そのニュースは寝耳に水だった。
終戦である。ここ厚木基地では最近は何もなかったのだが、サイド3の大本営基地からの
緊急放送を受け、事の顛末を聞いた。ギレン総統・キシリア少将は亡くなられたと聞き、
ジオン公国からの放送を聴いた。これが玉音放送なのかと勘違いしてしまった。
そして、もうひとつ気がかりなことはデギン公王が遭難したということである。未だに
消息が聞かれないのである。
程なく、連邦軍艦隊が厚木基地に到着し、今をもって、ここを連邦軍直轄基地にするという
達しが出た。我々は捕虜として扱われることとなった。あわせて、MSも接収された。
連邦軍兵士に言わせれば、ザクを分解した際にザクの基本性能の高さにビックリしていたという。
とりあえず、捕虜待遇は悪くないのだが、連邦の兵士によってザクをばらされる気分は
あまりいいものではない。
それより気になるのは最近、にわかに故マ大佐のコレクションの横流しが横行しているという由々しき事態を
耳にする話である。何もマ大佐だけの話ではなく、ジオン軍の軍服や恩寵品、果てはMSを売るということは
聞いていたが、マ大佐のものを売るということを聞くと、事の大きさに驚かされるばかりである。
とりあえず、ジャーナルのほうはどうなっているのか連絡をとってみることにする。
480 :
“壷ジャーナル”編集長:05/01/03 17:27:30 ID:aUVi8SGH
リモージュ…アドリアン・デュブシェ国立博物館に来ている。
ここには12,000点ものリモージュ焼コレクションが展示されているのだが、故マ大佐により一般公開は禁止されている。
文化までも国の支配下に置かれている。
…そんな中、知らせが入った。終戦である。
片田舎ではまだ混乱はないようだが、都市部では戦後の混乱が目立っているようだ。
U.C.0080.01.03…
遂に来るべき時が来た。
終戦である。同輩たちは泣き、落胆しているが私には実際のと
ころ何の感情も起こらない。ただただ疲れた。今は眠りたい。
捕虜になって丸一日。
我々は現時点ではまだジオン公国の軍人である。南極条約で捕虜の身分を保障されているので
あまりひどい扱いを受けないとおもわれるが、油断は出来ない。心配なのは辺境の地にいる兵士たちだ。
ここ日本において、終戦時の満州でシベリアに連れて行かれ、非人道的な扱いを受けて多数の兵士や市民が
死んでいったと聞く。
昼間、連邦の士官から正式にジオン公国側からの停戦命令がだされ、我々は完全に武装放棄する事となった。
その後、我々は今後についての説明を受けた。まだ我々の立場はどうなるかは未定となっている。
一説にはこのまま連邦軍に入るだの、ジオン公国のままだのと流れている。とりあえずはサイド3に
帰りたい。
夜、食事もそこそこに寝付くこととした。明日をも知れぬカラダだから。
気になるのは何人かがひそひそ脱出だ何だと話してたことである。
大きな基地だと、レーザー通信の施設があって、停戦命令も届くんだけど、
前線で、小型陸戦艇やトレーラーを基地にしている連中には、どうやって連絡したものか。
航空機から拡声器で終戦を呼びかける作戦は失敗した。ツンドラの森の中から砲弾が飛んで来やがる。
連中が中央拠点まで、補給を取りに戻って来るまで待つしかないのかねえ。
戦争に終止符を打って数日…まだフランス方面にいる。
軍の上官命令・上層部公認で故マ大佐に関する出版物を取り扱っていた。
例え、それが芸術出版物としてもだ。
我が身柄もいずれ拘束されるであろう。
重要基地はもう既に連邦政府がいるはずだ。
アンマン戻るには遠いので、グラナダまで出頭しよう。
軍事裁判にかけられるだろうが、虐殺に関わる部隊の所属ではないので、死刑や終身刑は免れるであろう。
…何だか頭がぐしゃぐしゃだ。
1月4日
今日、基地に連邦の整備士やら技師やらがたくさん来ていた。
俺は、ほとんど宿舎に軟禁状態だから分からなかったけど、
顔なじみの整備士の話ではズゴックや戦車等の機甲兵器の点検と押収に来たらしい。
今まで「どうして、ザクじゃなくてこんなカッコ悪いMSに」とか
「なんで頭からロケットなんだよ」とか文句ばっかり言ってたけど、
やはり今まで苦楽を共にしてきた愛機を持っていかれるのは哀しい。
そういえば、扱いやすくするのに随分といじったなぁ。
