対するS4は何時も通りに狙撃用の装備で身を固めている。
電子的・光学的な索敵能力に優れる機体だ、
ライフルの照準スコープで地形を走査する事も容易い、こういう時には便利な機体だ。
『ははは…確かにソイツが一番困り物ですね。
けど大丈夫ですよ、もう直ぐ俺達が食い物を狩って来る――そうすればパーティだって出来ますよ。』
『…しかし教官、今だから聞きますけど。
教官はあちらのクレイドルに着いたら、誰か誘いたい人でも居るんですか?』
…何時の間にか、通信が接触回線に切り替わっている。
見ればS4+の機体から、通信用のワイヤーが射出されていた。
>>710 「おや、そういうのに興味のあるお年頃かい?」
生真面目そうな声の、不真面目ともとれる内容の問いに、
スカーレットの艶やかな声はからかいの響きを孕んで応じた。
「そういう質問をするって事はさ。
つまるところ、誰か誘いたい相手がいるんだろ?
……いや、誘うかどうか決めかねてるってトコか」
当たらずとも遠からずだろ、とスカーレットは猫のように笑って指摘した。
>>711 『――ええ、困った事にね、色々と悩んでますよ。
…ある意味新鮮な悩みではありますけど。中々に苦しいですね、これは。』
(珍しく、即答である。
内容だけ見れば何時も通りに冗談めかした物に思える。
しかしその実、その声色は真剣その物だ。
わざわざ盗聴されない接触回線を使う辺り、それだけ彼にとっては真剣事なのだろう。)
『ただまぁ…実際の所本当にお聞きしたいのは。
そういう相手が居るとして……教官にとって"恋愛"ってのは、
"誰かを好きになる"っていうのは、一体どういう事なのかな、って。
…そう歳も変わらない奴からこういう事聞かれるのは可笑しいと思うかも知れませんけど。
考えてみたら、こういう事聞けそうな相手が他には居なかったモンで。』
(コクピット内のリヒャルトの表情は、バイザーに反射する光で窺い知れない。
搭乗機であるS4+もまた、静かに周囲を見張っているだけだ。)
>>712 「成程……茶化して答えちゃ申し訳ないね、そんな顔されたんじゃ」
漏れ出た苦笑は先ほどまでの己へのもの。
「さて、どう答えたもんかネェ。
アタシもいざ『色恋とは何ぞや』なんて訊かれても、
普段はそんな事、考えてみもしなかったよ――」
参ったね、と思案顔のスカーレット。
焦がれて止まない年上の男(ヒト)の顔を心に思い浮かべても、
そこから沸き起こる己の気持ちを、誰にも分かるような言葉で説明することなどできそうに無かった。
「――んーっ、ちょいと縁起でもない言い方すりゃあ……『死ぬときゃその人に看取られたい』ってトコかねぇ」
>>713 「"死ぬ時に看取られたい"、ですか……
成程――良いですね、そういうのは素敵だと思いますよ。」
(やや間が空いて、幾分か落ち着いた様子のリヒャルトの声が返って来る。
納得したつもりにもなれるし、理解したつもりにもなれる、
しかし共感は恐らく出来ない、そういう類の声だった。)
「しかしそうだとしたら―――俺のは惹かれていても恋ではないのかも知れません。
俺は…自分の所為で、誰かに悲しかったり辛い思いをさせるのは嫌ですから。
……いや、嫌というよりも――
―――絶対に認められないというのが、きっと正しい。
…すみません教官、何時にも増して変な事聞いちまいました。」
(神妙な声。
教官が教官なりにきちんと考えてくれた答えにその様な回答をした事、
僅かなりとも悪いとは思っているのだろう。)
>>707 「おいすー。
思ったよりあっさりまとまったのね。
もうちょっともめるかと思ってたけど」
そんなことを抜かしながら飄々と入ってくる女、一人。
>>714 「おや、アンタはアタシに恋愛の普遍的な定義を聞きたかったのかい?」
意外そうなスカーレット。
「そうならそうと言っておくれよ、アンタも人が悪いネェ。
アタシゃまた、アタシにとっての恋愛って奴を訊きたいのかと思っちまったじゃないか」
青年の心など知らぬとばかりに、否、知っているからこその軽い口調。
やんわりと咎めるような、母猫の鳴き声にも似た響きをその言葉は孕んでいた。
>>716 「そうですね…すみません、では最後に一つだけ。」
言葉が刺さる。確かに返答を間違えたとリヒャルトは思う。
自ら問いかけた事だ、話の本質はそういう類の物では無いのだ。
そこで一旦言葉を切って、今度はよく考えて。
「教官は今、死ぬときは相手にそれを看取って欲しいと仰いましたけど。
例えば…そう。
"相手が自分より先に逝ってしまったら。"
"自分が先に逝ったとしても、その後に残る人の気持ちはどうなるか。"
そういう事を考えた事は、無いですか?
そんな、失ったり、悲しませてしまうかも知れないって事を、
教官はどういう風に捉えているのかな、って。
…俺にはそういうのが、まだよく分からないんですよ。」
(一方でそう続けた青年の声。
何と情けない調子か、と哂われても可笑しくない。
普段の余裕綽々な面影などまるで無い、まるで子供の様だと言っても良い代物だった。)
>>717 「参ったね、アタシゃそんなに酸いも甘いも噛み分けた女に見えるのかい」
真っ赤な髪をクシャクシャとやりながら、スカーレットは困った顔だ。
成熟した色香が未だ少女の可憐さと同居する容姿に、その仕草と表情は不思議とマッチする。
「先人に曰く、恋は病気だからね。
頭が熱で浮かされるように、恋は心を浮かせちまう――そこに相手への本当の思いやりなんて期待できる?
