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◆ZNLiv1KU:
小川の拳は確実にサムライの顔面を捉えた。
吹っ飛ばされたサムライはカウンターで後頭部を強かに打ちぐったりしている。
小川の左腿にわずかに痛みが走った。
ボウガンで打たれた傷だが幸い少し肉をもっていかれた程度で済んだようだ。
そんなことより小川には心配すべきことがあった。
小川は素早く二つの凶器を適当にカウンターの向こうに放り投げ橋本の元に駆け寄った。
橋本は腹部から多量の血液を流していた。銃で撃たれたのだ。
橋本を撃ったのはサムライが背広の袖に隠し持っていた小型の銃デリンジャーだった。
橋本は腹に今まで味わった事の無い激痛を感じながら
さっきからの違和感の正体について理解した。
(松田の不自然な沈黙は焦れたオレ達に襲いかからせ同時に殺すためのものだったんだ…
あの時距離を取ろうと後ずさった松田が足元に落ちていたボールペンで
バランスを崩さなければ、おそらく二人とも死んでいただろうな……)
橋本の考えは当たっていた。
一応、事はサムライの予定通りに進んだが、ボールペン一本に
文字通り足元をすくわれてしまう結果となってしまった訳である。
ちなみにデリンジャーは先程の放送で脱落者に挙げられた後藤の物であった。