【リレー小説】えなりの奇妙な冒険〜冨樫の遺産編第12部

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91Nの鼓動
スーパーロボットたちの最後の激戦が始まろうとしていた頃、
戦場から数?H離れた場所で、一台の超大型トレーラーが荒野を激走していた。
その内部。
??「“静”!! 富野先生の位置は出たか!」
通信機に向かって、長髪の若い男がしきりに何かを言っている。
それに応えたのは、穏やかな女の声だった。
静「はいっ! ですが、超巨大な質量が突如として出現しました! マスター、これは!」
??「……恐れていたことが起こったか。この位置からではギリギリだな。戦闘体勢と同時にテレポートだ!」
静「危険です! テレポート使用後はパワーが25%に。フルパワーコマンドで15分しかもちません!」
??「かまわん! イデが暴走してからでは遅すぎる! セッティング急げ!」
静「わかりました! では戦闘モードを対スーパーロボットにプログラムを!
  テレポート後、フルパワーにセット! パワーコントロールは1対1対3対1対1、
  ジェネレーター出力バランス、5、2.5、2.1、3
  重力変更、カラミティ星のパワーモードよりプラス0.0002
  サスペンションポイントA-B-B-A-C-E-D-Dにバイパス、リリース!
  冷却シールド油圧バイパス正常! カムギアトレインシンクロ!
  火器コントロール 180mmHE(榴弾。当たると爆発する、通常弾と呼ぶことがある)、
  AP(徹甲弾。装甲を撃ち抜く砲弾、爆発はしない)、
  HESH(粘着榴弾。当たると張り付いて衝撃波で内部を破壊する砲弾)、
  FSDS(飛行安定翼付ミサイル弾)、
  T.S.マイン(グレネード弾。空中で爆発するSマインと地表で爆発するTマインがある)共、
  ローディング中! あと10秒!」
??「対人レーザーを対物ブラスターに30mmMK108を、いや103だ!」
静「了解! 主軸武装MK103モーターカノン(胸部ジェネレーター内に装備する固定レーザーマシンガン)発火用電源入れます!
  マスター、メインウェポンの選択を!」
??「“エネルギーソード”をたのむ!」
静「え? それは最高機密兵器です! 実戦での使用例は2例しかありません!」
92伝説を打ち砕く者:03/09/09 12:46 ID:zaql8zpU
竜の船の口の先より、白く輝く弾丸が発射され、イデオンのバリアーを砕く。
だが……。有賀「真剣白刃取りぃだとぉ!」長谷川「小惑星なら一撃で砕く星の涙(スターティア)さえ効かないのかぁ!」
吉富「……こいつ等を食うのには3時間ばかりかかった…使うのは1瞬だ!……完成!」
竜の頭に乗った吉富の腕から大量の武器が発射され、スターティアを押し込む!
だがイデオンは、上半身と下半身を分離して回避する。
安彦「分離したときなら、合体時のパワーはあるまい!」
分離した下半身めがけて、巨大な金色のハンマー……ゴルディオンハンマーを叩きつけようとするが、
全身に装着されたミサイルが、ガオガイガーを吹き飛ばす。
有賀「ぬぉぉぉぉぉぉぉお!」
これまで、数々の敵に敗れてきたサドンインパクトを有賀が叩き込むが、バリアーは砕けない。
長谷川「や・っ・て や る ぜ !」
口の中から灼熱の息吹が現れ、BURNがイデオンの足に組み付き、投げようとするが、合体が突如完成し、蹴り飛ばされる。
長谷川「まだまだぁ!」
ミサイルを重力壁で防ぎながら、接近戦を挑もうとする長谷川。
突如、イデオンの腕から光が発せられ、BURNの頭部をつらぬく。
有賀「えっ………?」富士原「嘘だろ……。」吉富「………。」安彦「……おい。」
有賀「長谷川ぁぁぁぁ!」
BURNはよろよろと後ろへ下がっていき、ついには池の中へと落ちる。
高温を発しているBURNは大量の蒸気を発してひびが入り始める。
イデオンは興味を無くしたかのように、有賀達の方へと向く。
有賀「……どうすりゃいいんだぁ!」
只、叫び声だけが、響いた。
93伝説を打ち砕く者:03/09/09 13:01 ID:zaql8zpU
眠い……
 俺は池の中に落ちて……。
このまま、寝ているのも悪くないかもな……。

村枝さん……ごめんなさい、俺嘘つきました。
岩瀬……どうやら言づてはできないようだ。
有賀……すまねえな……せっかく覚悟を決めたってのに……。
熊谷……星を盗むより……宇宙を飛ぶ感覚の方が楽しいぜ……。
富士原……元気でな……。

……心でなら………

なんだろ?
富野さん……救えなくてごめんなさい……

………心でなら、どんな大きな物でも…

そうだ……自分で書いてて忘れてたよ…

心でなら……どんな大きな物でも!どんな遠くの物でも掴めるから!

長谷川「ダイソォォォォォォォド!」

バビルの塔、巨大ロボット格納庫。
そこに置かれていた、緑色の剣が突如消滅した。
94伝説を打ち砕く者:03/09/09 13:15 ID:zaql8zpU
評議会基地近く。
空中に緑色の剣が召還された。
でかい。スーパーロボットが両手を使ってようやく持てるかどうかだろう。
剣には鎖が巻き付けてあり、何かを封印しているかのようだ。
有賀「なんだあれは!」
有賀達はびっくりして、それを見上げる。
刃の部分が二つに割れ、先端の方が折れ曲がり巨大な足となる。
柄の部分が複雑に回り、鎖がついた腕となる。
様々なパーツが変化をし、巨大な人型となる。
富士原「なんだ?」
長谷川「行くぞダイソード!
     空 気 の 槌 (エーテルハンマー) !」
空気の渦が回り、イデオンの視界を消す。
有賀「長谷川!無事だったのか!」
長谷川「何とかな!」
ようやく、一息ついたのか、長谷川が言う。
吉富「再会の所悪いが……何かが近づいてきている!気をつけろ!」
吉富の言葉に、一同が身構えた。
95Nの鼓動:03/09/09 13:31 ID:houfK6b5
??「たのむ! 出してくれ持って来ているはずだよ。マトモに戦って勝てる相手ではないぞ!」
静「わかりました、エネルギーソード バイパス接続! 腰部エネルギーを引き込みます!
  ジェネレーター始動します! 念のためベイルにエネルギーをチャージ
  頭部識別用セント・ポールははずします!」
??「OK! トレーラーを開放! ベイ、オープン!」
静「モータヘッド リフトアップ! 出ます!!」
トレーラーが開放され、中から現れたのは、いかにも不格好なロボットだった。
ブボボボブボブボ・・と音までださい。
静『トレーラーより分離! このまま移動を続けます! イレーザーエンジン始動準備!
  テレポートタイミングとシンクロナイザ−セット!
  エンジン始動5分前!! マスターよろしいか?」

****

静「マスター スタート30秒前です! あら?」
??「どうした静! 電圧が不安定になっているが?」
静(どうしたの? お前…? ごめん…私、『聞きなれない』言葉を使っていたのね)
静「MASTER! “HE”is feeling uneasy so,I am swiching to mo ther tongue !」
??「わかった!」
静「Ejecting transport armorcovers!」
すると、子供がガラクタを寄せ集めて作ったような不格好なロボットが、変形を始めた。
次々と各部がせりあがり、次第に鋭角的なフォルムを形成していく。
静「Retracting head , chest block reverting to fixed point!
  Extending down legs! Locking heal and aizin !
  Engaging power to arms! Clipping!
  Unfolding “MAIN BAIL”all weapons operational!!
  “Spector shield”and “E-N-G SWORD” freefanctional!!
  I'm reverting the head and positioning “BACK FACE”!!
  continue…. Extending stabilizer!!」

