村上春樹風にプロレスを語るスレッド

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1お前名無しだろ
ちょっと軟派にプロレスを語ろう、
2お前名無しだろ:2006/10/18(水) 01:12:39 ID:dFPVVW7SO
やだ
3お前名無しだろ:2006/10/18(水) 01:13:30 ID:/6KyX2ev0
>>2
そこを何とかお願いするぜ!!
4お前名無しだろ:2006/10/18(水) 01:48:20 ID:YF1F26gd0
>>3
「何でそこで春樹風に返さないの?池沼?」
無意味で馬鹿馬鹿しい。どうかしてる。
もう2度と>>1にスレッドを建てる資格なんて無いんだ。
5お前名無しだろ:2006/10/18(水) 01:51:23 ID:2UxMIaHRO
「また立てたの?」と彼女は言った。
「あなたはいつもそうなのね。スレッドを立てるだけ立てて、
あとはほったらかし。うんざりするわ。他にすることはないの?」
そしてポケットの中から煙草を取り出して、火をつけた。
唇から吐き出された煙は秋山の頭頂部のように薄くなり、やがて消える。
僕は脱水して負けた天山みたいにみじめな気持ちになってしまった。

「やれやれ」
6三沢光晴愛好会 ◆t33mBbKpxE :2006/10/18(水) 02:25:01 ID:xKZ89tLRO
本を読むのに疲れ、ふとビーチボーイズのレコードをかけた時、電話のベルが鳴った。
聞き覚えのある男の声はビルエバンスのピアノの音色のように高かった。
「ああ、永田君?谷川だけど。大晦日に試合してほしいんだけど、どう?」
「随分急な話ですね。まあ、予定はないですけど」
「受けてくれのね!もちろんファイトマネーははずんどくわ。ちなみに相手はノゲイラだけど、あなたなら大丈夫よね。じゃあね、また連絡する」
「ちょっと待ってください、まだ・・・」
電話はもう切れていて電子音だけが空しく残っていた。
「やれやれ」
7お前名無しだろ:2006/10/18(水) 02:34:56 ID:ekkBNYZ10
ピーク、とカシンは思った。そんなものはどこにもなかった。
振り返ってみるとそれはプロレスですらないような気がする。
少し起伏はあった。中西を褒め上げたり貶したりもした。
でもそれだけだった。ほとんど何もしていない。
石沢と別人の振りをしたり、世界タッグのベルトを持ち逃げしたりもした。
でも何も残っていない。

「やれやれ」
8お前名無しだろ:2006/10/18(水) 03:18:08 ID:4DsQgksvO
あくまで便宜的に長州を御小とするんだ。
オーケイ?
長州は御小。便宜的にね
これで少しは考え易くなっただろう?
9お前名無しだろ :2006/10/18(水) 12:44:30 ID:KF4h9ZgL0
>>1は何が言いたいの?
10お前名無しだろ:2006/10/18(水) 18:20:01 ID:W5hVNA/R0
よく分からないな。
11お前名無しだろ:2006/10/18(水) 20:01:44 ID:AKmh9o2KO
村上龍じゃダメ?
12お前名無しだろ:2006/10/18(水) 20:18:09 ID:RYEeqNwi0
>>11
「僕は別にかまわないよ」
そう、かまわない。僕がかまったところで、良スレになるわけではない。
村上龍で良スレになるなら、いったい誰が反対なんかするだろう?
きっと世界の裏側のセニョリータだって満面の笑顔で賛成してくれるはずだ。

そして幸か不幸か僕にセニョリータの笑顔を否定する権利はないのだ。
13お前名無しだろ:2006/10/18(水) 23:54:48 ID:ekkBNYZ10
「そんなに簡単にゲノムは開催出来ないのよ」と寛子は噛んで含めるように言った。

「君は何も知らないんだ」と僕は言った。「この業界では何でも起こりうるんだよ。
何でも」
―――そう、御小が戻って来たときのように。
でも僕はそれを口には出さなかった。
14お前名無しだろ:2006/10/19(木) 04:16:16 ID:WqVkGlasO
「あたしはなんでも知ってるんでさ、旦那」
上井は眼鏡をはずし、左手でそれを弄びながら続けた。
「きっと旦那は『駅』にだって来てくれるさね。だって旦那は本当はあの方を殴りたいんだ。これはあたしの勘ですがね」
ぱちん。
僕は最後の爪を灰皿に落とし、爪切りを棚にきちんと戻してこう告げた。
「君がなんで僕のところに来たのか、申し訳ないんだけど僕にはさっぱり解らない」
上井はちょっとびっくりしたようにこちらを向いた。
15お前名無しだろ:2006/10/19(木) 06:46:54 ID:8yP8jhgsO
面白い!
16お前名無しだろ:2006/10/19(木) 19:08:00 ID:sLbWxRJo0
名前はよく耳にしていた。僕の知る限り評判はすこぶるいい。
世界最強とかガチとか、オタクが考えつくありったけの賞賛が彼に贈られている。
その本人が僕の目の前にいた。
「おはようございます、三沢光晴です」
思ったより恰幅のいい三沢さんは僕の目をみながらそう言った。
「どうも」
気の利いたセリフがなにも思いつかなかったので、とりあえずそう返した。
僕は昨日、いつものように缶ビールを三缶ほど空にして、カナッペで小腹を満たし、
ハンフリー・ボガードの洋画を途中まで観て、寝た。
そして目が覚めたら、エプロン姿の三沢さんが朝食をつくって、コーヒーを沸かしていたというわけだ。
こういう時に朝食をつくってくれるのは可愛い女の子と相場が決まっているものじゃないだろうか?
僕はぼんやりした頭でぼんやりと考えていた。
これは夢なのかな?
そう考えて見たが、どうやら現実らしい。
僕はここで喜ぶべきなのかな? 三沢さんに尋ねようと思って、やめた。
そのぐらいは自分で決めるべきだ。それが自分の人生に対する責任というものだろう。
そして僕はこの現実を喜ぶことに決めた。
「三沢さん、いい朝だね」
僕は笑顔で声をかけた。
こうして僕のある一日が始まった。


17お前名無しだろ:2006/10/20(金) 04:16:12 ID:zSwGoxwLO
「ねえ、あれ見て。図書館の向こう」
フミが指した先には、古びた納屋がぼんやりと光っている。
「どうかした?」
僕が追いかけて尋ねると、くすくすと笑いながらフミが教えてくれた。
「あそこには世界の終わりの金網があるのよ」
「金網?」
「そう、力たちが支えていたはずなんだけど」

18お前名無しだろ:2006/10/20(金) 20:20:41 ID:QBmFEk400
「リキ?」
擦れた記憶をたぐりながら僕は問い返した。
「リキじゃない。石井ちゃんたちだよ。リキはなにもしなかった。」
あの日、リキは本当になにもしないまま会場から消えた。
倒れかけた金網を若手が支え、ケンスキーが手を骨折し、中島くんが片ヤオのなんちゃってVTで勝利を挙げ、伝説となったあの日。
会場には、場違いな家族連れと老人が多くいたのを覚えている。
「そうだったかしら」
フミは視線を落として言った。
「そういえばそうね。あたしはなぜリキの名前を出したのかしら?」
「誰にでも間違いはあるさ」
僕は当たり前の言葉を返した。
「これってフロイト的な分析をするとあたしがリキを意識しているってことになるの?」
フミの目はただの冗談ではなく、本気で言っているように見えた。
「あるいはね」
「でもその前に」僕はゆっくりと言葉をつなげた「ここは春樹風にプロレスを語るスレなんだけど」
19羊をめぐる冒険:2006/10/20(金) 21:15:31 ID:ZLjhEooe0
「キーポイントはヤオなんだよ。」と永田さんは言った。
「すべてはそこから始まっているんだ。きっとヤオの必要性を格闘家は理解できないよ。」
「興行にヤオはつきものだ。」
「一般論だよ。」といって永田さんは何度かレガースの羽をさわった。
「一般論をいくら並べても人はどこにも行けない。俺は今プロレスの話をしてるんだ。」
ミルコは黙った。
20羊をめぐる冒険:2006/10/20(金) 21:32:12 ID:ZLjhEooe0
「ヤオというのは体に染み付いていくものなんだ。まるでダンスみたいにさ。
俺は黒パンのころからずっとそれをかんじ続けていたんだよ。だからいつも
苛立っていた。自分のアマの技術と顔が確実に腐っていくというのが、またそれを
本人がかんじ続けるというのがどういうことか、君には分かるか?」
ミルコは毛布にくるまったまま黙っていた。
「たぶん君には分からないだろうな。」と永田さんは続けた。
「君はガチ一筋だったからね。ともかくそれがヤオなんだ。プロレスというのは
ヤオ抜きでは成立しないんだ。どれだけ分かっていても新日がヤオをなくすことは
できないんだ。なにかの拍子に消えてしまうものでもない。どんどんハイスパートに
なっていくだけさ。」

21羊をめぐる冒険:2006/10/20(金) 21:47:53 ID:ZLjhEooe0
「なにがそんなに腐っていくんだ?」
「全てだよ。性格、ガチの実力、そして俺の顔そのもの。」
ミルコは鼻で笑った。今度もうまく笑うことができた。
「だってそんなことを言い出せばPにもKにもブサイクはいるぜ。」
「一般論はよそう。さっきも言ったようにさ。もちろんどんな団体にもブサイクはいる。
しかし本当のブサイクというのは本当の二枚目と同じくらい稀なものなんだ。
たえまなく進化していくブサイクというものを君は理解できないんだ。
そしてそんなブサイクがエースの団体が実際に世の中に存在するのさ。
なにもかもを一般論でかたずけることはできない。」
ミルコは黙っていた。
22お前名無しだろ:2006/10/21(土) 16:23:47 ID:0nT73vb+0
そういえば世界の終わりと、、、、に元プロレスラーが
でてたね。
あんまりTV見ない村上は意外とプロレスをガチだと思っているのかも。
23お前名無しだろ:2006/10/21(土) 17:18:19 ID:gqo535Tx0
司馬スレほどの作品は出てこなさそうだな。
やっぱり向こうの方が平均年齢高そうだしな。
24お前名無しだろ:2006/10/22(日) 10:37:09 ID:HI5VqLD5O
「そこには何かがあるわけじゃないんだ。あるわけないんだけど、リングに立つと自然に手が動くのさ、例えばこんな風にね」
永田さんはそう言って吊り革をつかむ方とは逆の手で敬礼をした。
敬礼?そう。あの、軍隊式の敬礼だ。
真夏日のよく冷えた(キーンと冷えたビール倉庫みたいだ)バスの中の温度がさらに下がったような気がした。
それでも僕は永田さんの事が、わりに好きだと思う。
25お前名無しだろ:2006/10/22(日) 22:46:42 ID:/h48fiLp0
>>23
「作家自身の作品数が全然違うわよ」ユミヨシさんはそう言った。
「彼の文体は作り物なの。エッセーとかを素で書けば、小説とは全く違う作家だし」

「そう」僕はスタン・ゲッツの『言い出しかねて』の演奏をなぞるように静かに言った。
「村上スレと司馬スレは全く別のモノなんだよ。彼は全然わかっていないんだ」
26お前名無しだろ:2006/10/23(月) 09:52:28 ID:cQa+Yr5E0
「プロレスは八百長だね。」
と僕は三日ぶりのニコチンを肺に流し込みながら答えた。
「ではノワはどうです?」
「ノワは、、、ガチ、かな。」
「イエスかノーで答えてください。」
「オーケー、分かった。ノワだけはガチ。」
「ではノワと他のプロレスの違いはなんですか?」
「プロレスはアマチュアに対するアンチテーゼだね。ノワは三沢さんを軸とした
価値転換だ。」
と僕は口からでまかせを言った。そういうのは昔から得意なのだ。
「なるほど、アンチテーゼはヤオだが、価値転換はガチ、だと。」
「アゴを認めだすときりがないからさ。」
「お客さん、インテリですね。」
「ははは、三年もロムってたからね。」
27お前名無しだろ:2006/10/24(火) 01:09:29 ID:hjDfgO5nO
「結局の所、そこに立つと自然に手が動くのさ」
そう笑って永田さんは片方の手で敬礼した。…敬礼?そう、あの、軍隊式の敬礼を。
「彼は何故そんなことをしたのかしら?」
「わからない」
だが、そうやって笑いながら車を降りたあと、彼は二度と我々の前に姿をあらわさなかった。

