OVER THE RAINBOW

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1フラウ
OTRを完成させる為・・・

シャア板よ

私は孵って来た!!




テンプレは>>2-3辺り
2元ラーク:04/08/03 13:55 ID:???
しまった・・・名前間違えた・・・orz
売名乙(クサマラ
4バーニィ ◆dnbO/HfIaU :04/08/03 14:00 ID:???
4ゲット
>>4
氏ねや歯糞(マラプ
6通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:10 ID:???
フラウ・・・・
7通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:11 ID:???
バーニィ ◆dnbO/HfIaU

こいつ一日中2ちゃんにへばりついてる糞コテ

・糞のくせにトリップつける自意識過剰(誰もおもえなんか騙らねぇっつーの)
・スレの流れが読めず、ネタにもついて行けない
・最近2ちゃんに来たのか2ゲットする事が自分の義務だと思っている
・キャラとかMSのハンドルつける奴は大体真性の厨
・アニメの設定を唾を飛ばしながら力説するキモいデブオタ
・二次元の女にしか萌えられない(三次元の女はキモいらしい)
・ひきこもってゲームとネットしかしないから、二次元と三次元の区別がつかなくなっている
8通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:11 ID:???
これキモイ。
エロパロ板のオレガン以下。
9通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:12 ID:???
突然OTRとか言われても
どうしていいか分からない新参住人達w
10通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:12 ID:???
OTRって何?
11通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:17 ID:???
>>10
娘がパンを焼いて兵士が食ってロケットが飛んで虹ができて

OVER THE RAINBOW
12通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:19 ID:???
一回ガンダムで抜こうと思ったけどムリだった。
13通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:19 ID:???
おならジェットーーー!!!OTR=3
14通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:20 ID:???
>>11
わけがわからん…
15通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:20 ID:???
ラークとさくっとマフティーって引きこもりだったのか。

↓引きこもりたちの魂の輝きをご覧くださいw↓
16通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:20 ID:???
otr
17通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:22 ID:???
さっさと続き書かんかい!おおう?
18通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:23 ID:???
>17
うるさい氏ね!
19通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:24 ID:???
>>12
やっぱジオン系じゃないと苦しいべ
20通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:24 ID:???
>19
分かったから死ね
21通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:26 ID:???
>>15=バーニィ ◆dnbO/HfIaU(マラマラ
22通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:27 ID:???
バーニィ ◆dnbO/HfIaU必死だなw
23元参加者:04/08/03 14:33 ID:???
で、どこまで進んでたっけ??
24通常の名無しさんの3倍:04/08/03 14:35 ID:???
ttp://cgi.2chan.net/y/src/1091462841990.jpg
これやるから開発中止汁
25通常の名無しさんの3倍:04/08/03 15:02 ID:???
いまどき蓮てw
初心者丸出しで痛いなこいつww
26通常の名無しさんの3倍:04/08/03 15:09 ID:???
コテは同窓会で引きこもってろ
27元ラーク:04/08/03 15:10 ID:???
さて、そろそろ再開しましょうか
28通常の名無しさんの3倍:04/08/03 15:12 ID:???
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 終 了 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━
29通常の名無しさんの3倍:04/08/03 15:13 ID:???
>25
新しいガンダムのおもちゃですが(藁
30通常の名無しさんの3倍:04/08/03 16:04 ID:???
ガンダムが蓮に見える病気かよ!
31通常の名無しさんの3倍:04/08/03 17:02 ID:???
フラウって糞スレ立て逃げした奴じゃん
あれラークかよw
32通常の名無しさんの3倍:04/08/03 17:03 ID:???
33通常の名無しさんの3倍:04/08/03 17:04 ID:???
>>29-30
釣れたw
34通常の名無しさんの3倍:04/08/03 17:12 ID:???
後から釣れたというのは(ry
35通常の名無しさんの3倍:04/08/03 17:19 ID:???
とんでもない夏厨だな。
上げ(日本語)は!
36通常の名無しさんの3倍:04/08/03 17:34 ID:???
うはwwwwまた釣れたwwwwくっさwww
37通常の名無しさんの3倍:04/08/03 17:52 ID:???
>>1-36
釣れた
>>38-1001
釣れた
38五飛:04/08/03 20:00 ID:???
本物のラークなのKAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!
39通常の名無しさんの3倍:04/08/03 22:05 ID:???
黙れデコッパチ
40通常の名無しさんの3倍:04/08/04 10:00 ID:???
オワットル
41通常の名無しさんの3倍:04/08/04 10:06 ID:w/tHkrsc
ガンダムセンチネルのラストでは母艦のブリッジ内でこの歌が合唱されます。
42通常の名無しさんの3倍:04/08/04 16:54 ID:???
叔母痣霊陰謀
43伏ぅマフティ ◆Z.rsi.gvb2 :04/08/04 19:33 ID:???
やあ、これは良い遊び場だ。
しばらくここでSSを書きます。
あと、さくマフのトリップバレバレ。
44通常の名無しさんの3倍:04/08/07 17:34 ID:unfu+4tH
ぶほっ
45通常の名無しさんの3倍:04/08/09 23:28 ID:???
うわぁ・・・
46通常の名無しさんの3倍:04/08/13 09:40 ID:???
結局テンプレはどうなったんだ?
47通常の名無しさんの3倍:04/08/13 18:02 ID:???
ラークに一任した
48通常の名無しさんの3倍:04/08/13 21:32 ID:???
ああ・・・あれですか、アレ
ポケ戦とか逆シャアのメカデザの人が監督した・・れー・・らーなんとか?だっけ
あのエヴァっぽいアニメの映画版のエンディングでしょ?
49これが主役の娘だ。:04/08/15 00:23 ID:???
ドロテーア・マルレーン
第2271MsB機動輜重小隊製パン班班員 二等兵 17歳 女性

 本編の主人公。愛称ドロシー。サイド3「マハル」出身の学徒志願兵。
育ちが良く、深く愛情を受けて育ったため、性格は温和でわりとのんびり屋、
主義主張に乏しく周りに流されやすくトラブルに巻き込まれるとすぐオロオロしてしまうが、
実は逆境には強く、どんな時にも他人への思いやりを忘れない、強く優しい心を持っている。
容姿はウェーブのかかった色鮮やかな金髪と澄んだ青い瞳が特徴的なドイツ系。
 この戦争に対しては、これといった信念があるわけではない、マスコミ等の影響で
「連邦は悪い人たち」といった程度の認識は持っている。
 徴用後、最低限の訓練のみを受け彼女は、第227Ms輜重中隊(通称ベーカリー部隊)
に配備され、地球降下作戦に参加。後方部隊のため戦闘経験も無く初期の勝ち戦も手伝い、
のんびりとパンを焼き続ける日々を過ごしていた。
 製パン班内ではイースト菌担当、性格も手伝ってポカミスをやらかしては製パン班長
のアンに怒られている。意外にも運動神経に優れ、食料配達用帆ホバーバイク「オカモチ」
で前線から帰還した戦闘部隊に食料などを届けるのも彼女の仕事である。
その素朴で親しみ深い性格から前線の兵たちに人気がある、言うなれば「看板娘」。

50次、アン姉さん:04/08/15 00:28 ID:???
アン・キリシマ
第2271MsB機動輜重小隊隊員 上等兵 18歳 女性

ドロシーと同郷の少女だが赴任するまで面識はなく、身の上話の際に発覚、この縁が元で親友になる。
第22独立MS中隊MS小隊隊長のロジャーに密かに思いを寄せている。
性格は勝気で仕切屋。先任班長が負傷で後方に搬送された後、製パン第一班班長を任されることになる。
責任感が強く自分が正しいと思った事は絶対に曲げない頑固な部分もあるが、同時に周囲への気配りや
優しさも忘れない人間的な魅力に溢れた少女である。黒色のショートカットのヘアスタイルと利発な瞳が特徴的な日系。
ドロシーには「アン姉さん」と呼ばれている。
余談であるが名付け親である彼女の祖母は彼女を「イオリ・キリシマ(霧島 庵)」と命名したつもりだったのだが
役所に出生届けを出す際の記入ミスで戸籍登録上ではアン・キリシマ(Anne Kirishima)となっている。


(庵のくだりは、知らない。何時の間に?)
51次、ロジャーの兄貴:04/08/15 00:34 ID:???
ロジャー・ウィンフリード
第22独立MS中隊第三小隊隊長 中尉 22歳 男性

元大学生で小説家志望、とある事情で在学中に軍に志願した経歴を持つ。MSの操縦は並程度だが、
優れた戦術観で第22独立MS中隊隊長ヨハン少佐の知恵袋としてベーカリー隊の防衛任務に尽力する。
性格柄、部下に対してはほとんど威厳がなく、カールなど古参兵からは一見軽く見られているが、
しかし本当はその戦術眼から一目置かれている。同僚がとっつきにくい面々の為か非戦闘員と仲が良く、
ドロシーとはもはや擬似兄妹のような関係。暇を見ては詞や小説など作品を書き溜めている。
性格は温和で利他的であるがやや教条めいたところがあり自己に厳しい。誠実であろうとすることを
自らに課している節があり、加えて職業人として仕事をやりとげようとする気概、責任感も抱え込みがちである。
作戦終了後一人、沈鬱な面持ちで佇むことが多く、軍人として非情であらねばならないの考える自分と
人として人間的でなければならないと感じる自分の板挟みにロジャーは苦悩する。
そんな彼の戦争観は「終わらせなければならない汚い仕事」である。
コードネームは「ティンドル1」
容姿は細身で長身の典型的な文系体系で人の良さそうな温和な瞳に銀フレームの眼鏡をかけている。英仏系。
 
搭乗MS
MS-05S型

(ヒマな時には小説を読んだり小説を書いたりするインナー派。多分その小説は部隊内でウケが悪い)
52パン屋の親方。:04/08/15 00:37 ID:???
リチャード・ディックス
第227Ms輜重中隊隊長 大尉 44歳 男性

第227輜重部隊、通称ベーカリー部隊の指揮官。愛称はディック。
元は歩兵部隊の前線指揮官だったが、ある事情で輜重部隊指揮官に転属。
ジオン軍人にしては珍しく兵站の重要性を理解しており、戦術面でも非凡な才能をもつ。
豪快かつ豪放な性格の持ち主で古参兵からの人気は高い。逞しい巨体と強面の面持ちが特徴的なロシア系。

(リチャード=ディックより、富野的ネーミングとしてのディック・ディックスにもなる)
53次、肉屋。:04/08/15 00:40 ID:???
カリム・ラシード
第2271Msk機動輜重隊精肉班班長、少尉 33歳 男性

熱心なイスラム教徒の息子で、その両親とイスラム教への反発として、精肉業に異常なこだわりを見せる。
彼には「メッカ」に向かって礼拝する姿が、「連邦に屈している」様に感じられ、それを許す事が出来なかった。
彼は教義を振り切るためにヒゲを剃り、豚肉を扱い、自らがかって信じていたすべてを汚していく。
信じるモノを失った彼は、しだいに地球の雄大な自然そのものに惹かれていく
。軍に志望した動機は物見遊山的な所もあり、温和な性格も手伝ってか、ドロシーと非常に気が合う。
 「アッサラーム アライクム」が口癖で、彼は挨拶として使用している。
その生い立ちから、心に壁を作ってはいるが、極めて常識的な人物であり表面上は楽天家でもある。
アラブ系には珍しく容姿は非常に大柄(太っている)。

(トルネコ)
54次、ダイダラボッチ:04/08/15 00:43 ID:???
ディーダ・ラ・ボッチ
第2271MsB機動輜重小隊隊長 少尉 46歳 女性

共和国時代からの古参輜重部隊員で、製パン部隊の大ベテラン。製パン班班長のみならず、部隊の副官も勤める。
人生の酸いも甘いもを知り尽くした、部隊の母とも言える存在で、赴任してきたばかりのドロシー達の面倒を見る。
ちなみに、パンを焼いてるけど、ホントはナンが好きらしい。
性格、容姿共に姉御肌で包容力に溢れた肝っ玉母さん。まだ子供ばかりの学徒兵を、わが子のように分け隔てることなく
叱り、慰め、激励する。この戦争を通して正に「母親」のように、ドロシーの成長に多大な影響を与える。
学徒兵から敬愛と親しみを込めて「マム」と呼ばれている。中背で小太りのインド系。

(肝っ玉母さん。きっとウーピー・ゴールドバーグみたいな雰囲気だ)
55運転手:04/08/15 00:48 ID:???
セバスチャン ・ロウ (バズ)
第227Ms輜重中隊補助分隊長サムソントレーラー運転手 伍長 24歳 男性

自称「公王閣下のドライバー」。真偽のほどは定かではないが、女癖の悪さからVIPの愛人に手を出し左遷させられたらしい。
酒と煙草と女を心から愛する熱いハートを持った好漢だが堅物の整備班長ジムには煙たがられている。
(仲が悪いというわけでもなく凸凹コンビといった所)。
 底抜けの楽天家で部隊のムードメーカー。一見、軽薄なだけのような男に見えるが洞察力は深く時折、的確な意見を出し皆を助ける。
「まぁ、どうにかなるさ、寝れば明日になるからな」が口癖。長身、長髪を後ろで纏めたおよそ軍人には相応しくない風貌の優男。
スパニッシュ系。「バズ兄さん」という愛称で他の学徒兵と同様、ドロシーにも兄貴分として慕われている。
製パン班班長のアンにちょっかいをかけては軽くあしらわれる光景は部隊の日常茶飯事でもある。

(死ぬ。)
56次、愛されるキャラ:04/08/15 00:50 ID:???
レイチェル・カルディナーレ
第2271MsB機動輜重部隊製パン班班員 二等兵 17歳 女性

ドロシーと同年代の徴用兵。強烈な反戦主義者でベーカリー隊の中でも特に浮いた存在。
自分が軍属である事自体が納得できず、日頃から不満ばかり言っている。仕事もさぼりがちでアンの頭痛のタネ。
両親がモビルスーツの開発に関わった軍属で、それに対する反発心で反戦主義に走っている。
ドロシーと違い徴用兵な為、思想面での教育が行き渡ってないのも原因ともいえる。
性格はわがままで自己中心的、一つの事に熱中すると周りが見えなくなるタイプ、であるが反発している筈の
両親との写真を大事にしていたり、ホームシックにかかり一人涙する難しい年頃の少女の一面も。
悪態をつきながらも仕事に不馴れなドロシーを見捨てたりしない等、本質的に悪い子ではない。
容姿は、背はやや低めで、髪は長く金髪でおさげを結っている。イタリア系。

(死ぬ。派手に)
57次、無茶なオッサン:04/08/15 00:53 ID:???
ヨハン・クリューガー
第22独立MS中隊隊長兼第一小隊隊長 少佐 44歳 男性

宇宙攻撃軍に所属する将校。ルウム戦役において名を馳せたトップエースの一人でその活躍から
「銃剣(ベイオネット)」の異名でジオン、連邦両軍から広く畏怖、賞賛される。
宇宙攻撃軍司令ドズル・ザビ中将の信任も厚く、陸上小型戦艦ギャロップを与えられ軍団直属の
第22独立MS中隊(通称ヨハン中隊)を任せられている(宇宙攻撃軍所属のヨハン中隊が地球攻撃軍管轄の
ヨーロッパ地区に派遣されたのは政治的な意味合いも強い)。
MSの操縦のみならず部隊運用にも長けた戦術家であり有機的な小隊同士の連携を得意とする。
彼の部隊の損耗率は著しく低く、その戦闘力から常に前線の火消しとして激戦区に投入される事になる。
トップエースの特権として搭乗MSは常にオレンジ色に染められている。コードネームは「ライオン1」
余談であるがヨハン指揮下の第22独立MS中隊は非常に勇敢な戦いぶりから友軍から「ヨハンの銃剣」、
「ヨハンの突撃剣」と呼ばれ評価されている。
長身と冷徹な眼差しが特徴的なヨハンはジオン軍人の軍人観と合致したのかその有能さと合わせて
ジオン地上軍のいわばカリスマ的な存在で前線の将兵から絶大な人気と信頼を得ている。
職業軍人らしく現実主義者な彼であるが娘の好きな「オズの魔法使い」から部隊のコード・ネームを
採用するなど繊細な一面等も持つ。

搭乗MS
MS-06S
MS-14H

(OTRにおいて、『ザク』の復権もまた、ひとつのテーマである)
58:04/08/15 00:55 ID:???
カール・イスタス
第22独立MS中隊第一小隊隊員 少尉 28歳 男性

ヨハン中隊でも屈指の撃墜数を誇るエースで、部隊運用面でもヨハンをサポートする優秀な古参兵。
MSパイロットとしての技量は卓越したものを持っているが、粗野で自己中心的な性格で非戦闘員との間に
トラブルが多く中隊のまとめ役のロジャーの頭痛の種。MSパイロットを特別視しており民間人や非戦闘員を軽んじている節がある。
中隊の生え抜きでヨハンを信奉し、自身こそがヨハンの片腕と自認している彼であったがタシケント防衛戦後
にヨハンに引き抜かれ中隊の副官に就任したロジャーを嫉妬混じりに内心軽んじている。
コードネームは「ライオン2」、小隊内では切り込み役を担当。
非番の日は酒と漁色に多忙を極めているらしく中隊のメインベースであるタシケント基地周辺の酒場で
部下のデビット等を引き連れて出没し、ちょっとした上客になっている。
190cmを超える偉丈夫で軽薄そうな目つきとニヤニヤ笑いが特徴的な東欧系。

搭乗MS
MS-06J型(両肩スパイクアーマー仕様)

(死ぬ。というか、大抵死ぬ)
59言わば助さんと格さん:04/08/15 00:59 ID:???
ディビット・スタイン
第22独立MS中隊第一小隊隊員 曹長 31歳 男性

中隊内では最もベテランの古参兵。
寡黙だが、実は問題児のカールと非戦闘員の間をさり気なく取りなす気遣いの人物。
搭乗するMS-06J型は両肩ともシールド仕様に改装されている。彼のこだわりらしいが理由は謎。
コードネームは「ライオン3」、突出しがちなカール機の僚機として側面援護を担当する。
中隊内ではカールに次ぐ屈強な肉体の持ち主で細い目が特徴的なネイティヴアメリカン系。

搭乗MS
MS-06J型(両肩シールド仕様)
60優男:04/08/15 01:01 ID:???
ルイス・ブリューニング
第22独立MS中隊第三小隊隊員 軍曹 23歳 男性

現隊長ロジャーが赴任するまで戦死した前隊長から小隊を引き継ぎ暫定的に第三小隊の指揮を任されていた。
実はMS教導隊ではロジャーと同窓で親友同士の間柄。MS教導隊で非常に優秀な成績を修めエース部隊、
第22独立MS中隊に配属されることになる。コードネームは「ティンドル2」、支援砲火を担当。
性格的にリーダーシップを取る事を苦痛とし、ロジャー赴任後はサポートに専念することになる。
端正なマスクと長身、真面目で社交的な性格も相まってベーカリー隊内でも彼のファンは多く、
部隊の問題児と目されているレイチェル・カルディナーレ二等兵ですら彼の前では職務に精励するとの噂である。
ドイツ系の青年。

搭乗MS
MS-06K型

(やっぱり死ぬ)
61主役。:04/08/15 01:05 ID:???
グレイス・ディートリッヒ
第22独立MS中隊第三小隊隊員 少尉 17才 女性

女性の社会進出が盛んなジオンでも珍しい10代の女性パイロット。連邦系月面都市出身。
父親は不在がちだったが貧しくも暖かい家庭で育つ(追補 彼女の父親は若年であるが遺伝子工学の権威で
主に降り注ぐ宇宙放射線から宇宙移民者を守る為の遺伝療法を研究テーマにしていた。
UC0068に人道上相応しくない研究を行っているという疑いで学会から除名処分を受けている)
しかしUC0069頃起こったコントリズム(サイド国家主義)運動と保守派の衝突を端に発する暴動は瞬く間に
都市全体を覆い彼女の小さな幸せな家庭を奪う(両親の生死は不明) 。廃墟と化した都市の片隅で衰弱し
誰にも顧みられず一人、死を迎えようとしていた彼女はPKOで月面都市に派遣されていたジオン公国軍に拾われる。
ジオン公国軍に拾われた彼女は、そのまま軍関係の特殊施設に入り軍人への道を歩む。
死に物狂いの努力で極めて優秀な成績を残し飛び級で就学過程を終える。その後、高い反射神経からNTとみなされ、
実験機関に被検体として徴用され手術や投薬など人体実験じみた方法で異常なまでの反射神経と瞬間判断能力を得る。
更なるデータ収拾の為、ルウム戦役、グラナダ攻略作戦、ブリテッシュ作戦を経て地球降下作戦に参加。
新型MSテストチームに配属され中央アジアでMS-09の慣熟テストを担当していた。
第22独立MS中隊に配属された後のコードネームは「ティンドル3」、担当は特に無くどんな仕事もそつなくこなすが、
彼女自身は白兵戦を特に好み、その勇猛な戦いぶりと機体エンブレムから「漆黒の戦乙女」の異名で友軍、敵軍双方から畏怖されることになる。
サーベルのような体躯と艶やかな長い黒髪、切長な瞳が特徴的。人種的には中国系とドイツ系の混血と思われる。
性格は強気かつクールな完璧主義者。一見自信家風だが、それは対人関係に自信が無い事の裏返しであり
他人に必要とされる事を強く求めている。と同時に幼少時の原体験から極度の人間不信であり彼女の心の奥底には
自分を含めた世界全ての破滅願望が存在している。
無口で感情をどこかに置き忘れたかにも思える彼女であるがロジャーが自分に好意を持っている事に気付き、
それを契機に徐々に周囲に心を開いていく。

搭乗MS
MS-09

(ドムライダー。派手に死ぬ。血まみれになって、泥に塗れて死ぬ)
62スパイ担当:04/08/15 01:08 ID:???
ジャック・トリーニョ
第22独立MS中隊第一小隊隊員 曹長 28歳 男姓

元オデッサベース所属の特務工作員であったが、マ・クベ司令による水爆発射命令を拒否し
部下と共にコントロールルームを占拠、憲兵隊の攻撃の前に全滅した経歴を持つ。
生き延びた彼は懲罰大隊に左遷され、以後は吸着地雷と体一つで61式戦車と渡り合う日々が続いた。
後に工作員時代の戦績を買われ、撤退中のヨハン中隊に引き抜かれる。
ヨハンは自分直属の第一小隊に配備、新鋭機MS−07B3グフカスタムを与え切り込み役をさせる 。
特殊工作員時代のコードネームは「イージス1」、第22独立MS中隊移籍後もこのコードネームを引き続き使用することになる。
日頃は明るくて調子のいい軽薄な印象を受ける性格。「死んだら何にもならねー」「生きてるからこそ女も抱ける、旨いパンも食える」
等が口癖なのだがオデッサの一件がトラウマになっており『戦友を守る』事に異様な執念を燃やす。
元々面倒見が良いがトラウマも手伝って仲間に対する思いやりは非常に深い。
彼にとってオデッサの件は忌まわしい過去だが、同時に乗り越えていかなくてはいけない事でもある。
生き残った自分が出来る事として一人でも多くの戦友を守ろうとする。容姿は中肉中背。頬にオデッサ戦の際に負ったナイフ傷がある。
アジア系。

搭乗MS
MS-07B3型
63次、小娘。:04/08/15 01:15 ID:???
リンダ
第2271MsB機動輜重小隊製パン班班員 二等兵 17歳 女性
レイチェルと同時期に配属された徴用兵で、ドロシーのルームメイト。
寝る前に両親に手紙を書くことが日課。

(派手に死ぬ。GMに踏み潰される)
ジム
MS整備部隊隊長 48歳 少尉 男性
酒とタバコと不真面目な奴が大嫌いな、職人気質の技術屋。
自分の技術で、戦争という極限の危険の中で少しでも安全を提供する為に、軍属に志願した。

ステファン
軍医 42歳 中尉待遇 男性
助かる見込みのない(生きる意志の無い)患者は容赦なく見捨てていく。
1人見捨てても2人助ければ良いという考えの持ち主。腕は確か。

