【リレー小説】えなりの奇妙な冒険第9部冨樫の遺産編
アナウンスの元、Cブロック決勝に出場する選手たちが、
ぞろぞろと試合場にやってきた。そのアナウンスに少なからず、
疑問を持つ者は、試合場内部の人間の9割以上にのぼったろう。
なぜならば、今までさまざまな試合を彼らは見てきたが、
【格闘集団 チーム・タフ】の存在を。
一般の観客たちは誰一人として、大会関係者でさえ殆どが、
見も聞きもしなかったのだから。
一番嫌悪感をあらわにしたのが、トーナメントギャンブルに手を出している客だ。
「・・・なんだ?あんなゴツイ奴らが、いったいどっから沸いてきたんだ」
「あいつらが入ったら賭けが成立しないじゃねぇか!券を払い戻させろ!」
「大体なんだ!取って付けたように乱入しておいて、そのふてぶてしい面はよ・・・」
「俺たちゃスポーツチームと裏御伽を観に来たんだ。部外者は帰れ!帰れ!!」
非難轟々であった。警備員が押さえ込まないと、
選手たちに向かって物が投げつけられそうだった。
実際既にいくつか、空き缶やメガホンなどが投げ込まれている。
たまに中身の入ったビール缶なども混じっており危険である。
群集心理の一端を垣間見たようだった。
「ふーん、こっちはルード(メキシカンプロレス「ルチャ・リブレ」における悪役)なのかね〜」
間延びした口調で観客を眺め回すのはチーム・タフのヒラマツ。
「だとしても客の期待通りにリンピオ(正義役)に倒されてやる義理はないぞ。
この闘いにシナリオがあるとしたら、それは≪我々の勝利≫のみよの」
泰然として首魁の沢渡が応じる。無言でうなづく石渡、橋本、青山広美、そして。
「川原ァァ!!てめぇ、裏御伽裏切りやがったな!?
俺は裏御伽一点買いなんだぜ、てめぇがいたからなあ!
それを何だァ!?てめぇは俺の人生をアウトにしたいのか!!
許せねえ・・・ぜってー許さねえ川原ァ殺すころすコロスゥゥ」
うねる会場の隙間を縫うように、
一匹の狂った男が刃物を持って選手たちの中に突っ込んで来た。
あまりの剣幕に、他の客たちを抑えてた警備員たちは反応が追いつかない。
男は恨みつらみの全てを冷たい刃にこめて、まっすぐにタフ陣営に突き立てた。
刹那。
三人の男が動いていた。
男を刀で袈裟斬りにかかった「チーム・タフ」川原。
その斬撃を金属バットで止めた「ジャンプスポーツ」森田まさのり。
何故か刀とバットの間に挟まれている「裏御伽」澤井哲夫。
会場「なんでーーーーー!!?(ガーン)」
ひとりの男(澤井)の犠牲により、乱入男は取り押さえられ会場のうねりも収まった。
狐につままれたような観客たち。実は当の澤井本人が一番放心状態だったのだが。
(ククク、ギャグ作家は美味しい所を逃しちゃダメだモーン♪)
澤井の背中を蹴り飛ばして惨劇に巻き込んだどこぞの男は、ひとりほくそえんでいた。
そして、間もなく矢吹登場を告げるラッパの音が響き渡った。
山崎?「これからも僕を応援して下さいね(^^)。」
山崎?「これからも僕を応援して下さいね(^^)。」
山崎?「これからも僕を応援して下さいね(^^)。」
カムイ「剣王震空呀!!」
集団で現れたそいつらを、カムイは幻魔剣の技で吹き飛ばした。
カムイ「くそっ、キリがないな……」
カムイの頬に冷や汗が流れる。
そいつらを吹き飛ばしながら出口へと向かっているのだが、
2人は全然先へ進めないでいた。
数が多すぎるのだ。少なくとも彼等の視界内は全て山崎?で埋まっている。
どこかから湧いて出て来ているようだ。
しかも今のカムイには、先程マダンテを使用した為、マジックポイントが残っていない。
その為にMPを使わない技に頼るしかないのだ。
吉崎「…………マヒャド」
近付いて来た山崎?数匹を吉崎が呪文で氷付けにした。
しかし、その声や表情に覇気のようなものが感じられない、眼も虚ろだ。
まだ先程のショックが残っているのだろう。
カムイ「吉崎君! 今は集中するんだ!!」
震空呀を放ちながら、吉崎に激励をするカムイ。
カムイ「ここでやられてどうする!?
スライム――スラお君の二の舞いになってしまうぞ!!」
吉崎の肩が小さく跳ねた。目つきが、多少怒りがこもったものに変わる。
吉崎「……分かって、ます!」
もう大丈夫だろう、少なくとも今は――カムイはそう判断した。
カムイ「よし、じゃあ行くぞ! 剣王震空呀!!」
吉崎「イオナズン・改!!」
剣の衝撃と、複数のイオナズンが融合した爆裂が山崎?を襲う。
今の大きな爆発で、出口までの道が大きく開けた。
カムイ「今だ! 全力で走れ!!」
2人が遠くに見える出口に向かって駆け出した。
遠くに見えた出口が、だんだんと近付いてくる。
逃げることに成功した――かに見えたが。
??「どこに行くんですか?」
進行方向をそいつが――山崎渉が塞いでいた。
2人の足が、否応がなしに止まる。
カムイ「山崎…………渉!」
やはり生きていた――! カムイは歯を強く噛み締めた。
マダンテを放った後、カムイは小さな荷車に乗った山崎?を数匹確認しただけで、
山崎渉本人を見たわけではなかったのだ。
彼はてっきり、体はマダンテで滅びたがそのショックで、
山崎?共が現れただけと思っていたのだが……
カムイ(そんなわけなかった! こいつらがいること自体、
山崎渉が生きている証拠だったんだ!)
