『腐朽』の狂気がそう考える。
(KIYUの具現化はぶっつけでいいっすね…)
ここでも『福地』と『腐朽』の考えは一致した。
ここで福地が手に入れた『KIYU』…これが後にどう言う結果をもたらすか…
それはファンキーな神ですら知りえない…
(((( ;゚Д゚))) ふふふ福地怖いマジ反則能力野郎めちゃ恐い
福地が…サイコになってるー!!
福地はかなりヤバイ敵になりそうだな
個人的には、リックか、しなっち繋がりでヨクサルあたりとの戦いを見てみたいけどw
うわ、福地いい感じに黒い…てかマジヤバ。
温泉好きな平和主義者だったのが本当に遠いよ…
今の福地がしなっちにあったら…
笑いながら惨殺したあと死体を弄びつつ大泣きしそうだ。
イヤァァァァ!!
今なら理想を現実にする能力と融合させて理想のキユを具現化させちゃいそうだw
最初に福地を出した書き手がリアル福地の成長を見越して十傑集に入れたとしたら神
273 :
入れた椰子:04/09/25 15:40:15 ID:0CcxneHf
いや、俺もこうまでなるとは
あの頃の十傑集は石渡や山口みたいななんつうかヘヴィーな方々だったから
「ある程度ライトでそこそこの有用性を見込めるな奴」ってことで福地だったんだが…
温泉設定やらが加わって「育ったなあ…」て思ってたら一気にサイコに…
だからリレー小説はやめられない。
神キター
つうか魔王w
福地最強じゃねーか
(21部スレ
>>514・
>>206)
ようやく全てのしがらみから解放され、穏やかな眠りにつきはじめた、
ガンガンチームリーダー、藤原カムイ。
しかし、彼は勇者。
ぶっちゃけ、彼には安息の日などない、ということを証明するように事態は起こった。
ドッガアアアン!!
カムイ「なんだ、敵襲か!?」
いきなり寝室のドアが蹴破られ、その衝撃で跳ね起きたカムイが枕元の剣を握る。
しかし、入ってきたのは、白い髪のチンチクリンな少女。
誰あろう、金田一だ。
カムイ「おまえか……いきなり何の用だ?返答次第じゃ、おまえでも許さんが」
いい加減、かなり殺気だってきたカムイだったが、凄んでも金田一は眠ったように無表情。
よく見ると、本当に眠っていた。
カムイ「こいつ……持病の夢遊病が発病したとかいうオチじゃないだろーな?」
一瞬、マジで目の前の生物をブッタ斬ってやろうかと、ちょっと怖い考えになりかけた。
そのとき、突然に金田一の目がくわっと開き、ついで切羽詰まった男の悲鳴が聴こえてきた。
??「うぎゃーッ!!!変な女が手首切っとる――――――ッツ、血の海―――ッ!!」
カムイ「なにいっ!?おまえ、安西!?なんでそんなところに―――――…って
え―――ッ、切った――――――――ッツ!!??
」
金田一の体内から、実に数スレぶりに帰還した安西の談によればこうである。
金田一が眠ったのを見計らって、金田一体内の管制室を乗っ取り、ここまで動かしてきた。
途中、ただでさえ目の前でリストカット事件を見せられて鬱になってるときに
タマネギの汁まで流れこんできて
色々と目からしょっぱい水が溢れて止まらなくなっただのと熱弁を振るっていたが、
まあこのあたりはどうでもいい。
問題は、安西がパプワワールドで見つけたリストカッター。いや、自殺マニアの処遇。
まさかと思ったが、安西が引きずってきた血まみれの女を見た瞬間、やっぱりと頭を抱えたくなるカムイだった。
そして、さらに数分後―――
カムイ「大丈夫か…一応、止血はしておいたぞ」
??「すまぬ、カムイ…」
ジーンズにタンクトップというラフな格好をした、やけに目つきが悪くて、
アブナイオーラを全身から発散させてる女が言った。
もちろん、安西が見つけた件の人物である。
彼女の名前は、柴田亜美。
「ガンガンの女王」「パプワワールドの絶対君主」「荒神」「呪神」「カミヨミ」「自由人」……エトセトラエトセトラ……
この数々のアダ名以外で、ひとつだけ。
それは、彼女がガンガンでも最強の作家のひとりであり、
そして、それ以上に、最凶の問題児であるということだ。
亜美「突然、人が来たんでビックリして……
手 首 切 っ ち ゃ っ た よ ……… 」
カムイ「ふふッ、変わんねえなァ、亜美は!」
土塚「まったく、亜美ねーさんらしいですねえ、ケきゃきゃきゃきゃ!」
衛藤「アッハッハッハッハ」
安西「 待 て い 」
なんとなくヤケクソぎみになっている三人に、安西がツッコミを入れた。
土塚「なんですか安西さん。貴様も早く亜美ねーさんに紹介してほしーんですかい?」
安西「違う―――――ッツ!!
なんだーッ、この女はぁ!
こぉんな根暗で危ない奴が仲間だなんて、俺はやだぞーっっ!!」
カムイ「おい、安西。人を見かけで判断するなッツ。こー見えても亜美はなあ――――」
衛藤「カムイさ―――んっ!安西がひでぇ事言うから、亜美さん、また手首切った――ッツ!!!」
亜美「(瀕死)」
カムイ「ごらんのとーり、シャイな彼女だ」
安西「(ホントに大丈夫か、こいつら?)」
もしかしたら自分は進む道を間違ったのでは……と、安西は真剣に悩み始めた。
279 :
訂正:04/09/25 23:58:51 ID:o8fSgqGj
×この数々のアダ名以外で、ひとつだけ。
○判明していることは、この数々のアダ名以外で、ひとつだけ。
最後の重鎮登場か…どうなるガンガン
カムイさんに不眠属性が
ああオモロ
>ジーンズにタンクトップというラフな格好
もちろん、 巨 乳 で す よ ね ?
そういえばリアル亜美って、胸にタトゥーがしてあるんだよね
どんな絵柄かまでは知らんけど
確か赤い薔薇>タトゥ
薔薇のタトゥーっていえば今現在潜水艦相手に悪戦苦闘してるアイツにもありそう…
>カムイ「ふふッ、変わんねえなァ、亜美は!」
不自然なほどさわやかな笑顔を浮かべてるカムイを想像してワロタw
ストレス溜まって不眠でクマできてジャガン化?
嫌な勇者様だなぁ
ずっと待望されてた女の本格登場ですな。
290 :
集結:04/09/27 00:51:33 ID:6BZJ3GTP
吹き上がる黒煙 燃え盛る艦船たち
それが地獄の門が開かれた鹿児島沖の現状である。
その中でゴッドハンド第3艦隊旗艦【エリア88】の苦闘が続いていた。
「報告!【エリア81】沈没!戦艦一隻航行不能!ミサイル巡洋艦一隻ミサイル駆逐艦二隻で火災発生!」
司令室に送られてくる無数の情報
それはすべて第3艦隊の確実な損害を告げていた。
そしてさらに信じられぬ報告が舞い込んできたのだ。
「指令!正体不明の艦船二隻確認!及び…上空に巨大な艦船らしき未確認飛行物体!」
「なんだと!」
正体不明の艦船二隻とは【煉獄】と【Neo-“Z”】
そして巨大な艦船らしき未確認飛行物体とは
「きれいだ…地獄が見える…」
恍惚とした表情で倉田英之がつぶやく。
つい先ほどまでの黒軍基地において地獄を見ながら…彼の貪欲な精神は満たされていない。
「さてフライト時間ですよ押井さん」
「ああ」
素っ気無く返すレンズ眼の男、押井守
そして…
「!!未確認飛行物体より兵士達が降下中!
これはッこんなバカな…と、特機隊です!押井守の猟犬たちです!」
291 :
集結:04/09/27 01:17:37 ID:6BZJ3GTP
「特機隊!奴らはとうに消えたはず…だが…」
九大天王【静かなるかわぐちかいじ】そして評議会伝説のエージェント【押井守】
この両名の出現はゆうなれば艦隊における第一級の危機
これに対する指令としての新谷の選択肢はただひとつだった。
「あんまり借りは作りたくねえが…」
そういって周囲を一瞥する。
燃え盛る艦たちそして死んでゆく乗組員たち
ともに長きに渡って戦い続けてきた【戦友】たちである。
「これ以上失うわけにはいかねえもんな!戦艦ヤマトに救援要請!
我かわぐちかいじ並びに特機隊と戦闘状態に突入
潜水艦隊の出動及び陸上戦力の増援を頼む!」
そしてさらに艦内無線をとり通信を…医務室につなぐ
「だれかいるか!」
「なんや艦長さんかいな。ところで今何がおきてるんや外がやたらすご…」
「話はあとだ!いいか事情でいまからたぶんこの空母上で戦闘が起きる!
だからそこに隠れてろっていいたいところだがなにぶん戦力が足りねえ!
だれかこっちに来てくれ!」
「わ、わかった。」
「頼んだぜ」
そして無線をきった新谷の目に次々と降下してくる兵士達が写る。
「!…至急戦闘準備、救援が来るまで持ちこたえるぞ!!」
(
>>227)
矢吹艦へと向かう空の上。会議室に改造した蟲船の中の一室で、
本宮・澤井・頭と動体部分が分離した岡野と真倉が席を囲んでいる。
格闘家トリオが来たら会議をしようという事だったが、
なかなか来ないので暇つぶしに何か恐い話でも・・・という流れになった。
澤井(パチ美):談
「私、強くなるわ。
強くなって今度こそ愛する人を守るわ。
だから私のおぞましい過去を聞いてちょうだい・・・克つために」
あれは何年前の冬だったか・・・
漫画家なんて遠い夢だった私は一人暮らしをしていたわ・・・
漫画家なんてやくざな商売目指す奴はクズだって、
大学の友達は私を馬鹿にした・・・
でも今はその話じゃない。
ホワイトクリスマスイブ。
私は隙間風入る質素な六畳間で、窓の外から洩れる恋人や、
家族たちの歓声を聞きながら・・・
ハガキを書いていたの・・・
ちゃぶ台の上でくだらないギャグを・・・
ジャンプの巻末コーナーへの投稿はがき・・・
そして私は一言だけ、つぶやくの。
「 あー 彼女ほしー 」ってね・・・・
本宮「う・・・うぐおおおお!!(号泣)大丈夫だ、おまえはもう独りじゃねえ!!
俺らがいる!!今年は俺たちでケーキや七面鳥を食うぜ!!
家族7人の大所帯だ!!俺も頑張る、てめえも頑張れ!!」
澤井「ああ、パパン!!あたし嬉しい、マジでがんばるから!!ああああん」
真倉(テレパシー)≪彼女は諦めた方がいいけどな≫
岡野「ふ、最初から飛ばしてるな。では次は俺の体験談でも」
岡野(頭部人間):談
俺は生まれつき霊媒体質だった。
あまりに多くの霊とつきあってきたため恐いという感覚はない。
だがそんな俺でもヤバイと感じる悪霊には今でも出会う。
しかしそれ以上に恐いのは自然界が起こす生命の神秘だ・・・。
ある日仕事(※裏御伽連中は事務所を興してトラブル請負業をしている)で、
下町のボロアパートで起こるという怪奇事件の調査に向かった。
まだ真倉と合体していない時代で俺はひとりきりだった。
アパートでは目に染みるほどの異臭や異常な湿気、
たわむ1階天井と続き住人は困り果てていた。
・・・果たしてそこには≪開かずの押し入れ≫が存在した。
住人はとうに消え、しかし大家の老婆が大切に守り通してきた部屋だ。
俺は老婆を説得して押し入れの封印を解いた──
開けた瞬間弾け出て俺に襲いかぶさったのは、
数万枚はあろう使用済みの縦縞トランクスの海!!
そして俺は見てしまった!!縦縞を覆うように大量に生えた・・・
漫画界の伝説、パンツに生える幻のキノコ サ ル マ タ ケ の群生を・・・!!
一同「ぎゃああああああ!!」その後の顛末を語る岡野は澄んだ遠い目をしていた。
294 :
アサイラム:04/09/27 18:23:29 ID:qcsDfpov
>>290-291と同じ頃……
ゴッドハンド特殊実験体収容施設、
通称【アサイラム】――
殺風景な廊下を、10人を超える人影が歩いていた。
その先頭に立って歩いているのは、
ゴッドハンドの一人、高屋良樹である。
「あの男を出す…!?一体、何をお考えです、高屋様!!?」
顔を青ざめ、冷や汗をダラダラ流しているのは、この施設の所長だ。
「奴をここの金属製の隔離部屋に押し込めるのに、何人が犠牲になったと…、そんな奴をなぜ…!?」
高屋を思いとどまらせようと必死に説明する所長だが、高屋は一顧だにしない。
「今日、やっと始まった戦争のためだ」
そっけなく言うと、ある部屋の前で止まった。
ロケット砲でも傷ひとつつかなさそうな分厚い扉には、ごく小さな覗き窓がついており、そこから中の様子がうかがえる。
一条の光も差し込まない、荒廃した闇の中央で、奇怪なオブジェが置かれていた。
人間の身長ほどもあるそのオブジェの正体を見て、高屋が猫科の猛獣のような目を細める。
背の高い茶髪の男が、拘束衣を着せられた状態で、キャスターのようなものに縛りつけられている。
顔には革製のフェイスマスク。
名優アンソニー・ホプキンズ演じる、元精神科医の猟奇殺人犯を見ているようだ。
さらによく目をこらすと、その部屋の中もまた異様だった。
特殊な金属で作られたはずの部屋の、壁や床、天井などに、夥しい破壊の跡が見られる。
果たして、如何なる獣が暴れれば、こんなことが起こるのか?
「………素晴らしい………。これこそ私の欲しかった代物だよ」
高屋が冷たい顔をほころばせ、満足そうに笑む。
「待っていろ、第3艦隊……。私からのとびきりの花束の贈り物だ。」
295 :
アサイラム:04/09/27 18:25:09 ID:qcsDfpov
闇の中で二つの光点が唸るように底光りした。
来訪者の存在に気付き、囚人が目を開けたのだ。
金属の扉が、重々しい音をたてて開かれ、澱んだ闇の中に新鮮な光が入り込んだ。
サイボーグ兵士達が、一斉に銃口を突き付けながら、油断なく囚人を取り囲む。
「MEIMU、出ろ!所長の命令だ!」
兵士の一人が叫んだ。
しかし、MEIMU…と呼ばれた囚人は何の反応も示さない。
ただ、底光りする蛇のような両目に、あらゆる負の感情を爛々とたぎらせている。
そのとき、兵士達のうち、一人のかぶった鉄兜が、入りこんでくる明りを「鏡のように」反射した。
「おい、『映るもの』を奴に近付けるな!!」
ハッとして所長が叫んだ、刹那。
その鉄兜から巨大な影がわきだし、一瞬にして持ち主を含む兵士達のほとんどを胴体から削ぎ飛ばしてしまった。
饐えた臭いがこもる部屋に、新鮮な血臭が広がる。
影の正体は、毒々しい紫の体色が特徴の、
一抱えもありそうなほどの巨大な蛇だった。コブラに似ている。
あろうことか巨大な蛇は、拘束衣を噛み千切り、囚人を解き放つ。
「はぁん……」
MEIMUはしゅう、と蛇のような息を吐き、気だるげに首を巡らすと、
削いだような頬を凶悪な笑みに歪めた。
296 :
アサイラム:04/09/27 18:26:53 ID:qcsDfpov
「ひ…ひいっ!!よ…よるな!!よるな怪物!!」
部下を一瞬で皆殺しにされた所長が、恐怖に錯乱して拳銃を構える。
だが、MEIMUはそれが見えないように、凶暴な表情のまま所長に近づく――
と、そこへ高屋が悠然と割って入った。
瞬間、MEIMUの表情から笑みが消え、はじかれるように飛び退った。
「………」
MEIMUは、無言のまま警戒するように、高屋を睨んでいる。
巨大な蛇は、いつの間にかその姿を消していた。
男の反応に、高屋はさらに満足したように笑った。
「ふふふ…さすがだ。それ以上突っ込んだら、お前は死んでいたぞ。」
本能的に高屋の強さを察知したのか、MEIMUが凄みのある顔をさらに引き歪めた。
「お前……、何故オレを牢から出した……!?何が目的だ……」
MEIMUが、探るように、高屋の顔を睨めあげる。
「……なに……簡単なことだ。お前は私に従うだけでいい。そうすれば、お前のイラつきを消してやろう」
「フン…?」
「鹿児島沖に展開した、第3艦隊が、敵勢力の襲撃を受けている。
あいにく、私は抱えている仕事が山積していてな。
そこで、お前に『救援』に向かってもらおうと思ってな。
お前の『能力』ならば、ここからでも一瞬で到達できるはず。」
説明を終えると、高屋は手に持っていた『物』を、MEIMUに投げよこした。
それは紫色をした、手の平サイズのカードデッキだった。
表面に、先程の巨大な蛇を象った図案が刻まれている。
高屋が言う。
「戦え。」
MEIMUの唇が、たとえようもない歓喜に満ちた、凶悪な笑みに引きつれた。
297 :
アサイラム:04/09/27 18:28:31 ID:qcsDfpov
カードデッキを受け取ったMEIMUの前に、等身大の『鏡』が引き出された。
MEIMUは鏡に近づくと、左手に持つカードデッキをその鏡に向かってかざした。
すると、『鏡の中』から、ゴツイ金属の『ベルト』が現れ、MEIMUの腰に巻き付いた。
MEIMUはさらに鏡に向き合ったまま、右腕の肘を床と直角に曲げ、素早く前方に突き出してから、今度は腕が床と水平になるように曲げて胸元に引きつける。
そして、叫ぶ。
「 変 身 」
掛け声と共に、左手のカードデッキが、ベルトのバックルに装着される。
その瞬間、ベルトが光を放ち、MEIMUの全身を異形の鎧が覆った。
毒々しい紫色の表面で、金属の光沢が、蛇の舌のように滑り光っている。
顔部分を覆う仮面もまた、蛇を象った異形のデザインだった。
「…行け、MEIMU……いや―――」
「 仮 面 ラ イ ダ ー 王 蛇 よ 」
MEIMU――いや仮面ライダー王蛇は、返事がわりに緩慢な動作で首を回すと、
蛇が地を這うような軌跡を描きながら、大鏡の向こうへと消えていった。
地獄の鹿児島沖に、毒蛇の牙が迫る。
あ、浅倉さんモチーフのMEIMUだって!?
調べてみたら色々原作付きで書いてるんだね。
漫画喫茶で調べてみますよ
(
>>228 >>293)
蟲船レダルーバの外殻から、内側へひとり戻った川原。
2歩ほど進めたのち、通路の曲がり角に向かって声をかけた。
「というわけだ。悪いが岡村、しばらくおっさんの事は頼むぜ。
刺客の影を感じたらすぐに連絡をよこしな。わかったな」
「・・・随分勝手な物言いだな、川原ァ」
角から不機嫌そうな岡村が姿を現す。
やはり先程顔を出した時に感づかれていたか、と視線をあさってに投げている。
「島で≪約束≫しただろう、あんたが本宮さんを守れって。
バカ副将との約束とやらよりこっちが先約だ。
忘れてんじゃねえぞ、いくら俺が死ななかったからって反故にすんのかよ」
むすっとした顔で唇を突き立てる岡村。
昨日に対戦した際、岡村のいまわの際に彼らは誓い合ったのだ。
本宮ひろ志という漢を守り生きると。
「忘れちゃいねえ・・・さ。
ちょっとの間だけだ、おまえが油断しなければ大丈夫だ。
何かあってもすぐに駆けつける・・・とはいえ、あいつの≪太陽の紋章≫や、
時空移動とやらにも限界がある。今度こそ死ぬなよ、岡村」
「あいつ?紋章って何の話だ?」
岡村は頭をひねった。ピンと来ない単語の羅列は困る。
それに川原の言葉ひとつひとつが当然ながら、島の時とは印象が全然違う。
どれが男の本性なのだろうかと、先の疑問が頭をよぎった。
川原は表情を変えぬまま歩き出し、岡村の脇をすり抜けざまに。
「知りたかったら上にいる奴に聞いてみな。
・・・約束は、守るさ・・・」
振り返る岡村を一顧もせず、川原は通路の奥へと消えた。
「ちぇ。はぐらかされちまった。
上の奴か・・・あーうぜえ。俺は湿っぽいのが嫌いなんだよー」
王蛇かよ!!
…村枝ライダーとの邂逅に期待してもよかですか(;´Д`)ハァハァ
グチグチ文句をたれながら岡村はハッチを登り外部へ出る。
そこには例の長髪女が―――いなかった。
代わりに背格好の立派な茶髪の男が、先の人と同じ位置に背を向けて座っている。
「今度は誰だぁー!?」思わず男にガンつける岡村。
「うわぁ!びっくらこいたぁ!」もちろん上の奴こと副将にわのであった。
「なんとか元に戻れましたごめんなさい。
でもまた変身しちゃったらごめんなさい。
てゆーか生き恥晒してごめんなさいマジで」
深々とこうべを垂れ副将の態度で余計に苛々が増えるあぐら姿の岡村。
「ごめんで済んだら編集はいらねぇんだよォー!!
男に戻ったなら遠慮なくブチのめすぜ。最低2発だ!歯ァ食いしばれ!!」
言葉を受け、ぐっと目を閉じ顎に力を入れるにわの。
己の拳に息を吹きかける岡村だが、川原の言葉をふと思い出す。
「・・・ひとつ聞く。太陽の紋章ってなんだ?
時空移動ってワープとかか?あんたと関係あるのか。
とにかく知ってる事を話せ。俺は裏御伽に入って日が浅いんだぜ?」
「・・・話せば長くなりますが、どこまで言えばいいでしょか」
岡村は変態副将の素性と簡単な過去と身体スペックと特殊スキルと、
川原に殺された自分がこの男の手によって蘇生したことを知る。
「それじゃ俺が島で見た、無理やり起こされる夢はあんたの術だったってか」
「乙君は・・・助けられなかったけどね。彼の魂が見つからなかった。
たぶん“メッセージ”を遺すために全ての力を注いでしまったんだ。
紋章の光の奇跡でも、乙君は・・・」
「・・・奇跡なんてのは何度も起きねえから奇跡ってんだ。
そう簡単にゴロゴロ人間が生き返ってたまるかよ」
この世界の一部分を否定する岡村の言に苦笑するにわの。
「だよねぇ。それでもボクは・・・」
消え入るような声でぽつりと。
「・・・みんなに生きててほしかった・・・」
突如立ち上がり、にわののこめかみを思いきり殴りつける岡村。
「〜〜〜っ!」
殴られた男の側面に一筋の血が流れる。岡村は怒りの形相で。
「なら巻来や俺は死んでもいいってのかよ!!
半殺しまでならとか甘い考えで俺らのパワーふんだくんなよ!
ようするにあんたは中途半端で自分勝手なんだよ、他の部分でもなんでもな!
だから川原がてめーなんかのお守りで本宮さん放っとく羽目になんだよ。
・・・疫病神云々以前の問題だ、本気で周りに迷惑かけたくねえんだったら、
もっと自分の信念に自信持てよ!そんで自分と周りを信じろ。
“よそもの”だからダメとかわからんとか抜かしたらぶっ殺す。
俺は川原みたいに甘くもお人よしでもねえぞ!!」
一気にまくしたてる岡村に、にわのは肩を竦めて縮こまるばかり。
「・・・役立たずとか足手まといとか自分で言ってどうする。
判断するのは周りの連中だ。副官が今更抜かすなよな。
シケたツラしてっと本当に不運呼び寄せるぜ、馬鹿」
ケッ、と吐き捨てると岡村は呆然とする副将に玉吉からの品を投げ渡す。
にわのは慌ててお手玉のように受け取る。
「こいつはあんたが俺らを預けたヒゲ隊長の発明品だ。
取説によるとスイッチを押せば、拾ったあんたのトンファーと特殊スーツが、
召喚され装備できるとか。また運悪く女になったらこれ使えって事だな。
・・・ったく、ヒトに心配かけさせるのだきゃあ一人前なんだからよ」
「ご、ごめん・・・」
「ケッ」
岡村はもう一発にわのの頭に拳をガツンと当てる。今度はやや軽めだ。
「島で世話になった分は減らしといてやる。おら行くぜ、会議だ会議!」
「あたた・・・うん、ありがとう・・・岡村クン。
ちょっとだけ川原先生借りてく・・・旅に出られたら、だけど。
捜し物、早く見つけて帰るから・・・みんなで待ってて・・・」
「俺は気が短いんだよ。
帰ってくる頃には副将のイスはなくなってると思え。
つうかあんたのセリフだけ昔の少女漫画みてーでムズムズしてくるっつうの。
うじうじすんな!背筋伸ばせ!悩んだってハゲるだけだ!!」
気が短いついでに副将の丸い背中をゲシゲシと蹴りまくる岡村。
「痛ぅっ!なっ何すんだよー岡村くぅーん!あうちぃ」
「やかましい!てめえはおとなしくギャグ担当やってろ!」
「そ、そんなこと言われてもぉ〜〜」
「甘えるなー!おしることマロングラッセ同時に食わせっぞー!」
「そりゃ何のネタだモーン!?いや甘いものは特に和菓子が好きなのですがっ」
「てめえの趣味は聞いてねえーーーー!!」
つまるところ、裏御伽格闘家トリオは三者三様ながらも奇妙に仲がいい。
そんな話であった。たぶん。
多少元気になった、素顔の副将を引っ張って岡村は会議室にやって来た。
遅刻で気まずいのでドアの隙間から中を覗いてみたら川原だけいなかった。
じゃあいいかと2人は頷き、にわのは豪快にドアを開け―――
真倉「・・・扉が突然開き、中から血まみれの男がドバァーーーー〜〜って出たぁぁぁぁぁ!!!」
岡野「妖怪かーー!!」本宮「本当に出やがったーー!!」澤井「あ、悪霊退散よぉぉーーー!!!」
さっき岡村にボコられた男は憐れ、恐慌を来たした怪談組にとどめをさされたとさ。
10年以上つきあった仲間に素顔のひとつも晒してない男も悪いのだけれど。
その頃、川原は別の部屋にいた。
「悪いな、狭い部屋に押し込んじまって。あんたの荷は調べさせてもらったよ。
・・・施錠は関係なさそうだが、逃げないんだな」
「海の上じゃ逃げても無駄ですし・・・身一つで逃げる理由も必要もないです」
「まあ、ただの案内役じゃ・・・な。いいさ、俺も世間話をしに来ただけだしな」
古いソファに座るのは平野の部下として軟禁されている山田。
彼女の鞄を膝に乗せ、川原は山田と向き合う席に腰をおろす。不思議な空気が部屋に流れた。
割り込みすんませんでしたTT
せっかくだから、まこりんにもはぁはぁしておこう…(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ
なぜだ(ノ∀`)
王蛇キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
ってか龍騎って漫画あったのか・・・探してみよう
MEIMUが漫画家の名だったのか!
浅倉って漫画家がライダー描いてるのかと思ってた(苦笑)
悪い、話が見えん。
MEIMU=漫画家
描いてる漫画=仮面ライダー王蛇
王蛇の正体=浅倉?
って、認識なんだがあってるのか?
MEIMU=漫画家
描いてる漫画=仮面ライダー龍騎(13RIDERS)
王蛇の正体=MEIMU
かと、思います。
浅倉は仮面ライダー龍騎に出てくるライダーの一人で、徹底的な悪のライダーです。
そういえば、この人キカイダー書いてましたよね。
正体表したら赤と青のって一瞬妄想してしまいました。
おおよそ合ってる。漫画自体が実写の仮面ライダー龍騎のコミカライズで、
物語上でMEIMUが変身してる仮面ライダー王蛇が、
元ネタでは浅倉威という男が変身してるからそう呼んでるんだろう。
や…山賢の不自然なまでの強さの秘密はこれにあったのか!(後付け)
うわぁ(笑)
そういや今山賢ってなにやってんだっけ?
>>309 モデルが浅倉だと、ハカイダーの方が合ってる気がするな
>>316 皆川の記憶を操作して、見返りに聖石を手に入れたのが最後の出番だから、今は特に何もしてないはず
しかし、山賢は確たる主義主張もなく、ただ欲望に忠実というキャラだから、
どの陣営とでも手を組めるし、好きなときに裏切らせることもできるしで、実に動かしやすい奴だ
(
>>164)
やわらかに北九州の海を照らす午前の太陽の下。
あらゆる形状の枝葉が天に向かって救いを求める手を伸ばす──
遠目で見るとそのような錯覚に襲われそうな、
深緑の森に覆われた奇妙な山の塔の天頂。
ひとりの男が一頭の鉄馬の隣で、
途方に暮れて木の幹に座っていた。
「荒木・・・。
どれだけ捜しても見つかんねえ。
ぜってえこの山のどこかに埋もれてるはずなんだ。
オラだけじゃ捜しきれねえ、だが山を壊してでも捜すのは──」
『よしたほうがいいな鳥山。
これは王蟲の意志で造られた森の塔。
破壊すれば再び仲間が現れないとも限らない。しかし──』
「そろそろ矢吹艦に戻らなきゃなんねえ。
大会が始まれば大友も簡単には動けねえだろう。
他の仲間たちとも合流しなきゃなんねえ。
わかってる、頭じゃわかってんだ、でもよぉ・・・エックス・・・」
『人間がそのような“割り切れぬ不合理な存在”である事を、
私は知っている。藤崎も己の気持ちにに逆らえず敵の空間へ自ら飛び込んだ。
矢吹艦はすぐそこにあるのだ、気の済むまで捜索を続けるといい』
「・・・ああ、もうちょっとだけ続けてみる」
冨樫との、全てを賭けたジャンケン対決に負け、
【自決】同然に王蟲の滝壷へと飛び込んだ荒木を、
髪の毛ひとつの距離で救えなかった後悔の念にかられつつ、
新しく生まれた大地にもっさりと充満する、
コケシダ類を引き剥がしながら半日ほども捜し続けていた鳥山は、
重い腰を上げて再び、大気がほのかに白い湿地の中へ消えた。
それを感情の出ようがないメタリックな馬面を持つ、
車田の愛馬エックスは無言で見送り、やがて静かに森の声を聴く。
彼が瓦礫の下で不本意な眠りに就いた、
10年前の1日の、記憶の霧をさまよいながら。
──霧の向こうで、顔と名を失った男が、見えぬ空の遠い星を捜している。
──男の視線の先には背の高いビル、霧は気づくと赤い劫火の舌と化した。
──男はビルの天井に立つ少年を見ている。少年は泣き笑いしているのか。
──少年の背後に影・・・混濁する意識・・・顔のない男の声が遠くに聞こえる。
──全てを奪う光の中に、彼が最期に捜す星は見つかっただろうか?
『・・・スピカ・・・?』
記憶回路の限界を悟ったエックスが意識を現代に戻した時。
もう何度目かもわからない、鳥山の荒木を呼ぶ声が山中に響き渡った。
参考レス入れ損ねました
15部279です
―――森田先生!あなたは何と会話をしている?それは宙に浮かぶ≪酒とっくり≫です!
あなたの眼にどう映っているかはわかりませんが、危険です!心を奪われてはいけません!