パウルマン
ジークフリート計画責任者 41歳 技術少佐 男性
無敵の兵士を作るプロジェクト「ジークフリート計画」の責任者。
グレイスの強化に関わっている。
65次、連邦軍『狗部隊』:04/08/15 01:22 ID:???
マイケル
地球連邦軍猟犬部隊第1小隊隊長 少尉 23歳 男性
元航空兵の若きエース、ヒューゴーの片腕として、レッドフォックス小隊(RF小隊)を率いる。
戦争で戦友、ブリティッシュ作戦で家族友人そして身重の妻を失い、天涯孤独の身になる。
その為、ジオンに対して病的な憎しみを持つ。ある意味第三の主人公。
搭乗MS
RGM−79GH 『ガンダム頭』

キム
猟犬部隊第一小隊隊員 軍曹 25歳 男性
地球生まれには珍しく、親スペースノイド的な考えの持ち主。
豪快なブロディ、切れがちなマイケルをサポートする、小隊の押さえ役である。
搭乗MS
RGM−79(初期)

ブロディ
猟犬部隊第一小隊隊員 伍長 23歳 男性
元航空兵、マイケルの同期で、彼の親友では最後の生き残り。
喧嘩っ早く「生傷ブロディ」の異名を持つなど、騒がしくトラブルの絶えない豪快な男。
なぜか鎖をアクセサリーとして愛用している。彼なりのゲン担ぎらしい。
搭乗MS
RGM−79 長距離支援装備

ヒューゴー
地球連邦軍猟犬部隊『犬』指令 中佐 42歳 男性
連邦の追撃部隊「猟犬部隊」の指揮官、大胆な戦術眼と着実な部隊運用能力で
べーカリー隊を追い詰める。ホバートラックにて指揮を担当。

スネイル
地球連邦軍猟犬部隊第二小隊隊長 中尉 27歳 男性
第二小隊グリーンラクーン小隊(GR少隊)を指揮する、猟犬部隊の副官。

ファウン
地球連邦軍猟犬部隊第二小隊隊員 曹長 26歳 女性
支援砲撃の命中サポートを行う、観測者のエキスパート。元砲兵観測員。
搭乗MS
陸専用GM

スタッド
地球連邦軍猟犬部隊第二小隊隊員 伍長 24歳 男性
元砲兵、MS支援砲撃のテストケースとしてパイロットに採用された。
砲撃技術は極めて優秀で、ファウンの指示した場所に的確な支援砲撃を行う事が出来る。
搭乗MS
ガンタンク量産型
66通常の名無しさんの3倍:04/08/15 01:28 ID:???
主の登場人物は以上。あと、これ

主人公、地球に赴任
   ↓
パン焼隊の面々とほのぼのお仕事生活
   ↓
MS隊とも交流したり
   ↓
パイロットと一悶着あったり
   ↓
そんなパン焼マターリ生活もオデッサの敗戦で強制終了!
   ↓
急に戦場に放り込まれオロオロする主人公
   ↓
マターリ編で学んだ事を支えに立ち直り
    ↓
パンを配達したり、夜食を届けたりと健気に働く
    ↓
だが無常にも、次々と戦死していく仲間
    ↓
傷つき、消耗していくパン焼き部隊
    ↓
そんな満身創痍の味方を、精一杯の笑顔と美味しいパンで支える主人公
    ↓
ガイシュツのMS隊と一緒に撤退開始
    ↓
追跡する連邦軍MS隊
    ↓
味方MS隊がやり手なので一蹴
    ↓
そのせいで追撃が執拗に
    ↓
多大な犠牲を払いながらも、宇宙港へ到着
    ↓
脱出しようにも、残されたシャトルは一つだけ!
    ↓
MS隊は地上でシャトルを死守
    ↓
そして…!
    ↓
 ∧||∧  クライマックス、まだ決まってないんです・・・
(  ⌒ ヽ
 ∪  ノ
  ∪∪
    ↓
戦いの中、ついにシャトル打ち上げ!
    ↓
巻き上げられる水蒸気に移りこむ虹
    ↓
雲を貫き、空を越えてゆくシャトルと虹
    ↓
『OVER THE RAINBOW』
67次、オーガ:04/08/15 01:32 ID:???
オーガ
傭兵 34才 男性
全ての格闘者から尊敬と畏怖を込めて「オーガ」と呼ばれる地上最強の生物。
戦闘において全ての武器を拒絶し、己の肉体のみで戦い続ける最強の兵士。
自らが地上最強であると言う信仰の強さならば、歴史上に名を残す宗教家・思想家に比肩する。
68通常の名無しさんの3倍:04/08/15 01:56 ID:???
阿部 隆和
自動車修理工 ??才 男性
全てのホモから尊敬と畏怖を込めて「いい男」と呼ばれるホモの神。
ホモセックスにおいて全ての能力に恵まれ、二十四時間寝れば一週間もつ。
自らが最強のキンタマであると言う信仰の強さならば、歴史上に名を残すいい男に比肩する。
69通常の名無しさんの3倍:04/08/15 04:04 ID:ZDEtLRc4
ラークが夏コミで販売すると宣言してからはや二年・・・
70通常の名無しさんの3倍:04/08/15 04:07 ID:???
いい話じゃないですか
ラストで主人公は生かさないですよね?
その方が喪失感があっていいですよ
富野っぽくて
71通常の名無しさんの3倍:04/08/15 05:44 ID:???
どうせ主人公はクライマックスで突然MSに乗り込んで
バンバン敵をやっつけちゃうんだろ?
実は訓練受けてましたっていうご都合主義って感じのw
72通常の名無しさんの3倍:04/08/15 06:14 ID:???
ここを参考にしてみてはどうか。
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/x3/1091867234/
73通常の名無しさんの3倍:04/08/15 09:32 ID:???
http://www9.wind.ne.jp/yasyas/cgi-bin/toukou/board.cgi?mode=views&editno=135&esub=0#0

前の参加者の一人が独自に完成させていた模様。
よってこのスレ終了。
74元ラーク:04/08/15 15:58 ID:???
>>70
主人公をラストで殺すというのは
最初からの決定事項なんでご安心を(w
>>71
それはアリですね。
>>72
ワラタ
>>73
俺は認めん!断じて認めんぞ〜!(w
75通常の名無しさんの3倍:04/08/15 17:28 ID:Ll8G3JK4
主人公が連邦の兵士に輪姦される事にしようぜ?
76伏ぅ:04/08/15 19:32 ID:???
主人公死亡と言い輪姦と言い
既出意見ばっかりです。

召喚魔法でGガンダムが裏庭に隠してあるくらい
言ってくださいよ。
77通常の名無しさんの3倍:04/08/15 19:50 ID:???
>>76
よし、それでいこう。
まず既存のOTRを壊す事から始めよう。
花火うるせー。
78通常の名無しさんの3倍:04/08/15 20:37 ID:???
また負けてるぞラーク!
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/x3/1091867234/l50
79通常の名無しさんの3倍:04/08/15 20:57 ID:???
さくマフに主人公が強姦される、それで終りでいいよ。
80元ラーク:04/08/15 23:54 ID:???
その前にさくマフを出さなければならない。
設定は?
81ハンバイン:04/08/16 05:00 ID:???
ええと、爽やかハンサムボーイで主人公の恋人
82ハンバイン ◆0l69NWMyN. :04/08/16 07:43 ID:C3bbe0ko
偽者キラー|・∀・)y−o O O<トリップ付けますた。>>81は別人でつ
83通常の名無しさんの3倍:04/08/17 01:41 ID:???
とりあえず俺ガンは下記で

オリキャラネタ
http://etc3.2ch.net/charaneta2/
84伏ぅ:04/08/17 19:05 ID:???
>>83にスレ立てたら「ガンダムはシャア板で」
って言われそうですね。
85通常の名無しさんの3倍:04/08/19 00:44 ID:???
>>84
元々要請があって出来た板ではなく気まぐれで出来た板だから
人が少ないので、特に何も言われてなさそうだよ

オリジナルガンダムキャラ&メカを考えるスレ
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1092639076/l50
86伏ぅ:04/08/24 00:19 ID:???
保守ついで。
バロール隊とかいうのもあったように思うが、
ロクに見てなかったからわからん。
87通常の名無しさんの3倍:04/08/25 12:31 ID:TZaBVgqJ
パン焼き部隊やめて飯炊き部隊にしようぜ。
88通常の名無しさんの3倍:04/08/28 11:28 ID:???
飯炊き部隊か、主戦場も稲穂の国に変えないとな。
89伏ぅ:04/08/28 23:03 ID:???
アジア?それはそれで悪くないのかも。
重慶とかが舞台になったぐらいにして。
たまたま例のアレで印象が強いだけですが。
重慶で量産された改良型GM<ドラグーン>とか。


やっぱヤメ。
90通常の名無しさんの3倍:04/08/29 00:24 ID:???
アジアモノって受け悪いぞ(w
関係ないけど種のシホ・ハーネンフーフ? ってOTRのグレイスと
なんか雰囲気にてるな。
91伏ぅ:04/08/30 23:11 ID:???
やっぱアジア駄目かぁ
東欧フラついてた方が良いのかなぁ
92通常の名無しさんの3倍:04/08/31 01:51 ID:???
「毎日毎日俺らはパンを焼き
 アンタらは人を焼く。
 そこにどれほどの違いがある?」

不貞腐れたようにルイスが反論する。

「俺達だって、好きで人を焼いているワケじゃないさ。
 それに、決定的な違いがある。
 アンタだってわかっているだろう?」

ルイスはヒョイをアゴを動かし、
視線を向こうにやってみろ、と無言で促した。

「成る程な。確かにこれじゃあ、俺達の圧勝だ。
 確かに俺達にゃあ、あのお嬢ちゃんがいるんだものなぁ」

二人の目線の先には、髪をバンダナで纏め上げた、
エプロン姿でパンを運ぶ少女の姿があった。
言うまでもなく、ドロシーだ。

「そう簡単にゃ、ドロテアは渡さねぇぞ。
 なんせアイツぁ、ウチの『娘』だからなぁ
 惚れても無駄だぜ?」

ニヤリとして、親父が言った。

「射止めてみせますよ。
 俺だって自称『魔弾の射手』ですから」

ルイスは、いくぶんか真剣な表情になり、そう言った。
93通常の名無しさんの3倍:04/09/01 19:42 ID:???
乙カレー
94通常の名無しさんの3倍:04/09/02 02:25 ID:???
宇宙に天候が無いなんて思っている人がいるのは何故なんだろう。
私の感覚では、やっぱりここは海なんだ。
コロニーとコロニーを結ぶ広大な海。
本物の海は知らないけれど、きっと同じなんだと思う。
今日みたいに、穏やかで、凪いだ日もあるのかな?
そんな事を考えて、ボゥっと窓の外を眺めていた。
バシュン!という音が足元で鳴って、体にほんの少しGがかかる。
「まもなく降下いたします。シートベルトをご確認ください」
アナウンスが入り、周りでカチャカチャとベルトの金具の音が鳴る。
「ドロシー、シートベルトだって」
私の隣の席に座っていた、黒髪の女の人が声をかけてくる。
この人とは、ほんのちょっとだけ挨拶の会話をして、
それからちょっとだけ仲良くなった。
アン・キリシマさん。私と同じコロニーの出身。
言われて私も慌てて金具を締めなおす。
ふと横を見ると、窓のシールドが上がり始めた。降下がはじまるのだ。
完全に閉じるその一瞬前、窓の外に、青い地球が見えた。
今日のこの瞬間を忘れないでおこう。
私、ドロテア・マルレーンの、記念すべき日なのだから。
95通常の名無しさんの3倍:04/09/02 02:26 ID:???
足元でゴウゴウと轟音が鳴る。急に心細くなってくる。
不意に学校の事や、両親の事を思い出す。
私の通っていた学校は、数多くあるジオンの国民学校の一つ。
授業料が安いから。それと、家から近かったから。
そんな理由で選んだ学校。
毎日同じ繰り返しなのがつまらないワケじゃなかったけど、
やっぱりどこかツマラナイ。だから、私は今回のNGOに参加した。
裏に軍がからむ政治的パフォーマンスだとか、学徒動員の先行部隊だとか、
ある事無い事色々言われてるみたいだけれど、
私の本当に些細な夢、「本物の虹を見てみたい。本当の地球を見てみたい」
それを叶える大チャンスなんだから・・・
「虹・・・かぁ」
思わず呟いていた。
96通常の名無しさんの3倍:04/09/02 02:26 ID:???
それから何時間経ったのか、それとも数十分の出来事だったのか、
気付いた時には轟音は鳴り止んで、窓のシールドも収納されていた。
目の前に広がるのは・・・白い海だった。
隣の席のアンが身を乗り出して来て、歓声をあげた。
「凄い!こんなにいっぱいの雲だなんて、写真でしか見た事ないよ!」
私も。写真でしか見た事が無い。
ここは、何てステキな場所なんだろう。
「地球って・・・やっぱり凄いですよね。ステキですよね」
「そうだね!ほら、あっちにヘンな形の雲!ほら!」
「ホントだ!アハハ!」
そんな私達の会話を聞きつけたのか、後ろから溜め息が聞こえた。
「ハァ、バッカみたい。雲ぐらいコロニーにだってあるじゃない。
 わざわざ地球に降りてまでして、珍しがるモンじゃないわよ」
やっぱり私と同じコロニーの出身、レイチェルだった。
97通常の名無しさんの3倍:04/09/02 02:27 ID:???
「でもほら、地球には雷とか、虹もあるじゃない!
 雲だってコロニーのとはちょっと違うわよ」
アンがちょっとだけムッとした表情で、レイチェルに話しかける。
私はというと、オロオロして何も言えないでいた。
「ハァァ?雷も虹も、ぜーんぶコロニーで再現してるじゃない?
 地球が特別だなんて思う方が間違いなのよ」
「何ですって!?」
そこからしばらくは、アンとレイチェルの口論が続いた。
私は一つだけ疑問があった。
何故レイチェルは、これに参加しているんだろう。
「あの・・・何故レイチェルはこれに参加しているの?」
レイチェルは、待ってましたとばかりに話し始めた。
「そもそも私の両親がおかしいのよね。
 普通にお爺様の仕事を継げば良かったものを、
 何を勘違いしたのか、モビルスーツの開発なんか始めちゃって。
 それだけなら夫婦仲良く勝手にやってりゃ良かったのよ。
 軍属でも何でも勝手になって、モビルスーツ作ってりゃいいのよ。
 なのにお爺様の工場まで使ってモビルスーツの研究を始めて!
 あげくにお爺様まで感化されちゃって!
 私に向かって『国の為に手助けしてこい』なんて言うのよ!?
 実際の所、中小企業の社長の孫娘が参加するのを
 宣伝に使いたいだけなんだわ!裏取引でもあるのかしら!?」
レイチェルは一気にまくしたてた。
98通常の名無しさんの3倍:04/09/02 02:28 ID:???
レイチェルの愚痴にいい加減ウンザリした頃に、再びアナウンスが入る。
「まもなく当機は着陸態勢に入ります・・・」
いよいよ地球に着くんだ。
地球で過ごす数ヶ月間、どんな事があるだろう。
頑張ろう。一生懸命頑張ろう。
機体が大きくバンクする。
窓の外を見て、思わず息を呑む。
「あ!」
その声を聞いて、アンも窓の外を見たようだ。
「凄い!」
そこには、大きな大きな虹の橋がかかっていた。
「虹だぁ・・・」
あの大きな虹を超えて、私の地球での暮らしが始まる。
新しい生活が始まるんだ。
そう思うと、嬉しさが胸いっぱいにこみ上げて来た。
99オマケ:04/09/02 02:56 ID:???
北京陥落によって著しくパワーバランスの変容した
アジア内陸戦線、とりわけ旧中華人民共和国戦線は、
連邦軍の反攻作戦の主要な舞台では無くなりつつあった。
とりわけ兵站の要衝となった重慶市は、その役目を終えつつある。
そんな中、一部の兵器工廠だけが、未だに稼動し続けていた。

「今更、新兵器など作った所でどうなる。
 これからは全てモビルスーツの時代になるというのに。
 お前だってジャブローで見ただろう。
 あの救い様の無い機械人形の群れを。
 あの人形こそが次世代の兵器体系を担うものだ。
 だから、いい加減に諦めろよ。
 連邦の上層部だって、あれの完成にこだわりはしないさ」
細目の男が、やや小太りの男に話し続けている。
既に生産ラインは稼動していない。
地球連邦軍の尋常ではない兵器生産力を支えた工廠も、
兵器体系の変革には追従できなかった。
「確かに航空機の時代は、もう少しは続くだろうさ。
 だがな、あれは航空機ですら無い。
 鈍重なだけの、役立たずなんだよ。
 悲しいけれど、それが現実なんだよ」
100オマケ・2:04/09/02 02:56 ID:???
小太り男はその言葉を聞いて、本当に悲しそうな目をした後で、
何も話す事なく工廠の奥に歩き始めた。
「なあ、聞けよ。確かにあれの開発中止命令は出た。
 だけどな、お前の才能が否定されたワケじゃないんだ。
 ジャブローではお前の才能を求めているんだ。
 あれは完成しなかったけれど、その基礎理念が・・・」
小太りの男はクルリと振り向き、言った。
「最後の悪あがきだ。つきあえ。
 確かに、確かにあれの開発中止命令は出た。
 だけどな。俺達は完成させたんだ。
 他でもない。俺達自身の為に」
細目の男は驚愕し、叫んだ。
「完成・・・D型ファン・ファンが、完成しているだと?」
101オマケ・終わり:04/09/02 02:59 ID:???
工廠の奥にある兵器開発室。
そこにあったのは、見慣れたターボファンのこじんまりとした機体ではなく、
超大型の戦闘爆撃機と表現するのが正しいであろう精悍な機体であった。
それを喩えるのならば、猛禽類。それ程までに攻撃的なフォルムを有していた。
「これが、あのD型ファン・ファンなのか?」
「いいや違う。
 お前も言っていただろう。まさに基礎理念だ。
 コアブロック思想だよ。コア・ファイターを知っているか?
 あれのお陰で、こいつはメガ粒子砲をドライブできる。
 接続の母体となったホバークラフト部分も、
 生き残りをかけて、重慶で徹底改良を施した。
 時間や予算、もろもろの事情で10機も生産できなかったがね。
 こいつに比べれば、フライマンタもエスカルゴもクズ同然だ。
 名前は・・・そうだな。『海煌』とでも呼ぼうか。
 これからの戦場は、上と海に移行するだろう。
 上は人形どもにくれてやる。だがな、この戦場は譲らない。
 こいつをファン・ファンDなどと呼ばせるものか。
 連邦上層部の言う『ハイ・ファンファン』など論外だ」
「海煌・・・ハイ・ファンか」
「そう。そうだ。この機体が太平洋を席捲する時、海だけは我らの手に残る筈だ。
 俺達の戦場を、あのくだらない人形の遊び場にはするべきじゃあない!」
 この『海煌』で、ジオンの人形どもを皆殺しにしてしまうのさ」
小太りの男は、ほんの少しだけ嫌そうな表情をしながら、そう言った。
つまり、この男も本当はこの兵器の末路を理解しているのだ。
歴史に埋もれるという事を・・・
102通常の名無しさんの3倍:04/09/02 21:49 ID:???
職人さんGJ!
103通常の名無しさんの3倍:04/09/03 23:55 ID:???
がんばってるなぁ。なんかファンファンが格好良く
思えてきた(w
ところで今このスレにはどれくらいOTR復活をマジメ(w
に考えてる人がいるんだろうな?
104通常の名無しさんの3倍:04/09/04 12:14 ID:???
『ドロシーの日記帳』

