復活!!司馬遼太郎風にプロレスを語るスレ

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938お前名無しだろ:2006/10/12(木) 22:26:44 ID:XXDnk6u50
もうすぐこのスレも1周年ですね。
939お前名無しだろ:2006/10/13(金) 10:15:17 ID:4F7RvgC00
age
940お前名無しだろ:2006/10/14(土) 20:54:27 ID:RmeA1vOJ0
保守である
941お前名無しだろ:2006/10/15(日) 20:00:38 ID:U0m+lpg40
age
942お前名無しだろ:2006/10/16(月) 02:39:13 ID:ye6GcYrH0
司馬作品じゃないけど、書いてみていい?
943お前名無しだろ:2006/10/16(月) 06:59:32 ID:dz4ZU8RA0
とりあえず書いてみて。
観客席の大半の黒い暗幕が
レーザーライトで照らされ
花道を歩めば 視界が開ける
メインイベントが始まった
色眼鏡のリングアナは選手の名を呼び
入場曲が流される
とってつけたようなハードロック
アントニオ猪木の祭典のため

プロレス最強説の提唱者は
夢によろい戸を降ろし
僕はたいした準備期間のないまま
選手控え室の出口で待つ
実況のアナは解説席の谷川のコメントを
適当に聞き流し
氷の皇帝を呼び出すだろう
アントニオ猪木の祭典へ
社長は団体のエース格をないがしろにしながら
ギャラを永遠に未払いにする
僕は亀の構えで意識を飛ばして
ガチンコの苦楽を味わう
レフェリーが軽く手を上げ
試合終了のゴングを要請する
勝者のテーマが流される
アントニオ猪木の祭典で

静かな会場をあとに プロレスファン達は沈黙し
関係者は苦笑して マッチメークに首をひねる
僕はIWGP最多防衛のため与えられた仕事をこなし
その悪戯にまんまとはまる
キングオブスポーツの道化師は締めの挨拶で
リングに上がり、観客を煽ると
1,2,3,と唱和する
アントニオ猪木の祭典で
946お前名無しだろ:2006/10/16(月) 13:02:43 ID:RKw8KpRU0
こんな曲、だれでも知ってるようなのじゃなくてスマンが・・・
http://www.youtube.com/watch?v=2Y7GDK1ImzM
947関ヶ原 1:2006/10/16(月) 20:25:05 ID:KcL8v+Lu0
三沢は、有明のNOAH事務所になお駐っている。
昨夜、ZERO−ONE・MAXの中村代表を仲介して大森のGPWA合同興行の参戦を
嘆願された。
「明日、大森と交渉する」
と三沢は、電話で中村に言って大森が有明に来着するのを待った。
(どう遇するか)
三沢は、思案を練った。大森の遇し方の巧拙こそ、いまからはじまるNOAHの
天下の評判に影響するであろう。
三沢は、複雑な方法をとった。中田龍から大森来着の報をうけるや、
「遇し方の考えが、まだきまらぬ。とりあえず事務所のソファーにでもすわらせておけ」
といった。

948関ヶ原 2:2006/10/16(月) 20:36:12 ID:KcL8v+Lu0
この言葉によって大森は事務所のソファーにすわらされた。
三沢―――このちょっぴり意地悪な演出者はこの日、GPWA合同興行の詳細を聞くために
NOAH所属のプロレスラーが事務所にやってくることを計算に入れた。
事務所にくるNOAH所属のプロレスラーは当然、ソファーにすわらされている大森を不審の目で見るであろう。
三沢はごく偶然なかたちで大森を生き曝しにしようとした。それによってNOAH所属のプロレスラーと大森の
反応をみて楽しんでから大森と交渉しようと試みた。この計画は、あたった。
949関ヶ原 3:2006/10/16(月) 20:47:46 ID:KcL8v+Lu0
最初にやってきたのは、プロレス界最大のフリーレスラーでGPWAにも加盟している
「帝王」高山善弘である。高山は大森を見るや、
「かっ」
と痰を吐くような口蓋音をたて、「うぬは斧爆弾じゃな」と叫んだ。高山は昨日、友人と酒を飲み、
顔になお酒気が残っている。
「うぬは勝手にWWEのトライアウトをうけ日本プロレス界の盟主におわす三沢社長の顔に泥をぬり、
 このようなざまになった。これが元、恐れ知らずのなれのはてか」
と罵倒した。
「なにをいう」
大森は、背骨を立てた。両眼に気迫をこめ、高山をにらみすえた。
950関ヶ原 4:2006/10/16(月) 20:58:58 ID:KcL8v+Lu0

