1 :
管制官代理:
ガンダムバトルロワイヤル最終章
生存者5名
誰もがそれぞれの思い、それぞれの決意を持って生きようとしている
神が存在するのなら、5人にどのような結末を用意するだろう
神が存在しないのなら、5人はどのような結末を紡ぎだすのだろう
DEAD OR ALIVE
ルールなどの詳細は
>>2-4くらいにありますが、この章は少しルールの変更をしています
なお新規参加は募集していません
2 :
管制官代理:2006/08/26(土) 11:41:10 ID:???
3 :
管制官代理:2006/08/26(土) 11:45:53 ID:???
参考までに今回限りのルールの変更を書いておきます。
・一週間毎のマップ変更の停止(これまでの進入禁止区域の爆破処置は有効)
・定期放送の停止(マップの変更がなくなったため)
・その他についてはこれまで通りのルールとする
『そこで止まれ、ミヒャエル=レニ=ハイドリヒ』
通信機からアルマの声が聞こえた。
同時にガズRの足元にビームが着弾する。
ファッツの声も聞こえたような気がしたが、既に耳に入らない。
視線の端…モニターの片隅に捉えられた、ガズRを見下ろすアルマのMS。
『お前がファッツを見捨ててどこに行こうが、それはお前の勝手だ。
この街のどこから出て行くかも、お前の勝手だ。
だが、東側に抜けることだけは許さん。
そして私は、もうお前に情けを掛けようとも思わん』
更にアルマが通信を送ってくる。
ちらりとνガンダムに視線をやった。
しかし、それもほんの僅かな間でしかない。
ガズRの歩みは止まらない。
鋭い視線はモノアイを通じてただ前を見据え、気血が満ちつつある手足はガズRを前へと進ませる。
『選べ。 命の選択をする権利をくれてやる。
そのまま進み、今ここで死ぬか。
道を変えて残り少なく短い老い先を生きるか。
それとも、私を討って望むままに進む、そのために刃を振るうか』
最後通告ともとれるアルマの通信。
端正な顔に浮かんだ笑みが大きくなったような気がした。
νガンダムを無視するかのように歩いていたガズRが、その歩みを止めた。
そして機体の向きを変え、その正面にνガンダムを捉える。
視線は険を帯び、笑みは徐々に凄絶なものへと変化していく。
「選べ、ですって?
だから私は選んだじゃない!?
貴女と…アルバートが出て行けって言うから、出て行く事を選んだじゃない!」
ファッツに言い放った時そのままの激しい口調でνガンダムに…いや、アルマへと怒鳴る。
「そのくせして、東には行くな!?
選択する権利を与えてやる!?
……ふざけるのも、いい加減に…!
神にでもなったつもり…!?」
その気迫が移りでもしたのか、ガズRのモノアイがぎらりと光を増す。
そして、再び歩み始める。
νガンダムへと向かって。
「……じゃあ……選択させてもらうから…!
貴女が自分で言った…3番目の選択肢を選ばせてもらう!」
こみ上げていた嘔吐感は、いつの間にか消えていた。
【行動:νガンダムへと歩む(−1)】
【残り :3P】
【位置:N−14】
【機体:ガズR:右肩から先完全に消失、首稼動不能
モニターに障害、胸部装甲破損、全身に多数のへこみ】
【人物状況:小指に怪我、腹部に怪我(応急処置済み)】
【精神状態:ハイテンション】
【通信状況:アルマ、ファッツ、アルバート】
【武装:ビームキャノン兼ビームサーベル×2】
【所持:ディパック(水2L×2、コッペパン×2)、鉢巻、周辺の詳細な地図(フォルダ)
地形データディスク、包帯5本、消毒液、抗生物質、基地の地図
拳銃の弾倉(12発×2)、サブマシンガン(4マガジン)、参加者データ、声色変換機】
【携帯:首輪、腕時計、拳銃(10発)、ホルモン剤】
【方針:脱出のために、アルマを倒す】
【同盟:―】
6 :
アルマ@代理:2006/08/26(土) 11:52:57 ID:???
νガンダムの威嚇射撃。
アルマの挑発するかのような言葉。
静かに、しかし確実に東へと歩んでいたガズアルが止まった。
それを確認しつつ、更に厳しい言葉を重ねるアルマ。
…アルマにとっては、その言葉の内容はたいした意味を持っていない。
現在アルマがしなければいけないのは、ミヒャエルが東に抜けるのを阻むこと。
目的を達成させるならば、多少芝居がかった台詞もありというものだ。
そしてその意図は達成されようとしている。
歩みを止めたガズアルが、νガンダムに向き直ったからだ。
モニターに映るミヒャエルの視線には、先ほどよりも強い敵意が込められているように感じる。
『選べ、ですって?
だから私は選んだじゃない!?
貴女と…アルバートが出て行けって言うから、出て行く事を選んだじゃない!』
激しい口調でミヒャエルが叫ぶ。
『そのくせして、東には行くな!?
選択する権利を与えてやる!?
……ふざけるのも、いい加減に…!
神にでもなったつもり…!?』
どうやら、敢えて挑発する口調を選んだのが功を奏したらしい。
これはミヒャエル自身の性格もあるだろうが、それ以上にプログラムの中で蓄積されてきた
ストレスが限界に近いせいもあるかもしれない。
想定通り、現在のミヒャエルの意識は全てがアルマへと向けられたようだ。
『……じゃあ……選択させてもらうから…!
貴女が自分で言った…3番目の選択肢を選ばせてもらう!』
だからガズアルがνガンダムに向けて歩き始めても、アルマには別段驚きはなかった。
ミヒャエルを阻もうと決断した時に、アルマは戦闘を覚悟していたのだから。
「そうだ、それでこそMSパイロットだ。
そうでなければ、さっきのビームをわざわざ外してやった意味がないからな」
再び挑発するように言い放つアルマ。
同時にその足はフットペダルを踏み込んでいる。
N-14に入ると同時にバーニアを吹かし、大きくジャンプするνガンダム。
アルマの狙いは明確だ。
雲の隙間から顔を出した太陽。
アルマは上方の位置取りを活かす為に、太陽を背にして攻撃を仕掛けるつもりだった。
「ならば私も自らの言葉を実行しよう!
私は一片の情けもかけるつもりはないぞ、ミヒャエル=レニ=ハイドリヒ!」
νガンダムが光を全身に背負った瞬間、アルマの指がトリガーを引いた。
両手に構えたライフルから、殺気の篭った光が吐き出され、ガズアルを襲う。
7 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/26(土) 11:54:08 ID:rLeIG0Yh
【行動:N-14に移動(-1)、ジャンプ(-1)、ビームライフルを撃つ(-1)】
【位置:N-14/市街地】
【残り行動値:1p】
【機体状況:Green/通信回線:シャッコー、ガズアル】
【武装:ビームサーベルx2、バルカン(100)、ビームライフルx2、Iフィールド、シールド】
【生徒状態:Green?】
【所持品:デイパック、コッペパン、水2gx1.5、栄養ドリンクx6、ノートPC、食糧、生活雑貨、
ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、バニーセット、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:目の前の敵を倒す】
ファッツにニースとの事をからかわれてどぎまぎした俺だったけど、通信機から
聞こえるアルマの声に気を取り直した。
向こうでは、アルマとミヒャエルの戦闘が開始される可能性が高い。
それなら当然、俺が加勢した方がより確実だろう。
アルマの操縦技術を知らないだけに、例えあのνガンダムに搭乗しているとは
いっても油断はできない。
それはミヒャエルに関しても同じ事で、ガズアルというMSの性能も詳しくは知らない
からやはり油断はできない。
で、加勢するのならファッツの動向も気になるけど、不安要素にはなり得ないと思う。
さっきの言葉を信じれば、ファッツにはおそらく敵対意思はない。
勿論その言葉も、俺を油断させるためのものだという可能性はある。
ただ現状を考えた時、その疑念は意味のないものだという結論になる。
1つにマラサイの状態。
射撃武器も持たず、満足に歩く事もできないマラサイが戦闘に参加しても脅威には
ならない。
極論を言ってしまえば参加してもらった方がミヒャエルの足を引っ張る事になり、か
えってこちらに都合がよくなる。
というより、ファッツを見捨てるような発言をしたミヒャエルに味方する理由が見当たらない。
逆に味方のふりをして参加して足を引っ張ろうとしても、それは無意味でしかない。
もとから2対1でこちらが有利なんだから、加勢しようとする事自体がおかしい。
それに高速で行われる戦闘では、満足に動けないマラサイができる事はなきに等しい。
マラサイが足を引っ張るのなら、巻き込まれるふりをして助けを求め俺かアルマに隙を
作らせるようとするだろう。
だけどこちらは慌てる事なく、先ずは2人でガズアルを倒しマラサイの安全を確保し、そ
の上でファッツの敵意を探ればいい。
簡単なことだ。
まあ…ファッツは頭がよさそうだから、そのくらいは分かってるかもしれない。
大体、少し待てばニースに修理を頼めるのだ。(了解を得られるかは別としても)
それなら、マラサイにとっては動かない事が最善の行動になる筈。
もう1つはファッツの表情。
以前にも言ったけど、俺は孤児院で色々な人の表情を見てきた。
それだけに、ちょっとした変化も何かと気になる場合がある。
…確証はもてないけど、何か、ファッツの表情から険が消えたような気がする。
以前街で見せたような、何となくピリピリしたものが感じられないのだ。
勘といってしまえばそれまでだけど、俺にはそこからもファッツに敵意がないのが分かる気がした。
「ファッツさん」
シャッコーの向きを変えながらファッツに通信を送る。
「アルマさんの応援に行きます。
暫く待ってて下さい」
レーダーには東に向かおうとするガズアルの光点が映っている。
東からは、ニースが来る。
当然行かせるわけにはいかない。
グッとフットペダルを踏み込みシャッコーを発進させ、俺はνガンダムとガズアルが
対峙している場所へ向かう。
9 :
通常の名無しさんの3倍:2006/08/26(土) 12:03:47 ID:rLeIG0Yh
【行動:東へ移動開始(-1)少し焦り(0)】
【残り:3】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:15番、17番に接続中】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:俺のするべき事を…】
【同盟:ニース(アルマ)】
『そうだ、それでこそMSパイロットだ。
そうでなければ、さっきのビームをわざわざ外してやった意味がないからな』
その言葉を聞いて、微かに目尻が吊り上った。
確かに、その物言いには我慢がならなかった。
それでも、心のどこかの冷静な部分は、それが挑発であろうと判断していた。
アルマは東へ行かれるのを嫌がっている。
そこに何の意味があるのかは分からないが、とにかくアルマの尊大な言葉は、そこに原因があるような気がする。
…しかしそれを考えたのは、心のごく一部分。
『ならば私も自らの言葉を実行しよう!
私は一片の情けもかけるつもりはないぞ、ミヒャエル=レニ=ハイドリヒ!』
心の中に起こった小波のような思いは、アルマの言葉と共に何処へと消えていく。
乱暴に手を動かして、通信機のスイッチを切った。
あとに残るのは凍えるような恐怖と、それを遥かに上回る身を焦がすような衝動。
目も耳も、手も足も、身体の全ての感覚がアルマを倒すためにフル稼働しはじめている。
「はっ!
言うは易し、行うは難しってね!
性能の良いMSに乗っているからって……っ!?」
恐怖を打ち払うためか、それとも闘争心をかき立てるためか。
威勢よく口に出そうとした言葉は、途中で止まった。
曇りがちだった空の隙間から差し込む光。
その光の中に、跳躍したνガンダムが溶け込んでいる。
「……………っ!」
太陽を背にした攻撃は、遥かな昔からの戦闘のセオリーの1つ。
手足を動かしながら、一瞬そんな考えが脳裏を駆けた。
頭に血が昇っていても、訓練と実戦で鍛えてきた勘と技術は発揮された。
ガズRは機体を捻るように左にステップする。
間髪いれず着弾し、地面に穴を開けるビーム。
初弾をかわした事を確認するのも惜しむように、ビームキャノンを空に向けて構える。
当たるとは思えないが、このまま撃たれるよりは百倍マシだろう。
【行動:攻撃をかわす(−1)】
【残り :3P】
【位置:N−14】
【機体:ガズR:右肩から先完全に消失、首稼動不能
モニターに障害、胸部装甲破損、全身に多数のへこみ】
【人物状況:嘔吐感、小指に怪我、腹部に怪我(応急処置済み)】
【精神状態:ハイテンション】
【通信状況:アルマ、ファッツ、アルバート】
【武装:ビームキャノン兼ビームサーベル×2】
【所持:ディパック(水2L×2、コッペパン×2)、鉢巻、周辺の詳細な地図(フォルダ)
地形データディスク、包帯5本、消毒液、抗生物質、基地の地図
拳銃の弾倉(12発×2)、サブマシンガン(4マガジン)、参加者データ、声色変換機】
【携帯:首輪、腕時計、拳銃(10発)、ホルモン剤】
【方針:脱出のために、アルマを倒す】
【同盟:―】
12 :
アルマ@代理:2006/08/26(土) 12:26:21 ID:???
アルマの放った初弾は、ミヒャエルの意表をつく事ができたのだろうか。
通信を切られた為、それを判断することは出来ない。
それでもミヒャエルは初弾をかわした。
すれすれだったかもしれないが、確実にガズアルを操作したその腕はやはり侮れない。
「そんな機体で、よくも避ける…!」
モニターには、武器を構えるガズアルが映っている。
あの体勢から撃っても当たるとは思えないが、わざわざ撃つのを待ってやる義理もない。
ついさっきアルマはミヒャエルに、情けをかけるつもりはないと宣言したばかりなのだから。
掴みかけているイニシアチブ。
上方を占めている優位。
先制攻撃の優位。
それを簡単にひっくり返されるわけにはいかない
片手を失っているMS相手だが、そのMSは残った片手に自分を倒しうる武器をもっているのだ。
ガズアルが空に向けた武器がνガンダムを捉える前に、アルマは更に引き金を引く。
(さあどうだ、ミヒャエル。
かわせるものなら、かわしてみるがいい!)
流れるように引き金は引かれた。
アルマにしてみれば必殺のタイミング。
プログラムが始まるまでMSの操縦は素人だったが、両親に鍛え上げられた感覚はミヒャエルの死を
予感させていた。
隙あらば、全力で倒す。
MS戦に限らず、どこの世界のどんな戦場でもそれは万国共通だ。
放たれた2筋の光が、再びガズアルへと伸びる。
近くのビルの屋上に着地しようと機体を操るアルマの目の端に、こちらにやってくるMSが見える。
この町に移動力の残っているMSは、νガンダムとガズアルを除けば1機だけだ。
「アルバート…?」
ファッツはいったいどうしたのだろう。
この時初めて、アルマの気がミヒャエルから逸れた。
13 :
アルマ@代理:2006/08/26(土) 12:27:30 ID:???
【行動:更にビームライフルを撃つ(-1)】
【位置:N-14/市街地】
【残り行動値:3p】
【機体状況:Green/通信回線:シャッコー、ガズアル】
【武装:ビームサーベルx2、バルカン(100)、ビームライフルx2、Iフィールド、シールド】
【生徒状態:Green?】
【所持品:デイパック、コッペパン、水2gx1.5、栄養ドリンクx6、ノートPC、食糧、生活雑貨、
ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、バニーセット、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:目の前の敵を倒す】
ビームキャノンを向けてみたものの、最初の攻撃を無理矢理かわした影響か、全く狙いが定まらない。
当然だ。
ビームをかわす事に能力をつぎ込んでいたガズRは、現在攻撃できる体勢を取れない。
「だけど!」
撃たなければ死だ。
どんな体勢だろうが、どんな武器だろうが、死なない為(というよりは、死なない可能性を高める為)
に撃ち続けなければならない。
とにかく撃つ。
あとの事はその時に考えればいい。
どんなに無様でも、千倍の後悔をして死ぬよりは。
νガンダムを睨みつけてトリガーを引こうとした指が止まった。
闘志が萎えたわけではない。
パイロットの勘が、それを上回る危険を再び察知したからだ。
νガンダムから、太陽のような眩しい光が見える。
いや違う……太陽はνガンダムから少しずれた所に見えている。
じゃああの光は?
…頭の中が!マークで埋め尽くされた。
トリガーを引きかけていたコンソール・スティックを、無理矢理倒す。
あとはガズRの反応と、搾りかすの運に頼るだけ。
かわすタイミングは、さっきよりも僅かに遅かった。
しかしビームは右脚を掠めるように、地面に着弾した。
…今回は運が味方したかもしれない。
1つめの運は、攻撃をかわせた事。
ガズRがさっきの攻撃をかわした直後の体勢だった為、かわす動作に入るロスが少なかったからだろう。
2つめの運は、アルマの気が逸れた事。
ビルに着地したνガンダムの視線が、ガズRを向いていない。
その先にいるのは…レーダーによればアルバートのシャッコー。
ファッツの事はどうなったのかは知らないが、恐らくアルマの手助けにきたのだろう。
アルマもそれに気づいたから、無意識にシャッコーに視線を向けたのだ。
咄嗟にガズRをジャンプさせた。
さっきの至近弾で脚の装甲がいくらか融解しているかもしれないが、そんな事にかまっていられない。
アルマが見せた僅かな隙。
傷ついたガズRでは、これを活かさないと勝ち目はない。
「食らいなさい、アルマ!」
見えにくかったνガンダムの姿が大きく見えてきた時、ガズRが左手に持ったビームキャノンが火を噴いた。
【行動:再び攻撃をかわす(−1)ジャンプ(−1)ビームキャノン発射(−1)】
【残り :1P】
【位置:N−14】
【機体:ガズR:右肩から先完全に消失、首稼動不能
モニターに障害、胸部装甲破損、全身に多数のへこみ、右脚装甲一部融解】
【人物状況:小指に怪我、腹部に怪我(応急処置済み)】
【精神状態:ハイテンション】
【通信状況:アルマ、ファッツ、アルバート】
【武装:ビームキャノン兼ビームサーベル×2】
【所持:ディパック(水2L×2、コッペパン×2)、鉢巻、周辺の詳細な地図(フォルダ)
地形データディスク、包帯5本、消毒液、抗生物質、基地の地図
拳銃の弾倉(12発×2)、サブマシンガン(4マガジン)、参加者データ、声色変換機】
【携帯:首輪、腕時計、拳銃(10発)、ホルモン剤】
【方針:脱出のために、アルマを倒す】
【同盟:―】
16 :
アルマ@代理:2006/08/26(土) 12:47:21 ID:???
油断をしたわけではなかった。
お互いが銃を突きつけ合う状況で余所見するなど、普段のアルマからは考えられない。
そのように訓練されてきた。
それは習性と言えるほどに染み込んでいる筈だった。
だが実際、アルマは視線を逸らした。
そこにあったのは…やはり油断だったのだろうか?
アルマは確かに一流の訓練を受け、一流の戦士として育った。
しかしそれは生身の戦闘の話で、ことMS戦に関してはそうでもない。
プログラムに参加するまでMSの操縦の経験がなかったアルマは、どうしても生身の戦闘の感覚でMSを
動かす傾向がある。
それはそれで間違いではないし、アルマとしてはそれに頼らざるを得ない部分もあった。
しかし根本的にMSと生身は違う。
コクピットから見える範囲は限りがあるし、MSが物を掴んでもその感触が伝わるわけでもない。
パイロットは、ある意味五感を制限された空間にいるのだ。
そしてそれを克服するのが、経験と才能だ。
MSは乗って動かせればいいというものではない。
制限された五感を補うため、MSを己の手足として、そして目鼻として乗りこなすため、それこそ何百時間
という経験を積む。
軍隊ならば尚更で、個々の操縦に始まり、コンビを組んでの相互訓練。
更に小隊、中隊、大隊と訓練の規模は大きく複雑になっていき、それに費やす時間も膨大なものになる。
しかしアルマにはそれがない。
実戦の中で鍛えてはいても、そこで得たものを活かしていくには、やはり訓練というバックボーンが必要
不可欠なのだ。
そのアルマをパイロットとして成さしめているのは、おそらくその才能だろう。
プログラム内でのその戦いぶりは、まさしく恐るべき才能あってのものに違いなかった。
それが例え、幼い頃の研究所での生活に原因があったとしても。
もっとパイロットとしての訓練時間があれば。
そして、こんなプログラムに参加しなければ。
アルマは、あのアムロ・レイに肩を並べるパイロットになったかもしれない。
17 :
アルマ@代理:2006/08/26(土) 12:49:14 ID:???
まあ想像を語っても仕方がない。
いまここにあるのは、アルマが余所見をしたという事実だけだ。
アルマは生身の感覚でガズアルを撃った。
そしてそれは(アルマの感覚では)必殺の射撃のはずだった。
だが、アルマがそう感じたからといって、MSがその結果をはじき出すとは限らない。
例えば、引き金を引いてからMSが構えて撃つまでのタイムラグ。
例えば、指関節にたまった砂。
例えば、どこかのシリンダーについた小さな傷。
例えば、潤滑油不足による動作遅延。
可能性でしかないが、あらゆる些細な出来事が戦闘に多大な影響を及ぼす可能性があるのだ。
シャッコーに通信を送ろうと口を開きかける。
しかし、モニターのアルバートが何かを叫んでいる。
一瞬その意味を掴みかねて、怪訝な表情をするアルマ。
(…うしろ…?
後ろって…ガズアルはとっくに……。
いや…倒したのなら、何故爆発音がしない……!?)
それに気づいたアルマが振り向いた時、ガズアルの放ったビームは目前に迫っていた。
もはやかわせる距離ではない。
アルマの顔が引きつり、その直後νガンダムは左腕を吹き飛ばされた。
【行動:視線を逸らす(-1)】
【位置:N-14/市街地】
【残り行動値:3p】
【機体状況:左腕消失/通信回線:シャッコー】
【武装:ビームサーベルx2、バルカン(100)、ビームライフルx2、Iフィールド、シールド】
【生徒状態:Green?】
【所持品:デイパック、コッペパン、水2gx1.5、栄養ドリンクx6、ノートPC、食糧、生活雑貨、
ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、バニーセット、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:目の前の敵を倒す】
νガンダムに繋がった通信機から聞こえる、アルマのミヒャエルを挑発する声。
売り言葉に買い言葉…というわけでもないだろうけど、νガンダムの通信機から
僅かに聞こえるミヒャエルの声は
相当興奮している感じがする。
おそらく戦闘は避けられないだろう。
俺はシャッコーのスピードを上げた。
相変わらずシャッコーの調子は悪くない。
(…なんだかんだ言って、俺は運が良いんだろうな)
機体を制御しながらふと思う。
残りの生徒は確か4、5人だった筈。
生き残った生徒のMSは、程度の大小はあるけど損傷している機体が多いだろう。
それに比べシャッコーは、キリトのGキャノンの爆発で脚に小さな傷を負ってはい
るけど、その他はほぼ無傷と言って差し支えない。
そして最初に支給された武器も、全て欠ける事無く使用できる。
使い詰めできている以上、そしてMSが精密機器の塊である以上、どこかしらに
見えない異常があるかもしれない。
それでも、基本的には戦闘行動に支障がないというだけで、随分と安心できる要
素ではあった。
…第一俺は整備の技能は殆ど持っていない。
そんな見えない異常を恐れるくらいなら、パイロットとして仲間として、最大限の努力
をしなければならない。
「…見えた!」
レーダーで確認するだけだった、νガンダムとガズアルがモニターに映る。
どうやら戦闘が始まっているらしい。
ここからもνガンダムの発射するビームライフルの光が分かる。
ガズアルの姿が見えない為、状況の確認は難しい。
ぱっと見、アルマが不利、という事はないみたいだが。
ビルの屋上に着地したνガンダムが首をこちらに向ける。
接近するシャッコーに気づいたからなんだろうけど、戦闘中にする行動としては危なすぎる。
『アルバート…?』
注意を促そうとした俺に先んじて、アルマの声が聞こえた。
語調からすると、俺がこっちに来たのが意外だったように感じられる。
…考え方を変えると、アルマがこちらに向いたのはそれなりの理由があったからかも
しれない。
即ち、ガズアルの撃破。
今撃ったビームライフルがガズアルを倒し、こちらを向くだけの余裕ができたのかもし
れない。
νガンダムが立つビルの屋上。
そのビルの影からガズアルの姿が見えた時、俺は自分の考えがとんでもなく甘い事を悟った。
何故倒してもいないガズアルを放って余所見をしたのか?
当たり前すぎる疑問が浮かぶが、そんなどうでもいい疑問を解決している場合ではない。
「後ろだアルマ!何している、後ろだ!」
俺の叫びを聞いたアルマが怪訝な顔で振り向こうとして…。
次の瞬間、νガンダムの左腕のあたりが光と炎を放った。
「アルマ!」
思わずアルマの名を叫ぶ。
急ぎ加勢しようと、シャッコーのスピードを上げた。
【行動:移動中(-1)】
【残り:3】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:15番、17番に接続中】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:俺のするべき事を…】
【同盟:ニース(アルマ)】
20 :
アルマ@代理:2006/08/26(土) 13:09:58 ID:???
揺さぶられるコクピット。
勿論νガンダムが大きくよろめいているせいなのだが、アルマには世界全体が揺らいでいるようにも思えた。
パイロットにとってコクピットは、MSにおける自分だけの世界なのだから、アルマがそう感じたのはあながち
間違った感覚でもない。
その間にも2発、3発とビームが襲い掛かってくる。
殆ど勘で引き金を引いたアルマの闘争心に応えるかのように、νガンダムもライフルを撃つ。
その直後、ガズアルのビームによって、ビームライフルが破壊された。
しかしνガンダムもアルマが撃ったビームが、ガズアルのビームキャノンを破壊している。
体勢を崩していた事を考えると完全に偶然なのだが、それでも偶然だろうが何だろうが、ガズアルに隙を作った
事には違いなかった。
『アルマ!』
必死にレバーを動かし、何とか機体を安定させたアルマの耳にアルバートの叫び声が聞こえた。
「手助けなどいらない!来るな、アルバート!」
火の出るような視線でガズアルを睨みながら、アルマもアルバートに負けない大きさで叫ぶ。
そしてその言葉を証明するかのようにビームサーベルを抜くと、屋上を蹴ってガズアルに切り掛かっていく。
「このくらいで、私は負けない!絶対に!」
【行動:屋上から飛び降りる(-1)】
【位置:N-14/市街地】
【残り行動値:3p】
【機体状況:左腕消失/通信回線:シャッコー】
【武装:ビームサーベルx2、バルカン(100)、Iフィールド、シールド】
【生徒状態:Green?】
【所持品:デイパック、コッペパン、水2gx1.5、栄養ドリンクx6、ノートPC、食糧、生活雑貨、
ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、バニーセット、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:目の前の敵を倒す】
ガズRの放ったビームキャノンは、νガンダムの左腕を根元から吹き飛ばした。
正直満足できる結果ではない。
何故なら、不意を突いた攻撃にもかかわらず、倒す事ができなかったから。
ただでさえMSの性能に差があるのに、この好機をものにできなかったのは痛い。
当然アルマは、もう二度とあんな隙は見せないだろう。
従って、ある程度のダメージを与えたものの、総合的に不利な状況に何の変わりもないのだ。
端正な顔が歪む。
この距離から、必殺のはずの射撃。
素人の操縦ではない。
彼は仮にも、クロスボーン・バンガードで鉄仮面に見出された腕の持ち主なのだ。
いくら乗っているのが損傷したMSとはいえ、自分の腕を疑いたくなるような結果だった。
都合のいい考え方をすれば……そしてある意味もっとも否定したい答えを出せば……。
アルマ=フローライトは、彼のあの距離の攻撃をあのダメージで切り抜けられるほどの腕をもったパイロット
という事になる。
戦う以上、アルマの事を軽く見た覚えは欠片もない。
その上で放ったビームで倒せなかったのだから、アルマの腕は推して知るべし、だろう。
彼が陥った一瞬の思考。
その一瞬は、アルマに反撃させるだけの余裕を与えていた。
彼が追い撃ちをせんと更にビームキャノンを撃つと同時に、νガンダムもライフルを撃っていた。
交錯するビームの光。
はた目に見て、νガンダムは体勢を崩していて攻撃が当たるとは思えなかった。
が、何の偶然か、それとも距離の近さゆえか、その一撃はガズRのビームキャノンを破壊していた。
一旦着地して、原型を留めないビームキャノンを兼ねたビームサーベルを投げ捨てる。
…こちらは2発撃ってライフルを破壊した。
νガンダムが不安定な動きをしていた為か、辛うじて当たったという感じだ。
しかし彼には、それについて悔しがる事も怒る事もできなかった。
間髪を入れず、ビームサーベルを抜いたνガンダムが迫ってくる。
その動きは、まるでアルマの闘志が乗り移ったかのようだ。
「そうよね…」
言いながらガズRにビームサーベルを抜かせる。
「反省や悔恨は、あなたを倒したあとでも十分時間があるから!」
このまま長引けば、アルバートのシャッコーも加わってくるのは確実。
しかし彼の意識は余計な情報を敢えて無視して、ひたすらアルマへと向かう。
ガズRは引くのではなく、νガンダムに勝つ為ビームサーベルを向ける。
【行動:更に攻撃(−1)ビームサーベルを抜く(−1)】
【残り :2P】
【位置:N−14】
【機体:ガズR:右肩から先完全に消失、首稼動不能
モニターに障害、胸部装甲破損、全身に多数のへこみ、右脚装甲一部融解】
【人物状況:小指に怪我、腹部に怪我(応急処置済み)】
【精神状態:ハイテンション】
【通信状況:ファッツ、アルバート】
【武装:ビームキャノン兼ビームサーベル×1】
【所持:ディパック(水2L×2、コッペパン×2)、鉢巻、周辺の詳細な地図(フォルダ)
地形データディスク、包帯5本、消毒液、抗生物質、基地の地図
拳銃の弾倉(12発×2)、サブマシンガン(4マガジン)、参加者データ、声色変換機】
【携帯:首輪、腕時計、拳銃(10発)、ホルモン剤】
【方針:脱出のために、アルマを倒す】
【同盟:―】
23 :
アルマ@代理:2006/08/27(日) 14:12:45 ID:???
「うああああああああ!」
アルマが叫ぶ。
アルマも人間である以上恐怖を覚えないわけがない。
慣れないMSでの戦闘。
性能の劣ったMSに追い詰められかけている現実。
何よりも生身では感じた事がない、肌に触れるほど隣り合った死の感触。
それを振り切るかのように、アルマは叫ぶ。
アルマに限らず、人間は感情というものをある程度コントロールできる。
簡単に言えば喜怒哀楽だろう。
…しかし、中にはそれに含まれない感情も存在する。
それが、恐怖。
人間が人間である以上、避けることの出来ない原始の感情。
未知の体験。
未知の領域。
未知の感覚。
人間は自分が見た事の、感じた事のないものを警戒しそして恐れる。
その最たるものが、死。
戦場に立つ者にとって身近にある恐怖を、人間は様々な方法で克服しようとしてきた。
恐怖を感じないほどに訓練する。
恐怖そのものを理詰めで考える。
無視するよう心がける。
薬に頼る。
…それこそ、戦場で生きる人間の数だけその方法はあるかもしれない。
その中で最もよく、おそらくは殆どの人間がするのが、叫ぶという行為。
意図的であれ自然であれ、恐怖に打ち勝つために叫ぶ人間は多い。
医学的にどうとかとか、心理学的にどうとかとか言うつもりはない。
しかし叫ぶ事によって、人間の心は恐怖という感情を乗り越える可能性が上がるらしい。
それが一瞬のものであっても、戦場ではその一瞬に生と死を分かつ瞬間が多々あるのだ。
そして、恐怖を乗り越えた先にあるものは、勇気。
隣り合わせの死を切り裂き、生を掴む為の勇気。
勿論狂気とも隣り合わせである戦場では、乗り越えた先にあるのが無謀になりかねない一面がある。
その勇気と無謀の一線を守るのが、叫びの興奮の中に、どれだけの冷静さを保つかにある。
その意味で、アルマは自らを鼓舞しながらも興奮に飲まれない冷静さを保っていた。
それもまたアルマの訓練の成果であり、才能なのだろう。
「逃げずに向かってくるか…!」
ビームサーベルを構え踏み出してくるガズアルを見て、思わず笑みが零れる。
その判断の中にミヒャエルの資質を再確認し、もしかしたら、どこかに自分に似ているところを見つけたように
感じたからかもしれない。
24 :
アルマ@代理:2006/08/27(日) 14:14:21 ID:???
上から勢いをつける分、そして性能から言っても攻撃のスピードはνガンダム有利。
あとはガズアルの出方次第。
ガズアルがビームサーベル出すのを見たアルマ、はνガンダムのスラスターを吹かしてその軌道を僅かに変えた。
サーベルを構えるガズアル。
左脚を一歩下げて半身の体勢を取り、サーベルを腰の辺りに構えている。
自然と、ガズアルの右肩ががら空きになる。
あのガズアルの体勢では、攻撃できる箇所が右肩付近に限られてくる。
罠かもしれない。
しかし、このスピードではもう攻撃の変更はできない。
…覚悟を決める。
虎穴に入る勇気なくして、この敵を葬れるわけがなかった。
サーベルの届く範囲に入ったと判断した瞬間。
νガンダムは右手のビームサーベルを、ガズアルの右肩に向けて思い切りよく袈裟懸けに振り下ろした。
【行動:叫ぶ(0)ビームサーベルでガズアルに攻撃(-1)】
【位置:N-14/市街地】
【残り行動値:3p】
【機体状況:左腕消失/通信回線:シャッコー】
【武装:ビームサーベルx2、バルカン(100)、Iフィールド】
【生徒状態:Green?】
【所持品:デイパック、コッペパン、水2gx1.5、栄養ドリンクx6、ノートPC、食糧、生活雑貨、
ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、バニーセット、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:意地でも目の前の敵を倒す】
急接近してくるνガンダム。
一見すると手にしたビームサーベルを突き出してくるように見えるが、アルマは
そんな単純な攻撃はしないだろう。
第一、そんな見え見えの攻撃をかわされたら、あとに残るのは致命的な隙だ。
だからこそアルマは突いてこない。
そう決めた。
戦場では、時に賭けに出なければならない瞬間が必ずある。
いや、言ってしまえば戦場では何をやるにしても賭けだ。
銃口を向けた相手が次の瞬間自分を倒すかもしれない。
そうならない為に、どこへ向けてビームを撃つか?
相手が自分に銃口を向けた。
生きる為にどちらにかわすか?
些細な行動が、自分の生死を左右する。
まさしく、戦場は人生を賭けた賭けの連続だ。
彼はその賭けの連続を生き抜いてきた。
ロナ家の賭けとも言えるコスモ・バビロニア建国戦争の中を生きて、駆け抜けてきた。
勘があった。
運もあった。
そして何よりも、それを引き寄せるだけの腕があった。
それを信じてこその賭けだ。
勘を信じ、運を信じ、腕を信じ、命を信じて。
僅かにνガンダムが進路を変えた。
突くのならば、最短距離を一直線に来る。
もう少し攻撃を見極めたいが、そうもいかない。
あのスピードの攻撃をこれ以上見ていたら、速攻で死だ。
賭けに出るなら、ここしかない!
彼を倒すつもりで仕掛けてくるのなら、極端な進路変更はしないと思う。
あのスピードでは、大きく進路を変えると容易にターゲットサークルが外れてしまうから。
だから…。
ガズRの機体を左に捻り左脚を1歩下げ、ビームサーベルの柄をνガンダムに向け、
刀身を腰の高さで少し下げる。
変形の脇構え。
上、下、横のどこからも振ることができる攻撃的な構え。
機体で刀身をある程度隠す為、サーベルの出所が分かり難い。
しかし刀身を機体で隠した事で、右肩に空きができてしまう。
…肉を斬らせて骨を断つ。
右肩の隙くらい、そして斬られる事も覚悟の上だ。
かわしたりして戦闘を長引かせれば、不利になるのは彼の方なのだ。
彼の頭には、もうこうするしか方法が思いつかなかった。
νガンダムがビームサーベルを振り上げる。
同時にガズRは下げた左脚をズシンと踏み込み、ビームサーベルを真横に薙いだ。
2つの光が、交錯する。
【行動:構える(−1)ビームサーベルで攻撃(−1)】
【残り :2P】
【位置:N−14】
【機体:ガズR:右肩から先完全に消失、首稼動不能
モニターに障害、胸部装甲破損、全身に多数のへこみ、右脚装甲一部融解】
【人物状況:小指に怪我、腹部に怪我(応急処置済み)】
【精神状態:ハイテンション】
【通信状況:ファッツ、アルバート】
【武装:ビームキャノン兼ビームサーベル×1】
【所持:ディパック(水2L×2、コッペパン×2)、鉢巻、周辺の詳細な地図(フォルダ)
地形データディスク、包帯5本、消毒液、抗生物質、基地の地図
拳銃の弾倉(12発×2)、サブマシンガン(4マガジン)、参加者データ、声色変換機】
【携帯:首輪、腕時計、拳銃(10発)、ホルモン剤】
【方針:脱出のために、アルマを倒す】
【同盟:―】
『手助けなどいらない!来るな、アルバート!』
モニターの向こうでアルマが叫ぶ。
その目は既に俺を見ていない。
当然だけど、その視線の先にはガズアルがいるのだろう。
『このくらいで、私は負けない!絶対に!』
再びアルマが叫ぶ。
今度は俺に、というより自分自身に言い聞かせるような感じ。
しかし、その言葉がアルマの心情を表しているような気がした。
俺はミヒャエルの操縦の腕は知らないが、MSの性能だけを比べたら、間違いなく
アルマが有利だ。
アルマが乗るνガンダムは、俺が知る限り最高の性能を持つMSだ。
資料程度でしか見たことがないが、俺が乗ったジェガンなど文字通り足許にも及ばない。
それに対するミヒャエルのガズアルは、やはり詳しい性能は知らないが、外見は
何となくジオンの流れを汲む機体に思える。
例の第二次ネオジオン抗争で使用された主なネオジオンの機体はギラ・ドーガ。
その後のマフティーの時も、ガズアルという機体は存在しない。
思うにそれ以前…第一次ネオジオン抗争あたりで製造された機体じゃないか?
量産されていればきちんと記録に残っていると思うけど、俺が知る限りでは見た
事がない。
おそらく…試作MSだったんじゃないかという推測も立つ。
ともかく機体的には旧式と思われ、更に片腕のないガズアルに対して、νガンダ
ムは圧倒的に優位に立てる筈なのだ。
そのガズアルに左腕を破壊された。
それが油断であったのなら、アルマにとっては尚の事許されない現実かもしれない。
だからこそ、アルマは自分に言い聞かせたのか。
萎えかけた心を奮い起こすために。
νガンダムはビームサーベルを抜くと、ビルを飛び降りていく。
シャッコーは速度を落とさず、そこへ向かう。
アルマがどう言おうと、俺は仲間が生き残る可能性を捨てるわけには行かない。
ガズアルの攻撃でアルマが冷静さを失ってる恐れもある。
もしもそうであっても、俺が上手く援護すればアルマの手助けになる。
アルマは納得いかないかもしれないけど、何よりも重要なのは生き残る事だから。
νガンダムが飛び降りたビル。
シャッコーはνガンダムを追うように、ビルを飛び越えた。
【行動:ビルを越える(-1)】
【残り:3】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:15番、17番に接続中】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:俺のするべき事を…】
【同盟:ニース(アルマ)】
28 :
アルマ@代理:2006/08/27(日) 14:38:15 ID:???
νガンダムがビームサーベルを振り下ろす寸前、半身に構えたガズアルが1歩踏み出す。
殆ど相打ちになりかねないタイミングでの攻撃。
ビームサーベル同士が交錯し、お互いを捉えんと唸りを上げる。
(ここで決着をつけるつもりか、ミヒャエル!)
スローモーションのように流れるその瞬間の中、アルマは感じた。
ミヒャエルも、アルマと同じように肉を斬らせるつもりなのだと。
わざと右肩に隙を作り、敢えてそこに攻撃させるつもりなのだと。
攻撃される箇所が分かれば、ビームサーベルの軌道もある程度予想が出来る。
あとは…まさしく運任せ…という事か。
ミヒャエルが腕利きだという事は、ここまでの戦闘経過で嫌というほど分かる。
そのミヒャエルをして、一か八かの策に出なければならなかった。
アルマはそうさせた自分の腕が誇らしく思えたし、ミヒャエルが認めてくれているような感じもして、少し
だけ嬉しくもあった…かもしれない。
だけどそれは、ビームサーベルが振り下ろされるまでのほんの微かなコンマの感情。
次の瞬間、コクピットは激しい振動に襲われた。
シートで振り回されるアルマ。
瞳に映るのは、割れて破片を振り撒くモニター。
耳に聞こえるのは、けたたましいアラーム音と花火のような小さな爆発音。
モニターが殆ど死んだため、ガズアルに与えたダメージが分からない。
コンパネも死んでいるため、νガンダム自身のダメージも確認できない。
アルマには知る由もなかったが、ガズアルのビームサーベルはνガンダムの腰を半分まで斬り裂いていた。
真っ二つにされなかったのは、νガンダムのスピードがミヒャエルの予想以上に速く、ガズアルの横に斬る
力をある程度分散させたからだろう。
…だからといってνガンダムのダメージが軽いわけではない。
むしろ致命傷と表現しても差し支えないくらいだった。
コクピットの一部にスパークが走る。
それは計器にも広がっていく。
「…あまり…いい状態ではないな」
ぽつりと呟いた。
モニターで確認できなくとも、アルマ自身が扱いに慣れていなくとも、それを見ればνガンダムの状態が
悪いことくらいは理解できた。
アルマはプログラムの最初から(その異常性故に)常に死を意識してきた。
ここで死ぬとしてもそれはプログラム内では当たり前で、管理者にすれば単に自分の番が来ただけの事だ。
29 :
アルマ@代理:2006/08/27(日) 14:39:25 ID:???
怖くないわけがない。
しかし泣き喚いても、それで何が変わるわけでもない。
そんな無様な姿は、先に死んだ生徒にあの世で嘲笑されるだけだ。
ならばせめて、誇りだけは失わない死を。
アルマ=フローライトが最後までアルマ=フローライトだったと、胸を張って言える死を。
アルマにただ1つ気がかりがあるとすれば、ガズアルの状態が分からない事。
自分が命を張って繰り出した一撃の結果が分からないのは、少しだけ嫌だった。
その時、アラームに支配されたコクピットに微かにそれとは違う音聞こえた。
辛うじて機能の一部を維持していたレーダーが、νガンダムの後を追うように接近するMSを映す。
アルバートのシャッコーだった。
【行動:】
【位置:N-14/市街地】
【残り行動値:4p】
【機体状況:左腕消失、腰部損傷/通信回線:不通】
【武装:ビームサーベルx2、バルカン(100)、Iフィールド】
【生徒状態:Green?】
【所持品:デイパック、コッペパン、水2gx1.5、栄養ドリンクx6、ノートPC、食糧、生活雑貨、
ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、バニーセット、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:……】
ガズRが残された左腕を思い切り振った。
もう彼に出来ることはない。
ビームサーベルが届くことを祈るのみだ。
モニターには、迫ってくるνガンダムが大きく映し出されている。
(速い…!)
