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癒しより抜粋:
「子供は戦艦のようなものが好きなんだよ。あなたにはそれがわかっていない。
戦艦大和みたいなのがでて、カメラがガーッとまわりこむような絵は、格好いいじゃないですか。
それと、戦隊物的なものもやってほしいな」
戦隊物というのは、バンダイがメイン・スポンサーになっている作品『ゴレンジャー』みたいな作品をさす。
隊員物のことだ。
「ガンダム五機をそろえて出せということですか」
「そうだ」
その管理職の男は、自身のある実績と役職にいたから、職能を発揮してきたのだ。
彼のそういった性格は二十年以上前から知っていたので、驚きはしなかったが、悔しくはあった。
そんな要求を突きつけられるということは、こちらに力がないからである。
実績をしめしつづけていれば、彼だってそんな要求はしてこない。
「なら、地上を走る戦艦というのも出しますよ。それでもいいんですか?」
まさかというセリフをぼくは吐いてしまっていたが、
いくらなんでもそれには応じないだろうというぼくの甘さもあった。
「いいじゃないですか」
「タイヤ履かせますよ、戦艦に」
「やってよ」
それで決定である。スタジオでの会話ではなく、
まだ、サンライズがバンダイ・グループに加入するまえのバンダイの社内での会話だ。