俺の癖に合わすのに左ブースターの出力上げたり、
よく相手との間合いを読み違えるからクローを長くしたり、
思い返してみるとたくさんの思い出がある。
いつも「ザクが良かった」とか「武装がいまひとつ」とか
言ってたけど、本当はお前のこと好きだったよ。失って初めてというやつかな。
バイバイ、俺の相棒。
あっ!!そういえば、操縦席にあの娘の写真貼りっぱなしじゃないか。
まぁ、焼き増しを持ってるから良いけど、恥ずかしいな・・・
あの娘ともサイド3に帰ったらもう会えないかもしれないんだな。
手が届かなくなる前にアッタクしてみるかな。その方が良いと思うだろ、なぁ相棒。
今日、我々の処遇について発表された。
まず、全員サイド3に帰還することとなった。ここの基地は最前線という事で全員戦争犯罪に
関する容疑をかけられているため、事実上の自宅軟禁の状態に置かれることになった。
出発の日取りは一週間後に決まった。とりあえず、監視付ではあるが町の人にお別れをすることとなった。
町の人は皆一様に惜しんでいた。近所のおばあちゃんは「ずいぶん親切にしてもらったのに・・・・・・」と
がっかりしていた。
それにしても、一番響いたのは狸MSを見つかったときであった。連邦の連中は一様に固まっていたが、
次の瞬間に大笑いされたことだ。悔しかったから、「操縦してから、笑え」といった。
次の瞬間に見えたのはガタガタになって出てきた連邦の下士官と、その大笑いのレビューだった。
「たかだか狸に連邦の極東地区は苦戦させられたのか!?そしてこの機動力はなんだ!思わずちびったではないか」
と。
蜂起したら、倒せそうだな。
U.C.0080.01.05
最近全く日記を書いていなかったが、一大事が起こったので久しぶりに書くことにした。
五日前にア・バオア・クーが陥落し、そしてその翌日に終戦協定が締結されたのだ。
ジオン軍が保有していた数少ない基地だった厚木基地も、今や連邦軍の占領下にある。
これだけでも充分一大事なのだが、さらに厄介な事態になりつつある。
連邦軍が来ないうちに宇宙に脱出しようと、昨日、決まったのだ。
……そのための設備も輸送機も厚木基地にしかないから、厚木基地を襲撃して。
そして今日、それを実行する。
聞いたところだと、2330時にここ佐世保基地から出撃し、翌日0200時に厚木基地を襲撃。
HLVやシャトルで捕虜とともに宇宙に脱出するようだ。
それだけならまだしも、さらに厄介なことに
今回は(遠い昔にシミュレーションを3回受けただけの)俺もMSに乗ることになっている。
果たして無事でいられるだろうか……
フォン・ブラウンで試作した「連邦の白いやつ」の後継機をサイド6に送って
最終調整をしていたのだが、どうやらサイクロプス隊の連中はうまくあれを
破壊してくれたらしい。
あれが木馬隊の手に渡ったら大変な事になるところであった。
しかし、どのみち我々ジオンは勝てなかったということか・・・
私はこのままフォン・ブラウンに残ってもいいものだろうか?
さて、にわかに脱出の動きもある厚木基地。
計算してみた。我がサイド3は位置的には地球から最も遠い。仮に輸送船を強奪したところで
途中で燃料切れになるのがオチ。どこかで給油しようものなら、つかまって軍事裁判で死刑判決
が出ることは目に見えている。
とりあえず、考えてもしようがないので、近所のおばちゃんがくれた煮つけでも食うことにする。
現在、列車でグラナダへ向かっている。
ユーラシアの西の果てへ向かおうとする人間は少なく、列車は空いている。
地球全域が戦場と化していたので、風景も殺伐としている。
時間潰しに日記を読み返してみた。
マ大佐に関する書物を発行していたが、そういえば初めての配置先は全身タイツ部隊だったんだな…。
我ながらよくぞ生き残ったと思う。
疲れた…少し眠ろう。
そういえば、ノースコリアの青年はどうしているのだろうか?
彼は無事生存しているだろうか?
491 :
通常の名無しさんの3倍:05/01/12 22:39:07 ID:5FBU9/f8
ほっしゅ
凄く面白いです。このスレ。まる2時間かけて読破しちゃいました。
なんかちゃんとしたページに保存してほしいでっす。
個人的にはジェリド(犬)のその後が気になったり…
僕はMSパイロットが嫌いだ!