―――森田先生ぇぇ――――!! ・・・
松江名俊の意識は、そこで覚醒した。
身体を起こし、激痛が苛むのを堪えて周囲を見回す。
自分の隣には、眠ったままの高橋陽一と許斐剛の二人もいる。
三人とも、真新しい包帯に覆われ、丁寧な手当てがなされていた。
そこは、自分達がさっきまでいた嵐と炎の地獄――別府ではなかった。
「ここは――…」
「あ、気が付いた。ここは“矢吹艦”ですよ、松江名さん」
「君は――…」
意識をはっきりさせるべく頭を振り、傍らにいた少女に目をやる。
知っている顔である。
「そうか、君が私達を助けてくれたのか……礼を言うよ、ありがとう」
松江名がそう言うと、少女は、謙遜するように微笑んだ。
こうして見ると、なかなかの美少女である。
「どうも気を失う前後の記憶がなくてね……よかったら教えてくれないかね、そのときの状況を」
すると、少女はゆっくりと事の経緯を語り始めた。
(“19部635-636”から“20部102-103”の間あたり)
時は遡り、まだ嵐に包まれていた頃の別府。
松椿――
真島ヒロに、半死半生にされた森田まさのりは、“鬼酒”にとり憑かれた。
そして、彼は、同じく重傷を負った松江名だけでなく、治療中のチームメイト許斐剛と高橋陽一までも捕まえ、“鬼酒”のエキスにしようとしていた。
そのときである。
「待ちなさい!!」
よく通る高い声が響いた。
森田が胡乱げに振り向くと、そこに見たことのない人影が立っている。
修験者の服装に似た、白い和装の少女であった。
高い位置で髪を結った、独特のポニーテールが特徴的な美少女である。
しかし、可憐な顔だちとは裏腹に、森田に向けられる表情は冷え冷えとした敵意を伴った硬いものだ。
少女は、円と十字を組み合わせたような奇妙な先端の杖を、森田に突きつけながら言う。
「あんた、タチの悪い鬼に憑かれてるわね……その人たちを養分にするつもり?」
「あ? だったらどうだってんだ、小娘?」
唐突に現れた邪魔者に、苛立ったように森田の眉間に険が刻まれる。
「あんたに憑いた鬼を滅するわ。その人たちにも手は出させない」
「やってみろ、クソが!!」
怒号を放ちながら地を蹴り、森田が一気に加速して、少女との間合いを踏破する。
岩をも砕きそうな拳が、横殴りに振られ、無防備に立つ少女の顔面に迫る。
今しも、少女の整った顔が、トマトのように潰されるかに見えたが――
「なッ!?」
森田の剛拳は、少女に到達する寸前、不可視の障壁によって喰い止められていた。
「なんだこりゃ……壁!?」
森田のパンチを受け止めたもの――
よく見ると、それは薄く光を放つ立方体の壁であり、少女の周囲を覆っていた。
一瞬、虚をつかれた森田の隙に乗じ、すでに少女は次の行動に移っている。
「 包 囲 !」
ヴゥン!
目の前にかざした2本の指先を囲むように、光の輪が生じ、
「 定 礎 !」
ジジジジジジ
真直ぐに突き出された指の先――森田の周辺を囲むように正方形の線が走り、
「 結 ! ! 」
ビ シ ッ !!
突き出した指を真上に振り上げると、森田を立方体の膜が囲い込み、封鎖した。
「な――!?」
森田が驚きに目を見張った。
いくら相手の能力を知らなかったとはいえ、目の前の少女はいとも簡単に自分を出し抜いたのである。
その手際に、少女が外見からは及びもつかない曲者であると認識する。
「お前……誰だ?」
森田の誰何に、少女は答えた。
「サンデーの“結界師”―― 【 田 辺 イ エ ロ ウ 】 」
「結界師……聞いたことがあるな。サンデーに有望な新人がいるって…」
少女――イエロウを鋭く睨みながら、森田が言う。
「面白いな、小娘……だが!」
いきなり、森田が自分を封絶する結界に、拳を叩きつける。
「この程度の結界、破れねーとでも思ったか!!」
削岩機さながらの凄まじいラッシュを結界に叩き込み続ける森田。
その衝撃に、イエロウの張った結界は激しく震え、軋む。
恐るべきは、“鬼酒”の効能か。
あまりにも強大な暴力を前に、結界を維持し続けるイエロウの顔が歪む。
「ぐっ!! なんて力……この上、まだ強くなるというの!?」
イエロウは瞬時に判断する。
自分ひとりの手に負える相手ではない――――
ならば――
「 結!!」
新たに発生させた結界の出現地点は、倒れている松江名・許斐・陽一の真下の地面だった。
成形された結界は、トランポリンのような弾力を発揮し、三人を天空遥か高くに跳ね上げた!
「――なッ!?」
意表をつく一手に、森田が戸惑いを見せた。
その瞬間、イエロウは自分の足元にも同様の結界を成形し、夜空に向かって高々と跳躍する。
さらに数個の結界を作り出すと、それらの上を飛び石のように跳ね伝い、空中に放りあげられた三人に素早く接近。
三人を新たな結界で囲い込んだ。
「あたしはあたしに出来ることをする!!」
結界で囲んだ三人を抱きかかえたまま、次々と結界の足場を飛び跳ね、イエロウは遥か夜空の彼方へと消えていった。
――してやられた。
取り残された森田は、最後まで出し抜かれたことに、憤りを隠せなかった。
“結界”という既成概念からは想像すらつかない、多種多様かつ独創的な使用方法――
単純な能力と思っていたが、その実、かなり応用範囲の広い能力である。
そして、被我戦力差や状況を即座に見極め、最善の行動をとる冷静かつ優れた決断力。
「サンデーにも、まだあれほどの使い手がいやがったか……」
ギリギリと拳を握りしめると、森田は気持ちを切り替える。
「とりあえず、他の獲物を探すしかねえな……」
呟いて、“鬼酒”を呷ると、次の獲物を求めて移動を始めた。
そして、その後。
森田は、宮下あきらに敗れ去り、さらなる鬼神の誕生に一役買う結果になってしまうのだった―――
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「……そうか、そういう事だったのか」
ここに至るまでのあらましを聞かされ、松江名が溜息をついた。
「松江名先生は、気絶する前のこと、何か覚えてないんですか?」
「それが、やられた際のショックのせいか、気絶する前後の記憶がほとんどないんだ……いや、面目ない」
「……いえ、あたしもあの人にとり憑いた鬼を、滅することができませんでしたし…」
「いや、君はよくやってくれた。君は、私達の命の恩人だからね。
――しかし、別府の騒動は収束したようだが、鬼になった森田先生の所在は依然、不明か……」
松江名が、またひとつ溜息をついた、そのとき。
「――!?」
イエロウが、ある気配を感じとったのである。
326 :
翼音、再び:04/09/29 21:16:29 ID:jittamjO
「……松江名先生、“鬼の気配”がします。この矢吹艦の内部に――」
「なに!? それは確かかね?」
二人の顔に、緊張が浮かぶ。
「はい、でもこれは――」
言いかけて、イエロウは違和感を感じていた。
(これは……妖気が以前よりも遥かに強い…?)
獲物を取り込んで、さらに強くなったのか、それとも――
「――気配を感じるというのは、本当か? そこに森田がいると?」
ふいに第三者の声が、二人の耳朶を打った。
二人が振り返ると、そこに立っていたのは――
「やれやれ…こんな怪我で寝込んじゃうなんて……まだまだだね」
自嘲するように呟いたのは、帽子をかぶったテニスウェアの男。
「許斐先生? いや――」
さらに、許斐の横に、もうひとつ背が高い影が並ぶ。
その姿を見て、松江名は驚愕した。
「陽一先生!? 意識が戻ったのか!!」
それは、Cブロック決勝最終戦――猿渡との死闘にて奥義“呪怨”を喰らい、植物状態となっていた高橋陽一、その人だった。
「猿渡が……試合の後でこっそりと“鍼”を打っていてくれた……だから助かった」
陽一は松江名の方を見やると、にこりと笑ってみせる。そこに、重傷者の色はない。
「どうやら、俺はまだ、死ぬわけにはいかないらしい」
ある決意を抱き、陽一はイエロウを見る。陽一が発する、ある種の威圧感に、イエロウは思わずかしこまる。
「俺を、“鬼酒”のもとまで案内してくれないか。森田君は、チームメイトだ。それを助けるのは、リーダーの俺の役目だからね」
完全復活を果たした、“バーニングハート”――高橋陽一。
彼は今、“黄金の聖闘士”と“天下無双”の対峙する、千日戦争の場へと向かう。 ←TO BE CONTINUED
327 :
訂正:04/09/29 21:19:00 ID:jittamjO
323スレ目
×「包囲」
○「方囲」
やだ猿渡さんったらいい人(ツッコミそこかい)
とうとうイエロウタソキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
ウホッ…いいイエロウタン
早くガンガンや裏御伽あたりとの絡みが見たいね
そして久々のYOO1復活でどうなる?
_ ∩
( ゚∀゚)彡 tokine!tokine!
⊂彡
(´-`).。oO(・・・なんか学園編でも同じこと言った覚えが・・・)
Σ(゚◆゚)がっ学園へn(吐血
漫喫で結界師読んでみたけど、かなり使い勝手いいなこの能力
これからの活躍に期待できそう
333 :
天空の塔:04/09/30 15:55:07 ID:QhM91YCc
(
>>278)
「あ、いたいた。
村枝さーん!こんなトコにいたんスかぁ。カムイさん心配してますよ。
そうだ、安西出没したッスよ。いっちょ驚かせてやりませんか?」
カビ類の侵食で一部変な色合いになっている、
無礼ド天頂部テラスで空を眺める村枝に椎名が気さくに声をかける。
・・・かつて矢吹の内通者としてサンデー陣営を苦しめていた、
パクリ四天王とまで呼ばれていた安西という男を、
光の道へと最初に導いたのがこの村枝であった。
奇縁あって彼らは再び同じ地に立つ事ができた。
だが安西はそれを知らない。
安西を導いた者のひとりである椎名が、
拾った亀の子タワシ数個で器用にお手玉をしている。
「村枝さん、さっきから何を見てるんスか?」
のんきな声に微笑みながら頷く村枝。
「いやあ、いい天気だなあって、な。
昨日の事が半分夢か何かのように思えてくるよ。
だが・・・あの山が否応なく現実を俺たちに伝えている・・・」
海上に浮かぶ戦艦無礼ド。
その舳先に見えるは透き通る陽光に包まれた美しい巨大な森の塔。
周囲には鳥のような、羽虫のような群れが、
何組も塔を黒く取り巻いている。
「あれは墓標・・・さまざまな思いが積み上げられた海の塔婆。
犠牲になった人たちは豪雨で流され、赤い水となって海へ注がれた。
彼らはあの森へと還ったろう、そして天空を見つめ続けるのだろう・・・」
透明感のある憂いを帯びた、村枝の瞳に映るは空の向こうの───
「安西ねえ。どうやら元気らしいが、さて、どうしようか・・・?」
結界師の作者って女だったんだ……知らなんだ
ところで過去ログによると椎名は村枝に対してはタメ口みたいだけど……
335 :
333:04/09/30 23:51:37 ID:leYKVSjx
あれ〜椎名どっか出てたっけ・・・
よかったらレス番ぷりーず
サンデー系のキャラはしょっちゅう口調間違える('A`)
追記
イメージ的にこの辺りの力関係が
藤田=村枝≧皆川≧スプリガン正隊員>スプリガン準隊員
なもんでつい・・・ソーリー
とりあえず今までのをまとめてみると……
安西:藤田・留美子・老師以外には誰に対してもタメ口
老師とは直接会話したシーンがないが会話中で「藤原のじーさん」と呼んでた
雷句:基本的に誰に対してもファーストネームで呼ぶ。目上の相手には「殿」を付ける
留美子:年下に対して男なら「君」、女なら「さん」
藤原:サンデー関係者ほぼ全員に「老師」と呼ばれている。タメ口なのは、七月くらい
村枝:大抵の相手にはタメ口だが、なぜか藤田には「さん」付け
椎名:留美子以外に敬語を使ってるシーンはなし。なお、藤田と椎名は同期で仲が良い為普通にタメ口
安西との会話中、村枝のことは呼び捨てにしていた(確か、修業してた辺りかな)
せんくす!助かりまさ
椎名と安西は特に気をつけないとなあ
>>278 またもや、さらに数分後―――
カムイ「大丈夫か、亜美…。一応、また止血はしておいたぞ」
亜美「すまぬカムイ…」
カムイに手首の傷を手当てされながら、亜美が謝罪する。
亜美「初対面の男の人に突然、悪口言われちゃって
亜美 ブルーはいっちゃったよ」
カムイ「うん、そーだナ。俺も少しブルーはいってるから も う 切 る な !」
半分自暴自棄ぎみのカムイだったが、気を取り直して、
パプワワールドにいた安西や亜美に、別府での顛末を話してやる。
それを聞いた安西は、改めて事態の深刻さを痛感し、亜美も意外と真面目に話を聞いていた。
亜美「ふうん、僕が眠ってる間に、そんナ事になっているとはね……」
カムイ「そうだ…最後の大隊・KIYU・ゴッドハンド、そして妖魔王……敵はどれも強大だ。
そして奴らが本格的に動き出すのも時間の問題だろう……
ましてや、今の俺達は敵を抱えすぎている……オマエの力が絶対必要だ!」
安西「(コイツの力…?)」
カムイの真摯な言葉に、亜美は不敵な笑みを浮かべて応じる。
亜美「承知したよ、カムイ……」
安西「おい、カムイ…」
カムイ「……なんだ?」
それまで黙っていた安西が、こっそりと亜美を指差しながら尋ねる。
安西「…で、アイツはそんな強えのか?」
カムイ「……オマエがそう思うのも仕方ないか」
クマのできた目をこすりながら、カムイが一つ息をつく。
カムイ「だが、アイツは確かに強い。正面きって戦えば、俺でも勝てるかどうか分からん。……が、アイツの『真価』は、それとは別のところにある」
安西「……それって、『アレ』のことか?」
指差した方をカムイが見やると―――
亜美「どっから来たの…ふーん…そお…」
カムイ「亜美…知らない人としゃべるな。俺には見えねーぞ」
誰もいない壁に向かって、亜美が『何か』としゃべっていた。
安西「……やっぱ激しく不安だぜ」
カムイ「……ま、まあそのうちイヤでも分かる……期待しないで待っておけ」
正反対の二人には珍しく、同調(ユニゾン)したようなタイミングで溜息をつくのだった。
そして、疲れている面々には、亜美の『会話』の内容までは聴こえていなかった。
亜美「あわてるな……冥府(よみのふ)の者ども……」
これまでとは別人のように、妖艶で神秘的な微笑を浮かべながら、美女は睦言のように囁く。
それは別府に無念にも散った亡霊たちへの鎮魂か、それとも―――
亜美「 僕 が お ま え ら を 括 っ て や る 」
(
>>96、21部508・89,20部456、15部142他)
「もうちょっとゆっくり走るっス!!」
「うるせー、こちとら急いでるんだ。」
「ガフガフ」
矢吹艦某所・・・激走する巨大爬虫類の上の二人。
牧野と岩村は別府での出来事の後。裏御伽チームに別れを言わずに去って行ったのだった
「本当にこれでいいっス?!できれば川原さんと一緒にチームを・・・」
「何言ってんだ!あの人たちの重大な問題に俺ら見たいな奴がでしゃばる必要はねぇ。」
やまとでのPSYCLOPSとの遭遇のさい、牧野は彼らに心から恐れ、同時に自分が非力で腰抜けである事を自覚したのだ。
「俺みたいな町の魚屋がでしゃばる問題じゃ・・・・・・」
牧野は誰にも聞こえぬようこっそりと言った。
「ところでうち等はどこへ向かってるっス?」
「えっ!?ああ、是から魚市場へ行くんだ。
おっと!!もうすぐ着くぞ。」
矢吹艦のある空港近くにある魚市場。
普段ならば魚特有の臭いと共に威勢の声が聞こえるものだが今日は違った。
先日の派出所爆発事件の傷跡がまだ残っており。
そして先ほど起こった別府の騒動は漁に多大な影響をあたえていた。
「・・・何だか思ったより静かっス。」
そう魚市場には人の気配がまったく 零 であった。
「ん〜誰もいねーな、どうしたことか・・・」
牧野がグチグチ言ってる時に奥の方でナニやら徐々にざわめき声が聞こえる。
「おっ、あっちに何人かいるっス。」
「行って見るか。」
「ガフガフ」
テスタロッサでそっちへ向かう途中から話し声が詳しくはっきりと聞こえてきた。
古谷「あ〜何とか助かったな。」
木多「まったく、留美子さんに海に落とされた時にはどうなるかと」
徳弘「で、是からどうするのだ?」
うすた「ま〜とりあえずあんどさん捜すとするか?どこいったんだろ」
三上「ところで野中が又壊れたのだが、これこそ如何する」
うすた「衛藤は無礼ドに戻ったし、そこの透明な人は?」
キバヤシ「いや、私は機械系は・・・(しかしなんでこの人私が見えるの?)」
新沢「それじゃあ私が前に言った、腕のいい人のいる電気店に行ってみるのだ!!」
うすた「おし、じゃあやまもとだっけ?お前が払ってくれ。後で(多分)返すからさ。」
やまもと「え、なしておらが払わな・・・・・・」
木多「おっと、そこのお二人出口はどこですか?」
と、そこへ来た牧野・岩村の二人に尋ねてた。
牧野「えっ、あっちですけど。」
古谷「そうか、そんじゃさぁ。あんどさんを捜すチームと
野中を直しに行くチームに分けようぜ。」
一同『おーけー!!』
変態たちはそんなこと言いながら牧野・岩村の横を通り過ぎていく・・・
「いったい今のはなんなんっス?」
「あいつらが言ってた腕のいい電気店て、もしや商店街のピース電・・・・・・」
まあそんな事はともかく、二人と一匹は市場全体を歩き回っていた。
「あっ大変っス。人が溺れてるっス。」
見るとそこには一人の男が青白い顔で港の先端にしがみついていた。裸で、
「(ウホッ、いい男!!)よし、ココは俺が見るっス、フフフ・・・・・・」
そして岩村は男の下半身に手をかけようと・・・
「まて、そこのホモドクター!変なコトしねぇでちゃんとやれや!!」
薔薇族みたいな展開になりそうだったのを牧野が一喝して注意してやった。
「ちぃ・・・わかったっス。ええっと、あったっス!!
この飲んだらどんな怪我や病気も一発で治るっス。
けど2、3日後に『あの時死んどけばよかった』級の痛みがくるこの薬。
さ、これを飲むっス。そして俺に感謝して、ククク・・・」
変な笑みを浮かべながら岩村は男の口にいきよいよく飲ませた。
「お・・・おいノド詰まらすんじゃないか?」
「・・・・・・ぐへっ!!ぐぉふぉ!!ゴフォ!!」
男は苦しそうにノドを押さえて、上体をあげた。
(やっぱり詰まったのか・・・)
「治ったっス!!これで感謝するっス。そして惚れるっス!!!」
しかし男は不思議そうな顔で周りを見ていた
「・・・・・・ここはどこだ!?お前らは誰だッ!?
・・・・・・そして私 は 誰 だ ーーーーーー! ? 」
男の突然の叫びが二人の耳の中に響き渡る。
「こいつ・・・記憶喪失なのか・・・」
いきなり叫びだした謎の記憶喪失裸男。
ただ、彼の頭に野球帽、手には釘バットが有った・・・・・・
記憶ない人わかりやすっ(笑)
亜美のシリアスモードはゾクゾクするなー
台詞からして、やっぱガンガンの当面の敵は妖魔王勢がメインなのか
そして釘バット久々(w
釘バットが誰だか全然わからねぇ漢がここにいる
>347
マジレスすると大和田秀樹
そもそも登場キャラ数200人を超えるこのスレで、釘バットを武器にしてるのは奴だけだしな
350 :
再会:04/10/03 01:28:41 ID:t6w7XS+6
>221 >333 >341
「まあ、ともかくだ」
ようやく話が一段落し、カムイが場を締めるように言う。
「問題は山積みだが、俺たちの当面の目的は、あくまでトーナメントだ。
まずは、これで生き残れなければ、俺たちに未来はない。
安西、お前も参加するなら、せいぜい英気を養っておけ。戦いは、間もなく始まる」
ぎゅっ、と顔を引き締める安西。
そして、強い決意を秘めた眼差しのまま、部屋を出ようとする。
その背に、カムイが追伸するように言った。
「そうだ、安西。他の連中をそろそろ呼んで来てくれないか?
椎名、留美子先生、それに村枝………」
カムイは、最後まで言うことができなかった。
その襟首を、安西の手が目にも止まらぬ速度でつかみ取っていたからである。
カムイが思わず虚をつかれる程に、安西の反応は激烈なものだった。
「 『 村 枝 』 だ と ? 」
愕然としたまま、石化した安西の表情。
弛緩ムードだった室内が、一転、緊張に包まれる。
「ああ、生きていたんだよ、あの男は。そして、奴がいなければ、俺たちは――」
言いかけたカムイだが、それはまたしても中断を余儀なくされた。
安西が、いきなり床にうずくまったまま、動かなくなってしまったからだ。
「……………」
室内の視線が、安西に注がれる。
すると、その足元を、熱い滴がしたたり落ち、濡らしていく。
カムイ達は思わず、目をしばたいていた。
「安西………おまえ………泣いてる……のか?」
351 :
再会:04/10/03 01:29:36 ID:t6w7XS+6
安西は泣いていた。
肩を震わせ、声を押し殺し、
熱い液体は、後から後から滂沱となってこぼれ落ち、
安西の顔をグシャグシャにしていく。
その、あまりにも意外なものを見てしまったカムイ達は、しばし対処に困った。
が、やがて、そこにフッ…と温かいものが混じる。
と――。
部屋の扉が開いた。
入ってきたのは、椎名だ。
「よお、半日ぶりくらいだな安西……」
「椎名」
慌てて目元をゴシゴシとこすると、安西がやおら立ち上がる。
それを見た椎名は、一瞬カムイと目を合わせ、そして理解する。
「とりあえず、来いよ」
踵を返して安西に背を向け、同行をうながす。
「おい……村枝は……いるのか……生きて……」
不安げに椎名の背に問いかける安西だが、椎名は小さく一瞥をくれただけで、
「だまってついてきな」
と、足早に歩き出した。
部屋を出た安西と椎名は、そのままテラスへの通路を歩いていく。
その途中で、巫女服の女性とすれ違った。
留美子だ。目が合うと、一瞬二人は固まる。咄嗟に、昨夜の『アレ』を思いだしてしまった。
「……おはよう」
「…………………ああ」
思わず、目を泳がせてしまう安西。
それを見た留美子が、いつもよりも優しげに微笑む。
なんとなく空気に甘いものが混じり始めたところへ、
「オラ、こっちだ」
気のせいか、苛立ったように椎名が急かす。
「会うんだろ、村枝に」
安西の顔が、再び緊張に強張った。
352 :
再会:04/10/03 01:30:51 ID:t6w7XS+6
二人が、階段を上がっていく。
再開が、一歩ごと近づくにつれ、思いだされる過去の数々――。
――― 魂――村枝賢一 ―――
――― お前もはじめは"そう"だったはずだ…作品に魂を込める。 ―――
――― ただそれだけの事を――何故、おまえは忘れてしまったのだ? ―――
――― 安西……命にゃあ賭け時ってやつがある……藤田さんもそうだったんだ…… ―――
――― 大丈夫さ。……お前はもう大丈夫だ。そうですよね、藤田さん ―――
――― 後は任せたぜ。……安西 ―――
「おい…………ちょっと待て」
遂にテラスの直前まで来た。
「本当に……村枝は生きているんだろうな」
安西が、また不安にかられたように尋ねる。
椎名は無言のまま、テラスへの扉を蹴り開けた。
そこには――――。
353 :
再会:04/10/03 01:31:52 ID:t6w7XS+6
時が、止まった。
声を出すことすら忘れていた。
驚愕に見開かれる安西の両眼に映るのは、在りし日の頼もしき背中―――。
「安西…………か?」
かしげられた首の向こうから、背中越しに声がした。
その姿が、幻ではないと告げるように。
安西は、あらゆる感情が混ざりあった……そして結局、無表情にも見える貌で呟く。
「生きてた……かよ、村枝」
それは意外なほど、静かな再開だった。
「うむ……また生き延びてしもうた……」
村枝が、ボリボリと頭をかきながら言う。
「そっに……まだ一時は死ぬるワケにはいかん」
村枝もまた、無表情だった。
二人とも、どんな顔をすればいいのか、戸惑っているようにも見えた。
「こっちに来んか安西。ぬしに色々と話したかことある」
言われるまま、無言でテラスへと足を踏み入れる安西。
朝の太陽が、眩しかった。
無言のまま、二人は並ぶ。
しばらく、二人はただ黙って、朝日を眺めていた。
そして、しばしの時がたち。
先に、声を発したのは、村枝だった。
「いい顔になった」
驚いたように、安西が村枝を見る。
村枝もまた、安西を見ていた。
「己の醜さも哀しさも優しさも含んだ、漢の顔だ」
安西を見る顔が、初めて笑顔になった。
つられて、安西もようやく笑みを見せる。
幾多の試練と戦いの果てに。
ついに再会を果たした二人。
天頂を目指して昇り続ける日が、その刹那、輝きを増したように見えた。
←TO BE CONTINUED
アンカー>221は間違いだった……
なんか長崎弁入ってる?村枝さん
再会乙(´-`)q
安西はホントいいキャラになったよなあ。
事前にボロ泣きしといて結局無表情で再会ってのがなんかいいね。いかにもありそうだ。
あと藤田もそうだけど村枝かっこよすぎ。
こいつら出る度に頬が震えるよ。
っていうか、これって「RED」15巻のレッドとイエローの再会シーンが元ネタだよね
村枝が長崎弁なのもそのせいかと
元ネタを丸々転記しちゃうのはこのスレの悪癖だよな
わからん人間からすればいきなりなんで方言でしゃべりだしてんの?って感じだろうし
まあ次でフォローヨロってこった
>>358 でも、わかる人間からしたら嬉しいもんだと思うけど
一長一短だよね
わかる人間は喋りがえなり仕様でもじゅうぶん嬉しいと思うがどうか
(
>>303)
真倉 「タイミング悪く血まみれで飛び出すてめえが悪い。謝らねえぜ。
しかしそういえば素顔なんてものがあったんだっけ、忘れてた」
にわの「まるで妖怪変化のよーな扱いだスな・・・。
まあいいや、今から通常営業スマイルまこリンでーす♪
10年分泣いてきました。落ち込む事だらけですが私は元気です」
岡村 「営業かよ!!ギャグなのかマジなのかわかんねー」
にわの「つーわけでちゃっかり怪談参加するのココロ」
本宮 「中身は割と普通なんだな。で、おまえ本当に大丈夫だろうな。“会議”だぜ?」
にわの「だーいじょーぶですよ〜?
・・・意味わかってますから。ボク強くなりますから」
にわの(現在素顔・♂):談
「謎の続編漫画家と裏で評され、
都市伝説とゆーか生霊同然のワタクシでございますが、
打○切りとゆーのはそれはそれはホントーに悔しいもので・・・(涙)
キャラ可愛さもあって意地でもどっかで復活させてしまいます。
そんなボクがある日体験した恐ろしい話をば・・・」
最初の連載をしていた頃の話ですがね。
あの頃はスクリーントーンは普通にトーンシールを原稿に貼ってた時代で。
今なんかPC上で全行程できるけどね、ともかくペタペタ使ってたワケ。
その日も仕事が終わってのほほんとお風呂に入って・・・。
ほらゆず湯とかミルク風呂とかあるじゃん?
でさ、身体にくっついてたトーンの破片(削りカス)が、
足の裏とか知らないところからプカプカ浮いてきてさ・・・。
いわゆるトーン風呂ってヤツになっちまったさあ。
ボクは泣いたね・・・。
なぜかわからないけど、湯気が目にしみてねぇ・・・。
(つづき)
やがてその連載は突然の打ち・・・終了勧告。
4週で必死にまとめて送り出したさ・・・嵐が去った仕事場を、
空元気を出しながら掃除機かけてた負け犬のボクに、
クスクスと笑いかける声があるんだ。
何だと思う?カラフルにフローリングの床を彩るトーンのカスさ。
あいつまでボクを笑うんだ・・・
敗残兵のボクをののしり嘲笑うんだ・・・
やーい連載切られてやんのと足元から侮蔑と哀れみの視線を・・・
しかも掃除機で吸えなくて、ひとりっきりの仕事場に、
爪で床からトーンをはがす音がゴリゴリと・・・ゴリゴリとぉぉ〜〜!!
にわの「うわぁーーーん!!怖いよー!!思い出したくないよーーー!!
あれから何度似たような目にあって引っ越したかわかんないよぅ〜〜!!」
一同「自分の話で泣くなーーーーー!!!!」
・・・わかりづらい話で不興を買った副将は早々引っ込められた。
岡村「あ?次は俺の番だあ?なんもねえって。
んーそうだなあ・・・俺の話じゃねえけど、いいよな。
ここ数年会ってねえや、昨日の試合見ててくれたかよ・・・」
岡村(元チンピラで刺客):談
梶研吾・・・カジケンさんってえ人がいる。
俺が昔散々っぱら世話になった、
漫画原作者で脚本家で監督でプロデューサーっつうとんでもねえ男だ。
俺の代表作もそうだが俺に数多くの原作を書いてくれた人さ。
・・・裏世界に身を落として、恩を仇で返しちまったからな、
今度きっちりワビ入れてくるぜ。で、彼の話なんだがな。
彼は気が難しいが豪快でバカ強く、熱い男だ。
俺はかなり尊敬している。まあ仕事(原作)の内容は豪快を通り過ぎてるが、
人の事は言えねえから放っておく。
これがまたよく働く男なんだ。
別の業界で言うと一時期の小室某ぐらいか?
風邪とかでぶっ倒れても普段っから仕事が山積みだからよ、
一日の間に原稿書いて寝て打合せして寝て撮影現場出て寝て原稿書いて寝てーの、
いいかげん過労死するんじゃねえかってな人種だ。
でよ、ある時ふと目が覚めると半日以上も過ぎてる、こりゃやべーって、
飛ばしたスケジュールを慌てて確認してみると、
5個も6個もあるヤツが全部こなされていたとか・・・!
