ガロードはリアルさとマンガっぽさの接点
キャラクターデザイン 西村誠芳
――西村さんはファーストガンダム(「機動戦士ガンダム」・以下FG)のころ何をなさってました。
西村 放映が始まるのを指をくわえて待ってました。
というのは、その頃高校生で、地方に住んでたものだから
都市部より放映開始が1年近く遅れてたんです。
アニメ誌やなんかで情報は知っていたんですけど。
――FGのどのあたりがお好きだったんですか。
西村 いちばん魅かれたのは安彦良和さんの絵ですね。
自分自身、絵を描くのが好きでしたから、かなり影響を受けて、
いろいろ描いていましたね。その前に、ロマン・アルバムで
「コンバトラーV」とか「ライディーン」の安彦さんの絵を見て好きでしたし、
「クラッシャー・ジョウ」(原作・高千穂遥 さし絵・安彦良和)も読んでましたから。
それから、キャラクターの演技の細かさですね。
さり気ない動きまでちゃんと作画してある。たとえば、走ってたキャラが立ち止まる場合でも、
すぐに止まるんじゃなくて、その前にスピードが落ちる部分も作画されている。
動きがソフトでリアルだったんです。
今、考えるとキャラが演技しているということだったんですね。
描かれるキャラにもそれぞれ、人間の持つ多面性がよく描かれていてリアルでしたしね。
――今回の「ガンダムX」のキャラ・デザインを担当された感想は?
西村 「ガンダム」という肩書きはやはり大きいですから、
自分がやっていいのかなとは思いましたね。
ガロードのような元気いっぱいの少年というのは、ぼくにとっては描きやすいキャラなのですが、
「ガンダム」キャラはリアルだという前提がありましたから、
そこをクリアするのに苦労しました。
結局、自分のもっているマンガっぽい絵と、リアルな感じの絵を両方描いて、
両者から少しずつ歩み寄ったのが今の設定になったという感じです。
――ティファについては?
西村 高松監督から、まつ毛が長くてたくさんある女の子という注文もあって、
あの絵になったのですが、最初は目の瞳孔をなしにしていました。
神秘的な雰囲気がほしかったし、ララァのイメージがあったものですから。
そのティファで、今ちょっとした苦労をしているんです。
――というと?
西村 今、7〜8話を作画しているのですが、4話から昏睡状態だったティファが、目を覚ますんです。
ところが、目を開けた顔が自分で描けなくなっている。苦労してます(笑)。
ガンプラ王が目指すのは、娯楽作品の王道
シリーズ構成 川崎ヒロユキ
――川崎さんは、ガンダム・プラモがお好きだとか?
川崎 ええ、自称”ガンプラ王”です。
じつは、ぼくが「ガンダム」を知ったのは、プラモが最初だったんです。
本放送も最終の2回分くらいしか観ていなかった。
当時、模型雑誌にMSのフルスクラッチ・モデルが載っていて、
それで興味を持ったんです。それで、再放送で追いかけました。
――メカの魅力ですか?
川崎 兵器のプラモが好きだったので、アニメの中でMSが兵器として
ちゃんと描かれていたのに魅かれたんだと思います。
放映が終わってから売り出されたガンプラも、リアルなフォルムだったので
ハマっちゃったんですね(笑)。
アニメでスケールモデルが出るなんて、当時としては画期的なことでしたから。
――FGの作品としての魅力は、どんなところでしたか。
川崎 話にのっかって、うまくメカが使ってあったことですね。
たとえば、あの宇宙コロニー。解放型コロニーの絵は見たことがあって知ってはいたのですが、
巨大な円筒が回転しているところへミサイルが飛んでゆく。
それが着弾して爆発すると、地面から爆炎が立ちのぼる、というのはまさに映像的な衝撃でした。
しかも、連続物としての語り口も見事だった。
――たしかに、どの「ガンダム」シリーズも連続ストーリーの大河ドラマ的な面白さがありましたね。
川崎 ストーリーを作っていく上で高松監督から言われていることが、2点あります。
1点は、頭でっかちでなく感情で話を作ること。
もう1点は、メジャーな表現で話を進めてくれということです。
――ちょっと難しいですね。
川崎 つまり、設定と情報だけで話を作らない。
キャラの思いと行動をちゃんと書いてくれということだと解釈しています。
話の冒頭で視聴者をつかんで引っぱってゆく、娯楽の王道を歩むつもりです。
かつてぼくが感じたように、親といっしょに観ることができて
「どうだ、すごいだろう!」と話せる作品にしようと思っています。
「機動戦士」が残したニュータイプたち
シリーズ監督 高松信司
――高松さんにとって、「機動戦士ガンダム」という作品は、どんな作品ですか?
高松 ひとことでは言えませんが、大変影響を受けた作品であることは
まちがいありませんね。アニメーションの仕事がしたいと思って
サンライズに入ったのも「ガンダム」という作品があったからだと思いますから。
――放映当時「ガンダム」を観て、どう感じられましたか。
高松 ロボットアニメでもこうゆう作品ができるんだと素直に驚きましたし、大変新しさを感じました。
当時、私は高校生だったんですが、まあ「ヤマト」に始まるいわゆる「アニメブーム」みたいなのがあった頃です。
だけど「ロボットアニメ」っていうのはあいかわらず「オモチャ」を売るための「子供だまし」だと思われてたわけです。
そこに「ガンダム」が出てきた。ロボットアニメなのにちゃんとやってる。
そして、それ以上に人間ドラマの深さに感動しました。
――放映1話からファンになったというわけですか。
高松 いやそうでもなくて、最初はヘンなロボットアニメだなと、
なんか小難しいこと言ってるし、だけど回が進むうちに
グイグイ引きこまれていったという感じでした。
というのも、はっとさせられるんですよね、毎回。
たとえば何話か進んでも敵メカがザクばっかりとか。
それまでのロボットアニメって毎週ちがうロボットを
しかも一体ずつ作って敵が攻めて来てたわけですけど、
それじゃなくて兵器として量産していると。
よく考えればその方が当たり前なんだと、そう気づいたあたりから熱中していきましたね。
――今回の「ガンダムX」には、そのFGをほうふつとさせる起動シーンがありましたね。
高松 原作「起動戦士ガンダム」ですからね(笑)。
物理的にああカット割りしないと寝ころがったガンダムは立てないっていう事もありますし、
自分自身がガンダムっていうのはああ立つと思ってましたから。
もっと絵コンテでは胸からガスを吹くとかそんな事は書いてないんですが、
演出や作画のスタッフにはこう立つんならこうだよねっていう風に伝わったみたいです。
他にもありますよね、雨アラレとふるコロニーの手前に「いつものやつ(文中傍点つき)」が落ちてくるとか。
そういう意味でのイメージの伝達は異常にスムーズです。
――FGが残した共通の基盤がみんなの中にあるせいでしょうか。
高松 それは良い事でも悪い事でもあるんですけどね。
でも「ガンダム」っていうのはそういった設定上の事だけじゃなくて、
あくまで、人と人とのドラマであると思っているので、
自分なりのドラマを「ガンダム」の空気の中で作っていこうと思っています。