恋する乙女、なんて綺麗に言うけど、所詮は自分の病気で手一杯のエゴイストなんだとさ。
……それを自分で認められる奴はそうそういないだろうけどね。
そりゃそうだ、必死って事は真剣って事なんだから」
小さく笑うその声は、何を思ってのものだったのか。
お互いに天寿を全うすれば必ず自分より先に死ぬ定めの相手に、「先に死ぬな」と希った自分の身勝手さを笑ったのかもしれない。
「つまりだ。
アンタも病気になっちまえば、そんな事どうでも良くなるって寸法さね」
一度だけ。
自分も同じ質問をした事がある。
残されたヒトの気持ち。残されてしまった己の心。
数多の夜の蝶を束ね、数多の夜に華を咲かせてきたであろう華僑の娼婦は、今よりも幼いスカーレットの問いにこう答えた。
そうした覚悟を飲み込んで、初めて恋は愛になる――
>>707 >>715 「それでは、私はこれで。
<ルー・ガルー>の調整がありますから――」
ラナと、そして新たに部屋へと入ってきたキリノへと小さく会釈して歩き出す。
その最中にジーニアスへと向けた視線は決して冷ややかなものではなく、
無論親しげな温もりなど微塵も感じさせないものではあったが、
それでも敢えて言うならば、人が最低限持ちうる体温というものを孕んだ静かな眼差しであった。
少なくとも――ただの石ころに、そんな瞳を向ける人間はいない。
「恋は…病……ですか。」
暫しの間、その言葉を頭の中で噛み締める。
病だとすれば、この上自分がそれに侵されたとして。
或いは既に侵されているとしてどうなるのだろうか、と考えた。
そこでふと、以前とある人物に言われた事を思い出した。
【"いかなる戦闘、いかなる戦争も攻勢を以ってしか、満足しうる決着はない。"】
更に先人の一人は、恋とは即ち戦争であるとも言っていたと思う。
ここで繋がる。
確かに――正気で戦える戦争など存在しない。
一件マトモに思えても、それ自体が狂気の具現だ、それは病気と呼ばれる類の物。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「………そうですね。
在り方は中々変えられない物ですけど、俺のそれは、確かに病気の類らしい。」
そう、それなら分かる。
恋は病、それも狂おしい程に人の在り様を変えてしまう魔性の病だ。
無論、それを分かる事が出来たのは自分の前に居る、この人のお陰に他ならない。
天上の星と、闘う事しか分からない自分では、そもそもそれを知ろうともしなかっただろう。
「――ありがとうございます、教官。貴女のお陰で決心が付きました。
病気なら病気なりに…俺がちゃんと付き合ってやらないといけませんね。」
―――そして、一度知ってしまったのなら。行動しない事など考えられない。
「……今度の狩りから戻ったら、俺から誘いをかけてみる事にします。
自分の病気だ、もっと必死に、自分で向き合わないと始まりませんからね……!」
(落ち着いた様子で、そう告げた。
先刻までの神経質さも弱弱しさも無く、モニタの中で真一文字に結んだ口は凡そ彼らしくない。
しかしその眼差し――今度は良く見えた――は、覚悟を決めた男の顔だ。)
「出し抜くか出し抜かれるかって時に、生真面目に哨戒?
まじめなんだかどうなんだか。
ま、ぼちぼち帰ってくる時間なんだ。あせってもしょうがないよな」
こちらはマライア・フォッグ。
愛機ガン・キャノンのコクピットにて、最終チェックの真っ只中にあった。
モニタというモニタを踊る文字の羅列。
視線操作式モニタの上をひっきりなしに飛び回るポインタ。
OSの誤作動は命取り、FCSから駆動管理システムまで、余さず自分の手で調べつくす。
無論養成所の整備兵は生徒レベルでも腕利きぞろいということは知っている。
それでも自分で調べつくさなければ気がすまないのがパイロットという生物なのだ。
しかし無用の時間はかけない。己にかなう最速の時間でエラー・チェックを成し終える。
都合十分。早いのか手抜きなのか。おそらくその両方なのだろう。
問題さえ発生しないのなら手抜きも能力のうちだ。
小さくマライアはうなずいた。
そして頭部を操作する。
ガンキャノンが見下ろすカタパルト。
そこにはメガ・ライダーから移動機能以外のすべてを排除した結果として、
骸骨だけになってしまったようなデザインの物体が存在していた。
騎乗式のシュツルム・ブースター。細い胴部と、着陸脚機能を兼ね備えた鐙。
その後部には、見ただけでとてつもない推進力を誇るとわかる巨大なブースター・ユニットが備わっている。
「推進剤は節約モードとはいえ、シュツルム・ブースターがなけりゃS4の展開力にはついてけないんだぜ。
おい、ケチるなよ!満タンで頼むぜ!」
いうなれば魔女の箒。己で飛べぬならば、飛べるものを用意すればいいだけのこと。
マライアの声が格納庫に響き渡った。
「了解。
しかしまるで実戦ですね、ユニット・パックは本当に一番なんですか?