そういえば寝た場所と起きた場所が違ったりして、
しかし全く記憶がなかったそうだ。
豪胆な彼もさすがに肝を冷やしたという話だ・・・
岡村「まあそんな人でも修行先の“師匠”の方が百倍怖いらしいがな。
なんつったかな・・・まあ話にゃ関係ねーか。俺の話はここまで!」
岡野「クリエイターの間でたまに聞く都市伝説だな。
靴屋の妖精の亜種だの宇宙人にコントローラー握られただの。
漫画界で有名なのは一話丸々記憶のないまま描き上げた鳥山先生だ。
トーン風呂と似たような業界内輪話だが・・・まあいいか」
にわの「内輪ネタで悪かったなー!」
**********
「へっ、それは恐怖話じゃねえな、武勇伝だ。そして武勇伝なら俺も負けねえ。
いいかあ!?男・本宮ひろ志の生きざま、耳ィかっぽじってよく聞けぇぇ!!」
いきなり椅子をひっくり返して席を立った本宮が威勢よく語り出す───
「悪い、遅くなった。 ・・・なにやってんだ?おまえたち」
会議室にひょっこり現れた川原が見たものは、
【本宮ひろ志一代記】にアテられてひっくり返る裏御伽メンツであった。
とにかくスゴかったらしい。(絵にも描けないナントヤラ)
「うーんうーん、グラビア撮影・・・」
「修正原稿・・・」「ゴルフ・・・」「裁判〜」「弟子〜」「○○〜」「×××〜」
後半全然わからない。古株連中ですら物量の凄まじさに死んでいる。
そうこうしてる間に矢吹艦が徐々に近づいてきていた。
「いやぁ、川原せんせーにも聞かせたかったモン〜。
やっぱ人間生きてると色々あるもんだなーっとエヘラエヘラ」
ぷるぷる震わせながら手を振るにわのに苦笑を返す川原。
それを見やり、「やっと揃いやがったぜ」と改めて皆を着席させる本宮。
会議を前に飽和しきった場の空気が、僅かに緊張をはらんだ。
しかし本宮が会議なんてものを開く事自体、数年に一度あればいい方だ。
本宮は静かに、メンバー6人全員を見渡す・・・。
副将は、この会議の“意味”を知っている。これでも副官として、
長い事本宮に付き合ってきたからだ。勘で理解したのだ。
だから最初に本宮は聞いてきた。大丈夫か、と。
普段から意図的に避けてきた、または本気で忘れようとした、
彼らと岡野・真倉の4名が体験したあの日の───
「・・・そうさ、こんな俺でも。
恐怖に近い感情を持った事は数えるほどだが、ある。昨日のゴルフ場で、
俺はとんでもねえ男に因縁つけられた・・・だが、それとは違う。
昨日は純粋な恐怖、10年前のあの日は・・・
あらゆる感情がごった煮になった・・・。
あの燃える荒野・・・あの日の出来事を、俺は皆に話そうと思う・・・」
誰かが息を呑む音が聞こえた。
366 :
産声:04/10/04 17:54:56 ID:thQ12tJv
>>103 >>127 見えない学校――
「疼く……疼くぞ……あの者につけられた傷が……」
わだかまる闇の深淵に身をひそめ、傷の回復を待つ白き面の大妖怪。
『聖剣』によってつけられた傷が痛むたびに、我が身が沸騰するような憤激が込み上げる。
「口惜しいことよ……だが次こそは必ずや……」
呟きが、ふいに中断された。
闇の中に、己以外の気配を感じたのだ。
「何者だ……我が寝所に立ち入るは……」
闇の奥から返ってきたのは、白面を嘲弄するような響きだった。
「なんとも…『滑稽』だね…我が分身ながら……」
白面の巨大な眼球に、ひび割れたような殺意が走る。
膨大な殺気に呼応し、闇の奥の気配も巨大化した。
それはまるで、闇にあってなおドス黒く燃える太陽のように、禍々しい。
「 滑 稽 だと言ったのだよ、君を見ているとね。『妖狐・和日郎』クン……」
そして、声の主は姿を現した。
もうひとりの……否、すでに一人を吸収し、とって変わった『本物』の『藤田和日郎』。
―――― ギ シ イ イ イ イ !
「我が鏡像よ……どうやってこの場へ……そして何をしにここまでやってきた……」その質問に、藤田は、「何を今さら」と言わんばかりに呆れて首をふる。
「分からないのですか? なら……」
人間には不可能なほどに顔面を変形させながら、藤田が『イイ笑顔』を浮かべる。
「そんな脳みそは……いらんわなあ!!」
「言うたなァ、我が愚昧なる分身よ!!」
闇の中で、白き流線がほとばしった。
367 :
産声:04/10/04 17:55:44 ID:thQ12tJv
一斉に叩きつけられる数本の尾。
しかし、それらは藤田に到達する寸前、眩く電光を帯びる空間の壁に遮られる。
「壁をつくったか…くく…だが、所詮は虚ろな闇人形に過ぎぬ身で……まやかしの力がどこまで持つか!?」
ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ !!
次々と殺到する九尾。
今しも破られそうな結界の前で、藤田は嘲笑を消すことはなかった。
「見くびられたものだねえ……手負いの分身ごときに、『作者本人』が遅れをとるはずないだろう……」
小さな呟きとは対照的に、藤田が発する『力』が、桁違いの増幅を見せた。
――――― 充 ―――――
「な、何ィィ〜〜〜っ!?」
さらなる巨大な結界が、白面の巨体を押し包み、拘束した。
「ば、馬鹿なァア〜〜この力……まさかァア――――!?」
「その通り、僕はすでに『藤田和日郎』そのものなんだよ、白面」
「く…くくく……何ということか……我が分身までも闇の国に堕ちたと……ははは、何という滑稽さか!!」
己の不覚を嘆き、そして本来なら『きれい』であったはずの分身が闇に染まった様に、白面は心地よい絶望感を抱く。
「おのれぇぇ〜〜〜〜〜! だがそう易々と、貴様の一部になどなってたまるか……」
めきめき、と身体を軋ませ、結界からの脱出を試みる白面。
その巨体を、新たなる紫煌の結界が覆ったのは、その瞬間であった。
368 :
産声:04/10/04 17:56:39 ID:thQ12tJv
―――― ギ ュ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ !!!
「う…うおおおおォオ!? こ…これは!!」
白面を苛む、もうひとつの力。
それは、いつの間にか白面を包囲するように刻まれた『魔法陣』である。
複雑な紋様を描くそれは、紫煌の光と共に、凄まじき負の魔力で白面に縛鎖をかけているのだ。
「やはり…な」
阿鼻叫喚の白面とは対照的に、冷たい闇そのものの声が通る。
強大な魔法結界で白面を縛り続けながら、なおも泰然としてマントをはためかせる、闇色の肌をした使徒。
「だ…『濁天使』………き…貴様……」
「どれほど強大な力を持とうとも、所詮は形を持たぬ亡霊……前大戦の遺物……」
片手から、白面の全身を縛りつける凄まじき魔力を放出しながら、『濁天使』――麻宮騎亜が冷淡な言葉を紡ぐ。
「あまつさえ、若手にすら後れをとる……やはり貴様には『贄』となるのが相応しい」
「な…なんだと……貴様ァア〜〜〜」
「闇は、より深き闇に容易く飲み込まれ、消え果てるもの……白面よ……新たなる使徒の誕生を祝う聖杯となるがいい!!」
ほとばしる魔力はその強大さを増し、白面の巨体を圧縮していく。
その身体はすでに、人間大にまで小さくなっていた。
『漫画家の力』だけを具現化した闇の落胤は真なる暗黒へと堕ちていく。
――― 我 が 名 は 白 面 に あ ら じ ―――
奇しくも『神』に葬られたときと同じ言霊を吐きながら、とうとう白面は極限まで圧搾された。
やがて、魔法陣が消滅し―――
白面が存在した空間から、一滴の血が、静かに滴り落ちる。
369 :
産声:04/10/04 17:59:05 ID:thQ12tJv
ポチャン。
つまらない音をたてて落ちた先は、麻宮の持つ西洋風の杯だった。
杯を満たしていたワインによくなじませるように、麻宮がゆっくりと水面を回す。
そして、豊潤な香りを放つ杯を、藤田に差し出した。
「祝杯だ。新たなる魔人の生誕を祝う、な」
麻宮に、藤田は満面のイイ笑顔で応え、杯を受け取る。
一気に、中身を呷った。
「みっ、漲る!」
飲み干した瞬間、藤田の口から恍惚とした叫びが吹きこぼれる。
「漲ってくる! 妖気が!! これだ…これが欲しかったのだぁあ!!!」
噴出する妖気のあまりの凄まじさに、『見えない学校』の存在する空間は帯電し、麻宮のマントを暴風が嬲る。
「世界中の子どもたちに愛と勇気をね!
与えてあげる前提で、
―――まず怖がらせるだけ怖がらせてあげちゃうよ―――――ん!!
一 生 残 る 恐 怖 と 衝 撃 で 、 一 生 残 る 愛 と 勇 気 を ね ! ! 」
冥府の底にて、真なる大妖が産声をあげた。
安西たちにとって、サンデーにとって、最大最悪の敵が誕生した瞬間であった。
【藤田和日郎】――三身合体を果たし、完全暗黒化。十二使徒入り。
【闇藤田】――本体に吸収され消滅
←TO BE CONTINUED
藤田あああああああああああ!!
三身合体邪進化ジュビロキタァァァ!!ヽ(`Д´)ノウォー!!
ガンガン方面はさらに混沌としてきたやね・・・
サンデーは本当にドス黒くなると輝くタイプが多いな(((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル
藤田、福地、旧安西、黒留美子、黒藤原、皆川(予定) 他
サンデー系は悪役がよく似合う。やあ楽しみだ
うむ、ようやく一体にまとまったか。最悪の形ではあるが。
・・・・・・・・・面白い。実に面白いなあ(イイ笑顔
ところでキッシーはどうなるんかな。
藤田が分かたれた理由、岸本に白面が封じられた顛末・・・いつか書かれる日が来るのだろうか。
それはイコール旧大戦を書く事になりますので(藤田分裂はその時代)
たぶんやっても冨樫編以降でしょうね。ヘヴィ〜
まあぶっちゃけ今の髪無しはこっちの方がお似合い・・・かも
白に戻ることがあるとすれば島本あたりに叩きのめされて・・・というところか
(
>>365 9部A489 11部347 15部72 20部562)
「あの燃える荒野・・・あの日の出来事を、俺は皆に話そうと思う・・・」
本宮の、体躯に似合わぬ静かな、
凛とした声が静かな会議室に響く。
「・・・だがその前に、順を追って説明しねえとな。この会議はな、
にわの、岡村、お前らのいない間に起きた出来事が発端だ」
部屋の大きな円卓に本宮の向かって右から、
岡野、真倉、岡村、にわの、川原、澤井と席が並ぶ。
名を呼ばれた2人は隣同士向き合い、神妙な表情を作る。
本宮は視線を一巡させると、ゆっくり語り始めた。
まずは昨晩からの自分たち周辺の出来事を、
各人の情報を交えて簡潔にまとめる本宮。
――別府の混乱、松椿の破壊、宮下の豹変(本宮は未だ立腹中)、矢吹の提案。
鬼酒とクリードアイランドの悪夢・真鍋を退治した事の顛末。
牧野一行と≪原潜やまと≫に救われた連中に、襲いかかった謎の刺客。
乙の殺害、かわぐちの意思、謎の単語【真書】、迷える副将の足跡、皆の再会――――
一気に説明する本宮と、それぞれ複雑な感情を胸に抱く“息子たち”。
「潜水艦に刺客が来ただあ?
・・・そういえばさっき川原が言ってたな。
クソ、たとえ話じゃなくてマジに狙われていたのかよ。
しかも相当ヤバそうな連中・・・おい、どうしたバカ。青ざめてるぞ」
眉をひそめた岡村が右隣を見ると、
辛そうな表情のにわのが視線を泳がせながら頭を抱えている。
「・・・う、うん。だいじょぶ、ちょっと頭痛が痛いだけですぅ。
本宮せんせー・・・その刺客ってどんな連中で・・・した?」
彼の脳裏にはチクチクと刺激する記憶のピースと。
自分に覆いかかる光と誰かの声が広がりかけて、いた。
「・・・にわの、気をしっかり持てよ。
そいつらは全員片目に眼帯なりをした連中で、“ある者”に連なる狂気の集団だと言う」
言いながら本宮は、にわのの両隣に意味ありげな視線を送る。
川原は瞬時に気づき、1拍遅れて岡村も目線を本宮に返す。
――俺は10年前のあの日を がむしゃらに突っ走る事で忘れてきたが
あいつは俺と同じものを見て来て 俺の後ろを走ってついて来て
その間ずうっと腹ン中にいろんなモン溜め込んでよ 水臭えったらねえ―――
「そいつらは特殊部隊『PSYCLOPS』――――KIYUの持つ私兵だ」
KIYU。忌むべき4文字。時間を一瞬で10年も巻き戻す禁断のキーワード。
あの1日を経験した人間の、記憶の最深部にねっとりとこびりつく闇。
本宮と同じものを見てきた男は、昨晩の≪やまと≫内での本宮と同じ反応をする。
いや、それ以上の激烈な――――
「・・・キユ・・・ ・・・? ・・・・・・KIYUだって・・・?」
彼の視界にもはや円卓は映らず、網膜に焼きついた凄惨な光景に全身が包まれる。
光の中に溶け込む無機物と有機物、阿鼻叫喚、降りかかる瓦礫・・・
それともうひとつ。
本宮は知らない、彼だけが見たもの。
それは誰が名づけたか――――――
世 界 の 終 わ り の 風 景 。
「う・・・わ・・・ ―――――――うわああああああああっ!!!!」
「―――にわのぉぉぉぉ!!!」
同時に叫ぶ裏御伽大将と副将。副将の両隣に座る男たちが立ち上がる。
あらゆる感情が爆発したにわのは、喉がちぎれんばかりに叫びを上げ、
右の手刀をつくり≪気≫を放ち、虹色のエネルギー光で鋭利な刃物を形成し―――
内側を自分に向けた左手首へ振り下ろす―――――
空気を切り裂く光のナイフはしかし、
目標の20センチ上空でピタリと止まる。
川原と岡村の腕がそれぞれ隙間に差し込まれたからだ。
・・・2人とも万が一に備え皮膚を硬化させたりは、しなかった。
はっと意識と目の色を取り戻すにわの。
手刀から放つ気を瞬時に引っ込めた。
「・・・今、ボクは・・・何を・・・ ボクは・・・・・・ごめ・・・」
戸惑いと怯えが隠せない男の肩に、両隣からポンと手が乗せられる。
「ま、落ち着けよ。昨日のおっさんじゃあるまいし」
「『捕まった宇宙人の図』になりたくなかったらとっとと座れ、バカ」
「ねえ何よ!今どんな修羅場が起きたのよっ!
あたしちょっとついて行けないわ!ハンペン食わすわよ!?」
なぜか手鏡を見ながら口紅を塗りたくりつつ叫ぶパニック澤井。
岡野と真倉も副将たちを見ながら、しばし呆然。
やがて岡野が心の整頓をつけ解説に入る。
「・・・本宮先生の時は己の外に、刺客どもに向かった敵愾心が、
あいつは周りの誰でもなく・・・内側に向かうのだな。
普段泰然とした2人があそこまで追い詰められるとは・・・。
あの日、俺たちが知らないところで、
いったい何があったのだろう・・・」
「にわの、もう一度言う。本当に大丈夫なんだな?
俺の話に耐えるのが無理なら会議は中止にする。お前がいなければ、
この会議の意味がないからだ。・・・思えばこれが怖くて、
俺たちは無意識に過去を振り返る事を無視していたのかもしれねえ。
だがなあ・・・」
言葉を切り、自分の手の平をぼんやり見つめたまま固まる、
“おバカな長男坊”にわのを凝視する本宮の顔は苦渋に満ちている。
「だがなあ・・・。
俺はおまえの苦しみに今まで気づいてやれなかった。
これからは全員で、過去という荷物を分け合いてえんだ・・・。
どれだけクソ重くても、7人もいれば平気だろうよ。
孤児院育ちで天外孤独の身、家族の温もりなんて知りやしねえ、
そんな俺でもおまえ達ができた。そして俺は幸せだ・・・。
だから、おまえにも幸せになってほしいんだよ。
せめて俺に罪滅ぼしをさせてくれ・・・」
本宮の力強い声色が時々おかしくなる。
それに気づいたにわのが、ふっと顔を上げた先で・・・
まっすぐな涙を頬に伝わせた本宮が静かに男泣きしていた。
「せっ・・・先生っ!!
やめてください、こんなボクなんかに、謝らないでっ・・・!」
動揺し腕をバタバタ言わせるにわの。
それには構わず、次に本宮は再度円卓をゆっくり見回し、言う。
「俺は10年の時を越え、因縁の敵と再びまみえる事になった。
そしてお前たちは俺の傍にいたばかりに巻き込まれ、乙は死んだ。
・・・今ここで俺たちが袂を分かったところで、
奴らはお前たちを殺すかもしれない。いかれた野郎どもはな。
だとしたら、闘うしかねえんだ。
闘って勝って過去っつうクソ荷物をあいつらに突っ返すんだ、のしつけてよ。
覚悟を決めてくれ。
俺と生きるか、俺と死ぬか。
今ここで誓え。そして俺も誓う。
俺は持ちうる全てを出し尽くして・・・お前たちを、守る」
「先生・・・」
「オヤジ・・・」
「本宮さん・・・」
「パパ・・・」
それぞれの呼称で、敬愛する男に声をかけるメンバー。
「・・・生き抜く算段は、前に進む事のみか。おっさんらしいよな」
川原は常に微妙に周りとタイミングをずらす。
この場合、傍目他者と合わせる事に照れているようにも取れる。
本心は誰にもわからない。
しばらく言葉を失っていた男が、声を取り戻す。
「・・・せんせー。あの4文字で思い出した事があるんです。
みんなも、嫌かも知れないけど少しだけ聞いててほしい・・・」
あの日のこと。
ボクは謎の爆発に巻き込まれ、九死に一生を得た。
それがボクにとって幸せだったかどうかは・・・。
今もわからない・・・。
アシのみんなと打ち上げの酒を飲みに回った帰り、
“爆心地”に近いファミレスに寄っていろいろ語り合ってたんだ。
漫画って楽しいよね、辛い事いっぱいあるけどねって。
そこでボクはひとりの女の人に声をかけられた。
ファンだとか言って彼女の席に1人だけ連れてこられた。
・・・いや別にシタゴコロがあったわけではなく。
彼女はやけに分厚いファイルを持っていた。
どこかのページとボクを見比べ、それからしゃべり出した。
まっすぐな長い金髪と、冷たく凍った泉のような瞳が印象的な人。
「あなたは望まれて生まれてきたの?」
彼女はそう言った。ボクは出生がよくわからなくて、
どこか遠い遠い世界から流れついた人間、彼女はそれを知っていた。
今思えばあれは漫画家のデータファイルで。
ボクじゃなくても誰でもよかったんだろうかという気がするけれど。
彼女はなおも続けた。あなたは世界に捨てられた人間なのでしょう、
死人そのものでしょう、ならなぜ生きるの?と。
望まれていないあなたが生きる意味は何?と。
ボクの死んだ養父母はいい人たちだったから。
そんな事、考えもしなかった。
ボクの中身は急速に空っぽになっていった。
彼女は言った。KIYUを、“ともだち”を捜していると。
そして扉を開け、因果の輪を超えた外側に立てる漫画家を捜していると。
ボクはこことは違う場所の人間だから、
そして業界では不遇な方だから、素質はあるかもしれないとか言っていた。
―――― 光が最初に飛び込んできた ―――――
その光が語りかけてきた。力を与えるから“誰か”を捜せって。
彼女は光に身を委ね、やがて溶け込んでいった。
やがてボクも白く包まれ・・・
外の世界が一瞬だけ見えたけど、ボクはそこから逃げ出した。
ボクはボクのままで、この世界にいたかったから。
あの光は―――
突き抜ける力――――
神も悪魔も見捨てた―――――
荒野に託す絶望の未来―――――
「気がついた時、そこは元のファミレスで、ボクも含めた全てが、
光を拒絶したようにボロボロになっていた。アシたちはみんな大きな柱の下さ。
偶然、同じ雑誌で仕事してた本宮先生が近くにいて、彼らを救ってくれた・・・」
にわのの独白を、皆は静かに聞いている。
「これ以降の話は本宮せんせーに話してもらうよ。
ぶっちゃけあんまり覚えてないんだ、岡野君たちが集英社ビルの中にいて、
霊力でバリア張ってたけど限界で、そこに助けにいった事ぐらいかな。
せんせーがどこでKIYUの名を知ったのか気になるしね・・・」
彼はやや疲れた声で、当時の出来事を周りに伝える。
「気になる事と言えば、その女性さ。
彼女の言葉はひとつひとつが砂漠の雨のように染み込んでくる。
そして冷ややかできれいでまっすぐな瞳・・・見覚えがある。
死んでしまったけれど、ボクと島で対戦したヒラマツ君。
洗脳されてたっぽい彼の心の奥に、あの女性の瞳を感じた。
あの人はいったい誰だったんだろう。
光の中へ消えて、ともだちに逢いに行ったのだろうかと。
・・・心のどこかで覚えていたんだなあ。今、彼女に言いたい事は、ひとつだけ。
『ボクはあの光の中に、還った方がよかったですか』って・・・」
奇妙な沈黙。岡村は知らない話の連続に軽く驚きながら、
心は別の記憶を奥底から引っ張っている。
(片目の刺客。ヒラマツってのの殺人疑惑を調べていた、
乙が襲われたのも片目に眼鏡をかけた紳士だと言ってたっけ。
この辺り、ぜってえ何かある。乙の仇、取らせてもらうぜ・・・!)
副将の話を最後まで聞いていた、本宮がやおら席を立ち上がり。
円卓向かいの男の背後に歩を進める。転がるようにイスから離れた、
にわのの肩に乗せられる“アトラス”本宮の大きな両の手。それは小さく震える。
「にわの。これだけは伝えておく。
おまえが生まれてきたのには意味がある!この世界で俺たちに出会うためだ!
おまえは俺に望まれてここにいるんだ!何があっても忘れるな!!」
「 !! ・・・りがと・・・ざい・・・・・・ます・・・」
あの日の光景のように、ボロボロになった彼の中のかけらが、
熱い涙と共にまたひとつ修復された。だが心の傷に完治の保証はない。・・・そして会議は続く。
6人いて本宮の呼び方が被らないのが面白いな
パパは微妙だw
川原→おっさん
にわの→せんせー
真倉→オヤジ
岡野→本宮先生
岡村→本宮さん
澤井→パパ
なるほど、確かに全員違う
それだけ個々のキャラが立ってるという証明みたいで面白い
しかし、澤井のキャラは魚雷先生なのかパチ美なのか
澤井はキャラ立ってるのに立ってない不思議ちゃん
388 :
はざま:04/10/06 17:33:21 ID:PcCnap9k
再び、暗黒の道を歩き始め、どれくらい時が経ったのか。
「親父〜」
「オヤジィィ〜〜」
もはや信頼という次元ではなく、完璧にクッキング親父の料理に支配されてしまった
かのような貞本と木村。
「空気の流れが変わってきたな……ん? 奥から光が……」
三人は、永遠とも思われた暗い道程を終え、そして辿り着いた。未知の道の最深部。
部屋には、穴がふたつ上下にぽっかりと空いていた。上には、一筋の光さえ見えぬ、
真実の闇に包まれているであろう穴。そして下には、ただ白い穴。人ひとりくらいの幅の、
狭く、しかし、とても深そうな穴。
「この穴のどちらかが現実世界と繋がっている……?」
しかし、どっち?
「そんなの決まっておろう! 余の世界は光に満ちている。つまり、下の明るい穴だ!」
「そうとも言い切れねえだろ。現実なんてつらいことばっかりさ……天野さんにはフラれ
るし、急激にヘタレるしサカリはつくし、夕……ぐっ! 頭が……」
貞本は、例の彼女に関連することを考えてしまうと激しい頭痛に襲われるようになってい
た。まあ、ようするに彼は「現実は嫌なことばっかだから、暗い穴ってのもある」と言いたか
った。らしい。
389 :
はざま:04/10/06 17:34:01 ID:PcCnap9k
クッキング親父は、非常時のためにと常に持ち歩いていた懐中電灯で暗い穴を照らした。
しかしそこには、少なくとも懐中電灯の光が届くまでのところには、何も見つけることは出来
なかった。ただ、中に何らかの気配を感じていたのは貞本だった。
(このかんじ……これは……)
このとき、彼は一つの重大な選択をすることとなった。
「ふたりは下の白い穴に入ってみてくれ。俺は、上の穴に入ってみる」
いつになく真面目な顔をした貞本が、いつになく重みのある言葉を溢した。
「貞本上はダメだ! やはり不穏な気配が漂っておる!」
「恐らく、下が正しい選択だと思うぞ、貞本」
多分、そうさ。下が正しい。下に落ちれば、現実の世界に……日本に戻れるはずさ。しかし、
上がどうしても気になるんだ。この機を逸したら、二度と遭えなくなる何かが、あの中にいる気
がするんだ。もしかしたら、もう、戻れなくなるかもしれない。それでも、行きたい。行かなきゃ。
想いが弾けると、貞本はふたりの制止を振り切って、穴に入っていた。ほどなくして後ろを振
り返ると、ふたりが追って暗い穴に入ってきていた。3人はそれぞれ、異なる方向に飛ばされ、
そして、それぞれがそれぞれを視認することが出来なくなった。貞本は、眼から止め処なくこぼ
れて来る涙がどこから流れているのか分からなかった。
正しい道を選ばなかった悔恨の涙か。
或いは、正しい道を自分のために放棄した仲間達に対する涙なのか。
「そうだ、俺はお前と遭うためにここへ入ったんだ。全てを投げ打ってな、いがらし――」
貞本のすぐ前を、一匹のラッコが飛んでいた。
別のオヤジキター
ところで投稿可能バイト数がなぜか倍増してるのだが(行数は同じ)
何があった少漫板
>>291 シュカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
状況開始より5分。
特機隊の突破力は圧倒的だった。
【エリア88】の甲板に降下着陸した特機隊は、伝説に違わぬ無尽の突撃力によって空母内を制圧していく。
兵数、装備、練度、全てが第3艦隊の兵士たちよりも遥かに上。
脱出用のヘリも破壊され、陸地から遠く離れた鹿児島沖上で、エリア88は巨大な鉄の牢獄と化した。
『ぐあッあ……
シュカカッシュカカカカッ ドウッザッザカ
「戦況はどうなってるッ、生存者はいるのかッ」
司令室にて、新谷かおるは焦躁の極みに達していた。
次々と連絡が途絶し、沈黙する有り様は、自分達の絶対的劣勢を指し示すものだ。
叫び出したくなるのをこらえながら、新谷はかろうじて自らを律する。
まさにそのときであった。
彼の鼓膜と精神を嬲る陰惨なメッセージが届いたのは。
ザカッ
「ア―――ア―――アローアロー聞こえますか―――――
第3艦隊のミナサマ、コンニチワ――――ッアロ――ッ
どうしようもない短小で毒男の『くそ』新谷ちゃんもきいてるかあい?」
修羅場にはあまりにも場違いで馬鹿陽気な、そして馬鹿妖気な声。
「僕様チャンたちは最後の大隊――――ッ
分隊指揮官のひとりの倉田英之クンで――――す
初めまして――よ――ろ――し――く――ね――
こちらはただ今、遅めの朝飯の真最中ゥ
第3艦隊の隊員の皆様を美味しく頂いてま―――――す」
ガッガッガッガッガッガックチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャクチャガッガッガッガックチャクチャクチャクチャクチャ
言葉が途切れた瞬間に、その背後で響く耳を覆いたくなるような湿った咀嚼音……
「今からブッ殺しに行―――く―――か―――ら―――ね―――
小便はすませたか――い?
神様にお祈りは―――?
部屋のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?」
エリア88の乗員のひとりの生首をゴミのように投げ捨てると、倉田は言う。
「まあ自殺する時間はあるかもしれないから死ねば?(オススメ)
じゃあね―――ッ、みんな愛してるよ――――――――ッ」
ブツッ
ザッザッザーッ
通信は再び途切れた。
「……ということです、押井さん。露払いはヨロシク」
エリア88の甲板上。
夥しい死体を積み上げた山の上に優雅に腰かけて、文庫本のページをめくりながら、倉田は言う。
つい今しがたの狂気じみたハイテンションな脅し文句を述べたのと同一人物とは思えない透徹とした佇まいだった。
「……?」
ほぼ制圧が完了した甲板上には、今も破壊された艦載機が放つ炎の音や、銃声が充満している。
しかし、倉田が呼び掛けた相手は、どんな轟音飛び交う戦場にあっても、衣擦れの音さえ聞き逃さない。
普通なら聞き逃しなどあり得ない相手から返事がないのをいぶかしんで、倉田が文庫本から顔を上げる。
そこには、特機隊の兵士たちはいるものの、それを指揮する者の姿は見当たらない。
「あらら、スデに行っちゃってたのね…仕事の早い人だ」
陰惨な微笑を刻むと、倉田は喧噪のなか、再び読書に没頭し始めた。
***** ***** *****
『極めて不味い状況だ。こちらに来てくれ…と言いたいが、すでにそっちにも敵が向かってるかも知れん。
巻き込んじまって悪いが、とにかく生き延びてくれ。俺にはそれしか言えない』
そう言って、新谷からの通信は切れた。
医務室にて通信機を置くと、片倉が張りつめた顔で、伊藤と荒川の顔を見る。
「こっちにも敵が来るそうや。
状況はよー分からんが、二つだけ分かってることはある。
それは、ひとつは、敵がクサレ吸血鬼ども……最後の大隊やっちゅうこと。
そんでもうひとつは、こっちにもすぐに敵さんがギョーサン来るちゅうことや」
「内藤様がいまだ目覚めない以上、ここを動くわけにもいきませんね……」
「やっぱり、ゆっくり静養する間もないのね、私たちって…」
新谷ぼろ糞だなw毒男って…そらお前のこったろ倉田!
三人は内藤を残して速やかに医務室を出ると、すぐ近くの通路にて敵を迎え撃つ。
すると、間を置かずに耳をえぐる軍靴の音が通路を満たし始めた。
「来るで!!」
シュカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ
「「「!!」」」
たちまち医務室前の通路は、凄惨な鉄火場と成り果てた。
MG機関銃の吐き出す銃弾が、壁や床や天井を穿ち、破壊していく。
あまりに圧倒的な悪鬼どもの進行を止める術やあろうか。
「援護ォ、頼むでお二人さん!!」
パチンッ ボ ッ !!
荒川の指が手袋を形成する発火布をこすり、通路に爆炎の壁を作り上げた。
燃え盛る火炎は、恐れを知らずに突撃してくる猟犬たちを容赦なく焼いていく。
しかし、その進行速度は衰えない。
ドドドドドドドドドッッ
悪鬼たちを次にとらえたのは、夥しい『釘』の群れだ。
釘は、歴戦の兵士たちにその軌跡すら悟らせず、針ねずみのように突き立っていく。
破邪の釘を顕在化させる、アポートアビリティ(顕現能力)だ。
さらに最前線の兵士たちが怯む。
圧倒的な侵攻が、わずかに途絶えた。
「よしゃっ!!」
大技のタイミングを得た片倉が、懐から己の愛銃を引っ張り出した。
『旋龍』
日本刀の柄に、切り詰めた大筒を組み合わせたような、黒くてゴツイこの銃は、
ただの弾丸を大砲なみの威力へと変え、
そして、最強の『魔法弾』を作り出す、片倉最強の武器である。
「黒」
「獣」 「射」
「龍」 「土」
旋龍が五芒星を描き、魔法弾が精製される。
その巨大な銃口が火を吹いた瞬間、三人と特機隊の間を隔てるように巨影が出現した。
まるで巨大なリボルバー拳銃と龍を一体化させたような、黒光りする魔獣……
いや、
魔 銃 !
「 鉄 牙 砲 龍 弾 (テッガホーリダン) 」
ギュウウウウ ガラガラガラガラ
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!
龍の顎は、回転する巨大な砲身となり、その口から絶大なる破壊の嵐を吐き出し始めた。
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!