28お前名無しだろ:2006/10/24(火) 19:49:00 ID:YHt8lnt2O
夢枕獏文体のスレも欲しいね
29お前名無しだろ:2006/10/24(火) 19:53:28 ID:+scr6M7p0
>>22
少なくとも当時はそうだったろうね。
30お前名無しだろ:2006/10/25(水) 00:48:22 ID:85lmMzy+O
その車の中から中邑の顔がこちらを見ていた。
でも不思議なんだ。その顔からは表情というものが全て抜け落ちていた。全く。まるで何回も何回も洗って擦り切れたランニングの青いナイキのマークみたいに。
その時僕は気付いたんだ
猪木に中邑をまかせちゃいけなかったんだ。サイモンには言うまでもないさ。分るだろ?永久なんてものがないなら、永久電池だってない。そうじゃないかい?
「聞いたよ。今度はチョーノと組むんだろ?」
それは僕の耳にも入ってきた。だけどとても嫌な予感がする。とても
31お前名無しだろ:2006/10/25(水) 14:41:51 ID:IBBgyZe20
その質素な小屋に亀男は住んでいた。
「どうしてこなとこに住んでいるんだい?」と僕は亀男に聞いた。
「理由を聞いたらあんた笑うよ。」
「笑わないさ。」むしろ僕は亀男の顔を見て、笑いをこらえていた。
「大晦日から逃げてるんだよ。」
「大晦日?いつの大晦日?」と僕は聞きかえした。
「いつだっていいよ。とにかく大晦日が嫌いなんだ。相手は三日前に決まるし、
ヤクザはいろいろ言ってくるし。おまけにギャラもでないんだ。
僕はコタツにみかんで過ごしたいだけなのに。いつもアゴが、、。」
そういって亀男は悲しそうに首を振った。
体がゆれると背中の甲羅がきらきらひかった。
32お前名無しだろ:2006/10/25(水) 14:49:36 ID:WChACNTE0
>>31
「やれやれ。」
33お前名無しだろ:2006/10/25(水) 19:35:49 ID:85lmMzy+O
リングの上では天山が吠えていた
棚橋はサングラスをちょっと上げてから、僕に
「何か飲まない?」と言って、すたすたとカウンターへ向かう。
僕はその後ろ姿と、まだリングの上で吠え続ける天山を交互に見て思った。
いったいなんで僕はこんな後楽園ホールの片隅で絶望的に壊れた自転車みたいなパイプ椅子に座ってるんだ?
やれやれ、家の冷蔵庫にある1ダースのビール缶を思い出して僕は溜め息をついた。
34お前名無しだろ:2006/10/26(木) 01:13:00 ID:/Mfuscab0
四月のある晴れた朝に100パーセントの三沢さんに出会うことについて
35お前名無しだろ:2006/10/26(木) 09:27:30 ID:7QKLfuNX0
WJの終わりとハードボイルドマグマワールド
36お前名無しだろ:2006/10/26(木) 15:48:27 ID:7QKLfuNX0
亀の永田はみな踊る
37お前名無しだろ:2006/10/26(木) 20:44:36 ID:5u6PpnmE0
アモンウェイの森
38お前名無しだろ:2006/10/27(金) 01:40:20 ID:N90Ws/IFO
永田さんが言ったことばをまだ覚えている。
例えばこんな風に
「一つづつ丁寧に関節をつぶしていくのさ。そして最後まで踊りつづけるんだ。リングの上で。
コーナーポストから飛んでもいい。だけどレフェリーのサインを見逃しちゃいけないんだ。
背中をマットにつけて3秒間。それで終わりさ。
一番大事なのは、早く動くことじゃない。強く撃つことでもない。
最後まで…ゴングが再度ならされるほんとうに最後の瞬間まで踊り続けること
それが重要なんだ」

39お前名無しだろ:2006/10/27(金) 14:06:03 ID:rBaDqvBG0
すでに40前の男としてもう一度ヒョーのパンチをもらい亀になったとき、
僕は何と言うのだろうか。
あるいはこう言うかもしれない。
「おい、ここは僕のいるべき場所じゃない。」と。

たとえ世界の全てが道化であり、そのなかでもとびきりの道化が
プロレスであったとしても僕はその役割を演じ続けるしかない。
総合にはもう出たくないが、そのうちアゴから声がかかるだろう。
しかしそこは僕のいるべき場所じゃない。
僕の冒険はブックありでおこなわれる。プオタの前でおこなわれる。
ちゃんとギャラのもらえる試合でおこなわれる。

友よ。総合初勝利はあまりにも遠い。
40お前名無しだろ:2006/10/28(土) 06:10:36 ID:nehb2j1/0
>>39
泣ける
41お前名無しだろ:2006/10/28(土) 09:16:17 ID:R752Lg0h0
「そして僕は港まで歩いて町の光を眺めたんだ。世界には本当にたくさんの
人たちがそれぞれの生活をしてるんだね。そう考えると急に涙が出て
きたんだ。でもね、別に同情したわけじゃない。
いいかい、一度しか言わないからよく聞いてくれ。

     僕は・三沢さんが・好きだ。

御清聴ありがとう。この後一時間また犬の漫才師に戻る。」
42お前名無しだろ:2006/10/29(日) 17:42:41 ID:pUC/RKdk0
司馬スレとは、また違った魅力のあるスレだな。
村上春樹スレか……。
43お前名無しだろ:2006/10/30(月) 12:40:20 ID:a6pzJmB50
僕は電気もつけずに薄暗い部屋でビールを飲みながら
プロレスのヴィデオをぼんやりと見ていた。
東京ドームでの武藤、馳対スタイナーブラザーズ。最高の試合だ。
これは何年の試合だったろうか?
彼女が風呂から髪をふきながら出てきた。
「どうしてプロレスなんて見るの?八百長でしょ。」
反論するのも面倒だったので僕はあいまいにうなずいた。
「そうだよ。八百長だよ。」
「八百長って分かって見てるのってつまんなくないの?」
「つまんなくたっていいんだよ。暇つぶしだから。それにどんなスポーツにも
八百長的な面はあるよ。プロレスなんて分かりやすくてかわいいもんさ。」
「あなたってそうやって世間をはすにみて馬鹿にしてるのね。
いつもそう。」
僕は彼女に何か言い返そうとしたが、彼女が泣いているのに気づいてやめた。
そしてヴィデオの電源を切った。電源の落ちたテレビの画面は暗闇の中でも
一層濃い闇の入り口みたいに見えた。
「別に消さなくてもいいのよ。あなたの家のあなたのテレビなんだから。」
「もう見たくなくなったんだ。」
彼女は居間のテーブルで声を出さずに泣いていた。
まったくでたらめな一日のでたらめな夜だった。
ぬるくなったビールを一息で飲んだが、まるで鉛のような味だった。

44お前名無しだろ:2006/10/31(火) 14:11:57 ID:XrFw07MH0
ワタクシは海辺のカフカのナカタさんをネタにしたレスを書きたいのであります。
しかしワタクシはブックオフさんに売ってしまって、手元にございません。
これでは都知事さんに申し訳が立たないであります。
45お前名無しだろ:2006/11/01(水) 17:29:52 ID:kj3ixK740
「それとこんな物もある。」と言って武藤は小切手を出した。
「レスナー呼んだりして借金があるんだろ?それでたりるかい?」
「すごい大金だね。どこか胡散臭いけど。」と蝶野は小切手を見ていった。
「実にそのとうりさ。」
「でも悪いよ。」
「いいさ。でも頼みがあるんだ。僕とブッチャーを新日の共同経営者にしてほしい
んだ。名前だけでいいからさ。配当も何もいらない。そのかわり、、、。
僕と橋本に困ったことがあったら、新日に向かい入れてほしいんだ、、。」
「いつだってそうしてきたじゃないか。」
「でもそうしたいんだよ。」
「分かったよ。ブッチャーに会ったんだろ?元気だった?」
「元気だったよ。その金はブッチャーと僕で稼いだんだぜ。」
46お前名無しだろ:2006/11/01(水) 23:00:02 ID:UjlXg+ZL0
>>45
泣ける
47お前名無しだろ:2006/11/02(木) 18:52:18 ID:0bNF3xqT0
「どうして馬場さんを殺したの?」といつのまにか川田は聞いていた。
「僕が馬場さんをころしたのか?」
「いや、いいんだ忘れてくれ」
「まってくれ、大切な問題なんだ。僕が馬場さんを殺したのか、殺してないのか。
夢のなかで馬場さんの首を締めたような気がする。馬場さんが許してくれたんだ。
いいのよ、あなたは悪くないのよ、って。」
「君は疲れてるだけさ。二人でハワイにいこうよ。あそこはいいところだよ。
車を借りて200キロでぶっぱなして、女の子を買おう。巡業なんてキャンセル
しちまえばいい」
「分かったよ。たしかに僕はつかれてるんだ。ところでかつての先輩として
君にお願いがある。ビールをもう一杯とってきてくれないか?」
「いいですよ」と言って川田は席を立った。ビールのジョッキを二杯もって戻ると、
三沢さんは消えていた。

次の日海につっこんだマセラティから三沢さんの遺体が発見された。
48お前名無しだろ:2006/11/02(木) 22:17:31 ID:DxH91wM90
しばらくするとマスコミが三沢さんのことをいろいろ書きはじめた。
豚とかエロ社長とか。
川田はそんなやつら一人一人を絞め殺してやりたかった。
「フェイスロックで絞め殺すのは時間がかかる。エルボーで殴り殺したほうが早い」
と三沢さんは言った。正論だ。
49お前名無しだろ:2006/11/04(土) 16:44:26 ID:2Uvi1U1H0
呪われたマセラティと三沢さん。
50お前名無しだろ:2006/11/04(土) 19:40:45 ID:RaD3FK1s0
「もう一度長州力を襲うのよ。それも今すぐにね」と彼女は断言した。
「それ以外にこの呪いをとく方法はないわ」
「今すぐに?」と藤原喜明は聞きかえした。
「ええ、今すぐよ。この空腹感がつづいているあいだにね。果たされな
かったことを今果すのよ」
「でもこんな真夜中に長州力がプロレス団体を開けているものなのかな?」
「探しましょう」と妻は言った。
「東京は広い街だもの、きっとどこかに一晩中営業している長州力の一団体
くらいあるはずよ」
51お前名無しだろ:2006/11/04(土) 21:07:41 ID:2Uvi1U1H0
マクドナルド=長州か。えらいエキセントリックだね。
52お前名無しだろ:2006/11/05(日) 01:49:44 ID:sH/eqR800
マックじゃなくパン屋だと思うが…。
53お前名無しだろ:2006/11/05(日) 09:12:05 ID:HnDbXVst0
>>52

いやいや、村上春樹著の「パン屋再襲撃」では、主人公の妻が
「もう一度パン屋を襲うのよ」と言う場面があるのですが、結
局襲ったのは、パン屋ではなくマクドナルドだったんですよ。

まあ、真夜中に営業しているパン屋なんてないですから、代わ
りにマクドナルドを襲ったんでしょうね。
54お前名無しだろ:2006/11/07(火) 00:54:04 ID:FSd/6nS90
「世界はメタファーだ、垣原くん」と田村は垣原の耳元で言う。
「でもね、僕にとっても君にとっても、UWFだけは何のメタファーでもない。UWFだけは
どこまで行っても、、、UWFだ。僕と君の間で、それだけははっきりしておきたい」
「もちろん」と垣原はいう。
「とてもソリッドで、個別的で、特別なプロレスだ。ほかのどんなものにも代用できない」
垣原はうなずく。
「さよなら、垣原賢人くん」と田村は言う。
「さよなら、田村さん」と垣原は言う。「その赤パンはとても素敵だよ」
田村は垣原の顔をまっすぐに見て微笑む。
「いつそれを言ってくれるか、ずっと待ってたんだ」
55お前名無しだろ:2006/11/07(火) 03:29:53 ID:sX8h5gU50
プロレスが最強の男を決めるという考えは迷信であり、好意的に言うとしても幻想である。
すくなくともプロレス技はどの格闘技よりも合理的でない。
もしそのような目的のためにプロレスラーを志している方がおられるとしたら、それは止めた方がいい。
プロレスは真剣勝負を演劇化するだけであり、それはどこにも到達しない。
もし何かに到達したような気分になったとしたら、それは錯覚である。
レスラーは客がチケットを買うから試合をするのだ。
プロレス自体に攻撃性はないし、それに付随する強さもない。
56お前名無しだろ:2006/11/07(火) 11:36:25 ID:cofWVOzk0
イイスレダアゲ
57お前名無しだろ:2006/11/07(火) 16:43:12 ID:Wr3gbYtG0
してみると、ここにしろ司馬スレにしろ、プロレスファンの人口に占める文系の割合の高さの証左であるかのように思われ、
また文学部で無益な時を過ごしていた自分には、その事が何か得体の知れない化け物じみた観念となって覆いかぶさってくるような、
どうしようもない不安に苛まれるのです。

「ノアだけはガチ」
それは世間の声じゃない、あなたでしょう?
「新日本が最強すぎて我慢できない!」
それは世間の声じゃない、あなたでしょう?