一個大隊だって相手取れる火力なんですよ、こいつは」
「おいおい、いつだって人生は実戦だぜ?
一回こっきりコンティニューなし、仮の人生なんてものがあったらほしいぐらいだぜ、
なにしろ試しが利くんだからな!」
せわしない様子の格納庫を待機室の展覧窓から見下ろしながら、
あきれたような微笑をチサトは浮かべていた。
傭兵というものは基本的にこういうものなのだろうか?
明日をも知れぬ命だからこそ、今日一日を最大限に楽しむ。
口調でわかる。
きっとこの女は、無為の退屈をすら至上の娯楽として楽しんでしまうに違いないと。
チサトは通信機のスイッチを入れた。
「マライアさんでしたかしら?
拾い屋さん部隊は用意しておきましてよ。
格納庫のホバー・トラック内で待機中ですわ。
リヒャルトさんへの報告、よろしくお願いしますわねー」
一方。
そんなにぎにぎしげな連中を忌まわしげに見つめる視線もまた、格納庫の片隅にあったりするわけで。
それも多数。その視線の代表とでもいえる人物が一人。
金色の髪をこってりとポマードでオールバックになぜつけ。その贅肉のない、
彫り深く精悍なる顔立ちには、不適と不遜、傲慢とが満ち満ちている。
生まれながらに何者かを支配すると定められているとしか思われぬような風格が、
軍服に包まれてなお筋骨隆々としたさまを露とする肉体には備わっている。
その、支配者の具現とでも言うべきオーラを発する男が。
今、深く静かに息をついた。
「ド☆許せぬ……欠けている。足りない何もかも。
要約するならば規律である。規律が不足しておるのである!」
低く、しかし銀河万丈の広さに響くほどのバリトン・ヴォイスで男──ミナカタ・オウガイは明言した。
浮ついた庫内の空気を苦々しげに見つめていた視線。
声を号砲と、いっせいにミナカタへとまなざしを向ける。
ミナカタはあまたの眼光を受け止めた。
そこに期待があり願望がある。
ならば答えるのが己の役目と男はすでに知っている。
「諸君!戦士とは何であるか!」
「「「忠誠により統率される兵士であります!」」」
問いに答えるは怒号。
その怒号に負けぬバリトンはしかし、あらゆる騒音を圧して響く。
「なれば諸君!兵とはなにか!」
「「「任に赴き無言のままに果てる屍であります!」」」
「屍に要らぬものは何か!」
「「「人を俗人たらしめる不覚悟と怠惰なる精神であります!」」」
「怠惰なる精神とは何か!」
「楽であります!」
「楽の具現とは何かッッ!!」
「人の煩悩でありますッ!!!」
「然りッッッ!!」
我が意を得たりといわんばかりに男は首肯し、そしてこぶしを振り上げた。
「要らぬ!要らぬ!兵に不要なるこの濁り、断じて要らぬッ!
戯れは要らぬ楽しみも要らぬ、苦悶と闘争こそ戦士が懇願すべき唯一のもの!
そう要らぬ要らぬ、人の快楽何一つ要らぬ!
人を堕落させるものなにもかも要らぬッ!!
では諸君!人を堕落させる骨頂とは果たして何であるのかッ!!
愛だッ!
愛ゆえに人は苦しまねばならぬッ!
愛ゆえに人は悲しまねばならぬッ!
愛ゆえに兵は人へと成り下がるッ!
愛など……愛などッッ!!!!!
愛など要らぬぅううううううううううううううううううううッ!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「愛などいらぬktkr!これで勝つる!」
「キャーミナサマダイテー」
歓声、怒号、歓喜、咆哮。
何が彼らをこれほどまでに叫ばせるのか。
格納庫の隅っこのへげへげのあたりとか今まさにスタンディングオベーションがカオスの渦である。
彼らには野望がある。夢がある。
なんかせっかくの長距離旅行なんだし楽しもうぜとかいう空気とか打ち払いたいとか
ガチンコで思ってて挙句そいつをかなえるチャンスなんだからそりゃ盛り上がる。
観光地だろうと禅マインドな教会荘厳エアーを満たしたい彼らの名は
『愛粉砕委員会』。通称喪男クラブ。いうまでもなく構成員は全員男である。
十代から五十台までのもてなくてもてなくてどうしようもない生徒さんとか
教官さんによって編成された養成所の精鋭オブ精鋭である。
掛け算させようが自乗倍しようがマイナス符号が失せない怨念の軍団ども。
なんかこうかわいい女の子とか無数にたっぷりいる養成所においてつまはじきかまされ
続けたこいつらは、その結果として己に蓄えられたとてつもなく不健康なマイナスイオン
もて養成所を支配すべくチャンスを待ち続けており、そうであるがゆえに風紀委員なんでチャンス。
ならば呪うね?yes.
「行くぞ諸君!われらこれより養成所を維新せん!!」
「応ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
号令に応じ、一斉に格納庫中に散るばかのむれ。どう考えても邪魔なんだが
KYを極める程度の能力の保有者であるこいつらには通用しねえ。
銃を担いだり罠背負ったりザク起動したりマジフリーダム。
こいつらにだきゃ絶対天下取らせちゃいけねーのがそのざまをみても丸わかりなのであった。
なんというか世紀末名情景である。
725 :
ちさと:2008/08/25(月) 00:03:30 ID:???