戦車全盛の時代なら歩兵と戦車は持ちつ持たれつの関係だったらしいが、
MSは歩兵など必要としていない。むしろ疎ましいとさえ思っているようだ。
パイロットの奴らめ。あんな高い所でニヤニヤしながら塹壕を掘る俺たちを見てやがる!!
MSが無ければ何も出来ないくせに!あぁ腹が立つ。
494 :
通常の名無しさんの3倍:05/01/17 08:49:25 ID:xj+jD3NK
ほっしゅ
U.C.0080.01.17
今、僕はサイド3に向かう連邦軍の巡洋艦の中だ。
艦内は通路にまで人が溢れ返っている。皆、僕と同じジオン軍の捕虜である。
敗戦のショックよりも安堵感が勝ったのか、
遠慮がちにだが顔見知り同士での会話の声も聞こえる。
僕はと言うと、気晴らしに話をする相手すらいない。
口汚く僕らを罵り、鉄拳を浴びせ・・・そのくせ最後まで僕らの面倒を見てくれた教官殿も、
耐え難い苦痛の連続だった教導部隊での日々を共に過ごした見慣れた顔ぶれも、
もう、この世の存在では無くなってしまった。
どうやら自分はここフォン・ブラウンで除隊ということになったようだ。
出向先のアナハイム・エレクトロニクスでは自分をMS開発グループの
MS設計課長として迎えてくれるらしい。
願ってもないことだ。
そういえば最近ソロモン脱出者が月に降りて来ることが多い。
「彗星」や「悪夢」や「稲妻」や「白狼」といったエースの連中は
無事に生き延びたのだろうか・・・
前略、おふくろ様。
今日配属されたのは念願のザクU部隊です。
すごくカッコイイです。夢見たいです。
同僚と写真撮りましたので同封します。
とーちゃん、かーちゃん、俺はついにやったぞぉおおお!
…って手紙を書いている夢を見た。
正夢かもしれないと、デッキの画像を映してみたが、モニタには見慣れたガトルの姿が...orz
連邦兵になることにした。
なんとかMSパイロットになったはいいがジムにはなじめそうにない。
ザクに乗っていた日々がとてつもなく懐かしい。
今日も定期便がやって来た。
下の奴らは自分達に被害が無いから無視しているが、この前同僚の一人がやられた。
よく見れば、今日は数がやけに多い。
もしかして遂に本格攻勢に出てきたのかと緊張した。
俺の真横にミサイルが当たったが、61式戦車の中にいたから無事だった。
そのままデカブツ相手に砲撃するが、戦車砲が航空機に当たる訳が無く、そのまま見送ることしか出来なかった。
500ゲトc
age
今夜はアナハイムの職員と合コンだ!
うまくやればカノージョと新型MS両方ゲトできるかも!?
(なぜ「ジオン」一兵卒の日記なのに、連邦兵になってる奴とかがいるんだろう・・・)
>>502 間違っても見かけに騙されるなよ!特に金髪の・・・
なんつったっけ?ニナかナニだかいう女には気をつけろよ!
