一応、出世の限界はある。
最もよく知られているのが、特務曹長(准尉)。
兵・下士官(二等兵〜曹長)と、士官・将校(少尉〜)の違いは、「戦術・戦略的
観点から、部下を指揮することができるか否か」である。
いくら最前線で活躍しても、それはあくまで戦術的な勝利、ミクロの勝敗である。
戦闘にあたり、その作戦の戦略的価値を認識し、単なる勝利だけでなく戦術的勝利・
戦略的勝利をも見据えた作戦を立案し、それを部下に指示して戦闘できるもの。それが
士官である。
これは、専門の機関で学習しなければ(基本的には)身につかないものであり、そのため
少尉以上は士官学校を卒業しないとなれない。
軍隊に必要な専門技術を学ぶ兵学校をいくら優秀な成績で卒業しても、またいくらすばらしい
戦果を上げたとしても、兵・下士官は「曹長」以上にはなれない。戦略的観点・知識をもってい
るとは認められないからである。
ただ、長期間前線を維持し、部下を指揮する能力、戦術的考察力があると認められた場合、
「特務曹長(准尉)」に出世できる。これは「少尉に順ずる権限」を持った下士官であり、
給料・権限・立場ともに少尉と同等の地位にあるものとして見なされる。
ただ少なくとも、士官学校をひょいとでた若造と、最前線を何年も支えてきた特務曹長では、
公式にはおなじ権限があったとしても、実際には雲泥の差だったろう。部下として、素人と玄人
の指揮、どちらを信頼するかは、自明の理である。
また「優秀な下士官である」と上層部に認められた場合、「幹部候補生」という
制度もある(ガンダム世界にあるかどうかは不明だが、きっとあるだろう)。
これは、士官としての素質ありと認められた下士官が、上官(基本的に士官)の
推薦を持って、短期間(3〜12ヶ月)士官学校に通わせてもらえるというものである。
これを修了すれば、その下士官は晴れて「少尉」に任官できる。そして少尉になれば、
中尉・大尉と出世していくことも可能となる。
基本的に兵学校は1〜3年で終わり(大抵は1〜2年)、士官学校は4年(戦時は
短縮されることもある)もかかる。そして指揮官は、士官学校での中でも指揮能力に
長けた連中が配属される、一種のエリートである。自然、最前線にまわされることが
多く、その損耗率は高い。兵は自分が生き残ることだけを考えればいいが、指揮官は
同時に部隊全体のことも考えなければならないからだ。
アムロが後に下士官から士官にまで出世しているが、これは『戦時特例』というもの
だろう。もともとアムロは頭脳労働派で、少々の勉強で士官になれるほどの能力を有し
ていたのだろう。上層部もそれを認め、「特別の配慮として」士官待遇にしたのだと
判断できる。
軍が人材補充のため、民間人から登用した場合、その専門知識が十分に生かせる場合は
特別の配慮として下士官待遇・士官待遇などにする場合がある。これもその一例だろう。
給料・指揮をはっきりさせる措置だ。
たとえば、機械いじってウン十年、メカの整備一徹男や、メスを握らしゃ天下一、治せぬ
怪我はありはしないなどという天才外科医などを考えてほしい。彼らが、急に軍に応召された
場合、応召兵として「二等兵」扱いになるだろうか。たとえば『パトレイバー』の榊さん
とか、スーパ−ドクターK・ブラックジャックなどである。
この場合「専門技能を有するもの」として、技術士官・軍医士官の待遇を与えられる。
しかし彼らは、あくまで「専門技能で士官待遇」の人であり、「軍の運営・戦略」に関して
は素人である。故に「○○士官」などと肩書きがついている人は、軍隊における指揮権は
持てないようになっているのだ。
その点では、ホワイトベース隊の連中は、まさに例外中の例外と言えよう。