96Nの鼓動:03/09/09 13:56 ID:houfK6b5
静「5seconds till teleport …. “HORN MAST”locked! Opening basinet!
  Please…. My “MASTER'S FRIEND”is in danger….
FACE OPEN!! “IZLEZER SYSTEM”gate open!! Wake up my boy!!」
“静”が叫ぶと、変形は完了し、至高のロボットが…いや“騎士”が降臨する!
静「“S.S.I. KULVULCAN”(エス・エス・アイ・クバルカン)
  transformation complete!! Start to teleport!!」
刹那、地上に降誕した光輝く騎士は、その場から跡形もなく消滅した。

吉富「再会の所悪いが……何かが近づいてきている!気をつけろ!」
吉富の言葉に、一同が身構えた。
だが、その隙をついて、イデオンの全身から夥しいミサイルが発射された。
有賀「やべえ、すごい数のミサイルだ! 撃ち落とし切れん!」
長谷川「くっ、なんてこったあ!!」
安彦「やらせはせん、やらせはせん、やらせはせんぞお!!」
絶望的な数のミサイルがビクトリーファイブを襲った、そのとき!
グオッ! グワッ! バッ!
突然、不可視の衝撃波が炸裂し、ミサイルの全てを撃ち落とした!
有賀「なに!?」 富士原「あれだけのミサイルを……一瞬で!?」 長谷川「安彦さん、これは!!」
安彦「うむ、これは“ソニックブーム”!! まさか…」吉富「何だ? 右300mに何かいる!!」
それは切り立った崖だった。その上、砂埃の向こうに、全高14m程の影が立っている。

ボオオオオオオキュキュキュキュゴゴゴゴゴゴゴゴゴヒュルヒュルヒュルヒュルヒュル・・・・・

安彦「間違いない……これはモーターヘッド音!!」 長谷川「では、まさか、これはあの……」
そのとき、砂塵が晴れ、影の全貌が明らかになる。
それはまるで中世の騎士を彷佛とさせる、荘厳なまでに美しいロボットだった。
左手に持った大型のベイル(盾)と、その左肩に刻まれた紋章が印象的だ。
ブリキの騎士を象ったような、奇妙な意匠。それを目にした瞬間、安彦が叫んだ。
安彦「あのマークは“おどる人形”……やはり貴様か!!」
長谷川「あれがそうなのか……サンライズ史上最高の天才とうたわれた“彼”が創りあげたロボット!」

  破  裂  の  人  形 (B A N G DOLL)!!!!
97Nの鼓動:03/09/09 14:12 ID:houfK6b5
長谷川「し、信じられん…“彼”は、サンライズの“蝕”で死亡したのではなかったのか!」
安彦「それが生きているのだよ。しぶとい男よ……永 野 護 !!」

一方、その頃。モーターヘッド“バンド−ル”の中で、男…永野護が呟いた。
永野「静…何があろうと私に一任してくれないか? 
   むごたらしく死んでいったサンライズの仲間たちの恨み少しでも晴らしてやりたい…」
静「Yes…. I understand MASTER.This fight is yours.」
永野の真剣な嘆願に、彼のファティマ“静”は従順にうなずいた。
刃物のような冷たい眼光が、永野の両眼に宿る。
永野「憎むべきゴッドハンド……そして評議会……どちらの手にも富野先生を渡しはせぬ!
   富野先生は私が止め、そして救う!!」
裂帛の気合いがモーターヘッドの出力と化し、戦場の気を震わせた。
その凄まじい威容に、安彦以外の全員が凍りつく。

長谷川「なんという圧倒的な存在感だ! 
    俺達とはケタが違う……これが“天才”たるもの造り上げたロボットなのか!!」
安彦「来るぞ、貴様ら! ヤツは我らの味方ではない! 各機警戒せよ!!」

永野「許されざる背信者にして大罪者……安彦良和よ。貴様もそこにいたか。
   富野先生、今、邪悪なる手から、貴方をお救いします……」
紅き月光すら弾き返す神秘なる威圧感が、戦場を覆いつくす。
永野「私が作り上げた、このMHのパワーを! とくと味わえ!!」
騎士が咆哮し、地を蹴る。
紅き闇に、白き騎士が舞った。
98作者の都合により名無しです:03/09/09 14:17 ID:houfK6b5
すまん、割り込んでしまって。どーしても、永野を絡ませたくて。
ここを外したら、2度と出来無さそうだったし。
99作者の都合により名無しです:03/09/09 15:03 ID:RosH72Re
カコ(・д・)イイ!
100伝説を打ち砕く者:03/09/09 16:22 ID:zaql8zpU
長谷川「……くっ!さすがにこのままじゃ……まずい!」
本来イデオンとは5VS1で戦って、勝てるかどうかなのだ。
永野の乱入で、足取りがばらばらになっては、イデオン相手に勝てる確率は0が幾つ並んでも足りないぐらいだ。
MHのスピードはすさまじく、全機次々と傷が増えていく。
長谷川「……例え、どんな事があっても協力できない人間達……その愚かさ故……
     うぉぉぉぉぉぉぉ!違う!人間はそれほど愚かじゃない!消えてなくなれ!悪霊め!」
長谷川は幻影に悩まされながらも、破裂の人形を探す。
永野「よそ見をしてる暇はないぞ!」
猛スピードでダイソード向けて駆けてくる破裂の人形……。
長谷川「只早ければ……強いと思うな!」
両機がぶつかりあい、火花が散る。
有賀「長谷川ぁ!」
永野「これで……ん!」
間一髪、鎖で受け止められるランス。
永野「何!」長谷川「中国の古い諺でね……」
ダイソードの鎖を振るって、イデオン目がけて投げつける!
長谷川「盾矛って言葉知ってるかぁ!」
ランスが吹き飛ばされ、イデオンの腹に大きな穴を開ける。
長谷川「有賀!」有賀「応!」
永野「させるか!」
そう言って、永野はBIGーO目がけてTマインを投げる。
BIG−Oは少し回避運動をとったが、Tマインは狙いあたわず命中し砕け散るBIG−O。
長谷川「有賀!!」有賀「ああ、大丈夫だ!」長谷川「奴を……伝説巨神を外側から破壊する事は不可能だ!」
有賀「わかってる……。だが俺は死にに行く気はない!!」
長谷川「それだけ聞ければ十分だ!俺達はおとりを続ける!だから……お前は絶対富野さんを助け出せ!」
長谷川はそう言って、破裂の人形を睨み付けた。
101作者の都合により名無しです:03/09/09 16:30 ID:zaql8zpU
>>98
乱入上等です。基本的にリレー小説ですし。
それに先がわからない方が面白いですし。
102覚醒、そして…(229/350):03/09/09 18:57 ID:houfK6b5
執拗なる石渡の攻撃の果て! 許斐の中のサムライの血が動き出した!
氷のような三白眼が、石渡を射抜く。その全身を覆っていた輝きは、すでに消えている。
石渡(急に何だ……そもそも、な ん で 英 語 !?)
語学堪能な石渡には、許斐の英語の意味は分かっている。
分からないのは、なんでいきなり英語をしゃべり始めたかということだ。
石渡(そんなことはどうでもいい!それよりもの凄い集中力だな。さっきまでの汗が全て引いている)
不敵に笑うと、石渡がサーブのモーションに入った。
石渡(いいテンションになってきたじゃないか、許斐剛!)
いった。ソニックブームを発生させるほどの、人外のサーブ。
大気を軋ませ、石渡の必殺サーブ“横浜ランドマークタワーミサイルサーブ”が炸裂した。
ドオオオン!
バウンドしたボールが、勢い余ってフェンスに突き刺さった。それは許斐コートではない。
石渡(バカな……俺の爆裂フラットをまたも返しただと!!)
驚愕する石渡に背を向け、軽やかなステップを踏みながら呟く。
許斐「Nobody beats me in tennis.(テニスでは誰にも負けたくない)」
唖然とする石渡だったが、許斐の発言を正確に理解し、唇を噛む。
石渡(今まで出し惜しみしてたのか!? いや、そんなはずはない! まるで別人…!)

