ガンダムバトルロワイヤル第四回大会 第四章

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1通常の名無しさんの3倍
           キミ ワスレルベカラズ

         生き残れるのはたった一人だけ

           キミ ワスレルベカラズ

         その為には如何なる手段も問わず

           キミ ワスレルベカラズ

         これが"プログラム"のルールなり


           キミ ワスレルベカラズ
           キミ ワスレルベカラズ
            ワスレルベカラズ......



      ガ ン ダ ム バ ト ル ロ ワ イ ヤ ル



            第四回大会 第四章

        現在生存者 21名と1匹 死亡者 1名





ルール等の詳細は>>2-4ぐらいに。

当スレでは、随時参加希望者を募集しております。
参加ご希望の方は>>2-4ぐらいの参加申し込みテンプレをお読みいただきまして
管制室にてお気軽にお申し込みください。
2漂泊の2ゲッター:2005/06/07(火) 21:09:40 ID:???
       エ〜イ♪   ☆彡
               / 
 ``)      ∧_∧  / 2 ゲット…
`)⌒`)     (*゚ー゚)/)
 ;;;⌒`)≡≡ ⊂   く
  ;;⌒`)⌒`) ノ  つつ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
3通常の名無しさんの3倍:2005/06/07(火) 21:09:43 ID:???
第三回までの過去ログミラー
ttp://gbatorowa.hp.infoseek.co.jp/rogusouko.html

第四回テンプレ
ttp://gbatorowa.hp.infoseek.co.jp/tennpure.html

新規申し込みテンプレ
ttp://gbatorowa.hp.infoseek.co.jp/sannkamousikomitennpure.html

現行管制室(第十一管制室) 【只今閉鎖中?】
ttp://www.soutokuhu.com/bbs/test/read.cgi?bbs=shar&key=1093755404
ひとまずはこちらを使用中
アクシズ鯖落ち時 避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/1156/1077614901/

ネタ・遊び・気長な議論
ガンダムバトルロワイアル緊急避難所
ttp://jbbs.shitaraba.com/anime/1156/

基本情報・人気投票・おおまかな現在状況
第四回バトルロワイヤル 情報集積所
ttp://gbatorowa.hp.infoseek.co.jp/index.html

今回は本スレ容量節約の為、現在状況のマップと名簿以外を
別アドレスにてご案内させていただきます。
ご了承お願い致します。
4ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/07(火) 23:13:11 ID:???
ゆめを。みている。
とおいとおい、もうとどかない―――。

もう夕暮れというより夜に近い、人の手で調節された空の下。
俺は一人グラウンドに座ってボールをいじくっている。
一緒に遊んでいた友達はもう帰った。みんなには、帰る家があるから。
でも、俺には―――。
「おにいちゃん!」
「・・・?ああ、マリーか」
「きょうもおうちにかえれないの?」
目の前には、いつもと同じように俺と同じ茶色の髪の少女が心配そうに立っている。
彼女の名前はマリー・エンデバー。俺の妹。俺とは違って普通の人間だ。
だから、父さんと母さんは俺の分の愛情までこいつに向けていた。
でも、それに嫉妬したりはしなかった。少なくともマリーは俺のことを気遣ってくれている。
「ああ。おまえひとりで家に帰れよ、マリー。父さんと母さんが心配するだろ」
「えー、やだよ。おにいちゃんもいっしょにかえろうよ。ね?」
そういって、袖を引っぱり出すマリー。
「いい。ほっとけよ。俺が帰っても、喜ばないだろ」
それを振り払って、ぶっきらぼうに言い放つ。
俺とマリーは歳はそんなに変わらない。事実、この時の俺はまだ小学校低学年だ。
それなのに話し方にかなり差があるのは、俺は子供の時から人生について既に悟りぎみだったからだ。
・・・逆に言うと俺が子供の時から成長してないってことか。
「わたしは、おにいちゃんがいえにいたほうがうれしいな!」
笑顔で言う。こういう時、こいつは本当に可愛いと思う。兄バカかも知れないが。
「お前と一緒にいるのはいいけど、あいにく父さんや母さんと一緒にいるのは嬉しくないんだ」
「うー。なんでー?」
「そりゃ、向こうが嫌がってるからだ。それに、俺とお前が一緒にいるのも嫌がってるみたいだぜ?だからさっさと帰れ」
「・・・」
すまない、と心の中で謝る。俺と両親の不仲は、マリーに何の関係もない事なのに―――マリーを悲しませている。
5ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/07(火) 23:13:43 ID:???
このあとはいつも通り。渋々マリーは一人家に帰り、俺はその辺の店からサイキックで晩飯を盗みだす。
なぜこんな事をするかというと、うちの親は俺に対して食事なんて作らないからだ。出すのは大抵料理とは言えない物。
残飯ならまだいいほう、その日の朝飯なんかその辺に生えた雑草に塩かけただけ(もちろん生)。
まともな食事を食べたいなら、家に帰るわけにはいかない。
「こっちの方が気楽さ。毎晩好きな物食べられるんだから」
言ってから、後悔する。
自分でも分かる、虚しい強がり。これ以上なく―――無様な。

いくらなんでも野宿するわけにいかないので、いつも通りみんなが寝静まった頃を見計らって家に侵入。
うちの親は俺が帰ってきても鍵を開けてくれない。だからいつもはサイキックで鍵を開ける。
しかしそのときは違った。がちゃり、と音がして扉が開く。そしてその後ろには。
「おかえり!おにいちゃん!」
パジャマ姿のマリーが、蒼い瞳に歓喜の色を浮かべて待っていた。
一瞬呆然としたあと、慌てて問いつめる。
「お前・・・なんで起きてるんだよ!?母さんに怒られるだろ!」
「だって、おにいちゃんがかわいそうだもん」
そう言って、彼女はいったんキッチンに戻って、何かを持ってきた。
「ごはんたべてないから、おなかへってるでしょ?はい、これ!」
そういって彼女が差し出したのは、サンドイッチ。
ただ・・・何かよく分からない、真っ黒い物体(焦げた肉?)とか真っ赤な液体(タバスコ?)とかを挟んでいる。
料理未経験の幼稚園児が作れば、確かにこんな変な料理になるか。
「が、がんばってつくったんだけど。たべたくないならいいよ」
・・・バカ。俺が言うのもなんだけど、子供のくせに気を遣いやがって。
「いや、食べるよ」
そういって、口に入れた。まずい。いつも親に食わされてる奴よりまずいけど・・・でもそれより、ずっとマシだ。
「うん、おいしいさ」
「ほんと!むりしていってない!?」
「言ってないよ」
嘘を吐いた。こいつが悲しむ姿なんて・・・見たくない。
「よかった!わたしのベッドでいっしょにねよ、おにいちゃん!」
「え?いや、風呂も入ってないし歯磨きも・・・」
「いいじゃん!わたしもうねむたいよ・・・」
自分で勝手に待っていたんだろうが、といいたいのはやまやまだが、言わなかった。
その行為は、純粋に俺のためになされた行為なのだから。
少なくとも―――ちょっとだけ俺は救われた。
そして一緒にベッドに入ったあと、彼女は言った。
「だいじょうぶだよ、おにいちゃん。いつかいっしょにみんななかよくくらせるよ。
 わたしもそうできるように、がんばるから。ね?」
「え・・・?お前?」
なんて言った、といいかけて言葉を飲み込む。
彼女はもう寝ている。起こすのは野暮だろう。
思わず・・・泣いた。嬉しいから、という理由もあるけど、何よりも情けなかった。
俺と親の確執は、幼稚園児にこんな気遣いを持たせるまでに負担をかけている―――。
「ごめん、マリー・・・」
6ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/07(火) 23:14:33 ID:???
そのあと、俺は物置で寝た。俺の部屋なんてない。俺がいつも寝る場所はここだ。
親は俺がマリーに触れることすら許さない。「穢れる」んだそうだ。
以前俺がマリーがおもちゃを友達に壊されて、俺の体に頭を押しつけて大泣きしたことがある。
俺はマリーの頭をなでて、慰めようとした。
だがそれを見ていた父さんが俺をマリーから引き剥がして言うことには「悪魔が俺の娘に触るな」。
それを見ていた母さんがマリーを必死に抱きしめて言うことには「かわいそうに、あいつに何かされたの?」
もちろん、悪魔だのあいつだのとは俺を指して言った言葉だ。
きっとこの調子なら一緒に寝たりなんてしたら、殺されるだろう。
それに、俺と親が争えばマリーが悲しむ。
―――俺が家を出ようと考え出したのは、多分このころからだったのだろう。

【行動:自動航行中・V−10→V−18(4)夢(0)】
【位置:V−18、道路】
【残り行動値:0p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント
    予備 120mmマシンガン(新品同然) クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:睡眠中】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml×2】
【行動方針:灯台へ】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
7ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/07(火) 23:17:06 ID:???
訂正
3ページ目三行目の「以前」の後の「俺の」のはいりません。
8マサヤ=タカノ ◆O/EkHvxsV6 :2005/06/07(火) 23:30:15 ID:???
IDチェック、勝てる気が(ry
9マサヤ=タカノ ◆O/EkHvxsV6 :2005/06/07(火) 23:31:04 ID:hrOgW0gC
IDチェックに失敗してどうする自分
10通常の名無しさんの3倍:2005/06/07(火) 23:32:02 ID:???
10ゲトc
11サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg :2005/06/07(火) 23:59:08 ID:???
まだ雨足が訪れていないのが幸いしたのだろう、山肌は頑健なままだった。
森林地帯も無事に通り抜ける。レーダーに一切反応が無く、足止めを食らうことがなかったのも
幸いだった。が、一番の理由は

「慣れ、かね」

呟く。1日余りをずっとコクピットの中で過ごしていれば、自然とその扱いも
身体へと染み付いていく。

「もっとも、昔だってあまりまともに扱った試しは無かったがなぁ……」

(兵隊やってた時だってMSの中にカンヅメなんてことは滅多に無かった。
 ま、教練時以外は整備兵だったが……それでもここまでのことに思い当たる節は無い。
 ――そう、こんなことは普通滅多に無い)

「こんな状況までお膳立てする理由はなんだ……?」

考えている暇もあらばこそ、雨が降り始めてきた時。市街地が見えてきた。
街中に煌々と灯りが点っている。

「――なにぃっ!?」

機体を走らせ、市街地の傍へ付ける。
ただの一点の曇りも無く、街中を照らし出す光。
漆黒の闇の中に居続けての後は目も眩むような光源の塊。

「……はっ、こりゃずいぶんと――」

やがて、ぽつ、ぽつ、と雨が降り始めた。
街中の窓や屋根へと降り注いでいく雨。不似合いな巨人へも等しく降る雨。
だが光源は何も変化をもたらさない。そう、何も。

雨戸も閉じられず灯りも消されずたたずみ続ける街。

「――ずいぶんと、ブラックなジョークだ」

この位置まで来てもレーダーに反応が無いことを確認すると、ハッチを開きショルダーポーチを片手に
機体の肩へと降り立った。雨に少し打たれながらもカメラを取り出し、夜間撮影でシャッターを何枚か切る。
機械の兵士や、凄惨なる死闘、そんな非日常的なものよりも、日常の中から『日常』を奪った光景に
危険を知らせる勘の囁きは増していた。

【行動:移動(M-11→M-12→M-13→M-14)(3P) コクピットを出る(0P) 撮影(1P)】
【位置:M-14/市街地】
【残り行動値:0P】
【機体/状況:アッシマー/左腕部装甲に裂傷】
【生徒状況:左頬に赤み】
【武装:アインラッド(自動追尾)】
【所持品:ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx1、1.7Lx1)
     ウェストポーチ(ナイフx1、ペンライトx1、ガムx2、煙草x1、コンパス付腕時計、筆記用具)
     ショルダーポーチ(ポラロイドカメラ一式) ライターx1】
【行動方針:1.市街地への移動 2.情報の入手】
12ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/08(水) 00:22:07 ID:cJHFsaYu
IDチェック
13平管制員A:2005/06/08(水) 00:49:54 ID:???
   A B C,D E,F G,H. I ,J K L M,N O.P.Q.R S,T U V,W,X,,Y Z 
 01彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡
 02◎彡彡彡彡彡彡彡◎彡彡彡□□□彡彡彡彡彡彡彡★彡彡彡
 03彡彡彡□◎▼彡彡彡彡彡□□△□□□◎彡彡彡★07〓△彡
 04彡彡□□△▼▼彡彡彡□□□△△□▼▼彡彡彡彡彡彡△彡
 05彡彡□△△□┃□彡彡□□△△△□□▼▼彡◎彡彡彡△∴  □:平野
 06彡彡□□△□┣━〓━━━┓△△△┏┛□彡彡彡彡彡△△  ■:森林
 07彡彡◎□□┏┛□彡□□□┗━━━┫□□□彡彡彡彡△△  △:山地
 08彡彡彡彡□┃△◎彡彡□□□△◎△┗┓□彡彡彡彡□△△  ∴:砂地
 09彡彡彡彡彡┃□△□彡◎■■△◎△□┗┓彡彡彡□□△△  彡:川 海 オアシス
 10彡彡彡彡□┗┓□□□彡□■■△△□□┃□彡□□□△△  ━:道路
 11彡彡彡★□□┃□□□彡□■■△△□□┣━〓━┓△△△  〓:橋
 12彡彡彡03★━┫□□◆彡彡□□△△┏━21◎彡□┃△△△  ≠:破壊された橋  
 13◎彡★★□□┗━17□□彡□△□┏┛□□彡彡□┣━━━  ▼:市街地
 14□□□□□□□□┣━━〓18▼▼┛□□彡彡□★★□△◎  ★:基地
 15□◎△∴∴□□□┃□□彡□▼□□彡彡彡□□★★★△△
 16△△∴∴∴∴□□┃□□彡彡彡彡彡彡彡□□□□┃◎□△  ◆:コンテナ  
 17△△∴∴∴∴□┏┛□彡彡彡彡彡彡彡彡□□□┏┛□□□
 18△∴∴∴∴◎∴┃□□彡彡彡U04≠≠□□□□19□□□□  
 19∴∴∴∴∴∴∴┃□彡彡彡彡彡◎彡彡彡□□□┃□□□△  
 20∴∴▼∴┏━━┃□彡彡彡彡彡彡◎彡彡彡□┏┛□□△△
 21━▼▼━┛∴∴┃□彡□□◎■□彡彡彡彡□┃□□△△◎
 22∴16彡∴∴∴∴┃□□□■■■■■□彡□▼10□□△△△
 23∴∴◎∴∴∴□┗━┓■◎■■┏01━〓━02▼┓□□△◎
 24∴∴∴∴∴△△□■┗━━━━┛■◎彡□□09┗┓□□△
 25∴∴∴△△△△□■■■■■■■■■彡彡■■□┗┓□△
 26△△△△◎△□■■■■■■■■13■■彡■■■□┃□□

01と08と20は同一地点
03と06と15は同一地点
04と05は同一地点
10と11と14は同一地点
17と22は同一地点
14アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/08(水) 01:42:17 ID:???

『・・・私の名前はブレイムだ。こちらにも敵対の意思はない。話をしたいそうだが、ちょっと待て』

アルマが油断なく意識を傾けていると、レーダーに変化が起きた。

(何これ……、MSの反応がふたつになった。
 もしかしてこの人の支給品って、MSだったの……?)
『待たせた。で、アルマ君だっけ?私とお話したいそうだが、こちらもちょっとお話したいことがある。
 先に話させていただくよ。君は、生徒の中で、ニュータイプの素質を持つものを知らないかね?』
(何この人。 何かやばい?ってか私の目に気付いてないの?
 そう言えば会う人みんな気が付かなかったなぁ……珍しくないのかな?)

アルマの右目は鮮やかな真紅。 ダークブルーの左目とのコントラストが際立っている。
これは研究所時代に受けた実験の一種、視野や動体視力などを物理的に向上させるための手術を受けた際、
些細な手術ミスから彼女の右目が視力をほとんど失ってしまったことに起因する。
失った視力を補い、さらに高めさえしてくれたのが人工角膜だった。
それまでは両目ともダークブルーだった。 その日から向かって左側だけが紅くなった。
最初はオッドアイをコンプレックスのように感じていた彼女だが、
ごく普通の生活の中で嫌悪や劣等感はいつしか消えてなくなっていた。
綺麗だと言ってもらえた。 大切な人が、なくしてくれた。

……話を戻そう。
どうやら彼はニュータイプの素質を持つ者を探しているようだ。
こんなところで、何故? 探してどうするのか、見つけてどうするのか。
アルマのものは『引き出された』『増幅された』力だが、
恐らく彼の求めるものに近いところにはいるのだろう。
しかし、それを告げるのは躊躇われた。

(私のことを言うのは簡単だけど……それはまずいって言うか、やばい気がする。
 何されるかわかんないし、この人、『何かする気でいる』感じがするし……
 どうしよう?)

わずかに悩み、首を傾げた上で、彼女は当然の疑問を返すことにした。

「質問に質問で返すのはよくないって思ってますけど、聞かせて下さい。
 知ってどうするんですか? ニュータイプの素質がある人を見つけて何をするんですか?
 ……よりにもよってこんなところで」
    .. .. .. .. . ... .
――よりにもよってこんなところだ。
彼がアルマを制してまで尋ねた内容は、彼女自身が該当者に近い立場にあることもあってか、
表情には出さないまでも彼女の内心で相応の警戒を取らせるに至った。
単なる被害妄想かもしれないが、彼女はたった一言からそれなりに危険性を感じ取ったのだ。
多少注意深くあり過ぎても、それは間違いなく怠惰に勝る。

(……少なくとも、初対面の相手に藪から棒に訊くような質問じゃないよね……)

【行動:通信回線接続(-1)】
【位置:G-20/高速道路】
【残り行動値:3p】
【機体状況:Green/通信回線:νガンダム、V2AB】
【武装:ビームサーベル、3連装グレネード、内蔵ヘビーマシンガン(95)、ショットクロー(8)、
     ビームライフル、Eパック、偵察ポッド、Iフィールド】
【生徒状態:Green】
【所持品:デイパック、コッペパンx2、水2gx2、栄養ドリンクx7、ノートPC、食糧、生活雑貨、
      ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:東の基地へ/様子見】
15レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/08(水) 02:31:56 ID:???
『さあ、レベッカさんっ♪』

あくまとは、きっとこんな顔をして笑うのだろう。
レベッカ・テスタロッサ、齢18。最も身近な悪魔とは人間であると、改めて悟った瞬間だった。

目の前、にじり寄る、犬――その後ろ、微笑む、あくま。
ぱたぱた。揺れる尻尾――にこにこ。満面に浮かぶ笑み。
目の前、人懐っこい円らな瞳――その後ろ、人懐っこい邪悪な瞳。

――大佐。やっぱり人間ってコワイ生物ですね。

「は……早まらないで、ニース。
 別にボクは犬が嫌いな訳じゃないけど……あ、やっぱりちょっとコワイ――」

ハッハッハッ

「――っ!」

間近に聞こえたその音に、尻餅をついたままじりじりと後ずさり。
ソレとの相対距離は確実に縮まりつつある。

「……何ていうかホラ、やっぱり無理強いは良くないんじゃないかな?
 うん、良くないよ、ニース。
 学校でも習ったでしょ? 人の嫌がることをしちゃいけませんって。
 だからホラ、早くこの犬を――」

吼えた。わん。

「やぁっ!?」
16レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/08(水) 02:34:45 ID:???
悲鳴。年相応の響きが、エントランスに反響して消えていった。
己の声の思わぬ愛らしさに恥じらい、刹那、朱に染まった頬はすぐさま元の血の気の通わぬ色へと戻る。
赤、白、青。
揺らめく雪色の金糸の下で目まぐるしく変化する表情は、何処か滑稽で。
しかし、薄らと涙に濡れた青い瞳は、きっと苛めたくなるぐらいに切実。
ロングスカートの裾からふくらはぎの曲線が艶めかしく覗くのも構わず、レベッカは目の前のハスキー犬から一歩でも遠く離れたいとばかりに下がっていく。

……その背中に、固い感触。

「え?」

肩越しに見遣れば、エントランスの吹き抜けの真ん中、大きな柱が退路を断っていた。
目を見開く。
息を呑む。
絶体絶命だ。
少なくとも、レベッカ・テスタロッサにとっては。

――落ち着こう。相手はたかが動物。
   犬なんてちょっとばかり四本足で、鼻が良く利いて、耳がピンと立ってるだけじゃないか。
   一体何を恐れる必要があるって言うの?

決意、不退転。
逃げ場は無い。
どうにかこの脅威をやり過ごさなければ、きっと自分に未来は無い。
それ程に、深刻。
多分、ボリノーク・サマーンの時よりも。
総動員された理性が無理矢理勇気を形作り、言葉と、それを発する為に口を動かす力とを少女に与える。
精一杯の笑顔を引き攣った頬の上に浮かべ、両手で制するジェスチャーと共にレベッカはソレへと語り掛けた。
17レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/08(水) 02:38:39 ID:???
「……よし、まずは落ち着こう。
 そんなに息を荒くしちゃ駄目だ。ホラ、舌もちゃんとしまって……しまってってば、あ、こら、来るんじゃない!
 ぼ、ボクは美味しくないよ。餌はアッチだ。アッチ。待って、駄目、話せば分かる――」

勿論、犬に会話が通じる筈もなく。
ニュアンスだけでも理解して貰えないかと、大きく身振り手振りでアピールしても、望んだ効果は全く得られず。
寧ろその手の動きが、好奇心旺盛な犬にとっては遊びの為のものだと思えてしまったらしい。
待ってましたとばかりに後足のバネを溜め、レベッカの額にピキーンと稲妻のエフェクトが走ったと同時、犬、ジャンプ。

眼前、跳躍。回避――無理。

仮令ピキーンと来ても、かわす術が無ければ無意味。
まさに、かわせなければどうという事は無い、そんな感じ。
本家本元の台詞と違い、格好悪い事この上ない――

「――きゃっ!!
 痛っ……
 イヤ、止めて、お願いだから離れて……ひゃうんっ!」

重いモノがもつれて倒れた音が、無人のホールに虚しく霧散していった中。
そのまま押し倒された華奢でしなやかな少女の肢体を容赦なく蹂躙する、荒々しく逞しい、猛る獣の肉体。
抗う少女を組み伏せ、無言のままに滑る舌を白き柔肌へと落としていく、獣。
荒ぶる吐息と共に獣臭が鼻腔の奥を突き、粘液に塗れて紅くくすんだ舌が白く柔らかな頬を、薄桃色の唇を、閉ざした瞼の長い睫毛を――以下、検閲削除。

念の為。
レベッカ・テスタロッサの主観を一切考慮せず、一般的視点から再解釈すれば極めて普通の光景である。
18レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/08(水) 02:43:17 ID:???
つまりはレベッカの華奢な体を精一杯の親しみを込めて嘗め回す、優しく賢いハスキー犬の肉体に、彼女は為す術も無い次第。
せめて他人の前でこれ以上の醜態は晒すまいと、決意に固く結んだ唇をも舌でなぞられ、一瞬意識が遠退いてから戻ってくる。
されど死んだ筈の曽祖父が河の向こうで手を振ってたな、とかそんな感慨を抱く暇もレベッカには与えられない訳で。
ぬらつく感触が肌の上をぬめって滑り、軌跡に粘性の液体の煌きを残していく、そのおぞましい感触。
応じて身震いするきめの細かな肌の上に、幾重にも重なっていく鳥肌。
ブルーの瞳を濡らす涙の量は、更に応じて留まる事を知らぬようにどんどんと増えていった。

更に――少々荒っぽいスキンシップは白いコートの前を肌蹴させ、そうしてできた空間に潜り込むようにして。
犬はレベッカの顔全体をぺろぺろと嘗め回し始めた。

「お願い、やめて、入ってこないで……もう許してェッ!!」

あくまで犬にとっては人間に対して親愛の情を示す為の、犬として当然の行為。
勿論愛犬家ならば諸手を挙げて大歓迎、犬と人間との友情に乾杯、おお我が心の友よ、願わくば同年同月同日に死なんっ!
そんな勢いに任せて桃園の誓いでもしてしまいそうな程に喜ばしい出来事だろう。

……愛犬家ならば。

「イヤァァッ!!」

されど愛犬家とは対極に位置するレベッカは、その大きな蒼い瞳を涙で潤ませ、抗うように身を捩りながら悲鳴を上げたのだった――
19レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/08(水) 02:44:23 ID:???
【行動:イヌ(((( ;゜Д゜)))コワーイ(-1)】
【位置:U-22(機体:市街・開閉式ドーム球場、パイロット:市街・デパート内・エントランスホール)】
【残り行動値:3】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、
        右マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:多分お尻ちょっと腫れてる、イヌコワーイ、顔中犬の唾液でベタベタ、多分行動不能】
【武装:ビームサーベル×1、左腕ビームシールド】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx2、軍服)】
【方針:火器及び食料の確保、後1回の定期放送が流れるまでニース・エルネージュを守ってやる、犬イヤァァッ】
【同盟:なし(一応の味方:No.14、No.09、No.11)】
20ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/08(水) 03:42:43 ID:???
第3章>>288-289

危険きわまる肉食獣が吼えていた。
その見事な毛並みと勇者の名声に目を奪われた無数の愚かな狩人達をことごとくその牙と爪にかけてきた銀色の女豹が、
思いもよらない相手に無数の手傷を負わされて怒りに身を震わせていた。
得物を持つ手が震えるのを抑えるのがやっとの猟師には、その瞳の輝きはあまりに鋭すぎて、
それが何色をしているのかは分からない。
何故女豹が女豹になったのか、どうして人を襲うようになったのか、その理由は分からない。
仮に知ったところで、何も出来ることはない。何かを変えることなど出来はしない。
自分の帰りを待つ妻子の下に帰るため、そのささやかな日々の営みを守るため、
猟師としては狩りを続けるしかなかった。逆に狩られて屍をさらす危険の方が大きかろうとも。

「………そうだ………そのまま来い………っ!」

賭は成功の様子を見せていた。
渾身のフェイントはディジェの出足を封じることに成功した。
放ったミサイルは囮としての役目を見事に果たし、仕掛けた罠に獲物を追い込んでいた。
トライカッターはものの見事にその首目がけて襲いかかった。
敵が凄腕の戦士だからこそ効果的な―――だからこそそこまで周到に仕掛けなければならない―――多重仕掛けの必殺の罠は、
その機能と効果を完璧に発揮し、恐るべき銀髪を女豹の逃げ場のない死地に突き落とした。

突き落としたのは間違いなかった。だが。

「!?」

女豹は自力でその死地から這い上がった。罠を鋼鉄の檻ごと噛み破った。
銀色の毛皮を己の血で紅に染めながら、
人間に恐れさせて畏れさせる麗しき野獣はなおも勢いを殺さずに猟師に躍りかかってきた。

「な………………っ!」

左肘を失いながらもディジェは豪雨の中を突進し、瀑布のような水飛沫を上げてズサに襲いかかる。
ナギナタの刃の半分を失い、損傷によるパワーダウンを強いられながら、その一撃は迅さも力も失っていなかった。
その殺意がいかほどのものか、その決意がどれだけのものか、まさに哀れな獲物に見せつけるように。
リトラ=クロームと呼ばれる存在をこの世に堂々と掲げるように。

「!」

会心の罠を破られた猟師だが、まだその手には猟銃も山刀も残されていた。
ズサの右手にはビームサーベルが、左手にはナックルシールドがあった。
ランチャーにはまだ20発以上のミサイルが残されていた。
そしてそのハロルドにもまだ戦意があった。敵を倒すまで戦い抜く意思があった。いささか頼りなくて不器用な種類のものだったが。
迫り来る青騎士を迎え撃たんと、黄色の闘士が剣と盾を構えようとして―――


「      ! ?      」


一瞬、世界が暗転した。急激に大きくなるディジェの姿が二重三重にぶれた。何もかもが遠くなりかけた。
そのほんのわずかな断絶が、ハロルドから回避するだけの時間と空間を奪った。
消え去りそうになる意識を必死に引き留めながらどうにか出来たのは、左腕のシールドをコクピットの前に掲げることだけだった。

ディジェの斬撃で盾が見事に両断され、続く突きがズサの左肩に突き刺さってその先を断ち斬る光景と衝撃を、
ハロルドはどうにか認識した。何が起こったのか分からないまま終焉を迎えるのを拒むことが出来た。
音を立ててズサの左腕だった物体がシールドの残骸と共に大地に落下し、そのまま力なく横たわる。
切断面から血のように火花をまき散らしながら、ズサはそれでも態勢を立て直そうとした。

急に重くなったフットペダルを何とか踏みしめ、操作が著しく困難になった操縦桿をどうにか動かし、
ハロルドがズサにディジェとの距離を取らせる。
渾身の力でその右手にビームサーベルを刃は出せないまでも構えさせ、最低限の迎撃姿勢を取らせながら。
21ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/08(水) 03:44:05 ID:???
「………こ………の………っ!」


その肉体が悲鳴を上げていた。気力と気合いで押さえ込んでいた疲労が限界を超えつつあった。
この世界に放り込まれてからろくに休息も食事も取らず、
必死に現実と戦ってきた故の精神肉体両面にのし掛かっていた負荷が、強制的に全てを終わらせようとしていた。

15番とリトラ=クロームというあまりに強力な敵との連戦は、
パイロットとして弱くもないが強くもないその身体にかつてないほどの負担を強いていた。
本来はそれなりに善良でそれなりに臆病でそれなりに小心な平凡な男が耐えるには、大きすぎる疲労が積み重なっていた。

「………こ…の……て……いど…ぇっ!」

それでも今までハロルドは耐えていた。その恐怖と疲労に耐えて戦い続け、戦い抜いていた。
自分のささやかな城に、小さくても暖かい巣に帰るために、折れそうになる心を保ってきた。
愛する妻に、娘に再び会うために、潰れそうになる身体を支えてきた。
家に帰る―――ただそれだけを望んで。切望して。そのためだけに戦ってきた。
その想いがあるから戦えた。戦い続けることが出来た。

だが、それは無限ではなかった。どんなに強い想いであっても全てを可能にするわけではなかった。
肉体の強さだけでは勝てないように、心の強さだけでは勝てなかった。
強い想いは万能の魔法ではなかった。必ず奇跡を起こす祝福ではなかった。
現実は現実だった。非情ではないが有情でもなかった。それはただの無情だった。


しかし、それでも。そのことを嫌と言うほど理解していて、目の前に突きつけられても。


「………う…ご……け………ぇっ!」


ハロルドは懸命に手足を動かした。揺れる視界を固定しようと試みた。
不安定にぐらぐら揺れる世界に必死に食らいつき、そこから何度も振り落とされそうになりながらも、
それでも現実にしがみついた。手を離して楽になることを選ばなかった。諦めようとはしなかった。

胸ポケットの中の写真と、シートの下のぬいぐるみの前で、夫であることと父親であることを放棄するわけにはいかなかったから。

「お……れ…は………俺………は………」
22ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/08(水) 03:45:02 ID:???
ハロルドが歯を食いしばりながら上体を起こす。
ズサがその右手に握る柄から光の刃を伸ばす。
ハロルドが左右の操縦桿を震える腕で操作する。
ズサがゆっくりとビームサーベルを構える。
ハロルドが痙攣する足でフットペダルを踏みしめる。
ズサが左足を前に出し、ディジェに対して半身の姿勢を取る。

「俺は………ジェニーの……夫だ………」

一度は虚ろにになりかけたハロルドの瞳に力が戻り、そこに映るディジェの姿が揺らぎながらもどうにか固まる。

「俺は………キャシーの……父親だ……」

ズサのモノアイが何度か点滅し、そして通常よりも遙かに強い輝きを放つ。

「俺は………世界で……一番……いい女の……夫だ……」

大きく上下すしていた肩が、荒くなる一方だった呼吸が、戦いに備えて少しだけ落ち着きを取り戻す。

「俺は………世界で……一番……可愛い……娘の……父親だ……」

片腕のズサがゆっくりと腰を落とし、膝を屈め、その身体に力を溜める。

「その……俺が……お前……なんかに……負ける……か……」


傷だらけの人間と機械が、最後に残された力を振り絞って強敵に立ち向かおうとした。


「……これで……片腕同士……ハンデなし……だ……な……」

通信モニターに映る人の形をした恐るべき女豹に、ハロルドは余裕を見せようとして笑いかけた。笑おうとした。
その血にまみれた凄惨な容貌に本当に笑みが浮かんだのかどうか、それはハロルドには分からない。

「お互い……これで……最初に戻った……な……あの……街で……最初に……会った……時に……」

あの南の市街地、住人のいない無人の街でこの強敵と出会ったのが、
遙かな昔のことのようでもあり、つい先ほどのことのようにも感じる。
その時ディジェは15番のライフルなど持ってはいなかったし、
ズサもマシンガンやナックルシールドなど装備していなかった。

「これで……あの時と……同じ……か……いや……違う……か……」

あのときはお互い無傷だった。ディジェもズサも新品同様で、自分たちも怪我などしていなかった。
それが今ではディジェはあの有様で、自分はこのざまだ。まったく、お互いずいぶんと変わってしまったものだ。
そう考えると、少しだけ可笑しいような―――そんな気がした。錯覚以外の何物でもないだろうけれど。

「……まあ……どうでも……いい……こと……か……」

残された時間は多くはない。まともに動けるのはあとわずかだ。何時までもこうしてはいられない。

「……悪いが……俺は……もう……帰るんだ……妻が……娘が……ジェニーと……キャシーが……待って……いる……から……」

荒い呼吸の下から必死で話すその姿を、ぬいぐるみのクマは黙って見つめている。

「だから……これで……最後だ……終わりに……しよう……」

ズサはビームサーベルを構えたまま、ミサイルランチャーのカバーを開こうとはしない。
サーベルだけの斬り合いを望むように、腰を落としてディジェを見据える。
23ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/08(水) 03:46:15 ID:???
ミサイルを使おうとは思わなかった。最後に飛び道具は考えなかった。
今のこの状態で、トリガーを引いた後にミサイルの行く末を確かめることが出来るとは思えなかったから。
最後の最後まで敵を見つめていなければ、それを打ち倒すことに集中していなければ、心と体を保てそうになかったから。

「俺か……あんたか……勝つのはどちらか……決着をつけよう……」

何故か愛する妻の次の次ぐらいに綺麗に見え始めたリトラ=クロームに、ハロルドは静かに語りかけた。

「………勝つのは……俺の方……だけどな…………リトラ……クローム……さん……」

我ながら根拠のない無茶を言う。そう思って、ハロルドは小さく笑った。今度はちゃんと笑えたと思った。

【行動:被弾・シールド及び左腕喪失(1)、どうにか距離を取る(1)、何とか意識を保つ(1)、
    右手にサーベルを構えて戦闘態勢を取る(1)、リトラ=クロームに話しかける(0)】
【位置:D-12/軍事基地】【行動値残り:0】
【機体状況:AMX-102 ズサ/左右胸部ミサイルランチャー破損、胸部装甲に歪んだ十字傷、左腕喪失】
【通信状況:06番】【掌握地形:B-21、B-22、C-20、C-21、D-12、E-12】
【パイロット状況:右こめかみ部分に裂傷・流血、軽度の打撲、顔の右半分血まみれ、
         右頬に擦過傷+打撲+靴跡、左頬に一筋の切り傷、唇右端に軽度の裂傷、身体にシートベルトによる痣
         「家に帰りたい」+「父親」+「夫」+戦闘モード+ごまかしきれなくなりつつある極度の疲労=………】
【武装:ビームサーベル×2 ミサイル(24/35発)、トライカッター×1、90mmサブマシンガン用弾倉2つ】
【所持品:ディパック、首輪、水2リットル入り2本(1本は残り半分)、コッペパン半分、シャベル
     リボン付きクマのぬいぐるみ(娘の誕生日プレゼント)、家族の写真が入ったIDケース
     (ディパック内:2食分の食料、ミネラルウォーター2リットル×1、タオル2枚、
      着火器具、替えの下着類一組)】
【方針:全力を尽くしてリトラ=クロームを倒す】【同盟:なし】
24アロンソ ◆ffwql.VOnc :2005/06/08(水) 07:46:34 ID:ZEDEjg3P
>前スレ286-287>前スレ293-295

ワシの投げたヒートサーベルはバズーカを貫き、伍長の追撃は相手の腕を掠める。
よし、これでこのまま畳み込むことができれば、ワシらの勝ちじゃ。
先ほど目をつけたパーキングエリアで、10mほどの大型バスを見つけ、抱え上げる。
コイツを盾に武器に奴を翻弄し、伍長にトドメを刺してもらえば――

と、勝利への戦略を組み立てていた、その時。

 ――何の前触れもなく、ゾクリ、とした。

暗闇の中、「ガンダム」の目だけが紅く光る。禍禍しい色。
それを合図にしたかのように、「ガンダム」は今までにない速度で動き出す。
ライフルとバルカンを乱射しながらメタスに飛び掛る「ガンダム」。まるで別人の動きじゃ。
今までが、激昂しつつも堅実な性格と確実な操縦技術を感じさせるベテランの動きだとすれば、
今のソレは――獣の動きじゃ。経験でなく、直感と本能で自分の肉体の使い方を熟知している猛獣。
その獣が、メタスの貧弱なボディに牙を剥き――

「クルル伍長ッ!!」

ワシは咄嗟にグフを駆けさせる。大きく跳躍し一気に間合いを詰める。
間に合うか!? ――微妙じゃッ!!

ワシのグフは、紅い目の「ガンダム」がサーベルを振り下ろされるその瞬間に――
その横っ面目掛けて、ドロップキックを放っておった。

当たっても外れても、無防備な姿勢になっちまうのぉ――などと頭の隅で考えながら。


【行動:観光用大型バスゲット(−1p)、08番に攻撃(ドロップキック)(−1p)】
【残り行動値:2p】 【位置:P-23 高速道路脇】
【機体状況:頭部欠損。コクピットハッチ開放中。軽く森林向けの偽装済み】【参加者状況:軽い傷多数】
【所持品:ヘルメット、銃剣、壊れた突撃銃、 山菜1袋、薬草1袋、ズタ袋、
     デイバッグ、コッペパン×2、水2g×2、ティッシュ×5箱、】
【武装:大型バス(全長約10m)、2連装ビームガン(未取り付け・P-22に放置)】
【行動方針:20番クルルを守る、08番を問答無用で攻撃】
【同盟:20番クルル(片思い的同盟?:16番ナインティ)】
25リトラナ=クロムウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/08(水) 13:54:24 ID:???
この獣にも似た闘気を纏う女戦士は、魔物ではない。
その身体能力は、人の常識を外れたものなどでは決して無い。
糧を得ず、睡眠によって英気を養わなければ、いずれ動く事すらままならなくなるのは、言うまでもない。
だが、激戦に次ぐ激戦の中、夜をひとつ超え、またひとつ夜を迎えてなお、その獣の内なる闘志は、
いまだ欠片も揺るぎはしなかった。
何が女豹を、そうさせるのか。それは一つの、至極シンプルな答えであった。

―――“習慣”である。

寡兵で以って戦うには、その姿を晒すのは最小限にとどめ、最も効果的なタイミングを伏して待ち、
時が来れば閃光の如き一撃で以って目標を殲滅せねばならぬ作戦を取らざるを得ぬ事が多い。
樹海に、水底に、砂丘に、そして瓦礫にひそみ、昼夜を越えて獲物を狩らんと目を光らせ続けるなどといった事は、
この白銀の獣にとって、何ら珍しくもない事だった。

みごと獲物を仕留めて後、巣へ戻りて喰らう糧と、粗末ながらも暖かな寝床に、
女豹は至福の喜びを感じない事もない。

だが、戦場において、それらは欠片も女豹の頭の内に無い。
ただ獲物を顎で噛み砕くその瞬間まで、その瞳は飽きることなく戦場の隅から隅までを、
敵の挙動の一つ一つを、舐め回すように見続けるのだ。
26リトラナ=クロムウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/08(水) 13:56:40 ID:???
>>20-23
そんな戦場の肉食獣の瞳に、眼前の敵は、黄色い巨人は―――それはあくまで人の身から見た姿であって、
対峙する青き闘士からみれば、その身を象徴とするミサイル・ポッドを背負わぬそれは巨人というより
むしろ子供のようなものであったが―――果たしてどのように映っていたであろう。

『俺は………世界で……一番……いい女の……夫だ……』

それは、あまりにも―――

『俺は………世界で……一番……可愛い……娘の……父親だ……』

―――巨きかった。

『その……俺が……お前……なんかに……負ける……か……』

リトラナにとって、この敵は強大であった。
夫とは、父とは、これほどまでに偉大なる戦士であるのか。
ハロルド=P=アンダーソンの言葉は、眼差しは、リトラナの身に戦慄にも似た衝撃を走らせてゆく。

『……これで……片腕同士……ハンデなし……だ……な……』

欠片も余裕など感じぬ声で、血にまみれた凄惨な姿で、強がりにも似た言葉を吐く男は、
その男にとって本来強大過ぎる敵に追い詰められると同時にまた―――確実に、追い詰めてもいた。

『……悪いが……俺は……もう……帰るんだ……妻が……娘が……
 ジェニーと……キャシーが……待って……いる……から……』

ズサのランチャーは、その顎を開きはしない。

『だから……これで……最後だ……終わりに……しよう……』

黄色い巨人は腰を落とし、その手に携えた刃に己の運命を委ねるのみ。

『俺か……あんたか……勝つのはどちらか……決着をつけよう……』

それだけに、その刃はどこまでも、どこまでも、鋭くも見えた。

『………勝つのは……俺の方……だけどな…………リトラ……クローム……さん……』

静かに語りかけ、小さく笑いながら名を呼んだ男に対し、
名を呼ばれた女は、にこ、と柔らかな笑顔を浮かべ―――ただ、一言。

「―――いきますね?」
27リトラ=クローム ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/08(水) 14:01:35 ID:yubjWDFq
瞬間、青き闘士に脇構えに光の刃を構えさせた女戦士の眼光は、再びリトラ=クロームのそれとなる。

もはや言葉は語らない。そのような余裕も無い。
想いと共に、偉大なる戦士を断ち斬らんと。

地を蹴り、刃が振るわれる。

ただ迅く、鋭く、真一文字に――――――


その身を打つ水飛沫の中、二体の巨人が、交叉する。

【行動 : ハロルドとの通信継続(0) ただ、一閃(-1) 残3 】
【位置/場所 : D-12/基地 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ 腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 パワー・ダウン 】
【パイロット状況 : 頭部強打、流血 ただ敵を断つ一筋の線をとらえんと、銀の瞳は煌く 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト バンダナ 煙草数箱  】
【方針 : ハロルドを断つ 】
28クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/08(水) 15:19:21 ID:o9s3lUA4
IDチェックです
29通常の名無しさんの3倍:2005/06/08(水) 15:23:40 ID:???
バトルロワイヤル
小説・映画・漫画「バトル・ロワイアル」の誤表記。

ロワイアルですよ、無知
30(^^)エヘヘ:2005/06/08(水) 16:48:49 ID:???
ポール牧
31クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/08(水) 17:13:49 ID:???
大尉が投擲したサーベルはガンダムを両断しなかった。
わたしが放った光はガンダムを貫かなかった。
ガンダムはまだ、生きている。

「しぶといっ!」

追撃だ!
しぶとく生き残ったガンダムだけど、数の上ではわたしたちが上。
しかも、相手はさっきの攻撃で傷を負っている!
地面に降り立ったガンダム目掛けてビームガンを構える。
次は外さない!絶対に当てる!

――――!?

構えた瞬間、頭に何かが入ってくる。
気持ちが悪い、うねうねとしたもの。
――――前にいた、バウっていう機体と一緒の感覚!?

頭が痛み、視界がぼやける。
モニターに映るのは、赤く光ったガンダムの目。
それを見た瞬間悪寒が走った。
気付けば、ガンダムの放った光がメタスに向かってくる。

「ふざけないでっ!」

レバーを引いて右へ避ける。
…………さっきと、動きが違う?
なおもバルカンを乱射して突撃してくるガンダムを見てそう思う。
接近戦?

射線をずらしてバルカンを避けつつ、両の手にサーベルを握らせる。
ガンダムが投げたライフルを払いのけると、目の前にガンダムがいた。
振り下ろすサーベルを避けようとすると、横から大尉のグフが来ている事に気付く。
メタスから見て右、ドロップキックを放っているグフ。

避けるのは諦めて、サーベルでサーベルを受け流した。
勿論、シールドを使っていないからバルカンがメタスを襲う。
肩のアーマーの一部が、弾け飛んだ。
でも、サーベルを振った後のガンダムはこれで無防備。
バルカンでは致命傷も与えられないはず!

「死になさいよ!」

左手に持ったサーベルをガンダムのコックピット目掛けて突き出した。

【行動:回避行動(1) 08番にビームサーベルでコックピット目掛けて攻撃(1)】
【残り行動値:2P】
【パイロット状況:(#゚∀゚)シンジャエ!】
【位置:P-23】  
【機体状況:MSA-005メタス/やや装甲破損 左肩部アーマー一部破損】
【武装:アームビームガン×2(EN70%)、ビームサーベル×6、ビームローター】
【所持品:ディパック 水2g1本と半分 筆記用具一式、特殊トランシーバー×2(一対) 鍋】
【メモ:『ここは地きゅう・おにいちゃんは地きゅうにいる・わたしはおにいちゃんをさがす
     きたいはメタス・アイテムは黒いきかいがふたつ・ぶきはそらとべてたてにもなる
     グフはおじいちゃん・ゲルググはおねえちゃん・アッシマーはおじちゃん・バウはいたい
     おじいちゃんは大いで偉い・大いは仲間・いたいのはわからない
     アッシマーはやらない・ゲルググつよい・大いつよい』】
【行動方針:おにいちゃんを探したい ガンダムを倒す】
【同志:01番 アロンソ=セルバンデス】
32ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/08(水) 18:25:20 ID:???
今日の朝食は・・・昨日親が食べたらしい肉の骨か。よくもまぁここまで嫌がらせが思いつく物だ。
―――何か、鳴ってる。目覚ましは止めたはずなのに。
マリーが俺にパンをあげようとするが、母さんが邪魔した。・・・嫌だな。
別に俺がパンを手に入れられないから嫌なんじゃない。マリーが悲しそうな顔をするから嫌だ。
―――違う。これは目覚ましじゃなくて―――

「う・・・」
ホワイトアークの警報で目を覚ます。どうやら誰かが可視範囲に入ってるらしい。
「だる・・・」
俺は寝起きが悪い。そのことで親に何回殴られたことか。
あくびをしながらだるそうにブリッジに行って・・・突然寒気がした。
何か・・・変な物がいる。
「プレッシャー、か。こいつら?いや、違うな」
ホワイトアークのモニターに写る、悪役面のガンダムとヘビーガンのそっくりさん(もっともどちらも顔の大半は壊れているが)。
片方からは強烈な殺気、もう片方からは狂気を感じるが・・・さっきの威圧感とは違う。
「にしても邪魔な所にいるなぁ。こっちは灯台に用があるってのに。まとめて吹き飛ばしてやろうか?」
寝起きなので機嫌が悪い。とはいえ実際邪魔だ。なんせこっちから見て灯台のぴったり前にいるのである。
戦闘中とはいえ上を通れば流石に気付くだろうから、強行突破は難しいし。
おまけに地面にはとんでもない長さのビームライフルが置いてある。それで艦を狙撃されてはたまらない。
「しょうがないな・・・回り道しますか。ついでにあのプレッシャーも探そう」
あのプレッシャーは左(南)からした。そっちから回る。
途中進入禁止区域があるため遠回りになるが、どのみちあの二人がいなくなるまで灯台には入らない方が賢明だろうし、暇つぶしにはもってこいだ。
「問題はジンペイさんとの待ち合わせか・・・全体通信で暗号通信でもするかなぁ?」
二人ががりであいつらを消すにせよ、待ち合わせ場所を変えるにせよ、どのみち連絡は必要か。
―――なぜか「さん」を付けたことに、何の疑問も持たなかったし、気付かなかった。
33ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/08(水) 18:26:21 ID:???
のんびりどう通信するか考えるうちに、さらにプレッシャーが増えた。
「この感覚・・・あの子か」
気付いてからしばらくして、レーダーが反応を示す。なんとこの周辺に五人もいる。
「いくらなんでも集まりすぎだろ・・・かなりの乱戦か?」
P−23に1番と、プレッシャーの正体らしい8番と、お探しの金髪少女クルル。
更にT−23に2番。おまけにU−22に10番。
「えーと、1番のじじいとクルルが組んでて、あの赤目ガンダムと戦ってるのか?」
かなり敬老精神のない言い方をしたが、これはただ単純に老人が嫌いだからだ。
理由は簡単、今まで会った老人はろくな奴がいなかったから。
カガチ宰相は俺をさんざんこき使った挙げ句こんなプログラムに放り込むし、
ストークとかいう木星船団の元締めは俺を宇宙空間に放り出して、友人もぶっ殺したし・・・ああ、思い出すだけで腹立ってきた。
とりあえず気持ちを切り替えてクルルに通信を繋ごうとするが・・・遠くてなかなか繋がらない。ミノフスキー粒子が濃いせいもあるかもしれない。
「参ったな・・・ま、あちらさんはニュータイプなんだし、もう気付いてるだろ」
我ながらずいぶん馴れ馴れしいな、と思った。彼女とは会ったことも無いのに。
なんでだろう、と少し考えて答えは簡単に出た。
相手が自分と同じ「普通じゃない」人間でかつ子供というわけで、俺は勝手にあの子に親しみを感じているらしい。
とことん甘いな、俺は。彼女だって最後には敵になるのに。

【行動:自動航行・V−18→R−18(2)移動・R−18→R−22(2)】
【位置:R−22、川】
【残り行動値:0p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント
    予備 120mmマシンガン(新品同然) クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:だるい】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml×2】
【行動方針:ジンペイにコンタクト・クルルに通信】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
34ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/08(水) 18:56:41 ID:???
「イヤァァッ!!」

ホールに響いたレベッカの悲鳴。
その悲鳴に何よりも驚いたのが、ハスキー犬をけしかけた側のニースだった。

「待って!もう止めて!」

慌てたニースの命令に素直に従い、ハスキー犬はレベッカから離れ、ニースの傍らに来て座った。

つい今までの高揚した気分など、どこかへ行ってしまった。
…レベッカは泣いていた。
ニースにとって、それはショッキングな光景だった。
何故ならニースは、ほんの悪ふざけのつもりだったから。
犬を怖がっているレベッカを見て、少しからかいたくなっただけだった。

ニースにとっては無邪気な遊びだったかもしれない。
レベッカと仲良くなりたいという気持ちが、そうさせたのかもしれない。
しかしニースにはまだ、他人の気持ちを深く読むだけの経験がなかった。
自分の悪ふざけを優先するあまり、レベッカが極端な犬嫌いである事まで気が回らなかった。

「あの…」

レベッカの傍にちょこんと正座して、恐る恐る声をかける。
ただ、何を言ったら良いのか、見当がつかない。
第一、当のニースがショックで混乱しかけているのだから。

「あの、あたし。…レベッカさんがこんなに犬が嫌いだなんて、分からなくて…。
で、でも…でもあたし、レベッカさんと、その、仲良くなりたくて…!
そ、それでこの子なら、レベッカさんとあたしの共通の話題になるって、そう思ったから…」

何を言っても言い訳にしかならないのだが、ニースにそこまでの判断はできない。
結局最後にニースが言えるのは、この一言だけだった。

「…ごめん…なさい。…本当にごめんなさい」

自分がしでかした事がショックで、レベッカが泣くまで気づけなかった事が情けなくて。
ニースの目には、また大粒の涙がたまっていた。

【行動:2番9番に回線継続(0)ごめんなさい(0)】
【残り行動値:4P】
【パイロット状況:異常なし】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、謝る事しかできない…】
35エドワード ◆71GpdeA2Rk :2005/06/08(水) 19:16:42 ID:???
前スレ>>202-203
 布に針を突き立てる。
重い手ごたえと共に沈み、指との関係で途中で止まる。
裏に手を回し、半身を埋もれさした針を救い出すように引っ張りあげる。
長い糸が布に擦り、微かに悲鳴を上げる。
全てが貫通すると半歩下がった位置に針を刺す。
2つの布を突きぬけ、表に戻った針を一歩進ませる。
そしてまた裏で半歩戻る。
表で一歩進んでも、裏では半分下がるから一度に進む距離は少ない。
型通りに裁断した布を縫うのは思いの外時間がかかる。
ゆっくり時間をかけて作り上げなくてはならなかった。

 時間が緩やかに流れる。
頭の奥から記憶がゆっくりと染み出していく。
一回針を突き立てるごとに少女の笑顔を思い返す。
一回糸を通すたびに少女の言葉を思い出す。
戦前の少女がまだ学校に行っていなかった頃の記憶。
病院で始めてその姿を見たときの記憶。
意識して思い出すことが難しい古い記憶まで頭の中に湧きでる。
そして、様々な少女の記憶の後ろに見える両親の姿。
今は亡き父と母の姿が垣間見える。
それは戦争で失ってしまった懐かしい思い出。
それは戦場で無くしてしまった大切な思い出。
忘れたと思っていたものが、
針の動きに合わせてありありと甦る。
心のほころびが針の動きに合わせて繕われていく。
いろんな物を失って、
大切な物を失って、それでも残った存在、
私の妹であり、たった一人の家族、
家族との記憶をつなぐ最後の架け橋であるレイチェルを、
兄として、保護者として、軍人として、
必ず護りぬいてみせるという決意。
そして、どんな絶望的な状況でも、
どんなに最悪な状況でも生きて帰ってやるという決意。
心にその決意が新しく縫い付けられていく。
これはまるで、心の裁縫のようだった。
混沌としたぼろきれの私を、
少しずつ綺麗な洋服にでもしていくように、
縫いぐるみを作る針に合わせて、
心の針も動いていった。

 自分で肩を揉みながら息を吐く。
膝の上には1つの袋状の物体。
これをひっくり返し中に綿を詰めれば縫いぐるみの足になる。
ひっくり返すのはすぐにできるとして、
綿を先につめると胴体に縫い付けるとき面倒になるので今はやらないだけだ。
とりあえず、これで1部分であるが完成ということになる。
丁度きりがいい所だし、そろそろ眠気も限界に達してきていたので、
これくらいにして作業を終了した。
気だるげな思考の中、固まりきった身体を伸ばす。
本当は外に出て体操でもしたかったところだが、
だが、耳に聞こえる雨の音、
幾多の雨粒が機体を打ち付ける音が聞こえ、それを断念する。
大きく深呼吸。
切なげに鳴き声をあげる腹を水でごまかすと、
目を閉じ、多少寄り道をしたが目的の睡眠をとることにした。
36エドワード ◆71GpdeA2Rk :2005/06/08(水) 19:17:14 ID:???
【行動:裁縫(-1)、睡眠(-1)】
【残り:2】
【位置:P−26(森林)】
【機体状況:胸部装甲に損傷】
【パイロット状況:睡眠中】
【武装:肩部3連装ミサイルランチャー(残弾左1、右0),ビームトマホーク】
【所持品:布、綿、糸、裁縫道具、色鉛筆、型紙、人形
        水2Lくらい、コッペパン×1、MS整備の本】
【方針:寝る】
37エルナ ◆tf5U6oR8/w :2005/06/08(水) 22:25:58 ID:???
ほぼ絶え間なく撃ち出される銃弾。
撃ち出されるごとに、はき出され、床に積もる薬莢は数を増していく。
その数が三桁に上るか上らないかと言うところで、私は撃つのをやめた。
拳銃とイヤープロテクターを置き、後ろにあった椅子に座る。
一息ついた私は、部屋の向こう側にある穴だらけの的を見つめた。
穴は殆ど、中央に空いている。が、時たま少し逸れた場所に穴は穿たれていた。

「……まだ……誤差がある。
 でも……この銃の所為でもあるのかな……。」
そう呟くと机の上の銃に視線を移す。
H&K P7M13。その最大の特徴はグリップ部のスクイズコックと云う機能で、
スクイズコックを押し込む事で初めて発射が可能になる。
この機能により携帯時に引き金が引っかかり暴発する危険性が無くなり、
射撃時は銃を取り出し構えるだけで射撃が可能となり射撃までのプロセスが大幅に短縮できる。
……というのがあの後得た知識。
だけどこの機能、スクイズコックを固定するために他の銃では使わない筋肉を使用する為、
銃の保持バランスが崩れてしまうという欠点がある……らしい。

「……でも……四年空いててこれなら……まだ、マシかな……。」
そう言いつつ立ち上がると、私は床にうち捨ててある空のマガジンを幾つか拾い、そこに弾を詰めていく。
勿論、さっきまで銃に入っていたマガジンにも。
それらに弾を詰め込み終わると、ちょうど箱の中の弾が無くなった。
私は銃とマガジンを持って元の部屋に戻り、今度はホルスターを探し始める。
やっぱり、ホルスターの棚も混沌としていた。
……見た目が似ている物が多い分、達が悪い。

……数分後、何とか納得のいくものを見つける物が見つかった。
それに銃とマガジンを取り付けると、ディバックの中……底の方に放る。
……今の服じゃ、取り付ける場所がないし。底の方なのは、雨に濡れないように。

……ともかく、この店での目的はほぼ達成した。
欲を言うと、もう一丁ぐらい予備として持っていっておきたかったんだけど、
同じ銃は見つかりそうにもなかったし、種類の違う二丁の銃を持っていくのもあまり得策とは言えそうにない。
なので、私は後ろ髪を引かれるような感覚を感じつつも、店を後にした。
38エルナ ◆tf5U6oR8/w :2005/06/08(水) 22:27:34 ID:???
「……本格的に、降ってきたなぁ……。」
雨は時間を追うごとに強さを増し、コンクリートを激しく叩く。
……さて、どうしようか……。
実はというと、町で探したい物はもう一つある。
だが、それを見つけられそうな場所はこの近くにはなさそうだった。
どうやらこのエリア、住宅が中心で店はあまり多くはないらしい。
……その上、それが売ってそうな場所は……北東にあった気がする。

「うーん……。」
移動するとなると、やっぱり通信を入れなければならなくなるだろう。
それ自体は良いのだが、許可が出るかどうか……。
その以上に、初めからこの町にいた四人の輪に、入りにくいと言う感情もあった。
……って、迷ってる場合じゃない……。
あまりゆっくりしていると、体勢を立て直したあの二人がこちらに来るかも知れないし……。

そうと決めた私は、機体の元へ走って戻った。
風でフードが脱げてしまうが、押さえる事は出来ない。
なぜなら、ディバックの中にある銃を濡らさないようにするのに両手が塞がっているからだ。
私は髪を濡らしながらも、何とか機体に辿り着いた。
軽くコートと髪の水を払ってから、コクピットに乗り込む。

「うわー……。」
自らの状態に、若干妙な声を出してしまう。何故こんな服を着てきてしまったのやら……。
……とりあえず、コートの前をきちんと閉じておく事にした。
……寒い。早く移動したい。
私は、通信回線をクラウディアさんにのみに変更して、サウンドオンリーを解除して画像を表示させて言った。

「クラウディアさん、聞こえてる?……むしろ、起きてる?エルナです。
 えーと……ここから、北東のエリアに移動させて欲しいんだけど、いいかな?
 目的の物が、見つからなくて……ちょうど北東の方に、大きなデパートが見えたから……。
 ……出来たら、早めの返事をお願い、見ての通り、風邪引きそうだから……。」
……返事ががNoだったら、その辺の家で家捜しするしか無いのかなぁ……。
そんな事を考えながら、私は返事を待った。

勿論、そのデパートで起きてる事なんて、私は知るよしもない。

【行動:射撃場で練習・練習・練習(-2) 店内物色(-1) 機体まで走る(-1) クラウディアに通信(-0)】
【位置:T-23 市街地】
【機体状況:ゲルググ・J 胸部装甲・右肩部スラスター損傷 関節に負荷】
【パイロット状況:症状緩和? 脇腹に打撲(詳細不明) サムイ…… びしょ濡れ】
【武装:腕部110.mm速射砲×2(残弾各1斉射分)
    5連装メガ粒子砲シールド(下半分破損)(残弾4)】
【所持品:ディパック(コッペパン×2 水2L入りペットボトル×2 栄養補助食品 H&K P7M13(残弾14) マガジン×3)
     ロングコート(びしょ濡れ)】
【方針:"強くなる" 風邪を引かない】
【条件付き休戦:09番 クラウディア 11番 アルバート 14番 ニース(10番 レベッカ? )】
39ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/08(水) 22:31:42 ID:a0GetGHz
EXAMによる機動はときに通常の人間の操作を凌駕する速度で行われる。
ルイスはコックピットの中でかかる急加速のGに耐えた。
打ちこんだサーベルは赤い曳光戦を曳いて前へそれる。

右側からの大質量の接近は通常の状態であってもその殺気だけでルイスは感じ得ただろう。
機体が先ほどと同じく急激に動く。
機体から見て左方向、肘の関節がいかれているほうからの頭部への蹴り。
BDの体が右へとひねられ、そしてグフの脚部を曲がらない左腕で受ける。
その機動で、BDの胸部へと突き出されたサーベルは空を切った。

蹴りの衝撃と反動で少し飛ぶBD、通常の状態なら体勢を立て直してから再度突っ込む
と言うのがセオリーであるが。

そのままバーニアを吹かして低空を滑走するBD大出力のランドセルバーニアでサーベルを前に突き出しながらグフへと飛ぶ。
曲がらない左腕でなんとか構えたもう1本のサーベルも手に握り
グフへ右腕のサーベルがまずなぎ払い、左腕のサーベルを刺突出した瞬間爆炎がBDを襲った。

【行動:回避・防御(−2)グフに攻撃(サーベル)(−1)】
【残り行動値:1P】
【パイロット状況:背に滲む汗】
【位置:P―23】  
【機体状況:01番に対して通信回線継続 右肩アーマー破損・左肘関節部アブソーバー欠損・左肘から先爆発 EXAM】
【武装:頭部60mmバルカン砲×2(残弾84%)、胸部60mmバルカン×2(残弾72%)、 ビームサーベル×2(散弾)】
【所持品:シガレットケース(葉巻10本)煙草4箱(51本) ライター パイロットジャケット 作業着  ボイスチェンジャー アサルトライフル予備マガジン×2 H&CUSP予備マガジン×1 パン×2 水2L 清涼飲料水4L    缶詰×5 塩1袋 下着類 】
【行動方針:前言撤回】


一応攻撃IDは出しておきます。
40ブレイム ◆TjmPhqaoLQ :2005/06/08(水) 22:32:04 ID:???
私は、このνガンダムより小さなMSをあらかた調べつくした時、残念に思った。
この機体には、私の役に立つものは搭載されていなかった。
このMSの名前はV2アサルトバスターガンダムというらしい。
見てみたところ、総合的なスペックはνガンダムをはるかに上回るらしい。
だが、いくら小型で高性能だろうが、私の求める機能がないのなら意味がない。
結局、この馬鹿みたいに武装をつけたMSは、自衛くらいにしか役に立たないらしい。
そう思って、思わずため息をついたとき、
そこに、先ほど交わした言葉の返事が、通信回線を通してコクピット内に伝わった。

『質問に質問で返すのはよくないって思ってますけど、聞かせて下さい。
 知ってどうするんですか? ニュータイプの素質がある人を見つけて何をするんですか?
 ……よりにもよってこんなところで』

私は、この多少の不快感を込めた言葉を聴いて、自然に顔がゆがんで、笑うための表情になったことを感じた。
知っている。この少女は、私の求める人材を知っている。
その言葉を聴いた瞬間、私の中のクルル=ヴァンデーンという存在は跡形もなく消え去った。
なんととしても聞きださねば。
そう思い、私はアルマに質問の回答を返した。

「何、私はNTについて研究している人間でね、ちょっとNTである人に、
 ひとつ二つ質問したいことがあるのですよ。
 何しろ、こういう研究をしていても、
 NTである人とはあまりお話する経験がなかったからね。
 こういうときでしかお話しする機会がないんですよ。」

私は、相手に少しでも不信感をなくして、NTであろう人物について話してもらえるように、
あえて、本来の私の目的をぼやかして、NTの研究と偽った。
さらに、もうひとつ、偽ったものがある。
《NTと話をする機会があまりなかった。》
これは半分偽りで、半分本当のことである。
確かに、研究所に来たNTについて、話をする機会はそう多くはなかった。
何しろ、最初、質問を含めた能力測定をした後、即座に生体解剖が行われるのだから。
たしか、そのNTたちは今でも研究所の深部に大事に保管されているはずだ。
よって、私はNTと話をする機会は余りなかった。というより、もともと必要なかった。
彼らの体は彼らの言葉以上に正直であったから。
さすがに、ここら辺のことをしゃべると、誰であっても不信感は爆発するであろうことは予想できたから、
しゃべりはしなかった。ただ、人を騙すときには、嘘ばかりではなく、真実も混ぜることがポイントと、
私は思っていたから、ただ、それだけは言っておくことにした。
私は、アルマが、私が研究に狂っていると思うかもしれないということは全く考えもせず、
彼女の返事をわくわくしながら待っていた。

【行動:アルマと通信継続中(0)】
【位置:I-13】【行動値残り:4】
【機体状況: V2アサルトバスターガンダム;異常なし】
【パイロット状況:異常なし】
【武装:頭部バルカン砲×2 肩部メガ・ビーム・キャノン 肩部スプレー・ビーム・ポッド 
    腰部ヴェスバー×2 ビーム・サーベル×2 光の翼×2】
【所持品:ディパック《中には 水(2リットルペット満タン)×2 コッペパン はちみつ MOディスク 薬箱 にぼし一袋》】
【方針:アルマが接触した(と思われる)NTとの接触】
41アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/08(水) 23:52:34 ID:???
街の中は昼間とは違った雰囲気が滲み出ていた。
それは、様々なビルから漏れ出る照明のひかりのせいか、または街全体を濡らす雨に
よるものなのか。

しとしとと降る雨の中、俺はシャッコーを昼間のデパートへと歩かせていた。
ひと休みする前に少し腹ごしらえをしておきたかったのだが、昼間食料を調達した時
に自分の分を持っていくのを忘れてしまっていたから、取りにいかなければならない。
正直、少し間抜けだと思う。

レーダーに映る機影は4つ。
俺と同じU-22にいるのは、レベッカのベルガ・ギロスとニースのゲルググ。
どうやら2人ともデパートの辺りにいるみたいだ。
以前と変わらずT-23に映っているのは、エルネスティーネのゲルググJ。
彼女の行動は全く知らないが、もう用事は補給も済んだ頃だろうか?
そして街の外で待機しているのは、クラウディアのビギナ・ギナ。
見たところ彼女の動きもないみたいだけど…大丈夫かな?

シャッコーのレーダーの範囲には、他の機影はない。
…こうやって見ていると、この街だけが他の地域と隔離されてしまったようで、本当
にプログラムの中にいるのか曖昧になってくる。
勿論の事だけど、絶対にそんな事があるわけがない。
今この瞬間も、どこかの街で、どこかの基地で、絶対どこかで血生臭い殺し合いが続
いている筈だ。
そして、いずれは俺もそこに踏み込まなければならない事も覚悟しなければ…!

