【富野以外】ガンダム歴代監督Part2【今いずこ】
スキャンは無理で申し訳無いがとりあえず明貴氏のを速攻で起こしてみた。
3連投くらいになります。聞き手はファミ通編集部員の鈴木ドイツ。
ガンダムのデザインに関わったデザイナーを探訪するシリーズ2回目は明貴美加氏。
正統なメカはもちろん『銀河お嬢様伝説ユナ』等でキャラクター、ゲームデザイナー
としても活躍中なのは周知の通り。『ZZ』等の驚くような“お宝話”を明かしてくれた。
これは一読の価値有りだよ!
>クイン・マンサには秘密があるんです
鈴木 『ガンダム』の最初のお仕事は『Zガンダム』からですね。
明貴 『Z』ではサブ設定ですね。
本格的には『ZZ』から。最初のコンペに参加して、僕の“合体”って
コンセプトが採用されて。
鈴木 『ZZ』では、その後もモビルスーツを担当されてましたね。
明貴 中盤からは全部僕一人で、各話の設定と両方やってましたね。最後の方は、
ずっとスタジオに入ってやってましたから。
鈴木 メカデザインしていくというのは、実際にはどういうような作業の流れなんですか?
明貴 例えば、「番組後半のモビルスーツを作れ」って言われて、自分なりに、細いの、
太いの、変形するの、ってラフを作っていく。
鈴木 じゃ、武器なんかも、設定を考えて自分で書いちゃう?
明貴 そうですね。監督の方から特別言われたのは、最後のクイン・マンサぐらいかな。
「クイン・マンサには秘密があるんだ!」って言われて。クイン・マンサって
モビルスーツには、頭はあるけど首がないんですよ。つまり、頭部が本体から
独立して浮いてるんです。
鈴木 頭が?
明貴 それが、次世代のコントロールシステムらしくって。耐G性ではリニアシート以上の。
で、「その設定は『逆襲のシャア』で使うから、絶対言うな!」って(笑)。
で、『逆襲のシャア』観たけど、そんな設定どこにもない(笑)。
鈴木 富野監督の心の中にだけあったっていうことですね(笑)。
明貴 そう(笑)。あと、ZZのコクピットにある“ZZ”って刻印された合体レバー。
あれは僕が勝手に描いたんですよ(笑)。
鈴木 それは、スーパーロボットへの回帰っていうイメージで?
明貴 そうです。そうしたら富野監督にスゴイほめられた。「こういうものが必要なんだ!
この作品には」ってね。
鈴木 『0080』のほうでは?
明貴 モビルスーツ以外のメカデザイン全般。『0080』はキツキツでやってたから。
特に最後の4〜6話くらいは、僕も原画描いてるくらいだし。設定画を描くより、
原画を描いた方が早い。だから設定画がないメカも、けっこうあるんですよ。
第5話で核ミサイルを運んできた輸送艦とかね。1、2カットしか出ないので、
原画で描いちゃって、設定としては残ってないんですよ(笑)。
鈴木 そして『0083』ですが。
明貴 僕があとで雑誌用に書いたGP−04ってのがあるんですけど、『0083』を
やっている当時から、最初は僕が“ガーベラ・テトラはガンダム4号機だ”って
いうラフを作ったんですよ。装甲吹っ飛ばされると中からガンダムが出てくる、
なんて言ってたの。でも「1作品中にガンダムが4つも出てくるのはヘンだ」って
言われて、そのアイデアは却下になったんです。
鈴木 そうなんですか。
明貴 でも、『0083』が完結してしばらくすると“ガーベラ・テトラは、実はガンダムだ”
って本に載るようになったんですよね。
鈴木 本編では却下されてたのに。
明貴 公式設定になってた。「そんなのダメだよ」って、さんざん言われてたんだけどね(笑)。
>艦隊戦シミュレーションをやってみたい
鈴木 『ガンダム』を離れて、今後やってみたい仕事というと?
明貴 宇宙でも地球でも、“カッコいい艦隊戦シミュレーション”をやりたいですね。
戦艦対戦艦の。現実にはほとんどそういう戦いはなかったですから。
鈴木 第一次世界大戦の艦隊戦くらいですよね。なぜ艦隊戦に惹かれるんですか?
明貴 もともと戦艦が好きなんで。大火器、重装甲っていうのがね。
全長100メートル、200メートルを超える戦艦ってロマンですよね。
だから、自分で『ガンダム』やったときも、戦艦を描くときは、すごく
力入りましたからね。
明貴氏が原作とデザインを手がける『ぜんまいじかけのティナ』は、現在、なかよし誌上で
連載中だ。『ユナ』とはまた違う明貴ワールドをぜひ覗いてみてはいかが?