ここから先の展開は、許斐の独壇場だった。
不規則で予測不能なプレイに、絶えず変化するプレイスタイル。
石渡もあらゆる技術を尽すが、まるで勝負になりはしなかった。
石渡(そんな…こいつにこれだけの底力が秘められていたなんて…!!)
克「ゲームウォンバイ許斐。ゲームスカウント6−5。許斐リード」
まさかのブレイクポイント(レシーブ側がそのゲームを取る事)。
屈辱の石渡。その上、許斐の勢いはサーブでも止まらなかった。
股下を凄まじいスピードで抜いてくるノータッチエース。石渡は文字通り、手も足も出ない。
石渡(と、とれねぇ…)
克「フォ、40-0。(強い…石渡さんが手も足も出ないとは。あの強さ…全てを超越している!)」
遂にあと一球。それで、この勝負に決着がつくのだ。
石渡は絶望を持って、許斐は勝利への確信を持って、最後の瞬間を迎える。
今、夜空にボールが高々と舞った、その瞬間。異変は起きた。
103旅景色――温泉行きたい――:03/09/09 19:24 ID:iVZGNYiJ
日本某所の某大学。
講義室で、うつ向き気味に窓の外を見つめる少女が一人。

「……で、かのプラトンは…と言ったのである……」
教授の講義など耳に入らない。彼女の心にあるのは、ただ一つ。
貞本さんたち、どうしてるかな……

「天野!!」

講義が終わり、構内の休憩室で休憩していた天野に、みずしなが駆け寄る。

「みずしなさん…」

「なんや、まだ元気ないんか?全く、お嬢ちゃんはしゃあないのォ…」

「私…」

「ん?」

天野が語る。

「私、本当は、ついて行きたかった。でも…何故か、足が前に行かなくて……
 多分、怖かったんです。あの人――二人を連れて行った、あの―― 普通じゃなかった。
 恐ろしい人なんです。私、足手まといになるのが怖かった………」

その時、大学庭園に、空から何かが降りてきた。それは、天使の羽根を生やした男――
しかし、二人は気付かない。
104応援(230/350):03/09/09 19:25 ID:houfK6b5
異変はあまりにも突然だった。今まで鬼神の強さを見せていた許斐が、
いきなり左肩を押え、苦しみだしたのだ。その苦しみ方は尋常ではない。
克「ノ、ノットレディ!」 すかさず審判・克が試合を中断し、許斐に駆け寄った。
数分が経った。許斐の肩はすでに限界に達していた。
度重なる石渡の爆裂フラット、そして秘めたる力の発動。
これらは、許斐の肉体…特に利き腕に莫大な負担をかけていた。
克「許斐君、棄権した方がいい。肩を痛めて引退を余儀なくされた選手は数知れず。
  許斐君ほどの選手なら、これがどういうことか…」
克がしきりに棄権を奨めるが、当の許斐は無言のまま宙を睨んでいる。
石渡にとっては、土壇場の大逆転だった。だが、石渡の表情は冴えない。
克が必死の説得を続けていると、許斐がやおら立ち上がった。
克「やめるんだ、テニスが2度と出来なくなってしまうぞ!」
しかし、許斐はその説得に耳を貸さず、ただコートへと足を進める。
その顔には汗が浮き、足取りもおぼつかない。すでに、先程までの鬼神の様子はない。
まさに、許斐がコートに入ろうとした、そのときであった。
??「ジャンプスポーツーー!! ファイオー!!」
いきなり、重苦しい静寂を打ち破るような声が響きわたった。
その場の全員の目が、声の方向……観客席に集中する。そこにいたのは。
許斐「た、高橋先生!!」 
ハッピに鉢巻姿の男は、ジャンプスポーツリーダー、高橋陽一であった。
いつの間に作ったのか、手に『ジャンプスポーツ』と書かれた旗を持ち、懸命に振っている。
陽一「私の言ったことを憶えているか、許斐!!」
そう言われ、許斐は電撃に打たれたような衝撃を憶えた。
『おまえはジャンプスポーツの柱になれ』
あのとき、高橋陽一は、そう言ったのだ。さらに声が聞こえてくる。
『俺たちと別れてまで来た場所だ。最後まで踏ん張りつづけろよ』
それは奇妙に重なって聞こえた。それが許斐には誰の声なのか分かっていた。
許斐(えなりチームの皆…俺たちは離れていても繋がっているんだな。
  そして、この絆がある限り、俺は先へ進める。限界を超えられる!)
そして今、戦場に貴公子は舞い戻った。
許斐「待たせたな、石渡。決着をつけようぜ」
両者の戦いは、遂に最終段階となった。 
105旅景色――温泉行きたい――:03/09/09 19:30 ID:iVZGNYiJ
「私、何をしてるんだろう。ねえ、みずしなさん。なんであの時、私…」

みずしなは返事に困る。まさか、彼女がここまで重く考えているとは思ってもみなかったのだ。
そして、多分、自分には、彼女を楽にさせることは出来ないだろうな、と思った。

「……あのなあ、天野…」

みずしなが言いかけた瞬間――

「天野!!」

「はっ…はひ!?」

「温泉行くぞ!!!!」

あまりの出来事だった。何故、あの時いなくなった筈の貞本が、瀕死の木村を抱えてここにいるのだろう。
貞本は天野とみずしなの手をとり

「今事情あってテンションめっちゃたけーんだよ!!ハハハ!!!色々あって疲れたから、温泉いこう!!」

「ちょ…ちょいまち!! 俺、バイトはいってんねんぞ!!?」

「しにゃぁしない!! お前は来るよな、天野?」

天野の顔に涙が浮かび、溢れる。そして、それは笑顔に変わる――

「はひっ!!」

「目的地は…鹿児島だ!!勢いで決めた!!!」

かくして、4人(一人死亡中)は、温泉へと向かうのであった――
106作者の都合により名無しです:03/09/09 19:31 ID:iVZGNYiJ
テニス書いてる方、かぶってスマソ。
温泉書く方、使ってやって下さい。
107読み切れなかった男(231/350):03/09/09 20:52 ID:houfK6b5
ゲームスカウント6−6。遂に、タイブレーク突入である。
12ポインツタイブレーク。交互にサーブを打ち、先に7ポイント取った方の勝ち。
6−6になった場合、一方が2ポイント連取するまで続く。そういうルールである。
克「12ポインツタイブレーク。石渡 トゥサーブ」
石渡「ハアア!」 すでに1時間を超えて戦っているにもかかわらず、石渡のサーブの勢いは一向に衰えない。
肩を痛めた許斐は圧倒的不利に思えた。だが、その直後の矢のようなリターンエースに、石渡が驚愕する。
石渡(こ、こいつまだ…!) 克「1−0。許斐リード」
呼吸が荒いが、その打球にはいまだ鋭さが失われていない。
しかし、次の許斐のサーブ。ここで、メッキが剥がれた。
全力時の閃光のようなサーブが見る影もなくなっている。
石渡「(やはり肩が上がらないようだな)なんだ許斐ぃ、このサーブは!」
今度は石渡の必殺バックハンド『竜巻(トルネード)』による石火のリターンが決まった。
続く許斐のサーブも、石渡にはあっけなくリターンエースに切って落とされる。
今の許斐のサーブの威力では、狙い打ちだった。
サービスで主導権を握れないとは、シングルスでは勝機ゼロという意味に等しい。
陽一「相当辛いな、許斐。普段COOLな君の顔が、その激痛の凄まじさを物語っている!」
いつもの涼しげな表情は、今の許斐からは微塵も感じられない。
歯を食いしばりながら激痛に耐え、それでもなお戦い続ける姿は、一匹の鬼だ。
克「6−5。石渡、リード!」
戦力差が圧倒的にもかかわらず、許斐は必死に食い下がる。
それを見つめる石渡の心中には、大きな波紋が広がっていた。