「…覚悟か」
誓約書を書いた時に、ある程度の覚悟はできている。
今更何で、もう一度覚悟をしなおさなければならない?
俺はいつでも戦える。
御飯を食べていても、眠りについていても、女を抱いていても、事があればいつだっ
て敵を倒せる。
パイロットとして。
選ばれた、MSパイロットとして。
ただ…その覚悟を他の人に押し付けるのか。
レベッカはともかく……ニースや、クラウディアに。
その時が来て、彼女たちは指をかけた引き金を引けるのだろうか…。

例のデパートの前にニースのゲルググが止まっている。
とりあえず、ここにニースがいるのは確実だと思う。
俺はゲルググの後ろにシャッコーを止めて、コクピットハッチを開けた。

【行動:10番への回線継続(0)デパート前に移動(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:U-22】
【機体状況:異常なし】
【参加者状況:異常なし】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン、ビームローター
    ビームピストル×2(75%)】
【所持品:ディパック、水2?入り2本、コッペパン2個、お守り、ペンライト、ポータブルプレイヤー】
【行動方針:休む前に腹ごしらえ】
【仲間:クラウディア、ニース、(レベッカ)】
42ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/09(木) 00:17:08 ID:???
降りしきる雨の中、2機のモビルスーツは距離を置いて向き合っていた。
それぞれ左腕を失った状態で、それぞれ右手に光の刃を構え、黄色と青の鋼の身体を雨に濡らしながら。
静かにそのときを待っていた―――


>>25-27

朦朧とする意識の中、苦しい呼吸の下からどうにか搾り出した強がりに、相手はきちんと応えてくれた。
その整った容貌に柔らかな笑みを浮かべ、自分に言葉を返してくれた。

『―――いきますね?』

そのただ一言を。まるでこれから一緒に何か楽しいことをするかのように、涼やかな声で、微笑みと共に。
綺麗だな、美しいな、見ていて気持ちがいいな―――素直にそう思える微笑みが見えたのは、だが、ほんの一瞬だった。

「………あ………」

その姿が揺れた。幾重ものフィルターをかけられたように滲んでぼやけてはっきり見えなくなった。
もう少し見せて欲しかったな。思わず呟きがこぼれた。
妻の笑顔にはさすがに及ばないが、それでもあの笑顔は綺麗だった。娘も好きになりそうだった。

機会があったらもう一度会ってみたいと思った。自分でも良く分からないが、なんだかあの女性とは話が合いそうな気がする。
きちんと礼儀を守って、でも他人行儀にならない程度に親しく話しかければ、いい友達になれそうに感じた。
ひょっとしたら妻に軽くにらまれるかもしれないが―――別に妙なつもりはないし、
向こうも自分を相手にそんな気分にはならないだろう。
第一、恋に焦がれるのも愛に溺れるのも、自分は妻一人で十分なのだから。
だから残念だった。とても残念に思った。今の自分に彼女と話す余裕も余力もないことが。


精神と肉体の両方において著しく消耗し、呼吸もままならないほど疲れきった状態で、
ハロルドの意識は混濁しかけていた。
自分が魅せられそうになったその微笑は誰のものか、それが何処から送られてきたのか、そのことを理解できなかった。
深淵へと引きずり込まれそうになる自分自身をどうにか引きとめながら認識することが出来ることは、限られていた。

目の前に立ちふさがる青い強敵 ディジェ
愛する妻と娘 ジェニファーとキャサリン
その二人が待つ家に帰るために必要なこと ディジェの撃墜

家に帰るためにディジェと戦って勝つ。ただそれだけを考えていた。それだけははっきりと分かっていた。


「これが済んだら………もう一度話してみようか………」

それが一番大変なんだけどな、そうつぶやいて苦笑した―――つもりになる。
全天モニターに映る青いモビルスーツがどれほど恐るべき強敵なのか、実際に戦ってみて痛すぎるほどに痛感していたから。
ただ、その姿がどうして大きくなったり小さくなったりしているのか、
左右にぶれたり上下に重なったりするのかは分からない。
確かに左腕はシールドごと斬り飛ばされたが、索敵用のカメラやシステムはそれほど影響を受けたわけではないのに。
モニターの調子も悪くないのに。画面の調整も―――ああ、そうか。
おかしくなっているのは機械じゃなくて、自分の目か。
43ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/09(木) 00:18:33 ID:???
「………これじゃあ駄目だな、ちゃんと目標を確認しないと………」

訓練所で鬼教官に、実戦で厳しい小隊長に、何度も尻を蹴飛ばされながら叩き込まれた格闘戦の基本を思いだそうとする。


 いいか薄汚いションベン垂れ共、メス豚のアレより汚いその耳の穴をかっぽじってよく聞きやがれ。
 貴様らがいくらへっぴり腰でサーベルをやたらに振り回したところで、ザクの1機どころか大根の1本も斬れやしねえんだ。
 去勢された鼠よりヘタレな貴様らと違って、ジオンのパイロットは凄腕ぞろいだ。エース中のエースばかりが揃っているんだ。
 そんな連中相手に無傷で勝とうなんて都合のいい妄想でマスをかくのは貴様らの勝手だが、
 それで貴重なジムを壊されるわけにはいかないんだ。分かったかクソ野郎共! 
 ………返事が聞こえんぞ、俺は分かったかこの最低の蛆虫野郎共と聞いたんだ。返事は!!
 よし、それではこの俺様が、ゴキブリの糞より価値のない貴様らに、格闘戦の心得を特別に教えてやる。
 それを有り難く拝聴したいか! いいか! 
 もう一度聞くぞ、俺の話を聞かせて欲しいと這いつくばってお願いしたいか、どうだ!!
 ならば聞け! 一度しか言わんぞ!!
 まずは相手をしっかり見る!
 次に、相手から目を離さずにフットペダルを最後まで踏み込む!
 最後に、間合いに入ったらそのまま斬る! 相手の攻撃を回避しようなんて余計なことは考えるな!!
 貴様ら程度が回避なんて洒落たことを考えるだけ究極の身の程知らずだ、それを理解しろ!!
 基本は見る、進む、斬る、この3つだ! 復唱! 声が小さい、もう一度!!

 見る! 進む! 斬る! それを忘れるな―――!!


「………見る、進む、斬る………」

自分に残された力がごくわずかなことは、何となく分かっていた。
小細工や大技を決められる余力は残っていないことも感じ取っていた。
だから最後は基本に帰るしかなかった。
何度も繰り返した訓練と実戦の積み重ねで身体に覚えこませたそのやり方しかなかった。

「………敵を怖がらずにしっかり見て、撃たれることを恐れずに前に進んで、そのままためらわずに斬る………」

………そういえば、初めてディジェと会った時、パイロットは急に怒り出したよな。
あれは確か―――そうだ、自分が連邦軍だと言った時だ。それで急に敵視されたんだ。
それほど連邦が嫌いということは、パイロットはやはりジオンかアクシズの生き残りなのかな。
これほど強いのだからさぞかし名前の知れたエースなのだろうけど、
でも「リトラ=クローム」という名前は聞いたことがないな。
でもまあ、実際にこうしているんだものな。自分が知らなかっただけか。
まったく、地球も宇宙も広いってやつだ。こんな凄いエースがこんな近くにまだ生き残っているんだからな。

揺れる世界の中で、ハロルドはそう考えた。そう考えるしかなかった。想像はそれが限界だった。
44ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/09(木) 00:19:33 ID:???
「………そんな強いやつを倒せたら、ジェニーやキャシーに自慢できるかな………」

妻は………あまり喜ばないかもしれない。
彼女にとって戦争とは災厄以外の何物でもなくて、
そこでの「功績」は許容ラインぎりぎりの必要悪以上のものにはならなかったから。
むしろ調子に乗って妙な色気を出すなと叱られて、
周りの人に迷惑をかけずにちゃんと家に帰ってくることだけを考えなさいと言い聞かせられるかもしれない。

娘は………単純に喜んでくれるのだろうか。
パパは強いんだと、「凄く強い悪い人」をやっつけたパパは凄いと、素直に尊敬してくれるだろうか。
幼稚園に通うようになったら、そこでの作文発表会で、父親のことを自慢した作文を読んでくれるだろうか。

『わたしのぱぱは、れんぽうぐんのぱいろっとをしています。
 ぱぱはわたしやままやまちのひとをまもるために、まいにちいっしょうけんめいがんばっておしごとをしています。
 ぱぱはとてもつよいので、どんなにつよいわるいひとでもすぐにやっつけてくれます。
 わたしはそんなぱぱがだいすきです』

その大きな目を輝かせて、小さな胸を大きく張って、あの愛らしい声で聞かせてくれるだろうか。
自分はその場にいることが出来るだろうか。

「とりあえずは、帰らないとな………」

全ては家に帰ってからの話だった。
電話もなしに帰りが遅れたことを謝って、誕生パーティを始めて、買っておいたプレゼントを渡して、
娘の4歳の誕生日を妻と一緒に祝うことが、自分自身に課された任務であり、また望みであった。
そのためにはディジェを倒さなければならなかった。
その強敵と戦って勝たなければ、家に帰ることは出来なかった。

だからハロルドは操縦桿を握った。フットペダルを踏む足に力を込めた。
崩れそうになる身体を支え、折れそうになる心を保ち、残された力を振り絞った。

「ジェニー、キャシー、パパは今から帰るからな………すぐに帰るからな………っ!」

武器の大半を失い、左腕をも喪失した黄色の巨人が、それでもなお戦意に瞳を輝かせて一歩を踏み出す。
その右手に握った光の剣を構え、立ちふさがる全ての敵を薙ぎ払うため、前に進みだす。

「帰りが遅れたのは謝るから、帰ってからちゃんと謝るから、プレゼントも渡すから………っ!」

ちゃんと家に帰るためにも。
帰りが遅れたことを謝るためにも。
プレゼントを渡すためにも。
妻の夫であるためにも、娘の父親であるためにも。

「パパのことを信じて………応援してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

ハロルドが吼え、ズサが咆哮した。
ビームサーベルを構えた黄色のモビルスーツが、青いモビルスーツ目掛けて突進する。
それに応えるように青いモビルスーツも突っ込んでくる。
やはりその手にビームサーベルを握り締め、その刃を大きく振りかぶって、
目の前に立ちふさがる敵を斬り裂こうとして。


「うぉぉぉぉぁぉぉぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁっ!!!」


モニターに映るディジェの姿が一気に大きくなる。此方を飲み込もうとするその映像が圧し掛かってくる。
それに負けないように叫びながら、咆哮しながらハロルドは意思を刃に変えて振り下ろそうとして―――
45ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/09(木) 00:20:23 ID:Y5m1MD69
「 ! 」


その瞬間、あの微笑が思い浮かんだ。綺麗に笑う銀髪の女性の姿が、ディジェの無骨な頭部に重なって見えた気がした。

ああ、そうか。あの女性がリトラ=クロームで、ディジェのパイロットだったんだ。

そのことを思い出しながら、ハロルドはそのままサーベルを振りぬいた。
あくまで教えられた基本どおりに、ディジェを見て、ディジェ目掛けて突き進んで、
ディジェとそのパイロットを最後まで見つめながら。倒すべき相手の姿から目をそらすことなく。

ディジェを倒すために。リトラ=クロームに勝つために。勝って家に帰るために。そのために斬るために。
ただ斬ることを考えて。



光が重なり、影が重なり―――想いが交錯した。
降り続く雨の中、重苦しい闇に沈む無人の基地で、何かが割れて砕けて裂けて散った。

【行動:前を見て(1)前に進んで(1)ディジェを―――「リトラ=クローム」をもう一度見て(1)斬る(1)】
【位置:D-12/軍事基地】【行動値残り:0】
【機体状況:AMX-102 ズサ/左右胸部ミサイルランチャー破損、胸部装甲に歪んだ十字傷、左腕喪失、?】
【通信状況:生徒名簿で「06番 リトラ=クローム」と表示されている綺麗な女性と通信中】
【掌握地形:B-21、B-22、C-20、C-21、D-12、E-12】
【パイロット状況:右こめかみ部分に裂傷・流血、軽度の打撲、顔の右半分血まみれ、
         右頬に擦過傷+打撲+靴跡、左頬に一筋の切り傷、唇右端に軽度の裂傷、身体にシートベルトによる痣
         「家に帰りたい」+「父親」+「夫」+戦闘モード+ごまかしきれなくなりつつある極度の疲労=………】
【武装:ビームサーベル×2 ミサイル(24/35発)、トライカッター×1、90mmサブマシンガン用弾倉2つ】
【所持品:ディパック、首輪、水2リットル入り2本(1本は残り半分)、コッペパン半分、シャベル
     リボン付きクマのぬいぐるみ(娘の誕生日プレゼント)、家族の写真が入ったIDケース
     (ディパック内:2食分の食料、ミネラルウォーター2リットル×1、タオル2枚、
      着火器具、替えの下着類一組)】
【方針:「リトラ=クローム」に勝って………】【同盟:なし】
46マサヤ=タカノ ◆O/EkHvxsV6 :2005/06/09(木) 00:51:54 ID:???
全てがスローモーションに見えた。
モビルスーツが右肘を突き出す。
自分はここではないどこかにいて漠然とした何かを見ていた。
そして、そのおかげで相手の動きが読めていた。
自分の判断にも間違いはなかったと思う。
間違いなく当たったとも思った。
だが、相手の姿は消えていた。

『その大きな体では、パワーはあっても敏捷性が足りないようですね。』

襲ったのは光の奔流。
ヤバイ、と思った時には頭がモニターに叩き付けられていた。
消えそうになる自分を必死に手繰りよせる。
気を失うわけにはいかない。
身体が軋んで揺れた。
心が絶望に覆われる。

「くっ!?」

コクピットに火花が飛び散っていた。
機体損傷確認――、腰部、脇腹を貫かれていた。
くそっ、やば過ぎる!!
もはやモビルスーツというよりスクラップといった呼び名が似合う巨人を騙し騙しに動かして飛び退る。
この戦場のどこかで誰かが悲しんでいる気がした。
降リ続ける雨がその誰かの涙に思えた。

「俺の喧嘩は倒されてから――」

いつも、そうだった。
俺は元々考えを巡らしてうまく立ち回っていくタイプだ。
それは極道になっても変わらなかった、喧嘩の腕がいいとはとても言えない。
だからいつも倒されていた。
だけど俺は負けなかった。
どんなに倒されても、何回倒されても、どれだけ殴られようとも――俺は立ち上がった。
極道の面子を潰すことはできない、負けることはゆるされない。
何処までも喰らいついて離さない。
だから、ガンダム、お前も頼む、あと少しでいい。
俺と一緒に戦ってくれ。

「来んさいや」

心が燃え上がっていくのがわかった。
感情を見れるあの不思議な感覚とは違う、ただ一つの俺らしさ。
ただの、勘だ。
これまで通りに読むんじゃない。
勘で当ててやるんだ、一発、狙うはコクピットへのカウンター。
相手のコクピットさえ貫いたら俺の勝ちだ。
だから、頼む。
俺の魂でもなんでもやるから俺に力をくれ。
俺に兄貴の仇を討たせてくれ
お前は白い悪魔なんだろ?

【行動:通信中(-0)、覚醒中(-0)】
【位置:O-18】【残り行動値:4】
【機体状況:ガンダムGP02 頭部損傷、メインカメラ及びバルカン使用不可、センサー損傷(?)
      シールド破棄、左肩損傷、左足損傷、冷却系統に不調、腰部損傷】
【武装:ビームサーベル、バズーカ砲身のみ、ザンバスター】
【所持品:ディパック(コッペパン×2、水2Lペットボトル×2、日本刀)、煙草、100円ライター、短刀 】
【行動方針:単純に殺し合い、兄貴の仇をとる】
【同盟:なし】
47レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/09(木) 01:31:28 ID:???
最初に訪れたのは沈黙だった。
続いて、無数の水滴が立て続けに地面に落ちてぶつかる音。
自動ドアのガラス越しに見える外の景色は、一面の雨模様へと変わっていた。
そんな中。

「……参ったな。
 これじゃあボクが悪いみたいじゃないか」

ぐしぐしと手の甲で涙を拭い、レベッカは同じように涙を浮かべている少女の方へ向き直った。
真っ直ぐに立ち上がり、コートとスカートの裾を払ってから歩き出す。
伸びた背筋。
芯の通った姿勢の良さは、彼女の小柄な体を一回りも二回りも大きく見せた。

「勘違いしちゃダメだよ、ニース・エルネージュ。
 ボクらはね。
 生きる為に殺しあわなきゃいけないって決まってるんだよ。
 本当の友だちを作りたいのなら、何処か別の場所で、別の時間にやるんだね」

そのままニースの横――勿論、ハスキー犬の反対側――を通ってドアから外へと出て行く。
擦れ違う刹那、視線は微塵も交錯せず。

前述の通り、外は雨。
手近なカフェテラスの椅子にコートを掛け、髪を纏めたリボンを解いてテーブルの上に置く。
締め付けるモノを失ってふわりと広がる金糸を軽く手で落ち着かせると、彼女はそのまま雨の中へと歩を進めた。
たちまち髪を、顔を、そして全身を雨粒が濡らしていく。
構わずに空を見上げるレベッカの瞳が何処か眩しそうなのは、曇天の向こうに青空を想うからだろうか。
48レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/09(木) 01:35:00 ID:???
頭と心に篭った嫌な熱が徐に冷め、落ち着いた頃になって、少女の薄桃色の唇からポツリと言葉が漏れた。

「自由とは雨の中、傘を差さずに踊る人間がいても良いという事――だっけ?」

確かめるように軽いステップを踏んでみる。足元、水溜りが跳ねる。
遠く、モビルスーツの駆動音。
振り返ったレベッカの青い瞳が、雨に煙る大通りの真ん中、見覚えのある機体が歩いてくる光景を捉えた。
何も言わず視線を外し、クルリと大きくターン。
微塵も軸のずれない回転に、スカートが僅かに浮き上がった。
水を吸った布地が、重く音を飲み込んでまた、纏わりつく先はレベッカの太腿とふくらはぎ。
形の良い尻のラインは既に、厚い布地を通してでも分かってしまいそうな程。
更には下着までが濡れてしまっている。

苦笑。

「着替えなきゃね」

水滴が何もかも洗いざらい流していく感触に頷いて、漸く彼女はデパートの中へと戻っていった。
左手にコートとリボンを持ち、濡れた髪を右手でかき上げて、深呼吸一回。
ニースに歩み寄る――勿論、ハスキー犬の反対側である。

「……少し頭冷やしてきた。
 ゴメン。
 ボクは、もう大丈夫だから。
 それと……次の定期放送までは、この夜が明けるまでは、ボクはキミの味方だから」

すっと伸ばした右手の先。
細く白い指がニースの目元を柔らかく撫で、こぼれ落ちそうになった雫を掬い取った。

「――だから、その……今、キミにまで泣かれると、困る」
49レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/09(木) 01:36:53 ID:???
【行動:雨の中でバレエのステップ(-1)、ニースぅ(;´д`)ノ(0)】
【位置:U-22(機体:市街・開閉式ドーム球場、パイロット:市街・デパート内・エントランスホール)】
【残り行動値:3】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、
       右マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:多分お尻ちょっと腫れてる、雨でびしょ濡れ、髪は解いてある】
【武装:ビームサーベル×1、左腕ビームシールド】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx2、軍服)】
【方針:火器及び食料の確保、後1回の定期放送が流れるまでニース・エルネージュを守ってやる】
【同盟:なし(一応の味方:No.14、No.09、No.11)】
50ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/09(木) 03:07:57 ID:???
 コンクリートジャングルを突き抜ける幹線道路を"男"はただただがむしゃらに走っていた。

 降りしきる雨に濡れる事も委細構う事なく──
   強烈な息切れに肺に一瞬激痛を伴う感覚に襲われつつ──
     街灯に照らされた"何も動いていない"道を目で見据え真っ直ぐに──

 体を捻らせながら何度通りの街並みを見てきたことなのだろう。
仕事人の鬱屈を伝えてくれるようにビルディングの窓から漏れる蛍光灯の光。
遊び人の欲望を満たすように赤・青・緑色彩鮮やかに点滅を繰り返すネオンの光。
世捨て人の寂しさを紛らわすように優しく、それでいて物悲しさを映し出す古びた街灯の電球の光。

 灯りが灯っている事にこれほどの恐怖を感じた事がかつて存在しただろうか。
文明の機器と言うものは人が作って・人がいて・人が使って初めて様々な感情をもたらしてくれるのだ。
それ故に感情と呼べる全ての源を失ったこの街はあまりに無機質で無頓着で無関心で
理由も無くスッポリと抜け落ちてしまった"一個人"に対してあまりにも圧倒的な絶望を演出してくれている。

 "男"はずぶ濡れの風体で適当な大通りの店に飛び込んでみた。
「さっきから何回目だろう」とか「自分以外にも取り残された人が」とか考える事は少し前から全く変わりが無い。
店内に入ってまずは大声で色々わめいてみる。
反応が無いと見るや店の中をプライバシー等お構いなしに土足で上がりこんで荒らしまわる。
そして、肩を落としてゆっくりと店から這い出し、また全速力で豪雨の中を駆け回る。
こんな事も幾度となく繰り返している。さっきから手順だって何一つ変わりはしない。

 いっそ不信人物として警察や軍に職務質問→逮捕された方がよっぽど幸せかもしれない。
大雨の中を何事か叫びながらあらゆる建物内を荒らしまわる男が一人。シチュエーションは申し分無い。
しかし、この街はそれさえも許してくれないのだ。ありとあらゆるコミュニケーションとの途絶。
そんなものを一方的に与えられれば発狂こそしていないものの"男"の混乱からの奇行だって説明は付く。

 性懲りも無くまた適当に灯りのついた店を見つけて荒々しく扉を開こうとするが、取っ手が無い。
その店は自動ドアだった。そしてガラス張りで店の中が一目で見渡せる…いわゆるコンビニエンスストアだった。
自動ドアの開閉する僅かな時間で中に誰もいない事がわかってしまったが、衝動で無理矢理中に入る。
一歩足を踏み入れた瞬間、店内のスピーカーからかき鳴らされるBGM。
テレビやラジオでしか聞き覚えの無いその曲は二十数年も前の流行歌である。

 走り疲れたこともあり、ふらふらとした足取りで店内を歩き回る様はどう見ても『不信』の一言だが
その姿を見てヒソヒソと楽しむように耳打ちをし合う者も、恐れながらも興味本位にこちらをチラ見する者も
明らかな嫌悪の表情を顔に出し文句をかけてくる者も、一番肝心の店員すらも…この店にも存在していない。
ここもまた無機質な人が作ったモノ達が支配している小さな世界の一つなのだ。
51ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/09(木) 03:14:20 ID:???
 "男"は軽く溜息を漏らすと、適当な清涼飲料水と袋詰の食品を手に取り、徐にレジカウンターへと向かっていく。
無造作に品物を机に置くと、わざとらしく待つ素振りなどしてみる。
レジスターの表示板を右から左へ『会員限定!対象商品でポイントゲット!!』等と店の宣伝文句が流れていく。
いらだってるように机を人差し指でコンコンと鳴らしてみせる。
カウンターの奥を覗き込んで声を掛けてみる。「誰もいないんですかー?」と。
一呼吸置いてから、もう一度復唱してみる。さっきより腹に力を入れて大きな声で。

「誰かいないの? これ勝手に持ってっちゃうよ!?」

 ……プシュ! ……バリ

 店内にペットボトルの蓋が開く音と、袋を破く音が鳴った。
それに続いて今度はゴッ…ゴッ…とかパリ…パリ…だとか食物を咀嚼する音まで響いている。
"男"は、ちょうど目の合ってしまった監視カメラに一瞬だけ手を止めるが、また気に止めず飲食を続ける。
少し異常な光景に見えるが、それも飲み込んだ上での行動だった。
ただ単に喉が渇いていたのもある。合わせて腹が減っていたのもある。
でも、それ以上に…それ以上に満たされない物がそこにあるのを感じたく無かったから…。

 ゴン!!

 不意に、鈍い音が響き渡り店の床を半透明な液体が濡らす。
投球モーションの終わった格好のまま、全身を震わせている"男"の背中を監視カメラが捉えていた。
しばらくその体制から体を動かす事が出来ずに、体を覆う圧迫感のみが増大していく。
考えないように…考えないように…考えないように…考えないように…。
意識の外から離していた一つの可能性に、思考だけがフル回転し続け一連性を検索していた。
それだけはあって欲しくないと言う思いを…嫌がおうにも知らされてしまった瞬間でもあった。


     【この街には人がいない──】


 確信が持てずとも理解だけしてしまうことはよくあることだ。
その時の反応は千差万別、人それぞれで、泣き叫ぶ事もあれば歓喜の余り飛び上がってしまう者もいるだろう。
ちなみにこの男ナインティ=アウェイキングの場合は至ってオーソドックスな物で。

 "その場でガックリと膝を地面に落とし、肩から腕の力が全て抜けてだらりと垂れ落ち、
 半開きの口と焦点の合っていない瞳で虚空を見詰めながら、ただただ力無く苦笑する" のみであった。

 外はまだ夜の闇と不自然な灯り達と天上からの雨が渾然一体となったままだ。
時間を遡る事数時間ほど前に大きな希望と少しの不安を持ってナインティがこの街に降り立った時のように。
何一つ変わっていないはずのその街で、ただ一つ変わったものは何も知らない哀れな男の心情のみ。

 〜♪ 〜♪ 〜♪

 BGMは明るくポップなメロディーへと変わり、流れつづけた。
まるで道化師に嘲笑されているようなソレはひどく不愉快な物であった。
52ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/09(木) 03:15:51 ID:???
【行動:移動(-1P) 街の中を探索(-1P)】
【位置:C-22→B-22】
【機体・パイロット状況:問題なしだけど精神にちょっとダメージ】
【武装:腕部グレネードランチャー、ミサイル、ビームサーベル】
【所持品:デイバッグ(コッペパン×2 水2L入りペットボトル×2(少量消費) 前回のデータ入りディスク)
      タブレット状の精神安定剤 タブレット状の睡眠剤】
【方針:何もわからない】
【同盟:無し】
53アロンソ ◆ffwql.VOnc :2005/06/09(木) 08:27:51 ID:HWQMEIO/
いちおうIDチェック
54アロンソ ◆ffwql.VOnc :2005/06/09(木) 09:07:01 ID:???
ドロップキック――それは、ワシの戦術の一つじゃった。
元は左肩のショルダーアーマーが破損した06での体当たり。構わずタックルしたら左肩の方がイカれおった。
「こりゃあかんな。次からは別の方法を考えなければ」
しかし、『体当たり』というのは最後の方法ながら、カードとして持っておきたいモノじゃった。
そして――辿り着いたのが『ドロップキック』。
バーニアの助けを借りれば、プロレス並の無茶な機動も簡単にできる。
両足で衝撃を吸収できるから、こちら側へのダメージはほとんどない。
大質量の攻撃は、スパイクなどなくとも十分な破壊力を持つ。
唯一の欠点は――攻撃後、態勢を立て直すのに苦労するところじゃ。

……ワシのドロップキックは、「ガンダム」に命中する。
ただし腕を上げて頭部を守った状態で、だ。

「やはり――別人のようじゃ」

衝撃に耐えつつ、ワシは呟く。
先ほどまでの「ガンダム」は、常に防御と回避を念頭に置いた攻撃じゃったように思う。
じゃが、今の「ガンダム」は、何よりもまず敵を倒すことが最優先。
さっきまでの奴なら、このキックを避けるために伍長への攻撃を止めていたじゃろう。(*1)
正直、ワシはそうなって欲しくて、この派手な攻撃をしたのじゃが……

そしてもう一つ気づかされるのは、超人的な反応速度。
いや、さっきまでの「ガンダム」の腕が悪かったわけではない。確実に腕の良いベテランじゃ。
じゃが、今の「ガンダム」は――化物じゃ。
ドロップキックの衝撃を利用してメタスの攻撃を避けるモンなのか!?
蹴られて飛んだまま、空中でそのまま来れるモンなのか!?
あんな動きをして――中のパイロットが持つモンなのか!?

両足を伸ばしたまま、その場に尻餅をついたワシのグフに、紅い目の「ガンダム」が襲い掛かる。
開かれたままのコクピットに、何時の間にか降り出した雨が飛び込んでくる。
紅い目の悪魔が、サーベルをなぎ払い――


咄嗟に盾として掲げた大型バスもろとも、両腕の手首から先が飛ぶ。
そこにトドメのもう片腕の突きが迫る!

「……南無三ッ!」

開け放たれたコクピット目掛け真っ直ぐ迫るビームサーベルに、ワシは死を覚悟した。
55アロンソ ◆ffwql.VOnc :2005/06/09(木) 09:07:53 ID:???

 まだ、死ねぬ。
 我が全人生を賭けた宇宙移民独立の夢。
 我が全人生を賭けたジオン軍の戦い。
 あるいは、もう後続に道を譲って良い時なのかもしれん。
 伍長のような、次の世代に。
 先に逝った仲間たちの下に、行くべき時が来ておるのかもしれん。
 伝説の「ガンダム」との再戦、ここが、ワシの死に場なのかもしれん。

 だがそれでも――

爆発。
目の前で、「ガンダム」の腕が爆発する。
熱風が頬を打ち、無数の破片が降り注ぐ。
これは天の助けか僥倖か。あるいは――あの蹴りも無駄ではなかったと言うことか。

飛びそうになる意識を無理やり繋ぎとめ、フットペダルを思い切り踏み込む。
グフが、座り込んだような姿勢のまま、背中の大出力バーニアの推力だけで立ち上がり、宙に舞う。
通常の予備動作のない動きが、少しでもこの「怪物」を惑わしてくれれば――

「連邦め、ガンダムめ……せめて、散る時は一緒ぞ!」

ワシのグフは「ガンダム」の頭上を飛び越して背後を取り、羽交い絞めにする。。
手首のない右腕を、サーベルを持った奴の右腕に絡め、自由を奪う。

「クルル伍長! ワシに構わず……討て!」

奴のパワーは凄まじく、いつまで押さえ込めるか分かったものではない。今にも振りほどかれそうじゃ。
じゃが、伍長……躊躇っておる場合ではないぞ! 早く、この機にこやつを討たんと……!


【行動:防御失敗(−1p)、跳躍(−1p)、08番の機体を羽交い絞め(−1p)】
【残り行動値:2p】 【位置:P-23 高速道路脇】
【機体状況:頭部欠損。両腕部手首喪失。コクピットハッチ開放中。軽く森林向けの偽装済み】
【参加者状況:軽い傷多数。額から流血】
【所持品:ヘルメット、銃剣、壊れた突撃銃、 山菜1袋、薬草1袋、ズタ袋、
     デイバッグ、コッペパン×2、水2g×2、ティッシュ×5箱、】
【武装:2連装ビームガン(未取り付け・P-22に放置)】
【行動方針:20番クルルを守る】
【同盟:20番クルル(片思い的同盟?:16番ナインティ)】
56キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/09(木) 09:46:55 ID:pyQ6lsQo
IDチェックです
57クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/09(木) 10:37:07 ID:AJ+q0hZU
突き出したわたしのサーベル、大尉の決死のドロップキック。
それらはいとも簡単に、ガンダムに避けられる。
通常では考えられない動き、先ほどまでと違う動き。
そして、先ほどから感じる違和感。
このガンダム…………只者じゃない。

大尉のドロップキックを利用してわたしのサーベルを避け
低空を滑空してグフへ向けてサーベルを突き出す。なぎ払う。
だけど、そこにあるのはただの違和感だ。
もやもや、ぐにゃぐにゃ、うねうね。
それを感じるようになって、このガンダムは動きを変えた。

「!!」

大尉のグフは持っていた大型のバスで防御しようとするけど
バスもろとも両手を失った。
突き出されたガンダムの腕が爆発を起こす。

そして…………大尉のグフはガンダムを羽交い絞めにする。

「クルル伍長! ワシに構わず……討て!」

…………大尉に構わず、討てるわけがない!
でも、大尉が言う通り、これは好機。
この好機を逃したら…………きっと、このガンダムを倒す事は難しくなるに違いない。
大尉は討ちたくない、でもガンダムは倒したい。

サーベルを握りなおし、ガンダムへバーニアを全開にして進む。
大尉は、討たない!でもガンダムは倒す!
それには、どうするのが一番か…………

この動きをするようになってから、ガンダムは手に負えなくなった。
でも、この動きをするようになる前からなら倒せない事はない!

この動きをするようになって感じたうねうね、もやもや、ぐにゃぐにゃの発信源!
そこを破壊すれば!

「大尉は…………死んじゃ駄目ぇぇぇぇ!」

真正面からサーベルを思い切り突き出す。
狙う先は、ガンダムの頭部。
大尉のグフは羽交い絞めにしている以上無傷でいられる保障はない。
でも、頭部への攻撃ならばまだ胸部や腹部を狙った攻撃よりは支障は出ないはず。

「いなくなりなさぁいっ!」

あなた邪魔なのよ。鬱陶しいのよ。大尉をよくも。絶対に殺してやる。
そういった殺意を放つわたしが、新たに近づく同じ種類の人間に気付かなかったのも当然かもしれない。
58クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/09(木) 10:38:23 ID:???
【行動:08番にビームサーベルで頭部目掛けて攻撃(1)】
【残り行動値:3P】
【パイロット状況:(#゚∀゚)イナクナレェ!】
【位置:P-23】  
【機体状況:MSA-005メタス/やや装甲破損 左肩部アーマー一部破損】
【武装:アームビームガン×2(EN70%)、ビームサーベル×6、ビームローター】
【所持品:ディパック 水2g1本と半分 筆記用具一式、特殊トランシーバー×2(一対) 鍋】
【メモ:『ここは地きゅう・おにいちゃんは地きゅうにいる・わたしはおにいちゃんをさがす
     きたいはメタス・アイテムは黒いきかいがふたつ・ぶきはそらとべてたてにもなる
     グフはおじいちゃん・ゲルググはおねえちゃん・アッシマーはおじちゃん・バウはいたい
     おじいちゃんは大いで偉い・大いは仲間・いたいのはわからない
     アッシマーはやらない・ゲルググつよい・大いつよい』】
【行動方針:おにいちゃんを探したい ガンダムを倒す 大尉を守る】
【同志:01番 アロンソ=セルバンデス】
59リトラ=クローム ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/09(木) 13:30:31 ID:???
>>42-45
―――決閃――――

交錯する巨人と刃。
青き闘士のコックピットで、リトラは己の敗北を悟っていた。
迫り来る鋭き光の刃。瞬きせずに静かに、穏やかにそれを見つめる銀の瞳。

一瞬眩く視界を覆った閃光ののち、ジリという金属の焼かれ断たれる音と共に、世界には闇が訪れた。

皮一枚をのこし、なかば断たれた青き闘士の首筋より、鮮血のように火花が吹き上がる。

天の涙を水蒸気と化し続ける光の刃がその輝きを失うと共に、ドゥ、と地に倒れ伏す青い闘士のなか、
身を打つ衝撃と共に、リトラは己の生命が未だある事を知った。

「―――敗けた―――のだな」

静かに呟く白銀の獣は、かろうじて動くコックピット・ハッチを開け放ち、天の涙へとその身を晒す。
地に降り立ち、刃が振り下ろされるその瞬間まで、己を倒した敵の姿を瞳に焼き付けるべく。
そして、己を倒した敵に白銀の獣の姿を、“リトラ=クローム”を焼き付けるべく。

クローム
白銀の髪を濡らしながら、黄色い巨人の姿を見上げた時。

銀の瞳が、わずかに揺れた。

黄色い巨人へと、駆け―――――

【行動 : 倒れ伏す愛機より、外へ。
      己を倒した相手を見上げ、ただ雨に打たれるがまま振るわれるべき刃に身を晒す(-1)
      相手へと、駆け―――(-1) 残2 】
【位置/場所 : D-12/基地 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――停止 】
【パイロット状況 : 頭部強打、流血 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト バンダナ 煙草数箱  】
【方針 : ―――敗者は死するのみ、か 】
60ジェンセン・スティール:2005/06/09(木) 15:57:56 ID:???
 ようやく、基地が見えてきた。
 幸い、というべきだろうか。今まで、一度も「敵」には遭遇していない。
「勝ち残る」ためなら、このまま逃げ回って、連中がつぶしあうのを待つ
っつうのも手だ。
 だが、それじゃあ花がねぇさなぁ・・・・・・
 道路のひび割れに足をとられたりなんぞして、いろいろと手間取りこそしたが。
ようやく最初の目的地である、基地が見えてきた・・・・・・
 
【行動:移動;S12街道→S11街道→T11街道(1P)→U11橋(1p)→V11街道→W11街道(1p)→W12街道→W13街道(1p)
 残りポイント0】

【位置:W13街道】
【機体状況:ハイザック・正常】
【パイロット状況:好調好調っ】
【武装:ヒートホーク・ビームサーベル・ミサイルポッド(注・非装備状態)】
【所持品:ディパック(コッペパン×1 食料セット3日分 ペットボトル(水入り)×2
     エレキギター、自作治療用セット×1、自作栄養剤セット29回分)】
【方針:準備その1、完了。さて、武器の仕入れに入るか】
61ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/09(木) 20:49:41 ID:???
「化け物かよ、あの赤目・・・」
赤い目をしたガンダムの動きを見て、思わずそんな呟きが漏れた。
人間ではあり得ない反応速度。
恐らくニュータイプでない人間でさえ「これは異常だ」と感じるだろう、異質で強烈な重圧。
何より・・・そのハンターの様な動き。
人を殺す、という事を何よりも―――自分の安全よりも―――優先している。
「助けにいったほうがいいか・・・な?」
例えクルルがアムロやスケイル級の化け物ニュータイプだったとしても、損害無しで勝てる相手では恐らく無い。
とはいえ、それほどの相手であるということはつまり、助けに行けば俺も危険だということで。
よって選択肢はこのまま傍観か、さよならか、助けに行くの3つ。
「やっぱ2番目が賢明なのか・・・」
傍観もいいが、万一勘づかれて3vs1になったら洒落にならない。
それにうまくいけば、強力なニュータイプが二人消えてくれる。うん、これが一部利口だ。

―――つまり、彼女を見捨てる。

「・・・関係ない」
確かに彼女が死んだら不快感を覚えるだろうが、自分が死んだら不快感すら覚えられない。
迷いを振り切って艦を反転させようとして―――
あのじじい(少なくとも年齢を見る限りでは)のMSが、赤目ガンダムにしがみついているのが目に入った。
・・・死ぬ気らしい。あのじいさんはクルルのために。
「何を、馬鹿な事を・・・」
そう、馬鹿な事だ。絶対に損だ。

何処の誰とも知らぬ人間のために、死ぬ。
最終的には殺し合う相手のために、死ぬ。
そこに損得勘定など、あるはずもなく。

なのに俺は逃げる。
汚い大人のように、自分の損得勘定で、逃げる。
卑怯な大人のように、子供を道具として利用して、裏でその死を望む。
臆病な大人のように、己の身可愛さに、誰よりも先に逃げる―――。
62ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/09(木) 20:51:11 ID:???
「馬鹿だな、俺は」
操作が完了した。ホワイトアークの最大速度は、俺をあっという間に目的地へたどり着かせる。
場所は、P−22。クルルとじいさんがいる場所の1ブロックだけ北。つまり、さっきより2ブロック分近づいた。
こうする間にも、クルルの思念にはせっぱ詰まった物が混じってきた。余裕はない。
Tシャツのまま格納庫へ走る。Z+に搭乗、発進。重石からマシンガンを取る。
状況を確認。クルルが赤目ガンダムの頭部めがけてサーベルを振り下ろしている。
だが・・・それだけじゃ駄目だ。俺には分かる。恐らく奴が完全に沈黙するまで、きっとあのじいさんは離れない。
それほどまでの、執念を感じる。
何がじいさんにそこまでさせるのか分からない。だけど、クルルを守りたいってのは伝わってくる。
それなら―――どんな下らない理由でも―――俺と同じだ。
「そこのじいさん、俺が手伝ってやる。だから無茶しないでさっさとそこから離れろ、クルルが悲しむからな。
 それに、老い先短い命でも・・・まだいい物見られるかもしれないだろう?」
じいさんに通信したあと、とことんまで自分は馬鹿だなと思った。
会ったこともない子供のために、自分から火の粉をかぶろうとしている。
しかも。嫌いな大人、それも特に大ッ嫌いな老人の影響で。
でも・・・やらないで後悔するより、やってから後悔するほうがずっとましだ。

【行動:移動・R−22→P−22、着陸(1)格納庫へ移動(1)Z+A型搭乗、発進(1)1番に通信(1)】
【位置:P−22、森林】
【残り行動値:0p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント、120mmマシンガン(全て新品同然)
    予備 クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:興奮】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、ザンスカール製ノーマルスーツ、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml×2】
【行動方針:ジンペイにコンタクト・赤目ガンダムを滅ぼす】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
63ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/09(木) 21:32:51 ID:???
へたりと座ったまま、ホールにポツンと残るニース。
涙を流す両目からは、感情の色は窺えない。
傍らのハスキー犬が、心配そうにニースの腕にすり寄る。
そっとハスキー犬の背を撫でる手。
しかし、その視線は空を彷徨ったままだった。

頭の中に、デパートから出ていったレベッカの言葉が蘇る。

『勘違いしちゃダメだよ、ニース・エルネージュ』

(勘…違い?…あたしが仲良くしようとしたのが…勘違いなの…?)

『ボクらはね。
 生きる為に殺しあわなきゃいけないって決まってるんだよ』

(ボクらって…。…違うよ。あたしは…レベッカさんと殺し合う…なんて…。
そんな事、決まってなんかいないよ…!あたしは…!あたしは…!)

『本当の友だちを作りたいのなら、何処か別の場所で、別の時間にやるんだね』

(変な事言わないでよ…。あたしは、レベッカさんだから…!
この場所で出会ったレベッカさんだから、友達に…なりたかったのに…!)

呼吸が早く、浅く、そして苦しい。
視界が、涙で霞む。

「レ…ベッカさん、も…あたしを…殺すのかな…?
あたし…。こんな所で殺される為に……生きてきたの、かな…?」

傍らのハスキー犬に小さく話しかける。
自分で考えても、答えなんて出ない。
それなら、答えてはくれなくても、せめて話を聞いてほしかった。

突然、霞んだ視界が誰かの指によって払われた。
振り向いた先に佇むのは、レベッカ=テスタロッサ。
ニースに言葉をかけるレベッカ。
ニースの感情のない目がレベッカを見つめ、閉ざそうとしていた耳が、その言葉を聞く。
そしてその言葉を聞き終わったニースの目に、感情の光が宿った。
それは、怒り。

続く
64ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/09(木) 21:33:44 ID:???
「…ざけないで」

小さな声で呟く。
…そして声に出した事で、それは次々と溢れ出てくる。

「…ふざけないでよ。…ふざけないでよ!…ふざけないでよぉ!
…何なのよその、夜が明けるまでは味方って…!
本心では殺し合う気満々のくせに、変な優しさ見せて…!」

顔を上げ、きっとレベッカを睨む。
ニースとしては、これ以上ないくらいの気迫で。

「レベッカさんはこう言いたいんでしょ?
あたし程度の人間いつでも殺せるから、今は精々いい思いをさせてやろうって事でしょ?
明日がきたら約束の時間は終了で、あたしを殺して、はい終わり。
レベッカさんにとっては、楽なものだよね?」

ゆっくりと立ち上がり、涙を今度は自分の指で払う。

「だけど…。だけど…!
…あたしだって。
…あたし…ろくに戦う事もできない素人だけど…。
…だけど、誰かの気分次第で殺されなきゃなんないような、そんな意味のない人生
を送ってきたつもりなんか、ないんだから!
あたしの…!あたしの命はあたしのものなの!
誰かに弄ばれるような、そんな…軽いものじゃないの!」

同時にくるりと背を向けて、デパートから走り出ていく。
あとを追い掛けるハスキー犬。

ニースは走る。
雨の中を水たまりを跳ね上げ、服が濡れるのも構わず、走る。

「あたしだって…。あたし…だって…!」

あてもなく走り続けて辿り着いた、ホテルの廊下。
ずぶ濡れの少女は、再び感情のともらない目で、ふらふらと歩いていた。

「あたし…。どうすれば…」

【行動:2番9番に回線継続(0)ホテルに行く(−1)】
【残り行動値:3P】
【パイロット状況:異常なし】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、あたし…】
65ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/09(木) 21:36:01 ID:l7sbkYji
ID出し
66ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/09(木) 22:18:18 ID:???
飛ぶバスとグフの手――――
 爆発する左腕――――――
   目の前に迫るサーベル―――――

ルイスの精神状態で理解するのがやっとの状況。

〈これ以上闘わないで。〉

また聞こえる声、だが今はそれどころではない。
目の前に迫るサーベルを避けるためにバーニアを可能な限りに吹かす。
機体の後ろから吐き出される熱が羽交い締めにされたBDの装甲を焼く。
突きが到達する少し前のタイミング。右へとステップを切りサーベルが肩を焼く。

そのままの勢いでグフを振り払いメタスの股下へと潜り込んで下から上へ前へと切りかかる。
モニターの死角、回避するのは至難の角度からの攻撃で一気に勝負をかけに行く。

「誰だか知らないが、この状態で闘うのをやめるのは無理ってもんだ。
 無理の有る戦況だけど、まぁ今回は俺のわがままに付き合ってくれ。」

ルイスはまだ気づいては居ない、新たな敵の存在を。

「さっさと終わらせようぜ、こんなことをよ・・・。」


【行動:回避(−1)メタスに攻撃(サーベル)(−1)】
【残り行動値:2P】
【パイロット状況:背に滲む汗】
【位置:P―23】  
【機体状況:01番に対して通信回線継続 右肩アーマー破損・左肘関節部アブソーバー欠損・左肘から先の装甲及び内部破損 EXAM】
【武装:頭部60mmバルカン砲×2(残弾84%)、胸部60mmバルカン×2(残弾72%)、 ビームサーベル×2(散弾)】
【所持品:シガレットケース(葉巻10本)煙草4箱(51本) ライター パイロットジャケット 作業着  ボイスチェンジャー アサルトライフル予備マガジン×2 H&CUSP予備マガジン×1 パン×2 水2L 清涼飲料水4L    缶詰×5 塩1袋 下着類 】
【行動方針:勝負をつける。】
67アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/09(木) 22:41:38 ID:???

『何、私はNTについて研究している人間でね、ちょっとNTである人に、
 ひとつ二つ質問したいことがあるのですよ。
 何しろ、こういう研究をしていても、
 NTである人とはあまりお話する経験がなかったからね。
 こういうときでしかお話しする機会がないんですよ』
「……!」

ニュータイプに関する研究と言われれば、アルマに思い当たるのは『あの』研究所しかない。
ニュータイプを人工的に造り出す研究とは、言い換えればニュータイプという存在の物理的解析を行うことだ。
解析結果をさらに分析し、素質のある子供たちを使ってトライ・アンド・エラーを繰り返す。
投薬、電気的な刷り込みは日常茶飯事だった。 身体能力向上のための手術や訓練も受けた。
催眠措置で刷り込みを受けた者もいたようだが、その結果は推して知るべし、だ。
アルマは強化の副作用が比較的少なく、『概ね成功』にカテゴライズされるタイプだった。
当時、とある友人は廃人になった。 別の友人は薬物中毒になって首を吊った。
また別の友人は幻覚症状が酷く、『トキがミえる』などと妄言を繰り返した結果『処分』された。
脱走を企てて射殺された友人もいた。 顛末を聞いた一同は、消灯後に声をひそめて彼のために泣いた。
そんな結果しか招いてはこなかった。 アルマが見知っているのはそういう研究だった。

目の前の男の表情は心なしか嬉しそうだ。 にやけている。
これは『危険』だ。 イっちゃってるよこの人……とは少々失礼だろうか。
危険を承知で踏み込むか、安全に求めて身を引くか。
乗るか、反るかの勝負ではない。 そういう類の問題ではない。
デメリットに見合うメリットはあるだろうか? ……多分、ない。
いや、あるにはあるのだが、それさえもかなりの危険を伴う。

では、この戦場に『安全』などあるのだろうか?
……絶対、ない。
ここで退いても安全が保証されるわけではない。
逃げ回るだけでは何もできないし、だからと言って何もしなければ、
何もしないまま、できないまま終わりを迎えることになる。

(それは……イヤだな……)

今までの人生で得てきた能力を誇示したいわけではない。
あの日の惨劇を無為なものにしてはいけないと思っているだけだった。
不幸中の幸いとばかりに銃は持っている。 身体能力にも自信はある。
その機会があるかどうかは別として、生身でならば相手を退けられるだけの力は持っているつもりだ。
危険に踏み込んで得られる情報は無いと思う。 なぜなら彼は『新入生』だから。
持っている情報は皆無だろう。
それでも。

(何かをしなきゃ。 動かなければ始まらない。
 踏み込むんだ……やってみよう。
 ちゃんと間合いを見て、読んで……)

それが駆け引きというものだろう。
冷や汗が出ていたが、彼女は一応の覚悟を決めた。 恐る恐る口を開く。
やはり躊躇われたのだが、これを告げないことには事態は動かない。

「その質問、私でよければ伺います。
 ええと、その……昔、そういう研究所にいましたから。

 ……その前にもうひとつ聞いておくことがあります。
 あなたはニュータイプをどのように捉えているんですか?
 その口振りだとニュータイプに何か確信のようなものがあるみたいですけど」

吉と出るか? 凶と出るか?
……少なくとも吉にはなり得ない。
アルマは、そんな予感がしてならなかった。
68アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/09(木) 22:42:32 ID:???

【行動:通信中(0)】
【位置:G-20/高速道路】
【残り行動値:4p】
【機体状況:Green/通信回線:νガンダム、V2AB】
【武装:ビームサーベル、3連装グレネード、内蔵ヘビーマシンガン(95)、ショットクロー(8)、
     ビームライフル、Eパック、偵察ポッド、Iフィールド】
【生徒状態:Green】
【所持品:デイパック、コッペパンx2、水2gx2、栄養ドリンクx7、ノートPC、食糧、生活雑貨、
      ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:東の基地へ/様子見】
69キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/09(木) 22:42:56 ID:???
光の剣は巨人の脇腹を両断するはずだった。
キリトはそう確信していた。

しかし、その光の刃は思ったより装甲を斬れずに
そのままGP02を捕らえ切れなかった。

(さすがに装甲が厚いですね、
 普通ならあれで決まっていてもおかしくは無かったのですが。)

それでも相手にとっては大きな損傷となっていることには変わりないようだ。
その大きな巨体を引きずるかのように大きな肩のスラスターを使い
こちらとの距離をとった。

『来んさいや。』

傷ついた巨人からの吐かれた威勢には何かの覚悟が感じられる。

「ふふふ、面白い。実に面白い。
 人と言うモノは生命の危機に晒されたら途端
 凄まじいほどにその底力が表に出てくる。
 さあ、もっと貴方の力を見せてください。」

両手に握られたビームサーベルとビームソードアックス
ビームサーベルの方を逆手持ちすると
GP02に向け機体を加速させる
どんどん距離が近づいていく長い一瞬を
認知し、感じ、そして・・・時が加速する
ビームソードアックスを水平に振り、ビームサーベルを
GP02の頭上から突き刺す様に振り下ろす。

【行動:通信中(-0) ビームサーベルを逆手持ちにする(-1) 
    ビームソードアックスで横斬りビームサーベルで突き刺しにかかる(-1)】
【残り行動値:0】
【位置:R−18】
【機体状況:Gキャノン・頭部消滅】
【武装:ビームサーベル×2、 肩部130mm4連装マシンキャノン×2(残弾90%)
    腕部ダブルビームガン×2
     ビームソードアックス(ソード・アックス・ピックの3形態)
     ビームショットライフル(EN80%) 6連装ミサイルポット×6】
【所持品:ディパック 水1g1本500ml1本 コッペパン1個 首輪 
      レイピア×2 グラサン数個 懐中時計 お守り】
【行動方針:さあ、楽しみましょうか。貴方と私の惨劇を・・・ (楽)】
70アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/09(木) 22:54:02 ID:???
気のせいだろうか?
ハッチを開けたところで、ふと考えてみる。
つい今しがた、デパートの前に辿り着こうとしていた時だ。
雨の中、シャッコーを歩かせていた俺の目に、デパートの前に人影が見えた気がした。
雨で視界が良くない上に、一瞬の事でよく分からなかったけど、多分……ニースかレ
ベッカだと思う。
人影はデパートに入っていったから、少なくとも1人は誰かがいるという事だ。

その事に少し安心しつつも、先ずは俺自身の目的を果たそうとディパックを担いでコ
クピットから降りようとしたその時。
デパートから誰かが飛び出てきた。
照明に照らされたその姿は…ニース=エルネージュだ。
何故この雨の中を走っていくのか、そしてあとをついていく犬が何なのか、さっぱりだ。
だが少なくとも、放っておける状態じゃない事くらいは分かる。

「何がどうしたって…んだぁ!?」
コクピットハッチを閉めて降り立った…と思った瞬間、雨で滑って尻餅をついた。
「冷て…」
一張羅が濡れてしまったが、今はそれどころではない。
雨の街の中、遠くにニースの後ろ姿が見える。
「ニース!待ってくれ、ニース!」
呼び掛けてみたが、ニースは止まるようにみえない。
無視しているのか、それともこの雨で聞こえないのか。
呼び止めるのが難しいと判断した俺は、追い掛ける事に決めた。

うっすらと見えるニースの後ろ姿を追う。
俺やレベッカならともかく、おそらく素人の彼女がMSから離れるのは危険だ。
彼女だって…いや、彼女自身が、その事に気づかない筈がないのに。
とにかく、会って事情を聞かなければ!

あとを追って辿り着いたホテル。
入口に付いた濡れた足跡が、中に続いている。
どうやらこの辺にはいないみたいだけど…。
絨毯の上にも、うっすらと足跡が残っている。
それを僅かな手掛かりに、俺は階段を上がっていった。

【行動:10番への回線継続(0)シャッコーから降りる(−1)ニースを追い掛ける
(−1)】
【残り行動値:2p】
【位置:U-22】
【機体状況:異常なし】
【参加者状況:異常なし】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン、ビームローター
    ビームピストル×2(75%)】
【所持品:ディパック、水2?入り2本、コッペパン2個、お守り、ペンライト、ポータブルプレイヤー】
【行動方針:休む前に腹ごしらえ…の前にニースを探す】
【仲間:クラウディア、ニース、(レベッカ)】
71マサヤ=タカノ ◆O/EkHvxsV6 :2005/06/09(木) 22:59:14 ID:QWfvrgfD
IDチェック
72サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg :2005/06/09(木) 23:50:54 ID:???
「――まだ、悪い夢でも見ているような心地だ」

コクピットの中で、先ほど撮った写真を指で挟みながら。モニターの向こうと睨み合う。
雨が機体をしきりに叩きつける音だけが耳にコダマしていた。

「ゴーストシティ、なんて言葉はよくあるが、そんな生半可なものじゃない……
 これじゃまるでコールドシティ、凍った街だな」

まるでつい最近建造されたかのような、洗いざらしの世界。
だが理不尽なまでの力によって歪められたそれは、あるべき姿へ戻ろうとする反発作用も失い
朽ちることすら許されず、いつまでも濡れ続けるのだろう。
いつまでも。いつまでも。

「…………」

人っ子一人としていない街。降り続ける雨。
違うのは、手元からふいに滑った生卵のように砕けた都市。この鉄の箱の有無。そして――

「やめろ。思い出す必要はない。感傷に浸るな。前を見ろ――行くぞっ」

自分自身に檄を飛ばした。今異常なのは目前の事態で、考えるべきは目前と今後の事態をどう捌くか。
深呼吸すると操縦桿を握り締めた。

「周囲に機影は無し、コンテナも付近の1つだけが残ったまま。
 どうなってるんだか……」

西にちらりとモノアイを向けるが、この雨足の中にあって見えるはずも無し。
気を取り直し、自分に必要な行動を進める。
道路近くにあった一台のエレカを持ち上げさせ、そのまま機体を動かした。

「この雨の中だ、足止めされているのかもしれない。
 油断はできない……が、しばらくは安全と踏ませてもらおう」

怖いくらいに静かであったが、アインラッドを街中に入れては物資収集もままならない手前、
徒手空拳のデカブツよりは迅速に動ける選択を取る。
やがて、地図からもうかがえる、街のそばにあった高地へ辿り着いた。

「やれやれ。この辺なら、雨が降ってる間は潜めそうかな?」

アインラッドを山間に隠し、自分もやや離れた高地の影に入る。
巨人の指に軽く力を込めさせると、ほどなくミニチュアカーのガラスにひびが入り、砕けた。
確認すると機体を降りる。ディパックを傘にするが、やはり外の風雨は冷たい。

「寒っ!? あー……コート、渡しちまったんだったなぁ。まずったかなぁ……」

――『コート!後で必ずお返しします!』

「……ま、いいさ。さーてと……」

気にしていても暖まるわけではない。苦笑して無精髭を撫でつけながら、車の方へ歩いていく。

割れた窓から内側へ手を回して、エレカの施錠を解除する。助手席上に飛び散ったガラスを除けて
運転席へ。ダッシュボードを適当にまさぐって鍵を取り出し、エンジンを入れた。

「とにかく足りない物を補わないと、戦う逃げるの前に飢え死にだ。
 しっかし、あのお嬢さんから恨まれてないかねぇ……

(それに、あのディスク……今の手がかりは実質アレくらいだ。なんとかしないと……)

呟きながら、車はぬかるんだ高地を危なげなく走り路地へと乗った。
73サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg :2005/06/09(木) 23:51:45 ID:???
【行動:コクピット搭乗(0P) 移動(M-14→M-13→N-13)(-2P) 遠隔操作(-1P) 機体を降りる(0P)
    エレカに乗る(0P) 移動(N-13→N-14)(-1P)】
【位置:N-14/市街地】
【残り行動値:0P】
【機体/状況:アッシマー/未搭乗 左腕部装甲に裂傷】
【生徒状況:左頬に赤み】
【武装:アインラッド(停止)】
【所持品:ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx1、1.7Lx1)
     ウェストポーチ(ナイフx1、ペンライトx1、ガムx2、煙草x1、コンパス付腕時計、筆記用具)
     ショルダーポーチ(ポラロイドカメラ一式) ライターx1】
【行動方針:1.食料等の回収 2.情報の入手】
74マサヤ=タカノ ◆O/EkHvxsV6 :2005/06/10(金) 00:08:52 ID:gVQ6H6Y+
視界の中で加速するGキャノン。
時が歪む、永遠とも一瞬ともいえるような不思議な感覚。
息苦しいほどの閉塞感を胸に感じた。
熱意、歓喜、決意、狂気、闘志――、全てが混ざり合ってざわめいていた、
その中に自分の感情はどのくらいあるのだろうか。
心が勝手に共鳴してしまう。

「ああああぁあぁ!!」

やがて、その世界で線を見た。
二つの光刃が眩しいほどに煌いている。
ああ、なんて眩しいんだろう。
そんなことを考えながらガンダムを強引に動かす。
辛うじて動く右腕からビームサーベルの光がこぼれた。
焼かれた雨が小さな音をたてる。

「俺は、こんなを倒すんじゃあ!!」

フットペダルを踏み込んで前進する。
目の前にいるGキャノンが何故か霞んで見えた。

「っ!?」

踏み出せたのはたった一歩だった。
それだけで地面についた左足が崩れ落ちた。
人の反応速度を越えた動きに中破したガンダムはついてこれなかった。
振り上げられたビームソードアックスが機体を切断していく。
体の痛みがひいていく。
頭の中が真っ白になる。
魂が慟哭した。

「あっ――」

人の想いが弾けて消える。
それはニュータイプと呼ばれた人々の片鱗。
光の粒子が全てを飲み込んだ。

【生徒番号04番 マサヤ=タカノ:死亡】【死因:搭乗機体の大破による爆死】
75アロンソ ◆ffwql.VOnc :2005/06/10(金) 00:54:15 ID:???
>>66
……それは、覚悟の上ではあったが、最悪の結果じゃった。

クルル伍長の、一瞬の躊躇のせいか、それとも、ワシを巻き込まぬための配慮のせいか。
あるいは最初から、この策を取るには機が悪かったのか。
メタスのサーベルが到達するよりも先に、まさにワシの「目の前」で吹かされるバーニア。

直撃ではない。
いや、直撃しとれば一瞬で消滅できて、かえって楽じゃったかもしれんな。
じゃが――ハッチを開けたまま密着しておったグフのコクピットに、「死の熱風」が吹き込む。
咄嗟に腕で顔を庇うが、そんなモノで防ぎきれるものでもなく――
あまりの熱気に、一瞬意識が飛ぶ。

 
  ――その時もまた、わたしは火傷を負っていた。
  火花飛び散るコクピットの中で、しかし確かに隊長の声を聞いた。

  「……げろ、アロンソ! お前だけでも逃げるんだ! ……ガガッ……!」
  「隊長! わ、わたしも最後までここでッ」
  「駄目だッ! この作戦は失敗だ……しかし、生き延びれば、また機会はきっと来るッ!
   ジオンの栄光のために! 希望を繋げるために! 次代に志を繋げるためにッ!
   恥を忍んで生き延び、闘い続けろッ!」
  「わ、わたしは、わたしは……ッ!」

  最初から無謀な作戦だった。
  基地にはデータにない新型MSが配備され、骨董品交じりのMSは軽々と潰されていった。
  仲間も、隊長も――みな、倒された。あっさりと殺された。

  わたし自身、どこをどうやって生き延び、どうやって逃げてきたのか覚えていない。
  気がついたら……ボロボロのザクでたった一人、山奥で座り込み、泣いていた。

  追っ手は来なかった。
  火傷は軽かった。
  生き延びた仲間もいなかった。
  ネオジオンが落とすと言っていた、アクシズも落ちては来なかった。
  隊長が最期にわたしに約束した、「新たなる機会」もいつまで待っても来なかった。

  わたしは――ワシは――そのまま数十年、隊長の言葉を胸に、決して諦めることなく――

  ようやく、伍長と、クルル=ヴァルデーン伍長と、巡り合えたんじゃ。
  ジオンの志を継ぐ者。ワシらの希望。守るべき未来。
76アロンソ ◆ffwql.VOnc :2005/06/10(金) 00:56:59 ID:???

――気が付けば、グフの腕は外れ「ガンダム」は自由になっていた。
前面の装甲を焼かれたグフは、その場に尻餅をつくような形で取り残される。
「紅い目の獣」は振り返りもせずに、メタスに襲いかかる。
ダメじゃお前、倒すべき敵を間違えとりゃせんか――
思いばかりが先走り、身体が思うように動かん。こりゃ手酷くやられてしもうたなァ。

>>61-62
と、そこに被さるように、通信が入る。ノイズだらけの通信。
見上げればカラバの名機・Zプラス。
カラバの連中とは反連邦として共闘したこともあり、またネオジオン宣言後に敵対もした。
敵としても味方としても、その強さはよく知っておる。
いつの間に間合いに入られたのか――いや、ワシのグフの首が飛んで、察知できんかったんじゃな。
一瞬、新たな敵かとも思うたが、この土壇場では天佑じゃと思って頼りにさせてもらおう。
なにせ、ワシはもう――

「ありがたい、のぉ。……しかし、少し遅かった、よう、じゃな」

新参者への返信。
声が掠れる。胸の奥が痛い。多少熱風を吸ってしもうたか?
グフがヨロヨロと立ち上がる。コイツもワシと同じく、熱と傷でボロボロじゃ。

「手伝ってくれると言うなら……クルル伍長を助けてくれると言うなら。
 伍長を逃がし、支えてやってくれぃ。ワシの代わりに、守ってやってくれぃ。
 出会ったばかりで、こんなこと頼んで悪いんじゃが……お願いするぞ、若人よ。
 あの子は、ワシの、ワシらジオンの、希望なんじゃ」

ワシは青年に頼んだ。
本当なら、この青年の素性やら思想やらを確認したいとこじゃがな。
今は、信じるわい。信じるしかないわい。
このタイミングで現われてくれた救いの手、その偶然に賭けてやるわい。

今頃になって胸元が熱い。首から下の身体の前面が熱い。軍服の下で皮膚がベロリと剥がれおった。
ワシも、今まで何人もの戦友の死を看取ってきたから分かる。分かってしまう。
ここまで深い火傷を、これだけ広い範囲に負ってしまっては、遅かれ早かれ助からん。

目の前で「ガンダム」がメタスに剣を振るう。
……今からでは、一撃ニ撃は避けられんか。伍長、避けてくれよ――せめて、致命傷だけは。
ワシは伍長の抵抗を祈りつつ、フットペダルを深々と踏み込む。
77アロンソ ◆ffwql.VOnc :2005/06/10(金) 00:57:40 ID:???

脚部の大型バーニアが、背中の大出力バーニアが、火を噴く。
酷使され続けた推進器が悲鳴を上げる。グフが「紅い目のガンダム」の背中目掛けて突進していく。
地表を擦るように飛びながら、ワシは伍長に叫ぶ。

「……伍長!
 この場は、ワシらの負けじゃ。こやつは、今のワシらには倒せん。
 何百回敗北を喫しようとも、一人でも生き延びれば、次に繋げられるんじゃ!
 間違っても全滅の憂き目だけは避けねばならん!
 ワシはそうやってずっと戦ってきた! 仲間の犠牲に耐えながら、ずっと!
 ――撤退するぞぃ!」

目の前に「ガンダム」の姿が迫る。ワシは減速も姿勢変更もせずにそのまま突っ込む。
通信システムもいまいち不調で、伍長の返事が確認できんわい。無事ならええんじゃが。

「ワシが『しんがり』を務める。
 伍長はこの場から先に離れるんじゃ。一刻も早く、少しでも遠くへ。
 これは、上官としての……命令じゃ!」

サーベルを持ったままの相手に、抱きつくように襲い掛かる。
今度は壊すための体当たりではない。味方の攻撃を目的とした束縛でもない。
己の護身も考えておらん。胸部や頭部のバルカンもきっと喰らうじゃろう。
それでも――時間は、稼げる。
既にサーベルがグフのどこかに当たっておるようじゃ、装甲の焼き切られる匂いがする。

ワシは伍長に厳しく怒鳴った後、今度は優しく微笑みかける。
顔だけは火傷を免れたのは、幸運じゃったわい。
伍長は優秀じゃが繊細な子じゃ、怯えさせたくはないしの。

「……ワシも、できたら、追いかけるわい。
 こやつを少しだけ足止めしたら、な。
 あのZプラスが助けてくれるそうじゃ。一緒に遠くへ逃げぃ」

喋るワシを、衝突の衝撃が襲う。弾き飛ばしてしまわぬよう、手を広げて捕まえる。
パワーの格差を無理やりバーニア出力で補う。オーバーヒートの警告が、コクピットの中に鳴り響く。

ワシは、仲間から、戦友から、隊長から、妻から……
数多くの逝ってしまった者たちから受け取ったバトンを、伍長に渡す。

「もし、ワシが合流できずとも……伍長は、生き残れ。
 何があっても生き残れ。恥を晒しても屈辱を受けても生き残れ。
 何十年かかろうとも、諦めるな。
 ……ジオンの志を、伍長の次の世代へ、繋いでくれぃ」
78アロンソ ◆ffwql.VOnc :2005/06/10(金) 00:58:15 ID:Fu4rgipY

もう目も霞んでロクに見えん。
ワシはちゃんと笑えておるじゃろうか? 伍長はちゃんと聞いてくれるじゃろうか?
「ガンダム」は、ちゃんと捕らえられておるじゃろうか?