山崎「この子達はお気に召して貰えましたか?」
山崎はそう言うと、体の一部、丁度腹部から――山崎?を生み出した。
カムイ&吉崎「!!?」
絶句する2人。山崎?は、山崎渉本人の体から生み出されていたのだ。
さすがのカムイも、その現場を見るのは初めてだった。
山崎「どう? かわいいでしょう(^^)?」
吉崎「んなわけあるか!?」
山崎「そうかな? ドラクエに出てくるモンスターとくらべたら随分かわいいと思うけど?」
吉崎「分裂なんつー気色の悪い生みかたしといてよく言うわ……」
心の中でカムイもそれに同意した。
カムイ(しかしこいつらが山崎本人の体から生み出されてるとなると……その数は実質無制限か……
倒しても倒してもいなくならないわけだ)
山崎「この子達のかわいさが分からないとは……しょせんはダメ作家ですね。
僕みたいな素晴しい感性の漫画家とはレベルが違う……」
山崎渉は陶酔しきっていた。なにやらぶつぶつと呟いている。
山崎「そんな漫画家に生きてる価値はありませんね。
ですが心配しないで下さい、殺したりなんかしませんから(^^)。
ちょっとその記憶と感性と感情と感覚を、この子達に書き換えさせるだけです」
吉崎「お断りだ」
拒否をする――が、自体はすでにどうしようもないところにまで来ていた。
回りの山崎?達がだんだんと近付いてくる。
山崎?「これからも僕を応援して下さいね(^^)。」
山崎?「これからも僕を応援して下さいね(^^)。」
山崎?「これからも僕を応援して下さいね(^^)。」
山崎?「これからも僕を応援して下さいね(^^)。」
万事休すか――!!
しかし、奇跡は起こった――!!
突如響いた爆砕音――
ピンポイントで狙ったと思われる爆発が、山崎?の群れの大半を吹っ飛ばした!
カムイ&吉崎「えっ!?」
起こった自体が分からず混乱する2人。
対する山崎は、攻撃がした方をとっさに振り向いていた。
数ある出口の一つ、丁度カムイ達が向かっていた方向に、二つの影が存在した。
1人は大柄で筋肉質な男――もう1人は、まるで少年のような小さな容貌という、
どこか対照的な2人組だった。
??「へぇ、こいつが『全ての漫画家の敵』かい?」
大柄な男が山崎を見て少年に話し掛ける。
??「そう、彼をこのままにしておくわけにはいかない」
??「今いち理由が分からねえが……まあ、こいつをやるわけなんだな、
キユさんよ」
梅澤春人がそう言うと、キユはコクリと首を縦に振った。
一一寒い
…寒くて凍えそうだ
…誰もいないのか…
一一いや…ずっと昔から、俺は一人だった気がする…
…ずっとこんな闇の中で…
…まるで闇に溶けていく…
………
……
…
ゾッ
圧倒的だった。
桂の攻撃は、もはや何もかもが通用しない。
テレポートによる超スピードの攻撃も、テレキネシスによる遠距離攻撃も。
全ては、柳川の舞うような捌きの前に、無効化されていく。
桂(…天稟!これが柳川の純粋な強さなのか…しかし…)
思わず、唾を飲む。喉が、ひび割れたように乾いていた。
原「桂よ、お前にもあれが見えたか!」 桂「…ああ見えた…」
原の言葉に、首頷する桂。そして、幾度か吼えた。
桂「ぬおおぉおおっ!!」
その目には、牙剥く猛虎の姿が映っていた。
忘我の境地来たー!!
キユ来たー!!
終わり近し!!
おおおおおおお!!
頂上対決キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
確かにキユの突き抜ける力なら・・・!
巨大なモニターに矢吹が映し出され、その場にした全員の視線がそこに集まる。
「まずは最初に。Cブロック決勝開始が他のブロックと比べ大幅に遅れた事をお詫びしたい。
そして、もう気づいているだろうが本来居るはずの無いチームが居る事を」
会場の視線は一斉にチームタフに向けられる。ギャンブルに関る人々からの
ヤジも多く聞こえるがチームタフの面々にはむしろ心地いいだろう。
「彼等はチームタフ。超能力や忍術、その他不思議な力が人間を極限までに鍛えぬいた肉体に
劣るはずが無いと考える者達だ。そこでだ、私、矢吹健太朗は彼等の言い分が正しいのか非常に興味がある」
すると一斉に――やはりギャンブルがらみの人々の――ヤジがモニターに向けられる。矢吹は笑って説明に入る。
「ハッハッハ、私もそのような個人的事情で彼等の出場を決めたのではない。だが、この大会は最強の漫画家を
探すべく開いたつもりだ。ならば、彼等のような考え方の漫画家も枠組に入れなければ正しい結果は得られない。
勿論、このままでは他のチームに不公平だ。そのため両チームに増員を積極的に行い、彼等を休める意味を含めて
試合開始を遅らせた。これでチーム差はないと私は思う。そして、より勝負を面白くする為にすこし趣向をこらした。」
すると画面には一つの島が映し出された。周りには海しかなく、他に島は見られない。画面をそのままに矢吹は説明を続ける。
「ここはクリード・アイランド。いわゆる無人島だ。ここで3チームに三つ巴戦をしてもらう!」
キユは、ドラクエワールドの影響を受けないのか。
夢魔―――――
それは夢≠操り、人の精神を支配する者。
その力に魅了されたものは、決して覚めぬ眠りの中、夢の世界に囚われる。
快楽に溺れさせ、堕落させる者、恐怖に怯えさせ、精神を苛む者、その手口は様様である。
河下――『夢魔・水希』は、前者。
淫夢を見せ、快楽を与え、その者の精気を奪う事を、得意としていた。
そして、夢魔の中でも、淫夢を操るものは、こうも呼ばれている――
―――淫魔と―――――
大暮は、河下が夢魔である事を、知らなかった。
いや、知っていたとしても、意に介さなかったであろう。
大暮から見れば、夢魔など、小賢しい策を弄す、矮小な存在に過ぎなかったのだから。
