811 :
通常の名無しさんの3倍:2007/08/15(水) 23:24:24 ID:JYKP48g5
パイスーの頭の部分を持って一言
「これが、シーラ様です…」
ショウ「なんとぉぉぉ!」
812 :
1:2007/08/17(金) 21:32:15 ID:???
バイストンウェル、天の向こうに無限なる宇宙が広がる地上とは違い、閉鎖された世界である。
宇宙世紀に入り人類は、地球というゆりかごには納まりきれないほどに増大し、その生活圏を地上からさらに外側の宇宙空間にまで広げていた。
しかしそれは巣立ちと呼ぶには程遠いものだった。
宇宙移民が推し進められて百余年が経つも、結局、権力のあるものは地球にしがみ付き、無い者でも不法に地球での居住を続けている。
またせっかく完全な宇宙空間で生活する方法を確立したにも関わらず、その生活圏は相変わらず地球軌道から広がりを見せようとはしなかったのである。
時に宇宙世紀0093年。それを憂いたシャア・アズナブルは、小惑星アクシズを地球に落下させ、強制的な人類の巣立ちを目指したのだった。
しかしいよいよ落下目前にまで迫ったアクシズはアムロ・レイの見せた人の心の輝きによって押し返されたのである。
あの淡く蒼い光が何だったのか、この地上には答えられるものは誰も居ない。
時はさらに経て、宇宙世紀0153年。
ザンスカール宰相フォンセ・カガチは、地球圏支配のため、地球そのものを傷つけることなくサイキックウェーブで全人類の生体活動を停止させる究極のマシーン「エンジェルハイロゥ」を地球に降下させる。
だが、結局はそれも、地球に拒絶されるような形で、最後は散り散りになって宇宙へと飛んでいくのだった。
その激戦の最中、暖かな淡い燐光に包まれた天使の輪の上で。
ウッソ・エヴィンはバイストンウェルへのオーラロードを開いたのである。
バイストンウェル。空には海が広がり、地の底には地獄が犇めく、天上にして俗世の世界。
気とも魔力とも呼ばれる人の魂が満ちる場所。すべての魂の還る場所。
ミ・フェラリオは斯く語る。バイストンウェルに現われた一人の地上人の戦いを。
813 :
1:2007/08/17(金) 21:35:13 ID:???
第18章 もう一度TENDERNESS
如何に地上ではニュータイプともスペシャルとも呼ばれるウッソ・エヴィンであっても(バイストンウェルでは聖戦士と呼ばれている)自由自在にはオーラロードを越えられるハズはないのである。
しかして彼は、シーラ・ラパーナの窮地の前に、敢然として現われたのだった。
その様は、年頃の少女であれば心を奪われるのに相応しいシチエーションであり、シーラ・ラパーナでも例外ではなかった。
ただ、それを表面に出せるほど幼くも奔放でもなかったけれど。
シーラ・ラパーナはともすればバイストンウェル一の大国と言っても過言ではないナの国の女王であった。
年齢は僅かに17である。王女ではなく、彼女が女王なのだ。
それもただの女王ではなく「聖女王」と呼ばれる尊き立場。
このバイストンウェルでは、地上で言うファンタジーな世界ではあるが、魔法というものは存在しない。存在しないが、信じられてはいる。
実の所、呪文を唱えれば炎が飛び出すような魔法はないが、エ・フェラリオなどの高度な存在になると魔法を使えないこともない。
バイストンウェルで言う魔力・霊力は、つまりはオーラ力のことであり、それは人の心と意思の強さに比例する。
そういう意味では、確かにシーラには人より優れたオーラ力があるのだろう。
そしてそれこそが、彼女が若くしてナの国の女王たる由縁でもあるのだ。
戦乱の世に、人民を引き付け、家臣に愛され、国を平和に統べるためには、強く気高く純粋なオーラ力が必要になる。
聖大国であるナでは特にそうなのだ。
ナで生まれ育ったすべての人間は、シーラ・ラパーナを敬っているし、畏れてもいる。
シーラにまっとうなクチが聞けるのは、これは身分ではなく気分の問題で、エルとベルを除けば他にいないのだ。何故なら、それはあまりに畏れ多い。もっと言うなら畏ろしいことだからだ。
それで良いと思っている。
そもそも平民や一般人から畏れられない王なんて有り得ない。そんなものでは国は治まらない。
オーラ力がハッキリと顕著するこの世界では、シーラ・ラパーナを眼前に拝して平伏せずにいられる人間は多くはない。
だが、それで良いのだ。
それが出来るから、シーラはナという大国を治められるのだし、内乱もなければこれまで外から攻められることもなかったのだから(ドレイク・ルフトはシーラに劣らないオーラ力を持っている)。
だから、シーラはにこやかに微笑むことも、優しげな態度を取ることもあまりなかった。
エルやベルにだって、言葉使いや姿勢は崩さない。
それがこの国を、この世界を平和に治めるためだと思えば我慢も出来た。
いや、我慢というと弊害がある。
これまでは、そう、これまでは、なかったのだ。
自分を恐れも敬いもせず、ただ、ちょっとだけ頬を赤く染めて話しかけてくる少年などは──。
まして、自分より強いちからを持った少年などは──。
814 :
1:2007/08/17(金) 21:37:57 ID:???
