【護る】99のリクしたSSを00が書くスレ11巻【戦う】
「本物のローラになっちゃった?」
それは事故なのか、それとも必然的に起こりうる出来事だったのか。
起きてしまったものは仕方が無い。
……と、ロランは納得など出来なかった。
「どういう事だ……身体が……」
ホワイトドールをいろいろと調べている最中、不思議な光に包まれて
違和感を感じた途端、ロランは本能的にその場から逃げ出した。
……自分の姿は、誰にも見られていないはずだ。
やがてハイム家に到着し、逃げ込むように自室に入る。
そして、高鳴る胸を押さえつけながら、ロランは姿鏡に映った自分の姿を見た。
胸を押さえた瞬間、くにゃりと異様は感触がした。
「……なんだ、この変な感触」
突然の出来事を受け止められないロランは、ごくりと唾を飲み込み、
ゆっくりと衣服を脱ぎ始めた。その間、鏡には一切目を向けなかった。
そして、全裸になったロランはおそるおそる鏡を見る。
「なっ!?」
ロランは愕然とした。そこには紛れもなく女性の肉体が映っていた。
女性の象徴ともいえる胸のふくらみ……しなやかな腰のくびれ……
そして、あるはずのものが無いという真実。
ロランはわなわなと唇を震わせて、その場に膝をついた。
「こ、これがグエン様に知られたら……」
グエンが自分をローラと呼んでは、怪しげな視線を送っている事にロランは気付いていた。
ロランが男だという事を少しでも気にしているのか、
関係を迫ってくる事はなかったが、これが知られたのなら事情は変わってくる。
「狙われる……僕は逃げられるのか?!」
肉体は女性と化しても心は男性のロランは、嬉々とした表情を浮かべながら
自分に迫ってくるグエンを想像し、真っ青になって冷や汗を手の甲で拭った。
「どうしよう……どうすれば……」
しかし、激しく混乱して何も思い付かず、のろのろと立ち上がると力無く衣服を身に着け始めた。
「ロラン、帰って来てるの? ちょっと聞きたい事があるんだけど……
あ! ごめ……」
ノックを扉を開けたソシエは、上半身が裸のロランを目の当たりにして
顔を背けた。だが、異変に気付き、再びロランを見た。
「ロ、ロラン……その胸……何?」
「ソシエお嬢さん!? あの、これは……違うんです!」
咄嗟に胸を隠していたロランはあわててシャツを着て、
サスペンダーを上げると、両手を振って意味も無く否定した。
ソシエは部屋に入って後ろ手で扉を閉めると、眉をひそめてロランに近付く。
「違うって……何が違うのよ!
あ、分かった。ムーンレィスはそういう特異体質なんでしょう?」
「だから違うって! これは事故なんです」
「……事故? 何の事故よ。往生際が悪いわね、素直に認めなさいよっ!」
何故か怒りをむき出しにし、涙を浮かべてロランに詰め寄るソシエに、
ロランはため息をついた。そして、ソシエを宥めつつこれまでの経緯を話した。
「……信じてもらえないかも知れませんが、本当の事なんです」
「あのホワイトドールから?
確かにあの機械人形にはまだ謎が多いけどそんな……まさか……」
ソシエはロランの話を信じる事が出来なかった。
だが、嘘を付いているとも思えない程、ロランの目は恐ろしいほど真剣だった。
「……分かった。取りあえず、これからどうしたらいいのかを考えよう。
あたし、何か別の服を探してくる。その服は……その……胸とか目立つし」
ソシエはロランの大きな胸のふくらみを羨望の眼差しで見つめた。
そして、わずかばかりに湧き上がった嫉妬心を抑えつつ、ロランを残して部屋を後にした。
茫然とソシエの背中を見送ったロランは、頭を抱えて近くにあった椅子に腰を下ろした。
とにかく、もう一度ホワイトドールを調べてみなくてはいけない。
あれが事の発端なのだし、もしかしたら元に戻れるのかもしれない。
そう思い始めた時、誰かが扉をノックした。
「ソシエお嬢さん……?」
そして、扉が開いた。
ロランは扉をノックした人物を見て、椅子を蹴り上げ立ち上がった。
「グエン様!? ど、どうしてこちらへ……」
「やあローラ。すまないが、話は全て聞かせてもらったよ」
「えっ、それはどういう……」
にやにやと笑みを浮かべるグエンにロランは身の危険を感じて、
グエンから離れるように後退った。グエンは扉を閉めて不敵にロランへと近付く。
そして、怯えるロランの手首を強く握り、自分に引き寄せた。
「なるほど……本当に女性の肉体になっている」
卑猥な目付きでロランを頭から足の爪先まで眺めるグエンに、
ロランは手首を捻って必死に抵抗する。だが、女性へと変貌した今、
真の男であるグエンの力に、非力なロランが勝てるはずが無かった。
「は、放してください! 僕は……男なんですよ!」
「まだ男だと言い張るか……それでは私がそれを調べてあげよう」
そう言ってグエンはロランを力任せにベッドへ押し倒した。そして、
ロランに覆い被さり両手首をベッドに押さえつけた。
「何を……っ!」
ロランは身体を捩って何とか逃げ出そうとするが、
