☆★プ板バトルロワイヤル(ノア編)★☆

このエントリーをはてなブックマークに追加
1お前名無しだろ
一瞬、慣れ親しんだ教室ではないと光晴は錯覚した。
もちろん、その場所ははいつものディファ有明のリングであったのだけれど、
何かがおかしかった。何かが違っている。
すぐに、光晴はその原因に気づいた。高窓の外で、すでに日が暮れようとしている。
さっきまで昼ご飯を食べていたはずなのに・・・
光晴は、辺りをそろそろと見回した。ノアのレスラーたちが、
先ほどまでの光晴と同じように床に伏して眠っている。
そのなかには、選手会長で光晴の腹心でもある小川良成の姿もあった。
俺はいったいどうしたんだろう? 光晴がそう思ったとき、場内放送が鳴り響いた。
「私が偉大なるの全日本プロレス社長、馬場元子よ!
 みなさん、よく眠れたかしら?」
「ジャストミート!日本テレビアナウンサー福澤です!」
突然の大音量に、場内のレスラーたちはそれぞれ眠りから起き出した。
みな、なにが起こったのかわからないという顔で焦点の定まらない目つきを
している。
なぜ、あの馬場元子が?
そして福澤が?
しかし、スピーカーから流れ出た次の言葉に、誰もが目を覚ました。
「ファイヤー! 説明しまーす。今日みなさんに集まってもらったのは他でもありませーん!」
そして、元子が続けて言った。
「今日は、みなさんにちょっと、殺し合いをしてもらいますよ!」
その声に、全員の動きがスチル写真にとらえられたように止まった。
場内のざわめきが消える。
「みなさんは、今年の”プログラム”に選ばれたのんです、ファイヤー!」
誰かが、うっ、とうめいた。
2お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:06
いまさらバトロワネタはどーだろ?
3お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:07
およそこの国のレスラーで「プログラム」を知らない者はいないだろう。
団体内で最強の男を決めるために行われる闘い。
それはいわば、公認の公開喧嘩だ。
去年は確か新日本プロレスで行われたと聞いている。
勝者のレスラーは、闘魂伝承の名を手に入れたばかりでなく、役員の座まで
果たしたという。
しかし多くのレスラーがプログラム中に【事故】にあい団体自体が崩壊してしまった。
もっとも、噂では聞いているものの光晴も今の今まで人事だと思っていた。

それがまさか、自分の団体で行われるとは・・・


「そんなばかな」
椅子をがたんと鳴らして、丸藤直道が昂然と立ち上がった。

「なぜ、僕らが、そんなものに参加しなくてはならないんだ?
 第一、社長である三沢さんに断りもなしに!」
至極当然の話である。
しかし、スピーカーからの返事は
今まで彼が経験したことないほど冷淡なものだった。
「ジャストミート!力関係というものがどういうことか知らないのか!君は、
 日本テレビは総力をあげ!この企画を推進することを既に決めた
、君たちは我々の支持通り支持通りにすればいんだ!」
それを聞いて、丸藤は糸が切れたように椅子に崩れ落ちた。
他の皆も押し黙ったままだ。
あまりの事態に、現実を持てあましているといった感じだ。
「なんだ、まだ信じられんとは・・・仕方ない、元子社長!」
4お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:07
呼びかけに応えて、教室の入り口の引き戸が開いた。そこから入ってきたのは、
いつも通り装飾品で身を飾った馬場元子だった。
お供をしているのは太陽ケアーとジョニースミス。
元子の新しい【お気に入り】だ。
二人の外国人レスラーは、肩から何かの詰まった寝袋のような
袋を担いでいる。
「紹介する必要もないと思うが、彼女、馬場元子社長は今回のプログラムを
 手伝ってくれている。さあ、見せてやれ、ズームイン」
元子が袋のジッパーに手をかけ、ゆっくりと開くと
そこから割れたメガネがとこぼれ落ちて・・・
「ぎゃゃああああああぁぁああぁ」
リングのエプロンに座っていた田上明が耳を劈くような叫び声をあげた。
半分ほど開かれた袋の中身に皆の目が引きつけられる。
光晴はごくりと唾を飲み込んだ。
「若林アナ・・・!」
5お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:08

袋の中から覗けていたのは、全日時代の中継アナウンサーであったマンモス若林の姿だった。
いや、もうそれは"もと"若林ですらあった。
何が行われたのか、額には血がこびりつき生気の無くなった眼は頭蓋の半分ほどに陥没して
いた。細い腕が通常では曲がり得ぬ方向へと曲がり、垂れ下がっている。
元子がもう一つの袋も開ける。
そこから出てきたのは日本テレビのプロデューサー今泉富夫の姿だった。
若林同様に見るも無惨な姿になり果てていた。
「いやぁぁあああ助けてくれえええ!!」
再び田上明が悲鳴を上げた。それに釣られて場内に阿鼻叫喚の渦が巻き起こった。
「こらこら、静かにしなさい。みなさん!」
スピーカーから響くの福澤の声はレスラー達の金切り声に掻き消される。
それを収めたのは、部屋にこだました一発の銃声だった。
気づいた時には、最前列にいた田上明が派手な音を立てて倒れリング下に転落した。
額には、黒々とした穴が開いている。斜め後方に座っていた志賀賢太郎の顔にまで鮮血が飛び散り、彼は
「ひっ」と小さく声を上げた。
床には、見る見る赤黒い血だまりが広がっていった。
ノアの昼行灯は、とうとう一度も戦場のかがり火にはなれず絶命した。

【残り11人】
6お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:10
「こらこら、元子社長、アナタが殺してどうするんです?」
スピーカーからの叱責に、まだ煙をあげている銃口をレスラー達に向けたまま
元子は苦笑しながら言った。
「馬場さんの絵をあげたのに、私を裏切ったりするからよ」
場内は静まりかえっている。
「だが、これで進められそうですね。」
福澤はいつものズームインの時の口調に戻って続けた。

「今泉プロデューサー、若林先輩は、なぜだかこのプログラムにえらく反対したのです!
この企画は我が局の最高決定なのに」
それを聞いて、光晴は強い衝撃を受けた。
もしかするとあの二人は、俺達のために反対してくれたのかもしれない。
7お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:11
だが、光晴には何もできなかった。田上の命を奪った銃口が
こちらを向いている(どうしてあの女は顔色ひとつ変えずにいられるのだ?)。
それでも、どうしても二人の死体に眼が吸い寄せられてしまう。
今にも泣き出しそうだった。
「では、ルールを説明します。簡単です、お互いに殺しあって
最後の一人になれば勝ち。何をしようと自由!
勝者はアメリカにでも何処にでも行けるぞ! どうだ、NYに行きたいかー!」
「会場は江東区の区内の全て!
このプログラムのために住民の皆さんには出ていってもらった!
 ・・・・・・」
淡々とルール説明は進む。誰も何も言わなかった。
部屋に漂う生々しい血の匂いが、レスラーたちに事情を了解させていったようだ。
「ややこしい説明はこれまで。
ここで、元子社長から一つアドバイスをしてもらいましょう、元子社長!」
「アナタ達は、いきなり殺しあうなんて無茶苦茶だと思うかもしれませんが、
忘れてはいけませんよ。他のみんなはやる気になっているわよ!」
ウソだ、と光晴は心の中で叫んだが、この時場内にある変化がおこり、
光晴は確かにそれを見た。
誰からともなく周囲に目を配り(その中には小川良成の目もあった)青ざめた顔で
視線を走らせたのだ。
そうだ、元はといえばレスラーは一匹狼どうし、何が起こっても不思議ではない。
8お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:11
【相手を殺してでも生き残る】
そう考える人がいないとは言いきれなかった。光晴は唇をかみ締めた。
「ではこれから2分おきに一人づつ、教室から出ていってもらいます。
部屋を出るときに武器や食料の入ったデイバッグを渡すので、忘れず受け取るように。
出発したらすぐに校外に出ること、うろうろしてると撃ち殺されることに!
 出発順は、くじ引きで決めて貰います!」
まるでバラエティー番組の司会をしているように福澤は少しまき気味に言った
クジをひいた光晴は、自分の次に出発するのが小川であることを幸運に思った。
いうことは玄関の外で小川を待つことも可能ではないか?
「では、一番初めに出発するの者を発表・・・井上雅央に決定!
次は、本田多聞だ!」


【残り11人】
9お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:12
点呼とスタートが、容赦なく始められた。
最初に教室を出ていったのは、井上雅央だ。
普段から暗い表情をさらに強張らせながら、ふらふらと立ち上がって
銃口に見送られながら出ていった。
戸口の向こうに姿が消えた途端に、数歩、通路を歩くリングシューズの音が聞こえて
すぐに走る音に変わり、遠ざかっていった。
永遠にも思える静寂が流れて、また次の出発者をスピーカー越しの声が催促する。アマレスの実力者本田多聞が足取りも重く部屋を出る。
続いて丸藤直道、秋山準、志賀賢太郎と一定の間隔を置いて
次々に出発していく。
それを眺めながら光晴は、小川を外で待つべきかどうか必死に考えていた。
もし誰かが”やる気”になっていたら、それはとてもリスクの大きい賭けだ。
ノアのレスラーの事を信用してはいるが秋山あたりは既にその気になっているかも知れない。
10お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:13
が、小川とならこの異常な状況の中でも善後策を話し合える。
彼だけは今の光晴にとっても信じられた。
どうすべきか、光晴はただ心の中で自問自答していた。
その時、
「うぎゃゃぁぁあああぁああーーーー!」
誰かの叫び声が校庭に響き渡った。そう遠くはない場所からだ。
何が起こった? 光晴の顔色がスッと消えた。
今まで耳にしたことのないような、いや、ついさっき袋が開かれたときに
聞こえた悲鳴、それに、似ていた。
悲鳴はすぐに止んだ。何かが起こった、もう疑いようもなかった。
光晴の気持ちの整理がつかないうちに、新たな出発者、大森隆男が教室から出ていく。
次は自分だ、光晴は考えることをやめて腹を括った。
いづれにせよ、答えは外にあるのだ。
11お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:13
わずか2分のインターバルが無性に長く感じた。
さっきの悲鳴が頭から離れない。
アレは、ひょっとして、断末魔の悲鳴、というものなのだろうか?
だとしたら、いったい誰の? 悪い予感ばかりが、胸をよぎる。
「三沢君、出発よ」
元子が不機嫌そうに言った。光晴はきっと睨んだが、ひるむ様子もない。
立ち上がって、元子の前まで進む。
その途中には仰向けで倒れた田上明の血まみれの遺体があった。
光晴はその変わり果てた”戦友”の姿を、じっと見つめた。
全日の頃からの思い出が、こんな時に頭に浮かんでくる。
やはりどこか間違ってる、こんなことが許されるはずもない。
が、そんな思考を中断させるように、元子が武器の入ったデイバッグと銃口を押しつけて、催促する。
「さあ、行きなさい!」
12お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:13
      ,一-、
     / ̄ l |   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ■■-っ <   次回は来年、お楽しみに
    ´∀`/    \
   __/|Y/\.   \_________
 Ё|__ | /  |
     | У..  |
13お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:14
光晴は深呼吸すると、ゆっくり会場の扉に手をかけた。
部屋を出る直前に、振り返って小川を見た。
小川が、かすかに微笑んだような、気がした。
光晴は、それだけで少し落ち着いた気分になった。
やはりの玄関で小川を待っていようか、またそう考えた。
軽く頷いて、そのまま廊下へと歩を進めた。
だが−− 小川の方がよく事情を了解していたのかもしれない。
その笑みはあるいは、これでさよならかも知れませんね、社長、という笑みだったのかもしれない。
14お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:15
窓から見た夕日が、外を赤く染めていた。
外へ向けてとぼとぼと歩きながら、光晴はこれからどうすべきかを悩み続けていた。
まずは小川と合流しよう、それが第一だ。
こんな状況、とても一人では耐えられない。
そして、できることなら他のレスラーたちと話し合って、
この馬鹿げた戦いをやめさせる。きっとみんな、わかってくれるはず。
もうひとつ、田上を殺した連中を、俺は絶対に許さない。
復讐、普段の光晴では思いつきもしない言葉が、胸中に渦巻いていた。
が、そんな甘い計画は、玄関を出た途端に崩れ去った。
玄関の先、駐車場に何かが落ちている。
見通しが悪くて、それが何か遠くから判別ができない。
なんだろう、光晴は軽い気持ちで近づいていったが、すぐに目を見張った。
15お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:15
人間が、転がっていた。秋山準だった。
一目見て、もう助からないとわかる。
喉がぱっくりと割れて、そこからまだフレッシュな血が鼓動にあわせて噴き出していた。
さっきの悲鳴は、これだったんだ。
光晴ものど元まで悲鳴がこみあげてきたが、こらえた。
さらなる恐怖が、光晴の思考を奪っていたから。
これって・・・これって・・・やっぱり誰かが、やったんだよね?
秋山の天まで釣りあがった眼球が光晴に語りかける。ワタシハ、コロサレタ。キヲツケテ。
今までどこか希望を持っていた光晴が、一気に現実を叩きこまれた瞬間だった。
しかもあの秋山が最初に殺されるなんて・・・。
16お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:16
直後、林の中からかさかさと物音がした。
狙われてる? などと意識する暇もなく、光晴は必死に駐車場を駆けていった。


【残り10人】
17お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:16
林の陰では、丸藤が包丁をしっかりと握りしめたまま震えていた。
包丁には、秋山の血脂が、拭いようもなくまとわりついている。
「社長・・小川さん・・・・」
蒼白の唇から、助けを求める呟きが漏れる(もちろん誰も来てはくれないが)。
丸藤は校門を出る前に、自分のバッグの中身を点検していた。
安っぽい非常食、時計、
そして一本の肉切り包丁が入っていた。
その包丁を手に取ったのも、別段護身を考えてのものではなかった。
日常、社長のお気に入りである彼は、料理などする機会などない(ちゃんこは橋や小林作る)、そこで好奇心も手伝い、なんとなく持っていただけだ。
それを使って誰かを傷つけるなど、丸藤には思いつかなかった。
玄関の前で誰かを待っていたのも、ただ一人が心細かったから。
どうしていいかわからなかったから。
言われたことをなんでもできてしまう「天才」には。
このとき何をしたらいいのかが判らなくなっていたのだった。
18お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:17
けれどそんな全ては、後から出てきた秋山に通じるはずもなかった。
夕日のなか包丁を握り締めて校門の前に大胆に立ち竦む丸藤を見たとき、
秋山は全身が粟立つのを感じた。
「待ってましたよ、秋山さん!」
そういってひきつった笑いを見せる丸藤が、たまらなく恐ろしかった。

なまじ自分の力に自信があるばかりに、そしてノアの選手(自分を除いた)に人殺しなどできるはずがないと過信していた秋山は自らのバッグの中身をチェックしていなかった、まず隠れる拠点を見つけそこでチェックすれば良いと思っていたのだ。
秋山は激しく後悔した。
19お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:17
先手必勝、秋山は伊達ではない。戦闘センスは抜群だった。
すぐさま手にしたデイバッグを丸藤に向かって叩きつけると、
包丁をもぎ取るべく掴みかかっていった。もつれ合いながら、二人は倒れた。
「なにするんです、やめてください!」
そう叫んだとき、丸藤は間近で秋山の眼を、見た。
血走ったその眼は、爛々と光っている。
彼は自分に危害を加えようとしている。だけど誰も助けてはくれない。
このままじゃ・・・殺される。
反射的に払おうとした。
「・・・っ!」
包丁を握ったまま、押さえ込まれそうになっていた両手を思い切り振り回した。
切っ先に引っ掛かるような感覚。
一拍遅れて、なま暖かい液体が丸藤の首筋に降りそそぐ。
うつぶせのまま、丸藤は受難の時が去るのを待った。
相手は何もしてこない。目を開けて、振り返るとそこには、
首を切られた秋山が横たわっていた。
後は覚えてない。
忘れたかった。
気がついた時からこうして木陰で震えていた。凶器となった包丁を握ったまま。
デイバッグが傍らに2つ。秋山の物も持ってきていたらしい。
「ボクは・・・ボクは人を殺してしまった・・・
 でも、あれは事故だ、事故なんだ・・・」
20お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:18
「そこ、誰かいるのか?」
最後の出発者、小川良成の声だった。




様子を窺うような油断ならない沈黙が辺りを支配した。
丸藤は、息を潜めてそっと相手の姿を確認する。
小川は秋山の死体の傷口を観察していた。まるで何かを点検しているような手振りだった。
そして、彼は迷うことなく秋山の所へと、近づいてきた。
丸藤の体に降りかかった大量の血の跡が点々と、彼の居場所を示していたのだ。
とりあえず、小川は丸腰だった。
あんな物を見た後だというのに小川の態度は普段と変わらない。
それが丸藤を奇妙に安心させた。
「おまえが、やったのか?」
きっかけとなったのはその一言だった。
張りつめた緊張の糸がプツンと切れたのか、嗚咽混じりの声で丸藤は弱々しく訴えはじめた。
21お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:19
「ボクは・・・ボクは・・・
殺すつもりなんか無かったのに・・・
怖かったんです・・・ただ怖かったんです・・・」
「そう、そうだよな」
予め想像していたのか、血塗れとなって包丁を握る丸藤を見ても、
小川は怯えることなく歩み寄った。
「秋山さんが、いきなり襲いかかってきたんです・・・
ボクは何もしてないんです、秋山さんが悪いんです・・・」
もう独りぼっちではないという安堵感が、丸藤の胸をいっぱいにした。
丸藤の眼からも、どっと、涙がこぼれだしていた。
「大丈夫、わかってるさ。誰だってこんな状況じゃ
自分を守るのに精一杯だものな、仕方ねえよ」
丸藤は泣き続けた。
今まで当たり前のように大勢の人にチヤホヤされてきたから、
こんなにも一人の人が側にいてくれることが心強いと思ったことはなかった。
ボクは本当にわがままだったんだ、ごめんなさい・・・
ざくっ、という、小気味よい音が響いた。
袈裟懸けに斬り倒された丸藤は、どぅ、とアスファルトに沈んだ。
声をあげることすらなく、ただ、引き裂かれた体が熱く燃えるような感触を最後に、
丸藤は意識を失っていった。最後に彼が思ったのは、何だったのだろうか?
(じゃあなんで包丁なんて持ってたんだよ)
小川は手にした日本刀を一振りして返り血を払うと、背中に隠してあった鞘に
収めながら冷然と言い放った。
「正当防衛だ、悪く思うなよ」
22お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:19
ノア編期待!
23お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:19
【残り9人】
24お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:19
どれくらい時が経ったのだろう?
ランドマークビルの最上階にあるロビー、その窓辺から
井上雅央は俯きがちに街を見ていた。
真夜中の海のような、濃密な闇が街全体を覆っている。
本来なら眼下には生活の灯かりが燈り、美しい夜景が広がっているはずなのに。
この闇の中を、今もリングで見た同僚レスラーたちが自分を殺そうとして蠢いているのかもしれない。
リングで一撃の元に倒された田上明の姿を思い出して恐怖が再び胸を過った。
25お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:20
先頭として出発して以来、雅央はずっとこの場所に立て篭もっていた。
入り口には厳重に鍵を掛けて、エレベーターの電源も落とし、
階段にはソファで即席のバリケードを築いた。
ここなら誰かに見つかる可能性は低いだろうし、侵入者がいたとしても
逃げるまでの時間を稼ぐことはできるはずだ。
そうして気休めながら一時の安息が約束されると、雅央の悪い癖である
考え過ぎの虫が騒ぎ出した。
本当に「殺人」を犯そうとするレスラーがいるのだろうか?
安易に他人を信じる性格ではないが、昨日までの日常からすると
いくら自分のためとはいえ誰かを殺すことなど常識の埒外だった。
世の中にはそういう人もいるというのは理解しているが、
同じノアの中に、そんな人がいるのだろうか?
いくら考えてもわからない。
自分には、できない。それははっきりしていた。
26お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:20
どれだけのうんざりするような現実を見せつけられても、
自分には誰かを殺そうとするなんてできそうにない。
雅央は投げ捨てたままにしてあるデイバッグを絶望的な気持ちでちらっと見た。
なんでこんな事になったんだろう?
プロレスが好きだからにレスラーになっただけなのに、ひどすぎます、神様。
いっそ自殺してしまおうか、こんな暗闇にずっといると、時折
そんな思いも頭を掠めていく。
でも、それもできなかった。
微かにでも他のレスラー達を信じる気持ちがあるから、簡単には命を捨てられない。
この悪夢は、最後の一人になるまで続くのだ。
いっそ自分がここにいる間に終わってくれたらいいのに。
けどそれは、他のみんなが死んでしまった(見殺しにした)という結果だ。
他の者の亡骸のうえに立つ自分。とても、嫌だ。
その時、ロビーの静寂を打ち破るがなり声が、した。
「私が全日本プロレスのオーナー社長馬場元子よ!」
27お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:21
突如響いた大音響に小橋建太の先を急ぐ足がぴたと止まった。
それにしても耳障りな大声だ。
スピーカーの残響がひどくて声の方向がわからない。
学校からだけではないようだ。
「みなさん頑張っているかしら? 逃げ出そうとか、抵抗しようとしても無駄ですよ。
 わかっているわね?」
ああ、と小橋は舌打混じりに呟いた。
何か見えない檻のような物が町境を遮り、決してこのプログラムの枠から
逃げられないようにできている。電車さえ動いていない。
前もって聞いていなければ、こうして街中に潜んで
開始を待つなどという芸当は不可能だったろう。
小橋は少しだけ、情報をリークしてくれたあの元子の犬、太陽ケアーに感謝した。
28お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:21
「いいわね、今からリタイアした者の名を言うわよ。皆、心して聞きなさい」
小橋の身体が硬直した。握った掌に我知らず力がこもる。
まさか目的を果たさないうちにあの人とアイツが死んでしまったなんてことはないだろうか?
「まずは、田上くん。これはみんな知っているわね・・・
次は秋山準。あら以外に簡単に死んだわね、
そして丸藤直道。以上よ」
−−違った。
読み上げられた名前の中にあの人とアイツのものはなかった。
小橋は安堵し、ふうっと息をつく。
そして、死んだ娘達に対して安堵したことを申し訳なく思った。
特に準、こんなに早く逝ってしまうなんて・・・。
とにかく、急がなければ。
ふたりがいつまでも無事であるという保証はない。
何の手がかりもないが、必ず探し出す。
小橋建太は再びふたりの姿を求めて、暗い街へと消えていった。