「忘れないよう、メモしておくんじゃぞ?
 伍長に会えて、ワシは幸せじゃったy……………」




臨界点を越えたバックパックが、爆発する。
残念、こっち側の爆発では「ガンダム」を巻き込めんわい。熱気の中、冷静にそんなことを思う。
連動して何か負担がかかったのか、コクピット内にも小さな爆発。
今度こそ、防ぎきれない熱風がワシを襲う。

――ようやく、「ワシの番」か。案外恐くないものじゃの。
ユキノ、隊長、みんな――だいぶ、待たせてしもうたのぉ。
ワシは爆風に包まれながら、その手を天に伸ばし、叫んだ。


     「ジーク・ジオン!」



【生徒番号01番 アロンソ=セルバンデス 死亡】
【死因:コクピット内の爆発による爆死。その前段階で致命傷に至る火傷を負っているが、これは直接の死因ではない】

【特記事項:弁慶の立ち往生の如く、なおも中破した機体だけはブルーデスティニーを妨害し続けている】
79ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/10(金) 03:10:58 ID:???
見る、進む、斬る―――一最初から相討ちを狙うようなその戦法は、決して必死のものではない。
少なくとも、地球連邦軍初の量産型モビルスーツRGM-79GMを駆り、
ジオン公国軍のMS-14シリーズ以外のモビルスーツと戦うのであるならば。
何故ならGMには盾があった。その左手には、機体の枢要部をほぼ覆うことが出来るシールドが装備されていた。
正面からザクやグフシリーズと斬り合うのであれば、その左腕と盾と引き替えに敵を撃破することは可能だったのだ。
だから少なくとも一部の教官達は生徒達に教えた。徹底的にたたき込んだ。
戦闘の恐怖に怯えて肉体と機体の技量と性能を生かせぬままに斃れるのではなく、
あえてその身を危険にさらし、それと引き替えに持てる全ての力を発揮して、肉を切らせて骨を断てと。

ただ、今のハロルドが操るのはGMではなくズサであり、そのズサには左腕がなかった。
そしてズサが斬りかかった相手はザクでもグフでもドムでもなく、同時代では屈指の格闘性能を誇るディジェだった。
ディジェの手足はズサより長かった。ズサの手足はあまりにも短かった。
その2機が正面から斬り合えば、最初から結果は見えていたのかもしれない。

本来得意とする射撃・砲撃戦ではなく、ビームサーベルを用いての格闘戦を選んだ時点で、
ズサに勝利の目はないことは明らかだったのかもしれなかった。あまりに無謀に過ぎると言うべきかもしれなかった。
しかし、その時のハロルドにはそれしかなかった。
敵機目がけて自動的に誘導されるミサイルを使えば、その誘導機能に「安心」してしまい、
集中力がそこで途絶える危険があった。少なくとも、ハロルドは無意識のうちにそう判断していた。
結果として、ハロルドはミサイルではなくサーベルを選び―――最後まで自分の意思で戦うことを選んだ。
その結果を甘んじて受ける義務を負った。

>>59

途絶えそうになる意識の中で、手応えを感じた。自分の刃が敵を切り裂く感触を認識した。
ディジェを倒した―――その判断は間違ってはいなかった。
確かにズサのビームサーベルはディジェの首から胸部にかけて深々と食い込み、その全ての機能を停止させた。
ただし、それには代償が伴った。

思い切りビームサーベルを振り抜いた姿勢のまま、黄色の巨人はその身体を静止させていた、
あちこち焼けこげ、傷つき、無数の火花に巻き付かれながら、降りしきる雨に打たれていた。
やがて―――光の刃がかき消されたように消え去った。
その手から力を失った柄がこぼれ、音を立ててアスファルトの大地に転がった。

「…………………………」

周囲を睥睨するように輝いていたモノアイが力なく点滅を始める。
カメラのレンズ部の窪みに溜まっていた雨がひときわ大きい水滴と流れとなってそこから溢れ、
薄汚れた装甲板を伝って流れ落ちる。
涙のように見えなくもないその滴が地面に零れるのと同時に、ズサのメインカメラは機能を停止した。
その短い手足を懸命に振り回し、自分よりも遙かに強大な敵と戦い抜いた物言わぬ巨人の目が、永遠に輝きを失った。

ズサの左肩から右胸部にかけて、ディジェの一撃による深い傷が走っていた。
もはや誰にもどうにも出来ない、それは致命傷だった。
黄色の装甲板は斬り裂かれ、内部の機械は修復不可能な損傷を負っていた。
そこから零れるプラズマの激しさと眩しさが、そのダメージの深さを物語っていた。

「…………………………」

ズサの身体がぐらり、と揺らいだ。それ以上立ち続けることが出来なくなった。
重力の冷たい腕に抱かれた黄色の闘士の両膝が崩れ、上体が傾き、
唯一残った腕を引かれるようにして右肩から地面に崩れ落ちた。水飛沫を上げて、雨音の中にささやかな轟音を立てて。
コクピットハッチと地面の間にわずかな空間を空けて、力尽きたズサは冷たいアスファルトの上に倒れ伏した。
80ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/10(金) 03:12:29 ID:???
「…………………………」

非常灯以外の光を全て失い、本来ならばあり得ない方向に傾いたコクピットの中で、
ハロルドはまだ意識を保っていた。シートベルトにもたれかかると言うよりは引っかかるような姿勢のまま、
最後の最後に残った力をかき集めて目を開こうとしていた。落ちようとするまぶたを支えていた。

「……お……わっ……た……のか…………これ…で………」

ディジェは倒した。それは確かだと思う。
あの恐ろしいほど澄み切った殺気も、突き刺さるような気合いも、今はもう感じられない。
ただ、同時にズサが斬られたことも分かっていた。このモビルスーツが動けないことを、本能的に理解していた。

「外……に出な……いと…………な……」

とにかくディジェは倒した。あの強敵に勝った。ならば次は帰らないと―――そう考えた。
それ以上のことは考えられなかった。考える余力は残っていなかった。

「さ……あ……一緒……に……帰ろ……う……な…………っ!?」

震える左手で自分を見守ってきたぬいぐるみのクマを抱き、
ほとんど固まっている右手でシートベルトを解放し―――そのまま下に転げ落ちる。両脚がほとんど動かなくなっていた。
しばらく休養を取れば再び歩けるようにはなるのだろうが、それだけの時間は残されてはいなかった。

「……戦って…………いた……とき……より……痛いじゃ……ない……か……」

電池切れ寸前の人形のような動きでどうにか身体を起こし、ハッチの非常用開閉ボタンを押す。
音を立ててただの壁と化していたハッチが吹き飛ぶと、その向こうに壁のない世界が広がった。
その先に自分を待つ家と妻子が存在するはずの、外の世界が。雨粒と水たまりに覆われて。

「……参った……な……傘なんて……持ってきて……ない……のに……」

それでも外に出ないわけにはいかなかった。家では妻と娘が自分を待っているのだから。
だからハロルドはコクピットから身を乗り出して歩き出そうとして―――今度は地面の上に転がり落ちた。
左腕に抱えたプレゼントが汚れないように己の身体をその下敷きにするようにしたのは、
父親としての意地だったのかもしれない。そこから立ち上がることは出来なかったが。

「早く……帰ら……ないと…………」

力なく横たわるパイロットとモビルスーツに、容赦なく雨は降り注ぐ。
血にまみれたその顔が無数の雨粒に打たれ、そこから滴り落ちる水滴が地面に小さな波紋をいくつも描く。
ハロルドを打ち付ける雨は当然にその腕に抱かれるぬいぐるみにも降り注ぐ。
少女に抱かれるはずの茶色のぬいぐるみが、雨に打たれてうなだれていく。
それでも少しでも雨を防ごうと両腕でかばおうとして―――何かが闇の中で輝いたことにハロルドは気づいた。
81ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/10(金) 03:13:21 ID:???
「…………?…………」

それは銀色の輝きだった。何もかも雨と闇に沈む中で、不思議と見えた唯一の光だった。
その小さな煌めきが―――女性の髪が放つものであることを、ハロルドは理解した。何故かそれが分かった。

「………………………」

自分が知っている人だ。そう思った。
よく知らないけれど、でもよく知っている女性だ。ほとんど分からないけれど、分かり合うことが出来るはずの人だ。
記憶がはっきりしないけど、でも忘れてはいけない人だ。忘れられない人だ。忘れるはずのない人だ。
妻と娘の次に会いたいと思った、話したいと思った、もう一度会って話したいと思った女性だ―――

「…… …… …… …… ……」

ハロルドは身体を起こそうとした。その女性が誰だか確かめようとした。
しかしその身体は動かなかった。その筋肉は主の意思に応えることが出来なかった。
ハロルドに出来たのは、胸にぬいぐるみを抱いたまま、軋む首を少しだけ動かして、目をこらすことだけだった。

「…… …… …… …… ……」

視界は雨に滲み、闇にぼやけ、疲労に沈んでいたが、その姿をどうにか捉えることが出来た。
銀色に輝く髪が何より印象的な、美しい女性だった。素敵な女性だった。
独身時代なら視線も意識も奪われそうな魅力的な女性だった。
自分がよく知っているはずのその女性は、確か、その名前は。

「……リ……リ……リ……ト……リ…ト……リト…………?」

そこから先がどうしても思い出せなかった。その次の音と響きが浮かんでこなかった。
ぬいぐるみと一緒に雨に打たれながら、その全身を濡らしながら、ハロルドは何とかその名前を思い出そうとした。


ハロルドには分からない。ズサがまもなく爆発することを。それは誰にも止められないことを。
同じD-12エリアの中に、動かなくなったはずのアイザックがいることを。
生徒名簿には記載されていないマラサイがこちらを見つめていることを。

終わりは、すぐそこまで迫っていた。

【行動:シートベルトを外す(1)非常用ハッチ開放ボタンを操作する(1)
    コクピットの外に転がり落ちる(1)「女性」の存在に気づいてそれが誰か思い出そうとする(1)】
【位置:D-12/軍事基地/地上】【行動値残り:0】
【機体状況:AMX-102 ズサ/大破・爆発寸前】
【通信状況:―――】
【掌握地形:―――】
【パイロット状況:右こめかみ部分に裂傷・流血、軽度の打撲、顔の右半分血まみれ、
         右頬に擦過傷+打撲+靴跡、左頬に一筋の切り傷、唇右端に軽度の裂傷、
         身体にシートベルトによる痣+各所に軽度の打撲、全身水浸し、自力歩行不能
         「家に帰りたい」+「父親」+「夫」+極度の疲労=―――】
【武装:―――】
【所持品:リボン付きクマのぬいぐるみ(娘の誕生日プレゼント)、家族の写真が入ったIDケース】
【方針:家に帰る、「女性」が誰か思い出す】【同盟:―――】
82ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/10(金) 05:03:37 ID:???
 膝を突いた状態から、そのまま腰を後方へと地面につかせゆったりとその場へと座り込む。
『落ち着いて考えてみよう』などという言葉がとっくの昔に忘却した表現になってしまったこの現実。
マヌケ面を晒しながらコンビニ内の陳列棚とにらめっこをする構図はどこまでも滑稽だ。
それでも、何とかして自分の中で説明をつけようと余計な思考だけは止まりそうも無い。
ただそれが脳内でグルグル周り巡っているだけで真実とは決して向き合う事は無いにしてもだ。

「喉、渇いた…」

 考えつづけて、やっとの思いで口から出て来たのはただの現金な一言だった。
意外と臨機応変が利く奴だな、などと自分の事を過大評価してみたくなってきたのはいい傾向だ。
掛け声と共に腰を上げ、ペットボトルとアルミ缶がキッチリ並べられた巨大な冷蔵庫へと足を運ぶ。
さっき思わず投げ捨ててしまった飲み物に微妙に後ろ髪引かれるが、まぁあれはあれだ。
多少時間が掛かりながら、やっと冷蔵庫の前まで到着。10mも無いような短い通路がやけに長く感じられた。
この鬱屈した気分を晴らすために、何か刺激が強めのドリンクが飲みたいと取っ手に手を掛ける。

「……?」

「(今頃になって気付くなんて相当神経が参っていたんだろうな。 というか、もういい加減にしてくれ)」

 先程自分が手を伸ばしたドリンクは、もう何十年とヒットし続けている…いわゆる超ロングセラーの商品だ。
飲み慣れているその味に一直線に手が動いて周りなど全く見えていなかったわけだ。
そして、開封する時にもパッケージデザインの細かい違和感など全く気付かずに見過ごしていた。
今、自分の眼の前には大型の冷蔵庫があってその中にはペットボトルやアルミ缶が規則正しく並べられている。
適当に手に取った商品をくまなく観察して気付く。製造会社・内容物・製造年月日…製造…年月日…年月…。

 【製造年月日 0091/1/27】

 体が自然に後ろに傾いていくのを感じた。
思わず反射的に後ろ足で踏ん張ったりしてみたが、体は依然元の位置にある。
片っ端から適当な商品を引っ掴み、同じ場所を確認してみるがどの商品も日付は【UC0091…】。
食品どころか数多くある日用雑貨の類までも日付は例外なく全て宇宙世紀0091から始まっている。
そういえば…デザインも機能性も時代遅れの商品ばかりが並んでいるようだ…。

 足と目線が泳ぐように次の方向へと動き出した。
入り口のすぐ傍にある雑誌陳列棚。そこにいる雑誌・新聞達。
最初からこれを見れば全てが解決することだ、と知恵の回らない自分を戒めながら。
83ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/10(金) 05:04:09 ID:???
『あの赤い彗星が生きている!? 各コロニー公社がひた隠す衝撃の真実!!』
『連邦製新型MS【RGZ-91 リガズィ】ロールアウト! 正当なZ系の後継機、その性能とは!?』
『ネオ・ジオン抗争に付きまとう黒い影 連邦の高官共よこれでもまだシラを切るのかっ!?』

 漫画雑誌・娯楽雑誌・ゴシップ誌・アダルト誌…。 日報新聞・経済新聞・スポーツ新聞・業界新聞…。
全てが時代遅れの記事で埋め尽くされ、話のネタにもならないその有様は何とも物悲しい。
模造するにもこれだけの規模のことをやらかす理由がどこにある。
だが、真実だとしてもここは一体何処なのかと言う根本的な問題にぶち当たる。
もうここまで来たら受け入れるしかないのだろうか。ここにある全ての事象と出来事を。

「俺はこの世界にタイムスリップしたんだよ…あぁ、もうそれでいいだろ」

 軽く頭を上下に動かして納得したように見せかける。様は開き直りだ。
理解すると言う段階はとうの昔に超越しているということで結論付けておこう。
自分は誰もいない世界に隔離されて、理論など分からないがタイムスリップしてしまっているだけだ。
そうでも考えておかないと、疑問が増えるばかりで思考が一歩も前に進めない。

「それじゃぁ、元の世界に帰る方法でも探してみるか…」

 至極わざとらしく呟いてみた。誰に聞こえるわけでもないと言うのに。
それで気分が軽くなるならば、気取った異邦者を演じるぐらい駄賃と呼べる物だろう。
外はまだ雨が降り続いている。商品の黒く大き目の傘を手に取ると、その場でビニールを剥ぎ取った。
文句を言う物は誰もいないわけだ。それも確信したし、文句を言う者がいたらそれは最高に嬉しい事だ。
自動ドアをくぐり、一つの結論に辿り付いたコンビニを後にする。
雨の中の街並みが急に明るく見えてきた。夜明けが近いからとかそういう意味ではない。

 何も無いと言うのなら、それは逆に何でもアリと言う事なのだ。

>>74 >>78
 体が何故か東側へ向いて、そこから立ち尽くしたまましばらく動けなくなった。
ここからずっと離れたその方向に大きな人の意識を感じたからだ。
傘を叩く雨音に紛れて2つ。一瞬だけ大きく輝いてそして徐々に散らばっていくその様。死者の輝き。

「じいさん…?」

 何故かは分からないが、そのうちの一つが老人だと理解した。
自分が知っているような人物のはずなのだが、その感覚に対する覚えがひどく曖昧だ。

「…すまない」

 今度は謝罪の言葉が口を突いて出てきた。何故かは依然分からない。
多分、この感覚の持ち主に自分は大きな誤解を持ったままなのだろう。
何時出会って、何をして、何が原因でその人物に誤解を抱いたのか、何もかも。
薄気味悪い感覚ではあるが…もうそれに引っ張られるほど不安定じゃない。

 しばらくの後、彼はまた雨の中を歩き出した。怯えを見せる様子は微塵も無い。
ただ淡々と死者への鎮魂の言葉を捧げるのみである。
84ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/10(金) 05:06:51 ID:???
【行動:開き直り(-0P) 01番と04番の死を感知(-0P)】
【位置:B-22】
【機体・パイロット状況:問題なしだけど精神にちょっとダメージ】
【武装:腕部グレネードランチャー、ミサイル、ビームサーベル】
【所持品:デイバッグ(コッペパン×2 水2L入りペットボトル×2(少量消費) 前回のデータ入りディスク)
      タブレット状の精神安定剤 タブレット状の睡眠剤】
【方針:日常へ戻る】
【同盟:無し】
85ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/10(金) 10:10:16 ID:???
ふらふらと歩いて、何となく入ったホテルの部屋。
雨が叩きつける窓の外を、ニースはぼんやりと見ていた。
レベッカにいった事を、心の中で繰り返す。
後悔していないわけがない。
心通わせる友達になれると思っていた人に、あんな言葉を吐いたのだ。
だが、間違っているとのとも違うと思ってもいた。
レベッカの言葉通りなら、明日の朝、彼女は敵になってしまう。
それなら、彼女が敵になる前に、自分から離れてしまえばショックは少ない。
ニースなりにそう考えた末の行動だった。
…筈だった。

でも涙は止まらない。
瞼の裏にレベッカの姿が現れては消える。
…どう理由付けしても、友達になれたかもしれない人から、自分から離れてしまった事を
すぐに埋められるほどニースは大人ではなかった。

「レベッカさん…。ご、めんなさい…。ごめんなさい…」

口を開くと、出てくるのはレベッカに対する謝罪ばかり。
涙は、暫く止まりそうになかった。


続く
86ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/10(金) 10:11:55 ID:???
「…っくしゅん!」

ぶるっと身を震わせるニース。
そこで初めて、自分の作業着がずぶ濡れな事に思いいたった。
それに昨日からの緊張の連続で、汗も随分かいた。
このままでは、まず間違いなく風邪をひいてしまう。

「着替えなきゃ…。確か…Tシャツがあったよね」

とにかく、濡れた作業着をいつまでも着ているわけにもいかない。
ボタンを外すと上着を脱ぎ、続いてべたつくズボンも脱いで、下着だけになる。
以前、少し背伸びして買ってみたブラジャーとショーツ。
小柄ながらニースの身体は、昔から続けていた水泳のおかげで、無駄な肉が殆どない。
高校の水泳の授業などでは、そのすらりとした身体が、一部の男子生徒の人気になっていた。
その身体を包み隠す下着も雨に濡れて透け、下着の意味をなしていない。

「…これも脱いじゃえ」

ホテルに誰もいないと思っているニースは、躊躇なく下着も脱いで、生まれたままの姿になった。
身体を締め付けていた物全てから解放され、ニースは上を向いて、ふぅと息を吐く。
部屋の淡い光のシャワーに照らされて、少女の身体が妖しく映える。

そしてディパックからTシャツを取り出すと、無造作に着た。
LLの大きなTシャツはニースの膝上くらいまで、すっぽりと隠してくれる。
胸元が大きく開いてしまうのが少し恥ずかしいが、目立つような大きな胸でもないので
とりあえず放っておいた。

「今晩くらいは、このままでも…いいかな」

【行動:2番9番に回線継続(0)部屋に入る(−1)泣く(0)着替え(−1)】
【残り行動値:2P】
【パイロット状況:異常なし】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、着替えたい】
87クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/10(金) 10:52:18 ID:8wlA4Kl2
IDチェックです
88レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/10(金) 11:27:28 ID:???
駆けて行く背中を、追いかける事はできなかった。
ニース・エルネージュの放った不可視の楔が、レベッカの心を穿ってその場に釘付けにしていたのだ。

「気分次第で、か……」

別れ際に見たニースの顔。
叩きつけられた、拒絶と別離の言葉。
目に焼きつき、耳から離れず、心をいつまでも揺らし続ける。

――違う。ボクは動揺なんかしていない。

「そっか。
 気分次第で……それが間違いだったんだ」

あの時。
ゲルググに刃を向けようとしたあの瞬間。
ニース・エルネージュからの通信が入らなければ――彼女の顔に、エステル・テスタロッサの面影を見なければ。
レベッカ・テスタロッサは躊躇う事無くビームサーベルを振り抜き、眼前の機体の操縦者を殺めていただろう。

「そうするべきだったんだ」

宇宙線被曝により余命一年と宣告された命を永らえる為。陽光を全身に浴びる心地良さを取り戻す為。
その為に、BRプログラムへの参加要請を受諾したのならば。

        『命は軽いものじゃない』――それは、ニースの台詞の中の、ほんの一部。

他に選択肢など、あり得なかった筈。
89レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/10(金) 11:29:28 ID:???
「なのに、ボクは――」

一時の気分で現実から目を背けた。
妹に似ていたからという、ただそれだけの理由で彼女と共に過ごす事を選んだ。
その理由は即ち代償行為に他ならず。
三回の定期放送が流れるまでとした区切りも、自分への言い訳に他ならず。

「――違うっ!
 ボクは……ボクはッ!!」

――ボクは、キミを……ッ!

叩きつけようとした拳はガラスの数センチ前で静止する。
吐き出される息と共に力なく下がる右腕。
まるで鉄の鎖で幾重にも絡め取られたかのように、体が重い。
ニース・エルネージュの言葉が鎖となって体を縛り、白木の杭の如く心を穿ち貫くが故に。
否定しきれれば。
彼女の言葉を全て打ち消せればきっと、この身はもっと楽になるのに――それが、できない。
重さに耐えかねたように、柱に身を預けたレベッカの視線は、上へと向かった。
吹き抜けの向こう。ガラス張りの天井の上、広がる黒い空。
夜。
宇宙線に焼かれてからは最も親しい、闇。

「『地獄の業火に焼かれながらも、それでも天国に憧れる』……か」

その闇に抱かれながら、レベッカ・テスタロッサは幼い頃に見たオペラを思い出していた。

*   *   *   *   *   *
90レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/10(金) 11:32:13 ID:???
デパートは無人に戻った。

外に置かれていた食料と水は、雨に濡れてしまわぬよう、エントランスホールの入り口脇に纏めて置かれていた。

其処にはもう、誰もいない。

吹き抜けの屋根を支える柱に油性ペンで書かれた'Scusa...(ごめん)'の文字だけ。

乾き切らぬアルファベットの羅列だけが唯一。

先程まで少女が独り、其処にいた事を物語っていた。

【行動:衣料及び医薬品の調達・食料及び飲料確保と運搬(-2)、デパートを後にしてMSへと戻る(-1)】
【位置:U-22(市街・開閉式ドーム球場)】
【残り行動値:1】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、右マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:雨でびしょ濡れ】
【武装:ビームサーベル×1、左腕ビームシールド】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx4、軍服、
      アイソトニック系飲料1.5L×1、携行食糧1週間分、救急箱一式)】
【方針:火器の確保、後1回の定期放送が流れるまでニース・エルネージュを守ってやる……つもりだったけど】
【同盟:なし】
91リトラな=クロームうェる ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/10(金) 15:31:00 ID:???
>>79-84
何故、勝者が地に伏している―――?

何故、敗者である私の両の脚は大地を踏みしめている―――?

敗者であるリトラを見下ろし、その刃で以って裁定を下すべき黄色い巨人は、
天の慟哭のなか、地にその身を横たえていた。
そのモノ・アイは、すでに光灯さず。
その身には、右袈裟に斬りおろされた深き創が刻まれていた。
創からほとばしるスパークは、間も無くその身が炎に消ゆる事のあかし。
黄色い巨人の亡骸の傍ら、地に伏せる男の姿を目の当たりにした時―――

リトラは、駆け出していた。いや―――駆け出そうと、した。

「勝ったのならばっ………!?」

だが、その両の脚は空しく地に滑り、リトラは濡れたアスファルトに、無様にも倒れ伏す。

本能が、そうさせたのか。
リトラの両の脚は―――踏み出す事を、拒んでいた。

リトラは、自らの左腕が、いつのまにかあるものを掴んでいた事に気がついた。
それは、一枚の布切れ。
激戦のさなか解かれるまで、リトラの銀の髪を覆っていた、バンダナであった。

―――“クローム”、てめえよう、何か、勘違いしてやがらねえか?

戦場の悪鬼共の声が、頭にひびく。
修羅の呪縛より、容易く貴様を逃さぬとでも言わんばかりに。

―――勝ったの、負けただのよう。
お行儀の良い決闘とは、訳が違うんだぜ?
そんなもんじゃ、決まりゃしねえのさ。

―――忘れんじゃねえぜ?
俺ら、基本的に屑だからよう。“あいつら”とはよう、違うのよ。
ぶっ殺し、生き残る。それだけが、俺らの戦場での根源的なルールなのよ。

「……黙れよ……私が今相手をしているのは、お前じゃない……」

地を掻き、立ち上がろうともがく。

「ハロルド=P=アンダーソンッ!」

己に勝った筈の相手の名を叫び―――手を、伸ばす。

とどかない。

その手が掴もうとするものはあまりにも遠い。

「貴方は、私に勝った筈だっ!
 勝ったのならば………!!」

生と死の壁によって隔たれた、それは。

―――あまりにも、遠い。
92リトラな=クロームうェる ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/10(金) 15:36:30 ID:???
「……貴方は、帰らねばならぬ筈だっ!
 その為に、私に勝ったのではなかったのかっ!」

手を、伸ばす。伸ばした手が、空を切る。
伸ばした手の向こうには、彼の護ろうとした、尊いもの。

男の、夫の、父親の―――腕に抱かれた“それ”こそ―――

―――カカカッ、無理だよ、おめえよう。
おめえはちゃーんと、解ってるんだ。
忘れんじゃねえぜ?
お前も俺らと同じ、屑だって事……忘れんじゃねえぜ?

「知っているッ!私は、リトラ=クロームだっ!
 だがな、あれは―――ハロルド=P=アンダーソンなん………!?」

と、黄色い巨人の身より迸るスパークが輝きを増したかのように見え。
リトラは反射的に、青き闘士の地に投げ出された右腕に、身を潜り込ませていた。
地を掻き、踏み出せぬ筈の脚は―――リトラの意志には従わず、ただ本能のみに忠実に、従っていた。

―――カカカカカカッ……なあ、無理だったろう?

あ……あ……だが…私は………この手に掴もうとしたものこそ――――

【行動 : ディジェの右腕に身を潜り込ませる(-1) 残3 】
【位置/場所 : D-12/基地 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――停止 】
【パイロット状況 : 額に怪我 銀の髪に混じる血は雨によって流されつつある 濡れる全身 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト バンダナ 煙草数箱  】
【方針 : ―――な・ぜ・だッ! 】

>>91>>79-81に対してのレスです。スレ汚し申し訳ないです。
93ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/10(金) 18:01:11 ID:???
>>75-79
思念が、消えた。
「おい。おいッ!返事をしろ!」
返信無し。最後に・・・最期に聞こえた通信内容も、クルルに俺を頼って逃げろとそう伝える物。それらが示すのはただ一つの事象。
「ぐっ・・・!」
馬鹿。なんであんな無謀な事をしたんだ。他人のために自分を犠牲にするなんて、馬鹿のすることじゃないか・・・!

―――じゃあおまえはなんだ?
―――「自分がいれば妹が不幸になる」
―――そんなことを考えて、まだ小学校も出ていない身で一人で家を出ていった馬鹿はどこの誰だ?

そう。自分を犠牲にしてまで守りたい何かがある。
そしてそれを守るために戦う。それは決して悪いことではない。
それは自分が一番よく知っているはず。
「そう・・・だな」
馬鹿でも・・・あの人は立派な人だ。例え、どんな下らない理由でも。
「こういう時、どうすればいいんだっけ・・・」
俺は誰かを弔う方法を知らない。だって、仲間は戦死より処分される奴のほうが多かったから。
少し考えて・・・思いついた。一応軍人である俺の立場からすれば、すぐ思いついて然るべきものだ。
「敬礼なんて、自分の意志でやったことないけどさ」
アロンソさん、俺はあんたを知らない。ジオンが何かすら知らない。
せめてハイスクールに行っていれば分かったんだろうが。
だけど。もしあなたのような大人がたくさんいるなら、きっと立派な何かだったんだろう。

初めて、自分の意志で、大人に向かって敬礼した。

「・・・ん?」
何かが俺を呼んだような気がして、後ろにZ+を振り向かせた。
そこに落ちていたのは、何の変哲もない2連装ビームガン。だけど、俺には分かった。
「ああ。あなたが置いていった物か。了解、もらってくよ」
できるだけ敬意をこめて、大切に回収する。
俺は泣かない。泣く権利はない。だって、俺はあの人に会ったことすらないんだから。
落ち込んでなんかいられない。生き残らなきゃ。俺にはまだやることがある。
「自分で首を突っ込んだんだ。後悔は後でするさ」
通信回線を開く。相手はもちろん。
「クルル。聞いただろ?とりあえずこっちの艦に着艦してくれると助かる。
 君なら俺に敵意は無いって分かるはずだ。ニュータイプ・・・なんだろ?
 自己紹介も兼ねて言っておくと、俺もお仲間さ」
あくまで冷静に話す。
ニュータイプは「心の同調」という手段を使っている、と以前研究者から聞いた。
なるほど。だから、他人の感情に引きずられる。他人の死に感応する。仲間同士では口を開かずに会話できる。
なら。俺は冷静でいないと。俺がアロンソさんの死に引きずられれば、それはクルルも同時に引きずらせてしまうという事なのだから。
小さい女の子が悲しむ姿を見るのは・・・もう嫌だ。
「仇を取ろうなんて、今はするな。あの人の死を、無駄にするな。あの人の遺した想いが分かるだろ?」

そう。君はここで逃げなきゃいけない。約束だから。
もし赤目ガンダムがあの人が遺した想いも、未だクルルを守ろうとする屍さえ、潰して迫ってくるのなら。

例え化け物ニュータイプであろうと、本物の死神であろうと、奴を滅ぼすのは俺の役目だ。
94ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/10(金) 18:01:51 ID:???
【行動:敬礼(0)敬意をこめて拾う(0)20番に通信(1)】
【位置:P−22、森林】
【残り行動値:3p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント、120mmマシンガン(全て新品同然)
    予備 クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)二連装ビームガン(取り付けしていない)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:冷静】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、ザンスカール製ノーマルスーツ、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml×2】
【行動方針:クルル救出・撤退or赤目ガンダムの存在をこの世から抹消】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
95ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/10(金) 18:36:04 ID:???
訂正。移動しないで待ってたらただの臆病者じゃん・・・。
【行動:敬礼(0)敬意をこめて拾う(0)20番に通信(1)移動・P−22→P−23(1)】
【位置:P−23、道】
【残り行動値:2p】
96ジェンセン・スティール:2005/06/10(金) 20:48:26 ID:???
 鉄条網を踏み破り、基地に入る。MS地雷の類がないかどうか、慎重に
歩を進めながら。俺は後発組だ。もうこの基地を訪れているやつがいるかも
しれねえ・・・・・・
 慎重に慎重を期して、俺は基地へと侵入していく。
 ハッチを開いた。
 
 何かが、鼻をつく。硝煙の、香り。
 戦いが、どこかで起こっているのだろう。

 ・・・・・・どいつも、こいつも。死んでいくのだろう。
 そして、いずれはおれも。
 
 そして、俺は基地の格納庫に足を踏み入れた。MSをコンテナの陰に隠蔽し、
捜索を開始する・・・・・・
【行動;w13→w14(1p消費)
    MS隠蔽(1p消費)
    捜索活動(2p消費)
    残りポイント、0】
【位置:w14基地】
【機体状況:ハイザック・正常】
【パイロット状況:好調好調っ】
【武装:ヒートホーク・ビームサーベル・ミサイルポッド(注・非装備状態)】
【所持品:ディパック(コッペパン×1 食料セット3日分 ペットボトル(水入り)×2
     エレキギター、自作治療用セット×1、自作栄養剤セット29回分)】
【方針:準備その1、完了。さて、武器の仕入れに入るか】


97キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/10(金) 21:56:11 ID:???
日も落ち月の光も黒雲が空を支配している為届かず
ただ雨という涙を流し空が泣いていた。

「少々時間をかけてしまいましたね。
 ですが、良い時間を過ごさせていただきましたよ
 ―――――――――――――マサヤさん。」

誰に語りかけているのか、灯台から彼の眠った場所を見下ろしていた。

―――――――――――――数時間前―――――――――――――――――

斬りかかるGキャノンに向かってGP02が渾身の一撃を
繰り出そうとするが、彼の意思とは裏腹にGP02の膝が砕け
無惨にもその一撃がGキャノンに届くことは無かった。

「至福の時間をどうもありがとうございました。
 貴方は十分私を満足させてくださいました敬意を持って
 お送りさせてさし上げます、御逝きなさい。」

とても丁寧な落ちついた口調と同時にビームソードアックスの
エネルギーが巨人を両断し、最後に頭上からサーベルが突き刺さる。
一瞬、時が止まったかのように雨音以外の音が止み
二本の刃を戻したGキャノンが、その場を離れた瞬間
時が再び轟音と共に動き出す。

爆発したMSの残骸が炎上しているが雨がすぐに
それを、治めてくれるだろう。

――――――――――――あの時は空は哀しんでくれなかったのだろうか?

仕事から帰って来た時には、みんなの家が炎に包まれていた。
誰の陰謀なのだろうか?何の為にこの家を焼いたのだろうか?
子供達には罪は無かったはすだと焼け跡となった場所で
黒い塊に変わり果てた子供だったモノを抱えて悔やむ
数の足りない墓の前で―――――――――――――。

―――――――――――現在――――――――――――――――

灯台内部で大きなディスプレイの画面には
この島の地図と、各地に散らばっている参加者の位置が記されている。
その中でも若干11歳のククルという名の少女。
キリトは複雑な思いでその画面を見ていた。

(どちらにしても、困ったことには変わりないですね。)

キリトはその場に腰を下ろし、まだ降り止むことの無い
空の涙を眺めながら、食事と休息を取る。

「食料を調達するのをまたすっかり忘れてましたね。」

支給された最後のパンを口にした後、闇に意識を沈めた。
98キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/10(金) 21:57:25 ID:???
【行動:O−18→N−18移動(-1)MSを降り灯台へ入る(-1) 
    レーダーを使う(-1)食事と休息(-1)】
【残り行動値:0】
【位置:N−18】
【機体状況:Gキャノン・頭部消滅】
【武装:ビームサーベル×2、 肩部130mm4連装マシンキャノン×2(残弾90%)
    腕部ダブルビームガン×2 ビームソードアックス(ソード・アックス・ピックの3形態)
     ビームショットライフル(EN80%) 6連装ミサイルポット×6】
【所持品:ディパック 水1g1本 首輪 
      レイピア×2 グラサン数個 懐中時計 お守り】
【行動方針:とりあえず休みましょうか・・・(休)
      また食料調達を忘れていました・・・(困)】
99ブレイム ◆TjmPhqaoLQ :2005/06/10(金) 22:57:28 ID:???
『その質問、私でよければ伺います。
 ええと、その……昔、そういう研究所にいましたから。

 ……その前にもうひとつ聞いておくことがあります。
 あなたはニュータイプをどのように捉えているんですか?
 その口振りだとニュータイプに何か確信のようなものがあるみたいですけど』
「ふは、はははははは、あははははははっ!」
まさか、こんなに早く目的の人物が見つかるとは。
彼女はそういう研究所にいた。
それは、彼女が強化人間だということに他ならない。
いや、もしかしたら純粋にNTであることもあるであろう。
だが、オーガスタ研究所ではNTは入ってきたきり、研究所から出てくることはない。
このあたりについては、恐らく他の研究機関もさほど変わらないはずだ。
つまり、純粋なNTであることはほぼありえない。
私は、歓喜のあまりに笑い声を発していた。
「はぁっ、はぁっ。いや、失敬。ついつい取り乱してしまってね。
 質問についてだがね、NTの捉え方?そうだな・・・
 
 私の個人的なNT観ではね、NTとは宇宙に生活圏を広げた人類が、宇宙に適応するために生み出された
 変異種にして、進化種だと私は思っているのだよ。
 この広大な宇宙で、遠いところにばらばらに散らばってしまう人類が、その開きすぎた距離を少しでも縮めるために、
 感受性を高めた人類。それが私のNTについての考え方だ。
 
 それと、これはNT観とは若干違うのだが、私はまだ人類にはNTの出現という進化では物足りない。
 もっともっとそれ以上の進化が必要だと思うのだよ。
 荒れていく地球環境。コロニーも、製作や、維持などには地球の資源や鉱山惑星の資源が必要だ。
 それもいつまで持つかどうか・・・。戦争の火種もなくならん。
 このままでは、数十年後には、人類の存亡の危機が訪れると考えているのだよ。
 私は、その危機を回避するために、地球を中心としたライフスペースをもっと広げなければいけないとかんがえているのだよ。
 そのためには、単なる感受性が強い人間では役不足だと私は思っている。
 NTの特性を併せ持ち、さらに強靭な肉体を持ってあらゆる環境に適応できる人類が必要だ。
 だが、私はその進化が起こる前に、人類は滅亡してしまうのではないかと考えている。
 人工的に進化を補足しなければ、我々人類の未来はない。
 そう考えて、私は、君のような人間を作っているのだよ。アルマ君。
 
 さて、改めて自己紹介させてもらおう。 
 私はブレイム=オリディス。オーガスタ研究所の、強化人間育成部門に所属している人間だ。
 私の目的は、先ほど言ったとおり、新人類を誕生させることだ。
 今まで、私は強化人間を育成してきたが、君のようなタイプは二人目・・・嫌、初めてだな。
 君にはいろいろ聞かせてほしいことがある。
 まず、はじめに聞かせてもらうが、君を強化した研究所はどこかね?」
もはや、アルマが何を考えていても関係ない。
私は、私の欲求にしたがって、彼女の質問に答え、そして、彼女にこちらの質問の回答を求めた。

【行動:アルマと通信継続中(0)】
【位置:I-13】【行動値残り:4】
【機体状況: V2アサルトバスターガンダム;異常なし】
【パイロット状況:異常なし】
【武装:頭部バルカン砲×2 肩部メガ・ビーム・キャノン 肩部スプレー・ビーム・ポッド 
    腰部ヴェスバー×2 ビーム・サーベル×2 光の翼×2】
【所持品:ディパック《中には 水(2リットルペット満タン)×2 コッペパン はちみつ MOディスク 薬箱 にぼし一袋》 ディパックはνガンダム内に放置】
【方針:《強化人間》アルマについて知りたい。それこそ何から何まで。】

100ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/11(土) 00:40:04 ID:???
>>91-92

誰かに名前を呼ばれたような気がした。
誰かに呼びかけられたような気がした。
でもそれが誰だかわからなかった。
その呼びかけには応えられなかった。

「……………あ……………」

銀色の輝きが消えてしまった。その女性の姿が見えなくなった。
どうしてかは分からない。とにかく、その姿はハロルドの視界から消えてしまった。

「行って………しまった…………のか………」

残念だった。少し悲しかった。少しだけ寂しかった。
ちゃんと会いたかった。ちゃんと会って話をしたかった。
失礼のないように自己紹介した後に、その名前を聞きたかった。

名前も知らない女性と会って話をしたいと思うのも、自分にしては妙な話だったが。

「……仕方……ない……か」

何か都合があって行かなければならなかったのか、
あるいは自分と話しているような場合ではなかったのかも知れない。
向こうにも向こうの都合があるだろうし、
そもそもあんなに素敵な女性が積極的に自分と話そうとしてくれると考えるほうがおこがましいのかもしれなかった。
そう考えれば―――少し凹んでしまいそうになるけども―――自分としては納得してしまえた。
それがハロルドだった。ハロルドという人間だった。

「こんな……雨だ……し……なあ…………外……で……立ち話……する……のも……なあ……」

血と雨に濡れたその表情に、苦笑らしい表情が浮かぶ。
その頬を伝って流れるのは血の混じった雨粒だけなのか、他にも流れているものがあるのか、それは分からない。
小刻みに肩を震わす男の姿を、倒れた巨人の身体から零れたひときわ大きいスパークが一瞬だけ照らし出す。
ぬいぐるみを離そうとしないその姿が、ほんの少しの間だけ闇の中に浮かび上がった。
雨に溺れたアスファルトの上に横たわる、力を使い果たした男の姿を。

その時が、訪れようとしていた。

「それ……じゃ……あ……帰る……か……」

一つ息をつくと、ハロルドは仰向けになっていたその身体をのろのろと動かした。
いつもの何十倍もの時間と体力を費やして、何とかうつぶせの姿勢をとった。

「キャシーが……待って……る……し……な……」

左腕ですっかり水を吸って重くなったぬいぐるみを胸に抱いて。

「ジェニーが……遅いって……怒って……いる……だろう……し……な……」

震える右腕を精一杯伸ばして、指が曲がらなくなりつつあるその手でアスファルトをつかんで。

「早く……帰ら……ない……と……」

ハロルドは伸ばした腕を渾身の力をこめて縮めて、全身の筋肉をどうにか動かして、
ずるずると身体を引きずりながら前に進み始めた。
ろくに前も見えない、降りしきる雨で一面ごく浅い池と化した基地の敷地の上を這いずって、
少しずつ前へと進もうとした。
101ハロルド=P=アンダーソン ◆JrvqT8J/bc :2005/06/11(土) 00:40:51 ID:???
「パーティー……に……遅れ……て……しまう……し……な……」


自分が何処へ向かって進んでいるかは分からない。
自分の家がどの方向にあるのかも分からない。
何処へ向かえば家にたどり着くのかも分からない。
何処へどれだけ進めば妻と娘に会えるのかも分からない。

それでもハロルドは前に進み続けた。前に進もうとした。
ここに留まっていては、妻と娘に会うことは出来なかったから。
前に進まなければ、家に帰ることは出来なかったから。

「パパは……今から……帰る……からな…………
 もう少しだけ……待って………いて…………くれ………………よ…………な…………………………」

苛立つほどにのろのろと、哀れまれるほどに遅々とした動きで、ハロルドは何処かへ向かおうとした。
自分が望む場所に帰ろうとした。自分が愛して、自分を愛してくれる存在が待っているはずの場所に。

「……ジェニー……キャシー……パパは……パ……パ…………は…………………………」


思うままになろうとしない腕を更に伸ばし、重く沈もうとする身体をもう一度前に進めようとしたとき。

ズサの融合炉が限界を迎えた。その脚部ミサイルランチャーに火が回った。
地に伏した巨人が断末魔の悲鳴を上げて、その身体から不吉な光をばら撒いて―――




「……………か…………え…………る……………ヵ…………」





爆発と轟音が全てを飲み込んだ。巨大な火球が何もかも包み込んだ。
闇の中に火柱が上がり、黒雲に向けて黒煙が吸い込まれていく。

降り注ぐ雨粒に混じって、かつてモビルスーツだったものの欠片が周囲に降り注ぎ始めた。



アスファルト上に固い音を立てて無数の金属片が転がる中、
一つだけ軽い音を立てて転がったものがあった。
あちこち焼け焦げ、黒い汚れが染み付き、ところどころ引き裂かれたり引きちぎられたりして
原型を失いかけているそれの一部には、ほんの少しだけ茶色に輝く部分が残っていた。
その少しくびれた部分には、リボンのようにも見える何かが巻かれていた。


それは何も語らずに、地面に転がったまま、雨に打たれ続けていた。


【死亡確認:生徒番号03番 ハロルド=P=アンダーソン】
【死因:機体の爆発による爆死】
【方針:家に帰る】
102アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/11(土) 01:38:47 ID:???
その部屋の中にも、誰もいなかった。
さっきからニースを探して方々の部屋を見て回っているのだが、なかなか見つからない。
デパートから出てきた様子からしても、ただ事じゃないのは分かる。
だけど本人に聞いてみない事には、俺の判断もできない。

…まあそうだからといって、ニースに無理強いをするわけにもいかない。
ここは軍隊ではなく、そしてニースは軍人ではない。
話したくないのなら、それでもいい。
それがニースの意志ならそれを尊重するのもまた、仲間としての役割というものだろう。

「このフロアには…いないか…」
全ての部屋を見終えて呟き、上への階段を登る。
正直、ニースがまだここにいるのか、不安な部分もある。
ここに入ったように見せかけて裏口から出て行ったなら、もう探し出すのは不可能に近い。
ただ、そこまでして俺から逃げなきゃいけないような理由もさして見当たらないし、俺と
してはデパートの中で何かがあったと、そう予想してはいる。
もしも逃げる理由が俺にあったとしたなら、それはそれできちんと理由を聞いてみたい気がするが。

次のフロアーに来た。
また1つ1つ部屋を見ていくのは正直面倒くさいけど、ここで中途半端にして戻るのはもっと嫌だ。
「ニース、いるかい?」
「ニースー。いたら返事してくれ」
「ニース。ここにいるのか?」
ドアを開け、声を掛け、またドアを開け、声を掛ける。

そして暫くした頃。
いくつ目かのハズレの部屋のドアを閉めた時、俺の耳に微かに犬の声のようなものが聞こえた。
さっと、全ての神経を耳に集中して、じっと待つ。
(…聞こえた!…場所は……あそこだ…!)
今閉めたドアから3つ隣の部屋…。
あそこから、確かに犬の声が聞こえた。

すぐさまドアを開け、中に入る。
「ニース。ここにいるのか?一体どうし…た…?」
最後まで言葉を出す事なく、俺は固まった。
確かに中にニースはいた。
だけど…彼女の格好は…まあその、何て言うか。

想定範囲外の出来事に、俺の思考は一時中断を余儀なくされたのだった。

【行動:10番への回線継続(0)ホテル内を探す(−2)思考中断(0)】
【残り行動値:2p】
【位置:U-22】
【機体状況:異常なし】
【参加者状況:異常なし】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン、ビームローター
    ビームピストル×2(75%)】
【所持品:ディパック、水2?入り2本、コッペパン2個、お守り、ペンライト、ポータブルプレイヤー】
【行動方針:休む前に腹ごしらえ…の前にニースを探す】
【仲間:クラウディア、ニース、(レベッカ)】
103リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/11(土) 12:44:09 ID:???
>>100-101
天の慟哭のなか、轟音と共に全てが紅く照らされ、かけがえの無い一つの何かが失われた。
地に投げ出された巨大な腕の陰、リトラは膝を抱え、何もかもを舐め尽そうとする炎の舌より逃れていた。

降りそそぐ破片が青い闘士の身を打つ音が、リトラの耳にひびく。
リトラは虚ろな瞳のまま、ただ左手に握ったバンダナを強く、強く、握り締めるのみだった。

―――牙は、折れていた。それは、断たれていた。
強大なる戦士の手によって。
偉大なる夫であり、父親である、ハロルド=P=アンダーソンの手によって。
“リトラ=クローム”は、殺されていた―――

「……………」

数分か、数刻かの時が過ぎ、ただ雨に身を打たれるに任せていたリトラは顔をあげ、
青い闘士の腕の陰より、その身を立ち上がらせ、黄色い巨人へと顔を向ける。
虚ろなグレーの瞳に映ったものは。
黄色い装甲の破片が散らばるなか、墓標のように身を横たえる、黄色い巨人の下半身だった。

……男の姿は、見えない。
それは、失われてしまった。

それは、踏み躙るべき者ではなかった―――

―――てめえ、まだ解らねえのかよう。
奴は刃を手にした。てめえをブッ殺す為にだ。
てめえのやる事といったら、ブッ殺し返し、踏み躙るだけだろうが。
“クローム”よう……てめえが何十回とやってきた事だろうがよう。

「だが、これが……結果だ……この気持ちこそが……」

―――カカカカカッ……!結果だと!?そんなものに意味はねえ!
そんなモンを見ていたら、オレらは生きちゃいられねえんだよ!
どうせロクな死に方はしねえと決まっているんだ、オレらはただ、今を生きるのみだろうが!
ブッ殺し、踏み躙り、生命を喰らって糧とする……それがオレらの生き様の全てだ!
それ以外にゃ何もねえ!
あるとすれば―――小汚ねえ寝ぐらに戻りカッくらう酒と………

「―――うるさいな」

呟き、破片散らばる戦場跡へと踏み出す。
と、踏み出した先に、なにか黒ずんだ塊のようなものが転がっている事に気づく。
歩みが僅かに速まり、リトラは地に転がるソレに手を伸ばす。

それは、幾ら手を伸ばしても届かなかった物だった。
黒ずみ、千切れかけてようやく―――それは、リトラの手に掴まれた。
104リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/11(土) 12:47:49 ID:???
それは、ハロルド=P=アンダーソンの想いの結晶。
リトラは拾い上げたぬいぐるみのクマを抱き、すでに夜が白みはじめている天を見上げた。

この空の向こう―――別の空のもと。
この想いの結晶を待ち望む者こそ―――

「……………」

リトラは、クマを抱きしめた。つよく、つよく、抱きしめた。
その瞳の奥底に―――微かに光を灯らせつつ。

「―――そうだ」

ふと、何かを思い至ったかのように、口を開くリトラ。

「お前の事を、『ハロ』と名づけよう。
 ハロルドだから、ハロ。
 ……なかなかいい名じゃないか」

微かに微笑みながらそう口にした時、ふと、赤い闘士の姿が目に留まった。

「―――そういえば、“約束”があったな」

視線の先に小さく映る赤い闘士を見つめるリトラの眼には、かつての鋭さは見えない。

―――地に身を横たえる青き闘士のモノ・アイが微かにひかり、そんな女を見つめていた。

【行動 : ぬいぐるみのクマを拾う、『ハロ』と命名(-1) 残3 】
【位置/場所 : D-12/基地 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――鼓動? 】
【パイロット状況 : 額に怪我 濡れる全身 そのグレーの瞳は虚ろに揺れる、その奥には微かな光 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト 煙草数箱 『バンダナ』 クマの『ハロ』 】
【方針 : そうだ、“約束”があったな――― 】
105ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/11(土) 14:19:48 ID:???
部屋の外の気配に最初に気づいたのは、ベッドの脇に座っていたハスキー犬だった。
しきりにドアの方を気にして、うろうろしはじめる。
Tシャツを着てベッドに腰掛けていたニースも、ハスキー犬の様子に気づき、その隣にいく。

「…どうしたの?向こうに、何かあるの?」

ハスキー犬に話しかけるニースの耳に、ドアノブが回る音が聞こえた。
ハッとして顔を上げるニース。

「ニース。ここにいるのか?一体どうし…た…?」

ゆっくり開いたドアの向こうにいた人。
アルバート=パーシング。
初めてニースに笑ってくれた、シャッコーのパイロット。
あの笑顔は、今もニースの記憶に鮮明に残っている。
モニター越しでなく、実際に会って話したいと願っていた人が、今目の前にいる。

アルバートは動きが固まっている。
その理由は全面的にニースの格好にあるのだが、今のニースにそんな事が分かるはずもなかった。
ニースの頭の中にあったのは、アルバートが目の前にいる驚きと、彼が自分を探しに来て
くれた事への嬉しさ。
自分と同じようにずぶ濡れになった姿。
雨の中を探してくれたアルバートの行動が、ニースの胸を熱くさせていた。

「アルバート…さん」

1歩踏み出す。
トクンと、心臓の音が高鳴る。
もう1歩踏み出す。
トクントクンと、心臓の音が早まる。

(どうかこれが、夢じゃありませんように。
砂漠の蜃気楼みたいに、消えてしまいませんように)

2歩、3歩と足を早めて近づいていく。
彼が消えてしまう前に、捕まえてしまいたいから。
彼が現実である事を、この手で確かめたいから。

「アルバートさん!」

最後は走り込むように、アルバートの身体に抱きついた。
しっかりと、一杯の力を込めて、その身体を抱く。

また、涙が溢れてくる。

【行動:2番9番に回線継続(0)アルバートに抱きつく(−1)】
【残り行動値:3P】
【パイロット状況:異常なし】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、アルバートさん!】
106レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/11(土) 16:19:41 ID:???
……クシュンッ

「寒っ」

馬鹿な真似をするのではなかったと若干の後悔を交えつつ、コックピットの中で身を縮めつつレベッカは呟いた。
直に日の出が訪れる時刻。
良い子は未だベッドの中にて安眠中で、健全な苦学生はしょぼついた目を擦りながら新聞配達に精を出す頃だろう。
コンビニエンスストアの夜勤の店員は、そろそろ眠気と戦い始める時間か。

夜は眠るもの。
昼は活動するもの。
人間とは大抵、そのようにできている。

ならば、その逆を行く今の自分は何なのだろうかと、自嘲気味の問いが少女の心に湧き上がってくる。
オマケにこれからやろうとする事を考えれば――

――吸血鬼だね、これじゃ。

自嘲から苦笑へと笑みの質は変わり、海色の双眸はディパックへと向けられた。
中から先程調達してきた真新しい下着と、軍服入りと書かれた紙袋を取り出して膝元に置く。
次いで視線は外へと向かう。
視界に映るのは、球場の観客席。
勿論観客は一人もおらず、遠目に見てもゴミひとつ落ちていない、死んだような光景が広がっている。
何時の時代の施設かは分からなかったが、何時の時代であってもさして設備は変わらないだろうと踏んで彼女は外に出た。
雨に濡れぬよう、屋根のある場所を選んで歩き、向かった先は……。

*  *  *  *  *
107レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/11(土) 16:24:14 ID:???
球場の地下、ロッカールームの更に奥。
籠の中に綺麗に折りたたまれたブラウスとスカート、そしてライトブルーの下着一式。
どれもまだ湿り気と、先程まで身に着けられていた証としての温もりを残していた。
人気の無い空間に小さく響くのは水の流れる音だ。
その音は、曇りガラスのドアの向こうから。
シャワールーム。
部屋一杯に立ち込める湯気が白くたゆたう中、その湯気よりも更に白い肌の少女が熱い飛沫を肌に浴びていた。

飛沫は滴となって髪を濡らし、顎を伝う。
うなじを流れ、鎖骨の窪みに溜まって零れる。
少女の動きに応じて時折揺れる、豊かに実った白い果実の紅の頂へと至って落ちていく。
或いは果実の間から腹部のなだらかな曲線へと至り、慎ましやかな臍のくぼみを通って下腹部の茂みへと流れていく。
背筋を伝って引き締まった尻へと至り、太腿から足先へと駆け下りていく。
少女の全身を優しく撫でるように、次から次へと熱い滴は降り注いでいった。

雪のように色素の薄い肌が、熱いシャワーで薄桃色へと火照っていく様は酷く淫ら。
朱に染まった唇の間から時折漏れる吐息は、体温に合わせて熱を帯びる。
瑞々しく扇情的な曲線を描いた一糸纏わぬ若き肢体が、さながら妖精のような可憐さと共に其処にあるのだ。
もしもその姿を目に出来た幸運な男がいたならば。
黒き欲情が滾るのを押さえる術を、きっと彼は持ち得なかっただろう――

その身に刻まれた傷跡さえ無ければ。

左の乳房の先端から肩を伝って左手首に至るまでの部位が、白からくすんだ灰色へと変色している。
右手の白い指が柔らかな乳房を軽く押し込み、押し返してくる弾力を指先に感じながら変色した部分をなぞっていく。

「それでもボクは、生きたいんだ……」

誰かに向かって呟く少女の、まるで石のような、自然ならざる奇妙な色合いの肌。
それは皮膚移植を行なっても隠し切れなかった、宇宙線被曝の痕跡だった。
細胞がゆっくりと変質を続け、やがては心臓に至って命を奪う――それはレベッカ・テスタロッサに掛けられた呪いだった。

*  *  *  *  *
108レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/11(土) 16:27:52 ID:???
何故か用意されていた清潔なタオルをパックから出して髪を拭い、体の水気を拭き取ってほっと一息。

「うわ……」

レースの模様の美しい下着を手にとって僅かに赤面する。
入念に施された細工は華麗そのもの。
先刻まで身に着けていたものとは、造形的な美しさは雲泥の差だ。

――サイズだけ見て適当に取ってきたらこれか……ボクには、ちょっと、ねぇ。

だが恥ずかしいからといって下着を身に着けないワケにもいくまい。
生憎とレベッカにはそのような趣味は無いのだから。
さりとて雨に濡れて使い物にならなくなった、古い下着に手を伸ばすわけにも行かず。
「仕方ないさ」と内心で呟き、観念してストラップに腕を通し、ホックを嵌めて下を履いた。

次いで紙袋を破き、中から軍服を取り出す。
出てきたのは、何処か中世の貴族を思わせるような、黒を貴重とした厚手の上着と、ややタイトなパンツ。
更にはブーツと白い手袋まで一式揃い、ご丁寧にレースのハンカチまで付いている。
彼女は知らないが、この一式は与えられたMSに合わせて用意されていたものだった。
即ちクロスボーン・バンガードにて制式採用された軍服であり、レベッカの生きた時代より十数年の歳月を経た後の世界の代物である。
いわば彼女にとっては時代の最先端、更にその先を行くファッションであるのだが――はっきり言って趣味ではない。
されどもう一度着替えを取りに行く為に、デパートまでストリーキングを行なうだけの度胸は持ち合わせておらず。
「仕方ないさ」とまたも呟き、レベッカはそれらに袖を通し始めたのだった。

――でも何でサイズがピッタリなんだろう……。

……深くは考えない事にした。
109レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/11(土) 16:30:06 ID:???
【行動:シャワーを浴びに行く(-1)、着替え(-1)、機体に戻る(-1)】
【位置:U-22(市街・開閉式ドーム球場・コックピット内)】
【残り行動値:1】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、
       右マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:シャワー浴びて(゚∀゚)さっぱり】
【武装:ビームサーベル×1、左腕ビームシールド】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx4、
      アイソトニック系飲料1.5L×1、携行食糧1週間分、救急箱一式)】
【服装:クロスボーン・バンガードの軍服】
【方針:火器の確保、後1回の定期放送が流れるまでニース・エルネージュを守ってやる……つもりだったけど】
【同盟:なし】
110クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/11(土) 17:50:22 ID:???
突き出したサーベルはガンダムの肩部を焼くのみだった。
寸前でガンダムは右側にステップし、コックピットへの直撃を避ける!?
コイツの動き…………化け物染みている!
やっぱり、ガンダムには勝てないというの!?

「!?」

ガンダムは、避けるだけではなくメタスに向かって攻撃を仕掛ける。
股下からサーベルで下から上へと斬りつける攻撃。
速い!

「っ!」

咄嗟にバックステップ。
反応が遅れていたら真っ二つにされるところだった。
ここは一旦体勢を立て直し――――!?
111クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/11(土) 17:51:10 ID:???
ガンダムがグフから離れた事でカメラから確認が出来るグフのコックピット。
手首を無くし、ガンダムを押さえつけていたソレの中で――――
バーニアの熱を浴びた戦士が、見えた。

「たい、た、た、大尉ぃぃぃぃぃ!!」

尻餅をつくグフのコックピットは開いていた。
浴びたバーニアの熱は、戦士の肌を蝕んでいく。
グフも、大尉も、もう…………ロクに動けないはず…………
なのに…………大尉のグフは、ガンダムに向かって突進をしていた。

「……伍長!
 この場は、ワシらの負けじゃ。こやつは、今のワシらには倒せん。
 何百回敗北を喫しようとも、一人でも生き延びれば、次に繋げられるんじゃ!
 間違っても全滅の憂き目だけは避けねばならん!
 ワシはそうやってずっと戦ってきた! 仲間の犠牲に耐えながら、ずっと!
 ――撤退するぞぃ!」

「大尉!」

確かに、この場はわたしたちの負けだけど。
確かに、このまま戦いを続けるのは無意味だけど。
確かに、撤退をするのが得策だけど!

「大尉、大尉!
 それでは、わたしが…………」

撤退なら、わたしが敵を食い止める…………!
大尉を、何としてでも生かさなけりゃ!
でも…………

「ワシが『しんがり』を務める。
 伍長はこの場から先に離れるんじゃ。一刻も早く、少しでも遠くへ。
 これは、上官としての……命令じゃ!」

「しかし、たい…………!」

言う前にグフはガンダムに抱きついていた。
大尉、そんな事をしたら…………!
ガンダムの攻撃を、バルカン砲をまともに…………!
112クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/11(土) 17:53:12 ID:???
「ワシが『しんがり』を務める。
 伍長はこの場から先に離れるんじゃ。一刻も早く、少しでも遠くへ。
 これは、上官としての……命令じゃ!」

サーベルがグフの装甲を焼く。
それでも…………グフはガンダムにしがみ付いていた。
こんな時でもわたしは大尉のその強さに惹かれた。
まともに動けない体、まともに動けないMSなのに…………
ガンダムに必死に喰らいつく、その姿。

「……ワシも、できたら、追いかけるわい。
 こやつを少しだけ足止めしたら、な。
 あのZプラスが助けてくれるそうじゃ。一緒に遠くへ逃げぃ」

言われて、ようやく気がついた。
モニターに映る新しい反応を見つける。
これが…………わたしを助けてくれる?
これが、わたしを助けてくれるなら…………大尉は?
大尉は、一体誰に…………

「もし、ワシが合流できずとも……伍長は、生き残れ。
 何があっても生き残れ。恥を晒しても屈辱を受けても生き残れ。
 何十年かかろうとも、諦めるな。
 ……ジオンの志を、伍長の次の世代へ、繋いでくれぃ」

「!!」

嫌!そんな言葉聞きたくない!
大尉、どうして…………?
大尉、一緒におにいちゃんを探してくれるんじゃなかったんですか?
大尉、一緒にジオンを復興させるんじゃなかったんですか?
大尉に、色んな事を教わりたかったのに。
おにいちゃんの為にお料理したかったから、大尉にお料理を教えてもらったり
一緒におはなししたり、おにいちゃんと大尉と川の字になって寝てみたり
色んな、色んな事がしたかったのに!!
大尉、死なないで!

「忘れないよう、メモしておくんじゃぞ?
 伍長に会えて、ワシは幸せじゃったy……………」

「大尉!!」

大尉の言葉は、最後まで聞けなかった。
バックパックの爆発が、大尉の最後の声を掻き消した。
爆煙に包まれ、見えなくなっていく大尉。
大尉、大尉、大尉…………

「大尉ぃぃぃぃぃぃぃ!!」
113クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/11(土) 17:55:46 ID:???
「クルル。聞いただろ?とりあえずこっちの艦に着艦してくれると助かる。
 君なら俺に敵意は無いって分かるはずだ。ニュータイプ・・・なんだろ?
 自己紹介も兼ねて言っておくと、俺もお仲間さ」

涙が出て、鼻水も出て、泣いている顔はぐしゃぐしゃで…………
きっと、わたしの顔はとっても醜かったと思う。
殺意なんてものは、沸いてこない。
ただ、酷く悲しい。酷く寒い。

「仇を取ろうなんて、今はするな。あの人の死を、無駄にするな。あの人の遺した想いが分かるだろ?」

「ひっ、くぅ………わかり、ました…………っうぅ
 そちらの………っか、艦に…………ちゃっか、んしま…………す」

声は途切れ途切れで、途中鼻水を啜る音が聞こえてしまったと思う。
でも、そんな事を気にする余裕は無くて。
わたしは、Zプラスの人の指示に素直に従っていた。
114クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/11(土) 17:58:13 ID:???
メタスを走らせ、素早く着艦させる。
コックピットから出て、思い切り声を上げて泣きたかった。
大尉、どうして…………
どうして、あなたが死ななければならなかったんですか?
あなたはわたしに優しくしてくれて…………
あなたはわたしを守ってくれて…………
あなたは…………

「あっ…………」

外に出ようとして、蹴躓く。
何かが足にあたった。

――――カン、カラン

金属音を立てて、外に飛び出すソレを目で追う。
…………わたしが、中身を全て食べてしまったお鍋。
大尉が、わたしに食べていいよって言ってくれた、お鍋。
駆け寄って、抱きしめる。

「大尉、大尉…………」

とってもおいしかった、シチュー。
大尉と一緒に食べたかった。
火を囲んで、一緒に…………

「大尉、大尉ぃ…………」

大尉の最後の言葉、ジオンの志を、わたしの次の世代に継ぐ…………
大尉、わかりました。
大尉、あなたが残してくれたジオンの志は…………わたしが必ず継ぎます。
わたしの次の世代へ…………そして、その次の世代にも。
大丈夫、メモなんて必要ありません。
わたしは、絶対に、大尉の意思を…………

「わたしが、絶対に…………ジオンの志を、継いでみせます
 だから、見ていてください…………」

そこに、いるんだよね?

