◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

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5001さん代打 ◆oOfl/2go
「あーっ、やっぱり時限爆弾だったかぁ・・・くそっ!」
「すみません・・・俺がボタンを押したばっかりに・・・」
稔が涙目で呟いた。
「もう動き始めたんだから、言い訳してもしゃあないやろ。
 何とかして、この場から脱出せんとなぁ・・・」
爆弾のタイマーを止める事も、壊す事も出来ない。
それに今の猪木の声で、隠れている場所をカシンに悟られたのは確実だ。
金本が必死に考えを巡らせる横で、稔は押し黙っていた。
(俺のせいだ・・・何とかしなきゃ・・・そうだ!)
「・・・金本さん、俺が囮になりますからカシンを撃ってください!」
「な・・・稔っ、アホな事言うな!お前、武器持ってないのにどうすんだ!?」
金本は驚き、稔を見た。稔の目はこの上ないほどに真剣だった。
「さっき見つけたサブマシンガンのモデルガンでカシンを打ちます。
 そこでカシンが怯んでいる隙に、カシンの動きを止めてください。
 防弾チョッキも着てるし、何発かは弾を受けても大丈夫だろうから・・・」
「稔・・・」
「それしかないです!早く逃げないと爆発しちゃいますよ!」
金本はフーッと深いため息をつき、軽くうなづいた。
「そうだな・・・でも稔、死ぬなよ・・・」
「こればかりは運を天に任せるしかないですけどね。
 金本さんも・・・死んじゃダメですからね。またベルト一緒に巻きましょう」
稔はニッコリと、しかし淋しさをたたえた笑みを浮かべた。
「ああ・・・死んでたまるか!俺は生きるぞ・・・」
二人は覚悟を決めた。誰も殺したくはなかったが、仕方ない。
カシンを倒さなければ爆死する。
たとえカシンを撃ち殺さなくても、致命傷を負わせた時点で殺したも同然だ。
カシンだってここから逃げられなければ爆死してしまうのだから・・・。
5011さん代打 ◆oOfl/2go:2001/08/19(日) 14:20
猪木の声が聞こえなくなった時、カシンは呆気にとられていた。しかしすぐに考えた。
突然の猪木の声。誰かがボタンを押し、時限爆弾を作動させた。
「・・・これで誰かいる事が確定したわけだ」
相手は逃げようとするだろう。しかし、逃げ道には自分がいる。
自分はそのまま逃げられるかもしれない。でも、相手は自分を倒さないと逃げられない。
今ここで逃げようとして背中を向けたら殺られるだろう。
「金本さんだか誰だか知らんが、殺るしかないって事か・・・」
相手はおそらく正面にあるカウンターの中にいる。
さっきの猪木の声が聞こえてきたのも、カウンターの中だった。
カシンは再び拳銃を構えた。

「俺が左から撃ち始めたら、金本さんはちょっと間を置いた後に右から撃ってください」
「・・・わかった」
作戦を確認した後、稔はモデルガンを構え、金本は拳銃の撃鉄を引いた。
「・・・行きます!」
稔は勢い良く立ち上がった。5mほど先にカシンの姿があった。
タタタタタタタタッ!
稔は一心不乱に、カシンに向けてサブマシンガンを撃ち込んだ。
カシンの気をそらせればいい。ほんの少しの間だけ・・・。
「しまった!二対一だったか・・・!?」
カシンは、予想だにしなかった稔の登場に一瞬怯んだが
自分に当たった弾が本物でない事に気づくと、構えていた拳銃を発射した。
パンッ、パンッ、パンッ!
「ウグッ!」
カシンの放った銃弾が稔の胸に着弾し、呻き声が上がる。しかし、稔は倒れない。
「なぜ・・・!?ちっ!防弾チョッキなんか着てやがる」
服の上から白い防弾チョッキを着た稔の姿が、カシンの目に入った。
「それなら頭を狙えば済む事だ・・・」
カシンが稔の頭に狙いを定めた、その時!
金本がカシンの左前方に現れ、拳銃を撃ってきた。
5021さん代打 ◆oOfl/2go:2001/08/19(日) 14:22
ガーンッ!
