高橋「人殺しはともかく、富さんや安彦ちゃんは政治家にはしたくないね、俺は(笑)。
こんな怖い政治家いないじゃない」
富野「僕もそう思うよ。だから無頼漢なんですよ」
高橋「怠け者かどうかっていうのは事実が証明するから怠け者ではないんだけど・・・・逆に
働き者だと思うんだよね。安彦ちゃんも富さんも」
富野「そこが本質的に安彦ちゃんと違うとこで。僕は働き者にみせてはいるんだけども、
ホントに今言った通りのことで、そうみせてるだけなんだよね」
高橋「駆り立てている?」
富野「うん。ホント、いやだもん。この10年20年のことでこういう生活態度してきた
時に思いがあるのは、いっちゃえば、一見働き者の気分にして手に入れられた幸せ感とか
落差加減っていうの知ってたから、今こうしていられるだけのことであって、本性的なと
こで言ったら、富野の男ってどれだけだらしがないかって知らないから、そういうこと言
ってくれるんです。もう気分で財産食い潰すもの」
高橋「まあ、それはまた別なことだよね」
富野「いや、べつのことじゃないね」
高橋「俺ね、簡単に言うとね、富さんの消費能力をそれはちらっと垣間みたことがあるん
で、それはそうだと思う。ようするに蓄財するっていうそういうタイプじゃないね。それ
は判るんだ。それと怠け者とかなんとかね。まあ無頼漢の要素には消費ってあるけどね。
無頼漢かどうかっていうのもなあ・・・・。やっぱり言葉っていうのは他者がその言葉にフ
ォーカスを合わせた時に言葉が生きてくるんで・・・・」
富野「ただね、そういうことで言うと、確かに僕の中で怠け者の部分がみえないとすると、
良いにつけ悪いにつけ富野由悠季ていうキャラクターに与えられた癇性の部分がそれを隠
させてくれたということですね。つまり、癇性の部分で生真面目っていうところの振る舞
いに入ることが出来たし、それこそ人殺しにいくんじゃなくて、コンテ千本切りにいった
ってことですよ。この癇性がなければ、僕の人生はどうなったかホントわからない。この
癇性を僕は病的なものに表すんじゃなくて、公人でありたい、公人であれかしというふう
に気分をスライドさせることができたってことです。それは学生時代に間違いなく教えら
れた部分があったんで、確信して言える部分で頑張ったのかもしれないなってことは言え
るでしょうね」
高橋「頑張ったと思うね。僕のものすごい単純なところでの富さんの評価っていうのは男
っぽいと。他の評価はあんまりないんだよね。俺が知っているいろんな人間の中で結構男
っぽい。有言実行、そういうのが一番大きい評価かな」
富野「実はその一番の評価に対しても僕が自分で納得できる理由があるのは、自分の中に
ある女性性っていうものを、間違いなしに小学校の上級生の時に気がついたんで、男の姿
してるなら男っぽくするという振る舞いにも努力したキャリアがある。・・・・特に高校時代
にかなり意識して男っぽく振る舞うとか、男であれかしという生活信条は取り込んでいき
ましたね」
高橋「女の人の強さはね、言葉なんかに惑わされない。昨日“赤”って言ったことを今日
“青”って言っても、『言ったっけ?』‥みたいな感じで、昨日“赤”だったのも今日“
青”なら“青”。ああいう強さはちょっと男には意外とないね」
富野「僕にはそれがある部分、それも自分の中にあるそういう部分隠してきたという意識
がある。クリエィターの才能論じゃなくて、そういう気質があったおかげでこれだけ、そ
れ程本数が多いと思えないんだけども、シリーズの仕事が出来たんじゃないでしょうかね。
僕の場合、掛け値無しに男だったら出来なかったと思う」
高橋「サンライズがガンダムに行き着いて今のサンライズにつながってはいるんだけども、
ガンダムに行き着いたというところまでで言うと、他のプロダクションと明確にここだけ
は違っていたと言うのはあります?」
富野「あのね、これは傲慢かました言い方になるけども、普通に言ってると分かり難いし
‥‥簡単に言っちゃうと“富野がいたから”です。ホントはこれ第3者の人がきちんと言
って評価しなけれがいけないことじゃないのと思えるけども、言っちゃった・・・・」
高橋「自分で言ったら誤解受けやすいよね」
富野「必ず誤解受ける。受けても言っちゃうのは、そういう説明を僕はこの10年してき
たつもりなんだけど、とにかく伝わらない。とにかく分かってくれない。だから、今日こ
ういうところで、つい一番タブーを言ってしまったんだけど、そのことを10年後には分
かってくれるでしょうね。誰かさんが・・・・」
高橋「えーっ、鬱にもなる!?」
富野「だから、僕はなったの。死にそうにもなって・・・・だから分かったのよね。最近具体
的言葉になってテレビでも言われているんだけど、間違いなく50っていうホントの意味
での今の現代人の更年期障害です。だけどね。その更年期障害だって死にそうなところまでいくぞ」
高橋「俺の・・・・・・・・俺はならないんだよな」
富野「お前はならない。お前はならん。僕はあなたよりセンシティブだしインテリジェン
ス働くからなる。何故それが分からない!(笑)」
高橋「違う、違う!」
富野「ハハハ・・・・」