【残り9人】
29お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:22
ちくしょう、本田多聞は拳に血が滲むほど強く、壁を殴りつけた。
田上が目の前で撃ち殺された時もショックだったが、
さらに二人の犠牲者が出た、しかもどうやらそれをやったのノアの誰かのようだ。
許せねえ、こんなバカな事させる元子バアさん、福澤の野郎、日テレもだ。
絶対に許さない。今まで信じてたのに。
怒りに煮えたぎるその手には、サブマシンガンが握られている。
イングラムM10、今回の支給武器の中では飛びきりの「当たり」だ。
多聞は決意した。
こいつで、奴らに逆襲してやる。自分は元自衛官だ。絶対に負けない。
30お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:23
秋山、丸藤、お前達の仇はとってやる、だから安心しろ。
本当は、出発した時からずっとこのシステムに対して
多聞は不愉快に感じていた。
ただ、若林アナや田上明を使ったデモンストレーションに、
やはり元自衛官といえども、ビビっていたのだ。
が、2人の死が田上の我慢の限界に最後のひと押しを加えた。皮肉な結果だ。
決めた以上、行動に移すのは早い方がいい。
すぐさまこのプログラムの本部のあるディファへ向かおうと身を隠していた近所の公園から歩き出そうとした
その時、過敏になった神経が不自然な草の揺らぎに反応した。
イングラムを油断なく構えて、そちらを向く。
「まった、うたないでください」
多聞はその男がすぐに分かった。大森隆男だ。
31お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:23
自分に向けられている銃口に、大森は泣きそうな顔になりながら訴えた。
「お願いです、銃を下ろしてください」
多聞はこういう時どう言えばいいのか一瞬困った。
「両手をあげて動くな!」
大森は何度も頷いて、言われたままに万歳の体勢をとった。
多聞はゆっくり近づきながら、仔細に多聞の様子を観察した。
武器は、携帯してないようだ。
「誰かと一緒にいたくて。多聞さんだったら、
俺のこと殺そうとなんてしないっだろうって思って・・・・・・」
震える大森の唇から囁かれる言葉に、多聞は警戒心を解いていった。
ああ、彼には少なくとも敵意はない。銃口を外すと、多聞は言った。
「他に誰か見ませんでしたか?」
大森は首を横に振った。考えてみれば、もしも誰かと出会っていたなら
こうして一人ノコノコ歩いている可能性は低いだろう。
「多聞さん、一緒にいてくれますか?」
大森が期待を込めた瞳で多聞を見つめる。
32お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:24
が、多聞は決心に従って彼に告げた。
「自分は、今から元子や、このろくでもない事をさせる奴らをぶっ殺しにいきます。それでも、一緒に来ますか?」
大森は、目を丸くしていた。
まさか、ついてきてくれるなどと多聞も考えてはいない。
第一、武器も持たない彼についてこられても足手まといだ。
せめ運動能力に優れた三沢社長か冷静沈着な小川良成。
そして秋山さえいてくれたなら、どれほど心強かったろうか。
33お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:25
月に照らされた公園に一抹の淋しさを含んだ風が吹きぬけた。
と、大森が口を開いた。
「高山さんのこと、多聞さん、覚えてますか?」突然何を言い出すのか?
ちらっと思ったが多聞は深く考えることもなく答えた。
「勿論です。今はフリーとはいえ仲間ですから」
大森は微笑みながら頷いた。
「俺、高山さんにいろいろ聞いたんです、このプログラムのこと。
高山さんが前、あがった団体、プログラムをやったことがあるらしいんです、
高山さんは参加しなかったけど・・・・・・」
34お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:26
一体何が言いたいのだろう?
あまりの事に混乱しているんだろうか?
「それで俺達、時々、
もしも参加するならどういう方法をとるのがいいかとか、
相談したりしてたんですよ。ねえ、高山さん」
ひゅん。
イングラムを握っていた腕が根元からどさりと地面に落ちた。
多聞は声にならない絶叫をあげる。
腕の切断面を残りの手で押さえつつ、後ろを振りかえる。
幅広の刃をもった片手斧を手に立っているのは、高山善廣?
35お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:26
そんな、なぜ・・・・・・
意識する間もなく、胸の奥が燃えるように熱くなる。
正面の大森が袖に隠し持っていた果物ナイフを
多聞の肺臓めがけて深深と突き刺していたのだ。
口元から、吐息に混じって血の霧が夜の空気に舞う。
背後で大きく何かを振りかぶる気配がしたが、多聞は
もう身体の自由が利かなかった。
巨人の振り下ろす斧が自分の背中の中央に
食い込んでいくのを、ただ為すがままに受け止めるしかなかった。
訳が分からないまま、多聞は崩れ落ちていく。
すまない、仇をとることはできないみたいだ・・・・・・
数分後、多聞が完全に動かなくなったのを確認してから、
2人はその隣で笑いあった。
「うまくいったね、大森クン」
36お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:27
新日のことなのかあげ
37お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:27
「高山さんのおかげッスよ、ありがとうございます」
血に濡れたナイフを多聞の汚れた服で拭いながら大森が言うと、
高山はちょっと眉を上げた。
かつての同僚を惨殺したというのに、ノーフィアーには一片の暗さもなかった。
まるで始めて世界タッグベルトをまいたあの日のように。
2人は予定以上にうまくいった成果の前で喜びを分かち合っていた。
高山は地面に落ちているほむらの腕からマシンガンを奪うべく、
指を1本1本丹念に引き剥がそうとしている。
「別にお礼なんていいよ、大森クン。俺だって、大森クンに死んでほしくないもの」
黙々と作業に没頭しながら、高山は口先だけの返事を返した。
「それにしても、こんなに上手くいくなんて」
「何言ってるだよ、大森クン」
やっとイングラムM10をもぎ取った高山は、新しい玩具を
手に入れた子供みたいにその重さを確かめながら月に翳して、言った。
「こんなの、知ってる奴が圧倒的に有利にきまってるじゃん。
大森クンのところには今でも、毎日バアさんから電話が来るんだしさ、
それでもまさか本当に決行するとは思わなかったけどね」
38お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:28
そう、元はと言えばこの作戦−−2人一組でのおとり作戦を
提案したのは、高山の方からだった。
元子からプログラムが行われる事をあらかじめ聞いていた大森は、高山に相談したのだ。
そこで高山が2人一組のおとり作戦を考案した。
「バアさん、様々だよね」
高山が心から嬉しそうに言う。

それはそうなのだろう、だが大森の胸には何か割りきれない思いが生まれていた。先程の本田多聞の
真っ直ぐな瞳にさらされた時から。
呟くように、大森は言った。
「でもさ、高山さん。多聞さんを、殺す必要があったのかな?」
高山がぴくりと顔をあげた。
39お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:29
「多聞さんは、俺たちを殺すつもりなんて全然なさそうだった。
それに多聞さんは、このプログラムを止めさせると言っていたのよ」
高山は鼻で笑った。
「甘いよ、大森クン。それもすべて、演技だったって可能性もあるぜ。
信じきったところで、後ろからズドンと・・・・・・」
「高山さん!」
大森は悲しかった。俺の相方はこんな冷酷な考え方をする人間だったのか?
「・・・・・・それに、反抗しようとしても無駄だよ、大森クン」
高山がポツリと言った。
「前のプログラムの時も、そう言ってプログラムに刃向かおうとした奴が
いたらしいよ。でも、結果は・・・・・・」
高山は立ちあがってイングラムM10を構えると、
さっきまで多聞が隠れていたあたりに向けて軽く試射を行った。
ばららっと夜空に甲高い音が響く。
期待通りの威力で銃痕が壁に刻まれていった。
40お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:30
「第一もう忘れたの? 大森クン。
このプログラムで勝ち残れば、最強の称号が手に入るんだぜ。
そのためなら何でもするって大森クン、言ったじゃない」
大森は口を閉じた。高山の言うように、それのためならちょっとくらい
人を殺すことなど何でもない。
それに相手も自分を殺そうとしているのだ、
だからいいじゃないですか?
そう考えて大森はこのプログラムに臨んだのだ。
「だから文句言わないでよね、大森クン」
高山はイングラムの銃口を大森に向けた。
「・・・・・・高山さん?」
大森は泣きそうな顔になっていた。
41お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:30
「冗談はやめてよ、危ないじゃないですか、高山さん」
無理にでも相方を信じて、大森は平静を装いつつ声をかけた。
高山は抑揚のない声で言った。
「冗談だと思う? 大森クン」
そう問い返す高山の顔には相方の面影などまったくなかった。
狂気を宿した一人の戦士の顔に変貌している。
大森は混乱した。
「なんで? ねえ、高山さん?」
高山は薄笑いを浮かべつつ、言った。
「俺だって、最強の座を狙っていたんだ、日テレから貰えるお金もね。
理由なんて、それで充分だろ?
本当はもっと人数が少なくなってからにする予定だったんだけどさ。
迷いの生まれた大森くんじゃ、肝心なとき足を引っ張りそうだから」
42お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:31
大森死んじゃダメー!!
43お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:31
そして瞬間、視線を手に
持ったマシンガンに移して、高山は続けた。
「こんないいモノがあるんじゃ、もう協力の必要もないしね。
大森クン、ヘンなとこだけ運がいいよね」
大森は驚きを隠せないまま、叫ぶ。
「そんな、だって高山さん、参加してないじゃないか!」
「言ってなかったけどね、舞台の中にいるレスラーなら、誰でも
参加できるのだよ、プログラムに。
普通、”隠れキャラ“って言うらしいんだけどね」
大森の顔が強張っていく。
涙が、こぼれた。強い感情の波に、身体中が震えている。
「聞きたいことはそれだけかな? じゃあ、さよならだ、大森クン
最期に言っとくか、ノーフィアー!」
44お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:31
おもむろに高山が引き金をひき絞った。さっきと同じ甲高い音が、響く。
身体に無数の銃痕を刻みつけられて、大森はゆっくりと倒れていった。
消え行く意識の中で、大森は思った。
これは、罰なのかもしれない。
俺の都合だけであの純粋な多聞さんを殺したことの。さよなら浅子さん・・・・・・
そのまま高山は倒れた大森の身体に近づいていく。
マシンガンを痙攣している大森の脳天に突きつけ、再度撃った。
頭蓋が割れて、脳漿が飛び散り、高山のつま先にまでかかった。
疑いなく、彼の相方は死んだ。
「俺を信じた時点で、お前の負けだよ」
言い捨てると高山は斧とマシンガンを手に次の獲物を探して歩き出した。


【残り7人】
45お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:32
光晴はもう走り続けることに疲れてしまっていた。
玄関を出て、あの凄惨な遺体を眼にしたときから、神経が高ぶりつづけている。
わずかな物音、動く影、そんな周囲の些細な変化に踊らされながら、
ずっと姿なき殺人者に怯えていた。
支給武器であるワルサーP38の冷たいグリップを頼りなく握りしめて、
彼は長い長い夜の中を逃げ続けた。
光晴が行き着いたのは、灯の落ちたゆりかもめの駅のホームだった。
街から脱出したいという願望が彼をここに誘ったのか。
始発列車を待つように、光は力なくベンチに腰を下ろした。
ホームの時計は4時を指している。
46お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:33
もう限界だ。
憔悴した頭で、ぼんやりと思った。
誰かに会いたい。なぜだか川田利明の顔が浮かんだ。
でもここに彼はいない。わかりきったことだ。
アイツは全日に置いてきたんだから。
でも良かった、川田はこんな事に参加しなくてすんで。
・・・・・・・・。
こんなことなら、せめて最初からアイツを校門前で待っていればよかった。
今この街の中で、最も信頼することのできる男。
さっきの放送では彼の名前は呼ばれなかった。
(新たに多聞と大森が死んだらしい)
俺の一番の腹心はまだ生きているのだろうか?
生きているなら、ここに来い、小川、頼むよ。
47お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:33
「社長、社長ですか?」
声がした。朦朧とした瞳を向けると、ホームの階段をゆっくり下りてくる
小川の姿が見えた。
 これは幻覚だろうか?
都合のよすぎる。けれど光晴のくちびるは自然と彼の名を刻んだ。
「小川・・・・・・?」
小川はかすかに微笑みながら、言った。
「ひどい顔してますよ、社長」
「小川!!」
我を忘れて光晴は小川の側に駆け寄った。
他者の存在が懐かしかった。
お互いがお互いを疑うしかないこのプログラムの現実の中で、一人でも
信じられる人がいるというのはどんなに心の支えとなるだろうか。
2人は寄り添ったまま、しばらく静寂の時が過ぎた。
しかし人心地ついた頃、ふと光晴は気付いた。
小川の服から、何か生臭い匂いがしている。
48お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:34
あのリング上でした匂いと同じ、これは、血の匂い?
「小川・・・・・・?」
不安げな光晴の口調に、聡い小川は彼の疑問を感じ取ったのだろう。
小川は軽く肯いて、言った。
「ええ、殺りました」
光晴はあとずさった。
小川は淋しそうな表情で言った。
「俺が恐いですか? 社長」
光晴は答えられなかった。
すぐさま否定できたはずなのに、小川は最も信じられるレスラーだったはずなのに。
彼が纏った血の匂いが光晴の心に消せない疑念を植え付けていた。
49お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:35
「仕方なかったんです、社長。
殺らなければ、殺られてしまったかもしれない」
小川はあっさりと説明する。嘘はついてないのかもしれない。
でも、だからといって殺人だぞ? 一線を踏み越えた小川が、光晴には遠く思えた。そしてもう素直に小川を
信用できない自分が、たまらなく悔しかった。
小川はしばらく光晴の顔をみつめた後で、口を開いた。
「俺達、一緒にいないほうがいいかもしれませんね、社長」
光晴の顔に見る見るうち衝撃が広がる。
小川は相変わらず冷静な口調のままで、続けた。
「お互いが相手を恐がっているようじゃ、一緒にいることでいつか
お互いを傷つけ合うことになるかもしれません。俺、社長を殺したくはない」
小川はそこで言葉を切った。
そして、ぽつりと漏らした。
「恐いんですよ、俺だって」
小川は踵を返すと、再び出発した。
今度こそ、最後の別れになるかもしれない。
そう思ったのに、光晴には小川を引きとめられなかった。
小川が去った後で、光晴はしばらくの間ベンチにうずくまった。
50お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:36
小橋建太は、息を呑んでいた。
もはや彼らが隠れていそうな場所はあらかた立ち寄っていた。
残る手段は町を隈なく歩くことしかない。
疲れきった体をひきずるようにして、小橋は歩き続ける。
まだ彼らは生きているんだ、その事だけが彼を活動させていた。
足が棒になるまで歩き続け、そして−−
たまたま通りがかった小さな公園で、小橋は立ち尽くしていた。
血の海に沈む悲惨きわまりない死体を2つ、見つけたからだ。
それはまるで壊れた人形にケチャップをかけたようだった。
吐き気を押さえて、小橋は遺体を直視する。
51お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:36
それが、三沢光晴と志賀賢太郎ではない事を確認するために。
片方の死者には、見覚えがあった。
本田多聞だ。
片腕が取れている。
そして背中が、セミの抜け殻のように大きく、真っ二つに割れていた。
もう一人は、誰であったか?
大森か?頭を吹っ飛ばされグチャグチャになった姿からでは特定できそうにない。
やはり、やる気のある奴はいるのだ。
いったい誰が? まだ殺った奴はこの辺りにいるのか?
と、遠くに人が歩いてくるような気配を感じた。
考えるより早く、小橋は物陰に伏せる。
52お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:37
そっと顔を覗かせて、足音を感じた暗がりに目を凝らした。
「俺だよ、小橋」
暗がりから返ってきた声に、小橋は緊張を解いた。
立ちあがって、そこにいる声の主、小川良成に手を振った。
小川は相変わらず冷静だ。
さすがというべきか、可哀想にというべきか。
小橋はとりあえず最優先で聞くべきことを聞いた。
「選手会長、社長と志賀を見ませんでしたか?」
小川は答えた。
「社長とはさっき別れた、志賀は知らない」
何を今更、と皮肉めいた様子で、小川は続けた。
「二人を探して、どうするつもりだ?」
「俺は、二人にどうしても、伝えたい事があるんだ」
小橋はきっぱりと言いきった。
「だから、二人を探している」
53お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:38
「そんなに伝えたかったなら、こんなプログラムが始まる前に
言えば良かったじゃないか」
責めるような小川の言葉に、小橋は悔しさを滲ませつつ言った。
「このプログラムの開始を知ったのは、ふたりが拉致された後のことだったんだ。
ケアーの奴がうっかり口を滑らせたのを聞いて、初めて知ったってわけさ。
もっと早く決心していれば、こんな面倒なことにはならなかったのにな」
その通りだ。小川だってその点、他人の事は言えない。
小川は視線を落として、哀しげに呟く。
「小橋お前、足、治らないんだな」
「・・・・・」
「だから辞めるって社長と志賀に直接言いたかったんだろ?」
小橋は頷いた。
「お前、バカだな」
小川は呟くと
小橋は頷いて
「じゃあ、もう行きます」
と言い残して小橋は身を翻し、去った。
「気をつけてな」
彼を見送った後も、小川はしばらくその場にたたずんでいた。
小橋のことに気を取られて、無防備に接近を許してしまった。
それが、彼にとって人生最後の大失態となった。
54お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:39
ぱららら、という音がして、小川は衝撃とともに薙ぎ倒された。
傷みを感じる余裕すらなかった。
あっという間に全身の感覚が奪われていく。
痺れる上半身を撃ち抜かれた肘で強引に持ち上げて、小川は
自分を殺そうとした男の顔を、しっかりと睨みつけようとする。
あの大きさは高山?
でもアイツは参加してないのに・・・・・・
悩む間もなく、また、ぱらららという忌まわしい音がした。
今度は倒れていたおかげか、銃弾は目の前の2つの死体に
風穴を開けただけだった。
(そのついでに生肉の飛沫と紅い噴水をあげた)
だが、もう小川には反撃の余力が湧いてこない。
とどめを刺そうと高山が小川に歩み寄りながらイングラムを構えなおした
その時だ。
55お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:39
失礼な事言いますが、選手会長とはさすがに呼ばないんじゃないでしょうか・・・。
56お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:39
「小川さーんぃぃぃっ」
絶叫に瞬間驚いて高山が振り向くと、さっき立ち去ったはずの小橋が
素手で駆けつけてきていた。
だが、まだ距離がある。
薄く笑いながら、高山が引き金を引く。が、弾が出ない。
焦って何度も右指に力をこめるが、イングラムは反応しない。
所詮、銃器の初心者、弾丸を補充することを忘れていたのだ。
小橋は迷いなく高山の懐に飛び込むと、裂帛の気合を込めてラリアートを繰り出した。
「でいやぁあぁ」
リハビリで鍛え続けた彼の上半身は、欠場前同様の威力だった。
衝撃に、高山の手からイングラムが弾き飛ばされて、道路上を転がる。
続いて、高山の身体のクビめがけて、剛腕を放つ。
これも見事に入った。高山が倒れて、激しく咳き込む。
そのまま小橋は腕を構えた。
が、殺人の決意のない小橋には、どこか躊躇いが残っていたのか。
振り下ろそうとする刹那、腕が止まった。
その一瞬の間隙を縫って、高山が隠し持っていた果物ナイフを投げつける。
小橋は身を逸らしてそれを逃れた。が、決定的なチャンスもまた逃していた。
高山は直ちに、傍のイングラムを掴むとそのまま脱兎のごとく闇に消えた。
57お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:40
小橋は小川に肩を貸すと、そのまま近くの自動車の陰に隠れた。
高山は追撃をしてこない。
小橋を警戒したのか、それとも既に小川に致命傷を与えたと確信しているのか。
どちらにせよかなり用心深くて、狡猾な性格のようだ。
そしてこの場合、それが幸いした。
冷えたアスファルトに小川を寝かせる。傷穴から出血が止まらない。
クソ。とまれ、とまってくれ。
小川は苦しそうな呼吸の合間に言った。
「銃声を聞きつけて、まだ誰かが来るかもしれない。早く離れた方がいい」
「馬鹿な、まだ手当てをすれば・・・・・・」
「助かると思うか?」
小橋は形容しがたい表情をした。彼の傷が致命傷であることは
一目で明らかだった。
58お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:40
小川は、諦めにも似た作り笑いを浮かべた。
「自分の体のことは自分が一番わかるさ、レスラーだからな」
そして、空を仰ぎながら小川は言った。
「最後ぐらい、一人静かにさせろ・・・・・・」
最後の願い。
小橋はそれを聞いてやっと立ちあがると、その場を離れた。
すまない小川さんと、心の中で詫びながら。
俺はまだ、ふたりを探さなければならないんだ・・・・・・
59お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:41
身体に無数の風穴を開けられたにもかかわらず
彼は未だ生きていた。
しかしそれも束の間のこと。
小川はただ瞳を閉じて、静かに永遠の眠りが訪れるのを待った。
朝を予感させる空気が気持ちいい・・・・・・
傷痕からどうしようもなく火照る身体の熱を冷やしていく。
不思議なほど安らかな気分だ。
殺した相手ヘの怨みなど、もはやどうでもいい。
(無いと言ったら嘘になるが)
思えばこんなプログラムに巻き込まれた時から、
俺は心のどこかで覚悟していたのかもしれない。
このプログラムから帰還できるのは一人。
わずかな可能性に賭けて、同僚レスラーや、自分の弟子達、
そして自分の自尊心を捨ててまで生き残ろうとするなら
運命に従う方が圧倒的に楽だ。
60お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:41
現実、戦うことをやめ、受け入れてしまった今では、
もう死の恐怖に怯えることはない。
もう誰かを殺したりする必要もない。
でも・・・・・・
こんなことなら、あのとき社長と一緒にいれば良かったな。
小川は意識を失う直前に、思った。
社長は、最後まで生き残れるかな?
俺は駄目だったけど、社長には無事でいてほしい。
あのおっさんは優しすぎるところがあるから、心配だけど・・・・・・
そのまま小川の意識は広大な闇に落ちた。
61お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:42
これも走馬燈というやつなのだろうか?
遠くから誰かが俺を呼び続けている。
「小川、小川!」
でもおかしい、この暖かい雫はなんだろう。
「起きろ、目を覚ませ、小川ぁ!」
小川は硬直しかけた目蓋をもう一度だけ、抉じ開けた。
涙で顔中をぐしょぐしょにした光晴が、いた。
「・・・・・・小川ぁ」
小川がうっすらとでも瞳を開いたのを確かめ、
ようやく三沢は嗚咽まじりの呼びかけをストップすると
小川の次の反応を期待するように顔を近づけ瞳の奥を覗きこんだ。
三沢はもうほとんど機能しない頭の中で、ぼんやりと思った。
ああそうか、銃声を聞いて追いかけてきたんだ、こんな俺のことを。
嬉しかった。
だからもう泣かないでください社長。
62お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:43
肩で呼吸しながら、小川はなんとか息を整えて言葉を声帯から絞り出す。
「スイマセン、社長、さっきは、スイマ」
三沢は駄々をこねるように激しく首を振る。
「小川、いいさ、そんなの。だから元気出せ、小川ぁ」
ううん、それは無理です、自分でもわかってる。
だけどいくつかの忠告ぐらいは、私にもできる。
小川は思うように動かない唇をもどかしく思いつつも
途切れ途切れに、口にする。
「社長、高山に、気をつけて」
光が顔をこわばらせる。
「奴はやる気です。俺の荷物、持ってっていいから
・・・あと、小橋が来て・・・」
言い終えると、力尽きるようにがくっと小川の閉じた顎が落ちる。
63お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:43
小川〜!!
64お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:43
「小川、しっかりしろ、小川!」
まだ。
小川はわずかに残った力をかき集めて、光の手を握った。
「生きて、社長」
三沢が頷くのが見えた。途端に、小川の意識が遠のいていく。
もう一言だけ、ありがとうを述べたいのに、もう声帯が動かない。
それは贅沢過ぎでしょうか。せめて微笑みだけは。
あぁ、それにしても、神様に感謝します。
やっぱり独りぼっちで死ぬのはちょっと寂しすぎるから。
最後に一緒にいてくれる誰かが、社長でよかった・・・・・・
三沢さんが社長で、ほんとによかった。
数分後、今度こそ小川良成は、絶命した。


【残り6人】
65お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:44
朝焼けに沈む海がこんなにきれいだなんて
雅央は知らなかった。
まだ彼はタワーの最上階から動いていない。
ここにいる限り、他人に見つからないで済むような気がして。
先程まで疲労に勝てず、うつらうつらと眠りかけていた。
目を覚ましたのは、窓から射し込む朝日がまぶしくて。
窓の外を覗いてみると、遠く東京湾から昇りかけた陽で
海が薄紫に染められている。
雅央は瞬間、呼吸が止まる思いがした。
この世界は美しい。「生きたい」と強く思った。
66お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:44
涙が出てきた・・・
67お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:44
気がつくと、身体が空腹を訴えている。
展望レストランの冷蔵庫にあった食材で簡素な朝食を作る。
ボトルに詰まったミネラルウォーターもそこで見つけた。
ほぼ半日ぶりの食事。
穏やかな時間が過ぎていく。昨日の事が幻だったかのように。
68お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:44
−−されど残酷な現実はそんな一時の安息さえも許さなかった。

