◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

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519◆ZNLiv1KU
夕方6時の放送の後、マサ斎藤と坂口征二は体育館にいた。勿論両者は首輪をしている。
「社長さぁ…やっぱりやってるんだなぁ、殺し合い…」
マサが寂しそうに呟いた。社長とは坂口の事で二人きりの時だけまだこう呼んでいた。
「みたいだなぁ…マサさん……」
答えた坂口はじっと体育館の天井を見つめていた。
しかし何故会長である坂口までが参加しているのか。答えは「猪木に嫌われていたから」。
それを無言で示すように坂口の武器は闘魂鎚となどと書かれたピコピコハンマー、
そしてマサは手錠だった。中身を知っていて渡したとしか思えない。
猪木と違い常識的な坂口は、ずっと猪木の目の上のたんこぶだった。
そして会長と言う名誉職に追いやられてしまう。マサが社長と呼ぶのもそのせいだった。
「なぁ、マサさん。スパーリングしないか?」
突然坂口が提案した。マサは驚いたが坂口の表情から冗談ではないと理解し問い返した。
「……今からかい?」
「今しかできないだろ?」
そう言いながら立ち上がった坂口はちょっと照れくさそうな表情のままネクタイをはずしスーツを脱いだ。
それを見たマサは仕方なさげにシャツを脱いだが、その顔にはわずかに笑みが見られた。
二人は上半身ハダカになると靴下を脱いで体育館の真ん中に移動した。
向かい合い構えながら二人は言葉を交わす。
「もう11年だっけ?引退して。戦れんのかい?」
「この歳じゃ2年も11年も大差ないよ。」
「そうか?じゃあ叩きのめしてやるか…」
二人にだけ聞こえるゴングが鳴りどちらからともなくがっしりと組み合う。
腕取り、首投げ、キーロック、ヘッドロック…今で言うあまりに地味な技の応酬が続く。
そして確かに二人の動きは鈍かった。
だが二人の目は全盛期の輝きを取り戻していた。
そこには昭和のプロレス、古き良きプロレスが繰り広げられていた。