人間、失格。今、自分には、新しくスレをたてる勇気もありません。

ただ、一さいは流れていきます。

(プヲタは)人間、失格。
58お前名無しだろ:2006/11/08(水) 01:54:09 ID:Q7Ui5YrE0
私はガードを上げて、もう一度立ち向かおうとする。視界がぼやけて、まともに打撃を防ぐことが出来ない。
ガードを下げたとき、こぶしが顔に当たる。
私は膝から落ちて立ち上がろうとする、でも立ち上がれない。
心を完全に折られてしまったからだ。
這い上がろうとしたときに、顔に思い切り蹴りを入れられてしまう。

私はあきらめてマットに顔をつけ、両手で顔を覆う。そして泣く。
私には泣くことしか出来ない。あとからあとから涙がこぼれてくる。
私はひとりで、この小さなリングに閉じ込められたままどこにも行けないのだ。
今はこの興行のメインイベントで、そして総合格闘家は真剣勝負をするのだ。
ヒョードルは私をKOしようとしているのだ。
59お前名無しだろ:2006/11/08(水) 02:41:35 ID:z5h+YaLN0
眠れない永田さん来た!
60お前名無しだろ:2006/11/08(水) 22:59:55 ID:z5h+YaLN0
長州は布団の中でもそもそと黒パンを脱いでそれを僕のペニスの先にあてた。
「ここに出していいからな」
「でも汚れちゃうよ」
「何コラ、涙がでるからつまんないこと言うなよ」と長州は泣きそうな声で言った。
「そんなの洗えばすむことだろ。遠慮しないで好きなだけ出せよコラ。気になるんなら
新しいの買ってプレゼントしろよ。それとも俺のじゃ気に入らなくてだせないのか?」
「まさか」と僕は言った。
「じゃあ出せよ。いいんだぞ出して」
61お前名無しだろ:2006/11/09(木) 01:23:37 ID:nPXRI5wo0
「長州の肛門には」僕は言った。
「小さな、無数の寄生虫の卵が産み付けられていたんだ」
「寄生虫?」
「そう、長州の黒い尻毛にびっしりと」
「またその話?もう聞き飽きたわよ」
すみれはため息をつきながら、クアーズのタブを開ける。
「長州の腹の中にいるサナダムシにノーベル賞」と言いかけて止めた。
62お前名無しだろ:2006/11/09(木) 04:03:12 ID:PIlXwtl60
>>61
「やれやれ。」
63お前名無しだろ:2006/11/10(金) 03:23:07 ID:fh4kkV1F0
>>23じゃないけど、司馬スレには>>61とか>>60が書き込めないような敷居の高さがある。
でも春樹スレの方がリベラルなプロレス観を感じる。
64お前名無しだろ:2006/11/10(金) 23:41:13 ID:5GnnWYm3O
過去スレでディレク・ハートフィールド=長州、僕=健介みたいな作品があったのを覚えるんだけど持ってるヤシいたら…

そこまで言いかけて僕はスレをsageた。やれやれ。ここに書き込むには僕は三年早いらしい
65お前名無しだろ:2006/11/11(土) 00:21:23 ID:jO+vx2P7O
 ラリアットをくらい続けていた時期がある。その年誰もが誰かにラリアットをくらわせたがっていた。その頃僕は優に30通りの受け身を身に付けていた。 その中に新日人と全日人がひとりずついた。これは新日人の話…「し、新日の会場はとても寒いんだ。」
66お前名無しだろ:2006/11/13(月) 18:43:16 ID:ZjFu8fyn0
「エース格でも年収600万くらいなんだ。じ、地獄さ。」
67お前名無しだろ:2006/11/13(月) 21:18:25 ID:jW+yox5o0
もちろん時は全ての人を平等にうちのめしていくのだろう。
まるで路上で死ぬまで老馬をうちすえるあの御者のように。
それでも僕たちは永田さんの立つ、ガチのリングをとうして、そんな時の
跳梁ぶりを目のあたりに見る事ができる。
そのリング上でヒョードルはオレンジみたいに永田さんを絞りあげていた。
汁なんてもう一滴も出やしない。
僕をひきつけるのは、永田さんのそんな完璧さだ。
もう本当に一滴だって出やしないんだよ!
68お前名無しだろ:2006/11/14(火) 07:12:28 ID:XYWeBS67O
>>67
泣ける
69お前名無しだろ:2006/11/14(火) 20:40:23 ID:0/1eFLgoO
このスレは本当に好
70お前名無しだろ:2006/11/16(木) 22:43:37 ID:eNryYXNx0
>>53
確かにそうだった気がする。
71お前名無しだろ:2006/11/16(木) 23:27:24 ID:P2lAbKKU0
Q「プロレスとは八百長行為か?」
A「そうではありません」
Q「説明をしてほしい」
A「精神的奉仕であります」
Q「説明になってない」
A「うまい言葉がみつかりませんが、裸踊りというのが近いかとおもいます」
Q「君はプロレスが裸踊りだというのか?」
A「そうであります」
Q「プロレスが日本に生まれて50年以上、レスラーは裸踊りをしていたと言うのか?」
A「そうであります」
Q「それは詐欺行為であると思わないのか?」
A「観客を喜ばせるのが私達の職務であります」

72お前名無しだろ:2006/11/18(土) 22:48:36 ID:Lz0OzNA40
三沢はおかしそうに笑って、武藤のグラスにビールを注いだ。
「あんたは先に先にと考えすぎるんだ」
「いや、そういう問題じゃないんだ。つまりね、若い奴に世代交代するのが本当に
正しいかどうか、それがよくわからないってことさ。新弟子が成長し、世代が交代する。
それでどうなる?塩レスラーがふえてもっと塩試合がふえる。技がもっと過激になって、
もっと試合がハイスパートになる。それだけのことじゃないか」
「それは物事の暗い面だよ。上手い新人だっているし、良い試合だってあるさ」
「三つずつ例をあげてくれれば信じてもいいよ」と武藤は言った。
三沢はしばらく考えて、それから笑った。
「でもそれを判断するのは俺たちの次の世代であって、俺たちじゃない。
俺たちの世代は、、」
「もう終わったんだね」
「ある意味ではね」と三沢は言った。
「歌は終わった。しかしメロディーはまだ鳴り響いている」
「あんたはいつも上手いことを言うね」
「気障なんだ」と武藤は言った。
73お前名無しだろ:2006/11/20(月) 14:58:28 ID:6cKM1LE20
ジェイズバー=蛇の穴
74お前名無しだろ:2006/11/20(月) 17:16:52 ID:W0UiZ6ZC0
もし、と僕は思う、もし一万年の後にハイスパートなレスラーたちだけの団体が出現したとすれば、
僕のために彼らは道場の門を開いてくれるだろうか?
そこにはハイスパートなレスラーたちによって選ばれた各団体のエースたちがいて、
ハイスパートなレスラーたちが出場する総合格闘技もどきの興行が催され、
ハイスパートなレスラーたちが手で支えてかろうじて倒れないでいる金網が存在しているはずだ。

いや、彼らはそんなものを必要とは感じないかもしれない、エースも総合格闘技も金網も・・・。
彼らは短い試合時間でラリアットを何度も繰り返し、ハイスパートなままひっそりと生きることを望むかもしれない。
空から眺めると、そんな光景が何万回、何十万回と地表に繰り返されていることだろう。
それはきっと素晴らしい眺めであるに違いない。
75お前名無しだろ:2006/11/20(月) 20:48:22 ID:eWOsfICu0
そうだ、もしその世界に一人のブッカーの入り込む余地があるとすれば、ぼくはブックを
考えてもいい。ハイスパートなレスラーたちの桂冠ブッカーだ。悪くはない。
僕はステレオタイプな軍団抗争を提案し、長州力的なレスラーをエースとしよう。
しかし結局のところ、それは西暦12006年の話だ。
そして一万年という時間は待つにはあまりにも長い時間だ。
それまでに僕は幾つもの塩興行をみなければならない。
76お前名無しだろ:2006/11/21(火) 00:15:07 ID:cCp44dmI0
いいねえ、司馬スレもそうだけどプロレスはテーマの間口が広いね
77お前名無しだろ:2006/11/21(火) 10:15:10 ID:6e3yDL4N0
どんなスレタイにもバンプをとれるのがプ板住人の懐の深さ。
78お前名無しだろ:2006/11/21(火) 13:06:30 ID:sViv7BVzO
てかプロレス雑誌読んでるより、よっぽど面白くて味わい深いんですけど
79お前名無しだろ:2006/11/21(火) 19:02:20 ID:W0DwtVMX0
「プロレス内ガチなんて存在しない。わざと打たせるピッチャーがいないようにね」
 僕が大学生のころ偶然知り合ったゼロチューは僕に向かってそう言った。
僕がその本当の意味を理解できたのはずっと後のことだったが、少なくとも
それをある種の慰めとしてとることも可能であった。プロレス内ガチなんて
存在しない、と。
 しかし、それでもやはりプロレスを見るという段になると、いつも絶望的な気分に
襲われることになった。僕が楽しめる領域はあまりにも限られたものだったからだ。
例えばジョニーローラーに興奮できても、小川良成のサミング、あご砕きに興ざめ
してしまうかもしれない。そういうことだ。
 8年間、僕はそうしたジレンマを抱き続けた。−−8年間。長い歳月だ。
 もちろん、UWFのビデオを見続ける限り、プロレスに幻想を持ち続けるのはそれほど
苦痛ではない。これは一般論だ。
 20歳を少し過ぎたばかりの頃からずっと、僕はZERO-ONEしかみないように努めてきた。
おかげでプレデターから何度も追い回され、変な踊りを和牛太と踊り、また同時に多くの
不思議なマッチメイクも見た。様々な外人がやってきて話題を提供し、俺ごと刈られ、
まるでホットスタッフヘルナンデスのように二度と戻っては来なかった。僕はその間
ノアオタの煽りにじっと口を閉ざし、何も語らなかった。そんな風にして僕は2002年
最後の興行を迎えた。
80お前名無しだろ:2006/11/21(火) 19:04:06 ID:W0DwtVMX0
 今、僕は信じようと思う。
 もちろん問題は何ひとつ解決していないし、
信じきれた時点でもあるいは事態は全く同じということになるかもしれない。
結局のところ、プロレス内ガチを信じることは最高教へちかづく手段ではなく、
最高教へちかづくささやかな試みにしか過ぎないからだ。
しかし、信じることはひどくむずかしい。僕が信じようとすればするほど、
ノアの経営は闇の奥深くへと沈み込んでいく。
 弁解するつもりはない。少なくともここに語られていることは現在の僕におけるベストだ。
付け加えることは何もない。それでも僕はこんな風にも考えている。
うまくいけばずっと先に、何年か何十年か先に、救済されたノアを発見する事ができるかもしれない、と。
そしてその時、三沢はプライドのリングに立ち僕はよりプロレス内ガチを信じ始めることだろう。
81お前名無しだろ:2006/11/21(火) 19:09:02 ID:W0DwtVMX0
僕はプロレスについての多くを佐々木健介に学んだ。
殆ど全部、というべきかもしれない。
不幸なことに佐々木健介自身は全ての意味で不幸なレスラーであった。
見ればわかる、試合は見辛く、組み立ては出鱈目であり、技は稚拙だった。
しかしそれにもかかわらず、彼はプロレスを武器として闘うことができる数少ない
非凡なレスラーの一人でもあった。
武藤、橋本、蝶野、そういった彼の同時代人のレスラーに伍しても、佐々木健介の
戦闘的な姿勢は劣るものではないだろう、と僕は思う。
ただ残念なことに彼佐々木健介には最後まで自分の戦う相手の姿を明確に
捉えることはできなかった。結局のところ、しょっぱいということはそういった
ものなのだ。
82お前名無しだろ:2006/11/21(火) 20:37:53 ID:W0DwtVMX0
 8年と2ヶ月、健介はそのしょっぱい闘いを続けそして失踪した。
2001年8月のある晴れた日曜日の朝、頭を丸め、両手に
オープンフィンガーグローブをつけたまま36秒でVTデビュー戦を
勝利で飾ったのだ。彼がプロレスをしていたことと同様、VTをしたことも
たいした話題にはならなかった。
83お前名無しだろ:2006/11/21(火) 22:07:47 ID:jcvAr3oz0
おかしくも悲しい。プロレスってブルースだな。
84お前名無しだろ:2006/11/21(火) 22:40:41 ID:aQlvstTV0
これまででは>>54が一番感動した。人選も渋い。
85お前名無しだろ:2006/11/22(水) 21:54:09 ID:nxITVA1F0
 僕がUFOに所属したままの小川の試合を偶然見に行ったのは股の間に
ひどい皮膚病を抱えていた中学三年生の夏休みであった。僕にその試合を
提供してくれた橋本は3年前に長州のアングルを患い、小川にボコボコに
殴られ、負けたら引退スペシャルを組まれたままSTOをくらい続けて引退した。
ZERO-ONEを旗揚げした時、彼はまるで狡猾な豚のようにひどく赤茶けて
太っていた。

