◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

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483◆ZNLiv1KU
棚橋弘至は今高校に来ている。井上と柴田が眠るあの高校だった。
棚橋はその鍛え上げられた体躯に似合わず、もう心底まで震え上がっていた。
だがそれも仕方が無いと言えるのかも知れない。何故なら彼の身体は生来の小心さを
隠すために創り上げられたまさしく鎧と言える物だったからだ。
加えて彼には運が無かった。最初はこの「プログラム」の対象者では無かったにも拘わらず、
猪木の突発的な思い付きに巻き込まれた。そして組まされたのが辻よしなりだった。
おまけに武器は銃だと喜んだがマガジンが付けられないではないか!
つまり魔の『とっかえだまシステム』にまで大当たりしてしまったのだ。
さらに高岩に天山、そして街を歩けば村上、人生、小原、ライガー、後藤
トドメにここで井上、柴田と最も多くの死体を見てしまっていた。
正直気も狂わんばかりであったが、生への執着がギリギリ神経を保たせていた。

その細りきった精神を振り絞って彼はこの高校に隠れることにしたのだった。
(死体を見れば普通こんなところにいたいと思わないだろう。)
しかし校舎内はもう嫌だった。そこで妥協案として高校の図書室を選んだ。鍵は開いていた。
[実は街にはわざと施錠されていない建物がいくつもある。ここの図書館もその一つだ。
ちなみにこれは猪木(と言うより佐山)の提案であった。勿論、ゲームを盛り上げるために。]
棚橋は用心深くいくつかの扉を開け中に入って行き、内部に着くと図書館独特の空気の中で
安堵のため息をついた。しかし、銃声が二度図書館中に響くのはそれとほぼ同時だった。
撃ったのはカウンターに隠れていた馳浩。
その後馳は棚橋の亡骸に一瞥もくれず、ある本に目を戻した。
その本を照らす光は、鈴木健三が探し忘れていた柴田のレーダーの物だった。
レーダーは調べ物をする馳と何をする必要も無くなった棚橋の存在を無機質に知らせていた。