(ファミ通 2000年5月26日号より)
続いて出渕氏のも落としてみる。聞き手は明貴氏のと同じく鈴木ドイツ氏。
メカデザインという仕事の黎明期から関わっている元祖メカデザイナーのひとり、出渕裕氏。
そのキャリアは『闘将ダイモス』(78年)からスタートしている。そんな氏のお話は、まさに
日本のアニメメカデザイン史に等しいといえよう。ホントにおもしろかったです。
>『0080』では正直言ってやりすぎたかもしれない
鈴木 出渕さんの“初ガンダム”は。
出渕 当時やっていた『ガリアン』が終わって、『Z』の後番組の企画をやってたんですよ。
でも『ZZ』としてガンダムが続くって話になって、準備してたデザインとか全部パア(笑)。
鈴木 それはもったいない(笑)。
出渕 だから、『ZZ』のコンペに参加して、って言われたときに、怒りに任せて描いちゃったんだ
よね(笑)。俺が書いたのはガルスJとハンマ・ハンマと、R・ジャジャとカプール、
ドライセン、バウ、あとはガ・ゾウムか。そのラフを、一週間くらいでバァーッと描いちゃった。
まぁ自分でアニメ用のクリーンアップまでやったのは、バウだけなんだけどね。
鈴木 で、『逆シャア』でガンダムをデザインするわけですね。
出渕 『逆シャア』も、最初は永野(護)くんがやってたんですよ。でもできなくなって、またコンペ。
あのときは、近藤(和久)くんとか庵野(秀明)とか、大森(英敏)くん、小林(誠)くん、
あとは明貴(美加)もやってた……のかな?とにかく手当たりしだいに描かせてた、って
感じでしたね。
鈴木 νガンダムを描くときの出渕さんなりのコンセプトってのは、どんなもんだったんですか?
出渕 “シンプルに”。ディテールがゴテゴテついてるのがイヤだったんですよ。ロボットや
メカニックっていうのをキャラクターとして考えたときに、ポイントがわかりづらいデザインが
多い、って感じてたのでね。ただし、ある程度進化した情報を組み込んでいくっていうのは必要で、
あのフィン・ファンネルは、富野さんから「マントみたいなファンネルが欲しい」って
要求が来たの。で、デザインは鈴木(雅久)くんで、それをこちらが描いたνガンダムと
ドッキングさせてクリーンアップさせたんですよ。あれはいいデザインだと思いましたね。
ただ作画は描きにくそうだったけど(笑)。
鈴木 次が『0080』ですね。
出渕 自分の中でのスタンダードなデザインの“ガンダム”は『逆シャア』のときに作っちゃった
んですよね。『0080』のあとの話になる『逆シャア』で、正統的なデザインのガンダムを
出しちゃった以上、NT−1の顔は、初代のガンダムから極端に変えるわけにはいかないよね。
自分に制約を課しちゃったっていうか。だったらもう、そのまま初代の顔を描くしかない(笑)。
鈴木 そうですね。
出渕 でも、それもできない。試行錯誤の中で、じゃあ全部リファインして、ディテールなどを
アップしていこうと。ファーストガンダム当時の、デザイン的には情報量の薄い部分をこちらで
補強して、自分なりの感性で補強したらどうなるか?っていう形で、一年戦争まで時代を
遡ってやってみたのが『0080』だったんです。ちょっとやりすぎたんですけどね(笑)。
>モビルスーツじゃない“ガンダム”があってもいい
鈴木 今後、「まったく新しいガンダムをデザインしないか?」って言われたら、どうしますか?
出渕 その作品自体の方向性によって違ってくるでしょうね。でも、富野さんに話したことが
あるんだけど、「べつに、ガンダムという名前のついた宇宙戦艦でもいいんじゃないですかね?」
って。ガンダムなんだけど、モビルスーツが出てこないで、“ガンダム”という名の
宇宙戦艦が主役の物語だって、いいじゃないですか(笑)。
鈴木 それ、スゴイですね(笑)。『宇宙戦艦ガンダム』(笑)!。
出渕 そうそう(笑)。
『ロードス島戦記』などの、キャラデザインの仕事も魅力的な出渕氏だけに、個人的には“出渕美女”
のほうを、もっと見たいんですけどねー。でもメカも期待です。
(ファミ通 2000年6月2日号より)