             ☆

 猪木には全部で三人の弟子がいたが、一人はスタッフを引き連れて
新日を離脱した。全日との対抗戦の2ヵ月後に元子の誘惑に負けたのだ。
ただ一人新日に残った蝶野は現場監督になって全国の地方都市を
巡業している。
86お前名無しだろ:2006/11/22(水) 21:55:09 ID:nxITVA1F0
 三沢光晴が良いプロレスについてこんな風に書いている。
「プロレスとは、とりもなおさず自分と自分をとりまくノアオタとの距離を
確認することである。必要なものはガチではなく、今風だ」(「マットが
ふわふわで何が悪い?」1999年)
 三沢が今風を片手に恐る恐る全日を辞めたのは確かジャイアント馬場が死んだ
翌年で、それからもう2年にもなる。2年かけてノアは実にいろんなものを放り
出してきた。まるで小学生の仲間はずれのように川田と渕を放り出し、垣原を
放り出し、ZERO-ONEを締め出し、そして最後にはあわれな大森を放り出した。
2年の間ノアはありとあらゆるものを放り出し、そのかわりに殆んどファミ悪は
放り出さなかった。
 それが果たして今風だったのかどうか、僕には確信はもてない。つまらなく
なったことは確かだとしても、年老いて三沢や小橋がリングにたてなくなった
時に一体ノアで誰がトップになっているのだろうと考えるとひどく怖い。
ワイルド2ではファンひとり残りはすまい。
87お前名無しだろ:2006/11/22(水) 23:03:30 ID:YEXnFeSoO
「総合格闘技を視野にいれて戦う?」
彼女はとても不思議そうに僕をのぞきこんだ。
「そんなのってムイミじゃないの?」
「どうして?」

僕が顔をあげると、彼女は慣れない言語を扱うようにゆっくりと言った
「だって…プロレスってただのショウでしょう?」
「ある部分ではね。でも総合格闘技だって一種のショウだ。違うかな?」「そうかしら」
再び顔をあげると、彼女は僕の方をじっと見つめていた。
少しの間、形の悪い分銅みたいな沈黙が僕らを包んだ。彼女はその間ずっと薄い透明な目で僕を見つめ続けた。
「そうだと思うけど。少なくとも僕は」
88お前名無しだろ:2006/11/22(水) 23:43:16 ID:3/AyTpIJ0
しばらく読んでなかったが、思わず文庫本をひっぱりだしてつかえそうな文章を
さがしてしまうぜ。それではカンガルー日和より

「なぜ永田さんは亀みたいにうずくまっているのかしら?」と彼女が訊ねた。
「敵から身を守るためさ」
「敵?どんな敵?」
「ヒョードルだよ」と僕は言った。「ヒョードルがガチで永田さんを潰そうとしてるんだ」
「どうして永田さんがガチで戦わないといけないの?」
「アゴのせいさ。永田さんはノーギャラでいいから」
「アゴの奴隷なのね?」
「うん」と僕は言う。「新日の選手はみんな奴隷なんだ」




89お前名無しだろ:2006/11/23(木) 00:02:05 ID:ctVOVxwA0
レスラーを見る目が感情的になる人はあまりいいものは書けないんだと思う。
90お前名無しだろ:2006/11/23(木) 07:19:11 ID:d0fBK6cO0
「プロレスラーは膝ばかり痛める。もっと悪いプロレスラーは膝さえも痛めない」
死んだ祖母はいつもそう言っていた。
 馬場が死んだ夜、三沢がまず最初にしたことは、自分名義の借金をそっと
会社名義にしてやることだった。三沢が離脱すると同時に、馬場が27年間
育て続けた全日はまるで舗道に落ちた夏の通り雨のように静かに消え去り、
後にはハゲしか残らなかった。
91お前名無しだろ:2006/11/23(木) 17:11:59 ID:cNS0brDp0
「プロレスラーは膝ばかり痛める。もっと悪いプロレスラーは膝さえも痛めない」
名言だ。さすが村上春樹。
92お前名無しだろ:2006/11/24(金) 00:02:55 ID:uJY0+8Dl0
「そうだ、日明兄さんに聞いてみよう」
と世間の人々が前田日明にとりあえずぶっつける
282の大疑問に果たして日明兄さんはちゃんと答えられるのか?
93お前名無しだろ:2006/11/24(金) 10:08:33 ID:7r7J4EOW0
 もう一度プロレスについて書く。これで最後だ。

 僕にとってプロレスを観るのはひどく苦痛な作業である。1ヶ月間すべての試合を
早送りで観ていることもあれば、三試合連続で観た挙句それがみんな見当違い
といったこともある。
 それにもかかわらず、プロレスを観ることは楽しい作業でもある。総合格闘技の
困難さに比べれば、日本人が活躍するのはあまりにも簡単だからだ。
 十代の頃だろうか、僕はその事実に気がついて一週間ばかり口もきけないほど
驚いたことがある。少し気を利かせさえすればプロレス界は猪木の意のままになり、
あらゆるレスラーはPRIDEでも活躍し、格オタもプロレスを認める……そんな気がした。
 それがアングルだと気づいたのは、不幸なことにずっと後だった。僕はノートの
まん中に1本の線を引き、左側に納得できるものを書き、右側に納得できない
ものを書いた。納得できないもの、ロープの反動、4秒でやめてしまう反則カウント、
トップロープからの攻撃に気がつかないレスラー、お約束のような同士討ち……僕は
それらを最後まで書き通すことはできなかった。
 僕たちがプロレスについて持っている幻想と、実際のプロレスラーとの間には
深い淵が横たわっている。いくら高橋の暴露本を読んでもその深さを測りきることは
できない。僕が好きで観ているのは、ただのプロレスだ。スポーツでも真剣勝負でも
なければ、格闘技でもない。まん中に線が1本だけ引かれた一冊のただのノートだ。
セメントなら少しはあるかもしれない。
94お前名無しだろ:2006/11/24(金) 10:12:58 ID:7r7J4EOW0
 もしあなたが格闘技や真剣勝負を求めているのならK-1やPRIDEを観ればいい。真の
格闘技が生み出されるためには興行会社が不可欠だからだ。ランペイジジャクソンが
そうであったように、森下が見つけ出し、ホームレスアングルを作り、首からかける
鎖を用意し、そしてその間にジャクソンはLAの太陽の下で柔術に耽り、レスリングに
取り組む。真剣勝負とはそういったものだ。
 夜中の3時に寝静まった街で若手と焼肉を貪るような人間には、それだけの試合しか
見せることはできない。
 そして、それがプロレスだ。
95お前名無しだろ:2006/11/24(金) 16:35:30 ID:ixU533jP0
ノア行きの箱船にいつか大森さんとのりたいな
船は貸切二人きり
96お前名無しだろ:2006/11/24(金) 18:13:47 ID:mEO2KNG80
「ブッチャーのことはとやかく言いたくない」と武藤は言った。
「でも世の中には葬式の出ない死に方もある。ステロイドで死ぬ奴もいる」
僕は黙って背いた。そして入場用のマントの金具を指でいじった。
「そろそろこのドーム興行のメインイベントだな」
「実は新技があるんだよ」と武藤は真剣な顔つきで言った。
「シャイニングウィザードをアレンジしたんだ。見てみるかい?」
「自分の団体のビッグイベント用だろ?」
武藤は使い慣れたレスリング・ギアを壊れかけの自分の膝に着けた。
「知らないのかい?」と武藤は言った。
「プロレス技に用途なんか無い。使うべきタイミングがあるだけさ」
「なるほど」
僕たちはリングにあがった。
97お前名無しだろ:2006/11/24(金) 18:16:46 ID:7r7J4EOW0
「私が間違っていたと思う?」彼女がそう訊ねた。
 僕はビールを一口飲み、ゆっくりと首を振った。「はっきり言ってね、みんな間違ってるのさ。」
「何故そう思うの?」
「うーん。」僕はそう唸って考えるふりをした。答えなど無かった。
「私は武道館まで行って腕がもぎとれるくらい一生懸命に武藤を応援したのよ。
とても苦しくて死ぬかと思ったわ。それでね、何度も何度こんな風に考えたわ。
私が間違っててあなたが正しいのかもしれないってね。
私がこんなに苦しんでるのに、何故あなたは何もせずにテレビの前で新日を見てるんだろうってね。」
 彼女はそう言うと軽く笑って、しばらく憂鬱そうに目の縁を押さえた。
僕はあてもなくポケットを探った。3年ぶりに無性に煙草が吸いたかった。
「僕も武道館へ行けばいいと思った?」
「少しね。」
「本当に少し?」
「・・・忘れたわ。」
 二人はしばらく黙った。僕はまた何かをしゃべらなければならないような気がした。
「ねぇ、力があるからチョーノー力。」
「誰の言葉?」
「アントニオ猪木。」
98お前名無しだろ:2006/11/24(金) 23:00:42 ID:uJY0+8Dl0
「そしてそこにうんこが現れたんですね?」
「そうよ。でも私はそんな風には呼ばなかったけど」
「なんて呼んだんですか?」
「名前で呼んだわ。誰だってそうするんじゃない?」
言われてみればそのとうりだ。うんこというのはあだ名にしても子供っぽすぎる。
「そうですね」とカシンは言った。
「彼はなんていうか、、十分に非現実的だったわ。私の言ってることわかるでしょ?」
「わかると思います」
99お前名無しだろ:2006/11/24(金) 23:31:36 ID:r+EX73Jr0
完璧なレスラーなんて存在しない、完璧な長州力が存在しないようにね。
僕がまだ、駆け出しのレスラーだった頃、かつて鬼軍曹と言われた小鉄さんは
にこに笑いながらそう言った。

「完璧なレスラーなんて存在しない」

僕がその本当の意味を知ることができたのはミルコ戦の後のことだったが、
それは一種の慰めとして受け取ることも可能であった。

「完璧なレスラーなんて存在しない」と。
100お前名無しだろ:2006/11/25(土) 07:14:36 ID:n1nizh4SO
「あるいは僕の新日感はかたよっているのかもしれない。
皆が言うほど東京ドーム興行が不可能なことだと、どうしても僕には思えないんだ」

「わかるよ」
金沢は銀色のふちの眼鏡を外して、こめかみを押さえながらそう答えた
「そりゃ君はそう思うだろうさ。だって君はその…」
「君が考えてるような行為を僕はやって無い」
いいよどんだ僕への回答にしては、それはひどく早口で、その裏にある何かが透けて見えた
101お前名無しだろ:2006/11/25(土) 09:13:41 ID:dp1YBFqY0
小島のラリアットプロレスについては西村は常々批判的であった。
もちろんラリアットについては問題はないが、と彼は述べている。
そこには宇宙の観念が欠如しており、そのために試合は実に
ちぐはぐな印象を私に与える、と。
「宇宙の観念」という言葉を彼が使う時、それは大抵「無我」を意味した。
彼が一番気に入っていた技は「俺ごと刈れ」である。
「ねえ、君。相手を倒すために自分が刈られるなんて信じられるかい?」
と彼は言った。
102お前名無しだろ:2006/11/25(土) 09:54:43 ID:18MMWuXVO
「あるいは君の言うとおりプロレスはヤオかもしれない、ただし」
「ただし?」
「それはあくまでも仮説であって仮説に対する反証が為されない限り
仮説は永遠に仮説であり続けるのさ、君が望むと望むまいとね」
「あるいはそうかもしれない、メタファーとして」
「そう、全てはメタファーだよ。」

そんな会話を思い出しながら僕はこの世界の果てに辿り着いた。
ここでは僕の望むものは何でも叶うはずだ。
さっそく猪木対馬場を望んでみた、しかし試合が進むにつれ
ある一つの疑問が頭をよぎった。
そう、全ては僕の望む通りになる。つまり勝敗すら僕の望むがままになるのだ。

彼の言葉を思い出す。

「そう、全てはメタファーだよ。」
103お前名無しだろ:2006/11/25(土) 10:20:17 ID:QyAAT/100
「橋本真也とその飼育係の冬木夫人はいつもと同じようなことをしているだけだ
った。掃除をしたり、食事をしたり、仲良さそうにちょっとふざけてみたりって
いうくらいのことだよ。そんなのはいつもやっていることさ。ただ僕がちょっと
気になったのは、そのバランスのことなんだ」
「バランス?」
「橋本真也とその飼育係の冬木夫人の体の大きさのつりあいさ。そのつりあいが
いつもとは少し違うような気がしたんだ。いつもよりは橋本真也と飼育係の冬木
夫人の体の大きさの差が縮まっているような気がしたんだ」
 彼女はしばらくのあいだ自分の持ったダイキリのグラスにじっと視線を注いで
いた。中の氷がとけて、その水が小さな海流のようにカクテルのすきまにもぐり
こもうとしているのが見えた。
「ということは橋本真也の体が小さくなっていたっていうこと?」
「あるいは飼育係の冬木夫人が大きくなっていたか、あるいは両方が同時に起っ
ていた、ということになるね」
「そのことを警察に知らせなかったのね?」
「もちろんさ」と僕は言った。「そんなの知らせたって警察はまず信用しないだ
ろうし、そんな時間に裏門から橋本真也を見物していたなんて言ったら僕が疑われ
るのがオチだろうからね」
104お前名無しだろ:2006/11/25(土) 17:04:10 ID:fsIF680D0
いいねえ、感想もみんな書かないかい
105お前名無しだろ:2006/11/25(土) 18:41:06 ID:IeUKlmva0
プロレスの終わりとハッスルマニア・レッスルランド

