勝負は長引きそうだった。全員惜しい液晶アクションがあるのだが、ことごとく外れるのだ。
三十分経過し、投入金額は一万円を超えていた。突然キシリアが液晶を覗き込んで「ウホッ!」と、喜声をあげた。あわてて覗き込むギレン。
そこには真っ暗な背景に白抜きで文字が映っていた。
あ い ふ る え る 愛 そ れ は 別 れ 歌
「げぇーー!こ、これはまさか・・あの・・激レア演出!?
!圧倒的なコイン爆発力を持つジャブチャンに突入するのか!?」たら〜、と汗が流れるギレン。
そう、それがこの台『宇宙世紀』が熱狂して愛されている理由だった。獣王のサバチャン、アラジンのアラチャンのように。
この台にあるのは、『ジャブローチャンス』液晶に出るモビルスーツを表示どうりに押せばコインが増える。
大体一度のジャブローチャンスでコインは1000枚獲得できる。
更にこの哀戦士の文字がでたときのジャブローチャンスは100連確定!ギレンのでこに青筋がはしる!
液晶にはザク、グフ、ドムが現れて「お願いしまーす!」といっている。
それをガンダムが撃ち抜く。また現れる。それを撃ち抜く。その繰り返しだ。ギレンは動揺を隠せない。
キシリアの台以外の宇宙世紀の台は沈黙しつづけていた。カミーユやギレンの台は一度もビックをひいていなかった。
数時間たって、投入金額が5万を越えたころ、ギレンがぽつりといった。
「貴様・・もともと・・自分以外の台に仕掛けをしていたんだな・・」
「ほほほ・・ご明察。兄上の不敗神話もここまでということね!もう私の勝ちはゆるがない!」
後ろの台で一部始終を聞いていたらしい頭のでかい少年がたまらず叫んだ。
「貴様!一杯コインが飲まれたんだぞ!コインは命なんだ!それを!それを!こんなことして楽しいかよ!」
殴りかかろうとした彼は、店員に阻まれて店の外に放り出された。(カミーユ・ビダンー再起不能)
「ほっほっほ!兄上!おしまいね!」キシリアはコインを後ろに山積・・既に5万枚は出ている・・しながら、高笑いした。
「ほざけ!木の葉積みもできない女が!みろ、今度こそ!」
ギレンの台には、演説中のシャアが出ていた。サザビーもでている。これは、信頼度77パーセントの確立でビッグ。が・・・・ダメ!
ビッグは揃わない。ハズレだった。シャアズカウンターアタックの液晶イベント・・不発!
キシリアが嬉しそうに笑った。その目は、自分の兄を完全にみくだしていた。兄上もお甘いことで・・と暗に目で言っていた。
「ジオン公国総帥をなめんじゃねぇー!!」
見事に禿げた額に青筋を立てたギレンが吼えた。店内中に響き渡るほどの大声で。
「ほほほ・・兄上・・そんな大声出しても私の勝ちは決まっ・・」
そこで、声は止まった。ギレンの台の液晶には、隕石が映っていた。青白く光った隕石。
「な、なにあれ!」と、キシリアは動揺した。
「あ、あれは!まさか!」
ガルマが、雑誌をめくる。そして、あるページで止まった。震える声で読み上げる。
「そ・・それは・・一兆分の一の確立の・・超プレミア・・・今までに誰もひいたことのない・・究極のイベント・・」
「な、なんなのよ・・!それは!」
「超絶イベント・・シャアズカウンターアタックの最中にだけ起こりうる・・追加イベント・・その名も・・ア・・アクシズ落とし!」
「それはどのくらいの獲得枚数があるの?!」
「わ、わかりません!だって誰もひいたひとがいな・・」
「あぁぁ・・・液晶をみて!隕石に沢山のモビルスーツが取りついていくわ!」
液晶には、νガンダムが映っていた。更にリガズィやギラ・ドーガなどがとりついていく。
隕石の落下の間、台は完全にフリーズになっているらしく、ギレンがレバーをたたいてもストップボタンをおしても何も反応が無かった。
「凄い・・こんなイベントをみれるなんて!ボクはなんてついてるんだ!あれ?兄さん?」
興奮していたガルマは、兄の姿をみて困惑した。台から、光が出ている。いや、ギレンから?ガルマは何か胸騒ぎがした。