「おじいちゃん…………」

ふっ、とわたしの意識が飛んだ。
強烈な死の波がわたしを襲った。
それは、二人の死。
二人とも、戦って、戦って、死んでいった。
その光景が、ぼんやりとビジョンとなって見えている中で…………
わたしは、静かに気絶した。
115クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/11(土) 18:00:42 ID:???
【行動:撤退(1) 移動P−23→P−22(1) 19番に通信(1) 着艦(1)】
【残り行動値:0P】
【パイロット状況:( -∀-)オジイチャン…………】
【位置:P-22】  
【機体状況:MSA-005メタス/やや装甲破損 左肩部アーマー一部破損】
【武装:アームビームガン×2(EN70%)、ビームサーベル×6、ビームローター】
【所持品:ディパック 水2g1本と半分 筆記用具一式、特殊トランシーバー×2(一対)鍋】
【メモ:『ここは地きゅう・おにいちゃんは地きゅうにいる・わたしはおにいちゃんをさがす
     きたいはメタス・アイテムは黒いきかいがふたつ・ぶきはそらとべてたてにもなる
     グフはおじいちゃん・ゲルググはおねえちゃん・アッシマーはおじちゃん・バウはいたい
     おじいちゃんは大いで偉い・大いは仲間・いたいのはわからない
     アッシマーはやらない・ゲルググつよい・大いつよい』】
【行動方針:何百回敗けても、必ず生き延びてジオンの志をわたしの次の世代へ】
116アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/11(土) 18:55:16 ID:???
俺の停止した思考を元に戻したのは、何かの柔らかい衝撃だった。
視線を下に落とすと、俺の腰にしっかりとしがみついたニースがいた。
…困った。
ニースは、力一杯俺にしがみついている。
当然密着した部分には…何て言うか、Tシャツ越しに柔らかい感触がある。
…色々な意味で困った。

「いやあの…ニース。喜んでくれるのは…」
とにかく心を落ち着けようとニースを離そうと試みたが、それはあっさりと失敗した。
俺の胸に押し付けられた、ニースの頭。
その胸と頭の隙間から、微かに嗚咽が漏れているのを聞いてしまったから。
どういう理由かは知らない。
だけどニースはこのホテルで1人、じっと悲しみに耐えていたのだ。
そのニースを引き離すのは、仲間として、男として失格のように思われた。

俺もこのままニースが泣き止むのを、ぼーっと突っ立って待つわけにもいかない。
ただ、こういう事態に遭遇した事が殆どないから、どう声をかければいいのか悩む。
(…孤児院にいた時…は…こうやって泣きついてきた子を…。
 ええと…どうやって慰めてたっけ?)
昔の記憶を辿りながら、少したどたどしい動きで左手をニースの背中に回してそっと
添えるように、痛くないように気をつけて抱く。
そして右手でニースの頭を撫でながら話す。
「…大丈夫、大丈夫だよニース。
 俺はここにいるから…。分かるだろう?
 ニースの気が済むまで、こうしていてあげるから…」
泣く子をあやす要領でゆっくりと話し、そのペースに合わせて撫でる手を動かす。

小さなニースの身体が、俺の腕の中でもっと小さく見える。
ニースはその小さな身体で、この過酷なプログラムを生きようとしている。
その生きるという人間として当たり前の行為の為に、ニースはどれだけ悩んだだろうか。
『俺はお前にMSの操縦を仕込んできた。
 それは、お前に強くあってほしかったからだ。
 大事な何かを、ずっと守れる男になってほしかったからだ』
父さんのあの言葉が蘇ってくる。
(大切な、何か、か)
ニースの頭を撫でながら、俺はその言葉を反復し続けていた。

【行動:10番への回線継続(0)ニースを慰める(−1)】
【残り行動値:1p】
【位置:U-22】
【機体状況:異常なし】
【参加者状況:異常なし】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン、ビームローター
    ビームピストル×2(75%)】
【所持品:ディパック、水2?入り2本、コッペパン2個、お守り、ペンライト、ポータブルプレイヤー】
【行動方針:休む前に腹ごしらえ…の前にニースを慰める】
【仲間:クラウディア、ニース、(レベッカ)】
117ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/11(土) 19:25:59 ID:???
>>113-114
クルルは・・・無事に着艦してくれた。・・・いや。
「無事とは・・・とても思えないな。心は大丈夫かな・・・?」
そう、精神面。
ニュータイプの弱点は精神面だ、というのは遠い昔に既に出された結論。
他人を深く知るからこそ、その精神は摩耗し、削れていく。
ニュータイプは心が壊れる可能性を、普通の人より多分に持つんだ。
もちろん彼女も。
―――そして、俺も。
「俺はとっくに慣れたと思ったけどな・・・」
彼女から伝わる悲しみが、否応なく俺に伝わってくる。
彼女につられて、俺まで・・・。
「・・・何やってる。感傷に浸ってどうする、ロイド」
赤目は俺に気付いていない様子だ。さっさと俺も退くべきだろう。
だが・・・それでも、最後に赤目に伝えておいた。
言葉よりも明確なものを。
俺という人間の、殺意のカタチを。

「クルル、開けてくれないか?」
接触回線で彼女に呼びかける。反応無し。・・・さっきより思念が弱くなった。
「・・・寝てるのか?」
コックピットを開ける。予想通り。
「ちょっと失礼・・・っと、やっぱ軽いな」
とりあえず彼女をメタスのコックピットから運び出して、寝室のベッドに寝かせる。
ついでに、脇にスポーツドリンクと走り書きを置いた。
『泣いた後喉乾いたなら、これを』
悲しいときは、まず思いっきり泣く。
そしてその事を考えないよう、やる事を見付ける。
それが、悲しいときの俺の対処法だ。
つまり―――今俺がやっているのはそれ。
ホワイトアークを離陸させる。目指すはジンペイとの待ち合わせ場所、灯台。
118ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/11(土) 19:26:38 ID:???
【行動:殺意伝達(0)移動・P−23→P−22(1)接触通信(0)着艦(1)クルルを運ぶ(1)ブリッジに移動(1)離陸(0)】
【位置:P−22、森林】
【残り行動値:0p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント、120mmマシンガン(全て新品同然)
    予備 クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)二連装ビームガン(取り付けしていない)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:少し悲しい】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、ザンスカール製ノーマルスーツ、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml×2】
【行動方針:撤退】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
【守る:20番・クルル=ヴァルデーン】
119ジェンセン・スティール:2005/06/11(土) 20:13:01 ID:???
 いろいろ探したが、携帯武装の類は結局見つからなかった。
 弾薬はいろいろある。そいつを加工し、トラップしかけて見(ケン)を決め込むのも
悪くはない。この基地の中で。 
 だが、そういうのはどうにも性に合わない・・・・・・
 死にに来たのに、昼寝しているだけというのはつまらん。
 別の区画も、探してみるか?
 いや・・・・・・倒して奪った方が、早いかね。
 ひとまず推進剤を補給、そしてコンテナの中に放り込みっぱなしだった
ミサイルポッドを装着する。
 さて・・・・・・敵の動向でも把握するとするかね。
 見つけたレーションとミネラルウォーターのペットボトルをデイバッグに放り込み。
 俺は灯台に向かうことにした。
 
【行動;飯(1p消費)
    兵装取り付け(1p消費)
    移動(w14基地→w15基地→w16道路→w17道路 2p消費)
    残りポイント、0】
【位置:w17道路】
【機体状況:ハイザック・正常】
【パイロット状況:好調好調っ】
【武装:ヒートホーク・ビームサーベル・ミサイルポッド】
【所持品:ディパック( 食料セット4日分 ペットボトル(水入り)×2
     エレキギター、自作治療用セット×1、自作栄養剤セット29回分)】
【方針:準備その1、完了。さて、武器の仕入れに入るか】
120ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/11(土) 22:21:17 ID:???
アルバートの胸に顔を押し当てて、声もなく嗚咽するニース。
ニースの人生で初めての、父親以外の男性の胸の中。
それは大きくて、雨に濡れていても温かい、ニースの心に安堵をもたらしてくれるものだった。
もっとアルバートの温かさを感じたい。
その思いが、より一層、アルバートの腰に回した手の力を強くさせる。

そして、そっとニースの背中にアルバートの手が回されて、優しく抱き締められる。

(あ…。アルバートさんが…あたしを…)

胸の鼓動が、また1つ大きく鳴った。
アルバートは右手でニースの髪を優しく撫で、そっと、優しく囁く。

「…大丈夫、大丈夫だよニース。
 俺はここにいるから…。分かるだろう?
 ニースの気が済むまで、こうしていてあげるから…」

その一言一言がニースの心に、そして身体に染み渡っていく。
ニースは声もなくただ頷き、アルバートの身体を抱き締め、その温かさに身を任せていた。

(あったかい…。男の人の…ううん、これがアルバートさんのあったかさなんだね…)

さっきまでの悲しみが薄れ、心が落ち着いてくると、だんだんニースが感じ取れるものが増えてきた。
アルバートの温かさ。
アルバートの胸の鼓動。
アルバートの息づかい。
今はその全てが自分の為にあると認識した時、ニースの身体に変化が起こった。

続く
121ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/11(土) 22:21:58 ID:???
身体が、熱くなってくる。
上辺の熱さではなく、芯からの、心の底から湧き出るような熱さ。
それはニースの唇に、胸に、あらゆる場所に熱を帯びさせていく。

(何、これ…?何…なの?あたしの身体…何でこんなに熱いの…!?)

突然の変化に戸惑うニース。
しかし、一度変化し始めた身体は、ニースの意思に反して加速していく。
女としてのニースが、アルバートを求めている。

だがニース自身はその事に気づかない。
初めての変化に戸惑い、身を任せながら、それでもそれを恐れるが故に、それから逃れようと
アルバートに強く抱きつく。
しかしその行為は、より一層ニースの中の女を刺激するだけだった。

「ぁ…あ…」

思わず声が漏れる。
もうニースの身体…いや肉体は、理性を保つ事も難しくなりつつあった。

「ア…ル…バート、さん…」

アルバートを呼ぶ。
濡れた声で。
アルバートを見つめる。
濡れた瞳で。

「あ…あた…あたし…。あたし…」

【行動:2番9番に回線継続(0)身体の変化(0)】
【残り行動値:3P】
【パイロット状況:異常なし】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、アルバート…さん】
122ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/11(土) 23:44:30 ID:???
切り上げられたサーベルは空を切った。
2の太刀3の太刀を浴びせるために体勢を立て直そうとするBDの前にグフが立ちはだかる。

       ど
「邪魔だ!退けぇぇぇ!」

何段階かに分けてグフが爆発する。
その爆炎はBDの中でも感じられた、まるで命の炎のように。
そして、機体の狂喜が引いて行く。ルイスの思考も元に戻りつつあった。


メタスが撤退して行く。
追うことは考えない。いや、考えられない。
ルイスの体力はもうすでに限界だった。先ほどの何回にもわたる無理な機動
長時間の覚醒状態による睡眠不足。
その疲れが一気にルイスを襲った。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、もう駄目だ。
 この近くに・・・街・・・・。取りあえずそこに行って休もう。ここは、危険だ・・・。」

ライフルを拾い上げ東へと向かって歩き出す白い巨人は雨に打たれて蒸気を出していた。
半ば居眠り運転の形で、東へ・・・東へ・・・・歩みは確実に市街地へと、進んで行く。
高層のビルが立ち並ぶ、そこにはルイスの良く見慣れたものが有った。

「あれは・・・・球場・・・か?」

バーニアを吹かして一気に球場の前へと飛んで行く。

「これで、休めるな・・・。」

ルイスはそれを求めていた。
ここにはシャワーもベッドも有る筈だ。
トレーナールームへ行けば医薬品も手に入るだろう。
今は取りあえず休みたい。休むならどこでも良かったが、心が常に求めていた場所へと入る前で
ルイスは雨の中倒れていた。


【行動:移動(−4)ぶっ倒れる(0)】
【残り行動値:0P】
【パイロット状況:全身びしょ濡れ・気絶(?)】
【位置:U―22】  
【機体状況:01番に対して通信回線継続 右肩アーマー破損・左肘関節部アブソーバー欠損・左肘から先の装甲及び内部破損 EXAM】
【武装:頭部60mmバルカン砲×2(残弾84%)、胸部60mmバルカン×2(残弾72%)、 ビームサーベル×2(散弾)】
【所持品:シガレットケース(葉巻10本)煙草4箱(51本) ライター パイロットジャケット 作業着  ボイスチェンジャー アサルトライフル予備マガジン×2 H&CUSP予備マガジン×1 パン×2 水2L 清涼飲料水4L    缶詰×5 塩1袋 下着類 】
【行動方針:――――】
123サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg :2005/06/11(土) 23:51:13 ID:???
一通り市街を探索し、栄養補助食品やビーフジャーキーなど、
かさばらない類の食料をバッグに詰めていく。
街中のあちこちにある車種の年代が明らかにバラバラなことや、
食料に付いている製造年月日――0091――には一瞬目を取られたが、

「……そういう演出、ってことかい? まさしく凍った街だが、随分お粗末だね……」

と誰が聞くでもなく呟き、味を確認すると受け流した。もはや驚き疲れたのもあるが。
他に睡眠用の毛布と包帯、それに大きな布を一枚。睡眠時に下に敷いて防熱に使うだけでなく、
手頃な棒さえあれば担架として扱えるようなものを選ぶ。
防寒具は特別回収せず、早々に街を去った。

「ふう。当座の心配はこれで無くなったわけだが、なぁ」

車の座席から、数刻前と変わらぬまま佇む機械の躯体を見上げる。
こうして1人で考える余裕を与えられた上で外に出て、また1つ確認したことがあった。

(やはり……MSのコクピットというものに少しづつ慣らされている。
 機体ではなく人間、一人でも生き残ればいい、日常から乖離した現象……一種のストレスを
 多くぶつけさせる状況。年齢・職種・経歴からは未だ見出せない無作為性。
 ピースはいくつもある……だが、うまく当てはまらない)

腕を組み瞑目する。可能ならば、やはりあんな鉄の箱などには戻らず
このまま思索に耽っていたいものであったが……

「それを許さないためのこの状況、か」

夜が明け、雨が止めば、また自分と他人を隔てていた壁は崩れる。
ならばまごまごはしていられない。

「やれやれ、またお世話になるとしますか……」

エレカを降り、荷物を抱え、足元を滑らせないよう何往復か、慎重にコクピットへと昇っていった。

【行動:市街探索(-2P) 移動(N-14→N-13)(-1P) 荷物運搬(-1P) 機体に乗る(0P)】
【位置:N-14/山地】
【残り行動値:0P】
【機体/状況:アッシマー/左腕部装甲に裂傷】
【生徒状況:左頬に赤み】
【武装:アインラッド(停止)】
【所持品:ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx3、携帯糧食x5)
     ウェストポーチ(ナイフx1、ペンライトx1、煙草x1、コンパス付腕時計、筆記用具 携帯糧食x3)
     ショルダーポーチ(ポラロイドカメラ一式) ライターx1 毛布 包帯 幅広の布】
【行動方針:1.情報の入手】
124ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/12(日) 00:21:16 ID:???
ホワイトアークは進む。約束の場所へと。だが・・・。
「くそっ、勘弁してくれ!」
先客がいた。5番、キリト=ヴァルリック。さっきの狂気の持ち主。
「ヘビーガンのそっくりさんだから、こっちの博物館行き決定MSよりは強いよな・・・ちくしょう!」
いくらなんでも、ヘビーガンのジェネレーター出力がゾロアットの40%以下なんてことはあり得ないだろう。
だが残念なことにZ+のジェネレーター出力はその程度である。
クルルのメタスも、ビームの威力を見る限りZ+と似たり寄ったりのようだし。いや下手すればそれ以下か?
それに奴は以前誰かと戦っていた。だが今は一人。つまり勝ち残っているんだ、ただ者じゃない。
おまけにクルルには休養が必要。となると、もし戦うとすれば俺一人・・・。
「駄目だ、全然駄目だ!」
機体も駄目。パイロットも駄目。人員も無い。
こうなる場合、同盟を提案するか、それとも待つかだが。
「戦闘の時あんな狂気出す奴なんて、一緒にいられるかっての」
となると、レーダーでのんびり観察して出ていってくれるのを待つしかない。
「俺が頑張らないとな。クルルをちゃんと守らないと」
握った拳に力を込める。あのじいさんの死を無駄にさせるわけにはいかないのだから。

―――この行動方針は、彼が考える自分のプログラムの参加理由と対立している事に、まだ彼は気付いていない。

【行動:移動・P−22→P−21→N−21(1.5)】
【位置:N−21、森林】
【残り行動値:2.5p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント、120mmマシンガン(全て新品同然)
    予備 クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)二連装ビームガン(取り付けしていない)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:異常なし】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、ザンスカール製ノーマルスーツ、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml×2】
【行動方針:待つ】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
【守る:20番・クルル=ヴァルデーン】
125アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/12(日) 00:32:10 ID:???
生き生きと力説を続ける男を前に、アルマは小さく溜め息をつく。
進化論に興味の無い彼女にとっては無駄な講釈でしかないのだ。
ついでに、普通の女子高生として過ごしてきた彼女は人類の滅亡などと言われてもピンと来ない。

「…………
 ニュータイプだって、人間なのに……

 う? ……あ?」

アルマから見て南東の方角から、彼女はふたつの叫びのようなものを感じ取った。
それは徐々に薄れ、混ざり合って空の彼方へと消えていく。
ほどなくして、西の方角から轟音と共に閃光がほとばしった。
その中に消え逝く生命のかたちを感じる。 ……昇っていく。

(生命が、みんな、消えて……死んでいく……。
 どうして殺し合いなんてしちゃうのよ……?)

アルマのテンションが下がる一方で、ブレイムのヒートアップはとどまるところを知らない。
異常を通り越して変質者に近付いているのではないかという疑念さえ抱かせるほどに。
まるでこちらを意に介さないようにまくし立てている。

(危険どころか、とんでもない変質者を呼び覚ました気分だわ……。
 ……最悪、かもね)
『……
 私の目的は、先ほど言ったとおり、新人類を誕生させることだ。
 今まで、私は強化人間を育成してきたが、君のようなタイプは二人目・・・嫌、初めてだな。
 君にはいろいろ聞かせてほしいことがある。
 まず、はじめに聞かせてもらうが、君を強化した研究所はどこかね?』

ようやく言葉が途切れた。
アルマは半分ほど聞き流していたが、大事なところはちゃんと聞き取っていたつもりだった。
新人類の誕生? 強化人間を使って? 強化人間は出来損ないの超人兵士でしかないのに。
アルマが生まれ、現在の年齢に育つまで、幾度も大きな事件や戦争が起こった。
その度、人類は平和の尊さや争いの意味を自分自身に問い掛けてきたはずだった。
人類は自分で自分を滅ぼすようなバカはやらない。 それほど愚かではない。
ニュータイプの存在こそあれ、人類が次のステップへ進むにはまだまだたくさんの時間が掛かる。
アルマの認識はせいぜいその程度だった。

「……あなたと進化論について語り合う気はありません。
 興味、ありませんから。
 ……あなたに私の全てを教えるつもりもありません。
 そんな必然性、ありませんから。
 それに私、その手の研究所の職員って……抵抗あるんです。
 無理矢理に集められた被験者が一体どんな目に遭うのか、その末路は……
 強化人間を生み出してきたあなたなら、わかるでしょう?
 命を何とも思わない、まるでモノのように扱って、殺して……
 私はそんな研究や実験を見て、実際に受けて、たくさんのものを失ってきたんです。
 それは……つらいことなんですよ」

害意があったかどうかはわからない。
しかし、その言葉には棘が……明確な敵意があった。
強化人間を生み出す人間に対する深い憎悪。 人の命を喰いものにするエゴイズムへの憎悪。
拒否権の無い実験によって蝕まれていく身体。 犠牲となって次々と消えていく友人たちの姿。
ヒトとして扱われないことの苦痛が。 次は自分が殺される番かもしれないという恐怖が。
いつまで経っても胸の奥から消えない。 癒されない。
そんなどす黒い燻りは、『あの日』以降も消えることはなかった。 ……今も、消えない。
だからこそ、彼女は『そういう人間たち』を『唾棄すべき、忌むべき存在』として捉えている。
研究所にいた大人たちも。 目の前の男も。 この殺し合いを仕組んでいる人間たちも。

<続く>
126アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/12(日) 00:33:54 ID:???
ただ、研究者の端くれだった彼女の両親は違った。
研究所が閉鎖・解体された際に自ら進んでアルマを引き取ってくれた。
行く当ての無かった彼女にとっては意外だったと同時に天の救いに思えた。
彼らはアルマを本当の娘のように可愛がった。 そこには普通の家庭があった。
幼い彼女はすぐに懐き、血の繋がりは無くとも彼らこそが本当の両親だと認識するようになった。

その純粋な信頼さえ、あの一晩で打ち砕かれた。
人間不信になったわけではなかったが、それでもそれなりのダメージは受けた。
彼らからすればどうしようもなかったのかもしれない。
むざむざ“娘”を死なせるよりは、ほんの僅かでも生還の可能性のある方に賭けたのかもしれない。
……それは十中八九あり得ないのだけれど。
それでも、そう解釈してあげないと、アルマ自身があまりのつらさに耐え切れなかった。
だから今でも心のどこかで両親を信じている。 許せないけど、信じている。

「……それからもうひとつ。
 いくら私のことを知ろうと、どうにもなりませんよ。 無意味です。
 こんなところじゃね。
 それを踏まえた上で答えてあげます。

 研究所に名前はありませんでした。
 大きな機関からの出資は受けていたみたいですけど、ほとんど非合法で、
 大っぴらに研究を進めていたわけじゃないみたいです。
 それに私が9歳か10歳になる前に閉鎖解体されちゃいましたから、資料もほとんど残ってないはずです。
 強化の研究それ自体がかなり下火になってましたしね……」

強化技術そのものは第一次ネオ・ジオン動乱〜シャアの反乱の時代にほぼ完成されている。
その後も強化に掛かるコストや完成度は技術の進歩によって改良されていったはずだが、
それ以降、強化人間が歴史の表舞台に上ったという記録はほとんど無い。
その理由はわからない。 知ったところで単なる歴史の勉強にしかならないだろう。
アルマのいた研究所がアンダーグラウンドに隠れていたのは、ニュータイプの研究だけではなく
身体能力の物理的向上という非人道的な実験をともなう研究も行っていたからだ。
そこで生み出された強化人間がどのような人生を送るのか、それは誰も知らない。

アルマがブレイムに語った研究所の概要は、全て両親から聞いたことだ。
大抵の疑問は聞けば答えてもらえたが、強化人間を作ってどうするかということだけは教えてもらえなかった。
もっとも選択肢はあまりにも少ないのだから、今では容易に想像がつく。

目の前にいる男は想像以上の危険性を秘めていた。
ニュータイプや強化人間に対する執着が半端ではない。
それがわかっただけでも、踏み込んでみた価値はあった……のだと思いたい。
アルマはそう思うことにした。
そうでなければ、アブノーマルな人間の相手などやってられない。

【行動:通信中(0)】
【位置:G-20/高速道路】
【残り行動値:4p】
【機体状況:Green/通信回線:νガンダム、V2AB】
【武装:ビームサーベル、3連装グレネード、内蔵ヘビーマシンガン(95)、ショットクロー(8)、
     ビームライフル、Eパック、偵察ポッド、Iフィールド】
【生徒状態:Green】
【所持品:デイパック、コッペパンx2、水2gx2、栄養ドリンクx7、ノートPC、食糧、生活雑貨、
      ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:東の基地へ/様子見】
127風巻陣平 ◆6fCY9104KQ :2005/06/12(日) 02:25:02 ID:???
悪夢か、それともこの世の終わりか……。
全てを飲み込む闇に包まれた視界。
肌を刺すような、凍てつく冷気。

喜びも、怒りも、哀しみも、楽しさも、そして希望も、
絶望すらも感じさせない『無』の闇が、眼下には拡がっていた。

荒々しい冷風は体に、心に吹き込み。不安と恐怖が沸々と湧き上がる。
此処から抜け出したい衝動に駆られ、叫びだしそうになったその時。
 『そろそろだ』
突然響く男の声。
と同時に温かい手が、自分の腰に回された。
何?と後ろを振り返ろうとした瞬間、目の前に変化が起こった。

突如表れた、穏やかな光の筋。
緩やかな孤を描くそれを、なんだろうと見つめる。
やがて、ジリジリと膨らみを増してゆくその光。
そして、その光に照らされたのは、男の後姿だった。
酷く懐かしく思われたその背中は、不意に此方へ振り向いた。
その口元に笑いを浮かべながら、グッドサインを寄越して来る。
そして上を振り向くと、腰に手を回した人……その女性は穏やかに微笑んでいた。
視界に圧倒されていた聴覚が、ようやく感を取り戻す。
その聴覚にはやはり懐かしい機動音、750馬力のペガサスエンジンの音が飛び込んできた。
もう、不安や恐怖など、何処かへ吹き飛んでいた。

水平線に広がる日の出。
未だに深い闇に包まれた地上。
オレンジ色の複雑なラインを描く、高い山々の輪郭。
陽光に包まれるのは雲と、その山々と、空に浮かぶ僕達だけ。
父と母と、飛行機と。何時までも暖かく包まれながら、僕は眠りについた……。
128風巻陣平 ◆6fCY9104KQ :2005/06/12(日) 02:28:00 ID:???
ふと目を覚まし、凭れ掛かっていた車輪より身を起こすと、
時計は仮眠前よりピッタリ二時間後を指していた。
雨は大分収まったようで、今は小雨にまで収まったようだ。

ロイドと別れたあの後、修理と補給に取り掛かり、
セイバーフィッシュは完璧に整備された状態となった。
MS用の大型機材を遺憾なく使用する事で、修理は思った以上に捗り、
余った時間でシャワーを浴び、再び厨房へ立つ事も出来た。
全てを終え、出発前に一眠りしようと仮眠に就いたのが二時間前。
雨の激しさも此処一番だった頃だった。

格納庫の扉を開けると、暗闇の空から柔らかな雨が降り注ぐ。
随分と世話になった格納庫の照明を丁寧に消すと、
セイバーフィッシュに乗り込み、エンジンを始動させた。
修理後のテストと変わらぬ快調な機動音。
転々と置かれた照明灯を頼りに滑走路へと進みだし、
幾つかのテストで異常の有無を確かめると、ようやく飛び立つに到る。
いまだ雨の止まぬ夜空の中、南方へ進路を取った。

【行動 : 滑走路へ-1 離陸-1 移動-2 残行動数0】
【位置 : W-3→W-7(海上飛行中)】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:異常無し】
【パイロット状況 :良好】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4 60mm機関砲×1
       両用ロケット弾×6 落下式増層×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 ディパック 水2L入りペットボトル×2 デジカメ
       アルバム(未発見) コーヒーセット 巻き寿司4食分 レーション×6食分】
【方針 : ロイドと合流 キリト撃破】
【同盟 : 13番 ロイド・エンデバー】
129管制室:2005/06/12(日) 06:45:10 ID:???
『生徒の皆様。おはようございます。
 今回は先生が激務により疲労し、熟睡なされていらっしゃいますので、
 シンゴ=サエキが替わりに放送を流させて頂いております。
 拙い部分もあるとは思いますが宜しくお願い致します。

 まずは脱落者のご報告です。
 生徒番号01番 アロンソ=セルバンデスさん
 今大会最高年齢である70歳という高齢。そして、旧型のMSという条件ながら
 老獪とも言える知恵とそして操縦技術を揮い、奮戦なさっていましたが
 残念ながら力及ばず倒れました。
 生徒番号03番 ハロルド=P=アンダーソンさん
 教室ではずいぶんと震えていた方ですが、いざ実戦となると
 鬼神とも言えるような気迫で強敵へと迫り寄り、接戦を繰り広げました。
 ですが、今一歩という所で力尽きてしまいました。
 生徒番号04番 マサヤ=タカノさん
 初日にて灯台から全体放送を流した彼です。
 いままでMSの操縦などなさった事の無い彼ですが
 何かに取り付かれたように猛威を揮い、ネイゲストさんを撃破。
 その後灯台へとやって来た者とも接戦を繰り広げましたが
 力及ばず力尽きました。
 以上三名の脱落の通知と共に、ご冥福をお祈り致します。

 次に立入禁止区域のご連絡です。
 『B-26』 『I-04』 『L-12』 『O-06』
 『S-19』 『X-07』 『Y-02』 『Z-04』
 以上の八箇所です。
 一定時間の経過後、立入禁止となりますのでご注意下さい。

 次に天気のお知らせです。
 まだ暫くの間、雨が降りつづける模様です。
 各自体調管理などには気をつけて下さい。

 以上、これで今回の連絡事項は終了です。
 殺し合いを頑張れというのもおかしな話かもしれません。
 ですが、わたくしにはこれしか皆様にかけられる言葉が見つかりません。
 皆様。自分の願い、貫き通す為にも頑張って下さい。
 この言葉と共に今回の定期放送を締めさせて頂きましゅ。

 ぶひゃひ』

そして定期放送は急に途切れた。

【行動:定期放送(全体通信)(−2p)】 【残り行動値:∞】
【位置:Z-21】
【行動方針:殺し合い頑張って下さい】
130管制室:2005/06/12(日) 06:47:08 ID:???
管制室は殺し合いをしている表に比べれば至極平和だ。
さきほどの放送を聞いて盛大に笑い出した先生を室長が殴り飛ばし気絶させ
床に転がしてある事以外はおおむね平和だと思う。
倒れている先生の顔が何故かニヤけているのも除けばたぶん平和だと思う。

ていうか先生が倒れた今、誰が本部から11番の動向のダイジェスト版を
作れという指示があったと伝えるんだ?
俺は嫌だぞ……

by 名無し管制官B

【行動:室長:鉄・拳・制・裁!!
   先生:痛いけど快感かも♪】 
【残り行動値:∞】
【位置:Z-21】
【行動方針:完全な管理運営を行う】
131管制室:2005/06/12(日) 06:47:48 ID:???
生徒名簿

 番号          名前                   年齢 性別      機体      
 
 死亡 アロンソ=セルバンデス                (70) 男性  グフ・フライトタイプ
 02番 エルネスティーネ=デア=フォーゲルヴァイデ   (16) 女性  ゲルググJ
 死亡 ハロルド=P=アンダーソン              (35) 男性  ズサ
 死亡 マサヤ=タカノ                      (23) 男性  ガンダムGP02
 05番 キリト=ヴァルリック                   (28) 男性  Gキャノン
 06番 リトラ=クローム                     (25) 女性  ディジェ
 07番 ジンベイ=カザマキ                    (32) 男性  セイバーフィッシュ
 08番 ルイス=ガルシア                     (22) 男性  BD3号機
 09番 クラウディア=ゲール                  (16) 女性  ビギナギナ
 10番 レベッカ=テスタロッサ                 (18) 女性  ベルガギロス(黒の部隊専用機)
 11番 アルバート=パーシング                 (18) 男性  シャッコー
 死亡 ネイゲスト=ザームズ                  (18) 男性  ザメル
 13番 エドワード=S=ボールドウィン             (28) 男性  ボリノークサマーン
 14番 ニース=エルネージュ                  (15) 女性  ゲルググ (ガトー専用機)
 15番 ファッツ=シュヴィール                 (23) 男性  EWACザック[+マラサイ◎]
 16番 ナインティ=アウェイキング               (27) 男性  バウ
 17番 アルマ=フローライト                  (17) 女性  エビル・S
 18番 サイモン=クレイカー                  (43) 男性  アッシマー
 19番 ロイド=エンデバー                   (18) 男性  Z+A型(アムロ専用機)
 20番 クルル=ヴァンデーン                 (10) 女性  メタス
 21番 ジェンセン=スティール                 (35) 男性  ハイザック
 22番 ブレイム=オリディス                  (36) 男性  νガンダム[+V2AB◎]

 なおも参加者募集中 。
 申し込みは>>2の管制室までお気軽に♪
132管制室:2005/06/12(日) 06:48:55 ID:???
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 04彡彡□□△▼▼彡×彡□□□△△□▼▼彡彡彡彡彡彡△×
 05彡彡□△△□┃□彡彡□□△△△□□▼▼彡◎彡彡彡△∴  □:平野
 06彡彡□□△□┣━〓━━━┓△×△┏┛□彡彡彡彡彡△△  ■:森林
 07彡彡◎□□┏┛□彡□□□┗━━━┫□□□彡彡07×△△  △:山地
 08彡彡彡彡□┃△◎彡彡□□□△◎△┗┓□彡彡彡彡□△△  ∴:砂地
 09彡彡彡彡彡┃□△□彡◎■■△◎△□┗┓彡彡彡□□△△  彡:川 海 オアシス
 10彡彡彡彡□┗┓□□□彡□■■△△□□┃□彡□□□△△  ━:道路
 11彡彡彡★□□┃□□□彡□■■△△□□┣━〓━┓△△△  〓:橋
 12彡彡彡06★━┫□□◆彡×□□△△┏━┛◎彡□┃△△△  ≠:破壊された橋
 13◎彡★★□□┗━22□□彡□△□┏┛□□彡彡□┣━━━  ▼:市街地
 14□□□□□□□□┣━━〓18▼▼┛□□彡彡□★★□△◎  ★:基地
 15□◎△∴∴□□□17□□彡□▼□□彡彡彡□□★★★△△
 16△△∴∴∴∴□□┃□□彡彡彡彡彡彡彡□□□□┃◎□△  ◆:コンテナ  
 17△△∴∴∴∴□┏┛□彡彡彡彡彡彡彡彡□□□21┛□□□
 18△∴∴∴∴◎∴┃□□彡彡彡U05≠≠□□□□┃□□□□  ◎:立入禁止区域  
 19∴∴∴∴∴∴∴┃□彡彡彡彡彡◎彡彡彡×□□┃□□□△  ×:立入禁止予定区域 
 20∴∴▼∴┏━━┫□彡彡彡彡彡彡◎彡彡彡□┏┛□□△△
 21━▼▼━┛∴∴┃□彡□□◎19□彡彡彡彡□┃□□△△◎
 22∴16彡∴∴∴∴┃□□□■■■■■□彡□▼08□□△△△
 23∴∴◎∴∴∴□┗━┓■◎■■┏━━〓━02▼┓□□△◎
 24∴∴∴∴∴△△□■┗━━━━┛■◎彡□□09┗┓□□△
 25∴∴∴△△△△□■■■■■■■■■彡彡■■□┗┓□△
 26△×△△◎△□■■■■■■■■13■■彡■■■□┃□□

06と15は同一地点
08と10と11と14は同一地点
19と20は同一地点(戦艦搭乗中)

コンテナ 『J-12』 一箇所
133ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/12(日) 09:08:03 ID:???
124訂正
【行動:移動・P−22→P−21→N−21(2)】
【残り行動値:2p】
134ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/12(日) 11:50:30 ID:???
「お疲れー」

爆発し、炎上するMSだったものへ、手を振りながら言う。
結局のところ、『大穴』が『本命』を倒す事は出来なかった。
………いや、いいところまではいったのだ。
だが、最後の最後で、天が彼に味方をしなかった。
少なくとも、ファッツ=シュヴィールはそう思っている。

「ま、運も実力のウチってこって」

しかし、まぁ、一応顔見知りのヤツが死んだわけで。
そりゃこっちも殺されそうにはなったけど、多分そんなに悪いやつじゃなかった、と思うわけで。

「天国いけっといいな、ハロルドさん♥」

投げキッスを天に向けて放る。
しかしまぁこれで、このゲームがいよいよマジって事が立証されたわけ、だ。
今までは放送でしか死亡を聞いていなかった。
ゲームがはじまって何回も戦ったが、死んだものはいなかった。
このゲームが本当だとは思っていたが、死んだもの実物を見ないと納得は出来ない。

「っは♪」

こりゃいよいよ面白くなってきた、と言わんばかりの顔でモニターに映る、雨に濡れた女性を見つめた。
135ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/12(日) 11:51:36 ID:???
マラサイをその女性の前に止め、ハッチを開ける。
その場から覗くと、その顔がよく見れた。
雨に濡れ、何かを抱きしめている、その女性に手を振ってみる。

「おいすー」

ファッツの顔に浮かぶのは笑顔だ。
そのまま目を動かし、青い闘士を見る。
………半壊、といったところだろうか。
あれだけ激しい戦闘を行ったんだ、無理も無い。
だが、こうなっては【約束】も果たせないだろう。
………というより、ファッツとしてはリトラの方がちょっと心配だったりするわけで。

ズサとの戦闘のせいか、ここからではよく見えないが額に傷があるらしい。
瞳も、何とも言えない光に包まれていて、何かヤヴァそうだ。
そして、何よりもファッツが気にかかった事は………

「お姉さんったら、ス・テ・キ♥」

今までのモニター越しの通信で見た彼女は
常に頭にバンダナを巻いていた。
それもそれで彼女にはよく似合っていたが、今の彼女はバンダナを外しており………
雨に濡れたその銀髪は雨によって弱まりつつあるMSの残骸による火によく栄えており………
まぁ、何というか、少しの間だけ心を奪われた。

しかしまぁ、少しの間だけだったわけで、すぐに見とれていた自分に気付くとディパックを持って地に降りる。
肩からディパックを提げ、リトラの前に立つと戦闘によって破壊されなかった施設を指差す。

「とりあえず、雨やまないっぽいしさァ………
 雨宿りでもしませんかお姉さん?」

ま、今の俺もお姉さんな格好してんだけどねぇ………と呟きながら一人、施設へ向かう。
マラサイは、その場に。
それは元々お姉さんから頂いたプレゼントなわけで。
返して欲しいんなら、返すのが礼儀というか………
まぁ、何というか、そういった感じで。

「さてさて、とりあえずこの格好も飽きたし
 シャワーでもサッと浴びてカウボーイに戻りますかねー」

施設についた後、雨に濡れた体にまとわりつく服を気にしてか………
とりあえず、彼はシャワーを浴びて元の服装に戻る事にした。

【行動 :マラサイから降りる(-1P) 施設まで移動(-1P) シャワーを浴びる(-1P) 残り1P】
【位置 :D-12 軍事施設】
【機体/状況 :マラサイ/問題無し】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷】
【武装 :ビームサーベル 頭部バルカン砲(残弾100%) ビームダガー ビームピストル(EN 50%)】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×1 コッペパン×1
     コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー カウボーイセット(ハット・チョッキ・シャツ)
     女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)】
【容姿 :シャワー浴びてるわけで………】
【暫定行動方針:約束はどうしようかねぇ?】
【最終行動方針:このゲームを楽しむ】
136リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/12(日) 15:33:37 ID:???
>>129
虚ろな瞳で赤き闘士を見つめていると、基地の生き残ったスピーカーより、定期放送が鳴り響いた。
雨音に混じったそれは、いささか聴き取りにくいものではあったが、
ハロルドとの激戦の最中流されたものとは違い、それに意識を向けるだけの余裕があった。

「……死んだのだな、お前以外にも、幾人も。
 あの、マサヤ=タカノも逝ったのか……」 

『ハロ』に目を遣りながら、ポツリと呟く。

あの全体通信で敵を呼び寄せたのは、死に場所を求めるが故だったのか。
……その意図を確かめる術は、最早無い。

そういえば、ハロルドとの激戦の最中に流れた定期放送でも、誰かの死が報じられたな……。
マサヤ=タカノが倒したというネイゲスト=ザームズがその時の死者だという事か。

……これで、死者は四人。
そこに自らが加わらず、ハロルド=P=アンダーソンが加わっている事は、あまりにも皮肉だった。

「生き残ったところで……すでに牙は折れている。
 自らを貫く手段を持ち合わせぬ私が、生き残った所で……。
 ……フフ、ルイス=ガルシアには大層な事を言っていたが……随分、脆いものだな」

自嘲気味に笑い、再び赤き闘士へと目を向ける。
赤い闘士―――“マラサイ”は、自身を見つめる女の元へと歩みを進めていた。

「お前との“約束”も、守れそうにない。
 ―――すまん」

呟き、沈黙するリトラ。
マラサイが自らの元へと辿り着くまで、虚ろにその姿を見つめ続ける―――

>>135
赤い闘士が傍らへとやって来た時、そのコックピットハッチが開かれ、金髪の美女が姿を見せた。

『おいすー』

手を振りながら、あっけらかんとした調子の声をかけてくる金髪の美女。
つい先刻まで、そこで血で血を洗う殺し合いが行われていた事を微塵も感じさせぬ笑顔。
金髪の美女の皮を被った“少年”が其処に居た。

―――かわらない。
何処で手に入れたかはわからないが、そして何故そのような格好をしているのかは(つくづく)わからないが、
この笑顔はその身をガラリと変える華やかな衣装とメイクを以ってしても、少しも印象を変える事は無い。
この男はおそらく、どのような場にあっても己を変えることは無いだろう。
……少なくとも、リトラの瞳にはファッツ=シュヴィールという男はそのように映っていた。

そんなファッツの瞳に、今の自分はどのように映っている事だろうか。
牙を折られた獣の姿は―――

『お姉さんったら、ス・テ・キ♥』

―――そうか。

……そうだな。
今の私は、そのように見えているのだろうな。
頭に巻かれたバンダナもなく、男の心をかくも狂わせるらしい銀髪を露わにし。
肩を落とし、ただその身を雨に濡れるに任せるだけの女は―――
137リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/12(日) 15:36:57 ID:???
ファッツがマラサイよりその身を地に降ろし、リトラの眼前に立つ。
その長身は、リトラよりも頭ひとつばかり抜けていた。
そして、その肩も―――リトラのそれより、遙かにたかい。

長身の男は華々しき美女の皮を被り、見下ろされた女は、女を欠片も感じぬ戦装束に身を固めている。
その光景は、傍から見ればさぞかし滑稽であろう。
……ふと、そのような事が頭に浮かび、リトラは少しだけ可笑しさを覚えた。
ほんのすこしだけ、夜が明けつつあってもいまだ晴れぬこの空に似た想いが、晴れた気がした。

『とりあえず、雨やまないっぽいしさァ………
 雨宿りでもしませんかお姉さん?』

クイと生き残っている施設を指差すファッツ。
ファッツはそのままマラサイをのこし、その施設へと歩いて行く。

「あ……ファッ………ツ……?」

……このマラサイはお前にやったものだ。私はこれを受け取る気はないぞ。
追いつつ、そう言葉を続けようとしたリトラであったが、
その身を照らしていた炎の赤とは別の赤き光に身を照らされ―――
リトラは、その光の主へと、顔を向けた。

青き闘士のモノ・アイが、輝いていた。
それは一瞬だけだったが、確かに爛々と、輝いていたのだ。

「―――ま・さ・か……?」

頭部のコックピットに乗り込むリトラ。
非常電源に照らされながらもコンソール・パネルをいじると、それは確かに機能していた。
機体の状態をチェックする。
ジェネレーターは、いまだ生きたままだ。
その心臓は、いまだ鼓動したままだ―――

「……………」

だが、うごかない。
青き闘士の身は、ぴくりとも動かない。
無理もない。
青き闘士のコックピットは、頭部は、その身より皮一枚で繋がるにすぎない。
その身を動かさんとする意志を、全身に伝える事はかなわない。

―――だが。

「こいつは、死んではいない」

冷静に考えれば、最早青き闘士はただのスクラップに過ぎないだろう。

「私は、牙を取り戻せるかも知れない」

それでも、リトラは己の身を衝き動かす衝動に従った。

「ファッツ、お前との約束も果たせるかも知れない」

『ハロ』をその頭だけ出すようにディパックへと押し込み。
ディパックを肩にかけたままディジェのコックピットより地に身を躍らせ、マラサイへと駆け寄る。
再び、リトラの全身を冷たき雨が打つ。
138リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/12(日) 15:40:25 ID:???
「……雨宿り、か。そうだな、今はそれも―――悪くは無い。
 だが、その前に―――」

青い闘士を見下ろす赤い闘士のコックピットへと乗り込み。

「すこし“借りる”ぞ、ファッツ」

ディジェを抱えるようにして、近場の無事だと思われる工場施設へと運び込む。
ハンガーのひとつにディジェを収めると、リトラはマラサイをファッツの入った施設へと向かわせた。
マラサイを施設の傍らにつけ、再び地に降り立ったリトラは施設へと入り、シャワー・ルームをめざす。

「……この身も冷え切ってしまったな。
 牙を取り戻す前に倒れては、元も子もないだろう」

そう呟くリトラの声は、本来の彼女とは比べるべくも無いものの、決して弱々しくはない。
先程まで虚ろに揺れていた瞳には、微かではあるが揺れぬ光が宿っていた。

【行動 : ディジェに乗り込んでチェック(-1) マラサイに乗り込む(-1) ディジェを工場施設へと運ぶ(-1)
      ファッツの入った施設へ(-1) 残0 】
【位置/場所 : D-12/基地・施設内 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――その心臓は今尚死なず 】
【パイロット状況 : 額に怪我 濡れる全身 そのグレーの瞳の奥には微かな光 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト 煙草数箱 『バンダナ』
      クマの『ハロ』(ディパックよりちょろっと頭だけ出ている) 】
【方針 : 私は“牙”を、取り戻す 今は冷え切った身を暖めよう 】
139ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/12(日) 17:07:30 ID:???
「ふぃー………」

シャワーを浴び終わってバスタオルで体を拭く。
思えば丸二日シャワーも浴びていなかった。
サッパリした体に慣れ親しんだ服を着込んでカウボーイハットをかぶった。

「やっぱこっちのが落ち着くわな」

にしても、これからどうしようか。
リトラのディジェは半壊。
もし【約束】が果たせなくても、それは仕方が無いだろう。
アレだけの激戦を見せてもらったのだ、これ以上楽しむというのは贅沢というもの。

ともすれば、リトラと一緒にいる理由というものもない。
何だかんだいいつつ、出会ってから今までほとんど一緒にいるが、その関係は同盟ではないのだ。
ただ単に【約束】を果たす為だけに共にある。

「でもまァ………」

少しばっかりは離れたくない、という気持ちになりつつあるのも事実。
ファッツはいわゆるプレイボーイと呼ばれる人種であり、人並み以上に色恋沙汰には手を出した。
振っては付き合い、振っては付き合いを繰り返して23年。
燃えるような恋を何度も繰り返して現在に至っている。

故に、その経験上自分がリトラに惹かれつつあり
またこれから確実に惹かれるであろう事もわかっている。
本来彼にとってこれは特異な事である。
何故なら、彼が今まで愛した女性は全て同い年或いは年下であり
年上の女性に対して恋心というものを抱いたことは一度たりとて無い。

「年増にゃ興味ないんだけどねぇ」

しかしまァ、いいんじゃないか?とは思う。
恋心とは即ち自分の意識していない心の内で生み出されるものだ。

「………ま、どうでもいいか」

肩をすくめてみる。
考えても仕方の無い事であるし、そもそもが己の思いというものもかなり不安定ではある。
吊り橋効果とはよく言ったもので、緊張による鼓動の高鳴りを
恋のトキメキであると勘違いするという話を聞いた事もある。
そう思うと案外恋とは単純なものかもしれない。
140ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/12(日) 17:08:43 ID:???
「おろー?」

さてさて、とりあえず落ち着ける場所でも探しましょうか。
そう思って娯楽室のようなもの探し、見つけたファッツの目に、雨に濡れたリトラが映る。
恐らくはシャワーでも浴びるつもりなのだろうが、替えの服はあるのだろうか?

「おねえさーん」

呼び止めてディパック投げてリトラに渡す。

「そのずぶ濡れの服の替え、ねぇんじゃねーの?
 無いんならそれあげるけど」

中には服が沢山入っているはずだ。
サイズが合わないものもあるかもしれないが、我慢してもらうしかないだろう。
このような軍事施設に女性物の服がそうそうあるとは思えないし
あったとしてもサイズが合うものなど殆ど無いだろう。

「ま、気に入らなかったら返してくれりゃーいいし」

捨ててもいいけど、とは言わない。
折角支給されたものだ、捨てるのもムカつく。
ともかく、それだけを告げるとすぐそこにある娯楽室に入った。


「ふーん………」

入った中は、ビリヤード台が三つほど並べられておりその横にダーツの的が三つ。
そこから少し離れた場所にバーカウンターと小さなテーブルが四つ。
中々の設備、といったところだろうか。
とりあえず暇つぶしにはなりそうだ。

バーカウンターの中に入り込み、上物のウィスキーを取り出す。
備え付けの冷蔵庫から発見したナッツを皿にぶちまけて、一粒カリッと噛んでみる。
同じ冷蔵庫より氷の塊を取り出し、近くにあったアイスピックで削りだす。
大きな欠片が二つできたところで、欠片をグラスに入れウィスキーをグラスに注ぐ。

「………ふー」

一口含むと体の芯がカッと熱くなった。
そのままそれらを持ってビリヤード台に置くと、椅子を持ってきて隣に置きダーツの矢を手に持つ。

「久しぶりだからなー」

カカッと音がなり、的の中心に矢が刺さる。
続けて二つ、その周りを再び矢が刺した。

「んー、いいね」

どうやら腕は落ちていないらしい。
141ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/12(日) 17:09:28 ID:???
【行動 :施設内探索(-1P) 残り0P】
【位置 :D-12 軍事施設・施設内娯楽室】
【機体/状況 :マラサイ/問題無し】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 ホロ酔い】
【武装 :ビームサーベル 頭部バルカン砲(残弾100%) ビームダガー ビームピストル(EN 50%)】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×1 コッペパン×1
     コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 
     女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)】
【容姿 :カウボーイ】
【暫定行動方針:約束はどうしようかねぇ? 雨宿り】
【最終行動方針:このゲームを楽しむ】
142管制室:2005/06/12(日) 17:41:46 ID:???
業務連絡

>生徒番号09番 クラウディア=ゲールさん
第三章 >199 (書き込み日時 2005/06/04(土) 22:05:15 )より
その後の書き込みがありません。
この書き込みから二十四時間以内に
本スレへの書き込み。もしくは、管制室への書き込みのどちらかを行って下さい。
両方とも書き込みの無い場合には残念ですが放棄となります。
以後、急病などの入院で連絡が取れずなどいたしかたない理由であろうとも
同キャラでの復帰は出来ません。
ご了承願います。
143クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/12(日) 19:34:00 ID:???
目を覚ますと、そこは知らない部屋だった。
ぼうっと天井を見ていたけど、それも終わるとベッドに腰掛けた。

「…………」

脇の棚にスポーツドリンクと走り書きされたメモを見つける。
メモに書いていた文字に目を通した後、スポーツドリンクを飲んだ。
乾いていた喉が潤っていくのがわかった。
あれだけ水分を外に出したんだもん、喉も渇くよね。

全て飲み干して部屋の外に出る。
ここ、どこだろう?
えっと…………わたしは…………
…………そうだ、ここは、Zプラスの人の戦艦だ。

ウェストポーチからメモを取り出し、書き始める。
ある程度のメモさえしておけば、それがスイッチになって思い出せる。
書き終わった後、ブリッジと思われる方向へ進んでいった。
艦内はわたし以外に人がいないようで、静かだったけど
動いてるみたいだし、それならブリッジには人がいるはずだ。

それにしても、この戦艦はいったい何ていう戦艦なんだろう?
メモを調べても該当するようなものはないし、内部もムサカなんかとは全然違う。
…………Zプラスの人に、聞いてみようかな?
144クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/12(日) 19:34:40 ID:???
ブリッジの前のドアに立つ。
この中に、Zプラスの人がいるのかな?
…………考えてもしかたないよね、開けよう。

中に入ると、男の人が立っていた。
ちょっと痩せすぎかな?
わたしが言うのは変かもしれないけど、男の人にしては背も低いし…………
歳の頃なら、おにいちゃんと同じくらいなんだろうけど…………

「あなたが、Zプラスの人?」

声をかけてみた。
Zプラスの人から通信は貰ったけど、顔はろくに見てなかったし声もあまり覚えていない。

「あの、助けてくれてありがとう」

この人には、感謝しなくちゃ。
もし、この人がいなかったら…………わたしも、助からなかったかもしれない。
それに、この人は多分悪くない人。
なんとなく、そう思っていた。

【行動:撤退(1) 移動P−23→P−22(1) 19番に通信(1) 着艦(1)】
【残り行動値:0P】
【パイロット状況:(*゚∀゚)コノセンカンナンダロ?】
【位置:P-22】  
【機体状況:MSA-005メタス/やや装甲破損 左肩部アーマー一部破損】
【武装:アームビームガン×2(EN70%)、ビームサーベル×6、ビームローター】
【所持品:ディパック 水2g1本と半分 筆記用具一式、特殊トランシーバー×2(一対)鍋】
【メモ:『ここは地きゅう・おにいちゃんは地きゅうにいる・わたしはおにいちゃんをさがす
     きたいはメタス・アイテムは黒いきかいがふたつ・ぶきはそらとべてたてにもなる
     グフはおじいちゃん・ゲルググはおねえちゃん・アッシマーはおじちゃん・バウはいたい
     おじいちゃんは大いで偉い・大いは仲間・いたいのはわからない
     アッシマーはやらない・ゲルググつよい・大いつよい・ガンダムを倒す・Zプラスは仲間
     戦艦はZプラスの人のもの』】
【行動方針:何百回敗けても、必ず生き延びてジオンの志をわたしの次の世代へ】
145レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/12(日) 21:24:33 ID:???
「……」

レベッカ・テスタロッサがソレを見つけたのは、凡そ数分前。
急速に接近するMSを迎撃するべく球場の外へと飛び出した黒の機械騎士がその目に捉えたのは、傷だらけの青いMSと――

「……人間?」

*  *  *  *  *

「どうしてボクはこうも……ッ!!」

悪態の向かう先は、自分。
倒れていた男を背中に背負い、引き摺るようにして医務室へと運び込んでから既に10分近く。
彼を発見してからはもう半時間以上が過ぎようとしていた。
ふと室内の時計を見れば、定期放送まではまだ1時間弱の猶予がある。

リボンで結わえた髪の先をくるくると指で弄りながら、ベッドに横たえさせた男の顔を見つめるレベッカ。
彼女は今、医務室のデスクとセットになった黒い椅子に浅く腰掛けていた。
医務室ならばハサミの一つや二つ、間違いなく置いてある筈。
男性に比べて非力な少女の体を持つレベッカであっても、それらを使えば今ここで、彼を――ルイス・ガルシアを殺害する事は容易い。
千載一遇の好機。
これを見逃す理由は無い。

レベッカは立ち上がり、デスクの引き出しを開けた。

*  *  *  *  *
146レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/12(日) 21:26:56 ID:???
男の服を脱がす。
肌蹴たシャツから覗く厚い胸板に手が触れてしまい、

「……ッ」

思わず赤面しつつも着々と作業を進めていく。
はっきり言ってレベッカの手には余る仕事であり、故に効率よく進める為にはハサミの使用が欠かせなかった。
雨に濡れて泥と水気をたっぷり含んだ服は最早使い物になるまい。
だからこの際諦めてもらおう――そんな言い訳を唱えつつ、脱がし易いよう切れ目を入れた服をベッド脇に纏めて置いた。
残るは下半身だが……

「こ、こっちはズボンだけで良い、な、うん……うわぁっ!?」

女性の体とは根本的に違う体毛の濃度と密度に悲鳴を挙げ、慌てて口を押さえたりしながら何とか完遂する事が出来た。

そんなこんなでルイス・ガルシアを下着一枚まで剥いてしまったレベッカ。
大柄な体躯を引き締まった筋肉がまるで鎧のように覆った異性の半裸姿は、彼女にとって充分に刺激的なものだ。
念の為にバイタルサインのチェックを行なおうとした時には、鼻腔に男の汗の匂いが届いたりでもう大変。
動悸を抑えるべく深呼吸を三回。
何をやってるんだろう。
そんな自問に答えも出せぬまま、やや躊躇いがちにタオルで男の体を拭っていく。
堅い。それでいて、柔らかい。
矛盾を孕んだ筋肉の感触が白い布越しに手先に伝わってくるたび、加速度的に顔が紅潮していってしまうのが分かる。
イヤなら、恥ずかしいのなら止めれば良いのだが――

――決めちゃった事だし……。

己が決断の愚かさを嘆きつつも、手の動きを休めず彼女は作業を続けたのだった。

*  *  *  *  *
147レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/12(日) 21:30:36 ID:???
暖房の効いた医務室のベッドの上に、一人の青年が寝かされている。
身に着けているのは下着一枚。
厚めの毛布を肩まで掛けられ、枕元には病人用のパジャマが一着。
彼のMSのコックピットから調達された替えの下着一式。
そして水、風邪薬と栄養剤が一錠ずつ、更にはカロ○ーメイト一箱。

*  *  *  *  *

『どうしてよッ!

 どうしてアレックスが死ななきゃイケナイのよッ!?

 どうしてお姉ちゃんが代わりに死んでくれなかったのッ!?

 お姉ちゃんが死ねば良かったのに……返してよッ!

 私のアレックスを、アレックス・ロッドマンを返してよッ!!』

「エステル……ッ!」

其処で意識は覚醒し、レベッカは己が先程まで夢を見ていた事を知る。
目の前、寝息を立てる一人の青年――夢の中の青年に、そう言えば何処か似ている。
未だ目を覚まさないままなのだろうか。

――時間だね。

定期放送開始の5分前を知らせるデジタル時計の表示に、コートを羽織って立ち上がる。
ルイス・ガルシアの睡眠を妨げぬよう静かに歩を進め、レベッカ・テスタロッサは医務室を後にしてMSへの帰路についたのだった。

丁度5分後。
彼女の定めた期限である、三回目の定期放送が流れ始めた――
148レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/12(日) 21:32:07 ID:???
【行動:ルイスを医務室へ運ぶ(-1)、服を脱がせて体を拭く(-1)、色々用意(-1)、機体に戻る(-1)】
【位置:U-22(市街・開閉式ドーム球場・コックピット内)】
【残り行動値:0】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、
       右マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:シャワー浴びてさっぱり】
【武装:ビームサーベル×1、左腕ビームシールド】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx4、
      アイソトニック系飲料1.5L×1、携行食糧1週間分、救急箱一式)】
【服装:クロスボーン・バンガードの軍服】
【方針:火器の確保】
【同盟:なし】
149アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/12(日) 21:37:15 ID:???
…確かに俺はこの状況を、孤児院の状況になぞらえてニースに接している。
しかし、それだけではどうしても対処しきれない現実もここにある。
ニースの背中に回した手の平に、Tシャツの布一枚を通して伝わる、素肌の感触と体温。
密着したニースの身体は、雨に濡れて冷えた俺の身を温かく優しく、彼女を包ん
でいる筈の俺を、逆に包んでくれる。
小さな小さなニースの身体の、どこにこんな温かさがあったのか。

ふと思う。
もしかしたら、俺はニースを慰めているつもりが、実はニースに慰められているので
はないだろうか?
ふと思う。
俺の胸の高鳴る鼓動は…この少女によってもたらされているのか?
それなら俺は……。
この少女に…ニースに何をしてやれる?