俺は…思い違いをしていたようだ
許斐…貴様はもっと冷静で思慮深い奴だと思っていた
まさかこんな姿の…こんな熱い貴様の姿を見る事になるとは思わなかった
こんな極限の状態で、これ程高度な試合を出来る選手が何人いるだろう
貴様にこんながむしゃらさがあるなんて、誰が想像しただろう

許 斐 が ジ ャ ン プ ス ポ ー ツ に 賭 け る 想 い を

 俺  は  読  み  切  れ  な  か  っ  た
108テニス対決、決着!(232/350):03/09/09 21:12 ID:houfK6b5
だが、許斐。俺も負けるわけにはいかない。
俺はまだ、チーム・タフの為に闘わねばならない。
例え、どれほど他人に蔑まれようとも、俺はチームの為に、ボスの為に闘う。
そう、あのとき。あの血と硝煙と死の地獄で、俺の命を救ってくれたあの人の為に。
俺は忘れない。うずたかく積み上がった死体の山に、雄々しく立っていた鬼神の姿を。
狂気に彩られた目の奥にある、鉛のような悲しみを。
だから俺は勝つ。全てを絞り尽し、強い貴様に勝つ。
この試合、間違いなく俺にとって、無二のものとなる!
だから俺も最高の力を、一球一球に込めよう。たとえこの対ブレークがどれ程続いたとしても!

そのタイブレークの長さは異常だった。
克「35-35!!」 どっちも2ポイントを離されない。それは凄まじい極限での試合であった。
海に近いせいか、波の音が聴こえる。石渡は思い出した。
かつて、小笠原の海の上で、船の上から打ったサーブの練習を。揺れる船上でやった壁打ちを。
石渡(小笠原の海の声が聴こえる。テニスを始めた、あの頃が蘇ってくる)
苛烈な打ち合いの中で、石渡と許斐は幸せだった。幸福の絶頂にあった。
どのくらい時が過ぎたろう。モニター席の観客の誰かが小さく呟いた。

『この試合、いつまでも見ていたいな』

…そして。許斐のラケットが3.2ミリ下がった。

『零式』…地についたまま跳ねずに、ボールが逆戻りする。許斐の必殺ドロップショット。

それは鮮やかに石渡に決まるかに見えた……

陽一(戻 ら な い …!)

ほんのわずか、ボールが跳ねた。今の許斐には、完全な零式を撃てなかったのだ。
そして、わずかに浮いたボールを石渡が打ち返した時。
試合は終了した。
109闘神誕生(233/350):03/09/09 21:47 ID:houfK6b5
克「ゲームセットウォンバイ『チームタフ』石渡!! ゲームスカウント7−6!!」

闘いは終わった。
沈黙が支配する中、死闘を演じた両雄が、コート中央で握手を交わす。
2人とも無言だった。語る言葉など、もはや何もないのだ。
滝のような汗を流しながらコートを去る許斐に、高橋陽一が近付く。
許斐が晴れ晴れとしながらも、どこか消沈した面持ちで言った。
許斐「すみません、俺は勝てませ…」 
陽一「それ以上、何も言うな!」
言いかけた許斐を、陽一が制した。がっしりとその肩を抱く。
陽一「ナイスファイト…ナイステクニック……ナイススピリット……君は…私の誇りだ」
許斐「高橋先生……」
2人のチームメイトは、抱き合ったまま健闘を称える。
陽一「私は君に勇気をもらった。これで、私も自分の闘いに臨むことが出来る」
そう言った陽一の脳裏に浮かぶ顔。それは盟友にして、今は最大の敵となった男…猿渡哲也。
陽一の中で、かつてない闘志の炎が燃え上がろうとしていた。

一方、勝者・石渡は無言でその場から立ち去ろうとする。その背に声がかかった。
許斐「石渡先生……貴方に心から感謝したい。貴方がいなければ、俺は自分の限界を超えられなかった。
   貴方は、俺の及ばない、偉大なテニスプレーヤーだった」
最大級の讃辞に、石渡は微笑しながらテニスウェアを脱ぎ捨てた。
その直後には、あの血臭ただよう軍服に身を包んでいた。
110闘神誕生(234/350):03/09/09 21:58 ID:houfK6b5
石渡「いや、真のテニスプレーヤーはおまえだ、許斐。
   俺には、この純白のテニスウェアは似合わない。
   そして、今度やれば、2度と俺は、お前に勝てないだろう。
   そんな俺が、なぜ今宵、お前に勝てたのか。それは……」
そこで言葉を切り、石渡は振り返らずに歩き出す。
石渡「戦場の女神が、俺に微笑んでくれた……のかも知れないな」
そう呟く石渡の背を、2人は無言で見つめている。
石渡「許斐…おまえはおまえの道を行け。真のテニス漫画家の道をな。俺には……俺の戦場が待っている」
それを最後に、石渡は闇の中へと歩き去っていった。
やがて、それを最後まで見送った許斐も、いずこかへ転送されていく。
高橋陽一は、己の倒さねばならぬ相手を目指し、再び荒野へと歩を進めた。
そして、誰もいなくなった戦場の跡で、ただひとり克は思い出す。
許斐と陽一が見ることのなかった、石渡の顔を。
克(なんて穏やかな顔をしていたんだろう、石渡さん。
 僕は今まで、あの人のことを“虎”だとか“鬼”だとか思ってきた。
 でも、今のあの人は違う。あの人はもしかしたら……それを超えたのかも知れない)
この闘いは、両者にそれぞれ大きなものを残した。
テニスの貴公子は、サムライの血に目覚め、己の限界をひとつ超えた。
そして、戦場の虎には、新たなる名が冠せられることになる。
その名は……

ジャンプスポーツ ☆4  1勝 鈴木 高橋  2勝 井上  1敗 鈴木 ※村田≪死亡≫
裏御伽       ☆4  1勝 本宮 にわの 2勝 乙一  1敗 岡野+真倉 澤井 乙一
チーム・タフ    ☆2  1勝 猿渡 石渡  1敗 石渡 青山 橋本 ヒラマツ ※橋本≪死亡≫

←TO BE CONTINUED
111作者の都合により名無しです:03/09/09 22:04 ID:houfK6b5
はふう、やっとテニス終わったー長かったー。
あ、コノミンに一敗つけるの忘れたー
112作者の都合により名無しです:03/09/09 22:06 ID:eqHdogu7
凄かった・・感動したよ!!
113戦士の休息(235/350):03/09/09 23:23 ID:3JBFJ6SL
 バルバルバルバル!!ウォォォォォォォーーーーム!!(バイク音) 

 「♪温泉〜行きたい〜実家の鹿児島帰りた〜い♪
 なんか知らんが温泉がオイラを呼んでいる〜〜ぅ♪」

嫌な即興歌を口ずさみながら、変態バイクに乗ったにわのが、
草木をかき分け爆走している頃。そのにわのと勝負して惜敗したヒラマツは、
案の定山火事のどまんなかに転送されていた。消火活動もされていない。
もうすっかり北島ヅラ虎刈りバージョンも焼け焦げてしまっている。
四方を火に囲まれ窮地に陥っていた、その時。

突如、足元の土が陥没し、ヒラマツはあっという間に大穴に沈んでいった。

 「あ・・・あいちち。痛めた足に響きよる。しっかし突然何事バイ!?」
キョロキョロと周囲を見渡す。どうやら古い炭鉱の跡らしい。上の穴が数メートル上にあった。
炭鉱はいくつか通路が交差しており、空気も流れている。
これは九死に一生を得たというものだ。そう感じたヒラマツは、横穴のひとつに潜り込んでいった。
 ――それが、彼の悪夢の始まりとも知らず――