時刻は深夜、星(ワーラーカレンを泳ぐ魚の燐光)も疎らの夜だった。
ウロポロス城では、いくらか電気の光というものも実用されていたが、今宵は轟々に篝火が灯されてあたりを一面をほの赤く染め上げていた。
煤と埃を払った白肌は、炎に照らされてか少し赤み差して闇に映えていた。
美しい翠の髪が、遠くで吹きあれるオーラノズルの煽りを受けて、ファサファサと揺らめいていた。
瓦礫の玉座に腰を降ろし、シーラ・ラパーナはしんと息を呑む。
少年の駆るオーラバトラー(ほんとはモビルスーツ)の蒼と白のボディが鮮やかだった。
城から遠く離れ篝火など届かないはずなのに、その背中から吹き出す赤い燐光がきらびやかにそのシルエットを映し出す。
初めて少年がウロポロス城へ現われた時に乗っていた地上の機械──V2に酷似した機体だった。
ああ、やはり地上に帰っていたか。
シーラは誰ともなくそう思う。
ウッソ・エヴィンがガラリア・ニャムヒーと衝突し、バイストンウェルから姿を消したあの日、ニー・ギブンからの報せを待つまでもなく、シーラは事を悟っていた。
ニー・ギブンの手紙にはウッソは死んだかも知れないと書いてあったが、そんなことはないとシーラにはわかるのだ。
死んだのではなく、消えた。何処へ? 考えるまでもないことだった。
……ウッソは地上へと帰ったのだ。
その結論に至るまでの時間は僅かも掛からなかった。
ウッソは最初から地上へ帰りたがっていたし、バイストンウェルに残ってドレイク・ルフトと戦わなければならない謂れもない。
『聖戦士』と呼びはしたが、彼が自分とは違ってそんなものに縛られたりする人間では無いとわかっていた。
無責任と思わないでもない。
理由などなくても理不尽であっても、ちからを持って生まれれば事を成してみせるのが正道だと思うのだ。
だが、その考えを、自分より幼い者に押し付けようとは思わなかった。
ウッソが只者ではないということはわかるのたが、同時に、ただの少年でもあるということもシーラにはわかるのだ。
なにより彼は、見た目以上に内面が疲れきっていた。
それこそ自分以上と言っても過言ではないほどだった。
既に限界寸前まで頑張ってる人間に、どうしてもっと頑張れと強いることが出来ようか。
しかし彼はナの国に現われた聖戦士である。これからアの国のドレイク・ルフト一戦交えようかというこの時だ。例え、実力など無い形だけの聖戦士であっても、自軍の強大な旗頭になり、味方の士気は大きくあがるのだ。
815 :
1:2007/08/17(金) 21:40:34 ID:???
旧来以前の合戦でもそうだが、オーラマシンによる戦闘は、士気によって大きく左右されるところがある。
だから、例え形だけであっても、居てくれるだけでウッソ・エヴィンはナの国にとって大きなちからになる存在だった。
まして彼には本当に優れたちからを持っている。
しかし、シーラは本気でウッソを地上へと返してはあげられないだろうかとさえ考えた。
ナの国の女王としては、それは有り得ない選択肢である。
正しき聖戦士の在り方を示し、自分の良い様に扱えてこそ立派な王なのだ。それこそドレイク・ルフトのように。
相手がウッソでなければそれが出来ただろう。それが正道なのだ。
だが、シーラはウッソをナに引き止めることもなく、ゼラーナにいるという他の地上人の元へと送り出したのだった。
あれは少年なのだから、一度飛び出してしまえば、帰って来る保障など何処にも無いとわかっていた。
覚悟していたことだった。
これで良いとも思っていた
もともとウッソが現われなくても自分たちだけで決戦するつもりだったのだ。
現われる前に戻った。
それだけのことだった。
寂しいと思わないでもない。
自分と対等に話してくれる少年なんていままではいなかったのだから。
悲しいと思わないでもない。
彼になら──と、少しだけ考えないでもなかったから。
そんな思考とは決別を決める。
いなくなった者を想い縋ってもどうにもならないのだから。
既にエルフ城は陥落し、アの全土を手中に収めたドレイク・ルフトは、既に先遣隊をラウへ向けて出撃させている。
ショウ・ザマやニー・ギブンもよく戦ってはいるが、アとクの合同軍の圧倒的多数の前には押されている。
純粋な国力であれば、ラウやナは、アやクなど比較にならない大国であるが、どうしてもオーラバトラー技術では二歩も三歩も遅れを取っている。
816 :
1:2007/08/17(金) 21:43:26 ID:???