噛み締めた奥歯がギリっと鳴った。
彼の予想以上にνガンダムの突進は速い。
最悪の場合、ビームサーベルの刃ではなく柄が当たってしまうかもしれない。
それでは殆どダメージは期待できない。
それ以上何かを考える前に、彼もアルマと同じように激しい振動に見舞われた。
景色が大きく揺れる。
そして次の瞬間にはモニターの視界が極端に狭くなる。
短い、しかし激しい揺れが収まったとき、更に視界の狭くなったモニターには目前で停止したνガンダム
が映っていた。
その腰には、ガズRのビームサーベルが半ばまでめり込んでいる。
密着するようにνガンダムがいるせいか、うまくビームサーベルが動かせない。
だがこれ以上動かすまでもなく、彼の目にはνガンダムのダメージは致命傷に見えた。
多少の満足感を感じつつ、コクピット内に目を移した。
まだコクピットは何とか機能を維持しているようだ。
コンパネでダメージを確認する。
νガンダムのビームサーベルは、ガズRの頭部の後ろ半分を斬り落とし、バックパックを傷つけていた。
「視界が狭くなったのは、サブカメラに切り替わったから…か。
あと、バックパックはちょっと危ない…」
気持ちを落ち着かせるように、口に出して状況を再確認する。
決して小さいダメージではないが、少し前の状況を思えば上出来とも言える結果だった。
脇構えで機体を半身に構えた事。
ガズRの攻撃が僅かに早く届いて、νガンダムの斬撃の軌道がずれた事。
想像でしかないが、ともかくガズRはギリギリの線で踏み止まったようだった。
「私が勝ったんだから、先に進ませてもらうわ」
自分に言い聞かせるように話す。
まだ勝ちと決まったわけではないが、少なくともνガンダムの戦闘能力は激減している。
それにもしも爆発したら、当然ガズRも巻き込まれてしまうのだ。
すぐにνガンダムから離れなければならなかった。
レーダーの反応。
アルマのみを見ていて、存在を忘れていたMS。
「たしか、アルバートとかって言う…」
彼は舌打ちをしつつ、νガンダムをどかそうとする。
しかし、ガズRと同等の質量を持つ機体をすぐにはどかせない。
アルバート=パーシングの乗るシャッコーは、間近に迫ってきている。
【行動:状況確認(0)】
【残り :4P】
【位置:N−14】
【機体:ガズR:右肩から先完全に消失、頭部損傷、バックパック小破
胸部装甲破損、全身に多数のへこみ、右脚装甲一部融解】
【人物状況:小指に怪我、腹部に怪我(応急処置済み)】
【精神状態:ハイテンション】
【通信状況:ファッツ、アルバート】
【武装:ビームキャノン兼ビームサーベル×1】
【所持:ディパック(水2L×2、コッペパン×2)、鉢巻、周辺の詳細な地図(フォルダ)
地形データディスク、包帯5本、消毒液、抗生物質、基地の地図
拳銃の弾倉(12発×2)、サブマシンガン(4マガジン)、参加者データ、声色変換機】
【携帯:首輪、腕時計、拳銃(10発)、ホルモン剤】
【方針:新たな敵に対応を…】
【同盟:―】
ビルを飛び越えたと同時に、地上で2つの光が激突した。
片方はνガンダムの。
もう片方はガズアルのビームサーベルだろう。
両こぶしが、コンソールスティックを思い切り握り締める。
あの光の中で2機の…2人の決着がついているのか。
そうであれば、アルマに勝っていてほしい。
そして俺の心配など無用だと、何事もなかったように笑ってほしい。
…だけど、俺の勘ってあまりあてにならないんだ。
光が収まったあとの光景は、俺の願いをあっさりと打ち砕くものだった。
ガズアルとνガンダムが、密着したまま動かない。
一見するとレスリングで組み合っているように見える。
しかしそうでないとはっきり分かるものが、νガンダムの背中に生えていた。
一瞬息が止まりそうになる。
それはビームサーベルの刃。
突き刺さったんじゃない。
腰の部分の火花からすると、横から薙がれた刃が途中で止まったんだろう。
でもそんな想像は何の役にも立たない。
今目の前にあるのは…俺が間に合わなかったという現実だけだ。
「くそっ…くそっ…くそおお!」
νガンダムに致命傷を与えたミヒャエルに対してか。
それとも何も出来なかった俺自身に対してなのか。
俺の口からは、しわがれたような呻きが漏れていた。
何故もっと早くアルマのフォローに来れなかったのか。
戦力的に差があるとはいっても、ミヒャエルもここまで生き残ってきた生徒なの
だから、当然それ相応の操縦の腕を持っていて当たり前だった。
そこまで考えが及んでいたら、もっと迅速な行動をとれた筈だった。
それができなかったんだから……責められるべきは俺だ。
シャッコーがビームサーベルを抜いて右手に持つ。
怒りを飲み込むように小さく息を吸い込むと、俺はガズアルを見据える。
俺の手足は、既に報復を遂げるべくシャッコーを操作している。
今ガズアルは、νガンダムと密着して動きにくい状況にある。
ここで躊躇してたら、その分だけガズアルに逃げる可能性を与えてしまう。
攻撃するのなら、ガズアルが動けない今しかない。
場所がビルの密集地帯だから、後ろには回りこみにくい。
回りこむのに時間をかけて、その間にガズアルがνガンダムを離してしま
ったら問題が大きくなる。
それなら、νガンダムの機体で身動きがとれないうちに攻撃を仕掛ける。
ミヒャエルはνガンダムを離そうとするだろうけど、そんな暇を与えない。
その為には最短距離の攻撃が必要。
(…いや、ミヒャエルもそのくらいは読んでるかもしれない)
俺の危惧は当然だと思う。
アルマの操縦技術は詳しくは知らないが、機体の比較で言えば完全にνガン
ダム有利だった筈。
それを差をものともせずνガンダムに大きなダメージを与えたんだから、
細心の注意を払っても恥じゃない。
見るとガズアルに射撃武器はないようだ。
さっきνガンダムの左腕を破壊したやつは、今は持っていないらしい。
右腕はなくなり、左手にはνガンダムに刺さったままのビームサーベル。
上方からだと目標が小さくなる上に、斬り方によってはνガンダムも巻き込んで
しまう可能性がある。
ガズアルの腕のない右側からならより安全に攻撃できるが、軌道の変更を余儀なくされ
るし、ビルが近くにあってスペースが取り辛い。
それなら…比較的最短距離で辿り着け、νガンダムの機体で隠れてない部分……左側
を狙う。
(どうやって…)
その時俺の脳裏に閃くものがあった。
俺は上方から攻撃すると見せかけてシャッコーをガズアルの左側に着地させると、
そこから上体を捻るように右腕を伸ばし、下からビームサーベルを突き上げる。
昔父さんに何度か見せてもらった、相手の腰より低い位置からの片手突きだった。
【行動:フェイントをまじえて着地(-1)片手突き1(-1)】
【残り:2】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:15番、17番に接続中】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:ガズアルを倒す】
【同盟:ニース(アルマ)】
シャッコーがビームサーベルを抜いて迫ってくる。
当然と言えば当然だが、逃がすつもりはないらしい。
νガンダムとの戦闘に続いて、今度は性能の分からないMSとの戦闘。
しかもこちらはメインカメラと、バックパックの推進力を失っている。
これ以上ないくらい不利な条件だった。
だが、彼にとって不利な条件ばかりが並んでいるわけではない。
おそらくアルバートはガズRが持つビームサーベルが、キャノン兼用だという事を知らない。
だから、引きつけるだけ引きつけて、至近距離からビームキャノンを撃って一撃で終わらせる。
そのためには、アルバートの攻撃方向を正確に予測しなければならない。
攻撃を見てから撃つなどタイミング的に遅すぎて、良くても相撃ちが精一杯だろう。
正面にはνガンダムの機体があるから、まずこちらからの攻撃はあり得ない。
後ろからの攻撃はありそうだが、シャッコーの突入角度からすると難しそうだ。
広い場所ではないだけに、無理に回り込もうとすると意図がすぐにばれてしまう。
あとは左か右か、という事だが…。
左。
何となくそんな気がした。
一直線に向かってくるシャッコーを見てそう感じた。
ビームサーベルの刃を消して、ビームキャノンに切り替える。
「あとは…タイミング…」
頬を伝った汗が、右手の甲に1滴落ちる。
サブカメラが捉えるシャッコーが、ビームサーベルを振り上げた。
「ここっ…!?
いや…!」
何故だか分からないが、彼にはその動作がフェイントのように感じた。
そして、本当の攻撃が下から突いて来る事も何となく予想できた。
本当に何故だか分からない。
しかし彼にその理由を詮索している余裕はない。
ビームサーベルは振り下ろされる事はなかった。
「ここから…突き!」
シャッコーはそのまま着地すると、彼の予想通り上体を捻るように右腕で片手突きを出してきた。
上体を捻ったのは、万が一を考えて斬られる確率を下げようとしたのだろう。
ここまで生き残ってきただけあって、大した操縦技術だった。
彼に読まれてさえいなければ。
その動きを読んだ彼は、既にビームキャノンをシャッコーに向けている。
あとは引き金を引けば、ビームサーベルが届く前に決着がつく。
「私の、勝ち…!」
【行動:閃き?(0)】
【残り :4P】
【位置:N−14】
【機体:ガズR:右肩から先完全に消失、頭部損傷、バックパック小破
胸部装甲破損、全身に多数のへこみ、右脚装甲一部融解】
【人物状況:小指に怪我、腹部に怪我(応急処置済み)】
【精神状態:ハイテンションの中に冷静さ】
【通信状況:ファッツ、アルバート】
【武装:ビームキャノン兼ビームサーベル×1】
【所持:ディパック(水2L×2、コッペパン×2)、鉢巻、周辺の詳細な地図(フォルダ)
地形データディスク、包帯5本、消毒液、抗生物質、基地の地図
拳銃の弾倉(12発×2)、サブマシンガン(4マガジン)、参加者データ、声色変換機】
【携帯:首輪、腕時計、拳銃(10発)、ホルモン剤】
【方針:新たな敵に対応を…】
【同盟:―】
36 :
アルマ@代理:2006/08/29(火) 01:22:17 ID:???
レーダーは今のアルマが外界の様子を知る唯一の手段。
コクピットへのダメージのせいか限定的な情報しか映さなくなったが、そのレーダーには、一直線に
こちらに向かってくるシャッコーが判別できた。
「そんな分かりやすい動きしたら…!」
おそらくアルバートは、ガズアルのビームキャノンを知らない。
サーベルも兼ねていると思われるそれは、何も知らない者に対して奇襲で使えば絶大な威力を発揮するだろう。
アルマにはその事を伝える手段がない。
通信機は既にうんともすんと言わなくなった。
ガズアルにも余裕はない筈だから、ギリギリまでシャッコーをひきつけるだろう。
シャッコーが迫るまで、もうあと数秒。
アルマには迷う時間など残ってはいない。
「…動いて、くれ!」
その言葉に若干の祈りを込めてアルマはコンソール・スティックを倒し、フットレバーを踏み込んだ。
計器周辺の電流が一際大きくスパークするが気にかけない。
νガンダムは良くてもあと数分しかもたないだろう。
このまま静寂の中で死を待つよりは、こうした方がアルマにとってはまだ納得できるのかもしれなかった。
その結果を、人は奇跡というのか。
それとも必然とするのだろうか。
戦場にもロマンを持ち込む人間は、奇跡と呼ぶかもしれない。
職業軍人のような現実的な人間は、必然と片付けるかもしれない。
大破と称していいダメージを負い、機能を停止しているように見えたνガンダム。
現実的に見れば、僅かな時間でもコクピットからの信号が伝われば、その間だけでもMSを動かすのは可能だ。
(電路の断絶など、物理的に不可能な部分を除いて)
しかし奇跡を信じる人間からすれば、アルマの仲間を思う気持ちが動かしたとしたくもなるだろう。
まあ、アルバートがかりそめの仲間でしかなかったアルマが聞いたら、苦笑するしかなかった話だが。
ともあれ、νガンダムは動いた。
手も脚も殆ど動かなかったが、スラスターを吹かすくらいはできた。
それは、νガンダムの機体を支えていたガズアルの位置をずらす程度の推進力を持っていた。
おそらくガズアルが撃とうとしているだろう、ビームキャノンの照準を外せる。
しかし同時に、この動きはνガンダム自身がシャッコーの攻撃の真正面に立つ事を示してもいた。
「…さらばだ、アルバート」
シャッコーのビームサーベルがνガンダムを貫いた瞬間、アルマは妙に静かな気持ちで呟いた。
アルマにとっては、いつかは倒さねばならないかりそめの仲間だった。
しかしアルマを本気で気づかって助けに来たアルバートに、別れの言葉くらいは言いたかった。
【行動:スラスター噴射(-1)別れの言葉(0)】
【位置:N-14/市街地】
【残り行動値:3p】
【機体状況:左腕消失、腰部損傷/通信回線:不通】
【武装:ビームサーベルx2、バルカン(100)、Iフィールド】
【生徒状態:Green?】
【所持品:デイパック、コッペパン、水2gx1.5、栄養ドリンクx6、ノートPC、食糧、生活雑貨、
ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、バニーセット、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:……】
マニュピレーターを通して、身体に伝わる手ごたえ。
俺の耳は、ビームサーベルが装甲を融解させながら貫く音を聞いた。
俺の口は会心の声を上げかけ、肌はその手ごたえに粟立つ。
だけど俺の目がビームサーベルが貫いたものを映し、脳がそれが何なのかを
認識した時、俺の中に爆発しかけた歓喜は全て消え失せていた。
もう一度確かめるように、俺は視線を動かす。
モニターに映るシャッコーの右腕。
その右腕が握るビームサーベルの柄。
そして、柄から伸びるサーベルは……紛れもなくνガンダムの背中を貫いていた。
「……………な…んで……」
会心の声を出す筈だった口からは、その一言しか出てこなかった。
頭の中も心の中も真っ白で、意味のある言葉が浮かんでこない。
ガズアルを倒したかどうかなんて、もうどうでもよくなっていた。
呆然とした頭で、その瞬間の事を思い出す。
丁度フェンシングのような体勢で、下から突きを繰り出すシャッコー。
遠くの動きとは違いこの目前での急激な動作は、モノアイにはかなり追いにくい筈
だった。
更に用心を重ねて体勢を低くした攻撃だから、俺にはある種の以外の確信みたい
なものはあった。
だけど、攻撃が届く寸前、ガズアルが動いたように感じられたのは確かだった。
ガズアルだって黙ってやられるわけじゃないから、当然動こうとする。
それにこの動きは父さんがやったのを見て、俺自身は何度かシミュレーションした
だけのもの。
初めての操縦で動きがぶれて、ガズアルが動いたように感じられるかもしれない。
その時は、そう思った。
でも現実は、これだ。
今更、あの時どうしてなんて考えたって、この現実からは逃れられない。
どんな理由があったとしても…俺は、この手で…仲間に止めを刺してしまった。
「…アルマ、さん」
ぽつりと呟いた。
とうの昔に通信は途切れている。
それが俺にアルマの最悪の事態を容易に想像させる。
「アルマさん……アルマさん……!」
でも俺は名前を呼ぶ。
そこには何の意味もない。
いや、もしかしたらアルマに言い訳をしたかったのかもしれない。
それとも謝りたかったのかもしれない。
…どちらにしてもアルマにすれば侮辱以外の何者でもないけど、俺にはそんな判断
もできていなかった。
でも結局、言い訳も謝罪もどちらの言葉も出てこない。
呟く俺の頭の中は、ずっと『なんで?』という言葉だけが反芻されていた。
【行動:呆然(0)】
【残り:4P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:15番、17番に接続中】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:………】
【同盟:ニース(アルマ)】
勝利を確信した彼は、指をかけた引き金を引こうとした。
シャッコーをぎりぎりまで引きつけた上での射撃。
武器の性能は勿論、引き金を引くタイミングも最高だった。
ここにいるのがガズRとシャッコーだけだったなら、結果は彼の脳裏に浮かんだものを再現したかもしれない。
だが…死んでいると思われていたνガンダムは、まだ死んではいなかった。
引き金が引かれるその瞬間。
脳の指令を彼の指が実行しようとした瞬間。
モニターの映像が回転して、シャッコーの姿が消えた。
「なっ…!あ、ぐうっ!!」
そして。
彼の美しい顔が驚愕に歪み、その衝撃から立ち直る間もなく、コクピットは激しい振動に襲われた。
何が起こったかなど、すぐに分かるはずもない。
シャッコーの映らなくなったモニターには、的外れな方向に発射されたビームキャノンが直撃したビルが
崩壊する様子が映されている。
その様子をまるで他人事のように見つめながら、ガズRの状況を確かめた。
コンパネに示された被害状況は、まさに絶望的だった。
ガズRはシャッコーのビームサーベルによって、胴体を貫かれていた。
被害位置から判断すると、どうやらνガンダムごと貫かれているらしい。
両こぶしをコンパネを思い切り叩きつける。
血が流れるくらいに唇を噛み締める。
こうなった原因は、もう理解している。
νガンダムがもう動かないものと決めつけた、彼自身の油断だ。
アルマはアルバートを救う為に出来ることを、彼女にしか出来ないことをやっただけ。
その意図と可能性を想定せず、そしてそれを可能としたアルマの執念を見抜けなかった彼の落ち度なのだ。
彼がνガンダムの機体を利用しようと決断した時、この結末は決まっていたのかもしれない。
しかしあの状況を考えればその決断は無理のないものだった。
その意味で考えれば、大破した機体を動かしたアルマの執念を褒めるべきなのだろうか。
コクピットに火花が走る。
そろそろ限界らしい。
1回息を吐くと髪をかき上げ、目を閉じた。
生きていたいと思う。
死にたくないと思う。
それは彼独特の思いなどではなく、人間として当然の感情。
でも、どんなに願っても叶わない思いもある。
それは彼自身が身をもって知ってきた事でもある。
そしてそれを知る彼の表情は、これまでの険しさが消えてどこか安らかでもあった。
「悔いはあるけど……それを言ったらきりがない、か」
その言葉が終わらないうちに、コクピットの火花が大きくなる。
機体の各所で小さな爆発が起き、それがコクピットの一部を吹き飛ばした。
身体に鋭い痛みと熱さを感じた彼は無言で目を閉じ……。
その瞼の裏に何かの映像が浮かんできた。
(続く)
そこは何処かの施設。
別に怪しい施設ではない。
クロスボーン・バンガードのMS訓練用の施設だ。
地球連邦と戦うにあたって、十分な訓練を重ねてきたクロスボーン・バンガード。
その成果は、2年前の輸送船コバヤシ丸の襲撃でも発揮された。
しかしいずれは重力下での作戦が考えられるクロスボーンにとって、その状況での訓練施設は必要不可欠で
あり、ここもそういった目的を満たす施設の1つになる。
その施設の中で2機のデナン・ゾンが戦っていた。
戦うといっても、デナン・ゾンの手に握られているのは訓練用の模擬剣だ。
軍の中でも、この模擬剣での訓練には賛否両論がある。
模擬剣での訓練で死者が出ることはまずあり得ない。
従って訓練者は思い切った動きができるが、それは実戦とはかけ離れたものになる事も多い。
では実剣を使用するのはどうなのか。
実剣を使用すると、確かに訓練の質は遥かに上がる。
死と隣り合わせの感覚はパイロットの技や精神を研ぎ澄まし、自然と実戦に活きてくる。
…しかしそれには、殉職という避けては通れない道がある。
軍の訓練だから殉職者がでるのは当たり前だ。
しかしそれを日常茶飯事にするわけにはいかない。
クロスボーンは基盤となっているのが企業のため、地球連邦に比べて資源という点で遥かに劣っている。
だからこそ少数精鋭を目指して軍を鍛えているのだ。
資材の方は、コバヤシ丸の協力を取り付けてそれなりの需要を満たす事ができるようになったが、人材は
さすがにそうはいかない。
MSパイロットというものは、ある種の特殊能力を持った人種に近い。
MSを動かすだけでなく、それを手足として扱い、軍の戦略、そして戦場での戦術に対応できるような
パイロットを育てるには、まずは何といっても才能が必要になる。
才能ある者に時間と金をかけて訓練を施せば、それは軍にとって何倍もの恩恵となって返ってくる。
その少数精鋭のパイロットたちを、訓練で何人も死に追いやるわけにはいかない。
模擬剣に不満を持つ者も、それが分かっているから敢えて(表向きには)何も言わないのだ。
そしてこの2機のパイロットも、そうした才能ある人種というわけだった。
もう数分間打ち合っているが、なかなか有効打がない。
片方の機体に乗っていたミヒャエルは、正直相手の技量に驚いていた。
鉄仮面に見出された彼は自分の技量にそれなりの自信を持っていたが、それにここまでついてくるパイロット
が他の隊にいるとは思わなかったからだ。
彼ももういい加減焦れてきていたが、相手もそれは同様だったらしい。
真正面から上段の打ち下ろしを放ってくる。
(正直すぎる。多分、誘い)
ここまで打ち合ってきた相手の動作にしては、いささか直線的すぎる。
おそらく相手はこちらに防御させるか退かせるかして、その動作に合わせてフェイントを入れてくる。
そう判断した彼は敢えてデナン・ゾンを1歩下がらせた。
その瞬間相手のデナン・ゾンは、振り下ろそうとしていた模擬剣を腰に構え、更に1歩踏み出してきた。
このフェイントも、彼の想定の範囲内だった。
相手があの体勢から出すのは、おそらく突き。
少しだけ余裕をもって下がったデナン・ゾンの体を捻らせて突きをかわし、同時に相手の頭部に一撃を与えて
終わりにするつもりだった。
(続く)
ここでもう一度彼は目を見張った。
彼は相手が正面から突いてくると判断していた。
そちらの方が、最小限の動作で最短距離の攻撃ができるからだ。
しかし相手は思い切り機体を沈み込ませると、こちらの腰よりも低い位置から片手突きを繰り出したのだ。
相手の位置が低い為、こちらの攻撃が届くかどうか分からない。
しかも彼は上半身を捻ってかわそうとしていた為、下半身が攻撃に対応しきれない。
だが、想定外であっても、この体勢で方針を変えれるわけがない。
彼は一か八かで模擬剣を打ち下ろした。
この剣が届くのか、それとも届く前に相手の剣が彼の機体を突き飛ばすのか。
そして彼が感じた2つの衝撃。
それが何なのか、考えるまでもなかった。
彼はデナン・ゾンから降りて機体を見上げ、そして相手の機体を見た。
彼の機体は、腰の部分の塗料が剥げていた。
相手の機体は、頭部が少し凹んでいた。
小さな溜息をつくと、彼は降りたばかりの相手のパイロットに近づいた。
「あなた、結構やるのね」
彼の正直な感想。
相手をなめていた部分はあったとはいえ、それを認めないわけにはいかなかった。
ヘルメットを取ったパイロットは、少し苦笑したようだった。
「ま、俺の判定負け…ってところかな」
そのパイロットは彼のデナン・ゾンを見つめた。
「塗料の剥げ具合からして、これが実戦だったら、お前の機体についた傷は大したものじゃない。
だが、俺の機体の頭部の傷はかなり強い打撃を受けている。
実戦だったら間違いなく視界を奪われただろう。
そのまま戦闘を続けたら絶対的に俺の不利になる」
なるほど、実戦を想定した訓練だから、その見方は間違いではない。
分かってはいても、相手からそれを言われると何だか気持ちが良かった。
「あなたの攻撃も意表を突かれたわ。
でも、あんな低い体勢で踏み込んだら、股関節がおかしくなっても文句言えないかもね」
彼は感じた事を素直に言った。
確かに腰よりも低い位置からの踏み込みは、MSの関節の稼動限界に近い。
パイロットは微かに笑った。
「実戦を想定しているからこそだ。
戦闘が計算通りに進む事など、まずあり得ない。
それなら、戦闘において重要になってくるのは閃きだ。
攻撃の瞬間、防御の瞬間、移動の瞬間、様々な瞬間に五感を研ぎ澄ませて行動しなければならない」
その言葉に彼は無言で頷いた。
パイロットは続ける。
「結果として関節がおかしくなろうと腕が無くなろうと、俺たちはまず生き残らねばならない。
致命的な損傷さえなければ、生きてさえいれば次を考えることができる。
その後は攻撃でも退却でも、その時の状態で出来る事を模索していけばいい。
…まあ訓練と実戦は違うから、成果とやらが発揮されるかどうか、少し疑問もあるがな」
最後にまた苦笑したパイロットは、彼に片手を上げると向こうで待つ上官らしき人物の方へ歩いていく。
「あ、ちょっと。
…あなたの名前を教えてくれる?」
思わず彼はパイロットを呼び止めた。
ついさっきまでは名も知らないただの訓練相手だった。
しかし久し振りに味わった緊張感と、ある意味での爽快感を与えてくれた相手の名くらいは知りたかった。
パイロットはちらりと振り向き、口を開いた………。
コクピットも炎に包まれていく。
もうあと1分かからずに全てが終わる。
だが、死を間近にした彼の顔には、僅かながら笑みが浮かんでいた。
走馬灯という言葉がある。
人間が死ぬ間際に見ると言うあれだ。
一般にはその人間が、自分の人生の思い出を顧みているものと言われている。
しかしこれには違う説もある。
『人間が生命の危機に晒された時、それを察知した脳はその人間の人生のあらゆる経験から、その危機を
克服できる手段を探そうとする』
それが走馬灯と言われるものだと言うのだ。
その説に当てはめればミヒャエルの見たものは、彼の生命を救うヒントにはならなかった。
(この状態で彼を救う手段があったとも思えないが…)
しかしそれは、ミヒャエルの魂を若干だけ安らがせるものではあった。
瞼に浮かんだ映像が疑問を1つだけ解決してくれたから、彼は笑みを浮かべられた。
「…アルバートのさっきの攻撃…どこかで見た事があると思ったら……そういう事……。
……たしか、あのパイロット……レイモンド…っていったっけ…」
記憶に蘇ったその名前を呟く。
しかし、彼の記憶のレイモンドと、アルバートの顔が重なる事はついになかった。
「…あーあ……今度、こそ……あの突きを、かわせるところ…だった……のに……」
彼の口から、それ以上言葉が漏れる事はなかった。
燃えるコクピットで、ミヒャエル=レニ=ハイドリヒの時間が永遠に止まったのは、それから数秒後である。
【ミヒャエル=レニ=ハイドリヒ…脱落】
43 :
アルマ@代理:2006/09/02(土) 14:57:27 ID:???
コクピットのアラームは、喧しいほどに鳴り続ける。
破裂する計器と広がるスパークが、νガンダムが最後の時を迎えている事を印象づける。
だが、ガズアルにやられた時点で長くは保たない機体だった。
それが少しだけ早まっただけの事。
それと引き換えに得た戦果は、おそらく最上のものだろう。
νガンダムの腹を貫いたビームサーベルは、おそらくガズアルにも達している筈。
大破したMSでアルバートの危機を救い、尚且つガズアルを撃破できたのだから最上と言ってもいい筈だった。
モニターも通信機も死んでいるから確かめる事は無理なのだが、アルマは撃破したと信じている。
微かに映るレーダーのガズアルは、動く気配を見せない。
だから、そう信じないといられないのだろう。
迫り来る死の恐怖。
痛み、苦しみ。
それを受け入れる代償として、自分が挙げた「戦果」を信じようとするのは無理もないかもしれない。
「父さん……私ね、何となくだけど…分かったよ」
ここにはいない、でもどこかでこのプログラムを見ているかもしれない父に話しかけた。
あの日、あの時。
アルマの勘は、その男が只者でない事を告げていた。
残念な事に、それはとても悪い意味での話。
両親とリビングで話す、アルマにとってとても印象の悪い男。
その日はたまたま学校が早く終わり、アルマはユウと一緒に宿題をやるために帰ってきた。
その際に偶然覗いた、リビングの様子。
相手の印象が悪かったために、その時はその場からそっと離れた。
しかし、よくない印象ほど記憶には残るものだ。
リビングの男の事が気にかかったアルマは、翌日父に聞いてみた。
昨日リビングで話してた男の人、一体誰なの、と。
アルマにしてみれば、それは何の問題もない事を確かめるつもりの相談だった。
父は笑って
「ああ、あれは得意先の人だよ」
みたいな事を言ってくれると思っていた。
しかし父は一瞬だけ目を見開くと、アルマにリビングの話を聞いたのかと聞き返してきた。
アルマは、少しだけ、とだけ答えた。
そのあと父は無言になり、結局何を言っても話にならなかった。
数日後、ユウは公園でバラバラになって発見された。
それとほぼ時を同じくして、両親は訓練を再開する。
44 :
アルマ@代理:2006/09/02(土) 14:59:09 ID:???
以前からの訓練により一流といってよい技能を身に付けていたアルマは、久しく両親と訓練をしていなかった。
それが急に再開とは、タイミング的にも奇妙だとアルマは感じていたが…。
その苛烈な訓練は、アルマの精神も体力もどんどん削り取っていった。
傷つき倒れ、血反吐を吐いても止む事のない訓練。
まるで、両親がアルマが死ぬ事を望んでいるかのようだった。
(そうなのかもしれない)
薄れかける意識の中でアルマは思う。
自分が見てしまったから。
見てはいけないものを見てしまったから。
ユウのように、自分もここで殺されるのかもしれない。
何度も倒れ、息絶え絶えのアルマに父が怒鳴る。
「誰が倒れていいと言った!
直ぐに立て!
3つ数えるうちに立てなければ、この場で撃ち殺す!」
撃鉄を起こす音が聞こえる。
「死にたくないのなら、動け!
死にたくないのなら、足掻け!
全身全霊の力を振り絞って、足掻いてみせろ!」
その言葉にアルマの身体が反応する。
絞り尽くしたと思っていた力が、少しだけ湧いてくる。
何か理由があれば、人間は力を振り絞れる。
出し尽くしたと思っても、人間は必ずどこかに予備のエネルギーを残しているから。
死にたくない。
それは人間が力を振り絞るのに、十分すぎる理由だった。
渾身の力を振り絞って訓練を生き延び、ぼろぼろだった体調が元通りになってきた頃。
アルマの姿は学校からも自宅からも消えていた。
そして次に彼女が目覚めるのは、プログラムの教室の中である。
(続く)
45 :
アルマ@代理:2006/09/02(土) 15:00:30 ID:???
アルマは思っていた。
両親は自分を殺す為にここに放り込んだのだと。
訓練で殺せなかったから、ここに放り込まれたのだと。
確かにあのままでも訓練は続けられるが、アルマに逃げ出される可能性もある。
それならばいっそ、プログラムに参加させた方が組織の為にもなる。
しかし、どうしても矛盾するのだ。
殺したいのなら、何も訓練にかこつける必要はない。
ユウのように問答無用で殺す事だって、組織ならば容易く出来た筈だ。
プログラムも確実ではない。
優勝者は監視つきとはいえ元の生活に戻る事ができるし、現に前回は2人の生徒が脱出に成功している。
(前回の2人についてはアルマの知る由ではないが)
では何故、両親は不確実なプログラムにアルマを放り込んだのか。
それを考えて、アルマは1つの答えを見つけた。
両親は、アルマに生きてほしかったのではないか?
あのままではアルマは、組織によって確実に殺される。
だから両親は、少しでも生き延びる可能性のある方に賭けたのではないか?
あの訓練の中、父は言った。
『死にたくないのなら、動け!
死にたくないのなら、足掻け!
全身全霊の力を振り絞って、足掻いてみせろ!』
あれはその場での言葉ではなく、プログラムを生き抜く姿勢を語ろうとしたのではないか?
どんな戦場よりも異常で過酷なプログラムを勝てるよう、あれだけの訓練を課したのではないか?
アルマはそう理解した。
都合のいい解釈かもしれないが、それは責められるものでは全くない。
死ぬ間際に、やっと両親の気持ちが分かったかもしれないのだ。
例え真実でなくとも、恨むよりも信じて逝けるのなら、それはどんなに安らぎになるだろう。
「父さん…母さん…私、足掻けるだけ足掻いてみた。
私はもうここまでだけれど……でも……仲間を救う事、できたよ?」
アルマはアルバートを仲間と呼んだ。
最早変えようのない死。
そしてその間際に、自分なりに理解できた両親の心。
それによって得られた安らぎが、仮初めの仲間だったアルバートを真の仲間と認識させたのか。
生きてる時は疑心から仲間と認めることが出来ず、死と言う自由を得る瞬間にそれを認められる。
そのような悲しい現実もまた、プログラムの悲劇の1つかもしれない。
(続く)
46 :
アルマ@代理:2006/09/02(土) 15:01:50 ID:???
ふと視線を移したレーダーに、アルマは身を固くした。
寄り添うように密着するνガンダムとガズアル。
そして2機に密着するように、まだシャッコーが存在していたからだ。
さっきから機体が揺れているのは、爆発ではなく、シャッコーが揺らしていたかららしい。
アルマはコンパネを叩いた。
「何をしている、アルバート!
もう離れろ!爆発するぞ!…アルバート!」
しかし機能の殆ど死んでいるνガンダムから、その声はアルバートに届かない。
「離れろ!お願いだから…お願いだから、離れてくれ!
ここまで来て…私の命を意味のないものにしないで!」
…その瞬間、νガンダムの機体が微かに揺れた。
何故かは分からないが、シャッコーの手がνガンダムから離れたらしい。
「…それでいい、アルバート」
そして、もう一度アルマはコンソールスティックを握った。
「父さん、母さん…もう一回だけ、私に足掻かせて!」
叫びと共にスティックを倒し、思い切りフットレバーを踏む。
消えていたνガンダムのモノアイが一瞬力強く光り、再びスラスターが咆哮を上げた。
それは、アクシズを押し返そうとしたあの時と遜色ない、美しくも激しい咆哮。
「お前はまだ生きろ、アルバート!
…そして…出来るなら、私のあとを追ってくるな!」
ビームサーベルで繋がったまま、νガンダムとガズアルは突き進み始めた。
ビルの外壁を削り、振り落ちるガラスの雨の中、2機は進む。
少しでもシャッコーから離れて、少しでも遠くへ。
…スティックを握った手が震える。
どこまで離れたか分からないが、蘇ったスラスターはとっくにレッドゾーンに突入している。
推進剤に引火するか、それとも機体が先に爆発するか。
どちらにせよ、もう最後だろう。
「…………お父さん………お母さん………ずっと、ありがとう……。
色々辛いことあったけれど……やっぱり私……幸せだった……!」
耐えていたものが、途切れた。
両の瞳から流れ出る、涙。
頬を伝ったそれが手の甲に落ちたその時…全てが真っ白になった。
【アルマ=フローライト…脱落】
今はまだ保守
ほす
何秒間…いや…何分間そうしていただろう。
俺の中の少しだけ冷静になった部分が、何があったのかを分析しようとしていた。
ビームサーベルを突き出す直前までは、確かに正面にガズアルを捉えていた。
しかし、サーベルが届く瞬間、正面にいたのはνガンダムだった。
あの瞬間にシャッコーの軌道が変わるのは考えられない。
とするなら、νガンダムの方がシャッコーの正面に来た事になる。
何故なのか?
…殆ど気にかけてなかったけど、ビームサーベルを繰り出した直後、シャッコーのセンサーが
ガズアルからの高熱反応を捉えていた。
そして今、背後で崩れたビル。
この事から推測すると、答えは自然と出る。
ガズアルの持っている武器は、ビームサーベルではない。
…いや、正確にはビームサーベルを兼ねた射撃兵器だろう。
それを知っていたアルマは…ガズアルの照準を狂わす為に、あんな事をしたんだ。
シャッコーの攻撃に晒されるのを覚悟の上で…。
俺は、アルマに命を救われた。
ガズアルに射撃武器はないと判断していた俺の誤りを、文字通り身体を張って正してくれた。
噛み締めた奥歯が音を立てる。
俺は何も出来ないままなのか。
命の恩人の死を待つだけしか出来ないのか。
シャッコーの手がνガンダムを掴み、揺らす。
「アルマさん!」
目一杯の大声を張り上げる。
「まだ諦めちゃダメだ!」
応答のない通信機に俺は叫ぶ。
まだ何かアルマの命を救う方法がないのか?
叫びながら考える。
何も出てこない。
それでも、俺はアルマの名前を叫ぶ。
何もしなかったら何も始まらない。
諦めたら、何もかもそれで終わりになってしまう。
そんなのはダメだ!ダメだ!ダメだ!
(続く)
だけど…通信機には何の反応もない。
揺らしていても、アルマが出てくる気配もない。
何もかもが、俺に最悪の想像をさせようとする。
その不吉な想像を振り払おうと、頭を振った、その時。
『お願いだから離れてくれ!』
俺の耳…いや、頭に、直接声が響いた。
反射的に俺は、シャッコーをνガンダムから離し……。
次の瞬間νガンダムのスラスターが、凄まじい炎を吹き上げた。
ありがちな例えかもしれないけど、ロウソクの最後の灯火のうような、激しい炎だった。
「アル……!」
スラスターの吹き上げる煙の中、俺はアルマの名を呼ぼうとした。
その間、数秒くらいだったろうか?
νガンダムはガズアルとビームサーベルで繋がったまま、姿を消した。
砂煙の中、ビルのガラスの雨の中、アルマはミヒャエルと一緒に消えた。
…それがどういう事なのかくらい、分かってる。
俺は…再びアルマに命を救われたのだ。
暫くして起こった大爆発は、俺の考えを証明しているものだった。
…最悪だ…。
【行動:分析(0)νガンダムを揺らす(-1)】
【残り:3P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:15番、17番に接続中】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:………】
【同盟:ニース】
いつのまにか、ニースはまた眠っていた。
道路の脇に、佇むように止まっているゲルググ。
そのコクピットで、シートにもたれかかるように眠るニース。
プログラムが始まってから、まともに睡眠を取っていない。
死と言う言葉を常に間近に感じる中で、安心して眠りになどつけるだろうか?
特にプログラム当初は、ニースは何も出来ない、ただの少女でしかなかった。
その現実は当然ニースに、肉体的、精神的な責め苦を与える。
疲れて休息を望む肉体と、状況ゆえに休めない精神。
その狭間で、ニースは文字通り身を削り生き抜いてきた。
だが、勿論ニース1人で生きてきたわけではない。
レベッカがいた。
エルネスティーネがいた。
クラウディアがいた。
アルマがいた。
そして何よりも、アルバートがいた。
彼の教えがあったから、笑顔があったから、ニースは何とか耐えてこれた。
たくさんの人が死んだ。
出会った人も、顔も知らない人も、男も女も死んでいった。
戦って死んだ人。
アクシデントで死んだ人。
思想も教義もなく、望むと望まざるとにかかわらず、次々に死んでいった。
しかしアルバートは生きて、生き抜いてニースを待っている。
きっと、あの優しい笑顔で迎えてくれる。
プログラムで持ってはいけないはずの、「希望」を感じさせてくれる人。
「う……ん」
ニースは、頬に温かさを感じて目を覚ました。
目の前には、彼女の頬を舐めるハリー。
しばらく眠たげに目を擦っていたニースだが、ようやくハリーの求めるものを悟ったらしい。
「…あ、朝ごはん食べたいの?」
細かな時間とは無縁で生きてきたから、今が朝かどうかなんてよく分からない。
とにかく目が覚めたから朝ごはんという、単純な感覚だった。
ハリーと一緒にごはんを食べながら、微かに見えてきた町を見る。
あそこにアルバートがいる。
早く、アルバートに会いたい。
あそこにアルマもいる。
会ったら、色々話がしたい。
まだあまり話してないが、年齢も近いから話が合うかもしれない。
そう思うと、食事をする手も自然と早まっていく。
「ごっちそうさま!」
パンと両手を合わせてお辞儀をして、足元で食事を続けるハリーに構わずゲルググを発進させた。
不満そうな声を上げるハリーの頭を撫で、ニースはゲルググを走らせる。
そして更に町の近くに辿り着いた時、ニースの顔に満面の笑顔が浮かぶ。
何故なら、ゲルググのレーダーに、すぐ近くにいるシャッコーが映ったから。
大好きなアルバートが、手の届きそうな近くにいるのが分かったから。
「アルバートさん!」
通信機のスイッチを入れて、その名前を叫ぶ。
だが返事がない。
一瞬怪訝な表情を浮かべたニースだが、レーダーをよく見てハッとなった。
シャッコーと重なるように見える2つの機体。
そこにはシャッコーの他に、アルマのνガンダムと、ガズアルというMSがいた。
【行動:眠り(−1)ハリーと食事(−1)ボーナスを使ってP-14に移動(−1)11番に通信接続(−1)】
【残り行動値:0】
【位置:Q-13】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:肉体、精神ともに普通】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:町へと向かう】
【同盟:アルバートさん、アルマさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
更に視線を向けて、別の地点の機体を見つける。
そちらは、ニースも一度出会った事のある、ファッツのマラサイだった。
更に生徒名簿をめくるニース。
そこにある、ミヒャエルという生徒の名前。
(アルバートさんとアルマさんが、このミヒャエルって人と戦っているのかも…)
戦っていないのなら、きっとアルバートは通信に答えてくれる。
返事が返ってこないのは、おそらく戦っているから。
ニースは、少しだけ自身の成長を感じさせる結論を出した。
「あたしも、いかなきゃ…」
ゲルググを、レーダーの反応に向かって走らせる。
しかし、慌てて発進させたものの、ニースはゲルググの状態を忘れている。
もう少し冷静に考えれば、加勢に行かない方がいい事に気づきそうなものだが、ニースにとっては
まずは、アルバートとアルマの元に行くのが優先されてしまっていた。
レーダーを見る。
レーダーの情報だけでは、現地で何が起きているのかまでは分からない。
それに気になるのは、マラサイの動き。
見たところ、シャッコーやνガンダムからさほど離れていない所にいるはずなのに、動きがみえない。
パイロットはファッツ=シュビール。
(前会った時は、何か掴みどころのない感じの人だったけど……)
何か考えがあって動かないのか、今のニースには判断できない。
いくつかの区画を過ぎて、やっとその場所に着く。
そして、モニターに映った光景。
寄り添うように機体を合わせる、νガンダムとガズアル。
その2機を後ろから貫くのは…シャッコーのビームサーベル。
「……え……?」
声を失うニース。
目に映る光景を、脳が、心が、理解できない。
アルバートは、ニースだけでなく、仲間を本当に大切にする人だ。
レベッカにも、エルネスティーネにも、アルバートは誠心誠意接しているように、ニースには見えた。
時々嫉妬も感じたが、そんな優しいアルバートが好きだった。
そのアルバートが、νガンダムを後ろから刺している。
まだ声が出ない。
ニースが正気を取り戻したのは、2機の爆発音がきっかけだった。
いつのまにか、モニターに映っているのは、シャッコーだけになった。
「……アル……」
少しだけ、掠れたような声が出る。
額を流れ落ちる汗の感触が、これが夢でない事を如実に告げていた。
【行動:名簿を調べる(−1)N-14に移動(−2)】
【残り行動値:1】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:混乱】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:アルバートとアルマのいる場所へ】
【同盟:アルバートさん、アルマさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
55 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/19(火) 00:44:02 ID:fTyvqSUF
一旦あげとく
俺は、結局ここに何をしに来たんだろう。
アルマを助ける事も出来ず、逆にアルマに命を助けられた。
…いやそれどころか、アルマに止めを刺したのは…俺、という事になる。
あのまま何もしなくても、νガンダムは爆発した。
だけど、それを言い訳にしようとしたところで、俺のやった事が消えるわけでもない。
……俺があの時、他に出来た事はあったのか。
…あそこで攻撃しなければ、ガズアルが行動の自由を取り戻してしまう。
いや、俺の軽率な攻撃がなければ、アルマがνガンダムを盾にしようとはしなかった筈。
だからこそ、あそこでは余計に慎重な行動が必要だったのではないか。
でも、慎重になりすぎるとガズアルが行動の自由を………。
「ああくそ!
