◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

このエントリーをはてなブックマークに追加
587普段はカンコ君
夏の朝が明けるのは早い。
但し早朝は照り返す直射日光もなく、そよ風がそよぎ、過し易い事この上ない。
こういう時間は大切にしたい。自分の好きな事を心行くまで楽しみたい。
ところで俺が今一番やりたい事ってなんだろう?
ゴルフ?そう言えば最近廻ってないなぁ… 今度、会長と藤原でも誘おうかな…
木戸修は薄れ行く意識の中で、そんな他愛もない夢の中にいた。

この殺戮遊戯が開始された日、道場内に阿鼻叫喚が飛び交う中、木戸はひとり冷静だった。
藤波の死体を見た瞬間はさすがに驚いたが、それでも以前から『この日』が来る事を予想
していた自分にも気付いていた。
彼は昔から藤波や長州と異なり、極力猪木との距離を遠ざけていた。
心情的に近しくない人間関係は、結果として相手の存在を冷静な判断と分析に導く。
繰り返すが、木戸は決して猪木に近い人間ではない。だからこそ誰よりも木戸は猪木を理解していた・・・
アントニオ猪木とは『自己顕示欲と支配欲の権化』であると!!

このプログラムが発動された際、彼の心の九分九厘は諦めが締めていた。
他人を殺してまで生き残るのは自分の柄ではないし、それを達成する程の執着心は昔から皆無に近い。
どうにか外部と接触を図り、最後に家族の声が聞ければ十分だ…そこまで達観できていた。
ただ、ほんのわずか乍ら自分の心に巣食った疑問だけがどうしても払拭できていない。
それは後悔とも呼べる感情らしかった。『どうして俺は、そこまでわかっていながら、今まで…』