さて、長年慣れ親しんだ厚木を離れ、私はサイド3の12バンチの「ツガル」に向かった。
サイド3の中でも辺境の地と呼ばれるところで、地球からも遠い。コロニーの中では
珍しく雪が降るところである。
とりあえず復員船は何事もなく到着。私は無事に自宅に着いた。しかし、連邦の兵士が
おり、半ば軟禁状態だ。というのも、一部の兵士が戦争難民救済のボランティアの名目
の下、アクシズへ向かったのだが、消息不明となり、私に疑いをかけたということである。
すでに数日。最初は尋問などハードだったが、その後どんどんただ見ているだけということになった。
元々自宅は農家なので、連邦兵が農業に興味をもって、農業の手伝いをしている。
聞けば、都会育ちで土の香りをかいだことがないということらしい。
テレビをつければ、戦犯の軍事裁判が行われている。
ほっしゅ
とうとう我々の基地にも連邦の兵士がやってきた
終戦を言い渡された当初、主要基地では大わらわだったらしいが、
僻地である我々は今の今まで後回しにされていた
元々MSも使い回されたレストア品ばかりが送られてくるような場所で、
付いたあだ名が粗大ゴミ集積所
当然連邦側もそんな基地には見向きもせず、
もしかしたら忘れているのではないかと思ってしまったものだ
連邦の兵士達は基地の隅々まで調べて、MSおよび武器弾薬のたぐい、
果ては『ジオン』と書かれたメモ帳までも徴収する始末
職務に忠実でご苦労なことだ
当然自分の部屋も徹底的に家捜しされ、
この僻地での唯一の楽しみであった壺ジャーナルも持って行かれてしまった
ジオンが敗れ、おそらくもう発刊されることはないであろう貴重な本なのだが、
下手に手向かって軍事裁判で不利になってはたまらない
泣く泣く素直に差し出した
・・・奴らが帰り際、自分の壺ジャーナルを興味深げに読んでいるのが目に入った
連邦にも壺好きが多いのかなぁ
ここ、ノースコリアの朝は眠い。
あっ、みなさま、もうお忘れかもしれませんがあのコードネーム「キシリア帰りの男」です。
さて、今日から、最新モビルアーマー「ザクレロ」によるニュータイプ覚醒訓練だ。
いつものようにチン毛みたいな頭髪の苦学生に
配達された朝刊を見ていて驚いた。 下欄の雑誌広告の所だ。
「月間壺ジャーナル・春だ!街に飛び出そう特集号」の大見出しに
「衝撃告白!埋蔵金発掘現場であの壺発見!!本誌独占スクープ」
その横に「あの当事者(キ○リア帰りの男)一兵卒が語った新事実」
あのー・・・・・僕、またしゃべってないんですが・・・・・・・。
今度は糸井重里(16代目)か?
話題作りか?
もう、やめてほしい。
最近、壷ジャーナルが高値で取引されている情報を聞いた。
元々、軍内部のフリーペーパー的なものだったが、ドル換算で200ドルの
値打ちがついている。枚数が枚数だけに下はこれぐらいだが、
上の話になると、20000ドルにもなるとの事。これは終戦数日前に
出された「国宝級・サワンカローク焼き特集」である。そして、終戦しなければ
発行されてたであろう「セラドン焼き特集」の原版は天井知らずの高値に
なっているようだ。
誰が持ち出したかは知らないが、連邦の連中には大切に使ってもらいたいものだ。
今日はキリタンポ鍋をいただく事にする。
壷ジャーナルが高値で取引されている情報の件だけど
紅茶好きの連邦の将官が、ティーカップセットを収集
するための参考文献として買いあさっていると聞いた。
今日、電話で
>>510のような話をかつての軍友と話していた。
そんなこんなで終戦処理もひと段落した頃、変な手紙が届いた。
ジオンの暗号文だったので、解読すると「ワレラ アステロイドベルト
ニ ヒョウリュウセリ ゲンザイ ゲンキ ニ クラス キンジツサンジョウ」
昔、厚木時代に一緒にいた連中だ。私は連邦から編入伺い届けを出されており、
今後の進退を決めかねている。
彼らに聞いてみるとする。
そんな矢先、家の下から変なつぼが出てきた。とりあえず、レーザー回線で
からくさの主人の鑑定を待つことにする。
連邦の家捜しから3日たった
懸念していた軍事裁判は結局行われず、
代わりに回ってきたのは数枚の紙切れと爺さん一人
(一応大尉で我々の上司になるらしい)
曰く、「おまえら今日から連邦人、そのまま現地の治安維持に勤めろ」
だそうだ
いつぞや連邦のお偉いさんが「ジオンに兵無し」などとの賜っていたらしいが、
現在は人のことが言えないぐらい人的資源が不足しているのだろう
なんだかよく解らない内に平均年齢が上がった我らが基地だが、
それで何かが変わることもなくやることがない
MSが無いおかげで逆に暇になってしまったぐらいだ
こういうときはいつも壺ジャーナルを読んでいるのだが、
以前取り上げられてそれっきり帰ってくる様子もない
爺さんにそれとなく聞いてみると、「アレはいいものじゃ、もっと無いかのう?」
と逆に聞き返される始末
あんたらが残さず持っていったんだろうが!!