堂々巡りじゃないか!」
髪をがしがしと掻き天を仰ぐ。
何をどう考えたって、もう何も戻ってはこない。
何をどう考えようと、俺は言い訳の理由を探しているだけにしか見えない。
…俺は…軍人だ。
物事を常に現実的に捉えなければ、戦場では生き残れない。
感傷を持ち込むのは後でも出来る。
今してはいけないのは、感傷を引きずる事。
生きているから…これからも生きれる可能性があるから、尚更今は現実的でなければ
いけない。
俺は未だ心のうちで渦巻く様々な思いを、半ば無理矢理抑え込んだ。
そしてコクピットを改めて見直して……通信機が点滅している事に気づいた。
通信先は、ゲルググ。
ニースが、戻ってきた。
しかも、目に見えるほどに近くにいる。
今の今までそれに気づかなかったのは、やはり俺の呆然としていた時間が長かったか
らだろうか。
モニター越しにゲルググを見て、俺は一瞬息を呑んだ。
ゲルググは、別れる前の原型を留めていなかった。
頭部がない。
左腕もない。
機体の各所の損傷も、目に見えて増えている。
それはニースという少女が、想像できないほどの激戦を戦ってきた証。
通信回線を繋ぐ。
モニターに見慣れた少女の顔が映る。
その顔が憔悴しているように見えるのは、俺の気のせいなんかじゃないだろう。
だからこそ。
約束通り戻ってきてくれたニースに、何か声をかけてやりたい。
…俺は、笑えるだろうか。
アルマをあんな事で失って、それでもニースに笑ってやれるだろうか。
…違う。
笑えるか、ではない。
笑ってやらなければいけないんだ。
ニースの苦労に、努力に、健闘に報いてやれるのは俺だけなのだから。
未だ抑えきれない激情を面に出さないよう、俺は何とか微笑んだ。
「おかえり、ニース」
【行動:14番に通信回線接続(-1)】
【残り:3P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:14番、15番に接続中】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:………】
【同盟:ニース】
58 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/20(水) 20:54:54 ID:/+U34wnH
晒しage
あぼーん
「こりゃまた………予想外の結末で」
爆発し、炎上する二機をモニター越しに見、そう呟く。
軽い口調だが、心中は複雑なのだろう。
顔は引きつったような、奇妙な笑顔だ。
はっきり言うならば、アルマやミヒャエルに対して情のようなものは持っていた。
お互いの事を全く知らないというような関係でも無い。
このような意味のわからないゲームに捕らわれたとなれば、
それほど親しくない相手であろうと情のようなものは沸いてくる。
特に、ミヒャエルに対しては強い情を抱いていた。
自分の軽率な行動のせいで死にそうになった時、庇ってくれたのは彼だ。
ここまで連れてきてくれたのも、彼だ。
出来る事なら、死なせたくはなかった………しかし………。
「………………」
それも叶わなかった。
動く事さえままならない自機では、助ける事も出来なかった。
盾になる事さえ―――。
―――いや、後悔したところで、どうしようもない。
それに、自分よりも辛い想いをしている男もいる。
頭を振り、ネガティブな思考を打ち消しながら、
ファッツはモニター越しに、立ち尽くすシャッコーと近づきつつあるゲルググを見据えた。
【行動 :思案(-1P) 残り3P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:ミヒャエル・アルバートに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
あぼーん
62 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/23(土) 11:55:19 ID:WLLyvof/
晒しage
>56
『おかえり、ニース』
回線が開かれた通信機から、アルバートの声が聞こえた。
ニースにとっては、すごく聞きたかった声。
誰よりも信頼し、誰よりも好きな、アルバートの声。
たった1日かそこら聞かなかっただけなのに、ニースにはそれが何日にも感じられた。
アルバートに、知ってもらいたい事があった。
そして、見てほしい事もあった。
ニースが、レベッカに命がけで教わった事。
そして少しだけだけど、強くなった自分。
もう、アルバートの後ろで守ってもらうだけの弱い存在ではない。
アルバートを、正面から助けられるパートナーとして、少しでも成長した自分を見て、知ってほしい。
だが、ニースのその思いは、今は心の隅っこに追いやられていた。
待ち、恋焦がれたはずのアルバートの笑顔。
それが、以前とどこか違うように見えたから。
いつもと変わらないように見える笑顔に見え隠れする、作ったような笑い。
それは、彼の笑顔をずっと見てきた、ニースだから分かったのかもしれない。
そして、さっき見たνガンダムをビームサーベルで突き刺す光景と、その作り笑いが重なる。
本当は信じたくないのに、でも1つの結論が頭から離れない。
「う、うん。
ただいま…アルバートさん」
無言でいるわけにはいかない。
しかし、アルバートに答えたニースの声には張りがなかった。
心がざわめく。
いつも同じと思っていた道から、見知らぬ土地に入ってしまったような、そんな感じだった。
【行動:何とか返答(0)】
【残り行動値:4】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:混乱】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:アルバートさんの力に】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
あぼーん
あぼーん
あぼーん
…?
お帰りと言ってはみたけど、ニースからの返事がない。
…あ、いや、ワンテンポ遅れて返ってきた。
うーん…何かおかしい。
いきなり返事を返したから驚いたのかもしれないけど、明らかにニースの表情は優れない。
口調も思ったよりも元気がない。
いつもの癖で、可能性を考えてしまう。
…やはり一番有り得るのは疲れだろうか。
無理もない。
別行動をとってからのニースの戦いを直接見たわけじゃないけど、彼女は少なくとも2人の生徒と
戦ってきている。
恐らく殆ど休む暇もなかっただろう。
でもその疲れた身体を押して、俺の通信に応えて帰ってきてくれたのだから、通信した本人としては
これ程嬉しい事はない。
少し休んでくれ。
と言いかけて口をつぐんだ。
休ませてやりたいのは山々だけど、今はもう時間がない。
それは狭くなったマップを見れば、嫌というほど分かる。
だから緊張を保っていられるうちに、出来る事はやっておきたい。
俺は一旦息を整えると、通信を送る。
「ここまで来てくれたニースに、いきなりこんな事頼むのは気が引けるんだけど…。
でもニースにしか頼めないんだ」
一度言葉を切って、ニースの表情を見る。
「ここから近い場所にファッツ=シュヴィールのマラサイがいる。
そのマラサイの脚を修理してやってほしいんだ」
ニースがファッツに対して、どういう気持ちを持っているのかは知らない。
が、少なくとも味方としては見てないような気がする。
それだけに承諾してくれるのか微妙だったが、とにかく頼めるのはニースだけなのだ。
【行動:ニースにお願い(0)】
【残り:4P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:14番、15番に接続中】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:先ずはマラサイの修理】
【同盟:ニース】
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄  ̄
やはり何かがおかしい。
ニースが漠然と感じる不安。
ニースの答えを聞いたアルバートが、何かを言いかけて止めた。
何の意味もない仕草なのかもしれない。
しかし今のニースには、その脳裏に映る映像と、その仕草を別々に考える事ができなかった。
あれは、何かの事故なのだ。
何か、仕方がない理由があったのだ。
そう考えようとするニースもいる。
確かめるのなら、一言、聞いてみればいいだけだ。
それだけで、何もかもが解決する。
だが、口は開かない。
その一言を言う勇気が湧いてこない。
『ここまで来てくれたニースに、いきなりこんな事頼むのは気が引けるんだけど…。
でもニースにしか頼めないんだ』
そうこうしているうちに、アルバートの方が先に声をかけてきた。
慌ててアルバートを見るニース。
『ここから近い場所にファッツ=シュヴィールのマラサイがいる。
そのマラサイの脚を修理してやってほしいんだ』
アルバートから頼まれたそれは、ニースにとって意外、とも言えるものだった。
ニースの記憶が正しければ、ファッツは決して味方ではない。
勿論、ニースのいない間に味方になったかもしれないのだが、以前町で出会った時の、ファッツの内面を見せない
印象が消えないニースには、その頼みがどうにも意外に思えたのだ。
「う、うん…分かった」
想像だけで断るわけにはいかない。
ニースはこくりと頷くと、マラサイのいる方へと向かい始めた。
不安な時には、不安な考えばかりが頭に浮かぶものだ。
(何でアルバートさん、アルマさんを刺したんだろう?)
(何んで、ファッツさんのマラサイを直そうとするんだろう?)
(もしかして…アルバートさん、ファッツさんと何か約束とか…?)
(だからアルバートさん……)
そこまで考えて、ぶんぶんと首を振る。
(あたしは、アルバートさんを信じるって決めたじゃない!
アルバートさんは、あたしを信頼して頼んでくれたのに…)
そんな事を考えるニースの視界に、マラサイの姿が見えてきた。
なるほど、その片脚は失われている。
「あ、あの、ファッツさん聞こえる?
アルバートさんに、その、脚直すように頼まれたんだけど」
ともかく通信を繋いで、ファッツに話しかけるニース。
【行動:マラサイの所へ移動(−1)15番に通信を繋げる(−1)】
【残り行動値:2】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11、15番】
【人物状況:不安】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:アルバートとアルマのいる場所へ】
【同盟:アルバートさん、アルマさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
オ ネ ガ イ
ヽ( 'A)ノ ヽ('A`)ノ タッチ!! タッチ!!
( ) ( )
/ ノ < \
ヽ( 'A)ノ
( ) ('A`) ココニタッチ!!
/ωメ ( )ヽ
LL
ヽ( 'A)ノ
( ) ('A`) アーナーターカラー!
/ωヽ(人)
LL
タッチ!!
ヽ( 'A)ノ
ヽ ヽ
ノωA`)
彡 (人)
LL
>>74 「あれ? もう修理してくれんの?
もーちょっとカレと話してても俺は別にいいけど?」
ふざけた口調で、笑いながらそう返す。
ただ―――よくよく見てみれば、その笑顔も、非常に苦々しいものである。
目の前で人が二人、知っている人物が死んだのだ。
当然とも言える反応であるが………故に、彼は笑った。
少しでもネガティブな方向に傾きそうな思考を振り払わねばならない。
それが、彼の望む願い―――楽しんで生きる事に繋がるのだから。
「まぁ、さっさと修理してくれるっつんならそれに越した事無いけどね。
んじゃ、悪いけどよろしく頼むわ」
そうニースに向かって言った後、ファッツはコクピット内の荷物を纏めて地上に降りた。
そしてニースのゲルググに視線を向けると、感謝の印と言わんばかりに―――。
ウインクをひとつ送ってみせた。
【行動 :思案(-1P) ニースに通信接続(-1P) 下乗(-1P) 残り1P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
78 :
通常の名無しさんの3倍:2006/09/28(木) 21:56:44 ID:3U0y+WRU
m9(^Д^)プギャーーーッ
___
/ ヽ
, -‐ (_).⌒ l ̄| ⌒ | __o
l_j_j_j と) ノ─| ノ | 二|二'' _
/ / ヽ ノ | ヤ ッ
〈 ノ |
/ /\ __ /\ \
| .| | | __o
i⌒ヽ | | | .| | 二|二'' _
|⌒ |⌒ | ヽ_ノ| .| ノ__ヽ | ノ | ヤ ッ
| | | ヽ_ノ .\ . l l /
/ ̄ ̄^ヽ /::.__ .::::::::::::: __ ヽ_
l l / / ヽ_ヽv /: / ヽ ヽ
_ /,--、l ノ /  ̄ ̄ √___丶 ̄ ̄ |
,--、_ノ:: `ー':: 、ミー---‐,,l | // tーーー|ヽ |
,/ ::: i ̄ ̄ | | ..: | |ヽ |
/ l::: l::: l | | |⊂ニヽ| | |
l . l !:: |::: l | | | |:::T::::| ! |
| l l |:: l: l \: ト--^^^^^┤ 丿
| l . } l:::::,r----- l \::  ̄ ̄^ヽ 丿
ヽ :l:::: ト:;;;;;;;/-/__........... / __o
| 二|二゛ ___
ノ | ヤ
r'ニ;v'ニ;、
_,!_(9i (9i:、
/ `ヽ,. ┘ヽ ところでお前ら仕事は?
. i ′′ }
l、 、 ,!
ヽ.____,ノ` ,∠!
`ーァ ヘ>
i′ ヾZ___/`i
| , ヾ;.、ヾ;、 !
l、 | |,.、ヾ二_)|
l ヽ.ヽ、`,! _,ノ
`ーヘ,.二i、 〈
__〔`二〔´ ̄~〕
i′ i′ ` ヽ
l、__l、_____j
ゲルググがマラサイの方へと向かう。
開かれた通信回線を通して、ニースとファッツの会話が聞こえる。
…正直ニースがマラサイの修理を承諾してくれるかどうか不安だったけど、今の
通信を聞く限りでは大丈夫そうだ。
以前考えた通りなら、マラサイの損傷はその場凌ぎでは駄目だろう。
現にマラサイは歩く事すら困難な状態なのだから。
だから、あの基地にあるゲルググJの脚を移植するしかない。
マラサイにゲルググの脚が付くかどうかなんて分からないけど、やってみる価値は
あるかもしれない。
おそらくマラサイはジオンの流れを汲む機体だから、全く駄目という事はない筈。
そんないささか都合の良い事を考えながら、暫し考える人のポーズで固まる。
…何か、手伝える事あるかな。
ポーズを解くと、回線が繋がったままのゲルググに通信を送る。
「ニース。
見ての通りマラサイの脚はちょっとやそっとじゃ直せない」
ニースがどう診るかは分からないけど、一応俺の意見として伝えておく。
「だからマラサイにゲルググJの脚を付ける事ができれば、と思うんだが…」
その際に気になるのは、どうやって移動するか。
「で、そうするとなるとあの基地まで行かなきゃならないんだけど……ゲルググ
だけできついようなら、俺も運ぶくらいなら手伝うよ」
まあ…一言で手伝うと言ってしまうと簡単に聞こえるけど。
基本的に一回り小型のシャッコーで、どこまで手伝えるか微妙でもある。
【行動:更にニースにお願い(0)】
【残り:4P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:14番、15番に接続中】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:先ずはマラサイの修理】
【同盟:ニース】
/
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__/ ̄ ̄\___/\_/ お
「 か
| し
| は 全 宿 ま 夏 い
/ ず 部 題 だ 休 わ
〈. よ 終 は ま み ! !
ヽ ォ わ だ は
| ! ! っ あ ,.へ _/
| て っ <
L.___ る て |
\_ /
 ̄ ̄L/`! /⌒ヽ_/
,. --── l L.__
/ l/ \
/ , /、 ゝ
〈j. / /l //u\ 、i、
`7 / /∠ィ{ハ>-<lヽ |l |
lイ 〃/7⌒ヽ u 。 ` jr'Y
l ,-レi、u °.::.::::、_,.::(^V
. |l t| | ゙`二´ , - 、 l |
l トl、ヽ(  ̄ ̄ ノ,ノ ノー- 、
//「:::ゝ ヽー------イi、 ヽ
/ ,.'::/ /ヽ 二´ノVi| /`:::.‐..___,ノ
| V ,ィi| |iレ'Tヽ:__/
ひぎっ!. \ ビクビクッ /媚 潜入捜査
はぁはぁ \ ビクッ! / 薬
くやしいっ…!! \ ぶるぶるっ ./
\ /電撃
ん あああああっ!!! \∧∧∧∧/ 抵抗できない・・・!
ん < ク > 痴
ん こんな奴に・・・ < 予 リ > 漢
んんん―――!! < ム > 撮影
──────────< .感 ゾ >──────────
完全攻略 < ン > ド
ダ < !!! の > もみもみ ク
ン 総 /∨∨∨∨\ ン
シ 集 / FIGHT \ グチュッグチュッ ド
ン 編 /ハ pure \ ク
グ / | 極 \ レ ン
クイーン / ド 堕 \ロレロ
:... : : :/ : : :| : : : : : : : :トヽ:..ィ⌒l : ヽ\: : :.:\::ll! l!::._:: -=ァ:::.:::___:::::
:.:.:..:./:|: ! : :| : : : : :.:.:.:.:ト_:V∠:.|:.:.:.:.l:.:.:\:.::.::.:l! l!‐ _..=-‐ 二ィ /::::
/:.:.:.!l:.|:.|:.:.:.:lヽ:ヽ:.:.:.:.:.:.ヽ. lハ:.l:.:.l:.l:.:、ヽ:.::.l! ‐ ´_..-  ̄/イ└ォ:::
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:.:.:.|:|:l| ∧\:ヽ:ト\:.ド\ヽー イ\ }r^'´_ィ l! ー' r=‐ 二イ=、j∠ィ:::
ヽ:.:!:トV{ 仆.、ヽト\ヽ〃 ソ仆} }ハ V イ ,.-┐ イ⌒!/ /:7_,7:::
、:.\ヽト {:{{:l{:外zイ八ドイ{:l{:刈 /イヘ r:7' /r=l!`l!:.l! 〃 /__:.{(::::::
:.\ト┬トヽニ斗彳  ̄ =`ミ゙く/_ イ{:.:.`l! ハ! l! |:l! l!=‐  ̄_..ィ:::::::
/:.lレ:ベヽ ´ , ィ、__'__ ヘ、 ` /、小:ヽV! l!:.≧= ´ _ ァi::7´ }::.:::.::::::
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MG 1/16 カテジナ・ルース【7月入荷予定】
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┣┳┻┳┻━━┫ ┣┻┻╋┳━┳┫
┃ソノノ ))) /二┫ ┣'ヽ ii アヒャッ !┫
┣┻┳┻┳━━┫ ┣━┳┻╋━┻┫
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┣━┻━╋┳━┫ ┗━┻━┻━━┛
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γ'/二ヽ アヒャッ !
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≡ ノノ/⊃=0=|ニニニ>
≡ く_l_ハつ
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m9(^Д^)プギャーーーッ
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l_j_j_j と) ノ─| ノ | 二|二'' _
/ / ヽ ノ | ヤ ッ
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i⌒ヽ | | | .| | 二|二'' _
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| 二|二゛ ___
ノ | ヤ
『あれ? もう修理してくれんの?
もーちょっとカレと話してても俺は別にいいけど?』
「…あ、いやその……アルバートさんのお願いだし」
あの時と変わらない口調で、ファッツが答えてくる。
この場に及んでも変わらないファッツのそれに、思わず苦笑じみたものを浮かべて言うニース。
変な言い訳に聞こえないかどうか、気になってしまうニースだったが…。
『まぁ、さっさと修理してくれるっつんならそれに越した事無いけどね。
んじゃ、悪いけどよろしく頼むわ』
「……?」
自分の言葉の前に、再度話しかけてきたファッツの声に、僅かにかげりのような響きを感じた。
ファッツの疲れのせいかもしれないし、ただ単に気のせいかもしれない。
それでも以前に比べて格段に感覚が鋭くなっているニースには、どうしても気になってしまう部分だった。
気になっても、それ以上の事が分かるわけがない。
…ニースがファッツと会ったのは、あの町での一度だけだ。
そのニースに、ファッツの声のかげりの原因を察するのは無理というものだろう。
「うん、じゃあ、とにかく脚の状態見てみるから」
ファッツのウィンクに釣られるように、少しだけ微笑んでハッチを開ける。
そこでアルバートからの話。
『ニース。
見ての通りマラサイの脚はちょっとやそっとじゃ直せない。
だからマラサイにゲルググJの脚を付ける事ができれば、と思うんだが…』
その言葉に唸るニース。
さっき見た時は、一瞬脚がないように見えたマラサイだが、近くに寄ってみると、ちゃんと脚は付いている。
ただし、かなり傷ついてはいるが。
『で、そうするとなるとあの基地まで行かなきゃならないんだけど……ゲルググ
だけできついようなら、俺も運ぶくらいなら手伝うよ』
さらに届いた通信に、考えるニース。
「ん……ええと……と、とにかくマラサイの脚、見てみる。
運ぶかどうかは、まだ分からないけど…」
そう言って、ハリーに続いてニースも降りる。
勿論、ファッツに全面的に心を許したわけではない。
ニースの心の片隅に生まれた疑念が、それを許さない。
でも、ニースは修理をしてみることに決めた。
アルバートに言われたからだけではない。
今は、何かに没頭できるものがほしかった。
この疑念を忘れてしまえるくらいの、集中できる事がしたかったのだ。
「じゃあ、失礼します」
一言言って、ニースはマラサイの右脚を調べ始めた。
【行動:コクピットから降りる(−1)マラサイを調べる(−1)】
【残り行動値:2】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:不安】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
アッー!,
しゃぶれだぁ?コノヤロウ!てめーがしゃぶれよ,
なんだこのスレは…たまげたなぁ,
しゃぶれよ,
ンギモッヂイイッ!,
オッスオッスオッスオッス,
イサキは?と、取れたの?,
汚いメ欄だなぁ,
TDN,
野郎うなぎ責め,
TNOK,
ヴォースゲ!,
あずま寿司,
やらないか,
ガチムチ,
危険な領域,
24会館,
DB,
そして深夜、オレ一人の祭りが始まる,
おい脱がせろ!,
多田野数人,
谷岡俊一,
六尺兄貴,
すげーカッケーすね。超タイプなんで掘らしてもらっていいっすか?,
ねっとり大坊フェラ,
お前ここ初めてか?力抜けよ
お前らもよく見とけよ
くそみそテクニック
すごく・・・大きいです
そんなわけで帰り道にある公園のトイレにやってきた
腹の中がパンパンだぜ
ヒュゥ〜〜
四つん這いになれよ,
オフッ!,
HTN,
オラオラチンポチンポセイヤセイヤ,
自分、指いいっすか?,
穴が拡がりそうです,
つよぽん(和田さん),
四つん這いになれば免許を返していただけるんですね?,
ディルドゥを括約筋だけでストローク,
六尺タイマン淫乱相撲
3D濁音,
気持ちいいだろ、オラ!,
真夏の夜の淫夢,
しゃぶってよ怒ってんの?,
ちなみに君はゲイかい?違うのか?それは残念だ,
オゥ、ホットガイ!,
あの素敵な男性は誰だい?,
ついに危険な領域へと突入する。,
心にも無い事言ってくれるじゃないの ところで俺の*を見てくれ こいつをどう思う?
一転攻勢
これは夢なのか現実なのか・・・
うぉっ!いいぜ
「さてと、俺はどうするかな………」
ゲルググから降りてきた犬とニースを見ながら、誰に言うとは無しにそう呟く。
自分のマラサイなのだし、ニースの手伝いをするという選択肢もあったがそれはとりあえず却下。
適当な場所に腰掛、マラサイの足の具合を調べているニースを見ながら思案する。
―――さて、これからどうするか。
マラサイの足が残ったところで、これからどうするか。
アルバート達と一緒に行動するような気は毛頭無いし、
西の基地に行ってリトラに会おうと思っても、残念ながら道中は禁止区域として封鎖されている。
なら何をするかと聞かれると何もするような事は思いつかない。
ルールに乗っ取って殺し合いをするか。
いや、それもまたつまらない。
「何しよっかねー………」
楽しんで生きると決意はしたが、今度は楽しさが見つからない。
大きく伸びをして欠伸をし、ため息を一つ吐くと、
ファッツはつまらなそうな瞳で空を見上げた。
【行動 :思案(-1P) 残り3P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
じっくりとマラサイの脚を見て回るニース。
まだ心の小波は治まってはいなかったが、そこはやはり血筋だ。
その眼差しに、不安の色は欠片も見えない。
まずは目の届く場所を、じっくりと自分の目で見る。
外観を点検して、このまま修理しても大丈夫かどうか、考えていく。
駄目なようなら、アルバートの言ったとおり、あの基地まで運んで脚を取り替えるしかない。
「…外見は確かにひどく見える、けど…」
マラサイの周囲をくるくる歩き回りながら、つぶやくニース。
そして、少し離れて全体を眺める。
そこで、さらに腕を組んで考える。
暫く何かを考えたあと、今度はゲルググに乗り込んで、カメラで拡大して傷の様子を見る。
ニースは、下からでは分からなかった場所を、これで見ようとしているのだ。
サブカメラの映像だけに鮮明ではなかったが、ある程度までは判断できるという、ニースなりの判断である。
今度は、ゲルググをマラサイの周囲を歩かせて、じっくりと傷を見ていく。
ゲルググを降りたニースは、近くで腰掛けているファッツの所へちょこちょこと駆けていった。
「あの、脚の具合なんだけど」
そこまで言ってから、考えを整理するように少し黙る。
「多分、脚全体の交換とかは、必要ないと思うの。
何ヶ所かでケーブルが駄目になってたりしてるけど、脚を支えてる骨格自体は無事だと思うし。
…骨格が駄目だったら、脚が体を支えられなくて、折れちゃうもん」
ニースは、曲がりなりにもMSの巨体を支え続ける脚を見て、一番重要な部分は無事と判断した。
それならば、断絶したケーブルの補修と骨格の補強だけでも、それなりの機能を回復させられるはず。
いかんせんまだまだ経験の浅いニースだけに、絶対の自信を持っているわけではなかったが、以前の修理の経験は、
それなりの見る目というものを育てているようだった。
「この町にも、ちょっとした工場みたいなところくらいあると思うんだけど…。
設備と材料があれば、それなりの事はしてみせるよ」
【行動:マラサイの周囲を回る(−1)ゲルググに乗る(−1)ゲルググでマラサイを調べる(−1)
ゲルググから降りる(−1)】
【残り行動値:0】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:不安】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
保守してみる
92 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/09(月) 12:17:22 ID:S/SIsLpC
アッー!,
しゃぶれだぁ?コノヤロウ!てめーがしゃぶれよ,
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やらないか,
ガチムチ,
危険な領域,
24会館,
DB,
そして深夜、オレ一人の祭りが始まる,
おい脱がせろ!,
多田野数人,
谷岡俊一,
六尺兄貴,
すげーカッケーすね。超タイプなんで掘らしてもらっていいっすか?,
ねっとり大坊フェラ,
お前ここ初めてか?力抜けよ
お前らもよく見とけよ
くそみそテクニック
すごく・・・大きいです
そんなわけで帰り道にある公園のトイレにやってきた
腹の中がパンパンだぜ
ヒュゥ〜〜
四つん這いになれよ,
オフッ!,
HTN,
オラオラチンポチンポセイヤセイヤ,
自分、指いいっすか?,
穴が拡がりそうです,
つよぽん(和田さん),
四つん這いになれば免許を返していただけるんですね?,
ディルドゥを括約筋だけでストローク,
六尺タイマン淫乱相撲
3D濁音,
気持ちいいだろ、オラ!,
真夏の夜の淫夢,
しゃぶってよ怒ってんの?,
ちなみに君はゲイかい?違うのか?それは残念だ,
オゥ、ホットガイ!,
あの素敵な男性は誰だい?,
ついに危険な領域へと突入する。,
心にも無い事言ってくれるじゃないの ところで俺の*を見てくれ こいつをどう思う?
一転攻勢
これは夢なのか現実なのか・・・
うぉっ!いいぜ
ニースから直ぐには移動しない旨を伝えてきた。
俺にはよく分からないけど、ニースからすればまだ直しようがあるのかもしれない。
もしも修理が出来るのなら、それはそれで良い事だとは思う。
俺が言ったように基地までマラサイを運ぼうとすると、当然時間がかかる。
それはこのプログラムにおいては……特にこの現状では致命的ともいえるタイム
ロスになる。
何をするにしても、これからは時間との戦いだ。
生きるにせよ、戦うにせよ、協力するにせよ、敵対するにせよ。
そして。
俺は自分の首と心を締め付ける首輪に触れる。
脱出するにせよ、だ。
そして。
はっきり言えば、何を選択するにしても遅すぎるくらいなのだ。
要するに、それほど時は逼迫していると見て間違いはない。
考えを中断してニースの作業を眺める。
さっきはゲルググを降りて調査していたが、今はまた搭乗している。
…当然の話だけどかなり慎重だ。
ニースは、あの基地では自分の機体を修理した。
それはそれで非常に緊張を伴う作業だと思うが、たとえ失敗しても自己責任と諦め
はつく。
(まあ実際そこまで潔い人間はそうはいないが)
だけど今回は他人の機体の修理だ。
それは、その人の命を任されたと言うに等しい。
いくら時間がなくても、ニースが慎重に慎重を期したとして、それに文句は言えない。
…調査が終わったのか、ニースがゲルググを降りてきた。
その足で近くに腰掛けているファッツの傍へと走っていく。
どうやら、結果が出たのだろうか。
【行動:取りとめもない考え(0)】
【残り:4P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:14番、15番に接続中】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:先ずはマラサイの修理】
【同盟:ニース】
しばし何をするでもなく、ただ空を眺めていた。
何をするにしても、つまらない。
面白そうな事が何一つ見つからない。
こんな殺し合いの場で、何を言っているのかと思われるかもしれないが。
元々、これがこの男の性分。
性分なものだから、直せるようなものではない。
「あの、脚の具合なんだけど」
「ん?」
知らない内にニースが近くまで歩み寄っていた。
マラサイの具合がわかったから伝えにきてくれたのだろう。
「多分、脚全体の交換とかは、必要ないと思うの。
何ヶ所かでケーブルが駄目になってたりしてるけど、脚を支えてる骨格自体は無事だと思うし。
…骨格が駄目だったら、脚が体を支えられなくて、折れちゃうもん。
この町にも、ちょっとした工場みたいなところくらいあると思うんだけど…。
設備と材料があれば、それなりの事はしてみせるよ」
………なるほど、てっきり足が根本的に駄目になってるものだと思っていたが、
実際には数箇所のケーブルが駄目になっているだけだったらしい。
それほど時間もかかっていないのにそれがわかるとは―――
彼女が真剣にマラサイを直そうとしていないか、それとも整備技術に長けているのかのどちらか。
しかし、彼女の目を見る限りは真剣には取り組んでくれていたらしい。
なら―――
「そう? んじゃ、工場に行きますか。
何か悪いね、何から何まで世話かけちゃって」
―――なら、とりあえずは信じてみようか。
腰を上げ、伸びをしてからマラサイの方角へと歩みを進めていく。
気だるげに、欠伸をしながら。
【行動 :思案(-1P) マラサイに搭乗(-1P) 残り2P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
ニースの言葉に、考えるような仕草を見せるファッツ。
正直に言ってしまえば、彼女の心臓はかなり早打ちしていた。
何せ、初めて他人のMSの診断をしたのだ。
そして、その診断が合っている確証はないし、ファッツがそれを信用してくれるかどうかも分からない。
少し交渉に長けた人なら、信用しないのなら修理しないと言ってしまえばいいのだが、ニースにそのような
交渉を期待するのは間違いだろう。
その他にも、ニース自身の心の問題も多少はあるかもしれない。
言うまでもなく、まだアルマの事が引っかかっているのだ。
診断している時は感じなかったが、やはり少し落ち着くと、どうしてもそれを考えてしまう。
アルバートとアルマに、アルマとファッツに、ファッツとアルバートに何があるのか。
これも、言うまでもなく考えすぎの感があるのだが、ずっと別行動していたニースに真相が分かるわけがないし、
それをファッツやアルバートに問いただす勇気もない。
だからこそ、ニースは修理に集中する事で、それを振り切ろうと努力しているのだ。
…あまり成功していないのだが。
『そう? んじゃ、工場に行きますか。
何か悪いね、何から何まで世話かけちゃって』
ファッツが納得したように話してくる。
安心したように、ふうと息を吐くニース。
「べ、別に悪くなんかないよ。
な、何ていうかほら、困った時はお互い様って、言うでしょ?」
慌ててニースは、パタパタと手を振った。
まさか、不信感を振り切るために頑張っているとは言えない。
でも、もともと優しい気持ちも持つ少女だから、その言葉も嘘ではない。
ファッツがマラサイに乗るのを確認してから、ニースもゲルググに乗った。
ずっと外を走り回っていたハリーもあとに続く。
まずは、アルバートに話しかける。
「あの、アルバートさん。
えっと、マラサイなんだけど、ここで修理します。
それで、アルバートさんにMSを修理できるような工場、探してほしいんだけど…」
勿論自分で探すに越したことはないのだが、ゲルググのサブカメラの視界では、それは難しい
と思われた。
それに、シャッコーの方が遥かに機動力があるから、ゲルググよりも探しやすいだろうという
ニースなりの判断もあった。
次にマラサイに通信を繋げた。
「じゃあファッツさん、ゲルググでマラサイ運ぶから。
…揺れるかもしれないけど、気をつけてね」
正直、損傷したゲルググで、マラサイを運ぶのはきついかもしれない。
しかし、マラサイの自力歩行が難しい以上、ゲルググでどうにかしなければならない。
ゲルググは、残った左腕をマラサイの左脇に差し入れて、立ち上がらせようとする。
【行動:ゲルググに乗る(−1)マラサイに通信を繋げる(−1)マラサイの手助け(−1)】
【残り行動値:1】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
ニースと話していたファッツがマラサイに搭乗する。
どうやらファッツも納得したのだろうか。
当のニースもファッツが搭乗するのを見届けると、ゲルググに搭乗する。
「…よ…っと」
姿勢を直して2機を見守っていると、さっそくゲルググから通信が送られてきた。
「街で直す、か。
…まあ、素人の俺がニースの判断に口出ししても仕方ないけどさ」
ぽつりと呟いて、コンソールスティックを握る。
ニースは…まあ俺が見た限りでは、真剣にマラサイを調査していた。
その上でそういう判断を下したのだから、それはそれで尊重するべきものだろう。
「了解だよ、ニース。
俺が先行して条件に合う所を探してみる」
それだけを伝えて、俺はシャッコーを発進させた。
…街に動くものは見えない。
視界にもレーダーにも、何も見える事はない。
いや、視界やレーダーだけではない。
この限定された世界で、果たしてあと何人の生徒が生きているのだろう。
まだ殺しあっているのだろうか。
それとも助け合っているのだろうか。
何も分からないし、分かっても何か出来るわけでもない。
…それでも、知りたいという欲求は消すことは出来ない。
もしも知り得たとして、それが何になるのか。
励みになるのか。
妬みになるのか。
「……知らない方が、一番いいのかもしれないけどさ」
そして結局、その結論に辿り着く。
情報は遥かな昔からの、戦場で勝つ為の必須条件だ。
情報を制する者は、戦場を制する。
敵の戦力が判れば、こちらの出方を考える事が出来る。
敵の目的が判れば、それを逆手に取ることが出来るし、こちらの弱点を補強する事も
出来る。
敵の進路が判れば、より分厚い防衛線を張る事が出来るし、やり方によっては奇襲を
仕掛ける事も出来る。
…情報は使い方を間違えなければ、どんな軍隊よりも役に立つ。
逆を言えば、使い方を間違えると、情報はどんな軍隊よりも恐ろしい敵になるのだ。
(続く)
果たして情報を得たとて、それが合っているかどうかなんて判らない。
万が一間違えた情報を信じたら、それは俺の死に繋がりかねない。
そして…俺はこの組織を万に一つも信用していない。
それなら信じられない奴らからの情報よりは、俺自身の目で見た情報の方が視野は
狭くてもまだ信用できる。
そんな考えを巡らせながら、死んだ街の中を歩いていた。
その街に眠るように存在した工場。
屋根の高さからして、おそらくMSの整備も出来る筈だ。
「ニース。
MSの整備が出来そうな工場を見つけた。
そこからさほど離れてないから、多分見つけ難いという事はないだろう」
ニースに報告を送り、一息つく。
…何か、手伝いに行った方がいいかな…。
【行動:工場を探す(-1)】
【残り:3P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:14番、15番に接続中】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:先ずはマラサイの修理】
【同盟:ニース】
キラ専用グランドムラサメ改
最強の称号を持つキラ専用ムラサメ改に最強最後最大の改造を施した全く新しいMS
キラ専用ムラサメ改の倍の予算を懸けロゴス、ブルーコスモス、オーブ、ザフト、地球連合が
全勢力をかけて極秘裏に共同開発した究極のムラサメ
全長3580m
体重200t
・キラ専用ムラサメ改の出力に耐えられなくなったPCが突然変異を起こし
一時完全に機能停止したのだが、その3ヵ月後凄まじい閃光と爆音
(証言者によると何かの巨大な獣が咆哮してるようにも聞こえたらしい・・・)
と共に凄まじいエネルギー反応が確認された。これを科学者達が徹底的に研究した所
PCが自己防衛本能により融合進化したGPC2(グランドパーフェクトクリスタル2)と判明した。
ちなみにキラ専用グランドムラサメ改のグランドはこのGPC2から来ている。
従来のPCの軽く4倍のエネルギー供給が可能となり、
このGPC2があれば地球の電力が150年持つ
速度も光という概念すら超越したスピードで時間を超えることも過去に戻ることも無い
・さらにBHSMR(バーストハイスピードマルチロックオン)により一度に数1000機の
ロックオンが可能となった。厳密に言うと0・001秒に100機ずつ攻撃破壊していくのだが
キラ専用グランドムラサメ改が早すぎて相手が全く補足できないから、一度という共通解釈になった
・そしてOSにはSEEDが弾けた本気のキラを登録しているため動きに無駄が無く
戦術、戦闘レベルを考察しても事実上無敵となった。
つまりキラ専用グランドムラサメ改の相手はブチギレたキラとキラ専用グランドムラサメ改のパイロット(キラ並みに強い)
を同時に相手にするという事実上危険極まりない状況となるのだ。
アムロのデータは別に普通だからいらなくなった。
ヘルバーンデスメテオシステムに進化したデスメテオシステムは
従来のデスメテオとちがい独自の意思を持ち、パイロットと会話をする事ができるようになった。
そして意思を持つことにより自分より強いと認識したMSに対しては
本来のキラ専用グランドムラサメ改の2000倍の戦闘力にあげることも可能となった。
\ U /
\ U /
/ ∧ ̄ ヽ,
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\ ノ//, {0} /¨`ヽ {0} ,ミヽ / \ /
\ / く l ヽ._.ノ ', ゝ \ < 100get! >
/ /⌒ リ `ー'′ ' ⌒\ \ / \
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( 〈 ヽ.__ \ \
ヽ._> \__)
きんもーっ☆きんもーっ☆きんもーっ☆きんもーっ☆きんもーっ☆きんもーっ☆きんもーっ☆きんもーっ☆
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保守完了♪
ありゃ?
PSPソフトのスレじゃないのか?
「じゃあファッツさん、ゲルググでマラサイ運ぶから。
…揺れるかもしれないけど、気をつけてね」
「あいよ、わーるいね本当」
ニースの言葉に手をひらひらと振りながら了承の意を示し、
マラサイを立ち上がらせる。
といっても、殆どこちらから出来る事などない。
ゲルググの手助けを最大限に受けてようやく立ち上がり、歩ける状態だ。
「格好悪いねぇ………」
苦笑し、小さなため息をつく。
まぁ、今はニース達の好意に甘えるとしよう。
マラサイは不安定ながらもどうにか立ち上がり、
一歩、一歩、ゲルググの助けを借りて進んでいく。
【行動 :マラサイを立ち上がらせる(-1P) マラサイを歩かせる(-1P) 残り2P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
キラ専用グランドムラサメ改
最強の称号を持つキラ専用ムラサメ改に最強最後最大の改造を施した全く新しいMS
キラ専用ムラサメ改の倍の予算を懸けロゴス、ブルーコスモス、オーブ、ザフト、地球連合が
全勢力をかけて極秘裏に共同開発した究極のムラサメ
全長3580m
体重200t
・キラ専用ムラサメ改の出力に耐えられなくなったPCが突然変異を起こし
一時完全に機能停止したのだが、その3ヵ月後凄まじい閃光と爆音
(証言者によると何かの巨大な獣が咆哮してるようにも聞こえたらしい・・・)
と共に凄まじいエネルギー反応が確認された。これを科学者達が徹底的に研究した所
PCが自己防衛本能により融合進化したGPC2(グランドパーフェクトクリスタル2)と判明した。
ちなみにキラ専用グランドムラサメ改のグランドはこのGPC2から来ている。
従来のPCの軽く4倍のエネルギー供給が可能となり、
このGPC2があれば地球の電力が150年持つ
速度も光という概念すら超越したスピードで時間を超えることも過去に戻ることも無い
・さらにBHSMR(バーストハイスピードマルチロックオン)により一度に数1000機の
ロックオンが可能となった。厳密に言うと0・001秒に100機ずつ攻撃破壊していくのだが
キラ専用グランドムラサメ改が早すぎて相手が全く補足できないから、一度という共通解釈になった
・そしてOSにはSEEDが弾けた本気のキラを登録しているため動きに無駄が無く
戦術、戦闘レベルを考察しても事実上無敵となった。
つまりキラ専用グランドムラサメ改の相手はブチギレたキラとキラ専用グランドムラサメ改のパイロット(キラ並みに強い)
を同時に相手にするという事実上危険極まりない状況となるのだ。
アムロのデータは別に普通だからいらなくなった。
ヘルバーンデスメテオシステムに進化したデスメテオシステムは
従来のデスメテオとちがい独自の意思を持ち、パイロットと会話をする事ができるようになった。
そして意思を持つことにより自分より強いと認識したMSに対しては
本来のキラ専用グランドムラサメ改の2000倍の戦闘力にあげることも可能となった。
じっくりとマラサイの脚を見て回るニース。
まだ心の小波は治まってはいなかったが、そこはやはり血筋だ。
その眼差しに、不安の色は欠片も見えない。
まずは目の届く場所を、じっくりと自分の目で見る。
外観を点検して、このまま修理しても大丈夫かどうか、考えていく。
駄目なようなら、アルバートの言ったとおり、あの基地まで運んで脚を取り替えるしかない。
「…外見は確かにひどく見える、けど…」
マラサイの周囲をくるくる歩き回りながら、つぶやくニース。
そして、少し離れて全体を眺める。
そこで、さらに腕を組んで考える。
暫く何かを考えたあと、今度はゲルググに乗り込んで、カメラで拡大して傷の様子を見る。
ニースは、下からでは分からなかった場所を、これで見ようとしているのだ。
サブカメラの映像だけに鮮明ではなかったが、ある程度までは判断できるという、ニースなりの判断である。
今度は、ゲルググをマラサイの周囲を歩かせて、じっくりと傷を見ていく。
ゲルググを降りたニースは、近くで腰掛けているファッツの所へちょこちょこと駆けていった。
「あの、脚の具合なんだけど」
そこまで言ってから、考えを整理するように少し黙る。
「多分、脚全体の交換とかは、必要ないと思うの。
何ヶ所かでケーブルが駄目になってたりしてるけど、脚を支えてる骨格自体は無事だと思うし。
…骨格が駄目だったら、脚が体を支えられなくて、折れちゃうもん」
ニースは、曲がりなりにもMSの巨体を支え続ける脚を見て、一番重要な部分は無事と判断した。
それならば、断絶したケーブルの補修と骨格の補強だけでも、それなりの機能を回復させられるはず。
いかんせんまだまだ経験の浅いニースだけに、絶対の自信を持っているわけではなかったが、以前の修理の経験は、
それなりの見る目というものを育てているようだった。
「この町にも、ちょっとした工場みたいなところくらいあると思うんだけど…。
設備と材料があれば、それなりの事はしてみせるよ」
【行動:マラサイの周囲を回る(−1)ゲルググに乗る(−1)ゲルググでマラサイを調べる(−1)
ゲルググから降りる(−1)】
【残り行動値:0】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:不安】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
勝利を確信した彼は、指をかけた引き金を引こうとした。
シャッコーをぎりぎりまで引きつけた上での射撃。
武器の性能は勿論、引き金を引くタイミングも最高だった。
ここにいるのがガズRとシャッコーだけだったなら、結果は彼の脳裏に浮かんだものを再現したかもしれない。
だが…死んでいると思われていたνガンダムは、まだ死んではいなかった。
引き金が引かれるその瞬間。
脳の指令を彼の指が実行しようとした瞬間。
モニターの映像が回転して、シャッコーの姿が消えた。
「なっ…!あ、ぐうっ!!」
そして。
彼の美しい顔が驚愕に歪み、その衝撃から立ち直る間もなく、コクピットは激しい振動に襲われた。
何が起こったかなど、すぐに分かるはずもない。
シャッコーの映らなくなったモニターには、的外れな方向に発射されたビームキャノンが直撃したビルが
崩壊する様子が映されている。
その様子をまるで他人事のように見つめながら、ガズRの状況を確かめた。
コンパネに示された被害状況は、まさに絶望的だった。
ガズRはシャッコーのビームサーベルによって、胴体を貫かれていた。
被害位置から判断すると、どうやらνガンダムごと貫かれているらしい。
両こぶしをコンパネを思い切り叩きつける。
血が流れるくらいに唇を噛み締める。
こうなった原因は、もう理解している。
νガンダムがもう動かないものと決めつけた、彼自身の油断だ。
アルマはアルバートを救う為に出来ることを、彼女にしか出来ないことをやっただけ。
その意図と可能性を想定せず、そしてそれを可能としたアルマの執念を見抜けなかった彼の落ち度なのだ。
彼がνガンダムの機体を利用しようと決断した時、この結末は決まっていたのかもしれない。
しかしあの状況を考えればその決断は無理のないものだった。
その意味で考えれば、大破した機体を動かしたアルマの執念を褒めるべきなのだろうか。
コクピットに火花が走る。
そろそろ限界らしい。
1回息を吐くと髪をかき上げ、目を閉じた。
生きていたいと思う。
死にたくないと思う。
それは彼独特の思いなどではなく、人間として当然の感情。
でも、どんなに願っても叶わない思いもある。
それは彼自身が身をもって知ってきた事でもある。
そしてそれを知る彼の表情は、これまでの険しさが消えてどこか安らかでもあった。
「悔いはあるけど……それを言ったらきりがない、か」
その言葉が終わらないうちに、コクピットの火花が大きくなる。
機体の各所で小さな爆発が起き、それがコクピットの一部を吹き飛ばした。
身体に鋭い痛みと熱さを感じた彼は無言で目を閉じ……。
その瞼の裏に何かの映像が浮かんできた。
108 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/22(日) 10:57:47 ID:zNJuiQTs
俺は、結局ここに何をしに来たんだろう。
アルマを助ける事も出来ず、逆にアルマに命を助けられた。
…いやそれどころか、アルマに止めを刺したのは…俺、という事になる。
あのまま何もしなくても、νガンダムは爆発した。
だけど、それを言い訳にしようとしたところで、俺のやった事が消えるわけでもない。
……俺があの時、他に出来た事はあったのか。
…あそこで攻撃しなければ、ガズアルが行動の自由を取り戻してしまう。
いや、俺の軽率な攻撃がなければ、アルマがνガンダムを盾にしようとはしなかった筈。
だからこそ、あそこでは余計に慎重な行動が必要だったのではないか。
でも、慎重になりすぎるとガズアルが行動の自由を………。
「ああくそ!
