プロジェクトX 〜挑戦者達〜

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627ドダイ(予告編)
生産力において圧倒的に劣るジオン軍。
兵器の質で、量の不利を挽回しようとの試みは、
試行錯誤の連続、量産化の遅れという最悪の結果をもたらしました。
その中で唯一、間に合った量産機。
連邦軍から「空の悪魔」と恐れられたドダイYS。
その開発の裏にはライバルたちの葛藤がありました。
次回、プロジェクトX。

「恩讐を越えて」
〜奇跡の翼、ドダイYS〜

どうぞ、御期待ください。
628ドダイ(OP):04/09/04 21:57 ID:???
♪〜
ライバルの死
大量輸送vs強襲輸送
机の上で、何がわかる!
命懸けの知恵は、前線にあるんだ
ルッグンの衝撃
思いは、託された
大気との戦い
後へ続く者のために
空の勝者

プロジェクトX 〜挑戦者たち〜

恩讐を越えて
―奇跡の翼、ドダイYS―
629ドダイ1:04/09/04 22:39 ID:???
ジオン軍技術士官、O中尉。
大学で教鞭を取っていたころ、「大気圏力学の神様」と呼ばれていた。
ミノフスキー粒子の中で主導権を握るため、Oが製作を依頼された「ルッグン」
光学技術や磁気探知技術を総動員した上、敵戦闘機とも渡り合える空戦性能を発揮。
芸術と評された。
そのOが、死んだ。
兵器廠技術士官同士の路線対立の結果、バイコヌール実験大隊付として左遷された後、
太平洋でテストフライトに乗り込んでの墜落死である。