激烈な砲火が、通路そのものを破壊するかのような勢いで、敵にブッ放しつづける。
やがて、銃火が止み、その顎が停止すると、すでに辺りに動くものはなかった。
「第一陣は、撃退成功や!」
旋龍を振り回しながら、片倉がガッツポーズする。
「相変わらずものすごい破壊力ですね……ちょっと騒がしいですけど」
「派手ねえ」
女性二人は無感動に、硝煙とホコリを払う。
「安心すんのは早いで! まだ敵さんはこんなもんやなさそうやしな」
二人の反応をさして気にしないで、片倉が銃を構え直す。
そのとき。
ゴオ!!
いきなり、三人の間を凄まじい『風』が吹き抜けた―――
「っ!!」
そう思った瞬間、とてつもない力で荒川の身体が浮き上がった。
悲鳴は壁と、見えないが破壊的な圧力の間に潰され、くぐもった。
「なっ!!」「――!?」
片倉と伊藤が反応したとき、すでに荒川の顎は悲鳴をあげはじめていた。
何か強烈な力が、荒川を壁に押さえ付けている。
そして、顔を苦悶に歪める荒川の前に、朧げな影が浮かび上がり始めた。
三人は思わず絶句する。
いきなり、何もない空間から、凄まじい巨躯の男が出現したからである。
その巨大な丸太のような腕が、荒川の首を締め上げ、壁に縫い止めているのだ。
巨漢のレンズ型の双眸が、冷徹な殺意を帯びた。
エリ8スゲーことになってんなー
はたして増援が来るまで生きのびられるだろうか
ところで話題の山賢BJ読んだが、巻末コメントが恐ろしすぎる
本当に比喩でなしに神をも恐れん男だ・・・
今日のから載ってるのかBJ
チェックせねば
そして片倉一行ガンガレ
>手塚先生、今後ムチャをしても、どうか天国から温かく見守っていてください。(山本)
どれだけの事をやらかすつもりだw
失敬だな倉田!新谷ちゃんには佐伯せんせーという奥さんがいるぞ!
403 :
増援集結:04/10/08 01:55:32 ID:Qg6sjmNC
エリア88が巨大な鉄の牢獄と化した頃…
「そうさ俺は捕虜さ…お前らに命を握られている身さ…だがよ…
なにが悲しくってお前らのために戦わなきゃならないんだ!」
「嘆くな、今を嘆くより今まで生きてこれた幸運をよろこ…」
「うるせえッ!てめコラ降ろしやがれ!」
「別にかまわんぞ。おまえが晩秋の鹿児島湾で
海水浴がしたというのなら止めんさ。」
「!!…チッ!」
輸送ヘリの中のオメガ一行
ヤマトに帰還するはずがなぜか鹿児島湾で足止めをくらい
そのあと「指令命令」で現在攻撃ヘリの護衛つきで鹿児島沖をエリア88目指し飛行中なのだ。
「で、何をやるんだ?この沖でお前らの仲間が襲われてんだろ。」
「俺達の任務は一言で言えばだ。今現在戦闘が起きている【エリア88】に乗り込み
敵勢力を撃退する。それだけだ。」
「でもよ、相手は潜水艦もいるんじゃねえのか?」
「潜水艦は友軍の潜水艦隊が相手をする。
さらに相手が落下傘降下してきた飛行物体に関しては…」
そういって小林が顔を上げる。
つられて顔を上げた渡辺が見たのは…
一見古風な戦艦のようなフォルム…だが空中を飛行している事実と両翼がそれを否定している。
髑髏の刻印の施された艦首と古い西洋船の面影を持つ艦尾が特徴的な船
「第一艦隊から派遣された【アルカディア号】が対応する。」
エリア88――。
既に90%が制圧された艦上の、最後の10%の区域。
怒号と悲鳴と銃声が飛び交うその場所にて、一人の男により異様な作業が進行していた。
数m先で今にも防衛ラインを突破する勢いで迫る特機隊。
その脅威により窮地に追い込まれた兵士達には目もくれず、彼は黙々酷く重そうな物体を1ヶ所に集め、積み上げ続ける。
「よっこいしょっ…ふう〜疲れるっすね〜あ、そこだめじゃないっすか。
そんな風に積んだら崩れるっすよ」
額の汗をタオルで拭い、はつらつとした顔で周囲の人間に指示を飛ばしていく。
その男のどこか薄っぺらな明るさとは対称的に、
周囲で同じ作業をこなすエリア88の兵士達は、一様に蒼褪めた表情を顔に浮かべていた。
と、その時、手伝わされている兵士の一人が、短く悲鳴を上げた。
既に成人男性の背丈を優に越える程に積み上げられた山の中ほどから崩れ落ちた何かが、彼の頭に当たり地面に落ちたのだ。
それは、人間の片腕だった。
その千切れた腕に纏わりついた服の切れ端は、彼が着用している軍服と同じであった。
良く見ればなるほど、その赤黒い小山は、全て人間の死骸であった。
とすると、彼らは後少しで突破されそうな戦場を放棄して、
同じ釜の飯を食い、幾多の戦場を共に戦い抜いた仲間の亡骸をひたすら積み上げていたことになる。
何故そんなことを?と聞きたいのは彼らのほうであろう。
中心の、どう見てもエリア88の人間では無い白い男以外――
誰もが意味もわからずその作業を手伝わされていた。
にも関わらず、誰もそのことに抗議出来ないでいる理由。
それはきっと朗らかに笑う男の顔面で、凍結したように見開かれた、
黒目の消失した空洞のような双眸に言い知れぬ恐怖を覚えたからに違いない。
彼らが、薄っぺらい笑みをピクリとも動かさず転がり落ちた手首を拾い上げたその男について知っていること。
それは、その男が援軍で、彼らからすれば雲の上の存在である横山十傑集の一人だということだけであった。
これだけ迅速に援軍を送るということは、恐らくこの襲撃をかの軍師が見越していたということである。
兵士達はその慧眼に畏怖を覚えると同時に、もっとましな援軍を送ってくれと胸中で罵り声をあげていた。
そんな兵士達の思考など何処吹く風といわんばかりに
その白い男は片手で死骸の腕を弄びながら、目の前の悪魔が作り上げたような小山を軽く見上げた後。
一度頷き太陽のように微笑んだ。
「うん。これでOKっすよ。ご協力ありがとうございましたッス」
その言葉に、周囲の兵士達が戦闘中にも関わらず全身を虚脱させた瞬間。
エリア88が堅守してきたバリケードの一角が爆破され、特機隊がその異名通り狩りをする犬のような獰猛な迅速さで、侵入してきた。
兵士達の歓喜の表情は絶望に変わった。
その中心で、男―福地翼は笑い顔のまま、持っていた死骸の腕を、そちらに向けた
轟、
と空気が震えた。
福地の手から何かが飛び出し、一直線にバリケードの内部に一歩踏み出した特機隊に向かっていった。
それは、直径数十cm強の巨大な丸太だった。
バリケードの内部に侵入しようとした特機隊の数名は、
突如目の前に現われたその丸太の直撃を受けた。
彼らはそのまま全身を砕かれて、艦の端から端まで吹き飛び、海に落ちた。
そしてその丸太は同時に、吹き飛んだバリケードの代わりとしてその場に収まった。
兵士達は一瞬呆然としたものの、直ぐに我に帰り、防壁の外に向け、再び苛烈な銃撃を開始した。
福地は相変わらず笑ったまま再び死骸の山に向きを変えた。
その片手には、先程まで持っていたはずの死骸の腕は消えていた。
恐らくは、この男が何らかの力を使い、腕を丸太に変えたのだろう。
そういう冗談のような、
しかし相手が漫画家なだけに決して非現実的ではない仮説を立てた一人の兵士が、彼に向かって問いかけた。
「今のは、何なのですか?」
ん?と死骸の山と、その遥かな上空を見上げていた福地は、
一瞬訝しそうな顔をして振り向いた後、直に質問を投げかけられたことに気が付き、にこりと笑って返答した。
そういう仕草は、驚くほどどこにでもいる平凡な青年のものであった。
「俺の能力っすよ。ゴミを木に変える能力っていう」
「は?――ゴミ?」
兵士は、その答えを理解できずに反芻したが、
福地はもう兵士から視線を外し、再び元の方角に向き直っていた。
「それにしても、今回はそれ以外使っちゃいけませんって、横山様厳しすぎッスよ〜」
一人言を呟き出したその背にこれ以上問い掛けるわけにも行かず、
又隊長の怒鳴り声が聞こえて来たこともあって、彼は福地に背を向けた。
と、その時、彼は恐ろしい想像に思い当たった。
ゴミを木に変える能力、と彼は言った。
そして、彼は死骸の腕を、丸太に変えた。
ならば―
あの男が言った"ゴミ"とは、死骸のことではないか
ぞくりと、背筋に冷たい汗が滲み、あの底無しの深淵のような双眸が脳裏に浮かび上がった。
男は首を左右に激しく振って、その想像を頭の中から追い出し、彼の戦場に向けて、全速力で逃げ出した。
――福地翼のゴミを木に変える能力における、ゴミ、の定義は実にシンプルである。
福地が対象をゴミと認識しているかどうかそれだけのことだ。
つまり、福地が目の前に落ちていたまだ使えそうな鉛筆をゴミだと思えばそれはゴミになるし、
又逆に、彼がゴミだと思わなければ―そんなことは有り得ないが、紙くずであろうと木に変化することは無い。
何が言いたいのかというと、要するに―福地翼は人間の亡骸を100%何の疑問も躊躇も無く、ゴミと認識しているということだ。
そして、今彼の目の前には、巨大に積み上げられたゴミの山がある。
福地は、その更に上に視線を向けていた。
そこには、巨大な艦船がどてっぱらを晒していた。
エリア88に特機隊を投下した黒船である。
黒船は、船長の絶対の自信の為か、はたまたその狂気によるのか、特機隊を投下後浮上せず、といって上空から援護するわけでもなく、その場に待機していた。
福地は、死骸の頂上から艦までの距離を目算しているようであった。
が、すぐに視線を戻した。
そして、軽やかな足取りでゴミの山に近付き、それに手を置いた。
「さ〜て、届くかな〜」
艦上に突如出現した大樹が、雲を突き破り、黒船を貫いたのは、
福地がアハハと無邪気な笑みを浮かべたその直後のことであった。
ちなみに、福地翼によって海に放り出された数名の特機隊は、艦体をよじ登っている最中。
上空から現われたある神を畏れぬ漫画家の相棒件ペット件乗り物件最大戦力の顎に
全身の七割を食い千切られて絶命したが、それはまだ先の事である。
福地ぃぃぃヽ('A`)ノ
木変化の能力は「手で覆えるもの限定」なので、
恐らく一旦握りつぶしてから、またはちぎって(ry
福地ぃぃぃぃぃ_| ̄|○
うえきが打ち切り臭いんでやさぐれてんだろうか……
福地書きの人はっちゃけすぎだーーTT
がんばれもっとやれ!w
福地対宇野がみてみたい。
黒船を貫いたって…福地大活躍w
てかアルカディア号が来る前に黒船堕ちるんじゃ…
414 :
黒船の真実:04/10/09 01:29:41 ID:COw+Sm5/
>>408 もし遥かなる上空から、その戦場を見下ろせる者がいたならば。
その者の目には、鹿児島沖上に浮かぶ、漆黒の巨大な『棺』の姿が見えただろう。
余りに巨大なその『棺』は、その概観ゆえにこう呼ばれる――
『黒船』
、と。
***** ***** *****
「おや…」
一本の大樹が、雲を突き破り、黒船を貫くのを目の当たりにした倉田の反応には、しかしわずかの動揺もなかった。
いまだに文庫本の字面を追いながら、その顔が呆れたように嘆息する。
まるで、目の前で為された行為の愚かさを嘆くように。
「せめてものハンデだと思ってアレを動かさなかったというのに……薮をつついて蛇を出してしまったか」
なかば同情するように呟くと、それっきり興味を無くしたように、その目は再び文庫本のページへと移った。
***** ***** *****
「……?」
福地が、その異変に気付いたのは、自らが生み出した大樹が、黒船の船体を貫いたかに見えた、その瞬間であった。
バキバキバキバキバキバキ………
白い男の鼓膜を、あり得ない音が叩く。
それは、標的を穿ったはずの大樹が、粉微塵に破壊されていく音だった。
415 :
黒船の真実:04/10/09 01:31:00 ID:COw+Sm5/
厚い雲のベールが破られたことにより、黒船の全貌が明らかになった。
その巨大な船首は、あろうことか獣の顔のような禍々しい意匠がほどこされていた。
巨大な衝角(ラム)を挟むようにして、双眸と思しき二つの巨大な穴が、眼光のように冥い光を放ち。
その下には、一個の島とすら見紛うほど超巨大な船体を真一文字に割るかのように、顎が開いている。
船体を貫いたかに見えた大樹は、実は山脈のごとき牙が連なる、黒船の大顎に咀嚼されていたのだった。
それだけでも常識外れのデザインだが、黒船の異常はそれにとどまらない。
エリア88でさえ小舟に見えるほどの圧倒的な巨体が、いきなり20メートルは持ち上がったのである。
それを見た福地は、思わず感嘆したように、その虚ろな眼を見開いていた。
「なるほど…そーいうデザインだったんすか。こりゃ、たまげたっすね」
黒船を持ち上げたもの―――
それは、
『足』
だった。
エリア88クラスの空母を楽に鷲掴みできそうなほどの、巨大な足が船体の左右から幾本も生えているのだ。
その姿は、超巨大な百足を連想させた。
「黒(でか)い……黒(でか)すぎる……」
福地の側で、バリケードを築いていた隊員たちが、異口同音に絶望の呻きを漏らしていた。
416 :
黒船の真実:04/10/09 01:32:30 ID:COw+Sm5/
「我が棺よ!!!
船を、
人を、
命をッ
喰らいつくせ!!!」
倉田が叫んだ瞬間、黒船の大顎が黒い津波を吐き出した。
それらはスコールのごとき豪雨となって、エリア88に降り注ぐ。
隊員たちから、どよめきがあがった。
「な……なんだこれは……空から『血』が!?」
その黒い液体の正体は、膨大な量の、コールタールのようにベッタリとした血液だった。
それらは、船体に、あるいは人体に付着した刹那。
まるで松明のように、瞬く間に燃え上がった。
「ひいいいいいいっっ!!」
わずかに生き残っていた隊員たちが、次々と炎上した。
エリア88の至る箇所で、凄まじい火災が発生する。
断末魔の声をのみこみながら、海水でも決して消えない炎の舌が、エリア88を蹂躙する。
そして、その炎は、積み上げられていた死体や、福地が放った樹々さえも跡形もなく燃やし尽くしていく。
「あららー、こりゃエライことになっちゃったすねー。もしかして、俺って藪蛇っすか?」
どこか場違いに呑気なその問いに答える者は、もはや誰もおらず。
その代わりに、別の影が、大量に黒船から分離し、エリア88に殺到する。
それらは全身を重厚な甲冑で覆い、巨大な戦槌を構えた、身の丈7・8メートルには達しているであろう、異形の怪物達の群れであった。
戦艦に足が生えたと聞いて海底人類アンチョビー(安永)を思い出した ※負け組
ヤマト編はかなり面白いが、トナメも忘れないでおくれやす
いい加減、準決勝前の抽選会くらいならいつでもできるはずなんだが・・・なぜか誰も書く人いないねえ
まあそれはともかくとして
黒船ってこんなバケモノだったんかい!(ただのデカイ空母かと思ってたーよ)
抽選会か・・・
ガンガン、裏御伽は置いといて
バンチとえなりは来れるのだろうか?
そもそも今現在の作中時間はどんくらいだろうか?
作中時間はところによって違う
くじ引くだけなら、一人居ればじゅうぶん(それこそ富沢でもいい)
無礼ドが矢吹艦に戻ったらイベント開始やね
裏御伽はそろそろ
別に強引に時間すっ飛ばして抽選してもいいんだが、他の書き手が他の展開書いてる時にそれをやってもねえ。
ヤマト編、あんまり露骨な潰しはどうかと思う。
しかしあれだな、黒くなっても相変わらずやぶ蛇体質なのな。<福地
>>211の続き
えなりがバイクで場を離脱した後…
千日戦争状態だった二人の間に初めて動きが生じた。
宮下「フッフフ……、そろそろ限界のようだな。」
車田「(……ここまでか)」
車田の出血が臨界点に達し、遂に互角だった均衡が破れる。
宮下「動かぬ緊張感というのも悪くはないが……いい加減飽きたわ!」
叫ぶと腰を大きく落し、拳を振りかぶったまま、凄絶な呼気を解放する。
宮下「 こ れ が 真 の 千 歩 氣 功 拳 じゃ ――――――!!」
車田「 ギ ャ ラ ク テ ィ カ マ グ ナ ム !! 」
それぞれの“氣”と“小宇宙”が、巨大な拳のオーラとなって衝突した!!
両者の中間でオーラが正面衝突し、激突の余波で二人の身体が激しく吹っ飛ぶ。
宮下「ごふう!!」
車田「ぬうう!!」
すかさず追撃をかけんと、宮下の拳が雷鳴のような轟音をあげた。
迎え撃つ車田の拳が、数百に及ぶ光の線となって縦横を走る。
宮下「 フ ラ ッ シ ュ ピ ス ト ン マ ッ ハ パ ン チ !!! 」
車田「 ラ イ ト ニ ン グ プ ラ ズ マ !!! 」
空間で交錯される、数億に及ぶ剛拳の嵐。
打ち消せない威力は、辺りに飛び火し、それだけでビルや道路が粉々に砕け散っていく。
二人のオーラが果てしなく衝突と爆発を繰り返し、やがて両者は目も眩むような破壊の光の中に消えた。
(
>>383 7部486 13部211 19部397 20部570等)
「気づいた事があるのだが」
どこかしんみりしてしまった、会議室に再び時が流れる。
声を発したのは岡野。にわのは涙を拭いて椅子に座り、やがて本宮も頷いて席に帰る。
『どうした?』真倉が精神波で相棒に呼びかける。
「今の話でちょっと、な。
10年前―――すべての鍵はそこにある。
昨夜、例の刺客たちが大量に押しかけてきた際・・・大将の宇野と言ったな。
あいつが紅色の気か何かで俺たちの動きを封じた時、言っていたんだ。
―――あの桁違いの力は“10年前”に手に入れたと。
仮定なのだが、KIYUの一味は今の話のように、
何者か・・・KIYUかもしれないし違うかも知れない・・・その何者かに、
忠誠を誓う事で力を分け与えられるのではないか?」
岡野の説に小さく頷く一同。
「誓わなかった場合はにわののように弾かれる。
心身に損傷を負わされ資格対象者から外される。死ぬ事もありえるだろう。
普通の人間も対象になるのか、細かい事は当事者でないからわからないが、
その、光から聞こえたという≪声≫が、
宇野に力を与え、10年前の惨劇に直接影響を及ぼしている。
俺はそう睨んでいるのだが・・・」
頭脚人間(頭に短い手足が生えている)体型の岡野が、
円卓の端に指を引っかけながら淡々と自説を語る。
「で、仮定が本物として、その声がKIYUかどうかはわかんねえんだな。
そもそもキユってのは何なんだ?えーと、確か昔ジャンプにそんな作家がいたろ。
ヤバイ4文字とやらイコール漫画家なのか?
何か危ない団体の頭文字かもしれんが。昔からあんだろ、そーいうの。
または“殺しいっぱいやります運動”の略称とかな・・・いや例えだけどよー」
岡村の、なんだかよくわからない話が続く。
それを無表情で聞いていた川原が、相槌のふりをして危険物を放り込む。
「なんだ。お前さんだってそこに属してたんじゃなかったのか?」
「・・・・・・・・なんだと?」
短めの眉がぴくっと、岡村からの不穏な空気を周囲に伝える。
それには構わず川原は言葉を続ける。
「利用されただけで、組織の母体については何も聞かされず・・・か。
最初から使い捨てのつもりだったんだな。“薔薇の刺青の男”は」
「―――何を知ってるんだ!川原ァ!!答えやがれッ!!」
ガタッと派手な音と共に岡村が席から飛びかかる。
岡村の激昂を、矛先の川原に挟まれた形の男が必死に身体で抑えている。
「わぁ!岡村クン落ち着くじゃん!
川原センセもいきなり前置きなく変な話しないでよっ!」
「離せよバカ!これは俺の問題なんだよ!!」
「そー言われても困るっつー〜〜〜あぎゃあー!!(バターン)」
「あいてぇっ!バッキャロー!!」
岡村の体重がかかって、にわのの椅子が真後ろにひっくり返り、
男2人が豪快にすっ転んで床に頭をぶつける。
そして意地悪そうにも取れる、自席から床を覗きこむ川原の、
眠そうな細目を見やった岡村がさらに腹を立てた。
「わっ、笑ってんじゃねえよテメエ!いつかぶっ倒す!」
「そう見えるか?」
川原はあくまで穏やかな顔つきのまま、今度は本宮の方に振り向き。
「悪い悪い。簡単に言えばな、≪やまと≫に来た刺客の中に、
岡村を裏御伽に送り込んでおっさんの首を取らせようとした、
能條と呼ばれる男がいたって事さ。
こいつは肩書きが資産家で猿渡の≪チーム・タフ≫とコネがある・・・いや、あった男だ。
裏で調べておいた。猿渡は裏工作の類をそいつに任せていたからな。
ただ詳しい内情はタフ側にも伝わってなかったようだ。
・・・こいつのバックがKIYUで、能條に活動資金を流していたのだろう。
タフ創設を煽り裏御伽の殲滅を企み、もう一手で岡村を尖兵として送る。
表に裏に、随分と手の込んだ連中だ。おっさんは相当奴らに恐れられているらしい・・・ぜ」
「・・・それは本当か?川原」
本宮が目を丸くして円卓の向こうの顔を見つめる。
川原正敏という男、いつだって他者の数歩先を行く。今の話もそうだが、
そもそも最初の≪岡村が刺客である≫という情報をどこで入手していたのか。
C決勝前に先回りで裏御伽を脱退して岡村の抹殺に動いたわけだが、
対戦相手のスポーツチームでなくタフに移籍したのだって、
川原は“猿渡にスカウトされたから”と言っていたが、
全て情報を持った上の計算ずくだったのかもしれない。。
――だとしたらとんでもない諜報のプロだ。
(ありえない事だが・・・)
剛胆な大将の心に、沫のように浮かぶ言葉がある。
(ああいう男を『敵に回したくない』ってえ言うんだな。今わかったぜ・・・!!)
背中に冷汗を流す本宮。しかしふと、引っかかるものを感じた。
それを言葉にするなり・・・徐々に胸糞が悪くなってゆく。
「猿渡・・・あいつも10年前、俺たちのような惨劇に巻き込まれた。
なんとかいう女に全てを奪われたと、言っていた・・・。
そいつもKIYUの一味だとすれば・・・!
猿渡はてめえの仇にいいように利用された事になる・・・!
糞どもがァ・・・ッツ!!」
最後の方は語気を荒げ、円卓に拳を“ダン!”と下ろす本宮。
机の端にしがみついていた岡野がピョコンと浮き上がり慌てている。
(―――このクソ荷物は、とんでもねえ粗大ゴミだぜ。忌々しい)
本宮の苦々しげな表情が、事の複雑さを物語っていた。
と、しばらく押し黙っていた岡村が重い口を開く。
実直な瞳に沈痛の成分が折り重なる。
「・・・甘い誘いに乗せられちまって、冷静に考えれば普通ありえねえ条件だった。
何年も前に死んだ人間が、そう易々と生き返るわけねえんだ・・・。
簡単に甦るなら苦労してねえよな?なあ、にわのさん」
突然話を振られ、困惑しながらも何度か首を振る副将。心の中で彼に答える。
(そうか、岡村クンも大事な人をなくしているんだな。
ボクたちは本当に、似たもの同士の寄り集まりなんだね。
漫画家はしょせん一匹狼、だけど裏御伽はボクらが帰る家なんだ・・・)
にわのの視線の先で、岡村は寂しげに笑っていた。
そして敬愛する本宮の瞳に視線を移すと―――
「本宮さん。川原。にわの。岡野さん。真倉さん。澤井。
・・・俺の浅慮のせいで、あんたらを内部分裂に追い込んじまってすまない。
そして、こんな俺を普通にここへ置いてくれる事に心底感謝する。
人の心をも駒にするあいつら、特に能條とは・・・俺の拳で必ず、ケリつけてみせる」
円卓の中心に向けて、万感込めた一本拳を突き出した。
それが岡村賢二の詫び入れと≪家族≫への誓い。
川原がその言葉を聞いて含むように笑い、
能條から岡村への“伝言”を湾曲的に伝える。
「―――1〜2年はかかるかも、しれねえがな。
なあに、10年も20年も、ましてや未来永劫無理だなんて言いやしねえさ、
俺は・・・な。早く終えて俺が楽できるかは、お前さんにかかってるぜ」
「・・・へえへえ、せいぜい頑張らせてもらおうかね」
今ので気が抜けたか呆れ顔で舌を出す岡村。
静かに話を聞いていた澤井がクスクスと、かわいい声でこっそり笑った。
腕時計を覗いた本宮が顔をしかめて舌打ちする。
「チッ、試合場入りまで時間があまりねえな。
突っ込んだ話は今は無しだ、どうせ俺も記憶が一部飛んでいる。
ただこれだけは・・・言っとかねえとな」
本宮が≪やまと≫の白い制服を脱ぎ、上半身を剥き出しにする。
巨躯を支える隆々たる筋肉の至る所に、歴戦の証である古い傷痕が残っている。
・・・その中でも一際目立つ赤い縦筋の裂傷が、彼の心臓の近くで二股に分かれ、
龍の顎が如く左胸に喰らいついていた。
「・・・本宮せんせー、その傷・・・」
あの日、本宮に救われた男たちは知っている。
その左胸の赤龍は、自分たちを助けた代償に負った傷だと。
それを本宮は10年来ひとことも話そうとしなかった事を。
「・・・『爆弾』よ。
頑丈だけがとりえの俺の身体も、危なっかしい部分があるってこった。
気にした事はねえがな。奴らはこいつを恐らく知っている。
奴らが俺に何の因縁があるかは正直わからねえ。
俺の忘れた部分で、何かとんでもねえ騒動があったのかもしれねえ。
そんなものァどうでもいい―――降りかかる火の粉は払うものだ。
たとえこいつが明日爆発しようと、今日に火元を消せりゃいい」
霊波治療を終えたばかりの白い歯を見せながら、裏御伽総大将は会心の笑みを浮かべた。
――言葉に出さぬ、赤龍の牙の奥、熱く冷たい鼓動と共に彼に迫り来る光景がある
――崩壊したファミレスから遺体を担いで抜け出し、にわのと共に辿り着いたそこは
崩れる建造物
人の叫喚(さけび)
燃える大地
帯電した空気
屍山血河――――
「 こ れ が 地 獄 の 正 体 か ! 」
夥しい数の、折り重なって地面を埋め尽くす老若男女の死体。
熱光線と灼熱の烈風に煽られ、瞬く間に焼かれ始める人体の絨毯。
被害者は半数が今も行方不明と聞く。彼らがもしも、あの≪突き抜ける光≫に認められず、
または認めず己を貫いた結果、力尽き息絶えた無力な存在だとしたら・・・?
(・・・俺は爆発の前後を覚えていない。
何がどうなったか、身体が負傷したかどうかも、あまりよくわからん。
気がつくと若い男の叫び声に反応し、コンクリートの柱を背中で押し上げていた。
・・・光ごときに他者の生殺与奪の権利があるだなんて、認めねえ。
何がKIYUだ!何が爆弾だ!それがどうした、全部ぶち壊してやるぜ!!)
本宮は心の中で新たなる誓いを立てると、もう一度だけ円卓全体を見回した。
「水杯なんかやらねえ、地獄の果てまで俺について来い!!
必ずその先を見せてやる、天より高く赤龍を昇らせて見せらァ!!」
「「「 はい!!わかりました、先生ッッ!! 」」」
会議場に男達の咆哮が響く。7人は起立し本宮を中心に集まり、7つの拳を一斉に当て合う。
―――いつか訪れる≪死≫でさえもこの瞬間、彼らを分かつ事は不可能となった―――
自動運転の蟲船が、矢吹艦確認の連絡を岡野に送る。
船内に置かれた無礼ド救助隊の小型テレビが、正午の番組を伝え始めた。
*** *** *** *** *** ***
暇そうに欠伸をする少年がひとり車庫の中。
赤いカウンタックを始めとする新旧各種スーパーカーの列が彼に熱い視線を向けている。
少年はとても退屈していた。会議だという話がちっともメンバーが集まらないのだ。
宇野は多忙であちらこちら移動しているし、梅澤は寝不足らしく部屋で熟睡。
木城は岡本と何やら行っており、ゆうきや他の連中は荒れた基地の大掃除中。つまらない。
「いい天気だし、どこか遊びに行っちゃおうかなあ」
少年――キユは車のひとつに飛び乗り、エンジンをかけた。心地よい排気音が彼の全身を包んだ。
431ちょいミス
>被害者は半数が今も行方不明と聞く。彼らがもしも、あの≪突き抜ける光≫に認められず、
「隙間なく地に斃れる彼らがもしも〜」です追加(不明者と紛らわしいので)
千日戦争動いたなあ
色々書きたいぞ
(
>>416)
「こりゃ一筋縄ではいかない・・・っすね。
まあいいか、これも仕事仕事。早く終えてひとっ風呂浴びたいね」
かつてのビビリ体質はどこへやら。迫り来る驚異を前に福地は淡々と迎撃準備に入る。
ふところから、残しておいた一本の腕を取り出し・・・
「えいっ(ペキィ)」指5本をもいで手の平で覆えるサイズにする。
“ゴミを木に変える能力”はこのようにしないと発現しない面倒なものだ。
単一の能力で闘えと言われたからには、とことん工夫するしかない。
福地の発想力や能力応用センスが問われる所だが──
「行くっすよー」 握り込まれた福地の両拳が光を帯びる───
5本のうねる木が手の平から生え、福地の前に横並びで地に根を下ろす。
それは天を覆うように一斉に100mクラスの巨木となるが、
瞬く間に周囲の炎や燃える液体の洗礼を浴びて真っ赤に燃え出した。
エリア88に攻めかかる怪物たちに思考能力があるのなら考えたろう、
あの白い髪と瞳の男は大馬鹿だと ──普通の感覚ならば───
“バチバチィッ!! ビキビキビキィ!!” 焼けた大木からはじけて飛び出す炎弾───!!
全方向間断なくまき散らかされる謎の砲弾で、怪物たちの装甲にヒビが入る。
「通常より巨大サイズにしてあるっすよー。
≪焼けた栗の実爆弾≫の味はどうっすか?生焼けっすけど」
福地自身のエネルギーで非常識なサイズになった栗は人間の頭程もある。
それが周囲の破壊もお構い無しに怪物たちを迎撃している。
傍目は滑稽にしか見えないのだが・・・。
「ここからが本番っす」福地は死体の腕をちぎって複数個の『ゴミ』を形成する。
手から放った3本の木は、2本が福地の足首より下にまとわりつき、
ジャンピングシューズになった。使用時に足の裏からバネが飛び出す特殊仕様だ。
そして1本は巨大な木製バットのような棍棒と化し──
「ファイヤー栗ボール千本ノック!!」
“カキーン!!コキーン!!”軽快な音と共に黒焦げの栗砲弾が黒船に生えた足へぶっ飛んでいった。
そういや今日は植木の連載終わったな。
福地乙。
>>397 「姐さん!!」
「!!」
光学迷彩を解いたレンズ目の巨漢に、荒川は拿捕された。
驚愕する片倉と伊藤が叫ぶ。
「………ッッ」
人外の腕力で吊り上げられ、首を絞めあげられて荒川は呼吸もできない。
一方の巨漢は、極めて冷静な面持ちのまま、油断なく片倉と伊藤を睥睨している。
「まるで何もない空間から出現した……この男は一体?」
いぶかしむ伊藤はしかし、戦闘体勢を整えている。
それを横目に、片倉は焦った。
伊藤はおそらく、荒川が足手纏いと判断すれば、即座に切り捨てるだろう。
なにしろ、成り行きで行動を共にしているが、本来は敵同士の間柄。
倒す動機はあっても、助ける道理はない。
しかし、目の前の巨漢の所作には、呆れるくらいに隙がなかった。
攻めあぐねている間にも、荒川の顔は血の気を失っていく。
が、そのとき。
バチッ!