其れゆえに、油断した。何の気構えも無く、河下に飛びかかり、組み伏せた。
「へへッ楽しませてもらうぜぇ。」
大暮は、下卑た笑みを浮かべると、河下の顔を覗き込む。
河下は、大暮をキッと見据え、口を開く。
「今なら、まだ許してあげます。
でも、これ以上続けると言うなら、容赦しませんよ。」
気丈に、そう言い放つ。
「カカカ、見た目に拠らず気が強ええなぁ。
じゃぁ、その唇から味わわせてもらうか。」
大暮は、河下の顎を軽く持ち上げ、顔を近づけていく。
そして、唇が触れ合う―――――
ズギュゥゥゥ―――――z_____ゥゥゥン
その瞬間、大暮の意識は暗転した。
――――――――――
――――――――
――――――
大暮が目を覚ますと、そこはパラダイスだった。
照りつける太陽と、青い海。
そして、大暮の周りには、半裸の美女達が傅いている。
(ここは、何処だ?俺は如何したんだ…)
大暮は、始め、少し不信に思ったが、すぐに考える事を止め、己の欲望に従う事にした。
“それ”は薄暗い部屋の中で目を覚ました。
部屋の中が暗い理由は彼女以外誰も居なかったことと、
そして彼女が明かりを欲するとは誰も思わなかったことによる。
簡素なベッドから履くものが無いので裸足のまま降りる。
着るものが無かったのでうす暗がりの中から探す。
彼女の外見は若かったが、子供というほどでもなかった。
ロッカーを開けてみると『七三』の名札のついた白衣がハンガーにかけられていたが、
据えた臭いと──それ以上に血の臭い──がしたので、着ることを諦めた。
戸棚の中を調べてみると、様々な薬品と共にまだビニールを開けていない予備の白衣と、
そしてスリッパがあったので彼女はそれを使うことにした。
彼女には大きすぎたが、他には何も見つからなかったので丁度いい。
ボタンを一番上まで留めて、腕をまくって肘まで出す。
ここに居続けても問題はなかったのだが、彼女は移動することにした。
「ブック…」
彼女がそれだけ言うと彼女の目の前にバインダーが現れる。
バインダーの中にはカードが三枚、納められていた。
それはただのカードではなく、“念”という特殊能力によって作られたカードだった。
その中の一枚を手に持って彼女は呟く。
「リターン・オン、…………。」
そして、彼女はいずこかに消えた。
かつて、いや現在も漫画界に燦然と君臨する矢吹健太郎──、
だが、そのときの矢吹は十傑衆を揃え、
ジャンプの頂点に立ったばかりで野望に満ち溢れていた。
自らの努力次第で全てが可能になる。そんなことを矢吹は純粋に信じていた。
彼がえなり姉をさらったのはそんなときである。
矢吹邸のえなり姉のいる部屋で。
矢吹とえなり姉は対峙する。
矢吹「世間にはお前を性奴隷にしているという噂を流した。
まあ、実際にそうしても良かったのだが。」
えなり姉に向かって呟く。
矢吹「ところが、お前は念を使えた。ならばえなりも危機を乗り切って生きているだろう。
そう判断し、人質の価値があるとして、俺はお前を生かした…。」
矢吹の言葉に対して。
えなり姉「賢明ではないわ。
弱みを握って脅迫する方法には底が無いもの。
少し考えれば、誰もが聞く価値が無いことが分かるでしょう。
えなりは私とは関係なしにあなたを倒しに来るわ。」
視線の先にいる女──えなり姉──は答えた。
矢吹「えなりがエジプトに向かっていることが確認された。
お前の噂を聞いたうえでの行動だとしたら、確かにお前に人質の価値は無いのだろうな。」
矢吹が続けた。
矢吹「…俺は10人衆を呼び寄せることにしたぞ…空戦騎、海戦騎、陸戦騎の三人だ。
お前の弟がいくら“念”やスタンドを使えたとしても、この三人には敵うまい…。」
えなり姉「えなりは念もスタンドもまだ使えないわ…そのうち覚えるとは思うけれど。」
矢吹「ならば、死んだな。」
えなり姉「でも、えなりは仲間が助けてくれる。だから、簡単には死なないわ。」
そう言って、矢吹の言葉を否定する。
えなり姉「あなたもそのうち分かると思う。」
えなり姉が返す。会話の途中に一度目を閉じたということは、理解を求めてはいないのだろう。
矢吹「とてもそうとは思えないがな。……どうして、お前は俺に協力するんだ?」
矢吹は否定してから話題を変える。
えなり姉はしばしの沈黙の後。
えなり姉「あなたは、冨樫ファイルが欲しいのでしょう?」それだけを聞いてきた。
矢吹「…冨樫ファイルを見つけることが出来れば、
俺はパクリ矢吹の汚名を返上して「実はオリジナルも凄い矢吹」と呼ばれることが出来る。
そうして実力を上げれば、少数存在する反対派の勢力を沈黙させることが出来る。」
当然のように矢吹は答えた。
えなり姉「どうしてそんなことをするの?」
矢吹「決まっている。漫画界の未来のためだ。
アンケート至上主義を廃止し、休載を認め、競争を無くす。
そうすれば漫画家は酷使されず、そして長期的に見て、
面白い漫画が描けるようになる。
俺は理想のために一歩も引く気はない!」
えなり姉「なら、いいんじゃないの?」
えなり姉が告げる。
矢吹「俺はお前の弟を…なんというか、殺す計画を立てているんだがな。」
皮肉気にいう矢吹に対して。
えなり姉「えなりは、まだ依存心が強くて、戦うことを知らなければいけない。
それにあなたが本当に漫画界のことを考えているのなら
いずれ…分かり合える日が来るかもしれないしね。」
その言葉には矢吹は苦笑するしかなかった。馬鹿げている。
矢吹「理想論を言っても後で辛くなるだけだと思うがな。」
えなり姉「それはあなたも同じようなものだと思うけど。」
えなり姉は淡々と答える。
矢吹「なんだと?」
聞き返すが、えなり姉が発した言葉は別のことだった。
その口調にはいつも底が見えないと思う。単に変人なのかもしれないが。
えなり姉「ここに来た理由は、世間話をするためではないのでしょう?