ニースがより強く身体を密着させてくる。
俺ももう、それを拒もうとはしない。
背中に回した手を腰に下ろし、ニースの身体を引き寄せる。

2人の呼吸。
2人の鼓動。
それが溶け合いそうなくらいにハーモニーを奏でていく中、ニースが顔を上げて、俺
の顔を…いや…目を見つめる。
その切ない目はさっきまでの少女のそれではなく、男を招き寄せる、女のものになっていた。

ニースが、何故俺を求めるのかは分からない。
殺し合いという極限状況からの逃避なのか、それともデパートで何かがあって、それ
を忘れたいだけなのか。
だが、俺を見つめるニースの瞳を見ていると、それを詮索するのは限りなく野暮な事
のように感じられた。
今は…何も考えない方がいい。

「目…瞑ってみて?ニース」
ニースに目を閉じさせる。
綺麗な瞳が見れないのは少し残念だけど、やっぱりムードも大切だ。

(続く)
150アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/12(日) 21:38:41 ID:???
目を閉じたニースの顔には、これから起こる事への期待と不安の色が見え隠れしている。
焦らしても可哀想だから、髪を撫でていた右手で、そっとニースの前髪をかきあげる。
そして間を置かず、その額に軽く口づけると、その瞬間、ニースの身体がピクッと震える。
ニースの年齢を考えれば、驚くのも無理はないかも。
俺は直ぐにニースの耳元に口をもっていった。
「まだ。…まだ目、開いちゃダメだから」
わざと吐く息を多くして、耳元で囁く。
目を閉じたままのニースがどう感じているのか考えると、少し可笑しい。

ニースがしっかり目を閉じているのを確認すると、次にその閉じた瞼にキスをした。
最初に右の瞼。
次に左の瞼。
それでも俺の言い付けを守って目を閉じているニースが可愛くて、少し悪戯をした。
閉じた左の瞼の線に沿って、舌を這わせていく。
右から左へ。
左から右へ。
その度に反応するニースが、また可愛い。

そんなニースの反応を楽しんで、瞼から口を離す。
と同時に、右手でニースの後ろ髪をくいっと引っ張って顔を上に向かせると、今度は
唇に軽くキスをする。
ニースの反応を見てもう一度、今度は上顎に軽く。
更にもう一度、次に下唇に軽く。
更にまたもう一度…。

口を離して、もう一度ニースの顔を見つめる。
相変わらず俺の言葉を守って、目を閉じているニース。
そのニースに倣って、俺もゆっくりと瞼を閉じながら顔を近付けていく。
唇同士が微かに触れたところで一瞬だけ止まり、そして意を決したように、深く深く
唇を重ねていった。

それこそ、溶け合ってしまうくらい深く、ゆっくりと。

【行動:10番への回線継続(0)ニースにキス(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:U-22】
【機体状況:異常なし】
【参加者状況:異常なし】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン、ビームローター
    ビームピストル×2(75%)】
【所持品:ディパック、水2?入り2本、コッペパン2個、お守り、ペンライト、ポータブルプレイヤー】
【行動方針:休む前に腹ごしらえ…の前にニースを…】
【仲間:クラウディア、ニース、(レベッカ)】
151ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/12(日) 22:24:23 ID:???
「あなたが、Zプラスの人?」
後ろから声がした。どうやらクルルが起きたらしい。
「あの、助けてくれてありがとう」
安心した。この調子なら、当面は大丈夫だろう。
後ろを振り向く。もちろん笑顔で。
「こっちも信用してもらってよかったよ。
 このゲームの中で見ず知らずの他人を信じるなんて、ちょっと難しい事だと思うし」
っと、あまり暗い話題にはしないほうがいいかな。あのじいさんの事もある。楽しく話そう。
「俺はロイド・エンデバー。ロイドのほうで呼ばれるのが慣れてるかな。まぁZ+の人でもいいよ」
ジンペイと初めて話したときと態度が180°違うのは、俺が嫌いなのは大人だけであって子供はむしろ親しみを感じるからだ。
特に小さな女の子には優しくする事にしている。多分マリーがいた影響だろうな。
「そういやさっきの通信で君のお仲間って言ったけど・・・えーと」
少し迷ったが・・・見せる事にした。大人相手ならともかく、子供相手には嘘をつきたくない。
それに、マリーはいつも俺が物を浮かす所を見て喜んでくれたっけ・・・。
脇のディバッグを見つめる。あまり負担のかかることをしたくないので、軽い物でやる。
ふわ、とボールペンが浮く。それをキャッチ。さらにそれを手の上に浮かせる。
「厳密にいうと、俺はニュータイプじゃなくてサイキッカーなんだ。超能力者ってやつさ。
 あ、いや、別に自慢しよーとかそういうわけじゃないよ?」
そう、決してそういうわけではない。
久しぶりに自分の超能力を見て純粋に喜んでくれそうな子に会ったのでやっただけ。そう、それだけ。うん。それだけ。
「え、えっと何かやって欲しいことある?できる範囲でやるよ。いや、別につまんないって言うならいいけど・・・」
・・・思いっきり自慢したいらしいな、俺。

【行動:会話(0)PK(0)】
【位置:N−21、森林】
【残り行動値:2p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント、120mmマシンガン(全て新品同然)
    予備 クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)二連装ビームガン(取り付けしていない)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:異常なし】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、ザンスカール製ノーマルスーツ、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml】
【行動方針:待つ】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
【守る:20番・クルル=ヴァルデーン】
152ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/12(日) 22:56:38 ID:???
雨の中倒れたルイスは何時の間にかベッドで横になっていた。
頭の痛みと共に定期放送によって目を覚ます。
どこか見覚えがあり、そして懐かしいような感じのする部屋。
これが球場の医務室だと言うことに気づくのにさほど時間がかからなかった。



「いつの間に中まで・・・・・。」

口を開いた瞬間自分が下着1枚で居ることに気づく。
ベッドの脇には切られた自分の衣服が有った。
誰かが自分をここまで運んで服を脱がせそして、寝かせたに違いない。
わざわざ換えの服や薬の類が置いてある。


「とりあえずシャワーを浴びようか・・・。」


換えの服と下着を手に持って、シャワールームの有るほうへと歩き出す。
基本的にこういった球場の”裏方”の方の構造は変わらない。
バスタオルを一枚おき、ボディーソープとシャンプーを手に取ってシャワーを浴びる。
先ほどまでの戦闘によって相当汗をかいた。
その割には、寝ているときにやけに不快感は無かったが・・・。


シャワーを浴び終わったルイスは体を拭き、服を着たルイスは医務室へと戻る。
そこにあった薬と栄養剤を水で流し込んだ。


そして、再びルイスは深い眠りについた。  (*1)


【行動:医務室→シャワー→医務室(−2)薬を飲む(−1)寝る(0)】
【残り行動値:0P】
【パイロット状況:スッキリ 睡眠 少し風邪気味】
【位置:U―22(ドーム球場)】  
【機体状況:右肩アーマー破損・左肘関節部アブソーバー欠損・左肘から先の装甲及び内部破損 】
【武装:頭部60mmバルカン砲×2(残弾84%)、胸部60mmバルカン×2(残弾72%)、 ビームサーベル×2(散弾)ビームライフル】
【所持品:シガレットケース(葉巻10本)煙草4箱(51本) ライター パジャマ  ボイスチェンジャー アサルトライフル予備マガジン×2 H&CUSP予備マガジン×1 パン×2 水2L 清涼飲料水4L   缶詰×5 塩1袋 下着類 】
【行動方針:――――】
153ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/12(日) 23:07:31 ID:???
(*1)
眠くなる成分が薬に入っていたことによる。

またやってしまいましたスレ汚しスマソですorz
154キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/12(日) 23:30:16 ID:???
今だ降り続く雨音が心地よくキリトの目覚めを刺激した。
目蓋をゆっくり開くがまだ意識を起こすには至らない
そんな状態の中前とは違う声の定時放送が聞こえてきた。

内容は相変わらず死者の報告と天気予報そして、危険区域の発表。
前までの陽気な放送とは違い今回はあっさりしていた。

(彼のほかにも二人ほど逝ってしまわれたようですね。
 彼も寂しくは無いでしょう・・・・・・
 魂というものが存在するのならなんですが。)

まだ意識のハッキリしない思考で何気無くそんなことを考えると
キリトの虚ろな紅い瞳にまた、あの子達が見えていた。
感覚さえも鈍っているらしくその子達がキリトの服を摘んで引っ張っている
仕草が視覚から脳に伝わりそれが現実の様に感じられた。
思わず、その子達の中の一人の頭を撫でようと手を伸ばすが
瞬きをした瞬間、みんなの姿が消えていた。

(何を馬鹿なことを考えていたんでしょう。
 そんなことは無意味だと判っているのに。)

完全に目を覚ましたキリトは呆れる様に自分の手を見ていた。
溜め息をし、灯台の窓から今だ降り続く雨を確認した後
レーダーを確認するとそこにはこの場所の近くに
参加者が近づいていることに気がつく。

それも二人、その内一人はあの少女だ。

(私の通信の届く範囲ですね、
 ご挨拶ぐらいはしておかなければ、失礼ですよね。)

寝起きの堅い体を解すように伸びをした後、
後ろの腰にぶら下げてある二本のレイピアを
音も無く抜き去り、二つの刃が何も無い空間を踊らせる
心なしか、刃の織り成す空気を切る音が若干ずれていた
そして再び鞘に戻すと灯台を降ると雨音が次第にはっきり聞こえてくる。

(早く止んでほしいものですね。)

MSに乗りこむとN−21にる戦艦に通信を繋げる。

「おはようございます。小さなレディー。
 それからジェントルマン、と呼ぶにはまだお早歳のようですね。
 失礼、御初に御目にかかりますキリト=ヴァルリックと申します。」

モニター越しにサングラスを取った後、紳士の様に頭を下げる。

「早朝に失礼します。一様御近くを通りかかっているようなので
 挨拶は済ませておこうかと思いまして、引きとめてしまったのなら
 申し訳御座いません。
 ただ状況が状況ですので意向を確認したいと思いまして。」
155キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/12(日) 23:32:26 ID:???
【行動:目を覚ます、再び幻覚(-0)灯台レーダー使用(-1)朝の体操?(-1)
    灯台を出てMSに乗る(-1)戦艦に通信(-1)】
【残り行動値:0】
【位置:N−18】
【機体状況:Gキャノン・頭部消滅】
【武装:ビームサーベル×2、 肩部130mm4連装マシンキャノン×2(残弾90%)
    腕部ダブルビームガン×2 ビームソードアックス(ソード・アックス・ピックの3形態)
     ビームショットライフル(EN80%) 6連装ミサイルポット×6】
【所持品:ディパック 水1g1本 首輪 
      レイピア×2 グラサン数個 懐中時計 お守り】
【行動方針:挨拶ぐらいしないと失礼ですよね・・・(敬)】
156サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg :2005/06/12(日) 23:53:45 ID:???
>>129
それは荷運びを終え、リニアシートに腰掛けながら地図を開こうとした時であった。
流れてきた定期通信に、地図へ向けた目をそばめる。
中にいくつか知っている人名も混じっていたことに、眉根を潜める。

「アロンソ……セルバンデス」

脱落者の中にその名があって、クルル=ヴァルデーンの名が無い。
それが示す意図は、大方予想の範疇であった。

「だから言ったんだ、いい奴ほど早死にするって」

戦場で周囲を気にかける余裕のある人間は、自分の身を省みない…という余裕さえある。
ゆえに、そんな人間ほど生き延びることはできない。

「明日は我が身か…ねぇ」

意地でも生き残る、という欲求は薄い。どうせ現役時代は、流れ弾や誤射はおろか
MSの薬莢ですらも殺人の道具となり、数多くの同輩たちが先に散っていったような身だ。
しかし、何もせずに犬死にするほど悟っているわけでもない。
何より―いつかと同じだ―この理不尽な力による潮流が気に食わなかった。

「かっこ悪い大人だね、まったく」

一種の現実逃避なのかもしれない、と呟く。
ここにいる限り生死を賭けた争いからは退けようはずが無いのだから。
だが当座を生き残る理由としては、言われるがまま理性を削りあうよりはマシに思えた。

「――さて、当座を生き残る上で何するか、考えないとな」

まず、北には何も無いだろう。コンテナの反応が消えてしばらく立っているが、
自身に変化が無いことそのものが北から向かってくる人間の希薄を物語っている。
灯台は……先の定期通信を聞くに、タカノが最期までその場で戦っていたのは事実。
ならば、戦闘直後の人間がまだ残っているかもしれない。
接触にしても哨戒にしても、そういった人間と関わるのは悩まれる。

「西のコンテナ、まだ消えてないな…?」

これも大概にして怪しい話である。目前で鉢合わせ、衝突が起こったという可能性もあるが。

「……しばらく、雨は降るか。
 足元がおぼつかなくなるかもしれんしな…よし」

一つ、作業に取り掛かることに決める。その上でコンテナに変化が無ければ西へ、
変化があれば東にでも向かえばよい。

【行動:思索(0P)】
【位置:N-14/山地】
【残り行動値:4P】
【機体/状況:アッシマー/左腕部装甲に裂傷】
【生徒状況:左頬に赤み】
【武装:アインラッド(停止)】
【所持品:ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx3、携帯糧食x5)
     ウェストポーチ(ナイフx1、ペンライトx1、煙草x1、コンパス付腕時計、筆記用具 携帯糧食x3)
     ショルダーポーチ(ポラロイドカメラ一式) ライターx1 毛布 包帯 幅広の布】
【行動方針:1.自衛の確保 2.情報の入手】
157ブレイム ◆TjmPhqaoLQ :2005/06/12(日) 23:56:07 ID:???
『『……あなたと進化論について語り合う気はありません。
 興味、ありませんから。
 ……あなたに私の全てを教えるつもりもありません。
 そんな必然性、ありませんから。
 それに私、その手の研究所の職員って……抵抗あるんです。
 無理矢理に集められた被験者が一体どんな目に遭うのか、その末路は……
 強化人間を生み出してきたあなたなら、わかるでしょう?
 命を何とも思わない、まるでモノのように扱って、殺して……
 私はそんな研究や実験を見て、実際に受けて、たくさんのものを失ってきたんです。
 それは……つらいことなんですよ』

ま、当然そういうことになるな。
私はそう思った。
まぁ、口を割らないなら、頭を割って調べるしかないか。
私はそう考え、そして、そのことが用意ではないことに頭を悩ませた。

まがりなりにも相手は強化人間だ。強化人間の操るMSと素人の乗るMSと、
どっちが強いかと聞かれたら、その答えは火を見るよりも明らかだ。
ならば、彼女の戦闘力を奪えばいいのだが・・・
研究所から離れて、完全に自立した強化人間を拘束する方法は、ない。
暗示をかけて、洗脳するにしても、そもそもその暗示は大掛かりな道具と、
事前に薬物などで思考力を落とす必要性がある。
今の私が、そんなものを用意しているわけもなく。
それ以前に、制御自体が成功しない確率も高い。
今までの質疑応答で、彼女の言動に異常はない。
非常に安定している。かのオーガスタ研究所の強化人間の成功例【ロザミア・バダム】よりも。
そもそも、MS同士の戦いなのだから、もし私が彼女を倒したとして、
彼女の体自身が安全という保障はないのだ。
なら、どうすれば。
私がコクピット内で考え込んでいる中、さらに彼女の声がスピーカーを通して送られてくる。

『……それからもうひとつ。
 いくら私のことを知ろうと、どうにもなりませんよ。 無意味です。
 こんなところじゃね。
 それを踏まえた上で答えてあげます。

 研究所に名前はありませんでした。
 大きな機関からの出資は受けていたみたいですけど、ほとんど非合法で、
 大っぴらに研究を進めていたわけじゃないみたいです。
 それに私が9歳か10歳になる前に閉鎖解体されちゃいましたから、資料もほとんど残ってないはずです。
 強化の研究それ自体がかなり下火になってましたしね……』

その情報だけでは何もわからない・・・か。
私は、自分の使命を果たすため、オーガスタ研究所に勝手に流れてくる情報はもとより、
あらゆるところに首を突っ込み、金を流して、NTに関する情報は集めてあるが、
名前すらわからないのだったらわかりようがない。

続く
158ブレイム ◆TjmPhqaoLQ :2005/06/12(日) 23:56:48 ID:???
仕方がない。私は、要求のハードルをひとつ低くしてみることにした。
《強化人間》アルマについて調べるのではない。
《少女》アルマについて調べるのだ。
彼女の《少女》の部分を丹念に調べていけば、《強化人間》の部分にも接触できるはずだ。
私は、そう考え、それを実行に移すために、彼女にひとつ話をすることにした。。

「わかった。話したくなければしゃべらなくてもいい。
 だがね・・・私はどうしても君について知りたいのだ。たとえ、無意味であろうとね。
 そこでだ、ひとつ頼みごとがあるんだがね。
 私は君と行動をともにしたい。それを許可してくれないか?
 無論、そちらに何にも良いことなしで・・とは言わない。
 こちらには君にプレゼントできるものもあるのでね。
 許可してくれるのならそれを渡そう。
 どうかね?」

私がそう言い切ったとたん、スピーカーから見知らぬ男の声が聞こえてきた。

『生徒の皆様。おはようございます。』

そういって、その声は途絶えた。
なぜなら、私が通信回線を切断したからだ。
今は、アルマの声以外は聞きたくない。そう思って、私は即座に通信回線を切断していた。

彼女の返事はまだ来ない。彼の胸のうちで、彼女についての感情が高まっていく。
アルマ、あぁ、君のすべてを知りたい。君の外面も内面も、君をすべて解析したい。
君について、君を作る肉体について、君の肉体を構成する細胞について・・・すべて、何もかも。
私は、どんどんと高まっていく欲求を胸に、彼女の返事を待っていた。

【行動:アルマと通信継続中(0)】
【位置:I-13】【行動値残り:4】
【機体状況: V2アサルトバスターガンダム;異常なし】
【パイロット状況:異常なし】
【武装:頭部バルカン砲×2 肩部メガ・ビーム・キャノン 肩部スプレー・ビーム・ポッド 
    腰部ヴェスバー×2 ビーム・サーベル×2 光の翼×2】
【所持品:ディパック《中には 水(2リットルペット満タン)×2 コッペパン はちみつ MOディスク 薬箱 にぼし一袋》
 ディパックはνガンダム内に放置】
【方針:《強化人間》アルマについて知りたい。それこそ何から何まで。】
159クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/13(月) 11:47:51 ID:???
「こっちも信用してもらってよかったよ。
 このゲームの中で見ず知らずの他人を信じるなんて、ちょっと難しい事だと思うし」

そっか…………そうだよね。
このゲームって人をすぐ信用しちゃいけないんだよね。
でも、この人はわたしを助けてくれたし…………
きっといい人だと思う。

「俺はロイド・エンデバー。ロイドのほうで呼ばれるのが慣れてるかな。まぁZ+の人でもいいよ」

ロイドさんか…………
階級を言わないって事は軍人さんじゃないのかな?

「そういやさっきの通信で君のお仲間って言ったけど・・・えーと」

そう言ってロイドさんは少し迷った素振りを見せた。
お仲間?わたしの仲間…………?
って、どういう事だろう?わたしと同じ、痛い力を持ってるのかな?
そんな事を考えてると不意に脇のデイパックからボールペンが浮き出した。

「え、え、えぇっ!?」

勿論、誰かが動かしてるなんて事はない、と思う。
マジック、かな?
でもそんな感じじゃなくて、本当に浮いているように見える。
ふわふわと浮かんだそれはロイドさんの手のひらに乗った。

「厳密にいうと、俺はニュータイプじゃなくてサイキッカーなんだ。超能力者ってやつさ。
 あ、いや、別に自慢しよーとかそういうわけじゃないよ?」

ニュータイプ?
サイキッカーっていうのは、超能力者の事だよね?
確か、ネオ・ジオンにいたお姉ちゃんがくれた娯楽雑誌に載ってたのを見た事あるけど。
ニュータイプっていうのは、誰も教えてくれなかったなぁ…………
でも、凄いなぁ、ロイドさん。
確かスプーンとかも曲げれるんだよね、超能力者って。

「え、えっと何かやって欲しいことある?できる範囲でやるよ。いや、別につまんないって言うならいいけど・・・」

本当に出来るんだ…………トリックとかじゃないんだよね。
それじゃあ………
腰に提げてたウェストポーチの中からボールペンを出してロイドさんに渡す。
ロイドさんが用意したものじゃないから、タネを仕掛ける事なんて出来ないはずだ。

「えっと、えっと、そのボールペンを浮かせて…………」

とてとてと走ってロイドさんとの距離を置く。

「わたしの手のひらまで届かせられますか?」

両手を上げてバンザイのポーズを取る。
ここまで浮かせて飛ばせれるなら、トリックじゃないよね?
わたしはキラキラと瞳を輝かせながらロイドさんの返事を待った。
160クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/13(月) 11:48:44 ID:???
>>154-155
ドキドキしながら待ってるとブリッジにあるモニタースクリーンに男の人の顔が映る。

「おはようございます。小さなレディー。
 それからジェントルマン、と呼ぶにはまだお早歳のようですね。
 失礼、御初に御目にかかりますキリト=ヴァルリックと申します。」

小さなレディーって、わたしの事?
そう言われると、何かちょっと照れちゃうな。
ネオ・ジオンにいたお姉ちゃん達みたいに『ないすばでぃ』じゃないし。

「早朝に失礼します。一様御近くを通りかかっているようなので
 挨拶は済ませておこうかと思いまして、引きとめてしまったのなら
 申し訳御座いません。
 ただ状況が状況ですので意向を確認したいと思いまして。」

近くを通りかかったから挨拶してくれるなんて、律儀な人なんだなぁ。
それに、話し方も礼儀正しいっていうか…………
わたしみたいな子供にならタメ口でもいいと思うけど。

「おはよう!」

モニターに向かって手を振りながら挨拶した。

「えっと、そんな丁寧な言い方じゃなくていいと思いますよ?
 あと、意向って…………これからどうするか、っていう意味ですよね?」

難しい言葉はよくわからない。
多分、意味はあってたと思うけど。

「えっと…………わたしは、おにいちゃんを探したいんですけど」

チラ、とロイドさんを見た。
ロイドさん、許してくれるかな?
そういえばロイドさんにはおにいちゃんの事、話してなかったよね…………

【行動:05番に通信(1)】
【残り行動値:3P】
【パイロット状況:(*゚∀゚)オニイチャン、サガシテモイイ?】
【位置:N-21】  
【機体状況:MSA-005メタス/やや装甲破損 左肩部アーマー一部破損】
【武装:アームビームガン×2(EN70%)、ビームサーベル×6、ビームローター】
【所持品:ディパック 水2g1本と半分 筆記用具一式、特殊トランシーバー×2(一対)鍋】
【メモ:『ここは地きゅう・おにいちゃんは地きゅうにいる・わたしはおにいちゃんをさがす
     きたいはメタス・アイテムは黒いきかいがふたつ・ぶきはそらとべてたてにもなる
     グフはおじいちゃん・ゲルググはおねえちゃん・アッシマーはおじちゃん・バウはいたい
     おじいちゃんは大いで偉い・大いは仲間・いたいのはわからない
     アッシマーはやらない・ゲルググつよい・大いつよい・ガンダムを倒す・Zプラスは仲間
     戦艦はZプラスの人のもの』】
【行動方針:何百回敗けても、必ず生き延びてジオンの志をわたしの次の世代へ おにいちゃんを探す】
161ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/13(月) 14:48:49 ID:???
 まどろみの中で感じた。今度は北から。
ナインティがそれを感じたのは街角の小さなホテルの一室のノーマルなベッドの中。
雨の中で二人感じた時と全く同じノイズが前頭葉を一気に突き抜け脳全体に行き渡る。
痺れるような、痛いような、締め付けられるような、表現の仕方は曖昧だが何が起こったかは確認できる。
その昔、自分がその場所を無邪気に走り回っていた頃。何度も何度も味わってきた。

 人間が戦場で死んでいく──その感覚。

 一瞬、頭の上に疑問符が浮かんで消えた。
これを味わうのは随分と久しぶりで、とてつもなく嫌らしいものだったはずなのに。
先程もそうだった。平然と受け流してしまった。慣れてしまったかのように。既に脳が覚えていたように。
戦場には、ここ7年…いや8年? 時間などどうでもいいくらい触れてすらいないはずなのに。

「(アレのせいか…?)」

 ふと、自分が乗っていたバウが頭に浮かんできた。
久しぶりに軍事用MSに乗り込んだことで、戦意が高揚してきているのだろうか。
いや、そんなことは無い。今の自分は税金も収め社会福祉も受けられる一市民であるはずだ。
まさかまた戦場に舞い戻ったなんて…呪われた運命も度を過ぎている。

 外の雨も未だやまない。 頭の中の霧も依然晴れない。
流れる雨音に自分の記憶を過去現在と思い出してみるが、何も思い当たる事も無い。
終了後の掃討作戦も、仕事の残業も、銃の引き金を引くのも、PCのキーを叩くのも。
何もかも一つの出来事。全て変わらなくて同じで絶え間ないもので…。
回転させている内に、ナインティの脳はまた徐々に休息状態へと入っていった。
はっきりと「日が昇ったら街から出てみよう」と思いついた事を最後に。

 ただ、実際は日が昇っても彼はベッドから出る気配が一切無かった。
眠っている時間が一番の安堵だったからか、それともただの寝坊なのかはわからないが。
そのせいで、管制室の放送を…悲劇を淡々と伝えるその放送も聞くことは無かった。
162ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/13(月) 14:50:18 ID:???
【行動:03番の死を感知(-0P)】
【位置:B-22】
【機体・パイロット状況:問題なし】
【武装:腕部グレネードランチャー、ミサイル、ビームサーベル】
【所持品:デイバッグ(コッペパン×2 水2L入りペットボトル×2(少量消費) 前回のデータ入りディスク)
      タブレット状の精神安定剤 タブレット状の睡眠剤】
【方針:布団の中、日常へ戻る】
【同盟:無し】
163レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 15:34:03 ID:???
新たに三名の脱落者が報告された。
アロンソ・セルバンテスという名前に呼び覚まされた記憶は、グフ・フライトタイプと対峙した時のモノ。
意外に早い退場だな、と驚く一方で、手強い敵が減ったと安堵する面も確かにあった。
悼む心もまた、確かにある。

「……けどつまり、あの手練を討てるだけの参加者がいるって事か。
 しかもこのペース。
 結構積極的な連中が揃ってるのかも……」

機体の性能差によるものなのか、或いは技量の差によるものなのか、何れであるかは現時点では不明だ。
恐らく今後も判明する事は無いだろう。
先程己が助けた青年が、アロンソの死に一役買っている事など思いもよらず、レベッカは其処で推測を打ち切った。
そして気付く。
何時の間にか随分と独り言を呟く機会が増えたことに。
溜息一つ、丸く吐き出して曇天の空を仰ぐ。結わえた金糸を絡めた指の動きが、ふと止まる。

――ニースも独りかな……独りで泣いてるのかな……。
   ……ハハッ……流石に泣き止んでるよね。

まさか男と情交の真っ最中であるとは、レベッカは夢にも思わない。
薄桃色の唇の端、浮かぶ笑いは自嘲の色。
自分と彼女とは今や否定しあった者同士の間柄だ。
定めた約束の期限も切れた。
今更何を案じようというのか。
カメラアイを叩く水滴が流れ落ちて消えるように、ニースへの想いも何処かへと流し去る事にした。
沈黙。
再び指先は、レベッカの金髪で遊び出す。
一方で視線はモニターの中、映る白いMSへと――嫌な青い色が視えた機体だ――向かい。
そして意識は白いMSから降りて気を失っていた、今は医務室で寝ているだろう青年へと向かう。
164レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 15:37:08 ID:???
脳裏に甦る、助けた時の記憶。
刹那。

「!」

頬が熱くなる。
異性の体へと自発的に直接触れたのは、今回が初めてであったが故に、印象はあまりに鮮烈過ぎた。
白い手袋に包まれた白い指先には、今も触れた時の感触が残っているかのよう。
更には肌の感触の記憶が青年の汗の匂いの記憶までを呼び覚まし、レベッカは慌てて髪から離した手で胸を押さえた。
柔らかくたわんだ感触の向こうに、押さえ切れない鼓動の速さがあった。
意識の中の残り香が鼻腔に届く限りは、収まってくれそうにない。
忘れようと意識すればするほど、残り香の記憶は色濃くなって少女を苛む。

――ああっもうッ!

ディパックから取り出した水入りのボトルをあおり、一息。
どうにも決まらない。
火照った顔を苛立たしげに手で仰ぎながら、改めて意識を青年へと向けた。
勿論、触覚や嗅覚に関する情報は極力脳の片隅に追いやりながら――

「ルイス・ガルシア。
 できるならさ……ボクの甘さは、キミに向けたもので最後になって欲しいな……」
165レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 15:37:49 ID:???
【行動:動悸を抑える(-1)】
【位置:U-22(市街・開閉式ドーム球場・コックピット内)】
【残り行動値:3】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、
       右マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:シャワー浴びてさっぱり、(*/∇\*)→('A`)】
【武装:ビームサーベル×1、左腕ビームシールド】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx4、
      アイソトニック系飲料1.5L×1、携行食糧1週間分、救急箱一式)】
【服装:クロスボーン・バンガードの軍服】
【方針:火器の確保】
【同盟:なし】
166ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/13(月) 18:38:16 ID:???
>>159-160
反応は上々。というかむしろ、最高!
こういう子は素直に喜んでくれていいな。
部隊では生きることに必死な奴ばっかで、見せてもこういう反応が無くてやりがいが無かったし・・・
などと過去を振り返りつつ悦に入っていると、突然クルルがボールペンを取りだした。彼女も持ってたのか。
「えっと、えっと、そのボールペンを浮かせて…………」
そういって彼女は俺と距離を置いて。
「わたしの手のひらまで届かせられますか?」
両手を上げてバンザイのポーズを取るクルル。かなり楽しみにしてるらしい。
いいなぁ、この表情。こういう表情を見たのは何年ぶりだろう。こっちも張り切らないわけにはいかない。
「もっちろん!朝飯前さ!」
俺にとってこんなのは簡単な事。では早速・・・。
>>154
・・・興ざめだ。このタイミングで通信するな、このイカレポンチ。
せっかくいいところだったのに。クルルもそっちに気がいってしまった。むかつく。
しかも通信してきたのは大人、おまけにさっきの狂気丸出し野郎(今は少し思念の形が違うようだが)。余計気にくわない。
だいたいそんな所にいないでさっさとそこからどけよ。邪魔だ。あんたよりほんの少しだけ信用できる奴と待ち合わせしてるんだっての。
クルルのお兄ちゃん探しも気になったが、後で聞こう。この狂人の真意を探った後で。
「少し下がっていてくれないか、クルル。大人は信用できないからな。あ、これ返すよ」
そう言ってぽん、と手をクルルの頭におく。それと同時に、ボールペンが浮いた後すっぽりとクルルの手に入った。もちろんサイキック。
届かせるだけでなく、ぶんぶん動く手にわざわざ入らせたのは俺なりのサービスだ。もちろん笑顔もセット。
そして通信してきた、モニターの中の大人へ振り返る。さっきの笑みはかけらもない表情で。
「わざわざご親切にどうも、お貴族さん」
イライラしているので、かなり棘のある言い方になった。
「俺の名前はロイド。で、こっちの女の子がクルル。
 逆にあんたに聞かせてもらう・・・なんで通信してきた?」
クルルの時とは180°、いや540°は違う態度で対応する。見ず知らずの大人を信用してやる義理も助けてやる義理も無いからだ。
「このゲームのルールは理屈の上だけでなく、感情の上でも分かってそうだがな?あんたはもう既に一人殺してるんだから。
 あんたが戦う様子も見たし、その際発していた『狂気』も・・・はっきり感じさせてもらった。
 少なくともこの状況下で、お友達探しをする人間じゃないだろう。違うか?」
キッ、と目を尖らせる。そう、敵に対するときの目。
「3ブロックも開いてるのにわざわざ通信してきたんだ、その労力に答えてやる。
 この子を守るのと、ここで待ち合わせをしている人を待つってのが当面の俺の意向だ。
 さあ、もう一度聞く。あんたがこんな無駄話をもちかけた理由は何だ?」
167ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/13(月) 18:39:10 ID:???
【行動:会話(0)】
【位置:N−21、森林】
【残り行動値:4p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント、120mmマシンガン(全て新品同然)
    予備 クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)二連装ビームガン(取り付けしていない)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:異常なし】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、ザンスカール製ノーマルスーツ、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml】
【行動方針:キリトの真意を探る、できれば消す】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
【守る:20番・クルル=ヴァルデーン】
168管制室:2005/06/13(月) 19:31:00 ID:???
業務連絡

>142の書き込みから丸一日以上の時間が経過しましたが
クラウディアさんからの連絡はありませんでした。
非常に残念ですが、テンプレのルールにのっとりまして
現時点でクラウディアさんは放棄と決定させて頂きます。
以後、急病で入院などで連絡が取れないなど
いたしかたない理由であったとしても同キャラでの復帰はできません。
ご了承下さい。

尚、同キャラの復帰は不可能ですが
新規受付中であれば別のキャラでの参加は可能です。
169ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/13(月) 21:08:16 ID:???
「ひっ…ん…!んぁ…あ、あ!」

…ニース自身の意思では、もうどうにもならない。
口から漏れる声を、どうしても止められない。
いや。
アルバートの吐息が、唇が、舌が、それを許してはくれない。

痙攣するように、震える手足。
アルバートの吐息が耳にかかって。
アルバートの唇が瞼に触れて。
アルバートの舌がまなじりを這って。

いまやニースは、アルバートの愛撫がもたらす快感という波に翻弄され続け、波間から
覗く残った僅かな理性も、快楽という海の底に沈みつつある。
そしてニースを翻弄する海の主は、彼女を海の底深くに沈めようと、更に波を送り込んでくる。

突然ニースの後ろ髪が引かれ上を向かされる。
何をするのか、考える間も与えられないまま、ニースの唇にアルバートの唇が触れた。
それは、ニースの初めてのキス。
憧れの、好きな人から与えられたくちづけ。
こんな殺し合いの真ん中にいても、それは多分、世界一幸せな瞬間。

でも当のニースはそれどころではない。
更に顔中に与えられるくちづけ。
1つ1つのくちづけから、アルバートの優しさと力強さが伝わってくるようで、もはやニース
の心臓と感情は爆発寸前だった。
そして…。

再び重ねられる唇と唇。

「ん…ん、んん……」

それは、それまでと違う、深い深いくちづけ。
それは、お互いの存在を確認しあうかのような、熱い熱いくちづけ。
それは、ニースの本能を解き放つ、長い長いくちづけ。

重なった唇の僅かな隙間から、アルバートの舌が滑り込んでくる。
舌は、ニースの上下の歯茎をとんとんと突ついてくる。
まるで玄関をノックする郵便屋のように、こんこんと、重なった唇の中をノックする。
ニースは求めに応じて、おそるおそる口を開く。
その瞬間、大人しかった郵便屋は正体をあらわしてニースの口腔内に入り込み、その中
を蹂躙していった。

続く
170ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/13(月) 21:09:53 ID:???
アルバートの舌がニースの舌を絡めとり、その先から唾液を流し込む。
そう思ったら、今度はニースの舌を軽く噛み、唾液を吸っていく。
呼吸も困難になるほどの、長く濃密なくちづけ。
部屋の中には荒い息づかいと、重なった唇の隙間から漏れる、湿った音だけが響く。

突然、ニースの身体がふわりと持ち上がった。
アルバートがニースをだっこしたのだ。
そして部屋のベッドまで運ぶと、そこに横たえる。
その間も、ずっと2人の唇は深く重なったままだった。
接着しているのではないかと思えるくらいに、離れようとしない唇。
ニースの口の端から、唾液が一筋垂れていく。
…更に少しして、2人の唇が離れる頃には、ニースの理性は完全に波間に消えていた。
あとに残ったのは、本能という獣。

ニースのそれを察したのか、アルバートの手がすっとニースの内股へ移る。

「アル…バートひゃ…!あたし…を…!
あたひを…めちゃくひゃに…してくだ…さ、あ、あああ!」

新たな、そして強烈な快感に身を任せつつ、アルバートの耳元で叫ぶ。
ニースの、初めての時が迫っていた。

【行動:2番9番に回線継続(0)愛撫に身を任せる(−1)】
【残り行動値:3P】
【パイロット状況:異常なし】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、アルバート…さん】
171ジェンセン・スティール:2005/06/13(月) 21:17:45 ID:???
 雨の中、一歩一歩足元を確かめるように平原を進んでいく。
 定例放送が入った。わずかな間に、もう3人。
 いや、実戦なら一瞬で消えてもおかしくない人数ではある。
 多いのか。少ないのか。俺の思考と感覚はその疑問に沈黙する。
 
 そして、俺もまた。
 
 ハイザックは俺の気分を知ってか知らずか、警告音も出さず
黙りこくったまま。一路、西へ。
  
【行動;w17道路→v17平原→v18平原→U18平原→T18平原】
【位置:w17】
【機体状況:ハイザック・正常】
【パイロット状況:好調好調っ】
【武装:ヒートホーク・ビームサーベル・ミサイルポッド】
【所持品:ディパック( 食料セット4日分 ペットボトル(水入り)×2
     エレキギター、自作治療用セット×1、自作栄養剤セット29回分)】
【方針:次は索敵。】
172ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/13(月) 21:24:14 ID:???
「さぁ、3点リードで迎えた九回中継ぎナイトこの場面で満塁となって左のマイクを迎えます。」
ここはナンの変哲もナイ野球場、コロニー公社がスケジュールに沿って変える風向きと
たまに悪戯のように降る雨が球場の雰囲気を盛り上げる”ボールパーク”だ。

「レッドウェーブ選手の交代をお知らせいたします。
 ピッチャー・ナイトに代わりましてルイス、ピッチャー・ルイス=ガルシア背番号30
 キャッチャー・ベイスに代わりましてテツヤ9番キャッチャー・テツヤ=マトヤマ背番号2」

球場にどよめきと感性が沸き起こる。
九回裏満塁3点差一発逆転サヨナラの場面
下位打線の8番バッター左対左はまず望めない場面での投入。
しかもルイスはまだ若く新人で最近1軍に上がったばかり
それと共に投入されたベテランキャッチャー・テツヤ
ナンともミスマッチな組み合わせでゲームが再開されようとしたその時。

「ブラックタイガース選手の交代をお知らせいたします。
 8番ライト・オマールに代わりましてバッター・スコット ピンチヒッター・スコット=ブレット背番号49」

一球目は見逃し二球目はファールそのあとも粘られて2・3のフルカウンとへと粘りに粘られての
13球目ワインドアップモーションから投げた・・・・・・・。

****************************

そこで目がさめた白い部屋・・・・。
医務室、シャワーを浴びて用意されていた薬類を飲んでまた寝た・・・。
切れ目の入った衣服からジャケットを取り、その中からビニールに包まれたタバコを取り出す。
ビニールの包装を取る人間も少なくはないが、ルイスはどちらかと言うとビニールを残す方だった。
少し湿気た煙草に火をつけて球場の外に出る。
球場でパジャマ姿と言うのも笑い者だが、今はこの服しかない。

「あとでコンディショニングルームでもいってユニかメッシュジャージかトレーナーTシャツでも取ってくるか。」

球場の外に出てまず自分の機体を見る。
先ほどと代わりは無い、雨は先ほどより弱まりはしたもののまだ降り続く。
気づきはしなかったが自分の機体から、結構離れている。
この雨の中わざわざこの距離を運んでくれた人物は誰なのだろうか。

新しい煙草の煙がまたルイスの前に立ち上っていた。


 【行動:医務室→球場ゲート前(−1)起きる(0)煙草を吸う(0)】
【残り行動値:3P】
【パイロット状況:少しスッキリ 少し風邪気味】
【位置:U―22(ドーム球場)】  
【機体状況:右肩アーマー破損・左肘関節部アブソーバー欠損・左肘から先の装甲及び内部破損 】
【武装:頭部60mmバルカン砲×2(残弾84%)、胸部60mmバルカン×2(残弾72%)、 ビームサーベル×2(散弾)ビームライフル】
【所持品:シガレットケース(葉巻10本)煙草3箱(49本) ライター パジャマ  ボイスチェンジャー アサルトライフル予備マガジン×2 H&CUSP予備マガジン×1 パン×2 水2L 清涼飲料水4L   缶詰×5 塩1袋 下着類 】
【行動方針:俺を助けてくれたのは誰だ?】
173風巻陣平 ◆6fCY9104KQ :2005/06/13(月) 22:39:36 ID:???
闇夜に降り頻る雨を切り裂き、灯台に向けて川沿いに飛行する。
無言で操縦桿を握る中、定時放送が入った。

三人の脱落者。
ネイゲストと同じく、接した事の無い者達ではあったが……。
それにしても、この催し物の原因が『ご冥福を』等と口走るか。
逝った者にしても、これほどの屈辱はあるまい。

そして、雨はまだ止まぬらしい。
それは彼らが降らせる物か、更なる悲劇の前触れか。

……セイバーフィッシュは南を目指し、飛び続けるのみ。

【行動 : 移動-4 残行動数0】
【位置 : W-7→U-7→U-13(河川上飛行中)】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:異常無し】
【パイロット状況 :良好】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4 60mm機関砲×1
       両用ロケット弾×6 落下式増層×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 ディパック 水2L入りペットボトル×2 デジカメ
       アルバム(未発見) コーヒーセット 巻き寿司4食分 レーション×6食分】
【方針 : ロイドと合流 キリト撃破】
【同盟 : 13番 ロイド・エンデバー】
174アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/13(月) 23:01:47 ID:???

『わかった。話したくなければしゃべらなくてもいい。
 だがね・・・私はどうしても君について知りたいのだ。たとえ、無意味であろうとね。
 そこでだ、ひとつ頼みごとがあるんだがね。
 私は君と行動をともにしたい。それを許可してくれないか?
 無論、そちらに何にも良いことなしで・・とは言わない。
 こちらには君にプレゼントできるものもあるのでね。
 許可してくれるのならそれを渡そう。
 どうかね?』

わ ・ た ・ し ・ に ・ つ ・ い ・ て ・ し ・ り ・ た ・ い ・ ?

(それはアレですか私にてゆーかTPOをわきまえなさいTPOを
 いやいやいやいやこれはゼッタイそういう意味じゃないでも
 私の何を知りたいんだろ知ってどうすんのよどうしようもないわよねきっとそうよね
 断ったらどうなるのかな今も昔も流行のストーカーってやつ?に早変わりするのかな
 てゆうかエンコーじゃないよねエンコーじゃないって信じたいんだけど違うよね
 ああもう私ナニ考えてるんだろう何やってるんだろうアルマしっかりしなさい!
 …………)

ちなみに、定期放送は録音モードを解除していなかったのでそのまま録音されていた。
半分ふざけの妄想モードから戻ったアルマは落ち着いて話を整理する。
この男は私について知ろうとしている。 理由は不明。
この男は私について来ようとしている。 私を知るために。
この男は、同行を承諾すれば何かをくれると言っている。 まぁそれはいい。
こちらが隙を見せなければ手を出されることはないだろうが、万が一
薬物でも使われようものなら、いくらその手のものに耐性があっても
後手に回ることになる。 それはいただけない。 ならば……
そうさせなければいい。 それはそれで容易ではないのだが。

「……正直なところ、私、あなたに背中を預けることはできないと思います。
 だから何かあっても助けないかもしれませんし、捨て置くかもしれません。
 仮に……必要になれば撃つことも考えるでしょう。
 けれど、ついて来るなら構いません。 あなたの言動の責任は取りませんけど。
 敵ではない人を撃ちたくはありませんから」

言い換えれば、敵であるなら撃つということなのだが。
決して手を組むというわけではない。 同盟とは呼べない。
それでもひとりでいるよりはずっとマシかもしれない。
危険という代償は大きいが、当面気を抜かなければ大丈夫だろう。

「J-12にコンテナがあるんです。 とりあえず回収してしまいましょう。
 その後は東の基地へ向かうつもりでいますけど、いいですか?
 ……っと」

J-12を目指して移動を再開したエビル・Sだが、そのレーダーの端に光点が浮かんだ。

「N-13に機影確認。 18番、アッシマー……ですね。
 このままどこかに行ってくれればいいですけど、
 コンテナ狙いだったら接触は避けられません。
 戦えますか? 用意だけはしておいて下さいね」

実際問題、アルマは誰かを守れるほど強くはない(と思っている)。
アルマはそのまま機体を進め、J-12に入る。
あっさりと見つかったコンテナらしき物体に近付いていった。
175アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/13(月) 23:03:43 ID:???

【行動:通信中(0)、I-15→I-13→J-12・ボーナス込み(-3)】
【位置:J-12/平地】
【残り行動値:1p】
【機体状況:Green/通信回線:νガンダム、V2AB】
【武装:ビームサーベル、3連装グレネード、内蔵ヘビーマシンガン(95)、ショットクロー(8)、
     ビームライフル、Eパック、偵察ポッド、Iフィールド】
【生徒状態:Green】
【所持品:デイパック、コッペパンx2、水2gx2、栄養ドリンクx7、ノートPC、食糧、生活雑貨、
      ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:東の基地へ/様子見】

今までI-15にいたのに表記を直していませんでした。 ゴメンナサイorz
176キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/13(月) 23:03:50 ID:???
『おはよう!』

モニターに手をブンブンと振りながら元気よく挨拶してくる
少女が映っている。その仕草はとても愛らしい姿だった。
それにつられ笑顔(というか常に)で軽く手を振り返す。

『えっと、そんな丁寧な言い方じゃなくていいと思いますよ?
 あと、意向って…………これからどうするか、っていう意味ですよね?
 えっと…………わたしは、おにいちゃんを探したいんですけど』

(・・・・・・似ている。しかし、確証は薄いですね。)

一目その少女の姿を確認した後、彼女の問いに答える。

「丁寧な言い方は何と言いいますか癖、と言うより習慣ですよ
 それと、その御兄さんを探したいのなら、まず名前を
 相手に提示した方が手がかりを教えてくださるかも知れませんよ
 ”御兄さん”と言われるだけでは、相手方には見当もつきませんから。
 それにこの一帯にその御兄さんがいる確証も必要ですし
 それに機体に登録されてある名簿で・・・・・・・・・・」
 
>>166

少女へのアドバイス中にまだ少年の雰囲気がある男が割り込んできた
少々敵意をいだいてこちらに質問をしてくるが
彼にとっては余り気にならないささいなことだ。

「すいません。やはり御引止めをしてしまっていた様ですね。
 先も申しました様に御挨拶です。
 3ブロックも離れていても御挨拶をしたのは何も貴方方だけではありませよ
 ここに居るのも何かの縁ですし私自身、御挨拶は習慣になっている様です。
 先日、私の戯事に付き合ってくださいましたタカヤさんと言う方にも
 ご挨拶は済ませましたしこれで三度目?ぐらいでしょうか。
 御大事ですよ御挨拶というものは。」

と子供にわざと難しい顔をして説教臭く言い聞かせる様に話す。

「それに人を殺す殺してないに関らずご挨拶しては行けないんですか?
 それは違うでしょう。それに戦闘というモノには激しい人間性が出るものですよ
 それが私からは狂気が感じられただけだ。御友達作りをしているつもりも無いのですがね
 この場所に向かってきているかもしれない御相手だとしたらしておくのが礼儀でしょう?
 まあ以上のことを纏め上げますと、”御相手に気が付いたのなら御挨拶しましょう”。
 言う習慣がそういう行動をとらせたということです。御理解いただけましたか?」

それは、いわゆる昔の職業?病のようなもので
子供に教える立場の人間が話す様な口調で説明する。

「それに貴方もそのような言い方をされているのなら貴方自身が矛盾していることに気が付きませんか?
 ”その娘を守る”というのは立派なことですが理解しているのでしょう?ここでのルールを。
 その意思を貫くなら待ち合わせをしている方ともいずれは滅ぼし会うことも
 最後に貴方自身が自ら消えることになることも。」
177キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/13(月) 23:06:40 ID:???
【行動:戦艦に通信中(-0)御説教?(-1)】
【残り行動値:3】
【位置:N−18】
【機体状況:Gキャノン・頭部消滅】
【武装:ビームサーベル×2、 肩部130mm4連装マシンキャノン×2(残弾90%)
    腕部ダブルビームガン×2 ビームソードアックス(ソード・アックス・ピックの3形態)
     ビームショットライフル(EN80%) 6連装ミサイルポット×6】
【所持品:ディパック 水1g1本 首輪 
      レイピア×2 グラサン数個 懐中時計 お守り】
【行動方針:挨拶は大事ですよ・・・(敬)】
178レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 23:34:46 ID:???
<クラウディア・ゲール視点より>

レベッカ・テスタロッサは、初めて見たときから何処か異質だった。
少なくともクラウディアは彼女の中に、自分達とは異なるモノを感じ取っていた。
ソレは彼女の持つ軍人としての経歴に由来する雰囲気だったのかもしれない。
彼女の駆る黒いMS、ベルガ・ギロスの放つ異様な存在感が原因だったのかもしれない。
或いは――もっと本質的な次元での感覚だったのかもしれない。

例えば彼女が時折覗かせた、何かへの強い執着のような。

*  *  *  *  *

この街に入ってから、既に一昼夜が過ぎ去ろうとしていた。
特別な事件も無く、襲撃者も訪れない平和な時間をクラウディアたちは過ごしていた。

ニース・エルネージュ。
アルバート・パーシング。
エルネスティーネ・デア・フォーゲルヴァイデ。
そして、レベッカ・テスタロッサ。
自らの他にこれだけの人物が揃いながら、誰もが殺しあう事無く協調しあう状況。
歓迎し、享受すべき状況――その筈だった。

だが街の外では今、この瞬間も何処かで誰かが戦い、そして死んでいくという現実が確かに存在している。
定刻通りに繰り返される管理側からの放送が何よりの証。
スタッフが死者の名前を読み上げるたび、その現実は否応無しに彼女の眼前に突きつけられるのだ。
179レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 23:36:15 ID:???
どうして、と思う。
何故自分達はこんな狂った世界に放り込まれねばならないのだろうか。
多種多様なモビルスーツに乗り、技量と知恵の限りを尽くして最後の一人になるまで殺しあう事を義務付けられた世界。
さながら数千年前のローマ、コロッセウムの剣闘士。
非力な者は容赦なく淘汰される、まさに弱肉強食の法則。
自分はか弱き兎に過ぎず、きっと彼女は――レベッカは、それを喰らう獅子の中の一頭なのだ。
先日の戦闘で漆黒のMSが見せた動きから彼女の技量を推察したクラウディアは、そう確信していた。

今は、まだ味方。
けれども何時か必ず、レベッカ・テスタロッサは自分達に牙を突き立てにやってくる。
予感めいた確信を胸に、クラウディアはアルバートから指示された通りに、デパートへと食料を確保しにやってきた。

「?」

首を傾げる。
誰の姿も見当たらない。待機したままのゲルググが、入り口前に立っているだけだ。
ニースか、或いはアルバートの何れかはいるだろうと予想していた彼女は、幾分か気落ちしたように肩を落としてデパートの中へと進んでいった。

「ちょっと……眠っちゃってたからかな」

きっと彼女たちも、何処かでこの雨を凌ぎながら休息しているのだろう。
もしかすると二人一緒かもしれない。
ならば、無理に探してニースを邪魔しては悪い。
人の恋路を邪魔する奴は――というところか。
仕方ないか、と呟いてエントランスホールを見回した彼女の、視界の片隅に映ったのは綺麗に纏められた食料と飲料だった。
二人分と、幾分かの余りとが壁際に置かれている。
また、ホール中央の吹き抜けを支える柱には油性のペンでアルファベットの羅列が記されていた。
<S/C/U/S/A>
それが謝罪を意味するイタリア語である事に思い至らず、クラウディアは軽く首を傾げただけで思考の外へと追いやった。
彼女は知らなかった。
例えば食料と水が綺麗に仕分けされ、纏めてあったのは誰の心遣いによるものかを。
例えば昨夜、此処で何があったのかを。
雨の降る夜に誰が涙を零し、誰が怒り、誰が嘆いて憤ったのかを――クラウディア・ゲールは知る由もなかった。

*  *  *  *  *
180レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 23:38:22 ID:???
コックピットの中、朝の定期放送に耳を傾けるクラウディアは愕然としていた。
読み上げられた名前は三つ。
即ちこの12時間の間に、新たに三人の命が誰かによって奪われたという事。
次は自分かもしれない。
或いは姿の見えないアルバートとニースの二人も、今この瞬間に、何処かで殺されているかもしれない。
想像は悪しき方向へと加速度的に進み、最悪の結果ばかりが思考の果てに提示される。
歯の根が合わない。
体を濡らした雨はとうに拭い去ったというのに、震えが止まらない。
掻き抱いた手の指までもが、悴んだように小刻みに震え続けてしまう。
死にたくない。
誰か、タスケテ――

*  *  *  *  *

そして、彼女は見た。
黒雲が垂れ込め、降り続く雨に薄紫に煙る灰色の街の中を、人の形をした闇色の何かがゆっくりとやってくるのを。

「ヒッ……」

思わず息を呑む。
その姿はさながら、伝説にある吸血鬼のように見えたから。
震える手がレバーを握り、竦む足がフットペダルを踏み込もうとして――動けない。
まるで射竦められたかのように、クラウディアの体は彼女の意思を無視し続けている。
その間にも、闇色の吸血鬼はゆっくりと、焦らして楽しむかのようにゆっくりと、彼女との距離を縮めていた。
揺らめく影が迫る。
闇色のフードの奥、灰色の肌の死神が笑う。
やがて右手に携えられた剣が鈍く輝き、白刃が徐に振り上げられ……

*  *  *  *  *
181レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 23:39:51 ID:???
「うわぁぁぁっ!?」

絶叫。
コックピットの中に思いっきり響き渡った自らの悲鳴に、漸くクラウディアは目を覚ました。
今、彼女がいるのはニースのゲルググから数区画離れたビルの陰。
乗り手のいない彼女たちのMSが何者かに襲われないよう、姿を隠して警戒に当たっていたところだったのだ。
自分の体を見下ろす。
何処も血など出てはいない。
辺りを見回しても当然、黒衣の吸血鬼など何処にもいなかった。

「夢……か」

ホッと胸を撫で下ろし、改めて周囲の状況をレーダーで確認する。
索敵範囲内に表示される光点の数は一つ増えてはいたものの、新たな反応は野球場近辺から動こうとしないままだ。
その近くには、レベッカ・テスタロッサの機体の反応。
クラウディアは思う。
彼女もまた、死に対して怯えるような事があるのだろうかと。

「え?」

反応が、消えた。すぐに現れ、そしてまた消える。

「そんな……っ!!」

慌ててコンソールを操作し、索敵半径を縮めて精度を上げる。
途端に位置トレースが追いついた。
消えた原因はすぐに判明した。
速いのだ。
広域レーダーでは、精密な位置のトレースができない程に、レベッカ・テスタロッサの駆る黒い騎士は速く翔けているのだ。
ビルとビルの間を、陸橋の上を、陸上競技場の真ん中を最短距離で駆け抜ける、一陣の黒き疾風と化していたのだ。

そして、凶つ風の吹きつける先は――ゲルググと、シャッコー。

*  *  *  *  *
182レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 23:42:25 ID:???
<レベッカ視点>

視えた。
何の色も伴わず、ただ機体だけが二つ、其処にあった。
寄り添うように、其処にあった。
まるで何も警戒していないかのように、まるで昨晩までの平穏を永遠に享受できると信じるかのように。
まるで、無事生きている事が、当たり前であるかのように――

命を全うし、紡げる事が当たり前であるかのように、彼らは其処にあった。

腹立たしい。
だから、現実を突きつけてやる。
幻想を砕いてやる。
その為に今、レベッカ・テスタロッサは黒い死神を駆ってひた走るのだ。

そう自分に何度も言い聞かせて、彼女は走った。
そうしなければ、走れなかった。

街は雨に煙る。
灰色の街は霞が掛かったようにその根元をぼやけさせ、ほんのり紫に染まっている。

住む者の誰もいない街。
幽都の中を、闇色のフードを纏って灰色の肌の吸血鬼は進む。

鈍い色の光の刃を右手に携え、小柄な巨人が、ただ一つの目的の為。
183レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 23:43:57 ID:???
『友だちになれると思ったから……ッ!!』

そして吸血鬼は立ち止まる。
ゲルググとシャッコー、その100mほど手前でスピードを落とし、ゆっくりとした歩きに動きを変えた。
相対距離表示は縮まる一方。

『レベッカさんとなら……ッ!!』

そして――ついに、一挙手一投足の間合いに、至る。

させない! ――そんな意思を孕んだ色が、視えた。
視界の後ろ。
ビルの陰から飛び出す銀色の騎士。その手にはビームサーベル、そしてガトリングシールド。
驚く暇すら無かった。

そんなものは、何れにも与えられはしなかった。

驚くより先に彼女の体を動かしたのは、兵士としての反射だったのか。
来る日も来る日も重ね続けた研鑽の結果が、彼女の体に染み付いていたのか。
或いはただ――
生きたいとだけを切実に願い続ける少女の、本能の為せる業だったのか。

銀の騎士が振り下ろした刃を右手のサーベルで受ける。
左手のガトリングが火を吹くより前に、コックピットに突き立てられたのは、

「こういう使い方もあるんだよッ!!」

左腕から発生したビームシールドだった。
力を失った銀の騎士の左腕を、ビームサーベルが肩口から刎ね飛ばす。

その刹那、各々の想いの色がぶつかり、混ざり合い、そして弾け飛んだ。

目の前。
想いの色が消えていく。
雨に溶けて、消えていく。
即ちそれはビギナ・ギナのパイロット、クラウディア・ゲールの脱落を……彼女の死を意味していたのだった。

*  *  *  *  *
184レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 23:46:21 ID:???
不意に落ちるオルゴール。
その拍子に、外部スピーカーのスイッチが入った。
流れ出す、G線上のアリアをBGMに……

「……ハハハッ」

笑い声が、漏れた。
黒き騎士の胎内で、少女が独り。
フードの奥で笑い声を挙げていた。
耐えかねた様に、その手を震わせながら――笑うしかないといったように、笑っていた。

覚悟などいらなかった。
気分次第で簡単に殺せると言った、ニース・エルネージュの言葉は真実となった。
だから――笑うしか、なかった。

黒い騎士は空を見上げる。
何も言わず、何も聞かず。
ただ、そのカメラアイに黒い空を映し続ける。

「地獄の炎に焼かれながら……それでも天国に憧れる……。

 そうさ、ボクは空を……太陽をッ!!」

雨。
降り続ける雨。
カメラアイの窪みに溜まった雨が、溢れて流れ出す。
止め処なく。
止め処なく。
漆黒の騎士は両目から、雨の雫を溢れさせ続けていた。

「アハハハハハッ!!」

G線上のアリアが金属的な音階を伴い、雨に煙る街並みに儚く響く。
優しくも物悲しい旋律に、レベッカ・テスタロッサの笑い声はいつしか呑まれ、灰色の街の中へと消えていった。
185レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/13(月) 23:49:28 ID:???
【行動:強襲(-1)、迎撃(-1)、外部スピーカーON(-1)】
【位置:U-22(市街・デパート付近・コックピット内)】
【残り行動値:0】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、
       右マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:「目覚め」、「もう、戻れない」】
【武装:ビームサーベル×1、左腕ビームシールド、(ビギナ・ギナの左腕)】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx4、
      アイソトニック系飲料1.5L×1、携行食糧1週間分、救急箱一式)】
【服装:クロスボーン・バンガードの軍服】
【方針:火器の確保】
【同盟:なし】
186リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/13(月) 23:55:06 ID:???
どうやら、この施設は宿舎か何かのようだ。
内装の質は比較的上質といえる。少なくても士官以上が利用していた施設らしい。
……ならば、適当な個室にでも行けばシャワー位はあるだろう。
エントランス・ホールを抜け、廊下を進み、娯楽室らしき部屋の扉の前を通り過ぎた所で。

>>140
『おねえさーん』

別の廊下より現れたファッツに、呼び止められる。
見ると、すでにファッツの姿は最初にモニタ越しに姿を見た時の“伊達男”へと戻っていた。
その時代錯誤とも言えるカウボーイ・ルックは、並の男が着るには滑稽でしかなかったが、
このファッツ=シュヴィールのスラリと伸びた長身を包むのならば、話は別だ。
常に余裕に満ちた笑みが浮かべられた甘いマスクが、実に小憎たらしくも感じられる程に決まっていた。

ふと、リトラの脳裏に、幻影のように“彼”の笑顔が蘇り―――

―――いや。

この男は違う。髪の色が違う。瞳の色が違う。その声色が違う。
大体、幾ら驚かせる為とは言え、“彼”は女装した姿で目の前に現れたりは―――

突然、ファッツが手にしていたディパックを投げて寄こしてきて、
リトラの脳裏に浮かぶ幻影は掻き消された。

「………?……!!」

慌てて抱えるような無様な姿勢でそれをキャッチするリトラに、ファッツはこう告げる。

『そのずぶ濡れの服の替え、ねぇんじゃねーの?
 無いんならそれあげるけど』

……この中に換えの衣類でも入っているという事だろうか。
例え男物だろうが気にはしないが、いや、むしろ戦装束に男も女もないと思っていたが、
ファッツと自分ではあまりにも体格に差があり過ぎるのではないか?

『ま、気に入らなかったら返してくれりゃーいいし』

ファッツは一方的にそう告げ、娯楽室らしき部屋へと入っていった。
二つのディパックを手に、ぽつんと一人残されたリトラ。

「……全く、何を考えているのだか」

その呟きは、ファッツに向けられたものだ。
だがそれだけではなく、自分自身にも向けられたものでもあった。

死んだ男に思いを馳せる程に軟弱になったという訳か?
―――無様な。

フン、と鼻で笑い、廊下の先へと進む。
察するに、ここを進めば個室が並ぶ棟に行けるのだろう。
途中、医務室らしき部屋で応急処置に必要な薬品類や包帯、ガーゼ等を確保した後、
佐官クラスのものと思われる個室へと辿りつく。

ディパックを置き、ケブラーベストを脱いでベッドへと放ると、
リトラは己の身を覆っていた戦装束を解き始めた。
少々小ぶりではあるものの、張りのある形の良い双丘がその姿を露にし、じきにリトラは一矢纏わぬ姿となる。
一切の無駄な贅肉の見られぬ、しなやかな筋肉で覆われた肢体は、まさに女豹の呼び名が相応しい。
その身には戦の勲章が幾筋か刻み込まれてもいたが、リトラはそれに気負いは一切感じてはいない。
187リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/13(月) 23:57:25 ID:???
部屋に据付のシャワー・ユニットに身を投じ、暫し身を湯に晒す。
額の傷に染みるが、そのような事は気にも留めなかった。

「――フ――…」

冷え切った身体を湯に晒す満足感に、思わずその口からつよく吐息が漏れる。

充分に身を暖めたリトラは、クロゼットに掛かっていた大きめのガウンにとりあえず身を包み、
ファッツに寄こされたディパックを開けてみる。

すると、中からは出るわ出るわ、無造作に放り込まれたであろう何着もの婦人服に、下着類、化粧品に―――

「……なんだ、この本?」

本の表紙に書かれた「女装」という言葉をみて、リトラは呆れるあまりポカンと口を開けてしまう。

「本当に、どこでこんな物を見つけたというんだ、あの男は……」

まさか、それが管制側が用意した“プレゼント”であったとは、欠片も想像しない。
気を取り直し、手始めにサイズが近そうな下着類を探す。

「―――よりにもよって、こういうものか」

どうやら最も具合の宜しいものは、花をかたどったラメレースによって彩られた、黒のブラ&ショーツであった。

「こんなものには、永らく縁も無かったが……ええい、今は四の五の言ってもいられん」

いい加減観念し、ブラとショーツを身に着けるリトラ。
次いで、羽織るべき服をさがす―――

暫しの後、リトラの身を包んでいたものは、スカートの片側にスリット入った黒のシルクのワンピース・ドレスだった。
それは、艶かしく輝く銀髪をより一層際立てていた。
“彼”の愛したリトラナ=クロムウェルの成長した姿が、そこにあった。

「一体何をやっているんだろうな、私は……」

鏡に映る自らの姿を見て、嘲笑をも含まれるようなため息をつき、静かに呟くリトラ。
と、鏡の中の一角に、リトラを見つめるようにディパックより頭を覗かせている『ハロ』の姿が映る。

「……そんな目で、見るな」

ピンと指先で『ハロ』の額をはじき、リトラは頬を僅かに染めた。

【行動 : 施設内移動(-1) 薬品類を回収(-1) シャワー(-1) 着替え(-1) 残0 】
【位置/場所 : D-12/基地・施設内 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――その心臓は今尚死なず 】
【パイロット状況 : 額に怪我 濡れる全身 そのグレーの瞳の奥には微かな光
           黒のワンピース・ドレスに身を包む 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト 煙草数箱 『バンダナ』 応急処置が可能な薬品類&包帯類
      クマの『ハロ』(ディパックよりチラッと頭だけ出ている) 】
【方針 : 私は“牙”を、取り戻す 暫しの休息―――? 】
188 ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/14(火) 00:00:49 ID:???
【追記】

【クラウディア・ゲール:死亡】
【死因:ビームシールドのコックピット直撃による、瞬間的焼死】
【機体状況:左腕切断、コックピット大破】

(お目汚し、失礼しました)
189アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/14(火) 00:07:38 ID:???
ベッドに横たえたニースの内股に、左手を這わせていく。
おそらく、今まで誰も触れた事のない部分。
ニースの大きめのTシャツに隠された部分に、そっと、手が近づいていく。

そして俺の指先がニースの熱に包まれた瞬間、ニースの身体が弓なりに跳ね上がった。
両手でベッドのシーツを握り、背骨を折れそうなくらいに反らしてニースは喘ぐ。
顔は耳まで真っ赤だが、その表情も、そして身体も、俺を拒もうとはしない。
…ニースは、俺を受け入れようとしているのだろうか。
男の勝手な思い込みかもしれないが、俺にはその表情も言葉も、何もかもが俺を求め
ているように感じられた。

可愛い。
…あまりに可愛いその反応に、俺の頭から足の先まで電流に似た衝撃が駆け抜けていく。
その言葉通りに、ニースをめちゃくちゃにしてしまいたかった。
俺が、ニースを汚す初めての男になりたかった。
ニースの隅から隅まで、俺の色に染めてしまいたかった。

指先にニースの熱を感じながら、また深くキスを重ねる。
今度はニースが俺の頭を抱き、自分から舌を入れてきた。
「んむ…ぅ…」
2人の唇は重なっては離れ、離れては重なり、舌と舌を繋ぐ唾液がアーチになってベッ
ドへと垂れていく。

そして、次にお互いの唇が離れた時、俺とニースの目が合った。
「…その…。いいかな?」
緊張しているのか、我ながら間抜けな聞き方だったけど、ニースもその意味は分かったらしい。
一瞬視線を下に下ろすと、また直ぐ俺を見つめ直して、無言でこくりと頷いた。

俺も一度頷くと、無言で服を脱ぐ。
あまり時間をかけると白けてしまう可能性もあるから、そこは素早く脱ぎ終える。
こういう時に、軍で体を鍛えていて良かったと心から思う。
少なくとも見せられない体ではないという、多少の自負もあるにはあるし。
それでも、俺のある一点に向けられたニースの視線が、少し恥ずかしい。

ニースの両足の間に体を入れ、Tシャツを少しだけ捲りあげる。
すると、やはり恥ずかしいのかニースの身体が固くなり、両足に力がこもった。
それも無理はないと思う。
どんなに言っても、ニースにとってはこれは未知の行為なのだから。
いざとなると、不安が先に立つのも仕方がないだろう。
「大丈夫だよ。…気休めかもしれないけど」
その吸い込まれそうな黒い髪を撫でながら、俺は笑った。
ニースに始めて会った時を思い出しながら。

あの時もニースは、プログラムへの不安と恐れに支配されていた(と思う)。
それなら、もう一度あの時のように笑って、少しでも不安を除いてやりたい。
左手でニースの腰を抱きながら身体を密着させ、右手で頬を撫でる。
そして耳元でそっと、だけどはっきりと囁く。
「好きだよ…。本当に、好きだ…ニース」
同時に密着させた腰を、ゆっくりと進ませていく。
いくらかの抵抗のあと、やがて俺は、ニースの温かさに包まれていった。

(続く)
190アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/14(火) 00:09:01 ID:???
軋むベッドの上で重なる2人の影。
俺とニースは、今1つになっていた。
「うっ…く、う…」
俺を襲うあまりの快感に、思わず声が出る。

ニースは処女だった。
その事はシーツに染みを作る破瓜の血と、痛みを必死に耐えるニースの表情で分かる。
だからといって俺の動きが鈍ったり、止まったりする事はない。
ニースが処女だからこそ、俺は早く終わらせてやらなければならない。
俺はそれもまた、男の優しさだと思っている。
あくまでも、俺個人の考えなんだけどね。

だけど、そんな努力をしなくても早く終わってしまいそうなほど、ニースは素晴らしかった。
詳しい描写は避けるが、まあそういう事。
それに俺が組織にさらわれた時は作戦中で、女などから遠ざかっていたのも大きい。
ニースの表情と痛みを堪える喘ぎ声。
太股を伝う、破瓜の血。
目に見える全てのものが、俺を快楽の頂点に誘っていく。

「やば…。もぅ…!」
その気配を感じ取り、俺はニースの細い腰を抱き締めるとスピードを早めていく。
部屋の中一杯に、濡れた肉体同士が打ちつけ合う音が響く。
その音と2人の声が高音の最高点を越えた時、俺は限界を迎えた。
「ニース…!ニース…!ニー…スゥ…!…ク…アッ…!」
ニースの名前を呼びながら達した俺は、彼女の一番深いところで全てを解き放った。
ニースの幼い身体の中を、欲望の塊が流れ、満たしていく。

「ニー…ス」
全てを終えて、その汗にまみれた小さな身体を思いきり抱き締めた。

【行動:10番への回線継続(0)ニースを思いきり抱く(−2)】
【残り行動値:2p】
【位置:U-22】
【機体状況:異常なし】
【参加者状況:異常なし】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン、ビームローター
    ビームピストル×2(75%)】
【所持品:ディパック、水2?入り2本、コッペパン2個、お守り、ペンライト、ポータブルプレイヤー】
【行動方針:休む前に腹ごしらえ…の前にニースを…】
【仲間:クラウディア、ニース、(レベッカ)】
191ジョセフ・ロバーツ ◆dzi5iUzr8I :2005/06/14(火) 07:37:32 ID:4ShLmQQC
「僕たちは殺し合いをします
 僕たちは殺し合いをします
 僕たちは殺し合いをします」

ここはどこなんだろう。
僕はなんでここにいるんだろう。
誰か、誰か助けてよ!!
殺し合いなんて、殺し合いなんて、そんなことできないよ……。
そんなことできるわけないじゃないか……!
192リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/14(火) 08:28:42 ID:???
「―――本当に、何を……」

暫しの後、鏡の前には完璧にメイク・アップされた淑女の姿があった。
爪を彩るマニキュアも、薄紅色のルージュも、その趣味はかつてそれらがこの身を彩っていた頃のままで、
若干幼く見えなくも無かったが。
それでも、鏡に映る淑女は、パーティーの主役になり得るだけの輝きを纏っていた。
……額に押し当てられたガーゼを固定する為に頭に巻かれた包帯が、その輝きを若干曇らせていたものの。
それも前髪を垂らし、髪で覆い隠せば―――

「ま、こうすればそれほど目立た―――だから何をやって……」

ハァ、とため息を吐き出すリトラ。
再び、鏡の一角にうつる『ハロ』の姿が目にとまる。

「か……可愛いか?」

『ハロ』へと向き直り、ポーズを取ってみせるリトラだったが……。

「馬鹿らしい……」

呟き、散らばる服をディパックに纏めると、ふたつのディパックを露になった肩へとかけ、
ずかずかと廊下を歩んでファッツの待つであろう娯楽室へと向かった。

娯楽室へ入ると、かの“伊達男”はダーツ・ゲームに興じていたようだ。
的の中心をダーツが射抜いている所を見ると、こちらに関してもその腕は“一流”らしい。

「これ、使わせて貰ったぞ。有難う」

ぶっきらぼうに礼を述べ、借りたディパックをファッツの傍らへと置き、カウンター奥よりグラスを取って。
ビリヤード台の上に置かれたウィスキーを半分ほどグラスに注ぎ、空き腹にストレートで流し込んだ。
喉の奥がカッと熱くなり、頬がほんのりと赤く染まる。

「キク、な」

そのまま壁際のソファーに座り込み、ウィスキーをチビ、と飲み続ける。
ああもう……酒でもカッくらわねば、やってられん。

【行動 : 消毒&メイク・アップ(-1) 娯楽室へ(-1) ウィスキーを、ストレートで(-1) 残1 】
【位置/場所 : D-12/基地・施設内、娯楽室 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――その心臓は今尚死なず 】
【パイロット状況 : 額に怪我(処置済み) そのグレーの瞳の奥には微かな光
           黒のワンピース・ドレスに身を包む 頭に巻かれた包帯、ただし髪で隠されさほど目立たない 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト 煙草数箱 『バンダナ』 応急処置が可能な薬品類&包帯類
      クマの『ハロ』(ディパックよりチラッと頭だけ出ている) 】
【方針 : 私は“牙”を、取り戻す 暫しの休息―――? 】
193ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/14(火) 17:50:21 ID:???
>>176
「っ・・・!」
敵ながら見事な反論である。
所詮18歳の子供では大人に敵わない、ということなのか。
もっとも元々、クルルに超能力ショーをやっていたのを邪魔され、それでむかついて吹っかけたのだから最初から不利なのだが。
あっちも自分の方が有利だと感じたか、まるで諭すような言い方である。
―――確かに挨拶するのは人の勝手だろう。異論はない。
だが・・・最後の言葉だけは気にくわない。
なめやがって。ここだけは絶対に認めない、いや認めたくない!
「俺には・・・こんな子供を殺すことなんてできない。
 ルールを理解する時のくだりで言ったろ。理屈の上でも感情の上でも、ってな。
 俺は感情の上では理解できない、いやしたくない。
 それに運が良かったら・・・滅ぼし合わなくて済むかもしれないだろ」
くそ、自分でも分かるほど破綻している論理だ・・・。
それでも相手の顔をちゃんと見て、はっきり喋る。大人に対して負けは認めたくない。
「俺はこういう時、最後まで諦めないでできるだけ足掻く性格だから、最後に俺達が残るまで考えてみる。
 何か答えが見つかる可能性があるだろ。例え1%より少ない可能性でもだ。諦めるのは最後の最後でいい」
―――そう。俺だって自分の命は大切だ。
マリーの時のような決断をするのは、できれば最後の最後にしたい。
「まぁ確かに挨拶の件についてはあんたの言うとおりだ。あんたなりのポリシーだってことなんだろう。
 だけど、俺も自分のポリシーでクルルを守るって決めたんだ」
・・・もしかして、俺って凄い恥ずかしい事言ってるかな?
「じぃ、じいさんから託されたんだからな、クルルは」
慌てて付け足す。少し舌噛んだ。
「だから、大人に対しては敵意を抱かざるを得ない。大抵自分の利潤や損得で動くからな」
例外に該当するかもしれない可能性が、ほんのちょっぴりだけある人に最近会ったけど。
「俺はあんたが挨拶だけで済ませてくれる人間とはとても思えなかったから、あんな態度をとらせて貰った。
 本当に挨拶だけで済ましてくれるなら、俺にも文句はない」
って、少し引き下がってるじゃん、俺。なんか情けないな・・・。
194ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/14(火) 17:51:08 ID:???
【行動:会話(0)】
【位置:N−21、森林】
【残り行動値:4p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント、120mmマシンガン(全て新品同然)
    予備 クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)二連装ビームガン(取り付けしていない)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:少し鬱】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、ザンスカール製ノーマルスーツ、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml】
【行動方針:待つ】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
【守る:20番・クルル=ヴァルデーン】
195ジェンセン・スティール:2005/06/14(火) 21:51:49 ID:???
 橋が、破壊されていた。
 誰が破壊しやがったのか知らないが・・・・・・
 つまるところ、早々簡単に立ち寄ってもらっちゃ、困るっつうやつが
ぶち壊したか、あるいは戦闘の巻き添えを食らったか。
 そんなところだろう。
 となれば、あの施設に敵がこっそりと潜んでいる可能性もあるわけだ。
 用心深く近寄るか?それとも。

 と、苦笑する。どの道、あそこを利用してるってんなら俺の位置はバレ
ているだろうしな。
 駆け抜ける、かね。一息に。
 脚部スラスター角調節。
 機体を半浮揚させる。
 バックパックメインスラスター群、最大出力。
 アポジモータ制御システムを推進優先に設定。
 
 ハイザックは熱核ホバー搭載機じゃない。だが、熟練したパイロット
ならば、スラスター操作を行うことでホバー推進による高速機動をやらかす
ことも可能だ。
 いや、ハイザックだから、というわけでもない。
 MS-06F2でも、操作さえしくじらなけりゃやることはできる。
 しかし、地形の起伏を見切る必要がある上、わずかでも機体のバランス
コントロールをしくじれば時速100キロ近い速度で地面とフレンチ・キッ
スしちまうことになる。もちろんそんなことになっちまったら大破確定。
 しかし、こういう状況じゃあ、そうでもしなけりゃ海の上なんぞ渡りきれる
もんじゃねえ。

 おれのハイザックは平原を駆け抜ける。ジャンプ台のように岸から突き出した
橋から全力で跳躍すると、勢いのまま水面に着水。ホバー機動を用い、ところど
ころ水面から突き出した残骸を縫って、滑るように雨に煙る水上の孤島へと向かっ
てゆく。
 警報が鳴った。熱源反応。熱量レベル・・・・・・モビルスーツ。
 位置、セクションN-18。距離が遠い上、ややミノフスキー粒子が濃くなっている
せいか機種は判然としない。
 さて、どう仕掛けてくるかね。弾か・・・・・・言葉か。


【行動;T18平原→S18平原→R18平原→Q18橋(崩壊)→P18橋(崩壊)合計ー4
    残りポイント・0】
【位置:P18橋】
【機体状況:ハイザック・正常】
【パイロット状況:好調好調っ】
【武装:ヒートホーク・ビームサーベル・ミサイルポッド】
【所持品:ディパック( 食料セット4日分 ペットボトル(水入り)×2
     エレキギター、自作治療用セット×1、自作栄養剤セット29回分)】
【方針:鬼か蛇か・・・・・・さてと、楽しみなこった】
196ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/14(火) 21:57:14 ID:???
降り続く雨の中ルイスの頬を生暖かい風が襲った。
球場のゲート前、黒い騎士が走り去って行く。
そして、その後の行程と結果をじっくりと見入っていた。

白いMSを黒いMSが食らう様を見た。
コックピットを一突き―――――これではパイロットが生きている望みは無いな・・・。

「大した腕だな・・・、自分の期待の特性と状況判断がしっかり出来ている。」

大音声で流れるG線上のアリアと笑い声が雨の中ただひたすら響いていた。

【行動:煙草を吸う(0)】
【残り行動値:4P】
【パイロット状況:少しスッキリ 少し風邪気味】
【位置:U―22(ドーム球場)】  
【機体状況:右肩アーマー破損・左肘関節部アブソーバー欠損・左肘から先の装甲及び内部破損 】
【武装:頭部60mmバルカン砲×2(残弾84%)、胸部60mmバルカン×2(残弾72%)、 ビームサーベル×2(散弾)ビームライフル】
【所持品:シガレットケース(葉巻10本)煙草3箱(48本) ライター パジャマ  ボイスチェンジャー アサルトライフル予備マガジン×2 H&CUSP予備マガジン×1 パン×2 水2L 清涼飲料水4L   缶詰×5 塩1袋 下着類 】
【行動方針:俺を助けてくれたのは誰だ?】
197エルナ ◆tf5U6oR8/w :2005/06/14(火) 22:39:35 ID:???
「……ちょっ……と。」
待った。結構待った。
……もしかしたら、叫んで起こした方が良かったのだろうかと思われるほど待った。
結果、置いて行かれた。クラウディアさんの銀色のMSは北へと向かってしまった。

「全く……また寝てたのかな……?」
もう我慢ならないので、自分も北へ向かう事にした。
ふと、そこでレーダーに反応があった。そちらの方へモノアイを回してみる。

「……ルイス=ガルシア……西の町に来た二人の内一人だったっけ……。」
ふと、町で分かれた三人の事が気にかかった。
が、現段階では名簿に変化はない。……と、いうことは……?