オーラバトラーの素材に使われるのは主に野生の強獣の骨や鱗や神経なのだが、これを狩るにしても強力なオーラバトラーを多数有するアやクに比べれば、前時代同様に弩弓かガダで狩らねばならないラウやナは圧倒的に不利である。
ようやく共同で開発していたボゾンも完成したが、いまだに数は揃わない。
また密偵によればアやクでは巨大戦艦を製作しているという報告もあり、それに対抗してラウとナでも巨大戦艦の開発を進めているのだが、これのせいでオーラバトラーの生産が遅れているのだ。
だが、アやクが巨大なオーラシップを導入して来たときに、こちらにも対抗できるオーラシップがなければ、とてもじゃないが戦(いくさ)にならない。
タータラ城やウロポロス城が如何に堅固な城だと言っても、それは騎兵や対人・対強獣に限られたもので、オーラバトラーはまだしも、巨大な大砲を積んだような空中要塞が相手では、まったく手も足もでないだろう。
オーラバトラーの生産が多少遅れても、オーラシップは建造しなければならない。
城の無い騎兵隊などは、戦線を維持できるはずも無いからだ。
だが、もともと性能が劣り、パイロットの技術も劣り、オーラバトラーの生産数さえ少ない現状では、アやクの攻撃を防ぎきることなど容易ではなかった。
着々とドレイク軍の侵攻は進んでくるのである。こちらの生産体制が整うより早く、設備や戦力を切り崩されていく。
頭の痛い話だ。
以前の戦争であれば、同盟国なり友好国なりに援軍を請うこともできるのだが、オーラマシンの軍隊を所有する国家などほとんどなかった。
アのオーラマシンのたった一部隊に王城を攻めこまれれば、それだけで小さな国は降伏せざるおえないのである。
残念ながら、今のラウやナにはそれを助けるだけの余裕は無い。
結局の所、労働力や穀物といった援助すらもほとんど望めないのである。
817 :
1:2007/08/17(金) 21:46:00 ID:???
こんな時にウッソが居てくれれば……、などとつい考えてしまって、シーラは自分がよほど疲れてしまっているのだと気付くのだった。
思えば、これまでの女王の業務だって決して楽なものではなかったけれど、これほどの困難を強いられたのは初めてだった。
こんな時に頼れる誰かを求めてしまうのは、彼女にもある女性としての性の一端かも知れなかった。
ウッソ……、なんて無意識に呟く自分が嫌になる。
地上へ帰ってしまった少年のことをいつまでも想い続けてなんになる。
いま必要なのは、居ない誰かに頼ることではなく、己のちからで事態をなんとかすることだ。
そうは思いながらも、ふうと一つ溜め息を付くと、机に並べられた書類の山から目を離し、遠く開け広げられた出窓の向こうへ視線を向けるのだった。
夜空は、月もなく星が疎らで少し物寂しく見えた。
星が少なく見えるのは、ウロポロスに灯った電光のせいかも知れなかった。
いつも通りの夜だった。
予感も無かった。
あのカテジナ・ルースという女が目の前に現われて、その引き金を引くその瞬間までは。
だけど、その一瞬。その一瞬だけは、こころに叫んだ。
(……ウッソ!)
常闇を裂いて現われる、光の翼を持つ蒼と白の巨大なマシーン。
分厚いガンダリウムの装甲を貫いて、シーラの視線は、搭乗者であるウッソ一点に集中される。
(……ウッソ)
避難することを忘れ、家臣に指示を出すことも忘れ、ただ呆然とシーラはウッソ・エヴィンへ眼差しを向けていた。
手を引くカワッセに視界を変えられ正気に戻る
「シーラ様!」
「……カワッセ、わかっている」
王たる者にうろたえることなど許されない。そういう時こそ毅然に振る舞い、家臣達に平静を取り戻させねばならない。
「城は崩れる、みなを避難させよ。指揮系統はグランへ移す」
「しかし、グランガランは……」
「飛べなくても良い、ウロポロス城の代わりになれば、な……」
それだけ言うと、シーラは外へ向かって走り出した。適当に言伝をして従者も下がらせる。
ウッソが見えるところに行きたかった。
ただそれだけの思いで打ち付けて痛む足を抑えてひたすら走る。
818 :
1:2007/08/17(金) 21:49:45 ID:???