…今度は何をすればいいの?」
もとより長話をする気もない。
矢吹はポケットに入れていたゲームソフトを見せて答える。
矢吹「これは俺がパクリで作ったゲームソフトなのだがな。
念を使える人間ならば中に入れて、クリアすれば中に念で作られた
カードを手にすることが出来る。それを取ってきて欲しいのだがな。」
矢吹は自分の言うべき用事を簡潔にまとめた。簡単に彼女も返した。
えなり姉「分かったわ」
えなり姉のいる部屋を出て、歩きながら矢吹は考えていた。
言い返すべき言葉というものは。
タイミングを逸してしまえば無駄になってしまうものである。
えなり姉『それはあなたも同じようなものだと思うけど。』
矢吹(違うな、俺は現実を見ている。)
心の中の声に対して、心の中だけで反発する。
だが、結局それは理想を目指していることには変わりがないのだろう。
叶わないものと叶うものの間ではどこで境界線を引けばいいのか。
基本的に考えてみれば、それは常識で決められるのだろう。
そして、常識によって自分の考えたものは叶うもの、
えなり姉の考えていることは叶わないもの、と自分は決めたわけだが。
主観ではなく、現在の権勢を踏まえた現実的な判断だ。しかし。
矢吹も初めに理想を思いついたときには実現できると予測したものなどはいなかっただろう。
初めは何もかも小さな灯だ。誰が人の未来を予想できるというのか。そこまで考えた後に。
矢吹(馬鹿馬鹿しい。)
矢吹は自身の考えを打ち消した。
求道者ならば、他人の考えを肯定などせずに自分の未知のみを信じて進めばいいのだ。
空、陸、海の十傑衆は既に広間に来ているのだろう。
彼は指令を出すために、広間へと向かっていった。
矢吹「さすがだな。パクリで作ったグリードアイランドとはいえ僅か三日でクリアするとは…
俺でさえ、一週間はかかった……。」
えなり姉「これがカードよ。欲しかったのでしょう?」
えなり姉は矢吹にカードの入ったバインダーを渡した。中には三枚のカードが入っている。
もちろん矢吹が希望した種類のカードだった。
矢吹はしばらく受け取ったバインダー、そしてその中にあるカードを眺めていたが。
矢吹「いや、これはお前のものだ。…お前が使え。」
矢吹はバインダーをえなり姉に返した。
えなり姉は一拍置いてから──予想外だったのだろう──矢吹に答える。
えなり姉「いいの?パクリで作ったゲームだったから、製作者のあなたが
クリアしてもカードを得ることは出来なかった。
だから私にクリアさせたのでしょう?」
矢吹「ああ、でもいらなくなったんだ。」
えなり姉はしばらくバインダーをもてあましていたがやがてそれを抱えると矢吹に向かって囁いた。
えなり姉「ありがとう。」
矢吹は答えず、自分の部屋へと立ち去るえなり姉を見送った。
えなり姉が矢吹に協力することは、えなりが矢吹と戦うことと同じくらい奇妙であった。
本来、彼には戦う理由など無いのだから。
漫画界の運命がどうなろうと、彼らには関係が無い。
奇妙な協力関係だったと矢吹は思う。
そして、一時的に奇妙だったとしても整合性のあることによって、
それは奇妙ではなくなっていくものだと、矢吹はまだ知らなかった。
冨樫の入院している病院の待合室で矢吹は呻いた。
矢吹「十傑衆がやられただと!?」
部下『はい、小栗、和月、久保、の三名全てが…』
矢吹「・・・・相手が荒木なら致し方ない、な…。」
電話を切って矢吹は呟く。
矢吹が自分の邸内に戻ったとき、部下の一人が矢吹に上申した。
部下「えなり姉の件ですが、このままにしていいのですか?」
矢吹「このまま、とは?」
部下「文字通りの意味でございます。
えなりがはっきりとこちらに叛意を示した以上、生かして置くことは危険だと存じますが。」
矢吹「…十傑衆の二人を刺客としてえなりに差し向けた。
この件はそのそれによって解決するだろう。」
矢吹はその強気な台詞とは裏腹に、いつ自分を襲うかもしれない、
荒木とえなり2世にびびりまくっていた。
えなりに対して怯えがあったからこそ、矢吹はえなり姉をさらい、そして協力も得ていた。
矢吹は自分が今まで多くのパクリの中から漫画を描いたと認めていた。
そしてえなり姉をさらったことを認めていた。
今は協力する姿勢を見せてはいるが、肝心なときに裏切ろうと思っているのかも知れない。
何より彼女はえなりの姉なのだ。
矢吹とえなりの争いはえなり姉も知っているし、えなり姉の協力の行動も
もしかしたら、自分を裏切るための布石であるのかもしれなかった。
目的のためとはいえ、矢吹は多くの人間を利用した。
自分がそうされてもおかしくは無い。
幸い、十傑衆も多く居るし、矢吹自身多くの漫画を抱えている。
ここでえなり姉一人が死んだとしても、たいした損失にはならないはずだった。
──だが、しかし──
矢吹はしばらく考えた後呻いた。
矢吹「裏切ってはいないかも知れないではないか。」
部下「ご決断を。
小事にはこだわらず大局を見るのです。
今でもえなり姉が裏切るか裏切らないかで矢吹様は悩んでいるのでしょう?
もしも、えなり姉が今は裏切らなかったとしましょう。
でも、えなりを始末すればやはりえなり姉は矢吹様を恨みに思うことでしょう。
そして矢吹様に害を為すのかも知れません。
えなり姉を生かしておいても不安は永久に付きまとうのです。
矢吹様、あなたの未来には多くの漫画家の“これから”がかかっているのです。
ご決断を、矢吹様。」
矢吹「どうしろというんだ?」
矢吹は部下を睨んだ。
部下「方法は簡単です。
最近同人軍艦の面々が何かと矢吹様に反抗する気配を見せています。
いっそ滅ぼしてしまおうという作戦を立てているのですが、
それに対して私に腹案があるのです。」
このときの矢吹はまだ大勢の漫画家が彼から離反する事態となるとは知らなかった。
そして、矢吹は自分のシステムを完成させることが使命だと信じて疑わなかった。
漫画界の未来のために禍根を絶つ──そんな結論をしたのは矢吹の若さの証明でもあるのだろう。
矢吹「お前に任せる…好きなようにしろ…」
部下「御意…。」
部下はうやうやしく答えた。
ええと、えなり姉(に限ったわけではない)記憶編です。
記憶なので少しずつ進めようかと。そのうち盛り上がる展開になればいいなと思ってます。
初期の初期の話まで整合するあなたがステキ
柳川の頸動脈を狙った一撃を、桂がかろうじてかわした。
頬から鼻にかけての皮膚を薄く切り裂かれ、血がしぶく。
どうする事も出来ない、あまりにもかけ離れた実力差が、今や両者にはあった。
だが、一方的に押しまくっているはずの柳川が、ふいによろめいた。
膝がガクガクと震え、その口からは血が吐き出される。
全身の出血も尋常ではなく、立っているのもやっとの状態に見えた。
巻来「やはり柳川は、無我の境地に達したのではない。
我を忘れ、本能のみで闘う獣も同然っ!!