なんていうか、新日系のレスラーの登場頻度が高いね
106お前名無しだろ:2006/11/25(土) 23:57:00 ID:n1nizh4SO
「時どき志賀のことを考えるの」
「志賀?」
僕は彼女の言葉にびっくりして聞きかえした。その時我々は青山通りを歩いていて、志賀と彼のまわり(ノアとその周辺のことだ)についての事象なんて、少なくとも僕はとっくに忘れていたからだ。
「そう。志賀のこと」
彼女は続けた。
「髪型や行いや目付きやあと…言いにくいけど雰囲気みたいなもの」
だが彼女の言葉を聞くにつれて僕は混乱してきた。なぜなら志賀については多くが不明であったし、彼女がそこまで入れ込めるほどの情報なんて我々は持ち合わせて無かったからだ。

107お前名無しだろ:2006/11/26(日) 00:29:34 ID:P0RwRXo60
 僕がアパートに帰ると双子はオイルサーディンのような形に
並んでベッドにもぐりこんだままクスクス笑い合っていた。
「おかえりなさい」と片方が言った。
「何処に行っていたの?」
「ディファ有明さ」と僕は言ってネクタイをゆるめ、双子の間に
もぐりこんで目を閉じた。ひどく眠かった。
「何処の団体?」
「メインは何だったの?」
「ノアさ。GHCのタイトルマッチだった」
「どんな試合?」
「ノアは好き?」
「頭から落ちる技ばかりだったな。でもノアがそれほど好きな
わけでもないんだ」
 僕が煙草に火を点けて吸い終わるまでの間、二人は黙っていた。
「悲しいの?」と片方が訪ねた。
 僕は黙って肯いた。
「お眠りなさい」と片方が言った。
 そして僕は眠った。
108お前名無しだろ:2006/11/26(日) 00:32:31 ID:P0RwRXo60
あなたが新日から得られるものは殆ど何もない。似て非なるプロセスに置き換えられたPRIDEもどきだけだ。
失うものは実にいっぱいある。歴代K-1王者の銅像が全部建てられるぐらいの銅貨と
(もっともあなたにボブサップに負けたアーネストホーストの銅像を建てる気があればのことだが)
取りかえすことのできぬ貴重な時間だ。
あなたが東京ドームで孤独な消耗を続けているあいだに、あるものはヤオガチ論に引き付けて
「あずまんが大王」を読み続けているかもしれない。
またあるものは場末感漂う漫画喫茶で2ちゃんねるを眺めながらプロレスにモー娘。を当て込んだ痛々しい
プロレス論を書き込んでいるかもしれない。そして彼らは時代を洞察する同人作家となり、あるいは幸せな引きこもり
となるかもしれない。
しかし新日はあなたを何処にも連れて行きはしない。リプレイ(遺恨試合)のゴングを鳴らすだけだ。
リプレイ、リプレイ、リプレイ・・・、まるで新日そのものがマンネリ化を目指しているようにさえ思える。
マンネリ化について我々は多くを知らぬ。しかしその影を推し量ることはできる。
新日の目的は格闘技にあるのではなく、格闘技を模した茶番にある。人気の拡大ではなく、人気の縮小にある。
プロレスにではなく、WWEの劣化コピーにある。
もしあなたが格闘技や人気の拡大やプロレスを新日に求めれば、あなたは会場で新日のヤングライオン達に容赦なき
報復をうけるだろう。

ハヴ・ア・ナイス・ゲーム
109お前名無しだろ:2006/11/26(日) 22:05:06 ID:dNJXvGDUO
もし僕らのことばがプロレスであったなら、もちろん、これほど苦労することもなかったはずだ。
僕は黙って両手を差し出し、あなたはそれを受け取って静かにロックアップする、それだけですんだはずだ。
とてもシンプルで、とても親密で、とても正確だ。
110お前名無しだろ:2006/11/27(月) 18:07:42 ID:U30Fv+8p0
バンプ・バンプ・バンプ
111お前名無しだろ:2006/11/27(月) 18:12:30 ID:+dlTRkP00
111
112お前名無しだろ:2006/11/27(月) 22:59:18 ID:QeruV0laO
「どうして彼らに何か別の団体を作ってやらないんですか?」
レッスルランド開催真っ直中の後楽園のすみで、僕はサイモンに疑問をぶつけた。
「そんな大した団体じゃなくていいんです。少しのレスラーと小さな道場と新しい練習生、、、それに小鉄さんを足したっていい」
リングの上で彼らは道化めいていて孤独で、ある者は悲痛ですらあった。「僕は彼らの居るべき場所が、ここでは無く別の何処かだという気持ちをどうしても拭えない」
サイモンはパイプ椅子に深く腰掛けたまま黙っていた。
そうしている間にもリングの上では、あるレスラーが吠え踊り、別のレスラーがタイツを脱いでいた。歓声はない。
「これがあなたの手に入れたかったプロレスですか?」
「これは定めなんだよ。彼らはこの新日本という世界の終わりからは抜け出せないんだ」
113お前名無しだろ:2006/11/28(火) 08:37:37 ID:jUJWCKmn0
面白いスレだなあ、ずれたモノもあるけどいい作品も少なからずある。
114お前名無しだろ:2006/11/29(水) 12:27:49 ID:DnicmIg40
「古いプロレスが好きなのね?」
「いや、そういうわけじゃないんだ。その時代にいたらそれはそれで
腹を立てていたと思う」
「すでに失われた物が好きなのかしら?」
「そうだね。そうだと思う」
115お前名無しだろ:2006/11/30(木) 00:28:27 ID:MiNOe2ldO
「あなたのために肘を使ってもいいわ」と三沢さんは額の汗を拭き終えてから言った。「でも、そうすることが本当にあなたのためになるのかどうかは私にもわからないの。あなたは後悔することになるかもしれないわよ」
「どうして?」
「あなたの中の新日性はあなたが考えているほど強固じゃないかもしれないということよ」
「仕方ないさ」と僕は言った。
三沢さんはバッグから緑色のサポーターを取り出すと、素早く回して両腕にぴたりと付けた。
「どう?」
「すごいね」
それは本当にすごい体験だった。三沢さんが肘をひと振りするごとに我々の周りの空気が鮮やかに変わった。
116お前名無しだろ:2006/11/30(木) 13:19:52 ID:9wr2DiaW0
「肘を使わないで試合するのってどんなかんじ?」
「そうね、とても義務的で新聞紙をかじってるようなかんじ。
でもそれはそれでいいの。義務的なのって悪くないし」
「でも肘を使ったほうがすごいんだろ?わざわざ退屈な試合をすること
ないじゃないか」
「たぶん」と三沢さんは言った。
「あなたって本当に何も分かってないのね」
117お前名無しだろ:2006/12/02(土) 00:12:53 ID:abu0jI/5O
猪木をめぐる冒険
118お前名無しだろ:2006/12/03(日) 14:04:38 ID:xCoJeZ1F0
サイモンはなぜ今もはしゃぎ続けるのか
天山はなぜ吠え続けるのか
彼らは知らないのだろうか
新日がもう終わってしまったことを

          ”THE END OF THE NJPW"

119お前名無しだろ:2006/12/05(火) 13:28:17 ID:dzTHrhK10
世界のすべてが道化であっても、
今の僕はageることしかできない。
120お前名無しだろ:2006/12/06(水) 18:41:39 ID:T3yVZ6cjO
限りなく透明に近い飯塚さん
121お前名無しだろ:2006/12/06(水) 18:54:16 ID:VnpaUhJp0
村上違い。
122お前名無しだろ:2006/12/09(土) 14:38:01 ID:ZoJr0wO5O
「だからね、ときどき俺はノアを見まわして本当にうんざりするんだ。どうしてこいつらは総合というものをしないんだろう、ガチもせずに不平ばかり言うんだろうってね」
僕はあきれて永田さんの顔を眺めた。
「僕の目から見ればノアの人々はずいぶんあくせくと身を粉にして試合しているような印象を受けるんですが、僕の見方は間違っているんでしょうか?」
「あれはガチじゃなくてただのショーだ」
と永田さんは簡単に言った。
「俺の言うガチというのはそうゆうのじゃない。ガチというのはもっと主体的に目的的になされるもののことだ」
「たとえばヒョードル戦が決まって他のみんながホッとしている時にヤクザに脅されるとか、そういうことですね?」
「そういうことだよ。俺は大晦日までにタートルポジションを完全にマスターする。パンチと蹴り技とグラウンドはもう出来上がってるし、ロシア語もだいたいはできる。こういうのってギャラ無しでできるか?」
123お前名無しだろ:2006/12/09(土) 17:00:38 ID:ILmEQe/50
ドーム再襲撃
124お前名無しだろ:2006/12/10(日) 03:31:34 ID:5pkOGTtB0
ビンス・ビンス・ビンス
125お前名無しだろ:2006/12/11(月) 22:29:43 ID:aB9X86h80
>>122

> ロシア語もだいたいはできる

激しく笑いました
126お前名無しだろ:2006/12/12(火) 14:34:24 ID:gHIC+eKF0
実写版永沢の顔を永田さんで想像してしまった。
百人の女と寝て、とても大きなペニスを持った永田さん。
127お前名無しだろ:2006/12/13(水) 01:01:48 ID:jfavjy+a0
永田さんの奥ゆかしさに僕らは思わず涙する。
128お前名無しだろ:2006/12/13(水) 13:53:24 ID:rCFB4DV6O
「ねえ、天才児の人って試合がひとつ終わるとすごく性欲がたかまるって話を聞いたけど、本当?」
「さあどうだろう。そういうことはあるかもしれないな。なにしろ試合をしているあいだはかなり変わった神経の使い方をするからね」
「そういう時って誰と寝るの?きまった恋人がいるの?」
「きまった恋人はいない」と私は言った。
「じゃあ誰と寝るの?セックスに興味ないとかホモセクシュアルだとか、そういうんじゃないでしょ?答えたくない?」
「その時どきでいろんな女の子と寝る。」と私は言った。
「私とでも寝る?」
「たぶん寝ない」と私は答えた。
「あまり年が離れたファンの女の子と寝るとどうも落ち着かないんだ」
「私はべつよ」
「そうかもしれない。でも僕としてはこれ以上トラブルのたねを増やしたくないんだ。できることならそっと静かに暮らしたい」
129お前名無しだろ:2006/12/13(水) 21:50:05 ID:TD6DtMNS0
村上春樹風に就活を語るスレ

http://money4.2ch.net/test/read.cgi/recruit/1165581339/l100
130お前名無しだろ:2006/12/15(金) 22:16:17 ID:Yfp1QoFE0
僕と突撃隊の部屋にはピンナップさえ貼られていなかった。そのかわりアントニオ猪木の写真が貼ってあった。
僕が女のヌード写真を貼ると「ねえ、ワタナベ君さ、ぼ、ぼくはこういうのあまり好きじゃないんだよ」といって
それをはがし、かわりにアントニオ猪木の写真を貼ったのだ。僕の部屋に遊びに来た人間はみんなそのアントニオ
猪木の写真を見て「なんだこれ?」と言った。
「突撃隊はこれをみながらマスターべーションするんだよ」と僕は言った。
冗談のつもりで言ったのだが、みんなあっさりそれを信じてしまった。
あまりにもみんながあっさり信じるのでそのうち僕も本当にそうかもしれないと思うようになった。
 七月に誰かが彼のいない間にアントニオ猪木の写真をはずし、代わりに前田日明の写真を貼っていた。
前田日明を見ながらマスターベーションできるのか知りたいというただそれだけの理由からだった。
すごく喜んでやってたぜと僕が適当なことを言うと、誰かがそれを今度は大仁田厚の写真に取り替えた。
今度ばかりは突撃隊はひどく混乱した。
131お前名無しだろ:2006/12/15(金) 23:03:11 ID:1HDsppFd0
>>31
涙流して笑ったw
面白いスレではないか
132お前名無しだろ:2006/12/18(月) 17:20:42 ID:WR9nEuDB0
ageてやるって!
洗面器いっぱいのサラダってことですよ。
133お前名無しだろ:2006/12/18(月) 17:42:48 ID:5ejntsOx0
>>131
失礼だけど>>31は駄作だと思うが・・・
このスレにはもっと面白いのがあるんじゃないか?
134お前名無しだろ:2006/12/18(月) 21:40:25 ID:FqQCDxAX0
まあ村上春樹もいってるように本人が面白い文章がその人にとって
一番良い文章なんだが。
たいした小説じゃないが読ませる、その逆よりずっといい、ってね。
135お前名無しだろ:2006/12/19(火) 00:03:59 ID:x0x/qQl60
>>133
例えばどれ?
136お前名無しだろ:2006/12/19(火) 16:18:35 ID:L/FD1eOG0
長州のケツ毛だろ?
137お前名無しだろ:2006/12/21(木) 00:22:17 ID:qI+SpdHq0
最初のうち前田は、むしろ恐怖と興奮から坂田を殴ったり蹴ったりしていた。
でも坂田が床に倒れてからは、それははっきりとした怒りに変わっていた。
しばらく前、内田のことを考えながら塩試合を見てたときから前田のからだの中に
わき起こってきた静かな怒りは、まだそこに残っていた。そしてそれは今では解き放たれ、
大きく膨らみ、炎のように燃え上がっていた。それは激しい憎しみに近い怒りだった。
前田はもう一度パイプ椅子で坂田の太腿を打ちつけた。
坂田は口のわきから涎をたらして「すんませんでした!」とくり返した。
138お前名無しだろ:2006/12/25(月) 21:59:45 ID:s+wc/WS/0
>>137
これは「ねじまき鳥クロニクル」の金属バットの場面かな?
139お前名無しだろ:2006/12/26(火) 12:01:51 ID:Ep1aB5pBO
「たしかにくろかりがこのへんをうろついているようね」と彼女は言った。「音が聞こえるわ」
「音?」と私は聞き返した。
「鰓で地面を叩くようなオラエーオラエーっていう音。小さな音だけど、注意すればわかるわ。それから気配と臭い」
私は耳を澄まし、臭いをかいでみたが、それらしいものには気付かなかった。
「慣れないとわからないの」と彼女は言った。
「慣れると彼らの話し声も少しは聞きとれるようになるわよ。話し声といっても音波に近いものだけどね。猛牛と同じよ。もっとも猛牛とは違って一部の音波は人間の可聴範囲とかさなっているし、彼らどうしはちゃんと意思疎通がはかれるんだけど」
「じゃあ天才児たちはどういう風にして彼らとコンタクトしたんだろう?しゃべれなければコンタクトしようがないじゃないか?」
140お前名無しだろ:2006/12/28(木) 21:52:51 ID:qp7ubdR6O
age
141お前名無しだろ:2006/12/28(木) 22:07:36 ID:FvOnObkqO
>>139
ハードボイルドワンダーランドだね
142お前名無しだろ:2006/12/29(金) 21:59:53 ID:k8qcz+3D0
「お願い。もう私のことは放っておいて」
谷川は何も言えずにじっと黙っていた。
「本当にもういいのよ」
と兄さんは続けた。
「正直言って、SVになってからとても楽しかった。こんなのって久しぶりだったの。
だからとても嬉しかった。いろんなことがうまく行きそうに思えたわ。カラエフが大はずれ
だった時だって、まあいいや、と思ったの。なにかの間違いだろうってね。だけど、、」
兄さんの声がつまり、涙の粒が兄さんの赤ジャケットを黒く染めていった。
143お前名無しだろ:2006/12/29(金) 22:12:13 ID:k8qcz+3D0
「だけどね、金子やボビーが出たあたりから、何もかもが嫌になっていっちゃったの。
もうこんな素人見たくない、もう夢なんて見たくないってね」
そんなに長く兄さんがしゃべったのは、それがはじめてだった。兄さんがしゃべり終えると、
長い沈黙がまたふたりの間に下りた。
「悪かったと思う」
と谷川は言った。冷ややかな夜の風が、東スポをばらばらにほぐして、フォームの
端まで運んでいった。兄さんは涙に濡れた前髪をわきにやって微笑んだ。
「いいのよ。そもそもここは私のいるべき場所じゃないのよ」
兄さんの言う場所がヘロスのSVを指すのか、それとも暗闇の中を転がり続ける
日本格闘界を指すのか、谷川には分からなかった。