「逃げてきた……?」
機体を見る限りでは、結構あちこちにダメージが蓄積しているように見える。
……その上、警戒している様子という物が、全くない。無防備であり、隙だらけだった。
疲労で、こちらの存在に気が付いていないのだろうか……?
もしくは、ここの誰かに既に通信を入れていて、入る許可を得たのか……。
……だとすると、もの凄く不公平になるわけだけど、その辺はこの際どうでもいい。
私はとりあえず、警戒しながらビルの合間を縫うようにして北東のデパートに近付いた。

デパートにたどり着くと、二体のMSが佇んでいた。人は……多分乗っていない。何処に行ったのか……。
クラウディアさんのMSは、近くのビルの影にいた。私もそれにならい、デパートの裏に機体を隠す。
そしてクラウディアさんに通信を再度入れようとしたとき、突然入った定期放送によってそれは遮られた。

>>129
「……ハロルドさん、が?」
信じられなかったと言えば、嘘になる。……初めに会ったときの穏和そうなイメージ。
それと照らし合わせれば、こういう場所ではこういう結果になるのは……予測出来る。
―――無論私は、そのハロルドさんが健闘し、
   戦士として、夫として、そして父として立派に散っていった事を知らない―――
そして、あの老人の死。……老人だけ?
と、すると……あの、クルルという子はどうなったんだろう?
……さらに西から来たMS。傷ついた機体。
それらが一つに繋がり掛けたその時―――

「……ッ。」
前方より、悪寒。……少し迷いがあるが、まぎれもない殺気。
急いでレーダーを確認。……反応無し!?
198エルナ ◆tf5U6oR8/w :2005/06/14(火) 22:40:27 ID:???
次の瞬間、私は見た。
デパート表の二機に向かい、疾走する黒いMS。
その後方のビルより、飛び出した銀色のMS。
対峙―――結果は一瞬。
跳ね飛ぶ左腕。
刺し貫かれる胴体。
それは両方とも、銀色のMSのモノ。

「……クラウディアさん!?」
叫んだときには、既に遅かった。
モニターに表示された、"SIGNAL LOST"の文字。
それが意味する物は……勿論、解っている。
解って……いる。
私が状況を理解する間にも、
笑い声、G線上のアリア、それらが"戦場"を支配していく。
その"戦場"の中で私も殺される?
あいつと、銀色のMSと同じように?
……嫌だ。なら、闘う……?
でも、勝てるの?
否、勝たなきゃいけない。
再度自分に問いかける。勝利とは?
生き残る事。いかなる手段を用いてでも。

私は機体をデパート裏から飛び出させた。
腕のシールドを掲げ、その中央部の銃口を真っ直ぐに黒いMSに向け、通信を入れる。

「こんにちは?レベッカさん。
 早速だけど、私と殺し合う?それともここは退却する?
 どっちにするかはあなたのご自由に。
 でも……この後三対一になりたいのなら、ね。
 解るでしょう?後ろの二体が動くまで私が時間を稼げれば、多分三対一。
 いくらMSの性能と操縦技術に自信があったって、見た限り至近距離用武装しかないみたいだけど。
 それとも足下のガトリング砲でも使う?……取りたければご自由に。すぐ機体と武器両方撃つから。
 もう一度聞くけど……殺し合う?退却する?」

……間合いは十分。機体の速さはさっきの一瞬で読めた。
斬撃が来ても、十分に回避出来るはず……。

……我ながら、殆ど見ず知らずの二機のMSを守るなんて、馬鹿な事やってると思う。
でも、この場で逃げたとしても多分この黒いMSは二体を一瞬で葬って、すぐさまこちらに追いつくだろう。
……なら、この場で数の暴力によって片付けるか、退散してもらうしか……手段はなかった。
……どう動く?目の前の黒いMSも、後方の二機も含めて、全く行動が読めない。

後ろか撃たれてもおかしくない、決死のこの状況で何故か私は……高揚感を感じていた。
199エルナ ◆tf5U6oR8/w :2005/06/14(火) 22:41:48 ID:???
【行動:U-22へ移動(-2) 構える(-1) 10番に通信接続(-1)】
【位置:U-22 市街地】
【機体状況:ゲルググ・J 胸部装甲・右肩部スラスター損傷 関節に負荷】
【パイロット状況:症状緩和? 脇腹に打撲(詳細不明) サムイ…… びしょ濡れ】
【武装:腕部110.mm速射砲×2(残弾各1斉射分)
    5連装メガ粒子砲シールド(下半分破損)(残弾4)】
【所持品:ディパック(コッペパン×2 水2L入りペットボトル×2 栄養補助食品 H&K P7M13(残弾14) マガジン×3)
     ロングコート(びしょ濡れ)】
【方針:"強くなる" 風邪を引かない 現状打破】
【条件付き休戦?:11番 アルバート 14番 ニース】
200ブレイム ◆TjmPhqaoLQ :2005/06/14(火) 23:16:42 ID:???
『……正直なところ、私、あなたに背中を預けることはできないと思います。
 だから何かあっても助けないかもしれませんし、捨て置くかもしれません。
 仮に……必要になれば撃つことも考えるでしょう。
 けれど、ついて来るなら構いません。 あなたの言動の責任は取りませんけど。
 敵ではない人を撃ちたくはありませんから』
とりあえず、警戒は解かれていないものの、同行の許可を得れた。
ならば、こちらも渡すものを渡そう。
私がはじめに乗っていたMS、νガンダムを。

νガンダムは、データベースの情報によると、サイコフレームというサイコミュによる機体制御システムが組み込まれているらしい。
サイコミュ。正式名称サイ・コミュニケーター。
サイコミュとは、NTだけが発することができる特殊な精神派を機械語に翻訳して、機体制御を行うもので、
言ってしまえば、サイコミュが導入された機体はNTが《想う》だけで機体操作が可能になるということだ。
MSを動かすとき、常人なら、頭の中で考え、操縦桿を動かして、ようやく機体が動く。
だが、サイコミュ搭載機を操るNTなら、考えるだけで、MSが動く。

しかし、サイコミュ搭載機にも欠点がある。
操作する人間がNTであっても、その能力が未熟なら、サイコミュの真価は発揮できない。
事実、サイコミュを使用可能であり、その真価を発揮することのできただNTは、今までの歴史上、およそ数人しか確認していない。
なので、オーガスタ研究所では、強化人間用の機体も製作していたが、それはサイコミュを搭載していないらしい。

だが、彼女ならば、サイコミュを使いこなせるかもしれない。
ふと気がつくと、道路の向こうから、MSが近づいてくる。
識別反応は、エビル・S。アルマののMSだ。
彼女にプレゼントを渡さなければ。彼女に通信を入れる。

「あぁ。アルマく・・・」

私の声はそこで途切れた。
なぜなら、エビル・Sがものすごい勢いで私の横を通過していったからだ。
あっけにとられて、一瞬何が起こったのかわからなかった。

続く
201ブレイム ◆TjmPhqaoLQ :2005/06/14(火) 23:17:16 ID:???
「ちょちょ、ちょっとぉ!」

この早さだと、見失ってしまうかもしれない。それだけはなんとしても回避せねば。
私は急いで、体育図割で地べたに座っているこのMSを立ち上がらせ、彼女のあとをつけていくことにした。
がっしゃんがっしゃんを音を立てて、私のMSは走り出した。
慣れないMSの運転。どんどんと距離は離れていく。はじめは目視できた彼女のMSが、かすんで見えなくなっていく。
それでも、レーダーの反応を頼りに彼女のあとをついていく。
ようやく彼女のMSが見つかったころには、気がつけば、高速道路から少し離れた、平野の上まで移動していた。
私は、彼女に再度声をかけようとして、今度は彼女に通信によって、声になる前に妨害された。

『N-13に機影確認。 18番、アッシマー……ですね。
 このままどこかに行ってくれればいいですけど、
 コンテナ狙いだったら接触は避けられません。
 戦えますか? 用意だけはしておいて下さいね』

彼女から、機影の確認を告げられる。
今度こそ、プレゼントのことに触れなければなるまい。
「わかった。善処しよう。ところでだ、プレゼントの話なんだが・・・」

そこで私の言葉がまたもや中断される。
彼女のMSは、平野内にぽつんとおかれた鉄の箱に近づいていっている。
恐らく、こちらの話は聞こえていないと思う。
言うだけ言って、後は自分のことに熱中か・・・振り回されてるな・・・
私はそんなことを考えながら、彼女のMSに近づくことにした。

【行動:アルマと通信継続中(0) 移動 I-13からJ-12へ(−2)】
【位置:J-1312】【行動値残り:2】
【機体状況: V2アサルトバスターガンダム;異常なし】
【パイロット状況:異常なし】
【武装:頭部バルカン砲×2 肩部メガ・ビーム・キャノン 肩部スプレー・ビーム・ポッド 
    腰部ヴェスバー×2 ビーム・サーベル×2 光の翼×2】
【所持品:なし】
【方針:《強化人間》アルマについて知りたい。それこそ何から何まで。
     アルマにプレゼントを渡さなければ。】
202風巻陣平 ◆6fCY9104KQ :2005/06/14(火) 23:35:36 ID:???
灰色の雨雲が天を支配し、雨粒が風防で爆ぜる。
夜が空けても相変わらずの視界不良が続いた。
蒼天の下では大いに発揮されるその視力も、
今は雨の波紋に遮られ、レーダーに依存せざるを得ない。

いっその事、雲上へ出る事にしよう。
輝く太陽を拝め、鷹の眼も取り戻せる。
地上と雲一枚挟まれるため、無用の接触も絶てるだろうし。
万一、空での戦闘となっても、空中戦では負けない自信はある。

そうと決まればと、機首を上げて緩やかな角度で雨雲へ突っ込む。
既に雨脚も衰えつつある頃だったので、予想より簡単に突っ切れた。
純白が敷き詰められたその世界は、真っ青な空に浮かぶ太陽がギラリと照るのみ。
うっとおしい雨に濡らされる地上の上には、こんな世界があるのだ。
ロイドは、あの青年はこんな空の風景を見た事があろうか?
空に、こんな魅力適な世界が広がるのだと、知っているだろうか?

人達は、無限に広がる宇宙――新たな“ソラ”へ没頭し、
アースノイドもスペースノイドも、結局は“大地”へ執粘する。

……人々は、航空機の時代は去ったと、過去の遺物だと言う。
違う。去ったのではない。忘れてしまったのだ。人々が空を。
“ソラ”と“大地”に執粘するあまり、空へ目を向ける余裕を亡くしてしまったのだ。
“ソラ”へと飛び出す為に、“大地”へしがみ付き続けるために……。

しかし…・・・今が宇宙の時代だと言うことは、紛れも無い事実だ。
これが時代の流れ……仕方の無い事なのは、解っている……。
だが、だからと言って、果たして忘れて良い物なのだろうか?
過去の物だと、簡単に忘れ捨てて良い物なのだろうか……。

一面に広がる雲海にポツンと戦闘機の影を落とし、合流場所へと飛び続けた。

【行動 : 移動-4 残行動数0】
【位置 : U-13→P-16(河川北側の岸に沿って移動)】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:異常無し】
【パイロット状況 :良好】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4 60mm機関砲×1
       両用ロケット弾×6 落下式増層×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 ディパック 水2L入りペットボトル×2 デジカメ
       アルバム(未発見) コーヒーセット 巻き寿司4食分 レーション×6食分】
【方針 : ロイドと合流 キリト撃破】
【同盟 : 13番 ロイド・エンデバー】
203サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg :2005/06/14(火) 23:47:41 ID:???
さて。現在自分の唯一の武装となっているアインラッド。
無線誘導というのも魅力的ではあるのだが、何せ現在の自分は無手。
しかもこのアッシマーという機体、変形時に上半身の装甲を亀のごとく収納するのである。
これによって高い耐弾能力を得るわけだが、当然武装の自由は利かない。
ならば…と、現在試みているのが自衛のための結論であった。

「図面の上では可能なんだが…なぁ?」

アインラッドをアッシマーに被せる――
しかしながら、そうそう簡単にはいかないのが実情。
横倒しにしたまま浮揚、くらいはどうにかなるのであったが……
想像してみてほしい。自分の体を丸めて、そこにちょうどはまる大きさのタイヤを
勘を頼りにはめ込む様を。

「やれやれ、エスパーじゃあるまいし。
 ……基地のハンガーで外側から接続すれば、可能かもしれんが……」

無いものをねだってもしょうがないと、この件はひとまず置いておくしか無くなった。

「ふむ…しかし、ね」

以前軍事基地にあったコンテナが消えていて、近辺にあるこのコンテナが未だに消えていないのは
さすがに怪しい。

「罠……」

低く呟く。コンテナを開けず、あえて接近してくる相手を待つ、という線だ。
こういう時の勘は当たるのが困りものだが、接触を警戒した上で判断を練る。

「やれやれ、このポイントは禁止予定か。なら――」

方針は単純、アインラッドを置いた上で川を背に哨戒へ向かう…というものである。
洋上にいるかぎり陸上のMSは容易に手が出せず、自らは退くに容易い。
攻撃してくるとしても、相手のコースは限定される。その間にアインラッドを拾って遁走すればいい話だ。

「相手が飛行していたら? ……必死に逃げる、か」

なんとも情けない次善策だが、今はそうならないことをアテにするしかない。
そう決断すると、スロットルを上げ機体を浮かせた。
204サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg :2005/06/14(火) 23:48:30 ID:???
「――ビンゴだ。やれやれ……」

こういう時に限って読みが当たるものだ、と嘆息した。
コンテナの前には、一機のMSがいた。灰色のボディに帽子を被ったような頭部、肩に付けた
ポッドと思しき装備からは、偵察兵らしき風貌が見受けられる。
少なくとも、見たことのある機体ではない。

「……いや、様子が…違うな」

その『帽子被り』は、今にもコンテナを開けようとしているようだった。
つまり、単純に中身が目当てということであろう。
逆に自分が、引き寄せられた相手と接触する、という形になる。

「なら、少しはやりやすそうだ。……さて」

相手に発見されていることはまず確実である。
この状況下でコンテナに拘泥する必要は無いと、高度を保ったまま通信を入れる。

>>174-175

「そこの君、聞こえるか。俺は…サイモン=クレイガー。サイモンだ。
 ちょいと話がしたい。可能ならば、だが」

表向き非武装なのを見て相手がどう出るか、だが……少なくとも長居して得るものは少なそうである。
相手が手に持つライフルと――遅れて現れた、長物付きのMSを見て
その予感はより確実となった。

【行動:変形(-1P) 移動(N-13→N-12→M-12→L-12→K-12)(飛行ボーナス適用)(-2P) 17番へ通信(-1P)】
【位置:K-12/川】
【残り行動値:0P】
【機体/状況:アッシマー/MA形態 左腕部装甲に裂傷】
【生徒状況:左頬に赤み】
【武装:アインラッド(停止・現在N-13)】
【所持品:ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx3、携帯糧食x5)
     ウェストポーチ(ナイフx1、ペンライトx1、煙草x1、コンパス付腕時計、筆記用具 携帯糧食x3)
     ショルダーポーチ(ポラロイドカメラ一式) ライターx1 毛布 包帯 幅広の布】
【行動方針:1.自衛の確保 2.情報の入手】
205キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/14(火) 23:51:47 ID:???
>>193

「それで正解なんですよ。ロイド君。
 貴方の態度は別に失礼ではありませんよ。
 初めて会う方がどんなに安心して良いような方でも
 疑ってかからなくては、生き延びては行けません。
 小さなお姫様を守るナイトがしっかりしていなければいけませんからね。
 
 ですが、やはり間違っていることもあります。
 甘い考えは捨てること。それほど都合よく貴方の運命は動きません
 他の人の運命が必ず複雑に絡み合ってくるからです。
 次に、諦めるのは最後だとおっしゃいましたね。
 その程度の気持ちなら貴方は必ず負けますよ、自分自身に。
 一度心に決めたのなら諦めた場合など考える必要はありません。
 でなければ最後に哀しむのは貴方です。それを心得なさい。 」

(まったく、何を行ってるんでしょう私は、
 所詮は他人事のはずなんですがね・・・。)

挨拶だけならまだしも、昔の様に他人を構うような言動を続けている自分に呆れる。
やはり、最近多く見る。過去の戒めのせいなのだろうか。
 
「私らしくない無駄に御説教してしまいましたね。
 長いことお引き止めてしまってすいません。
 あ、そこで待ち合わせしているんですよね、
 しかし余り待ち合わせの場所にしては相応しくありませんよ。
 でも、地図と座標があれば、大きな戦艦ですし問題ありませんか。」

そろそろ、長話も失礼だと思い話しを切り上げようとする。

「最後に貴方達を殺そうとしないのは単に興味が湧かないからですよ。
 今の貴方達と戦っても楽しめそうにありませんから。
 ですから、今はご挨拶を兼ねた観察と行った所でしょうか。

 あ、クルルさん。さっき言いそびれましたがMSのコンピュータ内に
 名簿が載っていますからこの参加者の中にお兄様が居るかは確認できると思いますよ。
 同姓同名でなければなんですがね。
 もしよろしければ、御兄さんという方の御名前を申してください。」

そこで、突然レーダーに反応が表れる。
 
【行動:戦艦に通信中(-0)御説教?(-1)】
【残り行動値:3】
【位置:N−18】
【機体状況:Gキャノン・頭部消滅】
【武装:ビームサーベル×2、 肩部130mm4連装マシンキャノン×2(残弾90%)
    腕部ダブルビームガン×2 ビームソードアックス(ソード・アックス・ピックの3形態)
     ビームショットライフル(EN80%) 6連装ミサイルポット×6】
【所持品:ディパック 水1g1本 首輪 
      レイピア×2 グラサン数個 懐中時計 お守り】
【行動方針:長話は流石に失礼ですね・・・(敬)】
206ジェンセン・スティール:2005/06/15(水) 00:27:24 ID:???
 気づいてはいるのだろう。
 だが、まだ攻撃の気配はない。
 距離が離れているのだから、当然だが。
 さて、先制攻撃といくか。
 おれは通信回線を開く操作を行いつつ、同時に画像解析を進める。
 ・・・・・・見たことのないタイプのモビルスーツだ。
 連邦系だろうか。ガンキャノンに似ている。
 武装の数が尋常ではない。真っ向からやれば、やつが素人で
ない限り、確実に敗北するだろう。だが、やつのMSはメインカメラを
やられている。となれば、射撃精度は恐ろしく低下するだろう。ニュータイプ
でもないかぎりは。
 無論、やつがそうでない保障など、どこにもありはしないのだが。
 
 レーザー通信装置を起動。あの「キャノン」に、通信波を送る。
「先に名前から名乗るとするかね。俺の名は、ジェンセン・スティール。
 俺はMSがヘボい。だが、画像解析をした限りじゃ、あんたのMSは頭部を
やられているように見えるな。 
 砲戦用MSの損傷としては、致命的な部類だろう。
 
 やりあえば、どちらが死ぬ。こいつはそういうゲームだろうが・・・・・・
まだゲームはせいぜいが3回裏。まだ先は長い。
 互いに無意味な傷抱えるよりは、ココはひとつ。手の一つも、組んだほうが
得策だと思うんだがね?」
【行動;通信・キリク(−1p)画像解析(−1p)残り2ポイント】
【位置:P18橋】
【機体状況:ハイザック・正常】
【パイロット状況:好調好調っ】
【武装:ヒートホーク・ビームサーベル・ミサイルポッド】
【所持品:ディパック( 食料セット4日分 ペットボトル(水入り)×2
     エレキギター、自作治療用セット×1、自作栄養剤セット29回分)】
【方針:鬼か蛇か・・・・・・さてと、楽しみなこった】
207キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/15(水) 00:46:38 ID:???
『先に名前から名乗るとするかね。俺の名は、ジェンセン・スティール。
 俺はMSがヘボい。だが、画像解析をした限りじゃ、あんたのMSは頭部を
 やられているように見えるな。 
 砲戦用MSの損傷としては、致命的な部類だろう。
 
 やりあえば、どちらが死ぬ。こいつはそういうゲームだろうが・・・・・・
まだゲームはせいぜいが3回裏。まだ先は長い。
 互いに無意味な傷抱えるよりは、ココはひとつ。手の一つも、組んだほうが
得策だと思うんだがね?』

こちらから通信を送る前に相手のほうから通信が入ってきた。

「おやおや、今日は御客さんが多いですね
 招いて居るわけではないんですが。
 それでは小さなプリンセスに勇ましきナイト、これで失礼します。」

戦艦との通信を切り
あいも変わらず、新しく出会った相手に挨拶を送る。

「こんにちは、ジェントルマン。
 今日は、出会いが多いですね。すいません申し遅れました。
 私はキリト=ヴァルリックと申します。」

ここまでは、相変わらずの態度であったが
流石に、食料調達がおくれてしまう。
しかし、やはり
深く頭を下げた後、相手の戦闘能力を確認し様とするが・・・・・・。

「それにしても、くくくくははははっははははは。」

いきなりあざ気笑う。
ただ可笑しいのだ。それほど可笑しいのだ彼にとって

「すいません。そう言うつもりは無いんですが
 貴方が可笑しなことを言うのでつい・・・・・・
 手を組む?私と貴方が?くくくははははっはははは
 何故そんな無意味な事をしなければならないのです?
 貴方も言っているではありませんかそうゆうゲームだと。
 そのレベルのMSで通常に動いていれば十分戦えますよ
 後は、貴方の腕次第だ。
 いきなりで失礼なのですが。貴方はMSの戦闘は御得意ですか?」

完全に、当面の目的を疎かにしていた。

【行動:戦艦に通信終了(-0)ハイザックに通信(-1)あざ気笑う(-0)】
【残り行動値:3】
【位置:N−18】
【機体状況:Gキャノン・頭部消滅】
【武装:ビームサーベル×2、 肩部130mm4連装マシンキャノン×2(残弾90%)
    腕部ダブルビームガン×2 ビームソードアックス(ソード・アックス・ピックの3形態)
     ビームショットライフル(EN80%) 6連装ミサイルポット×6】
【所持品:ディパック 水1g1本 首輪 
      レイピア×2 グラサン数個 懐中時計 お守り】
【行動方針:また、目的を忘れてしまいそうです・・・(敬)】
208管制室:2005/06/15(水) 00:46:57 ID:???
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 02◎彡彡彡彡彡彡彡◎彡彡彡□□□彡彡彡彡彡彡彡★彡◎彡
 03彡彡彡□◎▼彡彡彡彡彡□□△□□□◎彡彡彡★★〓△彡
 04彡彡□□△▼▼彡◎彡□□□△△□▼▼彡彡彡彡彡彡△◎
 05彡彡□△△□┃□彡彡□□△△△□□▼▼彡◎彡彡彡△∴  □:平野
 06彡彡□□△□┣━〓━━━┓△◎△┏┛□彡彡彡彡彡△△  ■:森林
 07彡彡◎□□┏┛□彡□□□┗━━━┫□□□彡彡彡◎△△  △:山地
 08彡彡彡彡□┃△◎彡彡□□□△◎△┗┓□彡彡彡彡□△△  ∴:砂地
 09彡彡彡彡彡┃□△□彡◎■■△◎△□┗┓彡彡彡□□△△  彡:海 川 オアシス
 10彡彡彡彡□┗┓□□□彡□■■△△□□┃□彡□□□△△  ━:道路
 11彡彡彡★□□┃□□□彡□■■△△□□┣━〓━┓△△△  〓:橋
 12彡彡彡06★━┫23□1718◎□□△△┏━┛◎彡□┃△△△  ≠:破壊された橋
 13◎彡★★□□┗━●□彡彡□○□┏┛□□彡彡□┣━━━  ▼:市街地
 14□□□□□□□□┣━━〓▼▼▼┛□□彡彡□★★□△◎  ★:基地
 15□◎△∴∴□□□┃□□彡□▼□□彡彡彡□□★★★△△
 16△△∴∴∴∴□□┃□□彡彡彡彡07彡彡□□□□┃◎□△  ◆:コンテナ  
 17△△∴∴∴∴□┏┛□彡彡彡彡彡彡彡彡□□□┏┛□□□
 18△∴∴∴∴◎∴┃□□彡彡彡U0521≠□□□□┃□□□□  ◎:立入禁止区域  
 19∴∴∴∴∴∴∴┃□彡彡彡彡彡◎彡彡彡◎□□┃□□□△  ×:立入禁止予定区域
 20∴∴▼∴┏━━┫□彡彡彡彡彡彡◎彡彡彡□┏┛□□△△
 21━▼▼━┛∴∴┃□彡□□◎19□彡彡彡彡□┃□□△△◎
 22∴16彡∴∴∴∴┃□□□■■■■■□彡□▼08□□△△△
 23∴∴◎∴∴∴□┗━┓■◎■■┏━━〓━▼▼┓□□△◎
 24∴∴∴∴∴△△□■┗━━━━┛■◎彡□□□┗┓□□△
 25∴∴∴△△△△□■■■■■■■■■彡彡■■□┗┓□△
 26△◎△△◎△□■■■■■■■■13■■彡■■■□┃□□

06と15は同一地点
02と08と10と11と14は同一地点
17と22は同一地点
19と20は同一地点

I-13の●は22が置き去りのνガンダム
N-13の○は18が置き去りのアインラッド
209管制室:2005/06/15(水) 00:52:07 ID:???
>208訂正

>207時点
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 03彡彡彡□◎▼彡彡彡彡彡□□△□□□◎彡彡彡★★〓△彡
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 12彡彡彡06★━┫23□1718◎□□△△┏━┛◎彡□┃△△△  ≠:破壊された橋
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 15□◎△∴∴□□□┃□□彡□▼□□彡彡彡□□★★★△△
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 19∴∴∴∴∴∴∴┃□彡彡彡彡彡◎彡彡彡◎□□┃□□□△  ×:立入禁止予定区域
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06と15は同一地点
02と08と10と11と14は同一地点
17と22は同一地点
19と20は同一地点

I-13の●は22が置き去りのνガンダム
N-13の○は18が置き去りのアインラッド

コンテナ 『J-12』 一箇所
210アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/15(水) 00:57:40 ID:???
ブレイムが何かを言っている。 プレゼントがどうとか。
コンテナの回収に行くのに、何か不都合でもあるのだろうか。
……想像もつかない。
今はアッシマーがこちらに来るかもしれないのだから、
そうなる前にコンテナの中身を回収する方が先だ。

さて。
電子ロックが解除され、コンテナの側面が開かれた。
それほど大きくはない。 せいぜいエビル・Sの半分くらいの高さしかない。
しかし、外から確認する限りでは、コンテナの中はがらんとしている。
不審に思ったアルマはコクピットから降り立ってコンテナに入っていった。

そして……
コンテナの中に入った彼女は、その目を疑った。

(これは……何?)

コンテナの中には小さなトランクがひとつ、置いてあるきりだった。
彼女は用心してそのトランクを開いた。
そこに入っていたもの。 信じられるだろうか?
よりにもよって、こんなところで。

(これを……着ろと? 私に……着ろと?)

白く長く伸びた二本の器官が接続されたカチューシャ。
白と黒のコントラストが鮮やかで、小さな金のプレートがついたチョーカー。
同じく白と黒を基調に、貴金属も織り交ぜさりげなくかつ豪華にデザインされたカフス。
胸元が大きく開いたハイレグスーツはまるで彼女のスリーサイズを測ったかのように正確なサイズ。
アダルティなムードたっぷりの網タイツ。
黒字に赤いラインが引かれた、これまたサイズぴったりのハイヒール。
そして、とどめと言わんばかりに同梱されたマニュアル『バニーさんになろう!』。

……簡潔に言うならば、バニースーツというやつが詰め込まれていた。


アルマの両肩がぷるぷると震え出した。
歯を食い縛り、ほんのりと赤面した顔は怒りと羞恥と苦悶と呆れに歪む。
そして。

<続く>
211アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/15(水) 00:59:43 ID:???

「ふっ……、ふざっけるなあーーーーーッ!!!」

咆えた。 心置きなく咆えた。
荒く肩で息をしながら、彼女は改めてバニースーツに目をやった。

「……ッ!」

着たい。 ぶっちゃけ着てみたい。
このバニースーツは何故か彼女のどうでもいい欲望を刺激する。

(駄目よ、駄目……すぐそこにお、男の人がいるんだから……
 『今は』ダメ…………
 ……………………
 ちょ、『今は』ってナニよ)

懸命に自制心を働かせながら、彼女はトランクを閉じた。

……

アルマは赤面したまま、トランクを両手で掴んでコンテナから出ようとする。
何となく放置する気にはなれなかった。
しかし、コンテナの中身を聞かれたら何と言えばいいのだろう?
だが、次の瞬間そんな疑問は吹き飛んだ。

「これは、飛行音……?
 近付いてくる!」

アッシマーに違いあるまい。 あれは変形してフライパンのような形になる。
それが自在に空を飛ぶのだから連邦軍の可変機は末恐ろしい……と歴史の先生は述懐していた。
アルマがコクピットに駆け込むとほとんど同時に、アッシマーから通信が入った。

『そこの君、聞こえるか。俺は…サイモン=クレイガー。サイモンだ。
 ちょいと話がしたい。可能ならば、だが』
「ふぅ……わ、は、はい、何でしょう。
 あ、ええっと……私はアルマ、アルマ=フローライトです」

見たところアッシマーは非武装のようだが……何とも間の抜けた返し方だ。
バニースーツの件でいっぱいいっぱいになっていた彼女は
警戒することも忘れ、とにかく通信を返していた。
敵か味方か中立かもはっきりしないのに。 敵かもしれないのに。

【行動:叫ぶ(-1)、回収(-1)、通信回線接続(-1)】
【位置:J-12/平地】
【残り行動値:1p】
【機体状況:Green/通信回線:νガンダム、V2AB、アッシマー】
【武装:ビームサーベル、3連装グレネード、内蔵ヘビーマシンガン(95)、ショットクロー(8)、
     ビームライフル、Eパック、偵察ポッド、Iフィールド】
【生徒状態:Green】
【所持品:デイパック、コッペパンx2、水2gx2、栄養ドリンクx7、ノートPC、食糧、生活雑貨、
      ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、バニーセット、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:東の基地へ/様子見】
212ジェンセン・スティール:2005/06/15(水) 01:13:55 ID:???
>207キリト
 なるほど、始末に終えないタイプってところか。
 俺も含めてだが、好きモノが集まっちまうんだろうねぇ、こういう
ゲームには。
 さぁてと、どうしたもんかね。
 ちょいとおびえた振りでもしてやるとするか。
 俺はモノアイを軽く向けただけで、沈黙し続ける。
 【行動;せず。残り2ポイント】
【位置:P18橋】
【機体状況:ハイザック・正常】
【パイロット状況:好調好調っ】
【武装:ヒートホーク・ビームサーベル・ミサイルポッド】
【所持品:ディパック( 食料セット4日分 ペットボトル(水入り)×2
     エレキギター、自作治療用セット×1、自作栄養剤セット29回分)】
【方針:鬼か蛇か・・・・・・さてと、楽しみなこった】
213ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/15(水) 09:12:56 ID:???
「好き」

どこにでもあるような、何気ない一言が、ニースの理性の最後の抵抗を崩していった。
出会ってから、まだ2日しか経っていない。
面と向かって会うのはこれが初めての人間に好きと言われて、それでも嬉しかった。

小さい頃から機械いじりばかりで、異性の事など少しも考えた事がなかった。
中学校では、それが原因で苛められた時期もあった。
苛めた人間から見たら、ニースは機械ばかりいじっている、機械オタクに見えるのだろう。
確かに、そういう面もなきにしもあらずだっただけに、一応人並みにあった恋愛感情は
高校に入学した頃にはすっかり隠れてしまい、もっぱら女子の友人と遊んでいた。
彼氏なんかいなくても、仲の良い友人がいれば寂しくない、というわけだ。
持ち前の前向きな姿勢が、変な方向に出てしまった例である。

そんなニースにとって自分を好きと言ってくれる男性は、表に出す事はなかったが心の奥底
でずっと憧れ、待ち望んでいた存在なのである。

アルバートの身体はスマートで、美しかった。
ニースにも、一目で鍛えられた肉体だと分かる。
そしてその身体が重なってくる瞬間、ニースは少しだけ笑った。

(出来過ぎ…だよね。何か、さ)

つい最近まで、自分にこんな瞬間がくるとは思ってもみなかった。
お見合いで結婚するまでは、家で機械と一緒に暮らすのだと信じていた。
しかし今、ニースの目の前には、自分を好いてくれる男性がいる。
誰よりも、優しい笑顔で笑ってくれる、アルバートがいる。
それが例え一時的なものであっても構わない。
どうせ、この殺し合いの中では、明日をも知れない身なのだから。
そんな自分の運命を少し可笑しく思いながら、ニースはアルバートと1つになるのを感じていた。

続く
214ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/15(水) 09:14:57 ID:???
「……何…?……っっ痛ぅっ!」

頭の隅に何かの痛みを感じて目を覚まし、ニースは飛び起きた。
目をこすりながら、周りを見る。
昨日泣きながら辿り着いた、ホテルの部屋。
外はまだ雨が降り、窓にいく筋もの小さな滝を作っている。
そして…そしてニースの隣にはまだ眠っているアルバートがいた。

夢のような時間だった。
ニースは本能の赴くままに、何度もアルバートを抱き、そして抱かれた。
何度も抱かれるたびに、ニースは、自分の中の何かが満たされていくのが分かった。
それが夢でない事は、隣のアルバートと、ニース自身の身体が示している。

(何よりも…)

そして何よりも、アルバートによって満たされたニースの魂が、それを知っていた。

「…って、や、やだな。魂だなんて。
あたしにそんなもの、分かるわけないのに」

自分で感じた事の可笑しさに、思わず頭を振った。
途端にまた、頭の隅がズキリと痛む。

「…だから、何…?この痛み…?
…え?…あれ…?な、何なの…?……クラウ、ディア、さん…?」

ニースの脳裏に何かが走った。
一瞬そこに見えたのは、ニースが知っている顔だった。
慌ててベッドから降りて、窓際に駆け寄る。
この雨の町で、何かが起きている。
この頭痛は、それを示しているようにニースには思えた。
それも、クラウディアが関係する、何かが…。

じっと窓の外を注視していると、そんなに遠くないところで、何かがぶつかるような音が聞こえた。
方向は、昨日のデパートの方。
再び脳裏に一瞬浮かぶ、クラウディアの顔。

「…クラウディアさん…!」

一言名前を呼ぶと、脱ぎ捨てられた作業着を拾って着る。
そして着ながら、ベッドのアルバートに叫んだ。

「起きて!ねえ、起きてアルバートさん!
町で何かが起きてる!昨日のデパートの方で…!早く、早く起きて!」

アルバートを起こしながら、ふと昨日のレベッカの言葉が思い出される。
あの言葉の通りなら……今自分達と、レベッカは敵なのだ。

部屋を駆け出て階段を飛び降り、ホテルからデパートに向かう。
降り続く雨の中、鹿のようにしなやかな動きで、町を走り抜ける。
そしてデパートへの曲り角を曲がった時、それは見えた。

続く
215ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/15(水) 09:16:08 ID:???
まず分かったのは、昨日と同じように停まっている、ニースのゲルググ。
それとその後ろに寄り添うように停まっている、アルバートのシャッコー。
それと、2機を背に立っているのは、昨日のエルナのゲルググ・J。
向こうでゲルググ・Jと対峙するように立っているのは…レベッカのベルガ・ギロス。
…そして、その2機の間には…。

「…あ…。あああ…。クラ…ウ…」

最後まで言葉が続かなかった。
目の前に広がる、死という光景。
ビギナ・ギナのコクピットのあたりを見れば、クラウディアの生死は聞かないでも分かる。
何も言わないビギナ・ギナから、焦げた臭いと共に、死の臭いがただ寄ってくる。

「…うっ…ぐ…」

その場にしゃがみこむニース。
思い出される、クラウディアの穏やかな顔。
そしてその、無惨な死。
そしておそらくはクラウディアを殺した本人であろう、レベッカ。
だがベルガ・ギロスは、対峙している筈のゲルググ・Jを見ていなかった。
ただじっと、天を見つめて佇んでいた。

「…く…あ…!」

また頭の隅が痛む。
ベルガ・ギロス……黒き騎士から…いや、その中から放たれる、異質な物。

(…ちが…。あれは…音…?何かの……。う…!)

その音らしきものの中に、微かに聞こえるレベッカの笑い声。
それはどんどん小さく、か細くなっていく。

(レベ…ッカ…さん…!…だ、め…!そっちいっちゃ…だ……!)

ニースの心が、重圧に耐えられたのはここまでだった。

「…げ…え…!うぐ…げえぇ!…ぐっ…えぇ…えぇぇ!」

この殺し合いが始まってから、ニースは何も口にしていない。
吐いたのは胃の中に残っていた、僅かな量だけだった。
だがニースは、何もなくなっても吐き続けた。
そうする事で、少しでも悲しみを和らげようとするかのように。
不安も恐怖も、全て吐き出そうとするように。

【行動:2番に回線継続(0)アルバートに抱かれる(−1)何かを察知(0)着替える(−1)
    ホテルを出る(−1)デパートに移動(−1)】
【残り行動値:0P】
【パイロット状況:頭の隅の頭痛、吐き気】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、気持ち…悪い】
216レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/15(水) 15:47:52 ID:???
>198
鳴り止んだオルゴールが、足元に転がっていた。
開いたままの蓋の裏。
数人の青年士官の笑顔の中で、少女が憧れた指揮官もまた、優しい笑顔を見せていた。

拾い上げようとしたレベッカの手が止まる。
嫌な色――モニターを見据える彼女の視線に険が篭った。
僅かな慢心と高揚の色。だが同時にその言動からは、同時にしっかりと据えられた覚悟が見て取れた。

「甘いよアンタ。
 ボクを止めたいなら言葉より前に引き金を引かなきゃさ……全く下手だね、どうも」

足元、崩れ落ちたビギナ・ギナの残骸を軽く足蹴にする。
ウェポンラックから未展開のビームサーベルが転がり出た。

「3対1? 甘いよ、甘い甘過ぎる。
 ボクがその前にアンタを殺せばさ、2対1で終わりだよ」

戦場の経験があるか、或いはそれに類するものに裏打ちされた自信があるのだろう。
射線の取り方、位置取り、共に見事なものだとレベッカは思った。
そして覚悟。
舐めて掛かれば腕の一本も持って行かれかねない、鋭さを秘めている覚悟だ。
技量や機体性能とは別の次元で、眼前の敵は一筋縄では行かない相手だと確信する。
それでも、エルネスティーネでは自分は殺せない。
彼女はレベッカ・テスタロッサを止められない――それもまた、確信。

「つまりさ、ボクが言いたいのは。
 どうせ人間何時か死ぬなら、此処で死んでも大した違いは――」

ないからボクに殺されなよ、と言おうとして。
視界に飛び込んできた人影が、其処で言葉を止めさせた。
217レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/15(水) 15:50:32 ID:???
>215
――ニース。

――ニース……ッ!!

――ニース・エルネージュ……ッ!!

嘔吐している少女の体に色が視えた。
不安と恐怖に立ち向かい、そして勇気を得ようとする強い意志の色。
誰か――きっと、この場にいない『彼』――から、勇気を貰った強さの色。
更にもう一つの色を確認した瞬間。白いフードの奥で、何処か虚ろだった青い瞳に深い光が揺らめいた。
レベッカは思い出した。
殺しあう理由を。クラウディア・ゲールを殺した理由を。

――そうだ。そうだった。ボクは……。

「おやおや、今まで何処で何をお楽しみだったのかなぁ、ニース。
 こんな殺し合いのプログラムの中でさ。モビルスーツも置いたまま、随分と余裕だねえ」

――参ったねどうも。狂ってた方がよっぽど楽だよ、これはさ。

されど言葉は未だ、敢えて虚ろで儚い響きのまま。
雨の中に消えていった哄笑と同じ儚さを孕んだまま、レベッカは喋り続けた。

「こんな状況で、こんな世界でさ」

――良いよね、明日を信じて、間抜け面して眠れるんだろう?

宇宙漂流の暗黒の一週間。その闇を閉じ込めた、死に至る灰色の病。
一度眠りに就けばもう、二度と目覚められないかもしれない。
最後に安らかに眠れたのは、果たしていつの事だっただろうか。

――良いよね、一日の始まりの朝に希望なんてものを感じられたんだろう?

レベッカも朝日は好きだった。冬の朝日など、特に好きだった。
カーテンを開いて窓を開け放つ。
そうして流れ込む冬の冷たい空気を胸一杯に吸い込みながら、朝日を浴びるのが大好きだった。

――良いよね、この世はいつも綺麗なもので一杯ですなんて顔してられるキミは。

『何でお姉ちゃんが死んでくれなかったの』
信じていた姉妹の愛情も、そんな醜いエゴで簡単に終わってしまう。
あんなに可愛がっていた妹だったのに……たった一度の事故が全てを変えてしまった。
218レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/15(水) 15:53:06 ID:???
「2回――この数字が何か分かる?」

一拍だけ間を置いて、足元のビームサーベルをベルガ・ギロスに拾い上げさせてから。
キミとアルバートがこの瞬間までに死んだ回数だよ、と。
レベッカ・テスタロッサは事も無げに口にした。

「クラウディアとエルネスティーネの邪魔が無かったら、あと1回追加ね」

ニースは、そして同じ場にいる他の全ての人物は、果たして気付くだろうか。
この言葉の意味は即ち、<殺せたのに殺さなかった>ということだと。
不意を討ったように見せて、燻し出された戦う覚悟のある者をこそ。
彼女は本当に相手にしようとしていたのだと。

そしてレベッカは笑う。今度はハッキリと、意思を込めて笑って見せた。

「3回、キミは死んでいた。
 ボクとの約束を、結局キミは拒んだけど……それでもボクは全うした。
 それでも。
 それでもキミは、今までに3回はボクに殺されてるんだ」

――ボクはキミ達、真っ当に生きられる他の全ての命に嫉妬している。

「バカじゃないの?
 敵が同じ街にいるってのにさ。大事なモビルスーツを放っておいて……大バカだよ」

――でも、そうじゃない。

「気をつけなきゃ。レベッカさんは気分次第で他人を殺せる人間なんだって、そう言ったのはキミだろ?」

ニース・エルネージュの耳にだけは、奇妙な事にその言葉がきっと、とても優しい響きで届いた筈。
まるで昨夜の、彼女の涙を拭おうとした時のレベッカの声と同じように――

――ボクはもう、覚悟を決めた。
219レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/15(水) 15:54:30 ID:???
【行動:エルネスティーネに回線接続(-1)、外部スピーカーON継続(-0)、
     ビギナ・ギナのBサーベルを拾う(-1)】
【位置:U-22(市街・デパート付近・コックピット内)】
【残り行動値:3】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、
        右マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:「もう、戻らない」】
【武装:ビームサーベル×1、左腕ビームシールド】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx4、
      アイソトニック系飲料1.5L×1、携行食糧1週間分、救急箱一式)】
【服装:クロスボーン・バンガードの軍服】
【方針:火器の確保、覚悟を決める】
【同盟:なし】
220ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/15(水) 16:43:20 ID:???
ダーツを覚えたのは軍に居た頃。
丁度このような部屋が自分の部隊にもあり
その場でいつも通り酒を片手にギャンブルをしていたのを覚えている。
同僚に誘われ、簡単にルールを説明されてものの三十分で
ファッツは完璧に的の中心にダーツを突き刺す事が可能となった。

同僚は自分の言う箇所にドンドン当てて行き、
当たるか外れるかを予想する賭けをしないかと提案してきたがファッツはそれを鼻で笑い飛ばして断った。

先の見えている賭けほどつまらないものはない。

例え百回、二百回と投げ続けようとファッツは己の腕は確実に的を射抜くと信じていたし
事実そうであろうと思う他の同僚も大勢いた。

「なつかしぃねぇ………」

除隊して既に1年が経過しようとしている。
除隊後、職を転々と渡り歩いたが何一つとして面白いものなど見つからなかった。
唯一の楽しみといえば非合法の賭博くらいなものだったが、そうそう毎日やれるものでもない。
………そういや、賭けしてねぇなぁ。

一人でやる賭けとは非常につまらないものだ。
相手が乗ってこなければ面白みがない。
221ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/15(水) 16:44:32 ID:???
>>192

いい加減ダーツにも飽き飽きしてきた頃に彼女は来た。
グラスを傾け、チビリと酒を飲みながらファッツは彼女を見る。

「これ、使わせて貰ったぞ。有難う」

ぶっきらぼうにそう言う彼女………
だがしかし………

「合わねぇ………」

そう、明らかに合わないのだ。
彼女の服装は確かにファッツがあげたものであり、よく似合っている。
それこそどこかのお嬢様のようなその姿。
黒い、シルクのワンピース・ドレスは彼女の銀髪によく映えて見え
スカートから顔を出すその足からは色香を感じる。

だからこそ、合わないのだ。

ただ単純に合わない。
そのような格好をしているのにあえて無理な言葉を使っているような
そんな感じの違和感。

こちらの姿のほうが本来のリトラなのか、としばし考えてやめた。
それもまた合わない。
フリフリのレースをふんだんに使った、いわゆるロリータ・ファッションをしているリトラを想像して思わず吹いた。

ならば、自分の勘違いか?

………まァ、いい。
考えても仕方のない事を考えてどうする。
222ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/15(水) 16:45:59 ID:???
壁際のソファーに座った彼女。
手には自分と同じようにグラスがある。
ボトルとナッツを持って彼女に近づき、前のテーブルへそれらを置いた。

「おかわり自由ですよ、お姉さん」

笑いながらそう言い、隣に座る。
近すぎず、遠すぎない距離。
ナッツを一粒口に放り込み、酒を喉に流す。

「………………」

無言でポケットからトランプとコインを出した。
慣れた手つきでトランプをシャッフルし、テーブルに置くと彼女の方を向く。
さて、久しぶりにやりますか。
………のってくれるといいんだけど。

「お姉さん、どうでしょひとつ?」

キィン、とコインが弾けて天に飛ぶ。
しばらくの静寂が彼らを包み、またコインは彼の手に収まった。

「サマは使わないからさ………いっちょ、一勝負やりません?」

ニィ、と笑う。
彼の中での極上の笑顔。
彼にとって至福の時の笑顔。
命のやり取りをするMS戦でもこれほどの快楽は得られない。
極上の女を抱いても、これほどの快楽は得られない。
そう言わんばかりの笑顔で、彼女に問う。

―――賭けるものは何だっていい、この命もこの体も何だって捧げよう。
 ―――ただし、勝てばこちらもそれと等価のものを頂く。
  ―――それが俺の愛する【ギャンブル】だ。

【行動 :お姉さんにお・ね・が・い♪(-1P) 残り3P】
【位置 :D-12 軍事施設・施設内娯楽室】
【機体/状況 :マラサイ/問題無し】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 ホロ酔い】
【武装 :ビームサーベル 頭部バルカン砲(残弾100%) ビームダガー ビームピストル(EN 50%)】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×1 コッペパン×1
     コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 
     女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)】
【容姿 :カウボーイ】
【暫定行動方針:賭け or 賭博 or ギャンブル】
【最終行動方針:このゲームを楽しむ】
223アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/15(水) 19:57:32 ID:???
「起…!ねえ、起…アルバ…さん!
町で何か…てる!昨日のデパート……!早く、早く起きて!」
プログラムの俺の3日目の朝は、ニースの叫び声で始まった。
眠い目を擦りながら、けだるい体を起こす。
「街で…何が起こってるって…」
言いかけた俺の質問は、必死の形相で着替えるニースの姿に中断した。
きっとニースは、街の何らかの異常に気づいたのだ。
それもデパートで。
…あそこには俺たちのMSが置いてある。

米つき虫のように飛び起きると、俺も急いで服を着る。
いち早く作業着を着たニースは、部屋から出ていった。
「くそっ!いくらなんでも迂闊すぎたか…!」
ズボンを履きながら昨日からの行動を思い出し、舌打ちする。
この街には俺たちの他に、少なくとも3人の生徒がいた筈。
クラウディアはないと思うが、誰が敵になるのか分からない状況で俺の取った行動
は、迂闊としか言い様がない。
この街で何かがあったのなら、その何かを起こしたのは他の2人のうちのどちらか
……レベッカかエルネスティーネになる。
またはどこからか現れた、新たな生徒という事も十分考えられる事態だ。
だけど今はそんな詮索よりも、一刻も早くデパートに向かい、現状を確かめなければ。

ニースから少し遅れて部屋を出て、ホテルからデパートに向かう。
「!」
ホテルを出て直ぐに感じたのは、何かが焼かれたような、焦げたような臭気。
雨で薄れてはいるが、間違いなく誰かが戦闘を行った証拠だ。
「この感じだと…誰かが損傷しているか…?
 運が悪ければ…くそっ」
もう一度舌打ちすると、昨日来た道をダッシュで戻っていく。

街中では目立つデパートの建造物。
慣れない街でも、そのおかげで迷う事はなかった。
デパートまであと少しというところで、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
おそらくMSの外部マイクからの声なのだろうが、その声の主は、間違いなくレベッカだ。
デパートの前に出た時、まず目に映ったのは地面に嘔吐するニースの姿。
どうやらレベッカは、ニースに話しかけているらしいが……デパート前の光景と…
そしてその言葉を聞いていれば、ここで起こった事の詳細も嫌でも分かる。

「くそっ。迂闊なのは認めるけどさ…。
 こんな世界だからこそっていう考え方も、あるだろうに…」
ニースの横を駆け抜け、シャッコーに駆け乗る。
「…まあ根本的な考えの違いってヤツは、なかなか歩み寄れないんだよな」
ベルトを締める間も惜しんで起動。
「もし簡単に考えを改めて、歩み寄れるなら……」
シャッコーの隅々に命の火がともり、ただの金属の置き物だったそれを、兵器へと戻していく。
「地球は1年戦争も、ティターンズの専横も何もない、幸せな星だっただろうに」
シャッコーを移動させ、ニースを庇うような位置取りを取る。

【行動:10番への回線継続(0)着替え(−1)ホテルを出る(−1)デパートに
    向かう(−1)シャッコーに搭乗(−1)】
【残り行動値:0p】
【位置:U-22】
【機体状況:異常なし】
【参加者状況:異常なし】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン、ビームローター
    ビームピストル×2(75%)】
【所持品:ディパック、水2?入り2本、コッペパン2個、お守り、ペンライト、ポータブルプレイヤー】
【行動方針:推移を見守る】
【仲間:ニース】
224ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/15(水) 20:19:46 ID:???
>>205
「は、はぁ。そりゃどうも・・・」
さっきまでの勢いはどこへやら、まるで普通の学校の先生の様な(俺は普通の学校の先生なんて会ったことが無いが)言い方にすっかり俺は毒気を抜かれてしまった。
(それにしてもおかしいな・・・本当にこいつ、さっきの狂気の持ち主なのか?)
そんな事を考えているうちに、あっさり通信は切れた。
ふと脇を見る。なぜこんなことをしたかというと、元々あいつと話していたのはクルルだと思い出したから。
もしかして俺、クルルの邪魔したかな?・・・いや、もしかしなくてもしてるな。
(アホか俺は。ちゃんと周りを見ろよ。ジンペイの件といい空回りしすぎだろ。道化か?)
自己嫌悪。入る穴を探したくなるレベルの。俺ってこんなんばっかだ・・・。
ともかくずっと黙りこくっているわけにもいかないか。何か話題を振ろう。
「えっと、クルル、一つ聞きたいんだけど。お兄ちゃん知りませんかって・・・どういうこと?」
本当はわざわざ口で聞かなくても相手はニュータイプだから、別の方法があるんだけど。

【行動:会話(0)】
【位置:N−21、森林】
【残り行動値:4p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント、120mmマシンガン(全て新品同然)
    予備 クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)二連装ビームガン(取り付けしていない)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:待つ】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、ザンスカール製ノーマルスーツ、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml】
【行動方針:クルルが怒ってないか確認】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
【守る:20番・クルル=ヴァルデーン】
225クルル=ヴァルデーン ◆8assMZDpKM :2005/06/15(水) 20:22:39 ID:???
ロイドさんと通信してきた男の人が話し合っている。
ちょっと難しい感じのお話だったけど、ロイドさんが一生懸命だっていう事がわかった。
一生懸命、わたしを守ろうとしてくれている事がわかった。
だって、そうじゃないと、こんなに男の人に強い口調で反論しないと思う。
あんまりわたしは頭がよくないけど、それだけはわかった。

そして、この男の人もロイドさんが考えてるほど悪い人じゃないと思う。
何で?って聞かれると首を捻っちゃうけど…………
色々わたしに教えてくれたりしてくれるし、言っている事は正論だと思うから。

でも、この二人が喧嘩しているのは見たくない、な…………
どっちも、わたしに優しくしてくれる人だから。
だから、仲良くしてほしいなぁ。

――――!?

また!また、この感覚だ!
寒くて、気持ちが悪いうねうね…………
それがまた一つ、何だかよくわからないけど天に昇ってる?
…………怖い。

寒くて、怖くて、思わずロイドさんの服の袖を掴んだ。
何かに、誰かに、強く強くしがみついていないとわたしまで一緒に天に昇っちゃいそうで。
ガクガク震えながら、ロイドさんに掴まった。

「ロ、ロ、ロイド、さん…………あ、あぁ…………」

震える口は言葉も紡げない。
舌が上手く動かない、何も、ロイドさんに伝えられない。

「あ…………う…………」

ビクビクとしながら、唯一なんとか動かせる腕を、感じた方向へ向けた。
指はピンと伸ばしたつもりだったが、やはり力は入らずしおれている。
痛い、怖い。
おじいちゃん、助けて。
おじいちゃん、守って。
わたしの震えを、どうか止めて…………

【行動:死に感応(1) ガクガクブルブル(1)】
【残り行動値:2P】
【パイロット状況:(*T∀T)コワイヨ、イタイヨ、サムイヨ】
【位置:N-21】  
【機体状況:MSA-005メタス/やや装甲破損 左肩部アーマー一部破損】
【武装:アームビームガン×2(EN70%)、ビームサーベル×6、ビームローター】
【所持品:ディパック 水2g1本と半分 筆記用具一式、特殊トランシーバー×2(一対)鍋】
【メモ:『ここは地きゅう・おにいちゃんは地きゅうにいる・わたしはおにいちゃんをさがす
     きたいはメタス・アイテムは黒いきかいがふたつ・ぶきはそらとべてたてにもなる
     グフはおじいちゃん・ゲルググはおねえちゃん・アッシマーはおじちゃん・バウはいたい
     おじいちゃんは大いで偉い・大いは仲間・いたいのはわからない
     アッシマーはやらない・ゲルググつよい・大いつよい・ガンダムを倒す・Zプラスは仲間
     戦艦はZプラスの人のもの』】
【行動方針:何百回敗けても、必ず生き延びてジオンの志をわたしの次の世代へ おにいちゃんを探す】
226リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/15(水) 21:22:04 ID:???
>>220-222
ボトルとナッツを手に、ファッツが傍らへと寄ってきた。

『おかわり自由ですよ、お姉さん』

手にしたものをソファー前のテーブルに置き、ニコと笑うと、ファッツは隣へと腰掛けてきた。
相変わらずの笑顔に、グラスを傾けるリトラの手が、思わずとまる。
ファッツの腰掛けた位置は、まさにこの“伊達男”の恋の駆け引きの妙をあらわしていた。
共に酒を飲むに不自然ではない程度に近く、馴れ馴れしさに眉をひそめられる程でもない。
だが、油断はならない。
プレイ・ボーイと呼ばれる人種というものは、ここからの距離を縮める事が抜群に上手いのだ。

もっとも、幾ら甘いマスクで微笑まれ、その口から口説き文句を並べ立てられたとしても、
それらはリトラ=クロームの心を打つ事は無い。女豹は、その氷の心を決して溶かす事は無い。
かつての彼女の仲間の内にもプレイ・ボーイと呼ばれる男は居たが、彼はその身で以って
女豹の牙の鋭さを味わう事となったものだ。
鼻を叩き折られ、地に伏す“プレイ・ボーイ”に対し、女豹は冷たい笑みを浮かべ、このように告げたのだ。
私をどうにかしたいのであれば、私を打ち負かしてみろ、私に認めさせてみろ、と。

―――だが。

今のリトラは、満更ではない気持ちを覚えていた。
アルコールが回ったが故か、牙を折られた女豹はすでに女豹では無くなっているが為か。
リトラはファッツ=シュヴィールの存在を心の内に入り込ませつつある自分に気づき、思わず顔を顰めた。

テーブルに置かれたナッツに手を伸ばし、カリ、と齧った時。
パラパラという音が耳を打ち、リトラはナッツを口へと運んだ人差し指を唇に触れさせたまま、
ファッツへと顔を向けた。

と、ファッツはいつの間にかコインとトランプを取り出していた。
手馴れた手つきでトランプをシャッフルしたファッツはそれをテーブルへと置き。

『お姉さん、どうでしょひとつ?』

コインをピンと、指ではじく。

『サマは使わないからさ………いっちょ、一勝負やりません?』

コインが再び手に収まるなり、ファッツは本当に楽しそうな笑顔を―――
“ファッツ=シュヴィール”を体現する笑顔を浮かべ、そう告げた。

アルコールによって赤く染まるリトラの頬が、ほんの更に、赤みを増した。

「……わ、私はそれほど賭け事に詳しくは無いぞ。
 いや、カードなどを用いた賭けに詳しくはないとでも言うか。
 先程までお前が興じていたようなものであれば、腕に覚えが無いわけでもないが……」

少々呂律の回らない舌で、そう答えるリトラであったが、
本当に楽しそうな笑顔を浮かべているファッツを見て、瞳を閉じてフゥ、とため息をつく。
瞳を開き、穏やかに微笑みながら、更に言葉を続けるリトラ。

「ま、そんな私でもポーカーぐらいならば把握している。
 いいだろう。乗ってやろうじゃないか。
 約束を果たすためにここまで来たお前を“楽しませ”てやるには、今の私にはこれ位しかできんだろうしな。
 賭けの代価は……」

立てた人差し指を唇に触れせたまま、暫し、思案にふける。
やがて、何かを思いついたようにニタリと笑い、口を開いた。
227リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/15(水) 21:25:09 ID:???
「……そうだな、私が勝った場合、お前の事を少し喋って貰おうか。
 いつも笑顔を絶やさぬお前が一度だけ、普段とは全く異なる様相を見せた時があったな。
 それを引き出したのが私の行為だったというのであれば、その理由を聞いてみたい」

リトラは、このファッツ=シュヴィールに強い興味を抱きつつあった。
牙を取り戻した暁には、当然決着をつけるつもりでいる事にかわりはない。
だが、リトラはファッツの全てを知り尽くした上で、この男との決着をつけてみたくなったのだ。

「お前が勝ったら……お前が望むことをすればいい。
 私の望みは、お前の心の内に土足で入り込むような真似かも知れんのだからな。
 ―――どうだ?」

微笑みながら、ファッツの瞳を覗き込むリトラの瞳には、真剣な光が浮かんでいた。

【行動 :  賭けに乗る、代価提示 (-1) 残3 】
【位置/場所 : D-12/基地・施設内、娯楽室 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――その心臓は今尚死なず 】
【パイロット状況 : 額に怪我(処置済み&頭に巻かれた包帯) そのグレーの瞳の奥には微かな光
           黒のワンピース・ドレス姿 ほろ酔い状態 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト 煙草数箱 『バンダナ』 応急処置が可能な薬品類&包帯類
      クマの『ハロ』(ディパックよりチラッと頭だけ出ている) 】
【方針 : 私は“牙”を、取り戻す ファッツとの賭けに乗る 】
228エドワード ◆71GpdeA2Rk :2005/06/15(水) 21:35:01 ID:???
>>35
 起床。
鈍く疼く頭の痛みは夢の残り香か。
まず喉の渇きを癒すように水の入ったボトルに口を付ける。
胃の中が水で満たされるが腹はこれで騙されてくれそうにない。
餓えはもう限界に来ていた。
最後のパンの封を開ける。
そのまま齧り付きたい欲求を抑え、
丁寧に一口大に千切ると口に放り込み、
惜しむようにゆっくりと時間をかけて咀嚼する。
所詮パン1つにすぎない。
持ったところで4〜5時間がいいとこだろう。
食料確保を急がねばならない。
食事を終え、MSの腰を上げる。
幸いにも、北に在った反応は消えていた。


【行動:食事(-1)、移動(P26→P25→P24→O24→N−24)(高速道路移動ボーナスあり)(-3)】
【残り:0】
【位置:N−24(道路)】
【機体状況:胸部装甲に損傷】
【パイロット状況:やや空腹】
【武装:肩部3連装ミサイルランチャー(残弾左1、右0),ビームトマホーク】
【所持品:布、綿、糸、裁縫道具、色鉛筆、型紙、人形
        水1L半、、MS整備の本】
【方針:食料確保】
229ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/15(水) 21:53:43 ID:???
>>225
俺が聞くのと、クルルが震えだしたのは同時だった。
「・・・え?ちょっと?っ!」
同時に俺にも悪寒が伝わる。誰か死んだらしい。
頭が、重い。もっとも・・・それだけだが。
「ちっ・・・」
よっぽど彼女は感度がいいらしい。
自分の能力を扱いきれていないという事を抜きにしても、他人の死にこうまで共感できるとは大した能力だ。
・・・とはいえ、きついのはこっちも同じだ。
彼女のニュータイプ能力は高い。だから受信だけでなく、発信でも大きな力を発揮する。
だから彼女の苦しみは簡単にこっちにも伝わり、こっちは普段に比べて2倍3倍の負担がかかる。
こういうときは、落ち着くまで一人でのんびりするのがいいんだけど。

―――彼女が俺の袖をつかんでる。まるで、助けを求めるかのごとく。

・・・俺が落ち着くまで待てないな。
「大丈夫、だよ」
そう言って、俺は彼女を抱きしめた。
さっきより頭が重くなった。それはさっきより近い位置に彼女の心があって、それに引きずられるから。
つまり彼女は、もっと苦しんでる。
「ちょっと、手を借りるよ」
そう言って、彼女の手を握る。そこに意識を集中する。
安心とか。愛情とか。そういう、あったかい気持ち。
そういった言葉ではない、感情の思念を伝える。

―――ニュータイプとは、心の同調という言葉を使っている。
それが以前、研究者から聞いた説だ。実際、部隊では口を使わずに心で話せる奴もかなりいた。
もっともそれはお互いがちゃんと分かり合っていないとできないこと。
だけど、俺はある程度の指向性、つまり拾ったり流したりする思念をある程度選別する力を持つ。
だから手を握れば、そこに力を集中できる。体へ思念を集中して流せる。
つまり相手が彼女ほどのニュータイプなら、俺の思念を直接伝えられる。
確か研究者は、俺のこの力を精神感応と名付けていた。

要するに、今俺がやっていることは単純。
こっちの気持ちの一部を、彼女に直に伝えている。ただそれだけだ。
・・・もっともまともな人間には永遠にできないことだろうが。
230ロイド・エンデバー ◆tW13rMBWhI :2005/06/15(水) 21:55:20 ID:???
【行動:精神感応(1)】
【位置:N−21、森林】
【残り行動値:3p】
【機体状況:MS,背面部装甲表面に擦り傷、ABCマントを脚部に着用
       艦,損傷無し、重石付き】
【武器:MS 頭部バルカン砲×2 ビームサーベル×2 腰部ビームキャノン×2、ABCマント、120mmマシンガン(全て新品同然)
    予備 クレイバズーカ・拡散弾(気付いていないがヒビあり)二連装ビームガン(取り付けしていない)
    艦 メガ粒子砲×1、ビーム・シールド×1、ミサイルランチャー×8 重石】
【生徒状態:軽い頭痛】
【所持品:デイパック、コッペパンx1.9、水2リットルx2、木刀、写真、重り×3、ボールペン、ザンスカール製ノーマルスーツ、
     果物缶詰×3、魚の缶詰×3、スポーツドリンク350ml】
【行動方針:クルルを落ち着かせる】
【同盟:7番・ジンペイ=カザマキ】
【守る:20番・クルル=ヴァルデーン】
231ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/15(水) 22:06:47 ID:???
>>226-227

「……わ、私はそれほど賭け事に詳しくは無いぞ。
 いや、カードなどを用いた賭けに詳しくはないとでも言うか。
 先程までお前が興じていたようなものであれば、腕に覚えが無いわけでもないが……」

呂律の回っていない舌を動かし、答えるリトラ。
…………ちょっと待て、少しばかり色っぽい。
いや、しかし待て待て。
このまま押し倒すのは簡単だが、強烈なカウンターパンチを食らうのは目に見えているし
賭けをしてくれる相手をみすみす逃す事になる。
それに、こういうのはある程度心を通わせないと面白くない。

「ま、そんな私でもポーカーぐらいならば把握している。
 いいだろう。乗ってやろうじゃないか。
 約束を果たすためにここまで来たお前を“楽しませ”てやるには、今の私にはこれ位しかできんだろうしな。
 賭けの代価は……」

よし、乗ってきた。
これ以上はない楽しみだ。
MS相手では出来ない、スリル。
【運】という不安定な物のみを頼りにするこの勝負は、楽しい。
さぁ、どうする。
何を賭けの対象にする?