「うぬのような世渡り巧者なだけの男に、おれの心のありかがわかってたまるか。そこをどけ。めざわりである。」
と、ひくいが、しかしよく透る、底響きのする声でいった。
「なぜNOAHに後ろ足で砂をかけるように去った汝が」
と、高山はさらにいった。ここにいる。帰ろうとせぬ。図々しくソファーに座っておる。とたたみかけたが、
大森は顔をひきつらせ、うぬのようなU系くずれに全日系レスラーの心事がわかるか、と、みずからをもって全日系レスラーとよんだ。
951関ヶ原 5:2006/10/16(月) 21:13:34 ID:KcL8v+Lu0

「全日系レスラーたるものは古巣を去った身であっても最後の瞬間まで古巣を想い、
 古巣で試合をする機会を待つものである」
と言い、かつ、これは大森が声を大きくして叫びたいところであったが
「馬場社長が弟子たちに提唱された、明るく、楽しく、激しいプロレスをきちんとやっているかを、
 この目でみて馬場社長の墓前に報告し奉る。高山、心得ておけ」
といった。大森は馬場全日体制のときに大いに期待されていたが、この期にいたっていよいよその過去が
露骨になり、三沢によって曝し者のようにソファーに座らされていながらも、
馬場の名前を出すことでプロレスラーとしての血統の良さを見せつけるようであった。
「世迷いごとを言うわ」
と、高山は呆れて言葉がなくなり、大森のそばを去った。
952関ヶ原 6:2006/10/16(月) 21:27:46 ID:KcL8v+Lu0
つぎに来たのは、秋山準である。このNOAHの知恵袋は、大森の姿をみるや、大森と対面するかたちで
真正面のソファーに座り、
「立場が違うとはいえ」
と、意外な態度でなぐさめはじめた。かつては馬場社長の期待を背負ってWWFで試合をされた貴殿が
このお姿になったことは、かえすがえすも御無念であろう、といった。
秋山はNOAHを去ってから以降の大森を憎み、大森がNOAHを去ったその日の試合後、マイクを使い大声で
「おい、腐れアックスボンバー。今日はてめえの技を使ってやったが全然、きかねえよ」
とまでいった男である。
953関ヶ原 7:2006/10/16(月) 21:39:57 ID:KcL8v+Lu0
それが大森の目をみつめ、その泳ぎっぷりにおどろき、「まあ、なんとかなるさ」といって去っていった。
大森は言葉を失い、目を閉じ、顔を凝然として天にむけている。
ついに大森ははずみをうしない、一言も発しなかった。この意外なやさしさが秋山の性格でもあり、
ひとつには秋山の策であろう。ここで大森を見て怒りにまかせて大森を罵倒するのは、秋山のとるところではない。
秋山は、ちょっとした優しさを大森に触れさせることによって大森との格の違いを見せつけた。
954関ヶ原 8:2006/10/16(月) 21:50:55 ID:KcL8v+Lu0
大森にすれば秋山の策に致されおわったというべきであったが、大森の奇妙さは、
これほど秋山を長年ライバル視していた男でありながら、秋山に致されているとは
気づかなかったことであった。その証拠に、秋山が去ったとき、面を伏せ
―――やっぱり秋山にはかなわない。、つぶやくようにいったのである
この男の頭脳にはもともと政治感覚というものが欠けきっているようであった。
やがて小川良成がやってきた。小川は大森のほうへ視線を送らずそのまま別室に入った。
小川が別室に入ったあと、こちらへやってくる二人の男がいる。丸藤正道とKENTAであった。
955関ヶ原 9:2006/10/16(月) 22:04:20 ID:KcL8v+Lu0
丸藤は、秋山から奪ったGHCのベルトを肩にかけてやってきていて、大森の存在に
まだ気づいていない。その丸藤の姿を、めざとく大森の視線がとらえた。
フジマルかっ、と吐き捨てるように言うと大森は、大声で
「そのベルト姿の似合わなさよ」
と叫んだ。
が、丸藤は、KENTAとなにやら夢中に談じ込んでいたため大森の叫び声には気づかず
大森のそばを素通りして、そのまま別室に入っていった。
三沢は奥の社長室にあって、それらの出来事のすべてを中田龍からきいた。最後に苦笑しながら、
「大森と交渉する。鄭重にせよ」
といった。
「鄭重に」
と、念を入れている。
956関ヶ原 10:2006/10/16(月) 22:12:26 ID:KcL8v+Lu0
捨て曝しで楽しんだ以上、あとはNOAHの襟度をしめし、一通りの礼をもって大森を遇し、
プロレス界の評判をよくすべきであった。中田龍は、三沢の意を心得てそのとうりにした。
交渉は、三沢が一言、
「ぶっちゃけ、大森、お前をうちのリングにあげることはアレなんだよね。
 今までNOAHで頑張ってきた選手に、しめしがつかないっていうかさぁ………」
と、いう三沢独特の言いまわしの拒否でおわった。


