【SS】もしアムロがジオンに亡命してたら part2

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61 ◆Zxk1AsrDG6
WBは1機のガウ攻撃空母と3機の輸送機を従え、一路バイコヌール基地へと空路を急ぐ。
輸送機群ははダグラス大佐率いるMS特務遊撃隊である。今回は補給がメイン任務の為、実働部隊は搭載されていない。
その為その内の1機にオルテガが自らのドムと共に同乗し同隊の護衛を勤める。
しんがりを務めるガウの内部にはガイアとマッシュが控え、後方に睨みを利かせている。
搭載していたMSを先の戦闘で失い、デッキが空となった二機のガウは既に何処かの基地に帰還していた。

ついさっき、ラルの口からセイラの素性を知らされたばかりのアムロはブリッジを離れ、
1人MSデッキでガンダムの整備をしていた。
パネルを全開したコックピットの奥に潜り込んで、ほぼ仰向けの状態になっている。

何だか別世界の事の様でピンと来なかった・・・というのが正直な感想だ。

ジオン・ズム・ダイクン。学校の教科書に載っていた名前だ。
確かジオニズムがどうとか・・・はっきり言ってあまり興味が無いジャンルの授業だった。
漠然とだが、人間なんてそんなに都合良く変われるもんじゃないだろうと思えたからだ。
試験に出るから名前と年号だけは覚えたけど。

セイラさんはその、ジオン・ズム・ダイクンの娘。
セイラさんの本名はアルテイシア。
セイラさんの兄は「赤い彗星」のシャア・・・

アムロは黙々と整備を続ける

ダイクン派だったラル大尉達が、ダイクンが死去した後、いかにザビ家に冷遇されたかという事も聞いた。
もう既に死んでしまったと諦めていたダイクンの遺児セイラと逢えた事がどれ程嬉しかったかも。
そしてセイラの兄も意外な人物として生存している事が判明して・・・


もう何だか、驚く事が多すぎて考えがまとまらない。


WBでずっと一緒に戦っていたのに、彼女の事を何も知ってはいなかった自分に
改めて愕然とするアムロだった。

・・・セイラさんは僕の知っているセイラさんじゃ無かったのかな・・・

そんな不安も頭をよぎる。
荒くれ者に囲まれても揺るぎの無かった彼女の気高く美しい横顔をアムロは思い出していた。
生気の満ち溢れたたあの瞳。顔が熱くなる。我知らず胸は早鐘を叩いている。
以前から綺麗な人だとは思ってはいたが、こんな感覚を今まで彼女に感じた事など無かった。
どうやらこれはやはり、あの場のジュースのせいでは無かったらしい。
もどかしい怒りにも似た感情を抑える事ができず、アムロは同期ゲージ調整を2度ほどしくじった。

「アムロ、いて?」

コックピットの外から唐突にかけられたセイラの声に弾かれた様に反応したアムロは
展開されたパネルカバーに思い切り頭をぶつける事となった。