>>喪男ども
眼下に渦巻く混沌は怨念。
ニュータイプなら二秒で精神病院送りになりかねない負のオーラの
渦を眼下にしながら、しかしチサトにはそれが理解できないのである。
幼女ですから。
「なんか楽しそうですわね」
ぽつり。
726 :
まらいあ:2008/08/25(月) 00:07:07 ID:???
>>チサト
「楽しいんだろーな。
それはそれとして整備とか出立準備の邪魔なんだが踏んでもいいのか?労災扱いで」
愛機の足が汚れるのは立派に労災だと思うマライアである。
よって金もらうのは自分である。裁判などしらぬ。
727 :
ちさと:2008/08/25(月) 00:09:25 ID:???
>>726 『整備兵の方がかわいそうなんですn』
通信機越しに聞こえてくる言葉が唐突に途絶える。
『今きみ楽しそうっていったね!愛粉砕委員会にはいらないか!
まっとうな学園生活を送るためわれわれとともに(ry)』
『いえ私帰宅部がモットーですしああいうむさくるしい雰囲気は
少し苦手なにをなさいますの担がないでくださいましいややめて
さわらないでいやあああいやいやいやああああああああああ』
『トラップか!いいセンスだ!隊員たちがまとめて10人も!
しかし不屈!その才能われらが貰い受ける』
『いやあああああ助けてくださいましぃいいいいいいい』
そして切れる通信機。
728 :
まらいあ:2008/08/25(月) 00:14:52 ID:???
>>727 「?もしもし。もしもーし。おーい・・・?
切れたんだぜ」
眉ひそめつつ小首をかしげる。
「それにしても実戦さながらだぜ。
まさか出撃前に脱落者がでるなんて……あなどれねーんだぜ」
すでにチサト損失兵員扱いである。
>>728 「いや、凄いですよ。
まるでドーン・オブザ・デッドって感じです、機体の外が。」
(マライアの機体に通信が入る、一連の流れは把握していたのだろう。
回収のホバートラック『ブラッドハウンド改』に搭乗しているクリスからだ。)
「それと今連絡が。
リヒャルトさんはもう少しかかるみたいです、時間までに間に合わなかったら、
そのまま指定したポイントで合流して狩りを始めよう、との事ですよ。
音声ファイル、転送します。」
730 :
まらいあ:2008/08/25(月) 00:40:20 ID:???
>>729 「了解、受信する……
なーなークラスター今焚いちゃだめか?
人大杉で出るに出れねーぜ」
>>730 「またまたご冗談を。転送開始ー」
(通信により音声データが送信されて来る。
少し多いのか、時間があかる様だ)
「まぁ、放っておけば何処か行くでしょうから我慢して下さい。
やる事が無くなれば、勝手に各々部屋に引き篭もると思いますよ。
……あれだからモテない、って分からないんでしょうねぇ。」
>>730>>731 「こちら格納庫。必要なら重機使って撤去って手もあるけど」
勝手に通信機使って無線に介入するはぐれ整備班員
速さは遅い。どれくらいかというと宇宙世紀80年代後半ぐらいの連邦よりひどいぐらい
それが産廃以下クオリティ
733 :
まらいあ:2008/08/25(月) 00:55:19 ID:???
>>731 「行き先が同じっぽいんだよなー
うぜーぜ」
出るに出れない状況にボチボチイラついているらしい。
「めんどくせーぜ。音声データ受信途中だけどさ、出発しちまっていいか?」
>>732 「お、いいね。
ドーザーブレード増し増しで頼むぜ!」
にこやかに真顔。
>>732 「何か本気でゾンビ駆除みたいな手法ですねぇ…
チェインソウは必要ですか?
…なんてね。リュートさんもこっち来ます?
倒した獲物の回収に、働き手が一人でも居ると助かるんですけど。」
>>733 「そうですねぇ……
あ、はい。中身は合流場所についての話だそうですから大丈夫だと思います。
そちらが出ていただければ、こちらも大手を振って外に出れますからね。」
>>733 「ほう(知っているのか?)」
>>734 「もろ対人不殺の手法。結構有名だと思ったんだが
最も俺でも動かせる重機があればのお話だけどね
んー、(迷子整備員の)俺が下手に動くとややこしくなるんじゃないか
と思ったんだが。色々と」
>>734 「ゾンビ狩りにチェインソウは必須
しかし火炎放射器は流石に格が違った
黄金の石油火炎で殲滅は必至
しかし生徒に使うよりけだものを燃やすことのほうが得意な流石俺」
(意訳;いいからとっとと出発しようぜ)
後部座席から響く声。
獣ハント&獲物回収のための助っ人として派遣された歩兵小隊のリーダー、
自称『古代より無敵に裂ける雷鳴』ことロンド・ロンディアナ。
腕はぼちぼち。統率力もそこそこ。
ただややナルシストで人格的にアレ、言語感覚がもっとアレという
点が問題な人物である。まぁ、養成所では真人間の部類にはいるといえるだろう。
737 :
まらいあ:2008/08/25(月) 01:14:22 ID:???
