301 :
小橋建太:
今日で退院だ。
ようやく第一段階突破。これからが始まりだ。
入院生活ですこし体重が落ちてしまったが、心も軽かった。
これで本格的にリハビリを開始できる(握り拳)。
お世話になった病院の方々に挨拶をした。
鈴木さんの姿が見えない。聞けば、退院が決まったのでもう病院を去ったとのこと。
一言くらい挨拶してくれてもいいのに。お礼の一つも言えないとは思わなかった。
俺のためにわざわざ来てくれた鈴木さん。
以前と同じくリハビリを全力でサポートしてくれた。
もう会えないのかと思うと、胸が締め付けられるようだった。
浅子さんが車で迎えに来てくれた。院長先生や看護師さん達に見送られて病院を出る。
小さくなっていく皆さんの中に鈴木さんがいない。寂しかった。
呆けたように窓から外を見ていると。浅子さんが不意に車を路肩に止めた。
どうしたんだろうと思う間もなく、助手席に誰か乗り込んできた。
「紹介するよ。短期だけど俺のサポートについてくれることになった、鈴木さんだ。」
ニヤニヤ笑いの浅子さんの隣に、見慣れた笑顔があった。
浅子さんが何か説明してくれているのだが、頭に入らない。
車はディファに向かっている、ということだけはわかった。三沢さんに会うのも久しぶりだ。