破けたスカートを幸いに、はしたないくらいに力強く走った。それは女王の見せるべき姿ではないのかも知れない。まして非常時に。指示は出したがそれだけだ。本当ならもっと細かくどんな事態が起こっても対応できるよう自分もみなの傍に居るべきなのだろう。
何より身の安全が問題だ。ナに限ったことではないが王国というものは王があって始めて成り立つ国家である。聖女王ともあればなおさらなのだ。いまシーラの身に何かあれば、アと戦争をするどころの話ではないのである。
それでもシーラは走るのだった。
石造りの壁や柱が次々崩れる。舞いあがる土埃を口許は手布で抑えるのだが、目は閉じない。
閉じれば視界を閉ざされる、動けなくなってしまう。首を振りながら埃を払い、ただそれだけの対応で目は閉じず、頑として突き進む。
正門に回る時間はない。大広間から調理場へと入り勝手口を目指す。もちろん調理場などへ入るのは初めてだったが、自分の城の内部構造くらいはすべて頭に入れているというのがシーラだった。
私は料理はできないが……。
そういうのってどうなのだろうとか考える自分が異常におかしくって吹き出しそうになった。
……なんてはしたない。
いまさらながら自分を戒める。
私は何をしているのだろう。こんなに必死になって、一体何を。
疑問には思っても、シーラの足が止まることは無かった。
扉を開く、視界が一気に開けた。テラスから望んだときと同じ、星の疎らな夜の空。いまは篝火が轟々に付いて、少々目煩いが。
少しだけ小高い瓦礫の山の登頂に立って、シーラはウッソの姿を探すのだった。
探すまでも無かった。向こうから降りてきてくれた。
コクピットが開いたと思うと、白い燐光の軌跡を描いて、ミ・フェラリオのエル・フィノが飛び出してくる。
「シーラさま〜〜〜っ!!」
次いで降りてくる少年の姿、見紛うことなく、ウッソのものだった。
(ウッソ……)と、しかし、第一声は、「何故来たのです、追いなさい、あの女性(ひと)を」
気圧されて後退るウッソを追い討ちするように、
「追うのです、あれの狙いはおまえが最初に乗ってきた地上の機械です、……行かせてはなりません」
それがシーラの意地だった。さきほどまでの必死で城内を駆けてきた”はしたない面影”など微塵も無い、格好こそ土埃に汚れているけれど、誰もが認める気高く高貴なナの国の女王の姿だった。
819 :
1:2007/08/17(金) 21:52:28 ID:???
「でも……」
戸惑いの表情を浮かべるウッソ。わからないことを言う子供を叱り付けるようにシーラは追いなさいと声を荒げる。
「出来ませんッ!」
決意の込められた一言だった。眼は頑なに、拳は握り、足は踏み出して、言い終えた唇は真一文字に引き締められている。
押してもダメとなれば引いてみるというのは定石だった。優しく諭すようにシーラは語る。
「貴方は聖戦士でありましょう? ……私などにかまわなくてもいい、為すべきことを為せばいいのです」
「シーラ・ラパーナを助けるということだって大切なお役目のひとつでしょ」
そんな物言いは気に入らない。
「私は聖戦士の行いを為せと言っておるのです!」
「それならシーラ・ラパーナはこんなところでボロボロになって突っ立ってていい人じゃないハズでしょ!」
ウッソのあまりの勢いに、今度はシーラの方が後退る。
「貴女は僕に助けを求めて、ここから早く避難しないといけない、そうじゃないんですか!」
シーラには、人の心やオーラ力の色や流れというものを敏感に感じ取るちからがあった。
例えば、人が自分に対して惧れを抱く瞬間がわかるのだ。
負ばかりではなく、良い印象でもそうだ。例えばこの人は私に好感を持ってくれたと、ハッキリ知覚できる。
それにしても、こんな熱い感情は初めてだった、本気の本気という奴だ。
「貴女がその勤めを果たさないで、僕にだけに聖戦士の仕事をしろっていうんなら、行きませんよそんなの!!」
返す言葉などあるはずも無く、シーラはただ声を奪われた人魚姫の如く押し黙る。
黙りきったシーラを前に、少しばつが悪そうにウッソは俯いて、
「……ほっとけませんよ」
ゆっくりと呟いた。
ウッソの眼は、赤く、熱く、潤んでいた。
それでもシーラは何も言葉を紡ぐことはできず、ただウッソの手を取った。
シーラの冷え切っていた手肌に、ウッソの暖かい手のひらが沁みわたっていく。
心地良かった。
城の所々が崩れ落ち、付近の樹木が燃え上がっているにも関わらず、そんなことが気にも入らなかった。
突然間に入ってきたエルに驚いて手を離す、お互い赤くなって視線を外す。
ウッソがエルを追い払って、再び二人の間に静寂が流れたが、もう、充分だった。
820 :
1:2007/08/17(金) 21:54:54 ID:???
いまさらだが、いまはそんな場合ではないのだ。
シーラは、今度こそ渾身の笑顔を向けて、私は大丈夫ですからと頷いてウッソを送り出した。
一瞬安堵の色を見せたかと思うと、途端にキリッと表情を変えて、ウッソは自分の機械へと走り出す。
シーラは黙って見送った。
何故か微笑がこぼれる。
ウッソは行ってしまったが、呼べばまたいつでも来てくれるだろうという確信があった。
そうなのか──、と理解して、さらに笑みが込み上げてきた。
そうだ、私は知っていたか、呼べばウッソは来てくれると、頼めばウッソは助けてくれると。
けれど、同時に、ウッソがとても優しい子だとも知っていたから──。
一度頼んでしまえばウッソは決して断ったりはしない、何を犠牲にしてでも戦ってくれるだろう。
ウッソは誰より優しい子だから──。
それがわかるから、私はウッソだけには頼りたくなかったか……。
でも、ダメだった。
ダメだったのだ。
何故か、笑みがこぼれて。
そんな自分を厭に思いつつも仕方ないと納得できるのは、彼女が女という性別で生まれたからに違いなかった。
つまりそれは、自分がウッソを好いているということなのだと、彼女は淡く自覚するのだった。
夜の空を裂いて飛び去るウッソの姿は、
どんな伝説の聖戦士たちよりも、凛々しく気高く華麗に見えた。
* 少々前回とセリフが違いますがパラレルでス *
* 一年ぶりの更新なのにまったくお話進んでなくてゴメンなさい *
* 久しぶりに来て残ってて感動しました、そしてすみません *
* 次回は何年後になるか(死)未定です、申し訳ありません…… *
おおGJ!
