フォーザバレルを一生許さないスレッド

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イントロダクション

インタビュー中盤、「自分は『ガンダムを越える「ガンダム」を作らなくてはいけない』
と言った富野由悠季に、僕は反発するように言った。

僕は、『ガンダム』でなければいけない理由と言うのをまったく感じない、確かにネームバリューはある、
『ガンダム』ならば金を払う人は多い、それはスポンサーも同じだ、
だがそんな『ガンダム』を望む人たちというのは「最悪の人たち」ばかりではないか、
少なくとも僕はちゃんと成功した富野作品であればなんでもいい、
僕が熱望しているのは宇宙世紀でもバイストン・ウェルでもなく新たなる世界だ、
タイトルに「゛」と「ン」のついた作品であればいいのだ、と。

富野はグッと何かをこらえるかのように、天井を眺めながら言った。

「……そう言っていただけるのは本当に嬉しいことだと思います。
 ただ……そうおっしゃってくれる人がいるということをいまのアニメ業界がわかっているのか、
 というとわかっていないだろうと僕は絶望しています。
 少なくとも僕の関与しているサンライズの製作者たちはおよそ感じていません。
 ですがこの数か月の間でそう感じている人たちがいることも僕はわかってきたんです。
 その世代が実は40代50代ではなく30代なんですよ。
 ことしになって初めてです、その年代から”富野企画でやりませんか”って話でてきたのは。
 本来決裁権を持ってる40代、50代の世代には、懐古的にかつての『ガンダム』や『イデオン』のことを知っているから
 やるならばネクストあれ、ネクストこれ、ということにしかならなくて、”新規にやりましょう”という話にならないんです。」

今回のインタビューにするにあたってこちらが用意したシナリオがあった。
それは『ガンダム』で帰る場所を見つけたにも関わらず『イデオン』で集団自殺をし
『ダンバイン』で幻想世界に行った富野は、未だに幻想世界の住人なのかというクエスチョンのシナリオだ。
幻想世界に未だにいるのか、それとも戻って来ているのか。
それを確認する為だけにテレコを回していた。

「バイストン・ウェルに逃げていたつもりはないのですが……」
そう言いかけて富野は少しばかり沈黙した。
「もしかすると逃げていたのかも知れないなぁ……」



今日はここまで。段落間を空けた方が見やすいかと思ったので。
858名無しさん@お腹いっぱい。:03/05/16 03:24 ID:???
乙です。これってインタビュアーはギチなの?
859NTバレル特集その1:03/05/16 03:40 ID:???
>>857
乙〜。んじゃこっちはNTの手前味噌バレル記事いきます。
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「ガンダム」で見慣れた名前がちりばめられた「フォー・ザ・バレル」
これは「ガンダム」なのか、そうでないのか・・・・・・。
リメイクなのか、新作なのか・・・・・・?
ほとんどの人が、「バレル」をつかみかねているようだ!
「バレル」とはいったいなんなのか、いかなる理念による作品なのか、
それをもう一度、ここで呈示してみたい
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以上、とりあえず特集の見出し。個人的には
「ほとんどの人が、「バレル」をつかみかねているようだ!」っていうのに爆笑。
860NTバレル特集その2:03/05/16 03:49 ID:???
再構築によって、「ガンダム」の神髄を探る

 ブライト・ノア、セイラ・マス、ホワイトベース。「ガンダム」世代には
なじみ深い名前。そして「ファーストガンダム」を知らない世代には
新鮮に思えるかもしれない名前。そんな名前がちりばめられた作品
がある。「フォー・ザ・バレル」。
 初お目見えの8月号を見て、なんだこれは、と困惑したガンダムファンは
多いはずだ。まだ、「バレル」を計りかねている人もいるだろう。
 ここでもう一度解説しておこう。「フォー・ザ・バレル」は、「富野の子」ともいえる
新世代4人のクリエーターたちが放つビジュアルストーリーだ。この物語は
富野由悠季の小説版「機動戦士ガンダム@〜B」を原典として展開する。
 小説版「ガンダム」は、アニメ版のたんなるノベライズであることを越えて、
青春小説として高度に成立している力強い作品だ。熱烈なファンの中には
小説版を富野監督の思想の結晶として聖典視する人も多い。
 それを、現在のセンスとビジュアルで再構成してみようという試みが、この
「フォー・ザ・バレル」なのだ。
861NTバレル特集その3:03/05/16 04:01 ID:???
 私たちはアニメファンであるかぎり、程度の多寡はあれ、「ガンダム」という
作品の影響下にある。いわば「人生の何%かがガンダムでできている」ようなものだ。
 そういう人間が、「自分のオリジナル」を正しく見出すには、「ガンダム」と正面から
対決するしかない。「バレル」はそういう作品だ。「ガンダム」に影響を受けた私たちが、
それをもとにしていかなるクリエイティビティーを発揮できるのかを確かめんとする
壮大なチャレンジなのだ。
 試されているのはクリエーターたちだけではない。「バレル」をどう読み、どう受け取るか。
それによって私たちは「自分にとってガンダムとは何か」を浮き彫りにされるのだ。
「バレル」は9月号からビジュアル+小説という形で連載されている(第一回はアムロが
戦死するラストシーンから始まる!)。姉妹誌「NT.com」ではキャラクタースケッチ
「ワールズエンド・バレル」も掲載。ネット関連では、データベースサイト「キャラクションズ」
のほか、英語オンリーの公式HPによって、海外へもアピールされている。
「バレル」とは、受け手の側による「ガンダム」への総決算だ。これを肯定しても、否定してもいい。
だがどちらにしても、正面からこの作品に相対してみてほしい。そして「ガンダム」を知らない人には
新作として触れて、その原典が約20年も前のものであることに驚いてほしい。
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とりあえず今日はここまで。
タイプしながら「ああ〜、つっこみてえ!」という気持ちを押し殺すのに必死だったよ(w
とりあえずギチって自分を「クリエーター」だと思い込んでいる節があるな。
『ガンダム』という世代

