拝啓 朝日新聞 様
私は、ここ数十年来の朝日新聞の愛読者です。
どうか最後まで読んでください。
貴社の(11月)27日付夕刊の「在日女性、点滴薬を隠し北朝鮮へ」の記事に、深い悲しみをもって抗議します。
なぜこのようなことが、こんなに大きなニュースになるのでしょうか。
いま、世間は「朝鮮の核問題」で大騒ぎになっています。というより、マスコミが意図的に煽っているという方が
正しいでしょう。そんな中に朝日新聞も入るのでしょうか。しかも今回の記事の内容は、警察当局の発表を
そのまま垂れ流したとしか思えないものです。まるでその女性が犯罪者であるかのような「女」という表現。
こんなものがフリーパスで掲載されてしまうのですか。この記事が社会的にどのような影響を与えるかということは
十分承知のうえでのことでしょう。
日本政府はいま、「北朝鮮脅威」を煽りながら憲法改悪への道を突き進んでいます。戦後歴代自民党政権が
なしえなかったことを、ここ数年で実現しました。その背景にはマスコミの犯罪ともいうべき動きがあったのでは
ないでしょうか。この間の記事を読むとき、「朝日までも」という嘆きを感じてきました。とりわけ今回の記事は
看過できないと思いました。
私は、先の「NHKの番組改ざん問題」で、貴社に、そしてNHKの長井暁記者に激励の文書をお送りし、NHKに
抗議文を送りました。新聞を作っておられる記者のみなさん、戦前、マスコミが、大阪朝日が犯した過ちを
くり返さないよう、良心をもってぎりぎりのところでがんばってください。
大阪にはとりわけ在日朝鮮人が多住されています。先日来、朝鮮学校創立60周年のお祝いや子どもたちの
文化発表を観覧する機会があり、その美しい歌声や音色、誇らしい姿に、「あなたたちがこの日本にいてくれて、
ほんとにありがとう」という気持ちになりました。朝日新聞がこのような場をもっと取材し、掲載していただければ
状況は少しずつ変わっていくのではないでしょうか。排他、排外ではなく、違いを豊かさに、朝日新聞が、日本と
韓国・朝鮮の友好の橋渡しをしてくださるよう切にお願いします。
2006年11月30日
(大阪府・永久睦子)
[朝鮮新報 2006.12.4]
http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2006/02/0602j1204-00003.htm