ルチル「(まったく、あの兄弟たちはいつになっても全然懲りないわね〜)」
DOME「彼らにとっては生きがいみたいな物だからね。やるなと言ってもあのふたりはやると思うよ?」
ルチル「(でしょうね。ホント、どこからあんな気概が湧き上がってくるのかしら?)」
DOME「さあ? こればっかりは本人たちにしか理解できない事柄だよ。例え人の心を感じるチカラがあったとしてもだ」
ルチル「(げに恐ろしは人の業って所かしら? まあ、あまり度が過ぎるようだったら、私たちも考えないと……)」
DOME「その辺りは大丈夫じゃないかな? 今の彼らから以前あったような狂気や焦燥感は感じられない。
彼らの目的がガロードとティファに集約しているためなのか、彼らが持つ負の感情が上手い具合に発散しているみたいなんだ」
ルチル「(へぇー。じゃあガロードとティファがいる限り、あの2人の悪さは最小限に抑えられているってことなの?)」
DOME「そういうこと。彼らが行なっているのはあくまでガロードとティファに対するちょっかいに過ぎない。
どんなに悪見積もってもイタズラ程度が関の山だ」
ルチル「(その対象であるガロード達には気の毒でも、世のため人のためにはそうのほうが良いのかもしれないわね)」
DOME「僕たちにできるのはそんな彼らを信じて見守り続けること。きっと大丈夫だよ、彼らなら」
ルチル「(そうね。あなたの言うとおりだわ)」
DOME「ところで君はどうするんだい、これから?」
ルチル「(はい? これからって、どういうこと?)」
DOME「折角のバレンタインデーだ。僕もこうしてボディを得た訳だし、日ごろの感謝と親愛を込めて
ガロード達チョコを作ってみようかと考えていたんだ。だから君もチョコの1つでも作ってみてはどうだろうってね」
ルチル「(あのね、DOME? あなた、私が幽霊だってこと忘れているんじゃないの? どうやってこの私にチョコを作れって言うのよ)」
DOME「何、方法はいくらでもあるさ。誰か手の空いている人間に憑依して、それでチョコを作ってみるとか。
プレゼントの意味合いが薄まってしまうかもしれないが、ティファに事情を話して身体を貸してもらうって手もあるよ?」
ルチル「(うーん。でも私、料理はちょっと……)」
DOME「僕が教える。お菓子作りの基本さえ守っておけば、あとは気持ちだよ。きっと喜んでもらえるさ」
ルチル「(まったくあなたは……。人の気も知らないで)」
DOME「あはっ。で、どうするんだい? やってみると存外に楽しいものだよ」
ルチル「(ふぅ。はいはい、わかりました。ここはあなたに従って、人生及び死後初めてのお菓子作りに挑戦することにするわよ。これでいいんでしょ?)」
DOME「そうこなくっちゃ。ではさっそく、人材(?)確保と場所の選定が最重要課題だね。
下手に事情を知らない誰かに見られたら、ホラーと勘違いされてしまうよ」
ルチル「(あっ、そういうところ、意外と気にしているんだ……)」
DおME「おや? 何か言ったかい?」
ルチル「(いえ何にも。やるなら早く準備に取り掛かりましょう。時間は思っている以上に無いんだから)」
DOME「そうだね。じゃあ急ぐとしようか」
さあ、この後どうなることやら……。
カリス「(ぴくっ)なんでしょう、これは……。いつもと何かが異なります。たぶん……。たぶん大丈夫ですよね?」