惨劇の序曲はまたもあの、ぱららら、という音だった。
遥か地上から響いた発射音が、こなごなに何かを砕いたらしい。
激しいノイズが空を伝って遠く展望室まで達する。
いったい何だ? 雅央は意味もなく左右を見廻す。
程なく、館内の照明が低い唸りとともに一斉に点灯した。
非常灯の灯を呆然と見ながらも、雅央は悟っていた。
つまり何者かが、1階の分電盤を操作したのだ。
とすると、さっきの音は誰かがこのタワーへ侵入するため
入り口を破壊した時のものか。
69お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:45
まずい。雅央は口端を噛んだ。
相手は凶悪な武器を持っている、しかもそれを使うことに
躊躇いがない。
どう考えても好意的な態度ではなかった。
出会したら、おそらく一巻の終わりではないか。
ロビーに飛び出すと、1基しかない機能していない中央エレベータに向かう。
だが、既にエレベータの階数表示ランプが7、8、9・・・と
展望室めがけて上昇してきていた。
うっ、と雅央は小さな悲鳴をあげる。
立ち止まっている暇はない。
非常階段を、猛スピードで雅央は駆け降りていく。
2フロアほど降りた時、さっきまでいた頭上の展望室から
またあの、ぱららら、とともに、
ガラス窓が砕け散る悲鳴にも似た音が聞こえた。
70sage:2001/08/21(火) 00:45
だめだめじゃん
71お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:45
雅央は耳を塞ぎたかった。
が、今は脱出する事だけを考えなければ。
生き延びたい。
頭上からは、まだ何者かによる破壊の騒音が続いている。
聞こえないふりをして、螺旋の階段を走りつづけてるうち、
次第に音が遠ざかっていくのがわかる。
思わず足を運ぶ速度が緩みそうになる。
まだ早いって、この建物から離れるまで油断は禁物。
いつしかあのノイズは聞こえなくなった。
階段の先にほのかな光りが見える。出口が近い。
安心した途端、足が縺れて雅央は2Fの踊り場でたたらを踏んだ。
偶然だったが、それが雅央の命を永らえさせた。
凄まじい音をあげてイングラムが数段下の階段外壁に
銃創を刻む。圧倒的なスピードで。
埃くさい風圧が雅央のいる踊り場まで押し寄せる。
雅央は慄然とした。先回りされてるの?
72お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:46
なんかいいな〜。三沢と小川…。
73お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:46
休む間もなく、さっきまで駆け下りてきた階段を
逆に昇っていく。
「待て!」と呼ぶ声のかわりに、再びイングラムの
ぱららら、という発射音が響いた。
まるでこの状況を楽しんでいるかのように。
疲れきった足を叱咤しながら、雅央は一段一段踏みしめるように
階段を駆け登る。
時折足下の方から断続的にぱららら、ぱらららと例の発射音がする。
明らかに威嚇のつもりなんだろう。
悔しいけど、立ち向かう手段が今はない。
幸い、相手との距離は離れていっている。
鉄の固まりで重武装している敵と、身軽な雅央の差だ。
心臓破りの非常階段をようやく昇りきって展望室に出ると、
雅央の頬に外からの冷たい風が吹きつけてきた。
最上階の展望室は、嵐が巻き起こった後のように荒れ果てていた。
少し前までの洒落たロビーは、廃墟に様変わりしている。
74お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:46
ガラスやコンクリートの破片が散らばる床を見渡して
雅央は自分に支給されたデイバッグを探した。
出発前にあの憎き鬼婆元子が言っていた話しを思い出す。
「・・・武器や食料の入ったデイバッグを渡すわよ・・・・・・」
“武器”。
あまり使いたくはなかったが、この追い詰められた状況を
好転するにはそれしかない。
何が入っているかは知らない(まだチェックしていない)が
どうかあのマシンガンに対抗できる物がありますように。
必死の思いで、雅央は生き残りのため一途な望みをかけた。
75お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:47
デイバッグは、窓際のソファの傍に落ちていた。
雅央は焦りすぎのせいで何度も捲れかけた絨毯や
フロアに落ちた照明機器に足を取られそうになりながらも
窓際まで駆け寄ってデイバッグを手に取る。
開封して雅央は、心が絶望に支配されていくのを感じた。
バッグの中には、食料品のほかにちゃちなヨーヨーが
ひとつ入っていただけだった。
まさかこれが“武器”?
神様、何もこんないたずらをしなくてもいいじゃありませんか?
76お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:47
うあああ、もう勘弁してくださいぃぃぃ!
77お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:47
ぱららら、とまたあの音がして、雅央は階段近くを振り返ると、見た。
恐ろしい顔をした大男が、勝ち誇った笑顔を浮かべながら
マシンガンの銃口をこちらに向けているのを。
「鬼ごっこはおしまい?」
高山が言った。雅央は無意識に後ろへ退がる。
すぐそこは外だ。踵に触れたガラスの破片がいくつか中空へ舞う。
雅央は絶望の底から絶叫した。
「なんで? なんで平気な顔でこんな事できるんですか?」
救いを求めての言葉ではない。
ただ、自分なりに納得できなければ、死にきれない。
78お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:48
そんな雅央をせせら笑うように、高山は答えた。
「さぁね・・・・・・自分のため、だからかな。
あんたはできないの?・・・・・・だから負けるんだよ」
なに、それ。ムリムリムリ・・・・・・わかりたくない。
「バイバイ」
再び高山のイングラムが火を噴いた。
凶弾に雅央の身体は貫かれ、ガラス窓の向こうに転落する。
上空を吹き抜けるまだ冷たい春先の風の中、痛みもなく
どこまでも落ちていく感覚。
最後まで雅央の抱いていた生への希望は、地上に落ちたその身とともに散った。

【残り5人】
79お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:48
不覚にもジーンと来た。
小川の最期。
80お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:49
志賀賢太郎は住宅の片隅で膝を抱えていた。
街外れにある、新興住宅地の入り口近くにある一軒家だ。
まだ人が住み着いていないそこは
、生活の匂いがなくて小奇麗で
誰にも見つからずに隠れ続けていたい彼にとっては
奇妙に安らげる空間だった。
開始以来、志賀はここから一歩も移動していない。
支給のパン以外何も口にしていなくて、お腹も空いているし
じっと動かないでいるのも辛かったが、それ以上に外は恐ろしかった。
81お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:49
>>79
でしょ。
82新日編同様パロディです:2001/08/21(火) 00:50
時折、死者の葬送を告げる放送が町内に響くたび、志賀は
昨日から目にしたいくつもの死体・・・・・・玄関前で
喉を切り裂かれていた秋山準、教室の目の前で射殺された田上明
そしてボロ屑のように袋に詰め込まれていた若林アナ・・・・・・
確実に減り続けていく仲間のことを思った。
血まみれで殺されていた秋山を見た時、志賀は我を忘れて
叫び声をあげた。そしてそこから震える足で逃げ出しながら、直感的に
理解していた・・・・・・隠れていることが最良だと。
これまで誰にも出会わず、誰にも襲われず夜が過ぎ、昼を迎えていた。
かなりの幸運もあるが、じっとしていたのが結果的に功を奏した。
志賀はずっと握りしめていたベレッタM92Fを
床に置くと、大きくため息をついた。
もはや疲労の極みに達していた。睡眠もほとんどとれていない。
志賀は自分が泣いているのに気づいた。
その時、
・・・・・・がちゃりと家の玄関のドアが開く音がした。
83お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:50
志賀は、身を硬くした。




侵入者は、1階の部屋を探索しているようで、がさがさと物音がする。
いったい誰だ? 志賀は恐怖が実体を持って迫ってくるのを感じた。
いづれ何者かが階段を上がって、この部屋までやってくる。
どうすればいい? 床に置いたベレッタに視点が集中する。
やれるのか? ボクに。
躊躇している間に、侵入者が階段を昇る足音が聞こえてきた。
ベレッタを手に取り、そのグリップをぎゅっと握り締める。
足音が、この部屋の前で止まった。来る。
ドアノブがかすかな音とともにゆっくりと回って、扉が開く。
84お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:51
隙間から姿をあらわしたのは、小橋建太だった。
右手で拳を握り、服は介抱した小川の返り血で
まだらに染まっている。
志賀の目が見開かれる。今にも叫び出しそうなほどに。
「志賀・・・・・・」
小橋が大胆に一歩、踏みこんできた。
殺される!
志賀がそう強く思いこんだ刹那、ぱん、と軽い銃声がした。
小橋の身体が弾かれたように倒れた。
左胸の肩の付け根辺りから、服が血でどす黒く染みていく。
こわいこわいこわい。とにかく、止めを刺さなければ。
85お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:51
志賀は銃を握ったまま、小橋の側に駆け寄った。
銃を構えて、小橋の頭に向けたとき、志賀の視線は
彼の哀しげな瞳にぶつかった。思わず、動きが止まる。
次の瞬間、小橋は、握っていた拳を開いた。
あれ?
ようやく恐怖が落ちつき、志賀に冷静さが戻ってくる。
そういえば、なんで小橋さんがここにいるんだろう?
86お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:52
「やっと会えたな、志賀。ずっと、探してたんだ」
苦しげな様子をおくびにも出さず、小橋はそう言って笑ってみせた。
だけどさっき撃たれた傷口からはどんどん血が流れ出ている。
「小橋さん! ごめんなさい、ごめんな・・・・・・」
志賀は自らの行為に後悔しながら、必死で傷口を押さえつけていた。
そんなことで出血が止まるはずもないのに。
「大丈夫さ、こんな傷」
小橋はそう言うが、明らかに強がりだった。荒い呼吸が、隠しきれない。
それでも小橋は、志賀のために平気と言い張った。
志賀は混乱して、ぼろぼろ泣きながら言った。
「小橋さん、どうして・・・・・・?」
志賀にとって、師匠だったが、雲の上の存在だった。
そんな彼が、何の為に俺なんて探してたんだろう。
87お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:53
小橋は幸せそうに微笑んで、傷の手当てをしている志賀に言った。
「俺、ずっと志賀や社長が無事でいてくれるか、不安だったんだ。
お前が生きててくれるなら、こんな傷、どうってことない」
「―――え?」
志賀はすんなりと理解できず、その手が止まった。
若干の沈黙のあと、小橋が口を開く。
「俺、どうしてもお前に、言っておきたいことがあってさ」
「それって、え、何ですか?」
長い間悩んでいたのが嘘のように、あっさりと、小橋は言った。
「俺の足はもう治らない、だからプロレスを辞める。」
小橋が心の中でずっと暖めていた言葉に、志賀は心臓を鷲掴みに
されたような、呼吸が止まるほどのショックを受けた。
88お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:53
志賀のばか!
89お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:53
高山怖ッ!!
90お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:53
辞める・・・・・・・って、小橋さんが、辞めるって。
かすれる声で、小橋の名を呼ぶ。
「小橋さん・・・・・・」
「俺はお前が入門した時、努力すればお前もメインイベンターになれるといったよな
その時の俺は王者でいる、俺からベルトを獲ってみろ!と約束しただろう
すまないが、あの約束、はたせないことになった、それをあやまりたくてな」
91お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:54
小橋!辞めるなよ!!ダメだって〜!!
92お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:54
「小橋さん、ボク、ボク・・・・・・」
「いいから」小橋は優しく言った。
「おまえらは俺の弟弟子だ、弟子になら、何されてもいいから、気にすることない」
そして志賀の手を掴むと、懸命な眼差しで訴えた。
「それより、早く逃げろ」
「早く逃げるんだ、志賀」
突然の小橋の変化に、志賀は途惑った。
小橋は志賀のため必死になって説得を続ける。
「さっきの銃声を聞きつけて、やる気のある奴が来るかもしれない。
早くこの場を離れるんだ」
それだけ言うと、小橋は疲れ果てたようにいったん目を閉じた。
泣きべそを拭いながら、志賀は小橋に縋りつく。
93お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:55
「一緒に行きましょう、小橋さん、一緒に・・・・・・
三沢社長にもそのことを伝えないと、小橋さんの口から」
「志賀・・・・・」
そんな感動の場面を打ち破るように、ぱららら、と音がした。
おそらく玄関の扉が、激しい金属音をあげた。
志賀は反射的に立ちあがって、窓の外を窺う。
誰の姿もない。かわりに、階下からまたあのマシンガンの音がした。
脱出しなければ、でも、どうやって?
ここは2階だ、窓から逃げるのは難しいだろう。高すぎる。
志賀は唇を噛む。と、小橋が立ちあがろうとしているのが見えた。
「小橋さん!」
志賀が駆け寄る。小橋は拳を力の限り握り締め、決然と言った。
「あいつは、俺が何とかする。志賀は、ここにいるんだ」
「駄目です、そんな、ケガしてるのに!」
引き止めようとする志賀の手を穏やかに振り解きながら
小橋は透き通るような笑顔をみせて、言った。
「やるしかないんだ、やるしか・・・・・・」
94お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:55
そして志賀の手に先程のベレッタを押しつけるようにして持たせた。
「もし俺が無事に撃退できたら、今度は部屋に入るとき
声をかける。黙って扉を開ける奴は、敵だと思うんだ。
俺がやられて、そいつがこの部屋に入ってきそうになったら・・・・・・
これで、自分の身を守るんだ。できるな?」
小橋の熱のこもった言葉に気圧されて、志賀は拒否する術がなかった。
「じゃあ、俺は行く」
部屋を出て行こうとする時、小橋が呟いた言葉。
「もしもの時は、お前から三沢さんに伝えてくれ、リングに戻れなくてすいませんと」 。
95お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:56
小橋が出て行ってからずっと、様々な熱を伴った想いが
志賀の頭の中を駆けめぐっている。
ボクを探して、彼はこの危険なプログラムの中を一昼夜もかいくぐり、
今も、あの恐ろしい武器を持つ相手に向かって、立ち向かっていく。
ボクを救うため、出来の悪い弟子のために。
志賀は泣き止むことなんてできなかった。
階下からさっきのぱらららという銃声が、した。
それが開始の合図。
絶え間なく続く、2人が争いあう凄まじい騒音。
武道館で三沢vs小橋の三冠戦のセコンドをしていたときのように、志賀は、祈った。
勝って。勝って。勝ってと。
ほどなく、一階からの音が鳴り止んだ。
息を呑む静けさ。
ぎしっ、と階段が軋んだのが聞こえる。
誰かが昇ってくる。小橋か、それとも侵入者か?
96お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:56
志賀ぁーー!!(呪
97お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:57
『もし俺が無事に撃退できたら、今度は部屋に入るとき
声をかける。黙って扉を開ける奴は、敵だと思うんだ。』
彼の言葉を思い出し、震える手でベレッタの銃口を扉に向ける。
足音が、再びドアの向こうで静止した。
志賀は彼の声を待った。
優しく自分の名を呼ぶ小橋の声をいつまでも待ち続けたかった。
だがドアノブは無言のまま、かちゃりと回った。
扉がゆっくりと開いていく。
志賀は大粒の涙をこぼしながら、ベレッタの引き金を引き絞っていく。
ぱん、と銃声が、がらんどうの部屋に響いた。
98お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:57
自暴自棄とばかり乱暴に志賀は細い指先を
何度も何度も引き金へと叩きつけた。
立て続けに6発、放った時点で衝撃に腕が痺れてしまって
堪えきれずベレッタを取り落としてしまう。
しかし銃弾は扉を貫き、確実にその向こうにいる相手を捉えたはずだ。
手応えはあった。確かな感触が痺れのとれない手の平に残っている。
志賀は床にへたりこむと、茫然と宙を仰いだ。
これで、ボクは助かったのか?
ううん、小橋さんが、助けてくれたんだ。自分を犠牲にして。
そのことを思うと、枯れ尽くすことのない涙が自然と溢れてくる。
しかし涙が零れる前に、志賀の眼は再びあのドアが
開こうとするのを見ていた。
99お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:58
時が止まったかのように志賀は固まる。
開ききったドアから覗いた物は、身体中を蜂の巣にされて
血を垂流している小橋建太の遺体だった。
そしてその陰から、高山が姿をあらわす。
血祭りにあげた小橋の身体を、盾にしたのだ。
じゃあ、ボクが撃ったのは?
志賀は悲鳴をあげることさえ忘れた。
ただ圧倒的な無に意識が押しつぶされる。
高山は酷薄な笑みを口元に張りつかせたまま、丸腰の志賀を見下ろして
悠然とイングラムの照準を合わせた。
100お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:58
「あの世では肉も食えよ」
ぱららら、とイングラムが咆哮をあげ、志賀が血飛沫とともに
穴だらけの死体へと変わる。
満足そうに高山は肯いて、床に横たわる小橋の遺体の上に
志賀の遺体を積み重ねるように投げ捨て、立ち去った。
この部屋で繰り広げられた師弟愛なんて、高山は知り得なかったが。


【残り4人】
101お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:58
高山ー!!ひどすぎるぞおおおおお!!!!!!
102お前名無しだろ:2001/08/21(火) 00:59
志賀、撃ったらあかん!、って間に合わなかったよおい。
103お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:00
うわああああ!!小橋ーー!!(志賀はどうでも良い)
104お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:00
虚ろな眼をして思い出の遊園地のベンチに佇む三沢は、
もはや抜け殻だった。
思考の裏では市街地から遠ざかりたいという気持ちも働いてここに来たのかもしれない。
理想のプロレスを目指して旗揚げしたノアがボロボロになってしまった。
もうあの面子で興行をすることもできなくなった、わずか一日のうちに。
みんなが、血を流しながら死んでしまった。
いや、この腹立たしいプログラムに殺されてしまったんだ。
傍らにおいてある、小川の形見となったデイバッグに目を移す。
三沢の心に深くて黒い何かが蠢く。
105お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:01
過酷な現実に翻弄されるうち、いつしか三沢は考えることさえ
困難になっていった。
なのに本能が命じるままに生きようともがいている。
銃を片時も離せないでいるのがその良い証拠だった。
そんな時だ、同じ様な途方に暮れた顔で歩くベイダーに出会ったのは。
106お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:01
しかし、一番最初に死んだ秋山や丸藤に対してなにもないのはキツイね。(w
107お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:01
社長!あんただけはぁ!!人間のままでいてくれぇえぇえええ!!!
108光晴→三沢の変化を容赦して:2001/08/21(火) 01:01
ベイダーは三沢を見つけると、喜びを隠しきれない足取りで駆け寄ってきた。
銃を後ろ手に握り警戒しながら、三沢が「どうしたんだ?」と訊ねると
ベイダーは今にも泣き出しそうな顔をして、言った。
「成田ニ、リムジンガ迎エニキタ。
俺モ、ビックニナッタナト、オモッテイタラ・・・・・・
ディファニ死体ガ転ガッテイタ、何ガアッタノ?」
三沢はそれを無条件で信じた。
今、ベイダーの置かれている孤独、心細さ、そういったものが
そのまま三沢の心にもあったからだ。
109お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:02
べ、ベイダーいたんか!
110お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:02
「一緒ニ行動シヨウ?」
期待に満ちた眼でお願いするベイダーを見つめながら、三沢は思った。
俺達はまるで野良犬みたいだ。
「OKだ、一緒にいよう」
そう言って三沢はベイダーに握手を求めた。
その時、思いもしない方角から「危ナイ!」と声がした。
111お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:02
驚いて顔をあげる三沢、その視線の先には、三沢の首筋狙って
剃刀の刃を下ろそうとしている、ベイダーの太い指があった。
ベイダーの表情が豹変する。右手が素早く動こうとする。
反射的に三沢はベイダーの身体を突き飛ばした。
しかしベイダーは転げる寸前に刃を振り下ろす。
間一髪、剃刀の刃は三沢の皮膚を掠めて薄く引き裂いたが
命に別状はない。けれどリアルな痛みが広がる。
112お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:03
2人の距離が離れた。
ベイダーは難なく体勢を立て直すと、懐から
もう一本のナイフを取り出す。
考えるより先に三沢の体が動いた。
ずっと握りしめていた銃をベイダーに向けると、引き金を引く。
激しい衝撃が三沢の腕を、心臓を震わせた。
ベーダーの巨体が弾け飛ぶ。一瞬の光景に三沢は目を見開いた。
決して使うことのないと考えていた物だったのに。
震えが止まらない。鈍く痛む紅い傷痕を手で押さえながら、
三沢はふらふらと前のめりにベンチより起きあがった。
目の前でベイダーが地面に倒れこんだまま細かく痙攣している。
俺がやったんだ。このまま死んでしまうのだろうか、コイツは。
足元にまでベイダーの流す血だまりが浸食してくるような気がして、
茫然と立ち尽くしたまま三沢は、自責の念に狂いそうだった。
113お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:04
そこから解放してくれたのは、またしても
さっきと同じあの明るい声だった。
「大丈夫ダッタカ、三沢?」
彼はそう言いながら、三沢の前に姿をあらわした。
言葉遣いの明るさにもかかわらずシビアな表情をした
カウボーイのような彼の姿を、三沢は真昼の幽霊を
見るような目で眺めた。
114お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:04
ああ・・・ベイダーの馬鹿・・・
115お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:04
彼はそのままつかつかと三沢の隣を通りすぎると
末期の痙攣を繰り返しているベイダーの前で足を止めた。
その手には黒い鉄の固まり、漫画なんかでよく見るような
六連装の拳銃が握られている。
すうっとベイダーの頭に照準を合わせて構える。
三沢は視線を逸らす事ができなかった。
ガォン、と銃声が木霊する。ベイダーの頭部が大きくバウンドした。
後頭部の穴からどろりとした赤っぽい液体がこぼれだした。
三沢は強い吐き気を覚えて蹲る。
全てが終わった後、彼はしゃがんで三沢の顔を覗き込み言った。
「コイツヲ殺シタノハ俺ダ、見タダロウ?
ダカラ三沢ハ、気ニヤムナ」
116お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:04
典型的な詭弁だ。それでも三沢は、そんな理屈に騙される事で
なんだか救われているような自分に気付いていた。
思わず、彼に向かって三沢は呟く。
「は、ハンセン・・・・・・」
117お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:05
誰だ!?スコーピオか!?
118お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:05
ハ〜ンセ〜ン(泣
119お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:05
ハンセン!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
120お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:05
三沢さん三沢さん、見てますか?
121カタカナ読み難いよな・・:2001/08/21(火) 01:05
それにしてもなぜハンセンがここにいるんだろう。いきなり現れて。
俺を助けてくれたからには、当面、敵ではないのだろうけど
迷わずにベイダーを撃ちぬいた行動力、そして
精神力はいったい・・・・・・
おずおずと三沢はこの凛として立つカウボーイに尋ねる。
「なぜ、日本に?」
「ジャパンハ、私ノ庭ノヨウナモノダ」

飄々とハンセンは応えた。
122お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:06
ウィーーーーーー!!
123カタカナ読み難いよな・・:2001/08/21(火) 01:06
「ミーガ、ココニイルノハ、馬場ノ為ダ」
今度は三沢も驚いた。
「プログラムガ、ココデ開催サレルト小耳ニ挟ンダ時
ミーニ馬場ガ言ッタヨウナ気ガスルノダ。『ミンナヲ助ケロ』と。
元子ハ狂ッテイル・・・・・・
馬場ガ、コンナ事許スハズガナイノニ」
三度、三沢は驚いた。いや、感動していた。
124お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:07
眠れないじゃん!! 
125カタカナ読み難いよな・・:2001/08/21(火) 01:07
「ダカラ私ハ、コウシテ【プログラム】ニ潜リ込ンダノダ。
自分ノ手デ守リタイ人ガイルカラ。
ソシテ、デキレバ【プログラム】ヲ破綻サセテヤルツモリダ。
馬場二成リ代ワッテナ」
話しながらハンセンの脳裏には守りきれなかった息子のように可愛いレスラーたち
・・・・・・小橋や、大森の姿が過った。
唇を噛む。救えなかった。運がなかった。
いや、一人だけでも会えたのだから、上出来なのか?
126今日はここまで:2001/08/21(火) 01:08
考えこんでいるハンセンに、三沢は訊ねる。
「でもその武器は・・・・・・」
ハンセンは少し決まりの悪そうに微笑んで、言った。
「テキサスデハ、銃ハ煙草と一緒ダ」
三沢は絶句した。
世の中にはいろんな国があるんだ、と思うしかなかった。
127お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:08
ハンセン!やっぱりいい人!!
128お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:09
>>126
おつかれさん。楽しみに見てるよ。
129お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:09
>>126
おい、おい待てこら!
130お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:09
明日朝早いのに・・・
どうしようどうしよう
131:2001/08/21(火) 01:09
続きはそのうちに。
リレー小説風に続けてくれてもいいです。
132お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:10
>>126
お疲れ様でした。一気に見たい気もするけど、しょうがないですね。
明日も期待しています。
133お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:11
いやぁ〜、殺生な……。良過ぎるよ。良成が死ぬところマジ泣いたよ。

ところであと何人? 3人?
田上、秋山、丸藤、多聞、大森、良成、雅央、小橋、志賀、ベイダーあぼーんで
で残ってるのが三沢と高山で助っ人のハンセンを除くと2人!