それに構わずグエンはロランのうなじに顔を寄せて、ロランの匂いを嗅いだ。
「これは紛れもなく女性の香りだ……ローラ、もう君を離さない」
嬉しそうに言うグエンに、ロランは戦慄した。
「やめてください! 僕はローラではなくロラ……いぁっ!」
その時、グエンはロランの胸を衣服の上から鷲掴みにした。
痺れるような鋭痛にロランは表情を歪める。
「いろんな女性の乳房に触れてきたが……こんな柔かな感触は初めてだ」
そしてロランの胸から手を離すと、今度は下から持ち上げるように優しく揉みだした。
「んんっ……や、やめ……」
次第に抵抗の色が薄くなってきた事に乗じて、
グエンは硬化を帯びてきた胸の先端を指先で弾いた。
ロランは上体を跳ね上げて反応する。
「女性が下着も着けず、直接シャツを着るとはいただけないな……
これでは誘っているのと同じだよ?」
からかうように言うと、グエンはサスペンダーをそのままにしてシャツを捲り上げた。
そして、眩しそうにロランの乳房を眺める。
「綺麗な褐色肌だ。それにこの初々しい薄紅色の粒……」
そう呟き、グエンはその粒を口に含んだ。
「い、いや……だ……」
グエンを撥ね退けようと懸命に身を捩るロランだったが、
やがてふわふわと宙に浮いたような感覚に包まれていった。
その奇妙な感覚に、ロランは瞳を潤ませ、陶酔した表情でグエンを見つめる。
「お願いします……これ以上は……」
「認めるかい? 自分は女性なのだと」
そう尋ねるグエンにロランは逡巡した後、涙を浮かべて首を左右に振った。
「そうか、まだ自覚がないようだね」
そして、グエンは片手をロランの下腹部へと移動させて愛でるように撫で回すと、
やがてロランの秘境へと指先を忍ばせた。
「おや? 男性ならばあるものが無いな……もっと奥を探ってみよう」
グエンは意地悪めいた口調で言って、出来上がったばかりの割れ目に指を埋めた。
「ぅあぁっ!」
「ローラは感度が良いんだね、もうぬるぬるになっているよ」
ぬるりという感触はロランにも伝わり、ロランはふと、
何を漏らしてしまったのだろう、女性の肉体とは不思議なものだ
と頓狂な想像をした。
そんなことを考えているロランを余所に、
グエンは薄笑いでロランを見つめながら、更に奥深く指を滑らせた。
肉芽を中心に弧を描くように弄りまわし、動きに緩急をつけながら
ロランを追い込む。
「ふあぁっ! や、やめろ……っ!」
グエンの指先が肉芽を掠めるたび、ロランはびくっびくっと身体を
跳ね上げて、未知の快楽に溺れていった。
「あぁローラ、とても素敵だ。私はもう、我慢出来な……」
その瞬間、ロランの身体にのしかかっていた重みが消えた。ロランは
はっと目を見開いて視線をさ迷わせた。
「ソ、ソシエお嬢さん!」
ソシエは箒の柄のような棒を持ち、息を切らせてロランを見つめていた。
ふと、ベッド下を覗くとそこには気絶したグエンが横たわっていた。
「あの……も、もしかしてグエン様を殴っ……」
「いいから今のうちに逃げるわよ!」
ソシエはそう言うと、棒を床に放り投げてロランの手を握った。
ロランは慌てて衣服の乱れを直し、ソシエに引っ張られるように部屋を飛び出た。
「ソシエお嬢さん、いつから見ていたのですか?」
「……普通、そんな野暮なこと聞く?」
「だ、だって、ずっと見ていたのなら早く助けてくれたって……」
屋外まで引っ張っていった後、ソシエはロランから手を離して仏頂面で
ロランに向き直った。
「いつだっていいでしょ、助けたことに変わりはないんだから」
そう言って、ソシエはぷいっと顔を背けた。
ロランはそれはそうだと思い直し、それから追求するのをやめて
ソシエに頭を下げた。
「ともかく、助けてくれてありがとうございました」
「な、何言ってんのよ。あんたは大事な使用人なんだから、
雇い人として当たり前のことをしただけよ」
ソシエは一気に捲し立てると、持っていた数着の衣服をロランに押し付けた。
「グエン様には知られたみたいね……
いい?これからはあたしの傍から離れるんじゃないわよ」
ソシエから受け取った服を眺めていたロランは、ふと顔を上げて首を傾げる。
「ロラン、あんた自分の身の危険をもっと悟りなさい!
またあんな目に遭っていいのっ!?」
「あ……そういう意味でしたか……すみません」
"そういう意味"を反芻させて考えたソシエは、途端に真っ赤になって俯いた。
「ば、ばかね。身体が元に戻るまでの間だけよ……多分」
語尾を濁らせながらソシエはちらりとロランを見た。ロランは微笑みながら頷く。
「はい、分かっています。けれど、グエン様がまさかあそこまで本気だとは……」
あっさりとソシエの言葉を躱されてソシエは肩を落とすも、
困った様子のロランを眺めて、ロランと自分だけの秘密が出来て少し嬉しくなり、
くすっと小さく笑った。
「……このままでもいいかもね」
「え? 何か言いましたか?」
「ううん、何でもな〜い。取りあえず着替えないとね」
ロランはくすくすと笑い続けるソシエを、
何が何だか分からない感じで見つめて大きなため息をついた。