(完)
957お前名無しだろ:2006/10/16(月) 23:54:38 ID:I+YTALi00
泣いた
958お前名無しだろ:2006/10/17(火) 06:58:00 ID:5X+a+MjF0
俺も泣いたよ。
959お前名無しだろ:2006/10/17(火) 12:52:26 ID:Dxb44c0U0
スレも大詰めのところにすごいのが来たな。
960お前名無しだろ:2006/10/17(火) 23:25:46 ID:jaDlvmCS0
大森さんが主役の話は,どれも泣けてくるね。
961お前名無しだろ:2006/10/18(水) 15:25:14 ID:BcvWkcsF0
age
962お前名無しだろ:2006/10/18(水) 15:35:11 ID:if/kbAx60
この人天才だわ・・・w感動した。
963お前名無しだろ:2006/10/19(木) 12:43:20 ID:tAgKJ4H40
むちゃくちゃおもしれーw
964お前名無しだろ:2006/10/19(木) 18:33:41 ID:dysCFVvk0

私の趣味はキャバ嬢の携帯メールに股間の写真を送りつけるのが
大好きなんですよ、笑えてしょうがない
965お前名無しだろ:2006/10/20(金) 19:45:45 ID:iQz9vmCC0
このスレすごい面白いけど、
司馬遼太郎読んだことないから参加できない・・・
966お前名無しだろ:2006/10/21(土) 00:12:18 ID:0LcE7hB10
age
967お前名無しだろ:2006/10/22(日) 10:01:04 ID:bDmj96Rc0
保守
968お前名無しだろ:2006/10/23(月) 00:23:28 ID:56x2hbZl0
age
969お前名無しだろ:2006/10/23(月) 12:41:56 ID:PBI04hr40
今読んだ。
秋山「まあ、なんとかなるさ」
丸藤 大森の叫び声には気づかず
原作とのギャップに笑えた。
970お前名無しだろ:2006/10/24(火) 03:47:14 ID:f11j4BtPO
(埋めないか)
スレも末期を迎え、名無しが提案した。
971お前名無しだろ:2006/10/24(火) 06:49:12 ID:UjGPor180
司馬遼風にプロレスを語るスレ 巻ノ三