それはそうと壺ジャーナルが読めなくなってからと言う物、
一部のファンの間でおかしな噂が流れ始めた
今までの雑誌の海賊版が闇市の目玉商品になっているだの、
ノースコリアへ亡命した編集長が新らしい壺ジャーナルを発刊しただの、
それが地下ルートで同重量の金と交換されているだの、
さらには連邦高官への賄賂には欠かせない一品となっているだの・・・
どっからどう聞いても眉唾物で、
欲求不満のファンの願いが伝言ゲームでまことしやかに
囁かれるようになったとしか思えない。
おかしな世の中になってしまった物だなぁ
とりあえず、アステロイドベルト漂流組が来た。聞けば、彼らは連邦に入りたくないといっていた。
私はどうするか聞いたが、意外な返事である。「編入しろ」と。ただし、情報提供などを怠らない
ようにしてくれとの事である。おそらく彼らは近々蜂起するとのことである。そして、大変な情報を
聞いてしまった。ソロモンの悪夢の異名を持つアナベル・ガトー大尉が合流しているとの事である。
彼は戦死したという情報が一部では流れていたが、どうやら生き残っていたようである。
私もツガルコロニーの農業だけでは心元ないと思ったので、そのまま連邦に編入することにした。
場所はこのコロニー内のミサワ基地である。使われるMSは連邦が手に入れたザクである。
色もそのままにジオンのマークの上にシールを張った状態である。ボディの色とあわないので、
一気に安っぽく見える。角がついているため、指揮官専用である。動作チェックをおこなったが、
若干動きがよい。で、よくみると赤い塗装が所々に見られる。もしかして、これはシャア大佐専用の
ものではないか?そうだとすれば、身に余る光栄ということで、内心かなりうきうきしている。
数日後、壷ジャーナルの編集者からメールが来た。どうやら、彼らは連邦の編集部に引き抜かれたようで
かなりの高待遇のようだ。とりあえず、自宅の庭から出てきた壷の鑑定を頼んであるとメールをした。
514 :
通常の名無しさんの3倍:05/02/21 01:51:31 ID:+vYC+pp7
戦争が終わった。
だが家族はこの戦争でみんな死んでしまい。
気にかけていたあの子もア・バワクー防衛戦でブロックごと消し飛んでいた。
守備隊としてMSで出ていた俺が生き残って他の皆は居なくなってしまった。
帰る場所の無い俺の戦争は終わったのだろうか?
515 :
元守備隊兵:05/02/21 02:07:22 ID:+vYC+pp7
…武装解除からサイド3での軟禁生活
学徒動員され、ろくに戦果もあげれなかった下っ端など用はないらしい。
そういった敗戦の手続きから開放されたが、ズムシティには連邦兵がうようよしてやがる。
この先どうしたらいいか、前向きな考えなどサッパリ思い浮かばない。陰鬱な心で自宅の安アパートに歩いていると、
路地裏から女性の悲鳴が聞こえた。
覗き込むと、連邦のチンピラどもが若い女性を物陰に引きずり込もうとしていた。
…キレた
女の子を逃がしたとこまでは覚えているが、後は連邦のチンピラどもに袋にされてダストボックスに投げ込まれていた。
…誰かに起こされた。
鼻を突く異臭と体中から熱と痛みを感じる。
腫れ上がった目蓋の狭い視界から、眼光鋭い老人が覗き込んでいた。
爺さんは一言俺に聞いてきた。
「お前の戦争はもう終わっているか?」
サイド3は変わっていなかった。
ジオン公国――いや、今は共和国か――はついに戦火に巻き込まれることは無かったからだ。
帰ってきた俺たちに、子供達は地球の、俺たちが戦った戦場の話をせがむ。知らないからだ。知らせなかったからだ。
どうして語ることが出来るだろう。荒廃した地球を、傷付き手当ての甲斐なく死んでいく戦友を、
そして目の前の子とそう年齢の変わらない少年少女がゲリラになって戦っていたことを。
爺さんは俺を立たせると、
「どうしても納得する事ができないなら廃棄物処理場近くの酒場に来い」
そう短く言って立ち去った。
痛みと苛立ちに身を任せて帰路につく途中、復員兵とその家族とおぼしき一団とすれちがった。
その中の誰かが「ここは変わっていないな」と感慨深げに呟いた。
その声が何故かはっきりと聞こえた。
変わっていないか…そう直接戦場となる事のなかったサイド3は、崩れた建物も無く故郷にようやく帰ってこれた兵たちには