堂々巡りじゃないか!」
髪をがしがしと掻き天を仰ぐ。
何をどう考えたって、もう何も戻ってはこない。
何をどう考えようと、俺は言い訳の理由を探しているだけにしか見えない。
…俺は…軍人だ。
物事を常に現実的に捉えなければ、戦場では生き残れない。
感傷を持ち込むのは後でも出来る。
今してはいけないのは、感傷を引きずる事。
生きているから…これからも生きれる可能性があるから、尚更今は現実的でなければ
いけない。
俺は未だ心のうちで渦巻く様々な思いを、半ば無理矢理抑え込んだ。
そしてコクピットを改めて見直して……通信機が点滅している事に気づいた。
通信先は、ゲルググ。
ニースが、戻ってきた。
しかも、目に見えるほどに近くにいる。
今の今までそれに気づかなかったのは、やはり俺の呆然としていた時間が長かったか
らだろうか。
モニター越しにゲルググを見て、俺は一瞬息を呑んだ。
ゲルググは、別れる前の原型を留めていなかった。
頭部がない。
左腕もない。
機体の各所の損傷も、目に見えて増えている。
それはニースという少女が、想像できないほどの激戦を戦ってきた証。
通信回線を繋ぐ。
モニターに見慣れた少女の顔が映る。
その顔が憔悴しているように見えるのは、俺の気のせいなんかじゃないだろう。
だからこそ。
約束通り戻ってきてくれたニースに、何か声をかけてやりたい。
…俺は、笑えるだろうか。
アルマをあんな事で失って、それでもニースに笑ってやれるだろうか。
…違う。
笑えるか、ではない。
笑ってやらなければいけないんだ。
ニースの苦労に、努力に、健闘に報いてやれるのは俺だけなのだから。
未だ抑えきれない激情を面に出さないよう、俺は何とか微笑んだ。
「おかえり、ニース」
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./ ヽ / ヽ
l ,,・3,,-ω-,, l <チュ
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./ ヽ / ヽ
l ,,・3,,ω-,, l <チューー
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l ,,・3,,ω-, l <チューーー
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l ,,・3,,-,, l <ズチュッ
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l -ω- l<ゲプッ
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、ゞヾ'""''ソ;μ,
ヽヾ ・ω・ 彡 ブワッ ┫
ミ ミ 彡┫
彡 ミ
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『あいよ、わーるいね本当』
返事が返ってくると同時に、マラサイのモノアイが光った。
マラサイも動く左脚で踏ん張っているのか、だんだんとだんだんと、機体が立ち上がっていく。
ニースもゲルググを踏ん張らせ、何とか支えようと試みる。
その努力が実を結んだのか、ゲルググは辛うじてマラサイを支える事に成功した。
姿勢は安定はしていないが、すぐに崩れるほど不安定でもない。
「気にしなくていいよ。
あたしは、あたしにできる事をしたいだけから」
姿勢を確認してからファッツに返事をして、ゲルググをそっと踏み出させる。
それに合わせるように、マラサイも踏み出してくる。
人間同士が支えるように上手くは歩けないが、それでも、倒れずに歩き出せた事はニースを安心させた。
レーダーには、動くMSの反応がある。
言うまでもなく、修理する場所を探すシャッコーだ。
それを目標にして、ゲルググは1歩1歩歩いていった。
その最中、ファッツの独り言が聞こえた。
『格好悪いねぇ………』
「別に、格好悪くたっていいじゃない」
反射的に、ニースはその独り言に答えていた。
「格好悪くたって、生きてるんだもん。
死んだら、そうやって溜息つく事もできなくなるんだよ?
…あたしなんか、人に言えないくらい格好悪いとこばかり、だったし…」
それは、ニース自身が経験してきた事。
プログラムが始まった時、何も知らなかった、何もできなかったニース。
不安で仕方なくて泣いて、震えて、叫んだ。
キリトとの戦いでは、恐怖のあまり失禁もしたし、嘔吐もした。
およそ考えられる限りの醜態を晒しても、それでもニースは生きてきた。
アルバートという支えがあったから。
レベッカという目標があったから。
「でもさ、でもあたし、一応目標とかあったから、格好悪いのも耐えられたよ?」
…ファッツさんは、何か目標とか、何かないの?
あればさ、そんな格好悪さなんて、きっと忘れちゃうよ」
機体の姿勢に注意しながら、ファッツに話しかける。
ニースの経験がファッツに通じるかどうかは分からないが、でもやはり、話さずにはおけなかった。
【行動:マラサイを立たせる(−1)移動開始(−1)姿勢維持(−1)ファッツと会話(0)】
【残り行動値:1】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
気を取り直して保守。
『あいよ、わーるいね本当』
返事が返ってくると同時に、マラサイのモノアイが光った。
マラサイも動く左脚で踏ん張っているのか、だんだんとだんだんと、機体が立ち上がっていく。
ニースもゲルググを踏ん張らせ、何とか支えようと試みる。
その努力が実を結んだのか、ゲルググは辛うじてマラサイを支える事に成功した。
姿勢は安定はしていないが、すぐに崩れるほど不安定でもない。
「気にしなくていいよ。
あたしは、あたしにできる事をしたいだけから」
姿勢を確認してからファッツに返事をして、ゲルググをそっと踏み出させる。
それに合わせるように、マラサイも踏み出してくる。
人間同士が支えるように上手くは歩けないが、それでも、倒れずに歩き出せた事はニースを安心させた。
レーダーには、動くMSの反応がある。
言うまでもなく、修理する場所を探すシャッコーだ。
それを目標にして、ゲルググは1歩1歩歩いていった。
その最中、ファッツの独り言が聞こえた。
『格好悪いねぇ………』
「別に、格好悪くたっていいじゃない」
反射的に、ニースはその独り言に答えていた。
「格好悪くたって、生きてるんだもん。
死んだら、そうやって溜息つく事もできなくなるんだよ?
…あたしなんか、人に言えないくらい格好悪いとこばかり、だったし…」
それは、ニース自身が経験してきた事。
プログラムが始まった時、何も知らなかった、何もできなかったニース。
不安で仕方なくて泣いて、震えて、叫んだ。
キリトとの戦いでは、恐怖のあまり失禁もしたし、嘔吐もした。
およそ考えられる限りの醜態を晒しても、それでもニースは生きてきた。
アルバートという支えがあったから。
レベッカという目標があったから。
「でもさ、でもあたし、一応目標とかあったから、格好悪いのも耐えられたよ?」
…ファッツさんは、何か目標とか、何かないの?
あればさ、そんな格好悪さなんて、きっと忘れちゃうよ」
機体の姿勢に注意しながら、ファッツに話しかける。
ニースの経験がファッツに通じるかどうかは分からないが、でもやはり、話さずにはおけなかった。
15 名前: ミヒャエル@代理 [sage] 投稿日: 2006/08/26(土) 12:34:43 ID:???
【行動:再び攻撃をかわす(−1)ジャンプ(−1)ビームキャノン発射(−1)】
【残り :1P】
【位置:N−14】
【機体:ガズR:右肩から先完全に消失、首稼動不能
モニターに障害、胸部装甲破損、全身に多数のへこみ、右脚装甲一部融解】
【人物状況:小指に怪我、腹部に怪我(応急処置済み)】
【精神状態:ハイテンション】
【通信状況:アルマ、ファッツ、アルバート】
【武装:ビームキャノン兼ビームサーベル×2】
【所持:ディパック(水2L×2、コッペパン×2)、鉢巻、周辺の詳細な地図(フォルダ)
地形データディスク、包帯5本、消毒液、抗生物質、基地の地図
拳銃の弾倉(12発×2)、サブマシンガン(4マガジン)、参加者データ、声色変換機】
【携帯:首輪、腕時計、拳銃(10発)、ホルモン剤】
【方針:脱出のために、アルマを倒す】
【同盟:―】
腰を仰向けにねじると 橋の様に反り
右の手は愚息に添えて おかずはアイナに
「亞位茄撫立事 参る」
「あいなぶりっじ?」
「宇宙(そら)を隔てた寺園国の・・・」
部屋の外には 妹が待機している
「射精せませぬ あのような握りでは」
「変態か・・・
愚かな・・・あのようなきつい角度では
兄者の愚息は靭帯ごと」
ヒュヒュ
愚息がうねった!
折れず曲がらずを信条とする
日本型愚息に生まれた身の上にとって この光景は・・・
そのオナニーは
射精する為のものではなく テンションを上げる為のものであった
―――お人好し。
目的地へ向けて一歩一歩歩いてゆく傷ついたマラサイの中、
ファッツ=シュヴィールは彼女の第一印象をそう感じた。
無論、彼女が腹の中で何を考えているかはわからない。
こうして会話している中、隙を伺っているのかもしれない、が―――。
その可能性は、恐らくとてつもなく低いだろうし、
何よりもそんな事を疑って生きても『楽しくない』のが事実だ。
だからというわけではないが、ファッツはニースに『お人好し』という烙印を押した。
無論、よい意味で。
しかし―――
自分の独り言に返ってきた返答を聞いて、その考えをすぐに変える。
彼女は恐らくただのお人好し―――馬鹿ではない。
その心の中には、確固たる信念を持ち合わせているのだろう。
少なくとも、自分よりよっぽど立派な信念を。
「………俺もねぇ、目標くらいは一応持ってたぜ?
ただ、そいつが俺にとっちゃ荷が重すぎただけだ。
俺の場合、そのせいで大分格好悪い事しちゃったからねぇ………」
あくまでも明るく、ニースにそう返す。
無論、父になろうと憧れていた―――そうなろうとしていた事実を否定するつもりはない。
ただ、それが自分の真にしたかった生き方か?と問われると疑念が残るというだけだ。
「ま、今は別の目標があるから………。
多少なりと格好悪かろうと平気かな。
………あんまり女の子にこういうトコ見せたくないんだけどね」
そう言い、画面の向こうのニースにウインクをした。
【行動 :マラサイを歩かせる(-1P) ニースと会話(-0P) 残り3P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
117 :
通常の名無しさんの3倍:2006/10/27(金) 00:14:12 ID:ZRQVv1Ph
保守
モニターに映るファッツの表情を注視する。
特に大した意味はないが、いや、少しだけ心配だったからかもしれない。
改めて考えるまでもなく、ニースの経験は、生き残りの生徒の中では格段に少ない。
MSの操縦も、人生という面においてもだ。
そんなニースが、反射的とはいえファッツに生意気な意見を言ってしまったのだ。
生意気という部分については、ニースの思い込みの感が強いが、大人の中には、ニースのような年下の子供に
意見されることを嫌う者も多いだろう。
もしかしたら怒られるかもしれない、という不安が、ニースの視線をファッツの表情に向けさせていた。
しかし、ファッツの表情も口調も、ニースのある意味子供っぽい不安を掻き消すものだった。
『………俺もねぇ、目標くらいは一応持ってたぜ?
ただ、そいつが俺にとっちゃ荷が重すぎただけだ。
俺の場合、そのせいで大分格好悪い事しちゃったからねぇ………』
あくまでも笑顔で、あくまでも明るく、そしてニースが想像したよりも素直に、ファッツは答えを返してきた。
以前と同じようにはぐらかされたら、怒られていなくても、ニースの不安は解消されなかっただろう。
普段と変わらないであろうその笑顔が、ニースをほっとさせる。
それは、あの町での印象しかなかったニースのファッツへのイメージを、多少なりとも変えるものでもあった。
『ま、今は別の目標があるから………。
多少なりと格好悪かろうと平気かな。
………あんまり女の子にこういうトコ見せたくないんだけどね』
以前の目標と、今の目標。
おそらくそれは、ニースが立ち入るものではないのだろう。
それはファッツの人生に立ち入る事にもなるし、だいたい、ニース自身が自分の目標をファッツに話してはいないのだから。
でも、ファッツにも、ニースと同じように目標がある。
その目標が、少しはファッツの支えになっている。
ニースには、それが初めて見つけた共通点みたいで嬉しかった。
だから、ファッツのウィンクに対して、ニースは自然に微笑むことができた。
「気にしなくていいよ。
正直、あたしには男の人の気持ちって、よくわかんないけどさ。
言ったでしょ、あたしも格好悪かったって。
だから、ファッツさんが格好悪くたって、あたし笑ったりしないし」
そして、ファッツの真似をして、少し不器用なウィンクを送る。
「だから変に意地張んないで、あたしにだったら見せてもいいよ?」
アルバート以外の男性に素直に微笑む事ができたのは、久し振りかもしれない。
それだけ、ニースの中のファッツの印象が変わったのだろうか?
微笑んだまま、レーダーを見直して周囲を見渡す。
すると、曲がり角の先の建物の前に、シャッコーが立っているのが見えた。
「あそこがそうみたい」
独り言のように呟くと、ニースはゲルググを建物に向かわせる。
【行動:ファッツと会話(0)工場まで移動(−1)】
【残り行動値:3】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
無言でレーダーを見ている。
…動いた。
ゆっくりだけど、ゲルググとマラサイが動いた。
これを見る限りでは、俺が移動を手伝う必要はなさそうだ。
まあ何て言うか。
移動を手伝うといっても、シャッコーで何ができたかは定かでない。
誰もが見て分かる通り、シャッコーは2機に比べて小さい。
小さいという事は、マラサイに肩を貸すとかそういった行為が難しい事を意味する。
歩幅も勿論小さく、これも2機に合わせにくい。
だからよほど上手くやらなければ、かえってシャッコーが邪魔になりかねない。
(まあ、何かトラブったような通信が入ったら行ってみるか)
とにかく2機が間違いなくこちらに向かっている以上、無理して手伝う事もないだろう。
軍隊で言うところの『焦らず急げ』ってやつだ。
確かに今はゆっくりしてられる状況ではない。
しかし物事の本筋から外れたところであたふたしていては、いざという時に何もできない。
動くべき時に素早く的確に動けるように、本筋を見間違うことのないように、今は心を
落ち着けておいた方がいいだろう。
それもまた軍人の1つの務めだ。
通信機から流れてくる、ニースとファッツの会話。
特に違和感などは感じない。
それほどに2人も打ち解けてきているのだろうか。
これからを考えると、それはそれで良い事なのだろう。
組織の奴らがどう考えるかは知らないが。
レーダーの光点がかなり間近まで迫ってきた。
位置は…。
俺が視線を向けた交差点に、大きな影が2つ見えた。
やはり俺が手伝う必要はなかったみたいだ。
その事にささやかな満足を感じながら、シャッコーの手を振った。
【行動:落ち着いて待つ(-1)】
【残り:3P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:14番、15番に接続中】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:先ずはマラサイの修理】
【同盟:ニース】
「だから変に意地張んないで、あたしにだったら見せてもいいよ?」
不器用なウインクをしながらそう返すニースを見、苦笑する。
馬鹿正直でお人好し、ついでに素直ないい子だ。
とてもこんなゲームの上で生き残れるような性格じゃない。
いの一番に誰かに利用され、捨て駒にされるなりなんなりで殺されるのがオチだろう。
しかし、それ故に今でも彼女は生きているのかもしれない。
感情論などは余り信用するクチではないが、
しかし、それでもどこか信用させたくなるようなものを彼女は持っている。
簡単な甘い口車などに乗せられる程、自分も甘い人間ではない。
そんな自分を、少なからず信用させる。
少女の強さとは恐らくはその他人を惹きつけるような、そういった魅力なのだろう。
故に―――
「ま、機会がありゃお願いするわ」
そう返した。
と、ここまででニースの観察というか分析というか、
とにかくそういったものを終わらせておく。
ふと気づけばすぐそこにはシャッコーが見えたからだ。
ひらひらと手を振るシャッコーを見て、再び苦笑を漏らしつつ、
ファッツの乗るマラサイはゲルググに連れられ、工場の敷地内へと足を踏み入れた。
【行動 :マラサイを歩かせる(-1P) ニースと会話(-0P) 残り3P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
122 :
age:2006/11/04(土) 22:55:10 ID:???
age
シャッコーも、ゲルググとマラサイに気づいたのか手を振ってくる。
モニターのアルバートにニコリと笑顔を返すと、更に1歩1歩慎重に歩みを進める。
少し視線をずらして、シャッコーの後ろの建物を見た。
外から見た感じでは、いかにも工場、といったふうな無骨な造り。
勿論、ニースがそれを嫌がるわけがない。
もともと工場なんて、十中八九は無骨である意味汚れているものだし、ニースの父が経営していた工場も
似たようなものだったから、彼女にとっては親しみのある部類に含まれるものだった。
シャッコーの横を通り、工場の中に入る。
そこには、簡易的ではいるが2、3機が停められそうなMSデッキがあった。
天井もそこそこ高く、クレーンも付いているところからしても、それなりの整備もしていた工場なのだろう。
「…と、じろじろ見てる場合じゃないよね」
ニースは、マラサイを手近なデッキに連れていって、ハンガーに固定した。
これで、とりあえず作業ができる体勢にはなった。
「はいオーケーだよ、ファッツさん。
あたし材料探してくるから、適当に休んでて?」
そう言うが早いか、ニースはゲルググから降りて倉庫を探し始めた。
こういう場合、アルバートやファッツに手伝ってもらった方が効率が良いに決まっているのだが、ニースは
これは自分の仕事と決めているらしい。
心の疑念を忘れたいという気持ちもあるが、彼女なりの職人意識も芽生えてきたのかもしれない。
【行動:工場に入る(−1)ハンガーに移動(−1)ゲルググから降りる(−1)倉庫探し(−1)】
【残り行動値:0】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
笑顔を返してきたニースが、そのままマラサイを支えてゲルググを工場に入れる。
「……………」
その様を見て、俺は無言で頷く。
頭部と片腕のないゲルググで、片脚の動かないマラサイを支えてここまで辿り着いた。
マラサイの機体を支え自機のバランスもとりつつ、尚且つ視界の狭い状況で歩いてき
たのだ。
そこにニースの成長を感じ取るのは、さして難しい事ではない。
こちらに向けた笑顔に、ある種の達成感のようなものも感じたのは気のせいではない
だろう。
さて。
俺はどうするべきか。
ニースはマラサイをハンガーに固定している。
これから修理をするんだろうけど、正直俺が手伝える事はあまりない。
いやまあ何か探すくらいはできる思うけど、俺は基本的に修理とかの知識が足りないか
ら、ニースに余計な面倒をかけるかもしれない。
であれば…。
「えーと、ファッツさん」
まだマラサイにいるファッツに通信を送る。
正直こういう事をするのは、誰が見てもおかしく映るかもしれないけど…。
余計なお世話かもしれないけど、聞いておいてもいいかもしれない。
「見たところマラサイにはあまり武装が残ってないみたいですし、もしよければ調達して
きましょうか?」
改めて言うけど、ファッツは味方ではない。
こういう状況でなければ、むしろ殺しあう間柄の筈だった。
そして、マラサイの脚が修理できた時、再びその関係に戻る可能性は低くないと思う。
その人間の為に武器を探してくるのは、普通に考えればやっぱりおかしく映る。
少し苦笑した。
やっぱり俺に流れる父さんの血が、そうさせてくれないんだろうか。
それともレイモンドという名前がそうさせてくれないんだろうか。
どちらにしろ、俺の中を占める父さんの気質はかなりの割合らしい。
でもそれは、俺にとって凄く誇るべき事だ。
憧れであり目標でもある人に、少しでも近づけていると思える感覚。
この行動がどのような結末をもたらすとしても、今この瞬間の気持ちを持ち続ける限り、
決して後悔しないと信じれる。
【行動:ファッツに提案(0)】
【残り:4P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:14番、15番に接続中】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:先ずはマラサイの修理】
【同盟:ニース】
「はいオーケーだよ、ファッツさん。
あたし材料探してくるから、適当に休んでて?」
そう言って素早くゲルググから降り、修理の準備をはじめるニース。
休んでてと言われても手伝うのが道理なのだろうが、
ここは素直に彼女の言う事を聞いておこう。
さて、そうすると何をするか………。
考えていた矢先、アルバートから更に通信が入る。
それに対し、
「んじゃ頼むわ」
とだけ返信をした。
揃いも揃って、彼らは人がいいらしい。
無論、これが罠だという可能性もあるが、その時はその時。
とりあえずこの場は彼らに任せよう、とファッツは決めたのだ。
しかし、そうするといよいよもってファッツのする事が無くなった。
マラサイから降り、適当な場所に座り込んで欠伸を一つ。
何をするでもなく、ただ漫然とそこから見える景色を見ていた。
【行動 :マラサイから降りる(-1P) ニースと会話(-0P) 残り3P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
ファッツから了解の意を示す返答があった。
であれば俺が躊躇する理由はどこにもない。
早速シャッコーを歩き出させようとして…ふと後ろを振り向く。
見えるのはマラサイから降りようとしているファッツと、何か忙しそうに動いているニース。
「…頑張れ、ニース」
わざわざ外部マイクで言うのも恥ずかしいから、呟く程度に話した。
ニースとはあの街以来ろくに話してない。
周囲の状況が許さなかった事もあるけど、少し寂しい気がするのも事実。
それは今も似たようなもので、まだゆっくり話す時間は取れそうにない。
まあ今はこうして、ニースの成長が少しでも見れた事を良しとしようかとも思う。
あの街での事を知る俺からすれば、それはとても好ましいものだった。
「…マラサイを直す事ができたら、また頭撫でてやるかな」
とりあえず南に向けて歩き出す。
武器を見つけると言っても、闇雲に探すわけじゃない。
一応のれっきとした目星というものはついているのだ。
以前組織がマップの各所に落としたコンテナが、まだ何箇所か残っている筈。
ニースが開けたやつには何故か犬が入ってたが、基本的に武器を支給する物である事はほぼ確実だ。
であれば、それを最大限に活用する。
運次第だけど、当てもなく探し回るよりはよっぽどいいだろう。
マップを開いて、コンテナの場所を確認。
…一番近いのは…L-18にあるやつだ。
「こういう時シャッコーは便利だね」
マップを閉じて、ちょっと自慢げに独り言。
そしてシャッコーの左腕を上に向けて、ビームローターを展開した。
ゆっくりと、でも確実に上昇するシャッコーの機体。
その軽快な音は、少なくともビームローターが調子を維持している事を示している。
「うん、悪くないな。
…シャッコーも俺も」
シャッコーはコンテナを目指して南に向かう。
【行動:マップ確認(-1)ビームローター展開(-1)N-16に移動(-2)】
【残り:0P】
【位置:N-16】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:14番、15番に接続中】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:武器調達】
【同盟:ニース】
とたとたと工場内を走り回るニース。
いつの間にか、その後を面白そうに追いかけていくハリー。
「ああもう、ハリーは向こうで待ってて?」
ニースは言って聞かせようとするが、ハリーは聞くつもりはないらしい。
事情が事情とはいえ、ハリーもずっと狭いコクピットにじっとしていたのだ。
こうして、外に出たときにはしゃぎたくなるのは、仕方ないのかもしれない。
だから、ニースもあえて強くは言わず、邪魔にならない限りはハリーの好きにさせるつもりだった。
思えば、ニースはハリーに随分と助けられている。
孤独が当たり前のコクピットで、ハリーが横にいるだけで、どれだけニースの心の安らぎになったろう。
冷たく無機質なコクピットで、温かな毛並みから感じる生命のぬくもり。
ニース自身が気づかなくても、それはアルバートの笑顔と同じくらいの支えになっているに違いない。
倉庫の中。
そこには、修理や整備に必要な物が置いてある。
様々な機具、様々な工具、様々な材料。
その中には勿論、ニースの目的のケーブルもあった。
各種のケーブルの中から、ニースは1つ選んで持ってくる。
持ってくると言っても、ケーブル自体は重いため、転がすという表現の方が合っている。
マラサイの脚に使用されているケーブルの太さは分からないが、最低限細くなければいい。
当然理想は同じ太さのケーブルなのだが、そうそう同じ物があるとは限らない。
…と思っていたニースだが。
「偶然ってあるもんだね〜」
今度はケーブルカッターを移動させながら、感心したように呟くニース。
ケーブルの太さは、偶然にも同じものだった。
これならば、ケーブル同士の接続も比較的容易に行える。
その前に、まずは接続するケーブルを判別しなければならないが。
それには、やはり一応、ファッツに断っておかなければいけない事がある。
「あの、ファッツさん?」
向こうに座っている、ファッツに話しかける。
「少しだけ、コクピットに入っていいかな?
ケーブル繋げるのに、マニュアルを参考にしたいの」
以前ゲルググの手首の修理をした時、コクピットにあった整備マニュアルがかなり役に立った。
ニースは、同じようなものが、マラサイにもあるのではないかと思ったのだった。
【行動:倉庫に移動(−1)ケーブルを見つける(−1)ケーブル移動(−1)カッター移動(−1)】
【残り行動値:0】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
適当な場所に腰掛けたまま、走り回るニースを見る。
いや、正確にはニースだけではない。
その後ろにつき、駆け回っている犬。
外に出れて嬉しそうにしているハスキー犬を目を細めて見ている。
遠く昔、まだファッツが幼かった頃。
広大な大地を駆け回っていた時、いつも傍にはヒトとは違う動物がいた。
自然と共に時を過ごし、暮らすその生活。
遠く懐かしいその光景を思い出し、少々感慨に耽っていた。
「あの、ファッツさん?」
「んぁ?」
少々呆けていた故に、間の抜けた声を出す。
慌てて口に手をあて、咳を二度三度して声をかけてきた少女に視線を向ける。
「少しだけ、コクピットに入っていいかな?
ケーブル繋げるのに、マニュアルを参考にしたいの」
「あー、オッケオッケ、勝手に入っちゃって。
別に見られて困るもんなんて置いちゃないからね」
右手でOKのサインを作り、ニースにそう伝える。
ロクに読んじゃないが、確かにコクピットの中にマニュアルがあったはずだ。
それを見た方が効率がいいなら、別に断る事はない。
【行動 :ニースと会話(-0P) 残り4P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
湖の上をシャッコーが飛ぶ。
ビームローターの飛行性能は未だによく分からないけど、戦闘機のようには飛べない
事くらいは理解している。
スピードは、ちょっとしたヘリコプターみたいなものだろうか。
遊覧飛行と間違えてしまいそうな感じ。
遠くを眺めると、沈みゆく夕日が見える。
湖面に映るそれが湖そのものの美しさと相まって、幻想的とも言える雰囲気を醸し出
している。
…長かった一日が終わろうとしている。
アルマが死んだ。
ミヒャエルも死んだ。
2人を貫いた瞬間の感触が、まだ両手に残っている。
レベッカも、一緒に行動していたと思われるT-13という生徒もいなくなった。
ニースの手にも俺と同じような感触があるのだろうか。
その感触はニースにとって、何らかの影響をもたらしているのだろうか。
表面上は何も変わらないように見える。
でもゲルググの操縦など、所々に別れる前にはなかったような新たな面が見える。
それもまた今日という一日がもたらしたものなのか。
湖の上をシャッコーは飛ぶ。
明日もまた長い一日になるのかもしれない。
…俺は明日という一日を生き延びれるのか。
…いやそれ以前に、今日という夜を生き残れるのか。
【行動:外を眺める(0)L-18に移動(-4)】
【残り:0P】
【位置:N-16】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:14番、15番に接続中】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
【方針:武器調達】
【同盟:ニース】
【長いこと昼のままだったので、このあたりで夕方から夜へと移行しようと思います】
『あー、オッケオッケ、勝手に入っちゃって。
別に見られて困るもんなんて置いちゃないからね』
ファッツから、あっさりと承諾の返事が返ってきた。
(あたしだったら、少しは迷うとこだけど)
そんな事も思ってみたりもするが、これは男女の意識の差と、コクピットの状況の差もあるのかもしれない。
男女の意識の差は、言うまでもない。
コクピットも長くいると、女性…というかニースにとっては、言わばプライベートルームに似た感じがする。
だから、そういった場所には、あまり他人を入れたくないのも仕方ない部分もある。
コクピットの状況の差…と言っても、別にゲルググが散らかっているわけではない。
ただ、以前ニースは戦闘の中で嘔吐や失禁をしてしまっている。
年頃の少女だけに、それを感づかれるような真似はしたくないのである。
そういう意味で、あっさり承諾したファッツの気楽さみたいなものに、ニースは拍子抜けしてしまう。
少しだけ、好ましくもあるのも事実だが。
とにかく、マラサイのコクピットに入った。
さすがにハリーも上ってはこれないらしく、マラサイの周囲を走っている。
その様子に微笑みながら、ニースはそれらしいファイルをめくった。
そして、いくらかめくっていくと、目的のページが見つかった。
「…………………ふむ」
分かったような、分かっていないような声を出して更に見つめる。
そして、コクピットから降りて、脚の傷の場所に立つ。
そこから見えるケーブルの色、太さ、そしてケーブルに書かれた文字などから、
繋ぐべきケーブルを判断していく。
ある程度目星をつけた部分を、アルバートに貰ったコピー用紙に書くと、それをもってケーブルの場所に行く。
【行動:コクピットに移動(−1)マニュアルを読む(−1)コクピットから降りる(−1)書き取り(−1)】
【残り行動値:0】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
ケーブルを、カッターで切断するニース。
マニュアルを見ながら、そこで確認した数だけ切断していく。
マニュアルのおかげで、繋げる箇所と数は労せずして判明したが、問題は長さだ。
マラサイの傷口を覗いてみると、ケーブルの破損状態にも種類がある事が分かる。
繋がってはいるが、被覆が傷ついている物。
破片などで切断している物。
焼け落ちて失われている物など。
基本的には全て修復が必要になるが、困るのは失われた部分だ。
どの部分のケーブルが、どの程度失われているのか、それはマニュアルだけでは分からない。
もしそれが分かっても、失われた部分が大きいとなかなか計る事ができないため、結局は目測と勘に頼るしかない。
ニースはとりあえず余裕のある長さに切っておいて、調整しながら繋げていく事にした。
時間はかかるが、いい加減な仕事をするのは、ニース自身の好むところではない。
アルバートへの疑念を忘れるために始めた修理だったが、いつの間にかニースはその事も忘れ、自分にできる事を
しようと必死になっていた。
「圧着の道具、持って来なきゃ」
ケーブルを切断し終わり、今度は接続のための道具を集めに行く。
先程の倉庫でいくつかの道具を探し出して袋に入れ、またカートで運んでくる。
向こうには、何か暇そうにしているファッツ。
何を思ったのかは知らないが、笑顔で手を振ってみるニース。
そのニースの目に、窓から見えたのは夕日の光。
「何か…やっと夜になるんだ。
…長い一日だったような気がする」
ニースの言葉には、この長い一日への実感がこもっていた。
生きるために足掻き、その結果として沢山の死を目撃してきた。
それはこの一日に限った事ではないが、特に最近は長く感じていたのも事実だった。
道具の入った袋を持って、マラサイの脚の上に上がる。
ニースは、さっそく作業を開始するつもりだった。
【行動:ケーブル切断(−1)倉庫に移動(−1)道具を持ってくる(−1)脚の上に上がる(−1)】
【残り行動値:0】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
マップ上ではここにコンテナがある筈。
夕闇が落ちていく中、俺は目を皿のようにしてコンテナを探す。
…そういえば、俺はコンテナがどういったものかよく知らない…。
いやまあ一般的なイメージは湧いているが、この組織が一筋縄でいくものを置くとも思えない。
もしかしたら、この景色にカムフラージュされてしまっているかもしれない。
塗装なんかもパッと見分からないように、塗り分けられているかもしれ……。
…って…んなわけないか。
殺し合いをさせるためにコンテナを設置して、それが見つからなかったら組織にとって
何もならない。
やはり俺が注意すべきは塗装などではなく、この視界を塞ぎつつある夜の闇という事だ。
やばい。
まだ微かに残る日の光を頼りに、俺はシャッコーで飛び回る。
このまま見つからなかったら、続きは明日、という事になりかねない。
更に少し探した頃。
俺のある意味必死の努力は何とか報われた。
目の端に僅かに見えた鈍い光に、シャッコーを急いで向かわせる。
そしてそこには、MSすら入りそうな大きな箱。
無駄に大きいような気がしないでもないけど、多分これも生徒に見つけやすいようにした
という事なのだろう。
ちなみに、コンテナには何のカムフラージュもしていなかった。
コンテナの中。
それを開けた俺の目に飛び込んできたのは、力強ささえ感じさせる鋼の筒。
バズーカ……それと弾薬。
あと…これは何だ?
飛び道具のように見えない事もないが…。
まあコンテナに入っているんだから、何らかの役に立つのだろう。
それらを抱えると、俺は再びシャッコーで飛び立った。
【行動:コンテナを探す(-1)コンテナを開く(-1)J-18に移動(-2)】
【残り:0P】
【位置:N-16】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【服装:革ジャンとジーンズ】
俺はコンテナの探索のあと、そのまま北に戻らずに西へと向かった。
別に街に戻りたくないわけじゃないけど、西に向かうのにはそれなりの理由もある。
プログラムが始まってからずっと、俺は戦場の東側で過ごしてきた。
出会い、戦闘、別れ…。
全ての出来事が東側で起きた。
マップの上での情報しかなかった西側。
俺はちょっとだけ西側の景色を眺めてみたかった。
…まあ夜の帳が下りようとしている今は、殆ど地形も分かったもんじゃない。
いずれはこちら側にも来るだろうから、偵察を兼ねて少し下調べしておきたかったけど、これでは無駄足になりかねない。
というか、無駄足決定的?
…いやいや西側にもコンテナは置いてあるんだから、無駄足ということはない筈。
この暗闇の中でコンテナが見つかればの話だけどさ。
「湖よりは地形が分かるとは思ったんだけどなぁ…」
思わず呟いた俺の口調は、自分でも分かるくらい元気がない。
とにかく、ここまで来た以上は何か情報を仕入れておきたいのも確かだ。
「ここは進入禁止に囲まれてるな。
あぶないあぶない」
気を取り直すと、俺は進入禁止区域を避けるように西へとシャッコーを向ける。
【行動:H-16に移動[J-18→J-17→I-17→H-17→H-16](-4)】
【残り:0P】
【位置:H-16】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【方針:コンテナ探しのついでに西側の調査】
【服装:革ジャンとジーンズ】
脚に開いた大きな穴に、道具袋を肩に掛けてから入るニース。
袋はかなり重いが、これを手放すわけにはいかない。
何か1つ落としただけで、それがどのような不具合を生じさせるか、分かったものではないからだ。
脚の中には、ニースが作業する隙間が何とかあった。
「…うーん…」
中に入ってみて初めて分かったのだが、脚の骨格部分もかなり傷ついている。
いや、傷ついているというよりは、融解していると言うべきだろうか。
それは、この傷がかなりの高熱で焼かれた事を示している。
当然、この周辺にある機器は修理不能だし、交換する術もない。
でも当初の予定通り、ゲルググJの脚を使った方が良かったかといったら、ニースにはウンとは言えない。
腕ならばまだいい。
多少サイズが違っても、接合面が何とかなれば動かす事が可能だ。
だが脚はそうはいかない。
少しサイズが違うだけで、歩く事もままならなくなる。
これが人間なら歩きやすいよう動きを工夫するのだが、MSのような機械に、そのような対応ができるわけがない。
邪魔にしかならないのなら、今ある脚を直した方がいい。
そう感じて内容を変更し、ファッツと約束した以上、成功させなければならない。
ニースの負う責任は、なにげに大きいのだ。
「あっ…た。これだこれ」
脚の中には、何本かのケーブル管があり、1本の管の中に何本かのケーブルが束になっている。
管によっては簡単な補修で済むが、高熱の直撃を受けた管などは、全てのケーブルを繋ぎ直さなければならない。
今ニースが見つけたのは、比較的傷の少ない管。
ここは高熱に焼かれた部分から一番遠く、何箇所か破片のようなもので傷が付いているだけだった。
管の穴から覗くケーブルを見て、傷ついた箇所を補修していくニース。
この作業は、意外と簡単に終わった。
【行動:脚の中に入る(−1)ケーブル管探し(−1)補修(−2)】
【残り行動値:0】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
次にニースが取り掛かったのが、焼き切れたケーブルの修復。
まだ体力のある内に、重要な部分を直してしまおうと考えたのだ。
それなら最初からやれと言われそうだが、ニース自身が結構思いつきでやっている部分がある。
と言っても、作業自体は丁寧に行っている。
要するに、ニースがまだMSの修理を試行錯誤しているのだ。
もっとスムーズに行えるようになるには、まだまだ経験が必要だろう。
その経験をこれから先積めていけるのか、それはまさしく神のみぞ知る、といったところかもしれないが。
一旦外に出て、さっき切ったケーブルと、圧着の道具を持ってくる。
「う……ん、しょっと!」
どちらもかなり重いため、ニースにはかなりの重労働だ。
ケーブル管がまるごとなくなっているため、全てのケーブルを繋がなければならない。
1人でやるには厳しいが、これもニースは覚悟の上で作業を受けたのだ。
心中はどうあれ、当然泣き言など言うつもりはない。
ポケットからマニュアルを出して、繋ぐべきケーブルを見出す。
それを見つけ出してから、切れているケーブルの被覆を剥いて心線を出して、1本ずつ圧着していく。
全ての神経をそれのみに傾け、作業の完遂を目指して手を動かしていく。
夜はまだ、長い。
【行動:脚の外に出る(−1)道具などを持ってくる(−1)ケーブル探し(−1)補修(−1)】
【残り行動値:0】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
1本、また1本とケーブルが繋がれていく。
文字にしてしまうと簡単だが、ニースの苦労は並大抵ではない。
重いケーブルを支えながら、心線を繋いでいく。
狭い空間のため、1本繋ぐのにも全力で工具を扱わなければならない。
繋いだ後には、絶縁処置。
せっかく繋いでも、ショートさせたのでは台無しになってしまう。
上が終了したら、今度は下だ。
こっちも同じように、1本1本地道にやっていくしかない。
額に汗の玉が浮き、シャツが濡れる。
シャツも油で、元のデザインが何だったのか、見分けがつかなくなっている。
ジーンズもところどころが油で変色し、牛の模様のようになった。
しかし、ニースの手は止まらない。
自分が、油に汚れていることすら気づかない。
幼いころから見てきた、父の仕事。
作業を手伝いながら感じていた、父の技術。
一生追いつけないと決めつけていた父の背中に、少しでも近づいていると実感できる瞬間。
それが、ニースから疲れという概念を取り去っていった。
また外に出て、新しいケーブルを手に取る。
中に入って長さを確かめ、大丈夫なら繋ぐし、長すぎるのなら余分な部分を切る。
少女の小さな手が進める大きな作業は、少しずつ、でも確実に実を結んでいく。
【行動:修理(−4)】
【残り行動値:0】
【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失
胸部装甲破損】
【通信状況:11番】
【人物状況:修理に集中、高揚感】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】
【同盟:アルバートさん】
【ペット:ハスキー犬のハリー】
138 :
通常の名無しさんの3倍:2006/12/10(日) 00:53:44 ID:8zkRV5Lf
ちょっと危なそうなのであげ
半年ROMれ
落ちるかどうかは最終書き込み時間で判断されるのでageは不要
少し向こうに高速道路が見える。
まだ道路は進入禁止区域になっていないから、迅速な移動ができるだろう。
気をつける事と言えば……この暗闇での転倒だな、うん。
普通ならMSが転倒するような障害物が高速道路にある訳ないけど、ことこの場では
保障なんてできない。
プログラム中に道路整備なんてするわけないし、何か戦闘などがあったら残骸や岩
などが転がっていても不思議じゃない。
まあ…この月明かりがあれば大丈夫かな。
ふと気づいて空を見ると、さっきまで隠れていた月が少し顔を出していた。
それを頼りにシャッコーを進ませる。
誰もいない高速道路。
何か、この世界に俺1人だけのような気分になった。
【行動:G-13に移動[H-16→H-15→I-15、移動ボーナスでG-13まで](-4)】
【残り:0P】 【位置:H-16】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本】
【方針:コンテナ探しのついでに西側の調査】 【服装:革ジャンとジーンズ】
141 :
管制官代理:2006/12/10(日) 13:18:31 ID:???
A B C,D E,F G,H. I ,J K L M,N O.P.Q.R S,T U V,W,X,,Y Z
01◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
02◎◎彡彡彡彡彡彡◎彡彡彡◇□□彡彡彡◎◎彡彡★彡◎◎
03彡彡彡□◎▼彡彡彡◎彡□□△□□□◎彡彡彡★◎〓△◎
04◎◎□◎△▼▼彡◎彡◎◎□△△□▼▼◎彡彡彡彡彡△◎
05○○◎△△◎▼□彡彡□□△△△◎□◎◎彡◎彡彡彡△◎ □:平野
06◎○○◎△□┣━〓◎━━┓△◎△◎◎□彡◎彡彡◎△◎ ■:森林
07◎◎◎◎◎┏┛◎彡□□□◎━━━┫□◎□彡彡彡◎△◎ △:山地
08彡彡彡彡□┃△◎彡◎◎□◎△◎△┗┓◎彡彡◎彡△△◎ ∴:砂地
09◎彡彡◎彡┃□△□彡◎◎◇△◎△□┗┓彡◎彡□□◎◎ 彡:海 川 オアシス
10×◎彡◎□┗┓◎◎□彡□◎◎△◎◎◎◎□◎□□◎○◎ ━:道路
11◎◎彡★□◎◎◎□□彡◎◎■△△◎□┣━〓━┓◎○◎ 〓:橋
12×◎彡◎★━┫□□◎彡◎□□◎◎┏━┛◎彡□┃◎◎◎ ≠:破壊された橋
13◎彡★06□◆11━┓□◎彡□△□┏┛□◎◎彡◎┣━◎◎ ▼:市街地
14×□◎□□□□◎┣◎◎〓▼14▼┛□◎彡彡◎★≡□△◎ ★:基地
15◎◎◎◎∴□◎□┃□◎彡◎▼□□彡◎◎□□★◎◎□◎ U:灯台
16×〇◎∴◎∴□□◎◎□彡彡彡◎彡◎彡□◎◎□┃◎◎◎ ≡:延焼した基地
17×〇◎∴∴∴□┏┛□◎彡◎彡彡◎彡◎□◎□┏┛□◎◎ ◆:コンテナA
18×〇◎◇∴◎∴┃◎□彡彡彡U◎◎≠□◎□□┃□□□◎ ◇:コンテナB
19◎◎∴◎◎∴∴┃◎◎彡◎彡彡◎彡彡彡◎□◎┃◎◎□◎ ◎:立入禁止区域
20×◎▼∴┏◎━┫□彡彡◎彡彡彡◎◎彡◎□┏◎◎□△◎ ×:立入禁止予定区域
21×▼◎━┛∴◎┃□彡◎□◎□□彡◎彡彡◇┃◎□△◎◎ 〇:立入不可能区域
22◎▼◎∴∴∴◎┃□□□■■◎■◎□彡□◎◎◎□◎○◎
23◎∴◎∴∴∴□┗━┓■◎◎■┏━━〓━▼▼◎◎○〇◎
24◎◎∴∴◎◎◎◎■┗━◎━━┛■◎彡□◎◎○◎○○◎
25◎∴∴△△△△□■■◎○◎■■◎■彡彡■■◎○〇◎◎
26◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
14と15は同一地点【N-14】
「結構、運いいかもね」
誰にともなく言った言葉がコクピットに響く。
俺の顔に浮かぶのは微かな笑み。
そして俺の視線の先にあるのは、例のコンテナ。
ここまで言えば俺の独り言の意味は分かると思う。
この地域に入ってすぐに、組織の設置したコンテナが見つかったのだ。
高速道路から外れて平原に入って直ぐの場所で、偶然近くを通って発見した。
こういったちょっとした出来事で、風向きも変わるかもしれない。
些細な事だけど、大事にしたい運だ。
…で、中に入っていたのは本とディスク。
本の方は…まあ言ってみれば歴史の本、なんだけど。
………木星帝国って何だよ。
ザンスカールって何者?
正直信じがたい部分も多々あるけど、この組織のやることだからもしかしたら…って事もあるか。
ディスクの方は、まあ街に戻ったら見てみるとして。
今気になるのは、この先にある基地。
レーダーには、そこにいる生徒の機体が映し出されている。
無言でフットレバーを倒し、シャッコーを進ませる。
鬼が出るか蛇が出るか。
【行動:F-13に移動(-1)コンテナを調べる(-1)D-13に移動(-2)】
【残り:0P】
【位置:H-16】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:基地の調査】
【服装:革ジャンとジーンズ】
「…お、おわっ…た…」
最後のケーブルを繋ぎ終えて、ニースはやっと手を止めた。
傷ついたケーブル、切断されたケーブルをマニュアルに従って、全て繋いだ。
「繋ぎ間違いなんて、ないと思うけど」
ここまでやって、今更間違いなんて許されるものではない。
しかし、ニースにとってこの作業は、生涯で最高の集中力を発揮した作業でもあった。
その充実感が、ニースにその心配のない事を告げている。
あとは、他の目視できない箇所で断絶していない事を祈るのみだ。
更に骨格部分の傷を、トリモチで補修していく。
本来ならこれだって、交換した方がいいに決まっているが、それを行うのは不可能だ。
それでも、できる限りの事をする。
トリモチだって、固まればMSの動きをも止める事ができる。
ちょっとしたひびくらいなら、それなりに骨格を支えられるかもしれない。
脚の穴から這い出し、改めてそこを見つめる。
さすがに、この穴は塞げない。
下手に鉄板などで塞ごうとしても、かえって動きを妨げてしまう可能性がある。
なによりも今からここを塞ぐための作業は、内部の修理を終えて緊張感から解放されたニースには、体力的に辛いかもしれない。
「一応、報告しとかなきゃ」
脚の上から下りると、ニースは向こうで座ったままのファッツに近づく。
「えと…ファッツさん?」
声が小さめになったのは、ファッツが寝ていると思ったからだろうか?