いつ再開してくれるのかなぁ〜。
134お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:11
生きる楽しみが出来ました…
ってちょっと大げさ?(w
135お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:11
>>1
お疲れさま!!凄く良かった!プ板も捨てたもんじゃないね!
ありがとう!
136お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:11
リレー小説にしたらあかんて。
137お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:12
>>1がやらないとこのスレは駄目になる。頼むから頑張ってやってくれ!
138お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:13
高山、鬼!
139お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:13
>>133
高山は人数に数えられてないんじゃなかったっけ?「隠れキャラ」扱いで。
ハンセンも同じだろうから、あと4人じゃない?
140お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:14
泉田・浅子・W猛?
141お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:14
他の人が続けたら、生き返るやつとか出てくるからだめだって。
142gop:2001/08/21(火) 01:14
いやー 一気に読んじゃいました。
おもしろい の一言・・・・
143お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:15
浅子か!
144お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:15
正直、何度も泣きそうになった。
新日のスレではこんなことなかったのに・・・。
やっぱノアヲタだな。俺。
145お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:16
川田章吾はハンセン?
三沢は七原秋也で?
146:2001/08/21(火) 01:16
誉められてるけど・・・・
元ネタあります。
「新日編」同様、ときメモバトルロワイヤルのパロディー。
147お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:17
>>144
新日も面白かったけど、ノアの方が横のつながりが固いから感動できるんだよ。
148お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:17
>>144
同じだ・・・自分のノアヲタっぷりを思い知らされたよ。
149お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:17
高山の徹底した悪役ぶりがあるからこそ、他が引き立つんだろうな。
150お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:17
>>146
面白きゃなんでもいいよ。
アレンジしてあるんだろうし。
151お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:18
キャラたってるし・・・。小川とか多聞とか。
152お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:18
>>146
いや、凄いですよ。パロディとはいえ。
俺にはできないことです。
153お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:18
>>146
でもアレンジの仕方一つで面白くもなるし、つまらなくもなるでしょー。
プ板の中で類稀なる良心的な>>1だな。
154お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:19
高山嫌いになりそうだ(痛
155お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:19
良成の絶命シーンは何度読み返しても泣ける(涙)。
今夜は眠れそうにないな。
156お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:19
>>149
なんかムカツクけどね(w
小橋と小川の最期は泣けた!!
157お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:38
なーんだぁ・・・
新日のと違って、最後まで一気にやってくれると思ってたのに・・・
158お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:41
>>157
自分もそう思ってた(w。
また完結しなかったらどうしよう……。
159お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:44
凄く面白いから続きを楽しみにするのも一興でしょ。
160お前名無しだろ:2001/08/21(火) 01:46
大森さん、ここでも大森さんだな(w
161お前名無しだろ:2001/08/21(火) 02:04
浅子さんは?
162お前名無しだろ:2001/08/21(火) 02:07
>>161
浅子さんが出るとバランスが崩れる
163お前名無しだろ:2001/08/21(火) 02:11
文章の上では新日の方が悔しい事に(藁)今は勝ってる
職人さん、頑張ってくれ!!
1641:2001/08/21(火) 02:13
新日本の奴ってどれ?
リンクはってちょ。
1651:2001/08/21(火) 02:15
みつけました。
正直すまん
166お前名無しだろ:2001/08/21(火) 02:47
新日バトロワの職人の一人です。
>>1さん、面白かったです!大変かもしれないけど頑張って続けて下さい!
ああ・・・小川絶命のシーンは泣けた・・・。
あと小橋とハンセン・・・いい人だ〜!
167お前名無しだろ:2001/08/21(火) 03:04
これの超元祖、2ch超名スレ「バトルロワイヤルTV版にモーニング娘。が! 」
この作品の出来が余りに凄かったので様々なパロディが乱立した
http://teri.2ch.net/mor2/kako/976/976965882.html  レス44からスタート

モー娘。の名前がわかる人は読んでみるとよし。驚愕のストーリーとラストに驚くはず
168◆ZNLiv1KU:2001/08/21(火) 03:09
同じく新日版の職人です。(>>166さんはどなたなんでしょう?)
面白いですね。そして何より早い、早すぎます!(w
あまり大きな声では言えませんが、実は旧全日のファンなんで(しかも熱狂的)
ものすごく感情移入してしまいちょっと涙ぐみました。
自分も負けてられない、と言いたいんですがスピードでもうボロ負けですね…精進します。
続きも楽しみにしてますので頑張って下さい。
169お前名無しだろ:2001/08/21(火) 03:15
そのうちFMWとか出て来たりして
170お前名無しだろ:2001/08/21(火) 03:31
>>155同じく! 小川ぁぁぁ!!!(涙

>>1、面白かったよ〜。続きを楽しみにしてます。
でも、ホントに独りでかいてるのか?だとしたら凄い!!
171新日版の1さん代打 ◆oOfl/2go:2001/08/21(火) 03:38
>>168
>>166は、私で〜す!
私もプロレスファン導入編は全日(鶴田ファン)なので、もう・・・泣けました。
172お前名無しだろ:2001/08/21(火) 03:53
新日もノアも頑張れよ!!
どっちもイイ!!(・∀・)
173お前名無しだろ:2001/08/21(火) 03:55
ここだけは新日ヲタとノアヲタが良い感じで交流してる…。
プ板もまだまだ捨てたものではないね。
174お前名無しだろ:2001/08/21(火) 11:31
0000
175お前名無しだろ:2001/08/21(火) 11:40
昼組にも読ませろって!!
176お前名無しだろ:2001/08/21(火) 13:23
モー娘のバトロワ一気に読んでしまった・・・
177お前名無しだろ:2001/08/21(火) 13:26
>>176
仲間(藁
178お前名無しだろ:2001/08/21(火) 17:16
・・・ふぅ、危うくモーオタになるところだったのれす
179gop:2001/08/21(火) 18:32
>>176
折れも・・・・
180お前名無しだろ:2001/08/21(火) 18:45
>>178
同じく。加護を守ってやりたくなった(w。危ない危ない
181格板常駐者:2001/08/21(火) 18:47
いいな〜親日と違って泣かせる話が多い!
俺もノア見ようかな?
格板もこう言う話があればもっと人が増えるのに。
1821:2001/08/21(火) 18:48
「でも、『破綻させる』ってどうするんだ?」
三沢は言った。本当にそんなことができるのだろうか。
しかしハンセンの言葉はこんなプログラムの中で久々に見出した
唯一の希望だったから、嘘であってほしくない。
三沢の期待に応えるかのように、ハンセンは言った。
「コノ プログラム ヲ 確実二失敗サセル方法ハ ヒトツダ」
ごくっと息を呑んで三沢は次の言葉を待つ。
「誰モ コノ プログラムニ乗ラナケレバ、成立シナイ」
三沢はがくっ、っと肩を落とした。ハンセンは簡単に言うけれど、それが
どれほど難しい事かを三沢達はこの一昼夜の間に思う存分味わっているのだ。
1831:2001/08/21(火) 18:49
が、ハンセンは妙に自信ありげに言った。
「ノープログラム、馬場 モ ジャンボ モ護ッテクレルサ」
そう言われると、三沢は確かにそのような気がして、でも
さっきベイダーに裏切られた哀しさを、少し思い出してしまった。
「戦ウ気ノナイ者ダケ集メタイガ・・・・・・
でもソノタメには、このプログラムに乗ってシマった
相手を倒スシカ道はナイな」

(都合によりこれ以降カタカナを減らす)
1841:2001/08/21(火) 18:50
「え、倒すって、それってアレか・・・・・・」
さっきの光景がフラッシュバックした。銃弾に吹っ飛ばされる体。
さばさばとハンセンは言う。
「可哀想ダガ、他に手はナイ。
放っておいたら、イツ隙を狙われるかワカラナイ」
「しかし」
三沢は食い下がった。
が、ハンセンは諭すように言う。
「難しい、というか、現実的には不可能ダ。
乗ってシマった奴は、他人を信じてくれない。絶望的なまでにナ。
せめて、良心を持ちつづけている奴だけでも救いたいじゃないか」
あいまいに三沢は頷いた。確かにハンセンの言うことは一面筋が通っている。
「さア、一気に決着と行コウ」
そうハンセンは言い放った。
1851:2001/08/21(火) 18:50
「決着?」
三沢が問い返すと、己に言い聞かせるかのようにハンセンが檄を飛ばした。
「そう、ここで終わらせるノダ、こんなくだらないファイトは。
そしてコノ悪夢のようなプログラムも」
「でも、どうやって?」
理解できないといった表情の三沢に、ハンセンは真剣な面持で言った。
「呼ブ、このテーマパークに」
「呼ぶ・・・・・・?」
「イエス。やる気になっている相手を、呼ブ。こうして・・・・・・」
言うが早いか、ハンセンは手に持っている六連装の拳銃を空に向かって
1861:2001/08/21(火) 18:51
2発、間隔を置いて撃った。甲高く銃声が澄み渡った空に轟く。
「隠レルゾ、三沢!」
言われるままに、ハンセンの後に続いて三沢は2つのデイバッグを手に
近くにあった回転木馬の陰に隠れた。
間もなく、遠くから園内の静寂を打ち破る車の排気音が聞こえてきた。
どこから調達したのだろうか、真っ赤なアメ車を駆って
何者かがそのまま柵の隙間から突入してくる。
敵はアクセルを踏んだまま、車内からぱらららと機関銃をばら撒いてきた。
すぐ鼻の先で銃弾の爆ぜる音がする。
そのうちのいくつかは鉄製の木馬本体に着弾したらしく
ガン、ガンと耳元から不協和音が響いた。
1871:2001/08/21(火) 18:51
ハンセンが半身だけ身体を外に出して応戦している。
車はそのまま回転木馬の前を通りぬけ、鉄柵に
勢いよく突っ込んで止まった。
交錯する際に見えたあの顔は、小川が死に際に囁いた名前の主、
高山だ。
萎みかけた三沢の闘志が、ぶち切れんばかりに膨れ上がる。
あのマシンガンで、高山は小川を殺したんだ!
怒りに燃える手で、三沢はワルサーP38の銃身をぎゅっと握った。
小川、みんな、見てろよ。そして、守ってくれ。


【残り3人】
1881:2001/08/21(火) 18:52
鉄柵に突っ込んだ車からの陰から再び、ぱらららという音が轟いて
厄介な敵の無事を告げた。
弾は正確にメリーゴーランドの周囲を叩いてきた。
ここからでは相手の姿が見えない。
相手にはこちらの居場所がばれている。
闇雲に撃ち返してもこのままではジリ貧だ。
「三沢!いったん建物の陰まで退却ダ」
言うが早いか、ハンセンが発砲しながら囮になるつもりか
見当違いの方角へ飛び出していく。
その一瞬の隙を突いて、三沢も木馬の陰から飛び出し威嚇射撃をし、近くの
建物、占いの館の入り口へ転がり込んだ。
瞬発力、脚力に自信のある三沢だから可能だった。
遅れていれば、鉛玉の雨でその場に釘付けにされていただろう。
1891:2001/08/21(火) 18:53
少しして、ハンセンも滑り込んできた。
「大丈夫か?」
三沢の気遣いに、ハンセンは余裕の笑みで応じる。
断続的にぱらら、ぱららと銃声がしていたが、やがて静寂が訪れた。
息を殺して、外の様子を窺う。高山のいた辺りに動く影はない。
見失った? 軽いパニックに陥る三沢、しかしハンセンは冷静だった。
「奴は俺達の行動を見てイタはずだ、油断スルナ!」
190お前名無しだろ:2001/08/21(火) 18:53
高山かっくいい!!
1911:2001/08/21(火) 18:53
言ったそばから、再びあのマシンガンの銃声が響く。
館の側壁に無数の弾痕が開いた。また銃声がして、今度は
側壁の一部が吹き飛ばされた。内部までがら空きになる。
「回りこんだつもりカ!? ディーヤッ!」
ハンセンが牽制代わりに銃声のした方へ数発、撃ち返す。
三沢も手持ちのワルサーP38でそれに続く。
けれど2人の抵抗などまったく意に介さぬように、ぱらららと
マシンガンによる狙撃が館を襲う。
焦げ臭い匂いがして、壁や地面が傷だらけにされていく。
入り口近くにいたため、幸い被弾はしなかったが。
「ハンセン」
三沢が声をあげる。ハンセンは舌打ちした。
「だめダ、相手にはこちらが見えてる・・・・・・逃ゲルゾ」
1921:2001/08/21(火) 18:54
館から撤退した2人は、園内を奥へと振り向きもせず走った。
火力が違いすぎる、逃げるしかない。
今にも後ろからまたあのぱらららという音が聞こえてきそうな気がして
三沢は耳を塞ぎたかったが、耐えながら走りつづける。
肩から担いだ荷物がやけに重く感じた。
と、急にハンセンが大声で叫んだ。
「あ、アレだ、三沢!」
ハンセンが指差した先には、この遊園地のシンボルでもある大観覧車があった。
ハンセンは運転室に駆け込むと、何やら操作盤をいじくった。
低いうなりと軋み音を立てて、観覧車が動き出す。
「この中で、待ち伏せシヨウ」
ハンセンが言った。うまいアイデアかもしれない。
1931:2001/08/21(火) 18:54
沈黙した園内で回りつづける観覧車というのは異様だ。
気付かれないはずがない。
しかし上空からなら、近寄ってくる敵も丸見えとなるだろう。
結局、他に方法も思いつかず、その手に賭けてみることにした。
2人を乗せたゴンドラがゆっくりとあがっていく。
ハンセンは下界を見張りながらも、申し訳なさそうに言った。
「スマン、三沢・・・・・・計画ミスだ
マサカあんな武器を持った相手がいるなんて・・・・・・」
三沢は首を振った。
「いや、いい。一人でいたら、きっと途方に暮れて
何もしないまま殺られてただ・・・・・・
ハンセンのおかげで、戦ってやろうと思える力がでてきた」
「・・・・・・サンクユー」
ちょっと感動的な場面だった。浸っている余裕などないけれど。
1941:2001/08/21(火) 18:55
じっと下の様子を窺っていた三沢は舌なめずりをした。
「来た!」
同じく隣で、ハンセンも確認すると頷く。
ジグザグにこの観覧車めがけて駆け寄ってくる一粒の人影が見えた。
黒光りするイングラムを小脇に抱えた黒スーツの大男。間違いない、奴だ。
競うように2人はゴンドラから身を乗りだして、拳銃を構える。
先に火を噴いたのはハンセンの銃だった。遅れて、三沢も撃つ。
耳が痛くなりそうな銃声の協奏曲。
『当たれ、当たれ!』祈りながら三沢は引き金を何度となく引いた。
だが間合いが遠すぎるためか、弾は虚しく地上のコンクリートを叩く。
高山は立ち止まる事なく一直線に観覧車の真下まで潜ると
そのまま手近にあったゴンドラに隠れた。
三沢たちのゴンドラとは7、8個しか離れていない。
1951:2001/08/21(火) 18:55
即座に、ぱららら、と例のやつが来た。
慌てて身を屈める。弾はゴンドラの底や、支柱に弾かれて外れた。
息つく間もなく、反撃。手を突き出して、カンを頼りに撃つ。
が、ゴンドラの屋根に当たって高山まで届かない。
すぐまたマシンガンの掃射が飛んできた。
思わず三沢は首を竦める。
予備の弾を装填しながら、三沢は強く思った。
死にたくない、負けてられない、こんな所で。
仇を討つんだ、仇を!! と。
1961:2001/08/21(火) 18:56
膠着状態のうちに、かちっ、とハンセンの銃が空撃ちする。
ホルスターに手をやり、ハンセンは自分の迂闊さを呪いたくなった。
弾切れカ? こんな時に。
「三沢、バッグ借りるゾ!」
ハンセンは反撃を続ける光の足元に転がっていた2つのデイバッグを開いた。
何でもいいから、武器を。
ハンセンは縋りつくような思いでデイバッグの中をひっくり返した。
1つ目のバッグ、三沢のバッグにはわずかな食料品しか入ってなかった。
駄目か、それでも諦めきれず2つ目の、小川の形見のデイバッグを開く。
ぱらららという例の音がハンセンの焦りを増幅させる。
1971:2001/08/21(火) 18:56
「畜生!」
もはやマシンガンの優位は押さえきれず、三沢が悲痛な声をあげる。
神を罵りたい気持ちを堪えて、ハンセンはバッグの中を掻き回す。
そしてハンセンは、小川のバッグの底に眠るそれに気付いた。
「三沢、伏せロ!」
そう怒鳴ると同時に、ハンセンは大きく振りかぶって、投げた。
訳もわからず三沢は床に伏せる。
数秒して、凄まじい轟音、ゴンドラが大きく爆風に揺れた。
何事が起こったか理解できないままゴンドラの手すりに
しがみつくようにして、三沢は嵐がおさまるのを待った。
1981:2001/08/21(火) 18:57
「・・・・・・ヤッタ」
ハンセンが言う。三沢が、おそるおそる顔を覗かせると
高山の乗っていたゴンドラの辺りは、跡形もなく四散していた。
きょとんとした顔で三沢が言った。
「ハンセン、今のは・・・・・・」
小川のバッグの一番底に押しこまれていた物、それは
スタート直後に小川が回収したきり、忘れ去られていた
秋山準の支給武器、手榴弾だった。

【残り2人】
1991:2001/08/21(火) 18:57
「そうか・・・・・・このバッグに・・・・・・」
ゆっくりと降りていくゴンドラの中で興奮したように話す
ハンセンの言葉を聞きながら、三沢は思った。
やっぱり最後まで、守ってくれたのか、小川。
ゴンドラが地上に到達したあと、2人は遊園地の入り口近くの
死角に隠れて次の誰かが現れるまで待つことにした。
三沢は疲れきったようにベンチへ腰掛けている
その隣でハンセンが、どこからか調達してきた予備弾を
再びその6連装の拳銃に装填していた。
2001:2001/08/21(火) 18:58
そんな一時の平穏を破るように、ノイズたっぷりの放送が響く。
「私が全日本プロレスの女社長、馬場元子よ!
随分とペースが速いわね、積極的に殺し合って、私は嬉しいわ!
今、生き残ってるのは・・・・・・
2人だけね!」
三沢は顔をあげて、ハンセンを見る。ハンセンも驚いたように、三沢の顔を見返した。
「ひとりは、三沢光晴くん!もうひとりは・・・隠れキャラね、これは。
三沢くん、あと1人倒せば、優勝よ!無理だろうけど精々がんばりなさい!
隠れキャラさん、さっさと三沢君を始末しなさい、命令よ!」
ぶつっと耳障りな音を立てて、放送は終了した。
まるで葬式のような気まずい沈黙が、2人の間に流れた。
困り果てた顔つきで、三沢は俯いている。
俺達のほか、みんな死んじゃったんだ。
2011:2001/08/21(火) 18:58
どうする。ハンセン・・・?
「隠れキャラのこと、さっき話しタナ」
突然何を言い出すのだろうか? 疑問に思いつつ、三沢は頷いた。
「オマエの、負ケダ、三沢」
ハンセンは手に持った拳銃をすっと三沢に向けた。
202お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:00
>やっぱり最後まで、守ってくれたのか、小川。

男泣き
2031:2001/08/21(火) 19:00
信じられない思いで、三沢は突きつけられた銃口の先をみつめた。
思わず笑い出しそうにすらなるのを抑えて、三沢は言った。
「ど、どういうことだ、ハンセン」
ハンセンは表情を変えず、冷たく言った。
「だから、説明シタだろう?
レスラーなら誰でも参加できるノだ、このプログラムには」
2041:2001/08/21(火) 19:01
そして手に持った拳銃をもう一度、三沢の額に向けて構えなおした。
「オマエと組んだのは、その方が有利だと思ったからダ。ただソレだけだ」
ハンセンは続けた
「ミーはもう一度、『最強の称号』が欲しかった、だからコレに乗った
 元子はお前達を皆殺しにシタかった、
 だからミーを密かにプログラムに参加させた」
2051:2001/08/21(火) 19:02
嘘だ、こんなの嘘だ。
ハンセンのあの燃えるような言葉がすべて嘘だなんて、そんなはずがない。
戦闘のさなか、俺を絶えず気遣ってくれたあの気持ちは、
絶対に打算なんかじゃない。
2061:2001/08/21(火) 19:03
「ダ、だから、ミーはオマエを・・コ・・・・」
あれ? と三沢は思った。
ハンセンの口調が途切れがちになり、よく見れば足も震えている。
突如として、ハンセンの身体が崩れ落ちた。
「ハンセン!」
三沢が抱き起こすと、ハンセンの腹に大きな血の染みができていた。
被弾していたのか!
いったい何時から? まさかあの戦いの途中で?
2071:2001/08/21(火) 19:03
ハンセンが弱々しく、それでもお道化ながら言った。
「う、ウム、このまま騙しとおしたかったが・・・・・・
も、持たないか、ミーの身体は。
三沢がミーを憎んで、う、撃てば、全部キレイに片付いタノに」
「ハンセン!! 駄目だ、駄目だよ!」
三沢はまた叫んだ。このプログラム開始以来、どれほど叫んだろう。
2081:2001/08/21(火) 19:05
ハンセンはわずかに顔を傾けてそんな三沢の顔を慈しむようにみつめた。
「オマエは、プロレスラーとして闘い続ケロ・・・・・・
余計な事はすべて忘れ・・・・・・
プロレスはお前と共に・・・・・」
最後までハンセンは、言うことができなかった。
いくら三沢が揺すっても、もうハンセンは反応しなかった。
2091:2001/08/21(火) 19:06
咽び泣く三沢の耳に、ぴんぽんぱんぽん、チャイムが聞こえた。
福澤アナが原稿を読み上げる声が無人の市内にこだまする。
『これにて、プログラムを終了します。
優勝者の三沢光晴さん、有明コロシアムまで来てください』

【残り1人 プログラム 終了】
2101:2001/08/21(火) 19:06
有明コロシアムに入ると、銃を掲げた兵士達がゲートから
沿道に仰々しく隊列をなし、優勝者の帰還を称えていた。
おそらくプログラムの主催者側に雇われている彼ら兵士達は
皆一様に無表情なまま、彫像のように立ち尽くしている。
しかし目つきだけは油断なく(あるいは興味深げに)花道を
歩く優勝者、三沢光晴の挙手投足を凝視していた。
2111:2001/08/21(火) 19:06
会場の中央に設置された壇上で、日本テレビ土屋編成局長や福澤アナ
それに馬場元子が待っていた。
傍らには、ジョニースミス、太陽ケアが相変わらず無表情に控えていた。
そしてその脇には、これまた大勢の兵士達がやはり銃を掲げて
一列に並んでいる。まるで集会でも開かれた時のようだった。
2121:2001/08/21(火) 19:07
三沢が台の前まで進むと、開口一番、土屋編成局長が唸った。
「見事です、三沢くん。よくぞ勝ち残った。
アナタこそ、最強の男ということです」

うるさい、と三沢は思った。
そんな褒め言葉なんて聞きたくない。余計な御託は沢山だ。
2131:2001/08/21(火) 19:08
「・・・・・・みんなの遺体はどうした?」
三沢の問いに、土屋はニヤリと笑った。
「まぁ、そう急ぐことはない。後はこの福澤に聞きなさい」
すっと福澤が一歩前に出て、こちらは表情を崩さずに事務的な口調で言った。
「三沢社長、優勝者には賞金と副賞の授与式があるんですけど・・・・・・」
2141:2001/08/21(火) 19:08
「みんなの遺体はどこだ?」
三沢は同じ問いを繰り返す。
福澤は肩をすくめると、言った。
「回収できたものは一応、埋葬しときましたよ」
それだけ聞けば十分だった。
2151:2001/08/21(火) 19:09
三沢は後ろ手で隠し持っていた二つの手榴弾のピンを抜いた。
そしてそれを足下に落とすと右肘に左手をやった。
試合中、ずれたサポーターを直すいつもの動作。
同時に走り出す。
決して許せない相手を倒すために。

周囲の兵士達が一斉に銃を構えるのも気にせずに。
前に、前に、前に。

いざ、試合開始だ!