144お前名無しだろ:2007/01/02(火) 11:34:28 ID:hKfnjCLG0
「やれやれ」
ため息をつきながら谷川は、アントニオ・カルロス・ジョビンの「WAVE」を
口ずさんでみた。でも、何も答えは見つからなかった。
145お前名無しだろ:2007/01/03(水) 02:47:57 ID:H06XlwQM0
それにヌルヌルも加わったな。
146お前名無しだろ:2007/01/05(金) 12:15:40 ID:KzBa5vnU0
「もし僕らの言葉がオイルであったなら」
147お前名無しだろ:2007/01/06(土) 22:53:05 ID:gKbAQuigO
「完璧なレスリングなどといったものは存在しない。完璧なカート・ヘニングが存在しないようにね」
僕が大学生のころ偶然に知り合ったあるレスラーは僕に向かってそう言った。僕がその本当の意味を理解できたのはずっと後のことだったが、少なくともそれをある種の慰めとしてとることも可能であった。完璧なレスリングなんて存在しない、と。
148お前名無しだろ:2007/01/06(土) 23:09:12 ID:gKbAQuigO
僕はレスリングについて多くを中西に学んだ。ほとんど全部、というべきかもしれない。
不幸なことに中西自身は全ての意味で不毛なレスラーであった。観ればわかる。
試合の組み立ては分かり辛く、技は出鱈目であり、アピールは稚拙だった。
しかしそれにもかかわらず、彼はレスリングを武器として戦える数少ない非凡なレスラーの一人でもあった。
蝶野、武藤、橋本そういった彼の同時代のレスラーに伍しても、中西のそのファイトスタイルは決して劣るものではないだろう、と僕は思う。
ただ残念な事に中西には最後までプロレス頭は備わらなかった。結局のところ、不毛であるということはそういったものなのだ
149お前名無しだろ:2007/01/08(月) 02:23:04 ID:TDlnfxM20
となると中西は最後は傘をさしてエンパイアステートビルから飛び降りるのか。
150お前名無しだろ:2007/01/08(月) 03:48:59 ID:ypV6WTCg0
>>60
何コラ、で受けたw
151ダンス・ダンス・ダンス:2007/01/11(木) 00:14:09 ID:OSKRQciS0
斤は現実に存在するプロレス団体だ。東京の街のあまりぱっとしない一角にある。
僕は何年か前にそこの興行を何度か見に行ったことがある。いや、きちんと思い出そう。
はっきりとさせておこう。あれは何年前だ?四年前、いや、正確に言うと四年半前だ。
僕はまだそのとき二十代だった。僕は女の子と二人でそのプロレス団体に見に行った。
彼女がそのプロレス団体を選んだ。そのプロレス団体を見に行こうと彼女が言ったのだ。
そのプロレス団体を見なくては、と彼女は言ったのだ。もし、彼女が要求しなかったら、
僕は斤なんてまず見なかっただろうと思う。
152お前名無しだろ:2007/01/13(土) 17:31:47 ID:taHdr8C30
save
153お前名無しだろ:2007/01/15(月) 09:49:36 ID:/Izc2q5M0
ゆだねてみないか?
154お前名無しだろ:2007/01/17(水) 12:40:07 ID:L1XaywnZ0
「夜になるとサクは」
155お前名無しだろ:2007/01/20(土) 07:21:34 ID:fH/Bs8f40
僕は四十七歳で、Hero'sのスーパーバイザー職に就いています。
これは―あなてにも容易に想像がつくとおもうのですが―おそろしくつまらない仕事です。
156お前名無しだろ:2007/01/22(月) 12:34:34 ID:K3GG3b/x0
アキラ通信
157お前名無しだろ:2007/01/22(月) 18:47:52 ID:ZpdKk/Of0
「業界から干されちゃうけどね、それでもいいかい?」と天龍は言った。
天龍の経験から言って、リング内外で台本の存在をほのめかすような発言は
まず百パーセントの確率で同業者とファンの人々から不興を買うことになる。
「いいさ。それくらいのことは覚悟してるよ」と北尾はなんでもなさそうに答えた。
「干されてもいいんだね」と天龍は念を押した。
北尾は肯いた。
「誰かに嘘をつくのは本当は好きじゃないんだ」と北尾は別れぎわに言った。
「その嘘がたとえ誰一人傷つけないとわかっていても、嘘はつきたくない。
そんな風に誰かをだましたり利用したりしながら残りの人生を生きていきたくはないんだ。」
 天龍はそれに対して何か言おうと思ったが、言葉がうまく出てこなかった。
彼の言ってることの方が正しいと思ったからだ。
158お前名無しだろ:2007/01/22(月) 23:16:19 ID:RMWQ+POI0
「職人不足」と彼女は言った。
「失礼?」
「このスレには決定的に職人が足りないのよ」
159お前名無しだろ:2007/01/23(火) 10:59:15 ID:Y8UJdHkC0
職人不足はプロレス界も同じ。
160お前名無しだろ:2007/01/23(火) 22:41:14 ID:KgomTuhr0
「止めても無駄なことはよくわかった」
と虎は言った。
「しかしガチの興行は君が考えているよりずっと大変なものだよ。プロレスとは何から何まで
ちがうんだ。スポンサーはつきにくいし、塩試合は長くつらい。永遠に君はウザい格オタを
相手にしなくてはならないんだよ」
「そのこともよく考えたんだ」
「しかし心は変わらないんだね?」
「変わらない」
と佐山は言った。
「君のことは忘れないよ。ガチの世界で新しいことをすこしずつ学んでいく。学ばなくちゃ
ならないことはたぶんいっぱいあるだろう。いろんな技術や、いろんな練習法や、
興行のノウハウをね」
161お前名無しだろ:2007/01/23(火) 22:48:04 ID:KgomTuhr0
「そろそろ俺は行くよ」
と虎は言った。
「しかしこの先二度と会えないというのはなんだか妙なものだな。最後に
何て言えばいいのかがわからない。きりの良いことばがどうしても思い
つけないんだ」
虎はマスクのゆがみを直して、ひもを絞め直した。
「幸せになることを祈ってるよ」
と虎は言った。
「君のことは好きだったよ。俺の正体が君だということを抜きにしてもね」
「ありがとう」
と佐山は言った。
162お前名無しだろ:2007/01/24(水) 12:00:36 ID:+xWoUMh+0
気づいたら司馬スレより伸びてたな。
まあ向こうは2スレ目なわけだけど・・・

両スレともに長続きすることを祈る
163お前名無しだろ:2007/01/24(水) 17:27:38 ID:6dCoArmUO
>>161虎=影か。
ん〜深いぜ。
164お前名無しだろ:2007/01/24(水) 17:57:49 ID:IuFlMgJm0
まあ佐山自体がリアルに世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
だしね。
165お前名無しだろ:2007/01/24(水) 23:09:04 ID:lKNP0DvA0
既に現役を退いた一人の男としてもう一度リングのコーナー・ポストに全速力でぶつかり、
もう一度虎のマスクを被って四角いジャングルの下で目を覚ましたとしたら、
僕は今度は何と叫ぶのだろう?わからない。いや、あるいはこう叫ぶかもしれない。
おい、ここは僕の場所でもない、と。
166お前名無しだろ:2007/01/26(金) 14:07:22 ID:OZIi5Vk00
スレが佐山づいてるな
167お前名無しだろ:2007/01/29(月) 01:39:14 ID:VatsPGSH0
田村ははじめのうち、ゆっくりと動いた。それからすこしずつスピードをあげ、
ついにはつむじ風のように田村は戦った。
田村の体はもう田村の体ではなかった。田村の手や足や頭は、田村の思いとは無関係に
奔放にリングの上を舞った。そんな動きに身をまかせながら田村は客の気持ちや相手の意思や
次のムーブをはっきりと聞きとることができた。プロレスとはそういうものだという気がした。
田村はミドルキックを放ち、掌底を打ち込み、片足タックルをしかけ、
グランドで相手の上をクルクルと回った。
クルクルと回ると頭の中で白い光の玉がはじけた。
168お前名無しだろ:2007/01/29(月) 01:46:45 ID:VatsPGSH0
ハンはちらりと田村を見た。
ハンは田村にあわせてグランドで切り返し、クロスヒールホールドを披露した。
ハンの中でも光がはじけるのが、田村には感じられた。
田村はとても幸せな気持ちになった。そんな気持ちになったのはデビューして
はじめてのことだった。
<どうだい、ガチなんかで戦っているよりはずっと楽しかろう>
と前田が言った。
169お前名無しだろ:2007/01/29(月) 16:54:13 ID:bK4jc5qd0
前田の台詞には説得力があるな。
170お前名無しだろ:2007/01/31(水) 18:03:05 ID:F8STBxKs0
正直微妙
171お前名無しだろ:2007/02/01(木) 00:18:05 ID:UDGb7Yq+0
「ねえ、俺たち二人でタッグを組まないか?きっと何もかも上手くいくぜ。」
「手始めに何をする?」
「ビールを飲もう。」
後藤と斉藤は近くの自動販売機で缶ビールを二本ばかり買って海まで歩き、砂浜に寝ころんで
それを全部飲んでしまうと海を眺めた。素晴らしく良い天気だった。
「俺のことはヒロって呼んでくれ。」
と斉藤が言った。
172お前名無しだろ:2007/02/01(木) 00:24:46 ID:UDGb7Yq+0
二人はビールの空缶を二本海に向かって放り投げてしまうと、堤防にもたれ
頭の上からガウンをかぶって一時間ばかり眠った。
目が覚めた時、一種異様なばかりの生命力が二人の中にみなぎっていた。
不思議な気分だった。
「年間250試合だってできる。」
と後藤は斉藤に言った。
「俺もさ。」
と斉藤は言った。