>>734 「了解了解」
ひぃいいいいいいん・・・・・・
満員状態の格納庫内で平然とスラスターを動作させようとするあたり
苛立ちレベルはすでに臨界直前のご様子である。
>>735 「動かすのがムリなら動くんだぜ。違った。
動いて動かす。今すぐ動かす!」
>>737 「了解。
続いてブラッドハウンド、クリス車。発進します。」
>>735 「モビルスーツも本来は重機ですよ、それも建設用のね。
それんに、所属の分からない人間がウロウロしてる方がよっぽど面倒ですよ。
それに今回の遠足は実地訓練も兼ねてるんですから、
MSにも乗らないなら整備班として働くしか無いと思いますけど?
そういう訳で、時間も押してるんで乗るか乗らないか、イエスかノーで御願いしますね?」
(ニコリ。
恐らく養成所では余り見た物は居ないであろう本気の笑み。
が、通信回線の向こうで繰り出されているような、気がした。)
>>736 「しかし最近では走るのとか燃やしても死なないのとか、厄介なの増えましたよね。
そして結局一番怖いのは人間だと思います。」
(意訳:そのまま、マジに返してます。
クリス曰く、『軍隊には色んな人が居ましたから』らしい。)
(そう言いながらホバートラックの出力を上げて移動を始める。
リュートが何とか飛び乗れるレベル。
後方に追加のホバートレーラーを牽引したブラッドハウンド改と、
その乗員数十名が移動を開始する。)
>>737 「まあ焦るもんじゃない(対なにわの商人用の手法は知らないようだそして何語で通じるんだここ)」
>>738 「まず撤去が先か?いる位置的にそっちの方が早いしっぽいし
時間的に押してるみたいだから
……ところでアラームは鳴らしても問題ないか?そうでなければ
すぐ出待ちの人の機体の発進の補助に回るが」
>>739 「俺は不死身ではないので詳細はわからないが
養成所で暴れてるやつらは一級犯人なので注目は浴びるだろうな
馬鹿は性格が悪くて調子に乗るので発言力はないが話しかけてやると
勝手に俺の友達になるずたずたに引き裂いてやろうか」
(意訳;そういうかかわりたくないやつに限ってはた迷惑なことを
しでかす上になれなれしいもんだからたまらないよな。
まぁ悪いやつってわけでもないからそれなりに付き合っちゃ
いるけどさ。あんまり厄介ごとばかりだと流石に考えたくなるよ)
『上の方で私の名前が切れてますねー……修正しておきます、中の人?』
>741
「要するに余りお近づきにはなりたくない、と。
けどそうですね、至極付き合うのが大変なのは間違い無いかな?
…まぁ、そう言いたくなる気持ちはよく分かりますけどねー」
>740
「…人の話聞いてます?それに何を撤去すると。
それとアラームは格納庫管理の人が別に居ますから、任せた方が良いかと。」
(やれやれ、と言外に告げて。
首肯の返事が無い事を確認して、ブラッドハウンドを発進させた。)
743 :
まらいあ:2008/08/25(月) 01:38:10 ID:???
>>740 「『動いて動かす』と決めたからには動かすだけのことだぜ。
いや、これも違うな。吹っ飛ばして吹っ飛ばす!
さっさとホバートラックに乗ったほうがいいぜ?
ああ、もちろんアラーム鳴らしてからな!」
>>738 「アラームが鳴ったら一気に出るぜ。
私が先行して進路状況を探るから、最短かつ最効率の
進路で追従してきてくれよな!」
>>739 「足が遅い整備兵はぶっちぎられるとなみだ目になるが
俺は一流の歩兵なので脚の鍛え方が違いすぎた
高速で拾い上げてさらに加速」
(意訳;なんかアイツ貧弱そうだな。
どうもあの黒白、空気読まずにスラスター全開で飛び出しそうな
気がしてならねぇ。
リュークだったか?俺が拾い上げてくるからハッチを空けておいてくれ)
言うなり後部ハッチを開いて飛び出すロンド。目指すはリュークの元である。
>>743-744 (発進したブラッドハウンドが、その時丁度格納庫の待機エリアへ到着した。)
「クリス車、了解。
既に待機位置へ移動完了、チェック完了次第、全力で追従しますよ。」
>後部座席
「ロンドさん以外は総員揃ってますね、加速に備えて下さい。
車高の高い機体です、飛ぶ様に走りますよー!」
(そうして、ロンドが戻ってくるのを待つ。)
>>742 「……(少し聞いた程度だが……出遅れはまずいな)
把握した。手伝う」
そう言って引っかかる部分を探しつつ走る青年
>>743 「俺が鳴らすってワケじゃないけど鳴るようだ。
すぐに退避してくれるなら問題ないだろうな、人をブルドーザーでやら無くても良いかも」
>>744 「何か来たが割とよくあること」
MSで通行してるとたまーに人を回収するのにMSでって言う話もあるのだ。
「何あれ……」
<ルー・ガルー>のコックピットの中、メインカメラから送られてくる映像に呆れた顔で溜息をつくカナデ。
彼女には到底理解できない、東南アジアのジャングル並みの湿度と熱気とが男たちの中に渦巻く様を、
鋼鉄の四足獣は無表情に見下ろしている。
「……」
テイザーでも撃てば沈静化するだろうか、などと考えながら、少女は独り、黙々とOSの最終調整に勤しんでいた。
>>747 その渦を形作っている者たちは、
カナデからすれば顔も名前も知らない有象無象にしか映らないだろう。
が、その中心より少しだけカメラを動かすとモニターに表示される、そんな微妙な位置。
そんな所でクロームの獣に向かい、手を振っている影が一つ。
「位置が悪いのでは?これでは気付いて頂けないかと。」
「いいや、まぁそうかも知れないけど、今の俺は少し大きめの石ころの身…きっと気付いてくれる。」
「……昇降機を使って直接コクピットにお邪魔するのは問題なのですか?」
「モミジにはまだ解からないよ、こういうちょっとしたシチュエーションの積み重ねの重要性はねぇ」
「はい。理解不能です。」
その傍らにもう一つ小さな影を伴って。
>>748 勿論気付かないワケが無い。
今や(不本意且つ真実とは異なるが)養成所公認の恋人同士である関係の二人にとって、
有象無象の中からお互いを見つけ出すことなど非常に容易いことなのだ。
「クレハ?」
コックピットハッチが開かれる。
何の用事だろうかと訝しく思いながら、カナデは格納庫の照明の下に、
タイトなパイロットスーツに包まれたしなやかな体躯を晒した。
「どうしたの、モミジちゃんまで」
>749
「ほーらね?想いは通じるのサ」
得意げに指を弾いてみせる男に、「そうですか」と余り興味を示さない少女。
カナデ・ノースウィンドとの噂以前にも、養成所一似てない兄妹で有名でもある、クレハ・ナラノハとモミジ・ナラノハの二人は、
<ルー・ガルー>のコクピットハッチが開くのを確認すると、喧騒を掻き分けて昇降機に乗り込み、コクピット前までやって来た。
「やっほーカナデちゃん!
