◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

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431普段はカンコ君
佐々木健介は震えていた。
暗い自動車整備工場の片隅でひとり息を潜めていた。

早いものであれからもう1日が経過した。
水や食料を殆ど補給せず、且つ一睡もしていない彼の体は
既に限界にきていた。それでも彼は動かない。
餓死する事より他人に蹂躙・撲殺される恐怖が遥かに上回っていた

人間の運勢とは振り子の様なものだ。良い時もあれば、その逆も然り。
しかし彼を取り巻く状況はあまりにも悪過ぎた。最悪、と呼んでもよい。
才能やセンスには乏しいが、人一倍練習した。
性格も悪くはない。下には強いが、上に刃向う事などあり得ない。
その実直な人柄がブッカ-に評価され、一時期は名実ともエースとなった。
だが彼は、悲しいかな決して『トップ』の器ではなかった。
その評価が下されたトップというのは、この業界では生き地獄に等しい。
興行成績の落込み、長年の長州・永島体制による組織的なゆがみと軋轢、
それに乗じた創業者による現場介入…
生え抜きではない彼の見方は長州以外に皆無だった。
この師弟は全ての責任を押し付けられ、閑職へと追い込まれてしまった。

その時彼に向けられた誹謗や中傷、長州力の早過ぎる死…
そしてこの殺し合いの為だけにアメリカから呼び戻された自分の悲運!!
彼は他の大多数のレスラーと違い、仲間を信用しなかった。
何より自分自身を信用できなかった。

彼は立ち上がるそぶりさえ見せない。
武器が『目潰しスプレー』という事実も、確実に戦意を削ぎ落としていた。
佐々木健介は、動かない。