0079、8月9日、天候は、晴れ。
 そう、晴れ! 晴れなの!!
 日記に晴れなんて書くのは初めて!
 「コロニーの天候は、人が決めている」
 子供の頃にそう知って、天気の欄には何も書きたくなかった。
 だけど、地球の天候は地球が決めてる!
 なんてなんてすばらしいことなのかしら!
 きっとこれから毎日、日記に晴れと書いたり……
 曇りと書いたり……
 雨と書いたりできるのね。
 そしてそして、きっといつの日か虹と書いたりするに違いない!
 ああ、想像しただけで夢のよう!
 今日は本当に色々な事があった。
 日記を書くと、その日の出来事がフワフワと頭の中に浮かぶ。
 ・
 ・
 ・
105通常の名無しさんの3倍:04/09/04 12:14 ID:???
マハルのサスロ航宙港から出発したシャトルは、
1週間かけて昨日とうとうバイコヌール宇宙基地へと到着した。
ここからさらに数日かけて、私達は活動場所のタシケントへ向かう。
バイコヌールではタシケントに向かうバスを待ちながら、
私達は基地に隣接した公園で昼食をとる事になっている。
 「ついたー!」
私はバイコヌール宇宙基地に降り立つなり、
くるくるとステップを踏みターンをしてみせた。
アン姉さんには笑われて、レイチェルにはバカにされたけど、
嬉しくなって自然に体が動いたんだから、仕方ないよね。
なんだか、体がちょっと重い。
たぶん、スペースコロニーと地球では重力に若干の差があるんだろう。
同じ1Gのハズなのに、何だか不思議。
頭ではそう理解できるけど、ちょっと太ったみたいで嫌だった。
バイコヌール宇宙移民団記念公園で昼食をとりながら、色々考える。
タシケントに着いたら、ちょっとダイエットに挑戦してみようかな?
でも、ダイエットはこのお弁当を全部食べてからにしようかな。
私はそんなことを思いながらまた空を見上げる。
106通常の名無しさんの3倍:04/09/04 12:16 ID:???
空は抜けるように青く、雲一つ無い。
雲一つ無いというのがちょっと残念だった。
でも、その青い空は引き込まれるようにきれいだ。
その青い空を白い何かが長く引っ張られていく。
 ……ひこーきぐも……。
これが飛行機雲かあ。
私はぽかんとその長く引かれていくその雲の源を求めて、
のびをするように見上げていった。
あまりに見上げすぎて、そのままころりと転んでしまう。
芝生のツンツンとした刺激が気持ち良い。
私はそのまま大の字で寝転がったまま、飛行機雲をあきることなく見つめていた。
 「ドロシー、ちょっとだらしないよ〜
  基地の人だって見てるんだから、起き上がりなさいよ」
アン姉さんの声が聞こえる。
 「田舎娘丸出し。恥ずかしすぎ。
  つーか、このから揚げ食べないんなら、アタシが貰うわよ
  何?アンタまさかダイエットでもすんの?」
レイチェルの声も聞こえてくる。あ、ホントにから揚げ食べられちゃった?
どれくらいそうしていただろう。
107通常の名無しさんの3倍:04/09/04 12:22 ID:???
 「……だいじょうぶ?」
誰かがのぞき込んできた。
男の人だ。知らない人。誰だろう。
 「!?…あ……大丈夫……です」
私は我に返った。
恥ずかしさからか、顔が熱い。
たぶん、今鏡を見たら、顔は真っ赤なことだろう。
 「なんか転んだまま動かないから、打ち所でも悪かったのかと思ったよ」
そう言って私をのぞき込んできた誰かさんは手を差し出してきた。
 「どうぞ」
その顔は影になってよく分からないが、優しく微笑んでいるように感じられた。
私がその手を握り返すと、その手は力強く私を引き起こした。
 「―曹長!」
向こうで眼鏡の軍人さんが呼んでいる。
優しそう、というか、ちょっとマジメっぽすぎるかな。
遠目だからよくわからないけれど。
良く見ると、この人も軍の制服を着ていた。
我ながら慌てすぎ。何も見てなかった。パイロットかな。
 「じゃ、僕は新型のザクの納品の手続きがあるから」
そう言ってその男の人は走り去っていった。
金色の髪が太陽の下で輝く。
合流した二人は、とても仲の良さそうな雰囲気だった。
そんな光景を見送りながら私は思った。
 「何だかあの二人、兄弟みたいだなあ」
と……。
108通常の名無しさんの3倍:04/09/04 14:21 ID:???
食事が終わった後、私達は基地のミーティングルームに集まっていた。
NGOとは言っても、地球は戦時下の最前線。
公国は私達の安全保障に、活動区域の限定や、護衛部隊の配置を行なった。
『広げすぎた戦線を維持するために、民間人を投入しただけ』
なんて言う人も中にはいるけれど、私は人の為に役に立ちたいし、
何より自分の為でもある。
タシケントには公国の後方支援部隊というのがあるらしい。
らしい、というのは、私がよく理解してないから。
大きなトラックみたいなものに、工場みたいなものをつないで
色んな部隊にパンを焼いて配ったり、ご飯を作ったりしている「らしい」
私の理解力じゃ、こんな感じにしかまとまらない。
そのパン焼き部隊が、私達のお手伝いする部隊になる。
部隊で私達の面倒を見てくれる人が、今、ミーティングルームに来ている。
何だかひどく緊張する。
109通常の名無しさんの3倍:04/09/04 14:22 ID:???
「はじめまして。顔と名前を一致させたいから、ちょっと確認するわよ。
 まずは…ドロテーア・マルレーン…ドロシー。うん、ドロシーね。ふぅん。ドロシーねぇ」
最初に私!?
目前の大柄な浅黒い肌をした女性は、書類に顔を埋める様にしながら、私の名前を繰り返した。
「は、はい。よろしくお願いします…えーと、ミセス…」
書類に不備でもあったのであろうか?字が汚いだけ?
不安に駆られながらも、上官になる女性の名前を呼ぼうとして、
彼女の自己紹介がまだだったことに気がついた。
「ああ、私の名前ね。すぐ自分の名前を教えるのを忘れちゃう。いやだわ、歳かしら。
 ディーダ・ラ・ボッチ。と、いっても部隊では皆マムと呼ぶけどね。
 あなた達も嫌でなければマムと呼んで。
 それと、『ボッチ少尉殿』なんて呼んでもアタシャ返事しないからね。わかった?」
「ハイ、よろしくお願いします、マム」
ぺこりと頭を下げた私に苦笑しながら 、
「ドロシー、部隊じゃ挨拶はこうやるもんだよ」
と、ニコリと笑って敬礼をして見せた。
私は、はっと気がついて、敬礼を返す。
「でもまあ、アタシ達は軍人だから敬礼してるけど、
 あなた達は民間人で軍人じゃないし、わざわざ敬礼する事も無いのかねぇ
 その辺は好きにしなさいな。そのうち隊長がしっかり決めると思うから」
ディーダ…マムは、敬礼した自分の手をヒラヒラさせて、おどけながらそう言った。
110通常の名無しさんの3倍:04/09/04 14:26 ID:???
その時になって、私は急に何故自分の名前が連呼されていたのか
再び気になりだした。
「あの…私の名前…何かおかしい所でも…?」
「いや、至って普通だよ。とても良い名前さね」
柔らかい笑みを満面に浮かべてマムは言った。
「さて、次は…えぇと?アン・キリシマ。アン…うん。アンね」
「はい、マム」
「あら、アンタもマハルなのかい。
 次は…レイチェル・カルディナーレ、レイチェルね」
単にそういうクセなのかもしれない。
マムは全員の名前を確認した後で、こう言った。
「もう大丈夫。これで全員の顔と名前を一致させたわ。
 さ、皆。そろそろ出発だよ。荷物はそれで全部かい?
 じゃぁ、部隊の皆に挨拶しようか。付いておいで」
かばんを抱え上げる私達を背に、マムは玄関ホールに向かった。
「ミーティングルームに集めて何をするかと思えば、自己紹介だけ!?
 アホらし。もうちょい中身のあるコトしろよなー!」
レイチェルの愚痴を聞いて、緊張が少しだけ解けた。
111通常の名無しさんの3倍:04/09/04 19:57 ID:???
人が集まっているために、玄関ホールは酷く狭くるっしくなっていた。
人いきれが肌にじとつくような気すらする。
どこからか奇妙な香りがしてそちらに目を向けると、紫煙をくゆらせている男性がいた。
『喫煙ブースの外でタバコを吸っている!?』
その行為が何か合点が言った瞬間、あまりの不謹慎な行動に目を見開く。
マムの方を見ると、苦笑しながら上げた手を左右に振っていた。
気にするな、という事だろう。
私は鼻をつまみ息を止めてその横を駆け抜け、マムの後を追った。
外には、大きな大きなトレーラーが1台待機していた。
「ウッワ!大きいなぁ。これでタシケントまで行くんだねー!
 そうだ!ドロシー、一緒に記念撮影しよ!」
アン姉さんがちょっとはしゃいでいる。
「じゃあ、カメラ出しますね」
ゴソゴソと荷物の中身をかき回す。
「あった!」
数年前、家業の手伝いをした時のおこづかいで買ったカメラ。
そんなに性能は良くないけれど、思い出の品。
112通常の名無しさんの3倍:04/09/04 19:58 ID:???
でも、それを見たレイチェルは、信じられないという声でいった。
「アンタねぇ、これって思い出の写真なんでしょ?
 そんなショボいカメラで撮ったら後悔すんじゃないの?
 アタシが撮ってあげるから、さっさとアンと並んでなさい」
そう言って、レイチェルは古ぼけたカメラを取り出した。
「何よ。その『そっちの方がショボいんじゃないの』って眼は。
 おあいにく様。これはマトモなカメラよ。旧世紀のモノだけどね。
 ほら!さっさと並ぶ!」
私は早足でアン姉さんの所に行き、そっと耳打ちする。
『アン姉さん、なんかレイチェル、変じゃないですか?
 いっつも文句ばっかり言ってイヂワルなのに』
私のその言葉に、アン姉さんは苦笑しながら答えた。
『そんなコトないって。あの娘は、ああいう表情も持ってるの』
『えー!?なんか納得いかないです』
アン姉さんの言葉に不服だった私は、ちょっとスネた表情になっていた。
カシャ!
「あーい、ドロッスィーちゃんのマヌケ顔記念写真撮影かんりょーっと。
 100枚くらい焼き増ししとくわ」
レイチェルはニヘラっと笑いながら、もう1枚写真を撮った。
やっぱりいつものレイチェルだ。
113通常の名無しさんの3倍:04/09/04 20:01 ID:???
「何やってるんだい、ドロシー、アン、レイチェル。
これから部隊のメンバーを紹介するんだから、さっさとこっちに来な!」
マムが呼んでいる。慌てて私達3人は、マムの元へ向かった。
マムを中心にして、何人かが輪になって談笑していた。
レイチェルがニヤニヤしながら、私の背をトンと押して、話の輪の中に突き出した。
「え?え?」
私は思いがけない出来事に動転した。
「皆、この娘がドロシーだよ」
マムがその場に居た全員に私を紹介する。
「へぇ、キミの名前はドロシーちゃんか。嵐でお家が飛ばされちまったのかい?」
輪の中の一人、長身の男が顔をのぞき込むように話し掛けてきた。
この人、さっきタバコを吸っていた人!
「え、はい、ドロテーア・マルレーンです。
それ、オズの魔法使い…ですか?」
消え入るように答える私を見て、にっかり笑いながら男は言った。
「そうさ。あ、もしかして聞いてない?この部隊の名前」
私はつたない記憶を総動員しながら、答えた。
「部隊の?第227輜重部隊、通称ベーカリー部隊…じゃないんですか?」
114通常の名無しさんの3倍:04/09/04 20:04 ID:???
男はいやらしくニタニタ笑いながら言った。
「んー、もうひとつあるのさ。コードネームドロシー隊。
 つまりドロシーちゃんの部隊ってこと?
 あらぁ、お嬢様。赴任草々に部隊の女王様になっちゃうのん?」
「えー!?し、知りません、私!」
私は真っ赤になりながら、だからさっきマムはあんな可笑しそうな顔をしていたのだ、
とようやく理解できた。
自己紹介で他の人の名前も連呼していたのは、
私にだけ変な対応をしたのだと思わせないため…?
「俺はバズ、困ったことがあったらこのハンサムなお兄ちゃんに何でも言いなよ。ドロシーちゃん」
 仲の良い人ならともかく、面識の無い人にまで『ドロシーちゃん』なんて呼ばれたくない。
「は、はい。あのぉ、呼びかた、ドロテーアじゃ…ダメなんでしょうか」
「カタいコト言うなよ。ドロシーちゃんの方が可愛いじゃん?
みんなー憶えたかー?この娘の名前はドロシーちゃんだぞー」
皆に笑いが広がる。
「・・・ふぇ〜」
これはもう、言ってもムダっぽい。
115通常の名無しさんの3倍:04/09/04 20:07 ID:???
そんな私達のやり取りを見ながら、ディーダは次にアンとレイチェルに声をかけた。
「アン、レイチェル、こっちおいで」
「この子がアンね。
そうだ、アン。あんたがこの中で一番先輩なんだから、色々面倒見てやってね」
「はい、マム!」
「アンもレイチェルもマハルの出身だったね?
いろいろ合う話もあるだろうし、アンタらは同じ班にしといたよ」
やった!アン姉さんと同じ班だ!
レイチェルと一緒なのがちょっと気に入らないけれど、仕方ないかな。
「エェ!?小姑アンに田舎娘のドロッスィーと一緒〜?
 仕方ねーなー。面倒見てやるかー」
レイチェルのその言葉を聞いて、アン姉さんは苦笑していた。
部隊の皆にも笑いが広がる。
不安で緊張しっぱなしだったけど、そこでようやく一息つけた。
この部隊の雰囲気が心地よく感じる。
ここで上手くやっていけそうな、そんな予感がした。
116オマケ:04/09/04 20:31 ID:???
『オデッサの闇』

宇宙世紀0079年10月中旬。
私は、地球連邦軍北欧方面部隊の司令室に来ていた。
現在の私の任務は、いつもの情報屋まがいの事ではなく、
とある極秘任務について動いている。
とは言っても、例によって『室長』からの言いつけだ。
あの御仁は、ジャブローの暗い部屋に閉じこもってなお、
自分が世界を牛耳っていると思いこんでいるフシがあるが、
今回もその類かもしれない。
腕時計を確かめる。時刻は午後19時。
空を見上げれば、満天に星が瞬いていた。
故郷の晴れぬ曇天を見慣れた私にとって、
まるで『上』に居るかのような星空は極めて不快に感じられた。
地球で生まれ育った私には、あの底なしの暗闇は、恐怖でしかない。
あんな闇に赴かなければ獲得できないような人の革新なら、
私はそれを必要としない。ニュータイプなど、妄想の賜物だと思う。
さて、そろそろ食事を摂りたいところだ。
が、最後に一仕事残っている。
その仕事を済ませるべく、私は司令官室へと入っていった。
実に。実に、気分の乗らない仕事だ。
さっさと終わらせて、極上の食事にありつきたいものだ。
117通常の名無しさんの3倍:04/09/04 20:36 ID:???
司令官室に入るなり、目の前の無能を絵に描いたような男が喚き出した。
名は、オト・ロッシ。階級は准将。方面指令長官だ。
「君がビシャック少佐か。話しは一通り聞いている。
 君の上官であるミズキ少将は、私の士官学校時代の恩師でな。
 学生時代は何度も世話になったものだ。
 私は当初は生粋の戦車乗りだったのだが、クルスクの暴徒鎮圧戦での
 功績で、戦車部隊の指揮官になってからがどうにも良くなかった。
 下手に出世したおかげで、どうにもつまらない仕事ばかりやらされるよ。
 本来ならば、ジオン相手に戦車で戦っていたはずなのだがな。
 その栄光も地に落ちたよ。連邦軍は、戦車を見捨てるつもりさ。
 そもそも、MS開発などというものが無駄なのだ。
 あれにかけた予算があれば、既に地球の戦線膠着なぞ打破しておるわ。
 人形に大砲を背負わせるくらいなら、最初から戦車を増産すればいいのだ。
 忌々しきはレビルか。
 二本足のガラクタが、地上の戦線維持に何の貢献ができようか。
 2月初頭から始まったジオンの地球降下作戦において、膠着状態
 にまで持ち込んだのは、あやつの妄想の中にあるガラクタ人形など
 ではなく、陸・海・空の連邦三軍であるのだぞ。
 いつまであ奴にでかい顔をさせていなければならんのだ」
118通常の名無しさんの3倍:04/09/04 20:37 ID:???
司令官は酒に酔っていた。話しているうちに興奮しだしたのだろう。
ずいぶんと息があがっていた。よほど退屈な時間を過ごしていたのだろうか。
無理も無い。北欧方面隊など、閑職以外の何物でもないのだ。
だからこそ、「北部欧州方面軍が死守したのは、年代物の酒だけだ」などと
揶揄されるのだ。もっとも、その功績に関してだけ言えば、私は彼らに感謝している。
そもそも私の仕事自体が、ある反攻作戦の為の余剰戦力の
掻き集めである為、訪ねたほとんどが閑職ではある。
それにしても、ミズキ少将か。はっきり言って面識は無い。
『室長』が、今回の任務の為に勝手にでっち上げただけの事だ。
無論、この私、「地球連邦陸軍少佐ワタリー・ビシャック」という人物も実在しない。
全てペテンなのだ。

「閣下のご言い分も逐一もっともですが、何分連邦上層部にもレビルシンパが
 相当数にのぼりますので。『上』の連中には、先のルウム戦役にて
 ジオンMSの威力をまざまざと見せ付けられた連中も多く、ティアンム提督
 を始め、どうにもMS開発優先派になりがちです。また、MS開発計画
 と同時に立案された『宇宙艦艇量産計画』に釣られた者も多いのです。
 彼らにとっては『上』こそが主戦場であって、我々のように『下』で
 戦う者の言い分なぞ理解できないのかもしれません。
 現に、『上』さえ片付けてしまえば、『下』の勢力は自然に崩壊する、とまで
 主張する参謀もいます。彼らはこぞって補給戦の概念をしたり顔で
 述べてきましたが、既にジオンが地上での補給を確保するにいたった事
 をまるで理解できていないのです」
119通常の名無しさんの3倍:04/09/04 20:39 ID:???
――ペテン。全てがペテンだ。
『下』を放置して『上』だけ叩けばいいと主張する者こそ、我が真の上官たる
『室長』カールグスタフ・ノーラ・リヒオン大佐にほかならない。
ミリタリーバランスなど無意味なのだ。ジャブローさえ確保できていれば、
『上』での反攻作戦を完遂できる。サイド3さえ陥落できれば、頭を失った
地上部隊など、烏合の衆に過ぎん。いかな補給があったとて、結果は同じなのだ。
ザビ家殲滅、いや、ギレン・ザビを殺せるかどうか、ただそれだけだ。
手順を遵守して、場当たり的な作戦ばかり組むから、土壇場で戦力の掻き集め
などという馬鹿げた事態になるのだ。
この点に関しては、この私、グレイ・ラットマンは非常に不服に思っている。
その真の意図はともかくとして、何故情報部たる自分が、このような
参謀部の無能を尻拭いせねばならないのか。そのように感じるのだ。
120通常の名無しさんの3倍:04/09/04 20:40 ID:???
「さて、これからが本題です。
 その補給に関し、くだんの参謀に具申いたしました所、ならば地上の
 補給基地を叩けば良いという、大変に独創的な意見をいただきました。
 さればこそ、我ら地球連邦軍陸軍は、総軍の意地を以ってジオン地上軍
 最大の要所である『オデッサ』を陥落せしめねばならないのであります。
 『オデッサ』こそが、ジオン降下作戦における彼らの最大の戦果であり、
 今なお脅威であり続けるジオン地上軍の最大の補給基地であり、
 さらには実質的な地球方面司令官であるマ・クベ大佐の存在も確認されています。
 ここを陥落する事すなわち・・・」
「すなわち、我ら地球連邦軍の本質たる地上軍をないがしろにする、
 愚か極まりない宇宙人崩れの連中の横っ面に、小便をひっかける為の
 オデッサ攻略である・・・と。これは愉快。一時の感情で軍を動かすのか。
 それは何だね。本当に地球連邦軍の発想なのかね。少佐。
 まったくもって愚かしい。まるでヒステリーを起こした政治部の発想だ。
 愚かしいがしかし、意地をはれる機会もこれで最後なのもまた事実。
 反MS派閥の総力を持って戦闘を行なえるのは、これで最後かもしれんな。
 宜しい。誰の差し金か知らんが、できうる限りの戦力をオデッサに割こう。
 こんな我が隊にあっても、エースと呼べる戦車乗りが数名いるからな。
 配置転換で人形に乗れという命令よりも、激戦区に行って死ねという方が
 連中にとってもありがたいだろうさな。宜しいか、ビシャック少佐」

――死ねという命令を有難いと思うような人種には、なりたくないものだな。

「結構です。では、貴下の戦車隊から、61式戦車20台と精兵をお借りいたします。
 無事お返しできれば、それに越した事はありませんが」

「期待しておらんよ」
121通常の名無しさんの3倍:04/09/04 20:41 ID:???
それ以後は、私達は無言で敬礼を交わし、私はそのまま部屋を出た。
これで私の仕事も終わりだ。あとは暗く湿ったジャングルの本拠地に帰り、
再び情報屋まがいの仕事に戻るだけだ。『オデッサ』がどうなろうと知った事か。
外交政策だけで片の付いたものを、軍人風情が口を出すからこのような目に会うのだ。
せいぜい派手に戦ってくれればいいさ。
『室長』の思惑がどこを向いているかはわからないが、
8あるいは、わかりたいとも思わないのだが)
こんな小賢しい軍人どもをいびり殺すだけの工作というのも、たまにはいいものだ。
後は裏切り者を始末して、オデッサからジオンの諜報網を根こそぎ入手するだけだ。
私はその日のうちに基地を発った。食事など、する気も無くなっていた。
122通常の名無しさんの3倍:04/09/04 20:43 ID:???
「ラットマン少佐、任務ご苦労だった。
 フン、相変わらずのひねた顔つきだな。何か不満でもあのるかね」
ジャブローに戻り、すぐに『室長』に報告する。
こんなくだらない仕事は、さっさと終わらせたいのだ。
「仏頂面は生まれつきです。
 それにしても今回の任務は何なのです。
 自分の配属された部隊はあくまでも情報部であって、
 兵站部の尻拭いをする部署には配属されておりません。
 今後は一切こういった任務にはつきませんよ」
「フフン、素晴らしいな。
 まったくもって上官に対する口のききかたでは無い。
 そうでなくては、この部署はつとまらん。
 実の所、今回の任務は連邦軍内部での情報操作と
 『下』の地位低下に他ならん。
 何だかんだと言って、我々も予算には逆らえんからな。
 まあその辺は、お前も本当はわかっているのだろうが。
 早速だが次の任務だ。ん?不思議な表情をしているな。
 我々の部署に休暇などという酔狂な時間は存在せんぞ」
『室長』は、何やら大量の情報を居れたブリーフケースを寄越した。
「タシケント周辺で不穏な動きがある。
 被害そのものはたいした事ではないが、
 『戦後』の為に必要な情報だ。持って帰って来い。
 恐らくは『強化人間』だ。
 連邦軍はその辺の研究が立ち遅れているからな。
 変に人道主義だの人権だのと言うからだ。莫迦莫迦しい」
次の任務もイカれてるな。
「了解しました『室長』これで失礼させていただきます」
「ペーパーは読み終わり次第、焼却したまえ」
俺は何も言わずに、その部屋を去った。
123オマケ・終わり:04/09/04 20:46 ID:???
後に知った事だが、『室長』の予定通り、オデッサ戦における余分な戦力の投入
および想定以上の消耗、さらには内通者の発覚によって、
地球連邦軍内部における、『下』の地位は極端に低下したようだ。
オデッサ以後における最大の帰趨とは、連邦とジオンのミリタリーバランスなどではなく、
連邦内部における『通常兵器』と『モビルスーツ』のバランスの改変であったようだ。

現に、今そこで訓練中の戦車モドキは、明らかにMSの思想が組み込まれている
愚か極まりない兵器であるのだから。
さあ、次の戦場へ向かわなくては。
『漆黒の戦乙女』の真相を暴く。なんと心躍る任務であろうか。

124通常の名無しさんの3倍:04/09/05 09:06 ID:???
長文乙カレー
職人さんGJ!
125通常の名無しさんの3倍:04/09/06 09:06 ID:???
>>124
ついでにお前も自作自演おつかれ
126通常の名無しさんの3倍:04/09/06 13:27 ID:???
自作自演だとしたら前振りがすごいな
ところでラークはどこへ行った。
127伏ぅ:04/09/07 21:30 ID:???
>>124
職人っつーか伏ぅなんですけどね。
そろそろ過去の遺産が使えて楽になってきます。
リライト作業って感じで。

>>125
24時間キッカリでツッコミ入れる
アンタの方がよっぽど職人芸だよ。

>>126
>>124がラークだと思っておりましたが。

設定が色々変わってますけど、どんな塩梅でしょうか。
「まだ戦争に負けはじめてないのに学徒動員する意味がわからん」
というツッコミがあったように薄ぼんやりと記憶してましたので、
青年海外協力隊のノリで地球に降下したのが最大の変更点です。
でも、オデッサ以後は軍に組み込まれます。
この辺はちょっとだけガンダムっぽいです。
128通常の名無しさんの3倍:04/09/09 09:02 ID:???
保守
129通常の名無しさんの3倍:04/09/10 00:56 ID:???
『ドロシー買い物に行く』

ドロシー達がタシケントに赴任して、早1週間が経とうとしていた。
ドロシー、アン、レイチェルの配属された班はパン焼き専門の班で、
ディーダがその班を仕切っていた。
ディーダは共和国時代からの古参輜重部隊員で、製パン部隊の大ベテラン。
製パン班班長のみならず、部隊の副官も勤めていた。
自己紹介の時のインパクトもあってか、ドロシー達は自然に、彼女の事を
『マム』と呼ぶようになっていた。
マムの元でパン焼きの基礎を学ぶ日々。