…しかも、さらに始末の悪いことに、痛みや感情を失しながらも闘う、
闘いの修羅に取り憑かれている!!
…あの傷だ、身体が先に壊れてしまうぞ!!
それに何より、虚無の闇に飲まれ、悪くすれば…
ずっとあのまま、生きながらの廃人となろうっ!!」
桂「ぐっ!!」
もう何度、同じ事をくり返したか。
桂の攻撃は、湖面の月を斬るがごとく、虚しく捌かれ、
交差法ぎみに、左肩を剣で貫かれた。
身体の至るところを刻まれ、出血の酷さから、桂が膝をつく。
すでに、黄色い歓声はおろか、誰ひとり呻きすらたてない。
巻来「桂っ!!」
桂「ゲホッ…巻来さん、今度ばかりはどうにもならねえ…あれを見なよ!!」
その指し示す光景を見て、巻来達が絶句した。
巻来「…ま、まさかっ その状態でやるのかっ!?」
原「一一しかも、二刀のままで…」
忘我の境地のまま、柳川の二刀が、魔性の弧月を描いた。
円 月 殺 法 !!
キユと梅澤が山崎に攻撃を仕掛けようとしたその時、上空からヘリが現れた。
??「梅さん、キユ、ここは任せるにゅ。」
そう言うとその角らしきものが生えた少女のような外見をした者、岡本倫がヘリから
飛び降りた。
岡本「ここで敵にむざむざ能力をばらす必要はないにゅ、私のこの姿で十分にゅ。」
梅澤「へへ、倫タンがそういうのなら仕方ねえ・・・、キユどうする?」
キユ「・・・、そうだね、倫タンがそういうのなら僕たちは見学してるよ。
久々に倫タンの戦いっぷりも見てみたいしね。」
岡本「OKにゅ。」
岡本がキユに確認の合図を取ってからほどなくしてカムイの痛烈な叫び声が聞こえた。
カムイ「よせぇぇぇぇ、あんたらが何なんだかわからんが奴には敵わない。
逃げるんだ!!!」
その時、山崎が動き出した!!
山崎「よくも僕を無視してくれちゃいましたね・・・、
行け!!僕の可愛い子供たちよ(^^)!!!」
山崎が合図すると一斉に山崎?が岡本倫に襲いかかってきた、しかしその瞬間、
信じられないような出来事がおこった!!
山崎?「これからぁぁあ・・・(^^)?」
山崎?「僕をぉぉぉぉぁああぉ・・・(^^)?」
山崎?「応援してぇぇ・・・(^^)?」
なんと無数の山崎?が岡本に襲いかかったと思うと次の瞬間みんな首チョンパされて
しまっていた。
山崎「なんだと・・・・(^^)。」
岡本「私がこの状態のときはベクターの本数は30本以上、攻撃可能範囲は半径50mにゅ、
最も真の姿に戻ればベクターの本数も距離も今の3倍は増加するにゅ。」
忘我の境地に達した肉体が鬼神の闘いをしている一方で、
柳川の本来の精神は、依然、暗く深い闇の中にあった。
………
柳川……
柳川善弘……
どこからともなく響く声が、柳川の意識をほんの少しだけ覚醒させた。
…誰を呼んでいる?
…俺か…
一一一俺を柳川…と、呼んでいるのか…?
………
……
…
原(…柳川、お前は一人ではないはず……もう一人ではないはずだろう!
俺や巻来、北条やゆで…、それに三浦とヨクサル……秋本だっている…
…皆…お前の事を真の朋友だと思っている。柳川善弘、お前のことを!!)
原「聞こえるか柳川っ。いかに忘我の闇に沈もうとも、この俺達の想いが、お前に届かぬわけがないのだっ!!」
原の叫びがこだまする中、柳川の妖剣が弧を描きつづける。
だが、その剣筋は、こころなしか、少しずつ鈍ってきているようであった。
柳川(………み…ん……な……)
歯の根が噛み合わず、ガチガチと音を立てる。
牙が鳴っているのだ。
それを、もはや万策尽き果てた桂が、観念して成り行きを見守っている。
そして、とうとう無慈悲な一撃が、桂に向かって振り下ろされた!
そのとき、柳川は、自分の身体を暖かな感触に包まれていくのを感じた。
柳川善弘!!
お前は決してひとりじゃない…
皆がお前を待っているぞ…
………
……
…
刃は、振り下ろされた。
桂の首からわずか数ミリ。
この状態から、ほんのわずかでも剣先を動かせば、桂の首は落ちる。
そのような位置で、二刀の刃は停止していた。
目の前の光景を、呆然と見つめる桂。そして、バンチチーム。
巻来「原よ…見えたか今の…」
原「…ああ見えた…」
虚ろだった柳川の顔には、表情と、そして暖かみが戻っていた。
柳川「…夢を見た…漫画の女神に抱かれる夢を…」
柳 川 善 弘 闇 よ り 帰 還 せ り !!
岡本倫…荒木と戦わせるのを目論んでた身としては
半径50mなんて大ハッタリやめて欲しかったよ
それとも投石などで「攻撃可能」範囲が半径50mで
腕自体の射程は2〜3mでいいのかな?
原(…今のは幻か…!?俺達は確かに見た。
あの瞬間、柳川の身体を抱いていた、神々しい光を放つ存在を…
いずれにせよ…己を失していた柳川が元に戻ったのは確か!)