懐かしい思い出の地とうつる。それを責める事なんて出来ない、彼らは勇敢さと幸運とを武器に故郷に帰りつけたのだから…
だが変わった所、いや戦争の爪あとは今から始まるのだろう。国力の少ないジオンが連邦を相手に戦ったツケ…
人的資源資源の減少と言うかたちでだ。
帰ってこない父や兄、恋人
若者以上壮年以下のサイド3の男達は、何らかの形で軍属または兵士になっている。
そしてその多くは広大な地球圏へと降りていった。そしてその多くは…
それに加えて、戦前よりも厳しい経済統治を連邦はスペースノイドに対し、行なうだろう。
街頭スピーカは盛んに「ザビ家のやり方は間違っていた。」と繰り返す。
痛みとまとまらない思考で歩いていたらいつの間にか安アパートに帰り着いていた。
時々水になるシャワーを頭から浴び、シップと軟膏を塗っていたらいつの間にか宵闇になっていた。
明かりもつけない部屋の中で、財布と研究室時代から愛用しているPDAをポケットに入れ部屋を出る。
ミサワ基地配属からしばらく経過した。主にこのコロニー内部および周辺の
警備が主な任務だが、元々過疎コロニーなので、暇といえば暇である。
ただ、ここはちょっとした観光地なので、ぼちぼち観光客も来る。
コロニーの外の警備に当たった。戦争の傷跡は宇宙に出ればより明らかになる。
漂う戦艦やMSの残骸は内部から見る分にはちょっとした星の瞬きのような感じで
はあるが、宇宙に出るとその詳細が明らかになる。ムサイ級と思われる残骸、
ゲルググと思われるMS、この辺にはそういったものが多く漂流している。
私は時々、見るも憚るような物を見る。ここに漂うものは破片が多いと思いきや、
その形を比較的とどめているものが多い。中にはブリッジが丸々漂っているものが
ある。中には乗組員らしき遺体がみられる。断末魔の顔そのままで、彼らの苦しみようが
痛いほどによくわかる。空気のないこの宇宙では腐敗することなく、一生このまま漂い続ける
のだろう。その様子にその場所だけ時が止まったような感覚にさえ思われる。彼らの魂は永遠
に宇宙をさまよい続けるのだろうが、あたかも彼らは私に何かを訴え続けているような感覚に
襲われる。そんな私が連邦軍に下ったのは果たして正しい判断だったのか、今もって
考えてしまう。
そう思いながら、今日の仕事を終えた。
そういえば、からくさの主人から鑑定結果が出た。壺の鑑定結果は珍しい沖縄物である。壺屋焼き
である。主人が壺の鑑定書とおまけのシーサーをくれた。
街頭の光の届かない路地裏の暗がりを選んで歩く。
あの老人と会うために、自分の道筋を決める為に
明かりのついてない酒場の裏口にまわると、あの老人がアルコールタンクの上に腰掛けていた。
俺を見ると老人は
「終わっていなかったのか」と苦いものを口に含んだように言った。
老人が先導し、屋内に入る。
スポットライトのように光を絞った薄暗い店内には、意外に多くの人影がいた。
だが酒場につきものの喧騒はない。 誰もが息を潜めるかのように静かに佇んでいた。
老人がカウンターの前に立ち話し始めた。
「多くは語らん。思うところなど皆似たり寄ったりだろうからな。
まず最初にこちらが君たちに与える道は、このまま家に帰り、いつの日かこの宇宙が本当の意味で、我らスペースノイドのモノになるその日まで
スペーズノイドの社会を維持し守ってくれるという道だ。これはわしがこれから言う道と同じ位重要で辛い道だ。今ここで帰る者を誰も臆病者だ等と
誹らぬ。考える時間を与えられなくてすまないが今この場で決めてくれ。」
5人の男が席を立った。
「よく、選んでくれた。そのまま右の扉から地下室へ降りてくれ、案内の者達がいる。」
カッと小さくかかとを鳴らしジオン式の敬礼を老人と残った男達はした。それに返礼をし5人の男達は消えていった。
「さて、残った連中はみなどうしても割り切れないモノを抱えた連中だな。
ここから先は面談形式だ奥の部屋にテーブルの番号を呼ばれたら入ってくれ。」そういうと老人はカウンター奥の扉に手をかけ
「まずは1番からだ。」
周りの男達はしわぶきの一つもせず、一人一人扉の奥に消えていった。
最後に俺のテーブル番号が呼ばれた。
願わくば帰還兵達が自分の居場所を見つけられますように・・・
期待援護射!