一方浜辺の本宮と岡野は何やら変な行動を取っていた。
 「いやいらないッス本宮さん!学ランなら真倉のヤツ着てますし、
 わざわざそんな変身バッヂなんか使わなくたって・・・」
 「岡野〜そうじゃねえんだ!これは男の・・・俺たち裏御伽のユニフォームなんだ!
 その照れ臭さを明日の力に変えて、オレと一緒に夢に向かって走らねーか!?」
 「すいません、全然意味がわかりません!そんな不潔そうなの勘弁してください!」
 「まあまあ!男の汗は勲章だぜ?それに馬力が違うのよこの変身学ラン。いいからほらよ」
 「やーめーてーくーだーさーい〜〜!!」

岡野の鬼の手の中で眠っている霊体真倉が、うるさそうに顔をしかめた。
114作者の都合により名無しです:03/09/09 23:51 ID:JQ482tJA
色んな奴らが温泉に大集結だ!!安西らも来て欲しい。
115作者の都合により名無しです:03/09/09 23:56 ID:3JBFJ6SL
安西君ならガンガンルートで既に参戦が決定してるさベイベー
116作者の都合により名無しです:03/09/09 23:59 ID:/ARbcH7D
それ違う温泉だろ
117作者の都合により名無しです:03/09/10 00:02 ID:B9fu+3FH
いや温泉シリーズですぜ
鹿児島編は序章なの
118作者の都合により名無しです:03/09/10 00:05 ID:9r1UzbGZ
ああ、シリーズ化するわけか・・まあ安西参戦は俺も嬉しい。だって奴シリアス戦闘結局パ○○なんだもん・・
119作者の都合により名無しです:03/09/10 00:05 ID:wnP4UcB2
温泉ってシリーズになるのォ!?(AA略
楽しげだからどんどんやってくれ。
120作者の都合により名無しです:03/09/10 00:08 ID:B9fu+3FH
シリーズの鍵を握るのはモチロン福地君で
福地先生の活躍が見れるのは温泉だけ!!   。・゚・(ノД`)・゚・。
121作者の都合により名無しです:03/09/10 00:13 ID:0NSoLFB9
>>118
もしかして、安西が『柳』を使ったこと言ってるんですか?
だとしたらすいません、あれ書いたの俺です。
少年漫画とかだと相手の技を見よう見まねで使うってのはよくあるし、
俺の脳内設定で安西は、「相手の技の本質を見抜く才能に長ける」ってのがあったんで、それをちょっと表現してみたかっただけなんですが。
……ここだとそれはパ○○になるわけかあ、それはちょっとまずいな。
主人公の人気が下がるのはヨロシクない。というわけで、2度とやりません。
以後は正真正銘、安西自身の能力だけで闘わせることにします。
長文スマソ。
122作者の都合により名無しです:03/09/10 00:14 ID:9r1UzbGZ
主人公チガウ
123作者の都合により名無しです:03/09/10 00:51 ID:0NSoLFB9
安西「椎名!」
突然現れた男、椎名高志の姿を認め、安西が叫んだ。
片倉「なんや知り合いか、安西」
安西「あいつの名は椎名高志。『スプリガン』のひとりさ」
片倉「スプリガン……確か、サンデー最強の特殊部隊っちゅうハナシやったの。
   それにしてもけったいな能力使いよるで」
安西「ありゃ『文殊』だ。霊力をあの小さな球の形に凝縮し、
   あるキーワードを与えることで開放する術だ。相当な高等霊術だぜ」
片倉「名前に恥じないモン持ってるっちゅうワケやな」
安西「ああ、だが別の部分でアイツは恥ずかしいんだよな……」
片倉「?」

一方、戸土野と対峙した椎名は。
留美「ありがとう椎名君。助かったわ」
椎名「なあに、こんなのお安い御用ですよ。それより……」
そこで言葉を切ると、椎名が倒れている留美子に手を差し伸べる。
留美子がその手を取ろうとした瞬間!
留美「!!!!」
椎名「うお〜〜〜! これだこれ! この感触だ〜〜〜!!
   柔らけー! 暖っけー!! 生きててよかった〜〜〜〜!!」
あろうことか椎名は、留美子の豊満な胸の谷間に、自分の頭をグリグリと押し付けたのだ。
この完全なセクハラに、留美子の顔がたちまち真っ赤になった。
留美「ちょ・う・し・に・の・る・・・・」

ドギャッ!

瞬間、ものすごい音がした。手を振り上げた留美子がきょとんとしている。
一瞬前まで柔らかなものに包まれていた椎名の頭部は、今は岩の間にメリこんでいた。
安西「テ・メ・エ・は久々に出たと思ったら、何さらしとるんじゃい、固羅!?」
124作者の都合により名無しです:03/09/10 01:07 ID:0NSoLFB9
突っ伏した椎名の頭を、青筋を浮き立たせた安西がグリグリと踏みつけている。
椎名の後頭部を思いきり蹴り飛ばしたのは、安西であった。
その速度は、その場の誰もが見切れなかった程、ちょっと壮絶なものであった。
すると、頭から血をダラダラ流しながら、椎名が飛び起きた。
椎名「やかましい! 美女の窮地を、ヒーローが颯爽と現れて救ったんだぞ!
   だったら、これくらいの役得があってしかるべきだろうがー!!」
安西「五月蝿え! テメエは相変わらずだな、このエロガッパが!!
   大体、テメエの『文殊』がなくても、俺の『円』でも同じことが出来たんだよ!」
椎名「ほざけ、この野郎! だったら勝負するか、コラー!」
安西「上等だ! やってやろうじゃねえか!!」
これが修羅場であることを完全に忘れ、2人は壮絶に罵りあいを開始した。
トントン。
安西「あん? なんだよ、五月蝿えな・・」
肩を小突く音に安西が振り向いた瞬間!
ゴオッ!
安西「うおおっ!」
刹那、眼前に迫った稲妻の速度の突きを、安西が飛び退いて躱した。
戸土野「なあに、俺の目の前で下らない茶番やってやがる」
突きを放ったのは、なかば無視されて少しキレ気味の戸土野であった。
安西「あぶねえ、あぶねえ。んじゃ、そろそろやるか、戸土野ォ?」
椎名「コラー、それは俺の役目だろうがー!!」
その叫びも虚しく、戸土野の猛攻が始まった。黒い刃風が、次々と安西に迫りくる。
そのあまりに猛烈な連続攻撃に、なんとか捌くのが精一杯だ。
安西「ちいっ!」
バク転し、安西が距離をとった。
安西「やべえな、なんつー剣技だ。躱すのが精一杯とは」
片倉「なんや安西、さっきの体術は使わんのかい?」
安西「莫迦、あんな難しい技、そう簡単に何回も使えるわけねーだろ。
   あれは咄嗟に偶然出ただけだ。しかも、かなり強靱な足腰が必要な技だぜ、ありゃ。
   正直、今の俺に完全にモノに出来る技じゃあねえよ。
   だいたい、他人の技をそのまま使うのはパクリじゃねえか。
   俺はもう、そういうのは止めたんだよ」
125作者の都合により名無しです:03/09/10 01:21 ID:0NSoLFB9
片倉「安西……どうでもええけど、『バカ』って言うな。言うなら『アホ』にしとけ」
安西の言葉に半分感心しながら、もう半分は怒りながら片倉が言った。
戸土野「あ〜ん? お前、本当に安西かあ? 
    まさかお前の口からそんな御立派な言葉が飛び出るとは思いもしなかったぜ」
大剣を構えた戸土野が、呆れたとばかりに吐き捨てる。
一方、その横では椎名が一転、ちょっと真面目な顔になって安西を見ていた。
安西「なんだよ?」
ジ〜ッと見られるのが気にさわったのか、安西が苛立って言う。
椎名「いや……なんつうか、お前変わったな。以前のお前だったら、考えられない台詞だぜ、それ」
安西「五月蝿えな。こっちにも色々とあったんだよ。ゴチャゴチャ言うな」
それだけ言うと、安西は戸土野に向き合う。
安西「ンなことより、今はこいつをどうにかする方が先だろうが」
椎名「んん、まあそうだな。だが、こいつは見たとこ、お前にはちっと荷が重いぜ。
   かといって、俺ひとりってのは、ちと厳しいな。つーわけで、ここは2人がかりで行くぜ」
椎名が腕から光の刃…『栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)』を発生させ、構えた。
安西「ちっ、勝手に仕切るな。でもまあ、それが手っ取り早いな」
椎名「よっしゃ決まり! んじゃあらためて、極楽に送ってやるぜ!」
2人が肩を並べ、今、強敵と対峙する。
安西とサンデーの漫画家たちの溝は、またひとつ修復されようとしていた。
126作者の都合により名無しです:03/09/10 01:58 ID:9r1UzbGZ
そのころ、安西と抗戦していたはずの犬・・いやいや高橋よしひろはというと
留美「お手!」
高橋「ワン!!」
留美子によってしつけられていた。
高橋「(ぐうううっ・・・何故だ・・理性で抗おうとしても体が勝手に・・)」
留美「ふふふ・・山千拳奥義、『猛虎開門破』、本来は強盗のごとく声に気を込め相手の動きを封じた隙に攻撃をする技だけど・・こんなふうな使い方もできるのよ」
高橋「こ、こんなことでえっ!!」
気合から解放され、高橋はすぐさま目の前にいる留美子に飛びかかろうとするが
留美「お手!!」
高橋「ワン!」
ぐしゃっ
すぐさま留美子の気合で動きを封じられる。
ちょっと浮いていたで地面に叩きつけられるおまけつきだ。
高橋「くっくそ〜」
悔しげな表情を浮かべる高橋を、留美子は晴れやかな笑みで見る。
留美子「ふふふっ、このままあっちの戦闘が終わるまでおとなしくしていてね、そうしたら・・」
そこで留美子の瞳が怪しく光り輝いた
留美「三人掛かりで袋叩きにして、あ・げ・る」
ゾクリ
その瞳は、歴戦の勇である高橋の背筋を凍らせるほど恐ろしいものであった。
127作者の都合により名無しです:03/09/10 08:51 ID:Pr7zwZ5Y
対犬戦は無敵なのね(*´∀`)サスガ!
128いま、必殺の:03/09/10 08:54 ID:R808E21j
安彦「下がれ。長谷川。」
対面している長谷川を押しのけて、安彦が次の機体に乗り換える。
長谷川「それは……。」
顔は確かにガンダムである。
しかし、マントを被せたようなデザインがそれをガンダムであると言う事を忘れさせる。
長谷川「マスターガンダム!!」
安彦「ご名答……。ここは集団戦ではなく一騎打ちで勝負をつけさせてもらおう。」
永野「ほう、1対1なら勝負に勝てると思ってるのか?」
安彦「少なくとも、奴らがイデオンと戦う機会を与える事ができるわ。」
それを聞いて長谷川も後ろへ下がる。
永野「……貴様と戦うしかないという事か?」
安彦「その通りよ!行くぞ!」
白き騎士と黒き拳士が今ぶつかりあい、渦と巻く。
永野「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
安彦「とはぁぁぁぁぁぁ!」