そんなある日の事・・・
130通常の名無しさんの3倍:04/09/10 00:57 ID:???
「で、毎日毎日パンを焼いてるワケだけど、これで満足なん?アンタら」
レイチェルがいつもの愚痴をこぼす。そろそろ仕事に飽きてきたのだ。
もうすぐ昼休みだと思うと、早めに切り上げたい所だ。
だが、意外にも仕事は完璧にこなしている。
「あたしは実家がパン屋だし、美味しいパンが焼ければそれで満足だけど?」
アンもいつもの返し方をする。当然に完璧な仕上がりだ。
「それじゃドロッスィーちゃんはどーなんよ。その辺」
「私…ですか?私、仕事するのが大好きなんです!」
にこやかに返答する。その一瞬、仕事が止まる。
「仕事が大好きって…アホですか」
心底呆れるレイチェル。
「えぇ〜、それじゃレイチェルさんは、何が好きなんですか」
不服そうに言うドロシー。
「レイチェルの好きな事なんて、たかが知れてるよ。
 どうせ男あさりとか、そんなコトなんでしょ?」
皮肉げに言うアン。だが、レイチェルは意に介しない。
「はぁ〜?そりゃアンタだろ。
 護衛部隊にいい男がいる〜って昨日騒いでたのは、
 どっこのどなたでしたっけね〜?」
「ロジャー中尉に会いに行ったのは、男あさりとかじゃないの。
 純粋な憧れって感じかなぁ。すっごい良い人だったよ」
「え、ウソ、もう会いに行ったん?
 どーしてアタシも誘ってくんないのさ!」
「「うるさいから」」
「ハモるなよ!」
その時、ピンポロポンと間の抜けたメロディが響き始めた。
昼休みの合図だ。
131通常の名無しさんの3倍:04/09/10 00:58 ID:???
「ドロシー!ちょっとおいで」
食堂に向かうドロシーを、ディーダが呼ぶ。
「なんですか?マム」
また何か失敗をしてしまったんだろうか?
無駄口を叩きながら仕事をしてたのがマズかっただろうか。
そういえば、さっきこねていた生地にはイースト菌は入っていただろうか?
何故か不安げな顔をして走ってきたドロシーを不思議そうに見つめて、
ディーダが言った。
「輜重隊に護衛の部隊がくっついてるのは知ってるだろう?
 そこのパイロット連中がさっきこっちに来てね。
 連中、コーヒー豆を切らしたから、少し分けて欲しいって言ってきてさ。
 生鮮食品と違って、嗜好品ってのは、どうにも偏って補給されがちだねぇ。
 こっちの豆もそろそろ切れそうだしさ。
 ちょっと近くの町まで買出しに行ってきてくれないかい?」
生鮮食品だって偏っているように思うけれど。
その言葉をグッと飲み込んで、ドロシーはもう一つの疑問を口にした。
「ええと、かまいませんけど、その、一人でですか?」
さすがに知らない土地を、一人で行動するのは心細いものがある。
ディーダは笑いながら言った。
「ハハ!まさか。大事な娘を一人で行動なんてさせやしないよ。
 アンかレイチェルと一緒に行きな。3人で行ってもかまいやしないよ。
 あとは・・・」
ディーダが首だけで後ろを振り返る。
つられてドロシーも視線をそっちに向ける。
「あとは、この騎士様が守ってくれるよ」
132通常の名無しさんの3倍:04/09/10 00:59 ID:???
ひやかしぎみにディーダが紹介する。
そこには、妙に落ち着かずにキョロキョロと辺りを見渡す、
まだ少年と言ってもいいような顔立ちの兵士がいた。
自分よりも少し年上だろうか?もしかしたら同い年かも。
いやいや違う。もしかして、童顔なだけなのかも…
「中隊所属の、ルイス・ブリューニング曹長です。その、よろしく」
どこかぎこちない敬礼に、ドロシーもあわてて自己紹介を返す。
あれ?どこかで会った?
「ドロシー、いや、その、えっと、ドロテーア・マルレーンです!」
「ドロシーか。ようやく名前を聞けたよ。憶えてるかな」
憶えてる?
「あー!航宙港の兵隊さん!?」
そうだ。バイコヌール航宙港で会った兵隊さん。
「ごごご、ごめんなさい。あのあの、忘れてて、でもあの時は気が動転してて…」
慌てて頭をペコリと下げて謝るドロシー。
「いや、いいんだ。僕も声を聞くまで確信できなかったし」
ディーダはそのやりとりを見て、苦笑しながら言った。
「なーんだ。アンタら知り合いだったのかい。それなら心配ないね。
 アンと一緒に、ちゃっちゃと買ってきておくれよ」
「わかりました!マム」
どこか嬉しそうに、ドロシーは返事をした。
133通常の名無しさんの3倍:04/09/10 01:01 ID:???
「てっきり航宙港の人だと思ってました。中隊の方だったんですね」
買い出し用の、4人乗りのエレ・ジープを運転しながら、ドロシーが聞いた。
ルイスが運転すると言ったのだが、ジープはベーカリー隊の備品なので
他の部署の人に扱わせる訳にはいかないという理由で、ドロシーが運転しているのだ。
意外なことに、ドロシーは運転が上手い。助手席でナビゲートしているアンよりも、だ。
家業をアルバイトで手伝う為に、早くからエレカの免許を取得していたのだ。
「最初はバイコヌール基地に配属されたんだ。
 部隊を新設するって事だったらしい。
 でも、方針変更されたみたいで、部隊は発足せず。
 宙ぶらりんになった所を、中隊に拾ってもらったってトコさ。
 その辺は、ヨハン中隊長が上手くやってくれたって事かな。
 そのうち、ロジャー中尉もこっちに来るんじゃないかなぁ
 ほら、ドロシーもバイコヌールで見かけただろう?」
「なるほどねぇ。それでタシケントでドロシーと出会ったって訳ね」
ニヤニヤしながらアンが聞いてくる。
「ところでさ、曹長は何のパイロットなの?戦闘機?それともモビルスーツ?」
年端の近い3人は、あまり階級を気にしない口調で会話していた。
ルイスもそれを気にしなかった。元々そういった事にうるさくないのだ。
「ああ、モビルスーツだよ。ザクだ。それも砲戦型さ。最新鋭機だ」
どこか自慢げに語る。
「うっわー。いいなぁ。私も乗ってみたいなぁ」
ドロシーものんきなものだ。
それが兵器であり、人を殺す道具であるという感覚が欠如している。
だが、こうも周囲がノンビリしていると、仕方無いのかもしれない。
「ドロシー。あんまりはしゃぐんじゃないの。
 前見て運転しなさい。もうすぐ着くはずだよ」
地図をクルクル回しながら、アンが言った。
「はーい、アン姉さん。わっかりましたー」
たしなめるアンに、笑顔で返すドロシー。もうすぐタシケント市だ。
134通常の名無しさんの3倍:04/09/10 01:06 ID:???
タシケントの空港は、今日も活気でいっぱいだった。
輸送機がせわしなく離着陸を繰り返している。
ふと、遠くに今まで見たことも無いほど、巨大な航空機を発見した。
「ふわぁ〜…」
「ガウだよ。あれの中に、戦闘機を搭載できるんだ。
 戦闘機だけじゃなくて、モビルスーツを搭載できる機体もある。
 僕のザクは、搭載型ガウで運搬されてきたんだ」
見とれているドロシーに、ルイスが説明した。
「ガウ…ですか。あんなに大きな飛行機が飛ぶんですか。すごいなぁ…」
「キミらの乗ってきたシャトルだって、そうそう小さくは無いけどね」
「あ、あのシャトルって、私達が乗ってたのと同じ型じゃないですか!?」
「えっと、アレかな」
「だから、前見て運転しなってば。そろそろ危ないよ」
アンが注意する。
「ごめんなさい!ついつい見とれてしまいました」
『それにしても部隊が随分と集結しているな。
 あのガウはタシケント所属の機体じゃない…
 誰かお偉いさんでも来てるのかな?』
垂直尾翼に描かれた部隊章を見ながら、ルイスが一人ごちた。
135通常の名無しさんの3倍:04/09/10 01:07 ID:???
市街地へとエレカジープは進む。
その時、ルイスは弾けたように言った。
「言い忘れてた!最近、町で軍と住民のトラブルがあったんだ。
 軍服のまま町をウロウロするのは、まずいかもしれない。
 キミ達は大丈夫だろうけれど、NGOの制服だって、
 もしかしたら誤解されちまうかもしれない。
 ちょっとその制服、デザインが軍服っぽいもんな」
「えー?それじゃあ、私たち、どうすればいいんですか?」
狼狽するドロシー。すかさずアンが言った。
「なーるほど。それでマムはこんなにお金を持たせてくれたって訳ね。
 親心ってのは、嬉しいね」
財布の中身を確認しながら、アンは言った。
が、アンの言葉の意味を、ドロシーはつかめなかった。
「どういう意味ですか?アン姉さん」
ニヤリとして、アンが言う。
「私服を買ってもいいって事よ。ドロシー。
 どうせだから、可愛い服を買おうよ!」
その言葉を受けて、ルイスが言った。
「可愛い服か。それじゃあ、次の角を曲がったところの商店がいい。
 あそこの店主は親ジオン派だし、品揃えもいいからね」
「次の角ですね。わかりました!」
キュルルル。タイヤを鳴らして、エレ・ジープが曲がる。
「ちょっとドロシー!はしゃぎすぎ!」
136通常の名無しさんの3倍:04/09/10 01:09 ID:???
私服を買い終わるのを待つ事、数十分。
ルイスは、よもやこんなに時間がかかるとは想像もできなかった。
しかも、未だに二人とも買い終えていない。
自分の買い物は、ものの数分で終わったから、なおさらだ。
「女の子の買い物って、本当に時間がかかるんだな」
いつか誰かに言われた事を思い出した。
あれは誰に言われたのだったろうか。
「ごめーん。おまたせー」
ようやく買い物を終えた二人が戻ってきた。
ドロシーは、何故かアンの後ろに隠れてモジモジしている。
「ドロシーにあう服がなくってさ。ホント、この娘の胸は大き過ぎだね。
 ここの服はちょっと小さめのが多かったかも。
 それにしても、前々からアヤシイと思ってたけど、いざホンモノを見ると…
 なーんかこう、ちょっと悔しいかも」
アンは、Tシャツにパンツ姿の活動的な服を選んだようだが、
ドロシーは、この地方の民族衣装だろうか?ゆったりした、派手な服をきている。
表情は、これでもかと言うくらいに、困った顔をしていた。
「アン姉さん、やっぱりこの服、恥ずかしいですよぉ」
話すたびに、ヒラヒラと服がゆれる。
これで似合って居なければ、ただのアタマの弱い人だろう。
だが、偶然にもドロシーには似合う服だったようだ。
本人が照れまくっているだけなのだ。それで時間がかかったのだ。
「もう買っちゃったんだし、仕方無いじゃん。実際どう?ルイスさん」
無責任にルイスに振るアン。
「え?ああ、似合ってるよ。いいと思うよ。うん。
 さ、そろそろコーヒー豆を買いにいこう」
ルイスは、これ以上待たされるのはご免だ、といった口調で言ったのだが、
何故かドロシーはそう捉えなかったようだ。
「エヘヘ。ホントは自分でも、ちょっと似合ってるかなーって思ってました」
途端に明るい表情に戻って、アンとルイスに笑顔を向けた。
137通常の名無しさんの3倍:04/09/10 01:11 ID:???
豆も買い終え、ベーカリー隊に戻ってきた3人。
「それじゃあ、僕はこの辺で」
「護衛お疲れさまでした。後でパンを届けますね」
笑顔でルイスを見送るドロシー。手をパタパタと振り続けている。
そんなドロシーにアンがボソっと言った。
「惚れたか?娘よ」
「な!・・・何言っちゃってるんですか!?そそそそんな事」
「あー、もう充分。ゴチソーサマ」
「そんな、アン姉さんだって、ロジャー中尉の事かっこいいとかって・・・」
「あー!何を言うかなーこのくちはー!」
「うぎぃ・・・やめてくらはいよぉ・・・」
「さぁて、パンは上手く焼けたかなーっと」
「今日のパンは私が初めてこねたんですよ。上手く焼けてるといいなぁ」

「マム!ただいま戻りました!」
「はい、お疲れさん。ところでドロシー
 ほんのちょっとだけ大事な話があるんだ。」
「なんですか?マム」
「あんた、イースト菌入れ忘れちまったようだね。
 これじゃパンじゃなくてナンだよ」
苦笑するディーダの後ろには、ぺっちゃんこのパンが山積みになっていた。
138通常の名無しさんの3倍:04/09/11 22:44:42 ID:orwkiISs
完成してるのに続けるってのも
139通常の名無しさんの3倍:04/09/12 12:26:47 ID:???
>138
別に良いんじゃないか。
設定を補足したほうがいいところもあるだろうし。
あれは完成ではなくていわば一区切りだな。
140通常の名無しさんの3倍:04/09/13 00:20:23 ID:???
【蛇足】
ロジャー中尉はタシケント入りしてますが、
まだ所属はバイコヌールです。
141通常の名無しさんの3倍:04/09/19 01:01:46 ID:???
保守
142通常の名無しさんの3倍:04/09/19 01:56:21 ID:???
最近書き込みないな、どうしたんだ?
143通常の名無しさんの3倍:04/09/19 13:14:24 ID:???
SS考えるのも書くのも時間が必要なのだろう。
定期的にネタを投下しつつマターリと待たねば。
144通常の名無しさんの3倍:04/09/23 21:15:36 ID:???
『ドロシー勝利をおさめる』

「ドロシー!」
今日も今日とて、朝早くからディーダに呼び止められるドロシー。
また何か失敗したのだろうか。ドロシーの脳裏に不安がよぎる。
が、ディーダは笑顔でこう言った。
「今日はそんなに仕事も無いから、
 ちょっと精肉班の方に挨拶に行こうか」
「精肉班って、同じタシケントに駐留してる?」
「その通り。向こうの方が大規模なプラント抱えてるけどね。
 ウチはウチで移動可能なカタツムリを持ってるけどさ」
ディーダはチラリと後方にそびえる構造物に目をやる。
やや黄色がかったそれは、ジオン公国軍所属の陸上大型シップ『ギャロップ』だ。
ドーム状の食料プラントを引っ張って動く事ができる、言わば動く食の要塞。
ドロシーは、ほぼ毎日のように遊びに来るルイスから、その事を聞いた。
ディーダは何故かそれを、カタツムリと呼んでいる。
その形からか、あるいはその速度からだろうか。
「言わなくても連れて来るとは思うけれど、
 アンにレイチェルも呼んでおいで」
「わかりました!マム!」
ドロシーは笑顔で翔けて行った。
145通常の名無しさんの3倍:04/09/23 21:20:51 ID:???
ディーダと三人娘が向かったのは、
同じくタシケントに駐留している精肉班のかまえるベースだ。
エレカでおよそ15分といった所か。
既存の施設を改修して精肉工場にしたらしい。
ギャロップに接続してある食料プラントでも、
ある程度の食肉加工は可能なのだが、量に限度があるので、
現在の方式になったのだと、道すがらディーダが三人に教える。
アンが誰にでもなく言った。
「まあ確かに、肉も大事な栄養源よね。
 毎日パンばっかりじゃ、人間カサカサになっちゃうもん」
意地悪くレイチェルが返す。
「あっれ〜?ダイエットするから肉は食べないって言ってたのは、
 誰でしたっけねぇ?アンさん?ん?」
すかさず言い返すアン。
「アンタじゃないの?」
思わぬ反撃に、狼狽もせずに逆襲するレイチェル。
「あぁ?アタシは痩せてっから肉を食ってもいいの。
 食っちゃダメなんは、そこの無駄巨乳よ」
二人の応酬を笑いながら見ていたドロシーは、
ここで自分に振られるとは想像もしていなかったのか、
表情がコロリと変わり、泣きそうになる。
「無駄って…そりゃあんまりですよぅ」
胸を両手で隠しながらうめくドロシー。
「巨乳は否定しないのね…ドロシー。
 そんな娘だったなんて。お姉ちゃん悲しいわ」
ウソ泣きをするアン。
「アン姉さんまで…いじめないでくださいよぅ」
「アンタ、案外に苛められ属性あるかもね。
 星だ、星。あきらめれ」
「レイチェルさぁ〜ん…」
146通常の名無しさんの3倍:04/09/23 21:28:15 ID:???
「はいはい、おふざけはそこまで。精肉班に着いたよ」
エレカは音も無く止まり、三人は精肉班工場の目の前に立った。
遠くに人影が見える。ずいぶんと大柄の人物だ。
意外にもすばやい身のこなしでこちらに駆け寄ってくる。
「アッサラーム!ディーダ!
 ちょうど良かった。あなたの部署に届け物があるよ」
目の前の浅黒い肌の男は、気さくに話しかけてきた。
年齢は30そこそこ。髭は無くて、頭もツルツル。
丸顔に太っちょ体形で恐ろしげだけど、目元は優しかった。
「おっと、カリムの坊や。今は別件だよ。
 届け物は後でウチに持ってきておくれ」
カリムと呼ばれた男は、苦笑しながら答えた。
「三十路の男を捉まえて、坊やは無いでしょうに。
 まあ、あなたの経歴に比べれば、私などはまだまだ
 ケツにカラのついたヒヨコですけどね。
 そう言えば、しばらくチキンの補給が無いな。
 さて、マム。後ろの三人のお嬢様方は?」
実はディーダの軍歴は、公国軍内において相当長い。
軍歴と人柄と才能。その全てを織り成して、
部隊全体のディーダへの畏敬の念につながる。
「ウチの班の新入りさね。
 このちっちゃくてクシャクシャで可愛らしいのがドロシーで、
 黒髪の大人しそうなクセに元気が溢れてんのがアンで、
 で、この生意気そうな割に素直なのがレイチェル。
 スグに覚えられそうだろぅ?
 ウチの班にゃ、何故かこういうクセの強い連中が集まるのさ。
 ん?カリム…アンタもよくよく顔に出る男だねぇ。
 そうだよ、アタシが一番クセが強いからねぇ!」
そう言って、ディーダは豪快に笑い出した。
「これから精肉班の連中に挨拶をして回るから、
 あんたは今夜のバーベキューの肉を、ウチによこしておいておくれ。
 何ならあんたも参加しとくれよ。世話になってるからねぇ」
「それは喜んで」
本当に嬉しそうに男はうなずいた。
147通常の名無しさんの3倍:04/09/23 21:44:38 ID:???
一体この男性は何者なのだろう。
名前はどうやら、カリムというらしい。
そして、どうやら精肉班の人で、マムと知り合いらしい。
よくわからない。
そこまで考えて、ふとドロシーが視線をそらすと、
なにやらレイチェルが不服そうな表情をして、
口をモゴモゴさせている。
やっぱりレイチェルも気になっているんだ。
ドロシーは思い切って会話に割り込み、聞いてみる事にした。
「あの…マム…」
「なんだい?ドロシー」
「私たち、その方のお名前や、どんな方なのかを
 まったくお聞きしていません」
「あぁ、すっかり忘れてたよ」
ポンと手を打ち、少しバツが悪そうにディーダが言った。
それを見て、男はどこかで見かけたような記憶のある
優しいまなざしを向け、ドロシー達に話しかける。
ふと思い出す。これは小さい時に図鑑で見た、象の目と一緒だ。
「アッサラーム アライクム!
 ボクの名は、カリム・ラシード。
 実は精肉班班長なんだけどね。
 これから何度も顔を合わせると思うよ」
「よろしくお願いします!カリムさん!」
少しだけ慌てて、ディーダが付け足す。
「ドロシー、カリム『少尉』だよ」
カリムは、やっぱり優しいまなざしで話す。
「いや、カリムさんでいいよ。
 軍隊なのに軍隊然としてないのが、
 ウチの部隊の良い所だと思ってるから。
 さて、ゆっくり工場を見学してくるといいよ。
 と殺場は、見ないほうがいかもしれないけど」
そう言って、カリムは奥へと早足で消えていった。
148通常の名無しさんの3倍:04/09/23 21:52:26 ID:???
一通り工場内を見学して、工場内で昼食をすませた後、
(なんと、マトモなレストランであった!)
ディーダは用があるからと班長室に行ってしまった。
暇をもてあました三人は、言われたのにも関わらず、『と殺場』を見学してしまう。
「いやぁ、凄かったねぇ。
 ああまで臓物をブチ撒けるモンだとは思わなかったよ」
意外にもレイチェルは平気そうであった。
アンは表情が青ざめ、ドロシーにいたっては、トイレから出て来れないでいる。
信じられないものを見るような視線で、アンがレイチェルを見ながら言った。
「レイチェル…あんたよく平気ね」
その言葉を鼻で笑いながらレイチェルが言う。
「青ざめるほーがおかしいのよ。
 今までどんな面して肉を食ってきたん?
 だいたい、クローンニングで肉部位だけ増やそうって意見に、
 クローンというだけで反対するクセに、
 肉の成り立ちを教えない連邦やコロニー諸国がおかしいのよね。
 ギレン閣下がクローン技術に寛容になる気持ちもわかるわ」
「あたし、これから一生、毎日パンでもいいかも」
「だらしないねぇ」
その時、トイレからドロシーが出てきた。
顔は青ざめたままだ。
「うぅ…お昼ごはん、全部出しちゃった…」
「大丈夫?ドロシー」
「はい、アン姉さん。もう平気です」
扉が開き、ディーダも姿を見せる。
「待たせちゃったねぇ。おやおや、待ちくたびれえるかい?
 三人ともずいぶんとグッタリしてるじゃないか。
 レイチェルだけは元気そうだね。まあいいさね。
 今夜は製パン班と精肉班で、合同のバーベキューをやるよ。
 たまにゃあ栄養のあるものを食べないとねぇ。
 お腹いっぱい肉を食べようじゃないか。
 準備を手伝っておくれよ」
「ウッス!」
「に…」
「肉…ですか」
149通常の名無しさんの3倍:04/09/23 22:14:47 ID:???
準備も終えて、夜もふけて…
バーベキュー会場には、想像以上に人が多く集まっていた。
聞けば、整備班や護衛部隊の兵士達も寄ってきているんだとか。
向こうではアンがバズにちょっかいをかけられていたり、
あっちではレイチェルが整備班にからかわれていたりと様々。
そんな中、ドロシーは一人でフラフラとしていた。
「やっと見つけた!ドロシー!おーい!」
どこかで彼女を呼ぶ声がする。
「そうか、彼女がドロシーか」
振り向くとそこにはルイスと、もう一人長身の人物が隣にいた。
どこかで見かけたような…
「はじめまして、かな。ドロシー。
 俺はロジャー。ロジャー・ウィンフリード。
 ルイスからは、もう聞いているのかな?」
ブンブンと顔を振るドロシー。
無意識に周囲を見渡す。アン姉さんを呼ばなきゃ!
「ようやくバイコヌールからロジャー隊長もこっちに来れたんだ。
 一人じゃ本当に心細かったですよ。隊長。
 これでボクも臨時の小隊長役からオサラバって事です。
 肩の荷が降りましたよ。
 えぇと、ドロシー。
 こちらは、ウィンフリード中尉といって、
 バイコヌールの頃にボクの部隊の隊長だった人。
 今回、タシケントの護衛隊の小隊長として、引き抜かれてきたんだ。
 輜重隊のディックス大尉が手を廻したみたいだけど」
「ザク3機の護衛隊ってのは、自分には丁度良いかもしれないよ。実際。
 本当は少しノンビリしたかったんだ。
 読みたい本も溜まってきたし、書きたい話もいっぱいあるしね」
「書きたい話…ですか?それって」
「ここだけの話だよ、ドロシー。実は俺は、小説家志望なんだ。
 戦争が終わって平和になったら、作家になろうと思っている。
 いや、それが険しい道なのは理解しているけどね。
 そうだ、書きかけのでいいなら、今度ドロシーにも読んでもらいたいな」
小説家!なんて素敵なんだろう!
「ぜひ!」
「うん。今度持ってくるよ」
ふとルイスを見ると、なんだか苦々しい表情をしていた。
もしかしてその小説って、面白くないんだろうか。
150通常の名無しさんの3倍:04/09/23 22:15:46 ID:???
護衛隊の歓迎会があるらしく、ルイス達は部隊へ戻ってしまった。
またポツンと一人になったドロシーの元に、
ようやくバズの誘いを振り切ったアンがやってきた。
「ロジャーさんが来てたの!?もう、何で呼ばないかな。
 自分ばっかりルイスくんと仲良くなってさぁ」
「だって、アン姉さんはバズさんと一緒だったじゃないですか。
 それに、ルイスは関係無いじゃないですか」
「バズなんてどーでもいいのよー!」
「仲良くしてたクセに…」
「ちょっとドロシー、あんた何だか最近レイチェルが
 性格の中に混ざってきたんじゃない?」
「そんな、そんな酷い事を言わないでくださいよぅ」
「まったくだわ。アタシならもう少し
 インテリジェンスを感じさせる物言いをするもの」
「あ、レイチェル」
「いつの間に…」
「それより、あっちにカリムのダンナがいたわよ。
 絶対高級肉を抱えてるに違いないわ。
 はいはい、張り切って行きましょーか」
「あんた、よくも肉なんて食べられるわね」
「アタシの実家はビンボーな町工場だったからね。
 肉には色々とウラミがあんのよ」
「じゃあ、実家が酒屋さんのわたしは、
 何にウラミを持てばいいのかなぁ」
「へぇ、ドロシーの実家って、酒屋さんなんだ」
「そうなんですよ、アン姉さん。
 品揃えがいいって、評判なんですよ」
「酒屋でも牛乳屋でもいいからさー
 早くカリムのダンナのトコに行こうよー」
151通常の名無しさんの3倍:04/09/23 22:17:47 ID:???
カリムは宴の輪を離れ、一人でたたずんでいた。
空を見上げている。満天の星空だ。
「な〜にセンチメンタルにひたってんのよー
 カリムのダンナ〜、一緒に飲み食いしましょうよ〜」
「ご一緒してもよろしいですか?
 変なのが一人くっついて来てますけど」
「みんなで食べた方が楽しいですよ。
 お酒も持ってきましたし」
「そうだね。皆で食べた方が楽しいかもしれないね」
あらためて4人でのバーベキュー。
最初は遠慮がちだったが、次第に会話が弾む。
部隊での日常のこと。宇宙での生活のこと。
ドロシーたちのまだよく知らない、
整備班や護衛部隊の話…
ふと、レイチェルが質問をした。
「あのさ、ダンナ。ちょっと気になってんだけどさ。
 確か『アッサラーム』ってのは…」
レイチェルが何か質問しているが、
ドロシーにはその意味は全然わからなかった。
が、カリムには通じたようだった。
「ウン。ボクの家族、ご先祖代々で敬っている神様はね。
 ちょっと悲しい歴史を背負っているんだよ。
 この地球に、とっても大事な聖地があるのに、
 信徒のほとんどが宇宙に追い出されちゃって、
 それでも大事な場所だからって、
 毎日毎日何度も何度も、地球に向かって、
 ペコペコ頭を下げるんだ。
 ボクはそれを見ながら育って、何だか悔しくてね。
 だから、色々とささいな反抗をしてるのさ。
 ボクらの仲間は、男はヒゲを生やすのが普通なんだけど、
 見てのとおりにツルツルだろう?
 お祈り前のブタ肉も食べちゃダメなんだけど、
 美味しく食べて、この通りのお腹さ!」
ポン、とカリムは自慢げにお腹を叩いた。
152通常の名無しさんの3倍:04/09/23 22:20:25 ID:???
ドロシーが悲しそうにポソリと言った。
「それじゃあ、もしかして、ご家族の事を嫌ってらっしゃるのですか」
カリムが顔をあげて言う。
「そうだね。昔は嫌いだったよ。大嫌いだった。
 でもね、地球に来てみてわかったんだ。
 ここには敬う価値がある。頭を下げる意味があるってね。
 実際に来なくても、父も母も皆がわかってたんだろうね。
 ボクだけが、わからなかったのさ。
 でも今は、少しだけわかる気がする。
 今更、信心深くなれそうには無いけどね」
黙り込んでいたアンが口を開いた。
「あなただって地球に来て理解できたんだから、
 それでいいんじゃないかな。わたしはそう思うよ。
 理解しようって思う気持ちが大切なんだと思う」
ずっとしかめっ面をして聞いていたレイチェルも、
ニヤリとしながら話し始める。
「宗教だの何だのと背負ってるヤツにゃ、ロクなヤツはいないよ。
 昔のダンナだって、そうそう間違っちゃいないさね。
 今だって、おいしそーな肉をサバいてくれてんだから、
 きっと間違っちゃいないんだよ。
 っつーかさ、いつまでこんなシケった話題を続けんのさ。
 せっかくデブなダンナが高級な肉を持ってきてくれたんだからさぁ」
「デブって…レイチェル…あんた…」
「レイチェルさん、それはさすがに」
153通常の名無しさんの3倍:04/09/23 22:23:22 ID:???
「アーッハッハッハ!こりゃいいや。まったくだ。
 この話はここまで。バーベキューを続けよう!
 次はトリのモモ肉だよ。人数分あるからね」
「ウッシャ!トリキターーー!さすがはダンナ!」
「レイチェル!あんたさっきから食べすぎ!
 ていうかそれあたしの分だから!」
「これ、すっごく美味しそうですよ?アン姉さん。
 食べすぎちゃうかも」
「え〜、ドロッスィーちゃんマジで食いすぎ。太るぞ。
 それ以上胸と腹に栄養送ってどーすんのさ。
 ダンナと一緒にデブになるん?」
「あう…」
「あらあら、レイチェルさんも少しは胸に栄養送らないとねぇ。
 鉄板胸じゃあまりに貧相ではなくって?」
「うぐ…」
「アン姉さんだって、あんまり食べて太ったら
 バズさんに嫌われちゃいますよ」
「あんな男はどうだっていいの!
 ドロシーこそ、ルイスくんに嫌われるよ」
「だから…」
喧々諤々、それでも食は進む彼女たち。
本気になった彼女たちは、まさにバーサーカーモード。
はて、バーサーカーモードって何だろう。
ドロシーはちょっとだけ考える。
そんな様子に恐れをなしたカリムは逃走をここるみる…が。
154通常の名無しさんの3倍:04/09/23 22:27:30 ID:???
ガッシ。レイチェルに肩を掴まれる。
「ダンナ。席を立つなぃ。
 せっかくパン焼き班屈指の美貌集団に囲まれてんだし」
「そうよ、カリムさん。
 そうだ!お酒をつぎますよ!何がいいかな?」
「アン姉さん。これこれ。
 じゃーん!実はワインを持ってきちゃいました〜
 これ、きっと仕官用のですよ。こっそり皆で飲んじゃいましょう」
「ドロシー!あんたって娘はもう!でも今回は許す〜!」
「あー、ドロッスィーちゃんにしては気がきくのね」
「むうう…」
実は三度の飯より酒好きなカリム。逃げそこなう…