君の顔がどうしようもなく見たくなったから…君の声がどうしようもなく聞きたくなったから――来ちゃった♪」
なーんて!と笑ってみせる、クレハの陽気な笑顔と、
「こんにちは、ノースウィンド先輩。
……兄のソレは八割正解と言えるでしょう、迷惑を承知でお詫びします。」
それとは対照的に落ち着きを払い、
何時もどおりの丁寧なお辞儀をする妹、モミジのむっつりとした顔がカナデの視界に映りこむ。
「いやまぁホントはさ、“マイ・スレイヴ”の調整がついさっき終わってね、
今ココ(格納庫)に居るって聞いたからお手伝いに来たんだけど……OS?なら出来る事はない、かな?」
そう言うとすぐにパチンと指を弾き、
「じゃあこうしよう!」と後ろから取り出したものをカナデの前に突き出すクレハ。
「秘蔵のこれを飲みながら、ちょっとの休憩。」
どうかな?と笑顔で提案するクレハが手に持っていたのは、
出発前にクレハが個人的に持ち込んでいた桜桃庵特製の「ボトル梅ジュース」と「塩クッキー」。
「皆には内緒でね」と付け加え、男はそのままゆったりと昇降機の欄干に腰を預けた。
>>750 「つまりは暇なのね」
にべもない。
<ルー・ガルー>――バクゥ・ハウンド改修機、そのハッチに身を乗り出した姿勢で、
カナデは下の喧騒と眼前の兄妹との間に冷えた視線を往復させた。
不意に、その表情がふっと緩む。
「あの渦の中に帰れと言うのは少し酷ね。
お人よしの気遣いに免じて、退屈しのぎに付き合ってあげる」
梅ジュースを受け取り、早速ひとくち口を付け。
口腔から鼻腔へ抜ける爽やかな香りを楽しみながら。
お姫様はお人よしの道化師とその妹へ、自分と暫しの同席を許可したのだった。
>751
「胸がすくような纏め方です。流石はノースウィンド先輩。」
「くふふー、そう言われちゃうと俺の暇な時間の全てを捧げたくなってしまうね!」
などと人形のような妹を連れ立った道化師の兄は、
お姫様をひと時でも楽しませようと早速おどけて見せるのだった。
「ぶっちゃけ本当に付いて来ているだけーな俺としては、
斯様な狭所で暇を持て余すのは深刻な問題なんだよね。
する事と言えば自室トレーニングでしょ、子猫ちゃんの整備でしょ、後は雑用に使われて……
やっぱり俺にはカナデちゃんというオアシスが必要という結論にしか辿り付けないよ、はは」
そう言ってちらりと下界を見遣っては、カナデとも似た感想を胸に抱くクレハ。
「戦術プランの見直しや、端末通信で講義も受けられると思いますが、
お兄ちゃんが何故そういった有意義な時間の使い方をしないのか、私は妹として甚だ疑問ですが。」
そこへ釘が打ち込まれるのも最早予定調和。
大袈裟にリアクションを取りつつ、「努力はしてるさ!」と言い訳を並べる男。
「あー、そういえばトコロで、カナデちゃん?