結果的にOを殺した男、I。
大学ではOの指導を受け、不倶戴天の敵となった。
「戦局を左右するのは、大量輸送です!」
Iの主張が、対立の始まりだった。
「輸送の量より、地上を制圧できる機体が必要だ。落とされては何にもならん」
「前線の制圧は、MSに任せれば大丈夫です。前進拠点へMSを送り込むことこそ、
勝敗のカギです」
「空論だ」
「先生!」
「机の上で、何がわかる!」
Oは黙殺した。
Iには軍上層部へのコネクションがあった。
無論、Oにもコネクションはあったが、Oは抵抗しなかった。
それでも、一時的な左遷の、はずであった。
630ドダイ2:04/09/04 23:19 ID:???
命懸けの知恵は、前線にある。
それがOの口癖だった。メンテナンスで前線へ派遣される者たちに混じって、
頻繁に戦場へ赴いた。
Oに代わり新型航空機開発のチーフとなったI。
「ファットアンクル」を開発し、自論の正しさを証明した。
折しも、地球降下作戦は拡大の一途をたどり、Iの評価は一気に高まった。
一方、Oが開発した「ドダイGA」は操縦困難な欠陥機との評価が下され、
明暗は、くっきりと分かれた。
それがOを焦らせ、失敗作の改良を急いだ挙句の墜落。
Iはそう信じ、Oの死を自業自得とすら、思っていた。
631ドダイ3:04/09/04 23:56 ID:???
Oの残した研究を回収し整理するよう、上層部から命じられた時、
Iがみずから出向いたのは、おのれの勝利を確信するため。
そしておのれの不安を一掃したいからだった。
急激な戦線の拡大は戦力密度を希薄化し、前進拠点への大量輸送という考えは
理想論となっていった。
最も求められるのは、戦闘中の部隊への緊急輸送。
MSに機動力を持たせると同時に、対地・対空攻撃力は必須条件だった。
「落とされては何にもならん」
Oの言葉には、どうしても負けたくない。
IはOが根城にしていた、太平洋の基地へ向かった。
632ドダイ4:04/09/05 01:07 ID:???
「欠陥機? いえ、操縦の問題は完全に改善できてました」
現場の意見は、おおむね好評である。
Oの死に関し、Iの考えは裏切られた。
運動性に問題はあったが、ドダイGAは地球の大気に適応していた。
ならばなぜ、墜落したのか。
改良試験として過重な重量を積んでいたにもかかわらず、
回収されたブラックボックスによれば、Oは接近して来た雷雲へ突っ込むよう
命じたという。
パイロットは躊躇した。が、
「敵に囲まれたら、どこへ逃げるんだ」
それがOの最期の言葉だった。
633ドダイ5:04/09/05 01:53 ID:???
Oの研究は、当初オーソドックスな戦闘爆撃機を目指していた。
しかしある時期を境として、Oは何かに取り付かれたように、異様な形態へはまりこんだ。
平衡性が不安定で対空砲火の餌食になりやすいフラットトップ、不必要なほどの大出力エンジン、
何もかもが操縦の邪魔であった。
Oは不安定な形態で操縦性を安定させるため、神技的な技量を駆使していた。
そうまでしなくても、この不恰好な形態を変えるだけで済んだのに。
Iには理解できなかった。
そんなころ、基地に警報が鳴った。
「近くの島に、カモフラージュされた建物が見つかったそうです。ゲリラの基地かもしれません」
「ドップだけでは、制圧できないだろう」
「もちろんMSを出しませんと」
Iの目の前で飛び立ったルッグンが、旋回して基地上空へ戻り、高度を下げた。
ザクがその翼につかまる。
あいつも、これを見たんだ。
この光景がOの運命を変えたことを、Iは確信した。
634ドダイ6:04/09/05 02:38 ID:???
Iは人が変わったように、Oの残した資料と格闘し始めた。
フラットトップは、MSを上に乗せるため。
エンジン出力は、将来MSが重装甲になるのを見越した重さに耐えられるよう。
上層部から不合格と評価されたミサイルにしても、MSを降下させる間、地上を制圧するための武装であった。
たった一機でもいい。送り届けることができれば、それで、戦っている兵たちを救える。
Iと口論ばかりしていたころ、Oは口癖のように言っていた。
あなたの勝ちだ、先生。
そう、学生のころも、IはOの研究資料と必死で取り組み、少しでも技術を盗もうと努力した。
今も同じではないか。
敗北を認めたIは、心に決めた。
ドダイを完成させる。輸送機として。
635ドダイ7:04/09/05 03:17 ID:???
Oによるドダイ改良の試みは、すでに最終段階まで進んでいた。
Iは徹底的にドダイのバランスを安定させた。
手を入れる場所が、そこしかなかった。
これで完成のはずである。だが、恐らくOも、死ぬ直前までそう信じていただろう。
Iは試験飛行を基地に依頼した。
意外にも、パイロットや搭乗員から批判は出ず、飛行の決定は、すぐに下された。
「O中尉の弔い合戦なのでしょう?」
パイロットにそう聞かれ、Iはうなずいた。
「死ぬのはもちろん、怖いです。ですが、誰も後に続いてくれないのは、もっと怖い。そんなんじゃ、死んだ奴らが浮かばれません」
笑うパイロットに、Iは深々と頭を下げた。
廃棄予定のザクTを乗せ、ドダイは飛び立った。
636ドダイ8:04/09/05 03:33 ID:???
試験は順調に進んだ。
ザクマシンガンの発射テスト、ミサイル発射テスト、とメニューは消化されていった。
しかし、何かが足りない。Iはそんな思いにとらわれていた。
「低気圧が接近しています。ここらで切り上げて帰りましょう」
パイロットのその言葉で、Iは足りないものに気づいた。
「いえ、その低気圧の中へ」
「御冗談を」
「敵に囲まれたら、他にどこへ逃げるんですか」
パイロットは無言で従った。
この機が墜落しても、誰かが後に続く。
Oはきっと、そう思っていたのだ。
暴風の中でも、エンジンパワーの自動調整で平衡は保たれる。
そのようにIが作った。だから、調整の失敗で死ぬ者が出るなら、その中にIが含まれるのは当然だった。
暴風も落雷も、ドダイの行く手をさえぎることはできなかった。
637ドダイ(ED):04/09/05 03:51 ID:???
♪〜
ドダイYS。
連邦に、航空戦力主体の反攻という、当初からの青写真を捨てさせたのは、この機体だったのかもしれない。
苦戦や敗退を重ねるジオン軍の上には、ザクやグフを乗せ、多数の敵を相手に必死で戦う姿が、いつもあった。
負けいくさで役に立つ機体、Oが素直にそう口にしていれば、無用な口論などしなくてよかったのに。
IはOの墓参りのたび、そう思った。

〜♪

プロジェクトX 〜挑戦者たち〜

恩讐を越えて
−奇跡の翼、ドダイYS−    終