なんという僥倖じゃ。
いつか、またゆるりと来て下され。
失礼だとは思うのだが……中の人変わってないかい?
彼は職人なのだ。
誇りばかりか気持ちまでが職人なのである。
神と言われようが彼には関係のない事であった。
…故に現れたのだ。一年もの月日を越えて。
彼は職人なのだ。
この物語を覚えている者は幸せである。
ここはageるべきだろう
ほ
し
い
っ
て
つ
やりおった!!!
お美事
ほ
二週間も放っておいて
『ほ』
じゃねぇよタコ。
お美事でござる
落ちた方がよかったと?
保守
ほす
保守age
ペニバススレの続きはここでいいのかな
エ
842 :
sage:2007/12/01(土) 05:02:30 ID:9cIMtlUp
保守
ペニスバンドが似合うシーラスレか
明けましてほめでとう
今日初めて読んだが面白いな
アニメで観たいわ
847 :
通常の名無しさんの3倍:2008/01/13(日) 21:22:31 ID:1h+QZRBR
ほ
848 :
1:2008/01/27(日) 07:27:04 ID:???
第19章 ウッソとシーラ
カテジナ・ルースのウロポロス襲撃より一日が経った。というよりは夜が明けて朝になったというほうが正確か。
『白き宮殿』と謳われ、バイストンウェル一静謐な造形で彩られていたウロポロスの城は、見るも無残に崩れ落ちていた。
電気の無いこの世界では(もっともウロポロス城ではウッソのもたらした地上の技術を応用して僅かに電気を取り入れてはいたが)、明かりといえば油を燃やしてつけるものであった。
全長9メットにも及ぶ巨人は一撃で城の壁を突き破り、部屋も何もかもをも蹂躙してみせた。城内にはおびただしい数の蜀台が設置してあったし油瓶もあった。
石作りの城はそのままでは足元がとても冷えるのでそこら中に絨毯が轢きつめられてあった。それらが燃え上がり一気に大火となった。確かに建物本体の壁は石や石膏だが、内装などは布や木材など可燃性のものが多かった。
また、戦時中ということもあって武器弾薬火薬の類は城内に所狭しと保管されていたのである。
もちろん無防備に野ざらしになどしていたわけではない。本宮より少し離れた位置に、厚い壁に守られた貯蔵塔が建てられていた。
武器庫や燃料庫というのは、城の中でももっとも重要な要所のひとつである。侵入者、及び敵の攻撃には最新の注意を払って充分な警戒をしていたつもりだった。しかし、それは甘かった。
これまでの馬や剣を使った戦いとはわけが違うのだ。オーラバトラーで一気に乗り込み砲を撃ち込まれては人の警備などなんの役にも立たず、硬い石の塔といえどたったの一撃で打ち折られてしまうのだから。
そう、所詮ウロポロス城は、対人用の要塞ではあってもオーラバトラーと戦うようには出来ていないのである。
伝説の強獣ドラゴ・ブラーでも斯くもというほどに、カテジナ・ルースは暴れまわったのだった。
かつてドレイク・ルフトが大軍をもってエルフ城を攻めたことがあったが、カテジナ・ルースはたった一人でたった一夜でウロポロス城を崩壊寸前にまで至らしめたのだった。
849 :
1:2008/01/27(日) 07:30:57 ID:???