富士原「長谷川!」
長谷川「今の所、永野さんと安彦さんが一騎打ちで戦っている。後は……全力で戦うだけだ!」
長谷川は、ダイソードの中で、二人の帰還を待っている。

有賀「意外と中は脆いんだな……。」
自動防御システムを砕きつつ、有賀は中へと進む。
??「へえ……こんな所まで来るなんてねえ……。」
有賀「誰だ!」
129いま、必殺の:03/09/10 09:23 ID:R808E21j
有賀「誰だ!」
??「妖魔王様の新たなるしもべ、十本刀の一人とでも名乗っておこう。」
有賀「……つまり、作者が決めていないと言う事だな。」
??「……その話はおいといて、まさかここまでやられるとはね……ほんとは白い月を完全破壊する予定だったんだけど、
   あの機体が体当たりするなんて思わなかったからあまり破壊できなかったんだよねえ。」
有賀「……よくわからんが、これ以上の破壊をさせるわけにはいかない!」
??「まあ、いいさ。もうそろそろ赤い月の波動を受けて伝説巨神が完全に覚醒する。そうなれば、どんな事をしても止める事はできない!」
有賀「もうそろそろだと?」
??「洗脳装置はこの先にあるけど、君をここから先通すわけには……。」
有賀「……タイムストッパー……。」
敵の台詞もほどほどに、有賀は特殊武器を発動させる。名前の通りの武器であり、一度使うとエネルギーを使い切るまで他の武器を発動させる事はできないが、
敵の横をすり抜けるのにこれほど便利な武器はあるまい。
??「……いかない……って何処いったぁ!!」
 
洗脳装置前
有賀「これが……洗脳装置かっ!」
巨大な装置の中に一人の男が繋げられており、それが複雑な行動を起している。
有賀「スゥゥゥゥパァァァアァァァムッ!」
そう言って、有賀は力任せに、洗脳装置から男を引きずり出す。
男「君は……有賀君か?」
有賀「はい、そうです。富野さんですよね。」
男「ああ、そうだ……だが、非常にまずい事態になった……巨神はもう俺の制御を離れている!このままでは確実に暴走する!」
有賀「なんだって!」
富野「これを止めるには、巨神を破壊するしかない!長谷川君達も外にいるのだろ?なんとか連絡を取ってくれ!」
有賀「長谷川!聞こえるか?」
130魂の復活(236/350):03/09/10 10:07 ID:0NSoLFB9
ここは<<非戦闘区域>>。許斐との激戦を終えた石渡は、つかの間の休息に来ていた。
石渡「やれやれ、うちの連中は誰も来ていないか。…まあ、勝ってるのが俺とボスだけじゃな。
   そのボスも、今はまた闘いに行っちまったみたいだし」
他の2チームに比べて圧倒的に不利な状況。
本当に俺たちは勝てるのか……そんな弱気が頭をもたげる。
その考えをなんとか打ち消そうとする石渡の視界に、ある光景が飛込んできた。
石渡「なんだあれは? なんだかやけに慌ただしいな、あそこ」
そこは救急治療室……意識不明の森田まさのりが床に伏している場所だった。
看護士「心拍数が低下しています!」
医者「すぐに昇圧剤を打て! くそ、なんとかならんのか!」
危篤状態の森田まさのりは、まさに死の淵にいた。
石渡「どけ」
戦場のような混乱の中、いきなり石渡が治療室にわけいった。
医者「なんだね、君は! ここは……って」
看護士「貴方はチーム・タフの!」
突然の闖入者を諌めようとした医師たちが、言いかけたまま硬直した。
今までのチーム・タフの狼藉まがいの暴れっぷりは、恐怖と嫌悪の的となっている。
いったい何をしに来たのかと、周囲の者が怯えるなか、石渡が静かに
石渡「何もしやしない。用が済んだら、すぐに出ていく」
そう言うと、森田の眠るベッドへと近付いていく。
緊張が場を包むなかで、石渡は静謐な眼差しで森田を見つめる。
すると、石渡はおもむろに、手荷物を入れたバッグの中から、ある物を取り出した。
それは、管楽器としては最も有名な物……トランペットである。
石渡「森田まさのり……お前の名は聞いている。黄金期のジャンプで活躍した漫画家のひとり。
   特に、ボクシングと野球に注ぐ愛情は半端じゃないってこともな」
そう呟くと、石渡はトランペットに唇を押しつけた。

 パ ア ア ア ア !!!