「あの、ケーブルとか繋ぎ終わったよ。
でもその、骨格固めた所がまだ固まってないから、動かすのはもうちょっと待って?」
【行動:修理(−2)脚から出る(−1)ファッツのところへ(−1)】
【残り行動値:0】【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:11番】【人物状況:修理に集中、高揚感】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン2個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】【同盟:アルバートさん】【ペット:ハスキー犬のハリー】
そっと保守
>>143 「あいよ………ホントご苦労さん」
近づいてきた、疲労困憊といった様子のニースに向かってそう言い、立ち上がる。
眠っていたように見えたところもあったかもしれないが、
少なくとも本格的な睡眠状態には入っていなかったようだ。
「ずっと作業してて疲れたろ。
アイツが戻ってくるまでゆっくり休んでっといい、ほい」
最後のほい、の部分で缶詰と缶切りを投げてよこす。
味気も何も無いものだが、腹を満たすには事足りるものだ。
ほぼ休まず作業をしていて、彼女も空腹だろう。
それに対して出来る、せめてもの労いだ。
【行動 :ニースと会話(-0P) 残り4P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
基地の滑走路に機体を休める。
ホワイトアークからは、遂に何の通信も送られてこなかった。
自分が無視されたのか。
それとも、既に誰もいないのか。
真偽を確かめに行ってもいいが、すぐに思い直して着陸した。
誰もいないのであれば無駄足になる。
誰かがいたとしても、こうして通信を無視されている状態で、好意的な
対応をしてもらえるのか自信がない。
最悪攻撃を仕掛けられたら、今の貧弱な装備ではまさに焼け石に何とやら。
夕闇の落ちた滑走路に降りて水を1口。
そして小さな笑み。
自分の現状に、思わず漏れた笑み。
そこには、何ら好意的な意味は含まれていない。
「……ここまで……とは思いたくないがな…」
そんな時耳に聞こえてきたのはMSの起動音。
そこに視線を向けると、闇を突き抜けるように見た事もないMSが姿を現した。
【行動 : 着陸-1 水を飲む-1 残2 】
【位置/場所 : D-13/滑走路 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×2) 】
【方針 : … 】
基地に入る。
遠くから見ていて既に分かっていたけど、どこにも明かりは点いてない。
でも機体の反応だけは相変わらず続いている。
それはとにもかくにも、誰かがここにいるという事。
いやまあ、機体だけが置いてある可能性もないではないけどさ。
それならそれで、先に進めばいい。
可能性があるのならそれを確かめる。
敵か味方か。
その戦力は。
進軍中か、それとも戦闘中か。
進軍中であれば、その方向は。
戦闘中であれば、その形勢は。
地道だけど、偵察は重要だ。
そして暗がりの中に垣間見える戦闘機と、その傍に佇む男…らしき人影は
まだ敵か味方かさえもようとしない。
「…俺は生徒番号11番、レイモンド……あいや、アルバート=パーシングです。
あなたの名前と、よければ目的があれば教えて下さい」
取り敢えず当たり障りのないところから話してみる。
勿論油断はしないけど。
【行動:基地に入る(-1)外部マイクで人影に話しかける(-1)】
【残り:2P】
【位置:D-13】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:基地の調査】
【服装:革ジャンとジーンズ】
目の前に現れたのは、虫と見紛うような外観のMS。
これで中身も虫ならば楽なのだが…。
その思考にまた苦笑が漏れる。
そんな考えが浮かぶこと自体、現実的とは言えない。
しかし、いつ殺されても文句を言えない状況でも体は動こうとしない。
動けないのではない。
仮にも1年戦争をこの腕1本で戦ったのだ。
己の危機に反応しない筈がない。
要するにそう言う事だ。
戦おうという気持ちが湧かない。
引き時…と言ってしまえば簡単だろうか。
このまま無為に過ごすよりは。
失望の中で自分に銃を向けて引き金を引くよりは、敵と呼べる相手に…と思ったのかもしれない。
MSから聞こえてくる、若い男の声。
初めて聞く声。
敵意らしいものはないように感じるが、それが信用に結びつくかどうかは別問題。
「…名前はジンベイだ。
ジンベイ=カザマキ。
目的は…何もないな」
ゆっくりした口調で答え、ディバックからサブマシンガンを取り出す。
「ただ、たった今目的ができた。
…お前を殺す事だ」
言いながら引き金を引く。
【行動 : 撃つ-1 残3 】
【位置/場所 : D-13/滑走路 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×2) 】
【方針 : 終わらせる 】
機体に小さな火花が連続で散る。
ジンベイと名乗った男が、マシンガンを撃ち続ける。
少し唖然とした。
まさか、マシンガンでMSを倒せるとは思ってないだろう。
ジンベイの傍には戦闘機があるけど、それに乗る様子はない。
乗っても直ぐに撃たれるからと自棄になっているのか。
いや、名前を名乗った時の口調にそんなものは感じなかった。
では何故…。
俺の脳裏に映像が浮かぶ。
それはあの時の夢の中で見た映像。
大破したギラ・ドーガの上で、迫り来る死をものともせず『俺』に向けて銃を撃ち続けた男。
アシッド。
直接体験したわけでもないのに、一際異彩を放つその映像。
この男もあのアシッドと同じような人種なのだろうか。
引き金に指をかける俺の目に映る、発射炎に照らされたジンベイの顔がアシッドと重なって…。
……違う。
俺の指が引き金を引く事はなかった。
「…俺はあなたを撃ちません」
外部マイクで語りかける。
「俺を殺すと言いながら、あなたの目には殺気が感じられません。
何の理由があるのかは知りませんが、俺はあなたの自殺を手伝いたくはありません」
…自殺と言う表現を使ったのは、何となく。
殺すと言いながらの銃撃。
でもその目にはアシッドのような殺気や、闘気は感じず。
まるで撃てと言わんばかりのそれを、俺は自殺と感じたのかもしれない。
「兵士であれば、戦士であれば、それに見合った生き方があります。
死を前提にした戦いじゃなく、生を賭けてこそ意味があると思ってます」
上手く言えたかどうか分からないけど、伝わっただろうか。
「俺は東の方の街にいます。
結構進入禁止に囲まれてますけど、戦闘機なら問題なく来れますよ」
そこまで言ってから、俺はシャッコーを発進させる。
【行動:外部マイクで話しかける(-1)G-13に移動(-3)】
【残り:0P】
【位置:G-13】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:街へ帰る】
【服装:革ジャンとジーンズ】
『あいよ………ホントご苦労さん』
どうやら寝ていなかったらしいファッツが、立ち上がって労いの言葉をかけてきた。
無理矢理起こしたわけではない事が分かり、ニースも安心して小さく笑う。
『ずっと作業してて疲れたろ。
アイツが戻ってくるまでゆっくり休んでっといい、ほい』
言葉と共に、ファッツが手にした缶詰が放り寄こされる。
慌てて両手で受け取り、次いで投げられた缶切りも受け取る。
「うん、ありがと。
じゃあ、早速これいただきますっ!
ハリー、おいで?」
ファッツが座っていた場所から、少し離れた所に腰を下ろす。
ニースの作業の間辺りを駆けずり回っていたハリーも、食事の雰囲気を察して傍に寄ってくる。
缶を開けて、中の肉を半分コッペパンに挟み、残りの半分をハリーに分け与えた。
一口食べると、疲れた身体に味がしみわたる。
暫く食事を進めながら、ちらっとファッツを見た。
さすがに何の会話もないと、ニース自身何となく決まりが悪い。
「あ、あのさ……ファッツさんは、これからどうするの?」
ニースはまず、前から気になっていた事を聞いてみた。
【行動:缶詰を受け取る(−1)座る(−1)ハリーと食事(−1)】
【残り行動値:1】【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:空腹、疲労感】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】【同盟:アルバートさん】【ペット:ハスキー犬のハリー】
リズミカルな音を立てて、銃口から弾が放たれる。
虫のような顔のMSの表面に、小さな小さな火花が舞う。
だがMSは動かない。
弾倉が空になるまで撃ち尽くした。
それでもMSは動こうとしない。
マシンガンごときに応戦するつもりはないと言う事か。
いや多分呆れているのかもしれない。
性能の半減した戦闘機のパイロット。
この世界で生きていく術を失った者は、まともに死すら得られないと言う事か。
噛み締めた奥歯が、微かに音を立てる。
MSから聞こえる、アルバートという生徒の言葉。
自殺、か。
その言い得て妙な表現に、口元が思わず緩んだ。
…実際その表現は間違えてはいない。
アルバートの攻撃を望んでいた俺の行動は、そう取られても文句は言えない。
問題は、それを察知しながら攻撃せず語った言葉だ。
声からするとアルバートは若い。
若者が紡ぎだした、戦士と言う言葉。
その言葉に、体内で何かが渦巻くのが分かる。
お前のような若造に何が分かるのか。
MSという(戦闘機に比べ)格段に安全な場所にいる人間が、何を語るのか。
いくらなんでも、いきなり闇の中から出てきた若造に説教されるほど落ちぶれてはいない。
自分のしようとした行為を忘れて、虫のMSに向けて怒声を上げ……。
しかしその言葉は、結局声になる事はなかった。
思いが言葉になるその前に、アルバートは再び闇の中へと消えていった。
【行動 : 更に撃つ-1 残3 】
【位置/場所 : D-13/滑走路 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
遠ざかっていくMSの足音。
それと反比例して、大きくなってくる何か。
それはアルバートへの怒りか。
それともアルバートの言葉への焦燥か。
「…焦り?
ははっ……何で俺が…焦らなきゃならない…?」
その独り言は、誰が聞いても迷いの響きを含んでいるように聞こえただろう。
迷い…自分の、迷い…。
戦士…の生き様……か。
振り返って、滑走路に佇む愛機を見つめる。
月明かりに鈍く映える主翼が、語りかけてくるようにも見える。
歩兵として長けているわけでも、MSパイロットとしての才能があるわけでもない。
…そんな自分の唯一無二の戦友として、共に戦ってきた翼。
聞こえる筈のないその言葉に耳を傾けるように、身体を機体に寄り掛からせた。
【行動 : 機体に身体を預ける-1 残3 】
【位置/場所 : D-13/滑走路 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
ほっしゅ
>>151 食事がはじまり、自分も適当なものをつまみはじめる。
先ほどまではそうでもなかったが、食べ始めるとどうやら体が食料を欲していたらしく、
あっという間に一人分の食料を平らげようとしていた。
「あ、あのさ……ファッツさんは、これからどうするの?」
「ん?」
目の前で同じく、犬と一緒に食事をしていたニースに問われる。
これから………どうするか。
正直言うと考えなかった事柄ではないが、今のところこれといって予定などはない。
「さぁねぇ、どうしようか………。
どっか移動するにしても今、殆どんトコが禁止区域になってて身動き取れないからなー」
川など通常の機体では進入出来ない地帯を除いて、
今いるこの場所はほぼ完璧に禁止区域に囲まれてしまっている。
「ま………とりあえずマラサイの固めたトコが直るまでには考えとくわ」
【行動 :ニースと会話(-0P) 残り4P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:アルバート・ニースに通信】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
もと来た道を戻って、高速道路まで来た。
レーダーで周囲を確認し、シートにもたれて一息つく。
さっき自分で言った事を思い返して。
「うーん……分かってもらえたのかな…」
言うまでもいなく、戦士の生き方の話の事だ。
実際それは、俺自身が納得して話してるわけじゃない。
何故なら戦士として生きたのは俺ではなく、父さんなのだから。
俺はあの夢で感じた事を口に出しただけだ。
…俺自身がそのように生きてきたんなら、もうちょっと分かりやすく言葉にできたかもしれないけど…。
口に入れた水が、緊張感から解放された喉を潤す。
そして暫く外を眺めてから、もう一回一息ついた。
「…ジンペイさん、だったっけ。
……来るのかな……」
俺は街に来いと強制はしていない。
戦士として生きろと強制しているわけでもない。
普通に考えるなら、戦闘機でMSが待つ街に来ようとは思わない。
それでも……そんな状況でも尚、戦闘機で立ち向かってくる戦士だったなら。
…俺もやはり、戦士として迎えなければいけないのか。
「ま、まあ…ちょっと挑発っぽい言い方になっちゃったかな」
自分の言葉を後悔してるわけじゃないけど、俺の言葉は、紛れもなく人の命を左右しかねないものだった。
【行動:水を飲む(-1)】
【残り:3P】
【位置:G-13】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:街へ帰る】
【服装:革ジャンとジーンズ】
保守
少し前にも、ニースは同じような質問をしたが、あの時は明確な答えはもらえなかった。
マラサイの修理が終わって、また違った答えが得られるかとニースは思っていたが。
「さぁねぇ、どうしようか………。
どっか移動するにしても今、殆どんトコが禁止区域になってて身動き取れないからなー」
食事の手を休めて質問に答えるファッツの言葉に、何となく頷くニース。
期待していた答えではないが、それに文句を言おうとは思っていない。
言われてみればそのとおりで、町の周辺は禁止区域の場所がかなり多くなっている。
思うように身動きの取れない現在、明確な答えが出ないのも当然と言えた。
それでも、そんな中でも何をするべきか、考えなければならない。
レベッカと交わした約束を、ニースは忘れてはいない。
生きるために、自ら考えなければならない。
アルバートの後ろで、守られるだけの存在になるのではなく、共に歩む存在にならなければならない。
そのために傷つき、血反吐を吐く事になろうとも、それを恐れて震えていてはその先の希望など見えてこない。
少ない可能性。
その可能性を掴むために、何をするのか?
「ま………とりあえずマラサイの固めたトコが直るまでには考えとくわ」
ファッツの答えにもう一度頷き、ニースは残りのパンを口に入れた。
それを咀嚼しながら、腕組みをして考える。
(…あたしも、もうちょっと落ち着いてから考えようかな)
空腹感は満たされたが、修理による身体と精神の疲れは、いまだ重く残っている。
とりあえず気分を変えてから考えれば、何か浮かぶのではないかとも思えた。
疲労を少しでも解消できて、なおかつ気分転換になるものと言えば。
「あたしも考えたい事あるから、シャワー浴びてくる。
修理の汚れとかも、落としておきたいし」
ニースは、立ち上がって歩き始めた。
これだけ大きな工場なら、泊まるための設備もあるはず。
そこならシャワーも設置してありそうだった。
【行動:食事の続き(−1)シャワーを探す(−1)】
【残り行動値:2】【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:疲労感】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを修理してみる】【同盟:アルバートさん】【ペット:ハスキー犬のハリー】
闇の中、愛機に体を預け続ける。
今までの人生で、1機の戦闘機でここまで戦った事があるだろうか。
ふとそんな思いがよぎる。
もっと激しい戦いだったらあった。
オデッサ。
北米。
何度も死を覚悟した。
それでも生き抜いてきた。
何故か。
それは地球連邦という組織の巨大さ故だ。
地球という戦場において、連邦の補給能力はジオンのそれを遥かに凌駕する。
戦争というものは、MSだけの戦闘で全てが決まるわけではない。
最前線という華やかな場所の裏で、軍をまともに動かすために様々な人々が働く。
例えば補給。
これがなければMSといえども戦えない。
例えば補充。
これがなければMSといえども、部隊の形を保っていられなくなる。
例えば整備。
これがなければ精密機械のMSは、短期間で稼動状態を保てなくなる。
例えば医療。
これがなければパイロットのいないMSは、ただの人形と化す。
…ざっと挙げただけもこれだけの後方支援がある。
連邦はこれに恵まれた。
豊かな人材や資源、そしてそれを背景にした生産能力。
ジオンの手の届かない所から、あらゆる戦力を送り込めた。
そしてそれは、MSだけではなく戦闘機にも言えた。
比較的安価に生産できる戦闘機は、MSよりも遥かに多数が予備として送り込める。
それは生きてさえいれば、例え機体が破壊されても直ぐに補充、出撃できる事を意味する。
そこでは、パイロットは生きてさえいれば良かった。
……………。
もう1度傷ついた愛機を見る。
補充も整備も儘ならないこの戦場で、ここまで守ってくれた愛機。
傷ついてはいてもその外観にはいささかも悲壮感は感じさせず、ただ静かに佇んでいる。
獲物を見定めるか猛獣のように、静かに息を殺しているかのように。
こいつは…まだ牙も爪も折られたわけではないのだ。
【行動 : 思考0 残4 】
【位置/場所 : D-13/滑走路 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
せっせと保守
暫く探し歩いたニースは、工場の一角にそれらしき場所を見つけた。
そこは、テレビや雑誌などが置いてある休憩室のように見える。
そこから奥へと続くドアの先にもいくつかドアがあり、そのうちの1つがシャワー室に繋がっていた。
タオルが添え付けてあるのを確認し、更衣室に入る。
「…想像よりも清潔にしてあるな〜」
興味深そうに周囲を見ながら、ニースは汗でべとつく衣服を脱ぎ、シャワー室に入る。
お湯が出るかどうか少しだけ心配だったが、コックを捻って暫くすると、温かくなりはじめた。
「ふ〜」
改めて大きく息をついて、シャワーを全身に浴びる。
身体に付いた汚れも、疲れも、お湯の流れが落としていってくれる。
何分かそうして、気持ち良さそうにシャワーを浴びていたニースは、また考えはじめた。
冷静に考えれば、ファッツが味方ではない事くらいは、ニースでも分かる。
ただアルバートは、そうは思っていないふしがある。
現に今も、ファッツの武器を探して町の外に行っている。
…敵なら、そこまではしない。
百歩譲って修理まではするとしても、武器まで探そうとは思わない。
もしかしたら、自分に向けられるかもしれない武器なのに。
「…自分に、向けられる、武器」
ニースはぽつりと呟く。
ファッツは、まだ何をするか決まっていないと言った。
という事は、決まればすぐにでも敵になるという解釈もできる。
あの光景が、またまぶたの裏に浮かぶ。
シャッコーのビームサーベルに貫かれた、νガンダムとガズアル。
損傷しているにもかかわらず、攻撃されなかったマラサイ。
そのマラサイを修理して、武器も探してやるアルバート。
…嫌な方向にしか考えが進まない。
自分の命に係わる事なのだから、一度浮かんだ想像は、そう簡単に振り切れない。
「…武器…」
シャワーの中で、また呟いた。
自分に武器が向けられる可能性があるのなら、それを防ぎ得るのもまた武器でしかない。
目には目をという単純な論理だが、戦えるようになったばかりのニースに、それ以上の方法を求める方が無理だったかもしれない。
ニースは、アルバートがνガンダムとガズアルを倒した訳を知らない。
マラサイを、修理しようとする訳も知らない。
何も知らないまま、ニースは運命の選択をする事になる。
【行動:シャワー室に移動(−1)シャワーを浴びる(−1)】
【残り行動値:2】【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:普通】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:武器を探す】【同盟:アルバートさん】【ペット:ハスキー犬のハリー】
ふと空を見る。
そこに見えるのは満天の星空と、それに包まれるように浮かぶ月。
…別に星を見るのが趣味っていうわけじゃない。
当然感傷的になってるわけでもない。
時間の経過がよく分からないから、月の動きを見てみたのだ。
星の動きはさすがに覚えてないけど、月だったらある程度は分かる。
「…えっと」
詳しい経過なんて分かるわけないけど、月の位置からして真夜中っぽい。
なるほど、道理でさっきから何となく眠たいと思った。
ただ、いくら何でもここで眠るのはよくない。
ジンペイさんの動向も分からない中で、安易な事はできない。
休むのなら当然街の中、若しくはその近くという事になる。
ここから街へは少し遠回りしなきゃならないけど、そこは考えるまでもないだろう。
【行動:月を見る(-1)移動ボーナスでI-13に移動(-1)I-11に移動(-2)】
【残り:0P】
【位置:I-11】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:街へ帰る】
【服装:革ジャンとジーンズ】
シャワーから出ても、ニースはまだ考え続けていた。
ニースは武器さえあれば、それなりに戦うことはできる。
T-13や、レベッカ相手でもあそこまでやれたのだ。
あの戦いは、ニースにとって消えようのない悲しみを残していたが、それと同時にその経験は、小さいが確かな自信にもなったのである。
だから、武器さえあればと言うニースの考えは、それほど的外れな考えでもなかった。
ただ、武器なんて望んでそうそう得られる物ではない。
しかもここは町だから、武器の類が置いてあるはずがない。
添えつけのタオルで身体を拭き、新しいTシャツとショーツに着替えた。
そして、ドアの前で待っていたらしいハリーと、再び工場に戻る。
工場の景色は何も変わっていない。
まだ、アルバートも帰ってきていないようだった。
以前のニースならがっかりするのだろうが、今のニースは、心のどこかで安心している部分が確かにあった。
しかし、ニースはその事を顧みている余裕はない。
ファッツが見える位置にちょこんと座り、ディバックを肩から下ろす。
本来ならゲルググに乗り込むのが尤も安全なのだが、ニースはあまりファッツを刺激したくなかった。
それはそれで、ニースの考えすぎの部分はある。
ゲルググに乗ったからといって、起動させないかぎりは、殆ど誰の脅威にもなりえないのだから。
それに、尤も安全ということを認識しつつもその方法を採らないのは、ニース自身が混乱しているためかもしれなかった。
【行動:着替え(−1)工場に移動(−1)適当な場所に座る(−1)】
【残り行動値:1】【位置:N-14】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:迷い】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×2、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:武器を探す】【同盟:アルバートさん】【ペット:ハスキー犬のハリー】
シャッコーが消え去った闇を睨む。
少しだけ後に浮かんだ、微かな笑み。
アルバートはあの時、戦士であれと語った。。
そしてその生き様を語った。
そう望むのであれば、それに乗ってみるのも面白いと思った。
このまま何もない絶望の中で朽ちていくよりは、その方が何百倍もましだし、何よりもそっちの方が『らしい』からだ。
コクピットに乗り込もうと手を伸ばしかけ…それ以上動かなかった。
別に臆病風に吹かれた訳ではない。
ただ現状がそぐわないという事に気づいたのだ。
天と地ほども性能差のある相手だ。
当然この闇をついて攻撃した方が、僅かではあるが対等に戦える可能性が上がる。
しかし機体の状況が状況だ。
速度の低下に、レーダーの精度も低下している。
ミノフスキー粒子のないここでは容易にレーダーで補足され、万全の備えで待ち構えられてしまう。
性能の劣る機体での戦闘では、先ず何よりも先に相手を発見しなければならないのにこれでは全く意味がない。
昼でも夜でも同じような状況になるのなら……。
やはり取れる手段は限られてくる。
その時を待つべく、滑走路の隅の建物へと向かう。
【行動 : 建物へと向かう-1 残3 】
【位置/場所 : D-13/滑走路 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
この先に川がある。
その川沿いに飛んでいけば街に辿り着く。
…そう思い再度マップを見直した俺の目が点になった。
「塞がってんじゃん…」
間抜けな、本当に間抜けな話だけど、俺が街に向かおうとしたルートは進入禁止区域
で塞がっていた。
マップを見直してみると、元来た道を帰るしかないという結論に達した。
これはもう、遠回りもいいとこだ。
「くそっ…!
迂闊にも程があるよなぁ」
自業自得だけに怒るに怒れない。
もしもここに鏡があったら、俺は今結構情けない顔をしてるだろう。
ま、まあ…くよくよしても仕方がないさ。
進入禁止区域に飛び込まないうちに気づいたのを幸運と思うべきだ。
うん、そう思おう。
とにかく俺は納得した気分になって、シャッコーを180度回転させた。
元来た道を戻るシャッコーの足取りが、何となく寂しそうに感じたのは……気のせいだ。
【行動:I-13に移動(-2)移動ボーナスでI-15に移動(-1)H-15に移動(-1)】
【残り:0P】
【位置:H-15】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:街へ帰る】【服装:革ジャンとジーンズ】
コクピットで無言を貫く。
…誰もいないから無言で当たり前だけど。
ただ孤独でいる者の常として、独り言が多めになりがちなのは仕方がない。
パイロットは孤独だ…というと若干違うかもしれない。
軍隊にいる以上、部隊があり戦友がいる。
だからここで言う孤独とは、厳密に言えばコクピットで…という事になる。
MSに限らず、パイロットにとってのコクピットは自分だけの空間になる。
国に例えれば、そこではパイロットは国民であり、政治家であり、国家元首になる。
その限られた国の中で、パイロットは全ての判断を下す。
そしてパイロットは己の下した判断の、全ての責任を負う。
成功も、失敗も、生きるも、死ぬも。
パイロットは孤独の中で決断し、孤独の中で戦う。
まあ命令とかアドバイスとかの付加要素はあるけど、それはあくまでも決断の為の判断材料でしかない。
「…なんて事軍隊で言ったら、抗命罪だとか言われるよな…」
考えてるそばから独り言が出た。
【行動:H-16に移動(-1)移動ボーナスでI-17に移動(-1)J-18に移動(-2)】
【残り:0P】
【位置:J-18】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:街へ帰る】【服装:革ジャンとジーンズ】
「…随分回り道しちゃったな」
湖が見える地点でポツリと呟いた。
…さっきまで独り言がどうとか言ってたけど、別に俺は独り言をしないとは言ってない。
と言うか、あまり無言でいるのも寂しいし。
孤独であるが故の独り言。
だけど例え気を紛らわせる為だとしても、言わないよりはよっぽど良い。
思った事はとりあえず口に出す。
漠然と思うだけよりも、言葉にした方が脳がその言葉をよく認識できる。
そこから何か新しいものが見つかる可能性だってある。
勿論これは俺個人の考えで、何か根拠があるわけでもない。
その上、今の言葉で何か新しいものが浮かぶとも思えない。
意味のない、本当に気を紛らわすためだけの独り言だったから。
改めて認識した事といえば、痛い時間のロスだけ。
それも元はといえば、俺が道を間違えたのがいけないんだけど。
「修理は…どうなったんだろ」
街への道を急ぎながら、俺は気になった事を素直に言葉にした。
【行動:ビームローターでN-18に移動(-4)】
【残り:0P】
【位置:N-18】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:街へ帰る】【服装:革ジャンとジーンズ】
保守よ
172 :
管制官代理:2007/01/29(月) 19:43:14 ID:???
>>ファッツさん
申し訳ありませんが、避難所のネタばれを一読ください
hoshuhoshu
滑走路脇にある建物に入る。
ドアを開けて中に入ると、そこにあったのはちょっとしたリビングルームのような場所。
大きくはないが、機能は揃っていそうな冷蔵庫。
飾り気のないテーブルと、それを囲むいかにも安物っぽいソファー。
奥に続く通路の先には、おそらく仮眠室などがあるのだろう。
要するにここは、搭乗員待機室だ。
空腹ではないが、喉が渇いていた。
さっきまではさほど感じていなかったが、やはり緊張していたということなのだろうか。
ディパックに水は入っているが、敢えて冷蔵庫を開けてコーラを取り出す。
栓を抜いて一口飲むと、少々きつい炭酸が喉を通り抜けていく。
必ずしも連邦と同じというわけにはいかないが、これもいわゆる雰囲気作りだ。
その時をただ待つのではない。
自分の中の闘志をかき立てるために、より昔に近い状況を作る。
その為に選んだのがこの搭乗員待機室というわけだ。
あの時の緊張感。
出撃を待ち、まだ見ぬ敵を頭に浮かべる。
ブリーフィングで検討した作戦内容を思い返し、戦闘の流れと、それに伴う部隊の指揮、
自身の動きを可能な限り、いくつものパターンを繰り返しイメージする。
出撃直前まで、そうやって戦闘意識を高めていく。
あらゆる想定。
あらゆる状況。
残りの時間でできる事は、今のうちにイメージしておく。
【行動 :待機室に入る-1 コーラを飲む-1 イメージ-1 残1】
【位置/場所 : D-13/搭乗員待機室 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
ニースとファッツの間に、無言の時間がすぎていく。
疑心の中にいるニースに、自らファッツに話しかける勇気はない。
アルバートの事でさえ疑いはじめている彼女に、元々は敵であったファッツを疑うなというのは、いささか無理な話かもしれない。
(何で…何であたし、マラサイの修理しちゃったんだろ…)
俯きながら思う。
ニースの考えからすれば、彼女は自分を殺そうとしている人間の武器を修理した事になる。
それがたとえアルバートの願いだったとはいえ、いや、アルバートの願いだったからこそ、ニースは唯々諾々と従うので
はなく、自分の考えをもっと出すべきだった。
ニースがレベッカに教わった覚悟。
アルバートの横にいるために、傷つく事を恐れてはいけない。
ニースは、アルバートに恐れずに聞いてみるべきだったのだ。
何故、修理をするのかを。
もっと踏み込めば、アルバートの考え全てを。
勿論それが、ニースに理解できるかどうかは分からない。
それが、納得できるかどうかも分からない。
でもアルバートの考えを知る事ができたのなら、少なくともニースは、アルバートにまで疑心を持つ事はなかっただろう。
しかし、それももう遅い。
今ニースにとっての現実は、殺されるかもしれないという事と、それを防ぐための武器が不足しているという事。
真実はどうあれ、それはニースには深刻だった。
(どうしよう……どうしよう……)
同じような言葉を、頭の中で繰り返しながら時がすぎる。
(アルバートさんは…たしか、ファッツさんの武器を探しに行くって…ファッツさんに通信で話してた…。
ア…アルバートさんが帰ってきたら……)
またニースの中で、嫌な想像が広がっていく。
(な、何とか…何かしなきゃ……何か……!)
その時ニースの中で閃くものがあった。
ばっとマップを開いてそれを確認すると、立ち上がってゲルググへと向かう。
「あ、ああの、ファッツさん。
ちょっと、用事思い出したから少しここ離れるから」
それだけ言ってコクピットに乗り込むと、ゲルググを起動させて歩き始める。
レベッカと戦う前、ゲルググに届いた通信。
組織のプレゼントとも言える、コンテナの存在。
それが何なのかは知らないが、ニースが今頼れるものはそれしかなかった。
【行動:ゲルググに移動(−1)起動(−1)ボーナスを使ってP-13に移動(−2)】
【残り行動値:0】【位置:P-13】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:迷い】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:武器を探す】【同盟:?】【ペット:ハスキー犬のハリー】
何か知らないが、さっきから自分とニースの間に妙な空気が漂っている。
こころなしか、座ってる位置も離れたような気もしないでもない。
元々馴れ合っていたわけではないし、勿論の事、親しい間柄というわけでもない。
それでもさっきまでは一応の会話はあった。
こっちから話すわけではなく、むしろ向こうから積極的に話す事が多かった。
それだけに、この空気が妙に心地悪い。
確かに積極的には接してなかったかもしれないが、だからこそこの空気の原因を作るような事も言ってない。
じゃあ何が原因なのか。
考えられる事といったら、ニースがシャワーに行った時くらいか。
…覗いたと思われたのか。
いや、これまでのニースの態度からすると、覗いたら速攻で文句を言われそうだ。
というか覗いてないし。
…ゴキブリでも出たのか。
いや、それならもっと大騒ぎになってる筈。
第一、シャワーに行って何があったかなんて自分に分かるわけがない。
アルバートほどの信頼はないだろうが、話してくれれば少しは相談に乗ってやれるが、
この状態ではそれも望めそうにない。
「おい、ニ…」
とにかく話してもらわない事には何も分からないからと、口を開きかけたこっちに被せるように、
ニースも話してきた。
「あ、ああの、ファッツさん。
ちょっと、用事思い出したから少しここ離れるから」
…あ、そう。
用事があるというのを無理して止める理由もない、か。
「はいよ。
まあ道中気をつけてな」
出て行くゲルググを、頬杖をついたまま見送った。
178 :
通常の名無しさんの3倍:2007/02/11(日) 02:23:42 ID:pY00INkK
【行動 :ニースと会話(-0P) 残り4P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
高速道路を、ゲルググが走っていく。
組織に教えてもらった場所の中で、一番近いのは町の北。
山を越えた向こう側にある。
あたりはまだ真っ暗だ。
時計を見ていないニースには、正確な時間は分からないが、夜が明けるまではまだ暫くあるだろう。
そんな中を、いかに高速道路とはいえ、半壊したゲルググで走るのは結構勇気がいった。
もしかしたら、何かの拍子で転倒したら、その衝撃だけで爆発してしまうかもしれない。
爆発までは大袈裟だとしても、動けなくなる可能性は十分にあった。
だが、ニースはそんな危険をおかしても行かなければならなかった。
このゲルググでは、もう長時間は戦えない。
それは何と言っても、命にかかわることなのだ。
ニースはアルバートとファッツの関係に疑念を抱いているが、それを抜きにしてもいずれは同じ
ような問題に行き当たったに違いない。
だから善は急げ、ではないが、急ぐにこした事はないとも言えた。
勿論ニースは、これが善だなんて思っていない。
そんな考えは、プログラムが始まった時から浮かんだ事もない(それについては、他の生徒も同じだろう)
ニースの根底にある変わらない思い。
死にたくない、という思いが今の彼女を動かしていた。
【行動:ボーナスを使ってT-11に移動(−3)T-10に移動(−1)】
【残り行動値:0】【位置:T-10】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:決意】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:武器を探す】【同盟:?】【ペット:ハスキー犬のハリー】
今は闇の中に沈んでいるけど、マップによると真下には灯台があるらしい。
さっき通りかかった時は、用事もないし意識しなかった。
今回も特に用事はないから、通り過ぎるだけだ。
…一体いかなる施設だったのか。
灯台に通じる橋が破壊されているから、ここでも戦闘があった事は明らかだ。
もしかしたら放送とかで知る機会もあったかもしれないけど、これも今となってはどうでもいい事になってしまった。
「兵共が夢の跡…か。
何かしみじみするな」
どこかで聞いた詩を思い出し、ぽつりと呟く。
灯台を過ぎてシャッコーは北上する。
やがて闇にうっすらと浮かび上がる街の影。
余計な回り道はあったけど、やっと戻ってこれた。
武器も手に入れたし生き残りの生徒にも会えたし、まあ成果はあったとみるべきかな。
【行動:ビームローターでN-14に移動(-4)】
【残り:0P】
【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー、ハイパーバズーカ
トライカッター】
【所持:ディパック、水2?入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:工場に戻る】【服装:革ジャンとジーンズ】
さっきまで回っていた場所と同じように、街は夜の暗闇の中に沈んでいる。
周囲を見回す。
東西南北、視界に入る殆ど全ての景色が同じような闇。
太陽はもとより、電灯も炎すらない、ただ暗いだけの世界。
そんな暗いだけの世界の数少ない例外が俺の眼下にある。
工場の中から漏れる光が、この街にまだ人間が存在する事を教えてくれる。
そしてそこは、俺の目的の場所でもある。
まあ武器を拾って帰ってきただけだから、目的の場所というのは言いすぎか。
シャッコーを降ろして工場に入れる。
中は出る前と何も変わらない風景…と思ったんだけど……何か違うような…。
ハンガーには修理の終わったらしいマラサイ。
向こうに座ってるのはファッツさんだろう。
…ニースとゲルググがいないのだ。
見た感じ、重大事があったようには思えない。
何かあったんなら工場も壊れたりしてる筈だから。
持ってきたバズーカと弾倉、トライカッターを地面に置いてファッツさんに話しかける。
「ファッツさん、とりあえずめぼしいところを持ってきました
規格が合うか分からないけど、マラサイの大きさなら多分使えますよ」
それから一息入れてもう一度話す。
「あと…ニースの姿が見えないんですけど、どこ行ったか知ってますか?」
【行動:工場に入る(-1)武器を置く(-1)】
【残り:2P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:少し休みたい】【服装:革ジャンとジーンズ】
部屋を支配する沈黙。
自身が吐き出す息だけがこの部屋で…いや、この世界に発する唯一の音のように思えてくる。
この待機室に入ってどのくらい経ったのか。
1時間かもしれないし、4,5時間かもしれない。
その間にした事といえば、コーラを飲む事と戦闘行動の想定だけ。
しかしそれだけで時間が経っているのだから、充実と言えば充実なのだろう。
「………」
それ以上何をするでもなくソファーにもたれる。
ある程度行動が固まったら、あとは何もしない。
何にしてもやりすぎは毒なのだ。
食べる事も飲む事もそうだし、戦闘行動の想定にしても同じ。
大体、詰め込みすぎて肝心な時に体が動かなかったら困る。
詰め込むのは自然に体が動く範囲までにして、あとは戦場での閃きに賭ける。
周到な想定と、臨機応変の行動。
これが揃えば、戦場で死ぬ確率をそれなりに下げる事ができる。
あとは、運だ。
その運を呼び込む為に、次に少しでも体調を整える。
戦場で戦い抜く体力と、戦闘を切り抜ける精神力。
充実した心身で臨むと、望外の幸運に巡りあう事もある。
冴えた精神は普段なら気づかない危険を察知できるし、漲る体力はその精神を長持ちさせる。
…そう、今寝るのは少しもおかしい事ではないのだ。
【行動 :仮眠-1 残3】
【位置/場所 : D-13/搭乗員待機室 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
さて、ニースが出て行き重苦しい雰囲気はなんとか解消出来た。
いや、これは解消というべきか否か。
単にニースがこの場からいなくなった、というだけで根本的な解決にはなってはいないのだから。
「つってもなぁ………」
そもそも原因がわからない以上、あの空気を打破する方法は見つからないのだ。
無論自分を警戒するという理由もわからないでもない。
言葉を交わした事など数回程度で、それ以外はまるで何も知らない男。
そんな男と二人きり、などという状況で警戒をしない訳がない。
「ま………アルバートが戻ってくりゃ少しはマシになんだろ」
別に嫌われようと警戒されようとなんて事はないが。
それでもあまりいい気分のものではない。
少しでもそれが軽減されるのなら、それを望むのはファッツとして当然の思いであった。
それからしばらくして、工場に戻ってきたのはアルバートだった。
普通の人間ならば他の人間に見つかったのかと、
何か物音がした時点で警戒を強めるべきなのかもしれないが生憎と自分にはレーダーがある。
手元で確かに反応しているそれは、自分を示す光点のすぐ傍にアルバートの反応を感じ取っていた。
「ファッツさん、とりあえずめぼしいところを持ってきました
規格が合うか分からないけど、マラサイの大きさなら多分使えますよ」
「あー、そりゃどうも。
しかし何だ………本当に悪いねェ、こんな事までしてもらって」
声をかけてきたアルバートに対してそう返答する。
アルバートの持ってきた武装は、随分とまた立派なものだった。
「あと…ニースの姿が見えないんですけど、どこ行ったか知ってますか?」
「あー、ニースちゃん?
なんか用事思い出したとかで出てっちまったよ」
【行動 :アルバートと会話(-0P) 残り4P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
ニースの目の前に広がるのは、海。
「…夜の海…」
呟いて僅かに体を震わせる。
よく、夜の海は引き込まれそうになるという話を聞く。
たしかにその暗黒とも言える広がりは、人に恐怖心を抱かせる。
ただ、ニースが体を震わせたのは、その黒さに、あのキリトとの戦いで見た、どす黒い何かを思い出したためかもしれない。
ニースがコンテナの場所に辿り着くには、このポイントを通り抜けなければならないが、ニース自身はそれほど
心配をしていなかった。
海とはいっても、ポイント全てが海で占められているのではない。
海にも浅瀬はあり、隣のポイントとの境には砂浜などの陸地もある。
誤って進入禁止区域に入りでもしない限り、ずっと前に川を横断した時よりは、よほど安全だろう。
「あとは…深いとこにはまったりしなきゃ、大丈夫」
言い聞かせるようにまた呟いて、ニースはゲルググを進ませる。
ゲルググが跳ね上げる波の白さが、黒いだけの視界によりいっそう映える。
【行動:S-9に移動(−2)ボーナスを使ってQ-7に移動(−2)】
【残り行動値:0】【位置:Q-7】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:決意】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:武器を探す】【同盟:?】【ペット:ハスキー犬のハリー】
ファッツさんが持ってきた武器を見て労ってくる。
「気にしないでいいですよ。
どうせコンテナのもらい物ですし、俺ももらいましたから」
まあ俺が貰ったものは、武器じゃなくてディスクと本だけど。
…あ、そうか。
ディスクの中身確かめてみなきゃ。
本があの内容だったから、ディスクも期待できるかもしれないし。
そんな事を考え始めたら、ファッツさんがニースの事を教えてくれた。
「用事……出て行った…?」
思考が一瞬にしてそちらに傾いた。
用事とはどういう事だろう。
俺の思いつく範囲に、ニースが抱えていそうな事は思い至らない。
想像で言うなら、一時別行動していた時に何かあったのかもしれないけど…。
それにしたって、こんな時間に出て行くような用事とは思えない。
ファッツさんに詳しい理由を言わなかったのは…信用とかの問題の他に、余程言いたく
ないような理由があったのだろう。
そこらへんを考えると、ますます訳が分からない。
…幾らなんでも帰ってこないなんて事はないだろうから、後で用事の事を聞いても大丈
夫だとは思うけど。
小さく溜息をついてシャッコーから降りる。
それから修理が終わってるらしいマラサイを見た。
脚部の穴は開いたままだけど、多分中身は修理してあるんだろう。
用事で出たと言っても、ニースが中途半端で終わらせていくとは考え難い。
暫くマラサイを眺めてからファッツさんに向き直った。
「マラサイ、直ってるみたいですね。
まだ動かしてないんですか?」
【行動:シャッコーから(-1)マラサイを見る(-0)】
【残り:2P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:少し休みたい】【服装:革ジャンとジーンズ】
戦場での眠り。
そんなものにはもう慣れ切っている。
出撃の合間であろうと何であろうと、軍人はそこで眠らなければならない。
極限ともいえる緊張の中での睡眠。
新兵は当然眠る事などできない。
多少慣れてきた兵は浅い眠りにつく。
そんな中、戦場での死神のふるいにかけられて生き残ってきた古参は、例え
砲弾が飛び交う中でも熟睡できるようになる。
そしていざ出番が来れば、自然に目が覚めて戦闘準備を整えてしまう。
だがそれは不思議でも何でもない。
そこで慣れていくにつれ、生き残っていくにつれ、いつどのような事態にも
対応するように、体と精神が作り変えられてしまうから。
一般に熟練とかエースなどと呼ばれる人間は、そういった者が多い。
ニュータイプとか言う、よく分からない人種を除いて、だが。
…勿論、今俺がこんな事を考えているわけではない。
何故って、俺は今夢すらも見ない程に熟睡しているのだから。
【行動 :さらに仮眠-1 残3】
【位置/場所 : D-13/搭乗員待機室 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
高速道路をしばらく進んでから、ゲルググを左へと進ませるニース。
マップによると、ここから山を越えたところに先生から教えられたコンテナがあるはず。
「………」
ハリーの頭を撫でながら、不安げな表情で先に見える山を見つめる。
何故、ニースは不安になるのか?