「……そうだな、私が勝った場合、お前の事を少し喋って貰おうか。
 いつも笑顔を絶やさぬお前が一度だけ、普段とは全く異なる様相を見せた時があったな。
 それを引き出したのが私の行為だったというのであれば、その理由を聞いてみたい」
232ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/15(水) 22:07:52 ID:1snxt/Y1
………?
あァ、あの………
………いや、まァ、いいけどさ。

「楽しいもんじゃないと思うけどねぇ?
 ………でも、ま、いいよ。」

ヒラヒラと手を振って了解の意を示した。
勝てばいいんだろ、勝てば。
知る人が自分と当事者しかいない以上、出来れば墓まで持っていきたかったが
まぁ、別に話しても害ってものはない。

「お前が勝ったら……お前が望むことをすればいい。
 私の望みは、お前の心の内に土足で入り込むような真似かも知れんのだからな。
 ―――どうだ?」
「そうだなァ………」

ギャンブルの基本は等価の賭けだ。
自分の過去を話す以上、その等価は………

「それじゃァ、俺が敗けた場合は俺の昔を話す………
 ………代わりに、お姉さんが敗けたらお姉さんの昔を話す。
 それで、どう?」

そういうと返事を待たずにコインを手に取った。
ポーカーは可能だとの事だが、そこに【技術】というものが勝負に大きく左右される以上
腕には覚えがあるファッツと、ルールを把握しているレベルのリトラが対等という条件とはいえない。
ならば………

「こっちね」

コインを取り出す。
これならば単純に【運】だけだ。

「こっちが裏、こっちが表………OK?」

ルールも至極簡単、裏か表かを当てるだけだ。
表と裏を確認させ、後は勝負をするのみ。

――キィン、と音が鳴りコインが宙を飛ぶ。

それをキャッチし、手で覆い手に重ねる。

「裏か、表か?」

【行動 :06番リトラ=クロームに賭けを仕掛ける(-1P) 残り2P】
【位置 :D-12 軍事施設・施設内娯楽室】
【機体/状況 :マラサイ/問題無し】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 ホロ酔い】
【武装 :ビームサーベル 頭部バルカン砲(残弾100%) ビームダガー ビームピストル(EN 50%)】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×1 コッペパン×1
     コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 
     女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)】
【容姿 :カウボーイ】
【暫定行動方針:賭け or 賭博 or ギャンブル】
【最終行動方針:このゲームを楽しむ】
233ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/15(水) 22:27:00 ID:???
昨夜から降り続いていた雨がその激しさを失いながらもなお降り続く中で
目の前で、赤い機体と黒い機体が対峙していた。
少しぼやけのかかった視界がクリアになる。


「イェーガーと・・・・、黒い機体は・・・・。」


ジオンの機体で黒といえばドムである、だがルイスが今まで聞いた
ドムタイプのエンジンの音とはまったく違うものだったが。
どこかアルマの機体にも似た印象を受けるその機体はゲルググJと対峙していた。


(マズイ――――ここで何かあれば、コチラのこの場所だって・・・。)

ルイスは自分の機体―BD―に向けて走り出す。
ずいぶん久しぶりだったような気もするそのコックピットにはディパックがあるだけだった。
各部の簡単なチェックを済ませたあと機動させる。
機体の一部がきしむような音を立てて動き出す。

起動したあと機体には4つの光点があった。
二つは目の前の機体のもの、もうひとつはドコかに駐機しているようだ、
赤外線センサーの反応が無い。

外声マイクから聞こえる女性の声がドコか聞いたような気がするのはなぜだろうか?
まずは対峙する二機両方に通信を入れる。

まずはゲルググJに対して

「この間の戦闘の時に居たな。
 まぁ、あの時は敵ではなかったが、とりあえずもう一度挨拶をしておこう。」

さらにベルガ・ギロスにも通信を入れる。

「俺はルイス・ガルシアという今の状況を分かってない上で言うが
 君たちの間に何があったのかも聞くつもりも無いが。
 たぶん君達のどちらかだとは思うが、俺を”助けてくれた”人が居ると思う。
 間違っていたら先に謝っておくが・・・。」


対峙する2機は一触即発その流れが一気にこちらの来ないとも限らない。
ただ、いまこの場でなにも無いことをルイスは心の奥底では思っていた。

【行動:機体に乗りこむ(−1)機動(−1)通信(−2)】
【残り行動値:0P】
【パイロット状況:少しスッキリ 少し風邪気味】
【位置:U―22(ドーム球場)】  
【機体状況:02・10に対して通信回線継続・右肩アーマー破損・左肘関節部アブソーバー欠損・左肘から先の装甲及び内部破損 】
【武装:頭部60mmバルカン砲×2(残弾84%)、胸部60mmバルカン×2(残弾72%)、 ビームサーベル×2(散弾)ビームライフル】
【所持品:シガレットケース(葉巻10本)煙草3箱(48本) ライター パジャマ  ボイスチェンジャー アサルトライフル予備マガジン×2 H&CUSP予備マガジン×1 パン×2 水2L 清涼飲料水4L   缶詰×5 塩1袋 下着類 】
【行動方針:俺を助けてくれたのは誰だ?】
234サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg :2005/06/15(水) 22:37:51 ID:???
>>210-211
思った以上に簡便とした返答を受け、映像を繋げる。
モニターに映る女性―まだ少女と呼ぶような歳付きか―の姿は、一見すると普通そのもの……
いや、普通と見える中にあって、双眸のみが異質を成していた。
コクピット内部にはトランクらしき代物が見受けられる。

(MSが何かを取り出したような素振りは無い…あれが中身か)

戦闘に扱う類の物でない、というのは安心できる反面、興味も出てきた。
中身は何か、と少考する。

(銃火器や毒物? ……あり得なくはない、が。連中の目的からすればMSを使わせないのは
 メリットとは考えづらい。違うなら始めから生身で放り出しても済む話だ。
 あるいはナインティのディスクのように、情報源が入っている、か)

ここで考えを止め、通信に答える。

「アルマ…フローライト。湧き出る恵みの光、といったところか。
 悪くない名だ…っと、初対面としては失礼かね?」

無精髭を撫でさすり、唇の端を持ち上げる。
意味のある名というのは悪いものではない、と呟いて。

「まずは、応じてくれてありがとう。さ、て……」

言いかけたところで、もう一機の存在を思い出す。
主導権はこの少女が握っていたような様子だったが、不審がられて長物を撃たれたりされても困る。
そう考え、『翼付き』へも通信を送った。

「改めて言おう、名はサイモン。交戦の意志は無い…と、こちらからは言っておくよ」

さて、どこまで話し、どこまで聞き出すか…と思案する。
その時、やはりトランクが目の端に飛び込んできた。

(手っ取り早く聞いてみるか…?)

とりあえずのところ相手に敵意は無いが、油断できるわけでもない。
少々強引だが、相手がどこまで歩み寄るかも含めて探りを入れてみるか、と思い立つ。

「ふむ、そうだな。何か知れるなら越した事は無いんだが…
 そのトランク、ちょっときて見せてくれないか?」

と。努めて真面目に尋ねた。

【行動:17番と通信継続(0P) 22番と通信(-1P)】
【位置:K-12/川】
【残り行動値:3P】
【機体/状況:アッシマー/MA形態 左腕部装甲に裂傷】
【生徒状況:左頬に赤み】
【武装:アインラッド(停止・現在N-13)】
【所持品:ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx3、携帯糧食x5)
     ウェストポーチ(ナイフx1、ペンライトx1、煙草x1、コンパス付腕時計、筆記用具 携帯糧食x3)
     ショルダーポーチ(ポラロイドカメラ一式) ライターx1 毛布 包帯 幅広の布】
【行動方針:1.自衛の確保 2.情報の入手】
235アルバート=パーシング ◆n/1NtkuBMs :2005/06/15(水) 23:33:25 ID:???
移動した俺は、シャッコーの両手のビームピストルを何時でも撃てるよう構えた。
「…あくまでも相容れないのであれば……撃つ事に躊躇いはない」
撃たないのは、まだ下にいるニースを巻き込むのを避ける為。
油断なくベルガ・ギロスを見据えながら、外部マイクを繋ぐ。

「…立つんだニース。…ニース=エルネージュ!
 立ってゲルググに乗るんだ!
 いいか…そこでうずくまっていても、何もないんだ。
 吐いても、叫んでも泣き喚いても、そこからでは何も聞こえはしない」
厳しいようだが、このままニースがうずくまっていても、進展はない。
レベッカに相対するなら、それに相応しい舞台がある。
「そこで下から見上げていても、その姿は弱々しい虫みたいなものだ。
 そのままでは本当に虫のように踏み潰されて、終わりだ。 
 ニース。…君がレベッカに何か特別な感情をもっているのなら。
 レベッカと話すのなら、レベッカと戦うのなら!
 それはレベッカと同じ視線で見て、同じ舞台に立って示すんだ!」

昨日デパートから走り出てきたニース。
その原因はレベッカだろう。
なら、ニースは…ニース自身が、もう一度正面から話すべきだと思う。
ニースとレベッカの間でしか分からない事もある筈だから。

通信を終えて一息つく俺の目に、レーダーの新たなMSの機影が映る。
機種は…BD…位置的には、向こうの球場にいるらしい。
聞いた事ない機体だけど……一応の用心は必要だろう。

【行動:10番への回線継続(0)戦闘態勢(0)外部マイク接続(−1)】
【残り行動値:3p】
【位置:U-22】
【機体状況:異常なし】
【参加者状況:異常なし】
【武装:ビームサーベル×2、右肩部2連装ショルダービームガン、ビームローター
    ビームピストル×2(75%)】
【所持品:ディパック、水2?入り2本、コッペパン2個、お守り、ペンライト、ポータブルプレイヤー】
【行動方針:推移を見守る】
【仲間:ニース】
236ブレイム ◆TjmPhqaoLQ :2005/06/15(水) 23:37:46 ID:???
彼女の調べていた鉄の箱が、開いた。
彼女は、コクピットから降りて、内部がほぼ空洞であった鉄の箱を調べに行っている。
チャンスだと思った私は、メインカメラを動かし、彼女を視界内に入れる。
そして私は、スクリーンに映し出された彼女の姿に見入っていた。
コンソールを操作して、私のMSのメインカメラの倍率を切り替え、
同時に内蔵された指向性のマイクを彼女に向ける。
はじめは、ちっぽけだった彼女の姿が、見る見る大きくなっていく。
彼女のことは、たとえわずかな表情の変化でも、見逃すことはできない。
息の乱れや、細かいしぐさでも、今の私にとっては重要だ。
そう考えて、私は、νガンダムのことをすっかり忘れて、彼女を見つめていた。

拡大された彼女は、彼女は、鉄の箱にしまわれたものを見て、ぷるぷる震えていた。

『ふっ……、ふざっけるなあーーーーーッ!!!』

彼女の放った叫び声が指向性マイクの影響で拡声され、コクピット内に響き渡る。
私は、その叫び声の大きさに、思わず意識が遠くなりかけた。
耳がキーンとなりながらも、私は彼女が叫びだした原因を探った。
どうやら、その原因は、彼女の目の前に存在する、トランクの中身の衣服が原因らしかった。

大人の魅力を演出するべく作られた、特注の服。
いわゆるバニースーツという奴だろうか。
彼女は、そのバニースーツを見つめて、まだ震えている。
私は、耳鳴りを我慢しながら、まだ彼女を見つめていた。

数分後、私の耳鳴りが止み始めた。それと同時に、飛行機が飛ぶような音が、わずかであるが聞こえてくる。
レーダーにも反応があった。機体照合が、自動的に行われる。
ほどなくして、機体照合の結果が出た。

続く
237ブレイム ◆TjmPhqaoLQ :2005/06/15(水) 23:39:00 ID:???
レーダーに反応した機体は、NRX-044 アッシマー。
オーガスタ研究所のMS開発部門の人間に聞いたところだと、円盤状に変形して空を飛ぶことができるMSらしい。
最近、ティターンズで実戦配備され始めたらしいMSを、わざわざこの殺し合いの主催者は手に入れてきたのか。
私は、指向性マイクを停止し、メインカメラを通常の倍率に切り替えて、レーダーに反応があった方向を見る。
・・・何もくる気配がない。だが、レーダーにはずっと反応し続けている。

こちらは彼女のことについて知らなければいけないのに。
気づけば、彼女はエビル・Sに乗り込んでいた。
まったく、邪魔してくれちゃって・・・
もっとよく見つめていたかったのに・・・
私は、中途半端に終わらされた《観察》のことを気にして、いらだちながら、
レーダーが指し示す方向へ機体を向け、アッシマーがいつ来ても良いように警戒することにした。

ふと、そこへ、通信回線が開かれる。
通信相手は・・・アッシマーであった。
『改めて言おう、名はサイモン。交戦の意志は無い…と、こちらからは言っておくよ』
サイモンと名乗る彼は、とりあえずは敵対者ではないらしい。
「・・・私の名はブレイムだ。こちらもとりあえずは交戦しようという意思はない。
 で・・・いったい何の用かね?」
通信回線を受信限定から送受信可能に切り替え、彼に返信を送る。
彼は、わざわざ交戦の意思もないのに接触してきた。
交戦したくないのならば、逃げ回り、どこかに潜んでいればいいはずだ。
それなのに、なぜ。
私は、彼が何をやりたいのかについて少しだけだが興味を持った。

【行動:観察(−1) 耳鳴り(−1) 警戒(−1)】
【位置:J-12】【行動値残り:1】
【機体状況: V2アサルトバスターガンダム;異常なし】
【パイロット状況:異常なし】
【武装:頭部バルカン砲×2 肩部メガ・ビーム・キャノン 肩部スプレー・ビーム・ポッド 
    腰部ヴェスバー×2 ビーム・サーベル×2 光の翼×2】
【所持品:なし】
【方針:《強化人間》アルマについて知りたい。それこそ何から何まで。
     サイモン氏の動向をさぐる】

238風巻陣平 ◆6fCY9104KQ :2005/06/15(水) 23:43:36 ID:???
飛行を始めて既に6時間が経とうとし、目的地もいよいよ近い。
セイバーフィッシュは、地上と空を隔てる雲海へと静かに身を沈めて行く。
警戒しながら、大きく旋回しながら降りていった先は灯台地区。
スポン、と雨雲より脱したとたん、レーダーに反応が。
一つは同一エリア、もう片方はここより若干離れた位置だった。

その反応は、もちろんホワイトアークの物であると期待したのだが。
しかし、反応はMSクラスの物。ならばZ+だろうか……?
だが、予想は二回とも裏切られる結果となった。

「なぜ貴様が其処に居る……。
 一つ、聞きたい。13番を見なかったか?
 よもや、手に掛けたのでは無いだろうな?」

キリト=ヴァルリック。地上に降りた先では、よりによって奴が居た。
本来ならすぐさま交戦に持ち込んでも良い状態なのだが、
待ち合わせ場所にキリトが居る訳を見極めなければならない。
おもむろに通信回線を開き、ロイドの所在を確かめに掛かった。

Gキャノボンの損傷は、即ち交戦した後だと物語っている。
その相手は誰だったのか。一抹の不安が、脳裏に過ぎった。

【行動 : 移動-2 キリトへ通信-1 残行動数1】
【位置 : P-13→N-16→N-18(灯台上空、雨雲より降下)】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:異常無し】
【パイロット状況 :良好】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4 60mm機関砲×1
       両用ロケット弾×6 落下式増層×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 ディパック 水2L入りペットボトル×2 デジカメ
       アルバム(未発見) コーヒーセット 巻き寿司4食分 レーション×6食分】
【方針 : 1、ロイドと合流 2、キリト撃破】
【同盟 : 13番 ロイド・エンデバー】
239リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/15(水) 23:50:48 ID:0Znyxctv
>>231-232
ファッツの提示した代価を聞いて、自らの表情に若干の落胆の色が混じった事に、
リトラは自身では気づきもしない。

「……何だ。そんな事でいいのか?
 言葉の通り、お前の望む事で良―――」

言いかけた段階でようやく気づき、慌てて自らの口を突いて出ようとした言葉を取り消す。

「……い、いや、いいだろう。
 相応の代価といえば……確かに妥当だろうからな。
 こんな機会でもなければ、永遠に人に語られる事も無いものだ―――」

全く、調子がくるう。
これではまるで、私がこの男を……ええい。

『こっちね』

と、ファッツがコインを手にした。
……なるほど、ハンデ無しの対等勝負という事か。
確かにこの方法ならば、ギャンブル慣れしているファッツと素人同然のリトラの間に一切の差は出ない。
裏か、表。純粋に、運の勝負という訳か。

『こっちが裏、こっちが表………OK?』

「……ああ」

頷くなり、ファッツはキンとコインを弾く。
途端、リトラの瞳に鋭き光が宿った。
宙を回るコインに注がれるリトラの眼差しは、まさに決闘に望む際のそれであった。
コインがファッツの掌に収まる、その瞬間まで―――

『裏か、表か?』

「―――裏、だ」

【行動 :  「―――裏、だ」(-1) 残2 】
【位置/場所 : D-12/基地・施設内、娯楽室 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――その心臓は今尚死なず 】
【パイロット状況 : 額に怪我(処置済み&頭に巻かれた包帯) そのグレーの瞳の奥には微かな光
           黒のワンピース・ドレス姿 ほろ酔い状態 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト 煙草数箱 『バンダナ』 応急処置が可能な薬品類&包帯類
      クマの『ハロ』(ディパックよりチラッと頭だけ出ている) 】
【方針 : 私は“牙”を、取り戻す ファッツとの賭けに乗る 】
240エルナ ◆tf5U6oR8/w :2005/06/16(木) 00:18:56 ID:???
雨は降り続ける。町を、MSを、そしてホテルから出てきた少女に降り注ぎ続ける
それは、涙なのだろうか……このような事をしている者達への……誰かの、涙。

『甘いよアンタ。
 ボクを止めたいなら言葉より前に引き金を引かなきゃさ……全く下手だね、どうも』
「……。」
撃てれば、撃っていた。
しかし、この距離で撃てば……何を巻き込むか解らなかった。
道路に出てきたニース。真横のデパート。自分自身。
MSが破壊されたとき、どのような事が起きるか解らない以上迂闊にビームなんて撃てなかった。

『3対1? 甘いよ、甘い甘過ぎる。
 ボクがその前にアンタを殺せばさ、2対1で終わりだよ』
「……。」
銀色のMSを足蹴にしながらレベッカは言う。
……止めろ。殺した上に、そんな事をするのは……。
怒りが湧き出そうになる思考を、必死に押さえる。
冷静でいなければ……成すべき事も成せない。

『つまりさ、ボクが言いたいのは。
 どうせ人間何時か死ぬなら、此処で死んでも大した違いは――』
「……。」
意味がない……それでは、今まで生きてきた意味が……ない。
私は……私は……?

>>217-218
レベッカもニースの存在に気が付いたようだ。
その瞬間……纏っていた空気が少し変わったような気がした。
だが。その言動には虚ろさが残る。
……そして、これは……嫉妬?
さらに黒いMSがしゃがんで何かをしているのが見えた。
拡大して何をしたのか見たかったのだが、視野が狭くなるので止めておく。

そして私は……そこでやっと口を開いた。
241エルナ ◆tf5U6oR8/w :2005/06/16(木) 00:19:31 ID:???
「……私はそんな事は聞いてない。
 私が聞きたいのは、私が甘いかどうかとか、三回とか二回とか一回とか、
 誰かが馬鹿だとかどうかとか、そんな事じゃない。
 ……殺し合うの?それとも逃げる?
 私は逃げるなら追う事はしない。……甘いと思いたければ勝手に思えばいい。」
そう言うと、トリガーに掛ける指の力を僅かに上げた。
すぐにでも撃てる。……道路の上にニースが居なければ。
……このままじゃ……スラスター一つ吹かせられない。
やっぱり私は甘いのだろうか……うん、甘いんだと思う。
でも、冷徹になりきっても、やっぱり成せない事もあると……私はそう思う。

レベッカの方は逆に、殺気が強くなったような気がした。
……覚悟を、決めたという事だろうか。

一触即発の空気。どちらかが動けば、
たちまち銃が火を噴き、剣が振るわれ、何者かの命が奪われる。
そんな空気の中、一つの通信が入った。
……発信者は、ルイス=ガルシア……先程この町に入ってきた人。

『この間の戦闘の時に居たな。
 まぁ、あの時は敵ではなかったが、とりあえずもう一度挨拶をしておこう。』
『俺はルイス・ガルシアという今の状況を分かってない上で言うが
 君たちの間に何があったのかも聞くつもりも無いが。
 たぶん君達のどちらかだとは思うが、俺を”助けてくれた”人が居ると思う。
 間違っていたら先に謝っておくが・・・。』
「……そうですね。お久しぶりです。
 とりあえず……あなたを助けたのは、私ではありません。
 ……私からもひとつ聞かせてください。
 ハロルドさんを殺したのは、あなたですか?
 あの西の町での戦闘。あの後どうなったんですか?
 それを……聞かせて欲しいんです。」
……もし、殺した人がこの人だったら?私はどうするつもりなんだろう。
……仇を討ちたいとでも思うんだろうか。自分の生存する確率を下げてまで?

そこまで私は……馬鹿じゃないはず。じゃぁなんで……こんな事を聞いているんだろう……。

【行動:10番に通信継続(-0)08番に通信接続(-1)】
【位置:U-22 市街地】
【機体状況:ゲルググ・J 胸部装甲・右肩部スラスター損傷 関節に負荷】
【パイロット状況:症状緩和? 脇腹に打撲(詳細不明) びしょ濡れ】
【武装:腕部110.mm速射砲×2(残弾各1斉射分)
    5連装メガ粒子砲シールド(下半分破損)(残弾4)】
【所持品:ディパック(コッペパン×2 水2L入りペットボトル×2 栄養補助食品 H&K P7M13(残弾14) マガジン×3)
     ロングコート(びしょ濡れ)】
【方針:"強くなる" 風邪を引かない 現状打破】
【条件付き休戦?→共闘?:11番 アルバート 14番 ニース】
242ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/16(木) 00:25:51 ID:???
(レベッカさん…。ホントに…敵になったの…?)

ようやく止まった嘔吐。
汚れた口の端を拭いながら、顔を上げる。
そのニースに浴びせられる、レベッカの容赦ない言葉。

そしてニースは、その言葉に抗するだけの言葉を持っていなかった。
ニースは昨日の夜、アルバートに抱かれた。
自分を守ってくれる筈の、ゲルググを放っておいて。
朝になれば、レベッカが敵になると分かっていながら。

(あたし何で、アルバートさんに抱かれたんだろう…。
あの時ちゃんと事情を話してれば、クラウディアさんは死ななくてすんだかもしれないのに…!)

レベッカの言葉によって、心に生まれた疑問。
それは繰り返される事で、より大きくなっていく。

(レベッカさんの言う通り…だよね…。
あたしは…少なくともここが、今までと同じ世界じゃないって分かっていた筈なのに…)

その事は、頭では理解しているつもりだった。
あれだけ泣いて、分かった筈だった。
しかし、アルバートという男性を前にした時。

(アルバートさんなら…全部忘れさせてくれるって…。
こんな世界の事なんて、全部忘れさせてくれるって、思ってた)

好きな男性に縋り付いて、何もかも任せて、心の安泰を願った。
辛い事、悲しい事、苦しい事。
ニースは全部アルバートに頼って、忘れようとしていた。

続く
243ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/16(木) 00:26:53 ID:???
だが。
それは仮染めでしかない。
ニースがどれだけ忘れたと思っていても、この世界は殺し合いをやめようとはしない。
この世界は、ニース1人が逃げる事を許そうとはしない。
その代償が、目の前のビギナ・ギナなのだ。
地面に伏すビギナ・ギナが、ニースを睨んでいるように見える。
それと重なるように、クラウディアの顔が見える。
クラウディアはニースを責める。
私は、あなたのせいで殺された、と。

(あたしのせいで…クラウディアさんは…。
あたしの…せいで…。あたしの…。あたしの。あたしの。あたしの…!あたしの!あたしの!
あたしの!あたしの!あたしの!あたしの!あたしの!あたしの!あたしの!あたしの!あた…)

無限に繰り返される後悔の言葉。
その言葉に、ニースの心が今まさに壊れようとしていたその時、ニースを守るように巨大な影が覆った。
見上げると、アルバートのシャッコーが、ニースとベルガ・ギロスの間に立ち塞がっていた。

「アルバ…」

呟くニースにかけられる、アルバートの叱咤。
厳しくも優しい、ニースを思う言葉。
するとそれまで混沌としていた、ニースの心がだんだん透明になっていく。
何の不純物もない水のように、意識が澄み渡っていくような感覚。
その感覚は、先ほどかけられたレベッカの言葉を、脳裏に蘇らせていた。

確かにレベッカの言葉は、これ以上ないほどに辛辣だった。
だからこそ、ニースの心はその重みに堪え切れず、崩壊しかけた。
しかし、今蘇っているレベッカの言葉は…。
そして辛辣な筈のレベッカの声は…。

(レベッカさん…何でなの…?あたし…分からないよ…)

その事に戸惑うニースを、アルバートの言葉が後押しする。

『レベッカと話すのなら、レベッカと戦うのなら!
 それはレベッカと同じ視線で見て、同じ舞台に立って示すんだ!』

「レベッカさんと…同じ舞台に…。
…そうだよ、ね。分からないなら……同じ舞台で、堂々と聞けば…」

そして、自分の守護者であるゲルググを見つめる。
ゲルググの青い塗装は、まさにニースの透き通った意識を象徴しているようだ。
ゆっくりと立ち上がって、シャッコーの向こうに見えるベルガ・ギロスを見つめる。
その視線には怒りも、悲しみも何もない。
アルバートとレベッカによって目覚めた、1人の生徒が、そこにはいた。

続く
244ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/16(木) 00:28:04 ID:???
ぱっとゲルググに走り寄り、コクピットに乗る。
いつの間についてきていたのか、ハスキー犬も飛び乗った。

「あははっ。ごめん、お前も来てたんだね」

一瞬驚いたニースだが、すぐに笑顔になると優しくその頭を撫でる。

ゲルググのモノアイが光を放ち、その巨体を動かす。
…それは、今までは逃げる為の乗り物だったゲルググが、1人の生徒を乗せた青き
闘士として初めて動いた瞬間だった。
ニースはゲルググを、シャッコーとゲルググJの前に出す。

「ありがとうエルナさん。…でも、今は下がっていてください」

2人の後ろに隠れていては、何を話しても伝わらない。
同じ舞台に立つとは、それだけの危険も覚悟しなければならない。
そして今、ニースという少女は、その決死の覚悟をするだけの勇気を持っていた。
レーダーにはもう1機、新しい生徒の存在が示されていたが、今は対応できそうになかった。
願わくば攻撃などを仕掛けてほしくない、とニースは思う。
少なくとも、自分とレベッカの話が終わるまでは。

ベルガ・ギロスに通信回線を繋ぐ。
覚悟はしていても、やはり早まる心臓は抑えられない。
レベッカに、どんな顔を向けたらいいのかも分からない。

(…でも、目は逸らさない。
これは…アルバートさんと、レベッカさんがくれた、勇気だから…!)

大きく1回息を吸い込んで、話しはじめる。

「…レベッカさん。
…昨日話していた通りになっちゃったんだね…。
…昨日…聞けなかったんだけど…。
何で…何でレベッカさんは…あたしの敵なの!?

昨日あんな事言ったあたしが言える事じゃないけど……でも、でもそれより前に
今日の朝から敵になるって決めてたんでしょ!?
あたし、レベッカさんと友達になれるって言った事、絶対に嘘じゃなかった!」

ニースはレベッカに聞きたい事がある。
その為には、この質問は不可欠だった。

【行動:2番に回線継続(0)葛藤(0)ゲルググに乗る(−1)ベルガ・ギロスに通信回線を繋ぐ(−1)】
【残り行動値:2P】
【パイロット状況:ある意味覚醒】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、レベッカさんの気持ちを聞きたい】
245キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/16(木) 00:54:59 ID:???
キリトが質問した答えはなかなか返ってこないまま
また、レーダーに来客が現れたことが記される。

それは、まだ晴れぬ空を覆う黒雲から
一筋の線を纏いながら鉄の鳥が降下してきた。

『なぜ貴様が其処に居る……。
 一つ、聞きたい。19番を見なかったか?
 よもや、手に掛けたのでは無いだろうな?』

そして、聞き覚えのある口調と声で誰であるかは見当がついたが
キリトにとって彼はもう何も興味の湧かない存在だったので普通に返答を返す。

「おや?貴方でしたか。
 何故私がここに居ることを不自然そうにおっしゃるのですか?
 私が何処へ行くのかなど、貴方が判るはずありません。
 強いて言うなら、ここに居ると皆さんに宣言された方を尋ねて
 訪問したに過ぎませんから。
 それと19番ですか?あまり番号で呼ぶのは判りにくいのですが・・・・・・。」

機体内に登録されてある番号と名前を律義に確認してみる。

「ああ、ロイドさんのことですね。
 彼等ならここから3ブロック先に御待ちですよ。
 待ち人を待っているらしいのですが、貴方のことですかね
 心配なさらずとも今の彼らに興味は持ち合わせておりませんよ。
 さあ、御二方がお待ちの様ですからお早めに向かってあげなさい
 レディーを待たせるのは失礼ですよ。」

【行動:戦艦に通信終了(-0)ハイザックに通信中(-0)セイバーフィッシュと通信(-1)】
【残り行動値:3】
【位置:N−18】
【機体状況:Gキャノン・頭部消滅】
【武装:ビームサーベル×2、 肩部130mm4連装マシンキャノン×2(残弾90%)
    腕部ダブルビームガン×2 ビームソードアックス(ソード・アックス・ピックの3形態)
     ビームショットライフル(EN80%) 6連装ミサイルポット×6】
【所持品:ディパック 水1g1本 首輪 
      レイピア×2 グラサン数個 懐中時計 お守り】
【行動方針:また、目的を忘れてしまいそうです・・・(敬)】
246アリウス=エルツベルグ ◆vu0YveQ5ok :2005/06/16(木) 01:15:51 ID:dVpqCoIe
『私は殺し合いをする
 私は殺し合いをする
 私は殺し合いをする』

「………言われたとおりに書いたが、これでいいのか?」

まるでレンタルビデオの会員申し込みをするかのような口調で、
アリウス・エルツベルグは側に立つ兵士に尋ねた。
―――出来るだけ軽い口調で言ったつもりで、少しだけ声が震えたのを自覚しながら。


我ながら未練がましいな。今更震えて怯えてもどうにもならないだろうに。
それに―――生きていたところで、何がどうなるわけでもない、さ。
少なくとも退屈はしないわけだ。ゆっくり絞め殺されるより、さっさと消された方が楽だろう。

………こうして怯えて妙な強がりをする必要もなくなるし、な。


そうしてアリウスは絶望の世界に身を投じた。背中を思い切り蹴飛ばされることを自ら望んで。
247レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/16(木) 10:30:27 ID:???
>240
「アンタに話した言葉じゃない。
 黙ってな――Get away(この三流野郎)!」

母方のスラングが思わず口をついて出た。
眼前のゲルググ・J、そのパイロットの盛大な勘違いを一蹴してニースからの返答を待つレベッカ。
覚悟は立派だと思っていた。
でもそれ以上に、しゃしゃり出ようとする態度が醜かった。
ビギナ・ギナの残骸を足蹴にした刹那、相手が覗かせた憤りの表情もナンセンスとしか思えなかった。
死ねばただの肉。後は土に還るのを待つだけ――だからこそ、生きる事に価値がある。
命が果てた後の肉体にまで価値を見出そうなど、行き過ぎたセンチメンタリズムでしかない。
それがレベッカの考え方だ。

――ボクはクラウディアの覚悟を、想いまでを足蹴にしたワケじゃない。

故に回線を一方的に切断。
両手がレバーを握っていなければ、中指の一つも突き立てていたかもしれない。
即ちこの段階で既にエルネスティーネは、彼女にとって言葉を交わす意味を見出せない存在になっていたのだった。

と、ニースが現れたのと同じ場所から、今度はアルバートが駆けて来るのが見えた。
ニースの中に視えた色と、とても良く似た色を覗かせて彼はシャッコーに乗り込む。
そして、彼女を庇うようにして位置取りを改める――其処に、レベッカは敢えて何の介入もしなかった。
如何に初心であるとは言え、目の前の「色」と光景の持つ意味ぐらいは察せられる。
肌を重ねあっていたのだろう。
或いは口付けだけかもしれない。

――可愛い振りしてあの子、割とやるもんだね、と……。

少しだけニースへの敬意を増しつつ、尚もレベッカは周囲への注意を怠らず、待ち続けた。
248レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/16(木) 10:36:12 ID:???
>233
レーダーが、球場の方向から接近する機影をキャッチして通知してきた。
ブルーディスティニー。ルイス・ガルシアの機体だ。
満身創痍の白いMSは雨の中、確かな足取りでゆっくりとこちらへやって来た。

『俺はルイス・ガルシアという今の状況を分かってない上で言うが
 君たちの間に何があったのかも聞くつもりも無いが。
 たぶん君達のどちらかだとは思うが、俺を"助けてくれた"人が居ると思う。
 間違っていたら先に謝っておくが・・・』

――ボクはノーマルだ。だから落ち着けボクの心臓。

ややあってから入ってきた通信に。
正確にはそれに対する己の反応に、レベッカは思わず苦笑した。
映像回線が映し出すルイス・ガルシアの顔に、速度を増した鼓動を心の中で叱責する。
容態の回復を窺わせる顔色の良さを見て安堵しかけた心を更に叱責。

――汗がキッカケかぁ……。

とは言えこればかりはどうする事もできず。

「きっと運営側の気まぐれさ。
 そうでもなければ、服を脱がせて汗まで拭くなんて……ああ、とにかくそんな真似、誰もしないよ」

余計なしがらみを拒もうと紡いだ言葉は、内心の葛藤ゆえに及第点以下だった。
249レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/16(木) 10:41:12 ID:???
>243-244
紆余曲折を経て、漸く望んだ時間が訪れようとしていた。
ニースの色が、覚悟と決意を思わせる風合いに定まって落ち着く。
そうだ。それで良い。
僅かに頷きながら、少女がモビルスーツに乗り込むのをレベッカは見つめていた。
ルイスの顔に高鳴っていた鼓動も、何時の間にか落ち着きを取り戻していた。

歩き出すゲルググ。
技量的な危なっかしさと、精神的な確かさを感じさせる。
自分も昔はこんなものだった――そんな感慨が僅かに滲んだ。

通信回線が接続され、モニターにニースの顔が映し出された。
正面から向き合うのは昨夜のデパート以来だ。
何とも複雑な表情を浮かべている。「色」など視ようと思わずとも、緊張がありありと見て取れた。

『…レベッカさん。
…昨日話していた通りになっちゃったんだね…。
…昨日…聞けなかったんだけど…。
何で…何でレベッカさんは…あたしの敵なの!?

昨日あんな事言ったあたしが言える事じゃないけど……でも、でもそれより前に
今日の朝から敵になるって決めてたんでしょ!?
あたし、レベッカさんと友達になれるって言った事、絶対に嘘じゃなかった!』

真っ直ぐな目。
良い目だ、とレベッカは素直に思う。
右手がレバーを離れ、コンソールを操作して外部スピーカーの電源をOFFにする。
フードの奥の蒼き双眸が、手元のオルゴールへと向けられた。
キルケーユニットにいた頃の自分も、きっとこれぐらい真っ直ぐに人間を見ていた筈。
ならばこちらも、その問いを無視する訳には行くまい――レベッカは沈黙を挟んで静かに口を開いた。
250レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/16(木) 10:45:29 ID:???
「アレだけ犬をけしかけてボクを苛めといて、よく言うよ……っ!?」

ワンクッション置こうとしたのが拙かった。
モニターの隅で控える理知的な双眸を認めた刹那、レベッカは思わず言葉を詰まらせてしまう。
ややあってから気恥ずかしそうに、咳払い一つ。
どうにも決まらない。

「……ま、それはもうどうでも良いか」

気を取り直して再スタート。
今度はちゃんと気持ちを引き締め、なるべく犬を視界に入れないようにしつつ。
道化た言動は、目の前の少女に対して失礼になる。

「ボクはね、ニース。
 ボクはキミ達とは違う……ボクは望んでこの場にいるんだ」

狂気とも愉悦とも無縁の穏やかな眼差しで、白いコートの少女はニースを見つめていた。
251レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/16(木) 10:45:59 ID:???
【行動:エルネスティーネと回線切断(-1)、外部スピーカーOFF(-1)、
     ルイス・ガルシアと回線接続(-1)、ニース・エルネージュと回線接続(-1)】
【位置:U-22(市街・デパート付近・コックピット内)】
【残り行動値:0】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、
        右マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:「もう、戻らない」】
【武装:ビームサーベル×2、左腕ビームシールド、(ビギナ・ギナの左腕)】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx4、
      アイソトニック系飲料1.5L×1、携行食糧1週間分、救急箱一式)】
【服装:クロスボーン・バンガードの軍服】
【方針:火器の確保、ニースの疑問に答えてやる】
【同盟:なし】
252アリウス=エルツベルグ ◆vu0YveQ5ok :2005/06/16(木) 11:40:52 ID:???
―――砂漠に雨が降っていた。
一年戦争で負け、第1次ネオ・ジオン戦争で負け、シャアの反乱でも負けて。
もはや戦う場所すら失い、負けることさえ出来なくなった男が最後にたどり着いた場所に、静かに雨が降っていた。
戦う理由を失った、戦うことしかできない男に、雨が降り注いでいた―――


普段は乾ききっている大地に、気まぐれな空が気まぐれな恵みをもたらす。
何もかも乾いてひび割れて砕かれて砂になった大地に、降り注ぐ雨が染みこんでその色を変える。
気まぐれな風紋も何かの足跡も雨に打たれて形を失い、いつもより暗い色に沈んでゆく。
やがてささやかな生命の息吹と鼓動をもたらすはずの、ひとときの暗がりの中―――

普段の陽光と引き替えに雨音に満たされているその世界に、あまりにも不似合いな原色の巨人がたたずんでいた。


「………本気で棺桶だな、こいつは」

半ば自ら受け入れた世界で、棺桶と呼ぶにはあまりに巨大で高価なはずの与えられたそれを確認したところで、
アリウスは一つため息をついた。

ホビーハイザック。今では標的機ぐらいにしか使いようのない旧式機を、非戦闘用に改造された曲芸用の機体。
お情けとして90mmサブマシンガンが与えられていたが、これでまともに戦えるとはさすがに思えなかった。
どうやら連中はアリウス=エルツベルグを剣闘士ではなく景品としてこの世界に送り込んだらしい。
毛並みのいい猟犬達にさんざんに追い立てられて、疲れ切ったところを高貴な貴族様達に射殺されるのが務めの、
狐狩りの狐役として。

「罰が当たった、ってことかね」

かけがえのない命を粗末に扱う愚か者には手ひどい天罰が下ると言うことか。
生きていても仕方がないなどと考えるとこんな酷い目に遭うという見本そのままらしかった。
世の中の敬虔で真面目な人間達にしてみれば、自分はまさに両手を打って責め立てたくなる対象だろう。
世の中には生きたくても生きられない人が大勢いるのに、生きていても仕方がないなんて考えるとは何ですか。
恥を知りなさい。反省しなさい。悔い改めなさい。もう遅いですけど。
生命の大切さを理解しようとしない馬鹿者は地獄に堕ちるのです。アーメン。畜生め。

「俺にはお似合いの運命とか言う奴か………」

ジオン公国軍の学徒兵として出撃して以来、延々続いてきた負け戦の最後がこれとは、
必然のようでもあり皮肉のようでもあった。
海賊の雇われMSパイロットとして名前もない空間で野垂れ死にするか、
更正の見込みがないジオン軍人崩れの犯罪者として適当な裁判で絞首刑になるか、
それともここで取るに足りない排除対象として消されるか。どれを選んでも自分にふさわしい最期というものだろう。

結局のところ戦うことしか能がない人間が、まともに戦う理由と対象を失ったならば、
迎える結末は早いか遅いかの違いだけで内容は同じなのかもしれなかった。
あるいは他に道はあるのかもしれない。探せば別の生き方が見つかるのかもしれない。
しかしそれを探すには、異なる何かを選ぶには、アリウスは少し疲れすぎていた。
半分に砕かれたアクシズが謎の光に包まれて地球から弾かれるのを目にしたとき、
かろうじて残っていた何かがそれと共に消えてしまっていたのかもしれなかった。

「………………………」

苦笑と呼ぶには苦すぎる笑みを唇の端に浮かべると、
アリウスはコクピットに放り込まれていたディパックの中身を確かめることにした。

「………………………」

コッペパンが2つ。水の入ったペットボトルが2本。それに………これは歴史か何かの本だろうか。
適当にページをめくっただけでいったん終わりにしておく。
今すぐ目を通さないといけない種類のものとは思えなかったから。
さらに中に入っていたものを取り出して―――アリウスの動きが止まった。
253アリウス=エルツベルグ ◆vu0YveQ5ok :2005/06/16(木) 11:41:25 ID:???
「………………………」

一年戦争終結時に、ご苦労代とばかりにばらまかれたジオン鉄十字勲章。
アクシズ時代に流行した、むやみに胸元やら両腕やらをむき出しにするデザインの士官用制服。
当時の上官に影響されて造った、コーティングされた一輪のバラ。

大切にしていたというより処分するタイミングを失ったままずるずると持ち続けていた過去の遺物が、
ご丁寧なことにそろって入れられていた。

「………参ったね………」

あの頃―――アリウスがエンドラという名の巡洋艦に乗っていた頃、
アクシズで多少腕に自信のある人間は好んで独自にアレンジした制服を着用していた。
上官であるマシュマー・セロがまさにその筆頭で、その部下だったアリウスも良くも悪くも多大な影響を受けていた。
給料の大枚をはたいて流行を追いかけて、出来上がった制服を着てみては鏡の前で不気味な笑みを浮かべ―――だが、
今となっては当時の最先端が逆に哀しいとしか言えない。
それは時代に完全に取り残された、色鮮やかな化石以外の何物でもなかった。

だからこそ、着てみたくなったのだろうか。
花びらに直接触れることを許さぬ代わりに色鮮やかさを保ち続けるバラの紅に、少しだけ痛みを感じたから。
あのときと変わらぬその鮮やかさが、そのトゲの鋭さが、触れていない何かに痛かったから。
同じ痛みを感じるなら、あのときと同じように感じたいと思ったからだろうか。

「………………………」

着用していた着古しのツナギを脱ぎ捨て。
ご丁寧にクリーニングまでされていた時代錯誤の制服を身に纏い。
胸に十字勲章とバラを飾って。
いったんスイッチを切ったモニターに自分の姿を映してみると。

「!」

そこにいたのは、完全に勘違いした馬鹿者だった。
外見を似せればマシュマー・セロになれると思いこんだ愚か者がそこにいた。
バラの騎士に憧れるあまり、自分はバラの騎士になれると信じ込んだ大馬鹿者の姿が、鏡代わりの画面の中に浮かんでいた。
無駄に厚い胸板を過剰な自意識と共にむき出しにして、
無駄に鍛えた太い腕を救い難いナルシズムと共にさらして、
何も気づかないまま己が既に終わって滅んでいることを世間にさらけ出している哀れな男が、自分だった。
それがアリウス=エルツベルグだった。

「………………………」

可笑しかった。
奇妙なほどに可笑しかった。
これが笑わずにいられようか。
無意味に派手に塗装されたモビルスーツに乗り込む、無駄に着飾った居場所のない男。
これほど似合いの組み合わせもないだろう。
ああ、全くお似合いだ。まさに自分だ。せいぜい目立って、人目を引いて、狩人達を楽しませるのが自分の役目だ。
何をやっても何も手に入れられず、何もかなえられず、何も守れなかった愚か者には、それぐらいしか出来ることがない。
他に出来ることはない。何もない。何も。


アリウスは小さく笑った。喉の奥から笑い声を零した―――嗚咽を漏らすように。

鳴き声とも笑い声とも分からぬ声を零し続ける男を乗せたまま、青と白に塗り分けられた巨人はひたすら雨に打たれていた。
254アリウス=エルツベルグ ◆vu0YveQ5ok :2005/06/16(木) 11:42:02 ID:???
【行動:機体確認(1)、アイテム確認(1)、着替え(1):残り1】
【位置:D-22/砂漠】
【機体状況:ホビーハイザック/問題なし】
【パイロット状況:健康/制服・勲章・バラ着用】
【武装:90mmサブマシンガン+弾倉2つ】
【所持品:ディパック、首輪、水2リットル入り2本、コッペパン×2 、
     薄汚れたジオン鉄十字勲章 、ハマーンのバラ(マシュマーが持っていたバラのレプリカ)
     アクシズ時代の制服(ラカンが着ていたような露出度高めのもの)】
【方針:何をどうしようか………】【同盟:なし】
255ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/16(木) 12:54:09 ID:???
>>239
「―――裏、だ」

その言葉を聞き、ゆっくりとリトラを見る。
………いいなァ、その瞳。
賭博の場でも、戦場でも、このような真剣な眼差しは数えるほどしか見た事がない。
………さて、いよいよクライマックス。
たっぷりと時間をかけて焦らし、手を開けた。

―――表。

出た面を上にしたまま、テーブルに置いた。
………ま、
そして、不意に立ち上がるとカウンターバーの中へと入る。

「昔話ってのは長くなるだろ?
 それ相応の用意しないとね………」

カウンターバーの中からリトラにそう話しかけて冷蔵庫を開けた。
野菜が少々に肉少々、賞味期限は………流石にきれてるやつもある。
数少ない材料を片手に更に奥のキッチンへ向かう。
野菜を洗い、調理器具の有無を確認。
さて、さっさとやっちゃいましょう。

横でフライパンに油をしきつつ、肉を細かく切る。
細かく切った肉を濃いめに味付けをし、一旦別の皿に取り出す。
その間に切っておいた野菜を、火に通りにくいものから再び油をしいたフライパンに入れ、炒め合わせる。
ある程度火が通ったところで先ほどの肉を再び入れる。
ここからはあわせる程度で炒め、皿に盛った。
これで一品完成。

肉はもう殆どないし、アッサリしたものでも食べたかったので
次は料理オンチでも出来るくらい簡単なものを作る。
余った大根、人参、セロリ、胡瓜を適当な大きさで切る。
グラスの底に製氷機の片隅に自然に出来ていたクラッシュアイスをしきつめ、水を少量流し込む。
そこに先ほど切った野菜を立てる。
これで二品完成。

それら二品と二人分の食器を盆に乗せて
ファッツは再びリトラの待つテーブルへと戻った。

「お待たせしました♥」

テーブルに野菜と肉を炒めたものと
野菜スティックをそれぞれ置いてからグラスをとり、飲む。

「お話、きかせてもらえる?」

【行動 :調理(野菜炒め)(-1P) 調理(野菜スティック)(-1P) 残り2P】
【位置 :D-12 軍事施設・施設内娯楽室】
【機体/状況 :マラサイ/問題無し】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 ホロ酔い】
【武装 :ビームサーベル 頭部バルカン砲(残弾100%) ビームダガー ビームピストル(EN 50%)】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×1 コッペパン×1
     コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 
     女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)】
【容姿 :カウボーイ】
【暫定行動方針:お姉さんのお話を聞く】
【最終行動方針:このゲームを楽しむ】
256リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/16(木) 20:19:36 ID:???
>>255
ファッツの掌が除けられ、“表”が上となったコインが姿を見せた。
リトラの鋭き瞳が一瞬見開かれ、じきにその鋭さを失ってゆく。
ファッツがテーブルにコインを置き、立ち上がってカウンターへと向かうが、
リトラの視線はコインへと注がれたままだった。

「フ…フフ……アハハハハッ……!
 ………そうか、負けた、か」

ソファーの背もたれに寄りかかりながら自らの前髪をくしゃりと掴み、天井を仰ぐ。

『昔話ってのは長くなるだろ?
 それ相応の用意しないとね………』

カウンター奥より声をかけてきたファッツに対し、リトラは天井を仰いだまま言葉も返さず、
ただ片手を挙げて応えるのみだった。

―――どうやら、全てを知り尽くされる事になるのは自分の方らしい。
すでに死んだ女の話などは、永遠に人に語られる事などないと思っていたが。
本当に、このファッツ=シュヴィールという男は何者なのだろうか。
一歩、一歩、着実に、私の内へと入り込んでくるこの男は、実に破廉恥な男だが……。

何故だろうな、憎む気には、なれん―――

「ま……いいさ」

覚悟を決めたように呟き、カウンター向こうのファッツへと顔を向け。

「……話してやる。面白い話かどうかの保障は出来んがな」

唇の端に薄く笑みを浮かべながら、そう告げると、リトラはソファーより立ち上がった。

「さて……そういう事になれば、色々と長くなりそうなのでな。
 締まらん話だが、私としたことが迂闊にもやり残した事があるようだ。
 ……5分ほどで戻る」

ファッツにそう言い残し、娯楽室を出て、施設の傍らへ駐機したマラサイへと向かう。
急ぎマラサイへと乗り込んだリトラは、レーダー索敵範囲に新たなる敵影を捉えた際、
外部スピーカーよりアラームを鳴り響かせるよう、警報装置をセットした。
257リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/16(木) 20:21:12 ID:???
「……腑抜けもいいところだな、全く」

自らの体たらくに怒りを覚えながらも、再び娯楽室へ戻った時。
リトラの鼻腔を、肉と野菜が炒められる香しい匂いがくすぐった。

「良い匂いだな……野菜の炒め物か?」

と、不意に腹が鳴り出した。
……こんな音を聴かれでもしたら、いよいよもって締まらない。
ファッツがカウンター奥に居る事は、幸いだったとでも言おうか。
だが、腹が鳴るのも無理は無い。
このプログラムに投下されてすでに3日目を迎えるが、口にしたものといえばコッペパン一切れくらいのものだ。

再びソファーに腰掛け、ナッツを齧りながら、チビ、とグラスを傾けていると。

『お待たせしました♥』

ファッツが炒め物と野菜スティックを手に、ソファーの傍らへと戻ってきた。

『お話、きかせてもらえる?』

テーブルにそれらを並べ立て、ファッツは話を促してくる。

「……そうだな。
 ならば、先ずは一人の女の話をしよう。
 駕籠の中に閉じ込められ、屍肉を喰らって生かされ。
 ひとたび駕籠より解き放たれるものの、とまり木を喪失い、再び駕籠へと囚われる。
 そんな、虚しい女の話をな」

リトラはファッツの料理を肴にグラスを傾けながら、淡々と、語り始めた―――  
258リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/16(木) 20:25:01 ID:???
淡々と語られてゆく、リトラナ=クロムウェルの過去。

その女は、代々地球連邦軍人の一族して名を馳せるクロムウェル家に産まれ落ちた。
彼女自身は殆ど憶えていないが、リトラナにも受け継がれた美しい銀髪を持つ優しい母と。
そして、厳格ながらも誇り高き連邦軍人であった父との間に、生を受けたのだ。

娘がまだ、齢を一ばかりしか数えぬ頃。
北米穀倉地帯へのコロニー落としによって被爆した母は、やがて病魔に蝕まれ死に―――
厳正かつ有能なるクロムウェル中佐は、その時より何かに憑かれたかのように“連邦の正義”なる言葉を
口にするようになり、ジオン残党狩りの任を遂行するようになった。
やがてティターンズが結成され、残党狩りが次第にスペースノイド弾圧へと変じてゆくなか。
その功績を認められ大佐となったクロムウェルもまた、何の躊躇いも無しにスペースノイド弾圧に
加担するようになっていった。

歯車は、徐々に狂いはじめ―――誇り高かった父の瞳は、次第に濁り始めていった。

時にティターンズに取り入ってまで、時に権力者に“狩り”の手引きをしてまで。
そして、時に共に轡を並べるべき者を手にかけてまで―――着実に権力を手にしようとする父の望みは。
手にした権力でもって、連邦の正義に相反するありとあらゆる存在を踏みにじる事だった。

やがてクロムウェルは将軍と呼ばれる地位にまで登りつめ。
それでいてなお、何もかもを取り込もうとする貪欲さを欠片も潜めようとはしなかった。

そんな魂を腐らせ続ける男にとって、愛した女と同じ髪を持つわが娘こそ、唯一の魂の拠り所と化していた。
娘はまるで駕籠の中の鳥のように、片時もその男の手より、目より離さぬように育てられた。
男が唯一、愛情に似た感情を抱く存在こそ……リトラナ=クロムウェルであった。

だが、娘はその男に、そしてその男を取り巻く世界の醜悪さを敏感に感じ取り、
それによって生かされている自らの身をも嫌悪していた。

娘は、逃れたかった。自らを取り巻く牢獄にも似た世界より、逃れたかった。
その牢獄は、数多の人々の嘆きによって出来ていたという事を、娘は知っていたが為に。
娘は、その事実を享受するには―――あまりにも、誇り高かったが故に。

「……そんな女をな、牢獄より解き放ってくれた一人の男が居たんだ。
 名を、ルドルフ=カッツォー。
 大空に似た色の瞳を持ち―――“私”と同じように、自らを繋ぎとめる鎖を引き千切ろうと足掻く男だった。
 ……いや。私は足掻く術すら知りはしなかった。
 その男に、逢うまではな―――」

リトラナをあらわす言葉が、娘や女から、“私”へと変じている事に、リトラは気づいていなかった。
淡々と過去を語っていた筈の声は、いつの間にかその内なる感情を隠す事は無くなっていた。

>前スレ256-260
語られてゆく“婚約者”との出会い。駕籠の中より解き放たれた女。
―――父の謀略により、永遠に失われた愛すべき男。
復讐を誓う女は力を手にするべく、その想いを内へと封じ。
自らを再び駕籠の中の鳥へと、人形へと化す道を選ぶ。
“あの男”の掌の上で踊りながらも“復讐”は着実に実を結ぼうとしていた―――

「……入隊後、暫しの後。
 その女は辺境の基地への短期配備の任の機を見て、与えられたMSと共に何処かへと忽然と姿を消した。
 その報を聞いた時の“あの男”のうろたえ様といったら、傑作だったらしいぞ?
 すぐさま捜索隊が結成されたが、女の“ジェガン”が発見された時、それはすでに無残な残骸と化していた。
 リトラナ=クロムウェルという女は―――其処で死んだのさ」
259リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/16(木) 20:28:14 ID:???
空になったグラスにウィスキーを注ぐリトラの瞳には、自嘲の色が浮かんでいた。

「……ま、生き方も見出せず、復讐の炎に身を捧げて焼かれた、詰まらん女の話さ」

クイ、と注がれたウィスキーを喉の奥へと一気に流し込む。
暫し沈黙した後、リトラは再び静かに口を開く。

「さて、まだ寝るなよ、ファッツ。ここからはもう一人の女の話だ。
 その鋭き牙と爪で以って敵を引き裂く事のみでしか生の実感を得る事のかなわぬ、
 血生臭い女豹の話だ―――」

【行動 :  マラサイへ(-1) 警報装置セット(-1) 娯楽室へ戻る(-1) 昔話(-1) 残0 】
【位置/場所 : D-12/基地・施設内、娯楽室 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――その心臓は今尚死なず 】
【パイロット状況 : 額に怪我(処置済み&頭に巻かれた包帯) そのグレーの瞳の奥には微かな光
           黒のワンピース・ドレス姿 ほろ酔いと言うにはすでに無理がある 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト 煙草数箱 『バンダナ』 応急処置が可能な薬品類&包帯類
      クマの『ハロ』(ディパックよりチラッと頭だけ出ている) 】
【方針 : 私は“牙”を、取り戻す 賭けの代償を払う 】
260ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/16(木) 21:27:48 ID:???
 目を覚ました時にはっきりとここが現実であると理解できたのはいい傾向なのだろうか。
ここが、馴染みすぎて見飽きたけれど愛着あって離れることはできない場所と見間違える事も無い。
のそのそと布団からはいずり、部屋に備え付けてあった時計に目を移してみると
短針はとうの昔に右のほうに傾いていて、秒針が寝坊すけの自分を小馬鹿にしている様にさえ見えた。

 そういえば、夢現の中で朝日が意識に揺さぶりを掛けてきたような気がする。

 半開きの眼のままでゆっくりとベッドから降りると、自分が随分と軽装をしているのに気付いた。
今まで布団にくるまっていたせいで感じなかった寒さが全身を駆け抜け、反射的に体がビクつく。
見れば、昨日まで自分が着ていた服達は無造作に近くのハンガーに掛けられたままになっており
外からのザー…という雨音と、シワだらけになった服に雨の中を走っていた事を思い出した。

 寒さと一晩の内に吹き出た汗の気持ち悪さを振り払う為に備え付けのシャワーを浴びる。
ついでにシャンプー・リンス・ボディーソープ・バスタオルも拝借。これもまた全て備え付けの物だ。
ひとしきり乾かしてから着ていた服に腕を通すと、ジメッとした感触がして軽い嫌悪感が走る。
まだ完全には乾いていなかったらしいが、今更着直すのもなんだとそのまま一気に袖を通した。
また体中に寒気が走った。せっかく暖めたのにこれでは元の木阿弥と言う奴だ。

 一晩を過ごした部屋を軽く整理して、忘れ物が無い事を確認してからその扉を丁寧に閉める。
とはいっても、体一つでこのホテルに入り込んだのだから忘れる物など元より無い。
ホテルと言いつつも、他の客とすれ違う事も声を聞くことも無く、フロントでさえ閑散とした光景が広がっていた。
明らかな異常さを確認しつつも容認した上で、ナインティは会計をすることも無くそのまま自動ドアを通る。
その際に傘立てに入っていた傘を一本無作為に取り出してみるが、文句の一つも全く聞こえない。

 外に広がる街の中は依然として雨が降り続いていた。
時間は午後も程よく経過して、誰も彼も我が物顔で闊歩して、本来ならこの街を作っているはずだ。
だが、その全てが途絶えてしまったここでは雨音だけがしきりに寂しさに拍車をかける。
昨日見た光景と何一つ変わらないソレを、ナインティは静かに了解していた。

 この街には人がいなくて──この街はUC0091で──自分には所属不明のバウがいて。

 時間的には僅か半日しか経過していない。されど12時間と言うのは意外と長いものだ。
よく日常から非日常へと足を突っ込んだ人間の物語を各メディアで聞くことがあるが
その中の登場人物はいつまでもいつまでも狼狽し悩みつづけ悲劇的結末を迎えることが多い。
刻一刻と状況の移り変わり行く場所よりも、異常でも不変さを保ってるこの景色の方がよっぽど安定している。
そのように感じてしまうのは自分が常人とは一足かけ離れた感覚を持ってるせいなのだろうか。
それともひょっとしたらこのままこの名も亡き街の住人でいてくれと言う、何かの意思なのか。
ただ、その考えはもう少し後回しにしておくぐらいには余裕は持っている。
安堵先を見つけたのならばこれは逆に好機。もう少し足掻いてみれる後ろ盾が出来たのだから。
自分程度なら何時逝ったところでそれほど世界に関わりを持つことも無いのだから。
261ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/16(木) 21:32:20 ID:???
 街外れまで行くとそこにバウは変わらずに佇んでいた。
雨に濡れて光が反射した機体から橙と黄色のコントラストを鈍く輝かせたまま。
「悪いな…」などと雨の中を待ってくれていた本来は相棒と呼ぶべき物に労いの言葉を掛けてみることで
大分落ち着いてきたな、と確信が持てるようになった。
乗り込む前に軽く右手を上げて背後の街に向かって振り返らずにわやくちゃと手を振ってみる。
同時に、誰もいないのに何にやっていんだか、と自分の行為を鼻で笑いたくなった。

 それから一刻の後、コクピットの中で軽く額を抑えるナインティの姿があった。
喜んでいいのかあきれていいのか分からないというその表情は何とも苦渋だ。
運命の神様と言う奴が良く知っていた気になっていた馬鹿野郎への軽いお返し?
それともたんなるいつもの気まぐれでバラエティの如く人間のリアクションを楽しむつもり?
人恋しいと願う時には屈託の無い自然と無機質な建造物でその存在を巧みに隠し
人がいないと了解を決めた時になって、忽然とその姿を現してみせる。
喜怒哀楽を表現するよりも、まずその落胆の差があまりに激しいと言っているんだ。

 目の前のレーダーに捕らえられた一つの光点。現実だけは常に非常らしい。

 この機体には、相手を葬り去る為の弾薬もENも十分に残っている。
これは自分で取り付けた物ではなく、このバウに出合ったときから取り付けられていた無粋な物だ。
早い話がこの機体は確実に戦闘を目的としての仕様にされていると言う意味だ。
相手の機体の照合が完了した。機体は過去に存在した地球連邦エリート部隊の量産機。それの私用機。
個人用にカスタマイズされたと思わしきこの機体が何で軍のリストに乗ってるのかはともかく
こちらは恐らく正規の軍用機で、確実な戦闘用で、ロールアウトした年代も上と来ている…。

 一瞬だけ何か不穏な空気が漂ってくるのを大慌てでかき消した。
こんな時に戦意とも殺意とも覚束ない黒い高揚を込み上げさせるなんてよほどどうかしている。
生唾を一つ飲み込むだけで、今の所それはすぐに収まった。
敵か味方かなんていう狭い区切りで考えるほど今の自分は余裕があるようで殆ど無い。
状況は好転しているように考え込んでおこう。
まずは接触だ。次に情報だ。あわよくば帰り道だ。贅沢言えば帰り賃だ。手厚い保護だ。

「突然で悪いんだけど…そこの機体、少し聞きたいことがある。
ここは一体何処なんだ?何で街に人がいないんだ?俺は一体何をすればいいんだ?」

 通信を始めてから僅かに10秒。
溜まっていた鬱屈と疑問を晴らすようにともかく相手に話し掛けつづけた。
少し雄弁すぎるような気もしなくも無いがこの際だ。構う事は無い。
このまま黙って行かれる前に思いの丈を吐き出しておいた方が気が楽になる。

「えっと…それからこちらはこんなナリをしているけど、何か争う気は全く持って無い。
ここから早いところ帰りたい、ただそれだけだ。」

 言いたい事だけ言って、後は相手の返答を待つ。
思わず大きく深呼吸してしまうのは緊張としゃべりすぎて肺の空気が薄くなったせい。
脳に酸素が補給されてから、ようやくもう少し考えて話しとけばと思い始める。
軽く舌打ちしているその顔には薄い後悔の色がまとわりついている。

「(あの人ならもっと上手くやるんだろうな…)」

「(いや、"あの人"ってどの人だ…?)」

 不意に脳裏に浮かんでくる人物のイメージ。
イメージが鮮明なくせに該当者の顔も名前も思い浮かばない。
ただ、漠然とこう言う交渉事に関して上手い人物がいたなというそれだけの記憶。
何だか首の辺りがむず痒くなる感触は、多分未だ外し様の無いこのアクセサリーのせいじゃない。
262ナインティ=アウェイキング ◆yx7NlvS2DE :2005/06/16(木) 21:33:37 ID:???
【行動:24番への通信(-1P)】
【位置:B-22】
【機体・パイロット状況:問題なし】
【武装:腕部グレネードランチャー、ミサイル、ビームサーベル】
【所持品:デイバッグ(コッペパン×2 水2L入りペットボトル×2(少量消費) 前回のデータ入りディスク)
      タブレット状の精神安定剤 タブレット状の睡眠剤】
【方針:日常へ戻る】
【同盟:無し】
263ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/16(木) 22:02:44 ID:???
苛めたつもりは決してなかった。
ニースは、ただひたすらにレベッカと繋がりを持とうとしていた。
何でも良かった。
趣味の話でも良い。
特技の話もで良い。
とにかくレベッカと話して、レベッカと笑って、そして握手したかった。

そしてニースが共通の話題に選んだのが、傍にいたハスキー犬。
ニースがその手段にハスキー犬を選んだのは、全くの偶然だった。

レベッカが犬を苦手にしているのは、すぐに分かった。
だからこそ、ニースはハスキー犬をけしかけた。
そうすれば、ニースが見た事のない、レベッカの新しい一面が見れると思ってたから。
ニースは、レベッカのその一面をきっかけにしようとした。

『や、やめてよニース!ボク、本当に犬が苦手なんだから!』

『そーお?でもこの子はレベッカさんの事、大好きみたいだよ〜?』

『なっ…。…もう、ニースは意地悪だなぁ』

ニースの想像の中、ふざけあう2人。
それは、2人の友達への第1歩になる筈だった。

しかし現実は、そう上手くはいってはくれない。
人の感情は、思いは、そんな簡単に量れるほど単純なものではない。
そのような経験の浅いニースは、レベッカの涙を見るまで、それに気づかなかった。

ニースの行いは、間違いなくレベッカを傷つけた。
それは言い訳のしようがない、事実。
だからと言って、その裏にあるレベッカとの友情を育もうとした思いは、決して嘘ではない。


続く
264ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/16(木) 22:06:05 ID:???
「そんなの、何も違わないよ!
だってあたし達、みんなあいつらにさらわれてきたんじゃない!
無理矢理さらわれて無理矢理殺し合いさせられてる、その場所が…。
そんな非道い場所が、何でレベッカさんの望んだ場所なの!?」

感じた事、思った事を、そのまま言葉の旋律にするニース。
今の透明なニースでなければ言えない、透明な言葉。

…ニースはレベッカを、昨日の自分と重ねあわせている。
昨日のニースとレベッカの関係が、逆になっているのだ。
レベッカにとっての犬が、自分にとっての辛辣な言葉となっていると、ニースは感じた。
それなら、その裏にあるものはどうなのか?
レベッカの言葉の裏にあるものは、一体何なのか?

