第三回天下一武道会

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343ギレン  3/3


そのとき、更に不思議な現象が起こった。
コインが・・この店内にあるコイン全てが小刻みに動き出したかと思うと、一斉にギレンに向かって飛んでいったのだ。
HANABIの台のコイン、旋風の用心棒のコイン、アラジンのコイン、シオサイのコイン・・とにかく店内にある全機種のコインだ。
それらのコインは、迷うことなく整然とギレンのドル箱に入っていく。あっという間に1箱、二箱溜まっていく。
キシリアの山の様に積み重ねたドル箱も全てギレンのほうに飛んでいく。あっという間にギレンの後ろにコインの山ができる。
「そ、そんな!コインが意志を持つというの!?」キシリアも堪らず叫んだ。椅子からころげおちる。
「こんなことありえない!」ガルマも恐怖していた。
ギレンからは相変わらず光がでている。ガルマはそれにさわろうとしたが、どういうわけか彼には触れない。
まるで、なにかぶあつい粘膜がそこにあるかのように、彼には届かなかった。「兄さん!」ガルマが叫んだ。

「ガルマ!国民!下がれ!こんなことに付き合う必要はない!」
「だって・・」
「これは私とキシリアだけで!」
「な、なにがおこっているというの!ええい!完全な作戦にならないなんて!」キシリアが口惜しそうに、地団太を踏んだ。
「国民どけ!アドリブ総帥の力は!」

もうギレンを直視できなかった。彼から発する光は人間の目には眩しすぎる。
ガルマは手で目を覆った。涙が溢れて止まらなかった。コインの力がこれほど偉大なんてつゆとも思わなかった。

「兄者の命が・・吸われていきます・・」
いつのまにきたのかドズルが後ろにいて手で口を押さえながら、おぅおぅと、涙に咽んでいた。
コインは、もはや山のごとくギレンを包み込んでいて、そのままどこかへとつれさっていくようにみえた。
その暖かな光を感じながらガルマは、スロットをやめようと、頭の片隅で思わざるをえなかった。
「いったいどうなっているんだ・・」
奥からブライト店長がでてきて、そう呟いたが、誰もそれにこたえるものはいなかった。ただ、目の前の光景に、こころを奪われていた。
「これは贖罪だ。人が、コインに心を縛られた人々の贖罪にちがいない」と、副店長のシャアは言った。
「いや。エゴだよ、これは」と、おなじく副店長のアムロが、否定した。
ただ、どちらも瞳からはとめどなく涙をながしていた。それは、コインに囚われた悔恨の涙だったのかもしれない。
そして、さざなみのような拍手がおきて、ギレン達を包み込んでいった。ガルマは、この光景を一生忘れないだろうと思った。

もう・・ナイチンゲールの囁きは聞こえなかった。


アオリ 「 いや、締め方おかしいだろ」