ウロポロス城は本宮を中心に4つの離宮からなった建物だった。本宮を含め3つの宮は半壊、あるいは無残に崩壊していたが、カテジナ・ルースの進入方向からちょうど裏手になった2つの宮はなんとか原型を止めていた。
その宮の一室を与えられたウッソは、黙然とベットに腰掛けている。
とにかく休むようにと与えられたこの部屋だったが、ウッソはいまだ寝付けないでいるのだった。
ドタバタと廊下を走り回る足音が響いた。ガガ、ガガガと、瓦礫をオーラバトラーで動かしている音が響いた。
閉じていたまぶたを開いて、しかし、ウッソはひとつ溜め息を付いた再びまぶたを瞑るのだった。
外は酷く騒がしかった。当たり前だ。昨夜の一件から行方のわからなくなった人間の数は百人を優に超えている。そうしたもののうちのほとんどは、いまだ崩れ落ちた宮殿の瓦礫の中に埋もれているに違いない。
何人が生きた状態でそこに居るのかはわからないが、決死の救出作業が続けられていた。
昨夜の戦闘で城のオーラバトラーのほとんどは破壊されてしまったのだが、急報を聞いた付近の領地や工廠から援軍が幾らか駆けつけている。ナムワン級のオーラシップとボゾンが数機駆けつけていた。
それらは城の警戒を行いつつも瓦礫の撤去を行っていた。
残念だが、賊の追撃を編成するだけの余力はナの国には残っていなかった。相手が人間ならいくらでも兵隊をだせるのだが、相手がオーラバトラーとなれば兵隊を千人向かわせようとなんの役にも立たないからだ。
ナの国の持つ、残されたオーラバトラーの手駒は多くはない。それよりは、いまは城の守備を固める方が優先とされた。
実際のところ、石造りの城などオーラバトラー戦ではほとんど意味をなさないとはいえ、あるとないとでは心の拠り所が違った。城を失った王などは丸裸も同然なのである。
側近の一人はシーラに対し、とにかく付近の出城などに避難するようにと進言したのだが、この辺にはオーラバトラーの工廠を備えた城などウロポロスしかなく、シーラは移動はせずこのまま、残ったニ宮を核に陣を張ることを決めたのだった。
窓の外でわーっと歓声があがるのが聞こえた。
誰か生存者がみつかったのかも知れなかった。
そうだといいなあ、と思いながらウッソはやっぱり寝付けずにぼーっと天井を見上げるのだった。
瓦礫の撤去を自分も手伝いたいと申し出たのだが、とにかく休めと断られた。それが戦士の仕事なのだと叱られたのである。
そうかも知れないと思う。
いまはウロポロスは大変に無防備な状況だったし、カテジナさんはともかくクの国の他の攻撃部隊が今すぐに攻めて来てもなんら不思議はない状況だった。
万一に備えて、ウッソはとにかく休まねばならない立場にあった。
実際に疲れ果てていた。身も心もくたくたにぼろぼろだった。
それでも何故か眠れなかった。妙に昂ぶった身体が神経がウッソに眠りを許さないのだった。
(それでも眠らなくちゃいけないんだよ、僕は戦士なんだから)
何の羽毛だろう? 羽なのはわかるが、少し硬めのまくらに頬をうずめる。ここはバイストンウェルなのだから、自分の全然知らない生き物の羽かもしれないなと考えたらなんだか少し悲しくなった。
目頭が熱くなって、なんだか暖かい物が溢れてきて、そしたら途端にちからが抜けて。
シャクティ……。
まるで母をねだる赤ん坊のように、何故か幼馴染の少女の名前を呟いて、ようやくまぶたを降ろすウッソなのだった。
850 :
1:2008/01/27(日) 07:36:07 ID:???
シーラ・ラパーナは決意を迫られていた。
眼前には、十余年を過ごしてきた己の母胎とも故郷とも言えるウロポロス城の無残な有様が広がっている。
自分がこれまであれほどの苦労をして背負ってきたこの城が、たったの一夜で無残にも崩壊せしめられていた。
これがオーラバトラーの為せる技というものだろうか。
以前の戦争なら、数万の大軍と数百の火砲用意して攻めてこられたとしても、たったの一夜でこうも辱められることはなかったろう。
それがたったの一夜、たったの一機、いや、たったの一人の地上人の手によってこの有様なのだった。
怖ろしいというよりは虚しいという感情が広がった。
これだけのちからを手に入れればそれを行使せざる負えないというのが人の性であるからだ。
何故、天は、バイストンウェルにこのような過ぎた力を呼び込んだのだろうか。
バイストンウェルに『神』というものは存在しない。
それでも『運命』や『流れ』というものの存在はシーラにもわかるのだった。
もちろんオーラバトラーが誕生する以前から、バイストンウェルは戦争に溢れていたのたが、それでもこんなものを使って戦争をしてしまえば世界が壊れてしまうのではないかと危惧するのだった。
たった一機のオーラバトラーでこうもオーラ力を引き出せるというのなら、「アレ」を使うのがどれほど愚かなことかは容易に想像できる。
ああ、と呟いた。
それでも、それでも、使わなければならない時が、今、なのだ。
皮肉にも、使うべきではないと痛感させられたこの夜こそが引き金なのだ。
使わないで済めば良いと思った。そう都合良くはいかないともわかっていた。それでもやはり使いたくは無かった。
あまりにも大きく、あまりにも巨大な、あまりにも禍々しいオーラマシーン。
人を狂わせるには充分すぎるほどの強大なちからを秘めている。
オーラマシンは人を狂わせる。
ドレイク・ルフトはもともとは領民たちにも慕われていた人の良い、何処にでもいる一領主に過ぎなかった。胸に多少なりの野心を秘めていたかも知れないが、それは誰でも一度は夢見る願望というものだろう。
まさかそれを叶えられるちからが手に入るなどとは夢にも思っていなかったに違いない。だが、彼の前にショット・ウェポンが現われたのだった。
なるほど、このオーラマシンの圧倒的なちからに魅せられれば野望のひとつも抱きたくなってしまうのは仕方のないことかも知れなかった。
