【バキ】漫画SSスレへいらっしゃいpart12【スレ】
鬼の連撃が、ゼットンにヒットする。といっても当たるのはカカトの辺り。どんなにジャンプしても、
ふくらはぎの半ばが限度だ。
絶対的に大きさが違うのである。物理的にこれは、どうしようもない。ゼットンにとっては勇次郎が
何をしようと、蚊にさされたようなもの。いや、痒みを生じさせることができるだけ、蚊の方が
マシかもしれない。今の勇次郎の攻撃では、ゼットンを昼寝から起こすこともできないだろう。
「ち、ち、ち、ち、畜生おおおおぉぉっ!」
殴っても殴っても、ゼットンは意にも介さない。勇次郎に背を向けて、歩いていくだけである。
攻撃を止めて振り向いてみれば、隕石(ウルトラマン)が倒れている。その、焼け焦げた胸の光が、
どんどん、どんどん弱くなっていく。……直感的に勇次郎は察した。あの光が消えた時、隕石は死ぬと。
『俺は、俺は絶対に死なねぇんだ! そんな俺を、弱いお前が、勝手に庇っ……くっそおおぉぉ!』
勇次郎は攻撃を再開するが、何も変わらない。ウルトラマンから離れた今となっては、派手な
必殺技なんかもないし、できるのはせいぜい殴ることと蹴ることと、それから……
「……っ! そうだああぁぁっ!」
勇次郎は一旦下がって、それから猛然とダッシュ! した。ゼットンに追いつくと、そのカカトから
ふくらはぎ、太ももの裏側、そして腰から背中へと、垂直にズドドドドッと駆け上がっていく。
一体何をする気だ、と刃牙たちが見ている前で、勇次郎はあっという間に数十メートルを駆けきって
ゼットンの肩に到達、そこから更にジャンプした。
「噛みつく時はぁぁ! 狙いをぉぉ! 頚動脈のみに絞るのがぁぁ! 得策ううううぅぅっっ!」
落下して、がぶっ! ゼットンの首筋に噛み付いた。もちろんそんなものでは、相変わらず
ゼットンにとっては痛くも痒くもない。
が、勇次郎はそこから、がぶがぶがぶがぶがぶ、喰いちぎって喰いちぎって、喰い掘って喰い掘って、
あっと言う間にゼットンの体内に潜り込んでしまった。
「ま、まさか親父っ!?」
刃牙が叫んだ、そのまさかだった。ほどなくしてゼットンが、唐突に歩みを止めたのである。
そして胸に手を当て、腹に手を当て、掻き毟り、のけぞり、膝をつき、倒れ、のた打ち回った。