柳川「一一一ん…」
寝ぼけたような声が、口からまろびでた。
柳川「どうした……もう降参かね?」
それを聞いた桂の柳眉が、ピクリと逆立った。
傷だらけの身体をひきずり、再び対峙する。
巻来「…なんとっ死に至る程の傷と疲労を負いながら、なおもまだやり合おうというのかっ!」
原「当然だ。それが俺達、漫画家という人種が背負った、業なのだ」
桂「まだ元気イッパイだぜ…と言いたいとこだが、俺もいい加減、限界だ。
だから、次の一撃こそ、本当に最後だ。どっちが勝っても、これで最後…」
柳川「ああ、望むところだ。今度は、俺の意志で、勝ってみせる!」
三浦「一一へっ!意地だの強さだの言っても、結局はガキ大将同士のケンカってことだな!」
原「ああ、まったくその通りだな」
三浦が笑って言うと、原もまた笑みで答える。
巻来「しかし…ひとつ問題があるぞ。奴の大刀は、もう使い物にならん」
指摘通り、柳川の日本刀は、すでに折れ、刃こぼれしている。
あと一度の使用にすら、耐えられるかは疑問だった。
すると、原がいきなり長大な日本刀を取り出した。
巻来「…それは?」
原「俺の朋友から預かった、究極の刀……岩さえも両断する最強の剛刀だ」
説明すると、原が柳川に向かって、それを放り投げた。
柳川が、慌ててそれを受け取る。
その刀の正体を知り、柳川は戸惑った。
柳川「原さん……この剣は、あの人がかつて使った、伝説の一一」
原「そうだ!お前ならば、見事使いこなせるだろう!」
感無量になり、思わず目尻に熱いものがこみあげる。
それを滾る闘志に変え、柳川は軽々と、その剣を抜きはなった。
その瞬間、凄絶な刃風が、吹き荒れる。
柳川「『常・在・戦・場』、これこそ俺の心意気!
そして、この世に斬れぬものはなし…!
一 文 字 流 斬 岩 剣 ! ! ! 」
はうっ、倫タンでちゃったか
キユに決着つけさせたかったんだがどうしよう
露払いということで普通にキユで決着つければ大丈夫だと思う。
倫タンでは無理かと。
リレーなので無理ではないかも知れないけど難しいかもと。
とりあえず山崎戦のエンディングには期待しております。マターリ頑張ってください。
荻野「死ぬのは敵、生き残るのは我!
この絶対の自信こそが『気砲術』の原理だ!」
荻野の発気は確実に藤沢の心臓を撃ちぬいていた。
まだ息があるようだが、藤沢の死はもう時間の問題。そう思えた。
藤沢(あ…う…熱い、胸が熱い…血が…
死ぬ…俺は死ぬのか?このまま…
俺は結局、キバヤシがいなけりゃ何にも出来ない男だったのか?
…弾無しで銃を撃つなんて反則だ…
俺もガンアクション描いてみてぇなぁ…
あれぇ?こりゃあイングラムじゃねぇか…
なーんだ俺にも描けるんじゃん…)
荻野は目を疑った。
主を失い、崩壊し始めていたGTFの世界。
その崩壊が止まった。
そして胸から血を流し倒れている藤沢。
その手に握られているのは荻野から奪ったニューナンブだったはず。
しかし今藤沢の手にあるのは――
荻野「イングラムM11…!!」
藤沢「ひゃはははははっ…」
ぱららららららららら!
藤沢の首が持ち上がりその目が荻野を捉えた瞬間、サブマシンガンが火を吹いた。
荻野「ううっ!」
荻野は即座に奇妙な動きで飛び退き、そのまま廊下を階段付近まで走り抜ける。
藤沢「逃げるなよ荻野ォ、どうせプラスチック弾だ。
当たったところで死にゃしねーよ」
後から乱射される弾を回避しながら踊り場へ飛び込む。
荻野「プラスチック弾だとぉ?そんな威力じゃないぞ…つッ!」
さすがに至近距離ではかわしきれなかったのか、何発かは荻野の身を掠めていた。
荻野「くらえ発気!」
壁に身を隠しながら発気を撃つ荻野。再び藤沢の胸は貫かれた。が――
荻野「効いてないのか!?」
藤沢「ひゃーはははっはああ!」
藤沢は意に介すことも無く、楽しそうにイングラムを撃ちまくっていた。
絶えず浴びせられる銃弾によって、荻野の隠れている壁は少しずつ削り取られていく。
荻野「それにおかしい、さっきから奴は撃ちっぱなしだ。
イングラムの装弾数と速射性能なら数秒で撃ち尽くすはず」
ぱららららららららら!
相変わらず銃声と壁を削る音は鳴り止まない。
荻野「確かめるか!」
言うが早いか荻野は藤沢の前に踊り出た。
藤沢「イヤ――――ハァァ――――ッ!!」
瞬間、荻野の体に弾丸のシャワーが浴びせられていた。
荻野「うっ、えっ…げっ…!」
荻野は気味の悪い呻き声を上げ細切れになっていく。
藤沢「ざまーみろおおおおおおお!!
荻野(マガジン交換はまるでしていない…
弾切れの無いイングラムなんて反則もいいところだ)
藤沢「いい気味だぜええええええ!!」
荻野(俺の発気なんてまだかわいいもんだ)
ガン!ガン!ガン!
藤沢の腹部に存在しないはずの弾丸が撃ち込まれる。
同時に「撃たれていた荻野」が消え、倒れる藤沢の横に荻野が現れた。
荻野「少しは学習したらどうだ。
わざわざお前に撃たれてやる義理なんてないぞ」
荻野は投気で自身のおとりを作り、化気で姿を消して藤沢に近づいていたのだ。
藤沢「くくく」
荻野「まだ生きている…こいつはやはり…」
荻野はすっかり形の変わってしまった壁に駆け寄ると、
散らばっていた弾を一つ拾い上げ、まじまじと見た。
荻野「やはりプラスチック弾なんかじゃない。ヤツ自身はなぜかそう思ってるようだが…」
拾い上げられたそれは白い――だが決してプラスチックなんかではない――
言うなれば弾丸の形をした人間の――
荻野「骨か」
体に無数の風穴が開いた藤沢が笑みを浮かべながら立ち上がってくる。
荻野「そしてその不死身ぶり…これで答えは出た。
お前は確か高学歴に復讐するために、俺にちょっかい出してきたんだよな」
藤沢「それがどおしたああぁぁぁ!」
銃を乱射する藤沢。
荻野「お前は(ほとんど言いがかりだが)高学歴に恨みを持ち、
学歴に振り回される世の中に絶望した。
そして自分の創り出した世界の中でさえ、生徒達に見捨てられた。
人がネオテラーに変わる条件は、恨みと絶望と孤独…」
荻野は距離を取り、奇妙な動きでかわす。
荻野「その復讐者が死の淵に追い詰められた時、
人としての限界を超えた、ネオテラーと言う名の化け物に変わる」
藤沢「お寺がどうしたってぇぇぇぇ!」
発気が藤沢の胴を穿つ。
荻野「俺はお前の心の均衡を保つ最後の砦…GTFの世界を破った。
お前が化け物に変わるきっかけを作ってしまったのは俺だった!」
しかし藤沢には効果が無い。痛みすら感じていないのだろう。
藤沢「へへへ〜〜そうさ、みんなお前が悪いんだああぁぁ」
荻野「だからお前は俺が倒す!」
そう宣言すると荻野は、藤沢の頭に発気を叩き込む。
荻野「今のお前はまぎれも無く…
ネ オ テ ラ ー
新 た な る 恐 怖 ! !