【完】
2161:2001/08/21(火) 19:10
完結だYO!
217格板避難者:2001/08/21(火) 19:13
三沢かっけ〜!
218お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:13
今回不参加のメンバーで続けろ!!
219お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:16
>>1
また何かやって!
220お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:16
最後は蜂の巣か?<三沢
221お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:20
み〜さ〜わ〜(泣)!!
222◆ZNLiv1KU:2001/08/21(火) 19:21
お疲れ様でした。
どうもこういうのではごちゃごちゃしたエンディングに意識がいきがちだったんですが、
こういうすっきりしたのもアリですね。勉強になります。
新日版はまだまだ終わりそうに無いんですが(w
終りまで「出来るだけ」頑張りますんで良ければご覧下さい。
223さかもっち:2001/08/21(火) 19:26
殺人方法はプロレス技で
224新日版の1さん代打 ◆oOfl/2go:2001/08/21(火) 19:26
>>1さん、お疲れさまでした!!
テンポよくって、気持ち良く読めました・・・。
新日版は、どんどん登場人物が多くなって来てとんでもない事になりそうです(苦笑)。
>>222さんが頑張ってらっしゃるので、その内私もお手伝い出来ればと思ってます。

ああ・・・小川に萌え萌えですぅ〜♪(爆)
225お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:29
二日で完結か。
226お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:29
バトルロワイヤル総格版が見たい
227お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:30
新日は良くも悪くも選手が多いですからね。
今回出てきていないのは、百田、ラッシャー、永源、菊池、W猛、浅子、佐野、彰俊
、館長…あと誰?
228お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:31
マジで三沢に惚れそう…
229川田利明:2001/08/21(火) 19:31
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
230名無しさん:2001/08/21(火) 19:33
ラストを読んで男組を思い出しました
231お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:35
>>227
杉浦、KENTA
232お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:36
こっちは選手の性格描写が巧いな。
大森さんはまさに大森さんだし(w、
志賀はまさに志賀だった(w
233お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:37
>>230
同意。
ハンセンも勿論良いが、川田(利明の方ね)が出てきて、
三沢を助けてほしかった気も・・・。
234お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:37
ハンセン格好いい〜。
235お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:37
しびれたよ……。社長、(・∀・)カコイイ!!
あっさりした終わり方も渋くて良かったです。
1さん、ありがとう(涙)。
236お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:38
土屋編成局長ってもしかして「電波・雷波」のTプロデューサー?
237お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:39
総格編やk1編もみた〜い!
238お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:40
最初に死んだのが若林アナというところがまた泣ける。
239お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:41
競馬板でも昨日、出来たんだけど<ロワイヤルスレ
まさかここの>>1か?
240お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:44
全体的にいい話だな(殺しあいなのに)
三沢も、ハンセン、小川も、小橋も格好良かったが、
高山も格好いい生き様!
241お前名無しだろ:2001/08/21(火) 19:46
続きって書いてもいいのかな??
242お前名無しだろ:2001/08/21(火) 20:02
書いてくれ!!恥ずかしいけど小川と三沢の友情にやられた。
こういっちゃなんだけどノアの方がキャラが立ってていいよな。
243:2001/08/21(火) 20:02
オチらしいオチをつけなかったのでボロクソに言われるかと思ったが
案外、評判よくて一安心だヨ。
読んでくれたみなさま<厚く御礼申し上げます
>>222 >>224
グチャグチャにしてください。期待してまっせ<新日版
>>235
昔、日記スレでケロ企画をやったとき、キャラの出しすぎで
収集つかなくなったので
今回は【完結】させるように注意したら
あっさり風味になっちゃいました。
>>241
是非
244いづほ:2001/08/21(火) 20:24
あーん!あーん!(号泣)

みーさーわーさーん!えーん!!

感動しました。素晴らしい!
私は丸藤vs小川のところがとっても印象に残りました!
245お前名無しだろ:2001/08/21(火) 20:38
新日編
まだ完結していませんが興味のある方は
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi?bbs=wres&key=997789012
246お前名無しだろ:2001/08/21(火) 20:39
>>1よ、あんたドコケロだったのかって!
247とりあえず導入してみる:2001/08/21(火) 20:40
川田は絶句した。
”三沢さんが死んだ?”
福澤から伝えられたことをすぐに受け入れる事が出来なかった。
「・・・・遺体は?」
「ありません。」
自分の目で確かめたいと思ったが福澤の機械的な一言にそのささやかな願いも空しく消えた。
「それよりも社長の御身を心配したらどうです、危うく殺されかけたのですよ?」
川田は沈黙するしかなかった。会社の社員である以上プログラムに深く介入すること、
即ち会社への背任行為になり得ない。
「ああ、元子社長は無事ですよ。スミスが盾になってくれたのでね。彼自身はこのようになって
しまいましたが」
福澤が徐に手に持った袋を川田に開いて見せた。
・・・・そこにはかつて人間「だった」肉片が詰められていた・・・まるで生ごみのように。
胃が圧迫されたような不快感を感じ川田は右手で口を塞いで目を背け、ガクガクと震えて崩れ落ち
そうになる体を必死に振るい立たせた。
なんだ・・・・これは・・・・現実なのか?
248お前名無しだろ:2001/08/21(火) 21:00
「やあね!三沢君のお陰で私のスーツが駄目になっちゃったじゃない!高かったのよこれ!」
元子が憤慨しながら社長椅子にどっかりと腰を下ろして喚く。
「まあまあ、命があっただけでも良しとしましょうよ。」
土屋が機嫌を伺うような媚びた目つきで元子を諌める。
「それより・・・・川田君がプログラムに疑問を抱いているって本当?」
「ええ、そのようですね。・・・・三沢の”死”にも少なからず。」
元子は不機嫌そうに眉を潜めながら大げさな溜息を一つついた。
「厄介ねぇ。仮にもエースだから無闇に処分も出来ないし・・・・そうだわ。」
指輪で飾った手ががポンと手のひらを叩く。
「彼にも挽回の機会を与えましょうよ!」
「・・・・プログラムですか?」
「そう!今度はあなたのところで完全生中継するの!どう?名案だと思わない?数字も稼げるわよ〜」
その案に土屋の目が怪しく光った。
249お前名無しだろ:2001/08/21(火) 21:00

ねぇ、橋くん忘れてない?
250お前名無しだろ:2001/08/21(火) 21:11
痛む頭を持ち上げて深い眠りから川田が目覚めた時には、全てが始まっていた。
確かに昨日家に帰り、ベッドで眠りについたはずなのに・・・・ここはどこだ?
見なれない緑のマットが眩しく目に映る。
周りには酷く懐かしい顔がやはり不審そうな顔つきで目を覚まし、辺りを伺うように目を泳がせている。
「お前らァ〜!起きたかァ〜!!」
つんざくような高い声がまだ痛みが消えない川田の頭に響き、顔をしかめた。
251お前名無しだろ:2001/08/21(火) 21:19
三沢はやっぱり死んじゃったんですかって!!それが俺には悔しいって事ですよ!!
252お前名無しだろ:2001/08/21(火) 21:24
顔を上げてリングの中央を見ると一人、ハイテンションの馳がしきりに顔を上下させながら
倒れて事態を把握していない選手達を見回していた。
「噂には聞いただろうがァ〜!大好きな三沢社長達もやった”プログラム”をお前らにもやって貰う〜!」
”プログラム”という言葉を聞いたとたん、そこにいた全員が同時に息を呑むのが分かった。
そばにいた橋の体が大きく震えはじめたのが川田にも伝わった。
「前回はァ〜優勝者である三沢社長の死亡によりィ〜王座は空席だァ〜!頑張れよォ〜!」
一人で納得している馳は何度も頷きながら人差し指を天にかざし説明を続けた。
「今回のスタートは武道館〜!!武道館〜ン!日本武道館〜!」
253お前名無しだろ:2001/08/21(火) 21:25
現行のも1?
「ルールは簡単!殺し合いをして生き残った者が勝ちだァ〜!トーナメントみたいになァ〜!
武道館からは若手順に2分間隔で出て行ってもらう〜!武器は自らの肉体ィ〜!そしてこれから渡すデイパック
の中にある銃器類ィ〜!食べ物もあるからお前ら、粗末にするなよォ〜!!それとなァ〜今回はテレビが入るから
気合入れていけよォ〜!!」
良く通る馳の声が静寂に包まれた会場を震わせる。・・・・気に障る・・・・川田はそう思った。
「小橋さん・・・・小橋さん・・・・」
微かな呟きが隣の方から聞こえた・・・・小林だ。目だけを動かして周りを見ると全員ノアの選手で、全日は川田
一人だった。
・・・・・やはり”プログラム”に乗じて自分を処分するつもりなのか・・・・それともこれは慈悲のつもりか?
何にしても逃げ道はどこにもない。
目の前の馳を倒すのは簡単だが、リング下の兵士によって蜂の巣にされてしまうのは明らかだ。
先に出て行ったのは一番若手の杉浦だった。いつもの殺気みなぎる表情は失せておぼつかない足取りで
バックを受け取るとリング上の昨日までの先輩達を振り返り、逃げるように会場から出て行った。
いつもは強気な奴が死を目前にしたとたんに臆病になる事は良くある事だと、川田は他人事のようにぼんやり思った。
次々に名前が呼ばれ、最後に川田が残された。
「おお川田ァ〜!お前には社長から直々に挨拶があるそうだぞォ〜!」
馳がリングの外にに歩み寄り、ロープを開いてピンクのスーツに身を包んだ元子を招き入れる。
「川田君、貴方は全日の看板背負ってるのだから、頑張らないと駄目よ。くれぐれも・・・・三沢君の二の舞だけには
ならないで頂戴ね。裏切り者って嫌いなの。」
裏切り者とは三沢と彼を慕って全日を抜けた選手達、そして川田を指しての皮肉だった。
ホホホと高らかに笑う元子に川田は初めて殺意を抱いた。人間を・・・・生きている人間を何だと思っているのか。
まるで娯楽を楽しむかのように選手達を裏切り者と称し、殺し合いをさせる・・・・こいつらは間違いなく狂ってる。
「早く行けェ〜川田ァ〜!!」
元子をじっと睨んでいる川田を急かして馳が声を張り上げてデイバッグを放り投げて渡す。
デイバックを受け取り会場を出る際、元子、そして馳に聞こえるように川田は一言呟いた。
「ぶっ潰してやる・・・・」
256お前名無しだろ:2001/08/21(火) 22:30
川田編頑張って!

>>1
にしても俺も全く同じ事(メモ2ベースNOAH編)しようとしてて先にやられて悔しいYO!
でも俺が考えてたより配役や細かい変更が上手くハマってて、正直先を越されたのがあんたでよかった。
小川&三沢は先知ってても目頭が熱くなったし、そうきたか!ってのが多かった。
ただ秋山…。志賀とメbジション替えて欲しかった。

とにかくお疲れ。楽しませてもらいました。ありがとう。
257お前名無しだろ:2001/08/21(火) 22:35
池田は会場から出たすぐの林の中でじっと息を潜めて出てくる選手の様子を伺っていた。
別段、暑いわけでもないのにじっとりした汗が頬を滑り落ちる。
手には固く握り締めたコルトガバメントが池田の体の震えと共に小刻みに揺れる。
『大丈夫、俺はいつでも一人でやって来たじゃないか』
そう自分を励ますが、その震えが孤独の不安から来ているものではない事を池田は知っていた。
誰だって死ぬのは普bい。しかも突然に抵抗も適わぬままに、一方的に突き付けられた死の宣告。
覚悟する暇もないこの現実を見据え、いっそのこと発狂してしまえたら・・・・
しかし、池田のささやかな願いは適わず、発狂することさえ許されなかった。
フラフラと入り口付近を歩く泉田の姿に意識を戻されたからだ。
『あんな所にいたら、恰好の的じゃないか・・・・!』
そんな自分の考えに池田はゾッとした。ただ歩いているだけで的になってしまう・・・・結局
俺は”プログラム”のルールに従っているんじゃないか・・・・。
258お前名無しだろ:2001/08/21(火) 23:02
とにかく泉田を放っておく事は出来なかった。どうにかして逃げてほしい・・・・
池田は銃を天に向かって1発放つ。
がらんとした武道館周辺に乾いた音がやけに大きく響き、泉田の大きな体がビクっと動いた。
『頼むから・・・・逃げてくれ!!』
泉田の首がまるで機械のようなぎこちなさで動き、隠れている池田に視線を向けて、ゆっくりとした
動作でこちらへ近づいて来た。
何かがおかしい・・・・泉田の表情が確認できる程の距離まで彼が近づいた時、池田は異変に気付く。
池田を確認しているはずなのにその目はなにも映していないかのように虚ろで、歩き方も不安定だった。
まるでゲームや映画に登場する”ゾンビ”のようだ、と池田は頭の片隅で思った。
泉田が目の前まで接近しても、池田はその異様な様子に動けなくなっていた。
・・・・なんだコイツは・・・・
泉田の手が勢い良く振り上げられ、泉田の武器である鉈が池田の左肩に深深とめり込む。
「うああああーーー!」
血を噴出し、激しい痛みに悲鳴を上げる池田を見ても泉田は顔色一つ変えない。
『狂ってる』
腱が切れてしまっているのか、池田の左腕は動かなくなっていた。
『このままでは殺される!!』
259難しいですね:2001/08/21(火) 23:15
残った右手のコルトガバメントを泉田に掲げ、引き金を絞る・・・・2度目の発砲は泉田の胸に吸い込まれていく。
だが、泉田は動じる様子なく仲間の血液に濡れた凶器を正面に構えて、池田の腹に突き刺すと刃先が背中を突きぬけ
池田は血を吐きながら絶命した・・・・。
ぐったりとした池田の体から鉈を引きぬこうともせずに泉田はそのまま歩き出したが、暫く進んだところで、池田と
同じく口から吐血して倒れ、動かなくなった。
260お前名無しだろ:2001/08/21(火) 23:18
やっぱり直書きではなく下書きした方が楽だな・・・・
精進します。
261お前名無しだろ:2001/08/22(水) 00:18
NOAH編のラストは手榴弾で元子も木っ端微塵になったのかと思ったのに、
まだ生きてたんだね、しぶといなぁ。
元子もプログラムに参加させよーぜ、案外生き残るかもな。
それで、馳は新日の時に死なずに済んだのかな?出すのは失敗だと思われ。
とにかく,NOAHの若手も、作者もがんばれ。
262お前名無しだろ:2001/08/22(水) 00:31
age
263お前名無しだろ:2001/08/22(水) 00:41
2ch、しかもプ板で泣けるとは・・・・。
264お前名無しだろ:2001/08/22(水) 00:44
>>261
今のは前の1さんじゃないよ。
俺もラストで元子達を道連れに逝ったと思った。
でも、面白いのでこのまま続けて欲しいです。
265お前名無しだろ:2001/08/22(水) 01:18
実は、三沢さんも絶命してなければいいな。
266お前名無しだろ:2001/08/22(水) 01:24
>>265
よーく読むとそうとも取れる言い回しがあるよ(w
267お前名無しだろ:2001/08/22(水) 01:32
>>260
密かに期待!
1さん、現行者さんがんばって。
明日も楽しみだ。
268お前名無しだろ:2001/08/22(水) 01:35
道路の片隅に放置されている車の影で、川田はバッグの中身を確認していた。
粗末なパンと飲料水、そして冷たい銃器。
ずしりと重いその感触。普通、日本では決して触れることはない、あってはならないもの。
そう、今となってはなにもかも”普通”ではないのだ。自分の感覚すら普通なのかどうか分からない。
誰かが襲いかかって来たら・・・・自分を殺そうとしたら・・・・この銃を使わないという自信も保証もどこにもないのだ。
『三沢さんも・・・・殺したのだろうか・・・・』
ふと、川田の脳裏に三沢の笑顔が浮かんだ。誰よりも長い時間を、そして一番近くにいたはずなのに・・・・今となってはもう会う事もないのか・・・・。
三沢と川田が違う道をそれぞれ決めた時から分かっていたはずなのに、今初めてその事実を痛感した。
その時、背後からジャリ・・・・とアスファルトを踏みしめる音がして反射的にそちらへ向かって銃を構えた。
「ま、待ってください!打たないで!」
両手を上げた浅子が引き攣った表情で恐る恐る近づいて来ていた。
「止まれ!」
川田の凄んだ声に、浅子の歩みはピタリと止まった。それを見て川田は周りを警戒するように見回し、手を上げ立ち竦む浅子のバッグを取り上げて、素早くボディーチェックをする。
「よし、いいぞ・・・・こっちに来い。」
安堵の溜息をついて、浅子は川田の隣に滑り込んだ。
「さっきの銃声・・・・お前聞いたか?」
「はい・・・・ここに来る途中で池田と泉田さんの死体も見ました・・・・。」
かつてのノーフィアーのリーダーは小さい体をますます小さくして目を固く閉じた。まるでなにもかも否定するかのように。
「やっぱり、やる気になってる奴はいるみたいだな。お前はどうか知らないけど、仲間だったからって油断しない方がいいぞ。」
「川田さん・・・・一緒に居ていいですか?俺・・・・怖くて・・・・」
「・・・・勘違いするなよ。俺の敵はただ一つだ。」
ポーカーフェイスであるはずの川田の顔が険しくなる。その緊張感に浅子が思わず息を呑む。
「このくだらねぇゲームを考えた奴らだよ。」
269お前名無しだろ:2001/08/22(水) 01:36
杉浦は会場から離れた場所まで走り、小さな公園のベンチに腰を下ろしていた。
いつものロードワークならこんなに息が上がる事はないのに、杉浦は胸が痛くなる程に荒い呼吸を繰り返している。
「三沢社長・・・・大森さん・・・・マルさん・・・・怖いよ・・・・」
昼間なのに人一人いない公園は不気味に静まり返り、それが杉浦の恐怖心を嫌がおうにも煽っていた。・・・・どうにか、どうにか・・・・生き残りたい・・・・例え自分だけだとしても・・・・
「そうか、逃げれば良いんだよな・・・・」
そう言いベンチから立ちあがった瞬間、杉浦の額に黒い穴が開き、後頭部がスイカのような紅い飛沫を撒き散らしながら吹き飛んだ。
苦しむ事なく命を落とした事は杉浦にとって幸福だったのかもしれない。
薄ら笑いを浮かべた表情のまま、力を失った大きな体はその場に崩れ落ちた。

【残り9人】
270お前名無しだろ:2001/08/22(水) 01:36
「川田さん、持って来ました。」
浅子が黒いデイバックを3つ持って身を潜める川田の元へ走り寄って来る。
「池田と泉田の分だけじゃないのか?」
「・・・・杉浦も・・・・やられてました・・・・」
川田は膝を叩いて怒りを顕わにするが、それ以上なにも言う事はなかった。残念ながら仲間の死を痛んでいる暇など無い。”敵”を潰さなければもっと死人が増えるのだから。
中を探るとジャックナイフに38口径のスミス&ウエッソン、それにサブマシンガンが出て来た。あとは浅子のコルトパイソンに川田のデザートイーグル・・・・銃器は大体揃っている・・・・それが死んだ仲間の物と言うのは皮肉だな、と川田は考えた。
できれば今、恐怖に震えているノアの選手達を集められれば・・・・戦力は増すし、バラバラでいるより疑心暗鬼にならずに済むはずだ。
『仇は討ちます・・・・三沢さん・・・・小橋・・・・秋山・・・・みんな・・・・』
拳を握る川田の耳に1発の銃声が飛び込んで来た。
「また誰かが・・・・!!」
浅子が苦しそうにうめいた。
「まだ間に合うかもしれない!俺、見て来ます!」
止める川田の声も聞かずに浅子は自分の銃を引っつかみ、銃声の聞こえた方角に向かって走り出した。
271お前名無しだろ:2001/08/22(水) 01:37
「やめて!やめてください!橋さん!」
壁を背にしながら悲鳴を上げる小林に、橋が構えたレミントンを静かに下ろした。
「小林?小林なのか?」
「そうです。撃たないでください・・・・僕はなにもしませんから」
聞き慣れた小林の声に安心した橋はその場にガクリと膝を付いた。慌てて小林が駆け寄る。
「大丈夫ですか?橋さん、どこか怪我してるんじゃ・・・・」
「平気・・・・少し安心しただけ」
そう言い、橋は自嘲めいた笑みを浮かべるとつられて小林も小さく微笑んだ。
「とにかくここを離れましょうよ。銃声を聞きつけて誰か来るかもしれないし」
272お前名無しだろ:2001/08/22(水) 01:38
橋と小林は有料駐車場の管理小屋に身をを潜めていた。
「とにかく・・・・仲間を集めませんか?このまま居てもどうしようもないですし、集まればどうにかなるかもしれない」
「どうにかなるって??」
「何か抵抗する手だてがあるかもしれない・・・・僕、決めたんです、絶対に小橋さん達の無念を晴らすって」
静かな言いまわしとは別に、小林の瞳には強い決意が浮かんでいた。それを見た橋が深い溜息をつく。
「お前、強いな。俺は秋山さんが・・・・志賀さんが亡くなったって知っても呆然とするしかなかった。こんな状況になっても自分の事しか考えてないんだ。悔しいよな」
「それが普通なんですよ。だから”プログラム”が成立するんです。橋さんのせいじゃない。」
「ありがとうな」
こいつ、若いのに他人の事をまだ思いやれる余裕があるんだ・・・・橋は少し気が楽になったような気がした。
273お前名無しだろ:2001/08/22(水) 02:05
川田かっこいいなぁ。歯取られて、スマキにされてたのが嘘のようだ(w
274お前名無しだろ:2001/08/22(水) 02:11
雅夫のムリムリムリに爆笑
275お前名無しだろ:2001/08/22(水) 03:19
『確かこっちの方から・・・・』
浅子はいつでも銃を構えられるように両手でグリップを掴み、中腰になりながら銃声の主を探した。
広い駐車場に出た。微かにツンとした火薬の匂いがする・・・・。コンクリートの壁にはショットガンによる複数の弾痕。
しかし、人影はなく、血痕もない・・・・逃げたのか。懸命な判断だ。やる気になっている奴がいるとすれば、同じ場所に留まっているのは危険なのだから。
浅子は身辺に絶え間無く気を配らせながら歩を進めた。
すると、遠くの方で人影が動いた。目立つ金と銀の髪・・・・橋と小林に違いない。
浅子は彼らを刺激しないようにゆっくりと近づいた。
ピンポンパンポーン♪
『みんなァ〜元気でやってるかァ〜!開始から1時間経過したので途中経過の発表だァ!』
場に似つかわしくない馳の声とそのバックに流れる入場曲が”プログラム”開始からの死亡者を告げる。
『まずは池田大輔!結構頑張ると思ったんだけどなァ!それと泉田、杉浦の順番だァ!良いペースだぞォ!?頑張ってくれよッ!』
そこで放送は終わった。
「・・・・・・・」
川田は放送が流れているスピーカーを恨めしげに睨む。
『奴ら、完全に楽しんでいやがる』
何もかも不愉快だった。くだらないゲームを大々的に行う会社も、そしてここに居る自分も。
・・・・浅子は飛び出したきり戻って来ない。放送で名前がなかったから今の所は無事でいてくれているのだろうと一応は安心してみたものの、やはり気が気でなかった。
277お前名無しだろ:2001/08/22(水) 03:23
「・・・・3人も・・・・」
放送を聞いた橋が絶句する。ノアの中でも屈強な3人だったのに。
死というものはこうも簡単に訪れてしまうものなのか・・・・
「橋さん、早く。」
呆然と空を見上げる橋の腕を掴み、小林が森を目指して歩き出した。
「小林、やっぱり俺、怖いよ・・・・終わるまで隠れていようよ・・・・誰か何とかしてくれるかも・・・・」
「皆が死んで、俺達が殺し合いになる状況まで待てっていうんですか!?」
小林が珍しく声を荒げて橋を乱暴に揺すった。
「でも・・・・」
橋が言いかけた時、突然小林の右腕が爆ぜた。
みるみるうちに小林の腕が赤く染まっていく。
声にならない悲鳴を上げて蹲る小林を見て一瞬、何が起こったのか分からなかった橋だったが、よう
やく事の次第を把握してショットガンを構えて頭を下げた。
ドンドンと重い音が意外と近くから聞こえる・・・・誰だ!?
「やめてください!!俺達は殺し合いをする気なんかないんだ!!」
激痛に顔を歪めながら小林が叫ぶが、銃声は一向に止まない。
「ヤバイぞ、相手はやる気だ。」
「そんな・・・・」
ちらり、と人影が壁の向こうから見え隠れしている。橋はそちらへ向かって威嚇射撃を行ったが、相
手もそれなりに撃ち返してきている。殺す気なんだ・・・・。
「早く逃げよう!」
弾を装填しながら話しかける橋だったが、何度目かの銃声の後に足に感じた耐えがたい熱さに膝を
折った。
「橋さん!」
小林がなぜ自分の名を叫んでいるのか分からなかった・・・・逃げようと思って歩こうとしても足が上
手く動かない事を不審に思って視線を下に落とすと・・・・太股に大きな穴が開き、そこから鮮血が噴
出していた。
熱さが痛みに変わり、自分が撃たれた事をそこでようやく理解した。
おびただしい出血と朦朧となる意識・・・・橋は自分がもう助からない事を悟った。
278お前名無しだろ:2001/08/22(水) 03:24
どうにか身を隠せるさっきの小屋の影へ手負いの小林が橋を引き摺り込んだが、状況は最悪だっ
た。この小屋の周りは何も無く、小林はともかく足をやられている橋を連れて無傷で通り抜ける事は
不可能だ。
そうこうしている内に橋の呼吸が乱れはじめ、顔からは血の気が失せて失血から来る悪寒に橋の体
は震えていた。
こうなったら僕が戦うしか・・・・小林は決心して橋の持っているショットガンに手を伸ばす・・・・が、橋
はそれを頑として離さなかった。
「渡してください!橋さん!」
「こ・・・・小林・・・・お・前・・・・は・・・・に・逃げ・ろ」
歯が噛み合わない橋が必死に小林に訴えた。
「駄目です!早く貸してください!」
「お・俺は・・・もう駄目・・・・だか・ら・・・・も・・う駄・目だ・・・から・・・・」
橋はにやっと笑って手足の感覚がなくなっているはずの体を持ち上げて銃を構える。
「さ・・・・最・・・期・く・・・らい・・・な・・・・男・・・になら・・・な・い・・・と秋・・・・山・・・秋山・・・・さ・んに
な・・・ま・た・・・・ど・・・どつ・かれ・・ちゃ・・・う・・・よ・・・」
小林は涙が止まらなかった。
橋が半ば腹ばいになりながら小屋の影から出ると同時に、小林は広い駐車場を素早く駆け抜けた。
気配が消えたのを感じた橋はそれでも尚、”敵”に向かって銃を撃ち進んで行く。狙いなどうでも良
かった。だた、小林のためだけに引き金を引いていた。橋の体に何発も被弾していたが、橋は痛みを
感じない。
弾が尽きた。
だがそれすらも分からなくなった橋はしきりに引き金を引き続けた。
誰かの足が橋のすぐそばまで近づいて止まった。
『ああ、秋山さん・・・・少しは誉めてくれますか?俺、頑張りました。』
見上げると皮肉っぽい、いつもの笑顔を浮かべた秋山が頷きながら手を差し伸べている・・・・後には
志賀が静かに佇んでいた。
手を伸ばし秋山の手を取った瞬間、ドンという音と共に橋の意識は完全にブラックアウトした・・・・。