ボ ッ ゴ オ !!
「!!」
そう、荒川にはコレがあった。
指を鳴らすという最小限の動きで、最大の威力を発揮する『焔』の錬成。
片倉達に注意がいっていた巨漢には、予想外の攻撃であった。
大造りな無表情の顔面に、焔の塊が叩きつけられ、至近距離で爆発した。
荒川と巨漢は、弾かれるように吹っ飛んだ。
焔を放った本人は爆風におされて壁に激突し、巨漢は怯んだように片膝をついた。
「姐さん、大事ないか!?」
「く…かは…ごほ、ごほっ! 私の事はいいわ、それより今よ!」
気道を確保し、激しく咳き込みながら、荒川が言う。
「しゃっ!!」
荒川の無事を確認した片倉が、すかさず4丁の銃を周囲の空中に踊らせた。
―――――― 豪 速 !!
曲撃ちのように、4丁の銃が精密操作され、高速で銃弾を吐き出していく。
全弾、命中し、巨漢はあっけなく吹っ飛ばされ、壁に特大の穴を掘りあげた。
しかし――
「……終わりか?」
瓦礫を押し退け、巨漢は何事もなかったように泰然として立ち上がり、埃を払った。
その人外のタフネスっぷりに、三人の顔が強張る。
「……何喰ったら、そんな丈夫な身体に育つんじゃい。……何モンや、オッさん」
引き攣った笑みを浮かべながら、片倉が訊く。
レンズ目の男は、熱のこもらない乾いた機械音声で名のった。
「特機隊隊長―――押井守だ」
そのとき、三人の背筋を走った戦慄を表現する、如何なる方法やあらん。
「なんやてー!!」
「あの伝説の……三頭犬(ケルベロス)の創設者……」
「そして、『あちらの世界』では、大友克洋に並ぶビッグネーム……」
呻きにも似た声が、三者三様に漏れた。
「…でえ、そんな大物がなして吸血鬼どもとツルんどるんや」
己を鼓舞するように、心中の動揺を抑えて片倉が訊く。
「特に意味はない……俺に戦場を与えてくれるモノならば誰でもいい」
滔々と、冷たい機械音声が響く。
「俺は死に場所を探している……」
無感情なだけに、ゾッとするような響きをもつ言葉だった。
「もっとも今の俺が『生きている』と言えるかどうかは疑問だがな」
脳の一部以外、全身のほとんどを義体(サイボーグ)化した巨漢は、自嘲するでもなく呟いた。
そして、構えをとる。軍隊格闘技のようだ。それもとてつもない――
荒川が錬成の準備をし、伊藤が両手を顔の前にかざす。
しかし、彼女らを押し退けるように、片倉が前に進みでた。
「姐さんら、ここは俺に任せてもらうで」
「片倉――!?」
『さん』『君』という語尾の違いをのぞき、異口同音に二人は叫んだ。
「せやさかい、内藤様――いや……」
笑みの形に吊り上がった唇から獰猛な犬歯をちらりとのぞかせ、
「呑気に寝くさっとる『内藤のアホ』連れて先に行けえ」
口調は軽いが、有無を言わさぬ迫力が、そこにはあった。
片倉の背中が、百万の言葉よりも明確に、その覚悟を伝えてくる。
「はよ行けえ! こないなところでグズグズしとったら、全員海のど真ん中で丸焼けやで!?」
しばし逡巡していた二人は、やがて無言で頷くと、一瞬で踵を返し、その場から脱兎のごとく離脱した。
それを押井は追わない。立ちはだかる片倉が、追わせなかった。
「さあ、これで二人っきりやな。楽しもうやないけ、オッさん」
「自ら殿(しんがり)を務め、仲間を逃がしたか。その心意気に免じて、名を訊いておこうか」
あくまで氷の姿勢を崩さない押井に対し、片倉の闘気は大気を炙るように燃え立った。
束ねた長髪がオーラに圧されて波打ち、片目が獰猛な赤光を帯びる。
「片倉『狼組』政憲……アンタを終わらせる男や。よろしゅう」
燃え上がる鋼鉄の艦の中で、若き狼と猟犬の王が対峙した。
狼組キター
片倉またあっさり死ぬなよ
片倉カッコエエ!
ヤマト編の主役はこいつか?
抽選会までもうわずか。
つかの間の平穏な空気が流れる中、
無礼ドのある場所でひっそりと事態は進行していた。
独房……
ここには、山本賢治と共に無礼ドを襲い、佐渡川にあえなく倒された西川秀明が監禁されている。
核シェルターのような分厚い扉の前では、無礼ドのアシスタントが二人、交代制で見張りにあたっている。
交代の時間が迫り、疲労のピークにさしかかった見張りの片方が、大きく欠伸した。
涙の浮いた目尻をこすっていると、ぼやけた視界にいつの間にか黒い人影が映っていた。
一瞬、交代かと思ったが、目の前の人物の様子を見てすぐに思い直した。
黒ずくめのライダースーツを着ていた。
顔は黒いフルフェイスヘルメットで覆われていて見えないが、
くっきりと浮き出た身体のラインから女性であることが分かる。
見張りたちが誰何の声をあげようとした瞬間、ライダースーツの女の両手が眩い光を放った。
いきなり網膜を叩いた発光が収まると、ライダースーツの女の両手には、まさしく魔法のごとくに拳銃が握られていた。
デリンジャーによく似た小型の拳銃だが、シリンダー(銃倉)にあたる部分がプラネタリウムの映写機のようなデザインになっているのが特徴的だった。
呆気にとられていた看守たちだったが、相手の銃口が自分たちの眉間をポイントした瞬間に我に帰っていた。
「て、敵襲だ!!」
見張りたちの叫びは、銃声にかき消された。
「……!」
最初にその異変に気付いたのは、医務室にいた樋口たちだった。
樋口が乾いた銃声に顔をあげるよりも早く、樋口に介抱されていた三浦が跳ね起きていた。
「きゃっ、三浦さん!?」
小さく驚いた樋口の横で、三浦は全身の胞子を払い落し、頭に巻いていた包帯を取り去る。
胞子の効能か、全身の負傷はあらかた治癒し、なぜかモヒカンにされた筈の髪も元通り生え揃っていた。
「三浦さん、今の音…!」
樋口が言うか早いか、三浦は枕元にたてかけてあった大剣を掴み、疾風のごとく駆け出していた。
「ここに奴が捕まっているのか……師匠の命令とはいえ、いらぬ世話をやかせてくれる」
見張りの二人を瞬く間に片付けたライダースーツの女は愚痴を吐き捨てると、独房の扉を破るべく銃口を向ける。
しかし、その直前、女が素早く跳躍した。
一瞬遅れて、女が立っていた場所に、数本の矢が突き立つ。
着地ざまに女が振り向くと、その視線の先に、左手の義手に装着したボウガンをこちらに向けて構えている鎧姿の巨漢が立っていた。
巨漢――三浦は、独房の側に倒れている頭部のない二つの死体にちらりと視線をやったのち、ライダースーツの女を射るように睨む。
「……どう見ても、味方には見えねえよな。誰の差し金だ?」
返答は銃撃によって為された。
銃口が火花を噴くのと、三浦が鉄塊のごとき大剣が引き抜かれたのは同時だ。
目にも止まらぬ銃弾の雨を、黒い竜巻がはじきとばす。
三浦は剣を振るった遠心力をそのままに、大きく旋回し、激しく地を蹴る。
黒いギロチンを振り上げて、巨体が宙を踊った。
「!!」
凄絶な袈裟斬りを、女は間一髪、地を這うように身を伏せてかわした。
そのままスライディングの要領で廊下を滑り、踏み込んできた三浦と位置を入れ替わる。
一拍遅れて、通路の壁に斜線が走り、そこを境に切断された壁が地響きをたてた。
その断面が、ゾッとするような滑らかさと、焼けるような熱をもっているのを見て、ライダースーツの女がヘルメット越しに呻きをもらす。
すると、それが合図であったかのように、フルフェイスヘルメットが真っ二つに割れ落ちた。
はじけとんだヘルメットの下から、長い髪があふれ、端正な顔が現れる。
「……三浦建太郎か。聞きしに勝る、凄まじい剛剣だな。なら、今度は!」
叫んだ瞬間、女の足元から蒼い光の柱がたちのぼり、
「本気でいかせてもらう!!」
女が長髪を踊らせ、蒼い光の中を舞うように旋回する。
『 デ ュ ラ ン !!! 』
刹那、蒼い光が渦を巻くと巨大な氷塊が出現。
その内側から生まれ出たのは、背中に二門の大砲を備えた、白銀の巨狼だった。
「オオオオオオオオンン!!」
デュランと呼ばれた鋼鉄の巨狼は、主の召喚に応じて遠雷のような咆哮をほとばしらせた。
その圧力を前に、三浦の表情がにわかに緊張を帯びる。
「バケモノを召喚するか……それがお前の本当の能力か?」
ドラゴン殺しを正眼に構えたまま、三浦が呟く。
「バケモノなどと言ってもらいたくないな――これでも…私の子だぞ?」
ライダースーツの女は心外そうに言う。
「このコの名は『デュラン』。私の『チャイルド』だ」
「……チャイルド?」
「“Hi”ghly-advanced
“M”aterialising
“E”quipment
『高物質化能力――――HiME(ヒメ)』
その力によって具現化されたものだ」
「分かるぜ……この力、ただもんじゃない。誰だ、お前……?」
「山本賢治の一番弟子――【佐藤健悦】。お前達に捕まったマヌケを引き取りにきた」
言葉が硬質の刃となって交換される。
互いの肌に感じる空気が冷たいのは、召喚された冷気のせいだけではあるまい。
「デュラン、GO!!」
佐藤が命令を下した瞬間、デュランと呼ばれた巨狼が疾走した。
同時に、三浦も足裏を爆発させ、黒い疾風と化している。
巨大な鋼と、白銀の巨狼が、互いの間合いの中心で激突した。
またタイムリーといえばタイムリーなネタを…
しかし、こんな新キャラポンポン出して大丈夫なのかと、他人事ながら少し心配
モヒカン治った(笑)
新キャラは敵女性か、はてさてどうなるやら
とりあえず洗礼として脱がされます(笑
(
>>205 >>221 >>351 >>443へ続く)
日も高く昇り、安西が村枝と屋上テラスでぎこちない再会をしている頃。
正午には矢吹艦に戻ろうという話をつけ、やっと一息つくカムイだが。
「いやあ、私がちょっぴり浦島ってる間にいつの間にか、
担当の目を忍ばずに酒が飲めるえらい時代になっちまったんだねえ。
“忍”は心に刃(カミソリ)だよサックリ切っちまったよハハハン」
「何酔っ払ったようなセリフを・・・って亜美どっから酒出してきたー!!」
柴田亜美がカムイの寝室にワイン瓶を持ち込みラッパ呑みしている。
「なんだいカムイー、欲しいんなら女王様とお呼び」
「俺たちはこれから試合なんだよ!土下座されたって飲むか」
ご立腹の勇者様がぷんすかしながら窓辺に立つと、
そこには丸窓ガラスにべったりと顔をくっつけている金髪チビ体型雷句。
べんっ(カムイが窓をぶっ叩く音) 「ヌオ!? ぬぁ〜〜〜〜〜〜〜・・・…… 」 (バシャーン)
―――しばらく後、海から自力で帰還した雷句が、
今度は普通に下部の出入り口から魚を抱えて無礼ドに戻ってきた。
「ひっひどいのだカムイ殿!思わずブリを獲ってきてしまったのだ!」
「ここの近海ってブリ獲れるのか?ともかく無事でよかったな。
ああ、あっちで1本2万もするワインをガブ飲みしてるろくでなしは気にするな」
「わかったのだ!ところでゆで殿を知らぬか?伝言を頼まれたのだが」
「・・・今はここにはいないな。まあ、あれだ。
決勝会場で逢えるだろう。気にするな。メロン見つかったのか?」
微妙にはぐらかすカムイには気づかない雷句は。
「ダメなのだ!男の約束なのだ、ゆで殿を捜さねばならんのだー!!」
ムキになって暴れ出す雷句。このままでは閣下モードになりかねない。
仕方ないのでカムイは妥協案で今から矢吹艦(試合会場)に向かう事にした。おつかれ。
浮き上がる戦艦無礼ド。ブリを美味そうにかじる雷句の横でため息カムイ。
「そういえば西川がやばいらしいな。見張りの交代がてら様子を見に行くか」
復活・黒化した同胞を気遣う男。空を舞う白き艦は間もなく、再度災厄に見舞われる事となる―――。
>>443 鋼と鋼の噛み合う音がこだました。
大剣を持つ三浦の腕が、血管を浮き立たせるほどに緊張し、震えている。
デュランと呼ばれた巨狼の鋼鉄の牙が、ドラゴン殺しにより一撃を食い止めているのだ。
「〜〜ッッ」
歯を噛み締めて持ち手に力を込める三浦だが、デュランが首を振り回した瞬間、物凄い勢いでブン投げられた。
一瞬、床に背中を強かに打ちつけられるが、即座に転がりながら真横に飛ぶ。
「デュラン!! ロード=クロームカートリッジ!!」
佐藤の合図で、デュランの背中の大砲に弾丸が装填される。
「てェ!!!」
2門の砲口が火を吹いた。
真横に走る三浦を追い掛けて、火柱が連続して屹立する。
敵の並々ならぬ火力に、三浦が舌を打つ。
「三浦さん!!」
そのとき、悲鳴まじりの声が響いた。
樋口が追い掛けてきてしまったのだ。
「馬鹿ヤロウ、来るんじゃねェ!!」
三浦が慌てて叫ぶ。その隙をついて、デュランが飛びかかってくる。
咄嗟に大剣を払い上げて迎撃するが、バランスを崩してしまう。
そこへ追撃の体当たりを受け、吹っ飛んで廊下を転がった。
起き上がろうとした瞬間、冷たい銃口を眉間に押し当てられた。
「これで終わりだ」
王手をとった佐藤が、冷たく宣言する。
「ちいっ!」
しかし次の瞬間、三浦の手が真上に伸び、佐藤の長く揺れる髪を掴みとった。
「なっ」
意表をつかれて驚く佐藤を、そのまま髪を引っ張って引きずり倒し、素早く飛び退る三浦。
床に転がっていたドラゴン殺しを再び拾い上げ、構えながらにやりと笑う。
「女の長い髪ってのは、戦場には不向きだぜ」
長髪が数本抜け落ち、三浦の揶揄を受けて、佐藤の顔が怒りに紅潮する。
「デュラン!! ロード=シルバーカートリッジ!!」
主人の叫びにしたがい、デュランの大砲にさっきとは別種の弾丸が装填される。
「下がれ!」
それを見た三浦が樋口の楯になるようにして立ちはだかりながら、避難を促す。
バツの悪そうな顔のまま樋口が後じさった瞬間、
「てェ!!!」
号砲一発、砲弾が空気を凍らせた。
比喩ではない、文字通りの意味だ。
新たに装填された弾丸は、凍気を発生させる性質を帯びていたのである。
「ちいっ!!」
床や壁、天井を凍らせながら進んでくる凍気の奔流を前に、三浦が歯噛みした。
自分が避けては、樋口を巻き込んでしまう。
仕方なく、凍気を迎え撃つべく、義手砲をセットした、そのとき!!
「 ディオエムル・シュドルク !!! 」
第三者の叫びが轟き、吹き荒ぶ凍気が一瞬で霧散した。
それをなしたものの正体は、荒れ狂う炎を身にまといながら、高速で疾走する何者かだった。
一角獣のような角を生やした炎の獣が、その勢いのままデュランを吹っ飛ばす!!
「デュラン!?」
新手の出現に、佐藤が動揺した叫びをあげた。
一方、乱入者が炎の纏を解くと、その下から小柄な影が現れる。
「リック君!!」
樋口が喜びの声で、その名を呼ぶ。
「これ以上、この艦で好きにはさせぬ!!」
途中までカムイと一緒に歩いていたが、異常を感じ、いち早く戦場に辿りついた雷句であった。
「くっ、新手か! てェ!!」
舌打ちする佐藤が、第2射を放った。
再び、冷気の嵐が雷句に襲いかかる。
「ザグルゼム!!」
真正面から迫りくる奔流に向かって、雷句が呪文を唱えた。
雷句の口から発射されたプラズマ球が、冷気の嵐と衝突し、帯電したように輝く。
しかし、凍気の勢いには全く影響がなく、雷句の目前までそれは迫った。
「ザケルガ!!」
凍気が激突する寸前、雷句の口からレーザー状の雷が発射された。
あと一歩で、雷句を凍結せしめたはずの凍気は、次の一刹那、『ザグルゼム』によって強化された『ザケルガ』により、またしても雲散霧消させられた。
「――なにっ!?」
凍気を打ち消してもまだ止まらない威力は、デュランを直撃し、さらに背後の廊下までも粉砕する。
かろうじて横っ跳びでかわした佐藤だが、頭上に殺気を感じ、視線を真上に跳ね上げる。
――すでに眼光が走っていた。
立ち上がる暇も与えられずに床をゴロゴロと転がると、一瞬前の位置にギロチンのごとく肉厚の刃が叩きつけられた。
打撃に等しい剣風が佐藤のライダースーツの胸元を引き裂き、刃自身は壁と床をまとめて切り裂いた。
三浦の剣先がこちらを向くのを見て、佐藤の背中を冷たいものが走る。
「鷹の団団長・三浦建太郎と、サンデーのエース・雷句誠。この2人を同時に相手しては分が悪すぎるな……」
なんとか隙をつき、当初の目的を果たさねばならないと視線を独房の方に向けて、佐藤は目を見張った。
そこには、先程の雷句の一撃の余波により扉を粉々に破られた独房が、闇への入り口をぽっかりと開けていた。
―――ボクは…無礼ドを襲い……佐渡川というコに……敗れた……
―――気が遠くなるなか…ボクは…ソレを思い出してしまった……
―――ボクが……
―――殺し屋でなかった自分を……
―――そうか…
―――ボクは………
雷句を先行させたカムイは、轟音はじける現場へ急行していた。
西川を、連中がこうも迅速に取りかえしにくるとは思っていなかった。
油断していて気を抜いていた自分に、つくづく腹が立つ。
いくつかの角を曲がったとき、テラスに通じる階段を、安西と村枝の2人が降りてきた。
騒ぎを聞いて駆け付けてきたのだろう。
「何の騒ぎだ、カムイ!」
「敵襲だ。十中八九、西川を取り戻しにきたんだろう」
「西川って、あのイカレ野郎か!? なんであんな奴がお前らの仲間なんだよ!?」
かつて、金田一体内で起こった、同人軍艦との決戦。その際に、安西と雷句は、敵勢力についた西川と戦っているのだ。
「アイツは……昔はあんな男ではなかった。だが…ある時を境に、奴は変わった……」
「何があったんだ…?」
「分からん。ただ……奴は殺したらしい」
――― 自 分 の 妻 と 子 を 殺 し た ん だ と ……
暗がりの奥から、その男は幽鬼のように現れた。
血にまみれ、やつれきった顔。ガラス玉のように輝きを失った虚ろな目。燃えるような銀だった髪は、今は力なく顔にはりついて黒くなっている。
「お、お主!!」
かつて自分が葬ったはずの男の生存に驚愕する雷句。
同じ白泉社に在籍していた事もある西川だが、三浦は彼を知らない。
しかし、その名だけは闇に轟いている。その名を、三浦はまもなく思い出す事になる。
西川の、気持ち悪いほどの無表情のなかで、乾いた血の張りついた唇だけが、無気味に蠢いていた。
――― はやく… コロサナキャ……
「そう…あの時、西川は言った。
『僕は大切な家族を殺した』
『愛した妻を』
『いとおしい我が子を』
『 だ か ら 人 を 殺 す 』 」
「なんだそりゃ? 言ってる意味がさっぱり分かんねーぞ?」
「ああ…俺も最初は分からなかった…。だが、話を聞いているうちに俺は理解した」
そこで息をひとつつき、カムイは言った。
「西川秀明は、家族を殺した事実を忘れるために、人を殺すと……」
「あのね…ボクは…最愛の妻と子供を殺した…ああ…殺してしまったんだ
…なぜボクがそんな事をしたのか…わからない、
けど、殺したのは事実なんだ…
辛いよ…苦しいよ…何故…あああ…どうして……
佐渡川さんに叩きのめされて…ボクはソレを思い出してしまった……
ああ〜〜〜何故…ひどいよ……佐渡川さん……苦しいよ…何故……何故ボクがこんな目に……」
虚ろな目で、壊れたレコードのように何度も何度も、周囲の者には意味不明な言葉を繰り返す。
殺気も闘気も感じさせない、その有り様は、三浦や雷句や佐藤に強烈な怖気を感じさせた。
そこへ、騒ぎを聞き付けた無礼ド乗り組み員達がやってきた。
全員が銃で武装し、さらにガーディアンロボットを従えている。
「そこまでだ、西川!! さっさと独房へ戻れ! でなければ射殺する!!」
銃を構えたひとりが、そう言い放つ。
「やめろ! ソイツに手を出すんじゃねえ!!」
三浦が大声で忠告するが、それはあまりにも遅きに失した。
「………忘れなきゃ、真っ白に……こんな現実(いま)……」
「え?」
瞬きした瞬間に、銃を構えていた一人はその親指を捕られていた。
―――忘れなきゃ……
親指と肘関節を同時に極められ、ヘシ折られた。
―――スベテヲ忘レナキャ
「いきぎゃいひゃあああ!!」
声にならない悲鳴がほとばしる。
―――ポッカリ…真っ白に…
その者の頭部が爆ぜた。
尋常でない腕力で壁に叩きつけられ、脳漿が飛び散った。
陰惨極まる殺人を目の当たりにし、兵士達に動揺が走る。
喧噪のなか、西川は呟き続ける。
「はあ…すっとする…人を殺すと忘れられる…
家族を殺してしまったと言う、消す事ができない事実と現実が…少しずつ…」
寝ていた黒髪が逆立ち、それに呼応して殺気がふくれあがっていく。
「いいぞ…」
鬼気が増大していく。
「さあ…ジャンジャン殺すぞう」
戦慄が風となって吹き荒びはじめる。
―――ボクは…家族を殺した…だから……
西川の顔が変わっていく。
貌が変わっていく。
――― ボ ク は 人 間 を 殺 す
「現実逃避…」
カムイの話を黙って聞いていた村枝が言う。
「そう。家族を殺した、その罪の重さ…苦痛から逃れるため…
現実を忘れ続けるため…西川は人を殺す…殺し続ける
西川が今の西川であるために、殺し屋じゃなかった自分(むかし)を消し去るために……」
安西が大量の唾を飲み込む。
「殺人と言う行為…その無慈悲な残虐性の中に…彼は現実の苦しみをも凌駕する狂気の快楽を見つけたのさ…
殺しは奴のリセットボタン…だから西川は殺しを求め……俺も大会に勝つためにリスクを承知で奴を求めた…
『銀髪』の蜘蛛は…これからも人を殺し続けるだろう……」
そこまで話し終えたとき、カムイ達は遂に現場へ到着した。
たちまち、むせ返るような血臭と死臭が、鼻腔を刺激する。
――そこは地獄だった。
ある者は、顔をお面のように裂かれてのっぺらぼうになり。
ある者は、胴体を一文字に切り裂かれて内臓を残らず吐き出し。
ある者は、四肢を細切れにされて達磨になったまま苦しみぬいて死んでいった。
鋼鉄のガーディアンロボットまで、一機残らず輪切りにされている。
三浦も、雷句も、樋口も、佐藤も、一瞬で起こった殺戮劇に呆然としている。
死線と視線の中央に、奴は立っていた。
燃えるような『銀髪』を逆立たせ、左目の上に禍々しい蜘蛛の刺青を浮かばせている。
その手は、血袋を素手でかき混ぜたように、ドロドロに赤く染まっていた。
「な…なんて野郎だ! 何の武器も持たないでこんな……!」
「……アイツが武器を取りあげたくらいで何とかなる奴なら、危険を冒してまで連れてきたりはしない……
たとえ素手だろうとも、奴の爪は最低半径5メートル以内のあらゆるものを切断してのける!!」
殺戮の悦楽に染まりきり、狂気の色を取り戻した西川。
その手には、最後に生き残った女兵士が掴まれている(艦長の趣味で無礼ドのクルーには女性乗り組み員しかいない)。
「あと一人くらい…殺せば…忘れられる…これですべて……」
―――リセットだ…
「やめろおおおおッッ!!」
安西が叫んだ瞬間、西川の爪が女性兵士の喉笛にもぐりこんだ。
そのまま、魚の『ひらき』のようにして、真っ二つになる。
あらゆる臓器が飛び出し、女性兵士は悲鳴ひとつあげる暇もなく絶命した。
並みいる兵たちの真只中で、華麗にして酸鼻を極める殺戮劇を一瞬にしてやってのけた銀髪の蜘蛛。
その唇が、こう紡がれた。
――― リ セ ッ ト 完 了 ―――
西川…コエエエエエエ…
福地のサイコ対決をして欲しい。
(´Д⊂ おまえさんはそんな男だったねそういえば
>>445 「おや…ここは何処かな?」
血の雨を存分に浴び、死にまみれた空気を目一杯吸い込んだ、卑しい銀髪の蜘蛛。
完全復活を遂げた稀代の殺人者の第一声は、実に恍けたものだった。
「これはこれは、皆さんお揃いで」
今頃気付いたとでも言うように、カムイ達の方を向いて微笑する。
「西川……貴様を連れてきたのは俺の間違いだった」
「そう……君の間違いだよ、カムイ。君が、彼女たちを殺したんだ」
いやらしく笑いながら、西川が言った。
「いや…違うな。彼女たちはボクが殺したんだ。人を殺したときだけ…ボクは絶頂(イク)ことができるからね。
ああ… ボ ク は ナ ン テ 浅 マ シ イ 」
カムイの全身から、溢れんばかりの怒気が沸き立った。
「……イイね。いつも冷静な君がそこまで感情を剥き出しにするなんて…素敵だ。それだけで勃起してしまうよ」
西川は完全に自分を取り戻していた。狂気を大前提とした、危うさも計算高さの両方を備えている。
「しかし…名残惜しいが、今日のところは失礼するよ。試合前の君たちに、あまり激しい運動をさせてもイケないし…ね」
そう呟いた瞬間、西川とカムイ達を隔てるように、武骨な鋼が出現した。
「あ…あれは!!」
驚く面々の前で、その鋼が西川の全身を覆っていく。
旧世紀の鎧騎士。
それは大雑把に言えばそんな印象であった。頭からつま先までを覆われたその姿見は、頑丈な鋼板鎧に身を固め、騎馬に乗って闘う騎士を観る者に連想させる。
ただし子細に見れば――鋼以外にも樹脂や革布を多様したその黒い装束は、鋼板鎧よりもずっと細身で、人間の輪郭に近い。
実用性――特に動き易さを重視したためか、その外見は鋭く洗練されており、旧来の甲冑とは、どこか一線を画していた。
装飾性は皆無。あちこちに付いた螺旋や固定金具が、妥協なき実用品としての無骨さと凄味を主張している。
モールド。
そう呼ばれる特殊な――極めて特殊な作業服。
「戦術魔法士(タクティカル・ソーサリスト)……その力を使うか……」
「行くよ……兄弟」
本物の騎士であればその手に携える武器は剣か槍が相場なのだが……西川の右手に保持されていたのは、長大な機械であった。
操桿や幾つもの可動部品が剥き出しで付属しているその外見は、
チェーンソウのような、ある種の工作機械に通じる無骨さがあったが――1番印象として近いのは長銃身の機関銃や対戦車ライフル、あるいは火炎放射器であろう。
いかなる形態であれ、武器として造られた道具に備わる威圧感が、確かにその品にはあった。
だがその機械には銃弾や炎を放つべき銃口がない。かといって打ったり突いたりといった格闘戦用の武器にしては形状が複雑に過ぎる。
スタッフ。
戦術魔法士が魔法を射つための補助器具。
魔法を唱える術を省き、撃発音声(トリガーボイス)で発動する杖…それがスタッフである。
「最後は派手に決めようか!?」
西川が両手でスタッフを構える。
どこか気怠く、しかし、けれん味たっぷりのその仕種は、闘う騎士と言うよりも…まるで優雅に楽器を奏でる演奏家を思わせた。
「我・法(のり)を破り・理(ことわり)を越え・破壊の意志をここに示す者なり――」
補助呪文(ブースター・スペル)詠唱。
使用頻度の高い基礎級呪文(ベーシック・スペル)はスタッフの操作と撃発音声だけで発動する。魔法士の詠唱は必要ない。つまり、わざわざ補助呪文を上乗せするという事は――
「あいつ…まさか…」
「……ベルータ・エイム・クイファ・クイファ! <マグナ・ブラスト>――」
軋む鋼。うなるスタッフ。<魔法・発動>の臨界点へ―――
「まずい、全員逃げ――いや、伏せろ!」
カムイが叫ぶと、三浦が樋口に覆い被さる。
スタッフの先の虚空に紅い輪が発生した。
紅い光で描かれた二重の輪。二つの同心円はそれぞれ右と左に緩く回転しながら、複雑な幾何学模様をその内側に描き出す。
魔法陣(エイリアス)。そう呼ばれているもの。
その正体は事象誘導機関の影――とでも言うべきもの――だ。
補助呪文を追加され、超高率駆動中の事象誘導機関。その虚像が事象界面に投影され、紅い光となって発現しているのである。
「 顕(イグジスト)ッッッ!!!! 」
その瞬間――不可視の何かがカムイ達に向けて虚空をほとばしった。
轟音。
閃光が辺りの景色を真っ白に塗りつぶす。
無礼ドの、いやその付近にまで迫っていた矢吹艦の窓ガラスが、衝撃で砕け散る。
「竜之炎伍式・円!!」
「マ・セシルド!!」
「フバーハ!!」
安西や雷句、カムイの展開したそれぞれの防御壁の上を、爆風が凄まじい勢いで嬲っていく。
爆心地となった無礼ドの一角では、隔壁を突き破り、天にも届かんばかりの巨大な火柱が、轟々と噴き上がっていた。
「せ…戦艦の内部で、なんて術を使いやがる……!!」
樋口を身体の下に庇ったまま、三浦が唸るように言う。
咄嗟に展開された三人分の防御壁によって、かろうじて直撃を免れた三浦たちだったが、全員が少なからぬダメージを被っていた。
無論、転がっていた死体は肉片どころか細胞の一片までも焼き滅ぼされている。
なにしろ、廊下そのものが、限りなく全壊に近い状態なのだ。
<爆破(ブラスト)>の基礎呪文書式を補助呪文で増幅した<第二の業火>――<マグナ・ブラスト>。
元々は、対装甲艦艇専用の魔法である。
「こんな――これ程の……」
呆然とつぶやく樋口。
強大な破壊力もさる事ながら、こんな場所で構わずにこれ程の大規模魔法を使う神経とは――
「くっ……奴はどこだ!?」
火傷と爆風に顔をしかめながら、カムイが西川の姿を探す。そのとき――
「やあ、見事見事。この魔法を喰らって、その程度の被害で済むなんて大したものだ」
からかうような声は、外部から聞こえた。
声の方向を見れば、無礼ドの外――空中に浮かんだ『扉』の淵で、鎧を帯びた魔法戦士と、ライダースーツの女が立って、こちらを見下ろしている。
「さっき言った通り、今日はここで退散させてもらうよ。せっかく迎えに来てくれた彼女に迷惑かけるわけにもいかないしね」
「もう十分かかっているぞ、この変態め」
横で毒づく佐藤の声が聞こえているか、いないか。
「西川ッッ!!」
「カムイ、そんなに慌てなくても、君たちが暇になったらまた遊びに来るよ。
ボクを一度、『殺してくれた』君たちにも、あらためてお礼をしたいしね」
鎧越しの殺気は、安西と雷句にも向けられていた。
それに気付いた2人が、ものすごい目で睨みを返す。
「三浦建太郎……だったな。私は、お前が気に入ったぞ。是非、私の『奴隷クン』にしたい」
佐藤が、わずかに頬を紅潮させながら、三浦に流し目を送る。
三浦は、うんざりした顔で、彼女の顔を見上げていた。
「今度出会うときは、その太くて黒くて硬いモノを、私の鍵穴にドクドクぶちこんでくれよ?」
聞きようによってはひどく卑猥な台詞に、三浦は顔をしかめ、樋口は赤らめた。
「じゃ、行こうか」
いまだに激しい火災の続く無礼ドに背を向け、2人は扉の向こうに消えていく。
「西川ァァァァァッッッ!!!」
カムイの怒号がこだまする。
2人が消え去った後には、正午を告げる日射しが空を照らすのみであった。
西川が去る直前、樋口の網膜には、彼の纏うその無骨な『人型(モールド)』がひどく異様なものとして焼きついた。
無骨な装甲――その鋼の内側に垣間見えるのは、装甲と同じく黒い衣と、包帯のようにそれに巻き付く幾条ものベルト、そしてそれらを留める金具だ。
一見、それは性的倒錯者――被虐趣味者(マゾヒスト)のまとう衣装を連想させる。
『ストレイト・ジャケット』
その言葉の由来通り、そこには押し込められた狂暴さが渦を巻いている。
御しきれぬ凶悪さ、目指すべき方向を持たずただ荒れ狂うだけの力の塊。それをかろうじて人という形の布の中に詰め込み、更に鋼鉄の殻を被せて体裁を整えているだけ――そんな印象があった。
無骨な鎧の内側に隠された爆発的な脅威。
人の手に余る力を司る者。
西川秀明。
去る直前、彼はどんな表情をしているのだろうか。
その顔を覆い隠す鋼鉄の仮面に……彼女は声もなく恐怖した。
←TO BE CONTINUED
すっかりワリ食った佐藤乙
これは先日の読みきりネタかな?いやあ黒い黒いGJ
464 :
作者の都合により名無しです:04/10/18 00:39:09 ID:EVqEUGw1
西川節全開w
しかし、ストジャの能力使えるとなると西川の強さがエライことになるな
あの世界の魔法って、物理法則を完全制御する超強力なシロモノだし
いやタクティカルソーサラーなら回数制限が無くてもそこらの漫画に結構ありふれてるレベルなのでふつー。
問題は魔族。
あれは魔力圏に存在するものを物理法則含め自在に操作できるからタチが悪すぎる。
このスレでは 設定<凄み だし。
それに魔力圏が反応するより速く攻撃できる奴も反応させずに攻撃できる
奴もいるし無問題だろ。
そこらへんは皆分かってるだろ。
特化型の神殺しや月姫ですら、結局ああいう扱いになったし。
ライトノベル系原作漫画とかの作者や原作者が登場しないのもその辺が原因だろうな
設定+能力がデタラメなの多いし
まあ実際出されても違和感あるしそれでいいと思うが
上遠野とか乙一とか・・・
乙くーん(´Д⊂
(
>>461)
艦の一部から黒煙を吐きながら、戦艦無礼ドは最寄の空港―――
すぐ傍にあった矢吹艦Cブロック空港に辿り着いた。
これは幸運と言ってよいだろう。
Aブロック空港は別府市浮上騒ぎで半日経った今も厳戒態勢を取っており、
汚物とメタンガスにまみれ、とどめに“原因不明の光爆弾”が、
破裂したとされ収拾のつかないBブロックは論外。
Dブロックは警察署爆破事件も落ち着いたが、ここからは少々遠い。
やれやれといった体で滑走路に着陸し、すぐさま消防車の世話になった。
ちなみにカムイは矢吹艦のガラス窓損壊の件で空港側から注意を受け、
残り少ない休憩時間をフイにしたのは言うまでもない。
*** *** *** *** ***
矢吹艦最大トーナメント。
超弩級の巨大飛空挺・矢吹艦で約2週間開催される予定のビッグイベント。
数年前から小規模の大会は行われていたとも噂されるが、
衛星放送での全世界中継など、大々的な見世物としてはこれが初の大会である。
甲板〜浅い階層に広がる一般人居住区を、
4ブロックに分けた中の競技場でブロック予選トーナメントを行い、
勝ち上がった各ブロック代表が、より深い階層の特設地下会場『地下闘技場』にて、
決勝トーナメントを行う事になっている。組み合わせ抽選会は一時間後に迫っていた。
沈痛な面持ちを残しながら戦艦無礼ドを降りた、
無礼ドに残らされたカムイ以下数名を除いたガンガンチームとサンデー関係者、
バンチチーム・巻来とえなりチーム・富沢たちを迎えたのは、
近隣に停めてある、裏御伽所有の≪蟲船≫ラ=レダルーバと、
地下闘技場への道案内役である十数名の矢吹軍兵士たち。
完全武装の軍人たちに前方と左右を挟まれ、否応なしに緊張感を高まらせながら、
トーナメント参加選手たちは後戻りのできない道へと向かう。
孤高の王者・矢吹健太朗と言う名の虎口へと―――――
472 :
作者の都合により名無しです:04/10/19 06:51:47 ID:z/XHizBX
えーと、ちょいと確認したいんだが、
>無礼ドに残らされたカムイ以下数名を除いたガンガンチームとサンデー関係者
これはカムイを含む数名が無礼ドに残ったってこと?