」
発気が藤沢の頭を吹き飛ばした。
藤沢「あ…がああ」
頭頂部を失った藤沢は大の字に倒れて動かなくなった。
荻野「ネオテラーの弱点は、そいつ自身にもとからあった"弱み"。
ならば学歴にとらわれたお前の弱点は知能の詰まった頭だろう」
終わった――背を向けかけて荻野は足を止めた。
GTFの世界の崩壊は止まったままだ。まさか、まだ――
藤沢「ぐえへへへへ…」
予感的中。
荻野「頭じゃないのか、弱点は…
ネオテラーは己の体を削り、銃弾に変えて撃つ。
既に頭は"消化"された後か!なら弱点は…」
再開される途切れない銃声。
荻野「それだ!そのいつの間にか持っていたイングラム!」
発気がイングラムを破壊する。が、
藤沢「よくも俺の銃をおおおおおっ!!」
頭部と武器を失ってなお藤沢は荻野に挑んでくる。
荻野「これも違う…まあ鬱陶しい銃撃からは開放されたが…」
藤沢「がああああああああっっ!!」
獣のような咆哮を上げ藤沢は突進してくる。
荻野「どこだ?どこだ!弱点はどこだあ!!」
腕が飛び、足が千切れ、体が穴だらけになっても藤沢は突進してくる。
荻野「くっ、こんなになっても死なないなんて、もう生き物とは呼べないな…
ほとんど妖怪…そう言えば昔はヤオヨロズって呼んでたんだっけ…」
追い詰められ階下へ駆け下りる荻野、その頭上に…
藤沢「鬼ごっこは終りだああああ!!」
荻野「うわあああああ!!」
なんと天井をすり抜け藤沢が荻野の頭上に降ってきた。
それでも荻野は仰け反りながら藤沢をぶっ飛ばす。
藤沢は壁に逆さの状態でめり込んだ。いや、
荻野「こいつ、化気を…!?いや、違う!!」
藤沢「ククク…」
ずぶずぶと藤沢の体は壁に吸い込まれていく。
荻野「一体化している!!はっ、そうか!
こいつの弱点は学歴の象徴…この学校そのものか!!」
荻野の言葉に反応したかのように廊下が窓が、壁が蠢動を始める。
今、荻野は巨大な生物の体内に飲み込まれたような感覚に陥っていた。
荻野「おおおおお!!」
荻野は壁という壁、窓という窓、目につく全てを撃ちまくるが、
藤沢「どうした、その程度か。痛くも痒くもねえ!」
荻野「くっ、弱点がわかったところで、こんな巨大な学校を破壊するなんて…」
蠢く廊下のそこここが盛り上がってくる。
それはゆっくりと人の形を成していた。
荻野「これはさっきの…!」
GTFの生徒達が復活してきていた。
さっきより遥かに邪悪な、気味の悪い表情を浮かべて。
爪は鋭く尖り、口からは牙が覗いていた。
藤沢「行けーっ!今度こそ本当にバラバラにしてやれーっ!!」
荻野「このぉ!!」
襲い来る数十人の生徒達。荻野は発気で応戦するが、弾が生徒達を逸れていく。
荻野「え?」
生徒達「なにーこいつ?」
「キモーい!」
生徒達の攻撃。荻野は奇妙な動きで攻撃をかわ…せなかった。
荻野「ぐうっ!」
生徒達「ギャハハハハハ!バカじゃんこいつ!」
荻野「ジ、GTFの世界まで復活してるのか…
しかも、キモさも向こうが上だから攻撃をかわせない!」
藤沢「そろそろ無駄は止めたらどうだ荻野?
てめえはここでミンチになりやがれ!!」
再び生徒達の集中攻撃が荻野を襲う。
荻野「ふざけるな!発気!」
ぽん!
生徒達「………」
藤沢「………」
荻野「…こんな古典的な…」
銃も弾も必要としない『気砲術』
それを駆使して戦っている荻野は今、当然銃を持っていない。
しかし、その指先から…
藤沢「ギャハハハハハ!万国旗だってよ!!」
生徒達「今時、万国旗だって!」
「ダッセー!何年前のセンスだよ!!」
荻野「ぐ…うう…これって俺のセンスじゃないだろ…むしろ…」
藤沢「つべこべ言わずに死ね!荻野!」
荻野「ぐわああああああああっ!!」
数十の牙が荻野の体に食い込んだ!
荻野の顔が苦痛に歪む。
藤沢「いいぞ!その顔!今お前はさいこーにキモいぜーっ!!」
襲い来る激痛の中、荻野は藤沢に標準を定めた。
荻野「さいこーにキモいなら!今が最高のチャンスだ!!」
ガアン!
僅かに残ってる藤沢の胸部に新しい穴が開いた。
藤沢「最後の悪あがきか?今の俺は痛みなんて感じねえ!」
荻野「そうかな?『神殺し』の俺には命無き者すら殺す力がある!」
藤沢「へっ!全然痛く…い、痛ェッ!な、何をした荻野ォ!!」
荻野「"死気"だ!」
>>523 長大な日本刀ときて・・・・
薩摩隼人の長刀?
前田慶次の長刀?
とか思ったら・・・・・・・・・・・・・・
一 文 字 流 斬 岩 剣 で す か ! ?
