紅夜叉は利用された!

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もう会場すぐそこだから少し歩こうか・・そうハーレーに言うと神取はタクシーを降りた。
会場付近まで来ると数名が神取とハーレーに気づき、遠巻きに見ている。
神取!負けちまえ! と罵声が浴びせられた。
神取は雑音を無視して、堂々とした足取りで会場に向かう。
大試合の前で気が立っている神取は、なるべく北斗の事を考えないようにしていた。
恐る恐る握手をねだる若い女性ファンに神取は照れくさそうに応じた。
そんな光景を咥え煙草で宍倉が眺めている。神取が立ち去ると、その女性に声をかけた。「あなた、神取選手のファンですか?」
女性は突然の事に少し驚いたが、すかさず答えた。
  「別に。どうせ今日、北斗に引退に追い込まれるんだし」
関係者入り口から神取が会場入りすると後ろから不意に声をかけられた。
  「ちょっと、ここは関係者以外は立ち入り禁止だよ」
すこしムッとして神取が振り返ると、そこに長与千種が笑って立っていた。