【SS】もしアムロがジオンに亡命してたら part2

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81 ◆Zxk1AsrDG6
デッキの片隅に腰を下ろすと、アムロは慌てた様に食事を摂りはじめた。
並んで座ったセイラは暫く黙ったままその様子を見つめている。

「お、美味しいです。本当に」

ありがとうと答えながらセイラは穏やかな目で笑った。
 この数日の間にアムロは本当に変わった、と思う。
上手く表現はできないものの、精神的に成長したように感じるのだ。
以前の子供っぽさが抜けて逞しさが出てきた気がする。まだ頼り甲斐とまでは言えないが。

そして、これは直感なのだが、自分の中に漠然とある「何か」をアムロと「共有」できそうな気さえするのだ。

勿論それは、単なる思い込みの類なのかも知れないが・・・
そんなアムロに以前は考えもしなかったであろう≪引力≫めいた物、を感じ始めている自分を
あの時のハモンの微笑みによって、認めざるを得なくなってしまった。

そう、あの時・・・ハモンがアムロに額を合わせた時・・・確かに自分は彼女に「嫉妬」したのだと。


セイラはアムロの横顔にごめんなさいと囁いた。アムロは驚いた様に顔を上げる。
過程はどうあれ、今回のアムロの行動は自分にとって絶好の機会だった。
それを利用するが如く事を進めている自分が申し訳なく思えてならなかった事を
セイラは素直な言葉でアムロに話す事ができた。
アムロはそれを真剣に聞き、気にしないでくれ、自分もセイラの役に立てて嬉しいと答えた。

それは不思議な感覚だった

アムロに寄り添うようにしていると言葉の輪郭がぼやけて行く

何かが、言葉にはできない何かが急激に二人の中に広がって行く気がする。
もしかしたらアムロとなら言葉なんて遠回しな物は必要無いのかも知れないとすら思える。
セイラは刹那の夢うつつの中で何とか言葉を紡ぎ出した

≪心を触られた≫としたら、こんな感じなのかしら、と・・・