最初は暗愚であるフラオンを打ち倒し、アの国民たちを救いたいとかそんな崇高な目的があったのかも知れないが、次第に世界制覇、如いては地上進出へとその野望は展望を見せていった。
それもまた、オーラマシンのちからの増大によるものなのかも知れなかった。
ビショット・ハッタももとは気の小さな優男であった、とても世界制覇を企む器にはなかった。
ナの国の騎士たちも例外ではない。オーラバトラーのパイロットの中には必要以上に自身を過大評価するようになったものも多く居る。確かに、馬を蹴り地を這っていた頃に比べれば、巨人に乗って空を舞う自分の姿はさぞ陶酔に値する華々しさがあるのだろう。
そう、過ぎたちからは人の心を変えるのだ。
私はどうか、とシーラは考えた。
あんなものを宙に浮かべても、変わらずいまのままで居ることが出来るのだろうか。
今は、野望に走るドレイク・ルフトを打ち倒すという崇高な目的があるが、それを為した後でも清白でいられるのだろうか。
自信が無い、なんて表情は誰にも見せられない。何故ならシーラは女王だった。
城は失っても国民がいる。多くのものを失ったが、まだ守るべきものはたくさん抱えている。
戦わなければならない。戦って、勝って、征さなければならない。あれを浮かべ、ドレイク・ルフトを打ち倒し、オーラマシンに魅入られず、そして、バイストンウェルを立て直すのだ。
それが自分の使命なのだとかみ締める。
それがどんな重責だったとしても、困難なことだったとしても、自分がそれに立ち向かえる人間だとみなが信頼してくれているから自分は王なのだとシーラは理解していた。
逃げない、立ち向かい、そして勝つ、それが王たるものの務めなら、迷うことなど何処にもない。
グランは浮かべる。そして、しかし、オーラマシンに魅入られない。
毅然と振舞い、敢然と立ち向かい、そして何物にも勝利せねばならない。
それは最高の結果を求める代わりに、最も険しく熾烈な道を歩むという覚悟の決断だった。
悲壮な想いを胸に、しかし、凛としてシーラ・ラパーナは側近へと告げた。
「グラン・ガランを用意せよ」
851 :
1:2008/01/27(日) 07:39:45 ID:???
「シーラさん」
驚いたようにクチをぽっかりあけてウッソが空を見上げている。
結局あれから一週間が経ったのだが、クの軍があれから攻撃を仕掛けてくることは無かった。
2日目からはウッソも瓦礫の撤去を手伝った、あれからも数人の生存者は発見されたが、行方不明者の総数から考えれば、その程度では慰めにもならないほどの少数だった。
それでも、ひとり見つかるたびに本当に嬉しくて涙がでるウッソだった。
人が死ぬところなんてこれまで飽きるほどに見せられた。だから恐怖を感じることは今はない。それでも悲しさとか生きていてくれたことへの嬉しさとかの感情のうねりははちっとも薄らがないで、むしろ大きくなってきているとさえ感じるウッソだった。
それは悪いことじゃないと思うから素直に悲しい時は落ち込んで、嬉しい時は精一杯喜ぶようにしようと思っている。
なんだか照れくさくなって、ぼくもすこしは成長してるんだよとハロを小突いてみた。機械のくせに不思議そうな顔をするハロだった。
ところでウッソが見上げた物体は、全長500メートルはあろうかという、巨大な空中戦艦のシルエットだった。
ヴィクトリーのスラスターを吹かせて飛び上がってみる。上空から全体を見渡して見たかったのだ。
その造形は巨大な城を連想させた。
三方に突き出した足を持ち、中心は塔のように高くせり立っている。
揚力とか風の抵抗とかを考えるなら、明らかに空を飛ぶのに不便なかたちをしているようにみえた。
全長500メートルという長さだけならラーカイラム級の戦艦やリーンホースとも大して変わらないのだが、その聳え立つ中心の宮殿部分が圧倒的な存在感を生み出しており(実際、全高ではグランガランの方が遥かに大きい)、
とても戦艦には見えない優雅で洗練された外観とあわせて実尺よりも随分と巨大な空中宮殿に見えた。
「すごい船ですね」と通信を入れる。感嘆するウッソと裏腹に少し物憂げな声でシーラは返事を返した。ウッソはさらに尋ねる。
「着艦しても良いんですよね?」
本来ならば管制指示を女王本人に尋ねるなど無礼極まりない行為に他ならないのだが、シーラは何か言いかけたカワッセを押し止めて応えてくれた。
「構いません、一番ドッグ。向かって正面の発射口から入城してください」
ウッソは言われたとおりに機体を降ろしていく。ウッソのヴィクトリーは小型MSとは言っても普通のオーラバトラーより二周りも三周りも大きかった。そこで機体を分離させてから格納させる。
ウッソのヴィクトリーは、ブーツとハンガーは初期ヴィクトリーのものであるが、コアファイターだけはセカンドヴィクトリーと呼ばれる新型機種のものだった。
オーラロードの気まぐれで一度だけカサレリアに戻った時に偶然手に入れた機体である。
もともとバイストンウェルに乗って来たV2は、カテジナのゴトラタンと相打ちし、修理していたところをそのカテジナに持ち逃げされて行方知れずとなったのだった。
「地上にもこのグラン・ガランのような戦艦はあるのですか?」
少し神経を集中させながら分離、格納を行っていたウッソだったが、シーラに声を掛けられるとあっという間にそちらへと気が向くのだった。
「ありますよ。あー、まったく同じってわけじゃないですけど。もっとヘンな形の戦艦だってあります」
ウッソは大きな車輪つきのアレを思い浮かべながらそう言ったのだが、それじゃあ、暗にグラン・ガランのことをヘンだと言ってるみたいじゃないかと思ってあわてて言いなおした。
「でもこんな! お城みたいな綺麗な戦艦はありません!」
「……綺麗、ですか?」
「はい、芸術作品じゃないですけど、戦争の道具というよりは飾り物みたいで」
しかし、それではまるでグラン・ガランをオモチャだとでも言ってるみたいに聞こえてしまうと思って言い直す。
852 :
1:2008/01/27(日) 07:43:17 ID:???