【残り8人】
279お前名無しだろ:2001/08/22(水) 03:39
age
280お前名無しだろ:2001/08/22(水) 04:50
今回の桐山役は一体誰なんだろう・・・。気になる・・・。
281お前名無しだろ:2001/08/22(水) 06:57
生存者
川田利明 浅子覚 KENTA

死亡者
池田大輔 泉田純 杉浦貴 橋誠

参加していると思われるメンバー
森嶋猛 力皇猛 菊地毅 佐野タクマ 斎藤彰俊

永源やラッシャーたちは参加していない気がするなあ。
282おはようございます ◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 08:58
いつまでも帰って来ない浅子に業を煮やして川田はその場を離れて浅子を探しに行く事に決めた。
じっと同じ場所に留まっていては危険だから、と自分に言い訳をしてみたが、何もせず時を過ごすの
が苦痛で仕方なかったのだ。
武器類をズボンにねじ込み、サブマシンガンだけを手に持って立ちあがり、浅子が消えた方向へと目
星をつけて走る。
一般人を全て排除した道には全く人影がない。
昼間ともなれば家族連れなどで良く賑わっている公園を横切る。いつもと変わりない風景。ただ人が
居ない事を除けば。たったそれだけの違いなのに何故こんなに不気味なのだろう・・・・。
改めて自分の置かれている状況が、少しも楽観視できないものであるかを川田は再度痛感した。
ドン
突如鳴り響いた銃声に川田は足を止めた。どうやら遠くの方からだ。
その音は他のものと思われる銃声を交えながら暫く立て続けに鳴り響き、間隔を開けた一発の後、
ピタリと鳴り止んだ。
・・・・誰かが死んだのか・・・・?
背筋が寒くなった。
283上げちまった ◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 09:03
”プログラム”が始まってから間接的に”ルール通りの殺し合い”が行われている事は判っていたが、
実際に”やる気”になっている奴がいるなんて・・・・
走るスピードを早めたとき、前方の林の中から人が飛び出して来た。
その腕は遠目でも真っ赤に染まっているのが判り、手負いの状態が見て取れる。
あちらも川田の姿に気付いたらしく、立ち止まって無事な方の手を正面に差し出す。手には小型の銃
が握られて、銃口は確実にこちらを睨んでいる。
川田はその行動を”止まれ”の合図だと解釈し、足を止めて両手を開き攻撃の意思がない事を示し
た。
「お前と争う気はない」
周りに注意を払いながら川田は先に言葉を発する。相手が徐々に近づくにつれて、手負いの選手の
輪郭がはっきりとした・・・・小林健太だ・・・・。
「川田さん?」
小林の方も川田と判り、ややほっとしている様子だったが彼の手にあるデリンジャーの黒い口は川田
の方へ向けられている。
「それを下ろせ・・・・危ねぇよ」
「信じても良いですか?」
まだ警戒を解いていない小林はギラギラした目つきで川田の瞳を見据える。
「さっきも言っただろ、争う気はないって。俺は浅子を探したいだけだよ。」
「浅子さんも一緒なんですか?」
誰かと一緒にいた・・・・小林を信用させるにはそれで充分だった。
溜息に似た息を一つ付き、小林は疲れた様子で銃口を川田から外して形ばかりの笑顔を見せた。
284◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 09:06
「お前、その傷、誰にやられた?本当にやる気になっている奴がいるのか?」
川田の問いに小林は首を振り、残念ながら、と呟いた。
「僕の傷は掠っただけだったけど・・・・・橋さんは・・・・もう・・・・」
全部聞かなくても判った。川田は小林に気付かれないように拳を握り、奥歯を音が鳴るほどに
噛みしめる。
・・・・また守る事ができず若い選手が命を落とした・・・・
川田は己の不甲斐なさを呪った。
「とにかく・・・・僕は生き残っているみんなを集めようと思います。そうすれば・・・・」
小林は一旦言葉を切った。そして川田の顔色を伺うように先を続けた。
「・・・・小橋さんや、三沢社長・・・・橋さん達の仇を討てるかもしれない。僕はあいつらを許せない。」
気弱なイメージしかなかった小林からそんな台詞が出るとは思わず、川田は驚いた。
選手の中に川田と同じ考えを持っている人間がいたとは。
「お前は一人じゃない。全員背負い込むにはお前の肩は小さすぎるだろ。」
「え?」
「俺も小林と同じ意見だってことだよ。」
川田は口元だけでにやっと笑った。
285◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 09:53
「二人で行動してるよりも今はバラバラになってみんなを探した方が効率が良いでしょう。」
小林の提案で二人は合流地点を決めて別れた。
川田の背中を見送ってから、小林はデリンジャーの弾を確認してから走り出した。
再び林に入り暫く進むと奥の方に人のような姿が木々の合間に見え隠れしている・・・・
小林は期待と不安に心臓が高鳴った。しかし・・・・何かが変だ。
違和感の原因はすぐに判った。足が高い位置に浮いていたのだ・・・・体も力なくうな垂れて、肩には
一羽のカラスが死肉を啄ばみにやってきている。
小林が手を払って追い払うと、カラスは不快そうにギャアと一声鳴いた。
286◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 09:53
「・・・・菊池さん・・・・なんで・・・・?」
首をロープで括り木の枝からぶら下がっていたのは鬱血して完全に顔色が変わった菊地。
荷物は乱暴に放置されて、辺りには武器らしきものは見当たらない・・・・恐らく、配給された”武器”は
菊地の体を吊るしているロープだったのだろう・・・・
ドン
またあの音だ・・・・!
橋を殺した忌まわしい銃声が背後から聞こえた・・・・明らかに小林に向かって発砲しているらしく、その音は段々と迫って来ている。
小林は左手の小銃を2度続けて撃ち込むが、相手がどこにいるのかすら判らなかった。だた、湧き上がる怒りに任せて撃ち続ける。乾いた音が静かな森林に響く。
・・・・こいつが橋さんを殺したんだ!こいつが!こいつが!!
菊地が吊るされている大木に身を隠し、必死に応戦するが、ハイペースで撃ち続けていたせいで残りの弾丸が少なくなっていた。背中を冷たい汗が流れ落ちる。
小林が撃つのを止めると呼応したように敵も発砲をしなくなった。どうやら小林以上に戦い慣れしているらしい。
元の静寂があたりを包み、小林は不安になった。姿が見えない状態では位置が全く掴めなかった。
近いのか、遠いのか、それとももう居ないのか・・・・どちらとも判らずにうかつに動く事もできない。
気が狂いそうな緊張感。心臓が張り裂けそうに高鳴り、銃を握る手には汗がじっとりと浮かぶ。
287◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 09:54
『小橋さん・・・・橋さん・・・・僕を守って!!』
意を決して木の影から顔を覗かせて動くものがないかを見てから一発、何も無い空間に向かって
撃ってみた。
・・・・反応はない。どうやら既に逃げたようだった。
一気に緊張感から開放されて深く溜息を付いて額に浮かぶ汗を手の甲で拭う。
「油断禁物だぜ。健太きゅん。」
え・・・・?
意外な場所から声が聞こえた・・・・小林のすぐ隣・・・・小林が顔を出したすぐ反対から。
驚いて反射的に振り返るその額に無骨な鉄の筒が突き付けられた。
そして残虐に見下す見覚えのある顔に驚愕する。
「なんで・・・・?なんで・・・・?」
・・・・橋を殺したのですか?
そこから先は橋の命を奪ったあの音にかき消された。
最期に小林の脳裏に描いたのは川田の姿だった。
・・・・・川田さん・・・・川田さん・・・・・

小林の思考はそこで停止した。


【残りあと5人】
288お前名無しだろ:2001/08/22(水) 09:56
桐山は誰だよ-----------------!!
289◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 11:01
「川田さん!」
後からいきなりから声をかけられて川田はとっさに手にしたマシンガンを構えた。
「わわわ!撃たないでください!!」
「浅子!」
大げさに手を上げて見せる浅子の姿に川田は大きく息をつく。
「どこに行ってたんだよ・・・・心配したんだぞ」
川田が叱咤すると、浅子は目を伏せて素直に謝罪して、ぽつりと話始めた。
「すいません・・・・橋は・・・・間に合いませんでした・・・・俺が遅かったばっかりに・・・・」
「知ってるよ。小林に聞いた。」
浅子の目が驚きに見開かれる。
「え!?小林と会ったんですか?」
「うん。だいぶ前に別れたけどな。でも仲間集めて合流する予定だからまた会えるよ」
川田はもし生きていたら・・・・とは言わなかった。それが現実のものとなってしまう事が怖かったか
ら。
290◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 11:02
力皇と森嶋はひたすら逃げ道を探してさ迷っていたが、バリケードとその前に立っている兵士を見て
絶望した。
「やっぱり駄目か。」
森嶋が大きく舌打ちのを力皇が不安げな表情で見詰め、がっくりと肩を落とす。
最初から薄々気付いてはいたものの、目の当たりにすることで唯一の希望も儚く霧散しまった。
「森嶋・・・・これからどうするよ・・・・」
「そう急かすなよ。少し身を隠して他の手を考えようぜ。」
森嶋がその場を離れるのを見て、力皇も後に続く。
開始当初から潜んでいた大きな岩の陰に戻り、二人は暫く言葉を交わすことはなかった。
「なァ、リキ、やっぱり俺達助からないのかな。」
沈黙に耐えられなくなった森嶋が弱音を零す。
「なんでそんな事言うんだよ・・・・どうにかなるよ」
「だってルールでは残った一人しか帰れないんだろ?」
力皇がそれはどうだけど・・・・、と俯いた。
「戦わないと・・・・殺さないといけないんだよな」
「そんなの嫌だよ・・・・!出来ないよ!」
真昼の太陽がすっと雲に隠れて辺りが暗くなった。その様子に森嶋は例えようもない不安を感じて大
柄な身を竦ませる。
291◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 11:03
「ここで隠れていたとして・・・・俺達以外の奴らが全部死んでしまったら・・・・?」
言葉を口にした森嶋も、聞いていた力皇も心に暗い闇が差すのを感じた。
『もしかしたら・・・・こいつ、俺を殺すかもしれない』
猜疑心が燻りはじめたら、もうその思考を止めることは出来ない。
ちらりとぎこちなく目を動かしてお互い相手の様子を伺うが、視線がかち合うと急いで目を逸らした。
『森嶋って・・・・何考えてるのか判らないんだよな・・・・』
『こいつ、小橋さんを裏切った事もあるんだよな。意外と狡猾な所があるから、俺を殺そうと考えてい
るのかも知れない。』
それぞれ傍に置いてある武器・・・・森嶋は重いハンマーを、力皇はモーニングスターを手繰り寄せて
しっかりと握った。
ともすれば切れてしまいそうな緊張感が二人を包み、知らずに呼吸も細かいものになる。
脆い糸のような空気を崩したのは近くで聞こえた人の足音だった。
「うわああああ!!」
力皇が大声を上げて立ち上がり、つられて森嶋もそこから逃げ出すように走り出す。
「待って・・・・!」
二人のものではない声が聞こえたが、逃げ出した二人には届かなかった。
292◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 11:17
先に走り出した力皇が振り返ると、後から自分を追い掛けてくる森嶋が見えた。
「や、やっぱり、お、俺を殺そうとしてたんだなァ!?」
モーニングスターを振り回して力一杯森嶋の肩に叩きつける。ぐしゃりと鈍い感触が手に伝わる。
「てめぇ・・・・!この裏切り者!」
森嶋もハンマーを持ち上げて力皇の体を強く打った。
まるで地獄のような光景が繰り広げられた。二人の顔には狂気めいた笑顔すら浮かび、ひたすらに
相手の体を鈍器で打ち続ける。
むせ返るような血の匂いが辺りに満ちていた・・・・・

「俺の・・・・俺のせいじゃないからな・・・・俺はただ試し撃ちがしたかっただけ・・・・」
原型を留めないほどに変形した二人の死体を見下ろしながら金丸は誰ともなしに呟いて、小さな悲
鳴を残して一目散に逃げ出した。


【残りあと3人】
293◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 12:00
武道館のそばの門の前で川田と浅子はじっと小林が来るのを待っていた。
小林との約束は午後2時。約束はとうに過ぎている。
結局二人が見つけたのは肉塊と化した仲間だけだった。説得する暇もない・・・・
「来ませんね・・・・」
浅子がぽつりと漏らしたが、川田は無視して待ち続けた。
暇を持て余した感じの浅子が銃を取り出していじり始めている・・・・
その時、川田は浅子の異変に気付いた。何かがおかしい。
いつから浅子はこんなに慣れた手つきで銃を弄ぶようになったのだろうか。
銀色に光る銃口の先には黒ずんだ火薬の痕。
・・・・明らかに撃っている。
「浅子・・・・お前、それ使ったか?」
川田の問いに浅子が小首を傾げて、なぜですか?と問い返す。
「威嚇射撃に1回撃ちましたけど・・・・」
嘘だ。1回や2回ではない。
浅子は一体、どこで何をしていたのだろう・・・・?川田は隣にいる男に言い知れぬ恐怖を感じた。
「なんですか?変な目で見て。」
不気味な笑顔で浅子が笑う。
「川田さん・・・・小林、来ませんね。」
傾きかけた太陽を仰ぎ見ながら呟き、まぶしそうに目を細める。
「まあ・・・・頭が半分吹っ飛んだ状態で来れるワケないか」
浅子の瞳が残酷に歪み、光りを弾いた銃がゆっくりと川田に向けられた。
294お前名無しだろ:2001/08/22(水) 12:26
浅子さんかぁっ!?
「川田さんと一緒に居れば少しは楽になると思ったんですけど・・・・案外役に立ちませんでしたね。」
「みんな・・・・お前が殺したのか・・・・」
「勝手に死んでくれた方が多いけどね。」
いつ引き金を絞るのか判らない。浅子の体からは殺気が漲っている。
「高山が教えてくれたんですよ。コツって奴をね。」
川田利明と言う、絶対に超えられなかった壁。その生殺与奪を自分が握っている事現実に浅子が恍惚とした表情をした。
「さて・・・・最期に言っておいてやるか・・・・ノーフィアー!!」
川田は覚悟を決めたように目を閉じて最期の瞬間を待った。
バン!
激しい銃声が耳を打つ。
しかし、予想していた痛みや、銃に撃たれた時に感じると言われる焼けつくような熱さは一向にやってこなかった。
目を開き見ると川田に銃を突き付けていた浅子が右手を押さえ、苦悶の表情を浮かべていた。
掲げていたコルトパイソンは浅子の足元に転がっている。
「伏せろ!川田!」
え!?
何が起こったのか理解できない川田の耳によく知った低い声が飛び込んで来た。驚きながらも反射的にその指示に従い、とっさに身を伏せる。
「なんでだよ・・・・なんでアンタが生きているんだよ・・・・!」
信じられない、と言った表情で浅子が凝視するその先には、死んだはずの男が大型の銃・グランド・マスターを構えて立っていた。
296◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 12:38
なんか急ぎ過ぎた感がありますが・・・・
頑張っても>>1には及ばずかなり悔しいっす
297お前名無しだろ:2001/08/22(水) 13:48
うはぁ〜っ!川田を助けにきたの誰だろう・・・?
◆sVIg2yUMさん、頑張れ〜!!楽しみ〜!
298お前名無しだろ:2001/08/22(水) 15:18
たぶん「あの人」だろうな…あぁ、入場テーマ曲が聞こえてきそうだ!
299お前名無しだろ:2001/08/22(水) 17:05
スパルタンX?
300◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 17:16
「三沢さん・・・・」
地面に手をつきながら見上げた先には・・・・先の”プログラム”で死んだはずの三沢が佇んでいた。
浅子は半ばパニックを起こして銃身に着弾して形が歪んだコルトパイソンを拾い上げ、三沢を狙う。
「やめとけよ。暴発するぞ。」
静かな、しかし迫力のある低音で制止をする。しかし構えた手を下ろせない浅子は、三沢と真っ向か
ら対峙しながら舌打ちをした。完全に形勢不利だ。
「とっとと消えろ」
三沢が顎を動かして浅子に告げる。
二人のエースを交互に睨みながら浅子はじりじりと後退し、少し離れたところで後を向いて走り去っ
た。
「・・・・終わったな。」
やれやれ、と言った感じで三沢が腕を下ろして、呆然としている川田に手を差し伸べた。
「幽霊見たような顔すんなって。」
苦笑を口元に薄く張り付かせて三沢がゆるゆると手を差し出す川田を助け起こす。
「・・・・三沢さん・・・?何で?何で生きているんですか?」
「生きてたら悪いのかよ?俺が死んだなんて勝手なこといってるのはあのオバサンだろ?」
そう言えば川田は三沢の遺体すら見ていない。三沢死亡の情報は全日側から一方的に聞かされて
いただけだ。
恐らく三沢が死んだと発表したのはノアの残りの選手達による暴動を防ぐためだったに違いない。三
沢が生きていると知ったらそれを旗印に、きっとノアは全日に立ち向かっていた。
そして三沢が居なくなって深く沈んでいる今の時期を見計らって”止め”を刺しに動いた・・・・危険因
子である川田を含めて。
元子と言う人間は思ったよりも計算高い。
301お前名無しだろ:2001/08/22(水) 17:25
浅子さんがかっこいい悪から小悪党に……(泣藁
302お前名無しだろ:2001/08/22(水) 17:30
>>301
覚えてろよ。とか云わなかっただけマシ
303お前名無しだろ:2001/08/22(水) 17:50
川田と三沢の再会に涙
304お前名無しだろ:2001/08/22(水) 18:39
大き過ぎて新日のが見られないよ
305お前名無しだろ:2001/08/22(水) 18:48
>>304
◇◆★新日バトルロワイヤル2★◆◇
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi?bbs=wres&key=998464193
↑に引っ越しました。
前スレの作品もすべてコピーしてあります。良かったら見に来て下され・・・。
306お前名無しだろ:2001/08/22(水) 18:56
ノア編・・第一部感動&第2部今後期待です

新日編も超期待してます

2chなのに不覚にもマジ感動しました・・
ノア、新日ともコピーして保存させていただきます・・

職人さんの方々本当にご苦労様です、そしてありがとう・・

痛マジレススマソ。。
307◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 19:46
三沢さんが生きていた・・・・みんなに教えたらどんなに喜んだだろう・・・・
その選手達の大半が既にこの世にない事を知り、川田は目頭が熱くなって思わず目を伏せた。
「心配させて悪かったな。こうするしか・・・・無かったんだ。アイツらを潰すためには・・・・」
三沢が言葉尻にポツリと呟いた小川の名前は川田には聞き取る事が出来なかった。
「所で・・・三沢さん、今までどこに居たんですか?」
「昔からの腐れ縁ってとこだ。」
「冬木さん・・・・FMWですか?」
「火薬使わせたら日本一だからな。いくつか武器や弾薬も持たせてくれたよ。」
三沢は着ていたベストの中を開いて見せた。
手榴弾や予備のマガジンにリボルバー、それにナイフなどが装備されている。
「さて、そろそろ行くぞ・・・・オイ!」
三沢があさっての方向に向かって大きな声をかけると年代もの門戸の影から金丸が姿を現した。
意外と元気な様子で金丸が二人に近づいて来た。・・・・まだ残っている奴がいたんだ・・・・川田は素直に嬉しかった。
308◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 19:46
二度目の放送で小林、橋、菊池、森嶋、力皇の死亡が発表される頃には、辺りは完全に闇に包まれていた。
武道館の影に身を潜めながら3人は中の様子を伺う。テレビ局の車が何台か停まっていて、その無神経さに怒りを覚えた。
『俺達は完全に見世物かよ・・・・』
川田は中にいるであろう、元子を思い武道館を睨んだ。
「ダメです。中に入る入り口は全部封鎖されてます。」
偵察に行った金丸が肩を落としながら戻って来て告げた。
三沢は不精髭を撫でながら口を引き結び、難しそうな顔をする。
「どちらにしても、いつまでもここに居ることは出来ないな。俺の存在が知れたら・・・・”プログラム”どころじゃなく消しにかかるぞ。」
取り合えず撤退・・・・三沢はそう言っていた。
309◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 19:47
武道館を目の前に一旦後退した川田、金丸そして三沢は会場から離れた売店の中で一時、休憩を
取る事にした。
今まで緊張の中に居て気付かなかったけれど、昨日の夕食を食べたきりだったのを川田は思い出し
て、急激に空腹を感じた。
ああ、いつもならばこの時間には夕飯がてらに酒でも飲んでいるはずなのに・・・・たった一日でここま
で状況や立場が変わるなんて、つくづく人生ってものはは生きてみなければ判らない。
・・・・生きてみなければ。
考えを反芻しながらふと、膝を抱えて一言も口を開かない金丸に視線を移す。
『あれだけいた仲間が・・・・たったこれだけになってしまったんだ』
幾度も激しい試合を繰り広げた小橋や秋山、共に戦った田上、指導した後輩達・・・・全てが美しい思
い出の中でしかなくなってしまった。
ふと見た三沢の胸に、見なれない金具のようなものが細い鎖に繋がれて首から下げられ、窓から細
く差し込んだ月の光を反射している。
「三沢さん・・・・それは?」
指で指し示すと三沢は胸元に目を落として、ああ、と頷いた。
「手榴弾のピン。・・・・俺の命の恩人達の形見だよ。」
酷く寂しそうな笑顔にを見て、川田は用意していた言葉を飲み込んだ。
「やっぱり止めませんか・・・・?全日を潰すだなんて・・・・」
金丸がそんな事を呟きはじめた。
「だって無理ですよ。あの人数見たでしょう?それを3人でなんて・・・・死にに行くようなものだよ!」
三沢の眉がぴくりと動く。
「それなら俺や川田や浅子と殺し合いでもするか?」
「・・・・出来ませんよ、そんな事・・・・」
弱音を吐く金丸の胸倉を掴み激しく揺さぶる。金丸は抵抗せず、されるがままになっていた。
「しっかりしろよ!お前チャンピオンだろ?!ベルト持ってんじゃねぇのかよ!」
放り捨てるように三沢が金丸から手を離した。がくりと金丸の体が力なく崩れ落ちる。
川田は無言で金丸の肩に手を置く。
「川田、金丸・・・・いつでも迎撃できる準備しとけ。」
三沢がふいに不気味な言葉を口にした。
310ノアもまとめるって!:2001/08/22(水) 20:25
・第二回プログラム参加者