結局宴は、たまたま通りかかったロジャーとルイスをも巻き込み、
翌朝4時まで続いたという。
「ロジャーさぁぁん…」
「鉄板胸とか言わないでよぅ…気にしてるんだから…」
「おかしいな。こんなハズじゃ…」
「護衛隊への歓迎会の後でコレとは…なかなか辛いな」
「こんなに楽しく飲んだのは久々だ…地球ってのも、悪くないな…」



「あれ?みなさん、もうおしまいですか?」
ちなみに最後まで飲んでいたのは、我らがドロシー嬢。
酒屋の血筋は、伊達では無かったのだ。
ドロシー最初の勝利の瞬間であったとさ。
155通常の名無しさんの3倍:04/09/24 21:10:48 ID:???
巧いなぁ、いったい誰が書いてるんだ?
以前のと違って三人娘が同格になってるからキャラクター同士の
会話も弾んでるし相互補完されてる。
で、そろそろ出てくるのかな? 漆黒のワルキューレ!
期待してますよ職人さん。
156おまけ:04/09/24 23:13:22 ID:???
『真紅の魔王』

やあ若いの。久しぶりじゃあないか。元気だったか。
私か。私は体調を崩してしまってね。
ああ、どうという事も無い。死期が近づいているって事さ。
何を驚くことがある。
私よりもはるかに若い年齢で死んでいった者だって大勢いる。
病気?うん。少し違うな。
私の体は宇宙線でボロボロなのさ。
『ここ』で生きる人間にとっては、宿命みたいなものだろうな。
どうだ、若いの。これから飲みにいかないか。
死ぬ前に、老人の愚痴を聞いてもらいたくてな。
前に一緒に飲みに行った時、君の祖父の話が出たな。
うん。1年戦争に従軍したというあれだ。
この間は何とは無しに聞いていたが、今思い返すと、
君の祖父の話を、私は師匠から聞かされた記憶がある。
師匠は君の祖父の事を、整備の鬼だと言っていたよ。
ん?私の師匠?そうだな、今夜は師の話をしようか…
157おまけ:04/09/24 23:14:30 ID:???
私の記憶は、燃えさかるソロモン要塞から始まっている。
当時はまだ幼な子であったからだろうか、
詳しい事は全く思い出せない。
ただ、燃え盛る要塞の壁と、脱出用のランチから見た、
脚だけの『深緑の魔王』の姿。
私達とは反対の方角へと飛び去った、
大きな大きな緑色の機体の事は鮮明に憶えている。
「見てごらん。あれには傷のオジチャンが乗っているんだ。
 私達を守る為に、戦いに行くんだよ」
だれかがそう言ったのも憶えている。
傷のオジチャンが、偉大な将であったのを知ったのも、
深緑の機体が『ビグ・ザム』と呼ばれていた事を知ったのも、
その戦争で私の父も母も亡くなったのを知ったのも、
ずいぶんと後の事であった。
結局ランチは逃げ切れずに連邦軍に拿捕され、
大人達は捕虜収容所に送られ、
いわゆる戦災孤児となった私は、連邦の保護施設へと入れられた。
そこでは何年も酷い扱いを受けた。
あるいは、1年戦争そのものよりも忌まわしい記憶と言えるかもしれない。
丁度ティターンズの台頭し始めた時期だったからであろうか。
スペースノイドへの迫害は筆舌に尽くしがたいものがあった。
耐えられなくなった私は、13歳の夏、施設から逃げ出した。
往く宛ては無かった。ただひたすらに逃げだしたかった。
スラムを転々とし、コロニーを渡り歩き、
18歳の時にスウィートウォーターに居た。
そしてその時、師にめぐりあった。
158おまけ:04/09/24 23:22:24 ID:???
ある日、なんの事はなくスウィートウォーターの酒場で知り合った。
師はネオジオンの技術者であった。
最前線へと身を投じ、グリプス戦役にもエゥーゴとして参加していたという。
「ジオンの技術が1番だ。アナハイムなんぞアテにするな」
それが師のくちぐせであった。
師の口利きで、私はネオジオンの整備兵として軍に入った。
その時に聞かされたのが、ジオン整備兵の心得というものだった。
師の友人だった人物が、ジオン地上部隊の整備班長をしていた時に、
部下に向かって何度も何度も言った事をまとめたものだそうだ。
名は確か、ジムといったと思う。
地上戦に巻き込まれて、行方不明になったのだとか。

軍での師の指導は熾烈であった。
一偏の妥協も許さなかった。
一度、師にその理由を尋ねてみた。
師は、こう言った。
159おまけ:04/09/24 23:24:30 ID:???
「昔な、俺は設計部署にいたんだ。
 新兵器の開発工廠ってやつだ。
 活気のある所だったよ。
 みんなで『ジオン最強のモビルスーツを、モビルアーマーを作ろう!』ってな。
 寝るのも惜しんで検討しあったよ。
 今あるアイデアにも、そこで産まれたものもある。
 俺達の開発によって、戦争は終わるんだ。
 当時は本気でそう思ってたよ。
 だが、戦争ってのは恐ろしいもんでな。
 連邦のV作戦以後、劣勢になりだした頃にな、
 未完成品でも最前線に投入しろって上層部に言われちまってな。
 もちろん反対したさ。
 確かに自分達が手塩にかけて開発した兵器を無駄にしたくないってぇのもあるさ。
 でも、そうじゃあないんだ。
 俺達のつくる兵器には、パイロットの命がかかってるんだ。
 世間じゃ俺達の事を、まるでマッドサイティストのように扱っていたがね。
 そんな技術者はいやしない!
 パイロットの命を考えられない技術者なんて、ゴミクズ同然だ!
 でもな、反対してたリーダーが撃ち殺されてな。
 『まだ反対するのか?』って凄まれちまってな。
 情けない事にビビっちまったんだよ。
 未完成品を最前線に送っちまったんだよ。
 俺達は・・・閣下を・・・ドズル閣下を・・・」
師は泣いていた。
ただひたすらに、泣いていた。
160おまけ:04/09/24 23:26:41 ID:???
師と、その仲間達が創りあげた兵器とは、
シャア・アズナブルの搭乗したジオン公国最後の機体と、
あの『深緑の魔王』であった。
もっとマシなものであったら、ドズル閣下を戦死させずにすんだ。
師はそう言っては、悲しそうな眼で遠くを見つめていた。
アルパ・アジールを送り出す時、底知れぬほど悲しい眼をしたのは、
単に戦争を憂いていたからではあるまい。
「それでもまだマシな方だ。
 シャア総帥に、ようやくまともな機体を渡す事ができた。
 我らの最高傑作だ。
 あの真紅の機体は、歴史を変える。
 我らの悲願は、ようやく成される。
 『ガンダム』を、『ガンダム』を、くびり殺すのだ」
それが師と私の交わした、最後の会話であった。
161おまけ:04/09/24 23:28:47 ID:???
縁。
そう思わずにはいられない。
シャア・アズナブルの反乱も失敗に終わり、師の命も絶え、
タウリンの野望も挫け、マフティーの乱も鎮圧され、
それでも私の命が永らえているのは、
あの『深緑の魔王』を、自らの手で蘇らせる役割を持ったからに違いない。
ブッホ・コンツェルンは、流れ者の私を快く受け入れてくれた。
彼らが何を望んでいようが、私には関係無い。
私は、私の歴史を終わらせる為の機体を創りあげるだけだ。
今、私の目の前には、真紅の魔王がいる。
幼き日の記憶、師の創りあげた最高傑作、
それらがすべて詰まった機体が。
完成の暁には、グラン・ビグ・ザムとでも呼べば良いのだろうか。
それとも、グラン・ザムであろうか。
隣には、あまりに醜悪なモビルアーマーが控えている。
グラン・ビグ・ザムが予定の性能を発揮できなかった場合に備えて、
予備的に開発したMAだ。
私は強化人間というものに対し、いささか偏見が過ぎるのかもしれない。
しかし、それ専用の機体なぞ、醜悪に見えても仕方無いのではないか。
開発コードは『ラフレシア』、醜い姿に相応しい名ではある。
両者ともに、未だ完成には至らない。

もうすぐ戦争が始まる。
私が、師の犯した過ちを再び辿るのか、
それともこの2機が歴史を変えるのか、
この病に侵された体では、確かめ様が無い・・・
162通常の名無しさんの3倍:04/09/25 19:54:18 ID:???
テスト
163通常の名無しさんの3倍:04/09/27 04:56:08 ID:???
上の二編は読んだことないな、新作?
164通常の名無しさんの3倍:04/09/29 00:27:35 ID:???
まぁ兎に角SSおつかれー
165通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:36:16 ID:???
『ドロシー、釜を壊す』

パン焼き釜が壊れた。
公国の誇る最新鋭設備で地球に降下したとは言え、
過酷な環境で数ヶ月も使えば、どこかしらには故障は出るものだ。
そして今回、パン焼き釜が壊れた。
まさに、ドロシーがパンを焼こうとした瞬間に。
「あれぇ…なんでスイッチの色が変わらないのかな。
 えっと…う…あれ…ちゃんと押してるんだけどな」
カチカチと何度もスイッチを入れながら、とまどうドロシー。
彼女の脳裏には何故か、故障よりも先に自分の操作のマズさが浮かんだ。
釜に貼り付けてある操作手順を、何度も指先でなぞりながら確認する。
「順番を間違っちゃったかな。
 マニュアルはどこだろう。
 操作手順はここに書いてあるけど。
 手順、あってるよね…」
166通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:38:00 ID:???
人間、窮地に陥ると自然に独り言が増えるものだが、それを聞いてか、
彼女の頼みの綱でもあるアンが駆けつけて来た。
「ドロシー、何かあったの?」
助かった、とドロシーは心底思った。
アン姉さんなら何とかしてくれると思ったからだ。だが。
「わたし、これからマムと一緒に出かけなきゃなんないんだ。
 そろそろドロシーも一人でパン焼き作業くらいは出来るでしょ?
 機械のボタンを押すだけなんだから。念のために見ていてね。
 ドライバー待たせてるから、もう行くね。それじゃ!」
「あの、アンねえさ…ん。
 行っちゃった。
 でも、そうよね。ボタンを押すだけだもんね。
 私にだって出来るはずなんだもの。
 きっと操作を間違えたのよ。
 もう一度最初から。
 焦らず、焦らず、落ち着いて」
なおさら独り言の増えるドロシー。
167通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:38:52 ID:???
そこに、次に焼く予定のパンを運んできたレイチェルが現れた。
「うぃーっす、ドロッスィーちゃーん
 パン、ここに置いとくわよー
 ってアンタ、まーだ焼いてないワケ?」
レイチェルは呆れ顔だ。
「あの、ちゃんと操作してるはずなんですけど、
 なんだかちゃんと機械が動かないって言うか、
 もしかしたらわたしの操作が悪いのかもしれないんですけど、
 その、えぇと、どうしましょう?」
そんなドロシーの言葉を聞いて、レイチェルがいらだち始めた。
「あー!もう!何なのよアンタはぁ!
 ウジウジと機械いぢくってさぁ!
 ちょい、どきなさいよ。アタシがやってやるからさぁ」
グイと肩を引き寄せられてよろめくドロシー。
ドロシーのいた場所にスルリと入り込み、レイチェルが釜の前に立つ。
手順を逐一確認しながら作業するドロシーとは対照的に、
レイチェルは驚くほどテキパキと操作をこなしていく。
そんな姿を、ドロシーはポカンと見ているしかなかった。
168通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:40:29 ID:???
ある段階まで操作し、急にレイチェルの手が止まる。
「んあ?何コレ。故障してんじゃん。
 ドロッスィーちゃんもさっさと気づきなさいよ。
 ホント愚図ね、アンタはさ」
釜をバカバカと叩きながらボヤくレイチェルの
その言葉を聞き、心底驚くドロシー。
「故障してたんですか!?
 どうりで動かないわけだ」
レイチェルの呆れ顔がひどくなる。
ボカボカと釜を叩く手は止めない。
「アンタってホント中途半端ね。
 運転が得意って聞いてたから、機械に強いのかと思えばコレ?
 何にせよ、これじゃパンは焼けないわね。
 『親父さん』のトコに持ってっか」
「『親父さん』…?レイチェルさんのお父さんの工場に?」
169通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:41:28 ID:???
もはや演奏状態で釜を叩きながら、レイチェルは呆れ続ける。
「アンタはどこまで愚図なん?もうちょっと脳みそ使いなさいな。
 何だって釜を持ってサイド3に帰らなきゃなんないワケ。
 つーか、アタシもうあの家に帰りたくないわ。
 あのね、『親父さん』って言うのは、ベーカリー隊の整備班の
 班長やってるジム・ライトってオッサンの事よ。
 あのオッサンは本当に凄い人みたいよ。
 ちょっとでもギョーカイ知ってれば、名前くらいは聞くもの。
 で、そんな神みたいなオッサンがここに居るの。
 故障くらいなら、チャチャーって修理してくれんじゃない?」
ドロシーは、そんな神様をオッサン呼ばわりする
レイチェルにツッコミを入れたくなった。
が、とりあえず釜が修理できるというのはグッドニュース。
彼女は、釜が壊れたのは自分のせいでは無いのかもしれないが、
自分が使っている時に釜が壊れた以上、自分のわかる所で、
釜を修理して欲しいと思っていたのだった。
「それじゃあ、一緒に『親父さん』の所に行きましょう!」
気持ち良く釜叩きの演奏をしていたレイチェルの手が止まる。
「イヤ」
「え?」
170通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:43:42 ID:???
「アンタ一人で行きなさいよ。
 アタシはそんな余計な仕事したくないの。
 給料が増えるワケでもあるまいし」
「え?え?一緒に行ってくれないんですか?そんな…」
慌てるドロシーを無視して、レイチェルは遠くを指差した。
「場所だけは教えてあげるわ。
 ほれ、あっちに『ベガ』が見えるっしょ。
 黄色いヤツ。名前くらい覚えなさいな。
 そうよ。ギャロップよ。だから、『ベガ』って名前なの。
 アレの名前が『ベガ』って言うのよ。
 で、その隣にサムソンがあるのはわかる?
 サムソンも知らないんかい。
 ルイスくんとストロベリってるクセに、
 そういうコトを聞かないワケか?
 とにかくアッチ!むっさい男どもが
 大量にたむろしてるから、行けばわかる!」
171通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:46:22 ID:???
ギュ。
レイチェルの袖を掴むドロシー。
「ここまできたら、一連托生ですよ。
 さあ、レイチェルさんも一緒に行きましょう!
 わたしだけじゃ、どこがどう壊れてるか、
 ぜーんぜん説明できません!」
呆れ顔を通り越して、苦笑を浮かべるレイチェル。ドロシーの作戦勝ちだ。
「自慢げに言うなよこのボケ娘。しょうがないね、ホント。
 ルイスくんに言って、いい男でも紹介しなきゃ、
 この借りは返しきれんよマジで。わかった?」
「そういうのは、アン姉さんの方が得意だと思いますけど」
「アレはアレで、バズとストロベリってるから全然話にならんわさ」
「そうなんですか!?いつから!?」
「アンタねぇ、仕事忘れるんでないよ。
 ほれ、『親父さん』の所に行くよ」
「はーい!」