「えと、とにかく、すごく綺麗だなあって……」
フォローになってない気がしたが他にどう褒めれば良いのかもわからなかったのでとりあえずそれで締めることにしたウッソだった。
「そうですか……」
なんとなく元気がない、と思った。無理もないことだろう、ウロポロスの城があんなことになったのだから。
ウッソは自分に何かできることはないかと思い、そのままクチにした。自分とカテジナの確執のせいでシーラを巻き込んだようなものなのだ。
「何か、僕にできることってありませんか?」
「え?」
「シーラさんのちからになりたいんです」
「ウッソはよくやってくれています」
「でも、辛そうにしてるじゃないですか。少しでも、何か、できることはないんですか」
「ウッソ……」
少しの間、二人に沈黙が訪れる。
トップリムが格納され、ボトムリムが格納され、その程度の時間しか立っていないというのにもう数時間も過ぎてしまったようにウッソは感じていた。
しかし、催促するのは男らしくないとも思う。ここは待つ。そして求められたことには出来るだけ応えようと思った。
「では、お願いがあります」
「はい」
少し躊躇うようにして再び間を空けてシーラは呟いた。
「……もし、この私がグランのちからに溺れて、ドレイク・ルフトのように道を踏み外そうとなったとき、あなたは私を討ってくださいますか」
カワッセを初めとする話を聞いていたブリッジ要員達から「シーラさま!」と声があがる。しまった、と思った。いつの間にか二人だけで話しているような気分に陥っていた。
この部屋には十人以上もいると言うのにすぐ隣にカワッセが立っていると言うのに、そんなことがいつの間にか眼に頭に入らなくなっていた。
弱音を吐いてしまった。示すべき部下たちの前で自分はとんでもないことを口走ってしまった。
深い自責の念が責め立てる。
「……いいですよ」
「え?」
なんでぼくにそんなこと頼むんですかああ、と思いながらもウッソはそう答えた。だってそれがシーラがウッソに求めていた答えだとわかるから。
苦しいのだ、不安なのだ、何か、後ろ盾が欲しかったのだ、支えてくれなくてもいい、けれど、もしも自分が崩れ落ちてしまった時に、それを受け止めてくれる何かが欲しいのだ。
間違いを犯さない人間はいない。そして間違いを怖れない人間もいない。まして背負っているリスクが大きすぎるのだ。
それは甘えというものなのかも知れなかった。自分が間違った時に誰かが叱って諭してくれるなら、こんなに安心できることはないだろう。
だから、言った。
「ぼくは聖戦士だから、シーラさんが間違いを犯せばかならず止めます」
とても真剣な口調だったそれまでから一転して、とても暖かい声音で、
「だからシーラさんが正しい限りは、ぼくはずっと貴女を手伝いますから」
感極まったシーラは、これ以上自分の失態を己の部下たちに見せたくなくて席を立つのだった。突然、部屋を出て行こうとするシーラをカワッセが呼び止めるが、来るなと一喝されてしまう。
仕方ないというようにマイクに向き直るカワッセ。
当惑しつつ、何処か苛立ちを込めて、だが、微笑んだ表情でウッソに言った。
「シーラ様がお待ちかねだ。晩餐を用意する、さっさと入城を済ませよ」
「は、はい!」
ポリポリと頭をかきつつ、ちょっとクサかったかなとハロを突付くウッソであった。
──続く
* なんだか眠れなかったので久々に7時間かけて書きました *
* うわあ、朝になってるよー *
* 次回は何年後になるか未定…… *
続きキテルー
シーラ様を口説くなんて!シャクティに刺されてしまえ!
うひょー!
これはageざるをえない
855 :
通常の名無しさんの3倍:2008/01/28(月) 21:43:44 ID:OCzj3055
つづききてるーーー
うれしすぐる
きたー!流石もて男ウッソと言ったところかw
保守
保守
保守age
保守してみる