暗い中で自分1人という状況なのか。
この先に、本当にコンテナがあるかどうか分からないからなのか。
それとも、アルバートを疑っている自分自身に対してなのか。
「…何だろう?」
ニースが感じているのは、そこはかとない不安。
何に原因があるのか分からない、曖昧な不安。
原因が分かるのなら、ニースもある程度割り切る事ができる。
でも、自分が何に対して不安なのか分からないから、それがますます不安なのだ。
(ここから先に、進んじゃいけないような気がする…)
そんな思いが心の隅をよぎり、すぐそれを打ち消すかのように、ふるふると頭を振る。
不安でも、自分の決心を曲げてしまうわけにはいかない。
不安だからと引き返してしまっては、弱かった頃と何も変わらない。
死にたくないから。
だから傷ついても、打ちのめされても、なお立ち続けられる強さ。
求めるそれが、この先にあるのなら。
可能性が少しでもあるのなら、ニースはここで立ち止まるわけにはいかない。
でもニースは、その強さを手に入れるための代償には思いが至っていない。
【行動:ボーナスを使ってN-7に移動(−2)N-9に移動(−2)】
【残り行動値:0】【位置:N-9】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:決意】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:武器を探す】【同盟:?】【ペット:ハスキー犬のハリー】
>>185 「お前が帰ってくるちょっと前さ。
会ってないってんなら、お前が来た方向と別のトコにでも向かったんだろうな」
返事が返ってこないところを見ると、何やら考え事でもしているのだろう。
大方、ニースの向かった場所――用事とやらについて考えているのだろうが、
どうやら彼にも用事の内容とやらはわからないらしい。
彼ならばニースの用事とやらの内容も幾らかわかるだろうとは思ったが、見当違いだったようだ。
「マラサイ、直ってるみたいですね。
まだ動かしてないんですか?」
「ん? ああ、ニースちゃんが丹精こめて直してくれたみたいだからな。
まだ動かしてないが、しっかり直ってんだろ」
アルバートと同じく、マラサイに目を向けてそう返す。
そう、マラサイは直った。
ニースに言われたようにこのマラサイが直るまでに自分が何をすべきか、
何をどうして楽しみ、生きるのか。
考えてみたが皆目検討がつかない。
【行動 :アルバートと会話(-0P) 残り4P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ビームピストル(EN 0%)】
【通信状況:】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きる】
心を込めて、か。
目の前に佇むマラサイを眺めながら聞いたファッツさんの言葉を脳裏で繰り返す。
俺はニースの修理を見てないから分からないけど、近くで見ていたファッツさんが言うんだからその通りなのだろう。
油まみれになって奮闘する姿が想像できて、何となく微笑ましくなった。
これでマラサイの動きに問題がなければ、ニースとしてもファッツさんとしても万々歳なんだけど。
ともかく、今俺がここにいても特にやる事はない。
修理は終わってるし、ニースもいないし。
「…………」
ちょっとだけ考えてから、同じようにマラサイを見ているファッツさんに向き直った。
「ちょっと俺、用事があってコクピットにいますから。
マラサイのテストとかで手伝えることがあれば、遠慮なく呼んでください。
…あ、用事って言ってもどっか行くわけじゃないんで」
念の為にそこまで言っておいてから、またコックピットに戻った。
ディスクを見るならわざわざコンピュータを探すよりも、コックピットの物を使った方が早い。
それにここならこちらに何かが(はっきり言えばジンペイさんが)接近してくるのなら、直ぐさま対応できる。
…もう1つ理由もあるにはあるけど、それはわざわざ口にすることじゃない。
ともかくディスクを入れて、内容を確かめてみる。
「…ザク?」
暫くの沈黙の後、俺の口から漏れた言葉。
俺のもう1つの理由は、ここであっさりと瓦解した。
【行動:シャッコーに搭乗(-1)ディスクを見る(-1)】
【残り:2P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】
【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:少し休みたい】【服装:革ジャンとジーンズ】
いったんゲルググを止めたニースが、浮かない顔で、コンテナがあるはずの方向を見つめる。
さっきからニースの中に湧き上がる不安が、なかなか消えてくれない。
それは例えるなら、目前に広がる底なし沼に、自分から踏み出そうとしているような感じだろうか?
「……気持ち、悪いな」
視線を足元に移して、寄り添うハリーの頭を撫でる。
今のニースにとって、何の疑念もなく向き合える、ただ1人(匹)の友達。
ニースは、その穢れのない瞳を見て、多少なりとも不安の波がおさまる気がした。
「ここまで来たんだもん、今さら、引き返せないよね」
まとわりつく不安を無視するように、ニースはまたゲルググを発進させた。
そして…。
それは、ニースの目の前に現れた。
そこに置いてあるそれは、ニースの予想を遥かに上回る大きさだった。
目測では正確には分からないが、3、40メートル以上あるだろうか。
単純にその大きさの物が入っているとは限らないが、期待をしてもいい大きさだろう。
「えっと…どうやって開けるんだろ?」
コクピットから見る限りでは、普通に箱を開けるようには見えない。
多分下のほうにスイッチか何かあるのではと、ニースはゲルググから降りてみる。
そして改めてコンテナを見上げ、喉をこくりと鳴らした。
【行動:M-9に移動(−1)ゲルググから降りる(−1)】
【残り行動値:1】【位置:M-9】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:決意…でも不安も】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:武器を探す】【同盟:?】【ペット:ハスキー犬のハリー】
こうして見上げてみると、ニースにとっては山のような大きさのコンテナ。
どのように作ったのか?
どのように持ってきたのか?
考えれば考えるほど、摩訶不思議なコンテナだ。
ニースは単純に大きさに圧倒されて、そこまでは思いが至っていないようだが。
「えっと…」
とにかく、開けないことには意味がない。
近づいて見てみると、コンテナの端のところに、何かのリモコンらしきものが付いている。
本来なら、こういった物はパスワードとか指紋認証とかありそうなものだが、ニースが見た限りでは存在しない。
あるのは、[開]と書いてあるボタンだけ。
わざとらしすぎてかえって不安になりそうだが、どうにもこれしか押せそうなものはないらしい。
伸ばしかけたニースの指が、寸前で止まる。
少女の中に、いまだくすぶる訳のわからない不安。
コンテナを目の前にして、ますますそれが大きくなっている。
間違いなく、不安の正体はこの巨大な物体なのだ。
これを開いたら、取り返しのつかないことになるのではないか?
そんな思いが、ニースに最後の決断をさせる事を迷わせている。
…しかし…
「………っ」
言葉にならない声と一緒に、ニースはボタンを押した。
ニースの、強くありたいという意思が、不安を上回ったから。
だが、その意思は、明らかに違う。
ニースがレベッカとの戦いの中で教えてもらったのは、そんな表面的な強さではない。
どんなに厳しくても、例え絶望的になっても生き抜く事を諦めない、内面的なものだったはずだ。
ニースも最初は、その強さを求めようとしていた。
しかし、傷ついたゲルググへの不安、街で目撃した出来事から生じたアルバートへの疑心。
絶対の信頼が疑いに変わったとき、ニースの心は、最も安易な強さを求めるようになっていた。
コンテナのつなぎ目に小さな爆発が起こり、巨大な箱が開いていく。
その中から、コンテナに見合うくらいの巨大な影が姿を現そうとしている。
そして…コンテナが開いたそこには、その思いに答えるかのように紫色のMSがニースを見下ろしていた。
【行動:コンテナのそばに(−1)コンテナを開く(−1)】
【残り行動値:2】【位置:M-9】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:決意…でも不安も】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:武器を探す】【同盟:?】【ペット:ハスキー犬のハリー】
「……」
最初に見えたのは見慣れない天井。
一瞬の違和感のあとで覚醒してくる感覚。
仮眠をとっていたソファーから身を起こし、じっと部屋の一点を見つめる。
視覚、聴覚、触覚。
あらゆる感覚が普段通りになった事を確認して立ち上がる。
「慣れない…場所だからか」
心なしか、以前よりも感覚の戻りが鈍いような気がした。
らしくないと思いつつも、いい訳じみた言葉が口から出てしまった。
環境の変化を理由にするのは、戦場では愚の骨頂だ。
無理矢理にでも環境に合わせなければ、生き残れない事など百も承知の筈なのに。
気合を入れるために両頬を叩き、待機室から出た。
まだ空は暗く、夜明けまではまだ時間がありそうだ。
ただ冷たいだけではない爽やかさを含んだ風が、朝がやってくるのがそう遠くない事を示していた。
「…いい朝になりそうだ」
風に目を細めながら愛機へと近づく。
本来なら弾薬を探して補給してやりたいところだが、残念ながら今回はその時間を体調を整える為に使ってしまった。
…仕方がない。
機体を考えれば、例え補給をしたところで戦力差は殆ど縮まらないだろう。
だから今回はとことん万全の体調で臨もうと決めたのだ。
コクピットに入り、計器類の確認。
昨日の今日でそう状態は変わらないが、悪化するのが兵器の常とも言える中で、平行線を保っているという事は
吉兆のようにも思えた。
【行動 :起床-1 待機室を出る-1 搭乗-1 残1】
【位置/場所 : D-13/滑走路 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
コンテナから姿を現した、紫色の大型MS。
この時点でニースは、それがサイコガンダムMk-Uと呼ばれている事は知らない。
だから当然、コクピットに搭載されているシステムなど知る由もない。
でも、例え知っていたとしても、今のニースがこれに乗るのを止めるとは思えない。
それほどに、ニースは強さを求めていた。
まあ、ニースにこのシステムの理解ができるかどうかが、まず第一の疑問ではあるが。
「なんか、顔怖いなぁ」
見下ろすようなサイコガンダムMk-Uの顔を見て、正直な感想を漏らす。
しかし、ニースにとってはこの際、顔の怖さは全く関係ない。
その証拠に、もうサイコガンダムに向かって歩き始めている。
ハリーがニースの足元を回るようについてくるが…。
「…どうしたの、ハリー?」
ハリーは、まるで行くなとでも言うようにニースの前に回り、邪気のない瞳で見つめてくる。
人の言葉が話せないのがもどかしいかのように、しきりに訴えるかのごとく唸る。
ただ、ニースもハリーと同じように何かを感じていたのは確かだ。
だから、ここに来るまでにあれほど不安になったりはしない。
「大丈夫、大丈夫だよハリー」
自分にも言い聞かせるようにハリーの頭を撫で、ニースはコクピットまで昇るらしいリフトに乗った。
【行動:リフトに乗る(−1)コクピットへ(−1)】
【残り行動値:2】【位置:M-9】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:決意…でも不安も】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:武器を探す】【同盟:?】【ペット:ハスキー犬のハリー】
コクピットの大きさは、ゲルググと同じくらいにニースは感じた。
でも、その内容は大きく違っている部分があった。
ニースには見た事もない装置が、コクピット内に設置されている。
その装置の他の操縦系統などは、多少配置は違っているが、基本的な動かし方は変わらないように見える。
「え、と……サ…イコミュ?
何々……脳波……感応…?」
脇でまだ不安そうなハリーの頭を撫でながら、取りあえずマニュアルを読み進めていくが、表情からする
と、ニース自身よく理解していないみたいである。
だいたい、まだ自分の能力すら分かっていないニースだ。
マニュアルを理解したとしても、それを使いこなせるとは思えない。
それが、普通の状態なら…。
ハッチを閉じる直前、ニースはゲルググに向かって少し手を振った。
「ここまで、ホントに…ありがと」
これまで自らを矛とし、そして盾としてニースを守ってきたゲルググ。
ニースのその言葉には、彼女なりの限りない感謝の思いがこめられていた。
最後に、最低限の確認をしてマニュアルを閉じ、ニースはコントロールパネルに向き直った。
確認した箇所に起動スイッチを見つけると、そっと指を伸ばす。
そして、一瞬の逡巡のあと、ゆっくりと押し込んだ。
最初に聞こえたのは、小さな機械音。
それがだんだんと周囲に広がり、各パネルに光が灯っていく。
サイコミュと呼ばれる装置も起動しはじめたらしく、ニースもそれを確認する。
さらにカメラが外の様子をパネルに映し出し、それを確認しようとニースが顔を上げた瞬間。
その視界が、突然暗黒に包まれた。
【行動:マニュアルを読む(−1)起動(−1)】
【残り行動値:2】【位置:M-9】
【機体状況:左肩装甲破壊、左足カバーとスラスター一部破壊、機体に擦り傷、左腕消失、頭部消失、胸部装甲破損】
【通信状況:】【人物状況:決意…でも不安も】
【武装:狙撃用大型ビームライフル(EN残量:50%)、ビームナギナタ】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:まずは慣れよう】【同盟:?】【ペット:ハスキー犬のハリー】
簡単な点検の後しっかりとシートに座り、体をベルトで固定。
ヘルメットを被り、無線コード、酸素ホースを繋げる。
改めてHUDの調子を確かめエンジンを始動し、機体を滑走路へと誘導。
この時点で戦闘機はまだ戦闘機とは言えない。
戦闘機に限らず、あらゆる飛行機は空を飛んでこそ意味がある。
現在のこいつは、翼のあるエンジン付きの三輪車のようなものなのだ。
こいつが戦闘機になる為には、離陸というイベントをこなさねばならない。
滑走路の定位置に一旦止め、ブレーキをしっかり踏みながら針路計、高度計、コンパスなどのチェック。
異常がなければ、今度はエンジンのチェック。
ブレーキを踏んだままチェック位置までスロットルを踏み込み、今度はエンジンの計器をチェック。
更に電気系統、エアコンのチェックも同時に進めていく。
エアコンは何気にかなり重要で、夏の地上なら35℃〜40℃でコクピット内は地獄の暑さ。
上空の外気温なら優に−50℃。
この温度差を縮めるように設定されている。
ともかく離陸前の最終チェックは終了。
前方に障害物のない事を確かめ(この暗がりでは大体の感覚だが)、ブレーキから足を離す。
ゆっくりと前進を始める機体。
それを確認したら、計器を確認しながらエンジンを100%パワーに上げ、一気に機体を加速させる。
そしてスロットルをアフターバーナー領域まで踏み、更に加速。
この急激な加速感とエンジンノズル計器開きが、俺にアフターバーナーの点火を教えてくれる。
ブレーキを離してから4、5秒で、既に時速100kmを遥かに超えている。
三輪車が戦闘機になるまであと数秒だ。
比較的簡単な離陸だが、その中ではこの三輪車と戦闘機の境目が一番危険といえる。
浮き上がろうとした瞬間に横風でも吹かれたら、ベテランといえども焦りを覚えざるをえない。
だからパイロットはこの地点で、飛ぶか止まるかの決断をしなければならない。
ほんの僅かでも異常を感じたら止まらなければならないし、そうでなければ何が何でも離陸しなければならない。
MSではあり得ない、高速の中での決断。
俺が戦闘機パイロットに誇りを持つ1つの理由だ。
離陸速度に達し、ゆっくりと機首を上げて離陸姿勢へ。
ここまで来たら何も焦る必要はなく、落ち着いてスティックを操作すればいい。
離陸姿勢を維持していれば、機体は自然に浮き上がっていく。
脚とフラップを格納する間にも、戦闘機となった機体はどんどん加速していく。
速度が低下したとはいえ、まだまだいけそうだ。
ただこんな所で音速を超えても意味はないし、傷ついた愛機に余計な負荷をかけたくもない。
アフターバーナーを切って、巡航速度で安定させる。
誰の見送りもない孤独な出撃。
だが覚悟を決めた俺の心は、いかほども揺れる事はない。
【行動 :各チェック-1 離陸-1 F-13に移動-2 残0】
【位置/場所 : D-13/滑走路 】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
保守
速度が安定したところで一息つく。
当たり前だが、一息つくと言っても本当に休むわけではない。
離陸時の緊張感から開放されて、少し精神的に楽になっただけだ。
目は常に計器と周囲の様子を交互に監視している。
例えば高度計。
戦闘機に限らず飛行機は、高度計が示す高度を何度も飛んだとしても、それが毎回同じ高度とは限らない。
何故ならば飛行機の高度計は気圧に左右されやすく、気圧の高い時は高度計の指示よりも高度を。
そして気圧の低い時は、高度計の指示よりも低いところを飛んでしまうのだ。
だから例えば、2000mの山を越える為に2300mの高度を飛んでも全く安心はできない。
この気圧による高度計の誤差は、最低でも500mはあると認識するべきだ。
低速で飛んでいる時は避ける事もできようが、高速、特に超音速で飛んでいる時はまずお陀仏だ。
最初に高度計の事を言ったが、実は速度計も結構重要だったりする。
人間は速度というものが殆ど分からない。
走る人や自動車ならば大体の感覚で分かる人もいるだろうが、飛行機、特に戦闘機になると速度など
分かる以前の問題だ。
低空を飛んでいる時は、周囲に山などの対象物があるからまだいい。
しかし何もない上空を飛んだ時、頼りになるのは速度計だけだ。
速度が分かれば自分が飛ぶ距離も分かる。
あとはコンパスなどの航法計器があれば、自分の正確な位置も特定できる。
ちなみに上空にいても雲が晴れてて地表が見えれば、それなりに判断もできる。
人の形が見えるか、車の形が見えるか、家の形が見えるかなど材料は様々だ。
そして速度計が必要になるのは、何と言っても着陸の時だ。
着陸する為には、当然速度を落とさなければならない。
しかし誤って落としすぎると、失速して墜落する恐れが出てくるのだ。
だから速度計を見ながら、失速速度にならないよう細心の注意が払われる。
この着陸だけ取っても、速度計は飛行機に必要不可欠の存在なのだ。
…まあ…今回の出撃では着陸するつもりはないから、そこに気を使わずに済むのは嬉しいが。
【行動 :各チェック-1 F-16に移動-3 残0】
【位置/場所 : F-16/空】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
保守せねばなるまい!
俺も保守
サイコガンダムを動かそうと、操縦桿を握ったニースの視界が揺れ、何かと思う間もなく、目の前が真っ暗になった。
「…なっ…っ!?」
それは、一瞬の出来事だったかもしれないし、永遠とも言える長さだったかもしれない。
それは、夢だったかもしれないし、現実だったかもしれない。
真っ暗な空間。
ニースは目蓋を開いてるはずなのに、その目には何も映らない。
そしてその体は、ピクリとも動かせない。
傍にいるはずのハリーの温かさも、座っているはずのシートの感覚も伝わってこない。
恐怖のあまり、開いた口からは荒い息しか出てこない。
少しして、ニースは気づいた。
ニースは真っ暗な空間にいるのではなく、真っ黒な何かに包まれている事に。
(ひぃっ…!)
喉の奥から、搾り出したような悲鳴が漏れる。
ニースは、それを覚えていた。
キリトとの戦いで、ニースの感覚が捉えた真っ黒い塊。
彼女を捕らえていたそれは、あの塊にそっくりだった。
ニースの脳裏に蘇る、コクピット内で嘔吐し、失禁までしたあの記憶。
しかし、今のニースを助ける者はいない。
必ず励ましてくれる、アルバートの姿はここにはいない。
(た…たすけ、て…。
助けて…アルバート、さん…!)
ここにはいない男性に、ニースは救いを求めた。
…もう、全ては手遅れなのに。
「…アキレタワネ」
突然左耳のそばで聞こえた、聞き覚えのある声。
ニースの脳裏に閃く、忘れようがない映像。
風に煌く絹糸のような白金の髪と、穢れのない海のような青い瞳。
(レ…)
僅かに眼球だけを動かして、その声の主を確かめようとする。
そのニースの耳元で、さらに声は続く。
「ツイサッキアルバートヲウラギッテ、モウソノウラギッタアイテニタスケヲモトメルナンテ」
(そ…そん、な……ち、ちが…)
ニースの反論を欠片も許さず、声は続く。
「チガワナイ。
アナタハ、トモニイルトチカッタオトコヲウタガイ、アルベキバショカラニゲタ。
ホント…スクイヨウガナイッテ、コノコトヲイウノネ」
(ち、ちが……ちが…)
「マア、アナタガタスケヲモトメタガルノモ、ワカラナイデモナイワ。
セッカク、マタヲヒライテユウワクシテ、タラシコンダクロウガミズノアワダモノネ」
「何だ…そんな事考えてたのか。
ただの淫乱じゃないとは思ってたが…やれやれだな」
左の声に重なるように右から聞こえてきた、これも聞き覚えのある声。
どこまでも優しく、ニースに力を与えてくれる笑みを持った人。
(ア、アル…)
「勝手に股をひらいて庇護を求めておいて、都合が悪くなったら、また勝手に裏切りか。
淫乱な上に卑怯者とは、確かに救いようがないよな」
(……!)
勿論、ニースにも言いたい事は沢山ある。
だが、左右の声はニースに何も言う間、どころか、考える間も与えてはくれない。
「エエ、インランデヒキョウモノ。
アア、アトヒトツツケクワエルノナラ、ソコナシノハジシラズ。
コノコ、アナタニユルシテモラウタメナラ、ヘイキデクツノウラヲナメルワヨ」
「ははは、恥知らずか。
だけど、こんな恥知らずに舐められたら、俺の靴が腐っちまう。
腐っているのは、自分だけにしてもらいたいもんだ」
ニースの両の瞳から、涙が零れ落ちる。
「ナイタッテ、ムダ」
「またあのときみたいに、股を開こうとしてるんだろ?」
「タトエホントウノナミダダトシテモ、ソンナコトデ、アナタノケガレガトレルワケジャナイ」
「そんな事で裏切りが許されるんなら、誰も苦労はしないしな」
「アナタハ、インランデ、ヒキョウモノ、ハジシラズ」
「お前は、淫乱で、卑怯者、恥知らずだ」
左右から絶え間なく聞こえ続ける、罵倒と蔑みの言葉の羅列。
1つ1つの言葉が、ニースから理性を、そして魂を少しずつ剥ぎ取っていく。
「インラン」
「淫乱」
(あ、ああ…!)
「ヒキョウモノ」
「卑怯者」
(あああ、あああああああ!)
「ハジシラズ」
「恥知らず」
(あああああああ!あああああああああああああああああああああ!
あああっ!ああああああああっ!がああああああああああああああああ!!)
魂があらん限りの叫び声を上げ続け、ニースの瞳から色が失われていく。
それを面白がるかのように、左右の声は蔑みの言葉を重ねていく。
(あああっ!かあああああああ、あああああ、ああっ!
あ、ああ…ああああっ!……あ…ああっ……ひ……ぁ…ぁ……)
「フフフ…」
「ははは…」
ニースの叫び声が段々と小さくなり、瞳からも力が消えうせたのを確認して声が笑う。
そして急に優しく話しはじめた。
「デモ、カレニユルシテモライタインデショウ?」
「でも、俺に許してもらいたいんだろう?」
(…………るして……さい。
…ゆ…る………ください……)
涙を流し続ける、感情の消えた顔が微かに頷いたように見えた。
「…ザンネンダケド…カレガアナタヲ、ユルスコトハナイワ」
「…この世界ではね」
「…ソウ、コノセカイデハ」
「…これが、どういう事か分かるかい?」
(………………)
意味が分からないのか、ニースは何も言わない。
「ベツノセカイニ、イケバイイノ」
「もう一人の俺がいる世界に」
(………べつの………)
「ソウ…ベツノセカイ。
ユウショウスレバ、ソレヲカナエルコトガデキル」
「プログラムで、優勝さえすれば」
(………ゆう、しょう………)
「ソウ…ユウショウシテ、チガウセカイデ、カレニメグリアエレバ…。
カレハ、キットアナタヲウケイレテクレル」
「そうすれば、お前が望んだように、今度こそずっと俺のそばにいれるんだ」
(…今度こそ……ずっと、そばに…!)
生気のなかったニースの瞳に、段々と光が灯りはじめた。
だが、その光が放つのは…狂気。
ニースの瞳に反応するように、彼女を包んでいた真っ黒な何かが紫色に変わった。
それはまるで、ニースの心臓の鼓動に合わせるように、脈動している。
ニースに囁く声も、嬉しそうに話す。
「…ソレデ、イイノヨ」
「お前の力なら…望みを叶えられる」
(優勝……勝って……優勝…!)
「ソノタメニ、ワタシハツクラレタ」
「そのために、お前はここにいる」
「ニース=エルネージュ」
「お前の完全なる優勝のために…」
そして最後に、2つの声は1つになった。
「コのワたシ……サイコガンダムMk-Uがチカラをかソう」
【行動:???(−4)】
【残り行動値:0】【位置:M-9】
【機体状況:MS形態】
【通信状況:】【人物状況:】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
保守
サイコガンダムMk-Uの、ニースが乗る前に言っていた「怖い顔」の目に、光がともった。
ニースの感じたイメージに違わぬ、ある種の禍々しささえ感じる光。
だが今のその禍々しさを出させているのは、他ならぬニース自身なのかもしれない。
コクピット内。
ニースは最初に座った時と、外見では何も変わらないように見えた。
いや、何も変わっていないわけではない。
突然無口になり、その瞳は無表情で、前を見ているようにもどこも見ていないようにも見える。
内面の変化は、もう言うまでもない。
そしてその変化に敏感に気がついたのは、当然のいつもそばにいたハリーだった。
ハリーはいつものニースの横というポジションではなく、少し後の離れた位置で、不安げな瞳で
主人の様子を見守っている。
ニースが、視線を下のほうに動かした。
その先にあるのは、さっきまで乗っていたゲルググ。
「サヨナラ」
ニースは、瞳を僅かに細めてぽつりと呟いた。
瞬間、メガビーム砲のいくつかが発射され、ゲルググを射抜く。
大爆発を起こすゲルググに既に興味を失ったように、ニースはもう別の方向に視線を向ける。
その先には、あの町があった。
【行動:ゲルググを破壊(−1)】
【残り行動値:3】【位置:M-9】
【機体状況:MS形態】
【通信状況:】【人物状況:】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
次々とページを捲る。
グフ、ドム、アッガイ、ゲルググ、ギャン…。
リック・ディアス、ガンダムMk-U、ジムU、ハイザック…。
今さら言うまでもないけど、ディスクの中身にはMSのデータが入っていた。
……むう。
これはこれで確かに役に立つんだけど……何だかなぁ。
「…あ、マラサイ」
間近にある本物を見ながら、データと見比べる。
ファッツさんの機体はかなり傷ついてるから、このデータよりも多少の性能ダウン
はあるだろう。
ただ細かい数値が分かるわけでもないから、せいぜい参考程度にしかならない。
更にページを捲っていく。
時代は移り、技術も革新していく。
ザクの頃からMSの基本的な形は変わらなくても、その機構は変わっていく。
あらゆる場所、あらゆる気候、様々な条件下で作戦活動できるよう、様々な新開発、
改良が加えられてきた。
理想を言ってしまえば、MSに限らず兵器全般は汎用が望ましい。
その機種があれば、条件を問わずに活動できる。
それは色々な恩恵をもたらしてくれる。
先ず機種が限られる為、パイロットの養成がしやすい。
そして整備もしやすい。
装備もほぼ同じようなものが多くなるため、武器弾薬の製造や補給が容易くなる。
生産においても余計な機種の生産をしなくて済む分、非常に高い生産性を保つ事ができる。
更に工程の単純化、簡略化などが成功すれば、生産コストも落とす事ができる。
勿論技術の停滞のようなデメリットもないではないが、戦時下においてはこの恩恵
は重要すぎる。
だけど。
それは理想ゆえに現実的に難しい。
高性能の代名詞のようなガンダムタイプでさえ、水中ではかなりの性能のダウンが
認められている。
寒冷地ではどうなのか。
熱帯ではどうなのか。
精密機器の塊のようなMSが、そう簡単に万能になれるわけがない。
作っている人間からして万能なんかじゃないんだから、至極当たり前の現実だ。
だから生産、整備の複雑化などのデメリットを承知の上で、条件に特化した機体を作る。
水陸両用、寒冷地専用、宇宙専用などなど。
どんなに技術が進んでも、人間が変わらないから兵器も軍も変わらない。
勿論争い事も絶えず、紛争、戦争の類はなくなったためしがない。
…あと…このプログラムも同様か。
「…?」
何か今、悪寒を感じた。
「…風邪でもひいたのかな?」
何となく感じた、そこはかとない不安。
その悪寒や不安の正体を、俺は少しあとで知る事になる。
【行動:更にディスクを見る(-1)何か、悪寒(0)】
【残り:3P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:少し休みたいけど、ディスクも気になったり】【服装:革ジャンとジーンズ】
保守
保守必要?
ω・)…ほしゅ
こまめに保守しておこう
頑張って保守
しばらく町の方角を見つめたニースは、微かに頷くと脇にあるレバーを操作した。
まるで、長年使い慣れた道具を使うように。
そこには、ゲルググを歩かせるだけで四苦八苦していた、あの少女の姿は微塵もない。
機体が微かに揺れ、その形状が変わり始めた。
サイコガンダムMk-Uの特徴の1つの、変形が行われている。
腕が、脚が、頭がコンパクトにまとまっていく。
そして、変形が終わったそこには、巨大な宙に浮く箱ができていた。
「ふーん…」
その仕組みに感心したかのように、少し声を漏らすニース。
変形したサイコガンダムMk-Uは、そのままもと来た道を戻り始める。
「面倒くさいな…」
ニースは、じれったそうに唇を噛み締める。
勿論、たとえ空を飛んでいても、強力なMSでも、進入禁止地点に入ってしまったら即アウトだ。
はやる心を押さえつけるように、ニースはじっと前を見つめる。
【行動:変形(−1)N-7に移動(−3)】
【残り行動値:0】【位置:N-7】
【機体状況:MA形態】
【通信状況:】【人物状況:】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
山々の間を抜けて、木々を揺らして空飛ぶ箱が進む。
それがただの箱だったら、その光景はある種の滑稽さと、ある種のファンタジーをかもし出していただろう。
しかし、今空を飛ぶ箱は、そんな童話にでてくるような代物ではない。
一言で言えば、それは悪意。
はた目に見れば、それは悪鬼。
人間が恐れる要素が、一杯に詰まった悪魔の箱だった。
その箱の主である少女は、さっきから何も言わず、感情の見えない瞳で前だけを見ている。
「……」
変わりばえしない景色に飽きたかのように、小さく溜息。
何も話さないのも、そこらへんに原因があるようだ。
【行動:Q-8に移動(−4)】
【残り行動値:0】【位置:Q-8】
【機体状況:MA形態】
【通信状況:】【人物状況:】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
暫く飛んでいると、進路方向に雲が見えてきた。
周囲には他に雲はない。
言ってみれば逸れ雲みたいなものか。
ちなみに一言で雲と言っても、それが目に見えるから雲なのではない。
それは地上から雲を見る時のイメージだ。
飛行機に乗っている時は、そこに空気の乱れがあるから雲があるという認識を持たなければならない。
よく旅客機が雲の中で乱気流に襲われるが、それだけに飛行機に乗っている時は雲1つにも油断してはいけない。
…かといって事細やかな注意が必要でもない。
気流が乱れているといっても、それは千差万別だ。
ゆりかごのような心地よい揺れから、機体が分解するのではないかというような激しい揺れまで。
個人的な感想で言えば9割は安全なのだから、一応の注意をしておけばいい。
その小さな雲をパスして更に飛ぶ。
他には何もない空。
…今日もいい天気になりそうだ。
【行動 :I-17に移動-4 残0】
【位置/場所 : I-17/空】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
夜中保守
「……」
相変わらず無言のニース。
やはり、少しだけイラついているように見える。
しかし、何もしていないわけではなく、さっきから引き金にかけた指がピクピク動いている。
でも、撃たない。
やたらと撃ちたくないのか、楽しみをとっておこうとしているのか、あまり撃って町に気づかれる
のを嫌っているのか。
その真意は定かではない。
そんなニースの気持ちを代弁しているのか、サイコガンダムMk-Uから、妖しげな波動が漏れ出している。
勿論それは、常人に見えるようなものではないが。
【行動:T-9に移動(−4)】
【残り行動値:0】【位置:T-9】
【機体状況:MA形態】
【通信状況:】【人物状況:】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
ほしゅ
「このポイントで右、か」
ゆっくりと右手の操縦桿を倒すと、愛機が大きく右旋回する。
この進入禁止区域の間をすり抜けていくと、中央の湖に出る。
あとは目的の街までまっしぐらだ。
機体の調子は悪くない。
そこここの損傷で最大能力を出すのは不可能になったが、絶望するほどの痛手でもない。
コクピット内の様子に、目をこらし、耳を澄ます。
車なら何か異常を感じたら、その場で止まって様子を見る事ができる。
当たり前だが、戦闘機は途中で止まれないから、飛びながら異常に対処しなければならない。
異常に対するパイロットの三原則がある。
1、落ち着いて操縦を続ける事。
2、状況を正確に掴んで、適切な手段をとる事。
3、出来るだけ早く着陸する事。
この中では1と2は同時進行と考えた方がいい。(3は今の俺には必要ないから省く)
状況を判断するのは必要だが、それに集中しすぎて操縦をおろそかにするわけにはいかない。
ただ状況を判断すると言っても、かなり難しい。
それが警報灯が点滅する異常ならまだましだ。
何故なら、それは設計段階から予測されていた異常だからだ。
従って対処の方法も織り込み済みだから、重大なものでなければ焦る必要はない。
問題はそれが異常と判断し難い場合だ。
例えば機体の後ろの方で『コツン』と音がした時。
それが即故障には繋がらないが、それでもその原因はきちっと考えておくべきだ。
しかしこの場合も焦る必要は全くない。
戦闘機を操縦する上で必要なのは、あらゆる面での余裕だ。
知識、技量は勿論、体力と精神力、そして時間にも余裕をもっておいた方がいい。
新人はその意味でいつもぎりぎりだから、何かが起こると直ぐに限界がきてしまう。
経験を積み愛機の癖を掴んでおけば、空の上ほど楽しい場所はない。
【行動 :L-18に移動-4 残0】
【位置/場所 : L-18/空】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
こまめに保守しますとも
残業帰り保守
保守
保守保守
保守保守
保守保守保守保守
保守保守保守保守
保守保守保守保守
保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守保守
ニース的に、空を飛べば早く着くのではないかと考えた道程だったが、それはどうにも間違いだったらしい。
飛ぶ、というよりも浮かんでいるといった表現がピッタリきそうなそれは、ニースのイメージからは到底かけ離れていた。
でも、ニースは我慢しなければならなかった。
ここで怒って暴れても、それでスピードが早くなるわけではない。
そんなムダをしている暇があったら、前に進んだほうがましだから。
「………」
ニースは、もうずっと無言のままだ。
ハリーに、話しかけようともしない。
もっとも、ハリーも主人の異変を感じ取って、近づいてこようとはしない。
そんな事に構う様子もなく、ニースはただ無表情の瞳で前を見すえる。
サイコガンダムを包む波動は、少しずつ大きくなっている。
それはまるで、ニースが内にため込んだモノが外に漏れ出しているようでもあった。
【行動:R-11に移動(−4)】
【残り行動値:0】【位置:R-11】
【機体状況:MA形態】
【通信状況:】【人物状況:】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
保守
保守
「ふあ…」
口から漏れかけた欠伸を噛み殺し、俺はディスクの映像を閉じた。
正直言って驚いた。
何がって、このディスクに収められているデータの量。
古くは1年戦争から、新しくはザンスカール戦争まで多士済々。
一緒に持っていた歴史の本と見比べれば、これほど興味深い資料もない。
でもさすがにこれだけの量を一気に見るのは不可能だ。
それに俺だって人間だ。
一気に全部見たからって、それを直ぐに役に立てられるわけでもない。
今は画面の見すぎで疲れた目を休ませよう。
「…確か、こういう時は……」
脳裏に浮かんだつたない知識のままに、俺はシャッコーを工場の外に出した。
目が疲れた時は遠くの景色を見る。
確かそんな事をどこかで聞いたような気がする。
まだ夜明け前の空は暗く、遠くに見えるだろう山々も湖も闇と同化している。
まるで神様が作った箱庭の中にいるような、不思議な気持ちにさせられる。
「…ちっ…」
思わず舌打ちした。
神様の部分を組織に変えてみたら、それが今の状況にえらくピッタリ符合する事に気づいてしまったから。
【行動:工場の外に出る(-1)遠くを眺める(-1)】
【残り:2P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:のんびりと目を休める】【服装:革ジャンとジーンズ】
保守です
ほしゅー
保守
保守は一週間に一回程度で十分だよ
湖の上空に出た。
進入禁止区域のなければ、そして昼間であれば美しい景色を存分に眺める事ができただろう。
しかし残念ながら、この先に待っているのは生と死をかけた戦闘だ。
それを考えると景色を楽しむなどという感情は湧く筈もなく、むしろ血が沸騰してくるような興奮を覚える。
だがいくら街が近づいたからといって、その興奮に任せて突っ走るわけにもいかない。
愛機に余計な負担を与えないというのが理由の1つ。
もう1つの理由が、自分自身にも余計な負担を与えないためだ。
これは怪我をしているという事も勿論あるが、服装にも原因がある。
今着ているのは軽装の夏用の服装だ。
当然ながら…この服に対G処置などしてはいない。
民間の飛行機なら旋回時でも1.2G程度だが、戦闘機になるとちょっと操縦桿を動かした
だけでも軽く1.5Gはかかる。
人間の体はGをかけ続けると、血が下に下がって脳に行かなくなる。
そしてそれが続くとグレイアウト、更にはブラックアウトというような症状を起こす。
それをいくらかでも軽減してくれるのがパイロットスーツで、ある程度Gがかかると圧縮空気によって
下半身を締め付け、血が下に下がらないよう防止してくれるのだ。
その効果にも限界はあるが、スーツを着ているのといないのとではまさしく雲泥の差が出てしまう。
さっきも言ったが、あらゆる面で余裕を持ってこそパイロットだ。
もうさほど時間かけなくても、もうすぐ街に着く。
…何も焦る必要はない。
【行動 :N-16に移動-4 残0】
【位置/場所 : N-16/空】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
GW保守
高速道路を下に見ながら、サイコガンダムが進む。
ニースが、大きく1回息をはいた。
まるで、爆発しそうな感情を抑えるかのように。
その呼吸に合わせるように、サイコガンダムを包む波動も揺らめく。
「……あ…!」
そんなニースが、久し振りに口を開いた。
高速道路の先に、あの町の姿を瞳にとらえて。
「…もう少し……もう、少し…!」
早打つ鼓動を抑えるように、片手を胸に当てた。
微かに震える手は、緊張か、それとも歓喜ゆえか。
さらに進んでいくと、ニースの顔に少しずつ笑みが浮かんできた。
さっきよりも早く、浅い呼吸をしながら、大きくなってくる町を見つめる。
「……あは、ははは…!
感じる……。ここからでも、アルバートさんを感じれるよぉ…!」
まだ見えるはずのない、アルバートの存在を感じ取ったニース。
ただしいくら笑っても、ニースの瞳は、決して笑ってなどいない。
「…待ってて…。
…もうちょっと…もうちょっとで…」
【行動:P-13に移動(−4)】
【残り行動値:0】【位置:P-13】
【機体状況:MA形態】
【通信状況:】【人物状況:】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
やっぱり不安だから保守
だから保守し過ぎだっての
初心者板池
243 :
通常の名無しさんの3倍:2007/05/07(月) 16:23:01 ID:5N2heHX/
このゲームはオンラインできるのかな?
ニースの呼吸が、早く、浅くなる。
それは、間近に迫った戦いに、心身が興奮しているのか。
その、悪意がもたらしたとも言えるような興奮の中で、ニースは前を、近づいてくる町を凝視する。
もうすぐレーダーに、反応が現れる。
それは、アルバートやファッツも、サイコガンダムに気づくという事。
それでも、ニースは歩みを止めない。
後戻りは絶対にしない。
このプログラムの中で、ニースは初めてMSに乗り、それを動かした。
このプログラムの中で、ニースは初めて武器の引き金を引いた。
このプログラムの中で、ニースは初めて人を殺した。
…何もかも、初めての経験。
ここに共通点を求めるとするのなら、それはいずれもが受動的であった事だろう。
死にたくないからMSに乗り、死にたくないから武器を使い、死にたくないから殺した。
しかし、現在のニースは違う。
サイコガンダムに乗る理由はただ1つ、プログラムで勝ち残るため。
そしてこれからニースは、勝つために武器を使い、そして、勝つために殺そうとしている。
そこには、相手を思いやる情など入り込まない。
ニースは、あの声の言ったように、本気でもう1度新しい出会いをするつもりなのだ。
レーダーに、2つの光が灯った。
ほぼ同時に、ニースの瞳が見開かれる。
その瞳には、緊張と歓喜の色が混ざっている。
「きた……きたきたきたぁ…!
あはっ…アルバートさん、外であたしを待っててくれた…?
ファッツさんは…まだ工場の中…。
そのままじゃ、生き埋めになっちゃうよぉ?
別に、構わないけど…ねっ!」
レーダーの光が射程距離に入った瞬間、ニースの指は躊躇なく引き金を引いた。
悪魔の箱が、文字通り悪魔になる瞬間。
箱から飛び出た幾筋もの光の束が、シャッコーと工場に放たれた。
【行動:N-14に移動(−3)攻撃(−1)】
【残り行動値:0】【位置:N-14】
【機体状況:MA形態】
【通信状況:】【人物状況:ハイ】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
保守
遠くを眺める事暫し。
特に何の感慨も沸かないまま視線をずらす。
確かに美しい景色なんだろうけど、流石にそれを楽しむ余裕はない。
まあ元はと言えば、この景色をプログラムに例えてしまった俺自身がいけないんだけど…。
それでも心を奪われるほどの景色でもない事も確かなのだ。
これが故郷だったらどうだろう。
ふとそんな思いがかすめる。
小さいけど、弟たちと駆けずり回った森。
父さんが、どこかのコロニーにあったのと似せて造ったといっていた池。
孤児院の皆で野菜を作った畑…。
もし万が一その景色が眼前に広がっていたら、俺はこのプログラムの中であっ
ても心安らいだだろうか。
殺し殺されるという境遇を忘れ、笑う事ができるのだろうか。
「……何考えてんだよ……」
かすめただけの思いがいつの間にか脳裏一杯に膨らんでいる事に気づき、俺は
思わず頭を振った。
こんな有り得ない想像に没頭しかけるとは、まさか今更ホームシックだろうか。
…でもそれは俺から決して切り離せない景色。
それは俺という人間を作ってくれた、かけがえのない景色だ。
こんな時でなければ、誰がその思いを否定するだろうか。
…そう…『こんな時』でなければ…。
「…何だ?」
シャッコーのレーダーが捉えた新たな2つの光点。
1つは小型で、もう1つは…でかい。
パイロットはジンペイさんと…………………え……………ニース?
もう一度見直すが、それはやはりニースだ。
搭乗しているのは、サイコガンダムMk-U。
確認している間にも、ニースが乗るサイコガンダムMk-Uは近づいてきている。
遠目から見ても感じる、その大きさと重量感。
その上MAに変形すれば空を飛ぶ事も可能とくれば、それはまさに怪物と呼ぶ
に相応しいモノだろう。
だけど……何だ……このむず痒さは……。
体を走る妙な感覚を堪えながら、サイコガンダムMk-Uに通信回線を繋げよう
とした時…その機体から光が迸った。
「……!!!」
考えるよりも早く手足が動く。
シャッコーがサイドステップを踏んで反対車線に移る。
次の瞬間には、今までシャッコーがいた場所にビームが着弾していた。
「っ…な…!?」
何故、と俺は言いたかったらしいけど、言葉が喉に詰まって出てこない。
もう一度機種と生徒番号を確認。
…間違いなくあれに乗っているのは、あのニース=エルネージュの筈だ。
「…何故…」
…今度はちゃんと声になった。
それだけ。
ただ声になったからって、それは全く意味がない。
それは、相手に届かせなければいけないのだ。
呆然としていたにせよ、自身の行動の遅さに微かに腹が立った。
ともかく通信回線を開き、周波数を生徒ごとに設定されたものに合わせる。
「ニース!」
先ず名前を呼んだ。
これは何かの間違いだ。
それを証明しようとする為の呼び掛け。
「ニース、俺だ、アルバートだ!」
【行動:ビームをかわす(-1)サイコガンダムMk-Uに通信回線を開く(-1)】
【残り:2P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:呼び掛ける】【服装:革ジャンとジーンズ】
保守
保守
かなり街に近づいただろう。
灯りが見えないからどれだけ近づいたのか判断しがたいが、ここにくるまでの速度と
方向、マップ上の位置を考えると自ずと推測は立つ。
…アルバートがもしも起きていてMSに乗っていたら、とっくに見つかっている筈。
こちらが見つけられないのは、レーダーの不調という決定的原因がある。
本来ならば自機のレーダーでも捉えて当たり前の距離なのだ。
だが何もない。
通信も攻撃の気配も何もない。
…この時間に飛んだのは、やはり正解だったのか。
「っ…!?」
喉から声にならない呻きが漏れたのは次の瞬間だった。
街があると思われる位置で、強烈な光が走ったのだ。
それはともすれば、夜明けの太陽を思わせる眩い光。
街に爆発の閃光が見えなかったら、本気でそう思ったかもしれない。
戦闘。
間違いなく戦闘が行われている。
操縦桿を傾けて、ゆっくりと旋回に入る。
更に近づいたおかげか、不調のレーダーにも反応が現れた。
そこにいるのは、アルバート=パーシングとニース=エルネージュ。
どういった事かは知る由もないが、このまま戦闘が続くのならつけ入るチャンスが
生まれるかもしれない。
近づきすぎないよう注意しつつ、レーダーの反応を見つめる。
【行動 :N-15に移動-1 旋回-1 残2】
【位置/場所 : N-15/空】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : 戦況を見る 】
保守
保守
保守
保守
何かまた、思案顔になっているアルバート。
さっきも何か考え事をしていたみたいだが、やはりニースの行き先を考えているのだろうか?
