466 :
お前名無しだろ:
「一発盗っかぁ」
ターゲットを確認すると、大きく右腕を回した。老婆の前に立ち物色する。
既にハンドバッグは開いており、中のサイフは俺の愛撫を待つ。
腕を突っ込んで開いてみると、心なしか微笑んで、諭吉がそこに居た。
「俺の侍一本!の窃盗だぜ」声に出していう。
「男はやっぱスリ」
やおらバッグの中から、半開き状態のサイフを取り出す、指に唾をたっぷり付け、諭吉を数えまくる、
「バサッ、バサッ」音が剛の犯罪中枢を更に刺激する。
「剛盗たまんねぇ」早くも老婆は喚きたて、騒ぎが大きくなる。
「男の犯罪にゃあこれだよ」ダッシュで逃げ出す。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」息が続かなくなり、やがて頭の中が真っ白になる。
「ショアッ、ショアッ」「犯罪者レスラーのパイオニア」
ついに追いつかれ素人と格闘になる。剛はあっさりフォールされた。
白い腰紐で繋がれ、頭にスーツを被って、連行され、取調室に辿り着く。
マジックミラー越しの剛は、日本一のバカレスラーになっていた。
「ちきしょう俺はヤってねェよ」動機を聞かれると、いつもそう答えた。目撃者の証言が効き、起訴が決定すると、駄目人間へ向かってまっしぐらだ。
「男優になってやる」「BUMPER所属のほんまもんの男優」
「イクぞ!」「ウォー!ガー!」しぶきを飛ばしながら、クライマックスをめざす。
「カッコつけていないで、あたらしい事に挑戦していきたい、良い悪いは別として」元トップレスラーのプライドが剛を悩ます。
-ギャンブルしてぇ- -でも金がねぇ-相反する現状がせめぎあい、剛は崖っ淵に立つ。
「小林豊」剛は偽名を使い、バレに備える。東スポは既にネタを掴んでいた。
「でかんしょ! 」「極太親父」
一面を飾って、真実が明るみになる。
短すぎた黄金時代が過ぎ、前科持ちの駄目レスラーに戻る。