スレタイはシンプルにこれでどうか。
972お前名無しだろ:2006/10/24(火) 09:35:06 ID:vhvB0YqC0
ーーー埋める。
このスレを、である。
973お前名無しだろ :2006/10/24(火) 11:56:02 ID:Nu6TMB7d0
age
974お前名無しだろ:2006/10/24(火) 14:09:27 ID:+es7973a0
ume
975お前名無しだろ:2006/10/24(火) 19:03:50 ID:qiNNK8FO0
「大方、職人方の作品は、出尽くしたのではないか」
と名無し某が言った。
「ならば」
スレも残りすくないのだ。各々が心に残った職人方の作品をひとりづつ述べて
スレを埋めていくのも一興ではないか。と考えた。
976お前名無しだろ:2006/10/24(火) 19:50:37 ID:BtUf96aCP
「心に残った作品ならば」
 >>34をおいて他にはない、と名無しは思った。
 笑いが、止まらないのである。
977お前名無しだろ:2006/10/24(火) 20:34:20 ID:xzABjaxg0
>>947-956
嗚咽して泣いた
のどを掻きむしって泣いた

だがそこにはただ冷たい秋風が吹き抜けるだけであった
978お前名無しだろ:2006/10/24(火) 23:08:23 ID:XBbemUvJ0
>>456-460
リアルすぎて泣くに泣けない…
>>556-564
個人的には一番好き。小ネタがいちいち面白いw
>>686-696
永田さんはやっぱりこのスレには欠かせない。
979お前名無しだろ:2006/10/25(水) 00:33:44 ID:vsL7xR9A0
age
980お前名無しだろ:2006/10/25(水) 01:30:30 ID:dvanzOWU0
>>975
「だが、暫し待ってくれないか」と筆者は言う。
最後を飾るに相応しい出来であるかは別として、もう一作のみ投稿したき作品がある、と。

そして筆者は思う。
数多の名作が星の如く輝いては消えていく運命において、永遠の輝きを保つ選ばれしものは

「全部、パクろう」

この一言に尽きるのではなかろうかと。
981お前名無しだろ:2006/10/25(水) 05:44:39 ID:0pYXWRaW0
>>980
ひざを正してお待ち申し上げ候
982お前名無しだろ:2006/10/25(水) 23:54:27 ID:IPvIg/nw0
保守である。
983お前名無しだろ:2006/10/26(木) 09:39:46 ID:vQh1U0fE0
保守である。
984お前名無しだろ :2006/10/26(木) 14:12:25 ID:2ov5G20t0
age
985『関ヶ原』より@:2006/10/27(金) 02:00:33 ID:50gktqt80
武藤には一種脱俗味を帯びた風骨はあったが、多少物好きなところもあったらしい。
横浜は関内町の繁華街の一角のスナックに、少し憂いを漂わせた女将がいる。
何とも表現し難い妖艶さと幸薄気な雰囲気が、そのあたりのうわさになっていた。
「菊タロー、寄ってみよう」と武藤はある日、そのあたりまで来たとき急に言い、
まるで勝手を知った者の如くに金属製の開戸をからからとあけ中に入り、声を上げ、
「何か一杯ちょうだい」と奥へ声を掛けた。
掛けた時には、武藤はもうカウンターに腰をおろしている。諸事、物に馴れた男なのである。

店の奥から気だるそうな物音が響き、やがてカウンター内に姿を見せた女将が塗り板の上にグラスを置き、
ビールを注ぎだした。無言でいる。
武藤も、無言でいた。黙って顎髭をさすり、うまそうにビールを飲み干すと、やがて
「無沙汰をしている」と、わざと快活そうな表情で女将の顔を見た。
女将は小さく会釈したが、しかしやや迷惑げな色をうかべ、目を伏せたまま身じろぎもしない。