たしかにどっちも常在戦場だったな・・・・・・
第九部のエトセトラ(2chブラウザで数字にカーソルをあてるとレスが読めます。)
>65>66>67>68>69聖石争奪戦
>70>71その男、格闘家につき
>72>73>74三闘神。前編
>75貞本の冒険。桜玉吉登場。
>77>78>79>80三闘神。後編。(高屋良樹、鷹氏隆之登場。)
>81>82>83>84リターン・オン…
>85その男、格闘家につき(おまけ)
>86>87魔球封印。
>88>89>90板垣恵介VS佐渡川準。(板垣勝利)
>91>92>93>94夕食(ガンガン)
>95情報テンプレ(アイテム、改定>105)
>98>99>103夕焼けとカレー。(無敵同人戦艦・無礼ド(ブレイド)登場。)
>107>108参炉里魂動く。万乗の力。
>111武井といとう。
>116>117魔球解禁。(ラーメン)
>118小畑の思い。前編。
>120>121妖魔王関連。
>122小畑の思い。後編。
>124ミカエルの眼の謎1
>125>126>128紅煉誕生秘話(おまけ>127)
>129ミカエルの眼の謎2
>132>133六田VSしげの(六田勝利、ゆでたまご登場。)
>135水島VS荒木。前編。
>137>139ミカエルの眼の謎3
>140>141水島VS荒木。後編。(水島勝利。)
>142>143ミカエルの眼の謎4
>144大友と松本。(ゴッドハンド。)
>146>147>148>149>151>152漫画家大紀行
>154>155>156>158>159藤田関連。
>161>162赤い秘石と青い秘石。
>164藤田関連2。
>165>166>167>168
>169>170>171>172藤田捜索とエトセトラ。(おまけ>172>174)
>173>175藤田VS青山。前編。
>176>177>178その男の名は『Y』
>182>183>184藤田VS青山。後編。
>185真島と小畑。
>186>186>188>190藤田の想い。
>191審判交代 。
>192評議会!クランプ登場!!
>197>198藤田変身!
>206野球関連。渡辺保裕登場!
>211『Y』の胎動。前編。
>214バーリトゥード審判。あだち激昂。
>215『Y』の胎動。後編。
>216>217>218>219荻野VS藤沢。
>220>221>222紅蓮誕生詳細。
>224>225荒木、マウンドに!
>227>228>229>230>231冨樫と藤崎。
>233>235>236野球編。第3の翼。
>237CM。
>239>240野球編。岡田の闘気。
>241矢吹と救世主。
>242>244>245>252>253一点奪取。
>254>255漫画家大紀行2
>257冨樫と藤崎2。
>261>262>263『Y』対峙。前編。
>264六田の挑戦!前編。
>265『Y』対峙。後編。
>267>268>269六田の挑戦!後編。(ゆで、飛空挺到着。)
>273>274>275>276>277>278高田、暗躍。
>279>280>281柴田ヨクサルと福本。
>283>284>285高田の思考。
>287>288>289『Y』勝負。
>299とりあえず起きました。柴田亜美登場。
>302>303>306Aブロック。第五試合開始。
>307久米田の野望!
>310>311>312ドッキン記憶喪失アニマル
>316>317サガの最期。前編。
>320>323冨樫と藤崎3。
>326>327>341>342『Y』援軍。
>345韓国からこんにちは。
>348>349大丈夫か久米田!?(やまもとかずや復活!)
>351サガの最期。後編。
>352>353審判もバーリトゥード。
>354柴田ヨクサル接近。
>355高田とサガ。前編。
>356>357冨樫と藤崎4。
>358>359帰ってきた馬鹿大将。にわのと安永。
>364高田とサガ。中編。
>365聖悠紀と矢吹。
>367>368高田とサガ。後編。
>372>373>375>376参炉里魂と最強伝説福本。(参炉里魂、戦艦ヤマトに到着。)
>377>378岡田の陰謀。
>379金田一(*´・`*)
>380貞本と請求書。
>382>383>384『Y』反撃。
>385>386水島の挑発。魔球、工作員!
>392>393見えない学校。
>397その頃の河下。
>398>399>400『Y』発動。
>401その頃の河下2。
>403曽田VSしげの1。
>405その頃の河下3。
>406>407妖魔王関連。杉浦日向子登場!!
>410>411>412>413>414>415GTFの世界。萩野VS藤沢2。
>416>417黒荒木VS戸田
>403曽田VSしげの2。
>420>421ひとりぼっちの黒猫。(矢吹関連。訂正、422)
>423>425>426河下の悲劇。大暮維人復活。
>432>433>434>435>436Aブロック。正邪対決!
>437>438生きるべきか死ぬべきか。冷やし中華やめました。
>440>441>442軍艦内でハロー。
>443>444>445冥界三巨頭登場。
>446その頃のガンガン。
>447>448Cブロック決勝へ向けて。前編。
>449その頃のガンガン2。
>450Cブロック決勝へ向けて。後編。
>452>455その頃のガンガン3。
>456>457>458>459『Y』覚醒。
>460その頃のガンガン4。
>461>462>463>464>467>470
>471>472>473>476>477>478Aブロック。正邪対決2。
>479>480>481
>482>483>484とある絵草子。(妖魔王関連。八房龍之助登場。)
>486ちょっと前の話。同人軍艦内。前編。
>487Aブロック。正邪対決3。
>488>489>490ちょっと前の話。同人軍艦内。後編。
>491>493>494>495Aブロック最終戦1
>496>497一方その頃。(Cブロック。)
>498>499>500『Y』降臨。
>501>Aブロック最終戦2。
live2ch使ってるが読めない。
>65を
>>65にすると読めるが。
>504>Cブロック決勝戦!序章。
>506>507夢魔の本領!
>508>509>510>511>512>513>514矢吹とえなり姉のエトセトラ
>517Aブロック最終戦3。
>518倫タン出撃。
>519>520>522>523Aブロック最終戦4。
>528>529>530>531>532>533新たなる恐怖。萩野VS藤沢3。
ここまでです。修正などあったらお願いします。
また、補足事項などあったらそれもキボン。
>>540 ギコナビかOpenJuneで試してみてください。スマソ。
(*´・`*)←ワロタ
毎度のことながら、まとめてくれる人はありがたいです、ホント。