川田利明 池田大輔 力皇猛 森嶋猛 浅子覚 泉田純
橋誠 KENTA 金丸義信 杉浦貴 菊地毅 (11名・三沢除く)

・死亡者
池田(殺害者・泉田 刺殺)
泉田(殺害者・池田 射殺)
杉浦(殺害者・浅子 射殺)
橋(殺害者・浅子 射殺)
菊地(自殺)
KENTA(殺害者・浅子 射殺)
森嶋(殺害者・力皇 撲殺)
力皇(殺害者・森嶋 撲殺)

ノアも頑張れってことですよ。
311◆sVIg2yUM:2001/08/22(水) 21:54
三沢の指示の後には幾ばくかの静寂があった。川田はサブマシンガンを、金丸はベレッタを構えて
何が起こるのかと、じっと息を殺す。
耳が痛む程の静けさ。
流れる汗の音さえ聞こえそうだな、と川田は思った。

張り詰めた空気を破ったのは連続して放たれた銃弾の音だった。
「伏せろ!撃ち返すな!」
三沢の激が飛ぶ。
「どうすればいいんですか!」
割れたガラスの雨に打たれながら金丸がヒステリックに叫んだ。
「弾が切れるのを待つんだよ!相手は浅子一人だ!」
そうしている間にも銃弾の雨は止む事なく、店の中を破壊し続ける。
だが、やがて弾を撃ちつくしたのか、銃撃はぴたりと止んだ。
「終わったみたいだな・・・・」
頭を持ち上げて髪についたガラス片を振り落とす。
「お・・・・俺、周りをちょっと見てきます・・・・」
暫く様子を伺っていた金丸が不安そうに立ちあがり、出口の方へ向かって歩き出した。
「金丸、これを持っていけよ。」
三沢が差し出したのは手榴弾。
「もし危なくなったらこれを投げて逃げろ。良いな。」
金丸は素直に三沢からそれを受け取り、外へ出た
312お前名無しだろ:2001/08/22(水) 23:56
はやくぅぅぅん。
313お前名無しだろ:2001/08/23(木) 00:52
第2回プログラムもおもしろく
なってきた!
でも、今日は終わりっすか?
314お前名無しだろ:2001/08/23(木) 00:53
三沢〜!!
生きていたのね。
今さらだけど、初回プログラムの
小川に涙…
315お前名無しだろ:2001/08/23(木) 01:00
>>314
同じく〜。
>>63
いいタイミングだったね。
私も叫んでたよ。
316お前名無しだろ:2001/08/23(木) 10:47
浅子さん、完全悪!カコ(・∀・)イイ!
317お前名無しだろ:2001/08/23(木) 20:06
保全age
318お前名無しだろ:2001/08/23(木) 20:32
このスレって話がダラダラ続くんじゃなくてまとまっているし完結するから好きだ
319お前名無しだろ:2001/08/23(木) 20:37
俺も登場したいって!!三沢の盟友は俺だって!!
三沢とは一緒にメキシコに行った仲だからありだろ?って事ですよ
320お前名無しだろ:2001/08/23(木) 21:19
ちょうどいい長さ。
321お前名無しだろ:2001/08/23(木) 23:59
やっぱりヒーローは三沢なんだね・・・。
三沢ヲタとしてこれほど嬉しい事は無い。
322お前名無しだろ:2001/08/24(金) 01:33
続き楽しみあげ。
323 ◆sVIg2yUM :2001/08/24(金) 01:55
扉を開けて外へ出るが、人影などはなくただ闇だけが広がっていた。
店の軒先から辺りを見まわし離れようとした時・・・・全身が泡立つような殺気が頭の先に突き刺さり、
不気味に笑いを含んだ声が聞こえる。
「よう、チャンピオン」
振り向き、見上げると浅子が屋根の上に片膝を付く形で、驚きの表情を隠せない金丸の頭部にデリ
ンジャーの照準を合わせていた。
頭上から見下す浅子の視線に金丸の背中に冷たい汗が流れる・・・・
もう幾度も聞いた発砲音が金丸の鼓膜を激しく叩く。
・・・・もう終わりか・・・・
金丸は最期を悟った。
324お前名無しだろ:2001/08/24(金) 02:03
>>◆sVIg2yUM
ご苦労さん。続きは大変だろうけど
このスレの熱が冷めないうちに…頼む。
325お前名無しだろ:2001/08/24(金) 02:03
どきどき・・・・作者さん2もいいよ。頑張れ
326お前名無しだろ:2001/08/24(金) 02:13
ケンタ君の死に様がいいよな。ノアってファミリーって感じなんだよな。
327 ◆sVIg2yUM :2001/08/24(金) 02:15
武道館の近く(?)にある大きめの売店なんですけど・・・・判りますか?
328お前名無しだろ:2001/08/24(金) 02:17
分かるよ。作者さんエライよ。頑張れ
329お前名無しだろ:2001/08/24(金) 02:18
>>327
俺はわかったよ(藁
試合前に客がたむろしてる所だろ?
続き頑張ってくれとしか言えなくてスマソ。
330 ◆sVIg2yUM :2001/08/24(金) 11:39
しかし、金丸はその持ち前の反射神経で発射の直前に体を僅かに動かしていた。
銃弾が頬の肉を僅かに削ぎ落として地面に命中する。
「チッ!」
金丸を仕留め損ねた浅子は大きく舌打ちをして、身を翻して体勢を整える金丸に再び狙いを定め
た。
「浅子ォー!」
銃声を聞きつけて中から飛び出して来た川田が金丸を庇うようにマシンガンを上に向けて連射する。
「邪魔が入りやがったか!」
身を屈めて川田の攻撃をやり過ごしながら浅子はズボンのベルトに指し込んでいたもう一丁のオート
マチックを取り出して川田目掛けて撃ち放つ。
暫し、2対1の激しい銃撃戦が展開される。
両手に構えた2丁の拳銃で川田と金丸を相手にしていたが、続いて出て来た三沢の姿を見つけると
さすがに適わないと見て、屋根の上を走り夜の闇の中に姿を消した。
「追いますか?」
未だ緊張冷めやらぬ金丸が銃を固く握り締めたまま、三沢に問う。
「その必要はないだろ。今行っても不利になるだけだ。」
うんざりした様子で三沢が言った。
たった数日前まで一緒にいた戦友が・・・・しかも付き人までしていた浅子と命の奪い合いをしなければならないなんて・・・・空しささえ感じる。
『折角、生きているのにな・・・・』
全てはあの女のせいだ。
胸に光る金属の冷たい感触を確かめながら、三沢は空を睨んだ。
「とにかく、場所を移動しましょう。」
川田が三沢の隣までやって来て、その提案に三沢が頷いた時、後に居た金丸から悲鳴が上がった。
「チェックメイトだぜ、チャンピオン。」
331お前名無しだろ:2001/08/24(金) 11:43
チェックメイトー
332お前名無しだろ:2001/08/24(金) 11:43
浅子さん強ぇ〜(w
二挺拳銃(・∀・)カコイイ!
333お前名無しだろ:2001/08/24(金) 11:49
浅子さんマンセー!
334 ◆sVIg2yUM :2001/08/24(金) 15:25
「金丸!」
川田と三沢の声が重なった。
そこには姿を消したはずの浅子が金丸を後から羽交い締めにしてこめかみに銃口を突き付けた状態で
立っていた。
三沢と川田は手にした銃を浅子に向けたものの、金丸に突き付けられた凶器にその場から動く事が出来
なかった。
「俺はどうせこいつを殺すつもりだぜ。それならいっその事、俺と一緒に殺した方が良いんじゃねぇの?」
向けられた銃口に怯む様子もなく、不敵に煽る。
「出来るはずないよな、川田、お前なんて人殺した事ないもんなぁ?そうだろ?」
川田が奥歯を噛み締めた。
「そんなチャチな覚悟で敵討ちとか言ってるんじゃねぇよ。生き残る事すら難しいってのに。」
「浅子・・・・何故そこまでやる必要があるんだ・・・・?」
険しい目つきで浅子を睨み、三沢が静かに問う。
「はぁ?今更なに言ってるんだよ。あの女社長が言ってたろ、生き残るのは一人だって。現に前の”プロ
グラム”でも生き残ったのは三沢、あんた一人だけじゃねぇか。あんたと仲良しだった小川、丸藤だっても
うこの世にいないんだぜ?小橋も秋山も大森も高山も・・・・全員死んじまったじゃねぇか。」
三沢を鼻で笑い飛ばしながら浅子は言葉を続ける。
「・・・・生き残ったら俺は英雄になれる。無冠だった俺がだ。ここで震えてるチャンピオンからもベルトを頂
けるしな。」
浅子はそう言い放ち、腕の中で視線を膠着させている金丸に目をやった。
335 ◆sVIg2yUM :2001/08/24(金) 15:35
こめかみに冷たい鉄の感触に身を竦ませながら、金丸は三沢の台詞を反芻していた。
『しっかりしろよ!お前チャンピオンだろ?!ベルト持ってんじゃねぇのかよ!』
そうだ、俺はチャンピオンなんだ。
秋山さんと君臨した王座。誰にも渡す気はない。
だから・・・俺は逃げも隠れもしない!
金丸の心に初代GHCジュニア王者のプライドが蘇った。
足を後に振って無防備な浅子の急所を蹴り上げ、思わず手を離して屈み込む浅子の腹に思いきり膝を
叩き込んだ。
「三沢さん、川田さん!行ってください、浅子は俺がやります!」
「金丸!無茶するな!」
川田が助太刀に入ろうと動くが、それよりも先に金丸が持っていた銃を近づこうとする川田に向けた。
「後で追い付きますから・・・だから早く!」
金丸の必死な形相を見て三沢が川田の腕を掴んで先を促す。
「行くぞ、川田。」
半ば無理やりに川田の体を引きながら、三沢は振り返ることなく金丸から離れた。
336お前名無しだろ:2001/08/24(金) 15:36
うぉっ!新作が!!
浅子さん、(・∀・)ワル!
337お前名無しだろ:2001/08/24(金) 16:51
先読みだが手榴弾で相打ちっぽい…。
338お前名無しだろ:2001/08/24(金) 17:23
いや、浅子さんが勝つだろう。
339お前名無しだろ:2001/08/24(金) 21:37
あげときます。
340お前名無しだろ:2001/08/24(金) 21:51
はやく、オバちゃんをやっつけて!
341お前名無しだろ:2001/08/25(土) 00:31
この浅子さんと新日スレのカシンの闘いが見たい。
そしてそれ以上に共闘が見たい
342お前名無しだろ:2001/08/25(土) 01:41
マルも川田も三沢も浅子もイイ!
343頑張れ、金丸!:2001/08/25(土) 05:42
昨夜のノア中継のように、MAXPAINでやられたりしないでくれ・・・。
344お前名無しだろ:2001/08/25(土) 22:06
作者さんがんばって!
あげときます。
345 ◆sVIg2yUM :2001/08/25(土) 22:07
「アマい真似しやがって」
腹を抱えながら浅子が立ちあがり、燃えるような目つきで金丸を睨みつける。
-------ここで負けたら駄目だ。
金丸は持っていたベレッタを地面へ投げた。
「浅子、俺は逃げも隠れもしないぞ。そんなオモチャでしか俺に勝てねぇのか?俺からベルト取ってみろ
よ!」
浅子の口が面白い、とでもいいたげに微かに歪み、良い度胸だ、と呟いて手に持ったデリンジャーをベル
トに収めた。
「かかって来いよ!!」
両手で煽ると身軽になった浅子が金丸に飛びかかり、マウントを取ったところで容赦なく拳で金丸の顔面
を殴りはじめた。
止めるべきレフェリーもいるはずがない。これは本物の殺し合いなのだ。
したたかに打ちつけられて金丸の口の中に苦い鉄の味が広がる。
両腕でガードをしながら金丸は腹筋を使って浅子の体を跳ね上げて、その間に素早く身を下に抜いて後
を向いた浅子の首に腕を巻きつけた。
苦しそうに顔を顰める浅子を押し倒し、今度は金丸の方が浅子に跨る。
「へへ・・・・貰ったぜ。」
何もしないままに金丸が勝利を確信するような表情をした。
暫くその意味を理解できなかった浅子だったが、微かに震える金丸の右手を確認した時に全てを悟って
驚愕した。
346お前名無しだろ:2001/08/25(土) 22:15
果たしてこの続きは読めるのか!?
347お前名無しだろ:2001/08/25(土) 22:22
>>345
右手に何よー!
348 ◆sVIg2yUM :2001/08/25(土) 22:32
金丸の手には・・・・三沢から受け取った手榴弾が固く握られていた・・・・。
俺もろとも自爆する気か!?
浅子はどうにか金丸の下から逃げ出そうと身を捩じらせたが、金丸はしっかりと浅子の体に身を絡ませ
て浅子の脱出を防ぐ。
「俺と一緒に地獄に・・・・落ちてもらうぜ」
ははは、と顔を腫らした金丸が力なく笑った。
組み敷かれた浅子がちらりと横を見ると、その手の先には先ほど金丸が放り捨てたベレッタが鈍い光を
放っていた・・・・迷わずに浅子はそれに手を伸ばし、金丸の腹に突き付け、引き金を絞った。
が、鉛の弾は発射されずに、引き金も下がったままで止まっている・・・・。
とっくに金丸の銃の弾丸は尽きていたのだ。
浅子を挑発したのも金丸ならではの”ハッタリ”だった。
「やっと気付いたのか?へへっ・・・・」
満足そうに金丸が言った次の瞬間、浅子の手が再び動き、乾いた音と同時に金丸の笑みが凍りつく。
ぎこちなく視線を自分の腹に落とすと・・・・絵の具のような真っ赤なシミがみるみるうちに広がっていくの
が見えた。目の前の光景がぐらりと暗く歪み、胃が焼けるように熱くなって何かが食道を逆流してくる。
金丸は口から大量の血を吐き、信じられないと言った目で浅子を見詰めた。
浅子はとっさの判断で弾切れたベレッタを捨て、ベルトに差してあった銃を取り出して金丸の腹を至近距
離から撃ち抜いていたのだ。
しかし、下から這い出そうとする浅子を許す事はなかった。
渾身の力で押さえ込み、血が滴り落ちる口で手榴弾のピンを引き抜いた・・・・。
349お前名無しだろ:2001/08/25(土) 22:33
完結してくれ〜!!
350お前名無しだろ:2001/08/25(土) 22:35
浅子さん応援してたけど、このマルは相当かっこええ
351 ◆sVIg2yUM :2001/08/25(土) 22:49
流石に焦りの色をその顔に刻みながら、続けて金丸の体に凶弾を撃ち込む浅子。
金丸の背にいくつも穴が開く。震える手から手榴弾が滑るように落ちて地面に弾かれて転がる様子がス
ローモーションのように浅子の目には見えた。
手榴弾の金具が本体から離れる・・・・カウントダウンが始まった。
「くっ!!」
更に金丸に発砲するが、衝撃に体を揺らすだけで浅子を押さえ込む力は一向に緩まない。
1・・・・・
やがて浅子の銃も弾が尽きた。
2・・・・・
金丸の表情がふと、安らかなものへと変わる。
3・・・・・
4・・・・・
浅子に覆い被さるそのままの姿で溜息のような息を一つ付き、金丸の瞳から生命の光が消えた。
5・・・・・

夜の空に炎と爆音が轟いた。
352お前名無しだろ:2001/08/25(土) 23:26
(取り合えず)プ板存続age
353 ◆sVIg2yUM :2001/08/26(日) 00:23
遠くから聞こえる爆音に、川田が振り返った。
「三沢さん・・・・!」
三沢を引きとめようと声をかけるが、前を歩く男は背を向けたまま返事もしようとしない。
金丸が浅子と戦う覚悟を決めた時に三沢は彼の死すら悟っていた。
ベレッタの弾が終わっていたのも気付いていた・・・・残されたのは三沢が渡した手榴弾のみ。あの決意
に満ちた表情から、それをどう使うのかも判っていた。
それが最期の誇りなら、願いなら・・・・三沢に金丸を止める術はなかった。
「川田・・・・覚悟は良いか?」
ぼつりと三沢は川田に声をかけた。いつも通りの口調で気付かなかったが、短い言葉の中には様々な問
いが隠されていた。
俺について来てくれるのか?
俺と死ぬ覚悟はあるのか?
お前はそれで良いのか?
前をじっと睨み会場へ向かう三沢の背は揺るがない強い意思に満ちていた。
・・・・俺の背は・・・・どうなんだろうか。
川田は自分の後ろを振り返った。
誰もいない。
みんないなくなってしまった。

川田は三沢と同じ方向に視線をやりながらはっきりと返事をした。
「はい、三沢さん」
354お前名無しだろ:2001/08/26(日) 00:27
続きを期待あげ
355お前名無しだろ:2001/08/26(日) 00:27
>>353
涙、出てきた・・・ やっぱり最後はこの二人だって!
356お前名無しだろ:2001/08/26(日) 00:30
消えるまえに完結できそうなので期待安芸
357お前名無しだろ:2001/08/26(日) 00:32
頑張ってくれ。8割の力で(藁
358 ◆sVIg2yUM :2001/08/26(日) 01:18
「全国の全日本プロレスファンの皆様、こんばんわ!ジャストミート福澤です!さて、今回のプログラムは
たった今終了いたしました!数々の激戦の中、唯一生き残ったのは!!
我らが全日のエース!川田利明選手です!」
興奮した様子で福澤がコールすると広い武道館に川田の入場曲が鳴り響いた。
華やかな会場内とは裏腹に、武装した兵士に囲まれて連れて来られた川田の顔は険しく、そして殺気に
満ちていた。
スポットライトが当たり、数台のテレビカメラが一斉に川田を注目する。
・・・・吐き気がする・・・・
花道の奥のリング上にはテレビ用の言葉を並べる福澤と馳、それと不気味な程に穏やかに微笑む元子
の姿があった。
リングアナがなにやらマイクで喋っているが、川田の耳には入っていない。
「おめでとう川田君。きっと生き残ると思ってたわ。」
「・・・・・・」
「ま、貴方だけの力ではない事は判ってたけれど?」
・・・・三沢さんの存在がバレていた?
表情には出さないものの、川田は内心焦っていた。
「それではご紹介しましょう!前回のプログラムの優勝者にしてノア社長、三沢光晴選手です!」
福澤が大声で叫び、入場口を指差す。
川田と同じようにカメラがざざっと向きを変えた。
スポットライトに照らされながら、所々血を滲ませた三沢がふらつく足取りで川田の居るリングに歩いて
来る。
「三沢さん・・・・」
川田は目の前が真っ暗になった。
359お前名無しだろ:2001/08/26(日) 01:19
三沢はプ板とともに散るのか…
360お前名無しだろ:2001/08/26(日) 01:19
ドキドキあげ
361お前名無しだろ:2001/08/26(日) 01:23
早く・・・眠れなくなる・・・
362お前名無しだろ:2001/08/26(日) 01:27
8割でいい。正直頼む。
363お前名無しだろ:2001/08/26(日) 01:32
どーなってんだー!!
364お前名無しだろ:2001/08/26(日) 01:35
作者さんは頑張ってくれてるって!
急かしちゃだめだって!
そう言う俺もあげちゃってスマンって事ですよ。
365 ◆sVIg2yUM :2001/08/26(日) 01:49
傷だらけになりながらも三沢の瞳はギラギラと光り、視線は真っ直ぐに元子に刺さっていた。
後から小突かれながらリングインする三沢の前に、どこか誇らしげな元子が進み出る。
「この目…気に食わないわね!」
元子が手を振り上げて三沢の固い頬を掌で張った。顔を背けた三沢は何も言わずにじろりと横目で仁王
立ちの女社長を睨み返した。
「まぁ良いわ。貴方は今日、この場で処刑されるのだから。視聴者は血に飢えてるわ。貴方のお陰で数
字も順調よ。」
ふん、と鼻で笑い、元子はリング中央に戻る。
・・・・と、その時、入場口付近で銃声が上がった。
小さな影が揺らめくように現れ、近くにいたスタッフ・兵士関係なく射撃している。
見覚えのある顔・・・・。
「浅子!!」
誰かが悲鳴のような声を上げた。
金丸の命と引き換えに死んだはずの浅子が、兵士から奪ったであろうマシンガンを闇雲に撃ち放ちなが
らリングの方へと近づいていた。
しかし・・・・爆発で吹き飛んだのか、その左手は肩から先が失われていた。耳から滴る血は聴力すらなく
なっている事を意味していた。
「か・・・・る・・・・かね・・・・まる・・・・金丸・・・・」
うわ言のように呟きながら、浅子はリングの方へと進む。
366お前名無しだろ:2001/08/26(日) 01:51
浅子さん!!!
367お前名無しだろ:2001/08/26(日) 01:52
>>366
ラストまで付き合えるか?俺は居るぞ(藁
368お前名無し!:2001/08/26(日) 01:53
俺も見てるぞ!明日も部活だけど!
369お前名無しだろ:2001/08/26(日) 01:53
漏れも〜(藁
370367:2001/08/26(日) 01:55
死なば諸共だ。正直、仲間がいて嬉しい(藁
371お前名無し!:2001/08/26(日) 01:57
>>370
コテハンじゃなかったけど、初めのころから書き込んでたし。
終わりを見ずに寝られません。
372お前名無しだろ:2001/08/26(日) 02:00
俺もだ!!頑張ろうぜ
373 ◆sVIg2yUM :2001/08/26(日) 02:09
そんな時期じゃないかもだけど・・・・マターリした目で見てください。
あまり急いで書くといい加減になってしまいそうなので・・・・。
374367:2001/08/26(日) 02:11
>>373
マターリこそが今プ板に最もふさわしく、
且つ必要なものだ。大丈夫。
375お前名無しだろ:2001/08/26(日) 02:12
>>373
職人魂マンセー
376お前名無し!:2001/08/26(日) 02:13
>>373
大丈夫です。じっくりやってください。待ってますから。
377367:2001/08/26(日) 02:17
俺は明日(今日)まででも待てる。
つうか、プ板自体がバトロワだからね、今(藁
>>sVIg2yUM
お疲れさん。気休めじゃないけど、すこし休んで鋭気を養ってくれよ(藁
急かすような真似してすまんかった。
378お前名無しだろ:2001/08/26(日) 03:59
さあどうなる?
元子を倒してくれ!
379お前名無しだろ:2001/08/26(日) 05:12
俺が見たバトロワ系の中でノア編第2部が一番好きだ
380お前名無しだろ:2001/08/26 06:00
馬場さんの葬儀以後、元子さんのイメージがこんなに
なるなんて、誰が予想しただろう・・・。
頑張れ、三沢&川田!元子を倒せ!!
381お前名無し!:01/08/26 13:24
あげー
382 ◆sVIg2yUM :01/08/26 15:28
「早く射殺しなさい!」
パニックになった場内を見渡し、元子が兵士に命令する。そしてオロオロする福澤にぶつかりながらそそ
くさとリングを降りてどこかへ身を隠した。
「川田!リングから降りろ!」
三沢が呆然とする川田を怒鳴る。
身を屈めた川田の隣で血飛沫が上がった。戸惑ったような顔で福澤がリングに崩れ落ち、その近くにい
た兵士も流れ弾にあたり倒れ込む。川田は顔が血で汚れるのも構わずに、兵士の落としたマシンガンを
2挺拾い上げ、その一つを三沢に渡してリングを降りた。
「川田、怪我はないか?」
川田を気遣う三沢。しかし、彼の肩からは被弾したと思われる傷があった。
「俺は平気です。それより三沢さん!」
「一発食らっただけだ。お前が大丈夫なら追いかけるぞ。」
川田は深く頷き、追いかけてくる兵士たちにマシンガンを連射しながら三沢と共に出口へ向かった。
383お前名無しだろ:01/08/26 15:34
参加メンバーが少ないからまとまってて面白いね
384 ◆sVIg2yUM :01/08/26 15:44
いくつもの銃弾を浴びたものの、それのどれもが致命傷となることはなく、浅子はリング中央へ立ってい
た。発砲が止み、緊張による静寂が辺りを包む。
リング下では浅子にポイントを合わせた兵士たちの姿。
それらをぐるりと眺めながら、浅子が叫んだ。
「金丸ー!チャンピオン!いつになったら挑戦させてくれるんだよ!」
既に浅子の瞳は何も映していなかった。
聞こえないはずの耳には観客の声援が、そして振り返ると・・・・
『リーダー!』
タッチロープに手をかけながら浅子に向かって腕を伸ばす大森とそれを見守る高山の姿。
『ああ、大森・・・・試合中だったっけな』
あるはずのない左腕を動かしてコーナーの大森にふらふらと歩み寄る。
大森が笑ったような気がした。
リング上の浅子の体が一斉砲火を浴びて踊る。
血煙が視界を塞ぎ、浅子はコーナーの手前で前のめりに崩れ落ちた。流れ出す血液がリングを紅く染め
る。
目配せしながら一人の兵士がリングへ上がり、用心深く倒れた浅子に銃を突き付けながらその体を仰向
けにして様子を伺う。
目が開いていた・・・・まるでなにかを凝視するかのように。
しかし、そこに光りはなく・・・・浅子の息は完全に途絶えていた・・・・