「グアッッッ!」
・・・意外にもダメージを受けたのは、金本の方だった。
突然の激痛に金本の顔がゆがんだ。撃鉄を引き直す事も出来ないぐらいの痛みだった。
金本はTVドラマの刑事のように、片手で拳銃を撃った。
その瞬間ものすごい衝撃が右手を通じ、肩へと伝わった。
金本の右肩は春先に怪我をして以来、まだ完治していなかったのだ。
そして肝心の銃弾は、カシンを捕らえる事が出来なかった。
やはり衝撃で腕がブレて、的を外してしまったのだった・・・。
「金本さん、カッコつけて片手で撃つからですよ・・・バカが!」
そう言うとカシンは両手で拳銃を構え直し、金本の額に狙いを定めて引き金を引いた。
パンッ!と音がしたのと同時に、金本は額を撃ちぬかれて崩れ落ちた。
「金本さんっっっっっ!!」
稔が銃撃を止め、金本の方を向いた時、既に金本は事切れていた・・・。
「金本さんっ!金本さんっ!目ぇ開けてください!金本さんっ!!」
稔は金本の両肩を持って揺さぶった。しかし、もう二度と目を開く事はなかった。
「金本さん・・・」
うなだれる稔にカシンは素早く近づいていき、背後から腕めがけて拳銃を撃った。
パンッ、パンッ!
「ウガァッ!」
着弾の衝撃と痛みで、稔は金本に覆い被さるようにして倒れ込んだ。
「・・・防弾チョッキ着てても、頭や腕は剥き出しだからなあ」
カシンがニヤリと笑い、呟いた。
5031さん代打 ◆oOfl/2go:2001/08/19(日) 14:23
ふと足元を見ると、さっきの時限爆弾が転がっている。
拾い上げてタイマーを見ると、残り時間はあと2分を切っていた。
倒れ込んでいる稔に向かって、カシンが問い掛けた。
「さて、と。そろそろ逃げないとな。田中稔、アンタはどうする?
 大人しく爆発を待つか、今俺に撃ち殺されるか・・・どっちがいい?」
稔は激痛が走る腕を使い、カシンの方に向き直り、息も絶え絶えに言った。
「・・・ほっといて・・・くれ」
「爆死を選ぶか・・・痛いぞ〜、爆死は。俺に頭撃たれた方が楽に死ねるぞ」
「いいんだ・・・死ぬ覚悟は出来てますよ。ただ・・・
 これ以上、アンタに人殺しになってほしくないだけですよ・・・」
「これ以上って、この後も誰かに会ったら俺は殺るぞ?」
「アンタが殺した人数が一人でも減るなら・・・俺はその方がいい・・・」
「この期に及んで優しい気遣いしてるとはねぇ・・・大したもんだ!」
カシンは稔を嘲笑うように言った。
「じゃあ、気遣いついでにお前の防弾チョッキを譲ってくれないか?
 そんなの着てたら爆死は無理だろう?」
「ああ・・・もう必要ないから・・・勝手にしてください・・・」
稔は吐き捨てるように呟いた。
5041さん代打 ◆oOfl/2go:2001/08/19(日) 14:25
カシンは稔が武器を持っていないことを確認すると、稔の上体を起こして防弾チョッキを剥ぎ取った。
「ありがとう。じゃあ達者でな!!」
カシンはそう言うと、稔の額に拳銃をあてがって撃った。
パンッ!
(な・・・何で・・・)
稔は意識が飛ぶ瞬間、そう思った。
「殺した人数が一人でも減るなら、か・・・余計なお世話だ!」
カシンは無表情で、もう意識がない稔に向かってそう吐き捨てるように言った。
「・・・あと30秒で爆発するぞ、コノヤロー!」
時限爆弾から、猪木の声が響いた。
カシンはサッと荷物をまとめて脱出の準備を整えた。
「あ、そうそう。金本さん、忘れ物だよ」
そう言うと金本の屍に向かって矢沢永吉タオルを放り投げた。
「あと20秒で爆発するぞ、コノヤロー!」
その声を聞いて、カシンは荷物を抱え、ダッシュで店を後にした。
遠くへ・・・とにかく爆撃に巻き込まれないように、遠くへ・・・。
そして猪木の声が、最後のカウントダウンを始めた。
「あと10秒・・・それでは皆さん、ご唱和ください。いくぞーっ!
 サーン、ニーッ、イーチ、ダーッ・・・」
ドンッ!ドカーンッ!ドドドドドッ・・・ガラガラガラ・・・
豪快な爆音と共にホビーショップは吹き飛んだ。金本と稔の屍と共に・・・。