石渡が大きく息を吹き込んだ瞬間、魂を揺さぶるような音色がこだました。
131いま、必殺の:03/09/10 10:17 ID:R808E21j
長谷川「聞こえてる!」
有賀「俺達の事は気にするな!ちゃんと策は考えている!」
長谷川「わかった……!行くぞ!」
ダイソードが巨大な剣となってイデオンに体当たりを仕掛ける。
グォォォォォォォォォォオオン!大きな音と共にダイソードが跳ね返される。
富士原「駄目だ!奴にかすり傷しかつけられない!無駄なのか!」
長谷川「いや!一つだけ策はある!富士原!俺を使えぇ!」
富士原「??……そうか!わかった!」
竜虎王がダイソードを掴み、天高く舞い上がる!
長谷川「き・え・て・な・く・な・れ!悪霊めぇぇぇぇぇ!」
天空からの凄まじい一撃。肩から腰まで切り裂かれ、巨神はふらふらと倒れ込む。
富士原「うぉぉぉぉぉお!竜虎王!俺の全てをくれてやる!その力を見せてみろぉ!!」
竜虎王より、光の翼が生えダイソードを真一文字に振るう。
ズオン。巨神がダイソードを掴む。
それが巨神の最後の抵抗だった。パーツがボロボロに砕け、大爆発をおこす。
長谷川「……有賀!聞こえるか!」
有賀「……そんな大声出すなよ……うるさいじゃないか……。」
髑髏の形をしたエネルギーの固まりに囲まれて、有賀は富野をかばうかのように立っている。
富野「そんなことよりも、あの二人の馬鹿騒ぎを止めなくて良いのか?」
長谷川「ですが……一騎打ちしてる最中に……。」
富野「そうだな、それより先に月直しに行くか……長谷川君。ちょいとあの船貸してくれや。」
そう言って、富野が竜の船を指さす。
長谷川「いいですよ。しばらくおつきあいします。」
長谷川は苦笑いして、ダイソードから降りた。
132魂の復活(237/350):03/09/10 10:30 ID:0NSoLFB9
その音色が夜に吼えた瞬間、医師や看護士たちを稲妻のような衝撃が貫いた。
大気を根こそぎ震わすその音は、嵐のようにその場を席巻する。
「す……」 
「すげぇぜ、こいつは!!」
「体のシンまでビシビシくるわい!!」
石渡の凄絶な演奏に、医療スタッフたちは驚きを隠せない。
「いや…!! 魂だ!! 魂の奥までガツンときやがる!!
 やつの心の叫びが…やつの魂の叫びが…こっちのハートまでガンガン揺さぶりやがるんだ!!」
「この音にこめられた…この力はいったいなんだ!?
 森田選手への深い悲しみとともに感じる……このみなぎるような強い力は…!!」
その音には、全てがあった。怒り、悲しみ、慈愛、そして……
医師「わからないのかね!? 音が叫んでいるじゃないか…!!
   死んじゃいけない…!! 生き抜かなければいけないと!!
   これは彼の生への讃歌だ!! 彼の…運命への戦いの行進曲だ!!」

  I  W I L L   L I V E (オレは生きる!!)

そして、演奏は終了した。刹那、凄まじい歓声があがる。
石渡は汗を拭い、一息つくと、眠っている森田に向かって言った。
石渡「最終ラウンド残り1分…!! せいぜいきばろうや、ボクサー!!」
そう言い捨てると、いまだ熱狂冷めぬ場を、石渡が静かに後にする。
その直後、奇蹟は起きた。
「!! ドクター、患者の心拍数が正常値に回復しています!!
 呼吸も回復しました! 奇蹟です…!!」
それはまさに奇蹟だった。医術の限りを尽しても絶望的だった状況が、回復したのだ。
「戦士の魂に、戦士が応えたとでもいうのか!? なんにせよ、これはまさしく奇蹟だ…」
医療スタッフたちは、ただ呆然と、去っていく石渡を見つめることしか出来なかった。
そして、森田の目がゆっくりと開き始める。
ここに、ひとりの戦士の魂が、目覚めようとしていた。
133評議会撤退:03/09/10 14:17 ID:goZ1/AOY
イデオンが破壊され、戦局がひとまずの終局を迎えた頃、
評議会の四霊――美樹本と環はマクロスに乗り込み、その場を離脱していた。
美樹本「ようやくバリアーが消えたか、これで撤退できるな。
    基地に爆薬はちゃんとセットしたか?」
環「それはぬかりない。あと3分もすれば、あの基地は消滅する」
美樹本「フン、元々あそこは、マクロスを保管しておく為の仮設基地に過ぎん。
    このマクロスさえ無事ならば、あとは用済よ」
一旦会話が途切れると、環が脱力したようにイスに座り込んだ。
環「我々の――惨敗だな」
沈痛な面持ちで、呟く。しかし、美樹本は平然として言う。
美樹本「勝敗が、損害の差で決まるならば、確かに我々の敗北だ。
    こちらはバルキリー小隊をかなり失い、何より岩瀬と岩村を殺された。
    この被害は看過されるべきものではない。“黄龍”の耳に入ればただではすむまいよ」
美樹本がそう言うと、環の顔がわずかに強張った。
環「“黄龍”――我ら“四霊”の中央に位置し、我ら4人を統べる者。
  確かに、奴が我らの失態を知れば、ただではすむまいな」
美樹本「それを言っても、今は詮無いこと。だが、我らの敗北は事実だが、それは奴らが勝利したという意味ではない」
環「――どういう意味だ、美樹本?」
環が問うと、美樹本がパイプを吹かしながら言おうとする。
オペレーター「艦長、ブリッジは禁煙です」
美樹本「む――」
すかさずオペレーターに注意され、美樹本がつけたばかりのパイプの火を消した。
美樹本「先程の話は、“勝敗が損害の差で決まる場合”の話だ。
    だが、俺はこう考える。勝敗とは、“作戦目的を遂行したか否か”で決まるとな。
    では、ここでお前に尋ねよう。奴らの“作戦目的”はなんだ?」
134評議会撤退:03/09/10 17:58 ID:R808E21j
環「富野の奪回……。」
美樹本「そうだ、富野由悠季の奪回だ……だが今の富野にどれくらいの力があると思う?
     『伝説巨神』の力を無くした富野に……」
環「ならば……!!」
美樹本「そうだ、富野は奪回しても、残ったのは只の抜けカスだ……。奪われようと問題は無い…
     しかもゴッドハンドの連中は、ここぞとばかりにスーパーロボットをつぎ込んできた。
     それの修理にかなりの時間がかかるだろう……。」
環「なるほどな……。そこまで頭が回るなんてお前はやっぱり凄いよ。」
美樹本「なに、少し考えたらわかることだ。」
美樹本はそう言って、コンソールを見た。

バベルの塔……通信室。
横山「任務は確かに達成しました。只…月が吹き飛ばされるのは予想外でしたね。」
石川「確かにな……長谷川の奴は、月の事をあまり知らなかったようだけどな……。外太陽圏での仕事が多かったからな。」
ちば「だがあいつの言った事は間違いじゃない……あそこで動きを止めていたら、確実に負けていた。」
松本「しかし妖魔王陣営も派手な事をする……。」
A「今の所、修復は可能ですけどねえ……。」
永井「しかし、『伝説巨神』の力が得られなかったのは、後々痛いんじゃねえか?横山。」
横山「おや、私がいつ『伝説巨神』の力を得たいと言いました?」
A「というと?」
横山「このまま、彼が矢吹の元へいると、矢吹がさらに強化されてしまいます。それを防ぐのが1点。
   次に、彼のような有能な人材をあのまま籠の中に置いておきたくなかったが1点。
   そして、妖魔王の活動の実体を知りたかったと言うのが1点。
   それは全て、彼等の活躍で果たされました。」
永井「結局は、お前の掌の上と言う事か……。」
横山の顔は団扇に隠されて見る事ができない。だがこの場にいる全員が彼が笑っているのを感じていた。
135ゴッドハンド撤退:03/09/10 18:29 ID:R808E21j
長谷川「って、爆薬?」
長谷川は竜の船のコンソールから、基地内の異常反応を調べていた。
長谷川「安彦さん!基地に大量の爆薬が仕掛けてあります!!逃げて下さい!!」
安彦「逃げる……だと?笑止千万!!」
破裂の人形と戦っていた、安彦が言う。
長谷川「ですが………その機体では、基地の爆発には耐えられません!」
安彦「耐える必要など無い……。見るといい!我が最終奥義を!!」
富士原「…あの構えは!!」
安彦「永野よ!!見てみるがいい!!そして伝えよ!!天が驚愕するさまを!!」
永野「あの技は……!!」
安彦「流派!東方不敗!!最終奥義!!!

