田村ゆかりのVoice Of Wrestling Part3

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790アメプロ好き
バックステージ、Aice5のロッカールーム。堀江が一人でイスに座っている。

堀江:『追いつくなんて言ったけど、どうしたらいいんだろう……』

思い悩む様な表情でぽつりと呟く。そんな堀江の背後に、こっそり忍び寄る浅野。

浅野:『ほっちゃん隙だらけ〜ヽ(`Д´)ノ』
堀江:『ひゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

背筋に指をつーっと這わされ、堀江は悲鳴と共に跳び上がった。

堀江:『なっ、なにするのよー浅野さんっ!』
浅野:『あっはっはごめんごめん。やー何か暗いからさーヽ(`Д´)ノ』
堀江:『もう……あれ? 浅野さん時計新しくした?』

堀江は浅野の腕時計に目をやり、不思議そうに尋ねた。浅野はニヤッと微笑む。

浅野:『これいいでしょ? こないだも坂本真綾ちゃんに会ってさぁ、「あーそれ凄い素敵」って言われたヽ(`Д´)ノ』
堀江:『え、えぇーっ!? いーなー! いーないーないーなーっ!』
浅野:『んふふー羨ましいだろー? ほっちゃん真綾ちゃん大好きだもんねーヽ(`Д´)ノ』
堀江:『その時計ちょうだい!』
浅野:『え、命令口調? 女王様?ヽ(`Д´;)ノ』
堀江:『その時計付けて、私も真綾ちゃんに褒められる!』
浅野:『ぐわっ!? な、何てパワーだ!ヽ(`Д´;)ノ』
堀江:『ちょーだいちょーだいちょーだいちょー……』
浅野:『め、目がヤバい! 撤退! 撤退だぁ〜!!ヽ(`Д´;)ノ』

必死に堀江の腕を振り解き、ロッカールームから逃げ去って行く浅野。
一人残された堀江は、正気に返ると思わず苦笑し再びイスに腰掛けた。

堀江:『あはは、真綾ちゃんって聞いてつい興奮しちゃった。でもいいなぁ浅野さん。
    私も……真綾ちゃんみたいにステキになりたいなぁ……』
791アメプロ好き:2006/04/17(月) 20:01:45 ID:pucWJeKM0
……コンコン。ドアがノックされるが、思案にふけっている堀江は気づかない。

堀江:『前見た総合の試合もステキだったなぁ……どうやったらあんな風になれるんだろ』

コンコン……ガチャ。再びドアがノックされ、ややあってドアが開く。しかし堀江は気づかない。

堀江:『真綾ちゃんって自然なんだよね。総合の時もレスリングの時も……舞台興行やドラマ興行に参戦してる時もみんな。
    あんな風にできたら、私ももっと自信持てるのになぁ……』
??:『堀江さんだってステキですよ』

突然声をかけられ、堀江は慌てて顔を上げた。そこにいたのは……何と坂本真綾本人!

堀江:『え……えええええええぇぇぇぇっ!?』
坂本:『ごめんなさい、驚かせてしまって。一応ノックしたんですけど、返事が無かったから……』
堀江:『あ、ごごご、ごめんなひゃ、なさい! え、ええと、ど、どんなご用で……あ、そ、そうだ、初めまして!』

立ち上がり、ぺこりと頭を下げる堀江。坂本は微笑み、同じ様におじぎする。

坂本:『はい、初めまして。実は堀江さん、一緒に来てほしい所があるんです』
堀江:『え……い、一緒に?』

【場面転換】

VoWスタジアムの地下にある特設リング。堀江は坂本の後に続いて普段あまり使われていないリングへ上がった。

堀江:『あの、真綾ちゃ……あ、ご、ごめんなさい! 私、なれなれしく……』
坂本:『好きな様に呼んでくれていいですよ。』
堀江:『は、はい……あの、それで、こんな所で何を……』
坂本:『声優がリングの上でする事は一つです。堀江さん、今から私と試合をして下さい』
堀江:『え……ええっ!?』
792アメプロ好き:2006/04/17(月) 20:03:48 ID:pucWJeKM0
【VoW非公式試合 時間無制限一本勝負】
 堀江由衣 VS 坂本真綾

マットの調子を確かめる様に軽くステップを踏む坂本。しかし堀江は混乱している様子。

堀江:『ちょ、ちょっと待って! どうして!? いきなり真綾ちゃんと試合なんて!』
坂本:『堀江さん、壁にぶつかっているって聞きました。それを乗り越えられる様に手伝って欲しいと、ある人から頼まれたんです』

言うやいなや坂本は堀江に組み付いた。堀江も狼狽しつつ応戦する。
しばし押し合う二人。しかしふいに坂本が力を抜き。堀江をアームドラッグで投げ飛ばす!
素早く起き上がりクローズラインを返す堀江。坂本はそれをかわすと背後から組み付き、投げっぱなしのバックドロップ!
堀江は頭をふらつかせながら起き上がる。しかし坂本はこの隙に攻め込もうとしない。

