◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

このエントリーをはてなブックマークに追加
6お前名無しだろ
『プログラム』
それは、魔の法律。
正式名は『プロレスラー助成特別法』という。
近年、この国ではプロレスの八百長が激増の一途を辿っていた。
何故、こんなにも簡単に八百長をしてしまうのか?
何故、互いの理解を深めようとせず、安易な八百長に走ってしまうのか?
……そして制定されたのが、この法律だった。
真に「戦う強さ」を持ち合わせた人間だけを選抜する法律。
毎年、各団体の対象者が無作為抽出され、最後の一人になるまで殺し合いが行われる。
しかし、選ばれる確立はゼロに等しいと言われていただけに、親日レスラーはすぐには信じられなかった。
「冗談なら、やめろ!糞ぶっ掛けるぞ!」
聞き取り辛い声が響いた。
道場1の権力者の、長州力だ。
「俺は天下の長州力だ!なんでこんなプログラムに参加しなくちゃいけないんだ!」
長州は嘲笑を込めて異議を唱えた。
そもそも、このプログラムの指揮権がアントニオ猪木にある事に、理解が出来なかった。
普通なら、政府や教育委員会の担当者が赴いて、ここで説明するだろう。
ここに居る兵士達も、おそらくアントニオ猪木私設軍やSPの面々。
驚かせておいて、実はパーティーでも開くのだろう……そう思っていた。
しかし、現実は残酷だった。
「長州!テメーはまだ信じられない様子だな。ならば、信じられる物を用意してやろう!」
猪木は表情を変えずにそう言うと、指をパチン、と鳴らした。
教室の扉が開き、『何か』を載せたベッドが運び込まれて来る。
ビニールシートの下の『何か』からは、少し生臭い匂いがした。
「見せてやれ」と猪木が言うと、永島がそのシートを外した。
一瞬の静寂。
そして次の瞬間、長州が絶叫した。
「……辰ツァーーーン!!」
7お前名無しだろ:2001/08/14(火) 21:06
長州の叫びが、一瞬にして全員の悲鳴へと変わる。
そこに有ったのは、ドラゴン藤波の『なれの果て』だった。
まるで操り人形を投げ捨てたかの様に関節は捻じ曲がり、
頭蓋骨は陥没し、両目も潰されていた。
「藤波!辰つぁああああんっ!!」
長州は泣き叫びながら、藤波の亡骸に近付こうとする。
しかし次の瞬間、兵士達が一斉に長州に向け、銃を構えた。
それに気付いた平田が、慌てて長州を羽交い絞めにして、引き止める。
「長州さん、駄目だ!今行ったら、長州さんも殺されちゃうよ!」
「でも!辰つぁんが!」
長州はその場にヘナヘナと座り込むと、声をあげて泣いた。
泣くことしか、出来なかった。
そしてその光景は、プロレスラー達に現実を認識させるのに、充分だった。
猪木が説明を続ける。
「藤波は、このプログラムを反対しやがって!コノヤロウ!」
死臭が室内を満たしてゆく。
それはまさしく、絶望の臭いでもあった。
猪木は胸元から政府印の押された封書を取り出すと、その中の文書を事務的に読み始めた。
いわゆる『宣誓文書』だ。
「……本プログラムは、日本国政府の完全管理下のもと、新日本の運営者である
 アントニオ猪木によって執り行われるものとする旨を、ここに通達する……」
宣誓文書など、誰も聞いてはいなかった。
ただ、殺戮の海に放り込まれた事実を受け止める事しか、出来なかった。
自分達を庇ってくれた(であろう)ドラゴン藤波が、あっけなく殺された。
こんな理不尽な殺人さえ、合法だという。
いや、理不尽な殺人劇は、これから始まるのだ。自分達の手によって……
どうする?どうすればいい?ここから逃げ出す方法は無いのか?
誰もが、戦うことなく生き延びる方法を自問自答していた。
と、その時、猪木が宣誓文書を読むのをピタリと止めた。
「……どうやら、俺の話を聞いてくれない人が、いるようなーコノヤロウ!」