15 :
お前名無しだろ:
……まさか、聞いていないのを悟られたのでは?
レスラー達は、恐る恐る猪木の視線の先を辿った。
猪木が見ていた先……そこには、小嶋聡と永田祐司の姿があった。
小嶋はまだ睡眠薬が効いているらしく、眠ったままだった。
それを永田が必死になって起こそうとしている。
「……小嶋、起きろよ。寝てる場合じゃないんだってば……」
永田は、猪木を刺激しないように、小声で呼び掛けながら小嶋の肩を揺すっていた。
その呼びかけに応じたのか、小嶋がようやく目を覚ます。
「……あれ?永田君。おはよう!。どうしたの?」
まだ現状を把握していない彼の一言が、教室中に響き渡った。
誰かの呟く声がした。
「……だめっ!」
次の瞬間、猪木は小さなリモコンの様な物を取り出すと、ゆかりに向けてそれを「ピッ」と鳴らした。
ピピピピ、ピピピピ……
何処からともなく、アラーム警告音が聴こえる。
「何だよ、目覚まし時計をセットしているの?
でもおかしいな。外はまだ、夜じゃないのか!俺は眠いんだよ馬鹿やろう!」
まだ寝ぼけているのか、小嶋は緊迫した現状に気付いていなかった。
「なに言ってんだよ、小嶋!今はそれどころじゃ……小嶋?」
永田は、異変に気付いた。
警告音の発信元が、異常に近いのだ。
しかもそれは、小嶋の体内――頭の中から聴こえている。
「まさか……猪木さん!小嶋に何をしたんだよ!?」
永田の追及に、猪木は落ち着いた調子で答える。
「小嶋に限った事ではない。君達には、眠っている間に、『装置』を埋め込ませてもらった。
なあに、最新技術を駆使したマイクロサイズの物だ。違和感は感じないだろう?
それから、これには位置特定の為の発信機と、自爆装置がセットされている。
指定の制限時間をオーバーしたり、プログラムの進行を著しく妨害した場合には……」 「場合、には……」
永田は、唾をゴクリと呑んだ。まさか……まさか、そんなことって……
そして、一番聴きたくない言葉が、猪木の口から発せられた。 「爆発する」