1時間後、二人はエレ・トラックに釜を積み込み、
整備班長『ジム・ライト』の元に向かった。
172通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:49:04 ID:???
ジム・ライト。階級は少尉。
公国史上、最も優秀な整備士の一人で、
的確で細かすぎて並の整備兵では会話にも入れない命令を出す人物である。
相手に話す、伝えると言うよりは自分の「確認」の為のように会話する。
「こりゃもう駄目だな。外すぞ。
 ザクの腕の付け根の2番シリンダーと交換。
 ん?これは3番だ、違うぞ。何?無い?
 ならドップのエンジンの3段目から取ってこい。
 無いのか?しょうがねぇな。作るか」
と、どんな部品も何処からでも調達してくる。無ければ自作してしまう。
純正品より調子がよいとパイロットに評判になったという伝説すらある。
こんな伝説もある。
新兵の頃、宇宙テスト中に完璧に整備されたはずの輸送艦が事故。
太陽風の関係で電波も飛ばせず、唯一残った脱出艇で行くにも
救援を連れて帰ってきた時には酸素がもたず全滅は必至、という時に、
同じ機械関係の先輩や上司を後目に彼が脱出艇をばらし、輸送艦を直してしまう。
それが認められ勲章を貰う。
「あれくらいなら高校生の時には出来ました」と言い放ち、
さらにその席で、完璧なハズの機体が故障したと言うことで
連邦軍スパイ侵入説や軍上層部陰謀説を唱える上司達に
「あれはワザとではないのですか。え?違うんですか?
 私はワザと欠陥を残して事故テストをするのだとばかり思っておりました。
 だから出航前のチェックに何も言わなかったんですが」
と将軍の前で上司、先輩の面目を丸潰れにしたのだという。
173通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:49:59 ID:???
そんな彼がべーカリー隊でいつものように『神の右腕』を披露していると、
釜の修理を頼むクシャクシャの金髪をしたちっこい小娘と、
ひどく毒づいた表情をしたおさげのヒョロヒョロ娘とが、二人でやってきた。
傍らにはクレーン付きのエレ・トラックが停まっている。
その影で、彼の部下が渋い表情をして二人の話を聞いていた。
元々彼らは本国でモビルスーツ整備班として組織された、
整備班の花形とも言える立場にいる。
それがなんの運命か、ロクにMSを配備していない、補給部隊にまわされた。
置いてあるのは、護衛用のザクが3体だけだ。
もっとも、そのザクに関しては、恐ろしく完璧に整備されているのだが…
そんな彼らだからこそ、「釜を修理しろ」と言われても、プライドが邪魔をする。
「何故に自分たちエリートが、日用品の修理をしなきゃならんのだ」
と、表情がそう言っている。それを見てジムは激怒した。
「MSを直すのもオーブンを直すのも、
 人の命を救うという点では同じ。
 テメェら一体、毎日毎日誰のおかげで美味いメシを食えると思ってんだ。
 このお嬢ちゃんたちが頑張ってくれてるからだろうが!
 おいシウバ、お前今夜はメシ抜きで整備しとけや。
 理由はわかってんな?
 さて。すまなかったなぁ、お嬢ちゃんがた。
 これからこのオッサンが、チョイチョイっと修理してやるからなぁ」
174通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:50:56 ID:???
そう言うやいなや、どっかと地面に座り込み、彼自身が修理を始めた。
バツの悪そうだった整備員達も、修理が始まるとすぐに工具をそろえだし、
『親父さん』の手伝いを始める。
「おいシウバ!倉庫からコネクタ持って来いや。
 それに、いつもの基盤に、アレだ」
「わかりやしたぁ!」
シウバと呼ばれた整備員も、そんなアバウトな指令に応えるべく走り出す。
「あー…」
釜を見ていたジムが唸る。
「あん?」
何か見つけたらしい。
「フム?」
故障の原因を見つけたようだ。
「フン」
修理方法も完璧のよう。
「親父さん!持ってまいりました」
シウバが息を切らせながらやってくる。
「よーっし。そんじゃ修理しちまうか」
そして数分後…
175通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:53:05 ID:???
「よーっし、修理完了」
整備班全体に歓声があがる。むしろ、怒号と言ってもいいくらいだ。
泣きながら抱き合う整備兵もいる。
そんな様子をポカーンと眺める二人。
「ホントに馬鹿だな、アイツら」
レイチェルの毒づきも、まったく聞こえないようだ。
それにしても、ジムのあまりに滑らかで、あまりに高速度で、
あまりに完璧なその修理は、まるで魔法を見ているようであった。
ようやくくちを開くドロシー。
「あ、ありがとうございました。
 まるで魔法のようです」
汗をふき取りながら、ジムは答えた。
「あー、魔法なぁ。
 魔法が使えりゃこんな仕事しねぇで、
 可愛いお姉ちゃんをいーっぱい出してる所だなぁ」
「セクハラ?」
レイチェルのつぶやきを無視して、ジムは続ける。
「それはそれとして、シウバ、お前は今晩メシ抜きな。
 あと、おい、ブッチー、この釜をパン屋に持ってけ。
 あ?エレ・トラックを借りるくらいしろぃ。それとなぁ…」
次々に指示を出すジム。
やっぱりシウバはご飯抜きになったようだ。
176通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:53:44 ID:???
テキパキと運び出される釜を見ながら、
ドロシーはつぶやいた。
「でも、親父さんは本当にスゴイです。
 まるで機械の気持ちがわかってるみたい」
それを聞いて、ジムは大笑いを始めた。
「機械に気持ちなんざ、あるもんかよ。
 大事なのは、もっと別の事だぃ。
 いやさ、お嬢をバカにしたワケじゃないさな。
 機械にゃ魂がこもってんだよ。
 ソイツを作った人間の魂がなぁ
 ん、ソイツを機械の気持ちって言やぁ、
 気持ちなのかな」
「えぇと」
よくわからない。
そういうドロシーも気持ちを汲んでか、
ジムはもう少し詳しく教えてくれた。
177通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:54:26 ID:???
「大事なのは、それを作った人と、
 それを使う人のことを考える事さなぁ
 こういうトコに、気持ちってのはあるのかもな。
 俺の考えじゃ、機械を生きモンみたいに扱うのは邪道なのよな。
 機械はあくまでも機械。人間様の為の道具にすぎん。
 そこが最後のさじ加減ってモンだ。
 たとえば、今の作業。
 お嬢にはきっと、機械が自分で悪いトコロを、
 俺に教えてるように見えたんだろ?
 でもな、そりゃ違う。俺にゃあそうは見えない。
 俺に見えるのは、機械を作った人間の考えと、
 機械を使っている人間の考えだけだ。 
 でも、それがわかれば、どこが悪くなったかが、
 こう、パーっと透けて見える。
 本当に透けて見えるワケじゃねぇぞ。
 透けて欲しいのは、女の下着ってか。ハハッハ。
 ま、そういうこっちゃ」
本日呆れっぱなしのレイチェルが、
小さな声でボヤく。
「ホントただのセクハラ親父だね、こりゃ」
178通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:55:04 ID:???
その日の夜。
一人っきりで黙々と整備を続けているシウバの元に、
ドロシー、アン、レイチェルの3人が訪れた。
シウバはそれに気づいたようだ。
「ああ、あんたらか。昼間はすまなかったな。
 俺らも、ちょっとおごってたみたいだ。
 今はもう反省してるよ」
レイチェルがどこまでも呆れながら言う。
「そんな程度で反省されても何だ。こっちが困る。
 ほれ、夜食だ。食っとけ。
 アンタの親分が修理した釜で焼いたんだよ」
「あ、ああ。すまない」
彼が包みを開けると、クロワッサンとアンパンと
何だかよくわからない、へらべったいパンが1つ入っていた。
怪訝な表情をしている彼に、アンが説明していく。
「えっとね、このアンパンが、あたしが作ったやつ。
 アンパンって知ってるかな。パンの中にアンコが入ってるんだ。
 もしかしたらアンコもわからないかな。
 あたしがおばあちゃんから作り方を教えてもらったんだ。
 あたしの実家はパン屋だし、味は保障できるよ。
 で、クロワッサンはこっちのレイチェルの作品。味は保障しません。
 ふふ、ウソですよ。結構レイチェルも腕はいいです。
 あと…えっと。ドロシー?」
179通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:56:10 ID:???
説明していく途中で、アンの表情が曇った。
ドロシーが何を作ろうとしたのか、わからなかったのだ。
一体このペシャンコのパンは何なのだろう。
ドロシーもまた、泣きそうな表情になっていた。
実はシウバに夜食のパンを持っていこうと言ったのは、彼女だ。
言いだしっぺの作ったパンが失敗作なのだ。
これほど悲しいことはあるまい。だが、シウバは好意的だった。
ドロシーの表情から、何かを察したのかもしれない。
「そっか。アンパンにクロワッサンにドロシーパンだな。
 良かったらこれからも、整備班にパンを届けてくれよ。
 男ばっかりの職場だから、ほかの連中だって女の子が
 来てくれたら嬉しいだろうし。ああ、もちろん、親父さんもな」
ようやく表情が緩んだドロシーが、嬉しそうに答えた。
「私達の仕事って、パンの配送をしてる班もあるんです。
 もしかしたら、また会えるかもしれません!」
「そっか。そんじゃ、また来てくれよな」
180通常の名無しさんの3倍:04/10/05 22:57:02 ID:???
その帰り道。アンがドロシーに話しかける。
「良かったね、ドロシー。
 あの人、すっごく喜んでたみたいだよ」
「はい!やっぱり持ってきて良かったです。
 パンはちょっと失敗しちゃったけど」
「そうねぇ。ドロシー、ちょっといいかな。
 さすがにそろそろマトモなパンを焼けるようにならないと。
 帰ったら特訓しようか。うん、そうしよう」
「本当ですか!?アン姉さん!わたし、頑張ります!」
「いつまでもペッチャンコだと、
 本当に配送班にまわされるかもなー
 ドロッスィーちゃん、運転うまいんだし、
 バズと一緒に配送するのもいいんでないのん?」
「えー、でも、バズさんと仲良くなっちゃったら
 アン姉さんに怒られそうだし…」
「まーたそういうコトを言うのかこの口は。
 特訓はやめにします」
「えぇー!そんなー!
 レイチェルさんのせいですよ!」
「知らね。もうアタシは宿舎に帰るからなー」
「アン姉さん、特訓しますよね?」
「しーらない。あたしも宿舎に帰るー」
「そんな〜」

そんなある日の出来事でした。
181通常の名無しさんの3倍:04/10/06 00:12:20 ID:???
あいかわらず流石だな。キャラクターの表情がちゃんと見える。
この雰囲気何かに似てるな、と思ってたらパトレイバーだ、
とさっき思い出したよ。お疲れ様ですた。楽しかったです。
182通常の名無しさんの3倍:04/10/10 01:13:24 ID:w04GqQx3
age
183通常の名無しさんの3倍:04/10/10 03:52:07 ID:???
書いてる香具師、ほんとうにGJだと思うよ。
このキャラクター造詣、なかなか書けないと思う。
184通常の名無しさんの3倍:04/10/13 07:53:43 ID:???
ドロシー「ロジャーさ〜ん。小説読ませてください〜」
ロジャー「喜んで。読み終わったら感想も聞かせて欲しいな」



ドロシー「これって・・・」
アン姉 「小説って言うより、エッセイみたいだね」
レイチェ「ただの日記じゃない」
グレイス「戦闘記録としては、貴重かもしれないわね」
ルイス 「ロジャー隊長が言うには、究極のリアリズムなんだそうです」
バズ兄貴「っかぁ〜、暗いねぇ隊長サン。人間もっと明るく生きなきゃ」



ロジャー「ドロシー、すまない。渡す方を間違えた。俺の日記は?」
ドロシー「あ、やっぱり」
185通常の名無しさんの3倍:04/10/18 23:45:31 ID:???
職人さんGJ!乙カレー
186通常の名無しさんの3倍:04/10/19 01:16:29 ID:VfbkLBFo
このスレまだ生きてたのか!
187通常の名無しさんの3倍:04/10/19 21:41:11 ID:???
次は「ドロシー配達に行く」です。
まだ書き終わってません。

つまり、バズの話です。
188通常の名無しさんの3倍:04/10/19 23:01:10 ID:???
>>187
もしかして今までの再アップじゃなくて自身で書いてたのか!?
すげえ。
しかし、数年前に潰れた企画、なんでそこまで入れ込めるんだい?
モチベーションの出所、是非聞いてみたいね>職人
189通常の名無しさんの3倍:04/10/29 02:10:34 ID:???
保守
190通常の名無しさんの3倍:04/11/02 22:44:25 ID:0Cxtm+qy
>188
このスレってその企画の再興じゃないのか?
191通常の名無しさんの3倍:04/11/03 00:01:20 ID:???
>>190
いや、一人で頑張ってるから何か手伝い出来ないかと。
192通常の名無しさんの3倍:04/11/03 10:36:04 ID:???
>191
だったらSS書き込めばいいじゃないか。
もしくはネタを投下するとか。
193元ぶらぐれ:04/11/03 19:03:53 ID:???
誰だかわかんないけれども
職人さんガンガレ
194通常の名無しさんの3倍:04/11/04 22:12:10 ID:???
やあすみません。連邦側の話とか妖怪側の話ばっかり書いちゃって、
肝心のドロシーサイドの筆が進みませんでした。今日か明日にうpします。
プロットの組みなおしとか、結構難しいですね。
>>188
ツギハギです。
>>189
まことにありがとう。
>>190
そうです。
>>191
感想と保守とネタと愛と絵。
>>192
本当は読んでいただるだけでも満足です。
>>193
BGさんとしては、これでいいんでしょうか?
改悪したかもしれないと思うと、ちょっと心苦しいのです。
195ぶらぐれた:04/11/05 00:19:08 ID:???
>>194
いいんじゃないっすか?

レイチェルが絡むことで
ドロシーの表情の幅が広がってるし……ってか
ドロッスィーとストロベリってるが何かツボ入る(W
196通常の名無しさんの3倍:04/11/15 00:48:45 ID:???
保守
197通常の名無しさんの3倍:04/11/20 00:36:27 ID:???
保守
198通常の名無しさんの3倍:04/11/21 17:56:22 ID:???
♪しんじーたくなーい できごーとをー
♪あなたはいままでー どうやってー
199通常の名無しさんの3倍:04/11/22 22:39:11 ID:???
『ドロシー、配達に行く』

『ここで、私達が活動の場にしているベーカリー隊について説明いたします。
ベーカリー隊とは当然俗称であり、正式には『公国軍第227輜重部隊』という部隊名です。
部隊の中の製パン班が公国軍欧州方面輜重隊において最大規模である為に、
前線の兵士からこのような愛称で呼ばれているのです。
食料加工工場および製パン工場を備えたカーゴを牽引するギャロップ
『ベガ号』を中核とし(何故か『砂の女王号』の愛称もあります)、
タシケントのいくつかの食料工場を接収して、ベースキャンプとしています。
製パン隊、精肉隊、食料加工隊、総合食料輸送隊など、いくつかの隊を
統合してベーカリー隊が構成されているのです。
また部隊直属の護衛隊と兵装輸送部隊を有し、小規模の敵勢力ならば、
自らの戦力のみで撃破する事も可能だそうです。
部隊を率いるのは、老練なディック・ディックス大尉。
護衛隊の指揮を執るのは、バイコヌールから来たロジャー・ウィンフリード中尉で…』


200通常の名無しさんの3倍:04/11/22 22:39:57 ID:???
「なーんかさ、文章がカタくね?」
ディスプレイを見つめながら、レイチェルがボヤく。
「わたしは、これでいいかなって思いますけど」
自信なさそうにドロシーがつぶやく。
「うーん。もう少し主観が入り込んでもいいのかなぁ」
アンが頭を抱えながらうなる。
「本国に送るつったって、実際のトコはどーなんだかわかんないワケだし、
 テキトーにやっちゃってもいいんじゃないのん?
 とか思ってたけど、実際に書くとなるとテキトーにもいかないやね」
「あんたはさっきから、何もしてないじゃない。
 ドロシーはドロシーで、何を書いても「良い」って言っちゃうし。
 あたしばっかり文章を考えてる気がしてくるよ。
 もう昨日の夜からずーーっと!疲れたよぉ」
ドロシー達は、ほぼ一月に一回、定期的な報告をしていた。
NGOを名乗りつつも、実際には本国べったりなこの活動を、
空想の中でどう行なわれているのかを本国国民に喧伝する為の報告であり、
つまり、何を書いても広報の際には書き換えられてしまうのである。
レイチェルのぼやきも頂点に達していた。
「アンさぁ、もうちょっとマシなウソつきなよ」
201通常の名無しさんの3倍:04/11/22 22:41:00 ID:???
「ウソなんかついてないわよ。
 あたし、ずっと報告書をまとめようと頑張ってたじゃない。
 何を根拠にそんな事を言うワケさ」
「アンタ昨日の夜、バズとHしてたんじゃないのん?
 アタシ、見ちゃったんだけどねぇ」
「えーーーーーーーーーーーー!?」
「ち、ちがっ!違うよ!そこまでしてない!
 ただちょっと、その、ホントにしてないってばっ!」
「何だ。してないのかぃ。
 で、どこまでやられちゃったん?
 『ただちょっと』どこまで?」
「ホントにしてないの〜。ただ、その、ねえ・・・キス」
「えーーーーーーーーーーーー!?」
「ドロッスィーちゃん、うるさい。すこし静かに。
 そうかぃ。アン姉さんもついに一歩前進しちゃったんかぃ」
「っていうか、いつの間に?
 ロジャーさんのことはいいんですか?」
「聞きたい?聞きたいの?仕方ないなぁ
 精肉班と一緒にバーベキューしたことがあったじゃない。
 あの時にね、ちょっと色々あってさぁ。で、告白されちゃったんだよね。
 ロジャーさんは本当にただの憧れって感じだし、恋愛にはならないかな。
 その点、バズは結構押しも強かったし、悪くも無いかなって。
 で、あたしがここまで言ったんだから、あなたたちも言うよね?近況」
「私はそんな・・・」
「あー、ルイスくんも案外と手が遅いわよね。
 あたしたちが茶化しすぎてるのかな」
「ほかに女でもいるんじゃネーノ?」
「あんたはどうなのよ?」
「聞くなよ」
「言いなよ」
「居ないよねぇ、ジッサイ」
「そうねぇ・・・」
202通常の名無しさんの3倍:04/11/22 22:45:39 ID:???
ベーカリー隊の中核を成す製パン班には、大きく分けて3つの班が存在する。
ひとつは、花形とも言える『パン製造班』ドロシー達は、ここで活動している。
ひとつは各部署に、あるいは他の部隊にパンを届ける『輸送班』。
最後のひとつは、他の班や部隊との連絡や事務処理を行なう『事務班』である。
これらの班を統括しているのがディーダで、
(もっとも、ディーダ本人はパン製造班にかかりきりである)
それぞれの班長を、リンダ、バズ、エリザの3人が務めている。
リンダは公国軍所属で、ドロシー達のような民間からの支援団体との
連絡調整も行ないながら、ディーダの指揮の下でパン製造にあたっている。
ドロシー達からは『班長』と呼ばれ、その技術の高さで尊敬されている女性である。
バズの所属する輸送班は、実際には製パン、精肉、加工、その他もろもろの部隊の
輸送班との合同部隊であり、ベーカリー隊直属の班とも言える。
それゆえに、他部隊と同じように『総合輸送部隊』とも呼ばれるのだ。
ディーダはベーカリー隊全体の副官としての職務や製パン班にかかりきりの為、
事務仕事のほとんどは、エリザに任せっきりの状態である。
バズが『鬼のエリザ』と呼ぶほど、自分にも他者にも厳しい人物である。

そのエリザから、ドロシーに呼び出しがかかった。

「報告書、マズかったんじゃないでしょうか」
「でも、それならアンが呼ばれるんじゃないのん?
 何でドロッスィーちゃんが鬼ザベスに呼ばれるのさ」
「鬼ザベスってあんたね・・・でもそうね。普通ならあたしだよね」
「あ、わかっちゃった」
「え?何故?」
「ドロッスィーちゃん。あんまりパンを焦がしてばっかりだから、
 とうとう経理の鬼エリが怒っちゃって、部署替えの通達が出るんでないのん?」
「ええ!?」
203通常の名無しさんの3倍:04/11/22 23:07:57 ID:???
とりあえず、ここまで。

ちなみに・・・
リンダ・ニュー(27歳・女性)
製パン班班長を務める女性。公国軍所属の曹長。
民間からの支援団体との連絡調整も行ないながら、
ディーダの指揮の下でパン製造にあたっている。
温厚な人柄で技術も高く、班の皆から好かれている。

