◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

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3921さん代打 ◆oOfl/2go
「・・・金本さん、落ちつきましたか?」
稔が心配げな表情で、金本の顔を覗き込んだ。
「・・・ああ。道場にいた時よりはな」
そう呟く金本の顔色は、ずっと前から青ざめたままだった。

無理もなかった。
ただでさえ仲間と殺し合うという理不尽な状況に放り出されているのに
スタート前に、藤波の無残な姿を見せられているのだ。
あの道場で、声をあげて泣く長州のその後ろで、金本もまた涙していた。
「俺の憧れの藤波さんが・・・こんな酷い姿に・・・」
ただ泣く事しか出来ずに、立ち尽くしていた。
そんな金本を見て、稔は心配でたまらなかった。
「とにかく・・・金本さんと離れないようにしなくては」
大事なタッグパートナーを見捨てる事なんて出来ない。
道場の出発順は、稔が先だった。
茫然自失の金本に、稔は素早く囁いた。
「金本さん、ホビーショップまで来て下さい。いいですね!
 俺、そこで待ってますから・・・」
ホビーショップは、金本がよくフィギュアを買いに行く店だ。
そこならば、金本も迷わず安全な道を通って来れるだろう。
「じゃ・・・後で!」
稔は出口でデイパックを受け取り、駆け出して行った。
3931さん代打 ◆oOfl/2go:2001/08/18(土) 09:33
「しっかし、この店っていろんな物ありますね・・・」
稔は店内をぐるりと見まわして呟いた。
金本が来る前に、何か使えるものはないかと物色をしていたのだ。
この店がフィギュアの他にモデルガンも扱っていたのは好都合だった。
稔の手元には、サブマシンガンのモデルガンがあった。
『片手のみで操作可能。最大で1分間に最高750発発射出来ます』
ショーケースの説明書きには、そう書いてあった。
動き回る事を考えると、これがベストの選択であろう。
殺傷能力はないにせよ、はったりをかますのには十分だ。
「できる事なら、人殺しはしたくない・・・みんな生きていてほしい」
インディーから途中入団した自分を温かく迎えてくれた仲間たち。
「みんないい人ばかりなのに・・・何でこんな事に・・・」
稔が目に涙を浮かべたその時、夕方6時の、3度目の定期放送が聞こえてきた。
「・・・ではこの6時間の脱落者を発表する。
 新崎人生ーッ!小原道由ーッ!後藤達俊ーッ! えー以上3名です。」
「人生さんっ!?小原さんに後藤さんも・・・」
「・・・藤波さん、小島、高岩、天山、長州さんに村上・・・全部で9人か」
金本が力なく呟いた。
「小島・・・山本さん・・・小原さん・・・」
ヤングライオンの頃、道場で共に汗を流した仲間たちが逝ってしまった。
「あとは、俺と西村さんだけか・・・」
金本は涙があふれぬよう、天井を仰ぎ見た。
「高岩さん・・・もう一度、試合したかった・・・」
稔の目から、止まる事なく涙があふれた。
3941さん代打 ◆oOfl/2go:2001/08/18(土) 09:34
「俺たち・・・生き残らなきゃな」
空を見つめながら、金本が呟いた。
「俺たちが死んだら・・・新日のジュニア、終わっちまう」
「そうですね・・・高岩さんの分も、頑張らなきゃ」
そう言って稔は涙をぬぐい、再び使えそうな物を物色し始めた。
「あ・・・金本さん!いい物がありますよ!ほら!」
稔は大声で叫びながら、ショーケースを指差した。
ショーケースの中には「非売品」と書かれた札が付いた防弾チョッキがあった。
「防弾チョッキ!?ああ、そういやここのオヤジが趣味で集めてたっけ」
「これ、本物ですよね?使えますよ!」
そう言うやいなや稔はショーケースの硝子を叩き割り、防弾チョッキを取り出した。
「うわ、結構重たいな」
だいたい2kgぐらいだろうか?ズッシリとした重みがあった。
「まあ、防弾っちゅうぐらいだしな。重い方が守りもしっかりしてるやろ。
 とりあえず、とっとと着ちまおう」
――――その時だった。
パンッ、パンッ、パンッ!
店の外で、乾いた衝撃音が鳴り響いた。
「・・・銃声!?すぐそばで誰かが・・・」
「隠れるぞ、稔っ!見つかったら俺たちもやられる!」
二人は急いで防弾チョッキを抱え
デイパックとモデルガンを拾い上げて店の奥へと向かった。
3951さん代打 ◆oOfl/2go:2001/08/18(土) 09:38
その時、店の外ではカシンとライガーが対峙していた。
撃ったのは、カシン。ライガーの太ももとヒザを撃ちぬいていた。
ライガーはといえば、ホビーショップに向かおうとしていた所だった。
この店は、ライガーの行きつけでもあった。
金本たちがいるなんて、知る余地もない。
ただ、稔と同じ様に「モデルガンがあれば、はったりになるかもしれん」
そう考えて、店を物色しようと考えていたのだ。
店まで後少しという所を、後ろからカシンに狙われたのだった。
足に衝撃を感じ、よくわからぬまま地面に崩れ落ちた。
そして一瞬カァッと熱くなったかと思ったら、とんでもない激痛がヒザを襲ってきた。
「グアッ・・・クッ・・・だ、誰だっ」
「俺ですよ、ライガーさん。ダメですよ、背中にも目ぇ付けとかなきゃ」
「カシン、貴様ぁ・・・っ」
ライガーはカシンを睨みつけるが、立ちあがる事が出来ない。
(クソッ、ここで殺られるのかっ・・・)
カシンがゆっくりと近づいてくる。でもライガーは、逃げる事が出来ない。
(死ぬにしても・・・無駄死にだけはするもんか!)
ライガーは片手で自分のデイパックをまさぐり
支給された大ぶりのナイフの柄をグッと握り締めた。