【斧谷稔】大富野教信者の会part15【井荻麟】

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663通常の名無しさんの3倍
で、インタビュー1

YOSHIYUKI TOMINO/Director
エンタテインメントを仕事にした人間にオフはない。
もうひとつ余分なもの、スペアを得るためにも

「僕にはオフの時間はないのです。神経症で意気地なしの性格だから、息抜きができない人間なんですよ」
 富野由悠季氏は日大芸術学部を卒業し、虫プロで4年間働いた後、フリーに。
『機動戦士ガンダム』を筆頭にアニメ界の第一線で仕事をして40年以上が過ぎる。仕事が入らなかったある8ヶ月間を除き、年末年始も締め切りを抱え、常に仕事に終われる日々だった。
「僕がこの仕事を始めた昭和40年頃は、アニメは全く新しい業種で、世間にもまるで認知されていない状況だった。
しかもフリーランスだったから、絶え間なく仕事を入れていないと不安で不安で……。結婚して、家を建てた当時、ローンを3ヶ月先まで貯金できるようになろう、が目標でした。
人々が休みの時に楽しむことを仕事にしたのだから、オフはなくて当然、エンタテインメントを仕事にするとは、そういうことだと思います」
 読書をしても美術館に行っても、デパートのショーウインドーを見ても……何もかも仕事目線で見てしまう。
664通常の名無しさんの3倍:2005/06/13(月) 23:00:27 ID:???
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「映画や芝居を見に行くのは大好きで、”よし、今日は仕事を離れて楽しむぞ”と思って見始めても、それが持つのは2、3秒間程度。
『スター・ウォーズ』を見た時は、『スタートレック』までのSF映画と違い、G・ルーカスが船内を汚していることを発見して、これは自分に足りない点だと気づかせてくれました」
 どこまでもワーカーホリックな富野さんが恐れるのは、自分が狭い世界の住人になってしまうこと。「もうひとつ余分なもの、つまりスペアをいかにして獲得するかが大事なのです」と
取材の時も真摯な眼差しで語った。約20年前のノルウェー旅行は、そんな彼の姿勢を物語るものだ。
「世界の西の海、大西洋を見たいと思ったのがきっかけです。40歳過ぎての、初めてのひとり旅。まだ行った人が多くない所へと、ノルウェーに出かけた。
行った先は、日常生活は便利さから程遠く、あるのは自然とゆったりした時の流れ――。名所観光地を次々と巡る日本の国内旅行とは違って、驚くほど退屈だった。
それで、くそっ!負けないぞ、って思ったものです。いつも自分が身を置く世界とは異なる価値観で回っている、この世界に慣れてやる、と。結局、そのために翌々年、再び同じ場所に行くことになった(笑)」
 スタジオから、歩いて10分ほどのところにある富野さんの自宅書斎を訪れて、彼がスペアにこだわる意味を改めて理解できたように思う。
猫脚キャビネットや両袖机などクラシックなインテリアがなんだか意外で、また何より書棚に並ぶ本の多彩さに驚かされた。
『アングロサクソン・モデルの本質』『ダンテ・クラブ』『文明の衝突』『般若心経』、そして世界各国の外国語辞書などなど………。
「僕の仕事であるSFワールドに表れていないものを吸収しなくてはいけない。古代ローマから現代まであらゆる時代社会を学び、全てを自分の中に受容できて初めて、全く新しい世界を創ることができると思う。
僕はアーティストではなく、ディレクター的な職人なんです。例えばピカソやダリのような孤高の天才は、自分色にやりたいことを自由にできる。
でも僕程度の人間は、何事においても固定化されないよう、偏った趣味に陥らぬように、ニュートラルな場所にいることを心がけていないといけないと思うんですよ」