この“ルーちゃん”の乗り心地ってどう?もう慣れたりとか。」
ふと話の種を思いついたか、
上体を仰け反らせて見上げる先の、鋼の獣を指してそんな事を尋ねてくるクレハ。
>>752 「尽くすべきは言い訳ではなく最善よ、気をつけなさい」
クレハにはそれが分かる筈だけど、と続けてカナデは己の愛機を見上げた。
「問題があるとすれば、貴方のその呼び方ぐらいね。
別に愛着や拘りのある名前では無いけれど……ルーちゃん、は正直どうかと思うわ」
ルー・ガルー。
旧フランス領タヒチに於ける伝承が出展。
フランス語で狼人間を意味するその言葉は、タヒチにて土着の伝承と結びつき、やがて魔女が変じた狼を指すようになる。
苦笑を漏らすカナデ、僅かに覗く年相応の表情。
ごく親しい相手にしか見せない、それは冷たさの奥の柔らかさ。
クレハにはその資格がある――つまりはそういうことだ。
「乗り心地は悪くない。やれる事は全てやったわ。
後は経験を重ねてこの機体を理解していくしかないでしょうね」
中身が半分ほどになったボトルをクレハへと返しつつ、質問に答えるカナデ。
ボトルの縁、僅かに濡れた其処は彼女の唇が触れた場所。
「差し入れ、感謝するわ。
後はクレハが飲みなさい――」
果たしてその事実にカナデは気付いているのかどうか。
多分、全く気付いてない。
>753
「えー可愛いと思うんだけどなぁ
いや本人はカッコいいと思うんだけど、ワンコにはどうしても可愛い名前を付けたくなる性分で……」
「犬ではありません。MSですから。
それにその名前の由来は……」
すかさず突っ込みを入れてこようとする妹を「良いの良いの」と押さえつけると、
コクピットを覗き込むようにして内部を伺うクレハ。
「流石にシートもちょっと特徴的だねー、
機動や運動パターンが違えば掛かる加重も変わってくるだろうし……ま、カナデちゃんがそう言うなら心配は余計なコトでしかないか。
うん、そっちも頑張ってね。俺としてもルーちゃ…ガルーの早く活躍が見たいところだし。」
そう言った所でぽんっと渡されるボトルに思わずきょとんとなる。
「え?あ…うん、頂きます。。。。
(――って……良いのかこれは!?)」
先ほどまで白雪の君が口をつけていたという事実を持った、
最早モノとして持ち得る価値をマジカルアイテムにまで昇華させたジュースボトルを手に、本気でドギマギするクレハ。
お前は小学生か。
「…?」
兄の、口にこそしないが慌てた様子に首を傾げるモミジさんだった。
>715
さて、それはどうでしょうか?
まだ頭数が揃った”だけ”ですわ。
さして深い意見交換を行った訳でも無し、纏まるかどうかは……まぁ、今後のわたくし次第、ですわね。
(端末の操作を一通り終えて、改めてキリノに向き直る)
つい先ほど、正式にわたくしの補給プランが実行段階に入りましたわ。
特に大きなプラン変更も無いのでミッションプランはもうそちら宛てに送付しておきました。
後でお目通しをお願いいたします。
(ふ、と気が緩んだ様に苦笑を浮かべた)
……わざわざ様子を見に来たと言う事は、やはり少し気になってましたか?
>>755 「気になる・・・そりゃ、そうですよ。
たんに船貸してる一生徒ってわけにはいかなくなっちゃいましたしねー。
そのくせ、私は多分最適手ってヤツを打ってない」
喧騒の中、ため息をつく。
耳には届かないほどのささやかさで。
「これが『仕事』なら、いくらでも冷徹な判断ってやつが下せます。
どれほどの不満があろうが、不服や不平が沸きあがろうが、無視することなんてたやすいこと。
ただ、理だけを追い求めればそれでいいんです。
食うな。我慢しろ。栄養なら飯じゃなくても取れるんだから、って。
けれど」
そして、少女はキャット・ウォークの下の喧騒に視線を投げた。
いとおしむ様な。憧れるような──少女ではなく、子を成した母にこそ
ふさわしい形相。
普段の彼女からはかけ離れた表情(かお)──それは一言で言うなら老成だろう。
「あの子達のほとんどは──『若い』んですよね。
もちろん、私やラナさんみたいに、戦争や戦闘の何たるかを──苦さってヤツを味わってる連中もいるでしょう。
けれど──そうでない子たちのほうが多い。
麦は踏むほどに強くなるといいます。
けれど。
まだ双葉でしかないころに踏みにじられてしまったなら──折れて枯れてしまうのがオチ」
だから──あえて、戯れることにしました。
食料の調達ミッション。わたしにとっての次善の手。
持っている知識と技量、そのすべてを用いて『戯れる』。
失敗に終わろうが、すべては『遊び』と笑いのめすことができる程度のミッション。
もちろん、真剣にやってもらわなければ、意味がない。
ミッションは、所詮ミッションに過ぎない以上、成果がなければ意味がない。
そのために、食料調達に向かう生徒たちを競争させました。
競争とはつまるところ、成果と成果の比べあい。
遊びながらに成果を得、そして問題への対処能力も身に着けられる。
というより、それこそが遊びの真価だと私は考えているんですけどね」
だから、と少女は小さく笑った。
「現実への不屈さを身につけるべき時期にある彼らに、苦すぎるほどの苦味を
与える必要などない。楽しさという名の甘さを味わいながら、現実へ対処できる
だけの力を身につけなければならない時期。
けれど──そういう『甘さ』は『隙』と『油断』にも通じる。
だからこそ──その点を『大人』が補わなければならない。
