isolated
抱きしめられた。
抗うことさえ許されないほどの情熱に拘束されながら。
アタシが見つめていたのはあのヒトであり、
そして、あのヒトではない誰か。
「マチ・・・・・・・・・」
月明かりに照らし出される長身の影。
いつも心待ちにする、恋人の訪れる夜。
なのに。
白い素肌のところどころに赤く残る跡。
丸い膨らみを備えた胸に、細い腰に、太腿の内側にもそれはあった。
泣き腫らした目が痛くて、ヒソカを見られない。
アタシの着衣を解き、あのヒトの痕跡を認める。
ヒソカは逸らさずに私を射抜く。
あのヒトに抱かれて汚れてしまったアタシを。
―――――手首が痛い。
「ッ・・・・ヒソカ・・・・・」
全裸で床に転がされ、両腕を頭の上で幾重にも縛られる。
「あっ、い、やぁ・・・・・っ」
手を動かそうとする度、締め上げられた紐が肌を食む。
鈍い痛みが響く。
握り締めた手のひらが汗ばむ。
ヒソカに触れられているそこここから熱い快感。
「やっ、オネガイ・・・・・こんな」
しなやかな髪をかきあげながら、彼はマチの身体の上で、口許に薄笑いを浮かべた。
「団長の指でキミはどう乱れたんだい?」
そう言いながら、ヒソカは先ほどから続けている愛撫の手を休めようともしない。
「ああっ」
「知ってるよネ◆団長がキミをどう思ってるかくらいは◆」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ボクがあれだけ愛してあげたのに、足りなかったのかい◆」
「ちっ、ちがう!」
動けなかった。望まないまま体だけが繋がれた。
それなのに。
耳元で囁かれる刃物のような言葉。
耳を塞ぎたい衝動にかられるが、それは叶わない。
「んはぁ、痛っ」
男の指がマチを犯す。
「まだ一本だけダロ◆」
長い指は次第に数を増やされ、淫靡な動きで快楽を探り当てる。
ぐちゅぐちゅと愛液が撥ねる。
「こんなに濡らして・・・・・・ホラv」
濡れた指をわざと、見せつけるようにいやらしく舐めるヒソカ。
「そんなの・・・・・・」
「マチちゃんのでしょ?」
その指はマチの口に突き入れられる。
「あぐぅ・・・・・・」
逃げ惑う程に、舌は指を舐め、結局指に奉仕するかたちになる。
「ククク、いいよ、上手い、上手い◆」
漸く、指が口を離れた。
待っていたようにマチは訴える。
「イヤだ、こんなの!」
「イヤ?団長にならいいのかい、こんな風に犯されても◆」
ヒソカを睨みつけるマチに氷の冷たさで言った。
「妬けるね、まったく◆」
次の瞬間、覚悟させる間もなく、秘裂が開かれ、ヒソカが身体を割りこませた。
「イヤなんて言えなくなるまでシテあげるよ◆」
それはまるで果てがないように続いた。
両膝を抱えられ、腰を力任せに叩きつける。
内壁を荒々しく擦られる。
くちゅくちゅと水音が耳に届く。
速い抽送に何度も昂ぶっては、上り詰めた。
マチは激しく突き上げられながら、ヒソカの顔をぼんやりと見ていた。
いや、見ようとして見ていたのではない。
そんな理性は残っていなかった。
狂うような快楽の中にあって、どこかで、優しかったヒソカの記憶を手繰っていた。
涙が幾筋も流れ落ちた。
もう、枯れるほど泣いた後だったのに。
「キミを殺してしまいたいよ・・・・・・・・」
遠のきかけた意識は、一瞬ヒソカの声に呼び戻された。
切なく、悲しい、声だった。
(そうか、アタシは死ぬんだね)
再び、アタシは目を開けた。
開けたらソコは地獄なんかでは無く、無論天国でもなくアタシの部屋だった。
アンタの体温は隣には無かった。
分からない、何も。
アタシを置いて行かないで。
ついていく事も、戻る事も出来ない、
こんなところにひとりきりにしないで。
あのヒトに抱かれながら、最初から最後までアンタを想ってたアタシを、
愛しいなんて思わなくていいから。
ただ今までのように傍にいてくれたら。
ああ、それだけでいいのに。
アンタがいない日常は、一瞬にして色を失う。
こんな風に別れが訪れるのなら、
いっそ、殺してくれれば良かった・・・・・・・・・・・・。