それとも、カムイを含む数名が抽選会に向かったってこと?
473 :
471:04/10/19 09:16:56 ID:kM+33L2a
前者です。句読点入れるとこうなります↓
>無礼ドに残らされたカムイ以下数名を除いた、ガンガンチームとサンデー関係者
わかりづらくてごめんね
あと一時間あるので好きにして下さい(書きそこねた三浦さんとか)
あれ、カムイが無礼ドに残る必要なくないか?
無礼ドの責任者は艦長であるハリーだから、奴ひとりが残ればいいと思われ
抽選会は4チームが一同に会するイベントだから、出れるんだったらリーダー格が出てた方が盛り上がりそう
もちろんそれもあり
ただ単に現時点でのリーダーの心労を増やしたかっただけなんで(苦笑
鬼や…
ちょっと聞きたいのだが
謎なのが売りの九大天王と、面子決まってるのに出てこない三巨頭以外で
何人か構成メンバーが不明の、ナントカ衆とかナントカ四天王ってどれくらい居るかな?
チャンピ暗黒四天王と七騎士くらい?
現在九大天王は一人、七騎士が二人
七人の悪魔超人は五人、チャンピオン暗黒四天王は一人が登場
十五人が未だ未登場か…
暗黒四天王は「えん×むす」のと山賢で二人じゃない?
一人は死んだけど…
(
>>471 16部18・440 他12部・19部など)
「カムイ達ついてねえよな。ま、すぐに来るだろ・・・」
先刻の衝撃が覚めやらず、心落ち着かぬ安西は、
矢吹軍兵士にせっつかれるのも構わず、
地下闘技場へと向かう専用通路の中途でうろうろしている。
と、通路の曲がり角から誰かに呼ばれた気がした。
「・・・ぉ〜〜〜い!安西くぅーん!おーい」
知らない男の声だが妙になれなれしい。
安西は眉をひそめながら声のする角の向こうを覗き込んだ。
パタパタと軽快な靴音で近づいてくるのは、
チョンマゲ付きのレスラーマスクを被った立派な体格の男。
Tシャツにジーンズのラフな姿だが、首から上が異様に目立っている。
とはいえ安西にはあまり見覚えのない人間なのだが・・・。
「おいおい、あんた誰だよ?ここにいるって事は選手なんだろうが」
「あら〜一応幹事さんだったにょにツレナイお返事・・・って、そーでした。
“この姿”じゃまだ顔合わせてなかったじゃん。
恥ずかしいけど仕方ないなあ。練習がてら、やりますかぁ」
男――にわのはポケットから変身装置を取り出すと、スイッチを押す。
“カッ!!” 「 ―――な、なんだぁ!?」
強烈な光が去った後、安西の前に立つのはセクシーな赤い戦闘衣装(バトル・ドレス)
に身を包んだ、昨晩【松椿】の中庭で変な酒とっくりで岡村と巻来を誘拐した女。
「あーーーーーーー!!? てめえさては、
昨日のトンファー女・・・って男ぉーーーーーーー!!?(ズガーン)」
いきなりの珍現象に開いた口が塞がらない安西であった。
「――――とゆーワケで昨日は本当にごめんなさいでしたの。
幹事さんなのにキミに後事を託して私怨に走って・・・みっともないったら」
美人だがおミズっぽい顔に似合わず、モジモジと照れ臭そうにするにわの(♀)。
「俺は別にいいんだが・・・ところで、
本当に宿の前で死体作ったのはアンタじゃないんだな?」
安西の言う死体とは、板垣に無残に殺されたヒラマツ・青山・吉川の事だ。
「違うよ・・・でもボクが引き起こした事に変わりはないから、
ボクが殺したようなものだ。≪三日後≫・・・ううん、もうあさってか。
“戦争”が近い事を知ってて安易に火種を寄り合わせたボクの責任だ・・・」
がっくりと肩を落とすにわのだが、安西は何気ない単語に反応した。
「三日後・・・?それはまさか、≪ 蝕 ≫とかいう・・・?」
「え・・・?何それ・・・。
安西クンも未来を知っているの・・・?」
奇妙な運命の、混ざり合い。
「俺は人から聞いただけだ。巨大な馬に乗ったドクロっぽい男だ。
そいつは明後日に関する予言を俺に告げて去っていった。
こいつの事を宿でカムイに伝えようと思っていたんだが、
結局ゴタゴタして無理だった・・・ん?どうした、あんた」
安西の視線は無意識に女の巨乳に注がれていたが、
それが動いたと思った刹那―――彼の頭はにわのに抱き寄せられていた。
「なっ!?何を・・・ ・・・なんだ?」
ポタポタと水滴が、安西の鼻先や頬に落ちる。
それの正体に安西が気づいた時・・・
「・・・なんで泣いてんだ?あんた・・・」
谷間から見上げた先の、娘は唇を噛んで込み上げる何かに耐えていた。
「・・・生きて。最後まで生き抜いてくれ。
運命がキミにそう言ってるよ・・・
ボクにはもう、祈る事しかできないけれど・・・
ボク「たち」は頑張るから・・・
安西クンたちも、頑張って・・・ 勝ってくれ・・・ 未来に・・・ 」
安西を慈母のように包み込む腕は、小さくわなないていた。
「た、頼りねーなあ。宿でのバカ強さはどこ行った?
それより息苦しいんだが・・・(正直嬉しくねえ〜〜)」
「はうーすまねえ〜まこリンがアホタレなばっかりに皆に迷惑を〜(涙)」
「人の話聞けっ・・・うが!?あいででで!ギブ!ギブ!!」
にわのの悲しみと共にギリギリと締めつけられる安西のこめかみ。
抱擁はいつの間にかヘッドロックにすりかわっていた。
「裏御伽の副将だっけ?あんたらは【中立】だと、
ガンガンの連中に聞いてる。だからあんたの事も多少は信じてやる。
ただでさえ俺らはKIYUにハメられ敵ばかりだと言うし・・・」
解放され、痛む頭部を押さえながら、ぶつぶつと加害者に語る安西。
彼の視界の中、にわのは≪KIYU≫の名を聞いて顔を強張らせた。
声に出しては一言。「・・・・・・KIYUは、怖いよ?」
「――なんだよ、敵まで一緒か?奇縁ってヤツだな。
あんたらも頑張るんだろ。この先どうなるかなんて、誰にもわからねえ。
だから今できる事をやる、それだけだ。言っとくがトーナメントで当たった時は遠慮しねーぜ!」
にっかりと白い歯を見せて笑う安西は次の瞬間――――
「ブァカ副将〜〜〜単独行動とむやみな変身は禁止だっつってんだろーーーーーがぁ!!!」
こちらに向かって全力の飛び蹴りを放つ岡村を発見し。
「ぎゃああああああ!!?」ドサクサでにわのに盾(人間バリア)にされ――――合掌。
どうやら副将は慰労会の件で土下座行脚をしていたらしい。
安西に巻来の居所を聞いた岡村は「被害者なのに付き添う俺の身にもなれ」
とか愚痴りながら、変身したままのにわのを引っ張って去っていった。
「じゃあね〜安西クーン!いろいろがんばろーねぇ〜!」「ああ、もう二度と来んなよー」
見送った後、げんなりと立ち尽くす安西。ふと背後に気配を感じて振り向くと。
「・・・今の娘、美人だったわね〜。安西くんの、彼女?」
あんぐりと大口を開けた安西に、に〜〜っこりと微笑みかける高橋留美子。
――――100万人の敵よりも、今のあなたの笑顔が怖い。
安西信行、男の正念場であった。
暗黒四天王さんは死天王に改名したため
人数不明になった気がするよ〜
うわははははははw
安西、五体満足で抽選会出れるといいな!www
ラブコメニヤニヤ
ラブコメだったのかこれ・・・
ラブラブっすねぇ
見ててキモいけどw
そういえば九大天王は2人目決まってたね。(柔道部物語のお方)
評議会と全く関係ない過去回想編にしか出てないけど・・・
暗黒四天王の三人目ってスナッチャーじゃなかったっけ
本人は出てないけど
男湯覗いて死んだ人だっけ?
押井って九大天王じゃなかったのか?
押井は「実力は九大天王並み」だけど九大天王ではない。
>471
松沢「あとの事情聴取は僕が受けときますんで、カムイさんは抽選会行ってください。
やっぱこーゆーのは大将がいかないとカッコつかないでしょ」
無礼ド艦長である松沢に言われ、カムイはようやくいらぬ苦労から解放された。
さっそく、抽選会場へと向かう。
先に行った仲間達に追い付こうと、自然と足が速まる。
そして、カムイが地下へと降りようとした、そのとき………
ゴ オ ン !!
それは抵抗の意志さえ奪われそうな、残酷なまでに研ぎ澄まされた鬼気だった。
そこにいるだけで、第三者に圧倒的なプレッシャーを与える存在。
五聖人や『Y』など、数多くの強者を見てきたカムイだが、これはまた格が違う。
たちまち、カムイは全身から滝のような冷や汗を流し、その場に膝をついた。
全身が総毛立ち、針を突き立てられたような痛みが走る。
カムイ「ぐっ…うお……」
吐くように呻きをもらすカムイ。その目の前の空間が揺らいだ。
それは次第に、鮮明な像となり、遂には確かな存在感をもって地を踏み締めた。
カムイの目が、驚愕に見開かれる。
カムイ「ぐっ…い…今さら…何をしに来た…!!」
全身を蝕む激痛と戦慄に抗い、かろうじてカムイが言葉を絞り出す。
その様子に、現れた人物は苦笑した。
??「久しぶりの再会だってのに、えらく冷たいじゃねえか、ええおい?」
広い額を、鋼鉄の左腕で押さえながら、その男は笑う。
獰猛な殺気を漂わせる、ゴッドハンド最強のサイキッカー。
大友克洋である。
カムイ「ゴッドハンドの名を聞いたとき、予想すべきだった。アナタが、それに関わってるということを……」
大友「フン……、その様子だと、別府では随分なメに会ったみてえだな? 睡眠不足はお肌の大敵だぜ?」
自分を前に憔悴しきったカムイを見て、大友はさも愉快そうに嘲笑う。
カムイ「……まさかこの期に及んで大会を潰しに来たのか…?」
大友「いーや、いや!そうしてえのはヤマヤマだが、こちとらも完璧に自由ってわけでもなくてな。
今んところは、裏側から適当に状況をいじくりまわして暇つぶししてるとこさ」
カムイ「ぐっ……うっ……」
大友「そうそう、お前の『それ』と同じ呪印を、ある奴にプレゼントしたんだ」
カムイ「くっ……」
首筋を押さえて、悶え苦しむカムイ。そこには、例の呪印が刻まれている。
絶大な力と引き換えに、施された者の肉体を蝕み続ける、大友の魔の烙印。
カムイ「相変わらず……、勝手な……、まず死ぬぞ…そいつ」
大友「生き残るのは10に1つの確率だが、お前と同じで『死なない方』だったぜ」
カムイ「えらく…………気に入ってるんだな、……そいつを……」
大友「嫉妬してんのか?ああ…?お前を使い捨てにしたこと、まだ根にもってんのか……、クハハ……」
カムイ「!!」
激痛に苦しむカムイの表情が怒りに染まる。
カムイ「アナタが敵に回るというなら……、命に代えても、俺が仕留める。
たとえそれがかなわなくても……、一矢だけでも報いる……
それがアナタに全てを教わった……アナタの弟子だった……俺の役目だ」
血を吐くようなカムイの言葉を、しかし大友は一笑した。
大友「無理だな。今のお前じゃ、俺はおろか、俺の後継者候補にすら勝てんだろうよ」
カムイ「ぐっ……誰だ……そいつは……」
大友「なぁに、すぐに分かる。なにせ、準決勝か決勝……どちらかで必ずお前のチームとぶつかるだろうからな」
カムイ「なに……決勝に残った3チームの中にいるというのか…」
大友「クックク……、そういうこった。今のあいつは、完全に呪印の力に飲まれた……かつてとは比べものにならん力を持ってやがる。
あいつの動き次第では、面白いことになるだろうぜ」
しゃべり続ける大友の体が、次第に透け始めていく。
大友「残りの試合、せいぜい楽しませてもらうぜ。
もし、俺の楽しみを奪うようなことがあれば……てめえの仲間は終わりだと思え」
カムイ「お…大友……!!」
大友「ハーハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
雷鳴のような哄笑を響かせながら、大友は空間に溶け込むようにして、消え去った。
後には、呪印の激痛に苦しむカムイだけが残される。
残酷なる、師弟の再会であった。
>484
同刻……
安西「る、留美子さん、あれは違うんだって、ホントに!!だから、機嫌直してくれって!!」
留美子「あ〜ら、何の事?私、別に何とも思ってないけど?」
そうとはとても思えない、実に怖い笑顔で留美子がそっぽを向く。
安西はなぜ留美子が怒ってるのか、よく理解できないでいたが、なんとか弁明を試みようと焦りまくる。
だが、そのとき。安西の顔色が変わった。慌てて留美子を見ると、すでに真剣な表情になっている。
異様な殺気を放つ男が、2人の目の前に立っていた。
忍装束。額当ての描かれた木の葉のマークには、抜け忍を意味する真一文字の傷が走っている。
そして何より異様なのは、その目だ。赤く染まった両瞳には、三つ巴のマークが浮かびあがっている。
まるで全てを見透かすような瞳に、安西と留美子は2人とも、背筋が凍るような感覚を覚えた。
??「……邪魔だ」
吐き捨てるように呟くと、男は2人を押し退けるようにして前へ歩いていく。
安西「おい、そこの忍!!」
反射的に、安西は男を呼び止めていた。男が首だけを後ろにまわして、肩ごしに安西を見る。
??「……なんだ」
安西「お前も参加選手か?」
??「そうだ」
安西「なら、俺の名前を覚えとけ、忍。火影の忍、安西信行だ!!」
密かに忍者であることを自負している安西(そう思っているのは本人だけだったりするが)
それに対して、男の返答は意外なものだった。
??「……奇遇だな。俺も『火影』の忍だ」
安西「なに!?」
??「俺は、えなりチームのひとり……岸 本 斉 史」
それは、体内の白面を失い、大友の呪印に完全に支配された、変わり果てた岸本の姿であった。
わー(゚ヮ゚;)
主人公チームがどんどん黒くなってゆくよー
ステキ
(
>>471 >>498 >>232他)
富沢ひとしは呆然と立ち尽くしていた。
場所は地下闘技場・Dブロック代表専用の控え室中央。
他ブロックの連中と別れ、懐かしき?仲間たちが待っててくれているだろう、
一室に着いたはいいが・・・人っ子一人いやしない。
そう、暴走留美子による松椿大火災のどさくさに保護された彼は知らない。
えなりチームのメンバー全員が別府関係でなんらかの事件に巻き込まれた、
または現在も騒動の渦中にいる事を。
「板垣先生は気まぐれだから仕方ないとしても、
試合を放棄する人じゃない、はずなんだけど・・・どうかな〜。
それより他の人たちも、どこにいるんだ?荷物すらないなんて」
嘆く富沢がテレビをつけると、
克と橋口が各代表4チームの戦力分析などをしている。
『橋口さんの注目はDのえなりチームですか?』
『当然だ。野球で見せた分厚い選手層があろう。どいつも一級品揃いだ』
『私はBですかねぇ。非公式情報ですが予選敗退チームと連合を組んだとか。
ごく個人的には、共に島を脱出したCの方々を応援していますが・・・』
『ふむ。ところでAはガチガチの優勝候補だが、これはこれで期待している』
『バラエティに富んだ選手がいっぱい!とにかく試合が楽しみですねー!
抽選会での代表選手顔合わせは、もう間もなくです!』
(・・・ヤバイって!!分厚いどころか単品じゃないかっ!!
第一えなり君がいなくてえなりチームもないだろう、
花形の荒木先生や車田先生もいなくて・・・どうするんだよっ!!)
とにかく誰でもいい、帰ってきてくれればそれでいい・・・と涙目になる富沢。
──しかしこれより後、荒々しい音と共に控え室の扉を蹴り開けた男の、
黒キャラ然とした赤い闇色の瞳を見た瞬間富沢は心の中で前言を撤回した。
(誰でもいいけど怖い人はやだっ!まともな人、帰ってきてくれぇ〜〜!!)
はてさてどうなる、えなりチーム!!
>>450 ホントに(ちょっぴり)脱がされたーーー!
佐藤には今後もHIMEっぽくスランぽくがんばってほしいです(笑
富沢ひとしは保護されているッッ
>433
福地翼は、己が空に打ち上げた栗を最後まで見届けずに、次の行動に移った。
小動物のようにきびきびと動き回り燃え切っていないゴミを手頃なサイズに引き千切る。
ゴミは、福地の掌より少々大きかった。
福地は、軽く手を広げ、そのゴミを握りつぶした。
ぐちゃり、と肉の潰れる音がした。僅かな光りが、福地の掌の中から零れている。
そして福地は、前屈みになり、握りしめた掌を地面に押し付ける。
瞬く間に、エリア88に再び巨大な樹木が出現した。
「おやおや」
倉田英之は、手にした文庫本から目を離し、その樹木を見た。
またか、と最初は思ったが、此度のそれは、先程の黒船まで達した樹木より低い。
何が狙いか、ちょっとした興味を抱き、倉田は文庫本に栞を挟んで立ち上がった。
立ち上がり樹木を遠望した彼は、ふと違和感に気が付いた。
頂上付近の枝の上――そこで白い何かが微かに動いている。
「――?」
その何かを注視するため、目を細めたその瞬間、轟音と共に一個の巨大な丸太が倉田に迫ってきた。
「くっ―!」
咄嗟にその場を跳躍し、丸太の直撃を避ける。
丸太はそのまま死体の山を穿ち、肉と骨の破壊音を周囲に響かせた。
とんっ、と体重を感じさせず甲板に着地した倉田は、同時に眼前の死体の山が爆ぜる音を聞いた。
そちらを向いた倉田の顔面に、大量の血肉が降り注ぐ。
その絶望的な視界の中、己の心臓に吸い込まれるように木の枝が伸びて来るのを、倉田は捉えていた。
そして、それを避けるのが不可能であることも、彼は理解していた。
木の成長をエレベーター代わりにして、エリア88の全貌を見渡せる位置に到達した福地翼が、
不自然に積み上げられた死体の山とその頂上に寝そべる一人の男を発見するのは、それほど困難な事では無かった。
福地は生い茂る木の葉を引き千切り、その中の一つを握り潰してそれを丸太に変えて倉田英之を強襲した。
そして、更にもう一つ作り上げた樹木をエスカレーターの要領で滑り落ち、
彼は彼自身が穿った死体の山の頂上に降り立った。
死体の山からは、幾つもの鋭く尖った枝が突き出ていた。
それは、初撃を回避し頂上から、福地の眼の及ばぬ甲板に降りた倉田へ、
どこにいようと直撃を与えるために福地が生み出したものである。
死体を突き破り、その肉片をぶら下げ、血に赤く染まった枝を加えた死体の山は、凄惨極まりないオブジェと化していた。
その頂上で福地翼は、突き出る枝の一つを見て残念そうに嘆息した。。
「あ〜やっぱ一撃で、っていうのは虫が良過ぎっすよね」
福地の見下ろす先―そこには、己の心臓に向けて突き出た枝を、指に挟んだ文庫本の1ページで防ぐ倉田英之の姿であった。
尖った木の枝を紙で防ぐ―その非現実的な技は、
彼の紙使いとしての能力―紙であればどんなものであれ武器に変える―をもってすれば造作も無いことであった。
倉田はゆっくりと顔面に飛び散った肉片を拭った後、つう、と体を回転させ、同時に紙から手を離した。
枝は紙を突き破り、何も無い空間を虚しく通りすぎ中空で止まった。
「いやいや、見事なもんっすね〜」
頂上で足下の肉塊を抉り取りながら、福地は倉田の鮮やかな技に素直に感嘆の声を洩らす。
倉田はその白い青年を見上げ、唇の端を釣り上げた。
「君の方こそ、面白い技を使う。先程の奇襲はなかなかだったよ、一瞬肝が冷えた」
「本当はあれで死んで欲しかったんすけどねー」
快活に福地が笑った。
「それは残念だったね。しかし折角わざわざここまで来てくれたんだ、相応の持て成しをしないとねえ」
そう言った倉田の右手には、いつのまにか綺麗に折られた紙飛行機が握られていた。
倉田は、それを優雅な動作で上空に飛ばす。
「おお〜」
完璧に自重を風に預けたかのようなその軽やかな飛翔に福地は思わず声をあげ、その飛行を眼で追った。
そして、真上を見上げた彼は、数十個にも及ぶ紙飛行機が彼の頭上を滑空している異様な光景を目撃した。
「あ、ら、ら…」
福地の顔面が引き攣る。同時。ほとんど反射的に彼は掌の上を転がしていた肉塊を迷わず握り潰した。
手の中で変化した樹木が、福地の頭上を傘のように覆い隠す。
「ほう、そういう芸当もできるのか。だが、甘い―」
宙空を漂う紙飛行機が一斉に福地に先端を向け、間断無く彼の頭上に殺到する。
倉田は福地を覆う樹木を嘲笑するように言葉を紡いだ。
「有象無象の区別無く、私の紙は許しはしない」
紙飛行機は弾丸すらも食い止めそうな太い樹木を呆気なく粉々に打ち砕いた。
「ぐあああっ!」
紙飛行機の群れの向こう側から獣のような絶叫が聞こえてくる。倉田は満足げに哄笑した。
しかし強襲の後、ボロボロになり露わになった樹木の内部には福地の姿は無かった。
その内部から山の後方へ、新鮮な血液の痕が点々と続いている。恐らくは予め1箇所だけ空洞を作っていたのだろう。
倉田は男が己の初撃を生き延びてくれたことを素直に喜んだ。
殺戮(パーティ)の時間は長ければ長いほど良いに決っているからだ。
木と死体の凄惨なオブジェか
光景が目に浮かんでしまい ('A`)キャー
しかしここまできてもまだ神器すら使ってないのな、福地。
遊んでやがる…。
実戦で経験値貯めたら福地どこまで行けるかな……
>>508 微妙なトコ
狂気に身をゆだね続ければそれこそ行くトコまで行くだろう。
ただその前に富沢さんあたりが止めそう…
>>505 「参ったすねぇ……」
木に背を預け、福地は呟いた。
白から、赤へ。その全身は先ほどの倉田の紙飛行機によってズタズタに切り裂かれ、血により赤く染まっていた。
赤い血で染まり、木にもたれかかる姿は遠目には逃げ出した敗残兵のように見える。
―――――その表情、笑顔という仮面をつけてすら、なお滲む狂気さえなければだが。
「まったく、あの不意打ちをああも完璧に防ぐのは反則っすよ」
ぶつくさ言いながらもゆっくりと福地は立ち上がり、そこらの木を毟り、ゴミを掌中に収めた。
重症であるにもかかわらず、鼻歌を歌いながら木の中を歩く姿は、不気味としか言いようがない。
「さーて、どう戦うっすかね」
最初から微塵も変わらぬ笑顔を浮かべ、福地は歩く。
その足取りは学校に通う学生よりは軽く、温泉に通う時よりは重い、つまり楽しみでなければつまらなくもない
要するに"どうでもいいこと"だった。
福地にとって戦闘とはその程度のことである。
今も倉田との交戦へと向かってはいるものの、その焦点は既に倉田との戦闘ではなく、終わった後の温泉へと
意識を飛ばしていた。
「あぁ〜温泉。早く仕事を終えて入りたいっす」
狂ってる。
それが倉田が福地に対して抱いた感想であった。
重症であるにもかかわらず平然と戦いを続ける。
それ自体は漫画家なら別におかしいことではない、実際そんな人間は何人も見たことがある。
だが福地は違う。
山本英夫のように痛みを快感と感じているのでもなく、板垣恵介のように戦闘狂というわけでもなく
鳥山明のようにバトルを純粋に楽しんでいるわけでもない。
そう福地は別に戦いに対して特別な想いを抱いているわけではない。
そして"戦う理由を持っているわけでもない"。
それなのに重症を負った体で笑みすら浮かべながら自分と渡り合っている。
そこには、悲痛さも、熱狂も、信念も、理想も、怒りも、悦びも、何も、なかった。
(理解できない……)
どこがおかしいという具体的な形は持たない、だが何かがズレていると感じる。
倉田はそれを怖いと感じた。
今もバトルは自分が有利に進んでいる。
既に何度か切りつけ、福地の体は真っ赤だ。
だが怖い、理性ではなく、本能が恐怖を感じる。
戦闘が再開されてからずっと、こいつを殺せ、少しでも、一瞬でも早く、自分の前から消せ、
と心の奥で何かが警告を続けていた。
それは衝動となり、力となって、今まで無いほど激しい攻撃を倉田は福地へと繰り出してた。
一刻も早く、この異様なバトルの幕を閉じるために。
木が断たれ、服を裂け、肉を切られる。
だが福地は倒れない、何度切り、何度打ち倒しても、そのつどに致命傷は避け、起き上がる。
「流石に、強いっすね……"ゴミを木に変える"能力だけじゃ勝てそうにないっす」
倉田は衰えることなく福地を攻め続ける。
紙によって作られた鶴が肩に突き刺さり、血がしぶいた。
だが福地は顔色も変えずにそれを抜き取ると、握りつぶした。
「だけどまあこれしか使うなって言われてるっすから、できるだけやってみるっすよ」
鶴を握り潰した手の内側が輝く。
『ゴミを木に変える能力』
それにより握りつぶされた紙くずは木となり、倉田の心臓めがけて突き進む。
だが倉田は危なげなしに紙を盾のように木の前に出した。
戦闘が再開されていらい、何度と無く繰り返した行動。
その度に木は紙によって防がれ、倉田の体には傷一つつかない。
無論、毎回防いだからといって倉田とて相手を舐めるわけではない。
常に防御には最大の注意を払っている。たとえ今までの比ではない威力の攻撃が雇用が防げる自身があった。
そして―――――"紙"を貫き、木が倉田を貫いた。
「……え?、あ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
無数の枝が伸び、倉田の体内を蹂躙する。
ほんの一瞬だけ痙攣し、倉田は動きを止めた。
あっけない死。何故木が"自分の紙"を貫いたのか理解する間もなく訪れた死。
更に木は伸び、枝も伸びる、伸びた枝は肉体を引き裂き、バラバラとなった肉体は樹海に埋もれていった。
何故、今回に限り、福地の木は倉田の紙を貫けたのか。
それは福地の『ゴミを木に変える能力』のLv2。リバースという能力のせいである。
『ゴミを木に変える能力』は福地の持っている能力の中で唯一サイクルを可能としていた。
その派生から、LV2では"相手の能力を元に戻す"という効果を追加される。
そして福地は、その能力で木に触れた紙をただの紙に戻したのである。
ただの紙に戻されたことを知らない倉田は、文字通り紙のように盾にした紙が貫かれ、そのままその身も木に貫かれた。
福地は確かに『ゴミを木に変える能力』しか使わなかった。
だが、ゴミを木に変える"だけ"が『ゴミを木に変える能力』の力だとも言わなかった。
そしてLv2を使う直前の台詞、「だけどまあこれしか使うなって言われてるっすから、できるだけやってみるっすよ」
これは『ゴミを木に変える能力』に隠された力があることを隠すための手段である。
ゴミを木に変える以外の能力もあると言外に匂わせたことにより、相手の意識をどんな木を使ってくるのかから、
どんな能力を使ってくるかへと変化させる。
勿論、木に対する注意がなくなるわけではない。
だが対象が増えればそれだけ注意力も分散する。
そう―――――木の能力にまったく異なる能力があるという予想は出来ないくらいに。
あくま木にはで物理的な威力しかないと思い込ませ、そして致命的な一撃を最高のタイミングで放つ。
結果、福地は、『ゴミを木に変える能力』だけで見事に倉田を葬った。
リサイクル!!Σ(゚Д゚;)
やりやがったこの男!!
