機動新世紀ガンダムX−31

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59ダムA樋口氏インタビュー4
  手塚アニメからガンダムXへ

「僕としては、手塚さんが生きていたら、ずっと手塚さんの作品の音楽をやり続けたかったですし、
ことアニメーションの音楽に関しては、手塚さん以外の方とのお仕事は、なるべく避けようと思っていたんです」

 そして、樋口氏を『ガンダム』シリーズの音楽担当に迎えようという動きは、『X』以前にもあったという。

「『ガンダム』の音楽をプロデュースされているボーダーラインの太田(敏明)さんとは、昔から顔なじみで、
彼からも何回か(『ガンダム』作曲の)オファーを何度かいただいていたんですが、実現には至りませんでした」

 そして、『ガンダムX』で樋口氏の登板が実現する。樋口氏が依頼を受けることを決めた決定的な理由とは何だったのか。

「主人公のガロードとティファの魅力ですね。彼らは、音楽を書いてみたい、と僕に思わせてくれる登場人物だったんです。
ガロードって結構腕白で、暗い性格じゃなかったでしょう。いい意味でマンガっぽいキャラクターですよね。
それで、この2人が主役の作品だったら行けるな、と思ったんです。『ガンダムX』を引き受けた時、こう言ったことを覚えています。
僕も歳ですから、この先は限られた数の仕事しかできないでしょう。でも仕事に対してはかなりの勝算をもっています。
今回は、その中の一つを出します」
60ダムA樋口氏インタビュー5:05/03/03 17:53:03 ID:???
 音楽の作曲作業は、音響監督の浦上靖夫氏との打ち合わせが主体だったという。
高松信司監督とも打ち合わせする機会はあったとのことだが、大半は浦上氏の発注メニューによるところが大だったようだ。

「たとえば、TVドラマの場合は45分の作品が50何週続いて、正味40時間くらいに及ぶ。そういうドラマに音楽を付けるためには、
相当な数の曲が必要になりますよね。ですから、大半のテレビ映画の場合は、音楽を前もって溜め録りせざるを得ない。
そういう場合、作品の完成度は音響監督の手に委ねられているんです。
浦上さんはメニュー出しもさることながら、選曲の技術が素晴らしいですね。『ガンダムX』でも、本当に1本1本、
そのシーンのために僕が一から音楽を書き下ろしたかのような、丁寧な選曲をしてくださいました」

 映像音楽に長く携わられている樋口氏は、付随音楽に対して独自の考え方をもたれている。
付随音楽の成り立ちは、ほとんどが経験則だと樋口氏は言う。
たとえば、「悲しい音楽」とは、悲しい出来事が起こっているシーンで流れた音楽を、人は経験から悲しい音楽と思うのであり、
本質的に「悲しい」音楽というものはあり得ないという。

「逆説で言うと、悲しいシーンでいわゆる悲しい音楽が流れていないと、見る人は混乱するわけです。
これは僕の音楽作りのネタなんです。実は昔から、樋口は危ない、と言われていたんです(笑)。
ドラマをやらせると、いいところはいいけれど、時にトンデモないことをやるって。
僕は『ガンダム』のようなマニアックな作品ばかりでなく、喜劇俳優がおちゃらけるようなドラマもやっている。
こういうものは定石があるじゃないですか。僕はそれを外して書くわけです」