坂本:『全盛期のあなたは、とても輝いていました。それが少しずつ鈍ってしまったのは……ある人を亡くしてからです』

坂本の静かな声。堀江は驚いて大きく目を見開いた。

坂本:『あなたはデビュー初期、総合のトレーニングが苦手だった。けれどある人に出会って、総合で表現する事の楽しみを知った。
    あなたは、「彼女」の指導によって別人の様に強くなったんです』
堀江:『やめて……』

坂本の言葉を止めようとする堀江。瞳には涙が浮かんでいる。

坂本:『田村ゆかりさんは、自分のトラウマと向き合って強くなった。けれど堀江さん、あなたはその傷を心の奥に隠してしまった。
    そう……岡崎律子トレーナーを亡くした悲しみから、あなたはまだ立ち直れていないんです』
堀江:『やめてーーーーっ!!』

堀江の絶叫が響き渡った。我を忘れ坂本に殴りかかる。しかし坂本は堀江のパンチをガードせず、まともに左頬へ喰らった。

堀江:『聞きたくない……そんな話聞きたくないよーーーーーっ!』

再び絶叫し腕を振り上げる堀江。今度は坂本もパンチを避け、堀江にタックルするとテイクダウンを奪った。
793アメプロ好き:2006/04/17(月) 20:05:53 ID:pucWJeKM0
堀江:『やだ……やだぁ……そんな話、しないで……』
坂本:『目をそらさないで!』

ただ泣きじゃくる堀江を、坂本が一喝した。坂本は立ち上がり、静かに堀江を見つめる。

坂本:『私にも、そういう人がいます。デビューの時からずっと指導してくれた、菅野よう子トレーナーです。
    先日、私は菅野さんのジムを出ました。ずっと一緒にいたら……あの人に甘えてしまいそうだったから。
    けれど離れても、菅野さんは私の「ここ」にいます。だから私は寂しくないんです』

右手を自分の胸に当て、坂本は言った。そしてその右手で堀江の胸を指さす。

坂本:『岡崎さんもきっと、堀江さんの「そこ」にいるはずです。それに気づけば……あなたはきっと立ち上がれる』

いつの間にか、堀江の泣き声は止まっていた。涙をぬぐい、確かめる様に右手を胸へ当てる。
ゆっくりと立ち上がり、堀江は泣きはらした真っ赤な目で坂本を見つめた。

堀江:『……そっか。岡崎さんは、ずっと私の「ここ」にいたんだ。なのに私……悲しくて、ずっと目をそらしてた』
坂本:『あなたが忘れずにいれば、岡崎さんは生き続けます。あなたの中で』

坂本の言葉を聞き、堀江は微笑んだ。何かから解き放たれた様な、そんな笑顔だった。
同時に二人は距離を取り、すっと腰を落とした。試合再開の合図である。
今度は堀江が先に距離を詰め、胴タックル……と見せかけて坂本の右足を取る。しかし坂本は右足でエンズイギリ!
だがそれに耐えた堀江は坂本を正面から捕らえベリートゥーベリー!
起き上がる坂本を再び捕らえ、続けざまにジャーマンスープレックス! 先刻までとは別人の様な動きである。
間を置かず攻め込んで来る堀江へ、坂本は立ち上がりながらカウンターの右フック! 堀江は何とかガード。
坂本は堀江に組み付き、頭を引き寄せ『プラチナの膝』! テンプルにヒットしグラつく堀江。
堀江を高々と抱え上げ坂本がパワーボムで叩き付けようとした瞬間、堀江は手でマットに着地しそのままハリケーンラナ!
そして坂本が起き上がろうと膝を着いた所に、必殺の『沢近式閃光魔術』! まともにヒットし、坂本はマットに大の字。
大きな溜め息をつくと、坂本はマットをパンパンと二度叩いた。
794アメプロ好き:2006/04/17(月) 20:07:57 ID:pucWJeKM0
○堀江由衣(15分32秒 沢近式閃光魔術)坂本真綾●

坂本:『あいたた……やられました、降参です』
堀江:『ううん。真綾ちゃんが私に合わせてレスリングしてくれたからだよ。本気でやられてたら……きっと負けてた』

坂本の手を握り、そのまま立ち上がらせる堀江。

堀江:『ありがとう真綾ちゃん。試合がこんなに楽しいって……こんなに気持ちいいって、ずっと忘れてた』
坂本:『またいつか試合しましょう。今度はお客さんの前で、正式な試合を』

微笑み会う堀江と坂本。そんな二人を物陰から見つめる人影が更に二つ。GM大山のぶよと椎名へきるである。

椎名:『上手くいったみたいですね。GM、場所提供感謝します』
GM:『でもどうかなぁ。まだまだ、ゆかりちゃんや綾子ちゃんには届かないと思うけど』
椎名:『これからですよ、由衣ちゃんは。ここからどんどん強くなるんですから。今日はその始まりです』
GM:『そうあって欲しいね』

笑顔で堀江と坂本を見つめる椎名。ピンクのドアへと消えて行くGM。

【番組終了】