     石  破  天  驚  拳  !  !

爆風と、マスターガンダムから出たエネルギー波がぶつかりあい、渦をなす……。

有賀「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」富士原「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
爆風の渦が巻き起こり、竜の船が揺らぐ。
長谷川「うそだろ?おい……。爆風を逆に吹き飛ばしただ?」
あまりの光景に驚愕する長谷川。その瞬間にマスターガンダムが頭の上に乗る。
永野「富野さん!!そいつらについていくんですか?そいつらは……。」
富野「わかってるさ!!だがな……俺は俺の道を行かせてもらう!!一番近い道はここなんでな!!」
永野「富野さん!!」
富野「さて、長谷川君……エクソダスするかい?」
長谷川「了解!!」
安彦「ふはははは、また会おう!!永野よ!!ファイブスター物語が終わったころになぁ!」
それって2度と会わないとどー違うんだと心の中で富野はつっこんだが声には出さなかった。
6人と、スーパーロボットの残骸を積んだ竜の船(ダート・ライ・ラグン号)は月へと向かった。
136134−135:03/09/10 18:31 ID:R808E21j
>133
と、勝手に続けてしまいましたが、どうでしょうか?
137133:03/09/10 18:33 ID:goZ1/AOY
あ、なんか上手い具合に続けられてる。
自分が書いたのとは違うけど、こういうのも面白いね。
これだから、リレーって好きさ。
>134さん、乙。
138永野の苦悩:03/09/10 19:57 ID:goZ1/AOY
静「マスター……」
全ての戦いが終わった、荒野。
“バング”――破裂の人形の正式名――の収納を完了し、憔悴しきった顔で、
モーターヘッド“ドーリー”(MH運搬の為の専用車)内部の応接間のイスに座りこむ永野に、
彼の忠実な“ファティマ”――静が声をかける。
永野「なあ、静。私にはあの人――富野先生の考えている事が分からない。
サンライズの仲間たちは皆、あの人にとっては息子のようなもののはずだ。
なのに、その彼らをあんなに惨たらしく皆殺しにしたゴッドハンドに、あの人が手を貸すなんて…!!
持っていたグラスを乱暴に叩きつけ、長い髪をグシャグシャとかき乱す。
静「マスター、私もあの方の事はよく存じております。
  確かに、以前のあの方は敵には容赦しない残酷な気性の持ち主でしたが、
  決して仲間を軽んじたり、権勢に尾を振るような方ではありません。
  きっと、あの方には、なにか為さねばならないことがあるのでしょう」
そう言って永野を慰める静に、永野が言った。
永野「私もそうであると信じたい。あの人は心から奴らに与したのではないということをな。
   だが――それにしても…………」
ダン、と大きな音をたて、永野が両手をテーブルに叩きつける。
永野「それに、あの大罪人――安彦を私は許すことが出来ない!
   奴は富野さんとは違う……手に入れた力をただ楽しんでいるだけだ!
   その力の為に死んだ何人もの同胞の命を全く意に介さずに!
   しかし、あの男はあまりにも強大な存在になってしまった――
   富野さんが“伝説巨神”の力を失った以上、サンライズの全てはあの男のものだ。
   そして何より、ゴッドハンドにはその安彦と同格かそれ以上の者たちが数多いるのだ!
   安彦ひとりさえ倒すことが出来ない私ひとりだけでは、どうすることもできない…」

 ――拝啓 森田先生

    はじめまして。はじめてファンレターを書きました。ずっと前から先生の漫画のファンでした。
    今日は先生にお礼を言いたくて手紙を書きました。今までありがとうございました。
    ぼくは先生の漫画に影響されて、ボクシングを始めました。ボクシングはとても楽しかったです。
    でもぼくは間違ってしまいました。ボクシングでけんかをして、相手を殺してしまったんです。
    先生の漫画で、そんなことをしちゃいけないって、ちゃんと書いてあったのに。ごめんなさい。
    ぼくはこれから責任を取りに行きます。最後に先生にお礼を言いたかったんです。
    森田先生今まで本当にありがとうございました。ずっとずっと面白い漫画を描きつづけてくださいね。
    ぼくはもう先生の漫画を読めなくなるけれど、遠いところに行っても先生のことは忘れません。
    
    本当にありがとうございました。さようなら。いつまでもお元気で。さようなら。          敬具


柳田のスーパーメカ≪虎馬夢太郎≫の夢光線を浴び、漫画家としてのトラウマを植え付けられた森田。
しかし、その暗黒スパイラルの彼方から、文字通り魂に響く呼び声が彼の脳髄を貫く。
――“ファンレター”を握りながら、ボクシングリングの一角にある丸椅子に、
灰になったかのように座りつづけていた森田は、狼の咆哮を全身に浴びて目を見開いた。

 ・・・・過去は変えられない。・・・・二人の少年の死は変えられない。
 ・・・・なら、何を変える?・・・・自分の漫画で二人を死なせてしまったのなら。
 ・・・・その代わりに、自分の漫画で2000万人を救えばいい。もちろん人数の問題じゃあない。
 ・・・・せめてもの、つぐない。俺はまだ闘わねばならない。もう二度と、悲劇を起こさないために。
 
 そう、そのためにも―――   「俺は生きねばならない!!」


集中治療室から出た石渡の背中に、歓声と雄雄しい叫び声が小さく伝わってきた。
戦場の狼は一瞬“人間の微笑”を浮かべた後、すぐさま獣に戻って闇へと消えていった。

     森 田 ま さ の り 、 復 活 !!
140永野の苦悩:03/09/10 20:19 ID:goZ1/AOY
静「これからどうしますか、マスター? やはりここは島本様に――」
永野「いや、私は宇宙(そら)へ上がる」
言いかけた静の言をさえぎるように、永野が言った。
静「宇宙へ……ですか?」
永野「宇宙へ上がる目的は2つ。ひとつは、ジョーカー星団最強の生物――あの5体の力を得ることだ」
永野の言葉に、静が驚く。
静「星団最強の生物――まさか、カステポーのドラゴンたちを!?」
永野「そうだ。彼らの力なら、ゴッドハンドのスーパーロボット軍団など何体いようが物の数ではない」
静「危険すぎます! それに無理です、彼らは人間に力を貸したりは――」
あまりに突飛な発言に、静は一瞬、己の主の正気を疑った。
永野「私は正気だよ。確かに、彼らの力は惑星すらも消し飛ばす、人智を超越したもの。
   だが、ジョーカー星団の創造主である私には逆らえない。
   これは最終手段だったが、やむを得ないのだ! あのゴッドハンドを倒すには!」
滅多に感情を見せない永野の、あまりの激昂ぶりに、静は何も言えなくなる。
永野「それがまずひとつ。そして、ふたつめの目的は――ある男に出逢うことだ」
静「ある――男…ですか?」
永野「彼は、“蝕”の影響で死の淵に瀕していた私を救ってくれた人物だ。
   彼は、凄まじい力と、そして万象さえ意のままにする知謀を兼ね備える男。
   彼とはわずかに言葉を交わした程度だが、私には分かった。
   彼は、私が全てを託すにふさわしい男だ……!」
静はなかば信じられない様子で、永野の話を聞いていた。
主人が、これ程までに他人を絶賛することは本当に珍しいことなのだ。
静「その方は――今は何処へ?」
永野「彼は今、地球にはいない。ここより遥かに遠い、幾星霜の彼方。
   宇宙の果ての惑星“カルバリ”――そこが彼のいる場所だ。
   私は、そこまで彼に会いに行く」
静「――その方の名は?」
最後のその質問に、永野は一拍置いた後、こう答えた。

永野「冨樫――義博」