◇◆★新日バトルロワイヤル★◆◇

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304◆ZNLiv1KU
静寂が続いていた。
サムライが二人に声をかけてから何分経っただろう。
一言も喋らずただニヤニヤ笑みを浮かべながら二人にボウガンをちらつかせている。
まるで二人の生殺与奪権を自分が持っているという事を殊更に強調するかのように。
そして無言のまま二人を店の奥の壁際に追いやり、
自分はカウンターを乗り越えて二人が元いた辺りに位置取っていた。

橋本は数分間の静寂の間ひたすらに自分の思慮の足りなさを反省していた。
どうして松田の侵入に気付けなかったのか、どうして誤解の解けた小川とすぐに
ここを離れなかったのか、どうして軽々しく自殺などしようとしたのか、どうして…
一度引退した頃から癖になってしまったネガティヴな思考の所為だと自分では気付いていなかった。
そしてその癖が今この瞬間も自分の邪魔をしていることにも。

橋本が思考停止の状態に陥っている時、小川はこの上なく苛々していた。
サムライの態度は彼の神経を充分に逆撫でしていたが、それ以上に橋本の態度が不満だった。
顔はサムライの方を向いているが目の焦点は明らかに合っていない。
そのせいで橋本に意思を伝えることが出来ずにいたからだ。
(呆けてる場合じゃ無ぇだろう!アンタが気付けば何とか出来るのに!!)
橋本と正反対に現状の打破のみを考えていた小川はサムライの弱点に気付いていた。
ボウガンは連射できない。
つまり二人同時にかかれば少なくとも一人、サムライが瞬時に標的を絞れなければ
上手く行けば二人とも無事で済む。そう考えると今の橋本に苛立つのも仕方なかった。

そして小川の苛立ちが頂点に達しようかという時、
夕方6時を告げる忌々しい放送が流れ出した。
305◆ZNLiv1KU:2001/08/17(金) 22:06
「元気ですかー!!!」
いつもの返事を必要としない呼びかけが街中に響き渡る。
「元気があれば何でも出来る。一番元気なヤツが生き残るんだぞーッ!!!
ではこの6時間の脱落者を発表する。新崎人生ーッ!小原道由ーッ!後藤達俊ーッ!
えー以上3名です。みんななかなかルールを理解してくれているようで非常に嬉しい。
では『真の格闘家』を目指して皆頑張るように。ダーーーッ!!!!」

放送によって幾分冷静さを取り戻した橋本は小川と視線が合った。何かを訴えているようだった。
程無く小川が今にもサムライに襲い掛かろうと考えていることに気付いた。
(馬鹿な!一体どういうつもり…)
そこまで考えて小川と同じくボウガンの弱点を発見した。
が、どうにも釈然としないものがあった。
それが何なのかわからない内に小川は行動を起こそうとしていた
カラスの鳴き声が聞こえサムライの目線がわずかに二人から離れた瞬間
小川が動き出した。橋本もそれに追従せざるを得ずサムライに飛び掛かった。

不意に聞こえた銃声に吉江は身をすくませた。
(遠くない場所で殺し合いが行われている…)
怖くなった吉江は隠れ場所に急いだ。