「あれは」と、武藤は顎を動かし、数多の酒瓶の中に所在無さ気に置かれた、らちもない写真立てを指した。
986『関ヶ原』よりA:2006/10/27(金) 02:03:35 ID:50gktqt80
「デコトラか」と、女将に問うまでもなく呟き、ど派手なもんだ、と言った。
昭和中期に一世を風靡した映画で使用された長距離用車両の愛称であり、一部には未だ根強い人気を誇るものの、
武藤が言った通り、どちらかと言うと品のないたたずまいにより、こういう場所ではあまり飾られない類のものである。
「女将が飾られたのか」 武藤はたずねたが、わざわざ問うまでもなく写真立ての四方の框があたらしい。
つい最近に購入し、そこに彼を偲ぶ意味合いでの写真を入れたものであろう。
「あいつは」と、武藤は名をいわずにいった。

「どういうものか、あの手の類が好きで、合宿所時代はおろか、新居でさえ写真や模型で溢れ返っていた。
 ひととおりの地位も名誉も得たトップレスラーだったくせに、あんな趣味の悪いものを、何故あいつがあれほどに好んだのか、
 わかるようでわからない」
「純真な心をお持ちだったからでございましょう」と、女将ははじめて小さな、聞き取れぬほどの声で言い返した。
それだけではなく、楽曲や玩具、更には料理や雀狩に代表される猟にまで、自分が興味を持ったものには我慢がきかない。
そんな開けっ広げで天真爛漫な性格だからこそ、私を心底求めたし、私もかのひとを求めた。そう、彼女は言いたいらしい。

「あいつには、欲がありすぎたのさ」と、武藤はいった。
「ありすぎて体型にまで出ていた。俺と似ているが、俺はまだしもそれを韜晦する術を心得ていたから、レスラー生命が今日まで保った」
「お人が、それだけ悪いのでございましょう」
女将は、武藤を蔑むように見た。武藤は怒らず、禿げ上がった頭部を触りながら笑い、「いかにも悪い」とうなずいた。

「俺も悪いが、あの緑の奴は、もう一枚悪い」
武藤のいう緑の奴とは、もちろん三沢のことであろう。
987『関ヶ原』よりB
「あの方や馬場家を見捨てた不義のお人が」と、女将は三沢に後ろめたさにも似た負の感情を持っているらしい。
「栄えてよいものでしょうか」 「いや、ちがうようだな」と、武藤は首をかしげた。
彼が生きてきた経験によると、義・不義は事をおこす名目になっても、業界を動かす原理にはならない。

武藤の言おうとするところは、すでに馬場・猪木体制は業界を担っていく魅力を失っている。
特に猪木の手法は、もはやレスラーからファンに至るまで、その時代遅れのやり方に辟易し、見透かされていたにも関わらず、
あいつはその手法と生き方を真似し、更に続かせようとした。
すべての無理はそこにあったのさ、と武藤は言いたかったが、しかし沈黙した。かわりに
「ブッチャ―は、成功した」と親友を愛称で呼び、褒め称えた。ただ一つのことについてである。

零一(ぜろわん)の旗揚げは、全盛時の新日本を愛したファンへの何よりもの馳走になったであろう。
新日の崩壊にあたって、橋本などのストロングスタイル継承者 ―新日の象徴とも言える― 存在が、自分や三沢などと同じく
王道プロレスへ走ったとなれば、業界の秩序は崩れ、緊張が消失し、ファンは興奮を失う。
かつは後継者と見初めた橋本からそこまで裏切られれば、新日を愛し信じたファンのみじめさは救い難い。
その点からいえば、あいつは十分に成功した、と武藤は言うのである。

やがて武藤はグラスを置き、立ち上がった。
―供養に。 と、自分のフィギアとTシャツを置き、あらためて女将の俗名をよんだ。
薫、という。しかしそのときには女将の姿はない。
立ち尽くす武藤の背後から有線が流れ、懐かしの「勝手にしやがれ」の音律が聞こえたと同時に、破壊王の満面の笑顔が脳裏へと浮ぶ。

武藤は、翌日、地方巡業に旅立った。