(…よく考え事をするやつだな)
さっきまでの自分を棚に上げて、ファッツは思う。
…彼自身も、さっきまで考えていたのだ。
自分のこれからの事を。
生きる為に、如何にするべきか。
ただそれはこのプログラムで、たった1人で結論を出すには重いテーマだ。
人は1人では生きていけない。
安っぽいドラマで何度も語られていそうな言葉だが、こうも人数が減って、いざ考えてみると
これほど心身に響く言葉もない。
初めから生死を厭わない、クレージーな奴ならいい。
しかし、ファッツはこれまで打算の中に裏打ちされた、一流ともいえる戦術眼をもって生き延びてきた。
今彼が悩むのは、その一流の眼を持つが故なのだ。
「ちょっと俺、用事があってコクピットにいますから。
マラサイのテストとかで手伝えることがあれば、遠慮なく呼んでください。
…あ、用事って言ってもどっか行くわけじゃないんで」
そんなファッツの考えを知ってか知らずか、さっさとシャッコーに戻ったアルバート。
「テスト、か」
直してもらってから、まだコクピットにも入っていない。
たださっきから慣れない事ばかり考えたせいか、いまいち気力も沸いてこない。
背伸びをして屈伸、柔軟、ストレッチ。
とにかく軽く発散させようと体を動かしてみる。
…そんな事をしているうちに、シャッコーが工場から出て行くのが見えて
「何だよ、どこにも行かないみたいな事言ってたのにな」
のんびり運動をしていた自分を、また棚に上げてしまうファッツだった。
ただまあ、運動の甲斐あってか、少しはやる気も戻ってきた感じもする。
妙に久しぶりの感覚でコクピットに入り、これもまた久しぶりの感覚でマラサイを起動。
セットアップの駆動音が心地よく感じるのは、脚の調子がある程度良好なのが分かるせいか。
「さってと……ま、やってみますかね」
微かに地面を揺らして、マラサイが一歩、一歩と歩く。
今のところは警報も出ていない。
ニースが心を込めて直したのは、どうやら本当だったようだ。
はっきり言えば普通に歩けるだけでも儲けものなのだから、ファッツの顔が自然と緩みがちに
なるのも仕方がない。
「じゃ、せっかくだから頂こうかな、と」
アルバートが拾ってきた武器。
先ずはかなり立派なバズーカと弾薬を手に取った時、いきなりレーダーに反応が出た。
「ん…ニースちゃんか?……っておい…!やっべ…!」
レーダーに現れた反応の主は、いきなり工場に向けて攻撃をしてきた。
やかましい警報など聞く暇も持たず、ファッツはマラサイにダッシュをかけた。
背後で何かが炸裂する音。
何かは分かっているが、確認する気など微塵も起きはしない。
「…おいおい……悪い冗談にも程があるだろ…」
間一髪崩れ落ちる工場から出たファッツの眼に映ったのは、悪い冗談をそのまま形に
したかのような、空に浮く紫色の箱だった。
【行動 :マラサイに搭乗(-1P)起動(-1P)武器を拾う(-1P)工場から出る(-1P)残り0P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(予備弾薬/通常弾×1 拡散弾×1】
【通信状況:】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きたいとは思う】
何も反応がない。
通信が届いていない筈はない。
届いていない筈はないんだけど……ニースが回線を開かない。
「………っ…!」
何でなのか本当に分からない。
声にならない声と荒い息が、噛み締めた歯の隙間から漏れる。
視界の端に崩れ落ちる工場が見える。
あそこにはまだファッツさんが…。
駄目かと思いかけたその時、工場の中からオレンジ色の機体が飛び出てきた。
考えるまでもなく、マラサイだ。
左手に持つのは俺が持ってきたバズーカ。
脚の状態は窺い知れないが、戦闘準備はできていると見るべきだろうか。
…だけどそう簡単に戦闘なんてしたくない。
俺はまだニースから何も聞いていない。
「ニース!」
若干の祈りを込めて通信を送る。
「ニース…何か答えてくれ!
理由があるのなら、俺に話してみてくれ!」
【行動:もう一度呼びかける(0)】
【残り:4P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:呼び掛ける】【服装:革ジャンとジーンズ】
保守
260 :
ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2007/06/07(木) 15:45:44 ID:F+AjZkVz
非常に久し振りにチェック
眩しい光が、狙いを外す事なく工場に命中する。
一撃で半ば崩れ、今にも押し潰れそうな外見になった工場。
もしも、すぐさまもう一撃を加える事ができたなら、ニースはさっきの言葉どおり、ファッツを生き埋めに
できたのは間違いないところだろう。
しかし、引き金にかかったニースの指は動かない。
いや、むしろ動けない、といった方が正解に近いかもしれない。
ニースの指を…いや、身体を止めたのは、シャッコーの通信。
シャッコーは最初のビームを、ニースにはとても真似でできなさそうな、華麗なステップでかわしていた。
勿論、そんな事で今のニースには、攻撃をためらう理由にはならない。
しかし、その通信は…アルバートの肉声は、ニースの心音をゆうに2オクターブは上げる効果があった。
『アルバートさん!』
微かに開いた口から、思わずその名前を叫びそうになる。
だが、ニースは渾身の力でそれに耐えた。
それだけではなく、むしろサイコガンダムの波動が、ニースを…ニースの心を守ったような感覚もある。
乗っていたのがサイコガンダムでなかったら、ニースはすぐさま飛び出していって、アルバートに抱きついて
許しを請うていたかもしれない。
「…くっ…!」
ニースは、ある意味渾身の力で通信機の電源を切った。
外界との交信を遮断したそれに向かって、ニースは弱々しく首を振る。
「…反則だよ…アルバートさんの…声…」
それは真実でもあった。
アルバートの呼びかけは、サイコガンダムの波動に飲み込まれていたニースの心を、あっという間に
現実に引き戻しかけたのだから。
だが、以前ならそれだけで折れてしまっただろうニースの心は、悪い意味ではあるが、サイコガンダムに
よって強くなっていた。
サイコミュの鈍い光がニースを包み、ニースはまた操縦桿を強く握る。
「…だけどね」
再び瞳に宿る、一筋の狂気の光。
「あ、あたしは……あたしはっ…あたしはぁっ!」
その声に反応するように、ビーム砲がシャッコーと、脱出に成功したらしいマラサイに向く。
「また、裏切るわけにはいかないのぉっ!!」
強さを望んだニースと、強さを与えてくれたMS。
その叫びとビームが、一緒になって再び放たれた。
【行動:通信を遮断(−1)シャッコーとマラサイに攻撃(−2)】
【残り行動値:1】【位置:N-14】
【機体状況:MA形態】
【通信状況:】【人物状況:ハイ】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
暫く旋回を続けるが最初の攻撃以来、状況の変化は感じられない。
正直迷うところだ。
このままぐるぐる回り続けるわけにはいかない。
だからと言って安直に飛び込んでいくわけにも行かない。
シャッコーもサイコガンダムMK-Uも、まず間違いなくこちらに気づいている。
上手くタイミングを取らないと、最悪どちらからも狙われる羽目になる。
ふとレーダーに目をやると、更にもう1機のMSが現れた。
マラサイ……パイロットはファッツ=シュヴィール。
一瞬だけ口の端を笑みの形に歪ませ、愛機を街に向けて飛ばす。
向こうではどう思っているかは知らないが、こちらにとっては新たなMSの登場は
ある意味状況に変化が起こったと解釈してもいい筈だ。
どうせここを飛び続けても、状況が好転する可能性は低いのだ。
だったら…今の閃きに賭けても損はない。
所詮戦場で選ぶ事が出来るのはYESかNOか…生か死かの2択なのだから。
3機の位置関係からすると、サイコガンダムMK-Uがシャッコー、マラサイと対峙しているようだ。
ならばマラサイが現れた事で、サイコガンダムMK-Uが再度攻撃を仕掛けるかもしれない。
狙いはその一瞬。
不安要素は挙げればきりがない。
だが何度も言うが、それを気にしていたらこの状況の打破など不可能だ。
シャッコーもこちらの接近には気づいてるだろう。
それにも拘らず動きを見せないという事は、サイコガンダムMK-Uに集中しているのだ。
目標は…シャッコー前方数十メートル。
残っている武器で倒すのは難しいが、上手くいけば僅かの間でも視界を塞げる。
アルバートの言うような、戦士の戦い方ではない。
だがそれはそのように戦える人間が言う贅沢だ。
今あるだけの機体と武装を出来る限り活用するのも、戦士の資質みたいなものだとは思う。
引かれるトリガーと、伸びてゆく火の矢。
「ま…戦士がどうのこうのは、この際どうでもいいんだが…な」
【行動 :N-14に移動-1 シャッコー前方にロケット発射-1 残2】
【位置/場所 : N-14/空】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、 速度低下】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み)
右腕の不自由 服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×0 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
命日保守
1秒…2秒…5秒……。
「くそっ…何なんだよ…!」
ニースからは何の返答も…息遣いすら聞こえてこない。
何も分からない。
どうやらニースは何も教えるつもりがないらしい。
敵には何の情報も与えない。
極めて基本的で、分かりやすい。
分かりやすいからこそ、余計に何故なのか分からなくなる。
…今の俺に理解できる事と言えば……俺の方から理由を聞くのは無理そうだという事
と、あとはこのままでいたら殺されるという事か。
その考えを証明するかのように、サイコガンダムMK-Uのメガビーム砲が俺に向けら
れようとしている。
いや、俺だけではなくマラサイにも向けられているみたいだ。
この時点でニースとファッツさんが繋がっている可能性は低くなった。
横への注意を欠かすわけにはいかないから、そこの見極めも早くつけないと…。
だけどまだ…まだニースと話をするチャンスは無いわけじゃない。
ニースの性格を考えると、この行為に出るには多分かなりの決心が必要だった筈だ。
だからこそ何も答えてくれないし、攻撃にも迷いはない。
ならその決心を揺らがせるしかない。
どうするか。
…俺にサイコガンダムMK-Uの攻撃が効かない事を教えればいい。
ニースもやると決めた以上は、必殺の意思を持って攻撃してくるだろう。
もしその攻撃が全て効果がなかった時、それでもニースは意思を保ち続けていられるのか。
攻撃が大きければ大きいほど、効果がなかった時の落胆も大きい。
もしチャンスがあるとすれば、その心の隙を狙うしかない。
メガビーム砲が狙いを定めている。
このくらいは無難に防いでおかないと、何も始まらない。
射撃とのタイミングを計ろうと、サイコガンダムMK-Uを見つめる。
しかしその時、俺の呼吸を狂わせる出来事が目前で起きた。
シャッコーの前方10数メートルで何かが落ちて炸裂する。
乾いた炸裂音と共に、アスファルトの破片と砂埃が高く巻き上げられる。
それはシャッコーの視界を防ぐほどの量じゃなかったけど、サイコガンダムMK-Uのみに集中して
いた俺の意識が殺がれ、回避動作が僅かに遅れた。
俺にそれを悔やむ間も与えずに、シャッコーの周辺に光の矢が降り注ぐ。
さっきのものとは比べものにならない大きさの爆発音と、振動がコクピットを揺らす。
1テンポ遅れてしまったバックステップで爆煙の中からシャッコーを出すと…。
その右腕は…肘から下が存在しなくなっていた。
【行動:バックステップ(-1)】
【残り:3P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)、右腕肘下消失】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:チャンスを探る】【服装:革ジャンとジーンズ】
保守
269 :
ファッツ=シュヴィール@代理:2007/06/15(金) 19:58:36 ID:SHK55l0Z
ちぇっくしとく。
270 :
通常の名無しさんの3倍:2007/06/15(金) 20:36:00 ID:08p8shi0
保守
それはまさしく、悪い冗談としか言いようのない代物だった。
MSの規格を無視したかのような大きさ。
万有引力を無視したかのような形態。
そして何よりも、あらゆるものを無視するかのような攻撃。
どれを取ってもファッツには、悪い冗談という表現しか浮かばなかった。
「はは……でも俺は無視しないんだ」
砲口がマラサイを向くのを見て、苦笑するファッツ。
運の悪い事に、ニースはファッツも見逃すつもりはないらしい。
好いている筈のアルバートに攻撃している時点で、彼にもその切っ先が向けられる
のは至極当然の事実と言える。
迷惑千万だが、本来のプログラムはこのようなものなのだ。
ニースに余計な思い入れがない分、ファッツの手足は素早くマラサイを動かした。
「…えっらそうに浮いてんなよ…!」
発射されたビームをかわしながら、マラサイはバズーカを構える。
修理してもらった脚が機能している事に若干の安堵を感じつつ、ファッツはターゲットサークル
一杯に捉えた箱に2発撃った。
【行動 :攻撃をかわす(-1P)バズーカで攻撃(-1P)残り2P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(予備弾薬/通常弾×1 拡散弾×1】
【通信状況:】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きたいとは思う】
272 :
ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2007/06/17(日) 15:10:02 ID:ZHJknsH1
ちぇっく
サイコガンダムの光の矢が、再びシャッコーとマラサイに襲い掛かっていく。
その行方を見守ろうとしたニースの視界の端に、レーダーに映った、急速に接近する光が見えた。
次の瞬間、シャッコーの前で何かが爆発して、それが収まらないうちにサイコガンダムのビームが爆発した。
巻き上がる、濛々たる煙。
ニースが瞳をこらして見つめていると、右腕を失ったシャッコーが出てきた。
「…当たった…!」
その声に見え隠れする、喜びと驚きが入り混じった色。
これまで、絶対に手の届かないところにあったアルバートの才能。
しかし今、、全くといっていいほどダメージがなかったシャッコーに、傷をつける事ができた。
その事実は、これまで自身でさえ半信半疑だった、自分の力に対する自信を深める結果になった。
しかし、ニースの視線は、また別の方向に向いている。
シャッコーの前に、何かを撃ってきた戦闘機。
その攻撃が、サイコガンダムのビームが当たる要因になったのは、間違いないところだ。
しかし、ニースはそれが気に入らない。
ニースは、アルバートが嫌いになったのではなく、別の世界で新しい出会いをしたいと望んでいる。
そのために、他の参加者、特にアルバートとは、2人だけで決着をつけようと決めているのだ。
それだけに今の戦闘機の攻撃は、ニースにとって邪魔以外の何者でもなかった。
そして、次にやってきた振動が、新たな邪魔者の存在をニースの脳に強引に刻みつける。
「…な…っ!?」
ニースが視線をそらした一瞬に、マラサイの攻撃がに命中しサイコガンダムは、微かに煙を上げて、ゆっくりと
空中で傾き始める。
メインスラスターが、1基損傷したらしい。
その時、咄嗟にニースはサイコガンダムを変形させた。
再び人型へと変形し、ややバランスを崩しながら着陸するサイコガンダム。
そのコクピットで、ニースは火の出るような視線で、マラサイと戦闘機に交互に睨む。
「……邪魔…ばかりぃぃ…!」
ニースの声とは思えないような、憎悪のこもった響き。
それに反応するかのように、サイコガンダムも紫色の機体を鈍く光らせる。
それはまるで、サイコガンダム自身が、邪魔者を認識しているかのようにも見えた。
「するなあああぁぁぁ!!」
ニースの叫びと共に、サイコガンダムの体が光に包まれる。
空中には浮けなくなったが、人型になったサイコガンダムの攻撃は、これからが本番だ。
邪魔者を排除すべく、ビーム砲をマラサイと戦闘機に向かって撃つ。
【行動:変形(−1)戦闘機とマラサイに攻撃(−2)】
【残り行動値:1】【位置:N-14】
【機体状況:MS形態】【通信状況:】【人物状況:ハイ】
【損傷状況:胸部3連装拡散メガビーム砲1門破壊、メインスラスター1基破壊】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×2、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
275 :
ジンペイ=カザマキ@代理:2007/06/19(火) 21:35:07 ID:a1sLZBbw
文の投下はいつになるか分かりませんが、早めにチェックだけ
それは自画自賛したくなるほどに見事なタイミングだった。
愛機から放たれたロケットが、当初の狙いよりもシャッコーの近めに着弾する。
一瞬の眩い光と共に、吹き上がるアスファルトの破片と爆煙。
それが晴れないうちに、サイコガンダムMK-Uのビームがシャッコーを包み込む。
自らが放ったロケットのそれに倍する光が、いくつもシャッコーを包んだ爆煙の中に煌く。
その激しい爆発の中では、何者も生き残れないように見えたが…。
シャッコーが何事もなかったように煙の中から現れるのを見て、一瞬口の端が歪みそうになる。
「……っ…!」
次の瞬間、思わず声を上げそうになった。
無事に思われたシャッコーの右腕の、肘から下が無くなっているのを確認したからだ。
確かにシャッコーを損傷させたのは、サイコガンダムMK-Uかもしれない。
しかしその布石を敷いたのは、紛れもなく俺のロケットだ。
たった1発のロケットで挙げた戦果としては、満足しうるものに違いない。
勿論出来るならば撃墜したいが、そんな最上の戦果は難しいか…。
「…流石にそこまでは望め…なっ!?」
独り言は突然の振動に中断を余儀なくされた。
まるで積乱雲に突っ込んだかのように揺れる機体。
あまりの振動に、機体が上を向いているのかさえも判断できない。
唯一分かった事と言えば、サイコガンダムMK-Uに攻撃されたらしいという事。
機体の横をすり抜ける光の矢の束。
その矢の束が炸裂して、雨ではなく光そのものに飛び込んでいく感覚。
何も考えずに(と言うか考える余裕もなく)スロットルを限界まで上げて、光の中から抜け出そうと
一直線に飛び続ける。
何秒そうして飛んだのか。
視界がやっと開けた時、愛機は贔屓目に見ても飛んでいるのが奇跡と言える状態だった。
俺自身も機体と大差がないらしい。
着ている制服は、流れ、滴り落ちる血で変色している。
まだ…飛べない事はない。
しかしそれもあと数分続くかどうか…と言ったところだろう。
それより先にもう一度同じ攻撃を食らったら、それこそひとたまりもない。
「……覚悟…決め時か…」
まだ意識があるうちに、まだ操縦桿を操る握力があるうちに。
そうだ……まだだ…まだ、まだ、まだ、出来る事があるうちに…。
「シャ…ッコーだけ攻撃すんのは…不公平だしな…」
【行動 :回避運動-1 残3】
【位置/場所 : N-14/空】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、速度低下、左右主翼半損
機体各所損傷】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み) 、右腕の不自由、破片による全身の傷
服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×0 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
277 :
ファッツ=シュヴィール@代理:2007/06/21(木) 16:52:54 ID:N+ckIhfx
仕事中にこっそりチェック
保守
攻撃…。
この機体に残されたものは僅かな機銃弾とフレアーのみ。
あのサイコガンダムMK-U相手では、何をやっても蚊に刺された程度にしかならないだろう。
墜落寸前の機体。
枯渇寸前の兵装。
相手は巨大だが鈍重。
それを踏まえた攻撃方法など、誰が考えても1つしか思いつかない。
ゆらりと旋回し、サイコガンダムMK-Uを視界正面に捉える。
…あのMSに対してこのまま突っ込むのはあまりにも危険だ。
…と考えるのは極めて自然だが、残念ながらこの状態では小細工も出来ない。
まああれだ。
覚悟を決めたら、あとは勇気を振り絞るしかない。
勇気ある者には弾が当たらないって気休めもあるしな。
取りとめもない考えを浮かべながら、再度スロットルを限界まで上げる。
僅かな瞬間だが、眼下にシャッコーの姿が見えた。
「…お前の言う、戦士の生き様とやらとは随分違うだろうが…」
最初にシャッコーを攻撃しておいて、今度はサイコガンダムMK-Uに行こうとしている。
アルバートの言っていた戦士のイメージに、俺は絶対当てはまらないだろう。
だが俺はそんな崇高なものの為に生きているのではない。
『悲しいけど、これって戦争なのよね』
1年戦争時、ソロモン攻略戦においてそんな通信を発した兵士がいたという。
戦争では、そして戦場では、ある程度の非人道的な手段は是とされる。
何故ならそこでは、勝利以上の目標などありはしないのだから。
その通信を発した兵士がどういう状況だったのかは知る由もないが、敵に対しても味方に対しても
使われる手段は悲しかろうが苦しかろうが、戦争だからと納得させるしかない。
戦士がどうのこうのというのは後方で安穏としている奴らか、戦場にあっても己以外の事に目を向け
られる余裕と才能のある奴が考えとけばいい。
「俺は…俺でしかない」
時代が変わろうと戦場が変わろうと、戦闘機乗りとしてしか生きてこれなかった。
不器用といえばそれまでだが、それは俺にしか出来ない生き方だと誇れる。
「俺が見せるのは…戦士の生き様なんかではない…!」
正面にサイコガンダムMK-Uを見据える。
既に視界が霞んでいるが、あの巨体は見間違えようがない。
「甲鮫…ジンペイ=カザマキの生き様、よく見ておけ…アルバート!」
【行動 :旋回-1 特攻-1 残2】
【位置/場所 : N-14/空】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:右垂直尾翼破損、レーダー精度半減、速度低下、左右主翼半損
機体各所損傷】
【人物状況 : 右腕、右大腿部に中度の裂傷(処置済み) 、右腕の不自由、破片による全身の傷
服装/連邦軍夏服(規定外な略装)】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4(残10%) 60mm機関砲×1(残弾無し)
両用ロケット弾×0 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 水2L入りペットボトル×2 デジカメ アルバム
レーション×3食分 拳銃(弾倉×2) サブマシンガン×1(弾倉×1) 】
【方針 : … 】
保守
「おっ!」
サイコガンダムMK-Uを2回、爆発の光が包んだ。
初弾全弾命中。
実戦ではまず有り得ないその戦果は、ファッツでなくとも思わず声を出してしまうだろう。
そしてその効果は早速現れた。
宙に浮いた箱が、歪に変化していく。
箱の形態を維持しきれなくなったのだろうか。
これがダメージによる破壊だったら喜ばしいところだが、如何に楽天的に考えてもそれはない。
「でも…もしそうなら嬉しいとこなんだけどね」
願望じみた呟きを漏らす。
しかしその目は、決してサイコガンダムMK-Uから離そうとはしない。
そしてそんなファッツの言葉を嘲笑うかのように、箱は人へと変化を遂げていく。
箱だった頃はまだ愛嬌があったが、ああなるともうその単語は当てはまらない。
悪魔にも似たその外観と相まって、凶悪ともいえる雰囲気を放出しまくっている。
後の祭り、逆鱗に触れる、薮蛇、虎の尾を踏む、覆水盆に返らず。
ファッツの脳裏を様々な諺が通り過ぎ…。
「はは……もしかして…怒らせちゃった…かな?」
多少引き攣った笑みを浮かべながら、それでも最適な行動をとろうと手足を動かして。
スラスターが炎の花を咲かせ、マラサイが飛び退く。
その後を追うように、サイコガンダムMK-Uのメガビームが次々と着弾する。
1発、2発、3発、4発…。
怒りの表現に相応しい、盛大な爆発と破片の雨。
「くっそ…!
数撃ちゃいいってもんじゃねえぞ!」
ともすれば萎えかける気持ちを奮い立たせるため、聞こえるわけがないのを知りつつも怒鳴り散らす。
その声を打ち消すかのように、更に1発、2発と降り注ぐメガビーム。
未だマラサイには1発も命中はない。
そんな奇跡的とも言える状況の中で、バズーカを撃ち返せたのもまた奇跡と言っていいのだろうか。
ファッツ自身は殆ど夢中でトリガーを引いた。
しかし撃った本人は、弾の行方など全く興味はない。
少しでも、サイコガンダムMK-Uに隙を作らそうと撃ったのだから、それも当たり前だった。
【行動 :攻撃をかわす(-1P)バズーカを3発撃つ(-1P)残り2P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(0発)(予備弾薬/通常弾×1 拡散弾×1】
【通信状況:】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きたいとは思う】
284 :
ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2007/06/30(土) 17:20:00 ID:GyJ+GocO
IDチェックです
サイコガンダムの全身から、いくつものビームが容赦なく、戦闘機とマラサイに向けて発射される。
アルバートと2人だけで戦うという願望と、サイコミュによって増幅された闘争心が、そのまま
2機に向けられている格好だ。
「お前らなんか、いらない!
もう、あたしの目の前からいなくなれぇ!」
叫びながら、なおも引き金を引く。
上空で、ビームの光とは違うものが見えた。
驚いた事に、あれほどのビームを束で撃たれていたのに、戦闘機はまだ飛んでいた。
だが、その状態を見れば、それもあと僅かに思える。
「あは…ははっ…。
ほら…そんな小さいので戦おうとするから、そんなになるのよ…!」
勝利を確信した口調で、今度は視線を下に戻す。
損傷した戦闘機にはもう目もくれず、ニースは残りの敵であるマラサイを睨んだ。
マラサイにも同時に攻撃をしていたが、バックステップでかわされているらしい。
「なに、生意気に粘ってるのよ…!
そんなボロボロのMS…さっさと片付けてやる!」
再び、ビームをマラサイに撃つ。
閃光と破片で、その姿が全く見えなくなるほどに。
あらゆる生物を抹殺しかねないビームの雨。
しかし、マラサイはその中で生きて、しかも反撃をしてきた。
吹き上がる破片の隙間を飛んでくる、3発のバズーカ。
ニースは、まだマラサイが生きている事に少し目をみはったが、それは予想できる範囲内でもあった。
北の橋の戦いで、飛んでくるミサイルを撃ち落したニースの目は、冷静にバズーカの弾を捉える。
「伊達に生き残ってるわけじゃないって事ね…」
余裕をもってかわそうとする、ニースの目の端にレーダーが見える。
それは、ニースが予想しなかった小さな機体が、サイコガンダムの間近に迫っている事をはっきりと映していた。
「え…?…くぁあっ!」
気づいた時には、サイコガンダムは激しい揺れに襲われていた。
それが、戦闘機がぶつかったためと気づくのに、ニースは一瞬の間が必要だった。
そして、その一瞬の間は次の手遅れへ繋がる事に、ニースは気づけたかどうか。
殆ど、間髪をいれずに、バズーカがサイコガンダムに命中した。
「うあ…っ!また、あ、当たった…っ!?」
発生し続ける振動に、一瞬不安げな表情を浮かべて、ニースは被害を調べる。
2発が命中し、左腕のビームソードが使えなくなっている。
そして、頭部付近に当たった戦闘機によって、Iフィールドと脱出装置が使えなくなっていた。
だが、確かに各所で被害は出ているが、いずれもサイコガンダムを破壊するには至っていない。
ニースは、瞳に再び光を取り戻すと、マラサイに憎悪の視線を送る。
「…何で…!
お前は、邪魔だって!邪魔だって!邪魔って言ってるのにいい!」
手負いの獣が吼えるように、サイコガンダムは三度ビームを撃つ。
【行動:マラサイに攻撃(−1)】
【残り行動値:3】【位置:N-14】
【機体状況:MS形態】【通信状況:】【人物状況:ハイ】
【損傷状況:胸部3連装拡散メガビーム砲1門破壊、メインスラスター1基破壊、Iフィールド使用不能
脱出装置使用不能】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
保守
俺は何も出来ていない。
撒き散らされる光の矢と、吹き上がる火柱。
何もかも掻き消すような轟音の中から、それに屈する事を拒むかのように黒い弾が飛ぶ。
他人事のように繰り広げられる光景。
…俺は、何も出来ていない。
シャッコーは右腕を失っている。
サイコガンダムMK-Uの攻撃の直前に着弾したのは、間違いなくジンペイさんの戦闘機
の攻撃によるものだろう。
偶然か故意かは分からないけど、その絶妙なタイミングに俺の回避行動は一瞬遅れた。
…ニースはシャッコーの腕を落とした事で、自信をつけてしまったのだろか。
更に激しい砲撃でマラサイを、そしてニースに味方した(ように見える)戦闘機までも
攻撃している。
…俺は何も出来ていない。
…いや、何もしなかった訳じゃない。
サイコガンダムMK-Uに何度も通信を試みた。
でも返ってくるのは、沈黙という拒絶。
マラサイと戦闘機とサイコガンダムMK-Uの戦闘の中で、俺だけが取り残されている。
そして…俺は何も出来ないまま口を閉じた。
分かっている。
俺の言葉がどれだけ空虚なものなのかくらい、分かっているつもりだ。
もしもニースに声が届いたとして戦闘を止める事が出来たとしても……俺の言葉には
その先が、ない。
この場で戦闘を止めたからってどうなのか。
その先生き残るために、ニースに何かを示してやる事ができるのか。
具体的な何かをこの状態から生み出せるのか。
父さん…レイモンド=デリックと共に戦った生徒たちのように。
それを生み出せるシュウジやリナルドがいた。
それを助けられるリファニアやベルクがいた。
仲間たちと巡り会う運があり、プログラムの中でも協力を誓い合える信頼があった。
「…ニース1人の信頼も得られない俺に…何が言える…!」
コクピット内に俺の呻くような声だけが響く。
時間も場所も俺自身のスキルも、何よりも…信頼さえもない。
そんな俺が…何も出来ない俺から出る言葉なんて、空虚以外の何者でもない。
…全く…お笑い種だ。
ふと我に返った。
何秒間そうしていたのかは分からないけど、戦闘は止まる気配を見せない。
何故か攻撃はシャッコーには向けられていないみたいだ。
…今攻撃されなかったのは、一応運が良いと思うべきなんだろうか。
轟音は続く。
破壊の光は相変わらず、街を蹂躙している。
その中心にいるのは、ニース=エルネージュとサイコガンダムMK-U。
無理矢理気を取り直してモニターを見上げた時、そのサイコガンダムMK-Uの頭部
付近にメガビームとは違う光が見えた。
【行動:憂悶(0)】
【残り:4P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)、右腕肘下消失】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:チャンスを探る】【服装:革ジャンとジーンズ】
「ジンペイ=カザマキ中尉。
貴官を本日付でラサの士官学校の教官に任命する」
UC0090が明けて暫くした頃、俺を呼び出した司令が唐突に言った。
「…仰る意味がよく分かりませんが」
意味は百も承知だが、敢えて聞き返してみた。
「意味も何も、言った通りの事だよ
君の士官学校への異動が決まった……それだけだ」
特に表情も変えず、淡々と繰り返す司令。
「お断りします…と言ったら?」
結果は百も承知だが、敢えて言ってみた。
「君に辞令を拒否する権利はない筈だが?」
特に表情も変えず、またあっさりと言い返された。
確かに飛行隊長とはいえ、正式な辞令を拒否する権利は認められていない。
だが拒否はできなくとも、抗議くらいはできる。
「しかしいくらなんでも急すぎるのでは?」
ネオジオン抗争と呼ばれた戦いが終結して1年。
その間確かに戦闘などもなく、飛行隊も腕を撫す日々が続いてはいたが…。
だからと言って、いきなりそんな所に異動させられる筋合いはない。
「大体…」
更に言い募ろうとした言葉は、次の司令の言葉の前に沈黙を余儀なくされた。
「縮小だ」
「…!」
顔色が変わった俺に、更に投げかけられる言葉。
「君も馬鹿ではないから分かるだろう。
飛行隊の維持も馬鹿にはならんのだ。
戦闘があるわけでもないのに、これだけの数の軍用機を抱えるのは非効率なのだよ」
それは…理解できる。
飛行隊の維持の為に必要な物資、人員、金。
戦時ならばまだしも、現在の状況でそれが許されるものではなかったという事か。
俺の心に突き刺さったのは、次の言葉だった。
「確か以前は君の隊は何て言われていたかな…ええと…。
ああ、最前線はこの部隊と共にある…だったかな?」
その話は聞いた事がある。
まあいくらなんでも大袈裟な感じがするが、言われて悪い気分でもない。
アイアンシャークが一番輝いていた頃の逸話みたいなものだ。
「…で、君の隊の最前線は…今どこにあるのかな?」
今度こそ俺は言葉を失った。
我が隊が…というより、飛行機が戦闘の主役になり得たのは1年戦争までだった。
MSが生み出され様々な用途に適した機種が開発されると共に、飛行機はその活躍の
場をどんどん奪われていった。
それでもまだ飛行機乗りは誇りを持っていた。
MSは精々が跳ねるくらいで、FSSがなければ空も飛べない。
元々の在り方が違うのだ、と。
あの日が来るまでは、空は飛行機のものだと思っていた。
可変MS。
空での活動を可能にしたMSの登場に、飛行機は本来在る場所である空さえも奪われ…。
そして…アイアンシャークから、最前線は次第に遠ざかっていった。
「…要するに左遷…ですか?」
努めて平静に声を出した。
自分が、隊が、何よりも飛行機が置かれた立場が、俺から何かを崩しそうになる。
「そんな悲観するものでもあるまい」
やはり表情も変えずに続ける司令。
「聞けば、ラサに連邦本部を移動する計画もあるというぞ。
一足先に空気に慣れておくのも悪くないと思うがね」
ものは言い様だと心底思う。
本部といったら一般的には最前線とは無縁の場所だ。
どう聞こえを良くしようとも、現実は変えようがない。
「…お断りします」
少しの間を置いて、ゆっくりとした口調で言う。
司令の右の眉がピクリと動いたのが見える。
「私の体と心は常に隊と共に在ります。
そして私は現状がどうあろうと、パイロット以外の任に就く事を望みません」
これは紛れもなく本音だ。
これまで戦闘機パイロットとして生きてきて、今更士官学校で教官などできるわけもない。
「…そのような我侭は許されんが…」
少し困ったような顔で司令が頭を掻く。
怒鳴られるかと覚悟はしていたが、その反応は案外拍子抜けだった。
「何から何まで我侭を言うわけはありません。
部隊の縮小は…仕方のない事だと思います。
ただ私は少しでも…ほんの少しでも前線に近い場所にいたい。
それだけです」
後方の教官になったら、今後前線に出る機会は激減する。
今は安定していても平和になったとは言えない世界で、有事の際にここに居れば、前線に
出るチャンスはまだまだ残るのだ。
そして前線に出れさえすれば飛行機の有用性を示して、また隊の規模を元の通りに戻す事
も可能になる。
「少し待っていてくれ」
僅かな沈黙のあと司令は、そういい残して副官と隣の部屋に行った。
何かの相談だろうか。
言う事を言ってしまったから、特に何をするでもなく2人が戻るのを待つ。
2人が戻ってきたのは、それから更に数分経ってからだった。
「ジンペイ=カザマキ中尉…君に極秘の任務を与える」
開口一番司令は意外な事を口に出した。
問題は異動の事だと思っていたから、そう感じたのも無理はない。
「極秘ですか?」
聞き返すと司令は静かに頷いた。
「まだ発表されていないのだが、テキサスコロニーが反地球連邦組織の襲撃を受けた」
それは確かに初耳だ。
テキサスコロニーなんかを攻撃する意味は、イマイチ分からないが。
「君はテキサスコロニーまで行き、その鎮圧に当たってほしい。
知っての通りネオジオン抗争が終結してからまだ1年だ。
地球圏がまだ復興中だというのにこういった事態が起こっては、兵士はもとより人民も不安に突き落とす事になる。
だからこその極秘任務なのだ」
司令は一気にまくし立てた。
まさかいきなり前線とは思わなかったから、さすがに直ぐには返答ができない。
だがここで再度拒否したら、ラサ行きは完全に決定だろう。
「勿論武器は使い慣れた物で構わないし、戦果を挙げれば上に掛け合って縮小の話も何
とかしたいとは思うのだが…」
伺うような視線を向けてくる司令に…俺はこの任務の了解を伝えた。
多少の不安はある。
しかし再び前線に立てる喜びと、任務に対する高揚感。
それに部隊に対する使命感が不安を遥かに上回り、疑うという感情を封殺してしまった。
…結果的には…それが裏目に出てしまったのかもしれないが。
宇宙へと向かうシャトルの中で、俺は知らず知らずに眠らされ、このプログラムに放り
込まれる事になった。
…今となってはあの任務が本物だったのかも分からない。
ただ改めて考えると、司令は俺を隊から引き離したかったのだろう。
隊を縮小しても、それを不満に思う兵士が俺を担ぎ上げる可能性がある。
反乱はさすがにないが、基地で騒ぎになればそれだけで司令も処分の対象だ。
だから架空の任務の失敗で俺を戦死扱いにし、隊の縮小をより手早く効率的に行おう
としたのではないか。
更に俺の任務の失敗は飛行機が時代遅れである事を証明する証にもなり(まあよく考え
れば詭弁もいいところだが)縮小の手助けになる。
…結局俺は戦闘機乗りとしての生き方を奪われただけでなく、飛行機の時代の幕引きに
使われてしまったわけだ(あくまでも可能性だが)
自然と笑みが浮かんでいた。
もはや避けようのない死を目前にして、思わず口元が笑みを形作ってしまう。
恐怖でおかしくなったのではない。
戦闘機乗りとしての生き方を奪われた俺が、厄介払いで放り込まれたプログラムの中で
その生き方を全うできる事がおかしかった。
確かにこれは下策だ。
だが下策だろうが自己満足だろうが、少なくともジンペイ=カザマキはその生き方を貫き通す事ができる。
コクピットが大きく揺れた。
どうやら機体の一部を持っていかれたらしいが、もうそんな事は関係ない。
…………。
……基地のみんなどうしているだろう。
隊の奴らは元気にやっているだろうか。
縮小はされたかもしれないが、アイアンシャークが残っているのなら大丈夫だ。
飛行機の時代は過ぎたかもしれないが、存在がなくなるわけではない。
培ってきた歴史があり、積み重ねていく歴史がまだまだある。
頑張れ……みんな……
体はなくなっても…俺の心はいつも、アイアンシャークと共に在る…!
【ジンペイ=カザマキ……脱落】
保守
294 :
ファッツ=シュヴィール@代理:2007/07/12(木) 23:20:43 ID:nIOrlwE5
IDちぇ
止む事のない雨。
1粒でも当たればあの世行きの死の雨。
右を向いても左を向いても、見えるものは雨ばかり。
ファッツが未だに無事なのは、もはや奇跡以外に言いようがなかった。
メガビームの光と、それが炸裂する爆発の光がファッツの顔を照らす。
ファッツの顔に浮かぶのは笑み。
狂ったわけではなく、しかし余裕があるわけでもない。
むしろ余裕がないからこその笑みだろう。
精神が重圧に耐えれる限界。
その限界を感じたが故に、ファッツは笑った。
狂う為ではなく、精神の平衡を保つ為に。
1つはっきりした事を言えば、ファッツはある意味での天性の才能を持っている。
それは日頃発揮されるものではなく、こういったぎりぎりの場面で初めて発揮されるものだろう。
常人ならば発狂しかねないこの状況で、ファッツは自然と精神を保つ為の自分なりの方法を実行した。
それが笑み。
…笑みは武器になり得る。
向けられた人の心を和ます事もできれば、敵の心を疑心暗鬼に陥れる事もできる。
それを自分に向ければ心の余裕に繋がる。
ファッツは自分でも知らずに、それを使いこなしたのだろうか。
その天性の才能で。
「アルバート…な、にしてんだ!」
サイコガンダムMK-Uの頭部の辺りで爆発が起こり、攻撃が小止みになり。
そのおかげで僅かに周囲にも気を配れた。
見えたのは動こうとしないシャッコー。
一瞬ニースとの繋がりが脳裏をよぎったが、直ぐにそれを打ち消す。
シャッコーは右腕を失っているし、やろうと思えばマラサイを十字砲火で攻撃できた。
動かない理由は…何となく分かる。
弾の種類を確認する間もなくバズーカの弾倉を換装。
片手での換装だから、異様に焦ってしまう。
「アルバート!」
その間に通信を繋げて叫ぶ。
そこにあるのはただ1つの理念。
『敵の敵は味方』だ。
「何そんなとこで突っ立ってんだ!
そのまま死ぬつもりか!?」
反射的にマラサイを横にジャンプさせると、次の瞬間辺りにメガビームが着弾した。
この反応もまた、才能だろうか。
ともかく撃ち返しながら、更に声を張り上げる。
「死にてえなら俺は何も言わねえ!
だがそうじゃなければ、動けバカヤロウ!」
【行動 :攻撃をかわす(-1P)シャッコーに通信回線接続(-1P)換装(-1P)拡散弾を2発(-1P)残り0P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(3発)(予備弾薬/通常弾×1)】
【通信状況:】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きたいとは思う】
297 :
ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2007/07/16(月) 23:29:50 ID:18MuiSXZ
IDチェックだけしておきます
「何で、よけるのよお…!」
怒りを通り越したのか、泣き声にも似た声で呻くニース。
さっきまで歩く事もできなかったマラサイに、これだけ攻撃をかわされては無理もないだろう。
その元になったのはニースの修理なのだから、正直、泣くに泣けない部分はある。
しかもサイコガンダムは、片腕のないマラサイに、予想外のダメージを受けている。
まさしく弱り目に祟り目だ。
またマラサイがバズーカを撃った。
「そんな、ものぉ!」
今度こそと言わんばかりに、サイコガンダムが体をひねって避けようとする。
その瞬間、迫ってきた弾が破裂し、中から小さい玉が無数に飛んでくる。
「だから…っ!」
さらに1歩大きく下がって、大半の玉を避け、当たった残りの玉もたいしたダメージではない。
サイコガンダムの目が、ぎらりと光る。
「お前は…邪魔だって言ってる!」
ニースはその体勢を維持すると、右手のサイコミュ式ビームソードを放った。
この場面での初めて使う武器だが、そんな細かい事は考えていない。
何度も攻撃して、全て避けられている。
ニースの頭の中は、マラサイを倒す事で一杯になっていた。
【行動:攻撃をかわす(−1)マラサイに攻撃(−1)】
【残り行動値:2】【位置:N-14】
【機体状況:MS形態】【通信状況:】【人物状況:ハイ】
【損傷状況:胸部3連装拡散メガビーム砲1門破壊、メインスラスター1基破壊、Iフィールド使用不能
脱出装置使用不能】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを倒す】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
299 :
ファッツ=シュヴィール@代理:2007/07/21(土) 00:56:46 ID:B5G11ENF
IDをチェック
シャッコーでアルバートが聞いているかは分からないが、ファッツは声を張り上げる。
「お前とニースちゃんの間に何があったかは知らねえし、聞くつもりもねえ!
情が移ったから攻撃したくないってんならそれも構わねえ!」
サイコガンダムMK-Uは、マラサイの攻撃をかわしている。
さすがに何度も当てさせてくれはしない。
「…!」
瞬間、ファッツの背を寒気が走り抜ける。
咄嗟にマラサイをジャンプさせると、今までいた場所をビームサーベルが薙いでいった。
今の攻撃の正体……右腕が分離していたのを知ったのは、ジャンプしてから。
戦歴が1年戦争までのファッツの記憶に、あのような武器は存在しない。
しかしファッツはこのプログラムでは、先ずこれまでの常識と先入観を捨てなければ生き残れない
事を知ってきた。
今の対応は、ファッツの柔軟な思考あってのものだろう。
「だがよ!
このまま何もせずに死んだって、そんな自己満足を誰も褒めちゃくれねえ!」
マラサイをサイコガンダムMK-Uに接近させながら叫ぶ。
さっき撃った弾は拡散弾だった。
装甲の薄い相手だったら十分に威力も期待できるが、あの機体相手に中途半端な距離で撃っても、
それは弾の無駄使いにしかならない。
ならば虎穴に入らんずば…の例え通り、接近しての攻撃しかない。
「アルバート!
お前は何の為に殺し合いをするって紙に書いたんだ!?
ここで無為に死ぬ為か……違うだろ!?