ああ…倉田…
調子こいてアローアローなんていうから…
強ぇ…マジでどうすんだこいつって感じだなぁ。
所で福地は"才"は大丈夫なのかね。漫画家は能力者扱いでいいのか?
>>516 いいんでないかえ?
漫画家はみんな能力者みたいなモンだし。
能力者同士で争って才能奪い合うんだっけか。末恐ろしいよ福地ィ…
それは空白の才争奪戦を開かなきゃ平気じゃね?>能力者以外を傷つけると才能消失
あの大会のルールだから。
すげえな福地
521 :
黒の創世記:04/10/25 00:35:21 ID:xojaosuH
>>513 「ふい〜〜勝ったっすよ〜〜」
倉田をバラバラに引き裂き、勝利した福地。
しかし、その体がガクンと尻餅をつく。
「あ〜〜ちょっと血を流しすぎたっすね〜〜正直しんどいっす」
楽勝にも見えた戦いだったが、福地の肉体には夥しい爪痕が刻まれた。
全身をなます切りにされ、出血が尋常ではない。
常人であれば、とても動ける状態ではない。
しかし、この人の姿に虚無を詰め込んだ怪物は、その負傷ですら恬然として無気味な笑みを浮かべている。
「あーあー、こんなに汚れちゃって……。さっさと帰ってひとっ風呂浴びたいっす」
面倒くさそうに、福地が溜息をつく――
「ん?………」
“それ”の存在に、福地が気付いたのは、そのときだった。
森林のある一角に、奇妙な物体が出現していた。
いつの間にか現れていた“それ”は、植物のつぼみに似ていた。
「キレイっすね〜〜」
福地は『それ』の存在に疑問を抱く前に、まずその美しさを素直に口にした。
すると、あたかも福地の言葉に反応したかのように、そのつぼみがほころびはじめた。
つぼみが開かれた、その中には――
「………赤ん坊?」
そう、そこにはまだ生後まもないと見える、全裸の赤ん坊が眠っていた。
およそ凄惨な場にそぐわない、その幻想的な光景に、福地が両目をしばたく。
“パチ”
赤ん坊の目が開かれたのは、そのときであった。
522 :
黒の創世記:04/10/25 00:37:41 ID:xojaosuH
瞬間、森林に異変が生じ始めた。
「!…花……?」
福地の足元から、いや森林のあらゆる場所から。
堰をきったように種々の花が萌芽し、爆発するようにたちどころに咲き乱れたのだ。
死体のオブジェで飾り立てられた森林は、たちまちのうちに桃源郷にも似た風景へと様変わりした。
むろん、福地の意図によるものではない。
「キャハ、キャハハハハ」
笑ったのは赤ん坊であった。
赤児が笑みを振りまくたびに、花はより一層萌え広がり、鮮やかに咲き誇る。
あらゆる感情を喪失したかに見えた福地が、思わず笑顔を打ち消して眼前の光景に食い入ってしまった。
それほどに、異様なる光景。
*** *** ***
「素晴らしい――エログロの時代がくる」
一部始終を、“Neo-Z”の甲板から、肉眼で見下ろしていた平野が狂気の笑みをたたえて呟く。
「奴ならば……あの壊れた人形の“全能力”を引き出すだろうな」
相棒を殺されてなお、欠片の動揺も見せない怪物は、自らと同等の狂気の出現を前にして、歓喜に打ち震えていた。
*** *** ***
周囲の植物の成長に呼応するように――
赤児が急激な成長を開始した。
四肢がめきめきと音をたてて伸び、髪が生えそろい、筋肉が厚みを増していく。
愛らしい無垢な表情を浮かべていた赤児は、その成長にともなって、その相を兇悪なものに変えていく。
福地の眼前に、魔人が顕現しつつあった。
523 :
黒の創世記:04/10/25 00:38:43 ID:xojaosuH
「何なんすかあ!? あんた人間じゃないっすねえ!?」
人の形をした怪物が、新たに出現した魔人に言う。
魔人が答えた。
「どこから見ても、ごくフツーの人間様だろおに」
漆黒の翼が広がったかに見えた。
よく見るとそれは、魔人が身に纏ったコートだ。
すっかり衣服を身に付けた魔人の姿に、福地は思わず目を丸くする。
タキシードの上から、襟の高い黒のコート。
白髪混じりの前髪。
眉間から左頬にかけて大きく走った手術痕。
そこを境目として、左目周囲――顔全体の約三分の一ほどに渡って皮膚の色が異なっている。
その姿見は、漫画界創世記の伝説として語り継がれる――
“黒い医師”
まさしく、その生き写しであった。
その口元を歪める笑みが、従来のイメージよりも酷薄で醜悪だという一点を除けば――
524 :
黒の創世記:04/10/25 00:39:42 ID:xojaosuH
「うはー、神をも恐れないとは、まさしくこれっすねえ」
「お前さんほどではないと思うがね、怪物クン」
魔人が、くわえ煙草に火を灯しながら言う。
紫煙をゆっくりとくゆらせながら、次の言葉を吐き出す。
「人間の死体をゴミ扱いとは大したものだ――それも心底そう思ってる」
「そんなに誉められることじゃないと思うっすけどねえ――それに、君も人のこと言えないんじゃないっすか?」
「それもそうだ」
狂眼を歪めながら、黒衣の魔人が笑う。
「サンデー作家か……よくよく縁がある」
「お兄さん、お名前は?」
微妙に噛み合っていない会話。
お互いに相手を前にしながら、その存在を心底から人として扱っていない。
同種の狂者同士――
人の形をした、怪物同士の会話。
彼らは相手に一片の恐れも憐憫も見せずに、互いを滅ぼしてのけるだろう。
「山本賢治だ、怪物クン」
「福地翼っすよ、魔物サン」
白の怪人。
黒の魔人。
人の姿をした怪物たちは、次の刹那、同時に動いていた。
互いの存在を、滅消させるべく。
←TO BE CONTINUED
黒い医師キター!!
やっぱネクロライズされた「あれ」にも関わってんのかな…
邪悪だー!
どっちも真っ黒だー!!
田口だっけ?バロンザゴングの人
あの人も黒い医師だよねぇ
どんどん増えるな、黒い医師
528 :
怪人皇帝:04/10/25 22:48:10 ID:G2WCR8Dn
>>425 車田正美と宮下あきら。
かつてジャンプの頂点に君臨したと言われる黄金五聖人の中にあって、1,2を争う剛の者ふたり。
彼らが戦った跡は、凄まじい様相を呈していた。
居並ぶビルは倒壊し、道路は折れて砕け、およそ人間の為す破壊を圧倒的に凌駕している。
動く者などあろうはずもない、この廃虚の一角で、瓦礫が崩れた。
その下から、頭から血を滴らせた車田が現れる。
「これで何度目の激突か――奴めまだ…」
車田の呟きが聴こえていたかのように、十メートルほど離れた場所にある、倒壊し砕けたビルの屋上付近にあたる、巨大な鉄筋コンクリートの塊が持ち上がった。
まるで発砲スチロールの塊のように、それは軽々と動いた。
人間なら100人は軽く圧死させられそうなビルの切れ端が、持ち上げられたのだ。
それを行っているのは、同じく頭から血を流しながら獰猛に笑う、禿頭の鎧武者である。
「フッフフ、愉快愉快。こうまで楽しませてくれるとは、さすが車田よのう」
(何という邪悪な小宇宙――しかもこの巨大さは、ゆで将軍にも迫るものがある。今回の奇行といい、一体奴の身に何が起こった!?)
思考は長くは続かない。
ただでさえ、宮下は、油断や、ましてや手加減して勝てる相手ではない。
わずかな間に、車田は決死の覚悟を固めた。そのときだった。
「おもしれえことやってるじゃねえか――」
車田と宮下以外、誰もいないはずの空間の一角で、第三者の声が聴こえた。
529 :
怪人皇帝:04/10/25 22:49:11 ID:G2WCR8Dn
太い、男の声であった。
その声のする方向を見た。
ビルが崩れてできた、小山ほどの瓦礫の上に、ずんぐりとした、太い影が座っていた。
声をかけてきたのは、この男だ。
しかし、気配が読めない。
空気のような男であった。
2人が、同時に、その男と向かい合った。
その男は、座したまま、両腕を組み、その両腕の間に、鞘におさめた日本刀を抱え込んでいた。
太い腕。
太い肩。
太い首。
太い顔。
太い眉。
太い唇。
そして、その唇と眼とに、驚くほど柔和な笑みが刻まれていた。
「さすがにジャンプ五聖人同士の喧嘩だ、派手だね―――」
と、その男は言った。
喧嘩!?
このレベルの死闘を、たかが喧嘩だと言うのか、この男。
「お初にお目にかかる、車田くん、宮下くん――――」
と、その男は静かに言った。
岩のように、身じろぎもしない。
なんと、この男の落ち着いていることか。
呼吸も乱れていなければ、汗もかいてはいない。
心臓の鼓動さえ、静かだ。
何者か!?
車田と、宮下が、同時にそう思った時、それに答えるように、その男の太い唇が動いた。
「夢枕獏だ」
その男はそう言った。
530 :
怪人皇帝:04/10/25 22:51:18 ID:G2WCR8Dn
この男が―――
と車田は思った。
この男が、夢枕獏か。
“原作最強三闘神”の一人に数えられ、“神の拳”とも“拳聖”ともうたわれた、武の世界に君臨する巨魁。
そして、板垣恵介の師でもある男。
しかし、奇妙であった。
夢枕獏は、先のDブロック準決勝、対ボスチーム戦にて、板垣との壮絶な死闘の末、死亡したと聞いている。
しかも、仮に生きていたとしても、今の夢枕は齢五十を越えるはずだ。
だが、目の前の男は、どう見ても三十代そこそこ――
武人として、脂の乗り切った絶頂期の肉体である。
2人は知らない。夢枕が死後、妖魔王の手によって“大罪衆”としての、新たなる生を受けたことを。
その男は、依然として瓦礫の上に腰掛けたまま、静かに2人を見つめていた。
2人は、浅く腰を落とし、身構えている。
「いいのかね――」
ふいに、夢枕が言った。
「何がだ?」
声が震えるのは避けられたようだ。
「車田、おめえさんはもうすぐ試合なんじゃねえのか。こんなとこで、油売ってるヒマがあんのかい?」
「――――」
言われずとも、そのことは承知している。
しかし、目の前の宮下は、そんな事情などお構いなしに殺気を漲らせ、牙を剥き出しにしている。
宮下を打倒しない限り、車田は生きてここを離脱できないのだ。
「えなりチームと名乗っちゃあいるが、あのチームの大将はおまえだろう。仮にも決勝トーナメントに大将が出ないってのはカッコつかねえわな」
「何が言いたい?」
苛立ったように、車田が言った。
すると、夢枕は、我が意を得たり、とばかりに会心の笑みを浮かべる。
「だからさ」
もったいつけるように一つ呼吸を入れてから、
「おれが代わってやろうか――と言ってるんだよ」
そう言った。
531 :
怪人皇帝:04/10/25 22:54:29 ID:G2WCR8Dn
「なに――」
「代わるってのは、無論、こっちの喧嘩の事さ。ここは俺(おい)らが引き受けてやるから、おめえさんは早く抽選会に行けってことよ」
唐突な申し出であった。
「何を考えている?」
「別に難しいことは何もありゃしねえさ。ここで俺らと交代すりゃ、あんたは試合に間に合うし――」
ふいに、笑みの中に、ぎらり、とした殺気がわき出した。
まるで、笑みの顔のまま、鬼の貌に変じたようであった。
「俺らは、おもしれえ喧嘩ができる――万々歳じゃねえか」
「しかし――」
「それに、不肖の弟子が世話になってるんだ。その大将に、せめてもの恩返しをしねえとな」
車田に向かって言いながらも、夢枕はすでに、車田を見ていなかった。
射るような視線は、先程から黙して不動のままの、宮下に注がれている。
宮下もまた、車田に絶えず注意を払いながらも、夢枕の一挙手一投足から、目を離せないでいた。
すでに、2人は視殺戦に突入していた。
「わかった、不本意ではあるが、この場は好意に甘えさせてもらうしかなさそうだな」
そう言って、車田は後じさる。
爆発するような踏み込みから、光速の迅さにて、その場を離脱しようとする直前。
「板垣くんに、夢枕がよろしく言っていたと伝えてくれ。なあに、奴もすでに知っているさ。綺麗な顔しちゃいるが、おしゃべりな知人に心当たりがあるんでね」
夢枕がそう言うのを、確かに耳にし、そして車田は一直線に抽選会場へと消えた。
あとには、夢枕と宮下だけが残される。
「さ、やろうか、宮下よ」
まるで食事にでも誘うような気軽さで、夢枕が言った。
沈黙していた宮下が、破顔する。
「わっはは、理想的な展開じゃのう! 礼を言うぞ、夢枕よ!」
太い笑みをかわしあう両者。
ふたりの、目に見えぬ気が、空間を歪曲させた。
←TO BE CONTINUED
車田帰還か…
これで三人だな。
とうとう仮名脱却か。
ところで新スレは480KB前後?
夢枕が大罪衆になったってことに対して
いまだに違和感を感じ、もう一方でまた納得がいく
不思議な方だ
基本的に面白い喧嘩さえできりゃオールオッケーって感じだからな>夢枕
したくなれば妖魔王相手でも平然と喧嘩売りそう
>>527 田口のBJ読んだけどすごいなアレ
このスレでは天才扱いされてる田口だが、あながち言いすぎじゃないと思った
さすが山口貴由に「かなわない」と言わしめた奴だ
>500 >531
えなりチーム控え室……
呪印の力を完全に得た岸本と2人っきりの状況に、富沢ひとしはビビりまくっていた。
富沢(早く……誰か帰ってきてくれ……)
祈るように震える富沢。
そこに冷えた声がかかる。
岸本「そんなにビクビクするな……、俺の目的は強い奴と戦うことだけ……お前に興味はない」
富沢「そ、そうですか……」
震える声で返答する。
富沢(しかし、いくらなんでも変わりすぎだ……岸本先生。
金髪が真っ黒になってるし、いつもの変な口調もない……。
性格も、以前はもっと明るい人だったはずだ……、しかも……)
横目で岸本をうかがう。
富沢(一番無気味なのは、あの眼だ!以前は、戦いの時しか発動していなかった『写輪眼』が……常時発動してるなんて)
一時は再起不能とまで言われた岸本のあまりの変容に、富沢は動揺を隠せないでいた。
いい加減、緊張の糸も限界まで達しようとした、そのとき……
ザシャ……
特有の出現時効果音を響かせて、控え室に第三の男が現れた。
車田「……ン?なんだ、たった2人しかいないのか……時間にルーズなのも程があるな……どうした?」
富沢「車田せんせい〜〜………」
やっと帰ってきてくれたチームリーダーの姿に、富沢は泣きだしそうなくらいに安堵した。
車田が帰還し、ようやく三人になったえなりチーム。
とりあえず、互いの情報を交換しあう。
車田「なるほどな……、話を総合すると……
まず、宮下の乱心はその『鬼酒』とやらの影響。
確かに奴の腰にそれらしい徳利がさげられていた。
次に、ゴッドハンドや、KIYUの手のものが、チーム間を互いに食い合わせようとして策謀を巡らした。
そして最後に、妖魔王と名乗る新たなる勢力の存在……か」
富沢「なんかエライ状況になってるみたいですが……、しかしそれより不味いのは肝心の試合ですよ。
荒木先生も板垣先生も尾田先生も帰ってこない……、このままじゃ……」
車田「この場にいない連中をアテにしていても仕方あるまい。それよりも……」
車田の視線が、岸本に注がれる。
岸本「……なんですか?」
車田「……俺が分からないとでも思っているのか?大友の呪印に身を委ねたな、お前……」
富沢「!!」
車田が指摘した瞬間、部屋の空気が痛いほどに張りつめた。
息詰まる緊張。
岸本「……他に方法はなかった。再起不能のダメージを受けた上に、九尾の力まで失った俺が復活し、これ以上に強くなるためには、これしか……」
車田「……おまえ、まだ戸田のことを…」
岸本「ああ……」
岸本「 俺 は 復 讐 者 だ」
岸本「この大会は俺にとって単なる武闘祭じゃない。政権の打倒なんてのも関係ない。
『俺は強いのか?』
ただその答えが欲しい……、ここで強い奴と闘いたかっただけだ……」
車田「――――」
岸本「そして、そいつらはここにいる。いくら、あんたでも俺の道を奪うことは許さない……」
車田「岸本……」
岸本「俺は、あんた達とも戦いたい」
車田「…………!!」
その瞬間、部屋の空気がより一層キナ臭くなった。
まるで、破裂寸前の火薬を目の前にしたような圧迫感に、富沢は圧倒される。
そのとき……
??「待てっ!無益な争いはやめろ!」
車田「むっ?」
富沢「だ…誰だっ!?
いきなり控え室の扉を開け放って、現れたのはマントを羽織り、怪しい仮面をつけた謎の男だった。
誰何の声に、男が叫ぶようにして答える。
??「私の名は……
X 仮 面 っ !! 」
X仮面「私の名はX仮面!無意味な戦いはやめろっ!」
車田( X 仮 面 !! やつとは……どこかであったような気がする…)
明らかに正体バレバレなのだが、心の中で大ボケをかます車田。
それにツッコミを入れるように、富沢は詰め寄る。
富沢「だ…誰なんだ、あんたはっ?」
X仮面「私の名はX仮面!それ以外の何者でもない!」
富沢「絶対だなっ!」
X仮面「絶対だ!」
富沢「じゃあ名字はなんてんだっ!」
X仮面「う…エ、Xが名字だっ!」
富沢「じゃあもし栄子って女性と結婚したらX栄子になるのかっ!!」
車田「何やら話がつきないようだな……」
岸本「…………」
緊迫感溢れるムードに水を差された形で、2人は所在なさげに立ち尽くす。
車田「さっきの話だが……、お前が何を考えようと、俺は一向に構わん」
岸本「!」
車田「そもそも俺たちが同じ旗のもとに集ったのは、現・集英社の支配者、矢吹打倒のため……
それだけの目的のために、俺たちは協力してチームを作った……
それさえ終わっちまえば、漫画家なんてのは、ひとりひとりが敵よ、ライバルよ!」
富沢「車田先生……」
X仮面「…………」
何やら言い争っていた2人も、いつしか車田に聞き入っていた。
車田「俺は他人をとやかく言えるほど、大層な人間でもねえ。説教できる筋合いでもない。
だから、矢吹を倒した後ならば、戸田と戦おうが、俺と戦おうが、それは貴様の自由だ。
お前はお前の道を進めばいい。もし、その道が俺と交わるならば……」
岸本「………」
車田「俺は立ちふさがる全てを打ち砕くだけだ!この俺の中の小宇宙を燃やしてな」
歴戦の戦士としての気魄を込めた言葉に、室内が静まりかえる。
矢吹の部下が部屋に入ってきたのは、ちょうどそのときだった。
部下「抽選会の時刻が迫っております!出場選手の方々は、直ちに入場してください!!」
それだけを言って、部下は退出していった。
その後に、車田が先頭を切って、部屋の扉をくぐる。
車田「細かい話は終わりだ。今大事なのは、目の前の戦いに勝つ事。
こいつが終わらなければ、何も始まらんし、何も終わらん。全てはそれからだ」
岸本「同感だ、いくぜ」
富沢「で、でも車田先生、たった3人じゃ……」
車田「今言ったはずだ。この場にいない人間はアテにできんと。
それに漫画家ってのは、こういう危機的状況でこそ、
120%……いや200%………いや無限の力を発揮することができるはずだ」
富沢(こうなったら腹をくくるしかない!それにメンバーが少ない今だからこそ、目立つチャンス!!)
富沢も覚悟を決めた。
そして、3人はそれぞれの思いを胸に、部屋を後にしようとする。
そのとき、あの男が高笑いをし始めた。
X仮面「はっはは、さすがに車田正美!実にいいことを言う!気にいった、やはり俺も参加させてもらうぞ!!」
車田「おまえが…?おまえも漫画家なのか?」
富沢(車田先生……ひょっとしてまだ気付いてないんじゃ……)
車田正美、意外と大ボケ野郎であった。
まあ、そのことは、さておき。
X仮面「実はな、こういう状況が俺は一番好きなんだよ!!」
車田「こういう状況?つまり!?」
X仮面「ああ、つまり…だ」
にやりと不敵な、それでいて頼もしげな笑みを浮かべるX仮面。
X仮面「 逆 境 だ 」
逆境キタキタ━━━(゚D゚≡(゚D゚≡゚D゚)≡゚D゚)━━━━!!!
さあどうなるか…
545 :
KARMA:04/10/28 16:58:25 ID:TdUS1OEd
(
>>431 >>484等)
各ブロック控え室に向かい、一通り「お詫びの土下座行脚」を敢行した、
温泉慰労会幹事・裏御伽チーム副将にわの。最初にD控え室へ行ったのたが、
当時は富沢しかおらず、彼に向かって“ごめんなさい”をした。
「うーん、起こった事は仕方ないですよ。
それよりウチの選手を見かけませんでしたか?いない。はぁ・・・」
にわのはその後移動中の通路で安西と再会・変身し、
追いかけてきた岡村にコマゴマと叱られ変身解除。
すぐそこのA控え室に出向き中にいた巻来と、
影船〜蟲船と共に行動していた原に会い謝罪。
「・・・憎しみの心は悲しみを生むだけさ。
それがわかっているのなら、俺はこれ以上何も言わない」
春の森のようにどこまでも柔らかくにっこりと、
鬼酒漬け事件の加害者を許す巻来の微笑みが心にしみる。
──ところでバンチチームもDほどではないが人数が少ない。
北条は病院で入院中だが、回復次第で駆けつけてくるらしい。
三浦は通路のどこかでヨクサル(とゆで)の帰りを待っているそうだ。
柳川や秋本は目下消息不明との事。
彼らを見かけたらよろしく頼むと、原より伝言を承る副将たち。
藤崎の催眠術で情報を引き出されている副将だが、
自分を含めて多数の者を巻き込み魔道に堕とした諸悪の根元・
鬼酒こと『強者のエキス』の暗躍に未だ気づかなかった。
返す足でB控え室に向かったにわのと岡村だが、
通路の向こうから、地獄の釜が蓋を開いたかのような、
全てを見下し嘲笑うような男の哄笑が静かな空気を切り裂いた。
「何事だぁ!?」岡村の怒ったような声が廊下に響き、
彼は気配のする方向──カムイが膝をつき苦しみ呻いている──へ全力で走り出す。
546 :
KARMA:04/10/28 16:59:52 ID:TdUS1OEd
「あっ!岡村クン待ってよぉー」
血気盛んな男にツーテンポほど遅れて駆け出した副将は、
気がつけば道を間違え、知らない場所に出てしまった。はぐれたのだ。
そこは片面がガラス張りの渡り廊下で、見下ろすと試合場だった。
古代ローマのコロッセオと見まごうばかりの豪華な装飾で、
既に多くの客が席を埋めており、ここから見えるのは人間の頭部ばかりだ。
「すごーい!五階席まであるのか。最上段から、
ムーンサルトで飛び降りたらカッコイイかな?」
初登場時(3部)を思い出しムズムズしている男だが、
すぐに気を取り戻す。(そうだ、『蝕』とかゆーのがあるんだ。
漫画家同士の戦争にお客さんを巻き込むわけにはいかない。
未来視の一件は伏せるとしても、
せめて裏御伽のみんなには伝えなきゃ・・・)
自分とリプレイヤー以外にも未来に関わる者が何名もいる
(安西・かわぐち等)と知った以上、何も行動しないわけにはいかない。
しかし他力本願に近い≪慰労会≫は騒動と混乱を増やしただけだった。
仲間たちと相談し、少しでも迫り来る不幸を回避せねば・・・
(ボクは10年前、死んだみんなに幸運を分けてもらい生き延びたんだ。
今度はボクがみんなに返す番だ。立ち止まってるヒマはない・・・)
ふとよぎる男の顔。通信で会話した平野耕太。
彼は何を考えて小畑健のパーツを人質に、川原との対戦を煽ったのだろう。
チーム間に不和の材料を持ち込むため?
最強と謳われる川原に敗北の不名誉を背負わせるため?
暗殺しろとかならまだわかるが、これといった理由が思いつかない。
(やっぱあれかな、互いにボコらせて弱ってるところを、
襲っちゃったりするのかなー・・・ヤバイじゃんそれぇ!
今気づいたよ〜でも負けるわけにはいかない〜うわぁ〜。
こうなりゃ八百長を頼んで・・・とすると陸奥千年の歴史に不名誉が・・・?
てゆーかするわきゃない・・・わーんどうすりゃいいんだぁー!?」
547 :
KARMA:04/10/28 17:01:32 ID:TdUS1OEd
ここに来て頭を抱えて悩み転げるにわの。半泣きだ。
また一人で勝手に問題を抱えてくるかよこの馬鹿と、
脳内で修羅先生のお叱りを受けてしまった。
(やっぱり≪約束≫破りになっちゃうよ〜一緒に【真書】を捜してくれないよぅ。
全部黙ってボクが実力で川原せんせーに勝って内密に事を終えれば、
問題ナッシングなんだよなーもーそれしかないってー無理ーやだーまこリンのおバカ」
思考が途中から声に出ている事にも気づかず、
彼はガラスに顔と手の平をへばりつかせて、
勇壮なる地下闘技場を眺めはじめた。
・・・つんつんと突っつかれる背中の感触。
「なんですー岡村クン。言いたい事があるならはっきりと・・・」
「ねえ、君は試合の参加選手なのかい?
ぼくちょっと道に迷っちゃったんだけど、案内してくれないかな」
「・・・だ、だーれぇ?じつわボクも迷子さんなのですがっ」
「じゃあ駄目じゃない。困ったな、すぐ帰るつもりだったのに」
にわのが振り向くと、そこには大会記念のロゴ入りキャップを被った、
透き通った黒い瞳が印象的な小柄な少年が、
大会グッズのサッカーボールを両手で抱えて立っていた。
「ありゃ〜一般の方?でも雰囲気がなんか違うね。漫画家さん?」
少年はにわのの問いに答えず、ガラスの先の風景を見て笑っている。
「これだけいっぱい人がいるところは久しぶり・・・
なのかな?あまり昔の記憶が戻ってないからピンと来ないよ」
独り言を呟きながら、先程売店で買ったボールを蹴り始める。
リフティングの音がポンポンと、2人しかいない廊下で跳ね返る。
「へー記憶ないのかー大変だモン〜。
ねーボクまこリン!よかったら友達になりやがるモーン」
いつものお気楽口調で少年に話しかける副将。
「うーん・・・」
少年は悩むそぶりを見せ、足下のボールをにわのに向かって蹴り上げる。
「ぼくにはもう、ともだちはいっぱいいるみたいなんだけど」
548 :
KARMA:04/10/28 17:02:49 ID:TdUS1OEd
ふわりと浮いたカラフルなサッカーボールは、
副将の右足に吸い付くように収まる。一応経験者なのだ。
「友達は何人いても楽しいじゃん?百人こさえて遠足ですよ」
足裏、額、肩、膝、背中、爪先、鼻の上、胸、尻・・・
ボールは空中と副将の身体を何度も往復し、最後に再び少年の許に帰る。
「そうなの?ともだち同士がケンカを始めたら面倒だよ。
それにみんな忙しくて、ぼくはちょっと退屈なんだ。
たくさんいたって仕方ないよ。どうせみんな・・・」
深く被った帽子の鍔の下、ボールをスピンさせながら蹴っている、
少年の表情は微妙に見えない。ただ僅かに見える口元は──
「・・・みんな、最後はいなくなっちゃうからね」
薄く冷たく、笑っていた。言葉の真意はわからない。
「んなこたーねーってぇ。友達を信じてあげなくちゃー。
まあボクも人のこたぁ言えないけど・・・とにかく!
いい若いモンがそんなさびしー事ゆーてはいけません。
草野球チームが作れるぐらいには、いても全然困んないよ〜。
ほら今だって、ボクとキミとでシェイクハ〜ンドすればトモダチさっ!
カモーン少年〜あなたのお名前ナンジャラホイ?」
リフティングを止めた少年に差し出される、にわのの大きな右手と笑顔。
少年は視線をボールから副将に移し、自分を表すごく短い名を口にする───
それと同時に眼下の闘技場には選手紹介の映像が入り──
──ワァァァァァ── 「……ユだよ……」 ──ァァァァァァ──
「あれ?聞こえなかった・・・てゆーかボク選手じゃん!行かなくちゃ!!