…レベッカの行いは、その言葉はニースを傷つけた。
…それは背けようのない事実。
だがニースはその裏に、レベッカの何らかの思いがあるような気がしてならない。

そうでなければ。

(…何であたしには、レベッカさんの声があんなに優しく聞こえるの?
何で、レベッカさんは…あんなに……。
あたしは…その理由が知りたい!レベッカさんを、もっと知りたい!)

透明な少女は、しっかりとモニターの向こうを見つめ、その返事を待つ。

【行動:2番、10番に回線継続(0)レベッカと言葉を交わす(0)】
【残り行動値:2P】
【パイロット状況:ある意味覚醒】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、レベッカさんの気持ちを聞きたい】
265ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/16(木) 22:09:36 ID:???
『……そうですね。お久しぶりです。
 とりあえず……あなたを助けたのは、私ではありません。
 ……私からもひとつ聞かせてください。
 ハロルドさんを殺したのは、あなたですか?
 あの西の町での戦闘。あの後どうなったんですか?
 それを……聞かせて欲しいんです。』

先にコックピットへと飛びこんだのはゲルググJからの通信だった。


「ハロルド・・・・・?あの黄色いMSの男のことか?
 俺が殺した。」

少し間を置く相手の少女の反応を見ようとした。

「とでも言ったらどうするつもりなんだ?
 誰が殺したかは知らないが、俺ではないな
 あの戦闘の後相手の2機は北へ後退した
 その後を黄色いMSが追いかけた。
 
 その後は俺は知らない。」


『きっと運営側の気まぐれさ。
 そうでもなければ、服を脱がせて汗まで拭くなんて……ああ、とにかくそんな真似、誰もしないよ』

黒いMSからも通信が入る。
運営側の気まぐれ・・・・・・ねぇ?
少しにやけた口元を締めなおして

「そうか、運営側の気まぐれか。
 運営側にも遊び好きな人間が居るもんだな。
 俺みたいなどうしようもない奴を助けたところで
 ”運営側”の人間なら何にもならないのに
 まったく無駄なことをする。」

ここは取りあえず話を合わせておくのが得策だろう。
白金の髪を持ちそれなりのルックスを持つ女性は
ルイスの目に深く焼きついた。
266ルイス・ガルシア ◆y7pbaP9SbA :2005/06/16(木) 22:10:20 ID:???
駐機されていた2機のMS
それらを合わせて計5機がひとつのエリアのしかもひとつの場所へと集まる。
―――一触即発―――
全員が敵で有ると言っても過言ではない
下手をすれば4:1の戦闘にもなりうる。
取りあえず相手を探るべく通信を入れた。


「ここは賑やかだな、俺はルイス・ガルシアという
 あんた等の名前は?
 まぁ状況が状況だから”よろしく”とは言えないがな。」

【行動:通信(−2)】
【残り行動値:2P】
【パイロット状況:少しスッキリ 少し風邪気味】
【位置:U―22(ドーム球場)】  
【機体状況:02・10・11・14に対して通信回線継続・右肩アーマー破損・左肘関節部アブソーバー欠損・左肘から先の装甲及び内部破損 】
【武装:頭部60mmバルカン砲×2(残弾84%)、胸部60mmバルカン×2(残弾72%)、 ビームサーベル×2(散弾)ビームライフル】
【所持品:シガレットケース(葉巻10本)煙草3箱(48本) ライター パジャマ  ボイスチェンジャー アサルトライフル予備マガジン×2 H&CUSP予備マガジン×1 パン×2 水2L 清涼飲料水4L   缶詰×5 塩1袋 下着類 】
【行動方針:状況打破】
267エルナ ◆tf5U6oR8/w :2005/06/16(木) 23:06:22 ID:???
『アンタに話した言葉じゃない。
 黙ってな――Get away(この三流野郎)!』
「……。」
一方的に断ち切られた通信。モニターのウインドゥが消える。
中指を立てていたような……いや、私の錯覚だろう。

「はぁ……。」
三流……ね。MSに乗っている以上、そう言われても仕方が……いや、

「……それだけじゃない。」
こんな中途半端な事になるぐらいなら、最初に撃てば良かった。
……解ってたはずなのに……これまでの戦闘を顧みたら、
MSの爆発なんて実際はあまりどうって無いと思われる事。
サーベルを振るうグフ。ビームを放つメタス。
これらは動力炉に当たるという事を、あまり気にしてはいなかった。

「……まだある。」
自機後方のこの二人は他人だという事も解っていたはず。
何で……非情になりきれなかったのか……。

――アノトキミタイニ。

「……あの時……?」
途端、また頭痛。またあの時の記憶……ッ!?
……もういい!全部詭弁だった!私は甘かった!それでいい!

「……私に必要なのは過去じゃない。」
思考を切り替え、"現況"を把握し直す。
今の所三対一。もしかしたら、三対二か四対一。
しかし、戦闘は起こってはいない。起きているとも言えたのだけど、何故か中断してしまった。
原因……それは今はどうでも良い。
各機の位置は……レベッカ……敵機、前方。
アルバート、後方。ルイス、前方数キロ。ニースは……今、MSに乗った?

『ありがとうエルナさん。…でも、今は下がっていてください』
「……わかった。」
……ニース、前方。その勇気は称えるし、とても立派な行動だと思う。
けど……射角はこれで確保出来なくなった。インファイトに持ち込まれたら……まずいのだけど。
とりあえず……続いてマップを表示。最大まで拡大。
やはりビルが乱立している、これだと前回のような大立ち回りは双方不可能と言う事に……なると思う。
後、各MSの性能については……比べる事が出来ないし、検討しない。見た目だけでは……何とも言えないし。
268エルナ ◆tf5U6oR8/w :2005/06/16(木) 23:07:12 ID:???
>>264
ニースのレベッカに向けた通信が、通信機から聞こえてくる。
……そう、ニースの言う通り。大体の人間はここに来て、総てを奪われた。
……では、ここに来て、私は何かを失っただろうか……?
自由。そんな物は養護施設にはある程度しか無かった。
家族。言わずもがな。総て奪われた。
恋人。養護施設にいた人は例外なく好きにはなれなかった。
夢。  そんな物は……生まれる前に殺された。……矛盾してるけど。
何なのか。ここに来て得た物の方が多い私は一体何なのか。

「……何なの……か。」
思考の中で生まれた疑問を声に出して、反芻する。
駄目だ……余計に答えが出なくなってきた。
この事は……今は置いておこう。根本を揺るがしかねない疑問だけど、
今はそれを見つける為に生きる……と思っておこう。
この戦闘の間、自分を騙すことができたら……いい。
戦闘中に考えるべき事じゃない……そんな事、戦闘中に見いだしてしまったら……。

『ハロルド・・・・・?あの黄色いMSの男のことか?
 俺が殺した。』
「……ッ……。」
頭では冷静になろうとしておきながら、ついつい感情の表層に怒りが浮かびかけた自分に腹が立った。
……顔にまで、出ていたかな……多分、出てた。
ともかく通信を送ってきたのはルイス=ガルシアだった。さらに、彼は言葉を続ける。

『とでも言ったらどうするつもりなんだ?
 誰が殺したかは知らないが、俺ではないな
 あの戦闘の後相手の2機は北へ後退した
 その後を黄色いMSが追いかけた。
 
 その後は俺は知らない。』
「どうするつもり……だったんでしょうね……?
 ……有り難うございます。その情報、信じて良いのかどうか……解りませんけど。」
……この情報を信じるのならば……だけど。
ハロルドさんを殺したのは……リトラさんとファッツさんのどちらかという確率が高い。
次に、あの二人にどういう顔をして、会えばいいんだろう。
……できれば、会うことがないことを願いたい。

「そうも行かない……かな。……まずはその前に……この状況をどうにかしないと。」
殺し合ったり、話し合ったり。全く、この戦場は予測がつかない……。

【行動:08.10番に通信継続(-0)14番に通信接続(-1)】
【位置:U-22 市街地】
【機体状況:ゲルググ・J 胸部装甲・右肩部スラスター損傷】
【パイロット状況:症状若干発生中 脇腹に打撲(詳細不明) びしょ濡れ……少し乾いてきた】
【武装:腕部110.mm速射砲×2(残弾各1斉射分)
    5連装メガ粒子砲シールド(下半分破損)(残弾4)】
【所持品:ディパック(コッペパン×2 水2L入りペットボトル×2 栄養補助食品 H&K P7M13(残弾14) マガジン×3)
     ロングコート(びしょ濡れ……少し乾いてきた)】
【方針:"……何なのか" 現状打破】
【条件付き休戦?→共闘?:11番 アルバート 14番 ニース】
269アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/16(木) 23:31:16 ID:???

(私の周りって年上ばっかり……そんなオーラでも出してるの?)

サイモンと名乗る男はアルマの名前を詩的に読み上げて見せた。
ラテン語と英語からなる造語だと知っている人間は少なかったが、
『名前』はあの研究所にいた頃から守り通してきた数少ないもののひとつだった。
『名前』さえ忘れずにいれば、自分を自分と確認できるから。

一方で、『名前』は記号の羅列でしかない。
研究所でアルマたちにつけられた名前は記号と数字だけで構成される無機質なもの。
アルマのように跳ね除ける者もいれば、享受する者もいた。
『違いが無かったから』。
ある意味では、アルマ=フローライトという名も XA-HTM03G という名も大差は無い。
ただヒトとしての矜持が無機質な名前を受け入れるか否か、だった。

……何であれ、好意的に解釈されるのは割りと嬉しいものだ。
彼女はそう思っていたのだが。

『ふむ、そうだな。何か知れるなら越した事は無いんだが…
 そのトランク、ちょっときて見せてくれないか?』
「……!」

サイモンがトランクの中身を知らないことはわかっている。
単純にトランクの中身が気になるのだろうということも察している。
しかし。 それでも。
言葉の綾というものだろうが、今のアルマには衝撃だった。

みるみるうちに頬が紅潮する。 息遣いも荒くなる。
サイモンの言葉は二通りに解釈できる。 望まれている答えは前者だが、
頭はどうしても後者の意味まで捉えてしまう。

「……MSから降りていくことはできません。
 そんな無用心な真似は、できません」

前者に対する回答はこれでいい。

「……もし、もしこれを『着て見せろ』と言うのなら、
 私は断固拒否しますし、あなたを最大限に軽蔑します。
 男の人の目の前で『これ』に着替えろって言うんですかっ!
 セクハラですセクハラッ!!」

……自然と声が大きくなった。
言葉と同時にトランクを開けて見せる。
中身はまるでアルマのために作られたかのようにぴったりなサイズのバニースーツ。
確かにふたりの男性に挟まれた状態で『着て見せろ』などと言われれば、
余程の物好きか淫乱でもない限り拒否するだろう。

アルマはふーっ、と大きく息を吐き出した。
……ある意味でそれは、猫が威嚇をする際の声に聞こえなくもなかった。
深呼吸を挟んで何とか平静を取り戻した彼女は、サイモンの手前、
ぼかしつつブレイムにも一声掛けた。

「あの、ブレイムさん。
 あなたの荷物、そこのエリアに置いてきたままですよね?
 放っといていいんですか?」
270アルマ=フローライト ◆YVOiXA/Tf. :2005/06/16(木) 23:31:48 ID:???

【行動:通信中(-0)】
【位置:J-12/平地】
【残り行動値:4p】
【機体状況:Green/通信回線:νガンダム、V2AB、アッシマー】
【武装:ビームサーベル、3連装グレネード、内蔵ヘビーマシンガン(95)、ショットクロー(8)、
     ビームライフル、Eパック、偵察ポッド、Iフィールド】
【生徒状態:Green】
【所持品:デイパック、コッペパンx2、水2gx2、栄養ドリンクx7、ノートPC、食糧、生活雑貨、
      ベレッタ(16/15)、弾薬ケース、マント、バニーセット、ルージュ、携帯端末】
【行動方針:東の基地へ/様子見】
271風巻陣平 ◆6fCY9104KQ :2005/06/16(木) 23:34:02 ID:???
皆に宣言した人物……?
そういえば、アルバートと対自した時に全体放送を流したのは
今は亡き、マサヤ=タカノであったか……。
遠目に認むる倒壊した橋。
所々、大地が削られているのは、即ち戦闘が起こった事を表していた。
という事は、キリトが彼を屠ったという事であろうか?
だが、虫の好かない相手にこれ以上の詮索はする気になれず、
結局、『御二方』の意味も、疑問に思いつつも鵜呑みにする他無かった。

それにしても、このキリトという男の変わり様。
態度は相変わらずだが、前回のような殺気が感じられない。
出会った当初の、何かに期待するかのような口調でも無く、
まるで、迷い人に対してごく普通に道を教える一般人のように感じられた。

「そうか、丁寧に…スマン、な。
 にしても、よくよく貴様も変な奴だなァ。
 いずれ、この間のオトシマエは付けさせて貰うぞ。
 それまで愛機の修理でもしておくこったな。」

虫が好かないと思いつつ、礼の言葉を吐く自分も相当なものだとは思ったが……。
奴の言葉を鵜呑みに信ずるのも何と無く不愉快では有るが、
だが、キリトのあまりにも淡々とした態度に、今は合流を先決とする事も相まり、
結局は奴の言葉に順ずるしかないと判断した。

進入路が北口だったので、奴の案内では南方へ3ブロックと言うことか。
Gキャノンの頭上で大きくバンクを振って了解の旨を伝えると再び一路、南方へ前進した。

【行動 : キリトとの通信終了-0 移動-2 残行動数2】
【位置 : N-18→N-21(森林地帯上空)】
【機体/状況 : セイバーフィッシュ:異常無し】
【パイロット状況 :良好】
【武装 : 機首部25mm機関砲×4 60mm機関砲×1
       両用ロケット弾×6 落下式増層×1 フレアー装置×2 】
【所持品: 首輪 ディパック 水2L入りペットボトル×2 デジカメ
       アルバム(未発見) コーヒーセット 巻き寿司4食分 レーション×6食分】
【方針 : 1、ロイドと合流 2、キリト撃破】
【同盟 : 19番 ロイド・エンデバー】

※キリトさんのフォロー、超感謝です。
272ジョセフ・ロバーツ ◆dzi5iUzr8I :2005/06/17(金) 00:52:57 ID:???
初めて『死』というものを身近に感じたのは……。
10歳になったばかりの、夏の日だった。

「頑張るから、ジョセフがハイスクールに入るまでは」

咽喉の奥から搾り出すようなかすれた声だった。
寝たきりの生活によって普通の何倍もの太さになってしまっていた足を擦りながら言った。
まるで、触ることによってそこの部分の感覚が直ることを願うかのように。
それが子供心にも痛々しいと思えた。

「だからね……」

とかすだけで抜け落ちていくパサパサの髪。
日に日にやせ細っていく透き通るような青白い体。
それが、僕の母親だった。

「嫌だよ、もっと生きてよ……」

「ぇえ?どのくらい?」

「……僕が大人になって、お嫁さん貰って、それで……」

「ふふ、ジョセフがお嫁さん貰うまでか、ちょっと難しいかなぁ……」

そう言って寂しそうに笑った。
母さんは薬の副作用でボロボロになっていた――心も体も。
既に数秒前に話したことすら忘れてしまうような状態。
それでも母さんは笑っていた。

「お母さん……」

「……じゃあ、お母さん頑張るから、ジョセフも勉強頑張ってね?」

「う、うん!」

病室で交わした大切な約束。
その頃の僕には母さんが死ぬことなんて想像すら出来なかった。
そんなこと思いもしなかったんだ。
……本当に。


そして、2ヵ月後に母さんは死んだ。
僕にむかって「勉強、勉強」と言い残して死んだらしい。
らしいと言うのは僕は会えなかったからだ。
その日、病院に行くのがいつもより数時間遅くなった。
勉強するために学習塾に行っていたから。
273ジョセフ・ロバーツ ◆dzi5iUzr8I :2005/06/17(金) 00:53:28 ID:???


「母さん…!」

コクピットシートの上で膝を抱えた。
あの時の母さんもこんな気持ちだったんだろうか。
僕は殺される。きっと殺されてしまう。
モビルスーツの動かし方なんてなにもわかんない、わかるはずないじゃないか。
怖い。嫌だよ、死にたくない。

「なんで僕が殺し合いなんてしないといけないのさ」

震えが止まらない。
視界が滲んだ、そう思った次の瞬間には涙が溢れていた。
否定したくてもしきれない真実がここにあった。
僕のこれな真実だった。

「嫌だよ、どうして僕はここにいるんだよっ」

問いかけに誰も答えてくれない。

「どうすればいいのさ――!」

暗闇の中で泣き続けた。

【行動:絶望(-0)】
【位置:H-12】【残り行動値:4】
【機体状況:ハンブラビ】
【武装:背部ビームガン×2、ビームサーベル×2、腕部クロー×2、テールランス】
【所持品:ディパック、教科書、ノート、筆記用具、携帯音楽プレーヤー】
【行動方針:なし】
【同盟:なし】
274アリウス=エルツベルグ ◆vu0YveQ5ok :2005/06/17(金) 01:55:49 ID:???
―――白馬の騎士になりたかった。


今となって正面から向き合うにはあまりに青臭く、
馬鹿げていると切り捨てることすら恥ずかしい妄想以前の夢幻だが、
アリウス=エルツベルグがそう望んでいた事実が存在していたことは否定できなかった。

美しき女王に絶対の忠誠を誓い、可憐な王女のために全てを捧げ、それを喜びとする勇ましき存在。
悪竜を退治し、邪な魔法使いを退け、闇と混沌を打ち払って世界に光と平和をもたらすもの。
磨き抜かれた鎧を輝かせ、煌めく名剣を抜き払い、巨大な魔王に勇ましく立ち向かう物語の主人公。

そうなりたかった。せめてそれに近づけるようにと本気で望み、そのための努力を惜しまなかったことがあった。

学徒兵として敵よりもむしろ与えられたゲルググの扱いに苦労する道を選んだのは、
ジオンの理想に共感したと言うよりもザビ家の長女の鋭い眼差しに心を射抜かれたからかもしれない。
デラーズフリートの蜂起を実質的に傍観しつつ、その5年後にアクシズに集うことを選んだのは、
ドズル・ザビの幼き後継者の側に立つ凛々しい宰相の声に魂を震わされたからかもしれない。
ネオ・ジオンを名乗るシャアの反乱に加わったのは、その余韻がアクシズにまだ残っていたかもしれない。

救われぬロマンチシズムだと自覚しながら戦い続けた理由は、己自身でも全て理解しているわけではない。
ただ戦い続けることで血に酔いしれただけだったのかもしれない。
兵士としての惰性のままに戦闘を繰り返しただけだったのかもしれない。
戦場の恐怖と興奮に溺れきって、他に考えることを放棄しただけかもしれない。
それでも、キシリア=ザビのために戦おうと思ったことは事実だった。
ハマーン=カーンのために己の手を汚すのを厭わなかったことも事実だった。
理由の中の一つに、それらは確かに存在した。

スピーカーから流れる美辞麗句の連なりのためでもなく、
書類にプリントされた気高い理想を歌い上げる文章のためでもなく、
冷たくも美しい女王のためなら戦えたのだ。
彼女達にとっては使い捨ての駒の一つ、戦力表の兵士数を1増やすだけの顔も名前も持たない数字と分かっていて。


つまるところ、アリウス=エルツベルグとは、そのような種類の愚かな人間だった。
既にキシリア=ザビもハマーン=カーンも、捧げられる忠誠も剣も受け取ることは出来なくなっていたが。
275アリウス=エルツベルグ ◆vu0YveQ5ok :2005/06/17(金) 01:56:31 ID:???
>>260-262

自然とうつむいて笑い声のような呻きを零し続けていたアリウスの耳を、軽やかな電子音が打った。
それがレーダーの警告音であることを思いだし、無意識のうちに画面を確認して―――その表情が強ばる。

「………………………」

スクリーンに浮かぶ文字が描く名前は「AMX-107 バウ」。知らない機体ではない。それどころではない。
敵としても味方としてもこの上なくよく知っているMSだ。懐かしいとすら言える。
だが、今は古い戦友との思いがけない出会いに頬を緩められる状況ではなかった。

豆鉄砲でしか持たないこのレジャー機でまともに相手に出来るモビルスーツではない。
火力も装甲も機動力も、何もかもが相手の方が一段も二段も上だ。
逃げようとしたところで変形して追われればそれまで。対空火力を持たないこちらが一方的に虐殺されて終わってしまう。
せめてもの意地の一太刀も届かない相手が最初とは―――つくづく、神様という奴は物事をよく分かっていらっしゃる。
獲物は獲物らしくおとなしく狩られろと言うわけだ。地獄に堕ちやがれ、畜生。

「………………………」

それにこの機体を使っていた奴には借りがある―――浮かんできた過去に囚われそうになるアリウスの前で、
今度は通信の受信を示す表示が現れた。自動的に画面が開く。
さてどんな奴が現れるのか。獲物を前にして舌なめずりする狂戦士か、恐怖に怯えて錯乱する哀れなお人好しか、
それとも無表情に殺戮を続ける戦闘マシーンか。そう思っていると―――

「…… …… …… …… ……」

少し長めの黒髪で、切れ長の目に何処か疲れたような茶色の瞳を浮かべた、
まあ二枚目と表現しても嘘にはならないひ弱そうな男が、奇妙な台詞をまくし立ててきた。

ここは何処なんだ? 知ったことか。何処だろうと関係ないだろうに。
何で街に人がいないんだ? それこそ知るか。殺し合うにはその方が便利だろう。余計な気を遣わずに済む。
俺は一体何をすればいいんだ? 本気で言ってるのかこいつは。
こんなナリをしているけど、何か争う気は全く持ってない? 服装は別に普通で………ああ、モビルスーツのことか。
早いとこ帰りたい、ただそれだけだ? ならばやることは決まっているだろうに。

「………………………」

思わず強ばっていた表情から力が抜けかける。
脅し文句を並べられて今から殺すと宣告されて当然だと思っていたのだが。
その前に自分の格好を散々に貶されることも覚悟すらしていたのに。

アリウスの返答を待っているらしいその様子は、気弱な一市民そのものだった。
それが擬態ではないという証拠はないし、
相手―――ナインティ・アウェイキングという名前らしい―――がそれだけの演技上手でないという確信もないが。
第一、自分をだます必要など皆無だろう。
バウを変形させて、こちらに飛んできて、上空から撃ちまくって、それで終わりだ。
それとも何か、キャラ=スーンとは逆のタイプで、コクピットに入ると途端に気弱になる人間だとでも言うのか。
………自分でもあまりに馬鹿馬鹿しすぎて嫌になる妄想だが。

「………そうだな………」

意外な事態の進展に軽い頭痛すら感じながら、アリウスはとりあえず返答することにした。
276アリウス=エルツベルグ ◆vu0YveQ5ok :2005/06/17(金) 01:59:05 ID:???
「初めまして、アウェイキングさん。自分はアリウス=エルツベルグというものだ。
 さて、何から答えたらいいものか分からないが………
 ここは地球のアフリカ大陸というところで、君のいるのはカーンシティという名前の街だ。
 街に人がいないのは………そうだ、コロニー落とし作戦が近いという知らせを受けて、
 街の人はみんな疎開してしまったんだ。
 ただ、どうやらそれは防がれたようなので、もうすぐ人々は帰ってくるのではないかと思う。
 君が何処に帰りたいのかは分からないが、この近くには別の大きな街もあるので、そこで調べてみてはどうかな」

地図を呼び出してざっと周囲を確認する。

「………北の高速に乗って西に真っ直ぐ進むと、その街に出る。
 どうしてそれに乗っているのかは知らないが、そのモビルスーツは置いていった方がいい。
 軍や警察に速攻で捕まることになるぞ。ジオンの残党扱いされて拷問を受けるかもしれん。
 だったら街で適当なエレカでも拾って行ったほうがいい。
 無断借用という形になるが、逃げ遅れて慌てて出てきたと言えば許してくれるだろう。
 いつもの毎日に帰りたいのなら、是非そうすることだ。
 ここでそんなモビルスーツに乗っていたって、平和な生活には戻れないぞ」

口から出任せの嘘八百を並べ立てる―――が、最後の台詞だけは完全な嘘ではなかった。
ここで戦闘用モビルスーツに乗っていれば、殺すにしろ殺されるにしろ平穏で穏やかな生活など手に入らない。
本気で事態を理解していないのなら、心の底から家に帰りたいというのなら、
何も知らないままこの地図の外に出て行った方が幸せかもしれないのだ。
その方が人を殺さずに済む。余計な苦労をせずに済む。死の恐怖に怯えずに済む。
何も知らないまま首輪にあらゆる苦痛と苦悩を吹き飛ばしてもらえば、それはそれで幸せなことかもしれなかった。

自分のように死に場所も居場所も失って、あてもなく漂い続けるよりは。

あのとき―――アクシズを巡るあの内戦で、自分の操るドライセンをラカン=ダカランのドーベンウルフか
グレミー=トトのクイン・マンサにぶつけて相討ちにでもなっていれば、
こうして無様な真似をさらす羽目にならずに済んだかもしれないのに。
兵士は戦場に倒れてこそ兵士であるのに。兵士であることしかできない自分は、戦場で倒れるしかないのに。
最後はお遊び用の機体に乗せられて、道化を務めるしかなくなるとは。
笑って欲しい相手など何処にもいないのに。笑顔が見たい人はもういないのに。

【行動:16番と通信(1):残り3】
【位置:D-22/砂漠】
【機体状況:ホビーハイザック/問題なし】
【パイロット状況:健康/制服・勲章・バラ着用】
【武装:90mmサブマシンガン+弾倉2つ】
【所持品:ディパック、首輪、水2リットル入り2本、コッペパン×2 、
     薄汚れたジオン鉄十字勲章 、ハマーンのバラ(マシュマーが持っていたバラのレプリカ)
     アクシズ時代の制服(ラカンが着ていたような露出度高めのもの)】
【方針:何をどうしようか………】【同盟:なし】
277レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/17(金) 13:05:28 ID:???
>265-266
「レベッカ。
 レベッカ・テスタロッサ――元・地球連邦軍……キルケーユニット所属、叙勲1回、最終階級は中尉」

男の表情に感じたほんの僅かな懐かしさ。
それが生んだほんの僅かな感傷が、彼女に昔の所属までを語らせていた。
自分が口にした内容に気付き、レベッカは苦笑を漏らす。

「まあ……昔の話なんて今は必要ないか」

白い手袋に包まれた右手が、気恥ずかしそうに笑う少女の髪を弄り始めた。

>263-264
「ボクはね、ニース。
 ボクは攫われたんじゃない。
 無理矢理じゃないんだ。
 望んでボクは此処にいる……望んでこの、狂った世界にいるんだ」

だからキミ達とは根本的に立場が違う、とレベッカは横に首を振って答えた。
雪を帯びたような金糸の髪と、それを結わえる真っ赤なリボンが動きに合わせてふるりと揺れる。
右手は何時の間にかレバーのところへと戻っていた。

「理由を教えるつもりは無いからね。
 ボクの理由は、ボクにとって意味を持てばそれだけで充分だ」

ニースが彼女なりの覚悟を本当の意味で掴み、このプログラムと向かい合い、そして。
そうなった彼女と自分がもしもまた言葉を交わす時が来たなら、その時には全てを話しても良いだろう。
レベッカはそう考えていた。
その覚悟の無い者に話したところで、結局無用の感傷を生むに過ぎない故に。
ニースの瞳は真っ直ぐだ。
全てを語るつもりは無かった。けれどもその真っ直ぐさに、少しだけ応えてやりたくなったのも事実だった。
278レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/17(金) 13:07:27 ID:???
「地獄の炎に焼かれながら、それでも天国に憧れる――敢えて言うならそれだけの事だよ」

オペラ座のファントム。
幼い頃に、母と妹と、そして年の離れた友人であるアレックスとの4人で見に行った舞台だ。
その中で最も深く心に残った台詞が、よもや後の自分とこれ程までに重なってくるなど、幼きレベッカは思いもしなかった。
母様。
エステル。
アレックス。
記憶の中の彼らの顔を見つめ、彼女はそれぞれに呼び掛けた。

――もしかしてボクはニースに、知って欲しいのかな……。

だから蛇足を分かっても、感傷を嫌っても尚この台詞を口にしたのかもしれない。
彼女が感傷を嫌うのは、自分が感傷的で感情的な人間だとよく理解しているからに他ならない。
だとすれば。
其処まで至った思考を打ち切るレベッカ。これ以上余計な感傷など、抱きたくなかった。

――ボクの理由はボクだけのもの。簡単に他人に知られちゃいけないよね。

勿体ぶるほど高尚な理由ではない。
それでもレベッカ・テスタロッサにとっては、とても大きな理由であるから。
279レベッカ・テスタロッサ ◆SNOW/gQMH2 :2005/06/17(金) 13:08:51 ID:???
【行動:ルイス・ガルシアと回線継続(-0)、ニース・エルネージュと回線継続(-0)】
【位置:U-22(市街・デパート付近・コックピット内)】
【残り行動値:0】
【機体状況:左肩装甲表面一部欠損、右肩・右腕装甲を僅かに損傷、
       マニピュレーター反応精度微量低下】
【パイロット状況:精神的には「もう、戻らない」、機能的には至って健康(但し死に至る病を抱えてます)】
【武装:ビームサーベル×2、左腕ビームシールド、(ビギナ・ギナの左腕)】
【所持品:オルゴール、白のフード付きロングコート、サングラス、赤いリボン
      ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx4、
      アイソトニック系飲料1.5L×1、携行食糧1週間分、救急箱一式)】
【服装:クロスボーン・バンガードの軍服】
【方針:火器の確保、ニースの疑問に答えてやる】
【同盟:なし】
280ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/17(金) 16:07:45 ID:???
>>256-259
己が作った自慢の(このファッツ、料理の腕も一流並らしい)料理に舌鼓を打ち、
グラスを傾けつつ、リトラの口から語られる昔話を聞いていた。

端々で、ファッツの知らない単語が飛び出してくる。
【ティターンズ】、【ジェガン】………
前者は連邦軍の中にある組織、後者はMSの名称らしいが………
何れも聞いた事はない。
更に、ファッツを驚かせたのは次の語句だ。
【娘】がまだ赤ん坊の頃に北米へのコロニー落としが行われたと話されたが
コロニー落とし………ブリティッシュ作戦でコロニーが落ちた場所はオーストラリア大陸のはずだ。
仮に彼女が場所を間違っているとしても、赤ん坊の頃にその行為が行われていたとすれば
今ここに、彼女が存在しているはずがない。
ブリティッシュ作戦が行われてより、まだ2年しか経っていないのだ。

しかし………いくら彼女が酔っているとはいえ、これらは嘘ではないとわかる。
彼女の瞳と、ファッツ自身の勝負師としての人間観察眼によるただの勘だが、間違ってはいないと核心する。
………まぁ、いい。
今大切な事は彼女の話を聞く事だ。

彼女の生涯を、これまでの人生を心の中に留めようじゃないか。
聞けば聞くほど、ファッツは彼女に惹かれる。
生まれも育ちも性格も、全てが異なっているが
その行われた行為というものはファッツによく似ていて
そして、ファッツものとはまた違っていた。
ファッツと、彼女との相違点とは即ちその行為への対処の仕方、だったのだろうと思う。
少しばかり昔を思い出し、すぐに振り払った。
思わず己の頬を撫ぜる。

「………こんな顔だからな」

彼女に聞こえぬほど小さく、ぽつりと言葉を零し。
少しばかり苦笑する、そこらの女なら
一発で撃墜できそうな切れ長の目に流れるような美しい紫の髪。

彼女の方を向いて話を聞く。
話が始まって既にどれ程の刻が過ぎようとしているのだろうか。
残念ながら時間を確認する術はないが、別に気にする必要はない。
今、重要な事は彼女の話を聞く事だ。

「さて、まだ寝るなよ、ファッツ。ここからはもう一人の女の話だ。
 その鋭き牙と爪で以って敵を引き裂く事のみでしか生の実感を得る事のかなわぬ、
 血生臭い女豹の話だ―――」
「誰が寝るって、お姉さん?
 聞かせてくれよ、その女豹の話………聞くまでは、とても眠れそうにない」

すっかり冷え切った野菜炒めと氷も解けてしまった野菜スティックを肴に、グラスをあおる。
楽しむ、楽しまない以前に………彼女の話に興味がある。
いや、興味というものではなくただ単純に知りたかったのだ、彼女の事が。
281ファッツ=シュヴィール ◆zIufWZ1Xhs :2005/06/17(金) 16:08:35 ID:???
【行動 :過去を振り返ってみる(-1P) リトラの話を静かに聴く(-1P) 残り2P】
【位置 :D-12 軍事施設・施設内娯楽室】
【機体/状況 :マラサイ/問題無し】
【パイロット状況 :左手甲に切り傷 ホロ酔い】
【武装 :ビームサーベル 頭部バルカン砲(残弾100%) ビームダガー ビームピストル(EN 50%)】
【所持品:ディパック 水2g入りペットボトル×1 コッペパン×1
     コイン トランプ 小銭 チタン合金製ワイヤー 
     女装セット(下着・服・化粧品・本、その他オンナノコに必要なもの♪)】
【容姿 :カウボーイ】
【暫定行動方針:お姉さんのお話を聞く】
【最終行動方針:このゲームを楽しむ】
282リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/17(金) 16:46:49 ID:???
>>280-281
『誰が寝るって、お姉さん?
 聞かせてくれよ、その女豹の話………聞くまでは、とても眠れそうにない』

ファッツは、自分の話に強い興味を抱いている様子だった。
だが、それもお互い様とでもいうか、リトラ自身もファッツの過去を―――過ぎ去った出来事としてではなく、
ファッツ=シュヴィールという奇妙な男を形成する要素として、その過去に強い興味を抱いていた。

……だが、賭けに負けたのは自分の方だ。
残念ではあるが、この男に過去を、自らを形成する重要な要素を曝け出すのも悪くは無いような―――
そんな気分にも、なりつつあった。

「……わかった、聞かせてやるさ」

カリ、と野菜スティックを齧り、リトラは一匹の女豹の生き様を、語り始める―――


―――リトラナがMSの扱いを、人を殺す為の技術を学んでのち連邦軍に入り、
家名を売るための“アイドル”として“あの男”の掌の上で踊ってやったのも、
全てはこの瞬間の為だった。
“ジェガン”を奪って脱走した理由は、二つある。
一つは“あの男”の鼻を明かしてやる事だったが、これはあくまでも復讐の過程の一つに過ぎない。
これで“復讐”を完遂したというのであれば、あまりにも生温いだろう。

重要なのは、もう一つの理由の方だった。
ルドルフを倒した傭兵、“ブロンゾ”との接触。

接触の目的は―――“決闘”だった。

“ブロンゾ”を恨んでいた訳ではない。
いや、そのような気持ちを欠片も抱かなかったと言えば嘘になるが。
ルドルフがパイロットとして闘い、結果“ブロンゾ”に討たれたというのであれば、
それは戦士の宿命であると、受け入れる事はできた。
ルドルフがパイロットとしての自分に誇りを抱いていた事を理解していたからだ。
そして、そんなルドルフだからこそ………自分は、愛したのだという事も。

問題は、ルドルフの最後の闘いは、汚されていたという事だ。
“ブロンゾ”にではない。
その傭兵にとって、敵の事情がどうであれ、立ち塞がるからには叩き潰す対象にしか過ぎないのは当然の事だ。
闘いを汚したのは“あの男”の謀略と―――力を執行する者の自覚を持たぬ、唾棄すべき“犬”どもだ。

リトラナは、この手でルドルフの名誉を取り戻したかった。
彼の愛した女の手で―――彼の誇りを誰よりも理解した女の手で、“ブロンゾ”を討つ事によって。
それはもはや、“復讐”とは一切の関わりなどはない。

“ブロンゾ”の土色に塗りたくられたロング・スカートタイプのマラサイと対峙する中、
リトラナはルドルフの事を“ブロンゾ”へと問いただす。
“ブロンゾ”はニタリと笑うと、静かに口を開き、語り始めた。

『……あの“Z乗り”の事か。良く憶えているぞ。実に良い、パイロットだった。
 可変機構が死に、推力も上がらず駆動部の動きが明らかに不調な中で、俺と対等に戦って見せたのだからな。
 ……俺は正直、その男を討つ事に気乗りはしなかった。
 連邦の犬どもの動きからして、この男が味方に裏切られた事は明らかだったからな。
 これほどのパイロットが、このようなつまらん事でムザムザその技術を散らすというのはな、
 同じパイロットとして、たまらなく気に入らなかったのさ』

『だが、俺もママゴトで傭兵をやっている訳じゃない。
 何の戦果も無く見逃したのならば、オマンマの食い上げになっちまう。
 何よりも、その男の戦士としての魂を、汚しちまう事になると思ったのさ。
 だから、俺はその男に誘いをかけた。“そのMSを土産に、こちらに来る意思はないか”とな』
283リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/17(金) 16:49:47 ID:???
『―――奴は笑った。高らかにな。
 俺は理解したよ。余計な事をやっちまったんだとな。
 サーベルを手に、最後の一太刀を浴びせかけてきた奴のZを―――俺は断った。
 迷い無く、奴の身をな。
 それこそが、俺にとって奴への最大の敬意を示す方法だった』

『さ、娘さんよ。
 “決闘”なんてものにロマンチズムを感じる繊細な神経を俺は持ち合わせちゃいないが。
 ……受けて立ってやるぜ。当然、手加減なんてものはしちゃいられねえがな』

―――娘は、敗れた。
リトラナの一太刀は、マラサイの装甲に深く食い込みはしたものの。
その身を断たれる前に、マラサイの刃は、ジェガンの身を断っていた。

地に転がるジェガンからは激しくスパークが飛び散り、その身が炎に包まれるのは時間の問題だったが……。
リトラナの身にはさしたる怪我もなく、脱出しようと思えばいつでも脱出できた。

だが、リトラナはそれをしなかった。

“復讐”は未遂に終わるが……。見方によれば、リトラナが永遠に失われる事こそ、
“あの男”に対しての何よりの“復讐”になるのかも知れない。
……だから、リトラナは満足だった。このまま炎に身を焼かれる事を、受け入れようと思った。

それに、同じ刃でその身を散らせば、きっと彼の傍らへ行く事ができるだろうから―――

と、ジェガンのコックピットハッチより、光が飛び込んで来た。
それはこの身を焼く炎などではなかった。
ビーム・サーベルによって焼き切られたコックピットハッチより、男が飛び込んでくる。
男は有無を言わさず非力な私を抱え込み、炎に包まれんとしている“ジェガン”より娘を連れ出した。

―――死に場所を奪われたリトラナは、“ブロンゾ”を激しく問い詰めた。
何故、こんな事をするのだと。
敗れた戦士に無用な情けをかけるのは、その魂を汚す事なのだと、先程貴様の口で語ったではないか、と。

『ん……そうだな。娘さんがあまりに美人で、勿体無くてな。
 ここで死なせるのよりは、俺の女にした方がいいと思ってな』
 
ヤニによって黄色く染まった歯をむき出しにしてニカッと笑い、
冗談とも本気ともつかぬ口調でそのような事を口にする“ブロンゾ”。
この男は、率直に言って醜男だ。
だがこの場合、美男であろうが醜男であろうがさして関係はない。

リトラナは逆上した。逆上し、その男に徒手空拳で以って襲いかかった。
叩き込んだ肘は、果たしてその男の鼻っ柱を叩き折る事には成功した。
……だが、その男は倒れなかった。
次の瞬間、娘の身体がふわりと宙に浮き。
地にその身を叩きつけられる衝撃と共に、リトラナの意識は遠のいていった―――


目が覚めた時には、小汚い小屋の床に、パイロットスーツを脱がされて寝かされていた。
身体を拘束するものはない。身を包むものは、パイロットスーツの下に着用するインナーのみであった。
小屋の扉には、鍵がかかっていた。だがリトラナは、こじ開ける事を試みる事すらもしなかった。

……暫くして、唐突に扉が開き、数人の傭兵と思われる男共が小屋へと入ってくる。
“ブロンゾ”の姿は、見えなかった。男共は、猛り狂っていた。
男共曰く―――連邦のパイロットは叩き殺されても仕方無い。
曰く―――その綺麗に整えられた銀髪を見ると、滅茶苦茶に踏みにじってやりたくなる衝動に駆られる。
数多の憎しみの込められた言葉を浴びせかけられる中、リトラナは理解した。

その男共は……踏みにじられた者のなれの果てなのだという事を。
284リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/17(金) 16:54:33 ID:???
言葉と行為で以って直接的に叩きつけられる悪意の前に―――
リトラナは生まれて初めて、心臓の凍りつくような恐怖を覚えた。
……弄ばれる自らの身体の感覚すら、感じられぬ程に。

行為よりも、悪意が恐ろしかった。
かつてリトラナの世界を覆っていた嘆きの壁が押し寄せてくるような感覚に、
その心はまさに押しつぶされようとしていた。
リトラナは、足掻いた。嘆きの壁を乗り越えようと、足掻いた。
脚にはめられた枷が食い込み血を流そうとも足掻き続ける獣のように、必死で足掻いた。

と、頭の中に一瞬だけ、青空が広がるような光景が浮かんだ。
その色は、懐かしい色だった。リトラナにとって、解放の象徴だった。

人の嘆きも、なにも、かんけいない。
つよくなければ、うばわれる。うばわれたものも、うばおうとする。
これがこのよの、ことわりならば。
わたしもただ、うばわれるわけにはいかない―――

まるで枷が引き千切られてゆくような感覚を、リトラナは味わった―――

群がる獣共に貪られる娘の内で、何かが―――き・れ・た。
指先に、柔らかく、弾力のある、生暖かいものが触れた次の瞬間。

小屋の中に、男の絶叫がこだまする。

娘の手は紅く染まり、其処に握られているものは男の眼球。

駆けつけたブロンゾによって、暴れるリトラナは再び地へと叩き伏せられ。

次にその意識が覚醒めた時、娘の中で、確実に何かが変わっていた。

「私を、仲間に加えてはくれないか」

目覚めたリトラナの様子を見に来たブロンゾに、娘は自らの意思を告げた。
それは、“復讐”の為。
そして、目覚めた獣の性を満足させられる、新たな生き様を見出す為。

『……いい、目をしているじゃないか。
 獣のような……そう、まるで女豹のような目だ』

その時こそ、傭兵“リトラ=クローム”が誕生した瞬間だった―――



「このバンダナはな、“ブロンゾ”に貰ったものなんだ」

ソファーより立ち上がり、ディパックに詰め込まれたバンダナを取り出して、ファッツに掲げてみせる。

「私の髪は、ホラ……飢えた獣共を狂わせるらしいからな。
 ブロンゾの奴は自分も例外じゃないなどと言って、こいつを“プレゼント”してくれたのさ」

バンダナをテーブルに置き、すでに何杯目になるかわからぬウィスキーをグラスに注ぎ。
娯楽室の中を何処へでもなく歩きながら、リトラは己の生を語り続ける。
285リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/17(金) 16:57:21 ID:???
「ま、それからのリトラ=クロームの人生は……ただ戦いによって彩られていた。
 砂漠に密林に―――“そら”。ありとあらゆる戦場を翔け巡ったと思う。
 ただ僅かに残った大戦の残り香に引き寄せられてな。
 私は、力によって仲間達との信頼を勝ち取っていった。
 ……契約次第では敵同士にもなり得る、奇妙な間柄ではあったがな。
 だが、幸いにも、我々を雇う連中はたいてい決まっていた。
 ……連邦政府に一泡吹かせたい連中さ。
 僅かに残ったジオンの残党に、反地球連邦テロリストども。それに、マフティー。
 ま、結局我々が仲間同士で戦うなどという事は……つまらん言い争いの発展以外には、無かったな」

戦いの炎の中に身を置いていた頃の自分を語るリトラは、本当に楽しそうだった。

「私は戦いの中で幾度か機体を乗り換えたが……常に自分の機体の肩を銀色に塗っていた。
 連邦の腰抜け共は“クロム・ショルダー”などと呼んでビビッていたらしいが、詳しくは知らん。
 ……何故、私はこんな事をしたと思う?
 これこそが、私が傭兵となった後の、“あの男”に対する“復讐”さ」

だが、復讐の二文字を口にした途端……リトラの声色に、若干の影が差した。

「元の名の名残を残す“リトラ=クローム”の名も……肩を白銀に塗られたMSもな、その為のものさ。
 “クローム”が連邦に仇為す度、“あの男”は己の求めた娘の影を感じ、震え、嘆き、猛り―――
 ……ふん、ざまあ、みろ」

悪態と共にクィ、とグラスを傾け、琥珀色の液体を喉の奥へと流し込み、フッと息を吐き出す。

「……そんな私にも、ついに戦いに敗れ、捕らえられる時がきたのさ。
 傭兵となって8年……マフティーの乱の後、にわかに連邦軍鎮圧部隊の動きが勢いづいてな。
 中でもNTとまで噂された“マフティー=ナビーユ=エリン”を倒した“キルケー・ユニット”なる連中は、
 腑抜け揃いの連邦の中では……恐ろしく手強い相手だった。
 それでも、私の仲間は馬鹿揃いでな。戦場から身を引こうとはしなかった。
 次々と分の悪い戦場に赴き討たれてゆく仲間達の中……私はおそらく、最後まで抵抗した方だったと思う。
 詳しくはわからんのさ。最後は、ロクに味方との連絡も取れん有様だったからな」

次第に、リトラの声は興奮の色を帯び始めた。
ファッツへと向き直り、熱っぽい瞳で言葉を続ける。

「ここからが最高に傑作なんだ。
 捕らえられた私は“復讐”の為の最後の切り札を切ったのさ。
 私は、クロムウェル中将の娘、“リトラナ=クロムウェル”です、とな」

―――その貌には、虚ろな笑みが、浮かんでいた。

「いざ、私の姿を目の当りにした時の奴の顔といったら……クク……もう、な……ハッ、だ、駄目だ……。
 可笑し…すぎて……、ククッ…アハハ……アハハハハハハッ……!!」

言葉の途中で耐えかねんとばかりに、高らかに哄笑するリトラ。
その手より空のグラスがゴトリと床に落ち、転がる。
右の掌で顔を覆い、天井を仰ぎ、しばし哄笑したのち―――

ぴたりと静かになり、ファッツへと揺れる眼差しを向けた。
286リトラナ=クロームウェル ◆Q1oSLvtePQ :2005/06/17(金) 16:59:27 ID:???
「………どう、見える……?」

呟き、ファッツの傍らへと腰掛けるリトラ。
ファッツの貌を仰ぎ見るようにしながら、言葉を続ける。

「ファッツ、今の私は……どう見える……?
 可憐なドレスに身を包む、牙を折られた獣の姿は―――」

右手でファッツの頬に触れ、静かに問うリトラ。

ファッツ=シュヴィールの前に全てを曝け出した女豹は、
彼女の魂のもっとも根源的な部分をも、曝け出そうとしていた―――

【行動 :  もうひとつの昔話(-1) ファッツに、問う(-1) 残2 】
【位置/場所 : D-12/基地・施設内、娯楽室 】
【機体/状況 : MSK-008ディジェ/装甲表面にキズ なかば断たれた首 
        腹部から左脇にかけて損傷(エネルギーバイパスに被害)
        胸部装甲陥没 左肘から先切断 放熱フィン一枚破損 右肩ウェポン・ラック破損
        防塵処理能力低下 索敵系不調 駆動系一部不調 要洗浄 ―――その心臓は今尚死なず 】
【パイロット状況 : 額に怪我(処置済み&頭に巻かれた包帯) そのグレーの瞳は揺れる
           黒のワンピース・ドレス姿 すでに酒はかなり回っている 】
【武装 : バルカン×2(残弾50%) ビームナギナタ 】
【所持品: 首輪 ディパック コッペパン×1 水2L入りペットボトル×1
      歩兵用ヘルメット ケブラーベスト 煙草数箱 『バンダナ』 応急処置が可能な薬品類&包帯類
      クマの『ハロ』(ディパックよりチラッと頭だけ出ている) 】
【方針 : 私は“牙”を、取り戻す ??? 】
287ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/17(金) 17:46:40 ID:???
球場にいるもう1人の生徒から通信が入っている。
しかしニースには、それに答える余裕がなかった。
ニースの全神経は、レベッカに集中している。
あくまでも、まっすぐにレベッカに向けられている。
だからその通信は、今のニースの耳には届かない。

レベッカの口。
レベッカの目。
レベッカの髪。
神が選んで作ったとしか思えない、レベッカの容姿。
人間が神の作った作品だとすれば、ニースから見たレベッカは、間違いなく神の最高の
作品の1つだった。
ニースの目は、耳は、その最高の作品が紡ぎ出す、答えを聞く。

やはり人の思いは、そう簡単には量れない。
レベッカの出した答えは、ニースの思いをあっさりと否定してみせた。
そしてレベッカはその答えを、気負うでもなく、焦るでもなく、冷静に否定したのだ。
この世界に自分で望んでいるなんて、普通ならとても正気の人間の言う事ではない。
だがレベッカの青い目の中に、狂気を感じさせるものはない。
むしろ最初に見た時よりも、ある種の深みを感じさせる。
それは、レベッカの中の覚悟が、そして何か、死をも越えた何らかの思いが、変わらない
筈のレベッカの目の色を、より深いものにしていたのかもしれない。
そして澄み渡ったニースの心も、それを少しずつではあるが、理解しはじめていた。

しかしレベッカが狂っていない事が分かったからと言って、それはニースの求める答えではない。
いや、むしろ狂っていた方が、答えを導けたかもしれない。
まあ、ニースはそんな答えを望んではいなかったから、内心ほっと安堵はしていたが。

『理由を教えるつもりは無いからね。
 ボクの理由は、ボクにとって意味を持てばそれだけで充分だ』

レベッカの言葉は、明らかにニースを拒絶している。
…レベッカの言う理由がニースの求める答えなのかどうか、分からない。
だがレベッカの言葉は、今のニースが、その理由を教えてもらえるだけの存在ではない事を
はっきりと伝えている。

続く
288ニース=エルネージュ ◆LuqsQs0P4w :2005/06/17(金) 17:47:17 ID:???
レベッカの声は、何故にニースにとってこんなにも優しく響くのか?
レベッカの理由の中に、その答えはあるのか?
しかし今のニースがそれを教えてもらえる存在ではない以上、今その答えを出すのは無理のようだった。
聞き出すのが不可能な事は、フードの下から覗く、強く、固い意思で分かる。
それが分かるだけに、ニースは自分の未熟さが悔しかった。
そんなに年齢の違わないレベッカが、とてつもなく大きく見えた。

「でも…。でもそんなの…」

寂しすぎるよ。

最後の言葉は旋律にならなかった。
その言葉は、旋律にしてはいけないような気がした。
レベッカの目は同情など求めてはいない。
多分それは、レベッカを侮辱する言葉かもしれない。
結局何も言えないニースにできるのは、レベッカをまっすぐに見つめる事だけだった。

そのニースにかけられたレベッカの言葉。

「地獄の…炎に焼かれながら…それでも天国に憧れる…」

それをポツリと繰り返し、呆然とレベッカを見つめる。

何となく。
何となくだが、小さく何かが見えたような気がした。
だがそれ以上は口に出さない。
再び心の平静を取り戻し、黙ってレベッカを見つめる。
今の自分では、何を言っても無駄だから。
MSに乗っただけでは、レベッカと同じ舞台には立てない事が分かったから。

(あたしは…もっと強くなりたい。
答えを待つんじゃなくて、レベッカさんに話させるくらいに…)

【行動:2番、10番に回線継続(0)レベッカと言葉を交わす(0)密かな決意(0)】
【残り行動値:4P】
【パイロット状況:ある意味覚醒】
【位置:U-22】  
【機体状況:異常なし】
【武装:狙撃用大型ビームライフル、ビームナギナタ、】
【所持品:ディパック 水2g2本 コッペパン2個
     作業着、ドライバーとモンキー、LLのTシャツ 】
【ペット:ハスキー犬…名前はまだ考えてない】
【行動方針:ハスキー犬の名前考えなきゃ、レベッカさんと同じ舞台に立つんだ】
289エドワード ◆71GpdeA2Rk :2005/06/17(金) 20:23:25 ID:???
>>228
 道路を歩いていると唐突に警報が鳴り響いた。
レーダーに反応。
MSよりも巨大な『何か』が北に存在している。
ミデアか何かだろうか?
北の一回りほど大きい光点に対しいろいろと推測してみる。
が、やめておこう。
考えを中止し進路を元に戻す。
下手に手を出せば火傷ですまされないかもしれない。
罠は人間だけにかけるものではない。
手間と暇さえかければMSをも破壊するブービートラップだって作ることは可能なのだ。
僅かに胸が痛んだ。

「完全に治ったと思っていたんだがな」

 それは古傷。
かつて屍肉を貪ったハゲワシの翼の痕。
幾多もの鋼鉄の死者を冒涜した証。
胸の奥で忘れるなとでも言うように蠢いていた。


 いつしか森を抜けた。
周りに残っていた木々は見る間になくなり、
青々とした草地はやがて黄色い砂──いや、
降りしきる雨に濡れた茶色い泥地に変わる。
やがて目の前には、雨を降らす黒い雲の下に、
幾兆の砂の粒子を波打たせた砂漠が広がっていた。


【行動:移動(N−24→M−24→L−24→K−24→J−24→J−23→I−23→H−23→H−22)(高速道路移動ボーナスあり)(-4)】
【残り:0】
【位置:H−22(道路)】
【機体状況:胸部装甲に損傷】
【パイロット状況:やや空腹】
【武装:肩部3連装ミサイルランチャー(残弾左1、右0),ビームトマホーク】
【所持品:布、綿、糸、裁縫道具、色鉛筆、型紙、人形
        水1L半、、MS整備の本】
【方針:食料確保】
290ジェンセン・スティール:2005/06/17(金) 22:06:01 ID:???
動かない、ねぇ・・・・・・

対峙したまま、時間が過ぎ行く。
頭上を通り過ぎていく一機のセイバーフィッシュ。
二機の様子からして、なにやら互いに通信でもしているのだろうが。
 
だが、そんなことはどうでもいい・・・・・・
「腕が立つかどうか、ねぇ。
 あんたと、そいつを前に逃げずにいるのがその証拠だとおもわねえか?」
 そう、キリトと名乗った男に告げる。
 こいつがやる気か、やらねえ気なのか。
 どちらだろうが、構いはしない。
 やる気なら、やる。
 やらねえなら、やらねえ。
 どの道、俺はすでに死んでいる。死んでいるなら・・・・・・生死に
こだわるなんぞ、くだらねえこった。
 死人が、自分の死体を埋めに来た。それだけのこと。
 ゆえに俺は思考を止める。
 ただ肉体の望むままに肉体を動かしてゆく。
(ゆえに男は思考を止める。思考の代わりに機体を動かすは積み重ねられた
経験、そしてそれらの経験を基として配線された脳細胞と樹状突起。

 脚部の沈みこみから全備重量は20トンオーバーと類推。
 周囲風景との比較から全高は14メートル前後。
 装甲形状から推定、両脚後部に大出力バーニア搭載。
 両腕部形状から類推。ゲルググ等に見られる腕部副武装を搭載している
可能性あり。
 軽すぎる、機体。たとえガンダリウムガンマでできていたとしても、あのサイズ
とあの重さでは。
 しかし裏を返せば、それだけ早い。当てられるかどうかもわからねえ。
 楽しそうだな。ああ、ひどく楽しい相手になりそうだ。乗り手次第では。

 無意識のままに分析を進めながら、意識は己の死に様をもてあそんでいる。
 あの両肩の馬鹿でかい砲にずたずたに射貫かれる自分。
 それとも機動性に翻弄されて、ビームサーベルにずたずたに引き裂かれるか。
 あるいはなにか、俺がまったく知らないような兵装にコクピットを粉砕されて
そのままミンチとなるか・・・・・・)
 
291ジェンセン・スティール:2005/06/17(金) 22:11:03 ID:ZX4i8xkS

 最高の、楽器だ。
 なら、奏で手たる奴の実力は?

 それなり、ぐらいじゃあ・・・・・・つまらない。
 俺が駆け抜けた、長い長い戦いの時間・・・・・・敵の血の匂いが染み付いて、
体から抜けぬほどの時間。

 むろん、奴にやる気がないならそれまでだ・・・・・・
 
 俺は首を軽く鳴らして、そのまま無造作にレバーを前進に入れた。

  【行動;移動P18→O18(平原)[−1p]
      通信続行、キリト[0p]
      見(ケン)[-1p]
      自然体[-1p。敵の攻撃に対し無意識レベルで備えている。  
           攻撃を受けた場合、1p回避を発動する]
【位置:P18橋】
【機体状況:ハイザック・正常】
【パイロット状況:好調好調っ】
【武装:ヒートホーク・ビームサーベル・ミサイルポッド】
【所持品:ディパック( 食料セット4日分 ペットボトル(水入り)×2
     エレキギター、自作治療用セット×1、自作栄養剤セット29回分)】
【方針:鬼か蛇か・・・・・・さてと、楽しみなこった】
292通常の名無しさんの3倍:2005/06/17(金) 22:40:07 ID:???
唐突ですが、日本崩壊の危機! 敵は巨大MA人権擁護法案! 

ガンダムの未来を護る為に、ここは立とうぜ、第二のアムロ!

ということで、6・19(日)東京で遊んで、日本を救わないか?w

チャンネル●桜「あぶない!?人権擁護法案」
http://www.ch-sa●kura.jp/asx/abunai1.asx  前半
http://www.ch-sa●kura.jp/asx/abunai2.asx  後半
【国内】あぶない!?人権擁護法案  「憲法以上に議論すべきだ」 −チャンネル●桜−(動画あり)[06/16]
http://ne●ws18.2ch.net/test/read.cgi/new●s4plus/1118991757/

●はトル

崩壊を防ぐには、6・19(日)十六時 人権擁護法案反対 “日比谷”集会へ http://bl●og.goo.ne.jp/jinken110
293キリト=ヴァルリック ◆OBrG.Nd2vU :2005/06/17(金) 23:05:20 ID:lN8DEas6
IDチェックです
294T−ドライツェン ◆8pZ1aGg3Pw :2005/06/17(金) 23:12:42 ID:???

「あなたたちは、殺し合いをしますね?」
コクリ。
「あなたたちは、殺し合いをしますね?」
コクリ。
「あなたたちは、殺し合いをしますね?」
コクリ。
「よろしい、私の代筆したこの参加意思表明をもって、あなたを登録することにしましょう。
 そうですね、ここに拇印でも押して貰いましょうか。……はい、結構です。
 では『テー・ドライツェン』さん、頑張って殺し合いをしてくださいね」

 *  *  *

例外的な形で参加の意思が確認された後、その巨漢は教室から連れ出された。
後に残されたのは、太った「先生」と、白衣の「室長」。

「せっかくの有望な参加者を、むざむざ爆死させる気だったのですか?
 全く融通が利かないんですから」
「いやしかし、ありゃ仕方ないですよ。言葉が通じないんだもの」
「言葉が通じなければ問答無用で殺すのですか?
 何のために裁量権が与えられてるのか、少しは考えなさい」

責める室長、ふてくされる先生。
先程、あの巨漢に対する説明と、参加意思の確認がされたのだが――
ティーチャーがいくら怒鳴ろうと脅そうと、彼は「殺し合いをする」と書こうとはしなかった。
白紙の上に文字ひとつ書かず、グルグルと無為に渦巻きを描くばかり。
かといって、何か抵抗の意思を示すでもなく、話すわけでもなく。
モゴモゴと、意味を成さない声を上げる続けて。

そのあまりの態度に首輪の爆破も已む無し、と判断しかけた所に現れたのが、室長だった。

室長の制止と、口頭での意思確認、そして代筆。
いささか越権的な行為ではあったのだが。
295T−ドライツェン ◆8pZ1aGg3Pw :2005/06/17(金) 23:13:53 ID:RpbrHMku

「あなたはちゃんと資料を読んでなかったのですか?」
「いや、あまり。忙しかったもので」
「しっかりして下さいよ。彼がろくに喋れない・文章も書けないことは、ちゃんと書いてあったはずですよ」
「え、ホントですか?!」
「あと、彼は表現能力に問題があるだけで、決して馬鹿ではありませんよ。
 人の話を聞いたり理解したりする能力は、ほぼ問題ありません」

室長の言葉に、先生は青ざめる。

「じゃ……わたしが『バケモノ』とか『阿呆』とか罵ったのも、分かってると?」
「もちろん」
「わたしが頭をペチペチ叩いて馬鹿にしてたのも、全部分かってると?」
「もちろん」
「『悔しかったら生き残ってみろ、そしたら首輪外してやるぞ〜』とか言ったのも、分かってると?」
「もちろん。全部分かってたでしょうし、覚えてるでしょうね」
「じゃ、もしアレが優勝しちゃうようなことがあったら……」
「首輪から自由になった途端に、あの大きな手で縊り殺されるかもしれませんね。自業自得です」
「ヒャー、そんな、見捨てないで下さいよぉ……」

室長とティーチャーのいつもの漫才。
もちろん、肝心の『彼』はそれを聞いていないが、しかし……

 *  *  *

しかし、確かに『彼』は全てを理解していたのだった。
自分の考えは上手く表明できないが、他人の言葉は分かる。
『彼』は、己の置かれた立場をしっかり理解していた。

そして――
他の多くの参加者がそうであったように。
室長の言葉に三度頷きはしたが、決して十分な納得があったわけでも、覚悟があったわけでもなかった。

その巨体の中に揺れる繊細な心を抱えたまま、コードネーム『T-13』は戦場に投入される――


【投下位置決定のIDチェック】
296通常の名無しさんの3倍:2005/06/17(金) 23:40:39 ID:???
次スレ

ガンダムバトルロワイヤル第四回大会 第五章
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/x3/1119010449/l50
297サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg :2005/06/18(土) 00:11:40 ID:???
>>269-270

『……MSから降りていくことはできません。
 そんな無用心な真似は、できません』

(――なるほど)

先に投げかけた問い、対する答えに得心する。
何も無しに相手を信用はしないし、MSが自分の身を守る要素という点は心得ている。
数日間の影響かもしれないが、ただの女子ということは無さそうだ。

(ま……75点、というところか)

トランクを高空から引き寄せるツールとは考えなかった分の減点。
だが、こちらを狙っているわけではないということだろう。そのくらいの方が自分にはやりやすい。
妙に頬を赤らめ、恥じらいと怒りが顔に出ている点もまだまだ……

(ん? なんでそんな

『……もし、もしこれを『着て見せろ』と言うのなら、
 私は断固拒否しますし、あなたを最大限に軽蔑します。
 男の人の目の前で『これ』に着替えろって言うんですかっ!
 セクハラですセクハラッ!!』

 セ、セクハラぁ!?」

つい声に出てしまった。我ながらマヌケだと頭で思うくらいに素っ頓狂な声。
が、それも彼女が開封した中身によって氷解される。

「……あー……うん。セクハラだ。セクハラだな。セクハラですね?」

日頃から思索を回転させている自分だが、それでも『こんなもの』への見識は深くない。
三段重ねで順繰りに事実を叩き込むまで瞬刻を要した。
少女の方へ眼差しを戻すと、噴き出す吐息と突き刺さる視線。
このような場で無ければ笑って受け流せたかもしれないが、さすがにちょっと怖い。

「……あはは、いくらなんでもそんなわけないだろ? 怒っちゃやーよ、アルマちゃん?
 ほら、かわいいお顔が台無しだぞ?」

少し引きつりながらも笑顔を浮かべ、なだめすかそうと喋くる。
ふう、と一息ついてどうにか理性をまとめた。

「――それに、俺はアルマちゃんよりはもうちょいグラマラスな方が…ん、おほん」

やっぱりまとまっていなかった。
危うく本当にセクシャルなハラスメントをしそうになり、慌てて発言を止める。
視線がさっきより痛いのは、多分、気のせいではない。ビンタが飛んでくる前に会話を堰くことにした。
MSのビンタなど、さぞ痛かろう。
298サイモン=クレイガー ◆JfFovM4OEg
>>236-237

そう考え、話の穂先を切り替える。
こちらはこちらでいかにも博士然とした身なりに身を包む男だった。年かさは決して若くは見えない。
少なくともMSの操縦に習熟してる…というような雰囲気は無かった。
呼び捨てにするような手合いという感覚は無い。そう、例えるなら

「話が早くて助かるね、学者先生」

とでも呼ぼうか。
相手が行動を起こさないかぎりは探りを入れていくか、と考え

「用というなら、そうだな。
 まず君たちの目的、当面どう動くかと…どういう状況からここへ連れて行かれたか、わかる範囲で聞きたい。
 そいつを飲んでくれれば、こちらも君たちが聞きたい事を話そう。まずはこれでどうだ?」

と話した。
聞きたいこと自体は多いが、そう多く選択肢があるわけでもない。
最低限の事を告げて相手の出方を伺う。

【行動:17番・22番と通信継続(0P)】
【位置:K-12/川】
【残り行動値:4P】
【機体/状況:アッシマー/MA形態 左腕部装甲に裂傷】
【生徒状況:左頬に赤み】
【武装:アインラッド(停止・現在N-13)】
【所持品:ディパック(コッペパン×1、水2L入りペットボトルx3、携帯糧食x5)
     ウェストポーチ(ナイフx1、ペンライトx1、煙草x1、コンパス付腕時計、筆記用具 携帯糧食x3)
     ショルダーポーチ(ポラロイドカメラ一式) ライターx1 毛布 包帯 幅広の布】
【行動方針:1.自衛の確保 2.情報の入手】