しかし実際に後藤がしなければならなかったのは、金髪を黒く染めて
娘の受験の為の面接に行くことだった。
173お前名無しだろ:2007/02/01(木) 09:15:42 ID:aK152ORC0
何だこの二本は!
174お前名無しだろ:2007/02/04(日) 13:50:44 ID:hYxIeB970
age
175お前名無しだろ:2007/02/04(日) 14:21:26 ID:LfDVrOWDO
ビール持ってこいオラ!!!!
176お前名無しだろ:2007/02/07(水) 10:28:41 ID:MYgHluhu0
Mr.BD age
177お前名無しだろ:2007/02/07(水) 23:30:06 ID:ISpF5CZC0
「でもね、よく考えてみろよ。条件はみんな同じなんだ。潰れかけのWJに入団したみたいにさ。
もちろん運の強いのもいりゃ運の悪いのもいる。アマの実績がある奴もいれば無い奴もいる、
イケメンもいればブサイクもいる。だけどね、ガチで強いプロレスラーなんて誰もいないんだ。
みんな同じさ。たまたま勝ったレスラーはいつか負けるんじゃないかとビクついてるし、
永田さんは永遠に勝てないんじゃないかと心配してる。みんな同じさ。
だから早くそれに気付いたプロレスラーがほんの少しでもガチで強くなろうって努力
すべきなんだ。振りをするだけでもいい。そうだろ?
ガチが強いプロレスラーなんてどこにも居やしない。
強い振りのできるプロレスラーが居るだけさ。」
178お前名無しだろ:2007/02/07(水) 23:37:54 ID:ISpF5CZC0
「ひとつ質問していいか?」
高田は肯いた。
「あんたは本当にそう信じてる?」
「ああ。」
桜庭はしばらく黙りこんで、ビール・グラスをじっと眺めていた。
「嘘だと言ってくれないか?」
桜庭は真剣にそう言った。

高田は桜庭を家まで送り届けてから、一人でDSE本社に立ち寄った。
「話せたかい?」
「話せたよ。」
「そりゃ良かった。」
榊原はそう言って、高田の前にハッスルの台本を置いた。
179お前名無しだろ:2007/02/10(土) 11:35:40 ID:fejad/K80
永田さん、、。
まあ高田には言われたくないよな。
180お前名無しだろ:2007/02/10(土) 23:05:24 ID:wXAlfkJ60
二人は布団にくるまったままサンドウィッチを齧りながら
テレビでプロレスの試合を見た。小橋×健介だった。
互いに胸を突き出してチョップを受け合ったところで彼女はしばらく唸った。
「何故あんなに一生懸命になって技を受けるの?」
彼女は勇敢に胸を突き出す佐々木健介を指して永田さんにそう訊ねた。
「誇りを持ち続けるためさ。」
「ム、、、、。」
彼女はパンを頬ばったままプロレスラーの誇りについてしばらく考え込んだ。
いつものことだが、彼女の頭の中でいったい何が起こっているのか、
永田さんには想像もつかなかった。
181お前名無しだろ:2007/02/10(土) 23:09:44 ID:wXAlfkJ60
「ねえ、総合にリベンジしたい?」
「もちろん。」
「大晦日に試合したい?」
「今年の?」
「いつか、、、もっと先によ。」
「もちろん出たい。」
「でも私が訊ねるまでそんなこと一言だって言わなかったわ。」
「言い忘れてたんだ。」
「、、相手は誰がいい?」
「とにかく強い奴。」
182お前名無しだろ:2007/02/10(土) 23:21:13 ID:wXAlfkJ60
「男祭り?ダイナマイト?」
「ミルコかヒョードル、それかノゲイラ。」
彼女はコーヒーで口の中のパンを飲み下してからじっと永田さんの顔を見た。

「嘘つき!」

と彼女は言った。
しかし彼女は間違っている。永田さんはひとつしか嘘をつかなかった。

183お前名無しだろ:2007/02/11(日) 07:43:23 ID:D6GLb/w8O
永田さん・・・
184お前名無しだろ:2007/02/13(火) 10:51:51 ID:OB1Y9roZ0
司馬スレでも村上スレでも永田さん人気は不滅だね。
185お前名無しだろ:2007/02/13(火) 11:33:29 ID:4mHLfNfJO
>>184
俺は司馬スレでネタを書いているんだけど、
ネタが尽きた時はよく永田さんに頼るね。
本当に永田さんはネタにしやすいし書きやすい!
永田さんは、そういう意味ではとても偉大なレスラーだよ。
ただ、一つだけ欠点をあげるなら永田さんは、お笑いキャラになってしまっているからシリアスな場面にはあまり使えないとこかな。
何はともあれ村上スレの皆様、お互い頑張りましょう。
186お前名無しだろ:2007/02/13(火) 20:59:07 ID:Hr6B975a0
みのるの好物はあげたての唐揚げである。
彼はそれを深い丼に何個か重ね、その上にマヨネーズを注ぎかける。
船木が初めてみのるの家を訪れた時、彼は五月のやわらかな日ざしの下に
テーブルを持ち出して、その不気味な食物を胃の中に流しこんでいる最中だった。
187お前名無しだろ:2007/02/14(水) 13:57:50 ID:KVGsqbANO
僕は、かつてファンが暴徒となって押し寄せた
今はなきある国技館の跡地にいた。
黄昏は突然に訪れ、気がついたとき
僕とアゴ男のふたりだけがその場に取り残されていた。
「どうして、あのとき舌をだしてたんだい?」
僕は、アゴ男に訊いた。
「・・・どうしてって、そりゃ、舌でなくても良かったのかって君は思うの
かい?」
アゴ男は答えた。
「舌を出すってことは、・・・」
アゴ男は続けた「うん、たぶん舌でなくても良かったって思う、今となって
は(今となっては)でも、あの時はしかたがなかったんだ、ピーターの野郎
が・・・。」
「ピーターがどうかしたのかい?」僕は訊いた。
「今となってはもう言い訳はしないよ。あの時僕が舌をだして気絶したふり
をしてたってのはもうみんなが知っていることだし・・・。・・もう言い訳
はしない。」
「やれやれ」
家の冷蔵庫にある1ダースのビール缶を思い出して僕は溜め息をついた。

188お前名無しだろ:2007/02/15(木) 18:22:04 ID:U9j77Liq0
>>185
Uインターとの対抗戦までの永田さんならシリアス路線でも行けたのに、、。
どこで彼のプロレス人生が狂ったのか。
189お前名無しだろ:2007/02/15(木) 23:51:20 ID:fujGNS/50
決定的なのはミルコ戦の半笑いだな。
190お前名無しだろ:2007/02/17(土) 09:09:02 ID:RhIqb7gn0
「アントニオ猪木?」
「そういう名前のおっさんがいるんだよ。新日道場のリングサイドの
ポスターになってるおっさんだよ。アゴが出ていて、赤いタオルを首から
かけていて・・・知らない?」
「申し訳ありませんが、ナガタはその方を知らないと思います。」
「そうか、アントオ猪木を知らねえんだ。今どきめずらしいねえ。
でもまあいいや。もっともそのおっさん自体は抽象概念なんだよ。人でもなく、神でもなく、仏でもない。ただの銭ゲバなんだ。ただし抽象概念だからかたちはない。でも何か外見が必要だから、たまたまそういう格好をしてるんだ。」
ナガタさんは困った顔をして、手のひらで、ブサイクな顔を
ゴシゴシとこすった。

191お前名無しだろ:2007/02/17(土) 17:25:47 ID:RhIqb7gn0
「探しものがうまく見つからないときには、人は熟睡できないものだよ、イノキちゃん。」
猪木さんはぽかんと口を開けて相手の顔を見つめた。
「探しもの?なあおじさん、なんで俺が探しものをしてるってわかるんだい?」
「ちゃんとアゴに書いてあるもの。イノキちゃんは根っから正直なひとなんだよ。そんなこと何もかも全部アゴに書いてある。見る人が見ればイノキちゃんの頭の中なんぞスカスカのへちまみたいなもんだ。」
192お前名無しだろ:2007/02/18(日) 15:49:06 ID:jylp5h4/0
「君はムラカミハルキの本を読んだことがあるかい?」
僕は中古のスバルについていた、時代遅れなラジオ・カセットのボリュームを絞りながら
>>190のねずみ男に尋ねた。
「君は」僕は続ける。
「彼の文体を模写する程度に、ムラカミハルキを読んじゃいない。>>190-191はただの作文だ」
>>190のねずみ男は何か言いかけて、ふと口をつぐむ。
そんなねずみ男を見ながら、僕はマルボロ・メンソールを一本取り出して火をつけ、
ため息と一緒に煙を吐き出す。
「やれやれ」。

193お前名無しだろ:2007/02/18(日) 16:17:49 ID:psUSKL0w0
猪木さんのやるカンガルーキックという
いささか時代遅れのようなネーミングのその技が僕は個人的に好きだった。
猪木さんほど見ている人の存在基盤を付け根から揺り動かしてしまうような、
そんなレスラーは他にいない、残念ながら。というべきなのだろう。おそらく。
194お前名無しだろ:2007/02/20(火) 00:26:46 ID:m3Tfn3g10
ニュージャパンの選手はイカしてる。
ファッションだって御機嫌さ。
永田さんのウエストポーチ、レガースの羽、
うん、ノックアウトだね。
中西学の奇妙な標準語、
ハートにグッときちゃうのさ。
長州のグッドタンニング、
君をうっとり暖めてくれる。

プライドの選手がみんな、
ニュージャパンの選手ならね、、、、。
195お前名無しだろ:2007/02/20(火) 00:36:18 ID:6ovtw0tN0
「ジサクジエンっていうのは、キミみたいな人の事をいうの?」
そう問いかける僕に、>>192は何か言いかけて、ふと口をつぐむ。
僕はため息の代わりに唾を吐き捨てる。
「やれやれだぜ」
196お前名無しだろ:2007/02/20(火) 15:37:06 ID:y6Hb8dN80
>>194
タンニングでコーヒーふいた。
197お前名無しだろ:2007/02/21(水) 01:32:17 ID:5o3ex8LHO
「ニュージャパンが僕らにもたらすイメージは、ひらたく言うと『とどかなさ』みたいな物なんだ」
「とどかなさ」
彼女は、熱いものを少しづつ飲みこむように、ゆっくりとその言葉を繰り返した。
彼女の目は何かを追っているようだった。例えばサイモンの独りよがりや、永田さんの微笑みのような形を持たない何かが僕と彼女の間にむくむくと割って入って来ているみたいだった。
「ニュージャパンについて君は何か知ってるのかい?」
「なぜそう思うのかしら?」
僕の問いに答えた彼女の顔から表情がどんどん無くなっていった。Uインター戦の最後の高田延彦のように。
198お前名無しだろ:2007/02/23(金) 00:28:25 ID:KnKys9Po0
家に帰る途中、ずっと口笛を吹いていた。それはどこかで聴いたことのある
メロディーだったが、題名はなかなか浮かんでこなかった。
ずっと昔の唄だ。僕は海岸通りに車を停め、暗い夜の海を眺めながら
なんとか曲名を思い出そうと努力してみた。
それは「パワーホール」だった。こんな歌詞だったと思う。

「長州〜リキリキ足が短い♪
       長州〜リキリキ腕も短い♪」


確かに良い時代だったのかもしれない。
199お前名無しだろ:2007/02/23(金) 09:12:00 ID:2pTMITAi0
>>198
破壊王の作詞だな。
200200:2007/02/23(金) 19:02:25 ID:RC0UzI2B0
200
201お前名無しだろ:2007/02/27(火) 13:16:01 ID:OKHXXk/r0
そもそも村上春樹の健康的な生活&スノッブな趣味は
ギミックなのかガチなのか。
202お前名無しだろ:2007/02/27(火) 20:36:38 ID:/YGoA8wU0
洗面器いっぱいくらいの野菜と、毎日のランニングはガチ。
そんなにみんな車を運転しなくていいじゃないか、と言いながら、
いつのまにか免許を取って日本でも運転してたのはヤオ。
安西水丸が美人だ美人だ言ってた奥さんがそこそこブサイクだったのはガチ。
203お前名無しだろ:2007/03/03(土) 21:13:08 ID:Awl8eR6J0
>>202
> 洗面器いっぱいくらいの野菜と、毎日のランニングはガチ。

ウォークマンを腕やら腰やらに付けてランニングしてたらしい。
もちろんカセットテープのヤツ。

今でこそ、ポータブル・オーディオは軽くて性能がいいから問題ないが
当時はかなり浮いた姿だったと思う。
204お前名無しだろ:2007/03/05(月) 11:20:45 ID:zAWo1jyl0
安西の似顔絵だけはガチ。
しかしさすがに村上も老けた。もう男の子じゃないって自分で言ってるし。
205お前名無しだろ:2007/03/06(火) 21:12:05 ID:7szgXwo90
「ねえ、社長」と橋本は言った。
「私、AMGに乗りたいの。いつか私のためにAMGを買ってくれる?」
「ああ、いいよ。いつかね」と藤波は言った。
「いつかって、いつ?」
「会社のお金がたまったらね。お金がたまったらそれでAMGを買おう」
「会社も貯金箱を持ってるの?」
「うん、大きいのを持ってるよ。リングくらい大きい奴を持ってるんだ。
それくらいお金をためないとAMGは買えないからね」
「会長にたのんだらAMGを買ってくれると思う?
会長はお金持ちなんでしょう?」
「そうだよ」と藤波は言った。
206お前名無しだろ:2007/03/06(火) 21:22:07 ID:7szgXwo90
「会長は野毛の道場くらい大きい貯金箱を持ってるんだ。お金もいっぱい
入っている。でも借金の返済が多すぎてなかなか中のお金を取り出す事ができないんだ」
橋本はそれについてしばらく一人で考えこんでいた。
「でも会長に一度訊ねてみていいかしら。AMGを買ってほしいって」
「そうだね、一度聞いてみるといいな。ひょっとしたら買ってくれるかもしれないね」
ドームの駐車場に着くまで藤波は橋本とAMGの話をしていた。
どんな色のAMGがほしいのか。AMGに乗ってどこに行きたいのか。
AMGの助手席に乗せるのは女房なのか。
橋本を駐車場からエレベーターに乗せると、藤波はまっすぐ猪木と佐山の待つ
部屋に向かった。
207お前名無しだろ:2007/03/06(火) 21:29:55 ID:7szgXwo90
橋本×小川のブックを聞いて、藤波は机に両手を載せ、目を閉じた。
藤波は自分の体の中にいるようには思えなかった。
藤波は自分の体がどこからか間に合わせに借りてきた一時的な入れものみたいに
感じられた。
橋本は今夜どうなってしまうんだろう、と藤波は思った。
藤波はできることなら橋本にすぐにでもAMGを買ってやりたかった。
いろんなものが消えうせてしまう前に。
なにもかもが損なわれて駄目になってしまう前に。
208お前名無しだろ:2007/03/06(火) 22:03:05 ID:Zw97PoP80
>>205->>207