今日もコロニー周辺警備だ。
コロニー周辺のゴミ拾いが最近の日課となりつつある。戦争が終わってしまえば、こんなものか
と思いつつも、コロニーに広がるゴミを回収する。ゴミは主に一年戦争の残骸だが、中には隕石も
含まれる。コロニーに穴が開けば、それはすなわち空気の流出を意味し、コロニー住民の死とも
イコールする。だから、地道な作業とはいえ、かなり神経を尖らせる。
今日は初めて、連邦のわが隊の飲み会である。お互いに一年戦争の四方山話で盛り上がった。
ある尉官は元々は地球生まれで、このツガルコロニーにはキャリアの一環として、現場研修を
受けているといい、またある者は一年戦争の時にア・バオア・クーでボールに乗って、ザクに
思いっきり蹴られたが、生き延びたとかお互いの自慢をし合っていた。
こうして話し合える仲間だが、もしかしたら、この中の一人はいなかったかもしれない。
私もそうだが、戦争とは常に死と隣り合わせである。隣どおしの部下や上司と、同士討ち
になってもおかしくはない。そう考えると、このめぐり合わせというのも不思議なものである。
その後、私はカラオケに行って、こっそりジオン公国の国家を歌ったりした。今、ジオンに関する
歌は禁止されており、こういうところでないとろくすっぽ満足に歌えない状況である。
次の日、どうやら飲みすぎたようだ。胃がガンガンして仕事にならない。上官に友人と共に
こってりしぼられた。
ズムシティに戻り、公園のコンクリートの壁の前にオレは居た。
大破したザクから脱出した際にデブリで中指を無くしたオレはもうボールをまともに投げられない。
バットは握れるし打者ならできる、と反論したが、監督もフロントも首を振るだけだった。
ただでさえ戦争によるブランクは大きい。
元チームメートで今は打撃投手をやってる先輩の伝で
来週、サイド5のチームのテストを受けられるところまでこぎつけた。
もうかつての速球はおろか、まともな回転のボールすら投げられない。
壁に投げつけるたびに、あちこちに跳ね返るボールを何度も何度も小走りで拾いに行った。
3日後、オレは魔球を手に入れていた。
マジデ?
デラーズ閣下が艦隊を移動させたのだが
行き先は暗礁宙域のど真ん中だった。
今、我々はジオン再興の志を掲げ
この地を「茨の園」と名付けた。
例え進む道は茨の道であろうとも、
いつの日かジオンを再興する日まで
我々はデラーズ閣下と共に歩もう。
今日は久しぶりの地球圏への出張である。
何でも、ザク後継機に関する意見上申で、ザクの経歴が長い私が周辺コロニーより
推薦された。私はある程度いじっていたとはいえ、本格的な開発となると、さっぱりなので
最初はお断りをしたが、特別給与につられて地球圏へいくことになった。
場所はオーストラリアである。もっとも、先の大戦でオーストラリアは殆どが無くなって
しまった為、無人島みたいなものである。まだ、実用試験も始めていない段階である。
はっきり言えば、かなり鈍重なイメージを受ける。元々、スマートな機体だったザクが
連邦の技術と混ざり合った結果かどうかは分からないが、このような形となってしまうのは
ザク乗りとしては忍びない次第である。
色々私情も織り交ぜた意見具申を行った後、私は久方ぶりにニホンを訪れる事になった。
この厚木ではいろいろあった。タヌキMSや思いのほかの連勝、全国壺めぐり・・・・・・・・。
久々にあった商店街のおばちゃんも懐かしそうにしてた。おばちゃんから、漬物をいただいて
町を歩く事にした。
「ほーほけきょ」
何の泣き声だ!?と思いながら、警戒した。すると、近所のおじいちゃんが「ありゃ、うぐいすだ。
コロニーにウグイスはおらんのかぇ?」
ウグイス?宇宙育ちの私はこれまでそのような名前は聞いた事は無い。聞けば鳥だそうな。
コロニー内部にはあまり鳥がいない。せいぜい牧畜用スペースに設けてある鶏ぐらいで、
後はコロニーでも動物園のあるところでしか見ることは無い。
この鳥の美しい鳴き声にうっとりしてしまい、気がつけば夕方になってしまった。大慌てで
厚木基地に戻り、今日一晩ここですごすことにした。
気になったのは厚木基地に変えるときにもウグイスを聞いたが、音の先を見ると、中年の男が
手を合わせながら、息を吐いていた。
数日寝てないので、かなりぼんやりとしてきた。
今日は何日だ?
保守