もしくは、別のシーンで山下達郎の「蒼茫」
練習中にゆー(弓枝タソ)と些細なことからちょっと喧嘩したオノデリング。
こういうときに限って、「自分がカーリングを続けてること」の意味なんかを考えてしまう。
年齢も今年で27になる。自分はいつまでカーリングを続けるのだろう。続けていけるのだろう。
給油に寄ったガソリンスタンドで、ふと視線を休憩所に向けると、恋人同士と思しきカップルが
親しげに寄り添って話をしている。ちょうど自分と同じ歳くらいだろうか。
自分は県の嘱託職員という身分、月収は12万。とりあえずの目標はオリンピック代表だ・・・・。
海外遠征のたびに、実家の常呂でホタテの貝剥きのバイトの繰り返し。
それでもそうやって支えてくれる地元のみんなの優しさが痛いほど心にしみる。
水産センターのセンター長がそっと時給を上乗せしてくれてるってこともばあちゃんから聞いた。
そんな善意に支えられていることはわかってる。・・・・わかってるのに、考えてしまう。
「自分の人生はこれでいいのかな・・・・」
ガソリンスタンドを出るオノデリング。カーステをつけるとラジオからは山下達郎の「蒼茫」。
『遠く翳る空からたそがれが舞い降りる ちっぽけな街に生まれ
人混みの中を生きる数知れぬ人々の 魂に届く様に』
弓枝と些細なことで揉めてしまうなんて、オリンピック代表の座すら今のままではあやうい・・・・
シムソンズを解散したときに自分も辞めていればよかったのだろうか?ゆーを連れてきてしまったのは
とても迷惑なことだったんじゃないだろうか・・・・。
目黒さんも寺田さんも本橋さんも、みんなに迷惑をかけてしまったんじゃないだろうか・・・・・。
『凍り付いた夜には ささやかな愛の歌を 吹きすさんだ風に怯えくじけそうな心へと
泣かないで この道は未来へと続いている』
自分が弱気になっちゃいけない。みんなのためにも今は大事な時期だ・・・。
こんなことを考えてる時期じゃないのはわかってる。わかってるのに。。。。
オノデリングの頬を涙がつたう。鼻をすすって涙を拭うオノデリング。
『限りない命のすきまを やさしさは流れて行くもの
生き続ける事の意味 誰よりも待ち望んでいたい』
そんなときオノデリングの携帯が短く鳴った。メールだ。車を路肩に停めて携帯のメールを確認するオノデリング。
宛名を見ると、ゆーからだった。
「今日はゴメンごめんね。長野戦までもうちょっとだから、みんなで頑張ろ!」
携帯の画面を見つめるオノデリングの目から涙がとめどなく溢れる。ゆーに電話するオノデリング。
「・・・もしもし、ゆー?・・うん。今、メールもらった。うん。こっちこそ・・・えへへ・・ごめん。
・・え?泣いてないよ!泣くわけないじゃん・・・・・」
涙を拭いながら笑うオノデリング。
「・・・・うん。一緒に頑張ろうね。もうちょっとだもんね・・・・」
『憧れや名誉はいらない 華やかな夢も欲しくない
生き続ける事の意味 それだけを待ち望んでいたい To find out the truth of life!』