お前の中に、まだその時の気持ちが残っているなら…!」
ターゲットサークル一杯に、サイコガンダムMK-Uの姿を捉えた。
拡散すれば豆鉄砲みたいな弾でも、まとめて叩きつければ何とかなるかもしれない。
「その為に、出来る事をやってみせろ!」
叫びと共にトリガーを引く。
拡散弾が2発、サイコガンダムMK-Uに放たれる。
【行動 :攻撃をかわす(-1P)シャッコーに通信回線接続中(0P)接近(-1P)拡散弾を2発(-1P)残り1P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(3発)(予備弾薬/通常弾×1)】
【通信状況:シャッコー】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きたいとは思う】
301 :
ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2007/07/24(火) 00:04:43 ID:IZwNvQ+r
IDを出しますー
ビームサーベルが当たらなかった。
ニースとしては意表を突いたつもりだったが、それもファッツには通じなかった。
「ぎ……ぃ……っ!」
唸りとも歯軋りとも取れる音が、ニースの口から漏れる。
すぐさま、サイコガンダムに近づいてくるマラサイ。
素人臭さが抜け切らないニースにも、その意図は何となく分かった。
おそらく、1発1発では効果の薄い拡散弾を、至近距離で撃とうというのだろう。
動きの鈍いサイコガンダムでは、それを避けるのは難しい。
しかも攻撃に使った右腕も、まだ戻ってきていないため、非常に不安定な姿勢になっていた。
モニターに映るマラサイが、バズーカをかまえる。
自分に向けられた砲口が、死を告げる死神の口に見える。
「ま、まだ…!」
泣きそうな顔のまま、ニースはマラサイを睨む。
以前なら、恐怖で目をそらしていたその光景にも、必死に立ち向かおうとする。
その目が、バズーカが鈍い光とともに、真っ黒な弾を撃ち出すのをとらえた。
その数2発。
「まだなのぉ!」
静かな、湖を思わせる目が、飛んでくる弾をスローに映し出す。
この土壇場で、ニースが自分の能力を発揮した瞬間。
サイコガンダムが左腕を振り、2つの弾を胴体に当てることなく防御した。
左腕で起こる、派手な爆発。
これで左腕は完全に使えなくなったが、その代わりにニースはチャンスを得ていた。
これまでは距離が離れていたため、マラサイに避けられていた。
しかし、マラサイは今、サイコガンダムに攻撃するために近づいてきている。
この距離なら、さっきよりも命中率は格段に上がるはずだし、左腕を犠牲にした意味も出てくる。
「−−−−−−−−−−−−−−−−−!」
ニースは何かを叫んでいた。
言葉にならない、声にならない叫び。
【行動:防御(−1)拡散メガビーム砲でマラサイを攻撃(−1)】
【残り行動値:2】【位置:N-14】
【機体状況:MS形態】【通信状況:】【人物状況:ハイ】
【損傷状況:胸部3連装拡散メガビーム砲1門破壊、メインスラスター1基破壊、Iフィールド使用不能
脱出装置使用不能、左腕破壊】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ディパック 水2g2と1/4本 コッペパン1個、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ、保存食
5と1/3日分、Tシャツとショーツ×3、Gパン、ティッシュ、消臭剤、ロングコート、医療品、
アルバートの制服とシャツ、コピー紙、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:マラサイを倒す】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
304 :
ファッツ=シュヴィール@代理:2007/07/25(水) 00:31:14 ID:KDpLi2/h
先にID出します
「…お前は自分が何者なのか…考えた事があるか?」
森の墓の前で、父さんが語りかけてきた。
俺がもう1つの名前を聞かされて、数分経った時の事。
「え…と…ア、アルバート=パーシング…かな」
何となく違う答えだと思いながら、でもそう答えるしかない俺。
それを証明するように父さんが微かに微笑む。
「まあそれはそうなんだけどな。
俺が言うのは表面的なものじゃなくて…もっと内面的なものだ」
内面…。
分かりやすそうで分かり辛い言葉。
それが顔に出てしまったのだろうか、父さんは苦笑して話を続けた。
「分かり易く言うと…まあ………」
沈黙。
なかなか上手い言葉が見つからないみたいだ。
意味を考える俺と言葉を探す父さんの間に、無言の時間が流れる。
「例えばだ」
先に口を開いたのは父さんだった。
「出世を願って就職した者と何となく就職した者がいたと仮定してだな。
…でスピードに差はあるだろうが、両者とも係長になったとする。
前者は更に上を目指して仕事に励むだろうが、後者はそこで満足してそこで止
まってしまう」
少し極端な例だけど、それは些細な事だろう。
俺は無言で1回頷いて、父さんもそれを見て話を続ける。
「自分が何者であるか、または何者でありたいか。
それを知っている者、それを信じているものは歩みを止める事はない。
そして何よりも…強い」
そうして父さんは、懐かしそうに墓を見つめた。
「笑いは世界を救う…。
俺にそれを教えてくれた人は…そんな人だった…」
…ファッツさんの言葉に俺が思い出したのは、あの教室ではなく父さんとの会話だった。
自分が何者なのか。
何者でありたいのか。
誰もが持っていそうで、決してそうではない答え。
だけど俺はずっと昔から持っていた筈だ。
確固たる答えを。
誰にも負けない思いを。
あの教室で殺し合いの誓いを書かされた時も、実際に殺し合っている時だってそれは
必ず、俺のどこかにあった。
小さい頃父さんの自慢のコレクションだった、旧ザクのコンソールスティックを握らせ
てもらった事があった。
その俺の手を上から包むように握って、父さんはMSの動かし方を笑いながら教えてくれた。
MSパイロットとして傭兵隊長として信頼を受け、命を張って孤児院や一家を支える父さん。
それを見つめ続けてきた俺の生き方は、その時に決まっていた。
自分が何者なのか。
何者でありたいのか。
その問いの答えは、俺の人生そのものを表しているのと同じ事なんだ。
俺は父さんのようになりたい。
今は追いかけるだけでも、いつかは肩を並べるようなMSパイロットになりたい。
…俺は父さんの話の、何の志もない人間ようにここで満足するのか。
まだまだ目指している目標は先にあるのに。
「……やっぱ……まだ止まれないよな…」
【行動:回想と決意(0)】
【残り:4P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)、右腕肘下消失】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:生き残る】【服装:革ジャンとジーンズ】
保守
ファッツはサイコガンダムMK-Uとの戦闘に際して、2つの戦法を実行していた。
戦闘時に走ったりすると、MSの脚部の関節にかかる負担はかなりものになる。
だから通常移動時は極力脚部に負担をかけないよう、余裕がある時はトレーラーや
輸送機を使用し、そうでない時は歩行する。
そんなMSだから、修理したとはいえ右脚が傷ついたままのマラサイが戦闘をするのは
いささか無理がある。
だからファッツは右脚への負担を減らす為に、スラスターを多用して戦闘に臨んでいた。
スラスターを吹かして浮力をある程度付ければ、移動時の脚への負担を少しでも減らす
事ができる。
攻撃に関しては、出来る限り手数を増やすようにした。
ニースとの接触は少ないが、その少ない係わりの中で感じたのは、彼女が素人…若しくは
それに近い程度の経験しかないのではという事。
最初に接触した時、ニースは情報交換の話にあまりにもあっさりと応じてきた。
そしてマラサイの修理に関しても、敵になる可能性があるにもかかわらず、これもあっさりと
アルバートの言う通りに修理している。
ニースが素人ならば、戦闘において撃たれたという経験は少ない筈だ。
撃たれて当たったら死ぬかもしれない。
その恐怖は自然と操縦を鈍らせる。
例え命中しなくても、狙われているという現実が体を竦ませるのだ。
そこにも活路を見出せるかもしれないとファッツは踏んでいた。
1つ目に関してはある程度成功した。
この傷ついた脚部で、マラサイはよく戦っている。
それはファッツ自身の、操縦技術が確かなものである事も物語っていた。
半端な技術では着地の際にスラスターの加減が出来ず、転倒するか脚部が折れるかのどちらかだろう。
しかし2つ目は…完全に目論見が外れた。
ファッツは接近しての拡散弾の発射に、それなりの目算を立てていた。
命中すればメガビーム砲を破壊する事ができるし、例えかわされてもバランスを崩せると思っていた。
しかし…ファッツは知らなかった。
ニースがキリトとレベッカとの戦闘によって、心身を鍛えられた事を。
何よりもサイコガンダムMK-Uによって、闘争心が増幅していた事を。
「うそ、だろ?」
拡散弾は命中しなかった。
かと言ってサイコガンダムMK-Uがかわしたのでもない。
何とニースは、まだ使える左腕を捨てて拡散弾を2発とも払い除けたのだ。
その結果マラサイはメガビーム砲の前に、決定的な隙を晒す事になった。
ファッツが叫ぶ間もなく、天地が引っくり返ったかのようにマラサイが揺れた。
その激震はメガビームの命中によるものか、それとも地面に叩きつけられたものなのか。
ともかくファッツが気が付いた時、マラサイは動かなくなっていた。
モニターはまだ外界を映しているから、すぐに爆発する事はなさそうだ。
だが、MSを動かすべきファッツの体はピクリとも動かない。
体に痛みはないが、とても熱かった。
「…悪運…尽きたか、な…んっ…ぐっ…」
声を振り絞ると、一緒に胃の中から何かこみ上げてきたから、無理矢理それを飲み込む。
暫く咳き込んで、小さく何回か深呼吸した。
「…一足…おせえよ……ったく…」
そのファッツの目に見えたのは、巨大なMSに飛びかかっていく小さな影だった。
【行動 :回避失敗(-1P)残り3P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)
右胸部中破 左脚全損 左腰部装甲半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷 右腕上腕部切断
破片の貫通による裂傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(1発)(予備弾薬/通常弾×1)】
【通信状況:シャッコー】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:楽しんで生きたいとは思う】
310 :
アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2007/07/31(火) 23:09:44 ID:TjT1UN2u
続けてIDもチェックします。
保守
止まれない。
止まるわけにはいかない。
どんな結果であっても生き残って、また父さんの背中を追いかけたい。
その為には、あの化け物を倒さなければならない。
夢の中の記憶と、さっきディスクで見た記憶を重ね合わせる。
攻撃力は無数のメガビーム砲と、あとビームを跳ね返すファンネルみたいなやつ。
ええと…あとは…忘れた。
防御力は元々の装甲の厚さに加えて、Iフィールドによる中長距離ビーム兵器の無効化。
一見防御力は完璧に見えるけど、実弾兵器には全く役に立たない。
更に近接戦闘でもサーベルなどの攻撃を無効化できない。
以上の点を考慮して今俺が出来る有効な攻撃手段は…。
ショットランサーとビームサーベル。
このうちショットランサーは便利だけど、片腕のシャッコーだとかわされた時に次の武器
への切り替えが行い難い。
強大な敵に挑むからには、攻撃方法と目標を限定した方がいい。
サイコガンダムMK-U相手では、戦闘が長引けば好機が減ってくるばかりだ。
わざと長引かせてニースの疲れを誘う事も1つの手段だけど、そんな不確定な要素で
の戦闘も分があるとは言えない。
俺が選ぶのは、短期決戦。
略さず言えば短期間決定的戦闘。
サイコガンダムMK-Uを一撃で戦闘不能にできる箇所を狙う。
それは…コクピット。
サイコガンダムMK-Uのコクピットは、確か頭部にあった筈。
それ以上の細かい部分は分からないが、大体の検討でやるしかない。
攻撃のチャンスは精々2、3回が限界だろう。
それ以上は流石に警戒されて、極端に狙い難くなる。
勿論コクピットを狙うという事は、ニースを攻撃する事に等しい。
ファッツさんの言葉が無かったら、そして父さんとの会話を思い出さなかったら
絶対に選択しない戦法だ。
だけどここは戦場。
恨みも後悔も悲哀も嘆きも、負の感情も正の感情も一切を極力抑える。
手元を狂わせないよう、全てを冷静に進める。
サイコガンダムMK-Uから光が迸る。
それが合図のように、俺はシャッコーを突っ込ませた。
落下するマラサイと入れ替わるように、シャッコーを跳躍させ頭部に接近する。
狙いは…取り合えず頭部の真ん中!
ビームサーベルを腰溜めに構えから、一気に突き出す。
【行動:跳躍(-1)頭部に攻撃(-1)】
【残り:2P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)、右腕肘下消失】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:生き残る】【服装:革ジャンとジーンズ】
314 :
ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2007/08/07(火) 14:25:33 ID:R95Baegt
覚悟のIDチェックです
ニースが、これまでに夢中になったものは多くない。
物心がついた頃は、人形遊びなど、女の子らしい遊びに夢中だった。
それからあとは、ずっと機械いじりに夢中になっていた。
この2つの夢中になった事柄に関して、共通するニースの行動がある。
それは、どちらも夢中になると、周囲が見えなくなるというものだった。
人形遊びはもちろん、機会いじりになると、それこそ朝から晩まで工場にこもる事がしょっちゅうだった。
それはそれでニースの1つの魅力には違いないが、時と場合という言葉もある。
サイコガンダム…サイコミュによって、ニースの意識は、これ以上ないくらいに研ぎ澄まされ集中していた。
マラサイの撃つ弾は大概は見えていたし、扱いなれていない機体も無難に動かして、戦闘力を維持させている。
だが、ここにきてその集中力が、いってはいけない方に向けられてしまっていた。
あまりにしぶといマラサイを倒そうと急くあまり、ニースは他のものが見えなくなっていた。
そう、ニースは夢中になってしまったのだ。
マラサイのみに向けられた意識は、その他の動きの探知を遅らせ、そして今、マラサイを戦闘不能に追い込んだ
事で、ニースの集中力が僅かに弛緩していた。
ニースが、シャッコーの動きを察知できなかった理由はもう1つある。
戦いが始まってから、シャッコーは殆ど動きをみせていない。
それをニースは、アルバートが自分を攻撃できないものと思ってしまった。
だから、シャッコーと戦うのはマラサイのあとでも大丈夫と、たかをくくってしまったのだ。
「はぁっ…はぁっ…」
あらん限りの声で叫んで、やっとマラサイを倒し、荒い息をするニース。
その僅かな集中力の途切れを、今度こそ戦場の神は見逃してくれなかった。
ふとシャッコーを見ようとした、ニースの視界を埋めるビームサーベルの光。
「アルバ…」
ニースの瞳が見開かれ、叫ぼうとした名前を言い終わる前に、ニースの周囲は嵐のような轟音に包まれた。
【行動:】
【残り行動値:4】【位置:N-14】
【機体状況:MS形態】【通信状況:】【人物状況:ハイ】
【損傷状況:胸部3連装拡散メガビーム砲1門破壊、メインスラスター1基破壊、Iフィールド使用不能
脱出装置使用不能、左腕破壊、コクピット大破】
【武装:胸部3連装拡散メガビーム砲、リフレクタービット×20、
腕部サイコミュ式 ビームソード×1、全身メガビーム砲×多数】
【所持品:ドライバーとモンキー、アルバートのシャツ、マジック、レベッカのリボン】
【行動方針:】【同盟:】【ペット:ハスキー犬のハリー】
保守
真っ白。
何もかもが真っ白。
モニターに映ったのは、シャッコーと、その手の辺りから光っていた何か。
その何かが、ニースの頭を真っ白にしていた。
暫く動きを止めていたサイコガンダムが、ゆっくりと、スローモーションのように横倒しになった。
その衝撃が、真っ白だったニースの意識を覚醒させる。
「…う…ぁ…」
弱々しい声と一緒に、ニースの目が僅かに開いた。
霞んだ目に映ったのは、コクピットの横に開いた、自動車が通れそうな大きな穴。
ビームサーベルによるものだが、ニースにはそんな事は分かりようもない。
自分の体が、どうなっているのかも分からない。
ただ、左半身がなくなってしまったように、何も感じなくなってしまっていた。
見えているのも、右目だけだった。
まだ動く右手をばたばたと動かして、操縦桿を必死に動かす。
しかし、サイコガンダムは、その呼びかけに応えようとはしなかった。
ニースも、そこでようやく理解した。
自分がもう戦えないという事。
「…ぅ…あ…」
操縦桿から離した右手に、何かが引っかかる。
それは、焼け残ったディパックの一部。
いくつか焼け残った所持品が、ニースの右目に見えた。
「あ…あ゛…」
もう助からないのは、ニース自身も理解している。
でもその前に、ニースは何としても話したい人がいた。
勿論、その思いは図々しいものではある。
何故なら、ニースはその人の思いも、その人の置かれた状況も考えずに、サイコガンダムと共に
攻撃をしかけたのだから。
それでも、許されるのなら最後に、あの人に何か話したかった。
「あ…る、ば…」
だが、現実はそんな甘くはない。
実際、コクピットの機能は完全に停止していたし、ニース自身もまともに話せる状態ではなかった。
無為な時間が数秒すぎて…身じろぎしたニースの右手に、何か柔らかいものが触れた。
それはコクピットでも、その外でも、ニースの心を慰めてくれた優しい毛並み。
「ハ…ハ、リ…ィ…」
それは、どのような幸運があったのだろうか?
ハリーが生きて、ニースの傷ついた手を舐めていたのだ。
ハリー自身も傷ついているが、命に別状はなさそうだった。
何かを思いついたニースが、ディパックだった物を膝元に引き寄せて、ある物を取り出した。
それは、ずっと持っていたアルバートのシャツと、アルバートからもらったマジック。
震える手で、でも残った渾身の力で、ニースはシャツに言葉を書いていく。
『ごめんなさいありがとう』
そこまで書いたところで、握力が弱まって、マジックが落ちた。
でも、ニースにはこれを書けただけで満足だった。
よく考えれば他にも言葉が浮かんだかもしれないが、ニースには、もう考える時間も殆ど残っていない。
ディパックから、さらにレベッカのリボンを出してシャツでくるんだ。
本当はずっと持っていたいが、レベッカの思いの詰まったリボンを、ここで捨てるわけにはいかなかった。
アルバートは、願いのためにまっすぐに行動できる。
例え辛い選択であっても、逃げずに立ち向かえる。
もちろん、これはニースの思い込みでしかない。
でも思い込みでも、迷惑に思われてもレベッカの思いを託せるのは、もうアルバートしかいなかった。。
「ハ、リ…」
ハリーにシャツを差し出し、必死の表情で言葉を搾り出す。
「ごれ…ア゛、ア゛ルバ…トさんに゛…。アル、バート、さんに…!」
悲しそうな瞳で、ニースを見つめていたハリーが、意を決したようにシャツをくわえ穴に向けて走る。
そして穴の縁でニースを1回振り向き、たっと外に飛び出していった。
ニースはそれを、微笑んで見送ったつもりだったが、すでにニースの表情は人形のように動かない。
表情が止まり、右手が動かなくなり、次々とニースの体の機能が停止していく。
その中で、唇が何回か、会話しているように開く。
まるで、目の前に誰かが存在しているかのように。
他の誰にも見えなくとも、ニースの右目には、会話の相手が見えているかのようだ。
それから数分後に、最後に心臓が停止するその時まで、ニースの唇はずっと動き続けていた。
【生徒番号14番 ニース=エルネージュ…死亡】
ファッツが目にしたもの。
それはこれまでの戦闘を思えば、信じがたい光景ではあった。
サイコガンダムMK-Uの頭部付近まで飛んだシャッコーが、そのままビームサーベルを構えて突っ込んでいく。
おかしいのは、何故サイコガンダムMK-U…ニースがあそこまでの接近を許したのか。
不意を突いたのならともかく、普通に対処すれば迎撃可能な筈だったが。
そんな事を思った一瞬の間に、シャッコーのサーベルは狙い過たず頭部に吸い込まれ…。
サイコガンダムMK-Uは、糸の切れた人形のように横倒しになった。
「1発かよ。
……俺の立場ねえなあ…」
その結果に苦笑を通り越して呆れてしまったファッツ。
ニースが接近を許した理由を知らないのだから、呆れてしまうのも仕方がない。
「これで…全部終わり、か」
他人事のように呟いた。
正確に言えばまだファッツのマラサイが残っている。
左脚がなくなったとは言え、まだバズーカに1発の弾を残しているから、最後の賭けに出れない事はない。
問題はファッツ自身の状況だった。
右腕を失い破片で傷つき、出血も激しい上に救急道具がないから満足に治療も出来ない。
現に既に意識も混濁しはじめている。
「…やっぱ、勝者ってのは…称えてやらなきゃな…」
シャッコーは倒れたサイコガンダムMK-Uの近くで何かしている。
その理由は何かは分からないが、それが終わるのを待つだけの時間はファッツにはない。
シャッコーに通信を送る。
その声は意識の混濁など、感じさせないくらい張りのあるものだった。
「アルバート、聞こえるか?」
…返事がない。
更に何度かアルバートを呼び出そうと通信を送った。
「ちっと急ぎの用事だ、アルバート!
すまねえが早く出てくれ!」
【行動 :アルバートに呼びかける(0P)残り4P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)
右胸部中破 左脚全損 左腰部装甲半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷 右腕上腕部切断
破片の貫通による裂傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(1発)(予備弾薬/通常弾×1)】
【通信状況:シャッコー】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:】
近づいてくるサイコガンダムMK-Uの頭部。
命中するか、かわされるのか。
一瞬に思える永遠。
永劫に感じる刹那。
その瞬間を突き破ったビームサーベルは、まるで紙でも突き刺しように目標を貫いた。
間違いなく命中したのを確認して、直ぐさまシャッコーを飛び退かせる。
サイコガンダムMK-Uが戦闘力を残していた場合、少しでも同じ場所に留まるのは危険だ。
…しかし俺の用心は意味を成さなかったみたいだ。
サイコガンダムMK-Uは動こうとしない。
俺の油断を誘おうとしているのでなければ、導き出す答えは1つだ。
そして…俺の導き出した答えを証明するかのようにゆっくりと巨体が傾き、まるで映画の
ワンシーンみたいに倒れていった。
尚も1、2分ほど警戒を続け、サイコガンダムMK-Uが完全に停止しているのを確認した。
溜めていた息が、小さく長く口から漏れていく。
戦闘の終了だった。
この手でニースを刺したのに、何の感情も沸いてこない。
コクピットのニースの姿を見る事がなかったからか。
それとも押し殺した感情が、現実を認識していないのか。
…多分どちらも正解だ。
コクピットという制限された空間にいると、そしてその中で最大限に集中すると、目に
見えているものが現実的に映らなくなってくる。
モニターの景色もまるでテレビのように思えてくる。
それは恐怖がなくなった証。
殺される恐怖も殺す恐怖も感じなくなる、ただ1個の純粋なマシーンと化す時。
その瞬間、人は何の躊躇もなく人を殺す。
それが誰であろうとも。
勿論いずれ感情の波はやってくる。
殺した殺されかけたという恐怖が、そして生き残ったという喜びが反動となって現れる。
でもそれも最初だけ。
経験を積んでいくに従い感情の波は小さくなり、最後には小波程度にも感じなくなる。
いちいち何度も感情の爆発を許してくれるほど、軍も戦場も優しくはないのだから。
でも今は…そこまで考えない。
戦闘の終結を確認したのだから、ファッツさんの様子を…。
その時サイコガンダムMK-Uの方から、何かが駆けてくるのが認識できた。
「ニースが連れていた…犬…?」
ところどころ怪我しているようだけど、あの駆けっぷりを見ると重傷ではないようだ。
それに何か…布のようなものを咥えている。
シャッコーが手を差し出すと、犬はさっと飛び乗ってきた。
名前は…確か、ハリー…だったけか。
ハッチを開けてハリーを迎え入れる。
布のように見えたのは、どこかで見たようなシャツだ。
何でこんなものを…。
ハリーが咥えていたそれを受け取り広げてみる。
間違いなく、俺がデパートで脱ぎ捨てたシャツだ。
何故ニースがこれを持っていたのか。
いやそれよりも俺の目が凝視したのは、シャツに書かれた1行の文だった。
ニースがどのような状況でこれを書いたのか、想像に難くない。
まさしく最後の力で書いたという事は、乱れた文体と筆圧の感じで分かる。
「……謝るのは…俺の方なんだよ…」
辛うじて声を振り絞った。
パイロットとしての心持が、俺に叫ぶのを何とか留まらせていた。
俺がニースから奪ったもの……それは、俺が失ったものでもある。
ニースに道を示してやれなかった。
共に歩める希望を見せてやれなかった。
その俺自身の未熟さが、この結末を呼び込んだのだ。
今更ながらに、父さんを追いかける事の厳しさを理解した。
父さんもパイロットとして戦士として、この修羅の道を進んできたに違いない。
…誰かが俺を呼んでいる。
幻聴かと勘繰ってしまったが、そうではないみたいだ。
ファッツさんの声だと気づいたのは、更に数秒してから。
そう言えば今までこっちの回線は、マラサイに繋げていなかった。
静かに深呼吸をして、マラサイに回線を繋げた。
「こちらアルバートです。
無事ですか、ファッツさん」
【行動:マラサイに通信回線を開く(-1)】
【残り:3P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)、右腕肘下消失】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:生き残る】【服装:革ジャンとジーンズ】
ファッツの必死の(?)呼び掛けの甲斐あって、シャッコーの通信回線が開かれた。
モニターに映ったアルバートからは、特に大袈裟な感情の起伏などは感じられない。
声の抑揚も上ずったところもないように聞こえる。
(…心中はともかく、見た目の冷静さは保ってるね)
その様子を見てファッツは、プログラムの終わりを確信した。
アルバートからの返答がなかった時、ファッツの脳裏をよぎったのは自害。
そして親しい者を手にかけた事でそうなってしまうのは、十分に考えられる可能性。
だがこうして(例え表面的であっても)冷静さを保っているアルバートを見ると、それは(現時点では)
大丈夫なようだった。
「おめでとさん、アルバート」
怪我を感じさせない張りのある声。
ファッツには最後にやるべき事があった。
さっき言ってたように勝者を称えるのは勿論だが、それ以上にアルバートを生かさなければならなかった。
アルバートは今は冷静さを保っているが、それがいつまでも続くとは限らない。
感情のたがが外れないように、外れた時でも早まった手段を取らないようにしなければならない。
アルバートは生き残った。
ファッツ自身押し付けるのは嫌だが、でも生き残った者には死んでいった者の分まで生きてほしい。
そうでなければこのプログラムは、ただ先生達組織を楽しませるだけのものだった事になる。
いい加減なところがあるファッツでも、その結末だけは御免だ。
だからこそ、アルバートには意地でも生きてもらわなければ…。
「おめでとさん」
もう一度、アルバートに聞かせるために同じ事を言った。
尤も心の中では
(…今見せてる顔が彼の本質なら、俺もこんな面倒臭い真似しなくて済むんだけど)
などと少々不謹慎な事を思ってもいたのだが。
「このプログラムの勝者は、お前だよアルバート」
【行動 :アルバートに話す(0P)残り4P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)
右胸部中破 左脚全損 左腰部装甲半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷 右腕上腕部切断
破片の貫通による裂傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(1発)(予備弾薬/通常弾×1)】
【通信状況:シャッコー】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:】
回線が開いて、マラサイの様子がモニターに映し出された。
サイコガンダムMK-Uに撃ち落とされた時に予感はしていたけど、ファッツさんの状態
はどう贔屓目に見ても命に係わる重傷だった。
切断されている右腕と出血で変色した服装を見れば、何となく手遅れではないかと思
えてしまう。
だけどモニターに映るファッツさんは、命の危機など微塵も感じさせない声をしている。
多分ただの意地なのかもしれないけど、その命を張った意地は、俺の表情を引き締め
るのに十分な効果を持っていた。
「勝者…」
ファッツさんから言われて、鸚鵡返しに言葉を返した。
…その言葉通りなんだろう。
パイロットの状態、MSの状態を考えるとそうなるのかもしれない。
でも…。
俺の心にある3つのわだかまりが、素直にそれを認めようとしない。
「俺は…たまたま運良く生き残っただけです」
自嘲気味に呟いた。
俺が今いるのは単に運の積み重ねだ。
それで勝者と言われる事に、納得のいかない部分が確かにあった。
「さっきだって、ファッツさんがサイコガンダムの気を引いてくれなければ、俺が墜とされ
ていたかもしれない」
口には出さなかったけど、それはファッツさんを囮にしたのと同じ事だ。
それが申し訳なくもあった。
それに…。
【行動:ファッツさんと会話(0)】
【残り:4P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)、右腕肘下消失】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:マラサイ】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:生き残る】【服装:革ジャンとジーンズ】
保守
アルバートから語られたもの。
それはまあ、アルバートらしいと言えばらしい言葉だった。
勿論ファッツにしてみれば苦笑するしかないが。
戦場で生き残るには、運と実力はなくてはならないもの。
運だけでも実力だけでも、片方しか持っていない者は長生きは出来ない。
「なにくだらねえ事言ってんだ」
溜息混じりにアルバートに話す。
「お前もパイロットなら、運がどれだけ大事かくらい分かってんだろ?」
流石に出血が多いのか、あまり大声は出さない。
「プログラムにいた中で、お前が一番運を持ってたって事だ。
それに…まあ俺ほどじゃないが、操縦技術だってたいしたもんだ」
1回息をついてモニターの向こうの青年を見る。
ファッツの話をどう思っているのかは、ここからは窺えない。
だがファッツは、自分に許された時間を使って語りかける。
まるで己が存在した証を、ここに残そうとでもするように。
「それだけのもの貰っといて、これ以上情けねえ事言ってると…ぶん殴るぞ。
…いいか…お前は勝ったんだからもっと胸を張れ。
死んでった奴らに、お前が勝った事を納得させるくらいに胸を張れ」
少しアルバートの様子を見てから、ファッツは懐からコインを出した。
「ほらアルバート…お前の運試しだ」
言うと同時にコインを跳ね上げ、左の手のひらに包み込むように掴む。
その一連の動きは、死を目前にした者とは思えないほどに流麗だった。
そのまま左手をモニターに突き出して、にやりと笑う。
「さあ…裏か、表か…どっちだ」
【行動 :運試し(1P)残り3P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)
右胸部中破 左脚全損 左腰部装甲半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷 右腕上腕部切断
破片の貫通による裂傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(1発)(予備弾薬/通常弾×1)】
【通信状況:シャッコー】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:】
もう1つの理由。
それはあまり考えたくはない理由。
だけど絶対に避けては通れない道。
それが分かっているからこそ、あと必要なのが俺自身の心持ちという事も理解している。
ファッツさんは俺を勝者と言った。
いや…このプログラムのルールに乗っ取って言えば、俺はまだ勝者じゃない。
…何故なら…まだ生きている生徒は2人いるのだから。
そう…俺がファッツさんの言う勝者になるには、マラサイを撃墜しなければならない。
ニースを手にかけた瞬間から、俺にもその覚悟は出来てる…筈。
俺の事を勝者というからには、そしてあの傷を見る限り、ファッツさんにもある程度の
覚悟は出来ていると見て間違いない。
でもその死を覚悟した男の、堂々とした姿に気圧されている自分も俺はまた理解していた。
そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、ファッツさんが話を続けてくる。
その言葉に俺は若干赤面した。
ファッツさんは、俺なんかよりもずっと勝者ついて理解している。
腕だけでも運だけでも辿り着けない至高の位置。
ファッツさんはファッツさん流に、その位置に一番近い俺を評価してくれている。
口調には、一切の妬みも恨みも感じない。
俺自身が嫉妬しそうになるほど、ファッツさんは裏表を感じさせなかった。
俺が少し黙ったのを躊躇と見たのだろうか、ファッツさんがまた話してくる。
手に握られたのは、1枚のコイン。
それがあっという間に跳ね上げられて、吸い込まれるように掌に消えた。
流れるような一連の動作に、何だかファッツさんの美学みたいな物が見えた気がする。
モニターに差し出された手。
ファッツさんは運試しをするって言ってるけど、俺の答えはもう決まっている。
俺が勝者として胸を張って良いなら、それに相応しい答えがある。
「表です」
裏よりも表。
勝ち名乗りを受けるからには、そして自ら上げる為には、裏は選んじゃいけないような
気がした。
【行動:選ぶ(0)】
【残り:4P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)、右腕肘下消失】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:マラサイ】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク】
【方針:生き残る】【服装:革ジャンとジーンズ】
ファッツの目が微かに見開かれた。
「へえ…じゃ、俺は裏だな」
驚きが混じった声も微かに漏れる。
理由は簡単で、アルバートの答えが思いのほか早かったから。
ファッツはもう少し悩むかと思っていたのだが。
ただそれは傾向としては良いものだった。
たかだか運試しだが、躊躇なく選択するさまと目の色を見ていると、それなりに吹っ切ったのではないか
と思われる部分があった。
アルバートの答えを確認して、ゆっくりと掌を開く。
「……この通り、お前の勝ちだよアルバート」
掌の表になったコインを見せながら、ファッツはまたニヤリと笑った。
「…自慢だけどよ…俺はコインで1度も負けた事がなかった。
その俺にコインで勝ったんだ。
だから俺が持っている運も、お前に全部託す。
俺に次ぐ操縦技術と、俺の運を持ってりゃ鬼に金棒だ」
流石に少し息が荒くなってきた。
しかしファッツはあと少し頑張らねばならない。
このまま意識を失うのは、ファッツ自身のプライドが許さない。
「で、だ」
声を改めるファッツ。
「お前にこんな事頼むのは気が引けるんだが……俺の介錯を頼めるか?」
これも流れとしては当然だし、アルバートも感づいているとファッツは思っている。
勝者として果たさなければならない務めだと思っている。
「…俺は死ぬ時は…まあ理想を言えば女の膝の上が良かったんだけどよ…。
でも俺としてはこのまま失血死は格好悪いし、自決なんて手段は下の下だ。
じゃあどうするかって言ったら、お前に頼むしかない」
気力を保とうと、1回大きく深呼吸する。
勿論視線はアルバートから逸らすことはない。
「…俺とお前じゃ生き方も考え方も違うから、全部が全部同意できるわけじゃないだろう。
それでも、ほんの少しでも理解できるものがあるなら…俺の生き方を全うさせてくれ」
ファッツは正直に気持ちを述べた。
アルバートのように、パイロットとして生きる者ならそう思う筈。
パイロットとして生きた事があるファッツだから、その点は分かり合えると思っていた。
「コインとは違うが…これも、勝者になる為の決断だ。
さあアルバート…俺の屍を乗り越えて、胸を張って勝者になれ…!」
そこまで言ってから、通信を切った。
ファッツの顔が映ったままだと撃ち辛いかもしれないし、もうファッツ自身に語るべき言葉も見当たらない。
アルバートの決断を待つだけだ。
【行動 :通信を切断(0P)残り4P】
【位置 :N-14】
【機体/状況 :マラサイ/右腕切断 右肩アーマー損傷 胸部装甲破損 右足半壊(応急修理済)
右胸部中破 左脚全損 左腰部装甲半壊】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 右肩に噛み痕 頬に切り傷 右腕上腕部切断
破片の貫通による裂傷】
【武装 :ビームサーベル ヒートホーク 頭部バルカン砲(残弾70%) ビームダガー
ハイパーバズーカ(1発)(予備弾薬/通常弾×1)】
【通信状況:】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×2 缶詰携帯食料各種2食分 缶切り
コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 果物ナイフ×2
女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)
全身タイツ 生徒レーダー 拳銃 ミヒャエルが放り出した袋】
【行動方針:】
開かれるファッツさんの掌。
何気に固唾を呑んで見守った俺の目に、表になったコインが見えた。
それを見て思わず安堵の息が漏れる。
ニヤリと笑って、ファッツさんが話を続ける。
所々でファッツさんらしい言い回しはあるけど、俺を前に進ませようという気持ちも伝
わってきた。
俺は少し笑みを浮かべながら、頭を下げる事で答える。
実力の方はともかく、運に関しては何か凄いんじゃないかと思えてもくる。
そしてその先を続けるファッツさんの言葉に、俺の表情も引き締まった。
ファッツさんの言うように、これは俺が選ばなければならない選択だ。
そして…俺はファッツさんの意を汲んであげなければならない。
同じ立場なら俺も頼むと思うし、何よりも俺を進ませようとしてくれたファッツさんの最
後の頼みを断れる道理が存在しない。
最後に言葉を残して、マラサイの通信が切られた。
屍を乗り越える。
俺が越えるべき最後の屍。
それは同時に、ファッツさんの思いを背負っていく事になる。
いや、俺はもうニースの思いも背負っている。
それを思えば……ん?
ニースの言葉が書かれたシャツに触れた時、何かが落ちるのが見えた。
「……リボン?
ハリーはこれ誰のか分かる…わけないか…」
勿論ニースの物でもないだろう。
ただしニースが最後にこれを託したという事は、このリボンも誰かの思いを背負って
いるのかもしれない。
俺にも…何となく…分かる。
ニースがずっとこだわっていた、白金の髪の少女。
彼女の思いなら、ニースが託そうとするのも不思議じゃない。
リボンを見ているうちに、ふとそういうものじゃないかと何となくまた思った。
生き残れば生き残るほどに、思いを背負っていく。
恨みでも悲しみでも、喜びでも怒りでも。
その重みに耐えられる者が生き残っていくのだと。
運と実力以外に何か要因を挙げるとしたら、それも含まれてもいいのだろう。
…ちょっと手前味噌だけど。
射撃モードを自動から手動に切り替えた。
コンピュータ射撃だと必ず狙った箇所に当たるとは限らない。
だから目視で、狙い過たずコクピットを狙う。
何の痛みも苦しみもなく、全てを終わらせる。
ビームピストルは規格が違うから、精度に不安がある。
使用するのは、照準も威力もまず問題ないショルダービームガン。
マラサイのコクピットと思われる箇所を、きっちりとサークルの中心に捉えて。
1息…2息…呼吸を整え…指に力が篭る。
「ファッツさん…さよならです」
トリガーが引かれ、閃光を残してビームが疾走していく。
【行動:介錯(-1)】
【残り:4P】【位置:N-14】
【機体状況:コクピット付近の装甲に切り傷、左膝ピストン歪み(小)、右腕肘下消失】
【人物状況:胸にガラス片の傷(処置済み)】【通信状況:マラサイ】
【武装:ビームサーベル×1、右肩部2連装ショルダービームガン(90%)、ビーム
ローター、ビームピストル(左40%右40%)ショットランサー】
【所持:ディパック、水2g入り3本、コッペパン1個、保存食41/3日分、お守り、
ペンライト、ポータブルプレイヤー、毛布、救急箱、コピー用紙の束、
マジック3本、UC歴史の本、MSデーターディスク、シャツとリボン】
【方針:生き残る】【服装:革ジャンとジーンズ】
少し緊張感が解けたせいか、ファッツの視界がだんだんぼやけてきている。
「くそっ…」
左手をコンソールスティックのサブウェポンのボタンに添える。
もしもアルバートが決断を鈍るようなら、バルカンで催促してやるつもりだった。
しかしファッツの懸念も杞憂だったようだ。
シャッコーの肩に装備されたビームガンが、こちらに向くのが見えた。
ニヤリと笑ってコンソールスティックから手を離した。
「…いい決断だ…。
そうでなきゃ…コインで勝たせてやった意味が…なくなっちまう…」
それはギャンブルにおける常套手段。
最初はある程度勝たせておいて、客を調子に乗らせた上で一気に回収する。
それをファッツはアルバート相手に行っていた。
ファッツがコインを1回負けるだけで、アルバートを先に進ませられるなら、こんな安上がりな事はない。
「…残念ながら、俺はこれ以上相手はできないけどよ…。
アルバート……この続きは…奴ら相手にやってくれ…。
そんで…できるなら、奴らを…奴らの有り金を、全部かっさらっちまえ…!」
もう声が聞こえない相手に、ファッツは凄絶な笑みでけしかけた。
アルバートが奴ら相手に勝ち続けるのは至難の業だが、これもまたファッツが託す思いであった。
例えそれが絶望的なギャンブルだとしても。
ふと気づいた。
右肩が妙に熱く火照っている。
「…こりゃ…」
それはあの時、リトラに付けられたもの。
「…色々いー女はいたけど…あいつは、色々な意味で格別だったな…」
敵として出会い、情を交わし別れ、また敵として出会った。
それはファッツのこれまでの人生にない、刺激的で官能に満ちた時間。
その短くも熱い時は、何をしても満たされる事のなかったファッツの心を、僅かな時間だが確かに埋めてくれた。
だからこそそれは、ファッツの中で消える事のない記憶となって刻まれている。
「あいつも…多分生きちゃいないんだろうな…」
それは想像ではなく、ある種の確信めいた予感。
結局ファッツは、あれ以来リトラに会う事はなかった。
だからリトラの最後はもう知る由もないのだが…。
「ま…多分、あいつとは…同じ場所で会えるよな…うん。
そしたら…今度は嫌だって言うくらい強く抱いてやろう…うん。
あん時は、俺が惚れてただけだけど……今度はあいつに…惚れたって、言わせてやるさ…うん」
『フフ……殺しあうんだな、ファッツ。私達は……殺しあうんだな……』
ファッツの耳に、いつか聞いたリトラの言葉が聞こえた。
…そのときファッツが見せたもの。
それは…故郷の草原を見つめるかのような…尊敬し愛した家族に向けるかのような優しい微笑だった。
「…違うよ…俺たちは…愛し合うんだ………ずっと…ずっとだ…」
ファッツが幻のリトラへの言葉を終えた瞬間…2条の光が全てを真っ白にしていった。
【ファッツ=シュヴィール…脱落】
シャッコーが放った光が、ほぼ狙い通りマラサイの胸部に吸い込まれた。
一際大きな破壊音が起こった以外に何もなかった。
爆発があったわけじゃない。
少し破片が舞い上がって、胸部にぽっかりと穴が開いて…それだけだった。
後に残ったのは静寂。
それはここに…このプログラムに残ったのが俺だけという証。
(…よく生きてこれた)
改めて思う。
プログラムが始まった頃は、俺は実戦経験もないひよっこだった。
それでも父さんの教えのおかげで。
共に戦った仲間のおかげで。
たくさんの偶然と経験、それと少しの希望のおかげで。
俺はこうして…また昇ってくる朝日を見る事ができる。
…希望。
常に死が隣り合わせのここで、俺は本当にずっと希望を持っていたのだろうか。
死にたくないから希望を持つ。
希望を持てないから死がやってくる。
希望も死も、決して人の目には見えないもの。
目に見えないものだから、人は希望に胸を膨らませられるし、死の足音に絶望もする。
その境にあるのは…心だろう。
死と向き合いながらも、心の中に希望を持つのか。
死の恐怖に負けて、希望を見出せないまま絶望に包まれるのか。
どんな出来事にも負けない大木のような心。
どんな絶望にも枯れない大河のような心。
過去の為に流す涙ではなく、未来を切り開く為の剣を持つ心。
誰もがそれを持つわけではない。
だからこそそれは、とても貴重な資質であり財産。
どうしても流れる涙ならば、それを振り払う強さを持とう。
心の剣が分からないのなら、それを探し掴む為に、手を伸ばす勇気を持とう。
伸ばし続ける事、あると信じる事もまた心の強さなのだから…。
『……君。
アルバート=パーシング君…聞こえているのか…』
…俺を現実に引き戻した通信が入ったのはその時だった…………………
………
「…じゃあな」
柔和な笑みで、玄関から客を送り出す男。
それはかつてレイモンド=デリックという名で、プログラムに参加した男だった。
玄関の扉を閉めてから自室に入り、ベッドに横になる。
暫く何をするでもなく天井を見つめていた男の頭に、聞き覚えのある声が響いた。
《よおレイ。久し振りだな
あとあの客も随分懐かしい顔だったな》
男は一瞬だけ顔をしかめたが、あとは特に何の動作も見せない。
(俺はフィリルだっての。あの客はまあ、手紙のやりとりはしてたんだがなかなか会えなくてな。
…それはともかく…帰ってきたのか)
どうやら昔の呼び名で呼ばれるのは好きではないらしい。
《俺様にとっちゃあ、レイってのはおめえだけなんだよ。
まあこうして無事に帰ってきたんだから、お帰りの挨拶くらいほしいとこだ》
男の表情が何かを考えているような感じになった。
(はいおかえり。
…それはともかくだ…)
声が反論してくるより先に、男は話を続ける。
(お前が面白そうだってアルバートにくっついていって、その後暫くして行方不明の知らせが来た。
…お前が戻ってこないって事は、どこかで生きてるとは目星をつけていたんだが…)
声は何も言ってこない。
先を促しているのだろうか。
(まさかとは思うが……プログラムか?)
《茶化しても意味ねえから言うが…その通りだよ》
答えは直ぐさま返ってきた。
男は納得したように頷く。
(やっぱりな……奴らのやりそうな事だ…。
……で…何て言うか……お前が帰ってきたって事は…アルバートは…)
《ふん…おめえの予想通りかどうか知らねえが…。
もうすぐ帰ってくらぁ。…悪運の強さはまさしくおめえ譲りだよ》
その答えに、男の目が驚いたように見開かれた。
無理もないが、どうやら半ば諦め半分だったらしい。
「そいつは…」
思わず声に出てしまって、慌てて黙り込んだ。
(…そいつは正直驚いた。
…まあ俺譲りも何もって…いや…これはここでする話じゃないな…。
とにかく、ここに帰ってくる事に間違いはないんだな)
今度は喜び半分と驚き半分のようだ。
《間違いねえよ。
おめえみたいに片腕にもなってねえし》
(そうか……それは何よりだ…。
……今後の事は…アルバート次第だな。
連邦に戻るのは無理だろうから、ここでのんびりするのもいい)
男も経験した事だから、アルバートのこの先についても考えていた。
でも結局はアルバートの意思1つなのだろうが。
声が核心を突いてきた。
《もしも、おめえと一緒に傭兵やりてえって言ったらどうするよ?》
男は笑みを浮かべた。
それは父親ではなく、傭兵隊長としてのものでもない、あのプログラムで浮かべていた戦士の笑み。
(アルバートがそれに相応しい覚悟を持っているのならな。…それに…)
《それに何だ》
(あの戦いを勝ち抜いてきた戦士の決断を、俺が否定できるわけないだろう)
男と声の無言の会話が続いていたその頃。
孤児院の玄関の前に、1人の青年が佇んでいた。
少しの間その玄関を懐かしそうな目で見つめ……ゆっくりとその扉を開く。
【第4回プログラム…終了】
ほしゅ?
次回大会やるの?
一応ほし
流石にもう勢いが無いよ
しばらく時間を置いて様子を見たほうが良いんじゃないかな