オチがいいね。
209お前名無しだろ:2007/03/07(水) 14:05:16 ID:3bKXoePh0
実際には藤波はブック(というか不穏な空気)なんて全然知らなかったろうな。
さすがに東スポで結果を知ったってことはなかったろうけど。
210お前名無しだろ:2007/03/12(月) 01:27:24 ID:j1ddPK6I0
ハイホー!age

211お前名無しだろ:2007/03/13(火) 13:35:50 ID:R7/esmV90
「司馬遼太郎(他)風にプロレスを語るスレ」は落ちたというのに…っ!
212お前名無しだろ:2007/03/14(水) 21:14:32 ID:SZqNlRts0
ゴングが廃刊に追い込まれたあとでも、竹内さんは僕らに向けて記事を書いてきて、それは日本スポーツ出版の会社内での問題であり、
ゴングの売上げが悪かったわけでも、プロレス全体のジャンルの人気が衰えたわけではないと強がった
213お前名無しだろ:2007/03/15(木) 00:27:02 ID:I+lqRhps0
西村修は実に多くのものを憎んだ。長州力、癌、ハイスパート、ラリアート、結婚、、、。
数え上げればキリがない。
しかし彼が好んだものは三つしかない。酒と独身生活とゴッチスタイルである。
彼は藤原と木戸を除けば恐らく日本一の完璧に近いゴッチスタイルを身につけていた。
ステーキの焼き方と犬の殺し方意外は全てである。
中でも自慢はヘッドシザースを倒立で抜け出す技で、
「俺はいつかこれでノゲイラの三角をエスケープするのさ」
というのが彼の口癖だった。
214お前名無しだろ:2007/03/17(土) 19:52:31 ID:1gbhIhp60
「小力ちゃん」とその老人は呼んだ。よくとおるきんきんとした声だった。
御小は呆然としてその男の顔を見ていた。「あんたは――――」
「そうだ。サンダーズ大佐だ」
「そっくりだ」と御小は感心して言った。
「そっくりではない。わしがカーネル・サンダーズだ」
「あのフライド・チキンの」
老人は重々しくうなずいた。「そのとおり」
「ナニコラ。しかしこのタコ、どうして俺の名前を知ってんだ?しかもネタの方と間違えてんぞ」
「『キレてないですよ』Tシャツを着てるじゃないか。たとえ何があろうと『キレてないですよ』と
いえば長州小力じゃないか」

「やれやれ」御小は力なく溜息をついた。「ナニコラ、タココラ」と言い返せす気力はなかった。
四国についてからいろいろなことがあり過ぎて、少し疲れていたからだ。
215お前名無しだろ:2007/03/19(月) 14:36:29 ID:gFBp0shKO
御小・・・・
216お前名無しだろ:2007/03/22(木) 18:32:41 ID:OpVB8HtbO
こんなもんか
217お前名無しだろ:2007/03/25(日) 11:33:50 ID:qh7IzHSl0
「それほとても難しいことみたいに思えるけれど」と老母は言った。
「難しいことだよ、とても」と僕は言った。「でもやってみる価値はある。三沢光晴みたいな
唄の下手なデブでもエースになれたんだ。努力がすべてだ」
彼女は少し笑って、そして肯いた。「あなたの言うことなんとなくわかるような気がする」
「わかりがいい」と僕は言った。そしてエシジシを入れたが、僕の年代モノのラングレーは
うまくエンジンがかからなかった。あの事件以来、調子が悪い。
だいたい、ラングレーを見てカローラUと間違えるヤツだっていたのだ。
失礼としかいいようがない。
「でもどうしてそんなに三沢光晴ばかり目のかたきにするのかしら?」と彼女は言った。
「どうしてだろう」
「本当は好きだからじゃないの?」
「今度ゆっくりそれについて考えてみよう」と僕は言った。
218お前名無しだろ:2007/03/28(水) 21:11:20 ID:ieoq59q00
「長州ちゃん」とそのガラの悪そうな皮ジャンの男が呼んだ。耳障りな声だった。
御小は呆然としてその男の顔を見ていた。「あんたは――――」
「そうじゃ。大仁田厚じゃ」
「そっくりだ」と御小は感心して言った。
「そっくりではない。オレが大仁田厚じゃあ!」
「あの国会議員の」
皮ジャンは重々しくうなずいた。「そのとおりじゃ」
「ナニコラ。しかしこのタコ、どうして俺の名前を知ってんだ?何でオレに声をかける?」
「新日本のジャージを着とるじゃろうが。たとえ何があろうと新日本プロレスといえば
長州力じゃろうが!」

「やれやれ」御小は力なく溜息をついた。「ナニコラ、タココラ」と言い返せす気力はなかった。
借金のためとは言え、またこんなのを相手に電流爆破マッチをやらなければならないのか?
「ひどく疲れてるんだ」と御小は言う。そして両手で顔をつつむようにしてあくびをした。
219お前名無しだろ:2007/03/29(木) 03:32:59 ID:aeYiL6/+O
そう、猪木の子供たちはみな踊るのさ
220お前名無しだろ:2007/04/01(日) 12:35:12 ID:X+WOdc0P0
フミは今度は平板な視線で長州をしばらく見ていた。そして「変な人」と言った。
彼女にそう言われると長州は自分が本当に人生の敗残者になったような気がした。
たぶん悪気はないのだろう。でも彼女にそう言われると結構こたえるのだ。
221お前名無しだろ:2007/04/03(火) 23:31:30 ID:cQE7gTlm0
hoshu
222お前名無しだろ:2007/04/04(水) 15:08:40 ID:5iv7vXD30
222
223お前名無しだろ:2007/04/08(日) 11:50:09 ID:mf+3tA2V0
「顔色が悪いよ」とSSマシンが言った。
 僕はソファーに腰を下ろし、何も言わずに缶ビールのふたを開けてひとロ飲んだ。
「きっと風邪をひいたんだよ。慣れない人達はここの冬は寒いからね。空気も湿っているし。
今日は早く寝た方がいい」
「いや」と僕は言った「今日は寝ないよ。ここでずっと友だちを待つんだ」
「今日来るってわかるのかい?」
「わかるよ」と僕は言った。「彼は今夜十時にここに来るんだ」
SSマシンは何も言わずに僕を見ていた。目を覆ったマスクからには表情は窺えなかったが明らかに狼狽してるようだった。
「今晩荷づくりをして、明日には引きあげるよ。彼に会ったらそう伝えておいてくれ。たぶんその必要も
ないと思うけれどね」
SSマシンはわかったといったに肯いた。「あんたが行ってしまうとさびしいよ。まあ仕方ないことだとは
思うけどね。ところでチーズ・サンドウィッチをもらっていいかな?」
「いいよ」
SSマシンは紙ナプキンにサンドウィッチをくるみ、ポケットに入れると、手袋をはめた。
「会えるといいね」と帰り際にSSマシンは言った。
「会えるさ」と僕は言った。
224お前名無しだろ:2007/04/09(月) 02:24:20 ID:fsaOgKODO
何故にマシン?
225お前名無しだろ:2007/04/12(木) 03:23:28 ID:FhQiJUN3O
「中の人がバレバレ」つながりではないかと
226お前名無しだろ:2007/04/12(木) 22:34:58 ID:xGlCTrsx0
僕「お前、鼠だろ!」
227お前名無しだろ:2007/04/14(土) 21:00:23 ID:0WGzF+Hf0
「あなたはアナウンサーで、新日本の実況席にたった一人で座っているの。
そして毎日毎日、勝敗が予め決まっている退屈な八百長試合を、熱を込めて
実況しているの。ある日、あなたの中で何かが死んでしまうの」
「死ぬって、どんなものが?」
彼女は首を振った。「わからないわ。何かよ。東の入場口から上がって、決
められた時間通りに中のリングを通り過ぎて、西の出口に下がっていく猪木
を毎日毎日繰り返して見ているうちに、あなたの中で何かがぷつんと切れて
しまうの。そしてあなたは場外にマイクを放り出し、そのまま何も考えずに
ずっと西に向けて歩いていくの。太陽の西に向けて。そして憑かれたように
何日も何日も飲まず食わずで歩きつづけて、そのまま地面に倒れて死んでし
まうの。それが、ヒステリア・喋りアナ(ウンサー)」
228お前名無しだろ:2007/04/18(水) 18:37:16 ID:MV8WNzrhO
実況席にたったひとりで座って猪木の試合を実況するっていう
シチュエーションに無理がある
229お前名無しだろ:2007/04/21(土) 22:42:35 ID:SdQaG/5P0
              文書T

<団体が立ち上がったら、興行が行われるものなんです>
230お前名無しだろ:2007/04/25(水) 17:23:17 ID:cdvqcolOO
age
231お前名無しだろ:2007/04/26(木) 22:53:18 ID:m/MGpsoP0
「ねえ、あなた、私がスパゲッティ屋に入った時、あなたは何て言ったか
覚えてる?」
「料理を注文しただけじゃないかな。」
「違うわ。あなたは、プロレスの複雑さは、まるでスパゲッティのようだ、
こう言ったのよ。」
プロレスの複雑さは、まるでスパゲッティのようだ、そう、確かにあの頃
の自分にとって、プロレスの複雑さはスパゲッティのようだった。この
アングルの伏線はこのブックなのかと辿ると、実はそのブックが別のアン
グルの伏線になっていて、それは辿れば辿る程、因果関係が掴めなくなっ
ていくのだ。あの頃の自分は、本当にそれで迷った。
けれども、今ならその意味が分かる。いくつもの試合の因果関係を分からな
くさせることが、1つ1つの試合が八百長だと知っている観客を楽しませる作
戦だったのだ。プロレスを考えた人というのは本当に頭の良い人だと思う。
232お前名無しだろ:2007/05/01(火) 11:45:52 ID:kSqnqHNb0
某老舗団体が駄目になってしまうのは、
wjが崩壊してしまうことよりもの悲しい。
233お前名無しだろ:2007/05/04(金) 18:46:26 ID:2SGllhxUO
新日はあすからもまた普通に興行を行うだろう。だがそれは以前の新日ではない。
誰も気がつかないかもしれないが新日の姿をした別のものなのだ。
うまく表現出来ないが新日の中で何かが決定的に損なわれてしまったのだ。
234お前名無しだろ:2007/05/07(月) 17:39:36 ID:smO77AnI0
駄目になった新日本
235お前名無しだろ
ストーブを消しているせいで、部屋は冷えびえとしていた。僕は毛布にくるまってぼんやりと闇の奥を眺めた。
深い井戸の底にうずくまっているような気がした。
時間が流れた。闇の粒子が僕の網膜に不思議な図形を措いた。措かれた図形はしばらくすると間もなく
崩れ、別の図形が描き出された。水銀のように静止した空間の中で、闇だけが動いていた。
時計が九時を打った。九つめの鐘がゆっくりと暗闇の中に吸いこまれてしまうと、沈黙がその間隙にもぐりこんだ。

「話していいかな?」と山田が言った。
「いいとも」と僕ほ言った。

「約束の時間より一時間も早く来すぎちゃったよ」と山田は済まなそうに言った。
「いいさ。見てのとおりずっと暇なんだ」
山田は静かに笑った。彼は僕の背後にいた。まるで背中あわせに座っているような感じだった。
「なんだか昔みたいだな」と山田は言った。

「海外修行前後のことを話すのはとても辛い」と山田は言った。
「この辛さはどんな風にしゃべっても君にわかってもらえないんじゃないかと思う」
「質問して構わないか?」
「構わないよ」
「君はもう死んでいるんだろう?」

山田が答えるまでにおそろしいほど長い時間がかかった。ほんの何秒であったのかもしれないが、それは僕にとって
おそろしく長い沈黙だった。口の中がからからに乾いた。
「そうだよ」と山田は静かに言った「山田恵一は死んだよ。リバプールの風になったんだ」