じゃあねー少年〜答えは次の機会に〜シーユーアゲインだモーーーン!!」
慌てふためいて通路の奥に消えるにわの。最後まで少年に手を振りながら。
「へんなの」帽子を被った少年は再びボールを手に持つと、
誰もいなくなった渡り廊下を歩き、改めて駐車場への通路を捜し始めた。
入れ損ね
選手紹介のビデオ映像です。抽選会と新スレとどっちが早いかな
>20部438 21部448
時は少し遡り、福岡ドーム────。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ!!!!!」
五虎神の2人と突如現れた十傑集筆頭、山口譲司にあっさりと逃げられ、取り残された形となった板垣は空しい咆哮をあげていた。
怒りのあまり、力いっぱい踏みつけたコンクリートの床は陥没し、足をめり込ませていた。
その鬼神のような表情にはいくつもの血管が浮かび上がり、なんともいえぬ悔しさが満ち溢れている。
────無理も無かった。
他の漫画家の誰よりも“地上最強”の4文字を目指していることを自負し、
しかも、それを武器を用いず素手のみでなしえてみせるという強固な信念を持って今日まで闘い抜いてきた男、板垣恵介。
その鍛え抜かれた肉体から繰り出される突きが、蹴りが、かすりすらせず、何ひとつ通用しなかった。
それどころか、どういう原理かは想像もつかないが、まるで自分に攻撃が跳ね返ってきたように
───打たれ
───蹴られ
───叩きつけられ、無様に舞うはめとなった。
モデルのような優男相手に大の男が文字通り手も足も出ず、まるで操り人形のごとくもて弄ばれ、軽くあしらわれた、という事実。
一言で言えばようするに、 虚 仮(こけ) に さ れ た ということ────。
板垣にとって、これ以上の屈辱は無かった。
やり場のない怒りをどこにぶつければよいのか分からず、なおも体を震わせるしかない板垣。
しかし、わずかに聞こえてくる息遣いのようなものが、先ほど引き起こされたある光景を板垣に思い出させ、その意識を目の前の現実へと引き戻した。
思わずその方向へ急いで目を見やった。
その先には、山口の手により胸部を切り裂かれ致命傷を負い、その美しい肢体を血の海に浸しながら横たわっている斎藤岬の姿があった。
「“オーガ”と名高き、あなたでさえもああもやられ放題とは。……いや、人のことはいえないか。」
即死かと思われる程の出血と思えたが、かろうじて一命は取りとめていたらしく、ふらふらと立ち上がりながら斎藤が言った。。
よく見ると膝の部分に斎藤がいつも用いるあの巨大な針が刺さっている。
「………大摩流“肺脈血止点”、略して“血止”。 ちなみに痛み止めもかねている優れものでね。」
とっさに膝に存在する血止めのツボに針を突き刺し、出血を抑えていたのである。
「なるほど。……しかし、いくらツボを刺激したところで、流れた血を元に戻すことは出来ん。
そのまま放っておけば、おそらく命はねえな」
「……こんなときに他人の心配とは、板垣先生らしくもないな。」
冷酷に言い放つ板垣に対し、軽く受け流そうにも怪我のおかげで体力の消耗が激しく、思わず壁に寄りかかってしまう斎藤。
それを見ていた板垣は何を思ったか、おもむろに近づき、斎藤の上半身の衣服を強引に掴んだかと思うと、一気に引き裂いた!
ベ リ ベ リ ッ!
本人の言うとおり着やせするタチなのか、“ぼいん”とまではいかないが斎藤の形の整った美麗な乳房があらわにされた。
雪のような白い肌に、切り裂かれた痛々しい傷跡の血の赤が鮮やかに彩っていた。
「……きゃアッ!!」
突然に牙をむいたこの男の獣性の激しさに、恐怖と羞恥心を押さえ切れなかったのか、
これまで冷静で捉えがたい態度を崩さなかった斎藤から初めて、いかにも女性のそれらしい悲鳴があがった。
「聞こえたか───。今、おまえがあげた悲鳴こそ女の限界。
男であるならば身が危険にさらされたときたとえどんな軟弱者でも今のような悲鳴をあげることはない!
───気丈に美男子を演じてはいるがしょせんは女ということだ」
板垣の、女という存在をあまりにも見下した傲慢かつ性差別的な物言いに、思わず反発を覚えた斎藤。「……ついに本性を現したか! 鬼というよりはまるでケダモノだな。……見損なったよ」
はき捨てるように皮肉を言い返したものの、内心では、絶望的な恐怖と闘っていた。
そんなことを言っている間にも板垣の巨体がズン!と目前まで迫ってきているのだ。
針で抵抗を試みようにも、体が思うように言うことをきかなかったし、通じるかどうか。
あの“オーガ”をまんまと誘って利用したと思ったのにこのような形で裏目に出てしまうとは───
斎藤は自分の判断の甘さを呪うとともに、もはや半ば陵辱されて無残に殺される自分の姿を覚悟した。
それでも絶体絶命の状況でありながら、なお毅然とした表情を崩さなかったのは、さすがは“魔界医師”の弟子といったところであろう。。
“本来の獣性”を取り戻して以来、凶暴化の一途をたどる板垣恵介。
とうとう少年誌の描写の限界まで突き抜けて、目前の女に容赦なく牙を向ける野獣と化してしまったのか!?
しかし、“野獣”のとった行動は意外なものだった。
板垣はズボンから何か塊のようなものを取り出すと口に含み、しばらく噛んでから吐き出して斎藤の胸の傷の部分に押し付けた。
「薬草を練り合わせた軟膏だ。効果はたとえ胴体がちぎれても有効なシロモノだ」
自衛隊出身である板垣ならではの手馴れた応急処置法だった。
予想外の行動に戸惑いを隠せない斎藤。
しかし、板垣がすぐさま背を向けて、先の激闘で負った自分自身の怪我にも同様の処置を行うのを見ると、治療の為に携帯していた包帯を用いて残りは自分自身で傷の手当てを施した。
「……ありがとう」
「で、どうする? 奴らが慌ててとんずらこいたのをみると、
別府、いや下手したら九州全土が相当ヤバいことになりそうだが」
とりあえず礼を言う斎藤の言葉を無視して、板垣が肝心の問題を切り出した。
「うむ。おかげで何とか“急所”を断つことができたと思えば、お次は王蟲の大群と来たものだ。
ただ、それがゴッドハンドではない第三者の何者かによって引き起こされていることだとすれば──」
「連中が、いくら計画を狂わされたとはいえ、わざわざ王蟲を喰い止めてくれる、とでも?」
「九州の一般市民まで巻き添えにされるの放置するのは神を気取る誇り高いあの連中のやり方ではないだろう」
ゴッドハンドだけではなく矢吹達も九州を救うべく暗躍していたわけだが、2人には知る由もない。
「手下にこんな術使わせて住民巻き添えお構いなしの好き放題やらせてるくせに?」
当然の疑問を口にする板垣。
「私もそれは疑問に思ったのだが、組織の内部も一枚岩ではないのだろう。
さしずめ、あれはあの2人の独断による暴走といったところかな」
腑に落ちないような表情を浮かべた板垣だが、とりあえずは納得したのか、押し黙った。
なおも話を続ける斎藤。
「噂によればゴッドハンドは漫画界において最大最強の戦力を隠し持つ集団と聞く。
それらを総動員させれば、王蟲の大群ごとき喰い止めるのも造作もないことだろうな。
そして、私の師もおそらく彼らに助太刀すべく、すでに動き始めているはず」
「あの“魔界医師”が?」
意外そうに問う板垣。
「師は腐りきった漫画界そのものに見切りをつけ、半ば傍観者を決めこんでいらっしゃる。
──しかし、一般人がその巻き添えをくらうのを平然と見逃す方では決してない。
メフィスト病院の人手をフルに生かして九州各地で大々的な治療に取り組んでいるだろう。
できればそこに私も合流し、協力して住民の治療に専念したいところだが───」
「それ以前にてめえ自身が世話になる必要が大有りだがな」
板垣が意地悪く皮肉ったが斎藤はとりあえず反論はしなかった。
先程行ったのは応急処置に過ぎず、自分の容態が危険なことに変わりはないのだから。
「───となれば話は決まりだ。」
聞きたいことは無くなったのか、話を切り上げるや次の行動に移る板垣。
次の瞬間、斎藤はまたも自分の目を疑うこととなった。
「 乗 り な 」
斎藤に背を向けてしゃがみこみ、おぶってやるとでもいいたげな体勢を取る板垣の姿。
いったい何を考えているのか全く予測が付かない。理解不能である。
この男の斜め上の行動にもはや完全に自分の方が翻弄されていた斎藤岬であった………。
色々来てるなー
キユは本当に暇そうだ。板垣はエロワロタ
>板垣
もちろんこの後したらばでSAGA編をやるんですよね(笑
板垣はオーガ化してから本当に魅力的なキャラになったなー
勇次郎ってリアル板垣の理想像だからまさにハマリ役だし
一応、味方サイドのキャラではあるが、荒木や車田とかと違って何をしでかすか分からない危うさがあるので、色んな意味で目が離せない
板垣SAGAマダーチンチン
470KB超えたし、そろそろ次スレへの引きを作らねばね
板垣の次の行動を予測せよ
・バイクを素手でブッ壊す
・水面を走る
・斉藤に手料理を振る舞う
‥‥‥いかん、奴は本気だ!w
傀儡の舞って、おもくそ軍師の意向じゃなかったか?
軍師ジサクジエーン説もありやで
少なくとも軍師が明確に指示した形跡は無い
当時ずーっとワンちゃん追い掛けてた最中だったしね
いや、それより前の話>傀儡の舞、明確でない指示
俺もちょっと記憶曖昧なんで、誰かレスとスレ知ってる人居たら教えて欲しいくらいなんだが…
うーむ
わかった15部182にあった>563
軍師は漫画家連中の不仲と競争心を煽るため傀儡の舞実行を蛭田さんに指示してる
軍師キョワー(あと16部421を見る軍師なかなかエグイ……)
ん、これで全部繋がったな。
つまり横山は蛭田に傀儡の舞によって漫画家間の不仲を煽れと命令。
蛭田はそれを曲解、もしくは誇大解釈して、別府住人まで巻き込む大惨事を引き起こす。
だが、横山としては結して一般人をも巻き込むのは本意では無かった(21部448より)
しかし蛭田が指示と筋違いのことをしたわけではないので罰さず、己の心中で吐露するに留める。
って感じじゃね。
斎藤が暴走、と言ってるのもその辺のやり過ぎの部分では
って長々と理屈を捏ねたが、基本的にこのスレの登場人物の行動なんて、
書き手次第でコロコロ変わるんだからあんま深く追求するのも良くは無い罠。
565はスルーしてちょ
>564
ありがとう
あーこれかあ、俺の違和感の元は
>565
そう脳内補完するしかなさそやね
困った連中だなあ十傑集
関係ないけど最近山口隊長の某大奥漫画が大好きだ
新スレの準備は明日辺りにでも
皆さん、どうもすみません。
傀儡の舞に関しては、横山の指示だということは覚えていたんですが、
21部448以降で民間人を助けている描写もあって、
頭の整理が付かず、こういう書き方になってしまいました。
いざとなれば斎藤の勘違いということにでもしといてください。
なにぶん、書き込むのは初めてだったもので。では。
>569
基本的にこの手の矛盾は多いから、全然気にする必要無いよ。
今回たまたま突っ込み入っただけで普通にあるレベル。
(´-`).。oO(初めてか…大器だな…(?)) おもろかったし気にしないで〜
てか、一人は潰えたが新書き手二人目か?
良い傾向だなぁ〜
>569
あまり気にしないで
責めようとかそういうつもりはまるで無く
「この先どういう行動原理で動くか」に関わるので、確認しただけだから
新書き手か、乙
しかし、そのあたり読み返したが蛭田ってアブねーなあ
コータローモードのときはお調子者のスケベだが、あの漫画って結構キティキャラ多いからな
ぶっちゃけこのスレ読み手=書き手の人多いから目の付け所が斜めなんだよね。
この話単品だけで考えれば、単なる斎藤の推測なんだから何も不思議なことは無い。
それなのに、書き手的な視点から、そういう推測が出てきた原因までこんな場所で探ろうとする。
そういう書き手同士の情報交換する場所どっかになかったですかと問いたいわ。
576 :
568:04/10/29 12:01:54 ID:ovV23Ob3
ごめん五虎将だった
>>403 >>513のつづき
エリア88……
その海域はまさに地獄だった。
すでに第3艦隊は、旗艦であるエリア88を除き、全ての艦船が沈没。
血と重油がとめどもなく海に流れだし、洋上に尽きることのない火炎地獄を広げ続けている。
まともな神経の持ち主ならば誰もが目を背ける地獄絵図を見下ろしながら、ただひとり大歓喜に打ち震えるものがいる。
平野「これだ!!これが見たかった!!ああ すごくいい!!」
ビヤ樽のような腹部をそびやかしながら、平野は諸手をあげて自らの演出した地獄の出来栄に喝采を送る。
その背後に、影が湧き出るように、黒子の衣装を着た男が唐突に現れる。
高橋葉介『準尉』。
実力をひけらかすことを好まない彼は、最後の大隊におけるこのポジションをそれなりに気に入っていた。
葉介「倉田死んじゃったよ、少佐。虫みたいに」
平野「ははは、やっぱりな。馬鹿な男だ」
やはりというべきか、同胞の死に平野は眉ひとつ動かさず、むしろ愉快げに笑みすら浮かべる。
平野「敗北(ほろび)が始まったのだ。心が踊るな」
葉介「非道い人だ、あなたは」
冷笑すら浮かべて、葉介は言う。
葉介「何奴も此奴も連れて回して、一人残らず地獄に向かって進撃させる気だ」
平野「 戦 争 と は そ れ だ
地 獄 は こ こ だ 」
平野「私は無限に奪い 無限に奪われるのだ。
無限に亡ぼし 無限に亡ぼされるのだ。
そのために私は 野心の昼と 諦観の夜を越え 今ここに立っている」
血と火の粉を孕んだ風が、【Neo-“Z”】の甲板に立つ平野のコートの裾をなびかせる。
狂気の愉悦に満ちた目が、やがてこの海域に接近してくる存在をとらえた。
平野「 見 ろ 」
バババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!
地獄の歯車が鳴るように空を震わせたのは、数えきれぬほどの軍用ヘリのローター音。そして、東の空を、夥しい機影が埋め尽くす。
その光景をさえ、身震いしながら見つめる少佐は、歌うように言った。
平野「 敗 北 が 来 る ぞ
勝 利 と 共 に 」
炎の色に染まった空を切り裂いて、黒い編隊が飛ぶ。
奴らは死と破壊を振りまく、戦争の犬たち。
奴らが付き従う旗印は、神にあらず、ただひとつ。
紅い空を漆黒に染め直す軍団の、先頭を疾走するのは、『髑髏』のエンブレム。
死を持たざるモノどもに、死を運ぶ為にきた、鮮血の天使たち。
奴等はただ、その旗印のもとにのみ、忠誠を誓った者たち。
ア ル カ デ ィ ア 到 着 !!!!
【えなりの奇妙な冒険〜冨樫の遺産編第23部】につづく →→
(
>>497 >>542 >>545)
「どうした!?大丈夫かよカムイさん!」
「・・・岡村か。ああ、大丈夫だ。敵チームの視察か?」
異様な声と雰囲気に気づき駆けつけた岡村が見たのは、
身体中に震えと脂汗を滲ませながらも自分の足で立ち上がる“勇者”の姿だった。
「バカ、何言ってんだ。下手くそなジョークだぜ。
何があったか知らねえけど、無理すんなよ」
「・・・そうだな。倒れるなら闘って、前のめりに、な。
─――さあ抽選会へ向かうか!お手柔らかに頼むぜ」
ことさら明るい口調で、精一杯の笑顔のカムイ。
心配する岡村に広い背中を見せ、堂々とB控え室へと去っていった。
「・・・本宮さんに逢えてよかった。裏御伽に入れて本当によかった。
俺は街のクズじゃねえ、偉大なる敵手と同じ舞台に立てる・・・漫画家なんだ・・・」
誰にも見せない涙を一粒廊下に残し、岡村は笑顔でC控え室に戻る。
置いてきた副将の事はすっかり忘れていた。
―――――――― 史 上 最 大 の 戦 い 始 ま る ――――――――
矢吹艦地下闘技場。矢吹艦の中枢に建設された、10万人収容の超巨大建設物。
矢吹健太朗が財の限りを尽して建築した戦艦の中でも、最高級の贅を尽くしている。
古代ローマで拳闘士たちが様々な戦歴を残した伝説の建造物≪コロッセオ≫に酷似したそれは、
地面からの位置が100メートルはあろう天上の部分がドームに覆われており、
その上には矢吹専用VIPルームがあり、彼1人のみがこの闘技場を足蹴にできるという。
世界中の注目が集まっていると言われる漫画家たちの血の祭典は、
代表4チームが決まりいよいよ“本戦”に突入した。
書類選考で数千人集まった参加希望選手も、全員の顔や名前が覚えられるほどに絞られたのだ・・・。
“ ワァァァァァァ―――――――――――――・・・・!!!! ”
一向に止まぬ会場の歓声。克と橋口が送る特別番組も慌しさを増す。
『こちらレポーターの余湖じゃん!地下闘技場周辺はすごい混雑じゃん!
各国マスコミ報道関係者はもちろん、世界中からお客が集まってまーす!』
マイクとパペット人形を持った余湖がカメラに向かってしゃべっている。
立錐の余地もなく満杯となった会場から溢れた客が周辺の場外モニター広場に群がる。
外部から興奮が伝播し、うねるような歓声の中、ドーム内の照明が少しずつ減少してゆく。
気づいた頃にはプラネタリウムのように、観客は真っ暗な空とドーム状の星空に包まれていた。
「おお〜っと!なんだありゃあ!」客のひとりが驚いて上空を指差す。
透明のクリスタルボードが4枚、どこからか飛んできて東西南北にパネルを向け空中に止まった。
≪みなさん、矢吹艦地下最大トーナメントの会場へようこそいらっしゃいました。
当大会はご存知のように、各試合ごとのルールに則り勝ち上がって優勝を決めるものです。
命と誇りを賭け、矢吹様より地位と名誉と賞金を賜るために闘う勇士達の顔見せの前に、
我らが英雄・矢吹健太朗様より観客の皆様へ、直々にご挨拶を申し上げます―――≫
アナウンスと同時にざわめき立つ会場。会場の北部中央には巨大な祭壇が建っている。
十字の星が天を突き刺す、搭のような意匠の祭壇が観客を睥睨する。
案内の声が≪みなさま、天の中央をご覧ください≫と入り―――
「ああ!な、なんだあれはー」「矢吹様が銀河の上を渡って来るぞー!」「素敵ィ!星の王子様ね!」
吊っているのか見えない足場か、矢吹軍のマーク・黒猫を模した黄金の杖を持った、
細かい仕事を部下やCLAMPや久米田に押しつけた矢吹が豪奢なマントの軍服姿で、
宙に浮かぶ、クリスマスツリーの連結ライトの如き煌びやかな光の海を、一歩一歩進んで祭壇へと向かう。
「―――ようこそ、諸君。この矢吹健太朗が贈る最高のショーを楽しんでいってくれたまえ」
矢吹が威丈高に黄金の杖を振り上げると、天に掲げた杖の先から4つの光が発せられ――――
―――照明が一斉に回復した闘技場の中央に代表選手たちが屹立し―――
――――A〜Dの文字が刻まれた流星の玉が、それぞれ原、カムイ、本宮、車田の手の平に納まった。
この4つの玉を使って抽選会を行うのだろう。理解した観客たちがやんやの声を矢吹に送る。
選手一同 ((((これ車田先生のネタだーーーーーーー!!!!)))) そこまでやるかパクリ王!
次回23部【聖闘士えなりの奇妙な冒険〜ダイヤモンドダストは星の涙を見る】にTO BE CONTINUED!!(嘘)
では新スレ立てられる方募集〜
テンプレはしたらば参照で
すげー乙
まとめ作りたいお方いますか?募集してみたり
_ ∩
( ゚∀゚)彡 矢吹!矢吹!
⊂彡
待ち
_ ∩
( ゚∀゚)彡 職人!募集!
⊂彡
hosyu
_ ∩
( *゚∀゚)彡 SAGA!SAGA!
⊂彡
(ノД‘) ダレカ…
月曜まで待ちます…('A`)
では今週中に書かさせていただきます…と保守
妖精さんが保守
そろそろ
>>4 前スレまでのあらすじ
【白い狂気〜戦艦ヤマト編1】
■九州が王蟲に蹂躙されたのを受け、住人たちの救助に回るゴッドハンドに“新戦力”現る。
ヒトの断片 ――――――――――――― >7 >8 >9
福地と高橋 ――――――――――――― >259 >260
懐かしの温泉編 ――――――――――― >261 >262
福地とKIYU ――――――――――――― >263 >264
ヤマト艦長・松本零士 ――――――――― >121
銃と槍と錬金術師 ―――――――――― >179 >181 >183
【慰労会終了〜矢吹艦帰参シリーズ】
■矢吹艦と海上に二分した別府市周辺では、騒動で散らばった漫画家が収束しつつあった。
新しい日を迎えるために ――――――― >12
矢吹の歴史がまた1ページ ―――――― >31
広い部屋 ―――――――――――――― >37
真倉君の華麗なる脱出 ―――――――― >66
漫画家ミーティングin無礼ド ―――――― >73
さよならも言えないで ――――――――― >93 >94 >95 >96
未知との遭遇 ―――――――――――― >149 >150
恐怖!キノコカビ男 ――――――――― >189 >205 >206
ガンガン最後の重鎮 現る! ―――――― >276 >277 >278(>279)
カミヨミの姫 ――――――――――――― >340 >341
(つづき)
■一方自分から騒動の火種を増やしたり、無駄に巻き込まれる困った漫画家も何名かいた。
真・ジャンケン冨樫がやって来る! ―――――― >42 >43 >44 >45 >46
真・ジャンケン冨樫がやって来る!A ――――― >86 >87 >88
真・ジャンケン冨樫がやって来る!B ――――― >122 >123 >124 >125 >126
真・ジャンケン冨樫がやって来る! 〜有耶無耶?〜 >160 >161 >162 >163
冨樫は… ――――――――――――――――― >164
ベイリーメロン完結編 ―――――――――――― >207
完全なる設定VS完全なる理不尽 ――――――― >208
悪魔超人の力 ――――――――――――――― >221
等身大の対決!! ――――――――――――― >229
はざま ―――――――――――――――――― >216 >217 >388 >389
あの空に星は見えたか ――――――――――― >318 >319
たしかこの二人は出て無かったよな ―――――― >342 >343 >344
松江名と謎の少女 ――――――――――――― >321
空白の松椿(回想) ―――――――――――― >322 >323(>327) >324
回想終了〜そして現在 ――――――――――― >325
翼音、再び ―――――――――――――――― >326
祭りの後 〜オーガ再動?〜 ―――――――― >550 >551 >552 >553 >554
(つづき)
■矢吹軍の方では着々と大会決勝戦の準備が進んでいた。大小さまざまな波乱を含みつつ。
いざ決勝トーナメントへ!! ―――――― >239
狂騒の残滓 ――――――――――――― >249
天空の塔 ―――――――――――――― >333
再会 ―――――――――――――――― >350 >351 >352 >353
無礼ド・浮上開始 ――――――――――― >447
華麗なる襲撃者 ――――――――――― >440 >441 >442 >443
無礼ド内部の死闘、再び ――――――― >448 >449 >450 >451
ムカシの自分 ―――――――――――― >452 >453 >454 >455
ストレイト・ジャケット ――――――――― >458 >459 >460 >461 >462
地階の決戦場 ―――――――――――― >471
フォーチュナー ―――――――――――― >482 >483 >484
大会にひそむ影 ――――――――――― >495 >496 >497 >498
えなりチーム・最大の危機! ―――――― >500
抽選会直前・えなりチーム控え室 ―――― >537 >538 >539 >540 >541 >542
ぼくらの銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ) >580 >581
【家族〜裏御伽チームの過去と現在】
■深海で過去と対峙した本宮は、過去を背負いきれなかった副官ごと愛する仲間達を抱き寄せる。
やまと入港 ――――――――――――― >13 >14
『やまと』艦長・かわぐちかいじ ――――― >16 >17 >18 >19 >20 (やまとは
>>601へ)
噂の男 ――――――――――――――― >25
不気味な泡 ――――――――――――― >52
英傑たちの挽歌 ――――――――――― >55 >56 >57 >58
夢で逢えたら ―――――――――――― >61 >61 >63 (>64)
セカイノムコウ ―――――――――――― >76 >77 >78 >79 >80
黎明の空に ――――――――――――― >104
ゆかいなゆうかい ―――――――――― >109
パラドックス・パラダイス ―――――――― >131 >132 >133 >134 >135
>136 >137 >138 >139 >140 >141
修羅と道化師 ―――――――――――― >142 >143
心の処方箋 ――――――――――――― >167 >168 >169
会うは別れのはじめとか ――――――― >223 >224 >225 >226 >227 >228
怪奇千万!裏御伽 ―――――――――― >292 >293
雨のち曇り、時々晴れ ―――――――― >299 >301 >302 >303
昔々のおはなし ――――――――――― >362 >363 >364 >365
終わりの風景 ―――――――――――― >377 >378 >379 >380 >381 >382 >383
赤龍が昇る空 ―――――――――――― >426 >427 >428 >429 >430 >431(>432) (蟲船は
>>597へ)
【希望・さらなる戦い〜評議会黒軍基地】
■再起を誓い、基地から脱出する黒軍メンバー。しかしそれは真の戦いの序章でしかなかった。
暗号名はBF ―――――――――――――― >27 >28
任務完了 ――――――――――――――― >39 >40 >41
シビビーン・ラプソディー ――――――――― >247
【えなりの奇妙な自発的冒険〜矢吹艦バトル】
■別府浮上を目撃したえなり達は、外的要因で鬼畜道に染まった宮下の襲撃を受ける。走れ主人公!
黄金の闘志VS鋼の肉体 ――――――――― >90
冷たく熱い戦争 ――――――――――――― >91
シルバースピリッツ ――――――――――― >147 >148 >204
ENARI A GOGO!! ―――――――――――― >211 >215 >222
えなり、地獄のデート? ――――――――― >240 >241 >242 >243
けっしてひとりをいのってはいけない ―――― >253 >254 >255 >256 >257
均衡崩れる ―――――――――――――― >425
怪人皇帝 ――――――――――――――― >528 >529 >530 >531 (車田は
>>597へ)
【剣鬼〜砂漠基地チャンピオンRED】
■一晩続いた戸田達の乱闘は意外な形で決着、新たなる戦場に向かう者。そして目覚めし剣鬼…!
嘲笑と戦慄、暗黒と黄金 ――――――――― >97 >98 >99 >100 >101
敗走 ――――――――――――――――― >103
死神との再会 ――――――――――――― >153
石渡の誤算 ―――――――――――――― >154
異能の男 ――――――――――――――― >155 >156
さらなる乱入者 ――――――――――――― >157
去り行く魔物たち ―――――――――――― >182
反逆者、新たなるステージへ ――――――― >184
剣鬼の目醒め ――――――――――――― >185 >186
【(白+黒)×闇=顔のない男〜藤田・三身合体】
■分裂した3人の藤田和日郎、最終的に三身を全て我が物にしたのは“黒藤田”なる悪夢の具象物。
新たなる悪魔 ――――――――――――― >34 >35
キジムナー ―――――――――――――― >68 >69 >70
キジムナー2 ――――――――――――― >112 >113 >114 >115 >116 >117 >118
邪悪誕生 ――――――――――――――― >127
産声 ――――――――――――――――― >366 >367 >368 >369
【ちょっぴりたいくつな日〜KIYU】
■内藤を強奪され、施設も破壊がひどく戦力ダウンのKIYUは事後処理に忙しい。しかし暇な盟主は…。
マッドサイエンティスとミュータント ――――― >106 >107
愛=理解!! ――――――――――――― >146
KARMA(
>>598) ―――――――――――― >545 >546 >547 >548
【Jupiter〜戦艦ヤマト編2】
■鹿児島湾近くの海域――原子力空母≪エリア88≫率いるGH軍第三艦隊は、朝日と共に地獄を迎えた。
戦いの序曲(プレリュード) ――――――――― >190
深海のアマデウス ―――――――――――― >192 >193 >194
地獄の群れ ―――――――――――――― >195 >196
集結 ――――――――――――――――― >290 >291
アサイラム ――――――――――――――― >294 >295 >296 >297
最後の大隊侵攻中 ――――――――――― >391 >392 >393
即席の反攻軍 ――――――――――――― >395 >396 >397
黒き猟犬たちの王 ――――――――――― >435 >436 >437
増援集結 ――――――――――――――― >403
どちらかというと援軍っぽい ―――――――― >404 >405 >406 >407 >408
黒船の真実 ―――――――――――――― >414 >415 >416
功夫を積む男 ――――――――――――― >433
Maneater ――――――――――――――― >503 >504 >505
狂者(きょうしゃ) ――――――――――――― >510 >511 >512 >513
黒の創世記 ―――――――――――――― >521 >522 >523 >524
地獄の開幕ベル ―――――――――――― >577 >578 >579
602 :
終わり:04/11/13 04:34:39 ID:iQph0HKL
なんかミスなり訂正なりがありましたらご連絡ください。
長々お待たせしました〜
まとめ乙!
しかし、何やかんやで事後処理に丸まる1スレ以上かかってしまったな
お疲れ様
まとめ乙です。
で、リンクミスハケン。
× 夢で逢えたら ―――――――――――― >61 >61 >63 (>64)
○ 夢で逢えたら ―――――――――――― >61 >62 >63 (>64)
よっぽど>62(>64)を認めたくなかったのでしょう>ミス
ありがとうござります
('A`)ヘゥ
もちろん606さんには感謝のココロですよ
誤字なんか大嫌いさ
乙w
しかしサッカーの先行きがちっとも読めんな。
えなり負けもありなんだろ?
ありだけどそこは少年漫画のお約束通りに…
いかないかもなえなりだし。
23部はそこそこペース早いね
去年の今頃は14部なんだよなあ
奇跡の一年だった
23部での質問よりこっちにカキコ
≪妖魔王十二使徒+α別府翌日(午前中ぐらい)現在の位置メモ≫
麻宮
藤田 →見えない学校にいる(22部)
叶 →恐怖新聞病で行動不可(前から)
河下
小林 →別府より帰参(18部)たぶん学校 三条の治療中?
伊藤 →エリア88(23部)
大暮
田口 →和月とヤマト方面へ向かう(22部)
杉浦 →学校図書館でまったり(16部)
高田 →学校だとは思うが自信ない(情報求む)
森野 →たぶんガッコ(16部)
八房 →森川と共にキユドライブに引っかかったっぽい(21部)
おまけの萩原 →高橋ツトムが回収した(19部辺り)
※高橋葉介は平野んトコ。闘神とか除いた残りの大罪衆は和月と一緒かもしれないが不明
参考にどんぞ
稲田は鳥山と戦闘中
あと、和月たちは煉獄に乗って、エリア88の近くにいたはず
補足ありがと〜
ありがとうございます。近日中に1品仕上げる予定です。