【バキ】漫画SSスレへようこそpart11【スレ】
そして三十年。その有人探査船は、修理され改造されて帰ってきた。母国、そして地球への復讐の為に。
だがその彗星は、地球人が生息できるような場所ではない。他の生物も存在していないはずである。
○○○の科学者によると、おそらくは彼が、一滴の水もない苛烈な環境の中で己の肉体を進化……
変化させ、別の生き物になったのであろうと。その予想される姿は、水分を失いきって
白く干からびてヒビ割れた、地球人とは似ても似つかぬ、とてつもなく醜悪な……
「ちょっと待った!」
刃牙が、叫びながら立ち上がった。
「そ、それじゃあ、俺たちが昨日戦ったのは、いや、今からまた戦うかもしれないのは、」
「その通り。れっきとした地球人、母国に見捨てられた男じゃ。名前はジャミラという」
「……!」
刃牙が絶句していると、隣で正座している渋川が静かに言った。
「刃牙さんや。事情はどうあれ、その瞬間その瞬間、こちらを狙ってくる相手に対しては、容赦
してはならんぞい。でなくば、生き残れん」
「そ、そんな。確かに、武道家としてはそれが正しいのかもしれませんけど、」
「いや。人間として、じゃ。わしは嫌と言うほどそれを味わってきた。大陸でな」
はっ、と刃牙が息を飲んだ。……渋川は、戦争を経験している。喧嘩でも試合でもない、本物の
殺し合いを。格闘家や犯罪者(死刑囚とか)とは根本から違う、「兵士」と戦ってきたのだ。
ジャミラは既に、地球上で殺気を持って暴れている。もしまだ生きているのなら、止めねばならない。
「だ、だけど……そうだ、ジッちゃん! ジャミラの家族とか恋人とかが説得して、奇跡が起こって、」
「無理じゃ。ジャミラは全くの天涯孤独の身。友人や恋人と呼べるものもおらん。あえて言うなら
タンポポが好きで、世界でも珍しい種である日本のタンポポにも興味を示しておったとか」
「タ、タンポポって……」
ここまで、じっと話を聞いていた独歩が、ぽつりと言った。
「あるいは最初の探査船打ち上げが、結構ヤバめのバクチだったのかもな。他国との競争を焦って」
「なるほど。失敗の可能性を色濃く考慮した結果、天涯孤独の男に白羽の矢を、か」
烈が後を受ける。刃牙が、大きく目を見開いて、声を震わせた。
「そ、そ、そ、そ、そんなっ! そんなの、いくらなんでも、ひどすぎるっっ!」