エリザベス・テイラー・グルーム(29歳・女性)
他の班や部隊との連絡や事務処理を行なう『事務班』を切り盛りする、
ベーカリー隊きっての才女であり、同時に『鬼のエリザ』と呼ばれるほど、
自分にも他者にも厳しい人物である。
何かとリンダと比較されるのが、本人にはたまらなく辛い。
204通常の名無しさんの3倍:04/11/27 03:07:00 ID:U29reLBF
AC5に出てくるオヤジさんみたいなキャラを出そうぜ
205通常の名無しさんの3倍:04/11/27 03:18:40 ID:???
>>204
そのうち出てくる。以前構想されていたOTRは親父分は意外に高い。
>>49-65に登場予定のキャラ表があるよ。あとsageような。
>>203
新キャラ乙。ドロシーとグレイスの関係を投影しているのかな?
ところでこのスレ版のドロシー達三人組はNGO団体所属でいわゆる
軍人ではないのかな。もしかして制服とかも軍服は着てないとか?
206通常の名無しさんの3倍:04/11/27 03:22:12 ID:???
ごめ、sage進行だったのねorz
ハゲ親父よろしく
207通常の名無しさんの3倍:04/12/01 22:41:23 ID:???
「あの…こんにちは、エリザさん」
製パンの仕事も一段落した昼休み。
おどおどとしながら、ドロシーは事務所のドアを開けた。
そこには事務用の色気の無い机とイスがいくつかと、
その机の上に陣取った端末が数台と、書類の山。
それに、壁には予定の書き込みで一杯になったホワイトボードに、
おびただしい数のメモ書きが貼り付けてあった。
まるで呪詛が叩きつけられているかのようだ。
そんな環境に埋もれるように、エリザは一人で仕事をしていた。
ドロシーはエリザに会うのは三度目だ。
最初に部隊に来た時に、挨拶をしているハズだ。
隊の合同バーベキューの時にも、見かけたハズだ。
しかし、どうしてこうも印象が薄いのだろう。
「ようやく来たのね、ドロシー。
 忙しいから要件は簡潔に済ますわよ」
一心不乱に事務処理を行ないながら、エリザは話しかけてきた。
度のきつい眼鏡の奥の視線は、ドロシーには向けられていない。
伸びた前髪が鬱陶しそうだ。手入れをすれば、綺麗な髪だろうに。
ドロシーはそう感じた。
ガチャ。ガチャン。必要以上に強くキーボードを叩く音が室内に響く。
ガチ!エンターキーを叩く音。
「とりあえずはこれでいいかしらね。
 ドロシー、あなた確か、エレカ2種の免許を持ってるハズよね?」
グイと乱暴に眼鏡を引き上げながら、彼女は唐突に尋ねてきた。
208通常の名無しさんの3倍:04/12/01 22:42:05 ID:???
狼狽しながらドロシーは答えた。
「え、ええ、はい。その、実家が酒屋で、
 ウチの教育方針みたいで、その、手に職をつけろって、
 それで、その配達のお手伝いをしなきゃなんなくて、
 去年の夏休みに取りに行きました…」
ドロシーのオドオドとした口調にあからさまに苛立ちながら、エリザは尋ねた。
「要は持っているのよね?
 情報は簡潔に述べなさい」
「は…はい。持ってます」
「話は単純よ。ドロシーあなた、製パン班から輸送班に異動して頂戴。
 これはあなたの能力や資質の問題ね。あなたぐらいしか動かせないのよ」
その言葉を聞いて、真っ青になりながらドロシーは訴えた。
「そんな。確かにわたしはパンを焦がしちゃうし、膨らまなかったりもするし、
 パンづくりには向いてないのかもしれないけど、だけど、だけど、一生懸命やってます。
 異動しなきゃダメですか?わたし、そんなに向いてませんか?
 わたし、まだみんなと一緒にパンを焼きたいです」
泣きそうになりながら話すドロシーを見て、エリザも誤解がある事に気づいた。
「あのね、あなたのパンを焼く能力は関係無いの。
 材料を無駄にされるのは経理としては心苦しいけど。
 あなたに輸送班への異動をお願いしてるのは、もっと別の理由。
 酷く馬鹿馬鹿しい理由だけどね。いいこと、口外しないでよ。
 場合によっては憲兵が出動しかねないんだから。面倒事はご免なのよ。
 先日、輸送班のドライバーが4名程、怪我を負って仕事が出来なくなったの。
 それでドライバーが足りなくなって、他の部隊からかき集めているのよ。
 で、製パン班で2種免許を持っているのが、あなただったの。
 だから、あなたの能力や資質の問題なのよ。あなたぐらいしか動かせないの。
 これはギリギリの決定。私だって民間人を使いたくなかったんだから。
 仕事が終わったら、製パン班に戻って貰うわよ。安心なさいな」
209通常の名無しさんの3倍:04/12/01 22:42:44 ID:???
それを聞いて心底安心するとともに、ふと疑問が生じる。
「あの…なぜ怪我を?」
「キャンプで酔って乱闘騒ぎになったのよ。
 本当、こういう時に役に立たないんだから。あの馬鹿は…
 話はそれだけです。準備をして、輸送班に向かいなさい」
そう言うと、エリザはタバコに火をつけた。
その香りは、どこかで嗅いだ事のある甘い香りだと、ドロシーは感じた。
「それでは失礼します・・・」
立ち去ろうとしたドロシーに向けて、エリザは前髪をかき上げながら
済まなそうにポソリと言った。
「ゴメンなさい、ドロシー。私、ちょっとこの件で苛立っているみたい。
 言い方がきつかったかもしれないわ。許して頂戴。
 最近少し忙しくて・・・他人にあたるなんて最低よね、私」
「いえ、わかります。エリザさんって一生懸命なんだなって。
 わたし馬鹿だから、今ようやく気づきました。
 エリザさん、私たちの就任の時も、バーベキューの時も、
 途中で抜け出して仕事をしてたんですね。
 だからその、印象が薄かったのかなって。
 でも、私たちが安心して仕事をできるのは、
 エリザさんや事務の皆さんが、そうやってガンバって、
 仕事をしてるからなんだなって」
ニコリと笑うドロシーに向けて、苦笑しながらエリザは答えた。
「私は私の仕事をしてるだけよ」
210通常の名無しさんの3倍:04/12/01 22:47:41 ID:???
「ふぅん。ドロシー、あなた期待されてるのね。
 『姉』として嬉しいわ」
製パン班に荷物を取りに来たドロシーに対し、
感心しながらアンが答えた。
「期待、されてるんでしょうか」
真意が読めないドロシーは、困惑した表情だ。
「期待されてるんかねぇ。
 当たり障りの無い人選っつー気もするけど。
 アタシだってドロッスィーちゃんを選ぶぜ?」
いつもどおりのテンションの低さで、レイチェルがチャチャを入れる。
「期待されてるでしょ。ドロシーの能力や資質が買われて、
 輸送班の手伝いに行くんだよ。ドロシー、頑張りなよ!」
「そんな、たまたま資格を持ってたからってだけですよ。
 わたしにそんなに資質があるとは・・・」
「何だ。ドロッスィーちゃん知らないんだ。
 あのな、アタシも持ってんだよ。エレカ2種免許。
 んっと・・・ほれ。見てみ。ちゃんとチェック入ってるっしょ?」
ゴソゴソと懐を探って免許を取り出し、
ヒラヒラとドロシーの目の前にかざす。
211通常の名無しさんの3倍:04/12/01 22:50:05 ID:???
なおさらドロシーは困惑顔になる。
「えー!?それじゃ何でレイチェルさんじゃなくて
 わたしが選ばれるんですか!?」
ドロシーの驚きに反し、アンとレイチェルは呆れ顔になる。
「単純じゃない・・・そんなの」
「アタシじゃサボって仕事にならんと、そんな感じじゃないのん。
 だから言ったじゃん。『アタシだってドロッスィーちゃんを選ぶ』って。
 余計な仕事はしたくないのよ。アタシャ。
 鬼のエリザは、ホント人を良く見てるわな。
 事務所に入り浸ってるハズなのにねぇ
 ありゃ絶対過去に人付き合いで痛い目にあったね」
「レイチェル…あんたってホントに。呆れるわ。
 ほらほら、時間だよ!行って来い!ドロシー!
 がんばりなよっ!」
ドロシーの背中をバンと叩き、アンが気合を入れる。
「ふえぇ・・・いってきます!」
212通常の名無しさんの3倍:04/12/01 22:51:17 ID:???
輸送班のキャンプには、数十台のトラックが集結していた。
モビルスーツ輸送用のサムソン・トラックまでもが数台も待機している。
タシケントを拠点にして、周辺の駐屯部隊に食事を配るためだ。
モビルスーツが1機稼働していた。ザクだ。コンテナを各トラックに分配している。
「…みんな仕事してるなぁ」
ノンビリとした口調で、ドロシーが独り言をつぶやく。
製パン班の駐屯地と輸送班のキャンプは、やや離れた位置にある。
ドロシーはそこまで部隊の装備である『ワッパ』で移動していた。
一人乗りの浮遊式バイクである『ワッパ』は、部署間の連絡や、
短距離の移動、軽い荷物の輸送など、様々な用途に使われる。
製パン班では、ニホン好みのアンによって『オカモチ』の愛称が与えられた。
30分ほどで、輸送班のキャンプに到着した。
バズが大げさに出迎えてくれた。
「おー!よく来たなドロシーちゃ〜ん♪
 まっさかドロシーちゃんがエレトラック運転出来るなんてね。
 さすがのバズ兄さんもビックリさ。さってと、何か質問はあるかな?」
無精ひげをゴリゴリとこすりながら、バズは言った。
この人のノリについていけるだろうか。
ドロシーは不安になりながらも、質問をした。
213通常の名無しさんの3倍:04/12/01 22:56:35 ID:???
「えっと…わたしの仕事は何ですか」
エリザは輸送班に異動する話しかしていなかったのだ。
おそらくは運転するのだろう。が、具体的に何をするかはわからない。
「いきなり本題!?バズ兄さんへの質問コーナーだったのに!
 ま、いいか。そんなに難しい仕事じゃないよ。
 簡単でも無いんだけどね。そこはドロシーちゃんに期待だ。
 他の部隊はてんでバラバラになるんだけど、
 ドロシーちゃんはオレの部隊と一緒に行動してもらうよ。
 ここから120キロくらい先の部隊駐屯地に、メシを運ぶって仕事だ。
 オレがサムソンを運転していくから、ドロシーちゃんは後ろっから
 ノンビリついてきてくれれば、それでいいよ。
 あ、ドロシーちゃんのトラックはアレね。アレ」
バズが指差しながら、そう言った。
その先には、どうにも小さなエレトラックが一台停まっていた。
「あれが」
「そうだよん。ドロシーちゃんには、お酒を運んでもらうよ。
 ダイジョーブ。ビンじゃなくてプラスチックだから。
 んじゃ、ヒトヨンマルマルに出発だから、準備しといてな〜」
そう言うと、スタスタとどこかへ行ってしまった。
「ヒトヨ…何?」
214通常の名無しさんの3倍:04/12/01 22:57:25 ID:???
現地時間14時きっかりに、部隊は出発しはじめた。
結局意味のわからなかったドロシーは、ずっとトラックの中にいた。
「そっか。ヒトヨンマルマルって、そういう意味なんだ」
大型のサムソン・トレーラーはバズが運転する。
自分はあれの後ろについていくだけでいい。
ドロシーは自分の仕事内容について反芻する。
キーを回すと、ルォォォォンというモーター音が足元から響いた。
ほとんどがセミ・オートマチック化しているとは言え、やはりトラック。
一般車とは使い勝手が違う。モーターの稼働状況をディスプレイで確認し、
ドロシーは試しにゆっくりとアクセルを踏み込む。
ゆるり…とエレ・トラックは動き出す。さあ、120キロの旅路の始まりだ。
無線が入る。主戦場から離れた地域だからか、ミノフスキー粒子の影響も無く、
クリアーに聞こえる。バズからだった。
『おーい、ドロシーちゃん。ゆっくりでいいからなぁ〜』
サムソンの窓からタバコが捨てられるのが見えた。
何て非常識な人なんだろう。
ドロシーは憤慨したが、トラックから降りてそのタバコを拾う余裕は無かった。
部隊全体が動きはじめる。まるで動物の群れのようだ。
「慌てない。混乱しない。ゆっくりでいい。大丈夫。大丈夫」
ドロシーが独り言を続ける。心臓がドキドキしてくる。
『うっし。ドロシーちゃん。出発するぞー』
目の前のサムソンが動き出す。元々はモビルスーツを運ぶためのトレーラーだ。
本当に大きい。距離感が取れなくなりそうだ。
アクセルを踏む。コォォォンという音が響く。
エレトラックは、順調に速度をあげていった…
215通常の名無しさんの3倍:04/12/01 22:59:02 ID:???
道中は特に何も問題はなかった。
不思議なくらいに運転しやすかった。
きっとそれは、このトラックがジムの親父さんに整備されてるのがひとつ。
もうひとつは、バズが走りやすい道を選んでいたんだろう。
「これが…プロの仕事なんだ」
ドロシーは感心しながらも、少し悔しい気持ちになっていた。
一体自分は、何に向いているんだろう。
自分はバズやエリザさんのように、プロの仕事が出来るようになるんだろうか。
そんな事を考えながら、ボーっとしてトラックの座席に座っていた。
コンコンと窓を叩く音がする。バズだ。
「おーい、ドロシーちゃん。ご飯だぜ。
 みんなアッチで食ってるし、一緒に食おうや」
「はい。ぜひ!」
「輸送班のメシは、どうにもマズいんだよなぁ
 製パン班の女の子を何人か、こっちによこしてよ。
 あ、だからドロシーちゃんが来たのか!?
 こりゃ失敗した。メシを作ってもらえば良かったぃ」
「わたし、料理はあんまり得意じゃないんです。
 アン姉さんは凄く得意ですよ。
 あと、悔しいけどレイチェルさんも」
「そっかそっか。アンちゃんは料理得意なんだな。
 ぜーんぜん知らなかったい」
アンの話題になり、ついでに、という気持ちにもなった。
気になっている事を聞いてしまおう。
ドロシーはそんな軽い気分で聞いてみた。
216通常の名無しさんの3倍:04/12/01 23:01:33 ID:???
「あの。バズさん。
 アン姉さんのこと、どう思ってるんですか。
 その、アン姉さんから付き合っているって聞いたんですけど」
「アンちゃんは、ちょっとマジメすぎるよね。
 もうちょい肩のちからを抜いて欲しいかな〜とか、
 バズ兄さんは思うわけだよ。うん。
 あんましマジメだと、そのうちエリザみたいになっちまうよ。
 シワが増えっちまうってもんだ。ツノも生えるかもな」
「ふざけないでください。本当にそう思ってるんですか?」
「何だいそりゃ。あー、もしかしてキスの話か。
 部隊の連中に何か吹き込まれたんか?
 いーじゃねえか。チュッチュするくらい。
 まさか、仕事チューにチューすんなって話?」
どうしてこの人は、こうもふざけているのだろう。
もしかして、アン姉さんのこともふざけた気持ちなんだろうか。
ドロシーは不安になる。どうも最近、不安ごとが多い。
「バズさん。もしかして、
 アン姉さんのこと、本気じゃないんですか?」
217通常の名無しさんの3倍:04/12/01 23:02:41 ID:???
その一言を聞き、バズの表情が変わった。
咥えていたタバコを投げ捨てて、ギリと踏みつける。
グイとドロシーに顔を近づけて、言った。
「ドロシー。キミは何か勘違いしていないか?
 俺はいつだって、どんなことにだって真剣だ。
 俺が公王陛下の運転手を自負しているのは、聞いた事があるか?
 何も馬鹿のように自分の腕を自慢したいからじゃない。
 それは自分の仕事を、自分の役目を真剣に果たす為だ。
 それは運転だろうが、女との付き合いだろうが、
 何も変わりはしない。真剣なんだよ」
タバコの残り香がする。甘い香り。辛辣な言葉。
「ご、ごめんなさい」
唐突に表情がフニャっと緩み、バズが言う。
「ちょーっとキツい言い方だったかな。
 でもまあ、そーゆーコトだよ。
 アンちゃんともふざけて付き合ってるワケじゃない。
 ドロシーちゃんが不安になるのもわかんないでもないよん。
 なんせオレ、こんな性格だからさ。
 ほい、メシ食いに行こうぜ」
ポケットから新しいタバコを引っ張り出しながら、
バズはスタスタと歩いて行ってしまう。

「わたしに足りないもの。
 何かわかったような気がする…」
そんなバズの後姿を見ながら、ドロシーはその日最後の独り言をもらした。
218通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:27:13 ID:???
『パンを焼く日々』

「どうしてうまく膨らまないの…?」
その日もドロシーのパンは散々であった。どうも発酵がまずかったらしい。
そんなドロシーに対し、やはりディーダは優しかった。
「まあまあ、失敗しちまったもんはしょうがないさね。
 やってくうちにうまくなるさ。失敗を大事にしな。
 いいかい、ドロシー。失敗を恐れてちゃいけない。
 人間、失敗するからこそ、前に進めるんだからね」
そうなぐさめてくれるのであったが、固い小麦粉の塊でしかないそれをみると、
ドロシーは心底泣きたくなるのであった。
「いいかい、自分で色々と試してみるんだよ。
 菌の入れ具合、発酵の時間、生地の分量。
 そんで勉強してくれればいい。
 ただし、材料を使い切っちまわないように、ね。
 ア〜ッハッハッハ」
ディーダはその体格らしく豪快に笑い飛ばした。
「リンダ、ちょっと見てやっとくれよ。
 あたしはちょいと部隊長の所に行ってくるよ」
「はい、マム」
その日はドロシー達の作業グループに、リンダが来ていた。
「それじゃ、はじめよっか」
219通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:28:28 ID:???
リンダは手際よく作業をはじめた。
一つ一つきちんと説明する彼女に、ドロシーは劣等感を覚える。
実はその後で、彼女も最初はまったく上手くできなかったこと、
必死に努力して憶えたこと、そして笑うと優しい顔をする人だということを知った。
「そうなのよ。実は私、ドロシーどころじゃないパン焦がし名人だったの。
 みんなドロシーが最高記録だと思ってたでしょ。ぜ〜んぜん。
 実はわたしなんだよね。レコード保持者。
 当時はそれで随分と、エリザとケンカしたものよ。
 『焦がしたパンの材料費、一体いくらかご存知!?』って。ふふ」
「そ…そうなんですか」
「あっちゃー。ドロッスィーちゃんを超える逸材がいるとは…」
「へぇぇ。パン焼き名人リンダさんが、実はパン焦がし名人だったなんて。
 ドロシーももしかしたら、パン焼き名人になれるんじゃないの?」
「そうね。努力次第よね。ドロシーは一生懸命だし、いいと思うよ。
 でもまだちょっと一生懸命が空まわりしてるかな。
 自分の出来ることって何だろうって、悩んでるみたい」
ドロシーはドキッとする。今まさに、彼女はそう悩んでいるのだ。
「あの、その悩みは、どうしたら解決できますか?」
「ん…そうね。マムが言ってた通りかな。失敗を大事にすること。
 失敗を怖がらずにチャレンジしていくことだと思うよ」
「よっしドロシー、もう一回チャレンジしよう。
 リンダさんがいるうちに、いっぱい技術を磨こう!」
アンの宣誓によって、『リンダ教室』が再開する。
その日は結局、午後いっぱいまで作業が続いた。
220通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:29:43 ID:???
次の日も、ドロシーのパンは失敗作に終わった。
「あんまし気にしないで。昨日リンダさんも言ってたじゃない。
 『失敗を大事に』ってさ。それにほら、今日のはそんなに失敗してないよ」
「まあねぇ。いつものドロッスィーちゃんのパンは消し炭だもんね。
 今日のは食べれるんでないの。どれ。ムグ…硬いなこれ」
アンもレイチェルも、怒りもせず慰めるように接してくれる。
ドロシーはアンやレイチェルに申し訳なく思うのと同時に、
彼女らが実は自分を怒る価値もないものと思って、見放しているのでは、
と不安に思ったりもする。
もちろん、彼女らの優しさから来るものだ、と判ってはいる。
しかし、胸の中にある絶え様もない不安が、こう自分に囁くのだ。
「誰かの導きがなければ、自分で歩く事も出来ないの?」
と。
221通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:30:45 ID:???
ある日の晩。
「どれ、久々にみんなで食事でもするかね。
 ドロシー、ちょいと精肉班まで行って、カリムの坊やを連れておいで。
 あの坊や、存外に料理が得意なんだよ」
食事用に短時間で作り上げられるチャパティを焼きながら、
マムはドロシー達に話しかけた。
「はい!行ってきます!」
『オカモチ』に飛び乗り、ドロシーは精肉班に向かう。
そんな姿を見て、ディーダが不思議そうにつぶやく。
「不器用なんだか器用なんだか…ホント変わった娘だねぇ」
アンが言う。
「本当は器用なんだと思います。
 何ていうか、自分が何を出来るのか、わかってないだけみたい」
続いてレイチェルも言う。
「自分に自信がねーから、余計な心配ばっか抱え込んでるだよねぇ
 一回でもパン焼きに成功したら、化けるかもしんないけど。
 つーかさ、アン。何だってドロッスィーちゃんはあんなに失敗すんの?
 アンタホントは理由知ってんじゃないのん?」
アンは少し困った表情になり、遠慮がちに言った。
「レイチェルの言うとおりよ。あの娘、自分に自信を持ってないから、
 それで余計な心配ばっかりしちゃってるの。
 不安になってマニュアルひっくり返して、
 だからかえって作業工程にミスが出るのよね」
その言葉を聞き、ディーダが二人に言った。
「それならなおのこと、二人にはドロシーを見守っていてもらうよ。
 壁にぶつかっている今、本当にドロシーを助けてあげられるのは、
 あんた達だけなんだからね」
「はい!」
「うぃーっす」
222通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:32:11 ID:???
『オカモチ』でドロシーと一緒にカリムがやって来た。
「いつものアレ、頼んだよ」
ディーダがニヤリとして、そう言った。
数十分後、料理が運ばれてくる。
カリムが作ったのは、ひき肉のカレーだった。
独特の芳香が食欲をそそる。
「ダンナ…これ、ブタ肉じゃ…」
レイチェルの問いに、ニコリと笑ってカリムが答える。
「そうだよ。ブタ肉たっぷりのひき肉カレーさ。
 ボクの得意料理なんだ。マムのお墨付きさ。
 さ、みんな食べて食べて」
「そんじゃ!いっただっきま〜っす!」
美味しそうにほおばるドロシーとアン。
怪訝そうな表情で食べるレイチェル。
アンが味付けの秘密を知りたくなり、聞いてみた。
「凄く美味しいです!
 どうやったら、こんなに美味しく出来るんですか?
 何か秘密とかあったりします?」
「いやぁ、実は技術はたいした事は無いんだよ。
 上等のひき肉を使ってるからってのがタネあかしさ」
レイチェルが、怪訝な表情のまま話す。
「つまり、ダンナの鑑定眼が、このカレーの味付けの全てってこと?」
「一応スパイスもボクのオリジナルだよ。
 いや、ちょっと違うな。ボクの一族の、かな」
ドロシーも質問する。
「どうやったら、その、鑑定眼ですか。
 それを持てるんでしょうか」
「そうだね。あまり迷わないことかな。
 自分がいいと思ったら、それでいいんだ。
 ボクの仕事は精肉だから、その仕事には責任を持つ。
 責任を持つからこそ、迷わないって事もある。
 そんな感じかなぁ。答えに、なってるかな?」
「…わかります。うん。そうですよね。
 迷わないことも、大切ですよね」
223通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:34:44 ID:???
再び何日か過ぎた。
ドロシーは何度もパンを焼き、何度も失敗していった。
暦はもう10月。地球に降りて、数ヶ月がたっていた。
「出来た!」
釜から出てきたのは、これまでの消し炭やペシャンコパンでは無く、
ふっくらと焼きあがった極上のバターロールだった。
それを見て、満面の笑みを浮かべるドロシー。
「やったね!やれば出来るじゃない!」
表情がほころぶアン。思わずドロシーに抱きついていき、
背中をバンバンと叩きながら、「おめでとう」を繰り返す。
「アン姉さん!わたし、やっとちゃんとパンを焼けました!」
感激のあまり、涙声になりかかるドロシー。
眼にはすでに涙が浮かんでいる。
相変わらずの呆れ顔で二人のやり取りを見ていたレイチェルは、
焼きたてのパンを一つヒョイと手に取り、食べ始める。
「むぐ、むぐ、むー、んぐ、うん。マズくは無いやね。
 ドロッスィーちゃんにしちゃ上出来なんでないのん。
 むしろ完全機械制御の釜で失敗し続けた才能を無くすのは、
 惜しいかもしれんね」
そう言いながら、二つ目のパンをほおばる。
アンは眉をひそめるが、ドロシーはどこか嬉しそうだ。
文句を言いながらも、いつだってレイチェルはパンを試食してくれていたのだ。
以前アンが言っていたレイチェルの優しさを、彼女はわかりかけていた。
224通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:35:57 ID:???
「レイチェルもさ、たまには素直に褒めてあげなよ。
 ドロシーだって頑張ってんだからさ。
 それはそれとして、あたしも1個もーらい!」
1個と言いながら、2つ手に取るアン。
「ルイスくんにも1個あげないとね。
 それとも、自分で渡しに行く?
 ロジャーさんにもひとつかな。
 そう言えば、カリムさんにもあげなきゃ。
 楽しみにしてたみたいだし。
 あとはマムにひとつと、リンダ主任にもひとつ、
 エリザさんにも持っていこうか。
 そんなもんかな。合計7個確保するよー」
そんなアンの言葉を聞き、指折りをしていたレイチェルがニヤける。
「計算があわないやね」
ツラっとして返すアン。
「バズの分に決まってんじゃん。
 わたしからの手渡しですが何か?」
「あー、とうとう言ったな、このラヴバカ女。
 自分ばっかり幸せになろーって魂胆かチキショウ」
「アン姉さん…わたしの作ったパンをダシにして…」
二人の反応は予想通りだったのだろう。
余裕の表情を崩さずに、アンはドロシーにパンの入ったバスケットを押し付ける。
「だからさ、ドロシーもこれ持って、ルイスくんのトコに行って来なよ!
 ぜーったい喜ぶから!ほら!行け!走れ!ドロシーは強い娘だろ!」
「あぅ…は、はい!いってきます!」
パタパタと駆けていくドロシー。
225通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:37:19 ID:???
「あ、あ、あのっ。ここここれを!」
護衛隊のブリーフィングルームに駆け込んだドロシーは、
そのままの勢いでルイスの前まで走りこんで、
ポスッと鈍い音をさせて、パンの入ったバスケットを
ルイスの腕の中に押し込んだ。
「え?何?バスケット?パンが入ってる。
 あ!そうか。これってもしかして、
 ドロシーが焼いたパン、なのかな」
怪訝な表情をするルイス。
それを見て、ドロシーは慌てて説明をする。
「そうです!わたしが焼きました。
 その、今日、はじめてちゃんと焼けたんです。
 だからその、最初にルイスさんに食べてもらいたくて…」
それを聞いて、ニコリとするルイス。
「そっか。ありがとう。大事に味わうよ」
「こ、これからもたくさん作って持ってきますから…」
そこに、二人のやりとりを遠めで見ていたロジャーが来た。
「やあ、ドロシーじゃないか。今日はどうしたんだ?」
「あ…あの」
「隊長、コレ。ほら、見て下さいよ。
 ドロシーのお手製のパンです。いいでしょ?」
ルイスが得意げにバスケットの中身を見せびらかす。
それだけで、ロジャーは今の状況を察した。
「へぇ、美味しそうじゃないか。俺の分はあるのかな。
 おっと、それとも今回はルイスにだけ特別…って事なのかな」
ロジャーはニヤニヤしながら尋ねた。
226通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:38:48 ID:???
弟分のルイスにドロシー。
心理的に、二人の兄のような気分になっている。
初々しい二人の様子を見ていて、少しからかいたい気持ちもある。
「あの、ロジャーさんの分もあります。
 っけど、その、今はちょっと持ってきてなくて」
「聞いたかルイス。俺の分もあるそうだぞ」
「最初に自分の所に持って来てくれたのが重要なんですよ、隊長」
「ルイス、それなら何かお返しをしなきゃならないな」
「あのね隊長。そんな事はとっくに考えてますよ」
やっぱりこの二人って兄弟みたいだ。
ドロシーにはそう感じられた。
「レディには、やはりアクセサリーを贈るべきなんだろうな」
「いきなりそれは無いでしょう。そうだ、食事に誘えばいいかな」
「食事というのもありきたりじゃないだろうか。
 しかし、今のタシケント市に他に楽しみがあるかと言われるとなぁ」
ドロシーを置いてけぼりにして、二人のプレゼント相談が始まってしまった。
出来れば可愛い服が欲しいものだと彼女は思ったが、それは期待出来無そうだ。
「あの、その、当事者の前で贈り物の話をされても…」
「うん。それもそうだ。よし、ドロシー。
 俺はこれからルイスと相談があるから、耳を塞いでいてくれ」
そう言うと、ロジャーはドロシーの後ろに周って、両耳をペタンと閉じた。
「ふえぇ・・・こんな事をしたって聞こえちゃいますよぅ」
「ハハッ。そりゃそうだな」
そう言うと、3人で笑いあってしまう。
こんな時間が、いつまでも続けばいいのに。
ドロシーは心底そう思う。
地球に来て良かった。自分は何か大切なものを得た。
それは何かは言い表せないけれども・・・
227通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:39:49 ID:???
その時、ブリーフィングルームの奥で、大勢のうめき声がした。
あからさまに罵倒する声や、イスをけり倒す音が響く。
ありとあらゆる罵りや呪いの言葉が怒号のように放たれている。
「…何だってんだ」
ルイスが不機嫌な表情を隠さずに奥へと足を運ぶ。
ドロシーも不安を抱えながら、彼の後について行く。
ロジャーだけは何かを察したようで、ゆっくりと別の部屋に向かっていった。
ブリーフィングルームの奥には、大型のレーザー通信TVが備え付けられている。
そこに映されていたのは、本国発のニュース番組であった。
スタジオでは、女性キャスターが泣きながら何かを訴えている。
その画面を見たルイスすらも「畜生!」と叫んでいた。
ドロシーは何が何だかわからない様子で、TV画面を見た。
そこには白いテロップで『ガルマ・ザビ逝去』と書かれていた。
地球進攻作戦の象徴とも言うべき、ガルマ・ザビが死んだのだ。
「そ…そんな…ガルマ様が…」
信じられないという気持ちでいっぱいになった。
が、同時に彼女は肝心な事を思い出した。
「今は戦争中で、ここは戦場なのだ」という事を。
映像はギレン・ザビの演説映像へと切り替わっていた。
諸君らの愛してくれたガルマは死んだ…何故か!?
ギレンの演説は、いつも以上に力が入っているように思える。
周囲の人たちは、食い入るように画面を見つけている。
228通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:41:19 ID:???
『何故…何故って…
 きっとガルマ様も…
 今のわたしみたいに…
 今が戦争だって事を…
 戦争だって事を忘れちゃったんだ!』
ドロシーの眼に、涙が溢れてきた。
何て自分は愚かだったのだろう。そう思うと涙が止まらなくなった。
演説にあわせ、周りの兵士達は大声をあげはじめる。
『ジーク・ジオン』と。
彼女は取り残された気分になった。
ジオンの勝利。果たして自分はそれを望んでいたのだろうか。
自分のしたかった事とは。自分はなぜ地球に来たのだったか。
なぜ、何故、ナゼ?
「情報の交錯は末期的状態になっている。
 戦線の逼迫を隠蔽し、親族の死すら政治に利用し、
 正確な情勢を味方にも伝達していない。
 こんなありさまで『ジーク』とは、脳天気にも程があるじゃないか」
隣に立った長身の男が呟く。ロジャーだった。
「ロジャー…さん…」
「情報センターの端末を利用して、各地の情勢を再確認してきた。
 各戦線の混乱は、収拾がつかない状態になっている。
 連邦軍の大規模反攻作戦の噂は、どうやら真実になりそうだ。
 すでにアジア戦線では、反攻作戦ののろしがあがったという情報まである。
 ドロシー。君に伝えなければならない事がある。
 残念だが、民間人である君たちの出番はここまでになる。
 俺はつい先ほど、ディック指令に上奏文を提出してきた。
 君たちNGO参加者を、バイコヌール宙港まで送り届けようと思う。
 今まで、本当にありがとう。ここから先は、俺達軍人の仕事だ」
ロジャーはむしろ、自分自身に言い聞かせるように、そう言った。
229通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:42:42 ID:???
「ロジャーさん…わたし…わたし!」
「何も言うな、ドロテーア・マルレーン。
 君の言いたい事はわかるつもりだよ。
 でもね、これはあくまでも俺の考えなんだが、
 結局俺達軍人に出来る事なんて、
 軍人以外の人を守る事だけなんじゃないかなって事さ。
 君等がパンを焼くように、俺達は君等を守る。
 君等にパンを焼く日々があるように、
 俺達はこれから、戦争の日々を歩き始めなきゃならない。
 ただ、それだけの事なんだよ」
そこから先、ロジャーは何も言わなかった。
ドロシーもまた、何も言えなかった。
ジーク・ジオンの喚声が沸きあがるブリーフィングルームの中を、
ドロシーは一人、無言で立ち去った。
TVを食い入るように見ていたルイスが、人垣を掻き分けながら
ロジャーの方にようやく出てこれた。
ガルマの死に対する怒りの表情を残しながらも、ルイスは言った。
「ロジャー隊長、ドロシーはどうしたんですか?
 …ロジャー隊長?何かあったんですか?」
ロジャーはそんなルイスの襟首を掴み、自分の方に引きつけて耳元で言った。
「ルイス。ルイス。残念だが、俺たちの夏休みは終わった。
 俺は今までの人生の中で、こんなに心地良い日々は無かったと思う。
 タシケントに来れて、本当に良かったと思っている。
 ここが第二の故郷なんじゃないか、そうも思う。
 だが、明日からは修羅の道だ。俺も、お前も。ここにいる全員が、だ。
 血と火薬と鋼鉄に彩られた地獄に足を踏み入れるんだ。
 覚悟はいいかな、戦友」
ルイスも表情を変える。どこか子供じみた顔立ちが、鋭く変化する。
ロジャーの手首をグッと掴み、周囲の喚声に張り合うように言葉を放つ。
「了解です、隊長。あなたの背中はボクが守ります。
 彼女の命は、ボクが守ります。これで宜しいですか」
「もちろんだ。頼んだぞ、ルイス」
「はい!」
230通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:44:38 ID:???
だが、結果としてロジャーの進言は叶わなかった。
ディック大尉の決断以前に、軍上層部からの命令が下ったのだ。
ベーカリー隊に下された命令とは、この地を周辺一帯の拠点とするべく、
タシケントを絶対に死守すべし、というものであった。
具体的には、増援部隊として本国から1小隊と、
方面軍最強の部隊である『ヨハン隊』との合流が盛り込まれていた。
何よりも重大であったのは、NGO組織の解体の強制と、
命令系統の統一の為にその参加者を軍属として扱う、とあった。
彼女達はやはり、学徒動員の先駆けとして扱われていたのだ。
宇宙世紀0078 10月6日。
地球は混乱の極地にあった…

