なんでザクはビームライフルを使わないの? 13発目
ザクはビームライフルを撃てない
しかし、ザクがビームライフルを使えないと判断するのは早計だ
ア・バオア・クーの一角、連邦軍が攻めあぐねている区画があった
「どうなっている?我が軍の損害ばかり増えているようだが?」
「偶然でしょうが、敵に精鋭が揃っています、それに事前の我が軍の
パブリク隊の攻撃が功を奏し過ぎたようで・・」
その部署に配備されていたのは、陥落したソロモンから脱出してきた
宇宙攻撃軍の敗残兵グループであったが、錬成途中を急遽動員された
学徒兵すら当てにせねばならないジオンに取って、ある意味精兵でも
あった・・・そして
慎重に攻撃エリアを区分けしてあった筈の連邦軍パブリク隊による
搭載ミサイルが同一箇所へ重複して投射されたため、ビーム攪乱幕が
非常に濃密に散布されてしまい、その一角だけはほとんどのビーム
兵器が使用できない状況となっていたのである
マシンガンやバズーカといった実体弾を主体としたジオンのザク・ドムに
対してビームスプレーガンを主兵装とするGMが劣勢を強いられるのは
当然であったのだ
連邦軍もボールによる支援射撃を行ったり、ビーム兵器に換えて、マシンガン
装備に切り替えたりもしたが、先に吶喊していた部隊は引くに引けない状況と
なっていたのだ
ザクが手にした斧が、GMスナイパーの右腕を一閃した
この戦場では使い物にならなかったビームライフルを保持した
GMの腕が宙に舞う、返す刀でザクはGMの腰部に斬撃を加える
しかし、白熱していた斧の炎は既に消えており、GMは損傷を
負ったものの、撃破には至らなかった・・・ただし、稼働困難に
なったらしく、ハッチが開きパイロットが脱出を試みる
ザクのパイロットもさすがにこれは見逃した
彼の機体は今、丸腰の状態なのだ・・・デポに戻り、武器弾薬を
補充する必要がある、しかしその暇は無かった
ザクを振り向かせた瞬間、新たな敵影が視界に入ってきた
マシンガンらしき武器を装備したGMと、バズーカを担いだGMだ
彼は目の前を漂っていたGMスナイパーの右腕を掴んで待避する
使える筈もないのだが、何故そんなモノを拾ったのかは、後から
考えても判らなかった・・・ただ、手ぶら丸腰の状態よりはマシと
思ったのかも知れない
「不慣れな連中め!」
彼の目には、GMパイロットの技量はかなり低く見えた
どうでも良い方向にバズーカ弾を撃ち込んできたおかげで、発生した
爆炎の陰を移動して、2機に接近できる
ザクは手にしていたビームライフルの銃床をバズーカGMの頭部顔面
グラスエリアに叩き付けた
グァキィ−!
音が聞こえていたら、そう響いたであろうが、宇宙の真空では無音だ
いきなり襲われたGMは狼狽し、バズーカを手放して背中のサーベルに
手を伸ばす・・・そうはさせじと、もう一度叩く
あらぬ方向へむりやり向けられたGM頭部のこめかみから火線が伸びる
バルカン砲が暴発したようだが、GMにとって不幸なことに、その銃弾は
サーベルとそこへ伸ばしていた左手を粉砕した
そこへマシンガンが着弾する
先行していたマシンガンGMが後続機の異変にようやく気づき戻って来たのだ
乱戦状態にあったGMのボディを楯にして、弾着を避けたものの、何時までも
隠れてはいられない
ザクのパイロットは意を決して、手にしていたビームライフルをGMに向けて
放り投げた
投擲兵器としての威力を期待してのものでは無い、殴りつけた衝撃からかどこか
壊れたらしく、機関部(らしき箇所)から火花が散るのが見えたのだ
「暴発?!」という恐怖が、その得物を手放させたというのが正解だろう
果たして、投げつけられたビームライフルはGMの眼前で爆発した
「クラッカー位の威力はあったと思うな」
戦後の彼の回想である
その後彼のザクはデポに戻り、再出撃を目指すが、補給中に停戦命令を受け
彼の戦争は終わる
彼は言う
「ザクはビームライフルを撃てないだって?だが、俺はア・バオア・クー戦で
ザクを使い、ビームライフルで2機のGMを仕留めたぜ」