アポロが月に降りた時のことは知らないが、
宇宙ではスパナだろうと人間だろうと浮いてしまう事は知っている。
月から地球を見た宇宙飛行士が言った言葉をリアルタイムで聞いてはいないが、
宇宙ではこぼれたジュースが水の玉になる事は知っている。
宇宙空間では音がしないことを知ったのずいぶん後だが、
酸素欠乏症という言葉はずいぶん前から知っていた。

出来ることならこういう書き出しはやめたかった。
巨大な共通言語であるが故の危うさ──
もしかすると誤解しか生まれないその言葉を使うにはずいぶんとためらいがあり、
出切ることなら使わずに済ませたかった。しかし──あえて使う。

『ガンダム』。この4文字ですべてが語られてしまう気がするし、
何ひとつ語られていない気もする。
本当に共通言語となってしまったものだけが持つダブルミーイング。

「ガンダムセンチネル」って言葉はもう封印しようよ」

電話での小田切博の発言である(『〜センチネル』に関してはあえて説明を省く)。
確かに。僕もその言葉の持つ空気に心底嫌気がさしていたので共感した。
そして僕は「『ガンダム』もね」と付け加えた。
同時代を過ごした人間に対する不用意な共通言語は、いつも失望と絶望に満たされていた。
軽々しく「それ」を語る人間の対象に対する愛情のなさも嫌だし、
かといっていまだ「それ」の中に埋もれる連中も嫌いだ。
特に上記2つのような「アレ見終わったら普通アニメファンやめるでしょう!」
という内容のものであれば特に。

この数年で、『ガンダム』という言葉を何度も聞き、
自分自身もとまどいながらも、その言葉を口にしてきた。
だが、(最悪の例として)ゲーム誌を見れば「ガンダムテイストな 作品!」
「ガンダム世代なら即ゲット!」といったクラクラしそうな言葉がきょうもいくつも並んでいる。
ロボットイコールガンダム。ロボットといえばガンダム。
同世代視してみてもかえって来るのはいつも絶望。
「何を見てるのかではなく、どう見えるのか」であることをつくづく痛感する。
そんなことに嫌気が差して、だから僕はその言葉を封じた。
なのにやはりこの人を前にするとその言葉を出さざるを得ない。
──富野由悠季。

眠れないので続きw

>>858
そうです。

アニメ誌10年を振り返るとき、けっして外せない人物のひとりが富野由悠季である。
そんな大御所に最年少ライターが迫る。年齢差は33歳!
もはや親子を越えてもおかしくはない年齢差だが、
でも数字が揃ってなんだか縁起がいいぞ!

だってさw

>>859-861
乙カレー
インタビュー開始前

富野由悠季は大きな窓に背を向けるようにして椅子に座った。
カメラマンが写真撮影の準備をしている。ウェイターがコーヒーを運ぶ。
カメラマンが露出計をいろいろな場所にかざして露出を調べている。
その様子に富野は何かを訪ねている。

「どうしても撮りたいものが出来たんだけれども露出が拾えないんですよ」

話を聞きながらその顔をじっくりと見る。
もちろん初対面なのだが、氏の顔はCMYBの4色で何度となく見ていた。
その印象と照らし合わせるとずいぶんと老けた印象を覚える。

その撮りたいものとは?と尋ねると「ミクロの世界なんですよ」と、富野。

「すごく極端な言い方をするとタンポポの茎を
 接写したいんだけど露出が拾えないんですよ」

テレコのスイッチを静かに押し、話のストーリーを読み、
それを撮ろうと思ったのはどういう理由で?と聞く。

「新しい企画を考えていて(笑)その為にしっかりと調べておきたいと思いまして」

不意に男の顔が変って見えた。
こんな陳腐な表現しか出来ない自分にもどかしさを感じるが、
確かに昔の、若いころの顔に変ったのである。

「実際に草や昆虫を接写した写真もあるのですが、
 それとは視点が全然違うので参考にならないのです。
 僕はそれを部隊にしようと思ってるから」

「いま『みなしごハッチ』を考えたとき、当時は忙しさにかまけて
 ずいぶんといい加減につくっていたんだなぁと思いまして。
 当時もそれなりに調べてはいたんですが、やはりいい加減です。
 実際に土手に寝っ転がって見た時、実際のミクロの世界ってのは
 相当にうるさいんですよね」

入室から数分。場の雰囲気はまだたあいもない雑談の余韻を残している。
そんな雰囲気から自然に流れていくようにインタビューは始まった。



次から長くなるので、また時間が有れば。