機動戦士ガンダム外伝 Over The Rainbow 〜少女が見た1年戦争〜
第1章 『ドロテーア・マルレーン』終幕
231通常の名無しさんの3倍:04/12/02 00:55:47 ID:???
で、第2章『マイケル・グッドスピード』に続く…っと。
3章が当然『グレイス・ディートリッヒ』
終章が『ロジャー・ウィンフリード』になる予定です。
既にキャラテンプレが機能してないので、それも書かなきゃ。
232通常の名無しさんの3倍:04/12/02 01:02:40 ID:???
実際の話、何人くらいが読んでくださってるのでしょう?
旧OTRとは随分と設定が変わっている所もありますので、
それに対する意見も聞きたいのですが…
233通常の名無しさんの3倍:04/12/04 01:35:49 ID:???
>>232
ちゃんと読んでるよ。近いうちに感想と私見を書くから待ってて。
234通常の名無しさんの3倍:04/12/08 21:25:22 ID:???
お待たせ。師走は忙しくてね。待たせて申し訳ない。

旧OTRと比べてNGO組織とか現代風にアレンジしているのが
面白いね。ドロシーが初めから軍属であることより説得力があって
いいと思うよ。でも、ならばこの章の終盤で軍属にするよりNGO組織
をギミックにして連邦との戦いに生かした方がシナリオを進行させる上で
良い拘束になったんじゃないかな(連邦軍はジオン公国軍を攻撃出来るが
人道的理由によりNGO組織は攻撃出来ない。またジオン地上軍首脳
はNGO組織を人間の楯代わりとして扱おうとしている、とか)
 逆にNGO組織構成員を守るため仕方が無く軍属として扱うことになる
(戦地で軍人以外が軍務につくとゲリラ扱いになる為、条約が適用されず
捕虜にもなれない、とか)
 今まで一年戦争はWW2がイメージボーンになっていたのだけど
今回新たにOTR を再構築するならこれくらい思い切った現代風なアレンジも
どうかな、って(w

 ドロシーの心の闇、というのが(それを払拭するのが)話の肝になると
思うんだけど、どうかな? 裕福な家庭に生まれ育ったお嬢さんが
虹を見たいって理由だけで戦地に来た。何故平穏な毎日に飽き足りなかった
のか? 彼女は努力を厭わないし周囲から好かれてるし言うほど不器用でも
運動音痴でもない、なによりカワイイ。正直これだけで人生の勝ち組なのに
彼女はどこかで心の不安に怯えている。氏は既に発表されているSSの一節で
このように解釈されている。

>「本当は器用なんだと思います。
> 何ていうか、自分が何を出来るのか、わかってないだけみたい」
>続いてレイチェルも言う。
>「自分に自信がねーから、余計な心配ばっか抱え込んでるだよねぇ

私見でこれを拡大解釈するならドロシーは周囲から一方的に親切にされ
愛を与えられるだけの子供でいたくなかった。自分が何を出来るのか、
誰かに、何を、与えられるのか、守れるのか、伝えられるのか、
自分の最大性能を知りたかったのではないだろうか。恐らく自身でも
意識しない深層心理において。
受動的にではなく、能動的に、自分の人生とアクセスする為には
生きている実感、っていうか自信を獲得するしかない。そういった彼女の希望
が虹という気象現象に込められているような気がする、
そういう部分を氏は大切に暖めておいた方が良い、かもね。
235通常の名無しさんの3倍:04/12/09 18:42:07 ID:8kJODQ6M
保守age
236通常の名無しさんの3倍:04/12/18 20:16:32 ID:???
結局妄想小説スレか
オナニーなら他でやれ
237通常の名無しさんの3倍:04/12/18 21:02:28 ID:???
久々に煽られた。嬉しいっす。
過去に荒らしによって疎開までしたスレなのに、
あまりに煽り荒らしが少なくて、もしかして
当時は本当にその場の勢いだけで荒らされてたのかなぁ
って不安になってましたよ。
ところで、『結局』のあたり、実はもの凄く期待してた?
妄想オナニー小説で始まったOTRが、
妄想オナニー小説以外になるワケないですよぅ。

2章は年明けにでも。
238通常の名無しさんの3倍:04/12/18 23:48:52 ID:???
>>237
煽りに反応して数少ない意見書いてくれた>>234
スルーするのは良くないな。お兄さんがっかりだ。
239通常の名無しさんの3倍:04/12/29 23:30:13 ID:???
ちゅきちゅき
240通常の名無しさんの3倍:05/01/08 00:57:02 ID:???
保守
241おまけ:05/01/14 00:59:38 ID:???
「オッサンよぉ…」
タバコを投げ捨てながら、男が呟く。
「何で俺ら、地球にいるんだろうなぁ」
オッサンと呼ばれた初老の男は、何も言わない。
ただ、車の下にもぐって、黙々と何かを調べている。
「なあ、オッサンよぉ…」
新しいタバコを取り出すため、
ポケットの中をゴソゴソとかき回しながら、男が言う。
「この戦争、負けと違うか?」
ようやくタバコを探り当て、火をつける。
煙が、スゥと空に吸い込まれていく。
オッサンは、車の下から出ようともせずに、
タバコを吸う無精ひげの男に話しかける。
「負けが決まるまでにゃあ、もうちっとかかるだろうがなぁ。
 まあ、確実に負けだな。あと数ヶ月ももたんかもしれんなぁ。
 にしても、ボンクラのお前さんにしちゃあ、随分と鋭いじゃねぇか。
 一体どうしたぃ。誰かに知恵でも吹き込まれたかぃ」
無精ひげの男は、フンと鼻から息を漏らす。
否定とも肯定とも取れない。自分でもわかってはいない。
「ボンクラはボンクラなりに考えるんだよ。
 オレだって気になる時はあるさ。
 そんで『小説家』に聞いたんだよ。
 この戦争は負けなんじゃないかってな。
 『小説家』は何て言ったと思うよ」
視線はどこにも定まっていない。
薄ぼんやりと、地平線を眺めている。
初老の男に問いながらも、心はそこには無かった。
242おまけ:05/01/14 01:00:38 ID:???
「小説家ってかぁ。
 ヨハンの小僧はなかなか良いあだ名ぁつけるもんだな。
 確かに眼鏡の坊やは賢いからな。
 どうせお前はグダグダと戦況を語られたんだろ。
 で、結論は公国の負けだった。
 ところが、お前さんはその理由に納得がいかない。
 そんな所か?ボウズ」
そう言うと、ガラガラと台車が車の下から出てきた。
「ほい、修理できたぜ。お前さんが車を壊すときは、
 決まって面倒な壊れっかたをするからなぁ」
初老の男の表情はいくぶんか明るかったが、
その目はどこか寂しそうな輝きを宿していた。
無精ひげの男は、3本目のタバコに火をつける。
「おぅ、オレぁこれから3機もモビルスーツを整備せにゃならん。
 ここいらで失礼するぜ」
帽子をかぶりなおし、工具箱を持ちながら、初老の男が言う。
無精ひげの男は、遠くを見ながら呟く。
「なぁ、オッサンよ。
 俺は正直言って、この戦争は勝っても負けてもどっちでもいいんだ。
 だけどな、あのお嬢ちゃん達だけは、無事に家に帰したいんだよ。
 これって、変な考え方なのかね」
初老の男はそれを聞き、たった一言だけ答えた。
「男なら当然だろう」

「そうだな。そりゃそうだよな」
無精ひげの男は、タバコを投げ捨て、踏みつけた。
次なる戦場へ向かうため。彼の戦争を続けるために。
243通常の名無しさんの3倍:05/01/14 01:02:45 ID:???
ジャブロー。
我が地球連邦軍最大最強の拠点にして、
あの忌まわしい戦争で酷く傷つきながらも、
なおその威容を維持し続ける鉄壁の要塞。
そしておそらく、私の人生の終焉の地になるであろう墓所。
カビの臭いが鼻をつく。溝鼠どもが小うるさい。
いつもと何らかわる事のない環境。文字通りの牢獄。
私はいつまでここにいなければならないのであろう。
何も変わらない。ただいつも通りなのだ。そう思っていた。
そう、思い込んでいた。何年も。

「面会だ。出ろ」
牢獄の監視員が私に声を掛ける。
そんな話を何も聞かされていない私は、正直面食らった。
私に面会?あの戦争で、私にはもう誰一人身内は残っていない。
仲間もことごとく戦死したはずだ。
「面会?何かの間違いじゃないのか。
 俺の隣の男は、10人の家族が故郷で帰りを待っているらしいぞ」
「その男が虚言癖を持っているのは、貴様とて知っているだろう。
 つべこべ言わずに来るんだな。大佐がお待ちかねだ」
「大佐…だと?だとしたら、尚更人違いじゃないか。
 私にはそんな高階級の知り合いなぞいない」
監視員は鼻息をひとつ鳴らした後、哀れみの視線で私をねめつけてから言った。
「そんな事、俺が知るかよ。長い牢獄生活で脳みそが腐ったのかい。
 いいか、よく聞け。俺は軍人だ。
 いくら脳みそが腐ったからといって、アンタだって軍人だ。
 軍人の仕事とは何だ!戦争をする事!?否!
 殺し合いをする事!?断じて否!!
 我々の職務とは、ただひたすらに上官の命令を守る事だ!
 思い出したか、この狗ッコロが!」
そう言うと、監視員は私を殴りつけていた。
もんどりうって倒れる私を無理やり立たせて、彼は引きずっていく。
そうだ。思い出した。いつだって俺達は『狗』だったんだな。
244通常の名無しさんの3倍:05/01/14 01:03:49 ID:???
「ふん、遅かったじゃないか。どこで道草を食っていたのかね。
 いや失敬。『狗』が草を食うわけがなかったな」
顔を腫らしながら大佐の部屋につれてこられた私の目の前で、
無礼が軍服を着たかのような男が何かしゃべっていた。
フレーズの意味が理解できない。
おそらく糞ったれのアジアの言いまわしか何かだろう。
それとも何かジョークの一種なのだろうか。
部屋を見渡してみる。中央には大佐が、その脇に二人。
赤ら顔の男に、貧相ながらも抜け目がなさそうな男。
大佐?何か違和感を覚える。
それよりも、あの後ろに控えた貧相な男。あれもどこかで…
「ようこそ『フォックスファング』君。私がリヒオン大佐だ。当然君とは初対面だな。
 面食らっているようだな。それはそうだ。こんな訳のわからない状況では、
 仮に私が君の立場であっても困惑するだろうからな。
 戦犯の君がだ。ある日突然面会を求められてだ。
 強制的に連れてこられた先には、なるほど聡明そうな人物が待ち構えている。
 これは謎だ。実に謎だ。そうは思わないだろかね、『フォックスファング』君。
 それとも本名で呼ぼうか?
 元連邦軍独立追撃部隊『猟犬中隊』所属のマイケル・グッドスピード中尉どの」
陰鬱な声で、よくもまあしゃべる男だ。
連邦軍の上層部は、この手の男で溢れているのだろうか。
そんな事もあるまい。
あの戦争の頃は、もっと立派な将校だっていたはずだ。
皆が皆、戦死した訳でもあるまいにな。
「いえ、結構です。大佐。
 我々『狗』には、与えられたコードで充分です。
 それゆえに、我々は『狗』だったのですから」
随分と久々に、人と会話をしたように思う。
いや、これは会話と呼べる部類ではないか。
245通常の名無しさんの3倍:05/01/14 01:04:23 ID:???
「ふん、ずいぶんと殊勝な態度をとるじゃないか。狂犬とも思えんな。
 本当に君は、血みどろマイケルなのかね。
 そもそも君は、何故に私が面会を求めたかも理解できていなかろう。
 5年も世間から隔絶されていたのだからな。何一つ理解すらできていない。
 いいか良く聞きたまえ、『フォックスファング』君。私は君を救いに来たのだよ」
救うだと。この私を?この、泥に塗れた薄汚い『狗』をか?
この男、何を考えている。大佐・・・大佐か・・・?
そうか、道理で違和感を持つ訳だ。
「大佐殿。たしかに私は世の流れを理解できているとは思っておりません。
 それを承知で一つ確認しておきたい事があります。
 あなたは何ゆえ、連邦軍大佐の軍服を着ないのですか。
 その奇異な軍服は一体何の冗談ですか」
その問いに対し、大佐は大いに笑い、そしてこう言った。
「そうだ。それこそが君が何一つ理解できていない証拠なのだよ。
 結論から言おう。『フォックスファング』
 我々ティターンズは、君の身柄を確保する。
 その上で君から聞かなければならない事がある。拒否権は、無い」
いつだって『狗』に対する運命は過酷なのであろう。
しかし疑問は尽きない。この男は何を言っているのだ。
ティターンズ?
私から聞かなければならない事?
私が理解していないのではない。
理解する機会すら与えられていないのだ。
246通常の名無しさんの3倍:05/01/14 01:05:08 ID:???
「大佐殿、質問は許されますか」
「ん、1時間後に我々はオーガスタへと向かう。それに間に合う程度の質問ならばな」
「ならば、質問は3つ。まず1つ目、ティターンズとは一体何の事でしょうか。
 2つ目、私には大佐殿に話すような事は無いと思われます。一体何の目的ですか。
 3つ目、何故にオーガスタへ向かうのですか。話すだけならばここでも充分でしょう」
「ふむ、胡乱な訳でもなさそうだな。安心したぞ。
 5年も牢獄にいたのでは満足に会話するのも難しいと思っていたからな。
 では、できうる限りの質問に答えよう。
 まず1つ目、これはそのうちわかるだろう。君もティターンズに入隊するのだ。
 2つ目、君はあの戦争について我々に語らなければならない事がある。
 憶えているだろう。忘れたとは言わせんぞ。
 『漆黒の戦乙女』
 彼女について聞かなければならないのだ。
 あの日あの時、我々の最新鋭MSを13機も撃破した魔女。
 君等『狂犬』どもが『ガンダム頭』を強奪してまで追撃した化け物。
 あれは一体何だったのだ?噂通りのニュータイプだったのか?
 それともただの小娘か?薬物?人体実験?何をすれば人間はああなれる?
 そんな化け物を、『ガンダム頭』すら破壊された貴様等がどうやって仕留めた?
 任務に忠実であるが故に生かされた君等『狂犬』が、戦闘後何ゆえ任務を放棄した?
 我々にはニュータイプが大量に必要なのだ!人造だろうが強化だろうが何だっていい!
 どんな小さなヒントでもいい!この星の覇権を握り、薄汚い宇宙人どもを駆逐する為に!
 オーガスタ!ムラサメ!ありとあらゆる所で量産しなければならんのだ!
 なあ『フォックスファング』、なあ『血みどろマイケル』、なあ『味方殺しのマイケル』、
 猟犬中隊の面汚しさん。問いたいのはこちらなのだ。
 マイケル・グッドスピード!貴様は一体何をした?あの化け物の死体はどこにある?
 貴様は、語らなければならないのだ!」
大佐の妄言を、私は自然、聞き流し始めた。
そうか、私はまた語らなければならないのか。
あの戦争を。
あの出来事を。
あの物語を。
ああ、あの虹は今でもあの地を彩っているだろうか。


OTR 2章 開始
247通常の名無しさんの3倍:05/01/14 01:21:59 ID:???
>>234
レイチェルブチギレシナリオの為だけに、軍属にしました。ウソです。
>逆にNGO組織構成員を守るため仕方が無く軍属として扱うことになる
(戦地で軍人以外が軍務につくとゲリラ扱いになる為、条約が適用されず
捕虜にもなれない、とか)
というイメージの方が近いかもしれませんね。現場では。
ロジャーの兄貴のキャラがイマイチなのが自分で失敗したなと思います。
オッサン連中の活躍の場が無いのも失敗したかな、と。
次の次ではヨハン、カール、ディビットが合流するんで、もう少し男臭くなるかなと。
グレイスも合流しちゃうんですけどね。
ドロシーのキャラは、今のところはウジウジした娘です。アム子さんみたいな感じです。
泥沼の戦闘が始まってから、また少し成長するんじゃないかなと思います。
『虹』は、たんなる憧れから、少しだけ意味が変わっていくんじゃないかと。
248いらない子たち:05/01/14 01:27:13 ID:???
ベアード大尉
隻眼の戦車乗り。過去に戦闘によって右目を失っている。
生粋の戦車乗りであり、今の時代に生まれた事を呪っている。
61式戦車にて奮戦するも、MSには敵わない事を理解している。
戦車がMSに勝てないのではなく、戦車の能力をMSに
対応させてもらえなかった事に対して、強い憤りをおぼえている。
実験部隊に配置転換され、RX―75ガンタンクへと乗車する事に・・・
「誰が最前線になど出たがるものか。俺の好きな場所は、いつだって後方だ。
 バックベアードと呼ぶなら勝手に呼べ」

カールグスタフ・ノーラ・リヒオン大佐
連邦軍情報部に所属し、地球連邦の裏の歴史を抹殺していく。
年齢不詳の精悍な顔立ち。皺が深く刻まれた面持ち。禿頭。
60歳以上の老人にも見え、30半ばの精悍な人物にも見える。
彼の考える正義とは、『歴史が後に定義づける、くだらないもの』
「私は不意に訪れて、不意に居なくなるだけの存在だ。
 それを『連邦軍を影で操る人物』などと勝手に決め付けて見るから、
 私そのものの判断を見誤る事になるのだ。わかるかね」
249いらない子たち:05/01/14 01:32:26 ID:???
グレイ・ラットマン大尉
リヒオン大佐の指揮下で、歴史を闇に葬り去る人物。中庸こそが正義だと言い放つ。
連邦軍への忠誠も無く、ジオニズムへの傾倒も無い。生きるに、地上はあまりに狭く、宇宙はあまりに広い。
宇宙を『上』と呼称し、忌み嫌っている。
名前は偽名であり、情報部にグレイ・ラットマンは無数に存在する。
信条は「寄らば大樹の陰」だが、権力闘争に明け暮れるのではなく、
単にその方が楽であると考えているから。
マイケルに『ガンダム頭』を譲渡した張本人。
「実に単純な話ですよ。『漆黒の戦乙女』、彼女と彼女の駆る機体を捕獲して貰いたいのです。
 無論、生死は問いません。出来れば生きていた方が良いのですが。
 これは、その為の武器というわけです」

シュノバン中尉
リヒオン大佐の指揮下にいる人物。
典型的なコーカソイド系の顔立ちだが、
常に酒焼けしたような、赤ら顔をしている。
額が大きく盛り上がり、まるでコブのようになっている。
凡庸を絵に描いたような人物。
しかし、彼とてもリヒオン大佐に絶対的な忠誠心を持っている訳ではない。
彼の考える正義とは、『絶対的な支配者が決めるもの』
「大佐に必要なのは、自分の思い通りに動く手であり足である。
 勝手に動く脳など、必要とはしていないのではないか」
250通常の名無しさんの3倍:05/01/20 16:23:15 ID:???
GJ!職人さん乙カレー!
251通常の名無しさんの3倍:05/02/06 13:41:59 ID:???
保守
252通常の名無しさんの3倍:05/02/15 14:23:40 ID:???
保守
253通常の名無しさんの3倍:05/02/21 16:47:48 ID:DLZq0fhp
hosyu
254通常の名無しさんの3倍:05/03/02 16:03:09 ID:hVv9wYRR
保守
255通常の名無しさんの3倍:05/03/08 13:36:08 ID:???
保守の人、ありがとう
256通常の名無しさんの3倍:05/03/20 04:19:24 ID:???
保守
257通常の名無しさんの3倍:2005/03/30(水) 15:53:09 ID:???
保守
258通常の名無しさんの3倍
              ☆ チン     マチクタビレタ〜 
                         マチクタビレタ〜 
        ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
          ヽ ___\(\・∀・) < 職人さん マダー? 
             \_/⊂ ⊂_ )   \_____________ 
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /| 
        | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  | 
        | .慈恩みかん.  |/