◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

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98お前名無しだろ
「藤田くん……」
西村は動揺しつつも、藤田を諭そうと、言葉を続けようとした。
しかし次の瞬間、藤田の放った銃弾が、西村の頬の数センチ先をかすめて行く。
西村の髪が数本、空中に散った。
「お願いです、行ってくれ!俺は……天山さんの代わりには、なれないんだから……」
それを聞いて、西村は言葉を続けられなかった。
(そうだ。独りになるのが、怖かったんだ……)

西村の脳裏に、プログラム開始時からの記憶が蘇る。
プログラムが始まってから、ずっと傍には天山がいた。
そして天山の存在が消えた瞬間、独りになるのが不安で、何も出来ない自分がいた。
藤田に付いて行ったのも、タイムリミットが怖かったからじゃない
99お前名無しだろ:2001/08/15(水) 20:47
無意識のうちに藤田に負担を掛けていた事に気付き、西村は自分の不甲斐無さを嘆いた。
「わかった……辛い思いをさせてしまって、ごめん……」
西村はそう言うと、スッ、と踵を返す。
「でも、出来るなら……」
藤田に背を向けながら、西村は語り掛けた。
「人は殺さないでくれ。そして……決して希望は捨てないでくれ。お願いだから……」
それは藤田に対してだけでなく、自分自身にも言い聞かせる為の言葉だった。
「……努力します」
藤田は消え入りそうな声で返事をする。
頭では解っていたが、それを実行出来る自信は、今の彼には無かった。
「それじゃ……元気でな」
その言葉を残し、西村は霧の中へと駆け出して行く。
そして西村の姿が見えなくなると同時に、藤田はその場に座り込んだ。
「何やってるんだろう、俺……自分から立ち去れば、それで済んだのに……」
銃を持った藤田の指先は、ずっと震えたままだった。
霧は益々、その深さを増して行った。
100お前名無しだろ:2001/08/15(水) 20:58
朝霧の中、スポーツウェアに身を包み、村上一成は走っていた。
どんな非常時といえど、毎朝のジョギングを欠かす事は出来なかった。
いや、そうしなければ、落ち着かなかった。
誰かを殺すか、誰かに殺されるか……
嫌な選択肢しか残されていない現状を、忘れたかった。
(小川さんにいつも引っ付いてばかりで、タッグマッチでは
いつも負け役だし・・・体鍛えてもっと強くならないとな・・)
村上は出来る限り、プログラムの事を忘れようと懸命だった。
しかし公園に入った時、村上は現実に引き戻される。
濃い霧の先に、誰かが立っている……
村上は走るのを止め、警戒しつつ、霧中の人物に声を掛けた。
「誰だ?そこに居るのは……返事をしろ!」
そして数秒後、聞き慣れた声で返事が帰って来る。
「いい朝だな・・・村上!」
ケンドー・カシンの声だ。