◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

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67お前名無しだろ
「辰っつあん……俺、俺、……」
児童公園のベンチで、長州力は震えていた。
その震える手には、拳銃が握られている。

長州は出発した直後、校門近くの茂みに身を隠していた。
立入禁止エリアになるギリギリの時間まで、藤波の近くに居たかったのだ。
一人、また一人と、参加者が校門を過ぎて行く。
この場に留まっていられる時間が、どんどん少なくなって行く。
長州は怖かった。
校門より先の世界に出ることが、たまらなく怖かった。
(殺される。誰かに会ったら、殺される。
 だから守らなくちゃな。この銃で、自分を守らないと……)
支給された銃を握って、長州はこの言葉を何度も何度も繰り返す。
その時だった。
「あ、長州さんじゃないですか!どうしたんですか?」
長州は素早く反応する。
(見つかった!?)
長州は声のした方向へと向き直り、銃を構えると、引き金に力を込めた。
そこで初めて、声の主が高岩竜一である事を知る。
しかし、高岩は長州に危害を加える素振りを見せなかった。
いつもの様に、むっつりしていた。
(――撃っちゃダメだ!)
長州は瞬時にそう思った。だが、引き金を引く指の動きは止まらなかった。
そして……
68お前名無しだろ:2001/08/15(水) 17:20
長州は校門を飛び出したあと、無我夢中で市内を走り回り、この公園へと辿り着いた。
だが、どんなに走り回って気持ちを紛らわせても、
高岩に発砲した時の映像が、頭の中で何度も何度もリフレインする。
「辰っつあん……俺、人を殺しちゃったよ……どうしよう……」
もはや長州は、俯くことしか出来なくなっていた。
と、その時――
誰かがやって来て、長州に声を掛けた。
「大丈夫!長州さん?」」
69お前名無しだろ:2001/08/15(水) 17:45
声を掛けたのは、武藤敬司だった。
「藤波さんの事は、気の毒だったけど……まあ、元気、出しましょう」
武藤はそう言うと、長州の隣に腰を降ろした。
「敬司……」
長州は銃を構えなかった。構えられなかった。
高岩の二の舞いは避けたかったし、
優しく接してくれる人に、銃は向けられなかった。
長州はそっと、銃をバッグにしまい込んだ。
武藤はつるつるの頭をなでながら、長州に話し掛ける。
「ひとつ、聞いていいですか?長州さんも「真の強者」になれたらいいなって思っています?」
長州の答えは、一つしか無かった。
「うんあれだ!こないだの小川戦でも恥じかいちゃったし!出来れば強くなりたいな!」
長州は頬を赤らめる。
武藤は手を頭から外すと、今度は髭をいじりながら、つぶやいた。
「フッ!でも長州さんじゃいくら頑張っても小川にガチでは勝てないよ・・」
(――え?)
意外な返答に長州は驚いた。
そして武藤は、長州と目を合わせる事無く、淡々と話し続ける。
「猪木さんが、小川と話しているのを、聞いたことがあります。
 ”長州ってほんとにどうしようもねいな”って、笑いながら話していましたよ」
あまりに痛烈な武藤の言葉に、長州は言葉を失った。
(うそ……敬司、何を言ってるんだ?嘘だろ!?)
70お前名無しだろ:2001/08/15(水) 18:04
「長州さんは、ファンに”天才”って言って貰った事、ありますか?」
そう言うと、武藤は自分の膝をパンパン叩き出した。
「昔はいくらでも動けたんだ、俺、ベイダーだって完璧なジャーマンで
投げれた。今では俺の膝はボロボロそれでも俺の事 ”天才”
って言ってくれるファンがいる……」
淡々と語る武藤の姿に、長州は絶望した。
慰めてくれると思っていたのに、どうして……
しかし、武藤の辛辣な言葉は止まらない。
「長州さん、あんたに期待しているファンなんていないんですよ。年だし!
 このプログラムに勝ち残る意味なんて、無いんですよ……」
決定的な一言だった。
「敬司……どうして、そんなひどいこと言うんだ!?」
長州は泣きながら訴えた。
だが、武藤はそれを軽く受け流す。
「事実だからですよ。」
武藤は長州の目をじっと見て、静かに微笑んだ。
口元が、すぅっ、と上にあがる。
「俺、決めたんですよ。俺のファンの為に生き残るって……」
その瞬間、長州は言い知れぬ恐怖感を覚えた。
体中の血の気が、一瞬にして引いて行くのを感じる。
「やめろぉおおおおおおおおーーーー!!」
長州の絶叫が、夜の公園に響く。

ザシュッ!