現実の苦さと辛さ。現実というものと闘争する術を身に着けた『大人』が、
彼らの犯す失敗をぬぐわなければならない」
17歳の娘にふさわしい言葉ではなかった。
しかし。ふさわしからぬと思わせぬ響きが、確かにその声音には秘められている。
当然だろう──戦歴にして四年以上。その大半を、彼女は敗色濃厚なジオン軍ですごしたのだ。
うちは貧乏だから、手柄を立てて昇進して、親兄弟を養わなければならないと、
そう言って微笑んだ新米の少尉候補生がコクピットごと粉砕される様をその目で見た。
死ぬのはいやだ、恋人の所に帰るんだと毎夜嘆いていた二等兵が、ビッグ・トレーと
61式戦車の貼った弾幕の中で跡形もなく消し飛ぶ光景を凝視した。
現実と言うものが妥協と遊興を許さない一種の煉獄であることを、すでにして彼女は
知悉していると言ってもいい。
そして。
その煉獄を『見せぬ』ための努力を、彼女は旅が始まって以来ただの一度も欠かしたことはなかった。
ふざけ半分、遊び半分と言う顔をしておきながら、睡眠は折りを見て行う程度。
一日にして6時間の睡眠を取りはすれど、そのほとんどは業務の暇を見て行う仮眠の
積み重ねによるものだ。ここで一時間。ここで三十分。ここで十分。
だらだらと艦内を歩き回り、意味もなく雑談を交わしていたのは、
艦内の人間関係や状況をつかむためのもの。
そして、難事となった今──そうして収集した情報を元に、暇をもてあましそうな
人間にそれとなく仕事を割り振るか、あるいは責任者である教官や、責任者たりうる
生徒らがそういう『自分自身では動けない』人間に仕事を割り振れるような状況を
それとなく作り出してすらいる。ジーニアスをラナのもとに送り込んだのも、その一環にほかならない。
否。さらに言うのなら──
そもそも今この瞬間。
戦艦の主砲の直撃にも等しい運動エネルギーを秘めた流星の直撃により、カーゴ一両が
大破損失するという大損害を受けながら、死者一人出さず済んでいるという事実もまた、
彼女の努力の成果に他ならない。
とっさにカーゴを切り離し離脱するという決断など。
『カーゴには誰もいない』という確信がなければできるはずもない。
確かに、食料のすべてをカーゴに集中していたのは彼女のミスではある。
だが、そのミスを致命的なものとしないだけの努力を彼女は確かに行っていたのだ。
『カーゴには誰もいない』。そのことを、彼女は流星飛来の瞬間すでにして『知って』いたのだ。
誰もが予測し得ない、異常な災害。災害に悪意はなく意図もなく。そうであるがゆえに、
その本質には奇襲と言う要素を秘める。
その奇襲に彼女は確かに対処した。そして、その損害を確かに極小に食い止めたのだ。
どのような場所に人々が集うのか。どのようなときに人々がカーゴに踏み込むのか。
それをすでにして脳裏に刻み込んでいた彼女は、ごくごくわずかにしかなかった対応時間の
中、最小限の箇所に絞ってカーゴ内の人命検索を行い──カーゴ内は無人であると確信し、
彼女はカーゴを切り離して離脱すると言う決断を行ったのだ。
本来、讃えられてしかるべき成果ではある。
彼女が普段ひそかに成していた用心が実ったとすら断じられる。
だが、彼女は同時に失策を侵してもいる。
食料の一部であれ、ギャロップ側に備蓄しておいたなら、食糧確保という面倒を背負いこまず
に済んだということも、また事実に他ならない。
そのことを罵倒されたのは、いうなれば必然と言えるだろう。
誰一人、彼女がひそやかに成していた努力になど気づいていなかったのだし──カサギ自身が
そのことに気づかれないよう振舞っていたのが原因だった。
一生徒でありたい。一年戦争と言う煉獄の中で失った数年の日々の中、本来自分が学び、
楽しみ、味わえたはずのもの、しかし戦争と言う現実の中で剥奪されたものを取り戻したい──
所詮はエゴに過ぎない感情。だが、彼女の年齢を考えるなら、むしろ痛々しいとすら断じられる
ほどの、それはあまりにも当然な夢(エゴ)。
誰も、それに気づかない。
傷つかない筈もない。彼女は現実の苦さを知り痛みを知っていこそすれ、所詮は年若の少女に
他ならない。戦場の律こそ知れど、現実の、生活の律を知らぬと彼女はすでに思い知っている。
或る教官の心を、心ならずも傷つけてしまったことによって。
それゆえになのだろう。
彼女はあえて戯れるという。
それにこそ意味があるのだと彼女は断じる。
生徒たちの。己の知らぬ何かを知る人々のために。
それが傲慢と知ってなお──彼女は戯れで済ませるつもりでいるのだろう。
本来戯れるべきではない状況で。
すべてを笑い話に済ませるために──あるいは青春の一ページに過ぎないものとして、
人々の脳裏にこの事態を刻み込ませるために。同時に、こういう唐突な事態に対する
対応能力を人々に学ばせようという思考すら、彼女は成しているに違いない。
なぜなら、それを身につけられぬままに散っていったものたちの姿を、彼女は
己が駆け抜けた戦場の中で己の網膜に焼き付けて来たのだから。
それは、生徒にふさわしいものでは、あるいはないのかもしれない。
あるいは無知なるものの傲慢として笑止と罵られるべき質のものであるのかもしれない。
だが、彼女が真剣であるのは疑いなく。
そして、真剣であるがゆえに真摯であることもまた、疑いのないことだった。
普段見せぬ彼女の真摯さの所以は──己の努力を認められなかったことを嘆いていた時、
叱咤激励した人物が有るが故に。
カサギはラナの瞳を見つめる。