9/13(木) 担当医が電話で胃ガンを告知。
10/ 5(金) 手術。胃の半分を切除。約3週間入院。
10/30(火) 退院から間もなく、IGF記者会見に出席。報道陣に胃ガン手術を公表。
>>191 11/ 1(木) 取材
11/14(水) 記事掲載『週刊プロレス』発売
【11/14(水)発売 週刊プロレス 2007/11/28号】
「オレは"胃ガン退職"」。藤原組長が語るガン体験――。
どこの団体でもいいので、最後の花道を作れませんか?
現在、制作中の別冊の取材で藤原喜明選手(以下、組長)の事務所を訪れたのは、11月1日のことだった。
この2日前にIGFの会見に出席した組長は、胃ガン手術をおこなったことを告白。正直なところ、会見以前から「入院中らしい」という噂は耳にしており、取材も諦めていたところ。【中略】
早速、会見の翌日に事務所に電話をかけると、何度目かのコールののち、組長みずから電話口に出た。その声はとくに弱々しいということもなく、いままで聞いてきた組長の声と変わりはない。
取材の用件を伝えると、あっさりと「じゃあ、明日で」と返答。というわけで、翌1日に取材の運びとなった。
「まあ、ゆっくりしようや」
目の前に現れた組長は、やつれた印象もなく、はつらつとしていた。声も張りがあり、想像以上に元気な様子だった。イスに腰掛けながら、とくにレコーダーを回すことなく、いわば雑談。そのぶんリラックスした雰囲気で、組長はみずからの"ガン体験"について語り出した。
ガンの発見は、偶然だった。以前から痛めていた右ヒジの手術をおこなった組長は、抜糸も済んでいない段階で試合をしてしまう。ヒジは腫れ上がり、慌てて病院へ行くことになったが、そのときついでに「腸と胃の検査もしてみるか」と思ったのが、不幸中の幸いとなる。
「腸はきれいなもんだったよ。でも、胃の検査をしたときに、いまになって思えば医者はその時点で気づいてたんだろうけど、本当に小さい突起しているものがあったんだよ。そこから何回か検査をしていったんだよな」
そして運命のときを迎える。9月13日、事務所の電話が鳴り響き受話器を上げると、声の主は担当医だった。
「残念なご報告が、って言うわけだよ。それで『胃ガンです』って言われて、その瞬間は冗談でもなんでもなく、目の前がガーン!ってなったよ。それで電話を切ってから、いろいろと考えたんだよな。東京に上京してきて、あんなこともあった、こんなこともあったなぁって。
改めて考えると、けっこういい人生だったなぁって。もう、いいかもなって。そう思ったら気が楽になったんだよな。
よく出前に来るオヤジにも『オレ、胃ガンだよ』って言ったら、そのオヤジが上着をまくり出して『オレもだよ』と手術痕を見せたんだよ! なんだ、けっこう周りにいるんじゃねえかって思ったら、それでまた気が楽になった(苦笑)」
プロレス関係者には数人だけガンであることを告げていた。そのなかでアントニオ猪木氏には、たまたま電話が掛かってきたときに、話をしたという。
「猪木さんから『元気か?』って聞かれたけど、元気ですって言うわけにもいかねえから、『じつはガンです』と正直に言ったんだよ。そしたら猪木さんも声色が変わって『なに?(部位は)どこだ?』って。
それで『胃ガンです。でも、(発見が早くて)ラッキーでした』って言ったら、猪木さんは『末期か』って(苦笑)。オレは『いや末期じゃなくて、ラッキーです』って。なんだかなぁ(苦笑)。実際は早期発見でもなかったんだけどな」
【中略】10月5日におこなった手術は3時間ほどに及び、組長は手術中の様子を頼み込んでカメラで撮影してもらった。
わたしも写真を見せてもらったが、切り取られた臓器や、腹部を切り開いたところなど、生々しいモノばかり。【中略】
手術後、目が覚めると、強い痛みが襲ってきた。通常であれば痛み止めなどを打つところだが、組長は我慢した。無理して我慢したわけではなく、自然と我慢できた。だが3日後ぐらいにどうしても我慢できずに、ようやくナースコールのボタンを押した。
「オレは優秀な患者だったと思うよ。だって、全くナースコールを押さねえから(苦笑)。そのときはどうしても我慢できなかったから注射を打ってもらおうと思ったんだけど、やってきた看護師さんの第一声が『やっと、その気になりましたか』だからな(苦笑)。
全然、痛み止めを打ってくれって言わないから、なかば呆れてたのかな(笑)。でも、痛み止めを打ったおかげで、翌日からはもう体は好調だったよ。病院中を歩き回って、『あんまり遠くまで行かないでくださいよ!』なんて、看護師さんに言われたりしてな(苦笑)」
元気いっぱいのまま、入院期間は3週間ほどで終わり、退院して間もなくIGFの会見に出席。会見で「ガン告白」したのも組長みずからの意思というより、「猪木さんが喋っちゃった」ゆえに、公になってしまった。
結果、翌日に新聞各紙で報道されてから、電話が鳴り止まなかったという。
「前田(日明)は『オレ、藤原さんが死んだら…』とか言うから、『オレはまだ死んでねえよ!』って言ってやったよ(苦笑)。鈴木(みのる)も『なんて言っていいかわからないですけど…』なんてよ、けっこう泣かせること言ってくれて。アイツは本当に口が達者だな(笑)。
まあでも、みんな優しいヤツらばかりだよ」
取材中の組長はコーヒーを飲み、クッキーなどを口にしていた。胃の半分を切除しており、けっして体内にいいとは思えないのだが、聞けば前日には「赤ワインを飲んだ」ともいう。【中略】
最後に気になるのは、今後の試合出場について。本人は「もう無理だろうな。オレは"胃ガン退職"だ(笑)」と冗談めかして言っていた【後略】
[写真キャプション]▲本来の取材内容とは関係なかったが、自身のガン体験についてじっくりと語ってくれた藤原組長。ちなみに腹部の手術痕は約18cmにも及んでいた
「当時制作中の別冊」「本来の取材内容」は、12/17(月)発売の『新生UWF証言集』と思われる。
http://www.sportsclick.jp/magazine/pro_wrestling/080115b/