一番生きる事に執着した男の壮絶な最期だった。
385お前名無しだろ:01/08/26 15:44
浅子さんの最後は次回ですか・・・。
386385:01/08/26 15:45
って、めちゃ書きこむタイミング悪かった。
しておくだ…。
387お前名無しだろ:01/08/26 19:55 ID:Ned1bMm.
さよならリーダー!
388お前名無しだろ:01/08/26 20:21 ID:8SzAFytI
リーダーかっこよかったよ!
389お前名無しだろ:01/08/26 20:51 ID:5MpfRQko
ある意味三沢と川田を救ったわけだもんね>浅子さん
390細かい所は目をつぶってちょ ◆sVIg2yUM :01/08/26 21:02 ID:pmhyfPLY
警戒しながら歩き、二人は元子の姿を探した。
見慣れた通路を進みながら三沢がポツリと言った。
「川田、もし俺がいなくなってもお前は一人でやって行けるよな。」
驚いて川田が三沢の顔を覗き込む。
「何言ってるんですか、三沢さん・・・・」
最初は何かの冗談かとも思った。しかし、三沢の目にその色はなかった。
ああ・・・・この人は・・・・
三沢に救われたときから薄々気付いてはいた。
でなければこの”プログラム”に来る事はなかったに違いない。
この戦いが三沢との最後の”タッグ”になるかもしれなかった。
「心配そうな顔すんなって。俺はそう簡単に死なんよ。」
努めて明るく言って川田の肩をポンと叩くが、言い知れない不安が川田の心に巣食っていた。
ズ・・・ズズ・・・・
通路の奥から不気味な音が聞こえた。
何かを引き摺るような・・・・
立ち止まり奥に感覚を集中させる。
大きな黒い人影がこちらへやって来るのが時間が経つにつれて判った。そしてそれが見覚えのある顔だ
と言う事にも。
キマラだ・・・・
しかし攻撃はして来ず、だらりと下がっている両手にも武器の気配はない。
「何か変ですよ、三沢さん」
キマラが近づくにつれて表情が明らかになる。
「ミサワ・・・・カワダ・・・・」
涙を流し、顔を引き攣らせながらキマラが救いを求めるように両手を伸ばす。
「三沢さん・・・・コイツは・・・・!」
キマラの服から覗くいくつかの銅線。そして不自然に盛り上がっている体・・・・
「爆弾抱えていやがる!」
川田が後に下がり思わず叫んだ。
391お前名無しだろ:01/08/26 21:04 ID:TcJ9iQnk
>>390
了解(藁
392 ◆sVIg2yUM :01/08/26 21:06 ID:pmhyfPLY
なんか最初から書きなおしたい気分・・・・
前回のも合わせてHPにウプしようか・・・・
393書き込み禁止されてるんだよね:01/08/26 21:08 ID:TcJ9iQnk
>>392
返事したいんだけどいいスか?
394お前名無しだろ:01/08/26 21:12 ID:bxgSarjk
ウプしてもらったら見に行く。
395お前名無しだろ:01/08/26 21:20 ID:6ndNfVOs
おいらも見にいくッテ。
396 ◆sVIg2yUM :01/08/26 22:28 ID:pmhyfPLY
「モトコガ・・・・モトコガ・・・・タスケテ・・・・ミサワ・・・・カワダ・・・・」
アイツがやったのか!
人間爆弾と化したキマラに対してどうして良いのか判らずに川田はただ近づいて来る巨体を避ける訳で
もなく、呆然と眺めていた。
ピピピ・・・・
目覚し時計のような音がキマラの体・・・・厳密には中の機械らしきものから聞こえて来た。
「ヤバイ・・・・爆発するぞ!」
三沢が叫び、それに呼応するように川田が出口に走り出した。後ではキマラが狂ったように叫んでいた
が、彼を救う事は出来ない。ただ、今は自分の保身しか考えられなかった。
「狭い通路では爆風から逃げるのは難しい。川田、窓を見つけたらすぐ外に出ろ!」
生きるために三沢も必死だった。
「三沢さん!こっち!」
川田が大きなガラス窓を見つけて開こうとしたが、鍵が閉められていた。
「どけ、川田!」
マシンガンが火を噴き、ガラスが砕け散る。
三沢は川田を先に外へ出し、後の様子を見ながら後に続く。
篭ったような爆発音が内部から上がり、その爆音と同時に川田は身を固いアスファルトに投げ出した。
建物からはそんなに離れていない・・・・逸早く伏せた川田の体に三沢が覆い被さった。
次の瞬間、凄まじい風圧が掛かり破壊された壁やガラスの破片などが辺りに降り注いでバラバラと地を
打った。
397 ◆sVIg2yUM :01/08/26 22:28 ID:pmhyfPLY
「大丈夫か、川田」
何度目かの川田の身を案じる言葉。川田はゆっくりと顔を上げて渋い顔をして背中に張りつく三沢を見
上げた。
「三沢さん・・・・!」
川田は急いで三沢の下から抜け出して、その体を助け起こすために背中に手を回す・・・・と、指に何か
が刺さったような小さな痛みが走り、目を向ける。
川田は目を見張った。
「ああ・・・・バレちゃったなぁ・・・・」
三沢は驚く程呑気な声を出したが、その声とは裏腹に三沢の体は傷ついていた。
爆風で飛んできた無数のガラスの破片、割れた鉄板、そして細い鉄の棒などが三沢の背に刺さってい
た・・・・中には体を突き抜けて、尖った先端が三沢の肩から覗いている。川田の指を傷つけたのは三沢
の背に刺さっていたガラスの破片だった。
「三沢さん・・・・もうやめましょうよ・・・・このままじゃ貴方が死んでしまう・・・・」
「俺は大丈夫だ・・・・まだまだ行ける・・・・もう駄目だと思ったら・・・・そこで負けだ」
よいしょ、とわざと声に出して三沢がすっくと立ち上がって一息、溜息をついた。
398お前名無し!:01/08/26 23:00 ID:4HVObSlc
ぶぁあ!社長!
399 ◆sVIg2yUM :01/08/27 00:13 ID:A3pQpgR6
「ご苦労さま。貴方達が探していたのは私かしら?」
上ずった初老の女の声がぼうっとしていた三沢の意識を一気に覚醒させた。
川田も声のする方へ視線を向け、そこに立っている女を激しい眼差しで睨んだ。
「流石の三沢君も満身創痍みたいね。動く爆弾、お気に召したかしら?」
二人の兵士を脇に引き連れ、自らもオートマチックの銃を持ちながらその女・・・・元子は高らかな笑い声
を上げ、見下すような目つきをして三沢と川田から少し離れた場所に立っていた。
兵士の銃は真っ直ぐに三沢と川田をそれぞれに狙っている。
「川田君、貴方ウチの社員じゃないの?三沢君から離れるならば健闘に免じて帰る場所を用意してあげ
るわ。勿論、選手としてね」
「ふざけるな。人の命を何だと思ってるんだ・・・・アンタは狂ってる・・・・!」
「あら、折角の娯楽をメチャクチャにした貴方に言われたくないわ。テレビも入っていたのに・・・・土屋さ
ん、頭抱えてたわよ。」
何を言っているんだ・・・・川田は元子の存在が気味悪くなった。
少なくとも馬場が生きていたときにはこんな事はなかった・・・・大きな権力を手に入れた時から・・・・全て
が狂いはじめてしまったのだ・・・・
400お前名無し!:01/08/27 00:19 ID:6PyMqMjs
ドキドキハラハラ
401お前名無し!:01/08/27 00:21 ID:6PyMqMjs
正直、400ゲットだった。
402お前名無しだろ:01/08/27 18:22 ID:GPMwCdCI
早く先が読みたいけど、終わってしまうのは嫌だ。
二律背反に苦悩する今日この頃。
403お前名無しだろ:01/08/27 18:33 ID:n.ed/SJU
三沢の最後の武器はエルボーにしてほしい!!!
404お前名無しだろ:01/08/27 20:54 ID:wzQAP57.
>>400 >>401
正直、おめでとー!
続きを楽しみにしましょう。
405 ◆sVIg2yUM :01/08/27 21:23 ID:Fr9X0d4A
三沢が元子に向かって一歩踏み出した。
脇に控えた兵士が三沢に銃口を集中させた。
「ビビってんじゃねぇよ。若造が。俺が怖いんだろ?撃てるもんなら撃ってみろよ!」
威圧感のある三沢の視線を受けて、明らかに兵士に動揺が走る。
「撃ちなさい!早く!」
元子がヒステリックに叫んだ。しかし、銃を構えた二人の男は三沢の圧倒的な殺気に制されて、引き金に
掛かる指を小刻みに震わせているだけだった。
たった一つのチャンスに川田が素早く動いた。
力強く地面を蹴り、間合いを一気に詰める。
驚きの声を上げる暇さえなかった。
雄叫びを上げながら呆然としている兵士の一人の顔面を蹴り上げ、追い討ちするように倒れ込んだ頭部
にサッカーボールキックを見舞う。
三沢もまた、川田と同時に動いていた。傷ついた体を奮い立たせ、渾身のエルボーを顎の下に叩き込
む。
周りに起こっている展開の速さについて行けず、元子はただ、倒れる兵士を交互に見ながら呆然として
いた。
三沢がゆっくりと元子へ歩み寄る。
「み・・・・三沢君・・・・ちょっと待って頂戴」
そう言いながらも手にした銃を三沢の胸に突き付ける元子の細い腕を強く掴み上げ、じっと恐怖に慄く顔
を殺気を含んだ目で凝視した。
406 ◆sVIg2yUM :01/08/27 21:24 ID:Fr9X0d4A
「・・・・あんただけは許せない。俺の目の前で・・・・そして俺の知らない所で死んだみんなのためにも!」
ギリギリと掴んだ元子の腕が軋み、深い皺が刻まれた口から甲高い悲鳴が上がった。
手を掴んだまま元子の後ろに回り込み、炎の勢いが増して所々で爆発がおこっている武道館へ一歩一
歩近づく。
「三沢さん!何をするつもりですか!?」
川田の声に三沢がゆっくりと振り返った。
「川田・・・・今まで世話になったな。・・・・これからも頑張れよ・・・・そして、たまにで良いから俺達の事を思
い出してくれ。俺はこれからみんなの所に行くよ。」
三沢はこの時初めて死に行く者・・・・小川やハンセンの気持ちが判った。
不思議な充実感。死の恐怖など微塵もない。・・・・ただ・・・・何故かほんの少しだけ悲しかった。
燃え盛る炎の明かりに照らされて長い影が地面に伸びている。
「じゃあな、川田。」
酒を飲みに行った帰りの別れ際に言うような・・・・そんな平凡な口調で三沢は微笑んだ。
そして・・・・何度も死闘を繰り広げた武道館に、仲間の元に三沢は”帰って”行った。

三沢と元子を飲みこんだ炎が、ごうっと一瞬唸りを上げた。
407お前名無し!:01/08/27 21:26 ID:vLw4Yt3E
いやぁあぁぁぁぁあああぁああああぁああぁあ!!!
三沢ぁあああああぁああ!!!!
408お前名無しだろ:01/08/27 21:27 ID:dWAZYozo
三沢あああああ!!なんで・・・・なんで・・・・
409名無し三沢:01/08/27 21:27 ID:vpwN8hzA
410お前名無しだろ:01/08/27 21:27 ID:dWAZYozo
死ぬなんて・・・・小川・・・・小川の気持ちは!?
411お前名無しだろ:01/08/27 21:28 ID:TQvzRVGo
>>407
いつからromってた!名無し!(藁
412 ◆sVIg2yUM :01/08/27 21:30 ID:Fr9X0d4A
川田は遠くから天を照らす武道館を暫くじっと見詰めていた。
ぽつりぽつりと暗い空から大粒の雨が落ちて来たが、川田は気にする事もない。
今まで一体、何があったのだろう・・・・もしかしたら夢かもしれない。家に帰って三沢さんに電話したら、少
し不機嫌な声で『なんだよ、お前』って言って、その後に『元気か?』って・・・・。
田上も小橋も小川も・・・・生意気な秋山も・・・・みんなもうどこにもいないんだ。

じきに夜が明ける。
川田は戻る場所も判らないままに、ゆっくりとその場を離れた。

END
413お前名無し!:01/08/27 21:31 ID:vLw4Yt3E
>>411
実は初めからロムってました。最初の方に書き込んでるのは
ほとんど俺だと思います。>>42,>>55なんかは俺です。
414 ◆sVIg2yUM :01/08/27 21:31 ID:Fr9X0d4A
終わりました・・・・ここまで見て頂いてありがとうございます。
色々不備があるので、そこを修正+付け足しして後日HTMLでウプします。
415お前名無しだろ:01/08/27 21:32 ID:dWAZYozo
・・・・・川田はまた一人ぼっちになっちゃうんですか!?(涙
悲しいっすよおおおお!!!
作者さん・・・・お疲れ様です・・・
416お前名無し!:01/08/27 21:33 ID:vLw4Yt3E
sVIg2yUMさんお疲れ様でした〜。
ほんとに素晴らしかったです。感動をありがとう!
ただ・・・三沢は死んじゃダメだよ〜(w
417お前名無しだろ:01/08/27 21:34 ID:TQvzRVGo
>>413
いや違うよ、今日の話。
今日だけじゃないけどレス早くない?(藁

・・実は俺もromってたのがバレバレ。
このラストには俺は納得したい。三沢・・三沢らしい。
作者には心からありがとうと言いたい。
418お前名無しだろ:01/08/27 21:34 ID:Kac9Cqdo
あぁ、終わってしまった。社長、カッコ良過ぎるよ(号泣)。
作者さん、お疲れさまでした。正直、続編ってことで期待してなかったんですけど(失礼)
前作に負けないくらい感動させて頂きました。名作っス。

やっぱりノアはいいなぁ……。
419お前名無しだろ:01/08/27 21:36 ID:dWAZYozo
1といい2といい最高でした!!
両方通じてのベストシーンはやっぱり小川の死かな?
2は三沢さんの男気がもう・・・・ついていきます!!社長!!
420お前名無し!:01/08/27 21:36 ID:vLw4Yt3E
>>417
あ、今日の話ですか。今繋いだばっかりですよ。
オアシス行って情報収集して、プ板に来たらこのスレがあがってたんで。
レス速いのはなんでだろう・・・。タイミングがいいのかな。
421お前名無しだろ:01/08/27 21:37 ID:TQvzRVGo
>>414
ウプに期待。
422お前名無しだろ:01/08/27 21:38 ID:dWAZYozo
いやあ・・・浅子さんのワルっぷりもよかったなあ・・・
多聞さんもよかったし・・・・小橋も・・・志賀君も・・・
423お前名無しだろ:01/08/27 21:40 ID:TQvzRVGo
>>420
名無し!のノア鼻の効きは感動に値する(藁
こんな社長の下で仕事が出来たら幸せだよな・・
ましてや好きな仕事ならさ。

ごちゃごちゃ書かんと俺はもう逝くって!
424お前名無し!:01/08/27 21:44 ID:vLw4Yt3E
>>423
いやいや。どうもどうも。
まったくいい社長です。この社長は。ねぇ(w
頑張りますよ。じゃ、いつかまた。
425 ◆sVIg2yUM :01/08/27 21:44 ID:Fr9X0d4A
ところで・・・・このスレはもう終わりでしょうか??
426お前名無しだろ:01/08/27 21:45 ID:KdbQGOng
403です。
感動した!三沢サイコー!!

2の作者さんの愛を感じた!!
1もパクリとは言えよかったし。
427お前名無しだろ:01/08/27 21:48 ID:/QJ9JEtQ
元子を道連れかあ。三沢さんならやりかねない・・・
と言うか、三沢さんにしか出来ないね・・・(涙
428お前名無しだろ:01/08/27 21:54 ID:0r0sLmGU
三沢はきっと生きてるよ。


川田にはフランスで絵を描いてる馬場さんの所で
ひっそりと暮らしてる男に会いに言って欲しい。
気難しいおとこだから漫画本の手土産を忘れずに。
429お前名無しだろ:01/08/27 21:55 ID:dWAZYozo
バキじゃねえか(笑)泣き笑いしちまうよ
430お前名無しだろ:01/08/27 21:55 ID:/QJ9JEtQ
>>428
刃牙外伝!(w
431お前名無しだろ:01/08/27 21:56 ID:dWAZYozo
このスレでよりノアオタになったのは俺だけじゃねえだろ?
432お前名無しだろ:01/08/27 21:58 ID:/QJ9JEtQ
>>431
多分あななだけじゃないと思われます(w
433お前名無しだろ:01/08/27 21:59 ID:/QJ9JEtQ
あななって何だろ(汗
正直、ラストはちょっと悲しかったけどなんとなく納得。
駄目だ〜取り乱してるよ〜〜
434名無し三沢:01/08/27 22:03 ID:vpwN8hzA
新日バトルロワイヤルはこのまま内部で殺し合いをして
猪木はおろか佐山すら倒せず同士打ちになりそう
435お前名無しだろ:01/08/27 22:04 ID:i/lDqXWQ
>>434
俺そっちは見てないけど読んで見たら
スレはあるよ
436お前名無しだろ:01/08/27 22:08 ID:y1pdwvOA
はぁ〜…作家さん、お疲れさまでした〜!!
437 ◆sVIg2yUM :01/08/27 22:16 ID:Fr9X0d4A
新日は突っ込み厳しいですね〜・・・・でも完成度を追求するにはそれも必要かも。
まとめてウプする時にはどうにかしたい・・・・。
佐野や彰俊も追加予定。あと誰かいますか?
438お前名無しだろ:01/08/27 22:18 ID:TnVsRJVQ
むしろ、無理にキャラ追加はしないほうがいい気がするんですが・・・
現状で十分いい作品なので、無理に詰めようとすると変になる可能性高いし。
439お前名無しだろ:01/08/27 22:21 ID:V7JFIpEo
>>437
438に同意。このままでも良いです。
ただ、佐野・彰俊も書いていただけるなら(予定があるなら)
それも読みたいです。
440 ◆sVIg2yUM :01/08/27 22:24 ID:Fr9X0d4A
>>438
なるほど・・・まあ、できればと言う事で、ざっと読みなおして不自然なようだったらやめます。
441お前名無しだろ:01/08/27 22:25 ID:i/lDqXWQ
まあ、元が面白かったので下手に人数増やすのは
難しいでしょうねえ…。
でも、ケアの参戦は…、我侭か…。
ところで、馳って生きてるの?
442お前名無しだろ:01/08/27 22:27 ID:TnVsRJVQ
まぁ、個人的に彰俊は渋い氏に方ならともかく、無残な氏に方はしてほしくないので(笑
443 ◆sVIg2yUM :01/08/27 22:29 ID:Fr9X0d4A
>>441
実は「アレ?馳は?」と自分でも途中で気付いて、三沢の最期あたりで出そうかと思ったのですが、
ややこしくなるのでやめました。HTML版ではそこのところもちゃんと書きたいです。
土屋とか。

あの・・・・第三弾とか、誰か書かれませんか?密かに期待しているのですが・・・・。
444お前名無しだろ:01/08/27 23:12 ID:YXDGKXso
作者さんお疲れ様でした。
最後は本当、三沢さんらしくって・・・
お気に入りに登録です!
445お前名無しだろ:01/08/27 23:17 ID:YXDGKXso
>>444
何気にゾロメゲットだった。わーい。
446お前名無しだろ:01/08/28 00:11 ID:0SeSdxew
HTML,期待してます!!
447お前名無しだろ:01/08/28 00:16 ID:0SeSdxew
もし追加するなら
ケア、スミス、ハインズ、バートンの元子四天王
それに参謀の渕・馳
などとの武道館決戦とか見たいかな
vsキマラのように

今のでも十分不満ないですが、出きるだけ多くの作品が見たいので
448お前名無しだろ:01/08/28 07:33 ID:HXACSbWA
おれはキラーは死神を崇拝するアキトシだと思っていたが・・・
浅子さんだったとはしてやられた!!
449お前名無しだろ:01/08/28 07:36 ID:no/G9UmU
一部は感動&最後がカタルシスで最高だったが、
二部も違った魅力で面白かった。
両職人さんサンクス
450お前名無しだろ:01/08/28 20:41 ID:fC91tMCc
age
451お前名無しだろ:01/08/29 06:32 ID:MZzB7pKY
ウプ期待age
452お前名無しだろ:01/08/29 07:20 ID:S5X02T5I
第三弾キボンヌage
453お前名無しだろ:01/08/29 14:32 ID:ciTCVGPM
最高。
ついでにバトロワ本編も読みたくなった(藁
映画も見たくなった(藁
ちょっとTUTAYAまで逝ってきます。
454お前名無しだろ:01/08/29 21:54 ID:7kyDTpEY
>>453
逝ってらっしゃい!
455お前名無しだろ:01/08/30 00:56 ID:TC18qeQ2
何とか形になりました。
取り合えずは第1回のプログラムをまとめてウプしました。
その際、名前や台詞(女言葉が残ってたりした個所)などは訂正させてもらいました。
その他、間違ってたりした所がありましたらお知らせください。

http://www.geocities.co.jp/Athlete-Samos/1912/noah_br.html
456お前名無し!:01/08/30 00:59 ID:pCrB8AAk
俺は昨日バトルロワイヤル借りてきた(w
さっき見たけどこっちのほうが感動した(w
457お前名無しだろ:01/08/31 00:15 ID:rLSUYgcE
続き…は…?
458お前名無しだろ:01/08/31 01:15 ID:dKybncfw
これ以上続けようがないのでは。どうせなら、
UWFバトルロワイヤル(主演 田村潔司)とか、
インディーバトルロワイヤル(主演 ハヤブサ)とか。
459お前名無しだろ:01/08/31 10:34 ID:dLH3gQ4Q
>457
永源、ラッシャー、百田、館長、彰俊、佐野、スコーピオぐらいしか残ってないぞ。
出来ないだろう、これじゃ。
460お前名無しだろ:01/08/31 14:12 ID:fFB7wqds
できる!
461お前名無しだろ:01/09/01 01:34 ID:8HwWYBgs
ファミ悪で殺し合いか・・・
462お前名無しだろ:01/09/01 12:05 ID:wo1g1Mnw
すっごい感動!
463お前名無しだろ:01/09/01 12:06 ID:l4FlriCc
○禁
464お前名無しだろ:01/09/01 12:14 ID:WtScfxhA
なんでみんな大ちゃんに触れないんだ?
わざとか?
465お前名無しだろ:01/09/01 12:58 ID:QS8aojKM
武藤VS高田戦に匹敵する興奮とFMW以上のエンターテイメントを見せてくれた。
http://www2.makani.to/akutoku/upload/dat/999279685.jpg
466お前名無しだろ:01/09/01 13:50 ID:EQou9CcA
>>464
池田なら2部の最初で死んだよ
467お前名無しだろ:01/09/01 19:50 ID:WtScfxhA
>>466
あら、本当だ。
正直、スマンカッタ。
468お前名無しだろ:01/09/01 22:30 ID:W1KjkD8g
だれが一番らしかったと思う?
マサオと菊地はキャラが出てたなぁ。
469お前名無しだろ:01/09/01 22:58 ID:EQou9CcA
>>468
菊地って自殺じゃなかったっけ。
らしいか?
俺は大森だな。
470お前名無しだろ:01/09/01 23:23 ID:zMS0S2rQ
ありがとう!
めちゃくちゃ面白かったよ〜〜〜〜〜〜!
471447
>>◆sVIg2yUM さん
HPみました。いいですねえ、感動がよみがえります。
若干ストーリーも加わってるし
これなら元子四天王のストーリーもでるんでしょうか、期待です。

ところでHPにBBSつけたらどうですか?